説明

ジコロトロン用ワイヤアセンブリ取外収蔵ツール

【課題】セールス技術者や顧客自身がジコロトロンユニットからワイヤアセンブリを安全に取り外せるようにする。
【解決手段】古びて使えなくなった使用済みのワイヤアセンブリ1をジコロトロンユニット6から取り外す手段として取外ツール10及び収蔵箱を設ける。ユニット6とほぼ同形状だがやや大きめで収蔵箱の頂部開口上に配置固定してある取外ツール10の内側に、ユニット6を嵌め込んで据え付ける。取外ツール10の各端に設けた可撓性レバー13の操作によって突起12を押しこれと位置が揃っているスロット11、更にはこれに連通する孔9を介してグリッパ4に接触し、グリッパ4の固定先アンカ3を動かし、そのアンカ3を含むワイヤアセンブリ1全体をユニット6から外す。外れたワイヤアセンブリ1は取外ツールの底部開口17及び収蔵箱の頂部開口を通り収蔵箱内に収まる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロナ放電を利用した静電印刷、複写等のプロセスに関し、特にジコロトロンユニット内の支障あるワイヤアセンブリを取り外すための装置及びシステムに関する。
【0002】
なお、本願出願人は、本願とほぼ同時に、「ジコロトロンワイヤアセンブリ着脱ツール」と題する出願1と、「ジコロトロンハウジングにワイヤアセンブリを取り付けるための構造物」と題する出願2とを、提出している。これらの出願は何れも静電プロセス用ジコロトロンに関する出願である。
【0003】
出願1に記載の着脱ツールは、ジコロトロンユニットのU字ハウジング内にジコロトロンユニット用のワイヤアセンブリを装着するとき、並びに当該U字ハウジングから当該ワイヤアセンブリを取り外すときの何れにおいても、使用できるユニットである。例えば、あるジコロトロンユニットのU字ハウジングに装着されているワイヤアセンブリに何らかの支障がある場合、出願1に記載の着脱ツールを空の状態にして用い、そのU字ハウジング内のワイヤアセンブリをその着脱ツールによって取り外せばよい(取外工程)。支障あるワイヤアセンブリを取り外した後に残る空の即ちワイヤアセンブリが入っていないU字ハウジング内に新しいワイヤアセンブリを装着するには、新しいワイヤアセンブリが装填されている出願1に記載の着脱ツールを用い、そのU字ハウジング内に新しいワイヤアセンブリを装着すればよい(装着工程)。装着工程を実施した結果空になった着脱ツールは、後の取外工程、即ち支障ある別のワイヤアセンブリをU字ハウジングから取り外す際に、再使用できる。
【0004】
出願2に記載の構造物は、ワイヤアセンブリの位置を保持、固定するための構造物である。ジコロトロンユニット内のワイヤアセンブリに支障が生じたときにはそのワイヤアセンブリをそのジコロトロンユニットから取り外さねばならない(取外工程)。重要なことは、この取外工程を簡便に実施できるようにすることである。そこで、出願2においては、ワイヤアセンブリを樹脂製の挿入体内に嵌め込み、更にその挿入体をジコロトロンユニットのハウジング内に装着することとしている。従って、出願2においては、古いワイヤアセンブリの取外及び新しいワイヤアセンブリの装着をより簡単に実行できる。その方法や装置には様々なバリエーションがあり得る。
【背景技術】
【0005】
静電写真複製においては、通常、まず印刷したい原画像の光像を感光体上に静電潜像として記録し、続いて一般にトナーと呼ばれる帯電マーキング粒子を被着させることによってその静電潜像を可視化する。この可視化により得られたトナー像はその感光体上にそのまま固着させてもよいし、或いはその感光体から別の支持体例えばプレーンな用紙シートの上に転写させてもよい。トナー像を永久的に可視状態に保つには、例えば熱及び圧力の印加によってトナーを熔融させる等して、そのトナー像を紙等の支持体上に固着例えば融着させる必要がある。
【0006】
最近の電子写真式高速複製機の中には、一時間当たり3000枚以上の速度で複写物を作成できるプリンタがある。その種の複製機の能力を過不足なく発揮させるには、多数の処理ステーションにて使用されるコロトロン、ジコロトロン等のコロナ発生装置を、より信頼できるものにする必要がある。即ち、コロトロン等の不具合、不正常動作等によってマシンシャットダウンが生じることがなくまたリスクも生じないよう、コロナ発生用のシステムを完全に動作させることが、理想として求められている。
【0007】
一般に、電子写真印刷プロセスや静電写真印刷プロセスにおいては、フォトレセプタ等の感光体に面する各種ステーションにてコロトロンユニット、ジコロトロンユニット等のコロナ発生装置が多数用いられる。例えば光導電面均一帯電用のステーション、トナー像転写用のステーション、光導電面清掃用のステーション等では、一般に複数個のコロナ発生装置が使用される。即ち、これらのステーションにおいては、静電荷を堆積させるため1個又は複数個のコロナ発生装置を使用することが常識となっている。重要なことに、コロナ発生装置が1個でも不正に動作すると複写プロセス全体があっけなく役立たずになることから、今日の高速プリンタにおいてはそれらコロナ発生装置全てを完調で動作させる必要がある。高速プリンタやカラープリンタの中には16個にも上る多数のコロナ発生装置を使用するものもあり、そうした複雑な構成の高速カラープリンタを好適に動作させるには、各コロナ発生装置の動作状態を何れも完調に保つことが、基本的に重要である。コロナ発生装置の動作状態を完調に保つにはそのコロナ発生用部品を清掃すればよいが、これはまた問題を孕んでいる。即ち、コロナ発生装置例えばジコロトロンユニットにて一般に使用されるワイヤアセンブリは、絶縁性を有する2個のアンカ(エンドブロック、インジュレータ、インジュレーティングアンカ等と呼ばれるものも含む;本願中同様)の間に、ガラス等の誘電体被覆により覆われた細いワイヤ電極を、単一平面上に保持できるよう高張力実装する構成を採る。各アンカにはアンカ位置保持固定用挿入体(グリッパ;ホルダ、クランプ等と呼ばれるものも含む;本願中同様)が固定され(従来技術)又は嵌着され(出願2)、各アンカはこのグリッパを介してジコロトロンユニットのハウジング(以下「ジコロトロンハウジング」)例えばU字状のハウジング(U字ハウジング;シールド、シェル等と呼ばれるものも含む;本願中同様)の各端に装着される。グリッパはその際ハウジング内アンカ位置を保持固定する役割を果たす。ワイヤ電極は、通常、高導電率の素材で形成され、帯電対象とする光導電面の十分近くに配置される細長いコロナ発生(コロナ放電)用のワイヤであり、多くの場合、電極寿命全体を通じて均一性の高い帯電を行えるように、ガラス等の誘電体素材により被覆されている。しかし、こうしたガラス被覆は薄くてもろく傷つきやすい。しばしば、ワイヤ電極の取扱や清掃に際してその誘電体被覆が砕けることがあり、これはユーザが怪我をする原因となりかねない。この問題に対処するにはワイヤ電極の清掃が有益であるが、コロナ放電能力の低下や清掃中の電極破損も考慮すると、時々はワイヤアセンブリを交換してやる必要がある。
【0008】
このようなガラス被覆が付いたワイヤ電極は、手では扱わない方がよい。無論、ねじ回し等の強固なてこ具を使用することも勧められない。しかも、ワイヤアセンブリ又はそのワイヤ電極の交換には細心の注意が必要である。そして、先に述べたように、マシンの中には多数のジコロトロンユニット従って多数のワイヤ電極を必須とするものがある。そのため、ワイヤ電極の不具合、不調への対処という問題は、今日の複雑なマシンにおいては手に負えない程の問題となりつつある。
【0009】
もう一つ採り上げるべき重要なポイントは、ワイヤアセンブリによるジコロトロンユニットの価格の高さである。ワイヤアセンブリによるジコロトロンユニットの主要構成要素の中で最も高価格なのは、ワイヤ電極及びそのアンカの収容場所であるU字ハウジングであり、最も低価格なのはワイヤアセンブリである。従って、ワイヤアセンブリ及びU字ハウジングからなる高価なジコロトロンユニット全体を交換するのではなく、支障のあるワイヤアセンブリだけを取り外して交換する策を採る方が、理に適っている。
【0010】
U字ハウジングからのワイヤアセンブリの取外及び交換に使用できるシステムとしては、例えば特許文献1(発明者:Osbourne)に記載の手法によるシステムがある。この従来システムにおいては、ワイヤアセンブリをU字ハウジング内に装着したときそのワイヤ電極の各アンカに面することとよう、U字ハウジングの両端に孔を設ける。U字ハウジング内に装着されているワイヤアセンブリを取り外す際には、この孔からてこ具を差し込んで操作し、その孔に面しているアンカを動かす。アンカはワイヤ電極の端部につながっているのでこの操作によりアンカだけでなくワイヤ電極も外れる。両端でこの操作を行うことによりワイヤアセンブリ全体が外れる。また、特許文献1には、ワイヤアセンブリが取り外された後のU字ハウジング内に新しいワイヤアセンブリを装着するためのツールも記載されている。このツールを構成する堅固な支持フレーム内には、交換用の新しいワイヤアセンブリを複数個、装填しておくことができる。U字ハウジング内に新しいワイヤアセンブリを装着する際には、予め、このツールの支持フレーム内にコロナ発生用のワイヤアセンブリを必要個数分必要箇所に装填しておく。その上で、古いワイヤアセンブリが取り外されて空になっているU字ハウジング上に、その支持フレームを押しつける。支持フレームにおけるワイヤアセンブリ装填位置が、取り外された古いワイヤアセンブリがU字ハウジングで占めていた跡地に相応する位置となっていれば、この操作によって当該跡地に新しいワイヤアセンブリが装着されることとなる。従って、特許文献1に記載の従来技術を実施するには、古いワイヤアセンブリを取り外すためてこ具を孔に差し込むことが必要であり、また、U字ハウジングから取り外された一般に複数個のワイヤアセンブリがそのU字ハウジング内で占めていた位置に相応する位置となるよう、実装システム(支持フレーム)内に一般に複数個の新しいワイヤアセンブリを着脱可能に装填することが、必要となる。
【0011】
【特許文献1】米国特許第5449906号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的の一つは、新しいワイヤ電極を装着できる状態にするため静電プロセス用ワイヤ電極を取り外すシステムを、改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、支障あるアセンブリを収容しているジコロトロンユニット(厳密にはそのU字ハウジング;本願中同様)内から当該支障あるワイヤアセンブリを取り外すための取外ツール及びこの取外ツールに併置される収蔵箱を備える装置として、実施することができる。本実施形態においては、ジコロトロンユニット内から支障あるワイヤアセンブリを取り外す際、そのジコロトロンユニットの頂部開口が下を向くようそのジコロトロンユニットを上下逆さまにし、それと前後して、そのジコロトロンユニットの頂部開口に面するように(従って逆さまになったときジコロトロンユニットの直下に位置することとなるように)本実施形態に係る取外ツールを配置し、更にその長手方向に沿って延びたスロット状の頂部開口が取外ツールの直下に位置することとなるよう本実施形態に係る収蔵箱を配置する。取外ツールは、例えば、U字ハウジングが押し込まれる頂部開口、ワイヤアセンブリが通る底部開口、ワイヤアセンブリリリース用に取外ツールの両端に設けられた少なくとも2個の可撓性レバー、これら可撓性レバーの内側に形成された突起例えばピン、各可撓性レバーの突起が挿通される(例えば側部の)スロット状開口等を有する。収蔵箱は、例えば、上述のスロット状頂部開口の他、取外ツールが上に置かれたときにそのスロット状開口と連通し可撓性レバーの突起とも位置が揃う(例えば側部の)孔を有する。取外工程を実施する際には、作業者は、例えば、その中にワイヤアセンブリが装着されているU字ハウジングを上下逆さまにして取外ツールの頂部開口内へと下向きに押し込み、その開口内にU字ハウジングを据え付ける。これによって、可撓性レバーの突起、取外ツールの(側部の)スロット状開口及び収蔵箱の(側部の)孔の位置が揃う。この状態で可撓性レバーを押すと、その内側に位置している突起が、取外ツールのスロット状開口及び収蔵箱の孔を介しアンカに作用する(例えば突起がグリッパと接触しこれに連動してアンカが動く)。こうして各アンカを動かし元の位置即ち着座状態から外すと、それらにつながっているワイヤ電極や各アンカに取り付けられているグリッパを含め、ワイヤアセンブリ全体がジコロトロンユニットのU字ハウジングから外れる。こうしてリリースされたワイヤアセンブリは、取外ツール底部開口及び収蔵箱のスロット状頂部開口を通り下方の収蔵箱内に落入し、その収蔵箱により受け止められる。取外工程は、これだけの操作によって完遂できる。ジコロトロンユニットから取り外されたワイヤアセンブリで収蔵箱が一杯になったら、その収蔵箱の中身を皆、ゴミ袋の中に捨ててしまえばよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施形態に係る装置及びシステムによれば、顧客の許まで出向いたセールス技術者や顧客自身が、ワイヤアセンブリを、ジコロトロンユニットから安全に取り外すことができる。特に、取外工程を実施する際、作業者が古い使い終えたワイヤアセンブリに触れる必要がないため、ワイヤ電極のガラス被覆に対するセールス技術者や顧客の安全性を担保できる。また、収蔵箱のスロット状開口を取外ツールと連通させる構成とすることにより、U字ハウジングから外れた古いワイヤアセンブリを、そのスロットを通して収蔵箱内に落下、収容することができ、また、取外ツールの可撓性レバーを押してアンカを外す構成とすることにより、ワイヤアセンブリを更に簡単に取り外すことができる等、取外工程は単純な操作で容易に完遂できる。
【0015】
本発明の実施形態によれば、アンカを含むワイヤアセンブリを取り外す作業に際し、U字ハウジングの内部まで届くてこ具を使用する必要がない。即ち、可撓性レバーを押しU字ハウジング内に向け突出させると、突起例えばピンが取外ツールのスロット状開口及び収蔵箱の孔を介しアンカ着座空間内に作用し、U字ハウジング内のアンカが外れる方向に付勢されるため、アンカひいてはそれにつながる古いワイヤ電極を含むワイヤアセンブリ全体を、そのU字ハウジングから容易にリリースさせることができる。また、取外ツールは、ワイヤアセンブリリリース用の可撓性レバーを含め、樹脂モールドにより一体形成することができる。更に、取外ツールを収蔵箱のスロット状頂部開口上に配置してアンカひいてはワイヤアセンブリを外すことにより、外されたワイヤアセンブリを自由落下させ、当該スロット状頂部開口を介して収蔵箱内に収容することができる。
【0016】
本発明の実施形態によれば、古いワイヤアセンブリを取り外して空になったU字ハウジング内に代わりに新しいワイヤ電極及びアンカを挿入装着する方法として、適切である限りどのような方法でも使用することができる。例えば、新しいワイヤアセンブリが装填された挿入ツールを、古いワイヤアセンブリを取り外して空になったU字ハウジングの上に置き、その挿入ツールから新しいワイヤアセンブリを押し出して空のU字ハウジング内に装着する、といった方法を使用することができる。この方法を実施するには、例えば、その内部に新しいワイヤアセンブリが装填された状態で、挿入ツールを流通させるとよい。作業者は、この状態で流通している挿入ツールを取り寄せ、古いワイヤアセンブリを取り外して空になったU字ハウジングの上に置いてそのU字ハウジングに嵌め込み、その挿入ツール内の新しいワイヤアセンブリを(その挿入ツールの頂部開口を介し)親指で押しながら、その挿入ツールを上向きに引っ張り上げるだけでよい。そうすれば、新しいワイヤアセンブリがリリースされ、空のU字ハウジング内に装着される。なお、本発明に係る取外システムを用い古いワイヤアセンブリが取り外され空になったジコロトロンユニット内に新しいワイヤアセンブリを挿入装填するワイヤ電極交換方法としては、適切である限りどのような方法でも使用することができる。
【0017】
本発明の実施形態によれば、上述の事項からも明らかな通り、セールス技術者や顧客が至便に用い得るワイヤアセンブリ取外システムを実現することができる。即ち、作業者にしてみれば、支障あるワイヤアセンブリが装着されているジコロトロンユニットのU字ハウジングを、上下逆さまにして本発明の実施形態に係るジコロトロンワイヤアセンブリ収蔵箱の上に置いて下方に押し(その際その頂部開口を取外ツールの頂部開口に嵌め込む等してU字ハウジングを据え付け)、収蔵箱の表面にある2個の可撓性レバーを押し込むだけでよい。そうするだけで、U字ハウジングからその内部の古いワイヤアセンブリがリリースされ、収蔵箱内に捉えることができる。
【0018】
本発明の実施形態によれば、頂部開口を有する収蔵箱と、収蔵箱の頂部開口上に配置及び固定でき頂部開口を有する取外ツールと、ジコロトロンユニットからワイヤアセンブリを取り外せるよう取外ツールの両端に設けられた可撓性レバーとを、機能的に組み合わせた装置構成としたため、ジコロトロンユニットを取外ツールの頂部開口に嵌め込んでワイヤアセンブリ取外プロセスを実施することによって、古くなり使えなくなったワイヤアセンブリをジコロトロンユニットから取り外すことができる。更に、取外ツール(の頂部開口)を、ジコロトロンユニット(の頂部開口)と概ね合致した形状及びジコロトロンユニット(の頂部開口)よりやや大きめの寸法にすることにより、ジコロトロンユニットを取外ツールに簡便に嵌め込み据え付けることができる。
【0019】
本発明の実施形態によれば、取外ツールの例えば側部にスロット状開口を設け、可撓性レバーにはこのスロット状開口を通るよう突起を設け、またジコロトロンユニット内にてワイヤアセンブリの位置を保持、固定しているアンカに面するよう且つ取外ツールのスロット状開口と連通するよう孔を設けたため、可撓性レバーの突起をこれらスロット状開口及び孔を介しアンカに直接的又は間接的に作用させることができる。
【0020】
本発明の実施形態によれば、少なくとも取り外されたワイヤアセンブリを通せる大きさの頂部開口を収蔵箱に設ける一方、後に図示するように取外ツールには頂部開口及び底部開口を設け、またこの取外ツールの頂部開口を、ジコロトロンユニットを受け止めて保持することができるよう構成し、同じくその底部開口を、ワイヤアセンブリが通り抜け収蔵箱の開口に達するよう構成したため、取外ツールの頂部開口によりジコロトロンユニットを受け止めワイヤ取外操作によってワイヤアセンブリを外し取外ツールの底部開口及び収蔵箱の頂部開口を介してそのワイヤアセンブリを収蔵箱へと移すことができる。
【0021】
本発明の実施形態によれば、ジコロトロンユニットをその中に嵌め込んで据え付けることができる形状を有する取外ツールと、ジコロトロンユニットに設けられた孔(ジコロトロンユニット内ワイヤアセンブリ位置を保持固定するアンカに整列して設けられた孔)と位置が揃うように取外ツールの両端に互いに位置を揃えて設けられた可撓性レバー及びスロット状開口と、このスロット状開口に位置が揃うように可撓性レバーに設けられた突起と、その頂部開口上に取外ツールが配置される収蔵箱とを、機能的に組み合わせた装置構成としたため、その可撓性レバーを押して突起を動かしスロット状開口内に挿通させ、ジコロトロンユニットの孔を介するアンカへの作用又は接触によってそのアンカを外すことができ、従って上述の通り、ジコロトロンユニットから使用済みのワイヤアセンブリを外してリリースさせることができる。
【0022】
本発明の実施形態によれば、リリースされたワイヤアセンブリが通り抜けられる大きさの頂部開口を有する収蔵箱と、収蔵箱の頂部開口の直上に配置固定され複数の側面、複数の端面、頂面及び底面を有する取外ツールと、取外ツールの頂面及び底面に設けられた開口と、取外ツールの複数の側面のうち少なくとも1個において互いに隣接形成された可撓性レバー及びスロット状開口と、可撓性レバーが操作される(例えば押される)とスロット状開口を通ることとなるよう可撓性レバーに設けられた突起とを、機能的に組み合わせた装置構成としたため、ジコロトロンユニット内ワイヤアセンブリ位置を取外可能に保持固定するアンカに面するようジコロトロンユニットに設けられた孔に対し、スロット状開口の位置を揃えて機能的に連携させ、ワイヤアセンブリ取外操作を行い突起をアンカと直接的又は間接的に接触させそのアンカを外すことにより、ジコロトロンユニットから使用済みワイヤアセンブリを取り外すことができる。取外ツール及び収蔵箱は、取り外されたワイヤアセンブリを受け取り収蔵することができる限界に達するまでは、使用し続けることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1にワイヤアセンブリの典型例1を示す。このワイヤアセンブリ1はワイヤ電極2及び複数個のアンカ3を有している。ワイヤ電極2は、アンカ3により両端から引っ張られその姿勢を保っている。各アンカ3には、所定位置を占めるよう複数個のグリッパ4が固着されている。このように、図示したワイヤアセンブリ1は、ワイヤ電極2、複数個のアンカ3及び複数個のグリッパ4から構成されている。
【0024】
図2Aにジコロトロンユニットの典型例6を示す。このジコロトロンユニット6は、頂部開口7、底面5及び複数の側面8を有するU字ハウジングを備えており、U字ハウジングの側面8には複数個の孔9が形成されている。これらの側部孔9の位置は、ワイヤアセンブリ1がU字ハウジング内に装着されているとき、そのワイヤアセンブリ1の各アンカ3及びこれに連なるグリッパ4のすぐ側に位置し、それらと機能的に連携するように、定められている。即ち、その側部孔9に嵌っているグリッパ4を動かすとジコロトロンユニット6からアンカ3が外れ更にはワイヤアセンブリ1全体がリリースされるように、各側部孔9の位置が設定されている。より詳細には、まず、ワイヤアセンブリ1に支障が生じたこと例えばそのワイヤアセンブリ1が損傷したことが判明した場合、ジコロトロンユニット6をひっくり返して上下逆さまにする。これによって頂部開口7が下に向くので、その状態で、ジコロトロンユニット6を取外ツール10(図3参照)に嵌め込む。このとき、ワイヤアセンブリ1はそのグリッパ4によって側部孔9に固定されており、これによってジコロトロンユニット6内におけるワイヤアセンブリ1の位置が保持されているが、グリッパ4を外せばワイヤアセンブリ1を動かせる状態にある。また、ジコロトロンユニット6の側部孔9の位置は取外ツール10の側部スロット11の位置と揃っており、側部孔9は側部スロット11と連通しているので、可撓性レバー13に連なって設けられている突起12例えばピンを、側部孔9及び側部スロット11からなる連通孔に通すことができる。そのようにすれば、側部孔9からグリッパ4が外れる(図4A及び図4B参照)。
【0025】
図2Bにアンカ3及びこれに連なる複数個のグリッパ4の端面を示す。図示の如くグリッパ4は傾斜面20を有している。ワイヤアセンブリ1を取り外す際、この傾斜面20は、差し込まれる突起12の先端を受け止める。
【0026】
図3に本発明の一実施形態に係る取外装置を示す。この図に示されているのは、ジコロトロンユニット6を上下逆さまにしその頂部開口7を取外ツール10に向けて嵌め込む直前の状態である。この図には現れていないが、ジコロトロンユニット6内には、取り外したいワイヤアセンブリ1が収容されている。この状態から取外ツール10内にジコロトロンユニット6を嵌め込んで着座させると、ジコロトロンハウジングに設けられている側部孔9の位置と、取外ツール10に設けられている側部スロット11の位置とが揃う(そのように位置を定めてある)。この状態で可撓性レバー13を内側に押し込むと、突起12が側部孔11及び側部スロット11内に入り込みグリッパ4に接触し、そのグリッパ4がつながっているアンカ3がジコロトロンユニット6から外れる。この操作を両端の可撓性レバー13について行って両端のアンカ3を外せば、図1に示したワイヤアセンブリ1全体がジコロトロンユニット6から外れ、収蔵箱14の頂部16に設けられた開口15を通りその収蔵箱14内に落入する。即ち、古くなった使用済みのワイヤアセンブリ1が収蔵箱14内に落入しその中に捉えられる。なお、図3においては理解促進のため収蔵箱14の頂部開口15を示してあるが、実際にはこの開口15のすぐ上にある取外ツール10の底部開口17により覆われているので収蔵箱14の頂部開口15は見ることができない。収蔵箱14の頂部開口15を図示してあるのはあくまで理解促進のためと了解されたい。
【0027】
図4A及び図4Bに、本実施形態の仕組みをより詳細に説明するため簡略化した図を示す。これらの図においては、ジコロトロンユニット6が上下逆さまに取外ツール10内に嵌め込まれており、従ってその底面5が上を、頂部開口7が下をそれぞれ向いた状態で、ジコロトロンユニット6が取外ツール10内に嵌り座っている。特に、図4Aにおいては、ジコロトロンユニット6内に装着されているアンカ3付のワイヤアセンブリ1が、ピン状の突起12によって外されようとしている。グリッパ4は側部孔9に嵌り込んでいるので、可撓性レバー13を内側に押して突起12を動かし、側部スロット11及び側部孔9に通して図示の如くグリッパ4に接触させることにより、グリッパ4を側部孔9から、従ってアンカ3をジコロトロンユニット6から、外すことができる。2個のアンカ3を共に外せば、ワイヤアセンブリ1全体がジコロトロンユニット6のハウジングからリリースされ、図3に示した収蔵箱14の頂部開口15を通りその収蔵箱14内に落入する。
【0028】
より詳細には、図4Aに示すようにジコロトロンユニット6を取外ツール10の頂部開口18に挿入すると、アンカ3によって押しのけられるリリースアーム19が撓み、従ってこのリリースアーム19からアンカ3へとそのアンカ3を押さえつける(退ける)方向の力が加わる。このプリロード即ちアンカ3を押さえつける力が助力となるため、アンカ3をリリースさせるための突起12の操作は容易に開始できる。アンカ3をリリースするためリリース用の突起12を押すと、その突起12からグリッパ14特にその傾斜面20へと力が加わり、これによってグリッパ4が内側へと動く。このとき、上述の通りリリースアーム19からアンカ3に対し押さえつける方向の力が加わっているので、ジコロトロンハウジングの側部孔9からグリッパ4の先端が外れた時点即ちアンカ3がリリースされた時点で、リリースアーム19からの力によってアンカ3が下方に押され、そのアンカ3は回転しながらの落下を開始する。
【0029】
ジコロトロンユニット6のU字ハウジングの頂部開口7は取外ツール10の頂部開口18に嵌っているので、ジコロトロンハウジングの側部孔9からグリッパ4の先端が外れると、アンカ3及びグリッパ4は図4Bに示すように回転しながらの落下を開始する。リリース用のピン状の突起12が元の位置に戻った後も、リリースアーム19は引き続きアンカ3の落下及び回転をアシストする。ジコロトロンハウジングの両端にある側部孔9からグリッパ4の先端が外れると、ワイヤアセンブリ1は自由落下し始め、取外ツール10の底部開口17及び収蔵箱14の頂部開口15を通って収蔵箱14内に落入する。
【0030】
図5に、図3に例示した取外装置の頂面を示す。この図に示すように、また先に図4A及び図4Bにも示したように、取外ツール10は頂部開口18及び底部開口17を有している。頂部開口18はジコロトロンユニット6を受け止める開口、底部開口17は外れたワイヤアセンブリ1が通る開口である。即ち、取外ツール10の頂部開口18にジコロトロンユニット6が嵌め込まれている状態で可撓性レバー13を内向きに押すと、突起12によって側部孔9からアンカ3が外される(図4A及び図4B並びに対応する説明を参照)。両可撓性レバー13の操作によって外された支障あるワイヤアセンブリ1は、取外ツール10の底部開口17及び図3に示した収蔵箱14の頂部開口15を通り、収蔵箱14内に落入する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】典型的なワイヤアセンブリ、特にジコロトロンハウジングひいてはジコロトロンユニットから取り外された状態を示す図である。
【図2A】ジコロトロンハウジング及びそれから取り外したワイヤアセンブリを分解して示した図である。
【図2B】アンカ及びそれに取り付けられているグリッパの端面を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る取外システム、特にその構成要素である収蔵箱及びその上に実装される取外ツールを示す図である。
【図4A】古くなり機能しなくなったワイヤアセンブリを本発明の一実施形態に係る取外システムを用いジコロトロンユニットから取り外す操作、特にアンカが外れる前の状態を示す図である。
【図4B】古くなり機能しなくなったワイヤアセンブリを本発明の一実施形態に係る取外システムを用いジコロトロンユニットから取り外す操作、特にアンカが外れた後の状態を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る取外ツールの頂面を示す平面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 ワイヤアセンブリ、2 ワイヤ電極、3 アンカ、4 グリッパ、5,7,8,9 ジコロトロンユニットの底面,頂部開口,側面,側部孔、6 ジコロトロンユニット、10 取外ツール、11,17,18 取外ツールの側部スロット,底部開口,頂部開口、12 突起例えばピン、13 可撓性レバー、14 収蔵箱、15,16 収蔵箱の頂部開口,頂部、19 リリースアーム、20 グリッパの傾斜面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
古びて使えなくなったワイヤアセンブリをジコロトロンユニットから取り外すための装置であって、
その内部にジコロトロンユニットを嵌め込み据え付けることができるようジコロトロンユニットと概ね合致する形状及び少なくともジコロトロンユニットより大きな寸法を有する取外ツールと、その頂部に取外ツールが配置固定される収蔵箱であって取外ツールの配置先となる開口を有する収蔵箱と、を備え、
取外ツールの各端に、ワイヤアセンブリをジコロトロンユニットから取り外せるよう可撓性レバーが設けられた装置。
【請求項2】
使用済みのワイヤアセンブリをジコロトロンユニットから取り外すための装置であって、
その内側へのジコロトロンユニットの嵌め込み及び据え付けが可能な形状を有する取外ツールと、その上に取外ツールが配置される収蔵箱であって取外ツール配置用の開口を有する収蔵箱と、を備え、
ジコロトロンユニット内でワイヤアセンブリを保持するアンカにその位置を揃えてジコロトロンユニットに設けられた孔に対しそれらの位置が揃うよう、またスロットと突起の位置が互いに揃うよう、取外ツールの各端にスロット、可撓性レバー及びその突起が設けられ、
可撓性レバーが押されると突起が動きスロット及び孔を介した直接的又は間接的な接触によりアンカひいてはワイヤアセンブリがジコロトロンユニットから外れる装置。
【請求項3】
使用済みのワイヤアセンブリをジコロトロンユニットから取り外すための装置であって、
複数の側面、複数の端面、頂部開口及び底部開口を有する取外ツールと、リリースされたワイヤアセンブリが通れる大きさの頂部開口を有しその頂部開口の直上に取外ツールが配置固定される収蔵箱と、を備え、
取外ツールの側面のうち少なくとも1個に、ジコロトロンユニット内でワイヤアセンブリを取外可能に保持するアンカに近接配置されたジコロトロンユニットの孔と連携するよう複数個のスロットが、またスロットに近接して複数個の可撓性レバーが、更にワイヤアセンブリ取外操作時に可撓性レバーが押されたときスロットを通りアンカに直接的又は間接的に接触してアンカを外すよう複数個の突起が、それぞれ配置された装置。
【請求項4】
請求項3記載の装置であって、取外ツールが、ワイヤアセンブリ取外により空になったジコロトロンユニットをリリースできるよう構成された装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−95688(P2007−95688A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−262108(P2006−262108)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】