説明

ジシランの転化方法

本発明の主題は、一般式(1) RaSi2Cl6-a (1)のジシランの製造方法において、一般式(2) RbSi2Cl6-b (2)[前記式中、Rは、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表し、aは、1、2又は3の値を表し、bは、4、5又は6の値を表す]のジシランを含有する混合物を、酸化アルミニウム触媒の存在でハロゲン化水素と反応させ、前記酸化アルミニウム触媒は、酸化アルミニウム100質量部に対して、塩化アルミニウム1〜10質量部、及び酸化マグネシウム、酸化銅、酸化亜鉛及びそれらの混合物から選択される金属酸化物0〜10質量部を含有するジシランの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化水素を用いて塩素基及びアルキル基を有するジシランからアルキル基を接触分解する方法に関する。
【0002】
70℃を超える沸点を有する、塩化メチルとケイ素との反応からの高沸点留分(高沸点物)は、いわゆる「分解可能なジシラン」であるジメチルテトラクロロジシラン及びトリメチルトリクロロジシランを含有し、これらのジシランは公知の方法で簡単に、ハロゲン化水素を用いてアミン接触によりモノシランに分解することができる。4、5又は6個のメチル基を有する他のジシランは、この方法では使用できず、従って「分解不能のジシラン」とも言われる。多数の特許が、上記高沸点物をモノマーのアルキルクロロシランへ転化させることに取り組んでいる。記載された全ての方法は極めて手間がかかり、高い装置的な困難性と関連している。例えば、EP635510Aには、ハロゲン化水素及び塩化アルミニウム含有触媒を用いて250℃より高い温度で、前記高沸点物を分解させてモノシランにすることを記載している。
【0003】
H. Sakurei et. al.(Aluminium chloride-catalyzed reactions of organosilicon Compounds II, tetrahydron letters no. 45, pp. 5493-5497, 1966, pergamon press ltd.)は、部分的に塩化アセチルの添加下での液相でのジシランの不連続的転化を記載している。
【0004】
本発明の主題は、一般式(1)
aSi2Cl6-a (1)
のジシランの製造方法において、
一般式(2)
bSi2Cl6-b (2)
[前記式中、
Rは、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表し、
aは、1、2又は3の値を表し、
bは、4、5又は6の値を表す]のジシランを含有する混合物を、酸化アルミニウム触媒の存在でハロゲン化水素と反応させ、前記酸化アルミニウム触媒は、酸化アルミニウム100質量部に対して、塩化アルミニウム1〜10質量部、及び酸化マグネシウム、酸化銅、酸化亜鉛及びそれらの混合物から選択される金属酸化物0〜10質量部を含有する、ジシランの製造方法である。
【0005】
上記方法は、アルキル富有のジシラン、例えばヘキサメチルジシラン、ペンタメチルクロロジシラン及びテトラメチルジクロロジシランの活用を簡単に、障害が少なくかつ連続的に行うことを可能にする。
【0006】
この方法の場合に上記アルキル基はハロゲン化水素を用いてルイス酸性に接触させて分解されるため、いわゆる分解可能なジシランが生じ、アミン分解の循環路に供給することができる。この反応は発熱性に進行するため、この反応器には、熱の搬出を保証する条件が課せられるだけである。
【0007】
好ましくは、この方法の場合に、ハロゲン化水素として塩化水素が使用される。
【0008】
好ましくは、基Rは、1〜6個の炭素原子を有する。特に、基Rはメチル基又はエチル基である。上記シラン(2)は、相互に任意の比率で存在することができる。同様に、上記シランは、上記転化を妨害しない、蒸発可能な他の物質との混合物の形で存在することもできる。
【0009】
好ましい生成物は、ジアルキルテトラクロロジシラン及びトリアルキルトリクロロジシランである。上記酸化アルミニウムは、アルファ−酸化アルミニウム又は好ましくはガンマ−酸化アルミニウムであることができる。この酸化アルミニウム触媒は、粉末として又は好ましくは成形品として使用することができる。
【0010】
好ましくは、上記酸化アルミニウム触媒は、酸化アルミニウム100質量部に対して、少なくとも1質量部、特に少なくとも3質量部、及び最大で10質量部、特に最大で6質量部の塩化アルミニウムを有する。上記酸化アルミニウム触媒は、酸化アルミニウム100質量部に対して、5質量部まで、特に2質量部までの金属酸化物を有することができる。金属酸化物又は混合酸化物として、マグネシウム、銅及び亜鉛の金属の全ての任意の酸化物又は混合酸化物を使用することができる。特に、酸化マグネシウムが好ましい。
【0011】
上記酸化アルミニウム触媒は、好ましくは少なくとも100m2/g、特に好ましくは少なくとも230m2/g及び好ましくは最大で600m2/gのBET表面積を有する。
【0012】
上記酸化アルミニウム触媒は、好ましくは少なくとも0.2cm3/g、特に好ましくは少なくとも0.5cm3/g及び好ましくは最大で1.5cm3/gの細孔容積を有する。
【0013】
好ましくは、酸化アルミニウム触媒として、塩化アルミニウムで被覆されている、酸化アルミニウム−金属酸化物担体が使用される。上記塩化アルミニウム被覆は、Al23の塩化水素での活性化によりin-situで作成することができる。
【0014】
上記方法は、ハロゲン化水素過剰で実施され、好ましくは最大で、化学量論的に計算される2倍量のハロゲン化水素で実施される。
【0015】
上記方法は、好ましくは少なくとも150℃、特に好ましくは少なくとも180℃、殊に少なくとも200℃及び好ましくは最大で370℃、特に好ましくは最大で350℃、更に特に好ましくは最大で280℃、殊に最大で240℃で実施される。上記方法は、好ましくは少なくとも1bar、特に好ましくは少なくとも2bar、殊に少なくとも4bar及び好ましくは最大で30bar、特に好ましくは最大で15bar、殊に最大で10barで実施される。
【0016】
本発明による方法は、不連続的に又は好ましくは連続的に実施することができる。
【0017】
上記方法のための反応器として、固体触媒を用いて容易に取り扱うことができる温度調節可能な全ての装置が適している。特に好ましくは、適切な温度管理を行うことができる伝熱体循環路を備えた管型反応器が使用される。
【0018】
上記の式の上記の全ての記号は、それぞれ相互に無関係に上記式の意味を有する。全ての式中で、ケイ素原子は四価である。
【0019】
次の実施例及び比較例において、その都度他に記載のない限り、全ての量の記載及びパーセントの記載は質量に対し、かつ全体の反応は6.5bar(絶対)の圧力及び300℃の温度で実施される。
【0020】
この実施例の反応のために、及び塩化アルミニウム約5質量%を有しかつ200m2/gのBET表面積及び0.5cm3/gの細孔容積を有する、ガンマ−酸化アルミニウムからなる触媒ストランド成形体1リットルを備えた、公称幅50の伝熱体加熱された管型反応器を使用した。
【0021】
実施例3の場合には、この触媒は更に0.8質量%のMgを酸化物の形で有していた。沸点範囲70〜160℃を有する使用されたシラン留分は、反応されるべき成分及び副生成物、例えば多様なアルキル(C2及びそれ以上)−メチル−クロロシラン、クロロメチルシロキサン及び炭化水素の変動する割合を有している。
【0022】
実施例1:
テトラメチルジクロロジシラン、ペンタメチルクロロジシラン及びヘキサメチルジシランからなる混合物70%及び副成分30%を有するジシラン含有留分を、分解されるべきメチル基の0.9Mol/hの流量(約170g/h)で、1.6倍の塩化水素過剰量で220℃の反応温度及び5.5barの加圧で、ジメチルテトラクロロジシラン及びトリメチルトリクロロジシランについてのジシラン転化率96%に達する。
【0023】
実施例2:
テトラメチルジクロロジシラン、ペンタメチルクロロジシラン及びヘキサメチルジシランからなる混合物55%及び副成分45%を有するジシラン含有留分を、分解されるべきメチル基の0.75Mol/hの流量(約170g/h)で、1.6倍の塩化水素過剰量で220℃の反応温度及び5.5barの加圧で、ジメチルテトラクロロジシラン及びトリメチルトリクロロジシランについてのジシラン転化率77%に達する。
【0024】
実施例3:
テトラメチルジクロロジシラン、ペンタメチルクロロジシラン及びヘキサメチルジシランからなる混合物55%及び副成分45%を有するジシラン含有留分を、分解されるべきメチル基の0.66Mol/hの流量(約150g/h)で、2倍の塩化水素過剰量で220℃の反応温度及び5.5barの加圧で、ジメチルテトラクロロジシラン及びトリメチルトリクロロジシランについてのジシラン転化率87%に達する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
aSi2Cl6-a (1)
のジシランの製造方法において、
一般式(2)
bSi2Cl6-b (2)
[前記式中、
Rは、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表し、
aは、1、2又は3の値を表し、
bは、4、5又は6の値を表す]のジシランを含有する混合物を、酸化アルミニウム100質量部に対して、塩化アルミニウム1〜10質量部、及び酸化マグネシウム、酸化銅、酸化亜鉛及びそれらの混合物から選択される金属酸化物0〜10質量部を含有する酸化アルミニウム触媒の存在でハロゲン化水素と反応させる、ジシランの製造方法。
【請求項2】
前記基Rは、メチル基又はエチル基である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ハロゲン化水素として塩化水素を使用する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記酸化アルミニウム触媒は、少なくとも0.2cm3/gの細孔容量を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記酸化アルミニウム触媒は、少なくとも100m2/gのBET表面積を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記温度は180℃〜280℃である、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2013−521241(P2013−521241A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555360(P2012−555360)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052440
【国際公開番号】WO2011/107360
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】