ジフェニルカーボネートの製造方法
温室効果ガス(例えば、二酸化炭素)からのジアリールカーボネートの製造を提供し得るジアリールカーボネートの製造方法が開示されている。開示されている方法は、有利にはジエチルカーボネート及びジアリールカーボネートの製造を統合して、ジメチルカーボネートからジアリールカーボネートを製造するときに通常必要とされるような溶媒をベースとする抽出蒸留の必要を排除し、分離装置及び原材料使用の統合を提供し、前記方法に対する運転及び資本要件を低減させる。幾つかの実施形態において、本明細書中に開示されている方法は例えばエタノール使用に関して本質的に閉ループで運転され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている実施形態は、概してアルコーリシス、エステル交換及び不均化を含む反応のための方法及び固体触媒に関する。より具体的には、本明細書中に開示されている実施形態は、固体触媒を用いるアルコーリシス、エステル交換及び/または不均化を介する有機カーボネート、有機カルバメート及び他の生成物の連続製造方法に関する。特に、本明細書中に開示されている実施形態はジアリールカーボネートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エステル交換、すなわちエステルのアルコールとの交換反応(アルコーリシス反応)は酸及び塩基触媒により触媒され得る反応の重要なクラスである。エステル交換の例には、一般的には反応物質、生成物またはその両方として有機カーボネート及びカルボン酸エステルを伴う化学反応が含まれる。他のエステル交換反応にはトリグリセリドのエタノールまたはメタノールとのエステル交換によるバイオディーゼルの製造が含まれる。アルコーリシスは、一般的には化合物の1つ以上の官能基をアルコール(アルキルまたはアリールヒドロキシル化合物)のアルコキシまたはアリールオキシ基で置換する反応である。アルコーリシスの例には、アミン基をアルコキシ基で置換して有機カルバメート及びカーボネートを製造する尿素を伴う化学反応が含まれる。
【0003】
カルボン酸エステルは、酸及び塩基触媒の存在下でカルボン酸エステルをアルコールとエステル交換することにより製造される。硫酸(均一)及び酸樹脂(固体)が好ましい酸触媒である。可溶性塩基、例えばNaOH及びKOH、各種Na/Kアルコキシドまたはアミン(均一)、及び各種塩基樹脂(固体)が好ましい塩基触媒である。触媒はカルボン酸エステルのエステル交換のための均一触媒または不均一触媒であるが、塩基触媒は通常酸触媒よりもより有効である。例えば、長鎖アルキルメタクリル酸エステルは塩基触媒の存在下でのメタクリル酸メチルの長鎖アルコールとの交換反応により製造される。
【0004】
バイオディーゼルは、米国特許Nos.6,712,867及び5,525,126に開示されているナトリウムメトキシドまたは酢酸カルシウムのような均一塩基触媒、及び酸化亜鉛とアルミナの混合酸化物またはアルミン酸亜鉛(アルミナに担持させ、高温でか焼させた酸化亜鉛)のような塩基固体触媒を用いることにより植物油(トリグリセリド)をメタノールまたはエタノールとエステル交換して製造され得る。固体アルミン酸亜鉛触媒は、例えば米国特許No.5,908,946及び米国特許出願公開No.2004/0034244に開示されている。
【0005】
米国特許No.5,908,946は、固体触媒(例えば、酸化亜鉛またはスピネル型アルミン酸亜鉛)の存在下で植物油または動物油をアルコールと反応させることによりエステルを製造するための2ステップ方法を開示している。第1ステップでは、トリグリセリドを高い変換率、通常90%より高い率で変換させる。第2ステップでは、残留するトリグリセリド、ジグリセリド及びモノグリセリドを変換させる。エステル交換は230〜245℃の温度、約5.2バール(約725psia)で実施される。高い変換率には供給混合物の流速は比較的遅くなければならない(0.5h−1以下の空間速度)。
【0006】
米国特許No.6,147,196は、不均一触媒(アルミン酸亜鉛)の存在下で植物または動物油から高純度の脂肪酸エステルを製造する方法を開示している。米国特許出願公開No.2004/0034244は、不均一触媒(アルミン酸亜鉛)の存在下で植物または動物油及びアルコールからアルキルエステルを製造するためのプロセッシングスキームに関する。エステルは2つの固定床反応器でのエステル交換により製造される。トリグリセリドの高変換率は第1反応器で得られた。グリセロールを第1エステル交換反応流から分離した後、残留する未変換トリグリセリド、ジグリセリド及びモノグリセリドを第2反応器においてエステルに変換させる。エステル交換は200℃、約62バール(900psia)及び0.5h−1空間速度で実施される。
【0007】
W.Xieら(J.Mol.Cat.A:Chem.,246,2006,p.24−32)は、か焼Mg−Alハイドロタルサイト触媒の存在下での大豆油のメタノーリシスを検討している。500℃でのか焼から誘導されるMg/Al比が3.0のか焼ハイドロタルサイトはこの反応のために高い塩基度及び優れた触媒活性を与えることができる触媒である。彼らは、各種温度でか焼したハイドロタルサイトの可溶性塩基度を報告している。
【0008】
ディーゼルエンジンはガソリンエンジンよりもより多くの微粒子及びNOxを放出する。ジアルキルカーボネートはディーゼルエンジン排気中の微粒子を低減させるのに有効であると報告されている。米国特許No.5,954,280によれば、尿素及びアンモニアがNOx低減剤として有効である。しかし、ディーゼルエンジンに対して尿素及びアンモニアを使用することは実際的な問題または不都合を有する。米国特許No.6,017,368はエチルカルバメートがディーゼルエンジンからNOxを低減させる際に有効であると開示している。米国特許No.4,731,231(1988)は、昇華シアヌル酸がNOxを除去または低減させるための有効な物質であり得ることを報告している。シアヌル酸を高温で昇華させると、NOxの除去に関与すると考えられているイソシアヌル酸(HNCO)が生ずる。EP 0363681及びEP 0636681は、低発煙潤滑剤の成分としての脂肪族トリオールまたはテトラオールのカーボネートエステルを開示している。
【0009】
N−アリールメチルカルバメートは、触媒の非存在下では反応速度が遅いので、典型的には塩基触媒の存在下で芳香族アミンをジメチルカーボネートと反応させることにより製造される。N−アリールメチルカルバメートを高温で分解すると、芳香族イソシアネートが生じ得る。例えば、トルエンジカルバメートは触媒の存在下でトルエンジアミンをジメチルカーボネートと反応させることにより製造される。トルエンジカルバメートを高温で分解すると、トルエンジイソシアネートが生ずる。
【0010】
有機カーボネート(炭酸のジエステル)は溶媒、アルキル化剤、カルボニル化剤、共重合剤、燃料添加剤等として使用され得る有用な化合物である。ジメチルカーボネート(DMC)は、ジフェニルカーボネート(DPC,ジアリールカーボネート)を製造するための原料として通常使用されている重要なジアルキルカーボネートである。DMCを商業製造するために各種方法がある。1つの商業方法では、DMCは均一触媒の存在下で環状カーボネートをメタノールとエステル交換することにより製造されている。特許は環状カーボネートをメタノールとエステル交換するための均一触媒または不均一触媒の使用を開示しているが、多分当該方法のための不均一触媒のサイクル寿命が短いためにDMCの製造のために不均一または固体触媒を使用することは現在商業的に実施されていない。通常DPCをジオール(例えば、ビスフェノールA)と共重合すると、ポリカーボネートが製造される。ポリカーボネートはメモリーディスク、風防ガラス、エンジニアリングプラスチックス、光学材料等のような各種特殊用途において使用されている。
【0011】
非ホスゲンプロセスを用いてジアリールカーボネートを製造するための一般的技術は、一連の複数の反応蒸留反応器を用いて、DMCをフェノールとエステル交換してメチルフェニルカーボネート及びメタノールを製造した後、均一有機金属触媒の存在下でメチルフェニルカーボネートを不均してDPC及びDMCを製造することにより芳香族カーボネート(例えば、DPC)を製造している。好ましい均一触媒はチタンアルコキシドである。前記方法は、例えば米国特許Nos.4,045,464、4,554,110、5,210,268及び6,093,842に開示されている。均一触媒は生成物流の最も重質な部分から固体として回収され、これはその後再循環させるために可溶性均一触媒に変換され得る。
【0012】
DPCの製造において均一触媒を使用することは多くの場合均一触媒の生成物からの分離が必要であり、特に触媒を比較的高い供給物速度で使用している場合がそうである。このこと及びジアリールカーボネートを製造するための均一触媒の使用に関連する他の欠点を解決するために、米国特許Nos.5,354,923及び5,565,605、並びにPCT出願公開WO 03/066569は不均一触媒を用いる代替方法を開示している。例えば、米国特許No.5,354,923は、DECまたはDMC及びフェノールからのEPC、MPC及びDPCの製造を立証するために粉末状の酸化チタン触媒を開示している。米国特許No.5,565,605は、4族元素を含有するミクロ細孔性材料をエステル交換及び不均化用触媒として開示している。しかしながら、粉末状固体触媒は、典型的にはDPCまたはメチルフェニルカーボネートを大量に商業製造するためには不適であるかまたは余り好ましくない。WO 03/066569は、2ステップ固定床プロセスでシリカ上に酸化チタンを担持させることにより作成した不均一触媒の存在下でDMCをフェノールと反応させることによるDPCの連続製造方法を開示している。
【0013】
Z−H Fu and Y.Ono(J.Mol.Catal.A.Chemical,118(1997),p.293−299)及びJP出願No.HEI 07−6682は、DMCをフェノールとエステル交換してMPCとし、無機担体(例えば、シリカ、ジルコニアまたはチタニア)上に担持させたMoO3またはV2O5の存在下でMPCをDPCに不均化することによるジフェニルカーボネートを製造するための不均一触媒を開示している。エステル交換及び不均化は、共生成物を蒸留により除去しながら反応器及び蒸留塔からなる反応器−蒸留塔において実施されている。
【0014】
米国特許出願公開Nos.2007/0093672(’672)(現在、米国特許No.7,378,540)及び2007/0112214(’214)(現在、米国特許No.7,288,668)は、不均一触媒の存在下でのDPCを含めたジアリールカーボネートのような各種有機カーボネートの製造方法を開示している。’214公開明細書では、必要な反応(エステル交換及び不均化)を不均一触媒の存在下で液相中で実施している。エステル交換及び不均化反応のための複数の固定床反応器を1つの蒸留カラムに接続し、蒸留カラムではエタノール及びDECのような軽質化合物を頭上フラクションとして除去し、DPCを含めた高沸点化合物を混合底部フラクションとして除去する。次いで、底部フラクションからDPCを回収する。
【0015】
’672公開明細書は、エステル交換及び不均化のための各種固体触媒を用いて二相(蒸気及び液体)中で必要な反応を実施することによるジアリールカーボネート及びジアルキルカーボネートの製造方法を開示している。有機カーボネートを製造するための化学反応は一連の固定床反応器において、望ましくない平衡反応を所望生成物にシフトするために液相中の軽質共生成物を蒸気相に分離しながら実施される。この方法は、EPC(エチルフェニルカーボネート)のようなアルキルアリールカーボネート及びDPC(ジフェニルカーボネート)のようなジアリールカーボネートを製造するために特に有用である。この方法はジアルキルカーボネート(例えば、DEC)を製造するためにも有用である。一連の固定床反応器は横抜き流及び戻り流を介して単一蒸留カラム上の異なる位置で接続している。蒸留カラムは一連の反応器中の最後の反応器の上及び一連の反応器中の第1反応器の下に分離段をも含み得る。不均一触媒は、多孔質担体(例えば、シリカゲル)上にTi、Zr、Nb、Hf、Ta、Mo、V、Sb等の1つまたは2つの金属酸化物を堆積させることにより作成され得る。不均一触媒は、表面ヒドロキシル基またはヒドロキシル基とアルコキシ基の混合物を有する多孔質担体上にTi、Zr、Nb、Hf、Ta、Mo、V、Sb等の元素からの1つ以上の有機金属化合物をグラフトすることによっても作成され得る。
【0016】
不均一触媒を用いて有機カーボネートを製造するための各種の他の方法は米国特許Nos.5,231,212、5,498,743及び6,930,195に開示されている。
【0017】
P.Ballら(C1 Mol.Chem.,Vol.1,1984.p.95−108)は、各種均一または不均一触媒の存在下でのジアルキルカーボネート製造の化学を研究した。例えば、ジメチルカーボネートは尿素のアルコーリシスにより製造されている。ジブチルスズジメトキシドは特に有効な触媒として報告されている。不均一触媒は助触媒(例えば、4−ジメチルアミノピリジン及びPPh3)の存在下での化学に対しても有効であると報告されている。報告されている不均一触媒はAl2O3、Sb2O3及びシリカである。溶融SiO2はでないが、PPh3の存在下で触媒となる。
【0018】
米国特許No.7,074,951では、ジアルキルカーボネートは均一スズ錯体触媒の存在下、高沸点の電子供与原子を含有する溶媒(例えば、トリグリム)の存在下で尿素をアルコールでアルコーリシスにかけることにより製造されている。この特許はDMCを約1500時間連続的に製造できることも立証している。
【0019】
EP 1629888及びD.Wangら(Fuel Processing Tech.,88,8,2007,p.807−812)は、DMC及びDECが酸化亜鉛及びシリカ上に担持させた酸化亜鉛の存在下で製造され得ることを開示している。これらの刊行物は触媒安定性または触媒サイクル寿命について全く触れていない。
【0020】
エステル交換及び不均化反応中の触媒失活は触媒表面及び孔上に重質ポリマーが沈着することにより生じ得る。ポリマー沈着による触媒失活率は、反応混合物中のアルキルアリールカーボネート及びジアリールカーボネート、またはその両方の濃度に応じて上昇する。不均一触媒を用いるポリマーの解重合は’672公開明細書に開示されている。しかしながら、解重合では固体触媒活性が部分的にしか回復され得ない。
【0021】
米国特許Nos.6,768,020及び6,835,858は、固体触媒(例えば、アルミナ、シリカ等上に担持させた酸化ランタン及び酸化亜鉛)の存在下でプロピレンカーボネートをDMC及び/または水と反応させることによるジアルキルカーボネート及び共生成物プロピレングリコールの製造方法を開示している。米国特許No.6,768,020では、大量の酸化ランタンを担体(例えば、アルミナ及びシリカ)上に堆積させることにより触媒不安定性を部分的に解決している。
【0022】
触媒失活を補償するための好ましい技術は、触媒が失活するにつれて反応温度を上昇させる。残念ながら、この技術はしばしば不均一触媒の失活を促進させる。
【0023】
不均一触媒を用いる商業製造のためには固体触媒の長く安定な性能が通常要求されている。触媒コスト、触媒交換に関連するダウン時間及び当業界で公知の他の要因により、不均一触媒はプロセスに応じて典型的には3ヶ月、6ヶ月または1年以上の最短寿命を有していることを要求している。
【0024】
上に挙げた複数の特許及び刊行物に記載されているように各種エステル交換反応の不均一触媒作用が可能であるが、これらの文献は触媒の長寿またはサイクル寿命を報告していない。本発明者は、不均一触媒が望ましくないほど短いサイクル寿命しか有していないことを経験した。
【0025】
従って、改良された触媒性能を有する不均一触媒を用いるエステル交換及び/または不均化プロセスに対する要望がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】米国特許第6,712,867号明細書
【特許文献2】米国特許第5,525,126号明細書
【特許文献3】米国特許第5,908,946号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0034244号明細書
【特許文献5】米国特許第6,147,196号明細書
【特許文献6】米国特許第5,954,280号明細書
【特許文献7】米国特許第6,017,368号明細書
【特許文献8】米国特許第4,731,231号明細書(1988)
【特許文献9】欧州特許出願公開第0363681号明細書
【特許文献10】欧州特許出願公開第0636681号明細書
【特許文献11】米国特許第4,045,464号明細書
【特許文献12】米国特許第4,554,110号明細書
【特許文献13】米国特許第5,210,268号明細書
【特許文献14】米国特許第6,093,842号明細書
【特許文献15】米国特許第5,354,923号明細書
【特許文献16】米国特許第5,565,605号明細書
【特許文献17】国際公開第03/066569号
【特許文献18】特開平07−6682号公報
【特許文献19】米国特許出願公開第2007/0093672号明細書(現在、米国特許第7,378,540号明細書)
【特許文献20】米国特許出願公開第2007/0112214号明細書(現在、米国特許第7,288,668号明細書)
【特許文献21】米国特許第5,231,212号明細書
【特許文献22】米国特許第5,498,743号明細書
【特許文献23】米国特許第6,930,195号明細書
【特許文献24】米国特許第7,074,951号明細書
【特許文献25】欧州特許出願公開第1629888号明細書
【特許文献26】米国特許第6,768,020号明細書
【特許文献27】米国特許第6,835,858号明細書
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】W.Xieら,J.Mol.Cat.A:Chem.,246,2006,p.24−32
【非特許文献2】Z−H Fu and Y.Ono,J.Mol.Catal.A.Chemical,118(1997),p.293−299
【非特許文献3】P.Ballら,C1 Mol.Chem.,Vol.1,1984.p.95−108
【非特許文献4】D.Wangら,Fuel Processing Tech.,88,8,2007,p.807−812
【発明の概要】
【0028】
1つの態様で、本明細書中に開示されている実施形態は、反応物質及び微量の可溶性有機金属化合物を固体アルコーリシス触媒を含む反応器に供給することを含むアルコーリシスプロセスに関し、前記した可溶性有機金属化合物及び固体アルコーリシス触媒は各々独立してII族〜VI族元素を含む。固体触媒及び有機金属化合物は幾つかの実施形態において同一のII族〜VI族元素を含み得る。
【0029】
別の態様で、本明細書中に開示されている実施形態は、アルコール、及び尿素、有機カルバメート及び環状カーボネートの少なくとも1つを含むアルコーリシス反応物質を固体アルコーリシス触媒を含む第1反応ゾーンに供給し、可溶性有機金属化合物を第1反応ゾーンに供給することを含むジアルキルカーボネートの製造方法に関し、前記した固体アルコーリシス触媒及び可溶性有機金属化合物は各々独立してII族〜VI族元素を含む。
【0030】
別の態様で、本明細書中に開示されている実施形態は、芳香族ヒドロキシ化合物及びジアルキルカーボネートを固体エステル交換触媒を含む第1反応ゾーンに供給し、可溶性有機金属化合物を第1反応ゾーンに供給することを含むジアリールカーボネートの製造方法に関し、前記した固体エステル交換触媒及び可溶性有機金属化合物は各々独立してII族〜VI族元素を含む。
【0031】
別の態様で、本明細書中に開示されている実施形態は、芳香族ヒドロキシ化合物及びジアルキルカーボネートを固体エステル交換触媒を含む第1反応ゾーンに供給し、可溶性有機金属化合物を第1反応ゾーンに供給することを含むアルキルアリールカーボネートの製造方法に関し、前記した固体エステル交換触媒及び可溶性有機金属化合物は各々独立してII族〜VI族元素を含む。
【0032】
別の態様で、本明細書中に開示されている実施形態は、アルコール及びグリセリドを固体エステル交換触媒を含む第1反応ゾーンに供給し、可溶性有機金属化合物を第1反応ゾーンに供給することを含むバイオディーゼルの製造方法に関し、前記した固体エステル交換触媒及び可溶性有機金属化合物は各々独立してII族〜VI族元素を含む。
【0033】
別の態様で、本明細書中に開示されている実施形態は、芳香族ヒドロキシ化合物及びジアルキルカーボネートを固体エステル交換触媒を含む第1反応ゾーンに供給し、可溶性有機金属化合物を第1反応ゾーンに供給することを含むアルキルアリールカーボネートの製造方法に関し、前記した固体エステル交換触媒及び可溶性有機金属化合物は各々独立してII族〜VI族元素を含む。
【0034】
別の態様で、本明細書中に開示されている実施形態は、アルコール及びグリセリドを固体エステル交換触媒を含む第1反応ゾーンに供給し、可溶性有機金属化合物を第1反応ゾーンに供給することを含むバイオディーゼルの製造方法に関し、前記した固体エステル交換触媒及び可溶性有機金属化合物は各々独立してII族〜VI族元素を含む。
【0035】
別の態様で、本明細書中に開示されている実施形態は、固体アルコーリシス触媒上に沈着したポリマー材料を除去し、固体触上に触媒活性金属を再堆積させることを含む使用済固体アルコーリシス触媒の再活性化方法に関する。
【0036】
別の態様で、本明細書中に開示されている実施形態は、第1反応ゾーンにおいてエポキシド及び二酸化炭素を反応させて、環状カーボネートを含む第1反応生成物を形成し;第2反応ゾーンにおいて第1エステル交換触媒の存在下で環状カーボネートをエタノールとエステル交換して、ジエチルカーボネート及びグリコールを含む第2反応生成物を形成し;第2反応生成物を分離して、第1ジエチルカーボネートフラクション及び第1グリコールフラクションを回収し;第3反応ゾーンにおいて第2エステル交換触媒の存在下で第1ジエチルカーボネートフラクションの少なくとも一部をアリールヒドロキシ化合物とエステル交換して、エチルアリールカーボネート及びエタノールを含む第3反応生成物を形成し;第3反応生成物を分離して、エチルアリールカーボネートフラクション及び第1エタノールフラクションを回収し;第4反応ゾーンにおいて不均化触媒の存在下でエチルアリールカーボネートフラクションの少なくとも一部を不均化して、ジアリールカーボネート及びジエチルカーボネートを含む第4反応生成物を形成し;第4反応生成物を分離して、ジアリールカーボネートフラクション及び第2ジエチルカーボネートフラクションを回収し;第1エタノールフラクションの少なくとも一部を第2反応ゾーンに再循環させ;第2ジエチルカーボネートフラクションの少なくとも一部を第3反応ゾーンに再循環させることを含むジアリールカーボネートの製造方法に関する。
【0037】
別の態様で、本明細書中に開示されている実施形態は、第1反応ゾーンにおいてアンモニア及び二酸化炭素を反応させて、尿素を含む第1反応生成物を形成し;第2反応ゾーンにおいて第1エステル交換触媒の存在下で尿素をエタノールとエステル交換して、ジエチルカーボネート及びアンモニアを含む第2反応生成物を形成し;第2反応生成物を分離して、第1ジエチルカーボネートフラクション及び第1アンモニアフラクションを回収し;第3反応ゾーンにおいて第2エステル交換触媒の存在下で第1ジエチルカーボネートフラクションの少なくとも一部をアリールヒドロキシ化合物とエステル交換して、エチルアリールカーボネート及びエタノールを含む第3反応生成物を形成し;第3反応生成物を分離して、エチルアリールカーボネートフラクション及びエタノールフラクションを回収し;第4反応ゾーンにおいて不均化触媒の存在下でエチルアリールカーボネートフラクションの少なくとも一部を不均化して、ジアリールカーボネート及びジエチルカーボネートを含む第4反応生成物を形成し;第4反応生成物を分離して、ジアリールカーボネートフラクション及び第2ジエチルカーボネートフラクションを回収し;エタノールフラクションの少なくとも一部を第2反応ゾーンに再循環させ;第2ジエチルカーボネートフラクションの少なくとも一部を第3反応ゾーンに再循環させることを含むジアリールカーボネートの製造方法に関する。
【0038】
他の態様及び作用効果は以下の記載及び添付の特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本明細書中に開示されている実施形態に従うジアリールカーボネートの製造方法を図示する単純化したプロセスフロー図である。
【図2】本明細書中に開示されている実施形態に従うジアリールカーボネートの製造方法を図示する単純化したプロセスフロー図である。
【図3】本明細書中に開示されている実施形態に従うジアリールカーボネートの製造方法を図示する単純化したプロセスフロー図である。
【図4】均一触媒を用いるエステル交換のグラフ表示である。
【図5】本明細書中に開示されている実施形態に従って触媒を再活性化後の触媒活性のグラフ表示である。
【図6】本明細書中に開示されている実施形態に従って微量の可溶性有機金属化合物を反応器に添加したときの固体触媒活性のグラフ表示である。
【図7】本明細書中に開示されている実施形態に従って微量の可溶性有機金属化合物を反応器に添加したときの不均一触媒活性を固体触媒活性とグラフで比較する。
【図8】本明細書中に開示されている実施形態に従って微量の可溶性有機金属化合物を反応器に添加したときの固体触媒活性のグラフ表示である。
【図9A】本明細書中に開示されている実施形態に従って微量の可溶性有機金属化合物を反応器に添加したときのそれぞれEPC及びDPCの製造中の固体触媒活性のグラフ表示である。
【図9B】本明細書中に開示されている実施形態に従って微量の可溶性有機金属化合物を反応器に添加したときのそれぞれEPC及びDPCの製造中の固体触媒活性のグラフ表示である。
【図10】エステル交換反応を実施しながら触媒を同時にグラフトした場合のDPCの製造中の不均一触媒活性のグラフ表示である。
【図11】本明細書中に開示されている実施形態に従う固体触媒の非存在下でのEPCのDPC及びDECへの変換をグラフで図示する。
【図12】本明細書中に開示されている実施形態に従ってDEC及びプロピレングリコールを製造するための固体触媒の存在下でのプロピレンカーボネートのエタノールでのアルコーリシスからの結果をグラフで示す。
【図13】均一触媒を用いるDECの製造からの結果を示す。
【図14】本明細書中に開示されている実施形態に従って固体触媒を用いるDECの製造からの結果を示す。
【図15】本明細書中に開示されている実施形態に従って固体触媒を用いてジアルキルカーボネートを製造するための単純化したプロセスフロー図である。
【図16】本明細書中に開示されている実施形態に従って固体触媒を用いるエチルカルバメートからのDECの製造からの結果を示す。
【図17】本明細書中に開示されている実施形態に従って固体触媒を用いるカノーラ油のメタノールでのアルコーリシスからの結果を示す。
【図18】本明細書中に開示されている実施形態に従って固体触媒の存在下でプロピレンカーボネートをエタノールでアルコーリシスを実施することによりDEC及びプロピレングリコール共生成物を連続製造するための単純化したプロセスフロー図である。
【図19】本明細書中に開示されている実施形態に従うジフェニルカーボネート(DPC)の製造方法を図示する単純化したブロックフロー図である。
【図20】本明細書中に開示されている実施形態に従ってジフェニルカーボネート(DPC)を製造するための統合方法を図示する単純化したブロックフロー図である。
【図21】本明細書中に開示されている実施形態に従ってDEC及びプロピレングリコールを製造するための固体触媒の存在下でのプロピレンカーボネートのエタノールでのアルコーリシスからの結果をグラフで示す。
【図22】本明細書中に開示されている実施形態に従って固体触媒を用いるエチルカルバメートからのDECの製造からの結果を示す。
【図23】DPC製造方法における中間体生成物EPCを製造するためのDECのフェノールとの接触エステル交換からの結果をグラフで示す。
【図24】DPC及びDECを製造するためのEPCの接触不均化からの結果をグラフで示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
1つの態様で、本明細書中に開示されている実施形態は、固体触媒を用いるアルコーリシス、エステル交換及び/または不均化プロセスに関する。本明細書中で使用されている「アルコーリシス」は、有機ヒドロキシル化合物(アルコール)が2つの反応物質の1つとして関与して、生成物及び共生成物を製造する各種化学反応を表すように称される。アルコーリシスは、分子の炭素原子とヘテロ原子Yの結合(C−Y)のアルコール分子(ROH)による切断と定義され得る。アルコーリシスは分子のカルボニル基が関与する反応であり、カルボニル基それ自身は生成物分子中に保持される。従って、C−Y結合のC原子は分子のカルボニル基の炭素原子である。一般的に、アルコーリシスは可逆反応であり、以下のように表され得る:
【0041】
【化1】
式中、Yはヘテロ原子または官能基のヘテロ原子であり、Rbはアルキル、アリール、または1個以上のヘテロ原子を有する官能基である。
【0042】
アルコーリシス反応の例は、アルコールと炭酸のジエステル、カルボン酸のエステル、尿素及びカルバメートとの反応である。ジアルキルカーボネートのフェノールでのアルコーリシス(文献では、しばしばエステル交換と称されている)により、アルキルアリールカーボネート及びアルコールが製造される。カルボン酸のエステルのアルコールでのアルコーリシスにより、エステルのアルキル基がアルコール分子のアルキル基で交換されて、新しいアルコール分子が製造される。尿素のアルコールでのアルコーリシスにより、有機カルバメート及びアンモニアが製造される。有機カルバメートのアルコールでのアルコーリシスにより、ジアルキルカーボネート及びアンモニアが製造される。アルコーリシス反応の具体例は、EPC及びエタノールを製造するためのDECのフェノールとのエステル交換、有機カルバメートまたはジアルキルカーボネート及びアンモニアを製造するための尿素または有機カルバメートのアルコールでのアルコーリシス、メチルエステル(バイオディーゼル)及びグリセリンを製造するためのトリグリセリドのメタノールとのエステル交換である。
【0043】
非対称炭酸ジエステルの不均化及びジアルキルカーボネートの有機アミンとの反応では反応物質としてアルコールが関与しないが、RA基(Rはアルキルまたはアリールであり、Aは酸素原子または窒素原子である)が分子レベルで反応メカニズムに関与しているので、これらのタイプの反応も便宜上アルコーリシス反応と定義される。従って、各種実施形態を説明するために必要によりエステル交換及び不均化がアルコーリシスと同義語として使用されている。上に挙げたアルコーリシス反応の幾つかは以下の反応で表され得る:
【0044】
【化2】
別の態様で、本明細書中に開示されている実施形態は、固体触媒の触媒活性を長いサイクル時間の間維持するための新規技術に関する。本明細書において固体触媒のサイクル時間またはサイクル寿命は、固体触媒を意図する化学反応のために中断することなく連続的に使用し得る時間であると定義される。例えば、6ヶ月連続使用後触媒の触媒再生または交換が必要であるならば、触媒サイクル寿命または時間は6ヶ月である。本明細書中に開示されている技術によれば、アルコーリシスプロセスのための固体触媒は各種実施形態において触媒活性を長いサイクル時間、例えば3ヶ月以上、6ヶ月以上、1年以上、1.5年以上、2年以上、またはそれ以上保持し得る。
【0045】
DECのフェノールとのエステル交換中、不均一触媒(シリカ上に担持させた酸化チタン、及びニオブと酸化チタンの混合酸化物)の失活が本発明者により観察され、’672公開明細書の試験4に報告された。触媒活性を改善するために触媒上に沈着したポリマーの解重合も’672公開明細書の試験6Bで立証された。しかしながら、解重合により触媒再生しても、元の触媒活性は部分的にしか回復しなかった。触媒失活の種類はこの時点で十分に解明されていなかった。
【0046】
驚くことに、DPCを製造するための不均一触媒のような不均一エステル交換触媒は2つの主な原因、すなわちポリマー沈着及び触媒活性な金属成分の浸出のために失活することが知見された。環状カーボネートのアルコールとのエステル交換によりジアルキルカーボネートを製造するための不均一触媒は、主に触媒活性な金属成分が浸出するために失活する。
【0047】
不均一触媒を用いるアルコーリシスまたはエステル交換反応中、固体触媒上の触媒活性な金属成分が各種多孔質担体上に固定化した不均一金属酸化物触媒及び有機金属触媒から反応条件下で反応媒体に浸出して、永久的な触媒失活が生ずる恐れがある。これにより、各種有機カーボネートを連続製造するために使用され得る商業的不均一触媒にとって許容できないほど短い触媒寿命となる。加えて、上述したように、ポリマー沈着はエステル交換触媒の性能にも悪影響を与える恐れがある。触媒失活の別のモードは毒作用である。
【0048】
商業用固定床反応器中に使用しようとする不均一触媒はサイクル時間及び全使用時間に関して妥当な長寿を有していなければならない。毒作用がないこと、あったとしても不均一触媒へのポリマーの沈着が全くまたは殆どないこと、不均一触媒からの活性金属成分の溶出速度が触媒の長寿を決定し得る。
【0049】
本明細書中に開示されている実施形態は、一定またはほぼ一定の固体触媒活性を各種有機化合物を商業規模で連続製造するために許容される長時間にわたって維持するための方法に関する。この方法は、各種有機カーボネート(例えば、ジアリールカーボネート、ジアルキルカーボネート及びアルキルアリールカーボネート)を連続製造するために、他のエステル交換反応において(例えば、バイオディーゼルの製造のために)特に有用であり得る。本明細書中に開示されている特定実施形態は、有機カーボネート、カルボン酸エステルまたは有機カルバメートを連続製造するための大型商業用反応器に対して安定な触媒活性を長時間維持するための方法に関する。
【0050】
固体触媒の触媒活性を長いサイクル時間の間維持するための新規技術は、固体触媒含有反応器への液体供給物流に微量の可溶性活性金属成分を添加すると、一定またはほぼ一定の触媒活性が長いサイクル時間にわたって得られ得ることである。予期せぬことに、固体触媒含有反応器への液体供給物流に微量の可溶性活性金属成分を添加すると、固体触媒からの金属浸出のための金属損失が例えば触媒上に活性金属成分を再堆積させることにより効果的に相殺され、その結果一定またはほぼ一定の触媒活性が長いサイクル時間にわたって得られることが知見された。例えば、本発明者による現在の研究は、微量の可溶性活性金属化合物を固定床に供給される液体供給物流に添加することにより、または固体触媒を含む床反応器を動かすことにより触媒活性が1年以上の間維持され得ることを示している。
【0051】
固体触媒の活性を維持するために必要な活性金属化合物の量は、具体的活性金属成分、反応物質及び他の供給物成分に応じて1ppm未満〜約3000ppmの範囲であり得る。例えばエステル交換による有機カーボネートの製造のための供給物中の活性金属の量は、均一触媒のみを用いる比較方法の場合に供給される均一触媒の濃度よりも1桁、2桁またはそれ以上の桁少なくてもよい。活性金属化合物は、触媒反応ゾーンに入る液体の全重量に基づいて幾つかの実施形態では1〜400重量ppm、他の実施形態では10〜300重量ppm、他の実施形態では15〜200重量ppm、他の実施形態では20〜150重量ppm、さらに他の実施形態では30〜100重量ppmの割合で供給され得る。
【0052】
例えば、固体触媒がII〜VI族金属のような活性金属を含む場合、固体触媒の活性を維持するために微量の同一のII〜VI族活性金属を有する可溶性有機金属化合物が反応器に供給され得る。特定例として、固体触媒が活性金属としてチタンを含む場合には、チタンを有する可溶性有機金属化合物を使用し得る。
【0053】
一連の反応器を使用する場合、例えばエステル交換反応器及び不均化反応器を連続して使用する場合には、それぞれの反応器において触媒活性を維持するために微量の可溶性有機金属化合物を一方または両方の反応器に供給し得る。幾つかの実施形態において、微量の可溶性有機金属化合物を一連の反応器中の第1反応器のみに供給することにより、固体触媒活性は各反応器において維持され得る。例えば、エステル交換反応器がチタン及びニオブの固体混合酸化物触媒を含み、不均化反応器がシリカ上にグラフトした固体チタンアルコキシドを含有する場合、微量の可溶性有機チタン化合物または可溶性チタン化合物(例えば、チタンオキシアルコキシド)を第1反応器に添加すると、両タイプの固体触媒のサイクル時間が延長され得る。
【0054】
所望により、可溶性有機金属化合物を回収し、再循環してもよい。幾つかの実施形態において、再循環のために活性金属を反応器流出液流から回収することが経済的でないことがある。回収する場合、反応器流出液流中の活性金属成分は重質底部流から固体材料として回収され、可溶性有機金属化合物に変換され得、これは例えば回収した固体材料を有機カーボネートまたは有機カーボネートとアルコールの混合物と高温で反応させることにより反応器に再循環され得る。回収された有機金属化合物は、例えば金属アルコキシド、金属アルコキシアルキルカーボネート(炭酸モノエステルの金属塩)、金属オキシアルコキシドまたはその混合物であり得る。
【0055】
こうして達成された長いアルコーリシス固体触媒寿命により、アルコーリシス及び/または他のエステル交換プロセスの中で有機カーボネートを製造するための商業上実用的な固体触媒プロセスが生じ得る。長い触媒サイクル時間及び少ない分離要件(ユニット運転がより少なく、その結果潜在的な資本及び運転コストが節約される)のために大きな節約が実現され得る。
【0056】
固体触媒上のポリマー沈着も触媒活性の損失を引き起こし得る。このような場合、失活した触媒は本明細書中及び米国特許出願公開No.2007/0093672に開示されている解重合技術により再生され得る。解重合も金属損失を引き起こし得る。不均一触媒の触媒活性を元の活性の許容できるレベルまで回復させない解重合後では、不均一触媒は例えば本明細書中に開示されている触媒再活性化技術により金属を再堆積させる必要があり得る。
【0057】
触媒失活がポリマー沈着及び金属浸出の両方により生起している場合には、触媒活性は本明細書中に開示されている触媒再生及び再活性化技術により回復され得る。触媒再活性化は、第1ステップにおける解重合及び表面コンディショニング及び第2ステップにおける金属再堆積の2ステップからなる。第1ステップでは、失活した固体触媒を解重合にかけて固体触媒上のポリマーを除去し、その後乾燥により表面コンディショニングにかける。第2ステップでは、活性金属成分の再堆積を金属損失を補償するために実施する。失活した触媒の再活性化は以下により詳細に検討する。
【0058】
触媒再活性化及び/または再生を考える場合、触媒再活性化及び回復プロセス中連続製造することができるように複数の反応器を平行に設けることが有利であり得る。
【0059】
上記したように、本明細書中に開示されている固体アルコーリシス、エステル交換及び不均化プロセスは、反応物質及び微量の可溶性活性金属化合物を固体触媒を含む反応器に供給し、固体触媒の存在下で反応物質を接触させて、反応物質の少なくとも一部を加アルコール分解、エステル交換または不均化させることを含み得る。前記したアルコーリシス、エステル交換または不均化プロセスには、他の反応の中で例えばジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、アルキルアリールカーボネート、バイオディーゼル、有機エステル及びN−アリールアルキルカルバメートを製造するための反応が含まれ得る。
【0060】
先にアルコーリシス、エステル交換及び不均化反応に関して概略的に記載してきたが、このプロセスの有機カーボネートの製造への敷衍を以下に詳記する。先に言及したように、米国特許出願公開2007/0093672(’672)及び2007/0112214(’214)は不均一触媒を用いる有機カーボネートの製造方法を開示している。これらの各々は参照により本明細書に組み入れる。
【0061】
有機カーボネート及び有機カルバメートの製造
有機カーボネートまたは有機カルバメートは、固体触媒または2つの異なる固体触媒の存在下で単一または複数の反応器システムを用いることにより連続的に製造され得る。1つ以上の固体触媒が長い触媒サイクル時間を得るために微量の可溶性活性金属化合物を反応器の供給物流に添加することを必要とする。固体触媒は任意の物理的形状であり得、多孔質担体上に固定化した各種有機金属化合物及び/または適当な多孔質担体上に担持させたII、III、IV、V及びVI族の1つの元素または複数の元素を含有する酸化物を含み得る。触媒は酸触媒または塩基触媒のいずれかであり得る。担持させた触媒上の触媒活性な金属または金属成分の全量は、幾つかの実施形態において約0.02重量%〜約20重量%、他の実施形態において約0.05重量%〜約10重量%の範囲であり得る。本明細書中に開示されている実施形態において有用な任意のタイプの固体触媒材料は、II〜VI族からの1つ以上の元素及び有機構造体を含む金属−有機構造体(MOF)である。MOFは各種実施形態に従う固体触媒及び触媒担体の両方として役立ち得る。
【0062】
本明細書中に開示されている実施形態において使用される反応器は任意の物理デバイスまたは2つ以上のデバイスの組合せを含み得る。反応器は蒸気−液体分離及び蒸気/液体トラフィックのための各種内部デバイスを含み得る。
【0063】
供給物流に微量の可溶性活性金属化合物を添加することにより、安定な触媒活性が驚くほど長いサイクル時間の間維持され得る。例えば、エチルフェニルカーボネートとジフェニルカーボネートの混合物を製造するための固定床反応器へ供給される流れに微量の可溶性活性金属化合物を添加すると、14ヶ月以上のオンストリーム時間のサイクル時間が生じ得る。安定な触媒性能により、所望生成物のより高い生産性が得られ得る。一連の反応器を有する実施形態では、微量の活性金属成分を第1反応器への供給物流に対してのみ添加してもよい。平行する複数の反応器システムでは、微量の活性金属成分をすべての反応器に添加してもよい。
【0064】
活性金属成分は、周期表のII、III、IV、V及びVI族の金属を1つ以上含有する化合物または化合物の混合物を含み得る。活性金属の例には、Mg、Ca、Zn、La、Ac、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Nb、W、Sn、Pb、Sb等が含まれる。活性金属化合物は反応混合物中に可溶性であるか、または少なくともエマルション/コロイド状溶液を形成しなければならない。供給物流中の微量金属の量は、再循環させるためにプロセス流から金属を回収することが経済的に不必要であるくらい十分少量でよく、そうするように選択してもよい。
【0065】
必要ならば、反応器中の失活した触媒をすぐに使用中の別の反応器と交換したり、使用を再開するように現場で比較的短時間で再活性化し得る。従って、本明細書中に開示されている方法の実施形態は、触媒のサイクル寿命及び他の要因に応じてスペアの反応器を必要とすることがある。
【0066】
本明細書中に開示されている方法は、ジアリールカーボネート(例えば、ジフェニルカーボネート(DPC))、アルキルアリールカーボネート(例えば、エチルフェニルカーボネート(EPC))、またはジアルキルカーボネート(例えば、ジエチルカーボネート(DEC)またはジメチルカーボネート(DMC))を連続製造するために特に有用であり得る。ジアリールカーボネートを製造するための反応は複数の反応ゾーン、例えば第1及び第2反応ゾーンにおいて実施され得る。第1反応ゾーンは主にジアルキルカーボネートを芳香族アルコールとエステル交換してアルキルアリールカーボネートを製造するために役立つが、少量のジアリールカーボネートも製造され得る。第2反応ゾーンはアルキルアリールカーボネートを不均化してジアリールカーボネート及びジアルキルカーボネートを製造するために役立ち得る。第2反応ゾーン中に固体触媒を存在させる必要はないが、固体触媒を使用するように選択してもよい。
【0067】
ジアルキルカーボネート(例えば、DMCまたはDEC)は、環状カーボネート(例えば、プロピレンカーボネートまたはエチレンカーボネート)のメタノールまたはエタノールとのエステル交換を同様に実施することによっても製造され得る。ジアリールカーボネート及びジアルキルカーボネートを製造する反応は、生成物を反応混合物から回収するための材料分離ユニットを備えた複数の反応器システムにおいて実施される。未反応の反応物質及び中間体は再循環のために回収されるか、または第2不均化または第2エステル交換を実施することにより終了され得る。エステル交換ゾーンからの液体反応混合物中の未反応フェノールは、アルキルフェニルカーボネートの不均化を実施する前または不均化を実施した後に分離され得る。加えて、反応系から副生成物アルキルフェニルエーテルをパージするためには各種オプションがある。反応器と材料分離ユニットを適切に配置することは当業者の知識の範囲内である。
【0068】
反応物質及び生成物が液体及び蒸気である混合相系として反応を実施して、平衡を所望方向にシフトさせることが好ましい。或いは、反応生成物の沸点が反応を実施するための好ましい温度範囲よりも高いために平衡反応をシフトさせても全くまたは殆ど利点がないような場合には反応を液相中で実施してもよい。
【0069】
本明細書中に開示されている実施形態は、ジアルキルカーボネート(例えば、ジエチルカーボネートまたはジメチルカーボネート)をフェノールとエステル交換し、アルキルアリールカーボネート(例えば、エチルフェニルカーボネートまたはメチルフェニルカーボネート)を不均化して、ジフェニルカーボネートを製造することにより有機カーボネート(例えば、エチルフェニルカーボネート、メチルフェニルカーボネート及びジフェニルカーボネート)を製造する際にも有用であり得る。
【0070】
本明細書中に開示されている実施形態は、環状カーボネートのアルコールとのエステル交換によりジアルキルカーボネート(例えば、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネート)を製造する際にも有用であり得る。ジアルキルカーボネートを製造するための他の実施形態では、ジアルキルカーボネートは固体触媒の存在下での尿素のアルコールでのアルコーリシスにより製造され得る。例えば、米国特許No.7,074,951では、ジアルキルカーボネートは高沸点の電子供与原子含有溶媒の存在下で均一有機スズ錯体触媒を用いて製造されている。前記方法は本明細書中に開示されている実施形態に従って固体触媒を用いて実施され得る。各種有機カルバメート(例えば、N−アリールアルキルカルバメート)を本明細書中に開示されている実施形態に従って固体触媒の存在下でジアルキルカーボネートを芳香族アミンと反応させることにより製造することが有利であり得る。
【0071】
任意のタイプの反応器を本明細書中に記載されている反応を実施するために使用し得る。有機カーボネートまたは有機カルバメート反応を含む反応を実施するのに適した反応器の例には、蒸留カラム反応器、分壁蒸留カラム反応器、慣用の環状固定床反応器、バブルカラム反応器、場合により蒸留カラムを備えたスラリー反応器、パルスフロー反応器、スラリー固体触媒がカラムを流下する接触蒸留カラム、またはこれらの反応器の組合せが含まれ得る。
【0072】
本明細書中に開示されている実施形態において有用な複数の反応器システムは一連の複数の反応器または第1反応ゾーンに対して平行な複数の反応器を含み得る。生成物が反応物質から中間体生成物(例えば、アルキルアリールカーボネート)を介して製造される場合には、第1反応ゾーンは主に中間体を製造するために役立ち得るが、第1反応ゾーンにおいて少量の最終反応生成物が同時に製造され得る。
【0073】
アルコール及びジアルキルカーボネートをストリッピングした後、第1反応ゾーンからのプロセス流を第2反応ゾーンに流入させ、そこでジアリールカーボネートが共生成物ジアルキルカーボネートと一緒に製造される。軽質反応生成物を触媒反応ゾーンからストリッピングしながら、同時にエステル交換を実施して、平衡反応を先の反応にシフトさせてもよい。
【0074】
有機カーボネートまたは有機カルバメートを製造する反応は、典型的には幾つかの実施形態では約104℃〜約260℃(約220°F〜約500°F)、他の実施形態では121℃〜約232℃(約250°F〜約450°F)の範囲の温度で実施される。反応の圧力は反応物質及び生成物の沸点、使用しようとする反応器のタイプ、及び液体または二相(蒸気/液体)が反応ゾーン中に存在するかに依存する。通常、反応器圧力は、幾つかの実施形態では減圧〜約22バール(約319psia)、他の実施形態では約0.005バール〜約17バール(0.1psia〜約250psia)の範囲であり得る。実施形態のクラスでは、反応を反応生成物の分離を妨げない適当な溶媒を用いて実施してもよい。
【0075】
特定実施形態では、本明細書中に開示されている実施形態は、ジアルキルカーボネート及び芳香族ヒドロキシ化合物からジアリールカーボネートを連続製造するために、例えばジアルキルカーボネート及びフェノールからジフェニルカーボネート(DPC)を製造するために特に有用である。DPCを製造するための1つのルートは、1つ以上の固体触媒の存在下でのジエチルカーボネート(DEC)のフェノールとの反応である。DECを用いることによりDPCを製造する利点には、共沸混合物から材料を分離する必要がないのでエネルギーの節約及びプラント建設のための原料の節約が含まれ得る。すべての材料が製造するためにエネルギーを必要とする。よって、建築原料及びエネルギーの節約は「よりグリーン」であると見なされる。対照的に、DPCを製造するための現在の商業的な非ホスゲン方法は原材料の1つとしてDMCを使用している。DMC及びメタノールは共沸混合物形成プロセス流から溶媒抽出蒸留により分離されなければならない。抽出蒸留ユニットの運転はエネルギー集約的である。DMCを介してDPCを製造することは可能であるが、エネルギー及び材料の節約のためにDECを使用することが好ましいことがある。
【0076】
本明細書中に開示されている実施形態は、環状カーボネートのアルコール(例えば、エタノールまたはメタノール)とのエステル交換によりジアルキルカーボネートを製造するためにも有用であり得る。
【0077】
ジアルキルカーボネート及びフェノールからのDPCの製造は、2つの反応ステップ、すなわち第1反応ゾーンにおけるエステル交換、その後の第2反応ゾーンにおける不均化を含む。反応を以下に例示し得る。
【0078】
【化3】
正味反応は次のように以下のように例示され得る。
【0079】
【化4】
反応(1)は、アルキルフェニルカーボネート及びアルコールを製造するためのジアルキルカーボネートのフェノールとのエステル交換である。反応(2)は、ジフェニルカーボネート及びジアルキルカーボネートを製造するためのアルキルフェニルの不均化を含む。両反応ステップは平衡反応である。しかしながら、不均化はエステル交換よりも熱力学的に非常により有利である。エステル交換は主に単一反応器または複数の反応器システムを含み得る第1反応ゾーンにおいて実施される。次いで、不均化反応は主に第2反応ゾーンにおいて実施され得る。
【0080】
環状カーボネートのアルコールとのエステル交換によるジアルキルカーボネートの製造は2ステップ平衡反応でもある。環状カーボネートのアルコールとのエステル交換のために酸及び塩基触媒を使用し得る。
【0081】
本明細書中に開示されている実施形態によれば、触媒サイクル寿命を延長させるために微量の可溶性金属化合物を反応器供給物流に添加する。ジアルキルカーボネート及びジオールを製造するための環状カーボネートのアルコールとのエステル交換のためには、固体の塩基または酸触媒のいずれかを使用し得る。アルコールの一部を水で置換することによりエステル交換を実施することもできる。或いは、エステル交換を第1ステップで実施した後、第2ステップで未変換環状カーボネート及び中間体を水−アルコール混合物と反応させて、グリコールを主要反応生成物として製造してもよい。水を添加すると、環状カーボネートの変換率またはジオールの生産性が実質的に上昇する。しかしながら、水の利点はジアルキルカーボネートの収率の低下で実現される。
【0082】
有機カーボネート及び有機カルバメート製造のために有用な触媒
上記したように、有機カーボネート及び有機カルバメート製造のために有用な触媒は、1つ以上の周期表のII、III、IV、V及びVI族の活性金属を有する担持固体触媒を含み得る。本明細書中に開示されている実施形態において有用な1つのタイプの触媒は上記元素の有機金属化合物または複数の有機金属化合物を多孔質担体上に固定化して含む。本明細書中に開示されている実施形態において有用な多孔質担体は表面官能基、例えばヒドロキシル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基とアルコキシ基の混合物、塩素等を含み得る。担体の例にはシリカ、シリカ−アルミナ、酸化チタン、酸化ジルコニウムまたはゼオライト材料(例えば、MCM−41、MCM−48、SBA−15等)、及び結合剤及びゼオライトを含む複合材料が含まれ得る。
【0083】
代替担体には炭素及び/または炭素質材料が含まれ得る。炭素及び炭素質担体は、先に検討したように表面上に有機金属化合物を固定化するために表面官能基(例えば、ヒドロキシル、カルボニルまたは両方)を有し得る。担持金属酸化物、水酸化物またはオキシ水酸化物触媒を作成するためには表面官能基が必要でないことがあるが、幾つかの実施形態では表面官能基が有用であり得る。炭素質担体は、炭水化物(例えば木材、ヤシ殻、澱粉、セルロース、澱粉とセルロースの混合物、糖、メチルセルロース等)を高温で制御熱脱水することにより作成され得る。炭素質担体は担持されていても、担持されていなくてもよい。担持炭素質材料を作成するためには、炭水化物を適当な多孔質担体上に堆積させた後、不活性雰囲気または不活性ガスと少量の酸素、蒸気またはその混合物からなる雰囲気中高温(例えば、約250℃〜1000℃の範囲の温度)で制御熱脱水し得る。炭素質材料に対する担体には無機材料、例えばアルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニア、シリカ−アルミナを含めた合成及び天然クレー、及び当業界で公知の他の担体が含まれ得る。
【0084】
幾つかの実施形態では、有機金属化合物を担体と接触させて固定化する前に担体は孔中の凝縮水を除去する必要があり得る。本発明では、担体上の凝縮水は担体の化学組成に応じて担体を乾燥ガス流または真空中で約50℃〜約400℃の範囲の温度で乾燥することにより除去され得る水含量と定義される。本発明で使用される固体触媒は、1つまたは2つの有機金属化合物を固定化することにより、または1つまたは複数の可溶性金属化合物を多孔質固体担体上に活性触媒部位を有する表面官能基と反応させることにより作成され得る。固定化は、例えばグラフト、連結、吸着等のような技術を用いることにより実施され得る。例えば、多孔質担体上の有機金属化合物(例えば、チタンアルコキシド)に対する作成技術は’672公開明細書に開示されている。
【0085】
本明細書中に開示されている実施形態において有用な第2タイプの触媒には、多孔質担体上に堆積させた金属酸化物、混合金属酸化物またはオキシ水酸化物が含まれる。このタイプの触媒の例も’672公開明細書に開示されている。
【0086】
担体は、各種固定床反応器の場合約1mm〜約5mmの範囲のサイズのペレット、押出物、球、顆粒、ハニカム等の形態であり得る。或いは、担体としてファイバーグラスまたは炭素繊維、或いはその両方からなる織布またはメッシュを構造化パッキング材料と一緒に使用するように選択し、反応器のタイプに応じて適当に成形し、適切な大きさとしてもよい。粉末またはミクロスフェア形態の担体はスラリーまたは攪拌型反応器に対して使用しようとする触媒を作成するためにも使用され得る。
【0087】
上記した第2タイプの触媒の作成には表面ヒドロキシル基を有する担体を必要としないことがある。しかしながら、シリカ上に金属アルコキシド(例えば、チタンアルコキシド)をグラフトした後、蒸気を当てるまたは加水分解する及び/または約90℃〜約500℃の温度で乾燥することにより金属水酸化物/酸化物触媒を作成するために、表面官能基を含有する担体(例えば、シリカ、炭素質材料、アルミナ等)も使用し得る。
【0088】
金属酸化物またはオキシ水酸化物触媒を作成するための別の方法は、所望の元素の塩または2つの異なる元素の塩の混合物を担体上に堆積した後、塩を金属酸化物に分解するために300℃〜1000℃の温度でか焼することを含む。
【0089】
プロセス条件下で、反応媒体中のアルキルアリールカーボネートの濃度が増加するにつれて触媒反応ゾーンにおけるエステル交換及び不均化を同時に生起し得る。上で検討した触媒失活の2つの原因、すなわち浸出及びポリマー沈着は反応条件下で同時に起こる。ポリマー沈着は触媒に対して永久的ダメージを引き起こさないが、反応条件下で不均一触媒から活性金属成分が浸出すると触媒が永久的なダメージを受ける。エステル交換の変換レベルが低かったり、アルキルアリール及びジアリールカーボネートの濃度が低いと、触媒失活は主に活性金属触媒成分の固体触媒から反応媒体への溶出に起因する。換言すると、すべての反応条件下での永久的触媒失活の原因は金属浸出である。
【0090】
エステル交換の変換率が高まるにつれて、触媒上へのポリマー沈着により触媒失活がさらに早まる。ポリマー沈着はアルキルアリール及びジアリールカーボネート(及び潜在的に微量のフェノール供給物中の及び少量の望ましくない副反応により生ずるポリヒドロキシル芳香族化合物不純物)の望ましくない副反応の結果である。従って、不均一触媒の存在下でフェノール及びジアルキルカーボネート(例えば、ジエチルカーボネートまたはジメチルカーボネート)からジフェニルカーボネートを連続的に製造するためには、(1)ポリマー沈着及び(2)活性金属触媒成分の溶出/浸出の両方に起因する触媒失活を解決する必要があり得る。ポリマー沈着は、上述したように触媒反応ゾーンにおいて変換率及び/または芳香族カーボネートの濃度をコントロールすることにより及び’672公開明細書に開示されているような触媒再活性化により解決され得る。浸出は上記したように微量の可溶性有機金属化合物を添加することにより解決され得る。
【0091】
ジアルキルカーボネートのフェノールとのアルコーリシス及び/またはエステル交換のための担体(例えば、シリカまたは炭素質材料)上への有機金属化合物または可溶性金属化合物の固定化(例えば、グラフト、連結、吸着等)は、単一反応ゾーンステップまたは複数の反応ゾーンステップで実施され得る。開示されている有機金属化合物の例には、II、III、IV、V及びVI族元素の金属アルコキシド、アルコキシクロリド、オキシアルコキシド、カルボキシレート、カーボネート等が含まれる。活性金属の例には、Mg、Ca、Zn、La、Ac、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Sn、Pb、Sb等が含まれる。各種実施形態において、スズアルコキシド、アルキルスズアルコキシド、アルキルスズ酸化物、アルキルスズ水酸化物、ジアルキルスズジクロリド、アルキルスズトリクロリド及びこれらの種の混合物、並びに金属オキシアルコキシド[(RO)nMO]及び金属アルコキシ水酸化物[(RO)nM(OH)x]、或いはこれらのオキシアルコキシド及びアルコキシ水酸化物のオリゴマーが含まれる。上記式中、MはIV、VまたはVI族元素であり、nは2、3または4であり、xは0、1、2または3であり、n+xは4、5または6である。特定実施形態において、有機金属化合物はチタンアルコキシドまたはフェノキシド、アルキルアリールチタネート、または炭酸モノエステルのチタン塩の1つ以上であり得る。金属アルコキシドには、アルコキシドまたはアリールオキシドのアルキル基の炭素鎖長及び構造に応じてモノマー、各種オリゴマー、または各種モノマーとオリゴマー種の混合物が含まれると理解されるべきである[例えば、Coordin.Chem.Rev.,2(1967),299−318;J.Chem.Soc.,3977(1955)を参照されたい]。
【0092】
本明細書中に記載されているように、遷移金属のアルコキシドにはモノマー及び各種オリゴマーのすべての種が含まれる。例えば、チタンエトキシド[Ti(OEt)4]は沸騰エタノールまたはベンゼン中でほぼトリマーとして存在するが、立体障害チタンアルコキシド(例えば、チタンイソプロキシド)は沸騰炭化水素溶液中でモノマーである。例えば、チタンイソプロポキシドは沸騰トルエン溶液中で殆どモノマーとして存在すると考えられる。
【0093】
本明細書中に開示されている各種実施形態において使用される多孔質担体は表面ヒドロキシル基、アルコキシ基またはその両方を有し得る。多孔質担体を作成するためには、多孔質金属酸化物担体(例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化モリブデン及び酸化バナジウム)を蒸気相、液相または蒸気−液体系においてアルコール、有機カーボネート(例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等)の1つ以上を含有する流れで幾つかの実施形態では約130℃〜約400℃、他の実施形態では150℃〜350℃の範囲の温度で処理し得る。前記流れは、幾つかの実施形態では0重量%〜約20重量%、他の実施形態では0重量%〜約10重量%、さらに他の実施形態では約0.005重量%〜約5重量%の水を含有し得る。水はDMC及びDEC中に殆ど溶解しないので、前記流れは水に対する溶媒として適量のメタノール及び/またはエタノールを含有し得る。市販されている表面ヒドロキシル基を有するシリカゲルまたはシリカが幾つかの実施形態において使用され得る。場合により、シリカを液体水、蒸気またはその混合物と約80℃〜約500℃の温度で処理した後、幾つかの実施形態では約70℃〜約800℃、他の実施形態では約80℃〜約500℃の温度で乾燥してもよい。
【0094】
上記した多孔質担体上に固定化した固体触媒または金属酸化物触媒を作成するためにシロキサン及び遷移金属のシロキサン化合物も使用し得る。シロキサン及びシロキサン化合物の例は、(RO)n−xM[−O−Si(O−R)3]x、M(O−SiR3)n、(R3SiO)n−2MO等(式中、各Rは独立してアルキルまたはアリール基であり、nは3、4または5であり、xは1または2であり、n+xは4、5または6であり、Mは上記したIV、VまたはVI族の遷移金属である)である。固定化により固体触媒の触媒活性が生ずる限り、他のケイ素−金属化合物が本明細書中に開示されている実施形態の範囲内である。シロキサン及び遷移金属のシロキサン化合物は’672及び’214公開明細書に開示されているプロセス配置及び反応蒸留カラム反応器において可溶性有機金属化合物としても使用され得る。固定化固体触媒を作成するために遷移金属の各種のオリゴマー及びポリマーヘテロシロキサンが使用され得、或いは各種実施形態において可溶性有機金属化合物として使用され得る。上記したように、EPCまたはMPCのDPC及びDECまたはDMCへの不均化は第2反応ゾーンにおいて固体触媒の非存在下で実施し得、有用な活性触媒種には遷移金属(例えば、Ti)のシロキサンまたはシロキサン化合物が含まれる。
【0095】
シロキサンの金属酸化物及びアルコキシドには各種オリゴマーが含まれ得る。各種オリゴマーはBradelyによる刊行物[D.C.Bradley,Coordin.Chem.Rev.,2(1967),p.299−318);J.Chem.Soc.,(1955)3977]中に見つけることができる。安定な触媒活性を得るために反応ゾーンへの供給物にこれらの化合物の1つを微量添加するように選択してもよい。
【0096】
第2反応ゾーンにおいてジアリールカーボネート及びジアルキルカーボネートを製造するために均一触媒の存在下でアルキルアリールカーボネートの不均化を実施する場合、均一触媒は上で検討したアルキルアリールチタネート、炭酸モノエステルのチタン塩及びチタンのシロキサン化合物の混合物であり得る。均一触媒はエステル交換ゾーンにおいて使用した固体触媒及び可溶性触媒に由来し得る。
【0097】
本明細書中に開示されている各種有機金属化合物は供給物流中の水分に対して感受性であるので、反応ゾーンへの供給物流中の含水量をコントロールすることが重要である。供給物流の水分含量は、幾つかの実施形態では約700ppm未満、他の実施形態では約600ppm未満である。担体上に固定化した固体金属アルコキシド触媒は、反応器の内部で現場技術により作成され得、または反応器の外部で作成され得る。現場作成のためには、所定量の適当な担体を反応器に装入した後、凝縮水の少なくとも一部を除去するために適切な温度で乾燥する。次いで、担体を1つ以上の遷移金属の可溶性金属アルコキシドまたは混合金属アルコキシドを含有する溶液と幾つかの実施形態ではほぼ周囲温度〜約260℃(500°F)、他の実施形態では約37℃〜約204℃(約100°F〜約400°F)の範囲の温度で接触させる。接触は幾つかの実施形態では約5分間〜約24時間、他の実施形態では約15分間〜約15時間実施し得、温度及び溶液中の活性金属成分の濃度に依存し得る。過剰の金属アルコキシド溶液を反応器から排出させた後、不均化またはエステル交換反応に使用する前に反応器中の触媒を溶媒(通常、金属アルコキシド溶液を調製するために使用したのと同一の溶媒)で洗浄し得る。溶媒はアルコール、エーテル、炭化水素、炭化水素とアルコールの混合物、ジアルキルカーボネートとフェノールまたはアルコールの混合物、或いはこれらすべての混合物であり得る。
【0098】
或いは、金属が周期表のII、III、IV、V及びVI族の1つ以上である金属酸化物、混合金属酸化物または金属水酸化物触媒も本明細書中に開示されている実施形態に従って使用され得る。幾つかの金属酸化物触媒が当業界で公知である。例えば、P.Iengoら,Appl.Catal.A:General,178(1999)97−109によれば、シリカ上に担持させた酸化チタン触媒はチタンイソプロポキシドをグラフトした後、蒸気を当てる/か焼することにより作成され得、元のシリカ表面が大きく修飾されてなる担持触媒により含浸または共沈殿により得たものと異なる触媒が生ずる。
【0099】
担持した金属、混合金属水酸化物またはオキシ水酸化物触媒を作成するためには、上記したグラフトした金属アルコキシド触媒を加水分解した後、約50℃〜約110℃の範囲の温度で乾燥してもよい。幾つかの実施形態では、乾燥が不要なことがある。
【0100】
非担持金属酸化物触媒のプレコンディショニングを有機カーボネートを製造する反応を実施する前に実施してもよい。プレコンディショニングは、多孔質金属酸化物触媒(例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化モリブデンまたは酸化バナジウム)を有機カーボネート(例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等)を含有する流れと幾つかの実施形態では約125℃〜約450℃、他の実施形態では約150℃〜約350℃の範囲の温度で接触させることにより実施され、有機カーボネートは蒸気相、液相または混合相中に存在させ得る。プレコンディショニングは幾つかの実施形態では約2分間〜約50時間、他の実施形態では約4分間〜約24時間実施され得る。有機カーボネートを含有する流れは水及びアルコールを含有し得、この場合水は幾つかの実施形態では0重量%以上〜約10重量%、他の実施形態では約0.005重量%〜約4重量%存在し得る。プレコンディショニングにより触媒の選択率を改善し得る。プレコンディショニング後、金属酸化物触媒を不活性ガス流中約80℃〜約300℃の温度で約2分間〜約6時間乾燥させてもよい。
【0101】
環状カーボネートをアルコールとエステル交換するために2つのタイプの混合金属酸化物触媒を使用し得る。第1タイプの混合金属酸化物触媒は、周期表のIII、IV、V及びVI族の1つ以上の元素を担体上に担持させて含み得る。第2タイプの混合酸化物には、担体上に1または2つの周期表のII族元素及びランタニドまたはアクチニドを含む固体塩基触媒が含まれる。場合により、シリカ担体上にグラフトまたは連結させた第4級水酸化アンモニウムを使用してもよい。酸化物触媒は通常アルミナまたはシリカ上に担持されており、または混合酸化物または固溶体の形態で作成される。第2タイプの固体触媒のために有用な元素にはMg、Ca、Zn、La等が含まれる。
【0102】
第2タイプの触媒の活性金属成分もエステル交換反応条件下で浸出して、触媒失活する恐れがある。実際、シリカ担体もII族活性金属成分よりもかなり遅い速度で浸出する恐れがあることが知見された。シリカ担体上のアルカリ金属不純物はシリカの反応媒体への溶出を増加させる恐れがあるので、シリカ担体中の金属不純物が少ないことが非常に望ましい。微量の可溶性有機金属化合物を供給物流に添加することにより、固定床反応器のための固体触媒のサイクル寿命を延長し得る。可溶性化合物の例には、その中でも亜鉛2−メトキシエトキシド、カルシウム2−メトキシエトキシド、亜鉛2−メトキシプロポキシド、亜鉛エトキシド、亜鉛アルコキシアルキルカーボネート、カルシウム2−メトキシプロポキシド、カルシウムエトキシド、カルシウムアルコキシアルキルカーボネート、マグネシウム2−メトキシエトキシド、マグネシウム2−メトキシプロポキシド、マグネシウムエトキシド、マグネシウムブトキシド、マグネシウムアルコキシアルカルカーボネート、ランタンアルコキシド、ランタンアルコキシアルキルカーボネート、並びにMg、Ca及びZnプロピレングリセリドまたはグリコレートが含まれる。これらの混合物を使用してもよい。
【0103】
Ca、Mg、Zn及びLaの可溶性化合物は、液相または混合相(液体及び蒸気)系中でこれらの金属の酸化物または水酸化物をアルコール、有機カーボネート、または有機カーボネートとアルコールの混合物と幾つかの実施形態では約105℃(221°F)〜約260℃(500°F)、他の実施形態では約149℃(300°F)〜約227℃(440°F)の温度で反応させることにより得られ得る。このようにして調製した溶液は、長いサイクル時間を得るべく微量のこれらの金属を反応器への供給物流に添加するために有用であり得る。固体金属アルコキシド、金属水酸化物または金属酸化物触媒上の活性金属または金属成分の全量は約0.02重量%〜約20重量%、好ましくは約0.05重量%〜約12重量%の範囲であり得る。
【0104】
改良された触媒サイクル寿命及び使用寿命
本明細書中に開示されている固体触媒は長いサイクル寿命を有し得、触媒再生及び再活性化を何度も受け得、よって長い触媒使用時間が得られ得る。本明細書中に開示されている触媒サイクル寿命の延長及び触媒再活性化の技術により、典型的には触媒が各種有機カーボネートの商業製造において有用な実験目的にとって興味深くなる。出発が担持金属酸化物触媒またはシリカ上に固定化した金属アルコキシド触媒であれ、定常状態で活性触媒はシリカ上に固定化した有機金属化合物種であると推測される。供給物中に微量の活性金属を添加する利点を説明するために、各種実験を実施し、以下により詳細に記載する。簡単に説明すると、1つの実験では、シリカゲル上に担持させた酸化チタン触媒(6重量%のTi)を約350時間使用後解重合により再生し、ジエチルカーボネートのフェノールとのエステル交換の元の活性の半分未満しか回復しなかった。使用時間中Tiの半分以上が触媒から反応媒体に浸出したことが判明した。別の実験では、シリカゲル上にグラフトしたチタンブトキシド触媒(4重量%のTi)は、エチルフェニルカーボネートの不均化のためにたった171時間使用しただけで90%以上のTiを失った。ジエチルカーボネート及びプロピレングリコールを製造するためのプロピレンカーボネートのエタノールとのエステル交換のために使用したシリカゲル上に担持させた別の酸化チタン触媒(5.7重量%)は、173時間使用後触媒上のTiの35%を失った。これらの所見から、担持酸化チタン触媒及びグラフトしたチタンアルコキシド触媒の両方が短い使用時間で触媒が永久的に失活するために、有機カーボネート(例えば、ジアルキルカーボネート、アルキルフェニルカーボネート及びジアリールカーボネート)を連続製造するための商業用反応器にとって適当でないことは極めて明らかである。有機カーボネート及び/または反応混合物は固体触媒と反応させることにより反応媒体中に可溶性有機金属化合物がゆっくり形成させるのに十分反応性であるようである。
【0105】
DMC及びDEC蒸気流が約350℃より高い温度でシリカまたは酸化チタンと反応してテトラアルキルオルトシリカ及びチタンテトラアルコキシドを形成する恐れがあることも文書で立証されている。DMC及びDECのシリカとの反応はシリカ上に触媒量のアルカリ金属が存在しているとより容易になる。従って、簡単な触媒再活性化のための技術及び触媒上の活性金属成分の一定の表面濃度を商業用反応器のために許容できる十分に長いサイクル時間維持するための方法を発見することが必要であった。
【0106】
解重合及び金属再堆積による触媒再生がポリマー沈着に関連する問題を解決する。しかしながら、解重合による再生は反応条件下で不均一触媒からの活性金属の連続浸出に関連する問題を解決できない。商業規模の反応器に適した長い触媒サイクル寿命を得るためには、活性金属の不均一触媒からの連続損失を解決しなければならない。不均一触媒からの金属浸出の影響が一連の複数の反応器システムの場合には第1反応器への供給物流に微量の活性金属化合物を添加することにより中和できることを知見した。微量の可溶性活性金属化合物を添加することにより、金属浸出と再堆積が釣り合いまたはほぼ釣り合い、固体触媒上に一定数の活性部位が効果的に維持され、その結果一定の触媒活性が長い触媒サイクル時間が得られる。第1反応器中の固体触媒から浸出する可溶性金属成分は各種金属化合物種の混合物であることを理解されたい。混合物中の金属化合物種は第1反応器に入る金属化合物種と必ずしも同一でない。第2反応器における金属浸出及び再堆積も同様に釣り合っている。平行する複数の反応器システムの場合も、第1主要反応ゾーンへの供給物流のすべてに微量の活性金属化合物を添加することが必要な場合がある。従って、触媒再活性化(現場での解重合/表面コンディショニング及び金属再堆積)し、微量の活性金属化合物を添加した後金属を再堆積させると、金属浸出及びポリマー沈着の両方を解決し得る。触媒再活性化は2つのステップ、すなわち(1)解重合/触媒表面のコンディショニング及び(2)活性金属成分の再堆積で実施され得る。チタンアルコキシドをシリカ担体表面上に固定化するためには触媒表面コンディショニングが必要である。新鮮な固定化触媒または再活性化触媒は触媒活性を連続的に損失させ、その結果サイクル時間が大型商業用反応器のためには適さない許容できないほど短い。元の触媒活性がジアルキルカーボネートのフェノールとのエステル交換のための約半分の活性に損失するのに約80〜150時間オンストリームかかり、これは商業用反応器を連続運転するためには明らかに不十分である。微量の可溶性活性金属化合物を添加し、2ステップ再活性化することにより、今回各種有機カーボネートを連続製造するために触媒サイクル寿命を延長し、触媒再活性化を複数回実施することができる。
【0107】
失活した触媒の解重合は、触媒をヒドロキシ化合物またはヒドロキシ化合物の混合物を含有する流れと現場で幾つかの実施形態では102℃(215°F)〜316℃(600°F)、他の実施形態では104℃(220°F)〜232℃(450°F)の温度で、幾つかの実施形態では約10分間〜約50時間、他の実施形態では30分間〜15時間接触させることにより実施され得る。解重合は蒸気相中、液相中、混合相中、或いは液相中の後蒸気相中またはその逆で実施され得る。解重合生成物は、フェノール、アルコール、二酸化炭素、マルチヒドロキシベンゼン、ジアルキルカーボネート、アルキルフェニルカーボネート及びより重質の化合物を含有し得る。
【0108】
触媒に対する解重合のために使用しようとするヒドロキシ化合物の例は、アルコール(好ましくは、メタノールまたはエタノール)、水またはその混合物である。メチルフェニルカーボネート及びジフェニルカーボネートを製造するための供給物の1つとしてジメチルカーボネートを使用するならば、メタノールまたは水とメタノールの混合物が解重合のために使用され得る。供給原料の1つとしてジエチルカーボネートを使用するならば、エタノールまたは水とエタノールの混合物が解重合のために使用され得る。メタノールとエタノールの混合物を使用してもよい。水を解重合において使用する場合、混合物中の含水量は幾つかの実施形態では0重量%以上〜100重量%未満、他の実施形態では10重量ppm〜15重量%、さらに他の実施形態では15重量ppm〜5重量%の範囲であり得る。供給原料の1つとしてジエチルカーボネートを使用する解重合のためには水(4重量%)とエタノールの共沸混合物が非常に有効である。幾つかの実施形態では、活性金属成分の再堆積のために触媒表面をコンディショニングできるように水とアルコールの混合物が水またはアルコールのいずれか単独よりも好ましいことがある。加えて、水とアルコールの混合物がアルコールまたは水だけよりも解重合及び表面コンディショニングのためにより有効であり得る。
【0109】
解重合において溶媒を使用することもできる。有用な溶媒には、ベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、テトラヒドロフラン、エーテル等、または前記溶媒の混合物が含まれ得る。解重合混合物中の溶媒の濃度は0重量%〜約90重量%の範囲であり得る。
【0110】
触媒上に活性金属成分を再堆積する前に、触媒上の過剰の水を除去し、表面ヒドロキシル基の数をコントロールするために解重合した触媒を乾燥させ得る。活性触媒成分を再堆積させる前に、現場での乾燥は不活性ガス流中幾つかの実施形態では約49℃(120°F)〜約427℃(800°F)、他の実施形態では65℃(150°F)〜316℃(600°F)の温度で大気圧または減圧下で約15分間〜40時間実施され得る。触媒表面プレコンディショニングが不適切であると、触媒活性は部分的にしか回復しないことがある。本明細書中に開示されている解重合技術は芳香族カーボネートの製造方法または有機カーボネートが反応物質、生成物またはその両方として関与する反応において使用され得る。
【0111】
開示されている解重合技術は均一触媒の存在下で有機カーボネートを製造する反応のためにも有用であり得る。均一触媒系を再生するためには、アルコール溶液は水含量が約0.01重量%を超え得ないように十分に乾燥していなければならない。従って、本明細書中に開示されている触媒再生技術は有機カーボネートを製造するための方法に対して有用であり得る。
【0112】
解重合中反応器からの流出液流は、解重合を実施する方法に応じて微量の活性金属成分を含有し得る。この流れは主要な解重合生成物としてフェノール、DEC、少量のフェネトール、EPC及び重質化合物をも含有し得る。所望により、この流れから有用な成分(例えば、フェノール、エタノール、アルキルフェニルカーボネート及びDEC)を回収するように試みてもよい。
【0113】
解重合し、表面コンディショニングした担体上への活性金属成分の再堆積は、上記した担体上への金属アルコキシドの固定化と同様に実施され得る。担体上への金属アルコキシドの固定化は単一ステップまたは複数のステップで実施され得る。その後、再活性化触媒を含む反応器はすぐに使用に戻される。
【0114】
上記したように供給物流に触媒の可溶性活性金属成分を微量添加すると、安定な触媒性能が長いサイクル時間の間生じ得る。例えば、DECのフェノールとのエステル交換は、約45〜約60重量ppmのTiを供給物流に添加して上向流環流式固定床反応器において実施した。14ヶ月以上の連続オンストリーム時間の間触媒失活の兆候は殆どなかった。
【0115】
本明細書中に開示されている微量の活性金属化合物の添加は各種有機カーボネートまたはカルバメートを連続的に商業製造するために有用であり得る。有機カーボネートを製造する反応は、特定の反応系が示すように単一反応器、一連の複数の反応器、または複数の平行反応器システムにおいて実施され得る。例えば、反応は固体触媒または2つの異なる固体触媒が配置されている単一接触蒸留カラム反応器または一連の複数の接触蒸留カラム反応器において実施され得る。場合により、有機カーボネートを製造するために一連の複数のスラリー反応器を使用することもできる。微量の可溶性活性金属成分の供給物流への添加は一連の複数の反応器中の第1反応器に対してのみであってもよい。供給物流中の微量の活性金属成分の所望量は具体的供給物成分に対する具体的活性金属元素に依存する。ジアルキルカーボネートのフェノールとのエステル交換の場合、金属に応じて幾つかの実施形態では約15重量ppm〜約400重量ppm、他の実施形態では約20重量ppm〜約300重量ppm、さらに他の実施形態では約25重量ppm〜約200重量ppmの範囲であり得る。ジエチルカーボネート及びフェノールからなる供給物流の場合、例えばTiの所望量は幾つかの実施形態では約20重量ppm〜約150重量ppm、さらに他の実施形態では30重量ppm〜100重量ppmであり得る。供給物流中の活性金属成分の量は従来技術の反応媒体中の均一触媒の濃度よりも大体1桁または2桁少ない。
【0116】
反応器流出液流中のTiの濃度は通常、反応器への供給物流中の活性金属濃度の量に応じて約20ppm〜約100ppの範囲である。このレベルで、再循環のために反応器流出液流からTiを回収することは通常経済的に有利でないが、そのように選択してもよい。反応器流出液流中の活性金属成分を粗なDPC回収カラムの重質底部流から固体材料として回収し、有機カーボネートまたは有機カーボネートとアルコールの混合物と高温で反応させることにより再使用しようとする可溶性有機金属化合物に変換させてもよい。回収した有機金属化合物は金属アルコキシド、金属アルコキシアルキルカーボネート(炭酸モノエステルの金属塩)またはこれらの混合物であり得る。
【0117】
DPC回収カラムの底部流中の可溶性活性金属成分を固体材料として回収するためには、DPC回収カラムからの重質廃棄底部流を熱水または蒸気と水の混合物で処理して、金属成分を固体として沈殿させ得る。固体チタン含有触媒の場合、水性相中の固体チタン沈殿を慣用の方法(例えば、濾過または遠心)を用いることにより液体から分離する。分離した固体は、ジアルキルカーボネートまたはジアルキルカーボネートとアルコールの混合物を含有する液体流で圧力下、121〜343℃(250〜650°F)の温度で幾つかの実施形態では10分間〜80時間、他の実施形態では20分間〜45時間処理することより可溶性材料に変換される。ジアルキルカーボネートまたはアルコールとジアルキルカーボネートの混合物が反応容器(例えば、オートクレーブ、管状反応器、蒸留カラム反応器システム等)中に少なくとも部分的に液体として存在していなければならないように圧力は十分に高い。場合により、液体流が不活性溶媒(例えばベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、エーテル等)を含有していてもよい。液体流の例はエタノールとDEC、またはメタノールとDMCの混合物である。アルコールとジアルキルカーボネートの混合物中のジアルキルカーボネートの含量は0.1重量%〜100重量%未満の範囲であり得る。
【0118】
有機カーボネートまたはカルバメートを製造する反応は、反応生成物を費用効果的に分離し、未反応反応物質を再循環させるために適当に配置された蒸留カラムを備えた反応器の各種配置で単一反応器または一連の複数の反応器において実施され得る。或いは、反応を単一または複数の平行反応器において実施してもよい。反応器及び蒸留カラムの各種他の配置は当業者により考えられ得る。
【0119】
反応は単一接触蒸留カラムにおいて、一連の複数の接触蒸留カラムにおいて、一連の複数の固定管状またはタンク反応器、または異なるタイプの反応器の組合せにおいて実施され得る。DPCを製造するために3個の接触蒸留カラムを使用するときには、固体触媒をエステル交換のための一連の最初の2個の反応器中に配置する。第3の蒸留カラム反応器が固体触媒を含んでいても、または固体触媒を含んでいなくてもよい。第3反応器における不均化は反応媒体中に存在する可溶性均一触媒のみを用いて実施され得る。
【0120】
慣用の管状固定床反応器において実施される反応は上向流または下向流モードで実施され得る。例えば、アルキルアリールカーボネート(例えば、EPC)及びジアリールカーボネート(例えば、DPC)を製造する反応は液相中で実施され得るが、1つ以上の固体触媒の存在下で混合相系で実施してもよい。エステル交換のための一連の2つの反応器は、サイクル時間を延長させるために第1及び第2反応器の間で周期的に交換してもよい。EPCを不均化してDPC及びDECを製造するための第3反応器は減圧下で運転され得るフェノール回収カラムの下半分において実施され得る。特定実施形態では、本明細書中に開示されている方法は、ジエチルカーボネートのフェノールとのエステル交換を実施した後エチルフェニルカーボネートを不均化することによりジフェニルカーボネートを製造するために有用であり得る。
【0121】
微量の可溶性活性金属化合物(例えば、エチルフェニルチタネートまたはエトキシチタンエチルカーボネート、またはチタンアルコキシドとアルコキシチタンアルキルカーボネートの混合物)を例えば第1反応ゾーンに供給される液体反応媒体に添加し得る。或いは、不均化はフェノール回収カラムからの底部流をカラムの上の真ん中の区画中の適切なポイントで導入する接触蒸留カラムにおいて実施され得る。不均化をフェノールを除去することなく(フェノーはEPC不均化カラムからの底部流から回収され得る)、エステル交換反応器からの底部流を直接に導入する接触蒸留カラムにおいて実施してもよい。第1反応ゾーンは、DECのフェノールとのエステル交換のための一連の2つの接触蒸留カラムまたは2つの平行な接触蒸留カラムを含み得る。第2反応ゾーンは、EPCをDPC及びDECに不均化するための接触蒸留カラム反応器を含み得る。DECの代わりにDMC、EPCの代わりにMPCを選択してもよい。第1反応ゾーンのための接触蒸留カラム反応器に1つ以上の固体触媒、例えばシリカ担体上に固定化したチタンアルコキシドまたはシリカ担体上に担持させた酸化チタンを充填し得る。通常、2つ以上の反応器を使用する場合に使用し得るジフェニルカーボネートの連続製造のために2つの代替方法がある。
【0122】
ジフェニルカーボネートを連続製造するための第1方法において、各種実施形態では3〜7つの接触蒸留カラム反応器、特定実施形態では3〜4つの接触蒸留カラムを設け得る。これらの接触蒸留カラム反応器のうちの1つ以上が使用中の複数の反応器から最低の活性の反応器を交換するためのスペア反応器として役立ち得る。複数の蒸留カラム反応器のうちの2〜6個の反応器が主にEPCを製造するために使用され得る。残りの接触蒸留カラム反応器は主にEPCのDPC及びDECへの不均化を生起させる第2反応ゾーンとして役立ち得る。第1反応ゾーンからの流れ中のDEC及びフェノールの少なくとも一部を第1反応ゾーンからの重質流出液流から取り出した後、第2反応ゾーンに流入させる。或いは、流れ中のフェノールの濃度に応じて、第1反応ゾーンの重質流出液流中のフェノールの除去を不均化後まで遅らせてもよい。使用中の触媒がエージングするにつれて、触媒活性はゆっくり失活する。芳香族カーボネートの製造及び触媒再活性化のために使用の間一連の複数の反応器を交替するために3つの異なるオプションがある:
(1)所与の使用時間後、最も古い反応器を触媒再活性化のために非使用とし、新鮮または再活性化触媒を有する反応器を一連の複数の反応器中の第1反応器として使用する(すなわち、新しい→第1反応器、第1反応器→第2、第2→第3、及び第3→再活性化または触媒交換)、または場合により、第2反応器を第1反応器として繰り上げるので新しい反応器を一連の最後の反応器として使用する(提示した順方向の逆)ようにすべての反応器を順次循環交替させる;
(2)反応器を第1反応ゾーン及び第2反応ゾーン反応器の2つのグループに分け、各グループは使用の間のローテーション及び触媒交換/再活性化のためのスペア反応器を有している;及び
(3)所要により、一連の複数の反応器中の最低の活性の反応器を触媒再活性化のために非使用とし、スペア反応器(触媒がすで再活性化されている)を非使用とした反応器と交換するために使用する。
【0123】
代替プロセスでは、一連の2つの反応器を第1反応ゾーンとして使用する。所与の時間使用した後、例えば約6000時間毎に2つの反応器の順番を第1反応器と第2反応器の間で周期的に交換する。このローテーションは必要なだけ何度も繰り返す。第2反応ゾーンに対してスペア反応器はない。このタイプの運転は、一連の第1反応器に微量の活性金属化合物を添加するので可能である。第1反応ゾーンからの流れ中のDEC及びフェノールを蒸留により除去し、その後残りの流れを第2反応ゾーンにおいてEPCの不均化にかけて、DPCを製造する。不均化を実施する2つの方法がある:
(1)第1方法では、不均化を固定床反応器(例えば、接触蒸留反応器)において固体触媒の存在下で実施する。使用中の反応器を交換するためにスペア反応器がある。失活した触媒を先に記載した触媒再活性化にかける。
(2)第2方法では、不均化を接触蒸留反応器において固体触媒の非存在下で実施し、スペア反応器はない。第1反応ゾーンから流出する流れ中の活性可溶性金属種は不均反応化のための均一触媒として役立つ。
【0124】
第2反応ゾーンのための固体触媒が存在しているまたは存在していない接触蒸留カラムは、カラムの上半分区画(フェノール回収区画)が主に第1反応ゾーンからの流入反応混合物中のフェノールを留去するために役立ち、下半分区画は主にEPCまたはMPCの不均化を実施するために役立つように設計されると理解される。代替のプロセス設計では、フェノール回収カラムの底部区画で若干の不均化が生じ得るが、フェノール回収カラム及び接触蒸留カラムを2つのカラムに分離する。上記したように、若干のフェノールが接触蒸留カラムにおいてDECと一緒に頭上蒸気流としてストリッピングされ得るが、流入供給物流中のフェノールの濃度に応じてフェノール回収を不均化後まで遅らせてもよい。不均化のための接触蒸留カラムは大気圧下で運転され得る。
【0125】
図1は、本明細書中に開示されている実施形態に従う3つの接触蒸留カラムを用いるDPCの連続製造方法を説明する単純化したフロー図である。一連の2つの接触蒸留カラムはEPC及びエタノールを製造するための固体触媒の存在下でのDECのフェノールとのエステル交換のための第1反応ゾーンとして役立ち、接触蒸留カラムはDPC及びDECを製造するためのEPCの不均化のための第2反応ゾーンとして役立つ。
【0126】
ここで図1を参照すると、本明細書中に開示されている実施形態に従ってDEC及びフェノールからDPCを製造する方法が図示されている。C1及びC2はエステル交換を実施するための接触蒸留カラムであり、C3はエタノール回収カラムであり、C4はDEC回収カラム(フェネトールパージカラム)であり、C5は不均化及びフェノール回収のための接触蒸留カラムであり、C6はEPC回収カラムであり、C7はDPC回収カラムである。
【0127】
カラムC1及びC2は一連の接触蒸留カラムであり、構造化した充填デバイスが反応ゾーンR1及びR2中にそれぞれ配置されている。特別に構造化した充填デバイスは固体触媒を含んでいる。フェノール及びDECを含有する供給物流1及び4をそれぞれ触媒反応ゾーンR1及びR2の上の接触蒸留カラムC1及びC2の上部区画中のトレーに導入する。新鮮DEC及び新鮮フェノール供給物流中のDEC対フェノールのモル比はほぼ1:2であり得る。しかしながら、触媒反応ゾーンR1及びR2中のDEC対フェノールのモル比は、幾つかの実施形態では約12:1〜約1:2.5、他の実施形態では約10:1〜約1:2、さらに他の実施形態では約7:1〜約1:1であるようにコントロールされる。
【0128】
可溶性有機金属化合物もフローライン3を介してC1の頂部区画中のトレーに導入する。例えば、反応ゾーンR1及びR2中のチタン含有固体触媒の場合、可溶性チタン化合物、例えばTi(OEt)4−x(OPh)x(ここで、xは0、1、2、3または4である)、炭酸モノエステルのチタン塩(例えば、エトキシチタンエチルカーボネート)またはこれらの混合物を含有する溶液を第1接触蒸留カラム反応器C1の頂部に導入し得る。触媒溶液のための溶媒は、例えばDEC、DECとフェノールの混合溶液、DEC及びエタノールの混合溶液、またはDECとエタノールとフェノールの混合溶液であり得る。
【0129】
触媒溶液の流速は、第1カラム反応器中の触媒の上の液体流中のチタンの濃度が幾つかの実施形態では約20重量ppm〜約100重量ppmの活性金属(例えば、例えば先のパラグラフでリストした触媒溶液ではチタン)、他の実施形態では約25重量ppm〜約80重量ppm、さらに他の実施形態では約30重量ppm〜約70重量ppmであるようにコントロールされ得る。
【0130】
接触蒸留カラムC1及びC2からの頭上蒸気流6及び14はフローライン8を介してエタノール回収カラムC3に送られる。この頭上流は少量の副生成物(例えば、ジエチルエーテル及び二酸化炭素)及び微量のフェノールをも含有し得る。ジエチルエーテル及び二酸化炭素は頭上蒸気流9として除去され得る。エタノールはフローライン10を介してカラムC3からサイドドロー流として回収され得る。底部流11はDECをカラムC3からそれぞれフローライン12及び13を介して接触蒸留カラム反応器C1及びC2に再循環され得る。
【0131】
カラムC1は、触媒反応ゾーンR1の温度が約160℃〜約210℃(約320°F〜約410°F)の範囲であるように運転され得る。カラムC1中の頭上圧力は約2バール絶対〜約4.8バール絶対(約14.7psig〜約55psig)の範囲であり得る。第1接触蒸留カラムC1からの底部流7は接触蒸留カラムC2の頂部に導入され得、このカラムC2は触媒反応ゾーン中の温度が約162℃〜約216℃(約325°F〜約420°F)の範囲であり得るように運転され得、カラムは減圧約1バール(0psig)〜約4.5バール(51psig)の範囲の頭上圧力で運転され得る。場合により、再循環または新鮮DEC流の小フラクションはそれぞれフローライン4a及び4bを介してカラムC1及びC2に導入され得る。
【0132】
EPCの濃度は、接触蒸留カラムC1及びC2中の段を下行するにつれて上昇する。EPCのDPC及びDECへの若干の不均化がカラム反応器C1及びC2中で生ずるので、DPCの濃度も上昇する。蒸留カラム反応器C2からの底部流15はDEC回収カラムC4に送られ、ここでDECは頭上蒸気流16中に回収される。カラムC4は約127℃〜約204℃(約260°F〜約400°F)の温度及び約0.3バール(約4psia)〜約1.5バール(約22psia)の頭上圧力で運転され得る。流れ16中に存在し得るDEC及びフェノールを分離するために、流れ16をエタノール回収カラムC3に導入する。DEC及びフェノールはライン11、12、13を介してC1及びC2に再循環され得る。
【0133】
カラムC4からの頭上流16はDEC、及び少量のフェネトール、フェノール及びエタノールをも含有し得る。カラムC4からのサイドドロー流18はフェネトールパージ流として使用され得、システム中のフェネトールの蓄積を最小限とし得る。
【0134】
カラムC4からの底部流17はカラムC1及びC2由来の均一触媒種を含有している。底部流17は蒸留カラムC5の頂部区画に適当な位置で導入され得る。カラムC5はEPCの不均化を実施するために使用され得、場合により反応ゾーンR3中に不均一触媒を含み得る。
【0135】
カラムC5は、2つの目的、すなわち流れ17中のフェノール及びEPC不均化からの共生成物DECを頭上流19として除去すること及びEPCを不均化してDPCを形成することを達成するように設計され、運転され得る。カラムC5は、均一触媒反応ゾーンR3温度が約165℃〜約210℃(約330°F〜約410°F)の範囲であり、カラム頭上圧力が約0.07バール(約1psia)〜約0.6バール(9psia)であるように運転される。
【0136】
C5からのDEC及びフェノールを含有する頭上蒸気流19は、それぞれ流れ20及び21を介してカラムC1及びC2に再循環され得る。C5からのC5底部流22(DPC、未変換EPC、フェノール、フェネトール、重質物質及び可溶性Ti触媒を含有する)はEPC回収カラムC6に導入され、このカラムC6は約168℃〜約213℃(約335°F〜約415°F)の温度及び約0.03バール(約0.4psia)〜約0.55バール(8psia)の範囲の減圧下で運転され得る。
【0137】
DPCをサイドドロー流27として回収するために、EPCカラムC6底部流25をDPC回収カラムC7に導入する。DPC回収カラムC7は高真空(例えば、<0.03バール(<0.4psia))下で運転される。頭上流26はEPCカラムC6頭上流23と合体され、ライン24を介してカラムC5に再循環され得る。
【0138】
重質物質及び可溶性触媒を含有するDPC回収カラムC7底部流28を回収しても廃棄してもよい。所望ならば、チタン触媒を使用し、反応器に供給する場合、例えば先に検討したように再循環のためにチタンを可溶性Ti触媒(Ti(OEt)4またはTi(OEt)4とエトキシチタンエチルカーボネートの混合物)として回収してもよい。1つの破棄方法として、流れ28はTiを回収するためにチタン精製所に送られ得る。当業者には公知である代替の回収及び精製トレインで流れ22からDPCを回収することができる。
【0139】
或いは、上述したように、EPCのDPC及びDECへの不均化は接触蒸留カラムC5において固体触媒の存在下で実施され得る。しかしながら、C5中の固体触媒は図1に図示されている第2接触蒸留カラムC2中の固体触媒よりもより早く失活する恐れがある。
【0140】
先に検討したように、C5が固体触媒を含んでいる場合、プロセスに対して十分な触媒活性を維持するために蒸留カラム反応器に再循環させるために各種オプションを使用し得る。反応物質を循環させるために図示されていない十分なバルブ及びパイプを設けてもよく、当業者の裁量の範囲内である。
【0141】
図2は代替プロセスフロー図であり、同一符号は同一パーツを表す。図1と同数のエステル交換及び不均化を実施するための接触蒸留カラム及び材料を分離するためのカラムがある。しかしながら、接触蒸留カラムC5からの頭上流19のフラクションをライン30を介してDEC回収カラムC4に戻って再循環させてもよい。よって、ライン30を介する再循環によりフェネトールをパージするための代替方法ができる。
【0142】
図3は、図1及び2に類似の本明細書中に開示されている実施形態に従う別の代替プロセスフロー図を示し、同一符号は同一パーツを表す。第1接触蒸留カラムC1は多かれ少なかれ先のケース(図1及び2)と同様に運転される。しかしながら、第2接触蒸留カラムC2及びDEC回収カラムC4は先のケースと異なる方法で運転される。カラムC2は先のケースよりも高い温度及び低い圧力で運転され得る。再循環DEC流13はカラムC2の底部に導入される。場合により、新鮮DEC流4の一部をカラムC2の底部に導入してもよい。高温及び低圧で運転するために、C2底部流15はより少ない量のDECしか含有していない。C2頭上流14は他の成分の中でフェネトールを含有している。流れ14はカラムC4に導入され、C4底部流17はフェネトールパージ流である。
【0143】
非常に純粋なDPCが本明細書中に開示されている実施形態に従って製造した粗なDPC生成物から製造され得る。高純度DPCは、炭化水素−エーテル混合物(例えば、ヘキサン−ジエチルエーテル混合物)を用いて分別結晶することにより製造され得る。幾つかの実施形態では、精製DPC生成物中のフェノール以外の唯一の検出可能な不純物は最高約0.5重量ppmの量のキサントンである。精製DPC中のフェノールは微量、例えば約5〜約17重量ppmであり得る。本明細書中に開示されている実施形態に従って製造したDPC中の不純物のトレース分析は、得られたDPCの純度が実験室化学薬品の販売業者から入手し得るDPCよりもかなり高いことを示している。
【実施例】
【0144】
実施例
実験1を除いて、DECのフェノールとのエステル交換はすべて上向流沸騰型反応器において実施した。従って、蒸気及び液相が触媒反応ゾーン中に共存している。固定床反応器の寸法は直径1.3cm(1/2インチ)×長さ6.5cm(25インチ)であった。反応器は別々にコントロールされる頂部及び底部加熱ゾーンを有していた。固定床反応器は垂直方向に載置されていた。固体触媒の容量は25mlであった。
【0145】
比較実験1
DECのフェノールとのエステル交換に関する実験を攪拌型50mlオートクレーブ反応器を用いて均一チタンアルコキシド触媒の存在下で実施した。オートクレーブに表1に示したDEC/フェノール混合物(約35ml)を充填した。反応温度をコントロールするためにオートクレーブを油浴に浸漬させた。反応を実施した後、オートクレーブを油浴から取り出し、冷水でクエンチした。反応混合物中にジフェニルエーテルは観察されなかった。反応の結果を表1にリストする。
【0146】
【表1】
【0147】
供給物溶液中のTi濃度が4767重量ppmであったときには、約3時間の反応時間後の最高フェノール変換率は約15%で、EPC及びDPCの選択率は非常に低かった(<20.5モル%)。反応時間が2時間の場合、フェノールの変換率は5%未満であった。選択率はより良好であるが、なお低かった(63モル%)。触媒濃度を42重量ppmのTiに低下させると、選択率は大きく改善されたが、変換率は低かった。
【0148】
比較実験2
本実験の目的は、本明細書中に開示されている実施形態に従う実施例の結果と比較するための基準としての均一触媒の実験データを得ることであった。反応器中に固体触媒は存在していなかった。反応器中の固体触媒のための25mlスペースは空であった。各種量のTi(OEt)4−x(OPh)x(x=〜2)の均一触媒を有する73.3重量%のDECと26.7重量%のフェノール(DEC/PhOHのモル比=2.19)の反応混合物を反応器中に上向流で各種反応条件で0〜768時間オンスリームの間、次いで1266〜1362時間オンスリームの間通した。供給混合物中のTiの濃度は、図4に示すように59重量ppm〜709重量ppmのTiの範囲であった。流速は殆どのラン時間で0.5ml/分であった。供給物流速の履歴を表2にリストする。
【0149】
【表2】
【0150】
複合エステル交換生成物中のエタノールを留去した後、DECを添加することによりDEC/PhOHのモル比を2.19に調節して第2エステル交換供給物を調製した。第2エステル交換供給物は平均で約3.4重量%のEPC、約250重量ppmのフェネトール及び約300重量ppmのDPCを有していた。第2エステル交換供給物中の均一触媒濃度の履歴を表3にリストする。
【0151】
【表3】
【0152】
これらの供給混合物を用いて、第2エステル交換を768〜1266時間オンストリームの間実施した。この期間での図4中のフェノール変換率は第1及び第2エステル交換を通した全変換率である。
【0153】
反応温度の範囲は、図4に示すように174℃〜210℃(345°F〜410°F)であった。反応器圧力の範囲は約2.9〜約5.5バール(約27psig〜約65psig)であった。反応はすべて沸騰条件下で実施した。従って、反応を混合相系(蒸気及び液体)として実施した。図4の温度は反応器底部温度である。
【0154】
反応混合物中の触媒濃度が118ppmのTiより高い場合、触媒はフェノール変換率に対して悪影響を与えた。この悪影響の原因は完全に解明されていないが、Ti触媒上の2個のエトキシ基の影響であり得る。また、供給物中のTi濃度が約300ppmより高い場合、Ti触媒が沈殿したために反応器流出液ライン中にライン閉塞の問題があった。従って、ライン閉塞の問題を解決するために一対のインラインファルターを設置した。Tiの濃度が59ppmの場合、フェノール変換率に対する温度の影響は中程度であり、DECのフェノールとのエステル交換の活性化エネルギーが低いことを示している。第1エステル交換の最高フェノール変換率は337ppmのTi、204℃(400°F)及び4.5バール(50psig)で約11.3モル%であった。第2エステル交換の最高フェノール変換率は、193℃(380°F)、2.9バール(27psig)、188ppmのTi濃度で約14.5モル%であった。本実験は、液相反応(410℃及び7.9バール(100psig))の変換率が予想されるように低いことも示唆している。
【0155】
実験3
本実験の目的は、(1)シリカゲル担体上に固定化したチタンn−ブトキシドの現場作成技術、(2)触媒再活性化のための技術、及び(3)エステル交換のための二相固定床反応器の性能を立証することであった。触媒反応ゾーン中の蒸気と液体の二相は反応混合物を沸騰させることにより生成した。
【0156】
顆粒状シリカゲル(+8メッシュ)(45.74g)を周囲温度で攪拌しながら約42℃の温度で水酸化ナトリウム溶液(550mlの水中7.5gのNaOH)で7分間処理した。シリカゲルをまず冷水で、次いで熱水(約80℃)で洗浄して、シリカ上の微量のナトリウムを除去した。生じた処理シリカゲルを窒素パージ下125℃で2時間、次いで300℃で2時間乾燥した。乾燥したシリカゲル担体は23重量ppmのNaを有していた。処理したシリカゲル担体は、以下の特性:291m2/gのBET、1.052cm3/gの細孔容積及び16.3nmの平均細孔直径を有していた。
【0157】
25ml(約9.3g)の乾燥した顆粒状シリカゲル担体を反応器に充填した。チタンn−ブトキシド溶液は、チタンn−ブトキシド(27g)を乾燥トルエン(500ml)中に溶解させることにより調製した。チタンn−ブトキシド溶液をリザーバー中に入れた。チタンn−ブトキシド溶液を反応器に周囲温度で15ml/分で上向流で15分間循環させた後、反応器を約5.5バール(65psig)の圧力下で168℃(335°F)に加熱した。循環を168℃(335°F)で4.5時間継続した後、反応器を冷却した。過剰の溶液を反応器から排出させた後、担持した触媒を乾燥トルエンで4ml/分で上向流で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を350cc/分の窒素ガス(上向流)中168℃(335°F)で2時間乾燥した。生じた現場作成したシリカゲル顆粒担体上にグラフトしたチタンn−ブトキシド触媒をDECのフェノールとのエステル交換について試験した。
【0158】
第1エステル交換サイクル:DECのフェノールとのエステル交換は固定床沸騰型反応器において現場作成した固体触媒の存在下で実施した。DECとフェノール(25.57重量%のフェノール及び74.43重量%のDEC;DEC/PhOHのモル比=2.32)の混合物を固体触媒床に上向流で168℃(335°F)、2.4バール(20psig)及び0.2ml/分の供給物流速で通した。この試験は第1エステル交換サイクルを構成し、結果を図5に図示する。触媒は約40時間オンストリームでその最大活性(フェノールの12モル%変換率)に達した。約80時間オンストリームの後、触媒はその活性の殆どを失った。この失活した触媒を以下のように第1回再活性化にかけた。
【0159】
第1回触媒再活性化:触媒再活性化は2つのステップ、すなわち触媒解重合/表面コンディショニング及び触媒上への活性チタン金属の再堆積からなる。反応器を排出させた後、触媒を乾燥トルエン(300ml)を用いて上向流で周囲温度で洗浄した後、トルエンを反応器から排出させた。エタノール(400ml)及びトルエン(1700ml)と混合することにより調製した2Lのエタノール溶液中にチタンn−ブトキシド(0.19g)を溶解させた。チタン溶液を反応器に上向流で168℃(335°F)及び12バール(160psig)で2.2ml/分で13.5時間通した。過剰のチタン溶液を反応器から排出させた後、触媒を200cc/分の窒素中上向流で大気圧下で168℃(335°F)で45分間乾燥した。チタンn−ブトキシド溶液(2Lのトルエン中135gのチタンn−ブトキシド)を反応器に15ml/分で上向流で室温で20分間、次いで168℃(335°F)及び0.7バール(140psig)で4時間循環させた。冷却後、過剰の溶液を反応器から排出させた。触媒を4ml/分のトルエンで上向流で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を300cc/分の窒素ガス中上向流で168℃(335°F)で2時間乾燥した。再活性化した触媒を以下のように第2エステル交換サイクルにおいて使用した。
【0160】
第2エステル交換サイクル:エステル交換を第1サイクルと同一方法で実施した。結果を図5に図示する。再活性化した触媒は第1サイクルほど良好に働かず、触媒はたった約40時間オンストリームの後に死んだ。その後、第2回触媒再活性化を以下のように実施した。
【0161】
第2回触媒再活性化:材料を反応器から排出させた後、反応器中の触媒を周囲温度で乾燥トルエンで10ml/分で上向流で30分間洗浄した後、トルエンを反応器から排出させた。反応器中の触媒を窒素ガス中250cc/分で上向流で168℃(335°F)で1時間乾燥した。水(8ml)、エタノール(500ml)及びトルエン(1100ml)を混合することにより調製した溶液を反応器に2.2ml/分で上向流で168℃(335°F)及び12バール(160psig)で12.1時間通した。過剰の溶液を反応器から排出させた後、触媒を168℃(335°F)及び大気圧下で200cc/分の窒素中上向流で1時間乾燥した。チタンn−ブトキシド溶液(2Lのトルエン中135gのチタンn−ブトキシド)を反応器中に15ml/分で上向流で室温で20分間、次いで168℃(335°F)及び10.7バール(140psig)で6時間循環させた。冷却後、過剰のチタン溶液を反応器から排出させた。触媒を4ml/分のトルエンで上向流で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を300cc/分の窒素ガス中上向流で168℃(335°F)で2時間乾燥した。次いで、再活性化した触媒を以下のように第3エステル交換反応サイクルにおいて使用した。
【0162】
第3エステル交換サイクル:エステル交換を第1サイクルと同一方法で実施した。結果を図5に図示する。再活性化した触媒は第1サイクルにおける触媒と同様に働いた。しかしながら、触媒は約90時間オンストリームの後死んだ。
【0163】
反応器中の失活した触媒を同様の条件下で2回以上の触媒再活性化にかけた後、2回以上のエステル交換にかけて、同様の結果を得た。第5エステル交換反応サイクル後、触媒を以下のように第5回触媒再活性化にかけた。第3回〜第5回触媒再活性化の履歴を以下に記載する。
【0164】
第3回触媒再活性化:第3エステル交換サイクルから残った反応器中の材料のすべてを排出させた後、反応器中の触媒を乾燥トルエンで10ml/分で上向流で周囲温度で1時間洗浄した後、過剰のトルエンを反応器から排出させた。反応器中の触媒を窒素ガス中250cc/分で上向流で157℃(315°F)で1時間乾燥した。水(8ml)、エタノール(500ml)及びトルエン(1100ml)を混合することにより調製した溶液を反応器に2.2ml/分で上向流で157℃(315°F)及び2.7バール(25psig)で12.1時間通した。過剰の溶液を反応器から排出させた後、触媒を200cc/分の窒素中上向流で大気圧下、149℃(300°F)で1時間乾燥した。チタンn−ブトキシド溶液(2Lのトルエン中135gのチタンn−ブトキシド)を反応器に15ml/分で上向流で室温で20分間、次いで157℃(315°F)及び7.2バール(90psig)で6時間循環させた。冷却後、過剰の溶液を反応器から排出させた。触媒を4ml/分のトルエンで上向流で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を300cc/分の窒素ガス中上向流で163℃(325°F)で2時間乾燥した。
【0165】
次いで、再活性化した触媒を第4エステル交換にかけた。再活性化した触媒の性能は第2エステル交換サイクルと同様であった。結果は図5に示されていない。
【0166】
第4回触媒再活性化:第4エステル交換サイクルから残った反応器中の材料を排出させた後、反応器中の触媒を周囲温度で乾燥トルエンで10ml/分で上向流で1時間洗浄した後、過剰のトルエンを反応器から排出させた。反応器中の触媒を窒素ガス中250cc/分で上向流で157℃(315°F)で1時間乾燥した。水(8ml)、エタノール(500ml)及びトルエン(1100ml)を混合することにより調製した溶液を反応器に2.2ml/分で上向流で157℃(315°F)及び2.7バール(25psig)で12.1時間通した。過剰の溶液を反応器から排出させた後、触媒を200cc/分の窒素中上向流で大気圧下、149℃(300°F)で1時間乾燥した。チタンn−ブトキシド溶液(2Lのトルエン中135gのチタンn−ブトキシド)を反応器に15ml/分で上向流で室温で20分間、次いで157℃(315°F)及び7.2バール(90psig)で6時間循環させた。冷却後、過剰の溶液を反応器から排出させた。触媒を4ml/分のトルエンで上向流で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を300cc/分の窒素ガス中上向流で163℃(325°F)で2時間乾燥した。次いで、再活性化した触媒を第5エステル交換サイクルにおいて使用した。触媒の性能は第3エステル交換サイクルと同様であった。結果は図5に示されていない。
【0167】
第5回触媒再活性化:材料を反応器から排出させた後、反応器中の触媒を10ml/分の乾燥トルエンで上向流で周囲温度で1時間洗浄した後、過剰のトルエンを反応器から排出させた。反応器中の触媒を窒素ガス中250cc/分で上向流で124℃(255°F)で1時間乾燥した。水を反応器に0.3ml/分で下向流で152〜154℃(305〜310°F)及び大気圧下で6時間通した。反応器中の蒸気処理した触媒を100cc/分の窒素ガスで下向流で146〜149℃(295〜300°F)で1時間20分乾燥した。チタンn−ブトキシド溶液(1600mlのトルエン中135gのチタンn−ブトキシド)を反応器に15ml/分で上向流で室温で20分間、次いで127℃(260°F)及び3.1バール(30psig)で6時間循環させた。冷却後、過剰の溶液を反応器から排出させた。触媒を4ml/分のトルエンで上向流で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を300cc/分の窒素ガス中上向流で138℃(280°F)で2時間乾燥した。次いで、再活性化した触媒を以下のように第6エステル交換にかけた。
【0168】
第6エステル交換サイクル:エステル交換を第1サイクルと同一方法で実施した。結果を図5に図示する。再活性化した触媒は第1サイクルと同様に働いた。興味深いことに、触媒は遅い速度で失活した。
【0169】
上記実験は、現場でシリカゲル担体上に固定化したチタンアルコキシド触媒が失活しても再活性化することが可能であることを立証している。しかしながら、触媒サイクル寿命が芳香族カーボネートを連続製造するための大型商業用反応器においてこの技術を実施するには余りに短いことがある。
【0170】
実験4
本実験の目的は、微量(42重量ppmのTi)の可溶性Ti化合物(チタンn−ブトキシド)を供給物流に添加することにより触媒サイクル寿命の延長が達成され得ることを立証することであった。実験3における第6エステル交換サイクルからの失活した触媒を再び以下のように第7回触媒再活性化にかけた。反応器中の材料を排出させた後、反応器中の触媒を10ml/分の乾燥トルエンで上向流で周囲温度で1時間洗浄した後、過剰のトルエンを反応器から排出させた。反応器中の触媒を250cc/分の窒素ガス中上向流で124℃(255°F)で1時間乾燥した。エタノール中水(4重量%)の混合溶液を反応器に1.4ml/分で下向流で154℃(310°F)及び大気圧で6時間通した。反応器中の触媒を150cc/分の窒素ガスで下向流で154℃(310°F)で1時間25分乾燥した。チタンn−ブトキシド溶液(800mlのトルエン中67.5gのチタンn−ブトキシド)を反応器に15ml/分で上向流で室温で20分間、次いで127℃(260°F)及び3.4バール(35psig)で6時間通した。冷却後、過剰の溶液を反応器から排出させた。触媒を4ml/分のトルエンで上向流で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を300cc/分の窒素ガス中上向流で138℃(280°F)で2時間乾燥した。再活性化した触媒を以下のように第7エステル交換サイクルにかけた。
【0171】
第7エステル交換サイクルは、各種反応条件下で微量(42重量ppmのTi)のチタンn−ブトキシドを供給物流に添加することにより実施した。本実験では2つの異なる供給混合物を使用した。19.73重量%のフェノールと80.27重量%のDEC(DEC/PhOHのモル比=3.24)の混合供給物溶液を最初の593時間オンストリームの間使用した後、25.83重量%のフェノールと74.17重量%のDEC(DEC/PhOHのモル比=2.29)を749時間オンストリームで運転停止するまでランの残りの間使用した。予め混合したDEC/PhOH供給物溶液にチタンn−ブトキシドを混合した。供給物速度は、最初の353時間オンストリームの間0.2ml/分、353〜401時間オンストリームの間0.3ml/分、次いでランの終わりまで0.2ml/分であった。各種オンストリーム時間に採取した生成物サンプルのトレース分析は、48時間で21ppmのTi、305時間で44ppmのTi、449時間で44ppmのTi、491時間で31ppmのTi、593時間で51ppmのTi、713時間で51ppmのTi、749時間で31ppmのTiを示した。本実験の結果を図6に図示する。図6に示した温度は触媒床の底部での温度示度であった。触媒床の頂部での温度示度は通常、生成物流中のエタノール濃度に応じて反応器底部温度より1.5〜3℃(3〜5°F)低く、このことは触媒床の頂部区画でのエタノールの蒸発を示している。生成物中のエタノール濃度が約1.2重量%より高かったならば、触媒床の頂部でのより低い反応器流出液温度は顕著になった。フェネトールは唯一の検出可能な副生成物であった。フェノールに基づくフェネトールの選択率は0.3モル%未満であった。
【0172】
図6に示すように、全ラン時間(749時間)中触媒失活はなかった。このことから、供給物流に42重量ppmの可溶性Tiを添加することにより触媒サイクル寿命が80時間未満から749時間以上に延長され得ることがうまく立証される。
【0173】
反応器中の触媒をランの終了時に分析し、大部分黄色の顆粒であり、若干の触媒顆粒は暗褐色であった。比較のために、チタンフェノキシドは濃橙色または琥珀様色を有している。使用ずみ触媒の分析は触媒上に0.55重量%のTiを示した。これは驚くべき知見であった。
【0174】
実験5
本実験の目的は、(1)反応を実施する前に触媒を予め形成する必要性、(2)触媒再活性化、(3)触媒サイクル時間の延長、及び(4)供給物中の含水量(約650重量ppm未満)をコントロールする必要性を立証することであった。本実験では、チタンn−ブトキシドをグラフトする担体を作成するために酸化ケイ素ペレットを使用した。
【0175】
酸化ケイ素ペレット担体(0.3cm(1/8インチ),555重量ppmのNa及び2500重量ppmのAl;280m2/gのBET SA及び1cc/gのPV)を固定化チタンn−ブトキシド触媒を作成するために使用した。酸化ケイ素ペレット(100g)を約52℃で攪拌しながら水酸化ナトリウム溶液(570mlの水中10gのNaOH)で5分間で処理した。シリカを冷水で十分に洗浄した後、熱水(約80℃)で洗浄して、シリカ上の微量のナトリウムを除去した。処理したシリカをまず室温で乾燥し、次いで130℃で1.5時間乾燥した後、真空オーブン中で150℃で1時間乾燥した。乾燥したシリカ担体は150重量ppmのNaを有していた。作成したシリカ担体は以下の特性:252m2/gのBET、1.035cm3/gの細孔容積及び15.7nmの平均細孔直径を有していた。
【0176】
25ml(9.72g)の乾燥した酸化ケイ素ペレットを反応器に充填した。触媒溶液用リザーバーに、チタンn−ブトキシド(135g)をトルエン(1600ml)中に溶解させることにより調製したチタンn−ブトキシド溶液を充填した。この触媒溶液を反応器に15ml/分の流速で上向流で周囲温度で20分間、次いで135℃(275°F)及び3.4バール(35psig)で6時間循環させた。冷却後、過剰の触媒溶液を反応器から排出させた後、現場作成した触媒をトルエンで上向流で4ml/分の流速で周囲温度で1.5時間洗浄した。過剰のトルエンを反応器から排出させた後、触媒を138℃(280°F)で350cc/分の窒素ガス中上向流で2時間乾燥した。生じた触媒を以下のように第1エステル交換サイクルにおいて使用した。
【0177】
第1エステル交換サイクル:可溶性チタン種を供給物流中に注入することなく、第1エステル交換サイクルを168℃(335°F)及び2.4バール(20psig)の沸騰反応条件下で0.2ml/分の流速で上向流で実施した。供給物組成は26.07重量%のフェノール及び73.93重量%のDEC(DEC/フェノールのモル比=2.56)であった。結果を図7に図示する。触媒はオンストリーム時間と共に失活した。約100時間オンストリーム後、触媒は殆ど活性を有していなかった。
【0178】
第1回触媒再活性化:材料を反応器から排出させた後、反応器中の触媒を乾燥トルエンで10ml/分で上向流で周囲温度で1時間洗浄した後、過剰のトルエンを反応器から排出させた。反応器中の触媒を124℃(255°F)で250cc/分で上向流で流れる窒素ガス中で1時間乾燥した。水(4重量%)とエタノールの混合溶液を反応器に2.2ml/分で上向流で154℃(310°F)及び大気圧で6時間通した。触媒を154℃(310°F)で150cc/分の窒素中上向流で1時間25分乾燥した。チタンn−ブトキシド溶液(800mlのトルエン中67.5gのチタンn−ブトキシド)を反応器に15ml/分で上向流で室温で20分間、次いで134℃(275°F)及び3.4バール(35psig)で6時間循環させた。冷却後、過剰の溶液を反応器から排出させた。触媒を4ml/分のトルエンで上向流で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を138℃(280°F)で300cc/分の窒素ガス中上向流で2時間乾燥し、第2エステル交換反応サイクルにおいて使用した。
【0179】
第2エステル交換サイクル:再活性化した触媒を第1エステル交換サイクルと同一の条件で同一の供給物溶液を用いて第2エステル交換サイクルにかけた。結果を図7に図示する。第1エステル交換サイクルと同様の結果を得た。
【0180】
第2回触媒再活性化:第2回触媒再活性化を第1回触媒再活性化と同一方法で実施した。
【0181】
第3エステル交換サイクル:第2回触媒再活性化から得た再活性化した触媒を、第1エステル交換サイクルと同一の条件で可溶性チタン種を同一の供給物溶液に添加して第3エステル交換サイクルにかけた。第3エステル交換サイクルの結果を図7に図示する。第1エステル交換サイクルと同様の結果を得たが、触媒は一定の触媒活性を長時間維持した。270時間オンストリームで採取したサンプルのトレース分析は47重量ppmのTiを示した。サンプルを270時間オンストリームで採取した後、供給物リザーバーに新しい供給物を再充填した。残念ながら、チタンn−ブトキシドと混合すると供給物は濁るようになった。濁りは供給物溶液中の含水量が前の供給物溶液よりも予期せぬほどに高いことに起因したと考えられる。触媒活性はこの新しい供給物溶液で素早く低下した。この新しい供給物との複合生成物のトレース分析は9重量ppmのTiを示した。供給物流中の含水量は約650重量ppm未満に維持されるべきであることが知見された。
【0182】
ブランクラン(Tiアルコキシド触媒の固定化を実施することなく):同一反応器に、酸化ケイ素ペレットを約52℃で攪拌しながら水酸化ナトリウム溶液(570mlの水中10gのNaOH)で5分間処理して調製した25ml(9.54g)の酸化ケイ素ペレット担体を充填した。シリカを冷水で十分に洗浄した後、熱水(約80℃)で洗浄して、シリカ上の微量のナトリウムを除去した。処理したシリカをまず室温で乾燥し、次いで130℃で1.5時間乾燥した後、真空オーブン中で150℃で1時間乾燥した。触媒は担体に対してグラフトされていなかった。エステル交換反応は、同一条件(168℃(335°F)及び2.4バール(20psig)の沸騰反応条件下、0.2ml/分の供給物速度で上向流で;供給物組成は26.07重量%のフェノール及び73.93重量%のDEC(DEC/フェノールのモル比=2.56であった)下で上記と同じ組成供給物中42重量ppmのTiで実施した。結果を図7に図示する。フェノールの変換率はランを通して2%未満であった。
【0183】
この一連の実験(実験5)は、失活した触媒を再活性し、触媒サイクル時間を250時間以上に延長させることができることをうまく立証している。ブランクランは、エステル交換を実施する前に触媒を作成しなければならないことを明白に立証している。或いは、反応器の外部で前もって作成したグラフトしたチタンアルコキシド触媒を用いてエステル交換を開始することを選択してもよい。本実験は、一定の触媒活性を維持するために供給物中の含水量を約650重量ppm未満に維持しなければならないことがあることをも示している。
【0184】
実験6
本実験の目的は、一連の複数の反応器におけるシリカ担体上に担持させた酸化チタン触媒の存在下での芳香族カーボネートの連続製造を立証することであった。実験3における同一の顆粒状シリカゲル(40.7g)を攪拌しながら周囲温度で水酸化ナトリウム溶液(500mlの水中6.86gのNaOH)で7分間処理した。シリカゲルをまず冷水で十分洗浄した後、熱水(約80℃)で洗浄して、シリカ上の微量のナトリウムを除去した。処理したシリカゲルを140℃で2時間、345℃で3時間、次いで375℃で2時間乾燥した。30ml(10.99g)に、チタンn−ブトキシド(4.71g)を乾燥トルエン(80ml)中に溶解することにより調製したチタンn−ブトキシド溶液を含浸させた。含浸させたシリカゲル担体を500℃で3時間か焼した。シリカ上に担持させた酸化チタン触媒のチタン含量は、使用したチタンn−ブトキシドの量に基づいて5.48重量%のTiであった。25ml(9.8g)のシリカ上に担持させた酸化チタン触媒を反応器に充填した。DECのフェノールとのエステル交換を各種条件下で実施した。0〜308時間オンストリームの間の供給物はDECとフェノールの2つの異なる混合物であった。これらの供給物を使用して、DECのフェノールとの第1エステル交換を実施した。Ti(OEt)4−x(OPh)x(ここで、x=〜2)のストック溶液を混合することにより調製したDEC/PhOH供給物溶液(0〜308時間オンストリーム)中のチタン含量は59重量ppmのTiであった。Ti(OEt)4−x(OPh)xのストック溶液は、120℃〜125℃でDECとフェノール(PhOH)(25重量%)の混合溶液中に適量のチタンテトラエトキシドを3時間混合することにより調製した溶液からエタノールを蒸留することにより調製した。308時間〜986時間オンストリームの間の供給物は、第1エステル交換の複合生成物からエタノールを蒸留することにより調製した。これらの供給物を使用して第2エステル交換を実施した。この反応は一連の第2反応器または多段接触蒸留カラムの供給ポイント以下の幾つかの段における反応と均等である。986時間〜1136時間オンストリームの間の供給物は、第2エステル交換からの複合生成物からエタノールを蒸留することにより調製した。これらの供給物を使用して第3エステル交換を実施した。第2または第3エステル交換のための供給物に可溶性チタン触媒成分は混合しなかった。供給物組成を表4にリストする。エステル交換は185℃(365°F)、2.9バール(27psig)及び0.24ml/分の供給物速度で実施した。本実験の結果を図8に図示する。図8におけるフェノールの変換率は第1エステル交換から第3エステル交換までの全フェノール変換率である。ラン(1362時間の連続運転)を通して触媒失活の兆候はなかった。ランの終了時に反応器から回収した触媒の試験は、重質ポリマーが殆ど沈着していなかったことを示した。触媒の分析は2.3重量%のTiを示し、このことは生成物流への浸出のために約58%のTiが損失したことを示している。686、887及び1293時間オンストリームで採取した生成物流中のTiのトレース分析はそれぞれ75、57及び78重量ppmのTiを示した。
【0185】
本実験の結果は、微量の可溶性Ti化合物を供給物流に添加することにより長い触媒サイクル時間で、一連の複数の反応器を用いる芳香族カーボネートの連続製造を明白に立証している。本実験は、可溶性有機チタン化合物を形成することにより過剰量の酸化チタンは洗い流され得るので触媒上に大量の酸化チタンが必要でないことがあることも示唆し得る。触媒サイクル時間は触媒再活性化のために必要な時間よりも十分に長い。EPC及びDPCの合計選択率は、変換されたフェノールに基づき、ラン条件に応じて約98モル%〜約93%であった。
【0186】
【表4】
【0187】
実験7
本実験の目的は、シリカゲル担体上に固定化したチタンエトキシド触媒の存在下でDECのフェノールとのエステル交換を実施することにより一連の複数の反応器における芳香族カーボネートの連続製造を立証することであった。
【0188】
本実験は実験7A及び7Bの2部から構成されている。実験7Aでは、エステル交換を実施する前にTiエトキシドのシリカゲル担体上への固定化を実施した。供給物は各種量の可溶性Ti(OEt)4−x(OPh)x(ここで、x=〜2)化合物を含有していた。実験7Bでは、反応器中の25mlのスペースに25mlのシリカゲル担体を充填し、エステル交換をシリカ上の担体にTiテトラエトキシドをグラフトせずに実施した。
【0189】
実験7A
現場での触媒作成のために使用した担体は球状に成形したシリカゲル球(直径1.7〜4mm)であった。このシリカゲル担体は、約6個のヒドロキシル基/nm2、392m2/gのBET、0.633cm3/gの細孔容積、6.48nmの平均細孔直径及び約0.58g/mlの見かけ嵩密度(ABD)を有していた。このシリカゲル担体(25ml;1446g)を反応器に充填した。チタンエトキシド溶液(800mlのトルエン中45.25gのチタンエトキシド)を反応器に15ml/分で上向流で周囲温度で20分間、次いで135℃(275°F)及び3.4バール(35psig)で6時間循環させて、チタンエトキシドをシリカゲル担体上にグラフトした。冷却後、系中の過剰の溶液を排出させ、次いで触媒をトルエンで4ml/分で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を300cc/分の窒素ガス流速中38℃(280°F)で2時間乾燥した。
【0190】
EPC及びDPCを製造する反応を各種条件で実施した。結果を図9A及び9Bに図示する。第1エステル交換反応はすべてTi(OEt)4−x(OPh)x(ここで、x=〜2)として59ppmのTiを供給物流に添加して実施した。ただし、709時間〜799時間オンストリームの間は151ppmのTiを添加した。第1エステル交換のためにランを185℃(365°F)、2.9バール(27psig)及び0.24ml/分で開始した。最初の50時間オンストリーム後温度をゆっくり174℃(345°F)に低下させ、次の96時間オンストリームの間供給物速度を0.5ml/分にゆっくり上昇させた。その後、第1及び第2エステル交換はすべて174℃(345°F)、2.9バール(27psig)及び0.5ml/分の条件で実施した。第1、第2及び第3エステル交換からの複合生成物からエタノールを蒸留することにより、第2、第3及び第4エステル交換のための供給混合物を調製した。973時間〜1064時間オンストリームの間、混合エステル交換及び不均化反応は174℃(345°F)、2.4バール(20psig)及び0.5ml/分の供給物速度で実施した。反応のための供給物の組成は、18.553重量%のDEC、0.108重量%のエチルブチルカーボネート、0.283重量%のフェネトール、0182重量%の未知物質、57.508重量%のフェノール、22.03重量%のEPC、0.054%のp−フェノキシフェニルメチルカーボネート及び1.282%のDPCであった。結果は、主要反応が不均化であることを示している。しかし、データの分析は、不均化のための供給物からDECを除去する必要があることも示唆している。図9Aでは、第2エステル交換を174℃(345°F)、2.4バール(20psig)及び0.5ml/分で実施し、供給物中のTi濃度は44重量ppmのTi〜69重量ppmのTiの範囲とした。図9Bでは、第2エステル交換を174℃(345°F)、2.9バール(27psig)及び0.5ml/分で実施し、供給物中のTi濃度は45重量ppmのTi〜75重量ppmのTiの範囲とした。第3エステル交換を174℃(345°F)、2.5バール(22psig)及び0.5ml/分で実施し、供給物中のTi濃度は52重量ppmのTi〜74重量ppmのTiの範囲とした。第4エステル交換を174℃(345°F)、2.4バール(20psig)及び0.5ml/分で実施し、供給物中のTi濃度は51重量ppmのTi〜73重量ppmのTiの範囲とした。
【0191】
芳香族カーボネートの選択率はフェノールの変換率と共に低下した。第1エステル交換中のEPC及びDPCの合計選択率はフェノールに基づいて約99モル%である。第4エステル交換中のEPC及びDPCの合計選択率はフェノールに基づいて94〜95モル%であった。
【0192】
固体触媒は、触媒活性に関連しない実験の終了まで14ヶ月にわたり使用した。図9A及び9Bは、触媒失活が14ヶ月にわたり全くまたは殆どなかったことを強く示唆している。触媒床の頂部及び底部から注意深く採取した2つの触媒サンプルの分析は両触媒サンプル上に同一量の0.28重量%のTi(550℃でか焼したもの)を示した。本実験は、微量の可溶性チタン化合物を供給物流に添加することにより長い触媒サイクル(14ヶ月以上)を得ることができることをうまく立証している。
【0193】
実験7B(ブランクラン)
本実験の目的は、エステル交換を実施しながらTiアルコキシドをシリカ担体上に固定化するための試みであった。各種量の可溶性Ti(OEt)x(OPh)4−x化合物を供給物流に添加した。DECのフェノールとのエステル交換を174℃(345°F)及び2.9バール(27psig)で実施した。結果を図10に図示する。
【0194】
実験5(図7)及び実験7B(図10)中のブランクを結果(図9A及び9B)と比較すると、エステル交換を実施する前にチタンアルコキシドをシリカゲル担体に固定化する必要が明らかにある。比較実験1及び2(図4)を図9A及び9Bと比較すると、微量の可溶性活性有機金属化合物を供給物に添加する新規な固体触媒技術が従来技術よりも優れていることも明白に立証される。
【0195】
実験8
本実験の目的は、固体触媒の非存在下であるが可溶性Ti触媒成分の存在下でのEPCのDPC及びDECへの不均化を立証することであった。実験7における第4エステル交換からの複合生成物からエタノール、DEC及びフェノールの一部を窒素ブランケット下で蒸留することにより不均化のための供給物を調製した。供給混合物中の均一Ti触媒は第4エステル交換複合生成物由来であった。供給混合物に追加の可溶性Ti触媒を添加しなかった。トルエンを2つの供給混合物に添加して、沸騰型反応器のための蒸気相を形成した。第1供給物組成は、16.26重量%のトルエン、1.61重量%のDEC、49.33重量%のフェノール、30.91重量%のEPC及び0.78重量%のDPCであり、残部は微量のMPCを含めた副生成物であった。第2供給物組成は、16.15重量%のトルエン、1.61重量%のDEC、49.28重量%のフェノール、31.08重量%のPC及び0.80重量%のDPCであり、残部は微量のMPCを含めた副生成物であった。第1及び第2供給物中の均一触媒の濃度はそれぞれ180重量ppm及び200重量ppmのTiであった。
【0196】
不均化は、25mlの空触媒スペース(固体触媒の非存在下)を有する反応器において179℃(355°F)及び2.9バール(27psig)で実施した。供給物速度は、最初の72時間オンストリームの間は0.5ml/分で上向流、その後は0.60ml/分で上向流であった。不均化反応の結果を図11に図示する。実験結果は、DPCに加えて少量のEPCも生成されることを示している。キサントンが約35重量ppmの量で不均化中に製造された唯一の新規副生成物であった。ジフェニルエーテルはサンプル分析で検出されなかった。すべての副生成物の選択率は3.0モル%〜3.3モル%であった。本実験は、本明細書中に開示されている実施形態に従うDPC及びDECを製造するためのEPC不均化をうまく立証している。
【0197】
実験9
本実験はDPCの精製を立証している。実験8からの複合不均化生成物を実験室蒸留機器を用いることにより蒸留して、エタノール、DEC及び実質量のフェノールを除去した。蒸留フラスコ中の残りの材料は以下の組成:0.024%のEtOH、0.204%のDEC、0.017%のフェネトール、1.619%の未知物質、12.563%のフェノール、25.377%のEPC、59.474%のDPC及び0.723%の重質物質を有していた。真空蒸留することにより、粗なDPC(235〜245℃の蒸気温度でカット)を得た。この粗なDPCの組成は、0.535%の未知物質、2.112%のフェノール、0.013%のフェニルエーテル、0.030%のEPC、94.555%のDPC、0.026%のキサントン及び2.73%の重質物質であった。この粗なDPCをヘキサン中5重量%のジエチルエーテルの混合物を用いて5回再結晶化した。最終DPC生成物は0.4重量ppmのキサントン及び11.6重量ppmのフェノールの不純物を有していた。トレース分析により他の不純物は検出されなかった。このDPC生成物は、市販されている高純度DPC(28.7ppmの未知物質及び67.2重量ppmのフェノール)よりも高い純度を有している。
【0198】
環状カーボネートのアルコールとのエステル交換によるジアルキルカーボネート
ジアルキルカーボネートは、固体触媒の存在下で環状カーボネートのアルコールとのエステル交換を実施することにより連続的に製造される。上記したように、本明細書中に開示されている実施形態はジアルキルカーボネート(例えば、DMC、DEC等)を連続製造するために特に有用であり得る。エステル交換のための均一触媒は多数ある。担持させた金属酸化物または混合金属酸化物触媒、或いは多孔質担体上に均一触媒に固定化することにより作成した固体触媒の存在下で環状カーボネートのアルコールとのエステル交換を実施することによりジアルキルカーボネートを製造する場合、触媒は大型商業用反応器の運転のためには許容できないほど短いサイクル寿命しか有していない。有機カーボネートの取扱い時に関与する永久的触媒失活は、不均一触媒の活性触媒成分が反応媒体に浸出することにより生ずる。従って、ジアルキルカーボネート(DMC)は一般的に均一触媒の存在下でエステル交換を実施することにより製造されている。
【0199】
しかしながら、本明細書中に開示されている実施形態は固体触媒の存在下でジアルキルカーボネートを製造する方法を提供する。固体触媒は周期表のII、III、IV、V及びVI族からの1つ以上の元素を含み得る。第1タイプの固体触媒は、表面官能基(例えば、ヒドロキシ、カルボニル、アルコキシ、ヒドロキシルとアルコキシの混合物、塩素等)を有し得る多孔質担体上に固定化して1つ以上の上記元素の有機金属化合物を含む。担体には、シリカ、酸化チタン、ゼオライト材料(例えば、MCM−41、MCM−48、SBA−15)、炭素及び/または炭素質材料等が含まれ得る。第2タイプの固体触媒は、多孔質担体上に堆積して1つ以上の上記元素の金属酸化物、水酸化物またはオキシ水酸化物を含む。安定な触媒活性を維持するために、供給物流に微量の可溶性触媒成分を添加する。そうすることにより、触媒サイクル寿命を商業用反応器に適するまで延長し得る。
【0200】
エステル交換は任意の物理デバイス、例えば慣用の固定床反応器、接触蒸留カラム、沸騰型反応器、分壁蒸留カラム、パルスフロー反応器、またはこれらの反応器の組合せにおいて実施され得る。組合せの例は、固定床沸騰型反応器、その後に接触蒸留カラム反応器を含み得る。環状カーボネートの第一アルコール(例えば、エタノールまたはメタノール)とのエステル交換は、2つのエチルプロピレングリコールカーボネート中間体がある2ステップ反応として実施され得る。反応生成物は、プロピレングリコールのDECによるO−アルキル化により製造されるプロピレングリコールエチルエーテル異性体のような少量の副生成物をも含有している。エステル交換は単一反応ゾーまたは複数の反応ゾーンにおいて実施され得る。
【0201】
図18は、本明細書中に開示されている実施形態に従って固体触媒の存在下でプロピレンカーボネートのエタノールとのエステル交換を実施することによりDEC及びプロピレングリコール共生成物を連続製造するための単純化したプロセスフロー図を例示する。例示されているエステル交換は、接触蒸留反応器101において反応混合物の組成に応じてほぼ減圧〜約11.4バール(すなわち、約7psia〜65psia)の圧力下、約149℃〜約177℃(約300°F〜350°F)の温度で実施され得る。接触蒸留反応器101に加えて、方法は2つの蒸留カラム102及び114を含む。接触蒸留カラム101は反応ゾーンRZを含み、ここには固体触媒が充填され得る。新鮮プロピレンカーボネート供給物105を再循環流117と合体し、合体された流れ106を接触蒸留カラム101に固体触媒床反応ゾーンRZ上の適当な位置で導入する。
【0202】
DECを軽質成分から分離するために、カラム101頭上流107のエタノール、DEC及び軽質物質(例えば、二酸化炭素)の混合物をDEC回収カラム102に導入する。ライン111からガス抜きされたガスから液体エタノールを分離するために、カラム102頭上流108を気液分離ドラム110に導入してもよい。流れ112中のドラム110から回収された液体エタノールを新鮮エタノール供給物流103と合体し、合体された流れ104を加熱するとエタノール蒸気が生じ、この蒸気は接触蒸留カラム101に反応ゾーンRZの下の適当な位置で導入される。蒸留カラム102底部流109は生成物DECを含有しており、DECは貯蔵タンク(図示せず)または他の下流プロセスに送られ得る。
【0203】
接触蒸留カラム101からのプロピレングリコール、プロピレンカーボネート、反応中間体及び副生成物(例えば、1−エトキシ−2−プロパノール、重質物質等)を含有している底部流113及び微量の触媒を第2蒸留カラム114に導入して、プロピレングリコール、1−エトキシ−2−プロパノール等を含有している頭上流115を回収する。プロピレングリコールは蒸留(図示せず)により流れ115中の混合物から回収され得る。カラム114底部流116はライン117及び106を介して接触蒸留カラム101に再循環される。システムに重質物質が蓄積するのを防止するために、底部流116の一部を流れ118を介してシステムからパージしてもよい。
【0204】
微量の可溶性有機金属化合物をライン119を介して触媒反応ゾーンの上の接触蒸留カラム101に導入する。幾つかの実施形態では、触媒反応ゾーンRZを流下する液体反応混合物が微量の、典型的には5重量ppm〜約100重量ppmの可溶性金属成分(例えば、Mg、Ca、Zn、La、AcまたはTi化合物)を含有するような速度で触媒溶液を供給する。
【0205】
ジアルキルカーボネートの製造を以下の実験により例示する。
【0206】
実験10
本実験の目的は、DEC及びプロピレングリコールを製造するための固体触媒の存在下でのプロピレンカーボネートのエタノールとのエステル交換を立証することであった。固体触媒は、シリカゲル担体上にチタンエトキシドを固定化することにより現場作成する。
【0207】
25ml(直径1.7〜4mm)の球状シリカゲル担体を反応器に充填した。担体の重量は10.097gであった。このシリカゲル担体は、約6個のヒドロキシル基/mm2、314m2/gのBET、1.055cm3/gの細孔容積及び13.46nmの平均細孔直径を有していた。チタンエトキシド溶液(800mlのトルエン中40gのチタンエトキシド)を反応器に15ml/分で上向流で周囲温度で30分間、次いで135℃(275°F)及び3.4バール(35psig)で6時間循環させて、シリカゲル担体上にチタンエトキシドをグラフトさせた。冷却後、過剰の溶液を反応器から排出させ、次いで触媒をトルエンで4ml/分で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を300cc/分の窒素ガス流中138℃(280°F)で2時間乾燥した。
【0208】
プロピレンカーボネートとエタノールの混合溶液を調製し、混合供給物溶液にチタンエトキシドとして45ppmのTiを混合した。エステル交換を各種供給混合物を用いて上向流液相中、174℃(345°F)及び17.9バール(245psig)で実施した。ラン条件を表5にリストする。本実験の結果を図12に図示する。
【0209】
【表5】
【0210】
本実験の結果は、微量の可溶性Ti化合物を供給物流に添加することにより、シリカゲル担体上に固定化した固体Tiアルコキシド触媒の存在下で環状カーボネート(例えば、プロピレンカーボネート)のエタノールとのエステル交換を実施することによりDEC(ジアルキルカーボネート)が製造され得ることを明白に立証している。供給物流中に微量のTiを添加しないと、触媒活性は図12に示すようにラン時間1397〜1469にわたって急速に低下する。
【0211】
実験11
本実験の目的は、DEC及びプロピレングリコールを製造するための固体触媒の存在下でのプロピレンカーボネートのエタノールとのエステル交換を立証することである。本実験は比較実験11A(本発明外)及び11Bの2部から構成されている。
【0212】
比較実験11A
エステル交換を均一マグネシウムtert−ブトキシドの存在下で実施した。供給混合物のエタノール/プロピレンカーボネートのモル比は6.85であった。均一触媒の濃度は57重量ppmのMgであった。エステル交換は168℃(335°F)、17.9バール(245psig)及び0.5ml/分で実施した。結果を図13に図示する。プロピレンカーボネートの平均変換率は約24.3モル%である。DEC及びプロピレングリコールの平均選択率はそれぞれ95.7モル%及び94.3モル%である。
【0213】
実験11B
エステル交換を固体触媒の存在下で実施した、出発固体触媒はシリカゲル担体上に担持させたMgOであった。硝酸マグネシウム溶液は、Mg(NO3)2・6H2O(10.098g)を脱イオン水(22.73g)中に溶解することにより調製した。30ml(11.777g)の実験10で使用した同一のシリカゲル担体上に硝酸マグネシウムを初期含浸により堆積させた。含浸生成物を真空オーブンにおいて100℃で1時間乾燥した後、510℃で2時間か焼して、シリカゲル上に担持させたMgOを作成した。25ml(10.77g)のこのMgO及びシリカゲルの表面混合酸化物触媒を反応器に充填した。プロピレンカーボネートのエタノールとのエステル交換を表6にリストした各種条件下で実施した。
【0214】
【表6】
【0215】
反応生成物は1−エトキシ−2−プロパノール及び副生成物としてジプロピレングリコールを含有していた。生成物サンプル中にジエチルエーテルは検出されなかった。結果を図14にも図示する。第1エステル交換のDEC及びプロピレングリコールの平均選択率はそれぞれ95.3モル%及び94.8モル%であった。通常、選択率はプロピレンカーボネートの変換率と共にゆっくり低下する。また、選択率はEtOH/プロピレンカーボネートのモル比と共に上昇する。第2エステル交換のDEC及びプロピレングリコールの平均選択率はそれぞれ94.0モル%及び92.8モル%である。
【0216】
本明細書中に開示されている実施形態に従う尿素及びアルコールからのジアルキルカーボネート
先に掲げた刊行物、例えばP.Ballら及びD.Wangらによれば、尿素及びアルコールからのジアルキルカーボネートを製造するために有用な不均一触媒にはAl2O3、Sb2O3及びシリカが含まれ得る。溶融SiO2は触媒ではないが、PPh3の存在下で触媒となり得る。シリカ上に担持させたZnO及びMgOも尿素及びアルコールからジアルキルカーボネートを製造するために使用され得る。
【0217】
しかしながら、金属酸化物触媒(例えば、ZnOまたはMgO)は反応条件下で固体触媒から浸出して、永久的な触媒失活が生ずる。触媒サイクル寿命は、接触蒸留によりDMCまたはDEC及びアンモニアが液体触媒反応媒体から素早く除去され、ジアルキルカーボネートの生産性及び選択率が改善されるので、接触蒸留カラム反応器を用いるジアルキルカーボネートの商業製造において非常に重要である。加えて、上記した不均一触媒は均一ジブチルスズジメトキシド触媒ほど有効でない。
【0218】
本明細書中に開示されている実施形態によれば、ジアルキルカーボネートは固体触媒の存在下で2ステップで尿素をアルコールでアルコーリシスすることにより連続的に製造され得る。両反応ステップは平衡反応である。ジアルキルカーボネートを製造するために使用されるアルコールの例には、メタノール、エタノール、プロパノール等が含まれる。反応の第1ステップでは、第1反応ゾーンとして働く反応蒸留カラム(プレ反応器)において触媒の存在下または非存在下で尿素をアルコールと反応させて、アルキルカルバメート及びアンモニアを製造する。第1ステップ反応のために触媒は必要でない。供給物流中の不純物(例えば、水及びアンモニウムカルバメート)は第1反応ゾーンにおいてCO2及びアンモニアとして除去され、下流触媒が保護される。第2ステップ反応では、第2反応ゾーンとして働く1つ以上の接触蒸留カラム(主反応器)において固体触媒の存在下で第1反応ゾーンで製造されたアルキルカルバメートをアルコールと反応させて、ジアルキルカーボネート及びアンモニアを製造する。2ステップ反応を以下に例示し得る:
【0219】
【化5】
固体触媒は、例えば担体(例えば、シリカまたは炭素質材料)上に有機チタン化合物を固定化することにより作成され得る。反応の開始時には2つのタイプの触媒がある。第1タイプの触媒は、担体(例えば、シリカまたは炭素質材料)上に固定化した金属アルコキシド、炭酸モノエステルの金属塩またはこれらの混合物である。第2タイプの触媒は、担体(例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、炭素質材料等)上に担持させた金属酸化物である。活性金属成分は元素、例えばSn、Sb、Ti、Zr、Zn、Mg、Ca等であり得る。
【0220】
ここでも、長いサイクル寿命にわたって触媒活性を維持するために少量の可溶性金属化合物を反応器に入る反応物流に添加する。そうすることにより、触媒サイクル寿命を商業プロセスで使用するのに適するまで延長させ得る。定常条件下での作動触媒は担体上に固定化した金属アルコキシド、金属アルコキシアルキルカーボネート(炭酸モノエステルの塩)、或いはこれらのオリゴマーまたは混合物であると考えられる。反応混合物中の可溶性有機金属化合物(例えば、ジブチルスズジアルコキシド)の濃度は米国特許No.7,074,951において使用されている均一触媒より有意に低い。
【0221】
高沸点溶媒(例えば、トリグリム)は第2ステップにおける溶媒として使用され得、反応速度及び選択率を改善するための助触媒として働く。重要なことは、溶媒の沸点が高いために、反応を低圧下で実施し得る。低圧は、ストリッピングガスとしての過剰のエタノール蒸気と共にDEC及びアンモニアが液体反応媒体から蒸気相に素早く除去されるのを助け、高いDEC生産性及び選択率が得られる。本明細書中に開示されている実施形態は、固体触媒存在下でジアルキルカーボネートを製造するための代替改良方法を提供する。この方法は、以下の実験14において立証されているように均一触媒をベースとする方法と比較してプロセス流中のスズ触媒の濃度が実質的に低下しているので「よりグリーンな」方法であり得る。プロセス流中の微量の可溶性触媒化合物はシステム中に留まる。プロセス流中の可溶性触媒化合物を回収または分離する必要がない。
【0222】
図15は、本明細書中に開示されている実施形態に従うDECの連続製造方法のフロー図を図示している。供給物流中の不純物を除去するため及び尿素をエチルカルバメート(EC)に変換するためのプレ反応器として二重直径蒸留カラム反応器36が使用されている。尿素溶液はドラム34において尿素供給物31及びエタノール流33を混合することにより調製される。エタノール流33は新鮮エタノール供給物32及び再循環流74からのエタノールを含有し得る。
【0223】
ドラム34からの尿素溶液35を二重直径塔型反応器36の上のより狭いカラム区画の中間に導入する。反応器36は、供給物中の不純物(水及びアンモニウムカルバメート)、エタノール及び尿素を取り除き、尿素をECに変換するためのプレ反応器として働く。プレ反応器36からの蒸気流37はアンモニア、二酸化炭素及びエタノールから構成されている。きれいになった混合溶液はプレ反応器36から底部流38として取り除かれる。この流れ38を主反応器39(接触蒸留カラム)に固体触媒を含んでいる触媒反応ゾーン39Rの上の位置で導入する。
【0224】
再循環エタノール流40を過熱されているエタノール蒸気として反応器39に触媒反応ゾーン39Rの下の位置で導入する。接触蒸留カラム39からの底部流をライン42、44及び78を介してカラム39の頂部のライン38の供給ポイントの上の位置に再循環する。再循環ループからの小スリップ流43はDEC回収カラム63からの底部流65と合体されて、流れ66となる。この流れ66は、固体触媒を含んでいる別の小型接触蒸留カラムであるクリーンアップ反応器67に触媒反応ゾーンの上の位置で導入される。スリップ流43は、エタノール、アンモニア、エチルアミン、ジエチルエーテル、DEC、エチルカルバメート、N−エチルエチルカルバメート、トリグリム(TG)、重質物質及び微量の可溶性触媒成分を含有し得る。DEC回収カラム63からの底部流65は、エチルカルバメート、N−エチルエチルカルバメート、TG及び微量の触媒を含有し得る。クリーンアップ反応器67からの頭上流68は、アンモニア、エチルアミン、CO2、ジエチルエーテル、エタノール及びDECを含有し得る。クリーンアップ反応器67からの底部流69は、アンモニア、エチルアミン、CO2、ジエチルエーテル、エタノール、N−エチルエチルカルバメート、エチルカルバメート、ヘテロ環式化合物及び微量の可溶性触媒成分を含有し得る。
【0225】
反応器67からの底部流69を冷却/フィルターシステム70において冷却して、ヘテロ環式化合物を沈殿させる。沈殿した固体副生成物はライン71を介してシステム70から除去される。システム70からの液体流72は2つの流れ77及び78に分割されて、それぞれクリーンアップ反応器67及び主反応器39に再循環される。
【0226】
主反応器39からの頭上流41をクリーンアップ反応器67からの頭上流68と合体して、流れ42とし得る。主反応器39からの頭上流41は、アンモニア、CO2、エチルアミン、ジエチルテル、エタノール、エチルカルバメート、N−エチルエチルカルバメート、DEC、TG及び微量の触媒を含有し得る。合体された流れ42は蒸留カラム43に導入され、ここでは軽質及び重質化合物が分離される。蒸留カラム43からのアンモニア、CO2、エチルアミン、ジエチルエーテル及びエタノールを含有し得る頭上流44をプレ反応器36からの頭上流37と合体して、蒸留カラム46に導入するための流れ45とする。
【0227】
蒸留カラム46からの頭上流47を冷却して、CO2をアンモニアと反応させてアンモニウムカルバメートを形成させる。アンモニウムカルバメートは液体アンモニア中で沈殿して、冷却/フィルターシステム48からライン49を介して固体として除去される。冷却/フィルターシステム48からの液体アンモニア流50はアンモニア貯蔵タンクに送られる。
【0228】
カラム46からの底部流51は、エチルアミン、ジエチルエーテル、エタノール及び微量のDECを含有し得る。流れ51をエチルアミン回収カラム52に導入する。頭上エチルアミン流53は貯蔵タンクに送られる。カラム52からの底部流54は蒸留カラム43からの底部流55と合体して、流れ56とする。流れ56をエーテル回収カラム57に導入する。エーテルは蒸留カラム57から頭上流58として除去され、頭上流58はエーテル貯蔵タンクに送られる。蒸留カラム57からの底部流59は蒸留カラム60(エタノール回収カラム)に導入される。
【0229】
頭上流61としての回収されたエタノールを主反応器39、クリーンアップ反応器67及びプレ反応器36(または、ドラム34)に再循環する。エタノール再循環流74は蒸留カラム60(エタノール回収カラム)の頭上流61の小部分である。流れ61は3つの流れ40、73及び74に分割される。流れ73はクリーンアップ反応器67に再循環される。流れ74は尿素溶液を調製するためにドラム34に再循環される。流れ61の大部分であり得る流れ40は主反応器39に再循環される。エタノール回収カラム60からの底部流62はDEC回収カラム63に導入される、生成物DECは蒸留カラム63から頭上流64として回収され、DEC貯蔵タンクに送られる。カラム63からの底部流65は、エチルカルバメート、N−エチルエチルカルバメート、TG及び微量の可溶性触媒成分を含有し得る。この流れ65はライン66を介してクリーンアップ反応器67に送られる。
【0230】
DMCは、図15に関して記載したDECの製造方法と同様の方法でメタノール及び尿素から製造され得る。しかしながら、最終生成物DMCはメタノール−DMC共沸混合物を有するプロセス流から回収されることが理解される。メタノール−DMC共沸混合物を溶媒抽出蒸留技術により分解することによりDMCを回収することは文書で十分立証されており、例えば米国特許No.7,074,951に記載されている。
【0231】
実験12
本実験の目的は、DEC及びアンモニアを製造するための固体触媒の存在下でのエチルカルバメートのエタノールとの反応を立証することである。固体触媒は、現場技術によりシリカゲル上にジブチルスズジメトキシドを固定化することにより作成した。
【0232】
25ml(14.79g)の実験7Aで使用した球状に成形したシリカゲル担体を反応器に充填した。ジブチルスズジメトキシド溶液は、ジブチルスズジメトキシド(87g)を乾燥トルエン(2L)中で混合することにより調製した。この溶液を反応器に上向流で周囲温度及び大気圧で充填した。この溶液を上向流で2ml/分で流しながら、反応器を110℃(230°F)にゆっくり加熱した。110℃(230°F)で、反応器を3.4バール(35psig)下に置いた後、135℃(275°F)に加熱し続けた。135℃(275°F)及び3.4バール(35psig)で、ジブチルスズジメトキシド溶液を反応器に0.5ml/分で上向流で6時間通した。冷却後、反応器中の過剰の溶液を排出させ、次いで触媒を乾燥トルエンで4ml/分で上向流で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を300cc/分のN2流中下向流で大気圧下、104℃(220°F)で2時間乾燥した。
【0233】
反応は、沸騰型反応器中の固体触媒床に13.2重量%のエチルカルバメート、31.36重量%のトリグリム及び55.44重量%のエタノールの溶液を上向流で窒素ガスと共に通すことにより実施した。下向流反応器において反応を実施してもよい。微量のジブチルスズジメトキシドをこの溶液と混合した。反応条件を表7にリストし、この試験の結果を図16に図示する。反応生成物の分析は微量のN−エチルエチルカルバメート及びジエチルエーテルを示した。エチルカルバメートに基づくDECの選択率は98.5モル%〜99.9モル%の範囲であり、エチルカルバメートの変換率が上昇するにつれて選択率が低下する一般的傾向があった。
【0234】
【表7】
【0235】
本実験は、DECが尿素及びエタノールから製造され得ることをうまく立証している。第1ステップでは、触媒の非存在下で尿素をエタノールと反応させることによりエチルカルバメートを製造した(US 7,074,951を参照されたい)。第2ステップでは、固体触媒の存在下、浸出による金属の損失を相殺するために供給物流に微量の可溶性有機金属化合物を添加しながらエチルカルバメートのエタノールとの反応を実施することによりDECを製造した。第2ステップにおけるDECの商業製造を1つ以上の接触蒸留カラムにおいて実施することが好ましい。
【0236】
ジアルキルカーボネート方法及びジアリールカーボネート方法の統合
共沸混合物プロセス流を分離するための溶媒をベースとする抽出蒸留ユニットを必要とせず、よってエネルギーコスト及び建築費が節約され、GHG(温室ガス)CO2の大気への放出を低減させるジアリールカーボネートを製造するための統合方法が開示されている。従って、統合方法は従来のジアリールカーボネートの製造方法に比してよりグリーンな方法である。
【0237】
よりグリーンな方法は、本明細書中に開示されている実施形態に従うジアルキルカーボネートの製造方法及びジアリールカーボネートの製造方法を統合することにより得られ得る。例えば、ジアルキルカーボネートは統合方法のフロントエンドで製造され得、その少なくとも一部をその後統合方法のバックエンドにおいて使用してジアリールカーボネートを製造する。上記したように、ジアルキルカーボネートは(1)エポキシド及び二酸化炭素から製造され得るような環状カーボネートのエステル交換及び(2)アンモニア及び二酸化炭素を用いて合成され得る尿素とアルコール間の反応の2つのプロセスの1つを介して製造され得る。上記した2つのプロセスの少なくとも1つを介して統合方法のフロントエンドで製造されるジアルキルカーボネートは、その後ジアリールカーボネートを製造するために統合方法のバックエンドにおいてアリールヒドロキシ化合物と反応され得る。
【0238】
よって、本明細書中に開示されている実施形態に従ってジアリールカーボネートを製造するための統合方法は、専らエタノール及びCO2から生成されるジアルキルカーボネートから製造され得る。DECのEPC(エチルフェニルカーボネート)へのエステル交換のプロセスステップからの共生成物エタノールはDECを製造するために再循環される。EPCはDPC及び共生成物DECを製造するために不均化される。DECは二酸化炭素及びエタノールから中間体を介して製造される。エタノール及びDECは共沸混合物を形成しないので(共沸混合物を形成するメタノール及びDMCと比較して)、DECを製造するために抽出蒸留ユニットを必要としない。二酸化炭素及びフェノールからDPCを製造するための方法は、以下に詳記する各種多ステップ反応ルートを用いて実施され得る。
【0239】
本明細書中に開示されている実施形態に従ってDECからDPCを製造するための統合方法の利点は、エネルギーの節約及びプラントを建築するための原料の節約が含まれ得る。実施形態に従う方法は、共沸混合物を形成する組成物から材料を分離する必要がなく、よって本明細書中に開示されている方法の設備及びエネルギーの使用が共沸混合物(DMC及びメタノール)を生ずるDMCからのDPCの製造に比して抑制され得る。
【0240】
本明細書中に開示されている実施形態に従ってDEC及びDPCを製造するための統合方法を使用すると、更に独立型方法に比して幾つかの利点が与えられ得る。統合の1つの利点は、バックエンドDPC方法で製造されるエタノール共生成物をフロントエンドDEC方法のための供給原料として戻って再循環し得ることである。従って、全体の材料供給原料コストを減らすことができる。幾つかの実施形態では、DEC方法に供給する前に再循環させたエタノール共生成物の全部または一部を新鮮なエタノールメーキャップ流と合体させてもよい。他の実施形態では、再循環させたエタノール共生成物だけでDEC方法を供給するのに十分であり得る。或いは、DPCを製造する統合プラントの開始時にDECを製造するための合成エタノールの代わりに及び/またはメーキャップエタノールとしてバイオエタノールを使用することを選択してもよい。
【0241】
統合DEC及びDPC方法を用いる別の利点は、DEC方法へのエタノール供給原料の乾燥に関連するエネルギーコスト及び原料建築費の節約である。例えば、エタノールは周囲(例えば、大気水分)から水を吸収する傾向にある吸湿性化合物である。エタノール供給物中に含まれている水不純物は、例えば触媒を無力または失活することにより、プロセスラインを閉塞させることによりDEC方法に悪影響を及ぼし得る。従って、DECユニットへの新鮮エタノール供給物は、典型的には水不純物を分離することにより高純度エタノールを製造するために乾燥させなければならない。対照的に、バックエンドDPC方法から回収されたエタノール共生成物は水不純物を全くまたは殆ど含有していないことがある。従って、エタノールをDEC方法に再循環させるならば、材料建築及びエネルギーコストを含めた乾燥コストが実質的に低減され、ゼロになることさえある。
【0242】
統合DEC及びDPC方法を用いるさらに別の利点は、プロセッシング設備の重複が排除されることからの建築及び運転コストの節約であり得る。例えば、DEC及びDPC方法は各々DECをエタノールから分離するためのセパレーターを必要とし得る。DEC方法では、反応器流出液は分離を必要とし得るDEC及び未反応エタノールの両方を含有し得る。DPC方法では、エステル交換から回収された軽質流出液は、これまた分離を必要とし得るDEC及びエタノールの両方を含有し得る。しかしながら、本明細書中に開示されている実施形態に従うDEC方法及びDPC方法の統合により、DEC及びエタノールを分離するための単一システムを使用することができ、よって建築及び運転コストが節約される。
【0243】
本明細書中に開示されている実施形態に従ってジアリールカーボネートを製造するための1つの方法は、1)二酸化炭素をエポキシドと反応させて環状カーボネートを製造すること、2)環状カーボネートをエタノールとエステル交換してジエチルカーボネートを製造すること、3)ジエチルカーボネートをエステル交換してエチルアリールカーボネートを形成すること、及び4)エチルアリールカーボネートを不均化してジアリールカーボネートを形成することを含む。これらの反応の各々は1つ以上の反応ゾーンにおいて実施され得、反応ゾーンの中間または両端は反応生成物、反応物質及び/または反応副生成物を分離するための1つ以上の分離段であり得る。
【0244】
例えば、アンモニアプラント、合成ガスプラントまたは発電装置で利用可能な二酸化炭素を環状カーボネート合成反応器においてエポキシド(例えば、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの少なくとも1つ)と接触させて環状カーボネートを製造してもよい。環状カーボネート合成反応器からの環状カーボネートを含有する流出液を本明細書中に開示されている実施形態に従ってエステル交換触媒の存在下でエタノールと接触させてジエチルカーボネート及びグリコールを製造してもよい。ジエチルカーボネート生成物及び未反応エタノールは回収され、分離され得る。次いで、ジエチルカーボネートは、エチルフェニルカーボネートを製造するために及び本明細書中に開示されている実施形態に従って不均化反応によりエチルフェニルカーボネートからジフェニルカーボネートを更に製造するためにエステル交換反応に供給され得る。ジエチルカーボネートを製造するためにエタノールを環状カーボネートをエステル交換するためのシステムに戻してもよい。
【0245】
本明細書中に開示されている実施形態に従ってジアリールカーボネートを製造するための別の方法は、二酸化炭素をアンモニアと反応させることにより製造され得る尿素を伴う。次いで、尿素をエタノールでアルコーリシスすると、ジエチルカーボネートが製造され得る。ジエチルカーボネートはジアリールカーボネートを形成するために上記したエステル交換及び不均化にかけられ得る。これらの反応の各々は1つ以上の反応ゾーンにおいて実施され得、反応ゾーンの中間または両端は反応生成物、反応物質及び/または反応副生成物を分離するための1つ以上の分離段であり得る。
【0246】
ここで図19を参照すると、本明細書中に開示されている実施形態に従ってジアリールカーボネートを製造するための統合方法の単純化したブロックフロー図が図示されている。図19に図示されているように、ジアリールカーボネート(例えば、DPC)はCO2、エポキシド及びフェノールから製造される。
【0247】
環状カーボネート(エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネート)を製造するために、二酸化炭素及びエポキシド(例えば、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシド)をフローライン201及び202を介して反応ゾーン203に導入する。エステル交換触媒の存在下でエタノールとのエステル交換を実施するために、合成ゾーン203からの環状カーボネート流204及びエタノール流207を接触蒸留反応器システム205に導入する。必要ならば、流れ207を介して反応ゾーン205に供給するために、新鮮なメーキャップエタノール流206をエタノール再循環流220及び/または210と合体させてもよい。例えば生成物DECをエタノールから分離するために、反応ゾーン205からの頭上流208は蒸留カラムであり得る第1分離ゾーン209に送られる。分離ゾーン209からの頭上エタノール流210はエステル交換ゾーン205に戻って再循環される。第1分離ゾーン209からのDEC流211(底部液体流)は第2エステル交換ゾーン217に供給される。
【0248】
未変換環状カーボネート及び反応中間体から生成物グリコールを分離するために、エステル交換ゾーン205からの底部流212は1つ以上の蒸留カラムを含み得る第2分離ゾーン213に送られる。分離ゾーン213からの生成物グリコールはライン214を介して除去される。環状カーボネートを含めた残留する重質物質液体流215は第1エステル交換ゾーン205に戻って再循環される。
【0249】
EPC及びエタノール共生成物を製造すべく触媒の存在下でのDECのフェノールとのエステル交換を実施すると同時にエタノール及び未反応DECからEPCを分離するために、新鮮フェノール流216を少なくとも1つの接触蒸留反応器システムを含む第2エステル交換ゾーン217に導入する。エステル交換ゾーン217からのエタノール、DEC、軽量物質及び少量のフェノールを含有している頭上流218を第3分離ゾーン219に送られる。流れ218中に含有しているエタノール及びDECの分離は上述したように抽出蒸留を必要としない。
【0250】
エタノール流220はライン207を介して第1エステル交換ゾーン205に再循環される。軽質物質はライン221を介してガス抜きされる。DEC及びフェノールを含有している底部流222はライン222を介して第2エステル交換ゾーン217に戻って再循環される。第2エステル交換ゾーン217からの生成物EPC、フェノール及び少量のDPを含有している底部流223は、部分真空下で運転される少なくとも1つの接触蒸留反応器システムを含むEPC不均化ゾーン224に送られる。反応ゾーン224からのDEC、フェノール及び少量のエタノールを含有している頭上流225はエステル交換ゾーン217の接触蒸留カラムの頂部に戻って再循環される。反応ゾーン224からの底部流226は流れ226中の材料を分離するための2つ以上の蒸留カラムを含む第4分離ゾーン227に送られる。分離ゾーン227からの未変換EPC及び微量のフェノールを含有している流れ228は不均化反応ゾーン224の接触蒸留カラムの頂部に戻って再循環される。
【0251】
分離ゾーン227からの最終生成物DPC流229はDPC貯蔵タンクに送られる。流れ226中の重質物質は、所要により廃棄または更なる処理をするためにライン230を介してゾーン227から除去される。更なるオプションとして、分離ゾーン213から回収されたグリコールを脱水反応器232において脱水してエポキシド及び水を形成し得、その後エポキシドは上記したように環状カーボネートを形成すべく再循環される。グリコールの再循環の結果は本質的に共生成物を含まないDPC方法である。ある環境では、例えばグリコールのためにアウトレットが利用できないような共生成物を含まない方法が望ましい。
【0252】
ここで図20を参照すると、本明細書中に開示されている実施形態に従ってジアリールカーボネートを製造するための統合方法の単純化したブロックフロー図が例示されており、同一番号は同一パーツを表す。ジアリールカーボネート(DPC)は代替方法に従ってCO2及びフェノールから製造される。この代替方法においてアンモニアは、図19に図示されているプロセスルートとは異なり中間体ビヒクルDECを製造するために関与している。
【0253】
二酸化炭素流240、及びアンモニアメーキャップ流241とアンモニア再循環流250の合体流であるアンモニア流260を尿素合成ユニット242に導入する。尿素合成の共生成物H2Oを合成ユニット242からライン243を介して除去する。合成ゾーン242からの生成物尿素流244、及びエタノール再循環流253とエタノールメーキャップ流246の合体流であるエタノール供給物流247を尿素アルコーリシス反応ゾーン245に導入する。
【0254】
ゾーン245における尿素アルコーリシス反応は2ステップ反応である。第1ステップでは、エチルカルバメート(C2H5O−CONH2)を製造し且つ不純物(例えば、アンモニウムカルバメート)を共生成物アンモニアと一緒に除去するために、尿素の第1アルコーリシスを通常触媒の非存在下でエタノールを用いて実施する。尿素をエタノール中に溶解させてもよく、生じた尿素溶液を反応蒸留カラムにポンプ輸送する。同時に、アンモニアを頭上流の一部として除去すべくアンモニア共生成物を液相から蒸気相にストリッピングするために、過熱したエタノール蒸気をカラムの底部区画に導入する。カラムから回収した底部フラクションはエチルカルバメート、少量の尿素及びエタノールを含む。第2ステップでは、別の反応蒸留カラムにおいてDEC及び共生成物アンモニアを製造するために、エチルカルバメート及び残留する尿素の第2アルコーリシスを触媒の存在下でエタノールを用いて実施する。
【0255】
尿素アルコーリシスゾーン245からの生成物流248を1つまたは複数の蒸留カラムを含む分離ゾーン249に送る。分離ゾーン249からのアンモニアをライン250及び260を介して尿素合成ゾーン242に再循環する。回収されたエタノール流251をライン251を介して尿素アルコーリシスゾーン245に戻って再循環する。分離ゾーン249からのDECは、反応ゾーン217においてフェノールとのエステル交換を実施するためのDEC供給物流252となる。DECを製造するために、反応ゾーン217におけるDECのフェノールとのエステル交換の共生成物エタノールをライン253及び247を介して尿素アルコーリシスゾーン245に戻って再循環する。
【0256】
このポイントからのDPCを製造するための残りのプロセスステップは図19について先に挙げた記載と同一である。或いは、尿素を尿素製造業者から掛けで購入して、アンモニア共生成物を返済してもよい。このことは、小型オンサイト尿素合成ユニットを運転するよりも尿素コストの点でより安価であり、エネルギー消費の点でより効果的であり得る。
【0257】
上述したように、図19及び20に関して記載されているDPCの製造方法は本質的に新鮮エタノール供給物なしで実施され得る。エタノールは最初DECを製造するための尿素または環状カーボネートのエステル交換の間に消費され、その後エタノールはジアリールカーボネート(DPC)を製造するためのDECのアリールヒドロキシル化合物(例えば、フェノール)とのエステル交換の間に生成される。反応副生成物中のエタノールの消費を除いてエタノールがほぼ同一のモル比で消費され、生成されるので、本明細書中に開示されている方法はエタノールに関して本質的に閉ループプロセスを用いて運転され得る。よって、エタノール原料及びプレコンディショニング(乾燥)コストは独立型DEC方法に比して実質的に低減され得る。
【0258】
上のエステル交換及び不均化反応を実施するための反応ゾーンは1つ以上の反応器中に含まれ得る1つまたは複数の固体触媒を含み得る。反応器は、液相中でまたは液体と蒸気の二相の存在下でエステル交換を実施するための各種運転モードのために任意の物理的形状を有し得る。本明細書中に記載されている反応を実施するために任意のタイプの反応器を使用し得る。有機カーボネートまたは有機カルバメート反応が関与する反応を実施するのに適した反応器の例には、蒸留カラム反応器、分壁蒸留カラム反応器、慣用の環状固定床反応器、バブルカラム反応器、場合により蒸留カラムを備えたスラリー反応器、パルスフロー反応器、スラリー固体触媒がカラムを流下する接触蒸留カラム、またはこれらの反応器の組合せが含まれ得る。
【0259】
本明細書中に開示されている実施形態に従い、上に詳記した1つ以上の均一触媒、不均一触媒及び固体触媒を含めたこれらの統合方法においてDEC、EPC及びDPCを製造するためのエステル交換及び不均化反応のために有用な触媒は上記した通りであり得る。不均一触媒は任意の物理的形態、例えば攪拌式タンク反応運転またはスラリー接触蒸留カラム反応器のために粉末、または成形材料(球、顆粒、ペレット、押出物、織布、メッシュ等)を有し得る。
【0260】
実施例
すべての実験反応を一段の垂直方向に載置した直径1.3cm(1/2インチ)×長さ6.5cm(25インチ)の寸法を有する蒸留カラム、固定触媒床を含み、蒸気及び液相が共存する上向流沸騰型反応器として運転する接触蒸留反応系において実施した。反応器は別々にコントロールされる頂部及び底部加熱ゾーンを有していた。固体触媒の容量は25mlであった。
【0261】
以下の実験例は、共沸混合物の溶媒抽出蒸留を必要とすることなく、本発明に従ってジエチルカーボネート(DEC)及びフェノールから、または二酸化炭素及びフェノールからジフェニルカーボネート(DPC)を製造する実施形態を説明している。
【0262】
実験13
本実験は、図19に示すように本発明に従ってジエチルカーボネート(DEC)を製造するための実施形態を説明する。DECを製造するための固体触媒の存在下でのプロピレンカーボネート(環状カーボネート)のエタノールとのエステル交換を下表8にリストする各種条件で実施した。
【0263】
【表8】
【0264】
出発固体エステル交換触媒はシリカゲル上に担持させたMgOであった。硝酸マグネシウム溶液は、Mg(NO3)2・6H2O(10.1g)を脱イオン水(22.7g)中に溶解することにより調製した。初期含浸により硝酸マグネシウムを30ml(11.8g)のシリカゲル担体上に堆積させた。シリカゲル担体(直径〜3mmの球)は314m2/gのBET表面積、1.06cm3/gの細孔容積及び13.46nmの平均細孔直径を有していた。含浸生成物を真空オーブンにおいて100℃で1時間乾燥した後、510℃で2時間か焼して、シリカゲル上に担持させたMgOを作成した。25ml(10.77g)のシリカゲル上に担持させたMgO触媒を反応器に充填した。
【0265】
安定な触媒活性を得るために、上表8に示すようにマグネシウムtert−ブトキシドもさまざまな微量で反応供給物溶液に添加した。通常、本明細書中に開示されている実施形態に関して上記したように、微量の可溶性有機アルカリ土類化合物(例えば、アルコキシド、グリコールオキシドまたはその混合物)の添加は長い触媒サイクル時間及び安定性を得るために使用され得る。
【0266】
エステル交換反応生成物はl−エトキシ−2−プロパノール及び副生成物としてジプロピレングリコールを含んでいた。生成物サンプル中にジエチルエーテルは検出されなかった。実験13の結果も図21に図示する。第1エステル交換におけるDEC及びプロピレングリコールを形成するための平均選択率はそれぞれ95.3モル%及び94.8モル%であった。選択率はプロピレンカーボネートの変換率と共にゆっくり低下し、エタノール対プロピレンカーボネートのモル比が高くなると上昇する。例えば、第2エステル交換におけるDEC及びプロピレングリコールの平均選択率はそれぞれ94.0モル%及び92.8モル%であった。
【0267】
実験14
本実験は、図20に示すように本発明に従ってジエチルカーボネート(DEC)を製造するための実施形態を説明する。DEC及びアンモニア副生成物を製造するための固体触媒の存在下でのエチルカルバメートのエタノールでのアルコーリシスを下表9にリストした各種条件で実施した。
【0268】
【表9】
【0269】
現場技術によりシリカゲル上にジブチルスズジメトキシドを固定化することにより固体触媒を作成した。触媒を作成するために、25ml(14.79g)の球状に成形した概算直径が3mmのシリカゲル担体を反応器に充填した。シリカゲル担体は、約6個のヒドロキシル基/nm2、392m2/gのBET、0.633cm3/gの細孔容積、6.48nmの平均細孔直径及び約0.58g/mlのABDを有していた。
【0270】
ジブチルジメトキシド溶液は、ジブチルスズジメトキシド(87g)を乾燥トルエン(2L)中に混合することにより調製した。反応器にこの溶液を上向流で周囲温度及び大気圧で充填した。ジブチルジメトキシド溶液を上向流で2ml/分の速度で添加しながら、反応器を110℃(230°F)の温度にゆっくり加熱した。110℃(230°F)で反応器を3.4バール(35psig)の圧力下に置いた後、135℃(275°F)に加熱した。
【0271】
反応器温度を135℃(275°F)に、反応器圧力を3.4バール(35psig)に維持しながら、ジブチルスズジメトキシド溶液を反応器に0.5ml/分で上向流で6時間通した。冷却後、反応器中の過剰の溶液を排出させ、次いで触媒を乾燥トルエンで4ml/分で上向流で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を104℃(220°F)の温度及び大気圧で300cc/分の窒素下向流パージ下で2時間乾燥した。
【0272】
DECを製造するためのエチルカルバメートのエタノールでのアルコーリシス反応は、13.2重量%のエチルカルバメート、31.36重量%のトリグリム及び55.44重量%のエタノールの溶液を沸騰条件下で上記した固体触媒床に上向流で窒素ガスと一緒に通すことにより実施した。下向流反応器において反応を実施してもよい。反応中この溶液に微量のジブチルスズジメトキシドを混合した。
【0273】
反応条件を上表9にリストし、本実験の結果を図22に図示する。エチルカルバメートに基づくDECの選択率は98.5モル%〜99.9モル%の範囲であり、エチルカルバメートの変換率が上昇するにつれて選択率が低下する一般的傾向があった。
【0274】
実験15
本実験は、図19に示すように本発明に従ってエチルフェニルカーボネート(EPC)を製造するための実施形態を説明する。エチルフェニルカーボネート(EPC)を製造するためのDECのフェノールとのエステル交換はシリカゲル担体上に固定化したチタンエトキシド触媒の存在下で実施した。
【0275】
25ml(14.47g)の量の上記実験14と同一のシリカゲル担体を反応器に充填した後、チタンエトキシドを固定化した。チタンエトキシド溶液は、チタンエトキシド(45.25g)をトルエン(800ml)中に溶解することにより調製した。次いで、このチタンエトキシド溶液を反応器に15ml/分の流速で上向流で周囲温度及び大気圧で30分間循環させた。次いで、チタンエトキシドをシリカゲル担体上に135℃(275°F)及び3.4バール(35psig)で17時間グラフトした。冷却後、過剰のチタンエトキシド溶液を反応器から排出させ、触媒をトルエンで4ml/分の速度で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を300cc/分の窒素ガス流下で138℃(280°F)で4時間乾燥した。
【0276】
エチルフェニルカーボネート(EPC)を製造するためのDECのフェノールとのエステル交換は、345℃及び27psigの沸騰型反応器条件下でDECの23重量%溶液を反応器に0.5ml/分でポンプ輸送することにより実施した。
【0277】
全860時間オンストリーム時間の間触媒性能を安定化させるために、Ti(OEt)4−x(OPh)x(ここで、x=2)の形態のチタンを供給物流に55重量ppmの濃度で導入した。EPC及びDPCへのエステル交換反応の合計選択率は約99モル%であった。本実験の結果を図23に図示する。
【0278】
実験16
本実験は、図19に示すように本発明に従ってジフェニルカーボネート(DPC)を製造するための実施形態を例示する。DPC及びDECを製造するためのEPCの不均化を可溶性チタン触媒の存在下で実施した。
【0279】
不均化反応のための供給物は、上記実験15に開示されているのと同様の実験により調製した複合エステル交換生成物からエタノール、DEC及びフェノールの一部を窒素ブランケット下で蒸留することにより調製した。不均化反応のための供給混合物中の均一チタン触媒は、上記実験15に開示されているエステル交換反応器に元々導入したものであった。追加可溶性チタン触媒は供給混合物に添加しなかった。2つの供給混合物にトルエンを添加して、沸騰型反応器に対する蒸気相を形成した、
第1供給物の組成は、16.26重量%のトルエン、1.61重量%のDEC、49.33重量%のフェノール、30.91重量%のEPC、0.78重量%のDPCであり、組成残部の正味はアルキル交換反応からの副生成物(例えば、MPC)が占めている。第2供給物の組成は、16.15重量%のトルエン、1.61重量%のDEC、49.28重量%のフェノール、31.08重量%のEPC、0.80重量%のDPCであり、組成残部はアルキル交換反応からの副生成物(例えば、MPC)が占めている。第1及び第2供給物中の均一触媒の濃度はそれぞれ180重量ppm及び200重量ppmチタンであった。
【0280】
不均化反応は、25mlの空触媒スペース(固体触媒の非存在下)を有する反応器において179℃(355°F)及び2.9バール(27psig)で実施した。供給物速度は最初の72時間オンストリームの間0.5ml/分で上向流、次いでその後は0.60ml/分で上向流であった。不均化反応の結果を図24に図示する。キサントンが不均化中に約35重量ppmの量で生成された唯一の新しい副生成物であった。生成物サンプル分析でジフェニルエーテルは検出されなかった。すべての副生成物の選択率は3.0モル%〜3.3モル%であった。
【0281】
本明細書中に開示されている実施形態に従うバイオディーゼルの製造
バイオディーゼルは、均一触媒及び固体触媒の存在下で植物油及び動物脂のメタノールとのエステル交換を実施することにより製造されてきた。バイオディーゼルを製造するための供給原料は高級脂肪酸のエステルである植物油及び動物脂である。用語「脂」(液体ならば、植物または動物油)は通常脂肪酸のグリセロールとのエステル(グリセリド)に限定され、用語「ワックス」は他のアルコールのエステルに限定される。バイオディーゼルの製造に関与する基本的化学は天然エステル(主に、グリセリド)の第1級アルコール(典型的には、メタノールまたはエタノール)との接触交換反応である。塩基(通常、NaOH、KOH、カリウムメトキシドまたはナトリウムメトキシド)のアルコール溶液が触媒として使用され得る。従って、バイオディーゼルは各種の飽和及び不飽和脂肪酸のメチルまたはエチルエステルの混合物である。共生成物はグリセロールであり、その量は16〜25重量%である。バイオディーゼルは、供給物中の水の量または使用する触媒に応じて幾つかの脂肪酸(エステルの加水分解生成物)を少量含有し得る。
【0282】
【化6】
天然産物グリセリドのアルキル基R1、R2及びR3は通常鎖長及び不飽和度に違いがある。アルキル基は通常直鎖であり、4〜26の範囲の偶数個の炭素原子を有する。例外は、イルカ中に比較的大量に存在する分岐状イソ吉草酸(CH3)2CHCH2COOHである。幾つかの不飽和脂肪酸はアルキル鎖中に2または3個の二重結合を有する。不飽和脂肪酸はその同等飽和脂肪酸よりも低い融点を有している。不飽和脂肪酸の鎖長は通常C10−C24の範囲である。カノーラ油はコーン油よりもC16−C20鎖長中に多くの不飽和を有している。
【0283】
一般的に、塩基触媒はカルボン酸エステルのアルコールとのエステル交換のために酸触媒よりも有効である。従来技術(背景技術の欄を参照されたい)に開示されている不均一触媒も塩基触媒である。残念ながら、活性触媒成分は反応条件下で固体触媒から浸出して、触媒失活が生ずる。アルミン酸亜鉛触媒は余り活性でない触媒であり、多くの塩基触媒(例えば、MgOまたはCaO)よりも高い反応温度及び遅い供給速度を必要とする。しかしながら、後者はアルミン酸亜鉛よりも固体触媒からより一層早く浸出する。
【0284】
植物油または動物脂のエステル交換は、沸騰型反応器、パルスフロー反応器または接触蒸留カラムにおいて固体触媒の存在下でメタノールまたはエタノールを用いて、供給混合物中に微量の可溶性接触成分を存在させて1ステップまたは2ステップ反応で実施され得る。出発触媒は、担体(例えば、シリカ、アルミナ炭素及び/または炭素質材料)上に担持させて金属酸化物(例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ランタン等)を含み得る。炭素及び炭素質担体が担体の表面上に有機金属化合物を固定化させるために表面官能基(例えば、ヒドロキシル、カルボニルまたはその両方)を有していることが好ましい。
【0285】
担持金属酸化物、水酸化物またはオキシ水酸化物を作成するために表面官能基が不要なことがある。炭素質担体は、炭水化物(例えば、木材、ヤシ殻、澱粉、セルロース、澱粉とセルロースの混合物、糖、メチルセルロース等)を高温で制御熱脱水することにより作成され得る。炭素質担体は担持されていなくても担持されていてもよい。担持炭素質材料を作成するためには、炭水化物を適当な多孔質担体上に堆積させた後、不活性雰囲気または不活性ガス、少量の酸素または蒸気、またはその両方から構成される雰囲気中で300℃〜1000℃の高温で制御熱脱水する。炭素質材料に対する担体は任意の無機材料(例えば、アルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニア、クレー、シリカ−アルミナ等)であり得る。
【0286】
2ステップ方法では、第1反応器後でのトリグリセリドの変換率は約90%以上であり得る。第1エステル交換反応器からの反応生成物流中の残留する未変換トリグリセリド、ジグリセリド及びモノグリセリドは第2エステル交換反応器において完全に変換され得る。エステル交換は2相反応であるので、沸騰型またはパルスフロー反応器中でエステル交換を実施すると、大きなトリグリセリド分子、メチルエステル及び粘性のグリセロールが触媒細孔を介してバルク液体媒体と殆どの触媒反応が生じる触媒ペレットの内部の間をあちこち移動するのが促進される。高い生産性が得られる。本明細書中に開示されている触媒は高い活性を有しているので、エステル交換をより低い温度及び圧力で実施し得る。このことは建築費及び光熱費が少ないことを意味する。
【0287】
反応器への供給物流に対する可溶性触媒成分の添加は、幾つかの実施形態では約0.5重量ppm〜約500重量ppm、他の実施形態では約5重量ppm〜約250重量ppm、他の実施形態では10重量ppm〜50重量ppmである。可溶性触媒化合物の例には、その中でも亜鉛2−メトキシエトキシド、カルシウム2−メトキシエトキシド、亜鉛2−メトキシプロポキシド、亜鉛エトキシド、亜鉛アルコキシアルキルカーボネート、カルシウム2−メトキシプロポキシド、カルシウムエトキシド、カルシウムメトキシド、カルシウムアルコキシアルキルカーボネート、マグネシウム2−メトキシエトキシド、マグネシウム2−メトキシプロポキシド、マグネシウムエトキシド、マグネシウムメトキシド、マグネシウムブトキシド、マグネシウムアルコキシアルキルカーボネート、ランタンアルコキシド、ランタンアルコキシアルキルカーボネート、カルボン酸の亜鉛塩、カルボン酸のマグネシウム塩、カルボン酸のカルシウム塩、並びにMg、Ca及びZnグリセリドが含まれる。これらの混合物を使用してもよい。Ca、Mg、Zn及びLaの可溶性化合物は、液相中または液体と蒸気の存在下でこれらの金属の酸化物または水酸化物を有機カーボネートまたは有機カーボネートとアルコールの混合物、カルボン酸、または有機カルボン酸とアルコール(例えば、メタノール、2−メトキシエタノール等)の混合物と93℃〜260℃(200°F〜500°F)、好ましくは121℃〜232℃(250°F〜450°F)の温度で反応させることにより得られ得る。場合により、再循環のために金属成分を回収するように選択してもよい。こうして調製した溶液は、長い触媒サイクル時間を得るために反応器への供給物流に微量の上記金属を添加するために有用である。固体金属アルコキシド、金属水酸化物または金属酸化物触媒上の活性金属または金属成分の総量は、幾つかの実施形態では約0.05重量%〜約20重量%、他の実施形態では約0.07重量%〜約12重量%である。
【0288】
場合により、ジ−またはモノ−グリセリドの全部または一部は、第2反応器または場合により第3反応器におけるメタノールとのエステル交換に加えて、DMC、メチル2−エチル−1−ヘキシルカーボネート、メチルカルバメート、2−エチル−1−ヘキシルカルバメート、尿素またはこれらの混合物との反応により有機カーボネート、有機カルバメートまたはその両方に変換され得る。得られた有機カーボネート及びカルバメートは微粒子、NOx放出を減少させたり、ジーゼルセタンを向上させるためのバイオディーゼル添加剤として役立ち得る。
【0289】
天然植物油は少量の各種遊離脂肪酸を含有し得るので、遊離脂肪酸は固体塩基触媒の存在下でアルコールとのエステル交換を実施する前に予備処理により除去されなければならない。予備処理方法の例は酸触媒の存在下での遊離脂肪酸のメタノールとのエステル交換である。前記酸触媒の1つは炭素質担体上に固定化したスルホン酸である。担体には、多孔質担体上に担持または堆積させたヤシ殻または炭水化物を制御熱脱水することにより作成されるものが含まれ得る。接触蒸留反応器において固体酸触媒の存在下で遊離脂肪酸のアルコールとのエステル化反応を実施することは、反応ゾーンから水が頭上流として連続除去され、エステル化反応を完了に向けて進め、トリグリセリドのアルコールとのエステル交換を実施する前にエステ化生成物を別に乾燥するステップを排除できるという利点を有する。別の重要な利点はエステル化時間が短いことである。
【0290】
以下の実施例におけるエステル交換反応はすべて下向流反応器において実施した。固定床反応器の寸法は直径1.3cm(1/2インチ)×長さ53.3cm(21インチ)であった。反応器は別々にコントロールされる頂部及び底部加熱ゾーンを有していた。供給物メタノール流及び植物油流(植物油中6重量%のメタノール)を2つの流れが触媒反応ゾーンを流下する反応器の頂部区画に別々にポンプ輸送した。微量の可溶性触媒成分をメタノール流または既に部分的に変換された生成物流に混合した。固体触媒の容量は15mlであった。
【0291】
実験17
本実験の目的は、下向流沸騰型反応器または接触蒸留反応器における固体触媒の存在下でのカノーラ油のメタノールとのエステル交換を立証することであった。固体触媒はシリカゲル上に担持させたMgOである。
【0292】
硝酸マグネシウム溶液は、Mg(NO3)2・6H2O(10.96g)を脱イオン水(24g)中に溶解することにより調製した。この硝酸マグネシウム溶液を30ml(11.91g)のシリカゲル球状担体(1.7〜4mmの直径;約6個のヒドロキシル基/mm2,314m2/gのBET,1.055cm3/gの細孔容積及び13.46nmの平均細孔直径)にインシピエント・ウェットネス技術により含浸させた。シリカゲル球状担体はオイル滴下技術により作成した。含浸生成物を100℃で1時間乾燥した後、510℃で2時間か焼した。
【0293】
15ml(6.30g)のMgO/SiO2触媒を反応器に充填した。カノーラ油供給物(地元の食料品店から購入)は、メタノール(5.39重量%)をカノーラ油(94.6重量%)と混合することにより調製した。この供給物の遊離脂肪酸の酸価は0.48mg KOH/gであった。カノーラ油のメタノールとのエステル交換は、165℃(330°F)及び19.4バール(267psig)でカノーラ油供給物及びメタノールを各々0.2ml/分で供給することにより実施した。マグネシウムエトキシドをメタノール供給物中に溶解して、触媒反応ゾーン中Mgを28重量ppmとした。
【0294】
流出液流は2つの透明な層から構成されていた。上層は生成物メチルエステル及び少量の未変換トリグリセリドを含有している。上層からのメタノールを除いて、反応生成物中の未変換トリグリセリドの平均含量は約1.2重量%であった。下層は殆どの未変換トリグリセリドを含有している。結果は適当な触媒性能を示す図17に図示する。
【0295】
実験18
本実験の目的は、第1反応器からの流出液流(放置すると2層)中の残留する変換されていないまたは部分的に変換された材料を第2下向流沸騰型反応器または接触蒸留反応器において変換し、または場合により単一エステル交換反応器の前面に再循環することを立証することであった。
【0296】
硝酸マグネシウム溶液は、Mg(NO3)2・6H2O(9.04g)を脱イオン水(19.1g)中に溶解することにより調製した。この硝酸マグネシウム溶液を22ml(9.14g)のシリカゲル球状担体(9〜14メッシュ,309m2/gのBET及び1.03cm3/gの細孔容積)にインシピエント・ウェットネス技術により含浸させた。含浸生成物を150℃で1時間乾燥した後、510℃で2時間か焼した。完成触媒は4.5重量%のMgを含んでいた。
【0297】
実験13において使用した同一反応器に15ml(7.2g)のMgO/SiO2触媒を充填した。カノーラ油のメタノールとの第1エステル交換反応からの複合生成物の2層を、第2エステル交換反応のための供給物として使用するために複合生成物から分離漏斗を用いて分離した。底部複合生成物供給物の組成は、25.4重量%のトリグリセリド、8.5重量%のジグリセリド、3.1重量%のモノグリセリド、0.1重量%のグリセリン、47.1重量%のメチルエステル及び15.8重量%のメタノールであった。供給物は約8.5重量ppmの可溶性Mg種を含んでおり、0.32mg KOH/gの遊離脂肪酸値を有していた。エステル交換は、160℃(320°F)及び19.5バール(268psig)で0.12ml/分の供給物及び0.10ml/分のメタノールを下向流沸騰型反応器にポンプ輸送することにより実施した。2つの供給物流のいずれにも追加のMgアルコキシドを添加しなかった。反応器流出液流は透明な明黄色溶液(単一層)であった。
【0298】
頂部複合生成物供給物の組成は、1.12重量%のトリグリセリド、0.57重量%のジグリセリド、3.78重量%のモノグリセリド、7.47重量%のメチルエステル、0.03重量%のグリセリン及び87.03重量%のメタノールであった。この供給物の遊離脂肪酸値は0.51mg KOH/gであった。エステル交換は、同一の触媒を用いて同一の温度及び圧力で0.2ml/分の供給物流速で実施した。反応器に追加のメタノールをポンプ輸送しなかった。過剰のメタノールを留去し、粗なバイオディーゼルを回収するために複合頂部及び底部複合生成物供給物からのこれらの2つの最終エステル交換生成物を合体した。回収した粗なバイオディーゼルは、0.36重量%の未変換トリグリセリドを含んでおり、0.74mg KOH/g 遊離脂肪酸値を有していた。
【0299】
上記実験結果は、固体触媒の存在下で植物油のアルコール(例えば、メタノール)とのエステル交換を実施することによりバイオディーゼルが製造され得ることをうまく立証している。
【0300】
触媒系
本明細書中の各種実施形態について記載したように、反応器中の反応ゾーンまたは触媒床は本明細書中に開示されている実施形態に従って1つ以上のアルコーリシス触媒を含み得、反応ゾーンまたは触媒床が2つ以上の不均一触媒、固体触媒またはその組合せを有していることも包含される。例えば、触媒は2つ以上の金属酸化物、すなわち担体上に堆積または固定化させた2つ以上の異なる金属酸化物を有する混合金属酸化物触媒を含み得、金属酸化物または混合金属酸化物は多孔質であってもよい。
【0301】
本明細書中で使用されている固体または不均一触媒は、触媒の活性金属成分だけでなく、それ自身により触媒を区別し得る担体の特性を指す。例えば、異なる物性(例えば、結晶性、ポロシメトリー、密度、サイズ等)を有するが、同一の化学組成を有する2つの異なる触媒担体は本明細書中で2つの異なる担体と定義される。
【0302】
同様に、固体または不均一触媒は担体上の活性成分の濃度、例えば担体上1重量%の金属酸化物対3重量%の金属酸化物に基づいて異なり得る。各触媒は類似の金属酸化物、並びに類似の担体組成及び構造を有し得るが、金属充填により実質的に異なる触媒挙動を生じ得る。
【0303】
よって、本明細書中に開示されている実施形態において使用されている「2つ以上の」触媒は複数の活性触媒成分、異なる担体構造/組成、活性成分の異なる充填量、或いは金属元素、金属充填量及び担体の組合せまたは変更を有する触媒を含み得る。
【0304】
本明細書中に開示されている実施形態に従う2つ以上の触媒を有する反応ゾーンは有利には触媒の異なる特性を利用し得る。例えば、接触蒸留反応ゾーンは最小の重合または汚損で所望の変換率を与えるように複数の触媒を含むように製作され得る。例えば、低い活性及び/または高い選択率を有する触媒は、ポリマー前駆体の濃度が最高であり得る触媒床の部分に使用され得る。或いは、大きい平均細孔直径または有利には蒸留カラム反応器中の液体トラフィックにより触媒から不純物を洗浄できる他の特性を有する触媒は、ポリマー前駆体の濃度が最高であり得る反応ゾーンの底部に向かって使用され得る。高い活性または高い表面積を有する触媒は、ポリマー前駆体濃度が低い触媒床の部分に選択的に配置され得る。このように、触媒床は所望の変換率(活性及び選択率)を与え、触媒床内の触媒の汚損が少ないまたは全くなく、よって触媒サイクル時間を延長させ、反応器性能を高めるように製作され得る。
【0305】
水
上述したように、供給物流の水分含有量は、幾つかの実施形態では約700ppm未満、他の実施形態では約600ppm未満であるようにコントロールされ得る。供給物流中または反応ゾーン中に微量の水を使用すると触媒サイクル時間が改善され及び/または固体触媒上の重質ポリマー材料の蓄積が減少し、その結果失活速度がより遅くなり得ることが予期せぬことに知見された。
【0306】
1つの理論に縛られないが、水の存在下で不均一及び均一触媒を用いると触媒性能が改善されるメカニズムは十分に理解されていないことに注目されたい。しかしながら、(a)触媒上へのポリマーの沈着が触媒を失活させること及び(b)反応条件下での活性金属の固体触媒からの浸出が触媒を永久的に失活させることに注目されたい。微量の水の使用により、(a)本明細書中に開示されている実施形態においてエステル交換及び/または不均化反応中に形成され得るポリマーが解重合され得及び/または(b)反応条件下で担体に対して1つ以上の浸出触媒または添加均一触媒を固定する、堆積させるまたはつなぎ留めるように反応に関与し得ると理論上想定される。供給物中のまたは反応ゾーンに直接または間接的に水を注入することにより添加された約600重量ppm未満の量の微量の水により、解重合、現場触媒再活性化またはその組合せの効果が得られ得る。
【0307】
しかしながら、供給物流または反応ゾーン中の余りに多い水は、可溶性触媒が沈殿したり及び/または固体触媒上にゲルが形成され、これらが反応器の運転及び最適の触媒性能に関連する望ましくない問題を引き起こす恐れがあるので避けなければならない。本明細書中に開示されている実施形態における供給物流または反応ゾーン中の微量の水は、約1重量ppm〜約600重量ppm、他の実施形態では約2重量ppm〜500重量ppm、他の実施形態では約5重量ppm〜約400重量ppm、さらに他の実施形態では約50重量ppm〜約250重量ppmの範囲であり得る。
【0308】
再び図19及び20を参照すると、本明細書中に開示されている実施形態に従ってジアリールカーボネートを製造するための各フロースキームでは水は反応副生成物として生成され得る。図19の方法に関して、水はグリコールを脱水してエポキシドを形成する間に生成され得る。図20の方法に関して、水はアンモニア及び二酸化炭素からの尿素の合成中に製造され得る。これらの反応ステップから回収された水を1つ以上のエステル交換及び/または不均化反応ゾーンへの添加水として使用して、各反応ゾーン内の水を上記した範囲に維持し得る。
【0309】
反応器中に使用される内部デバイス
上記したように、本明細書中に開示されている実施形態において使用される反応器は、エステル交換を液相中または液体と蒸気の二相の存在下で実施するための各種運転モードのために任意の物理的形状を有し得る。任意のタイプの反応器が本明細書中に記載されている反応を実施するために使用され得る。有機カーボネートまたは有機カルバメート反応を含む反応を実施するのに適した反応器の例には、蒸留カラム反応器、分壁蒸留カラム反応器、慣用の管状固定床反応器、バブルカラム反応器、場合により蒸留カラムを備えたスラリー反応器、パルスフロー反応器、スラリー固体触媒がカラムを流下する接触蒸留カラム、またはこれらの反応器の組合せが含まれ得る。
【0310】
本明細書中に開示されている実施形態において使用される反応器は、更に蒸気−液体分離のため及び蒸気−液体トラフィックを反応器内へ向けるための内部物理デバイスまたは2つ以上の内部デバイスの組合せを含み得る。各種内部デバイスは任意の形状の物理デバイスであり得、その1つ以上のデバイスが効果的蒸気−液体分離及び蒸気−液体トラフィックを促進する限り複数の目的を有し得る。
【0311】
吸熱平衡反応を取り扱う場合、高変換率のために効果的蒸気−液体分離及び蒸気−液体トラフィックの両方を同時に実施することが必要であり、気化熱及び反応熱の2つの合わさった作用のために反応媒体の冷却効果により複雑になる。高変換率を達成するためには、反応生成物の1つを液体反応媒体から蒸気相に除去しなければならず、次いで蒸気を反応ゾーンから素早く除去しなければならず、これには気化熱及び効果的蒸気トラフィックを必要とする。このようなケースの例がジアルキルカーボネート(例えば、DEC)のフェノールとのエステル交換である。その結果、液体反応媒体が冷却され、これにより変換率が低下する。気化熱及び反応の吸熱性は相反しており、そのために変換率が低下する。慣用の管状プラグフロー反応器では、内部加熱システムを使用し得、または反応器間を間断的に加熱する複数の小型反応器を使用し得る。
【0312】
気体及び液体を効果的に分離し、吸熱反応のための熱を供給する内部補助デバイスの1つ以上を反応ゾーン中に使用し得る。前記デバイスは、反応ゾーンの中間に内部的に熱を供給する接触蒸留カラムに対するデバイスを1つ以上有する液体再分配トレーであり得る。前記した1つ以上のデバイスは高変換率を得るために蒸気の液体からのより効果的な分離を促進し、吸熱反応のための熱を供給しなければならない。ジアルキルカーボネート(例えば、DEC)のフェノールとのエステル交換または環状カーボネートのエタノールとのエステル交換は、固体触媒、均一触媒またはその両方の使用に関わらず接触蒸留カラムの反応ゾーン中に1つ以上の前記デバイスを使用することにより利益を得なければならない。
【0313】
発熱反応の場合、通常低い選択率及び/または低い触媒性能をもたらす暴走反応または反応ゾーンの乾燥(低い液体トラフィック)を防止するために内部冷却デバイスを使用し得る。内部デバイスは蒸気−液相の分離のために効果的であり、蒸気−液体トラフィックを促進しなければならない。
【0314】
内部加熱または冷却デバイスは、カラム内でDECを部分的に凝縮させ、フェノールを大部分凝縮させるようにカラム内の任意の高さに、例えばエステル交換反応器のようなカラムの精留区画の頂部に配置され得る。
【0315】
上記したように、本明細書中に開示されている実施形態は、供給物に微量の可溶性有機金属化合物を導入することにより各種固体触媒に対して長い触媒サイクル時間を与える。本明細書中に開示されている他の実施形態は、有機カーボネートまたは有機カルバメートを安定な速度で連続的に製造するための方法;固定化固体触媒を現場作成するための技術;商業用固定床反応器のために適するように長い触媒サイクル時間及び使用可能時間のために安定な触媒活性を維持するための技術;及び失活した固体触媒の現場再活性化方法を含み得る。
【0316】
有利には、本明細書中に開示されている実施形態は、長いサイクル寿命を有し、よって頻繁な運転停止及び触媒交換に関連する運転コストが低下するエステル交換触媒を提供し得る。加えて、使用する可溶性有機金属化合物が微量であるために、均一触媒の各種生成物流からの除去を実質的に減じ得る。
【0317】
開示は限定数の実施形態しか含んでいないが、この開示の利益を受けている当業者は、本発明の範囲を逸脱しない他の実施形態を考えつくことができることを認識している。従って、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている実施形態は、概してアルコーリシス、エステル交換及び不均化を含む反応のための方法及び固体触媒に関する。より具体的には、本明細書中に開示されている実施形態は、固体触媒を用いるアルコーリシス、エステル交換及び/または不均化を介する有機カーボネート、有機カルバメート及び他の生成物の連続製造方法に関する。特に、本明細書中に開示されている実施形態はジアリールカーボネートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エステル交換、すなわちエステルのアルコールとの交換反応(アルコーリシス反応)は酸及び塩基触媒により触媒され得る反応の重要なクラスである。エステル交換の例には、一般的には反応物質、生成物またはその両方として有機カーボネート及びカルボン酸エステルを伴う化学反応が含まれる。他のエステル交換反応にはトリグリセリドのエタノールまたはメタノールとのエステル交換によるバイオディーゼルの製造が含まれる。アルコーリシスは、一般的には化合物の1つ以上の官能基をアルコール(アルキルまたはアリールヒドロキシル化合物)のアルコキシまたはアリールオキシ基で置換する反応である。アルコーリシスの例には、アミン基をアルコキシ基で置換して有機カルバメート及びカーボネートを製造する尿素を伴う化学反応が含まれる。
【0003】
カルボン酸エステルは、酸及び塩基触媒の存在下でカルボン酸エステルをアルコールとエステル交換することにより製造される。硫酸(均一)及び酸樹脂(固体)が好ましい酸触媒である。可溶性塩基、例えばNaOH及びKOH、各種Na/Kアルコキシドまたはアミン(均一)、及び各種塩基樹脂(固体)が好ましい塩基触媒である。触媒はカルボン酸エステルのエステル交換のための均一触媒または不均一触媒であるが、塩基触媒は通常酸触媒よりもより有効である。例えば、長鎖アルキルメタクリル酸エステルは塩基触媒の存在下でのメタクリル酸メチルの長鎖アルコールとの交換反応により製造される。
【0004】
バイオディーゼルは、米国特許Nos.6,712,867及び5,525,126に開示されているナトリウムメトキシドまたは酢酸カルシウムのような均一塩基触媒、及び酸化亜鉛とアルミナの混合酸化物またはアルミン酸亜鉛(アルミナに担持させ、高温でか焼させた酸化亜鉛)のような塩基固体触媒を用いることにより植物油(トリグリセリド)をメタノールまたはエタノールとエステル交換して製造され得る。固体アルミン酸亜鉛触媒は、例えば米国特許No.5,908,946及び米国特許出願公開No.2004/0034244に開示されている。
【0005】
米国特許No.5,908,946は、固体触媒(例えば、酸化亜鉛またはスピネル型アルミン酸亜鉛)の存在下で植物油または動物油をアルコールと反応させることによりエステルを製造するための2ステップ方法を開示している。第1ステップでは、トリグリセリドを高い変換率、通常90%より高い率で変換させる。第2ステップでは、残留するトリグリセリド、ジグリセリド及びモノグリセリドを変換させる。エステル交換は230〜245℃の温度、約5.2バール(約725psia)で実施される。高い変換率には供給混合物の流速は比較的遅くなければならない(0.5h−1以下の空間速度)。
【0006】
米国特許No.6,147,196は、不均一触媒(アルミン酸亜鉛)の存在下で植物または動物油から高純度の脂肪酸エステルを製造する方法を開示している。米国特許出願公開No.2004/0034244は、不均一触媒(アルミン酸亜鉛)の存在下で植物または動物油及びアルコールからアルキルエステルを製造するためのプロセッシングスキームに関する。エステルは2つの固定床反応器でのエステル交換により製造される。トリグリセリドの高変換率は第1反応器で得られた。グリセロールを第1エステル交換反応流から分離した後、残留する未変換トリグリセリド、ジグリセリド及びモノグリセリドを第2反応器においてエステルに変換させる。エステル交換は200℃、約62バール(900psia)及び0.5h−1空間速度で実施される。
【0007】
W.Xieら(J.Mol.Cat.A:Chem.,246,2006,p.24−32)は、か焼Mg−Alハイドロタルサイト触媒の存在下での大豆油のメタノーリシスを検討している。500℃でのか焼から誘導されるMg/Al比が3.0のか焼ハイドロタルサイトはこの反応のために高い塩基度及び優れた触媒活性を与えることができる触媒である。彼らは、各種温度でか焼したハイドロタルサイトの可溶性塩基度を報告している。
【0008】
ディーゼルエンジンはガソリンエンジンよりもより多くの微粒子及びNOxを放出する。ジアルキルカーボネートはディーゼルエンジン排気中の微粒子を低減させるのに有効であると報告されている。米国特許No.5,954,280によれば、尿素及びアンモニアがNOx低減剤として有効である。しかし、ディーゼルエンジンに対して尿素及びアンモニアを使用することは実際的な問題または不都合を有する。米国特許No.6,017,368はエチルカルバメートがディーゼルエンジンからNOxを低減させる際に有効であると開示している。米国特許No.4,731,231(1988)は、昇華シアヌル酸がNOxを除去または低減させるための有効な物質であり得ることを報告している。シアヌル酸を高温で昇華させると、NOxの除去に関与すると考えられているイソシアヌル酸(HNCO)が生ずる。EP 0363681及びEP 0636681は、低発煙潤滑剤の成分としての脂肪族トリオールまたはテトラオールのカーボネートエステルを開示している。
【0009】
N−アリールメチルカルバメートは、触媒の非存在下では反応速度が遅いので、典型的には塩基触媒の存在下で芳香族アミンをジメチルカーボネートと反応させることにより製造される。N−アリールメチルカルバメートを高温で分解すると、芳香族イソシアネートが生じ得る。例えば、トルエンジカルバメートは触媒の存在下でトルエンジアミンをジメチルカーボネートと反応させることにより製造される。トルエンジカルバメートを高温で分解すると、トルエンジイソシアネートが生ずる。
【0010】
有機カーボネート(炭酸のジエステル)は溶媒、アルキル化剤、カルボニル化剤、共重合剤、燃料添加剤等として使用され得る有用な化合物である。ジメチルカーボネート(DMC)は、ジフェニルカーボネート(DPC,ジアリールカーボネート)を製造するための原料として通常使用されている重要なジアルキルカーボネートである。DMCを商業製造するために各種方法がある。1つの商業方法では、DMCは均一触媒の存在下で環状カーボネートをメタノールとエステル交換することにより製造されている。特許は環状カーボネートをメタノールとエステル交換するための均一触媒または不均一触媒の使用を開示しているが、多分当該方法のための不均一触媒のサイクル寿命が短いためにDMCの製造のために不均一または固体触媒を使用することは現在商業的に実施されていない。通常DPCをジオール(例えば、ビスフェノールA)と共重合すると、ポリカーボネートが製造される。ポリカーボネートはメモリーディスク、風防ガラス、エンジニアリングプラスチックス、光学材料等のような各種特殊用途において使用されている。
【0011】
非ホスゲンプロセスを用いてジアリールカーボネートを製造するための一般的技術は、一連の複数の反応蒸留反応器を用いて、DMCをフェノールとエステル交換してメチルフェニルカーボネート及びメタノールを製造した後、均一有機金属触媒の存在下でメチルフェニルカーボネートを不均してDPC及びDMCを製造することにより芳香族カーボネート(例えば、DPC)を製造している。好ましい均一触媒はチタンアルコキシドである。前記方法は、例えば米国特許Nos.4,045,464、4,554,110、5,210,268及び6,093,842に開示されている。均一触媒は生成物流の最も重質な部分から固体として回収され、これはその後再循環させるために可溶性均一触媒に変換され得る。
【0012】
DPCの製造において均一触媒を使用することは多くの場合均一触媒の生成物からの分離が必要であり、特に触媒を比較的高い供給物速度で使用している場合がそうである。このこと及びジアリールカーボネートを製造するための均一触媒の使用に関連する他の欠点を解決するために、米国特許Nos.5,354,923及び5,565,605、並びにPCT出願公開WO 03/066569は不均一触媒を用いる代替方法を開示している。例えば、米国特許No.5,354,923は、DECまたはDMC及びフェノールからのEPC、MPC及びDPCの製造を立証するために粉末状の酸化チタン触媒を開示している。米国特許No.5,565,605は、4族元素を含有するミクロ細孔性材料をエステル交換及び不均化用触媒として開示している。しかしながら、粉末状固体触媒は、典型的にはDPCまたはメチルフェニルカーボネートを大量に商業製造するためには不適であるかまたは余り好ましくない。WO 03/066569は、2ステップ固定床プロセスでシリカ上に酸化チタンを担持させることにより作成した不均一触媒の存在下でDMCをフェノールと反応させることによるDPCの連続製造方法を開示している。
【0013】
Z−H Fu and Y.Ono(J.Mol.Catal.A.Chemical,118(1997),p.293−299)及びJP出願No.HEI 07−6682は、DMCをフェノールとエステル交換してMPCとし、無機担体(例えば、シリカ、ジルコニアまたはチタニア)上に担持させたMoO3またはV2O5の存在下でMPCをDPCに不均化することによるジフェニルカーボネートを製造するための不均一触媒を開示している。エステル交換及び不均化は、共生成物を蒸留により除去しながら反応器及び蒸留塔からなる反応器−蒸留塔において実施されている。
【0014】
米国特許出願公開Nos.2007/0093672(’672)(現在、米国特許No.7,378,540)及び2007/0112214(’214)(現在、米国特許No.7,288,668)は、不均一触媒の存在下でのDPCを含めたジアリールカーボネートのような各種有機カーボネートの製造方法を開示している。’214公開明細書では、必要な反応(エステル交換及び不均化)を不均一触媒の存在下で液相中で実施している。エステル交換及び不均化反応のための複数の固定床反応器を1つの蒸留カラムに接続し、蒸留カラムではエタノール及びDECのような軽質化合物を頭上フラクションとして除去し、DPCを含めた高沸点化合物を混合底部フラクションとして除去する。次いで、底部フラクションからDPCを回収する。
【0015】
’672公開明細書は、エステル交換及び不均化のための各種固体触媒を用いて二相(蒸気及び液体)中で必要な反応を実施することによるジアリールカーボネート及びジアルキルカーボネートの製造方法を開示している。有機カーボネートを製造するための化学反応は一連の固定床反応器において、望ましくない平衡反応を所望生成物にシフトするために液相中の軽質共生成物を蒸気相に分離しながら実施される。この方法は、EPC(エチルフェニルカーボネート)のようなアルキルアリールカーボネート及びDPC(ジフェニルカーボネート)のようなジアリールカーボネートを製造するために特に有用である。この方法はジアルキルカーボネート(例えば、DEC)を製造するためにも有用である。一連の固定床反応器は横抜き流及び戻り流を介して単一蒸留カラム上の異なる位置で接続している。蒸留カラムは一連の反応器中の最後の反応器の上及び一連の反応器中の第1反応器の下に分離段をも含み得る。不均一触媒は、多孔質担体(例えば、シリカゲル)上にTi、Zr、Nb、Hf、Ta、Mo、V、Sb等の1つまたは2つの金属酸化物を堆積させることにより作成され得る。不均一触媒は、表面ヒドロキシル基またはヒドロキシル基とアルコキシ基の混合物を有する多孔質担体上にTi、Zr、Nb、Hf、Ta、Mo、V、Sb等の元素からの1つ以上の有機金属化合物をグラフトすることによっても作成され得る。
【0016】
不均一触媒を用いて有機カーボネートを製造するための各種の他の方法は米国特許Nos.5,231,212、5,498,743及び6,930,195に開示されている。
【0017】
P.Ballら(C1 Mol.Chem.,Vol.1,1984.p.95−108)は、各種均一または不均一触媒の存在下でのジアルキルカーボネート製造の化学を研究した。例えば、ジメチルカーボネートは尿素のアルコーリシスにより製造されている。ジブチルスズジメトキシドは特に有効な触媒として報告されている。不均一触媒は助触媒(例えば、4−ジメチルアミノピリジン及びPPh3)の存在下での化学に対しても有効であると報告されている。報告されている不均一触媒はAl2O3、Sb2O3及びシリカである。溶融SiO2はでないが、PPh3の存在下で触媒となる。
【0018】
米国特許No.7,074,951では、ジアルキルカーボネートは均一スズ錯体触媒の存在下、高沸点の電子供与原子を含有する溶媒(例えば、トリグリム)の存在下で尿素をアルコールでアルコーリシスにかけることにより製造されている。この特許はDMCを約1500時間連続的に製造できることも立証している。
【0019】
EP 1629888及びD.Wangら(Fuel Processing Tech.,88,8,2007,p.807−812)は、DMC及びDECが酸化亜鉛及びシリカ上に担持させた酸化亜鉛の存在下で製造され得ることを開示している。これらの刊行物は触媒安定性または触媒サイクル寿命について全く触れていない。
【0020】
エステル交換及び不均化反応中の触媒失活は触媒表面及び孔上に重質ポリマーが沈着することにより生じ得る。ポリマー沈着による触媒失活率は、反応混合物中のアルキルアリールカーボネート及びジアリールカーボネート、またはその両方の濃度に応じて上昇する。不均一触媒を用いるポリマーの解重合は’672公開明細書に開示されている。しかしながら、解重合では固体触媒活性が部分的にしか回復され得ない。
【0021】
米国特許Nos.6,768,020及び6,835,858は、固体触媒(例えば、アルミナ、シリカ等上に担持させた酸化ランタン及び酸化亜鉛)の存在下でプロピレンカーボネートをDMC及び/または水と反応させることによるジアルキルカーボネート及び共生成物プロピレングリコールの製造方法を開示している。米国特許No.6,768,020では、大量の酸化ランタンを担体(例えば、アルミナ及びシリカ)上に堆積させることにより触媒不安定性を部分的に解決している。
【0022】
触媒失活を補償するための好ましい技術は、触媒が失活するにつれて反応温度を上昇させる。残念ながら、この技術はしばしば不均一触媒の失活を促進させる。
【0023】
不均一触媒を用いる商業製造のためには固体触媒の長く安定な性能が通常要求されている。触媒コスト、触媒交換に関連するダウン時間及び当業界で公知の他の要因により、不均一触媒はプロセスに応じて典型的には3ヶ月、6ヶ月または1年以上の最短寿命を有していることを要求している。
【0024】
上に挙げた複数の特許及び刊行物に記載されているように各種エステル交換反応の不均一触媒作用が可能であるが、これらの文献は触媒の長寿またはサイクル寿命を報告していない。本発明者は、不均一触媒が望ましくないほど短いサイクル寿命しか有していないことを経験した。
【0025】
従って、改良された触媒性能を有する不均一触媒を用いるエステル交換及び/または不均化プロセスに対する要望がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】米国特許第6,712,867号明細書
【特許文献2】米国特許第5,525,126号明細書
【特許文献3】米国特許第5,908,946号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0034244号明細書
【特許文献5】米国特許第6,147,196号明細書
【特許文献6】米国特許第5,954,280号明細書
【特許文献7】米国特許第6,017,368号明細書
【特許文献8】米国特許第4,731,231号明細書(1988)
【特許文献9】欧州特許出願公開第0363681号明細書
【特許文献10】欧州特許出願公開第0636681号明細書
【特許文献11】米国特許第4,045,464号明細書
【特許文献12】米国特許第4,554,110号明細書
【特許文献13】米国特許第5,210,268号明細書
【特許文献14】米国特許第6,093,842号明細書
【特許文献15】米国特許第5,354,923号明細書
【特許文献16】米国特許第5,565,605号明細書
【特許文献17】国際公開第03/066569号
【特許文献18】特開平07−6682号公報
【特許文献19】米国特許出願公開第2007/0093672号明細書(現在、米国特許第7,378,540号明細書)
【特許文献20】米国特許出願公開第2007/0112214号明細書(現在、米国特許第7,288,668号明細書)
【特許文献21】米国特許第5,231,212号明細書
【特許文献22】米国特許第5,498,743号明細書
【特許文献23】米国特許第6,930,195号明細書
【特許文献24】米国特許第7,074,951号明細書
【特許文献25】欧州特許出願公開第1629888号明細書
【特許文献26】米国特許第6,768,020号明細書
【特許文献27】米国特許第6,835,858号明細書
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】W.Xieら,J.Mol.Cat.A:Chem.,246,2006,p.24−32
【非特許文献2】Z−H Fu and Y.Ono,J.Mol.Catal.A.Chemical,118(1997),p.293−299
【非特許文献3】P.Ballら,C1 Mol.Chem.,Vol.1,1984.p.95−108
【非特許文献4】D.Wangら,Fuel Processing Tech.,88,8,2007,p.807−812
【発明の概要】
【0028】
1つの態様で、本明細書中に開示されている実施形態は、反応物質及び微量の可溶性有機金属化合物を固体アルコーリシス触媒を含む反応器に供給することを含むアルコーリシスプロセスに関し、前記した可溶性有機金属化合物及び固体アルコーリシス触媒は各々独立してII族〜VI族元素を含む。固体触媒及び有機金属化合物は幾つかの実施形態において同一のII族〜VI族元素を含み得る。
【0029】
別の態様で、本明細書中に開示されている実施形態は、アルコール、及び尿素、有機カルバメート及び環状カーボネートの少なくとも1つを含むアルコーリシス反応物質を固体アルコーリシス触媒を含む第1反応ゾーンに供給し、可溶性有機金属化合物を第1反応ゾーンに供給することを含むジアルキルカーボネートの製造方法に関し、前記した固体アルコーリシス触媒及び可溶性有機金属化合物は各々独立してII族〜VI族元素を含む。
【0030】
別の態様で、本明細書中に開示されている実施形態は、芳香族ヒドロキシ化合物及びジアルキルカーボネートを固体エステル交換触媒を含む第1反応ゾーンに供給し、可溶性有機金属化合物を第1反応ゾーンに供給することを含むジアリールカーボネートの製造方法に関し、前記した固体エステル交換触媒及び可溶性有機金属化合物は各々独立してII族〜VI族元素を含む。
【0031】
別の態様で、本明細書中に開示されている実施形態は、芳香族ヒドロキシ化合物及びジアルキルカーボネートを固体エステル交換触媒を含む第1反応ゾーンに供給し、可溶性有機金属化合物を第1反応ゾーンに供給することを含むアルキルアリールカーボネートの製造方法に関し、前記した固体エステル交換触媒及び可溶性有機金属化合物は各々独立してII族〜VI族元素を含む。
【0032】
別の態様で、本明細書中に開示されている実施形態は、アルコール及びグリセリドを固体エステル交換触媒を含む第1反応ゾーンに供給し、可溶性有機金属化合物を第1反応ゾーンに供給することを含むバイオディーゼルの製造方法に関し、前記した固体エステル交換触媒及び可溶性有機金属化合物は各々独立してII族〜VI族元素を含む。
【0033】
別の態様で、本明細書中に開示されている実施形態は、芳香族ヒドロキシ化合物及びジアルキルカーボネートを固体エステル交換触媒を含む第1反応ゾーンに供給し、可溶性有機金属化合物を第1反応ゾーンに供給することを含むアルキルアリールカーボネートの製造方法に関し、前記した固体エステル交換触媒及び可溶性有機金属化合物は各々独立してII族〜VI族元素を含む。
【0034】
別の態様で、本明細書中に開示されている実施形態は、アルコール及びグリセリドを固体エステル交換触媒を含む第1反応ゾーンに供給し、可溶性有機金属化合物を第1反応ゾーンに供給することを含むバイオディーゼルの製造方法に関し、前記した固体エステル交換触媒及び可溶性有機金属化合物は各々独立してII族〜VI族元素を含む。
【0035】
別の態様で、本明細書中に開示されている実施形態は、固体アルコーリシス触媒上に沈着したポリマー材料を除去し、固体触上に触媒活性金属を再堆積させることを含む使用済固体アルコーリシス触媒の再活性化方法に関する。
【0036】
別の態様で、本明細書中に開示されている実施形態は、第1反応ゾーンにおいてエポキシド及び二酸化炭素を反応させて、環状カーボネートを含む第1反応生成物を形成し;第2反応ゾーンにおいて第1エステル交換触媒の存在下で環状カーボネートをエタノールとエステル交換して、ジエチルカーボネート及びグリコールを含む第2反応生成物を形成し;第2反応生成物を分離して、第1ジエチルカーボネートフラクション及び第1グリコールフラクションを回収し;第3反応ゾーンにおいて第2エステル交換触媒の存在下で第1ジエチルカーボネートフラクションの少なくとも一部をアリールヒドロキシ化合物とエステル交換して、エチルアリールカーボネート及びエタノールを含む第3反応生成物を形成し;第3反応生成物を分離して、エチルアリールカーボネートフラクション及び第1エタノールフラクションを回収し;第4反応ゾーンにおいて不均化触媒の存在下でエチルアリールカーボネートフラクションの少なくとも一部を不均化して、ジアリールカーボネート及びジエチルカーボネートを含む第4反応生成物を形成し;第4反応生成物を分離して、ジアリールカーボネートフラクション及び第2ジエチルカーボネートフラクションを回収し;第1エタノールフラクションの少なくとも一部を第2反応ゾーンに再循環させ;第2ジエチルカーボネートフラクションの少なくとも一部を第3反応ゾーンに再循環させることを含むジアリールカーボネートの製造方法に関する。
【0037】
別の態様で、本明細書中に開示されている実施形態は、第1反応ゾーンにおいてアンモニア及び二酸化炭素を反応させて、尿素を含む第1反応生成物を形成し;第2反応ゾーンにおいて第1エステル交換触媒の存在下で尿素をエタノールとエステル交換して、ジエチルカーボネート及びアンモニアを含む第2反応生成物を形成し;第2反応生成物を分離して、第1ジエチルカーボネートフラクション及び第1アンモニアフラクションを回収し;第3反応ゾーンにおいて第2エステル交換触媒の存在下で第1ジエチルカーボネートフラクションの少なくとも一部をアリールヒドロキシ化合物とエステル交換して、エチルアリールカーボネート及びエタノールを含む第3反応生成物を形成し;第3反応生成物を分離して、エチルアリールカーボネートフラクション及びエタノールフラクションを回収し;第4反応ゾーンにおいて不均化触媒の存在下でエチルアリールカーボネートフラクションの少なくとも一部を不均化して、ジアリールカーボネート及びジエチルカーボネートを含む第4反応生成物を形成し;第4反応生成物を分離して、ジアリールカーボネートフラクション及び第2ジエチルカーボネートフラクションを回収し;エタノールフラクションの少なくとも一部を第2反応ゾーンに再循環させ;第2ジエチルカーボネートフラクションの少なくとも一部を第3反応ゾーンに再循環させることを含むジアリールカーボネートの製造方法に関する。
【0038】
他の態様及び作用効果は以下の記載及び添付の特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本明細書中に開示されている実施形態に従うジアリールカーボネートの製造方法を図示する単純化したプロセスフロー図である。
【図2】本明細書中に開示されている実施形態に従うジアリールカーボネートの製造方法を図示する単純化したプロセスフロー図である。
【図3】本明細書中に開示されている実施形態に従うジアリールカーボネートの製造方法を図示する単純化したプロセスフロー図である。
【図4】均一触媒を用いるエステル交換のグラフ表示である。
【図5】本明細書中に開示されている実施形態に従って触媒を再活性化後の触媒活性のグラフ表示である。
【図6】本明細書中に開示されている実施形態に従って微量の可溶性有機金属化合物を反応器に添加したときの固体触媒活性のグラフ表示である。
【図7】本明細書中に開示されている実施形態に従って微量の可溶性有機金属化合物を反応器に添加したときの不均一触媒活性を固体触媒活性とグラフで比較する。
【図8】本明細書中に開示されている実施形態に従って微量の可溶性有機金属化合物を反応器に添加したときの固体触媒活性のグラフ表示である。
【図9A】本明細書中に開示されている実施形態に従って微量の可溶性有機金属化合物を反応器に添加したときのそれぞれEPC及びDPCの製造中の固体触媒活性のグラフ表示である。
【図9B】本明細書中に開示されている実施形態に従って微量の可溶性有機金属化合物を反応器に添加したときのそれぞれEPC及びDPCの製造中の固体触媒活性のグラフ表示である。
【図10】エステル交換反応を実施しながら触媒を同時にグラフトした場合のDPCの製造中の不均一触媒活性のグラフ表示である。
【図11】本明細書中に開示されている実施形態に従う固体触媒の非存在下でのEPCのDPC及びDECへの変換をグラフで図示する。
【図12】本明細書中に開示されている実施形態に従ってDEC及びプロピレングリコールを製造するための固体触媒の存在下でのプロピレンカーボネートのエタノールでのアルコーリシスからの結果をグラフで示す。
【図13】均一触媒を用いるDECの製造からの結果を示す。
【図14】本明細書中に開示されている実施形態に従って固体触媒を用いるDECの製造からの結果を示す。
【図15】本明細書中に開示されている実施形態に従って固体触媒を用いてジアルキルカーボネートを製造するための単純化したプロセスフロー図である。
【図16】本明細書中に開示されている実施形態に従って固体触媒を用いるエチルカルバメートからのDECの製造からの結果を示す。
【図17】本明細書中に開示されている実施形態に従って固体触媒を用いるカノーラ油のメタノールでのアルコーリシスからの結果を示す。
【図18】本明細書中に開示されている実施形態に従って固体触媒の存在下でプロピレンカーボネートをエタノールでアルコーリシスを実施することによりDEC及びプロピレングリコール共生成物を連続製造するための単純化したプロセスフロー図である。
【図19】本明細書中に開示されている実施形態に従うジフェニルカーボネート(DPC)の製造方法を図示する単純化したブロックフロー図である。
【図20】本明細書中に開示されている実施形態に従ってジフェニルカーボネート(DPC)を製造するための統合方法を図示する単純化したブロックフロー図である。
【図21】本明細書中に開示されている実施形態に従ってDEC及びプロピレングリコールを製造するための固体触媒の存在下でのプロピレンカーボネートのエタノールでのアルコーリシスからの結果をグラフで示す。
【図22】本明細書中に開示されている実施形態に従って固体触媒を用いるエチルカルバメートからのDECの製造からの結果を示す。
【図23】DPC製造方法における中間体生成物EPCを製造するためのDECのフェノールとの接触エステル交換からの結果をグラフで示す。
【図24】DPC及びDECを製造するためのEPCの接触不均化からの結果をグラフで示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
1つの態様で、本明細書中に開示されている実施形態は、固体触媒を用いるアルコーリシス、エステル交換及び/または不均化プロセスに関する。本明細書中で使用されている「アルコーリシス」は、有機ヒドロキシル化合物(アルコール)が2つの反応物質の1つとして関与して、生成物及び共生成物を製造する各種化学反応を表すように称される。アルコーリシスは、分子の炭素原子とヘテロ原子Yの結合(C−Y)のアルコール分子(ROH)による切断と定義され得る。アルコーリシスは分子のカルボニル基が関与する反応であり、カルボニル基それ自身は生成物分子中に保持される。従って、C−Y結合のC原子は分子のカルボニル基の炭素原子である。一般的に、アルコーリシスは可逆反応であり、以下のように表され得る:
【0041】
【化1】
式中、Yはヘテロ原子または官能基のヘテロ原子であり、Rbはアルキル、アリール、または1個以上のヘテロ原子を有する官能基である。
【0042】
アルコーリシス反応の例は、アルコールと炭酸のジエステル、カルボン酸のエステル、尿素及びカルバメートとの反応である。ジアルキルカーボネートのフェノールでのアルコーリシス(文献では、しばしばエステル交換と称されている)により、アルキルアリールカーボネート及びアルコールが製造される。カルボン酸のエステルのアルコールでのアルコーリシスにより、エステルのアルキル基がアルコール分子のアルキル基で交換されて、新しいアルコール分子が製造される。尿素のアルコールでのアルコーリシスにより、有機カルバメート及びアンモニアが製造される。有機カルバメートのアルコールでのアルコーリシスにより、ジアルキルカーボネート及びアンモニアが製造される。アルコーリシス反応の具体例は、EPC及びエタノールを製造するためのDECのフェノールとのエステル交換、有機カルバメートまたはジアルキルカーボネート及びアンモニアを製造するための尿素または有機カルバメートのアルコールでのアルコーリシス、メチルエステル(バイオディーゼル)及びグリセリンを製造するためのトリグリセリドのメタノールとのエステル交換である。
【0043】
非対称炭酸ジエステルの不均化及びジアルキルカーボネートの有機アミンとの反応では反応物質としてアルコールが関与しないが、RA基(Rはアルキルまたはアリールであり、Aは酸素原子または窒素原子である)が分子レベルで反応メカニズムに関与しているので、これらのタイプの反応も便宜上アルコーリシス反応と定義される。従って、各種実施形態を説明するために必要によりエステル交換及び不均化がアルコーリシスと同義語として使用されている。上に挙げたアルコーリシス反応の幾つかは以下の反応で表され得る:
【0044】
【化2】
別の態様で、本明細書中に開示されている実施形態は、固体触媒の触媒活性を長いサイクル時間の間維持するための新規技術に関する。本明細書において固体触媒のサイクル時間またはサイクル寿命は、固体触媒を意図する化学反応のために中断することなく連続的に使用し得る時間であると定義される。例えば、6ヶ月連続使用後触媒の触媒再生または交換が必要であるならば、触媒サイクル寿命または時間は6ヶ月である。本明細書中に開示されている技術によれば、アルコーリシスプロセスのための固体触媒は各種実施形態において触媒活性を長いサイクル時間、例えば3ヶ月以上、6ヶ月以上、1年以上、1.5年以上、2年以上、またはそれ以上保持し得る。
【0045】
DECのフェノールとのエステル交換中、不均一触媒(シリカ上に担持させた酸化チタン、及びニオブと酸化チタンの混合酸化物)の失活が本発明者により観察され、’672公開明細書の試験4に報告された。触媒活性を改善するために触媒上に沈着したポリマーの解重合も’672公開明細書の試験6Bで立証された。しかしながら、解重合により触媒再生しても、元の触媒活性は部分的にしか回復しなかった。触媒失活の種類はこの時点で十分に解明されていなかった。
【0046】
驚くことに、DPCを製造するための不均一触媒のような不均一エステル交換触媒は2つの主な原因、すなわちポリマー沈着及び触媒活性な金属成分の浸出のために失活することが知見された。環状カーボネートのアルコールとのエステル交換によりジアルキルカーボネートを製造するための不均一触媒は、主に触媒活性な金属成分が浸出するために失活する。
【0047】
不均一触媒を用いるアルコーリシスまたはエステル交換反応中、固体触媒上の触媒活性な金属成分が各種多孔質担体上に固定化した不均一金属酸化物触媒及び有機金属触媒から反応条件下で反応媒体に浸出して、永久的な触媒失活が生ずる恐れがある。これにより、各種有機カーボネートを連続製造するために使用され得る商業的不均一触媒にとって許容できないほど短い触媒寿命となる。加えて、上述したように、ポリマー沈着はエステル交換触媒の性能にも悪影響を与える恐れがある。触媒失活の別のモードは毒作用である。
【0048】
商業用固定床反応器中に使用しようとする不均一触媒はサイクル時間及び全使用時間に関して妥当な長寿を有していなければならない。毒作用がないこと、あったとしても不均一触媒へのポリマーの沈着が全くまたは殆どないこと、不均一触媒からの活性金属成分の溶出速度が触媒の長寿を決定し得る。
【0049】
本明細書中に開示されている実施形態は、一定またはほぼ一定の固体触媒活性を各種有機化合物を商業規模で連続製造するために許容される長時間にわたって維持するための方法に関する。この方法は、各種有機カーボネート(例えば、ジアリールカーボネート、ジアルキルカーボネート及びアルキルアリールカーボネート)を連続製造するために、他のエステル交換反応において(例えば、バイオディーゼルの製造のために)特に有用であり得る。本明細書中に開示されている特定実施形態は、有機カーボネート、カルボン酸エステルまたは有機カルバメートを連続製造するための大型商業用反応器に対して安定な触媒活性を長時間維持するための方法に関する。
【0050】
固体触媒の触媒活性を長いサイクル時間の間維持するための新規技術は、固体触媒含有反応器への液体供給物流に微量の可溶性活性金属成分を添加すると、一定またはほぼ一定の触媒活性が長いサイクル時間にわたって得られ得ることである。予期せぬことに、固体触媒含有反応器への液体供給物流に微量の可溶性活性金属成分を添加すると、固体触媒からの金属浸出のための金属損失が例えば触媒上に活性金属成分を再堆積させることにより効果的に相殺され、その結果一定またはほぼ一定の触媒活性が長いサイクル時間にわたって得られることが知見された。例えば、本発明者による現在の研究は、微量の可溶性活性金属化合物を固定床に供給される液体供給物流に添加することにより、または固体触媒を含む床反応器を動かすことにより触媒活性が1年以上の間維持され得ることを示している。
【0051】
固体触媒の活性を維持するために必要な活性金属化合物の量は、具体的活性金属成分、反応物質及び他の供給物成分に応じて1ppm未満〜約3000ppmの範囲であり得る。例えばエステル交換による有機カーボネートの製造のための供給物中の活性金属の量は、均一触媒のみを用いる比較方法の場合に供給される均一触媒の濃度よりも1桁、2桁またはそれ以上の桁少なくてもよい。活性金属化合物は、触媒反応ゾーンに入る液体の全重量に基づいて幾つかの実施形態では1〜400重量ppm、他の実施形態では10〜300重量ppm、他の実施形態では15〜200重量ppm、他の実施形態では20〜150重量ppm、さらに他の実施形態では30〜100重量ppmの割合で供給され得る。
【0052】
例えば、固体触媒がII〜VI族金属のような活性金属を含む場合、固体触媒の活性を維持するために微量の同一のII〜VI族活性金属を有する可溶性有機金属化合物が反応器に供給され得る。特定例として、固体触媒が活性金属としてチタンを含む場合には、チタンを有する可溶性有機金属化合物を使用し得る。
【0053】
一連の反応器を使用する場合、例えばエステル交換反応器及び不均化反応器を連続して使用する場合には、それぞれの反応器において触媒活性を維持するために微量の可溶性有機金属化合物を一方または両方の反応器に供給し得る。幾つかの実施形態において、微量の可溶性有機金属化合物を一連の反応器中の第1反応器のみに供給することにより、固体触媒活性は各反応器において維持され得る。例えば、エステル交換反応器がチタン及びニオブの固体混合酸化物触媒を含み、不均化反応器がシリカ上にグラフトした固体チタンアルコキシドを含有する場合、微量の可溶性有機チタン化合物または可溶性チタン化合物(例えば、チタンオキシアルコキシド)を第1反応器に添加すると、両タイプの固体触媒のサイクル時間が延長され得る。
【0054】
所望により、可溶性有機金属化合物を回収し、再循環してもよい。幾つかの実施形態において、再循環のために活性金属を反応器流出液流から回収することが経済的でないことがある。回収する場合、反応器流出液流中の活性金属成分は重質底部流から固体材料として回収され、可溶性有機金属化合物に変換され得、これは例えば回収した固体材料を有機カーボネートまたは有機カーボネートとアルコールの混合物と高温で反応させることにより反応器に再循環され得る。回収された有機金属化合物は、例えば金属アルコキシド、金属アルコキシアルキルカーボネート(炭酸モノエステルの金属塩)、金属オキシアルコキシドまたはその混合物であり得る。
【0055】
こうして達成された長いアルコーリシス固体触媒寿命により、アルコーリシス及び/または他のエステル交換プロセスの中で有機カーボネートを製造するための商業上実用的な固体触媒プロセスが生じ得る。長い触媒サイクル時間及び少ない分離要件(ユニット運転がより少なく、その結果潜在的な資本及び運転コストが節約される)のために大きな節約が実現され得る。
【0056】
固体触媒上のポリマー沈着も触媒活性の損失を引き起こし得る。このような場合、失活した触媒は本明細書中及び米国特許出願公開No.2007/0093672に開示されている解重合技術により再生され得る。解重合も金属損失を引き起こし得る。不均一触媒の触媒活性を元の活性の許容できるレベルまで回復させない解重合後では、不均一触媒は例えば本明細書中に開示されている触媒再活性化技術により金属を再堆積させる必要があり得る。
【0057】
触媒失活がポリマー沈着及び金属浸出の両方により生起している場合には、触媒活性は本明細書中に開示されている触媒再生及び再活性化技術により回復され得る。触媒再活性化は、第1ステップにおける解重合及び表面コンディショニング及び第2ステップにおける金属再堆積の2ステップからなる。第1ステップでは、失活した固体触媒を解重合にかけて固体触媒上のポリマーを除去し、その後乾燥により表面コンディショニングにかける。第2ステップでは、活性金属成分の再堆積を金属損失を補償するために実施する。失活した触媒の再活性化は以下により詳細に検討する。
【0058】
触媒再活性化及び/または再生を考える場合、触媒再活性化及び回復プロセス中連続製造することができるように複数の反応器を平行に設けることが有利であり得る。
【0059】
上記したように、本明細書中に開示されている固体アルコーリシス、エステル交換及び不均化プロセスは、反応物質及び微量の可溶性活性金属化合物を固体触媒を含む反応器に供給し、固体触媒の存在下で反応物質を接触させて、反応物質の少なくとも一部を加アルコール分解、エステル交換または不均化させることを含み得る。前記したアルコーリシス、エステル交換または不均化プロセスには、他の反応の中で例えばジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、アルキルアリールカーボネート、バイオディーゼル、有機エステル及びN−アリールアルキルカルバメートを製造するための反応が含まれ得る。
【0060】
先にアルコーリシス、エステル交換及び不均化反応に関して概略的に記載してきたが、このプロセスの有機カーボネートの製造への敷衍を以下に詳記する。先に言及したように、米国特許出願公開2007/0093672(’672)及び2007/0112214(’214)は不均一触媒を用いる有機カーボネートの製造方法を開示している。これらの各々は参照により本明細書に組み入れる。
【0061】
有機カーボネート及び有機カルバメートの製造
有機カーボネートまたは有機カルバメートは、固体触媒または2つの異なる固体触媒の存在下で単一または複数の反応器システムを用いることにより連続的に製造され得る。1つ以上の固体触媒が長い触媒サイクル時間を得るために微量の可溶性活性金属化合物を反応器の供給物流に添加することを必要とする。固体触媒は任意の物理的形状であり得、多孔質担体上に固定化した各種有機金属化合物及び/または適当な多孔質担体上に担持させたII、III、IV、V及びVI族の1つの元素または複数の元素を含有する酸化物を含み得る。触媒は酸触媒または塩基触媒のいずれかであり得る。担持させた触媒上の触媒活性な金属または金属成分の全量は、幾つかの実施形態において約0.02重量%〜約20重量%、他の実施形態において約0.05重量%〜約10重量%の範囲であり得る。本明細書中に開示されている実施形態において有用な任意のタイプの固体触媒材料は、II〜VI族からの1つ以上の元素及び有機構造体を含む金属−有機構造体(MOF)である。MOFは各種実施形態に従う固体触媒及び触媒担体の両方として役立ち得る。
【0062】
本明細書中に開示されている実施形態において使用される反応器は任意の物理デバイスまたは2つ以上のデバイスの組合せを含み得る。反応器は蒸気−液体分離及び蒸気/液体トラフィックのための各種内部デバイスを含み得る。
【0063】
供給物流に微量の可溶性活性金属化合物を添加することにより、安定な触媒活性が驚くほど長いサイクル時間の間維持され得る。例えば、エチルフェニルカーボネートとジフェニルカーボネートの混合物を製造するための固定床反応器へ供給される流れに微量の可溶性活性金属化合物を添加すると、14ヶ月以上のオンストリーム時間のサイクル時間が生じ得る。安定な触媒性能により、所望生成物のより高い生産性が得られ得る。一連の反応器を有する実施形態では、微量の活性金属成分を第1反応器への供給物流に対してのみ添加してもよい。平行する複数の反応器システムでは、微量の活性金属成分をすべての反応器に添加してもよい。
【0064】
活性金属成分は、周期表のII、III、IV、V及びVI族の金属を1つ以上含有する化合物または化合物の混合物を含み得る。活性金属の例には、Mg、Ca、Zn、La、Ac、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Nb、W、Sn、Pb、Sb等が含まれる。活性金属化合物は反応混合物中に可溶性であるか、または少なくともエマルション/コロイド状溶液を形成しなければならない。供給物流中の微量金属の量は、再循環させるためにプロセス流から金属を回収することが経済的に不必要であるくらい十分少量でよく、そうするように選択してもよい。
【0065】
必要ならば、反応器中の失活した触媒をすぐに使用中の別の反応器と交換したり、使用を再開するように現場で比較的短時間で再活性化し得る。従って、本明細書中に開示されている方法の実施形態は、触媒のサイクル寿命及び他の要因に応じてスペアの反応器を必要とすることがある。
【0066】
本明細書中に開示されている方法は、ジアリールカーボネート(例えば、ジフェニルカーボネート(DPC))、アルキルアリールカーボネート(例えば、エチルフェニルカーボネート(EPC))、またはジアルキルカーボネート(例えば、ジエチルカーボネート(DEC)またはジメチルカーボネート(DMC))を連続製造するために特に有用であり得る。ジアリールカーボネートを製造するための反応は複数の反応ゾーン、例えば第1及び第2反応ゾーンにおいて実施され得る。第1反応ゾーンは主にジアルキルカーボネートを芳香族アルコールとエステル交換してアルキルアリールカーボネートを製造するために役立つが、少量のジアリールカーボネートも製造され得る。第2反応ゾーンはアルキルアリールカーボネートを不均化してジアリールカーボネート及びジアルキルカーボネートを製造するために役立ち得る。第2反応ゾーン中に固体触媒を存在させる必要はないが、固体触媒を使用するように選択してもよい。
【0067】
ジアルキルカーボネート(例えば、DMCまたはDEC)は、環状カーボネート(例えば、プロピレンカーボネートまたはエチレンカーボネート)のメタノールまたはエタノールとのエステル交換を同様に実施することによっても製造され得る。ジアリールカーボネート及びジアルキルカーボネートを製造する反応は、生成物を反応混合物から回収するための材料分離ユニットを備えた複数の反応器システムにおいて実施される。未反応の反応物質及び中間体は再循環のために回収されるか、または第2不均化または第2エステル交換を実施することにより終了され得る。エステル交換ゾーンからの液体反応混合物中の未反応フェノールは、アルキルフェニルカーボネートの不均化を実施する前または不均化を実施した後に分離され得る。加えて、反応系から副生成物アルキルフェニルエーテルをパージするためには各種オプションがある。反応器と材料分離ユニットを適切に配置することは当業者の知識の範囲内である。
【0068】
反応物質及び生成物が液体及び蒸気である混合相系として反応を実施して、平衡を所望方向にシフトさせることが好ましい。或いは、反応生成物の沸点が反応を実施するための好ましい温度範囲よりも高いために平衡反応をシフトさせても全くまたは殆ど利点がないような場合には反応を液相中で実施してもよい。
【0069】
本明細書中に開示されている実施形態は、ジアルキルカーボネート(例えば、ジエチルカーボネートまたはジメチルカーボネート)をフェノールとエステル交換し、アルキルアリールカーボネート(例えば、エチルフェニルカーボネートまたはメチルフェニルカーボネート)を不均化して、ジフェニルカーボネートを製造することにより有機カーボネート(例えば、エチルフェニルカーボネート、メチルフェニルカーボネート及びジフェニルカーボネート)を製造する際にも有用であり得る。
【0070】
本明細書中に開示されている実施形態は、環状カーボネートのアルコールとのエステル交換によりジアルキルカーボネート(例えば、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネート)を製造する際にも有用であり得る。ジアルキルカーボネートを製造するための他の実施形態では、ジアルキルカーボネートは固体触媒の存在下での尿素のアルコールでのアルコーリシスにより製造され得る。例えば、米国特許No.7,074,951では、ジアルキルカーボネートは高沸点の電子供与原子含有溶媒の存在下で均一有機スズ錯体触媒を用いて製造されている。前記方法は本明細書中に開示されている実施形態に従って固体触媒を用いて実施され得る。各種有機カルバメート(例えば、N−アリールアルキルカルバメート)を本明細書中に開示されている実施形態に従って固体触媒の存在下でジアルキルカーボネートを芳香族アミンと反応させることにより製造することが有利であり得る。
【0071】
任意のタイプの反応器を本明細書中に記載されている反応を実施するために使用し得る。有機カーボネートまたは有機カルバメート反応を含む反応を実施するのに適した反応器の例には、蒸留カラム反応器、分壁蒸留カラム反応器、慣用の環状固定床反応器、バブルカラム反応器、場合により蒸留カラムを備えたスラリー反応器、パルスフロー反応器、スラリー固体触媒がカラムを流下する接触蒸留カラム、またはこれらの反応器の組合せが含まれ得る。
【0072】
本明細書中に開示されている実施形態において有用な複数の反応器システムは一連の複数の反応器または第1反応ゾーンに対して平行な複数の反応器を含み得る。生成物が反応物質から中間体生成物(例えば、アルキルアリールカーボネート)を介して製造される場合には、第1反応ゾーンは主に中間体を製造するために役立ち得るが、第1反応ゾーンにおいて少量の最終反応生成物が同時に製造され得る。
【0073】
アルコール及びジアルキルカーボネートをストリッピングした後、第1反応ゾーンからのプロセス流を第2反応ゾーンに流入させ、そこでジアリールカーボネートが共生成物ジアルキルカーボネートと一緒に製造される。軽質反応生成物を触媒反応ゾーンからストリッピングしながら、同時にエステル交換を実施して、平衡反応を先の反応にシフトさせてもよい。
【0074】
有機カーボネートまたは有機カルバメートを製造する反応は、典型的には幾つかの実施形態では約104℃〜約260℃(約220°F〜約500°F)、他の実施形態では121℃〜約232℃(約250°F〜約450°F)の範囲の温度で実施される。反応の圧力は反応物質及び生成物の沸点、使用しようとする反応器のタイプ、及び液体または二相(蒸気/液体)が反応ゾーン中に存在するかに依存する。通常、反応器圧力は、幾つかの実施形態では減圧〜約22バール(約319psia)、他の実施形態では約0.005バール〜約17バール(0.1psia〜約250psia)の範囲であり得る。実施形態のクラスでは、反応を反応生成物の分離を妨げない適当な溶媒を用いて実施してもよい。
【0075】
特定実施形態では、本明細書中に開示されている実施形態は、ジアルキルカーボネート及び芳香族ヒドロキシ化合物からジアリールカーボネートを連続製造するために、例えばジアルキルカーボネート及びフェノールからジフェニルカーボネート(DPC)を製造するために特に有用である。DPCを製造するための1つのルートは、1つ以上の固体触媒の存在下でのジエチルカーボネート(DEC)のフェノールとの反応である。DECを用いることによりDPCを製造する利点には、共沸混合物から材料を分離する必要がないのでエネルギーの節約及びプラント建設のための原料の節約が含まれ得る。すべての材料が製造するためにエネルギーを必要とする。よって、建築原料及びエネルギーの節約は「よりグリーン」であると見なされる。対照的に、DPCを製造するための現在の商業的な非ホスゲン方法は原材料の1つとしてDMCを使用している。DMC及びメタノールは共沸混合物形成プロセス流から溶媒抽出蒸留により分離されなければならない。抽出蒸留ユニットの運転はエネルギー集約的である。DMCを介してDPCを製造することは可能であるが、エネルギー及び材料の節約のためにDECを使用することが好ましいことがある。
【0076】
本明細書中に開示されている実施形態は、環状カーボネートのアルコール(例えば、エタノールまたはメタノール)とのエステル交換によりジアルキルカーボネートを製造するためにも有用であり得る。
【0077】
ジアルキルカーボネート及びフェノールからのDPCの製造は、2つの反応ステップ、すなわち第1反応ゾーンにおけるエステル交換、その後の第2反応ゾーンにおける不均化を含む。反応を以下に例示し得る。
【0078】
【化3】
正味反応は次のように以下のように例示され得る。
【0079】
【化4】
反応(1)は、アルキルフェニルカーボネート及びアルコールを製造するためのジアルキルカーボネートのフェノールとのエステル交換である。反応(2)は、ジフェニルカーボネート及びジアルキルカーボネートを製造するためのアルキルフェニルの不均化を含む。両反応ステップは平衡反応である。しかしながら、不均化はエステル交換よりも熱力学的に非常により有利である。エステル交換は主に単一反応器または複数の反応器システムを含み得る第1反応ゾーンにおいて実施される。次いで、不均化反応は主に第2反応ゾーンにおいて実施され得る。
【0080】
環状カーボネートのアルコールとのエステル交換によるジアルキルカーボネートの製造は2ステップ平衡反応でもある。環状カーボネートのアルコールとのエステル交換のために酸及び塩基触媒を使用し得る。
【0081】
本明細書中に開示されている実施形態によれば、触媒サイクル寿命を延長させるために微量の可溶性金属化合物を反応器供給物流に添加する。ジアルキルカーボネート及びジオールを製造するための環状カーボネートのアルコールとのエステル交換のためには、固体の塩基または酸触媒のいずれかを使用し得る。アルコールの一部を水で置換することによりエステル交換を実施することもできる。或いは、エステル交換を第1ステップで実施した後、第2ステップで未変換環状カーボネート及び中間体を水−アルコール混合物と反応させて、グリコールを主要反応生成物として製造してもよい。水を添加すると、環状カーボネートの変換率またはジオールの生産性が実質的に上昇する。しかしながら、水の利点はジアルキルカーボネートの収率の低下で実現される。
【0082】
有機カーボネート及び有機カルバメート製造のために有用な触媒
上記したように、有機カーボネート及び有機カルバメート製造のために有用な触媒は、1つ以上の周期表のII、III、IV、V及びVI族の活性金属を有する担持固体触媒を含み得る。本明細書中に開示されている実施形態において有用な1つのタイプの触媒は上記元素の有機金属化合物または複数の有機金属化合物を多孔質担体上に固定化して含む。本明細書中に開示されている実施形態において有用な多孔質担体は表面官能基、例えばヒドロキシル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基とアルコキシ基の混合物、塩素等を含み得る。担体の例にはシリカ、シリカ−アルミナ、酸化チタン、酸化ジルコニウムまたはゼオライト材料(例えば、MCM−41、MCM−48、SBA−15等)、及び結合剤及びゼオライトを含む複合材料が含まれ得る。
【0083】
代替担体には炭素及び/または炭素質材料が含まれ得る。炭素及び炭素質担体は、先に検討したように表面上に有機金属化合物を固定化するために表面官能基(例えば、ヒドロキシル、カルボニルまたは両方)を有し得る。担持金属酸化物、水酸化物またはオキシ水酸化物触媒を作成するためには表面官能基が必要でないことがあるが、幾つかの実施形態では表面官能基が有用であり得る。炭素質担体は、炭水化物(例えば木材、ヤシ殻、澱粉、セルロース、澱粉とセルロースの混合物、糖、メチルセルロース等)を高温で制御熱脱水することにより作成され得る。炭素質担体は担持されていても、担持されていなくてもよい。担持炭素質材料を作成するためには、炭水化物を適当な多孔質担体上に堆積させた後、不活性雰囲気または不活性ガスと少量の酸素、蒸気またはその混合物からなる雰囲気中高温(例えば、約250℃〜1000℃の範囲の温度)で制御熱脱水し得る。炭素質材料に対する担体には無機材料、例えばアルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニア、シリカ−アルミナを含めた合成及び天然クレー、及び当業界で公知の他の担体が含まれ得る。
【0084】
幾つかの実施形態では、有機金属化合物を担体と接触させて固定化する前に担体は孔中の凝縮水を除去する必要があり得る。本発明では、担体上の凝縮水は担体の化学組成に応じて担体を乾燥ガス流または真空中で約50℃〜約400℃の範囲の温度で乾燥することにより除去され得る水含量と定義される。本発明で使用される固体触媒は、1つまたは2つの有機金属化合物を固定化することにより、または1つまたは複数の可溶性金属化合物を多孔質固体担体上に活性触媒部位を有する表面官能基と反応させることにより作成され得る。固定化は、例えばグラフト、連結、吸着等のような技術を用いることにより実施され得る。例えば、多孔質担体上の有機金属化合物(例えば、チタンアルコキシド)に対する作成技術は’672公開明細書に開示されている。
【0085】
本明細書中に開示されている実施形態において有用な第2タイプの触媒には、多孔質担体上に堆積させた金属酸化物、混合金属酸化物またはオキシ水酸化物が含まれる。このタイプの触媒の例も’672公開明細書に開示されている。
【0086】
担体は、各種固定床反応器の場合約1mm〜約5mmの範囲のサイズのペレット、押出物、球、顆粒、ハニカム等の形態であり得る。或いは、担体としてファイバーグラスまたは炭素繊維、或いはその両方からなる織布またはメッシュを構造化パッキング材料と一緒に使用するように選択し、反応器のタイプに応じて適当に成形し、適切な大きさとしてもよい。粉末またはミクロスフェア形態の担体はスラリーまたは攪拌型反応器に対して使用しようとする触媒を作成するためにも使用され得る。
【0087】
上記した第2タイプの触媒の作成には表面ヒドロキシル基を有する担体を必要としないことがある。しかしながら、シリカ上に金属アルコキシド(例えば、チタンアルコキシド)をグラフトした後、蒸気を当てるまたは加水分解する及び/または約90℃〜約500℃の温度で乾燥することにより金属水酸化物/酸化物触媒を作成するために、表面官能基を含有する担体(例えば、シリカ、炭素質材料、アルミナ等)も使用し得る。
【0088】
金属酸化物またはオキシ水酸化物触媒を作成するための別の方法は、所望の元素の塩または2つの異なる元素の塩の混合物を担体上に堆積した後、塩を金属酸化物に分解するために300℃〜1000℃の温度でか焼することを含む。
【0089】
プロセス条件下で、反応媒体中のアルキルアリールカーボネートの濃度が増加するにつれて触媒反応ゾーンにおけるエステル交換及び不均化を同時に生起し得る。上で検討した触媒失活の2つの原因、すなわち浸出及びポリマー沈着は反応条件下で同時に起こる。ポリマー沈着は触媒に対して永久的ダメージを引き起こさないが、反応条件下で不均一触媒から活性金属成分が浸出すると触媒が永久的なダメージを受ける。エステル交換の変換レベルが低かったり、アルキルアリール及びジアリールカーボネートの濃度が低いと、触媒失活は主に活性金属触媒成分の固体触媒から反応媒体への溶出に起因する。換言すると、すべての反応条件下での永久的触媒失活の原因は金属浸出である。
【0090】
エステル交換の変換率が高まるにつれて、触媒上へのポリマー沈着により触媒失活がさらに早まる。ポリマー沈着はアルキルアリール及びジアリールカーボネート(及び潜在的に微量のフェノール供給物中の及び少量の望ましくない副反応により生ずるポリヒドロキシル芳香族化合物不純物)の望ましくない副反応の結果である。従って、不均一触媒の存在下でフェノール及びジアルキルカーボネート(例えば、ジエチルカーボネートまたはジメチルカーボネート)からジフェニルカーボネートを連続的に製造するためには、(1)ポリマー沈着及び(2)活性金属触媒成分の溶出/浸出の両方に起因する触媒失活を解決する必要があり得る。ポリマー沈着は、上述したように触媒反応ゾーンにおいて変換率及び/または芳香族カーボネートの濃度をコントロールすることにより及び’672公開明細書に開示されているような触媒再活性化により解決され得る。浸出は上記したように微量の可溶性有機金属化合物を添加することにより解決され得る。
【0091】
ジアルキルカーボネートのフェノールとのアルコーリシス及び/またはエステル交換のための担体(例えば、シリカまたは炭素質材料)上への有機金属化合物または可溶性金属化合物の固定化(例えば、グラフト、連結、吸着等)は、単一反応ゾーンステップまたは複数の反応ゾーンステップで実施され得る。開示されている有機金属化合物の例には、II、III、IV、V及びVI族元素の金属アルコキシド、アルコキシクロリド、オキシアルコキシド、カルボキシレート、カーボネート等が含まれる。活性金属の例には、Mg、Ca、Zn、La、Ac、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Sn、Pb、Sb等が含まれる。各種実施形態において、スズアルコキシド、アルキルスズアルコキシド、アルキルスズ酸化物、アルキルスズ水酸化物、ジアルキルスズジクロリド、アルキルスズトリクロリド及びこれらの種の混合物、並びに金属オキシアルコキシド[(RO)nMO]及び金属アルコキシ水酸化物[(RO)nM(OH)x]、或いはこれらのオキシアルコキシド及びアルコキシ水酸化物のオリゴマーが含まれる。上記式中、MはIV、VまたはVI族元素であり、nは2、3または4であり、xは0、1、2または3であり、n+xは4、5または6である。特定実施形態において、有機金属化合物はチタンアルコキシドまたはフェノキシド、アルキルアリールチタネート、または炭酸モノエステルのチタン塩の1つ以上であり得る。金属アルコキシドには、アルコキシドまたはアリールオキシドのアルキル基の炭素鎖長及び構造に応じてモノマー、各種オリゴマー、または各種モノマーとオリゴマー種の混合物が含まれると理解されるべきである[例えば、Coordin.Chem.Rev.,2(1967),299−318;J.Chem.Soc.,3977(1955)を参照されたい]。
【0092】
本明細書中に記載されているように、遷移金属のアルコキシドにはモノマー及び各種オリゴマーのすべての種が含まれる。例えば、チタンエトキシド[Ti(OEt)4]は沸騰エタノールまたはベンゼン中でほぼトリマーとして存在するが、立体障害チタンアルコキシド(例えば、チタンイソプロキシド)は沸騰炭化水素溶液中でモノマーである。例えば、チタンイソプロポキシドは沸騰トルエン溶液中で殆どモノマーとして存在すると考えられる。
【0093】
本明細書中に開示されている各種実施形態において使用される多孔質担体は表面ヒドロキシル基、アルコキシ基またはその両方を有し得る。多孔質担体を作成するためには、多孔質金属酸化物担体(例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化モリブデン及び酸化バナジウム)を蒸気相、液相または蒸気−液体系においてアルコール、有機カーボネート(例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等)の1つ以上を含有する流れで幾つかの実施形態では約130℃〜約400℃、他の実施形態では150℃〜350℃の範囲の温度で処理し得る。前記流れは、幾つかの実施形態では0重量%〜約20重量%、他の実施形態では0重量%〜約10重量%、さらに他の実施形態では約0.005重量%〜約5重量%の水を含有し得る。水はDMC及びDEC中に殆ど溶解しないので、前記流れは水に対する溶媒として適量のメタノール及び/またはエタノールを含有し得る。市販されている表面ヒドロキシル基を有するシリカゲルまたはシリカが幾つかの実施形態において使用され得る。場合により、シリカを液体水、蒸気またはその混合物と約80℃〜約500℃の温度で処理した後、幾つかの実施形態では約70℃〜約800℃、他の実施形態では約80℃〜約500℃の温度で乾燥してもよい。
【0094】
上記した多孔質担体上に固定化した固体触媒または金属酸化物触媒を作成するためにシロキサン及び遷移金属のシロキサン化合物も使用し得る。シロキサン及びシロキサン化合物の例は、(RO)n−xM[−O−Si(O−R)3]x、M(O−SiR3)n、(R3SiO)n−2MO等(式中、各Rは独立してアルキルまたはアリール基であり、nは3、4または5であり、xは1または2であり、n+xは4、5または6であり、Mは上記したIV、VまたはVI族の遷移金属である)である。固定化により固体触媒の触媒活性が生ずる限り、他のケイ素−金属化合物が本明細書中に開示されている実施形態の範囲内である。シロキサン及び遷移金属のシロキサン化合物は’672及び’214公開明細書に開示されているプロセス配置及び反応蒸留カラム反応器において可溶性有機金属化合物としても使用され得る。固定化固体触媒を作成するために遷移金属の各種のオリゴマー及びポリマーヘテロシロキサンが使用され得、或いは各種実施形態において可溶性有機金属化合物として使用され得る。上記したように、EPCまたはMPCのDPC及びDECまたはDMCへの不均化は第2反応ゾーンにおいて固体触媒の非存在下で実施し得、有用な活性触媒種には遷移金属(例えば、Ti)のシロキサンまたはシロキサン化合物が含まれる。
【0095】
シロキサンの金属酸化物及びアルコキシドには各種オリゴマーが含まれ得る。各種オリゴマーはBradelyによる刊行物[D.C.Bradley,Coordin.Chem.Rev.,2(1967),p.299−318);J.Chem.Soc.,(1955)3977]中に見つけることができる。安定な触媒活性を得るために反応ゾーンへの供給物にこれらの化合物の1つを微量添加するように選択してもよい。
【0096】
第2反応ゾーンにおいてジアリールカーボネート及びジアルキルカーボネートを製造するために均一触媒の存在下でアルキルアリールカーボネートの不均化を実施する場合、均一触媒は上で検討したアルキルアリールチタネート、炭酸モノエステルのチタン塩及びチタンのシロキサン化合物の混合物であり得る。均一触媒はエステル交換ゾーンにおいて使用した固体触媒及び可溶性触媒に由来し得る。
【0097】
本明細書中に開示されている各種有機金属化合物は供給物流中の水分に対して感受性であるので、反応ゾーンへの供給物流中の含水量をコントロールすることが重要である。供給物流の水分含量は、幾つかの実施形態では約700ppm未満、他の実施形態では約600ppm未満である。担体上に固定化した固体金属アルコキシド触媒は、反応器の内部で現場技術により作成され得、または反応器の外部で作成され得る。現場作成のためには、所定量の適当な担体を反応器に装入した後、凝縮水の少なくとも一部を除去するために適切な温度で乾燥する。次いで、担体を1つ以上の遷移金属の可溶性金属アルコキシドまたは混合金属アルコキシドを含有する溶液と幾つかの実施形態ではほぼ周囲温度〜約260℃(500°F)、他の実施形態では約37℃〜約204℃(約100°F〜約400°F)の範囲の温度で接触させる。接触は幾つかの実施形態では約5分間〜約24時間、他の実施形態では約15分間〜約15時間実施し得、温度及び溶液中の活性金属成分の濃度に依存し得る。過剰の金属アルコキシド溶液を反応器から排出させた後、不均化またはエステル交換反応に使用する前に反応器中の触媒を溶媒(通常、金属アルコキシド溶液を調製するために使用したのと同一の溶媒)で洗浄し得る。溶媒はアルコール、エーテル、炭化水素、炭化水素とアルコールの混合物、ジアルキルカーボネートとフェノールまたはアルコールの混合物、或いはこれらすべての混合物であり得る。
【0098】
或いは、金属が周期表のII、III、IV、V及びVI族の1つ以上である金属酸化物、混合金属酸化物または金属水酸化物触媒も本明細書中に開示されている実施形態に従って使用され得る。幾つかの金属酸化物触媒が当業界で公知である。例えば、P.Iengoら,Appl.Catal.A:General,178(1999)97−109によれば、シリカ上に担持させた酸化チタン触媒はチタンイソプロポキシドをグラフトした後、蒸気を当てる/か焼することにより作成され得、元のシリカ表面が大きく修飾されてなる担持触媒により含浸または共沈殿により得たものと異なる触媒が生ずる。
【0099】
担持した金属、混合金属水酸化物またはオキシ水酸化物触媒を作成するためには、上記したグラフトした金属アルコキシド触媒を加水分解した後、約50℃〜約110℃の範囲の温度で乾燥してもよい。幾つかの実施形態では、乾燥が不要なことがある。
【0100】
非担持金属酸化物触媒のプレコンディショニングを有機カーボネートを製造する反応を実施する前に実施してもよい。プレコンディショニングは、多孔質金属酸化物触媒(例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化モリブデンまたは酸化バナジウム)を有機カーボネート(例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等)を含有する流れと幾つかの実施形態では約125℃〜約450℃、他の実施形態では約150℃〜約350℃の範囲の温度で接触させることにより実施され、有機カーボネートは蒸気相、液相または混合相中に存在させ得る。プレコンディショニングは幾つかの実施形態では約2分間〜約50時間、他の実施形態では約4分間〜約24時間実施され得る。有機カーボネートを含有する流れは水及びアルコールを含有し得、この場合水は幾つかの実施形態では0重量%以上〜約10重量%、他の実施形態では約0.005重量%〜約4重量%存在し得る。プレコンディショニングにより触媒の選択率を改善し得る。プレコンディショニング後、金属酸化物触媒を不活性ガス流中約80℃〜約300℃の温度で約2分間〜約6時間乾燥させてもよい。
【0101】
環状カーボネートをアルコールとエステル交換するために2つのタイプの混合金属酸化物触媒を使用し得る。第1タイプの混合金属酸化物触媒は、周期表のIII、IV、V及びVI族の1つ以上の元素を担体上に担持させて含み得る。第2タイプの混合酸化物には、担体上に1または2つの周期表のII族元素及びランタニドまたはアクチニドを含む固体塩基触媒が含まれる。場合により、シリカ担体上にグラフトまたは連結させた第4級水酸化アンモニウムを使用してもよい。酸化物触媒は通常アルミナまたはシリカ上に担持されており、または混合酸化物または固溶体の形態で作成される。第2タイプの固体触媒のために有用な元素にはMg、Ca、Zn、La等が含まれる。
【0102】
第2タイプの触媒の活性金属成分もエステル交換反応条件下で浸出して、触媒失活する恐れがある。実際、シリカ担体もII族活性金属成分よりもかなり遅い速度で浸出する恐れがあることが知見された。シリカ担体上のアルカリ金属不純物はシリカの反応媒体への溶出を増加させる恐れがあるので、シリカ担体中の金属不純物が少ないことが非常に望ましい。微量の可溶性有機金属化合物を供給物流に添加することにより、固定床反応器のための固体触媒のサイクル寿命を延長し得る。可溶性化合物の例には、その中でも亜鉛2−メトキシエトキシド、カルシウム2−メトキシエトキシド、亜鉛2−メトキシプロポキシド、亜鉛エトキシド、亜鉛アルコキシアルキルカーボネート、カルシウム2−メトキシプロポキシド、カルシウムエトキシド、カルシウムアルコキシアルキルカーボネート、マグネシウム2−メトキシエトキシド、マグネシウム2−メトキシプロポキシド、マグネシウムエトキシド、マグネシウムブトキシド、マグネシウムアルコキシアルカルカーボネート、ランタンアルコキシド、ランタンアルコキシアルキルカーボネート、並びにMg、Ca及びZnプロピレングリセリドまたはグリコレートが含まれる。これらの混合物を使用してもよい。
【0103】
Ca、Mg、Zn及びLaの可溶性化合物は、液相または混合相(液体及び蒸気)系中でこれらの金属の酸化物または水酸化物をアルコール、有機カーボネート、または有機カーボネートとアルコールの混合物と幾つかの実施形態では約105℃(221°F)〜約260℃(500°F)、他の実施形態では約149℃(300°F)〜約227℃(440°F)の温度で反応させることにより得られ得る。このようにして調製した溶液は、長いサイクル時間を得るべく微量のこれらの金属を反応器への供給物流に添加するために有用であり得る。固体金属アルコキシド、金属水酸化物または金属酸化物触媒上の活性金属または金属成分の全量は約0.02重量%〜約20重量%、好ましくは約0.05重量%〜約12重量%の範囲であり得る。
【0104】
改良された触媒サイクル寿命及び使用寿命
本明細書中に開示されている固体触媒は長いサイクル寿命を有し得、触媒再生及び再活性化を何度も受け得、よって長い触媒使用時間が得られ得る。本明細書中に開示されている触媒サイクル寿命の延長及び触媒再活性化の技術により、典型的には触媒が各種有機カーボネートの商業製造において有用な実験目的にとって興味深くなる。出発が担持金属酸化物触媒またはシリカ上に固定化した金属アルコキシド触媒であれ、定常状態で活性触媒はシリカ上に固定化した有機金属化合物種であると推測される。供給物中に微量の活性金属を添加する利点を説明するために、各種実験を実施し、以下により詳細に記載する。簡単に説明すると、1つの実験では、シリカゲル上に担持させた酸化チタン触媒(6重量%のTi)を約350時間使用後解重合により再生し、ジエチルカーボネートのフェノールとのエステル交換の元の活性の半分未満しか回復しなかった。使用時間中Tiの半分以上が触媒から反応媒体に浸出したことが判明した。別の実験では、シリカゲル上にグラフトしたチタンブトキシド触媒(4重量%のTi)は、エチルフェニルカーボネートの不均化のためにたった171時間使用しただけで90%以上のTiを失った。ジエチルカーボネート及びプロピレングリコールを製造するためのプロピレンカーボネートのエタノールとのエステル交換のために使用したシリカゲル上に担持させた別の酸化チタン触媒(5.7重量%)は、173時間使用後触媒上のTiの35%を失った。これらの所見から、担持酸化チタン触媒及びグラフトしたチタンアルコキシド触媒の両方が短い使用時間で触媒が永久的に失活するために、有機カーボネート(例えば、ジアルキルカーボネート、アルキルフェニルカーボネート及びジアリールカーボネート)を連続製造するための商業用反応器にとって適当でないことは極めて明らかである。有機カーボネート及び/または反応混合物は固体触媒と反応させることにより反応媒体中に可溶性有機金属化合物がゆっくり形成させるのに十分反応性であるようである。
【0105】
DMC及びDEC蒸気流が約350℃より高い温度でシリカまたは酸化チタンと反応してテトラアルキルオルトシリカ及びチタンテトラアルコキシドを形成する恐れがあることも文書で立証されている。DMC及びDECのシリカとの反応はシリカ上に触媒量のアルカリ金属が存在しているとより容易になる。従って、簡単な触媒再活性化のための技術及び触媒上の活性金属成分の一定の表面濃度を商業用反応器のために許容できる十分に長いサイクル時間維持するための方法を発見することが必要であった。
【0106】
解重合及び金属再堆積による触媒再生がポリマー沈着に関連する問題を解決する。しかしながら、解重合による再生は反応条件下で不均一触媒からの活性金属の連続浸出に関連する問題を解決できない。商業規模の反応器に適した長い触媒サイクル寿命を得るためには、活性金属の不均一触媒からの連続損失を解決しなければならない。不均一触媒からの金属浸出の影響が一連の複数の反応器システムの場合には第1反応器への供給物流に微量の活性金属化合物を添加することにより中和できることを知見した。微量の可溶性活性金属化合物を添加することにより、金属浸出と再堆積が釣り合いまたはほぼ釣り合い、固体触媒上に一定数の活性部位が効果的に維持され、その結果一定の触媒活性が長い触媒サイクル時間が得られる。第1反応器中の固体触媒から浸出する可溶性金属成分は各種金属化合物種の混合物であることを理解されたい。混合物中の金属化合物種は第1反応器に入る金属化合物種と必ずしも同一でない。第2反応器における金属浸出及び再堆積も同様に釣り合っている。平行する複数の反応器システムの場合も、第1主要反応ゾーンへの供給物流のすべてに微量の活性金属化合物を添加することが必要な場合がある。従って、触媒再活性化(現場での解重合/表面コンディショニング及び金属再堆積)し、微量の活性金属化合物を添加した後金属を再堆積させると、金属浸出及びポリマー沈着の両方を解決し得る。触媒再活性化は2つのステップ、すなわち(1)解重合/触媒表面のコンディショニング及び(2)活性金属成分の再堆積で実施され得る。チタンアルコキシドをシリカ担体表面上に固定化するためには触媒表面コンディショニングが必要である。新鮮な固定化触媒または再活性化触媒は触媒活性を連続的に損失させ、その結果サイクル時間が大型商業用反応器のためには適さない許容できないほど短い。元の触媒活性がジアルキルカーボネートのフェノールとのエステル交換のための約半分の活性に損失するのに約80〜150時間オンストリームかかり、これは商業用反応器を連続運転するためには明らかに不十分である。微量の可溶性活性金属化合物を添加し、2ステップ再活性化することにより、今回各種有機カーボネートを連続製造するために触媒サイクル寿命を延長し、触媒再活性化を複数回実施することができる。
【0107】
失活した触媒の解重合は、触媒をヒドロキシ化合物またはヒドロキシ化合物の混合物を含有する流れと現場で幾つかの実施形態では102℃(215°F)〜316℃(600°F)、他の実施形態では104℃(220°F)〜232℃(450°F)の温度で、幾つかの実施形態では約10分間〜約50時間、他の実施形態では30分間〜15時間接触させることにより実施され得る。解重合は蒸気相中、液相中、混合相中、或いは液相中の後蒸気相中またはその逆で実施され得る。解重合生成物は、フェノール、アルコール、二酸化炭素、マルチヒドロキシベンゼン、ジアルキルカーボネート、アルキルフェニルカーボネート及びより重質の化合物を含有し得る。
【0108】
触媒に対する解重合のために使用しようとするヒドロキシ化合物の例は、アルコール(好ましくは、メタノールまたはエタノール)、水またはその混合物である。メチルフェニルカーボネート及びジフェニルカーボネートを製造するための供給物の1つとしてジメチルカーボネートを使用するならば、メタノールまたは水とメタノールの混合物が解重合のために使用され得る。供給原料の1つとしてジエチルカーボネートを使用するならば、エタノールまたは水とエタノールの混合物が解重合のために使用され得る。メタノールとエタノールの混合物を使用してもよい。水を解重合において使用する場合、混合物中の含水量は幾つかの実施形態では0重量%以上〜100重量%未満、他の実施形態では10重量ppm〜15重量%、さらに他の実施形態では15重量ppm〜5重量%の範囲であり得る。供給原料の1つとしてジエチルカーボネートを使用する解重合のためには水(4重量%)とエタノールの共沸混合物が非常に有効である。幾つかの実施形態では、活性金属成分の再堆積のために触媒表面をコンディショニングできるように水とアルコールの混合物が水またはアルコールのいずれか単独よりも好ましいことがある。加えて、水とアルコールの混合物がアルコールまたは水だけよりも解重合及び表面コンディショニングのためにより有効であり得る。
【0109】
解重合において溶媒を使用することもできる。有用な溶媒には、ベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、テトラヒドロフラン、エーテル等、または前記溶媒の混合物が含まれ得る。解重合混合物中の溶媒の濃度は0重量%〜約90重量%の範囲であり得る。
【0110】
触媒上に活性金属成分を再堆積する前に、触媒上の過剰の水を除去し、表面ヒドロキシル基の数をコントロールするために解重合した触媒を乾燥させ得る。活性触媒成分を再堆積させる前に、現場での乾燥は不活性ガス流中幾つかの実施形態では約49℃(120°F)〜約427℃(800°F)、他の実施形態では65℃(150°F)〜316℃(600°F)の温度で大気圧または減圧下で約15分間〜40時間実施され得る。触媒表面プレコンディショニングが不適切であると、触媒活性は部分的にしか回復しないことがある。本明細書中に開示されている解重合技術は芳香族カーボネートの製造方法または有機カーボネートが反応物質、生成物またはその両方として関与する反応において使用され得る。
【0111】
開示されている解重合技術は均一触媒の存在下で有機カーボネートを製造する反応のためにも有用であり得る。均一触媒系を再生するためには、アルコール溶液は水含量が約0.01重量%を超え得ないように十分に乾燥していなければならない。従って、本明細書中に開示されている触媒再生技術は有機カーボネートを製造するための方法に対して有用であり得る。
【0112】
解重合中反応器からの流出液流は、解重合を実施する方法に応じて微量の活性金属成分を含有し得る。この流れは主要な解重合生成物としてフェノール、DEC、少量のフェネトール、EPC及び重質化合物をも含有し得る。所望により、この流れから有用な成分(例えば、フェノール、エタノール、アルキルフェニルカーボネート及びDEC)を回収するように試みてもよい。
【0113】
解重合し、表面コンディショニングした担体上への活性金属成分の再堆積は、上記した担体上への金属アルコキシドの固定化と同様に実施され得る。担体上への金属アルコキシドの固定化は単一ステップまたは複数のステップで実施され得る。その後、再活性化触媒を含む反応器はすぐに使用に戻される。
【0114】
上記したように供給物流に触媒の可溶性活性金属成分を微量添加すると、安定な触媒性能が長いサイクル時間の間生じ得る。例えば、DECのフェノールとのエステル交換は、約45〜約60重量ppmのTiを供給物流に添加して上向流環流式固定床反応器において実施した。14ヶ月以上の連続オンストリーム時間の間触媒失活の兆候は殆どなかった。
【0115】
本明細書中に開示されている微量の活性金属化合物の添加は各種有機カーボネートまたはカルバメートを連続的に商業製造するために有用であり得る。有機カーボネートを製造する反応は、特定の反応系が示すように単一反応器、一連の複数の反応器、または複数の平行反応器システムにおいて実施され得る。例えば、反応は固体触媒または2つの異なる固体触媒が配置されている単一接触蒸留カラム反応器または一連の複数の接触蒸留カラム反応器において実施され得る。場合により、有機カーボネートを製造するために一連の複数のスラリー反応器を使用することもできる。微量の可溶性活性金属成分の供給物流への添加は一連の複数の反応器中の第1反応器に対してのみであってもよい。供給物流中の微量の活性金属成分の所望量は具体的供給物成分に対する具体的活性金属元素に依存する。ジアルキルカーボネートのフェノールとのエステル交換の場合、金属に応じて幾つかの実施形態では約15重量ppm〜約400重量ppm、他の実施形態では約20重量ppm〜約300重量ppm、さらに他の実施形態では約25重量ppm〜約200重量ppmの範囲であり得る。ジエチルカーボネート及びフェノールからなる供給物流の場合、例えばTiの所望量は幾つかの実施形態では約20重量ppm〜約150重量ppm、さらに他の実施形態では30重量ppm〜100重量ppmであり得る。供給物流中の活性金属成分の量は従来技術の反応媒体中の均一触媒の濃度よりも大体1桁または2桁少ない。
【0116】
反応器流出液流中のTiの濃度は通常、反応器への供給物流中の活性金属濃度の量に応じて約20ppm〜約100ppの範囲である。このレベルで、再循環のために反応器流出液流からTiを回収することは通常経済的に有利でないが、そのように選択してもよい。反応器流出液流中の活性金属成分を粗なDPC回収カラムの重質底部流から固体材料として回収し、有機カーボネートまたは有機カーボネートとアルコールの混合物と高温で反応させることにより再使用しようとする可溶性有機金属化合物に変換させてもよい。回収した有機金属化合物は金属アルコキシド、金属アルコキシアルキルカーボネート(炭酸モノエステルの金属塩)またはこれらの混合物であり得る。
【0117】
DPC回収カラムの底部流中の可溶性活性金属成分を固体材料として回収するためには、DPC回収カラムからの重質廃棄底部流を熱水または蒸気と水の混合物で処理して、金属成分を固体として沈殿させ得る。固体チタン含有触媒の場合、水性相中の固体チタン沈殿を慣用の方法(例えば、濾過または遠心)を用いることにより液体から分離する。分離した固体は、ジアルキルカーボネートまたはジアルキルカーボネートとアルコールの混合物を含有する液体流で圧力下、121〜343℃(250〜650°F)の温度で幾つかの実施形態では10分間〜80時間、他の実施形態では20分間〜45時間処理することより可溶性材料に変換される。ジアルキルカーボネートまたはアルコールとジアルキルカーボネートの混合物が反応容器(例えば、オートクレーブ、管状反応器、蒸留カラム反応器システム等)中に少なくとも部分的に液体として存在していなければならないように圧力は十分に高い。場合により、液体流が不活性溶媒(例えばベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、エーテル等)を含有していてもよい。液体流の例はエタノールとDEC、またはメタノールとDMCの混合物である。アルコールとジアルキルカーボネートの混合物中のジアルキルカーボネートの含量は0.1重量%〜100重量%未満の範囲であり得る。
【0118】
有機カーボネートまたはカルバメートを製造する反応は、反応生成物を費用効果的に分離し、未反応反応物質を再循環させるために適当に配置された蒸留カラムを備えた反応器の各種配置で単一反応器または一連の複数の反応器において実施され得る。或いは、反応を単一または複数の平行反応器において実施してもよい。反応器及び蒸留カラムの各種他の配置は当業者により考えられ得る。
【0119】
反応は単一接触蒸留カラムにおいて、一連の複数の接触蒸留カラムにおいて、一連の複数の固定管状またはタンク反応器、または異なるタイプの反応器の組合せにおいて実施され得る。DPCを製造するために3個の接触蒸留カラムを使用するときには、固体触媒をエステル交換のための一連の最初の2個の反応器中に配置する。第3の蒸留カラム反応器が固体触媒を含んでいても、または固体触媒を含んでいなくてもよい。第3反応器における不均化は反応媒体中に存在する可溶性均一触媒のみを用いて実施され得る。
【0120】
慣用の管状固定床反応器において実施される反応は上向流または下向流モードで実施され得る。例えば、アルキルアリールカーボネート(例えば、EPC)及びジアリールカーボネート(例えば、DPC)を製造する反応は液相中で実施され得るが、1つ以上の固体触媒の存在下で混合相系で実施してもよい。エステル交換のための一連の2つの反応器は、サイクル時間を延長させるために第1及び第2反応器の間で周期的に交換してもよい。EPCを不均化してDPC及びDECを製造するための第3反応器は減圧下で運転され得るフェノール回収カラムの下半分において実施され得る。特定実施形態では、本明細書中に開示されている方法は、ジエチルカーボネートのフェノールとのエステル交換を実施した後エチルフェニルカーボネートを不均化することによりジフェニルカーボネートを製造するために有用であり得る。
【0121】
微量の可溶性活性金属化合物(例えば、エチルフェニルチタネートまたはエトキシチタンエチルカーボネート、またはチタンアルコキシドとアルコキシチタンアルキルカーボネートの混合物)を例えば第1反応ゾーンに供給される液体反応媒体に添加し得る。或いは、不均化はフェノール回収カラムからの底部流をカラムの上の真ん中の区画中の適切なポイントで導入する接触蒸留カラムにおいて実施され得る。不均化をフェノールを除去することなく(フェノーはEPC不均化カラムからの底部流から回収され得る)、エステル交換反応器からの底部流を直接に導入する接触蒸留カラムにおいて実施してもよい。第1反応ゾーンは、DECのフェノールとのエステル交換のための一連の2つの接触蒸留カラムまたは2つの平行な接触蒸留カラムを含み得る。第2反応ゾーンは、EPCをDPC及びDECに不均化するための接触蒸留カラム反応器を含み得る。DECの代わりにDMC、EPCの代わりにMPCを選択してもよい。第1反応ゾーンのための接触蒸留カラム反応器に1つ以上の固体触媒、例えばシリカ担体上に固定化したチタンアルコキシドまたはシリカ担体上に担持させた酸化チタンを充填し得る。通常、2つ以上の反応器を使用する場合に使用し得るジフェニルカーボネートの連続製造のために2つの代替方法がある。
【0122】
ジフェニルカーボネートを連続製造するための第1方法において、各種実施形態では3〜7つの接触蒸留カラム反応器、特定実施形態では3〜4つの接触蒸留カラムを設け得る。これらの接触蒸留カラム反応器のうちの1つ以上が使用中の複数の反応器から最低の活性の反応器を交換するためのスペア反応器として役立ち得る。複数の蒸留カラム反応器のうちの2〜6個の反応器が主にEPCを製造するために使用され得る。残りの接触蒸留カラム反応器は主にEPCのDPC及びDECへの不均化を生起させる第2反応ゾーンとして役立ち得る。第1反応ゾーンからの流れ中のDEC及びフェノールの少なくとも一部を第1反応ゾーンからの重質流出液流から取り出した後、第2反応ゾーンに流入させる。或いは、流れ中のフェノールの濃度に応じて、第1反応ゾーンの重質流出液流中のフェノールの除去を不均化後まで遅らせてもよい。使用中の触媒がエージングするにつれて、触媒活性はゆっくり失活する。芳香族カーボネートの製造及び触媒再活性化のために使用の間一連の複数の反応器を交替するために3つの異なるオプションがある:
(1)所与の使用時間後、最も古い反応器を触媒再活性化のために非使用とし、新鮮または再活性化触媒を有する反応器を一連の複数の反応器中の第1反応器として使用する(すなわち、新しい→第1反応器、第1反応器→第2、第2→第3、及び第3→再活性化または触媒交換)、または場合により、第2反応器を第1反応器として繰り上げるので新しい反応器を一連の最後の反応器として使用する(提示した順方向の逆)ようにすべての反応器を順次循環交替させる;
(2)反応器を第1反応ゾーン及び第2反応ゾーン反応器の2つのグループに分け、各グループは使用の間のローテーション及び触媒交換/再活性化のためのスペア反応器を有している;及び
(3)所要により、一連の複数の反応器中の最低の活性の反応器を触媒再活性化のために非使用とし、スペア反応器(触媒がすで再活性化されている)を非使用とした反応器と交換するために使用する。
【0123】
代替プロセスでは、一連の2つの反応器を第1反応ゾーンとして使用する。所与の時間使用した後、例えば約6000時間毎に2つの反応器の順番を第1反応器と第2反応器の間で周期的に交換する。このローテーションは必要なだけ何度も繰り返す。第2反応ゾーンに対してスペア反応器はない。このタイプの運転は、一連の第1反応器に微量の活性金属化合物を添加するので可能である。第1反応ゾーンからの流れ中のDEC及びフェノールを蒸留により除去し、その後残りの流れを第2反応ゾーンにおいてEPCの不均化にかけて、DPCを製造する。不均化を実施する2つの方法がある:
(1)第1方法では、不均化を固定床反応器(例えば、接触蒸留反応器)において固体触媒の存在下で実施する。使用中の反応器を交換するためにスペア反応器がある。失活した触媒を先に記載した触媒再活性化にかける。
(2)第2方法では、不均化を接触蒸留反応器において固体触媒の非存在下で実施し、スペア反応器はない。第1反応ゾーンから流出する流れ中の活性可溶性金属種は不均反応化のための均一触媒として役立つ。
【0124】
第2反応ゾーンのための固体触媒が存在しているまたは存在していない接触蒸留カラムは、カラムの上半分区画(フェノール回収区画)が主に第1反応ゾーンからの流入反応混合物中のフェノールを留去するために役立ち、下半分区画は主にEPCまたはMPCの不均化を実施するために役立つように設計されると理解される。代替のプロセス設計では、フェノール回収カラムの底部区画で若干の不均化が生じ得るが、フェノール回収カラム及び接触蒸留カラムを2つのカラムに分離する。上記したように、若干のフェノールが接触蒸留カラムにおいてDECと一緒に頭上蒸気流としてストリッピングされ得るが、流入供給物流中のフェノールの濃度に応じてフェノール回収を不均化後まで遅らせてもよい。不均化のための接触蒸留カラムは大気圧下で運転され得る。
【0125】
図1は、本明細書中に開示されている実施形態に従う3つの接触蒸留カラムを用いるDPCの連続製造方法を説明する単純化したフロー図である。一連の2つの接触蒸留カラムはEPC及びエタノールを製造するための固体触媒の存在下でのDECのフェノールとのエステル交換のための第1反応ゾーンとして役立ち、接触蒸留カラムはDPC及びDECを製造するためのEPCの不均化のための第2反応ゾーンとして役立つ。
【0126】
ここで図1を参照すると、本明細書中に開示されている実施形態に従ってDEC及びフェノールからDPCを製造する方法が図示されている。C1及びC2はエステル交換を実施するための接触蒸留カラムであり、C3はエタノール回収カラムであり、C4はDEC回収カラム(フェネトールパージカラム)であり、C5は不均化及びフェノール回収のための接触蒸留カラムであり、C6はEPC回収カラムであり、C7はDPC回収カラムである。
【0127】
カラムC1及びC2は一連の接触蒸留カラムであり、構造化した充填デバイスが反応ゾーンR1及びR2中にそれぞれ配置されている。特別に構造化した充填デバイスは固体触媒を含んでいる。フェノール及びDECを含有する供給物流1及び4をそれぞれ触媒反応ゾーンR1及びR2の上の接触蒸留カラムC1及びC2の上部区画中のトレーに導入する。新鮮DEC及び新鮮フェノール供給物流中のDEC対フェノールのモル比はほぼ1:2であり得る。しかしながら、触媒反応ゾーンR1及びR2中のDEC対フェノールのモル比は、幾つかの実施形態では約12:1〜約1:2.5、他の実施形態では約10:1〜約1:2、さらに他の実施形態では約7:1〜約1:1であるようにコントロールされる。
【0128】
可溶性有機金属化合物もフローライン3を介してC1の頂部区画中のトレーに導入する。例えば、反応ゾーンR1及びR2中のチタン含有固体触媒の場合、可溶性チタン化合物、例えばTi(OEt)4−x(OPh)x(ここで、xは0、1、2、3または4である)、炭酸モノエステルのチタン塩(例えば、エトキシチタンエチルカーボネート)またはこれらの混合物を含有する溶液を第1接触蒸留カラム反応器C1の頂部に導入し得る。触媒溶液のための溶媒は、例えばDEC、DECとフェノールの混合溶液、DEC及びエタノールの混合溶液、またはDECとエタノールとフェノールの混合溶液であり得る。
【0129】
触媒溶液の流速は、第1カラム反応器中の触媒の上の液体流中のチタンの濃度が幾つかの実施形態では約20重量ppm〜約100重量ppmの活性金属(例えば、例えば先のパラグラフでリストした触媒溶液ではチタン)、他の実施形態では約25重量ppm〜約80重量ppm、さらに他の実施形態では約30重量ppm〜約70重量ppmであるようにコントロールされ得る。
【0130】
接触蒸留カラムC1及びC2からの頭上蒸気流6及び14はフローライン8を介してエタノール回収カラムC3に送られる。この頭上流は少量の副生成物(例えば、ジエチルエーテル及び二酸化炭素)及び微量のフェノールをも含有し得る。ジエチルエーテル及び二酸化炭素は頭上蒸気流9として除去され得る。エタノールはフローライン10を介してカラムC3からサイドドロー流として回収され得る。底部流11はDECをカラムC3からそれぞれフローライン12及び13を介して接触蒸留カラム反応器C1及びC2に再循環され得る。
【0131】
カラムC1は、触媒反応ゾーンR1の温度が約160℃〜約210℃(約320°F〜約410°F)の範囲であるように運転され得る。カラムC1中の頭上圧力は約2バール絶対〜約4.8バール絶対(約14.7psig〜約55psig)の範囲であり得る。第1接触蒸留カラムC1からの底部流7は接触蒸留カラムC2の頂部に導入され得、このカラムC2は触媒反応ゾーン中の温度が約162℃〜約216℃(約325°F〜約420°F)の範囲であり得るように運転され得、カラムは減圧約1バール(0psig)〜約4.5バール(51psig)の範囲の頭上圧力で運転され得る。場合により、再循環または新鮮DEC流の小フラクションはそれぞれフローライン4a及び4bを介してカラムC1及びC2に導入され得る。
【0132】
EPCの濃度は、接触蒸留カラムC1及びC2中の段を下行するにつれて上昇する。EPCのDPC及びDECへの若干の不均化がカラム反応器C1及びC2中で生ずるので、DPCの濃度も上昇する。蒸留カラム反応器C2からの底部流15はDEC回収カラムC4に送られ、ここでDECは頭上蒸気流16中に回収される。カラムC4は約127℃〜約204℃(約260°F〜約400°F)の温度及び約0.3バール(約4psia)〜約1.5バール(約22psia)の頭上圧力で運転され得る。流れ16中に存在し得るDEC及びフェノールを分離するために、流れ16をエタノール回収カラムC3に導入する。DEC及びフェノールはライン11、12、13を介してC1及びC2に再循環され得る。
【0133】
カラムC4からの頭上流16はDEC、及び少量のフェネトール、フェノール及びエタノールをも含有し得る。カラムC4からのサイドドロー流18はフェネトールパージ流として使用され得、システム中のフェネトールの蓄積を最小限とし得る。
【0134】
カラムC4からの底部流17はカラムC1及びC2由来の均一触媒種を含有している。底部流17は蒸留カラムC5の頂部区画に適当な位置で導入され得る。カラムC5はEPCの不均化を実施するために使用され得、場合により反応ゾーンR3中に不均一触媒を含み得る。
【0135】
カラムC5は、2つの目的、すなわち流れ17中のフェノール及びEPC不均化からの共生成物DECを頭上流19として除去すること及びEPCを不均化してDPCを形成することを達成するように設計され、運転され得る。カラムC5は、均一触媒反応ゾーンR3温度が約165℃〜約210℃(約330°F〜約410°F)の範囲であり、カラム頭上圧力が約0.07バール(約1psia)〜約0.6バール(9psia)であるように運転される。
【0136】
C5からのDEC及びフェノールを含有する頭上蒸気流19は、それぞれ流れ20及び21を介してカラムC1及びC2に再循環され得る。C5からのC5底部流22(DPC、未変換EPC、フェノール、フェネトール、重質物質及び可溶性Ti触媒を含有する)はEPC回収カラムC6に導入され、このカラムC6は約168℃〜約213℃(約335°F〜約415°F)の温度及び約0.03バール(約0.4psia)〜約0.55バール(8psia)の範囲の減圧下で運転され得る。
【0137】
DPCをサイドドロー流27として回収するために、EPCカラムC6底部流25をDPC回収カラムC7に導入する。DPC回収カラムC7は高真空(例えば、<0.03バール(<0.4psia))下で運転される。頭上流26はEPCカラムC6頭上流23と合体され、ライン24を介してカラムC5に再循環され得る。
【0138】
重質物質及び可溶性触媒を含有するDPC回収カラムC7底部流28を回収しても廃棄してもよい。所望ならば、チタン触媒を使用し、反応器に供給する場合、例えば先に検討したように再循環のためにチタンを可溶性Ti触媒(Ti(OEt)4またはTi(OEt)4とエトキシチタンエチルカーボネートの混合物)として回収してもよい。1つの破棄方法として、流れ28はTiを回収するためにチタン精製所に送られ得る。当業者には公知である代替の回収及び精製トレインで流れ22からDPCを回収することができる。
【0139】
或いは、上述したように、EPCのDPC及びDECへの不均化は接触蒸留カラムC5において固体触媒の存在下で実施され得る。しかしながら、C5中の固体触媒は図1に図示されている第2接触蒸留カラムC2中の固体触媒よりもより早く失活する恐れがある。
【0140】
先に検討したように、C5が固体触媒を含んでいる場合、プロセスに対して十分な触媒活性を維持するために蒸留カラム反応器に再循環させるために各種オプションを使用し得る。反応物質を循環させるために図示されていない十分なバルブ及びパイプを設けてもよく、当業者の裁量の範囲内である。
【0141】
図2は代替プロセスフロー図であり、同一符号は同一パーツを表す。図1と同数のエステル交換及び不均化を実施するための接触蒸留カラム及び材料を分離するためのカラムがある。しかしながら、接触蒸留カラムC5からの頭上流19のフラクションをライン30を介してDEC回収カラムC4に戻って再循環させてもよい。よって、ライン30を介する再循環によりフェネトールをパージするための代替方法ができる。
【0142】
図3は、図1及び2に類似の本明細書中に開示されている実施形態に従う別の代替プロセスフロー図を示し、同一符号は同一パーツを表す。第1接触蒸留カラムC1は多かれ少なかれ先のケース(図1及び2)と同様に運転される。しかしながら、第2接触蒸留カラムC2及びDEC回収カラムC4は先のケースと異なる方法で運転される。カラムC2は先のケースよりも高い温度及び低い圧力で運転され得る。再循環DEC流13はカラムC2の底部に導入される。場合により、新鮮DEC流4の一部をカラムC2の底部に導入してもよい。高温及び低圧で運転するために、C2底部流15はより少ない量のDECしか含有していない。C2頭上流14は他の成分の中でフェネトールを含有している。流れ14はカラムC4に導入され、C4底部流17はフェネトールパージ流である。
【0143】
非常に純粋なDPCが本明細書中に開示されている実施形態に従って製造した粗なDPC生成物から製造され得る。高純度DPCは、炭化水素−エーテル混合物(例えば、ヘキサン−ジエチルエーテル混合物)を用いて分別結晶することにより製造され得る。幾つかの実施形態では、精製DPC生成物中のフェノール以外の唯一の検出可能な不純物は最高約0.5重量ppmの量のキサントンである。精製DPC中のフェノールは微量、例えば約5〜約17重量ppmであり得る。本明細書中に開示されている実施形態に従って製造したDPC中の不純物のトレース分析は、得られたDPCの純度が実験室化学薬品の販売業者から入手し得るDPCよりもかなり高いことを示している。
【実施例】
【0144】
実施例
実験1を除いて、DECのフェノールとのエステル交換はすべて上向流沸騰型反応器において実施した。従って、蒸気及び液相が触媒反応ゾーン中に共存している。固定床反応器の寸法は直径1.3cm(1/2インチ)×長さ6.5cm(25インチ)であった。反応器は別々にコントロールされる頂部及び底部加熱ゾーンを有していた。固定床反応器は垂直方向に載置されていた。固体触媒の容量は25mlであった。
【0145】
比較実験1
DECのフェノールとのエステル交換に関する実験を攪拌型50mlオートクレーブ反応器を用いて均一チタンアルコキシド触媒の存在下で実施した。オートクレーブに表1に示したDEC/フェノール混合物(約35ml)を充填した。反応温度をコントロールするためにオートクレーブを油浴に浸漬させた。反応を実施した後、オートクレーブを油浴から取り出し、冷水でクエンチした。反応混合物中にジフェニルエーテルは観察されなかった。反応の結果を表1にリストする。
【0146】
【表1】
【0147】
供給物溶液中のTi濃度が4767重量ppmであったときには、約3時間の反応時間後の最高フェノール変換率は約15%で、EPC及びDPCの選択率は非常に低かった(<20.5モル%)。反応時間が2時間の場合、フェノールの変換率は5%未満であった。選択率はより良好であるが、なお低かった(63モル%)。触媒濃度を42重量ppmのTiに低下させると、選択率は大きく改善されたが、変換率は低かった。
【0148】
比較実験2
本実験の目的は、本明細書中に開示されている実施形態に従う実施例の結果と比較するための基準としての均一触媒の実験データを得ることであった。反応器中に固体触媒は存在していなかった。反応器中の固体触媒のための25mlスペースは空であった。各種量のTi(OEt)4−x(OPh)x(x=〜2)の均一触媒を有する73.3重量%のDECと26.7重量%のフェノール(DEC/PhOHのモル比=2.19)の反応混合物を反応器中に上向流で各種反応条件で0〜768時間オンスリームの間、次いで1266〜1362時間オンスリームの間通した。供給混合物中のTiの濃度は、図4に示すように59重量ppm〜709重量ppmのTiの範囲であった。流速は殆どのラン時間で0.5ml/分であった。供給物流速の履歴を表2にリストする。
【0149】
【表2】
【0150】
複合エステル交換生成物中のエタノールを留去した後、DECを添加することによりDEC/PhOHのモル比を2.19に調節して第2エステル交換供給物を調製した。第2エステル交換供給物は平均で約3.4重量%のEPC、約250重量ppmのフェネトール及び約300重量ppmのDPCを有していた。第2エステル交換供給物中の均一触媒濃度の履歴を表3にリストする。
【0151】
【表3】
【0152】
これらの供給混合物を用いて、第2エステル交換を768〜1266時間オンストリームの間実施した。この期間での図4中のフェノール変換率は第1及び第2エステル交換を通した全変換率である。
【0153】
反応温度の範囲は、図4に示すように174℃〜210℃(345°F〜410°F)であった。反応器圧力の範囲は約2.9〜約5.5バール(約27psig〜約65psig)であった。反応はすべて沸騰条件下で実施した。従って、反応を混合相系(蒸気及び液体)として実施した。図4の温度は反応器底部温度である。
【0154】
反応混合物中の触媒濃度が118ppmのTiより高い場合、触媒はフェノール変換率に対して悪影響を与えた。この悪影響の原因は完全に解明されていないが、Ti触媒上の2個のエトキシ基の影響であり得る。また、供給物中のTi濃度が約300ppmより高い場合、Ti触媒が沈殿したために反応器流出液ライン中にライン閉塞の問題があった。従って、ライン閉塞の問題を解決するために一対のインラインファルターを設置した。Tiの濃度が59ppmの場合、フェノール変換率に対する温度の影響は中程度であり、DECのフェノールとのエステル交換の活性化エネルギーが低いことを示している。第1エステル交換の最高フェノール変換率は337ppmのTi、204℃(400°F)及び4.5バール(50psig)で約11.3モル%であった。第2エステル交換の最高フェノール変換率は、193℃(380°F)、2.9バール(27psig)、188ppmのTi濃度で約14.5モル%であった。本実験は、液相反応(410℃及び7.9バール(100psig))の変換率が予想されるように低いことも示唆している。
【0155】
実験3
本実験の目的は、(1)シリカゲル担体上に固定化したチタンn−ブトキシドの現場作成技術、(2)触媒再活性化のための技術、及び(3)エステル交換のための二相固定床反応器の性能を立証することであった。触媒反応ゾーン中の蒸気と液体の二相は反応混合物を沸騰させることにより生成した。
【0156】
顆粒状シリカゲル(+8メッシュ)(45.74g)を周囲温度で攪拌しながら約42℃の温度で水酸化ナトリウム溶液(550mlの水中7.5gのNaOH)で7分間処理した。シリカゲルをまず冷水で、次いで熱水(約80℃)で洗浄して、シリカ上の微量のナトリウムを除去した。生じた処理シリカゲルを窒素パージ下125℃で2時間、次いで300℃で2時間乾燥した。乾燥したシリカゲル担体は23重量ppmのNaを有していた。処理したシリカゲル担体は、以下の特性:291m2/gのBET、1.052cm3/gの細孔容積及び16.3nmの平均細孔直径を有していた。
【0157】
25ml(約9.3g)の乾燥した顆粒状シリカゲル担体を反応器に充填した。チタンn−ブトキシド溶液は、チタンn−ブトキシド(27g)を乾燥トルエン(500ml)中に溶解させることにより調製した。チタンn−ブトキシド溶液をリザーバー中に入れた。チタンn−ブトキシド溶液を反応器に周囲温度で15ml/分で上向流で15分間循環させた後、反応器を約5.5バール(65psig)の圧力下で168℃(335°F)に加熱した。循環を168℃(335°F)で4.5時間継続した後、反応器を冷却した。過剰の溶液を反応器から排出させた後、担持した触媒を乾燥トルエンで4ml/分で上向流で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を350cc/分の窒素ガス(上向流)中168℃(335°F)で2時間乾燥した。生じた現場作成したシリカゲル顆粒担体上にグラフトしたチタンn−ブトキシド触媒をDECのフェノールとのエステル交換について試験した。
【0158】
第1エステル交換サイクル:DECのフェノールとのエステル交換は固定床沸騰型反応器において現場作成した固体触媒の存在下で実施した。DECとフェノール(25.57重量%のフェノール及び74.43重量%のDEC;DEC/PhOHのモル比=2.32)の混合物を固体触媒床に上向流で168℃(335°F)、2.4バール(20psig)及び0.2ml/分の供給物流速で通した。この試験は第1エステル交換サイクルを構成し、結果を図5に図示する。触媒は約40時間オンストリームでその最大活性(フェノールの12モル%変換率)に達した。約80時間オンストリームの後、触媒はその活性の殆どを失った。この失活した触媒を以下のように第1回再活性化にかけた。
【0159】
第1回触媒再活性化:触媒再活性化は2つのステップ、すなわち触媒解重合/表面コンディショニング及び触媒上への活性チタン金属の再堆積からなる。反応器を排出させた後、触媒を乾燥トルエン(300ml)を用いて上向流で周囲温度で洗浄した後、トルエンを反応器から排出させた。エタノール(400ml)及びトルエン(1700ml)と混合することにより調製した2Lのエタノール溶液中にチタンn−ブトキシド(0.19g)を溶解させた。チタン溶液を反応器に上向流で168℃(335°F)及び12バール(160psig)で2.2ml/分で13.5時間通した。過剰のチタン溶液を反応器から排出させた後、触媒を200cc/分の窒素中上向流で大気圧下で168℃(335°F)で45分間乾燥した。チタンn−ブトキシド溶液(2Lのトルエン中135gのチタンn−ブトキシド)を反応器に15ml/分で上向流で室温で20分間、次いで168℃(335°F)及び0.7バール(140psig)で4時間循環させた。冷却後、過剰の溶液を反応器から排出させた。触媒を4ml/分のトルエンで上向流で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を300cc/分の窒素ガス中上向流で168℃(335°F)で2時間乾燥した。再活性化した触媒を以下のように第2エステル交換サイクルにおいて使用した。
【0160】
第2エステル交換サイクル:エステル交換を第1サイクルと同一方法で実施した。結果を図5に図示する。再活性化した触媒は第1サイクルほど良好に働かず、触媒はたった約40時間オンストリームの後に死んだ。その後、第2回触媒再活性化を以下のように実施した。
【0161】
第2回触媒再活性化:材料を反応器から排出させた後、反応器中の触媒を周囲温度で乾燥トルエンで10ml/分で上向流で30分間洗浄した後、トルエンを反応器から排出させた。反応器中の触媒を窒素ガス中250cc/分で上向流で168℃(335°F)で1時間乾燥した。水(8ml)、エタノール(500ml)及びトルエン(1100ml)を混合することにより調製した溶液を反応器に2.2ml/分で上向流で168℃(335°F)及び12バール(160psig)で12.1時間通した。過剰の溶液を反応器から排出させた後、触媒を168℃(335°F)及び大気圧下で200cc/分の窒素中上向流で1時間乾燥した。チタンn−ブトキシド溶液(2Lのトルエン中135gのチタンn−ブトキシド)を反応器中に15ml/分で上向流で室温で20分間、次いで168℃(335°F)及び10.7バール(140psig)で6時間循環させた。冷却後、過剰のチタン溶液を反応器から排出させた。触媒を4ml/分のトルエンで上向流で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を300cc/分の窒素ガス中上向流で168℃(335°F)で2時間乾燥した。次いで、再活性化した触媒を以下のように第3エステル交換反応サイクルにおいて使用した。
【0162】
第3エステル交換サイクル:エステル交換を第1サイクルと同一方法で実施した。結果を図5に図示する。再活性化した触媒は第1サイクルにおける触媒と同様に働いた。しかしながら、触媒は約90時間オンストリームの後死んだ。
【0163】
反応器中の失活した触媒を同様の条件下で2回以上の触媒再活性化にかけた後、2回以上のエステル交換にかけて、同様の結果を得た。第5エステル交換反応サイクル後、触媒を以下のように第5回触媒再活性化にかけた。第3回〜第5回触媒再活性化の履歴を以下に記載する。
【0164】
第3回触媒再活性化:第3エステル交換サイクルから残った反応器中の材料のすべてを排出させた後、反応器中の触媒を乾燥トルエンで10ml/分で上向流で周囲温度で1時間洗浄した後、過剰のトルエンを反応器から排出させた。反応器中の触媒を窒素ガス中250cc/分で上向流で157℃(315°F)で1時間乾燥した。水(8ml)、エタノール(500ml)及びトルエン(1100ml)を混合することにより調製した溶液を反応器に2.2ml/分で上向流で157℃(315°F)及び2.7バール(25psig)で12.1時間通した。過剰の溶液を反応器から排出させた後、触媒を200cc/分の窒素中上向流で大気圧下、149℃(300°F)で1時間乾燥した。チタンn−ブトキシド溶液(2Lのトルエン中135gのチタンn−ブトキシド)を反応器に15ml/分で上向流で室温で20分間、次いで157℃(315°F)及び7.2バール(90psig)で6時間循環させた。冷却後、過剰の溶液を反応器から排出させた。触媒を4ml/分のトルエンで上向流で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を300cc/分の窒素ガス中上向流で163℃(325°F)で2時間乾燥した。
【0165】
次いで、再活性化した触媒を第4エステル交換にかけた。再活性化した触媒の性能は第2エステル交換サイクルと同様であった。結果は図5に示されていない。
【0166】
第4回触媒再活性化:第4エステル交換サイクルから残った反応器中の材料を排出させた後、反応器中の触媒を周囲温度で乾燥トルエンで10ml/分で上向流で1時間洗浄した後、過剰のトルエンを反応器から排出させた。反応器中の触媒を窒素ガス中250cc/分で上向流で157℃(315°F)で1時間乾燥した。水(8ml)、エタノール(500ml)及びトルエン(1100ml)を混合することにより調製した溶液を反応器に2.2ml/分で上向流で157℃(315°F)及び2.7バール(25psig)で12.1時間通した。過剰の溶液を反応器から排出させた後、触媒を200cc/分の窒素中上向流で大気圧下、149℃(300°F)で1時間乾燥した。チタンn−ブトキシド溶液(2Lのトルエン中135gのチタンn−ブトキシド)を反応器に15ml/分で上向流で室温で20分間、次いで157℃(315°F)及び7.2バール(90psig)で6時間循環させた。冷却後、過剰の溶液を反応器から排出させた。触媒を4ml/分のトルエンで上向流で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を300cc/分の窒素ガス中上向流で163℃(325°F)で2時間乾燥した。次いで、再活性化した触媒を第5エステル交換サイクルにおいて使用した。触媒の性能は第3エステル交換サイクルと同様であった。結果は図5に示されていない。
【0167】
第5回触媒再活性化:材料を反応器から排出させた後、反応器中の触媒を10ml/分の乾燥トルエンで上向流で周囲温度で1時間洗浄した後、過剰のトルエンを反応器から排出させた。反応器中の触媒を窒素ガス中250cc/分で上向流で124℃(255°F)で1時間乾燥した。水を反応器に0.3ml/分で下向流で152〜154℃(305〜310°F)及び大気圧下で6時間通した。反応器中の蒸気処理した触媒を100cc/分の窒素ガスで下向流で146〜149℃(295〜300°F)で1時間20分乾燥した。チタンn−ブトキシド溶液(1600mlのトルエン中135gのチタンn−ブトキシド)を反応器に15ml/分で上向流で室温で20分間、次いで127℃(260°F)及び3.1バール(30psig)で6時間循環させた。冷却後、過剰の溶液を反応器から排出させた。触媒を4ml/分のトルエンで上向流で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を300cc/分の窒素ガス中上向流で138℃(280°F)で2時間乾燥した。次いで、再活性化した触媒を以下のように第6エステル交換にかけた。
【0168】
第6エステル交換サイクル:エステル交換を第1サイクルと同一方法で実施した。結果を図5に図示する。再活性化した触媒は第1サイクルと同様に働いた。興味深いことに、触媒は遅い速度で失活した。
【0169】
上記実験は、現場でシリカゲル担体上に固定化したチタンアルコキシド触媒が失活しても再活性化することが可能であることを立証している。しかしながら、触媒サイクル寿命が芳香族カーボネートを連続製造するための大型商業用反応器においてこの技術を実施するには余りに短いことがある。
【0170】
実験4
本実験の目的は、微量(42重量ppmのTi)の可溶性Ti化合物(チタンn−ブトキシド)を供給物流に添加することにより触媒サイクル寿命の延長が達成され得ることを立証することであった。実験3における第6エステル交換サイクルからの失活した触媒を再び以下のように第7回触媒再活性化にかけた。反応器中の材料を排出させた後、反応器中の触媒を10ml/分の乾燥トルエンで上向流で周囲温度で1時間洗浄した後、過剰のトルエンを反応器から排出させた。反応器中の触媒を250cc/分の窒素ガス中上向流で124℃(255°F)で1時間乾燥した。エタノール中水(4重量%)の混合溶液を反応器に1.4ml/分で下向流で154℃(310°F)及び大気圧で6時間通した。反応器中の触媒を150cc/分の窒素ガスで下向流で154℃(310°F)で1時間25分乾燥した。チタンn−ブトキシド溶液(800mlのトルエン中67.5gのチタンn−ブトキシド)を反応器に15ml/分で上向流で室温で20分間、次いで127℃(260°F)及び3.4バール(35psig)で6時間通した。冷却後、過剰の溶液を反応器から排出させた。触媒を4ml/分のトルエンで上向流で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を300cc/分の窒素ガス中上向流で138℃(280°F)で2時間乾燥した。再活性化した触媒を以下のように第7エステル交換サイクルにかけた。
【0171】
第7エステル交換サイクルは、各種反応条件下で微量(42重量ppmのTi)のチタンn−ブトキシドを供給物流に添加することにより実施した。本実験では2つの異なる供給混合物を使用した。19.73重量%のフェノールと80.27重量%のDEC(DEC/PhOHのモル比=3.24)の混合供給物溶液を最初の593時間オンストリームの間使用した後、25.83重量%のフェノールと74.17重量%のDEC(DEC/PhOHのモル比=2.29)を749時間オンストリームで運転停止するまでランの残りの間使用した。予め混合したDEC/PhOH供給物溶液にチタンn−ブトキシドを混合した。供給物速度は、最初の353時間オンストリームの間0.2ml/分、353〜401時間オンストリームの間0.3ml/分、次いでランの終わりまで0.2ml/分であった。各種オンストリーム時間に採取した生成物サンプルのトレース分析は、48時間で21ppmのTi、305時間で44ppmのTi、449時間で44ppmのTi、491時間で31ppmのTi、593時間で51ppmのTi、713時間で51ppmのTi、749時間で31ppmのTiを示した。本実験の結果を図6に図示する。図6に示した温度は触媒床の底部での温度示度であった。触媒床の頂部での温度示度は通常、生成物流中のエタノール濃度に応じて反応器底部温度より1.5〜3℃(3〜5°F)低く、このことは触媒床の頂部区画でのエタノールの蒸発を示している。生成物中のエタノール濃度が約1.2重量%より高かったならば、触媒床の頂部でのより低い反応器流出液温度は顕著になった。フェネトールは唯一の検出可能な副生成物であった。フェノールに基づくフェネトールの選択率は0.3モル%未満であった。
【0172】
図6に示すように、全ラン時間(749時間)中触媒失活はなかった。このことから、供給物流に42重量ppmの可溶性Tiを添加することにより触媒サイクル寿命が80時間未満から749時間以上に延長され得ることがうまく立証される。
【0173】
反応器中の触媒をランの終了時に分析し、大部分黄色の顆粒であり、若干の触媒顆粒は暗褐色であった。比較のために、チタンフェノキシドは濃橙色または琥珀様色を有している。使用ずみ触媒の分析は触媒上に0.55重量%のTiを示した。これは驚くべき知見であった。
【0174】
実験5
本実験の目的は、(1)反応を実施する前に触媒を予め形成する必要性、(2)触媒再活性化、(3)触媒サイクル時間の延長、及び(4)供給物中の含水量(約650重量ppm未満)をコントロールする必要性を立証することであった。本実験では、チタンn−ブトキシドをグラフトする担体を作成するために酸化ケイ素ペレットを使用した。
【0175】
酸化ケイ素ペレット担体(0.3cm(1/8インチ),555重量ppmのNa及び2500重量ppmのAl;280m2/gのBET SA及び1cc/gのPV)を固定化チタンn−ブトキシド触媒を作成するために使用した。酸化ケイ素ペレット(100g)を約52℃で攪拌しながら水酸化ナトリウム溶液(570mlの水中10gのNaOH)で5分間で処理した。シリカを冷水で十分に洗浄した後、熱水(約80℃)で洗浄して、シリカ上の微量のナトリウムを除去した。処理したシリカをまず室温で乾燥し、次いで130℃で1.5時間乾燥した後、真空オーブン中で150℃で1時間乾燥した。乾燥したシリカ担体は150重量ppmのNaを有していた。作成したシリカ担体は以下の特性:252m2/gのBET、1.035cm3/gの細孔容積及び15.7nmの平均細孔直径を有していた。
【0176】
25ml(9.72g)の乾燥した酸化ケイ素ペレットを反応器に充填した。触媒溶液用リザーバーに、チタンn−ブトキシド(135g)をトルエン(1600ml)中に溶解させることにより調製したチタンn−ブトキシド溶液を充填した。この触媒溶液を反応器に15ml/分の流速で上向流で周囲温度で20分間、次いで135℃(275°F)及び3.4バール(35psig)で6時間循環させた。冷却後、過剰の触媒溶液を反応器から排出させた後、現場作成した触媒をトルエンで上向流で4ml/分の流速で周囲温度で1.5時間洗浄した。過剰のトルエンを反応器から排出させた後、触媒を138℃(280°F)で350cc/分の窒素ガス中上向流で2時間乾燥した。生じた触媒を以下のように第1エステル交換サイクルにおいて使用した。
【0177】
第1エステル交換サイクル:可溶性チタン種を供給物流中に注入することなく、第1エステル交換サイクルを168℃(335°F)及び2.4バール(20psig)の沸騰反応条件下で0.2ml/分の流速で上向流で実施した。供給物組成は26.07重量%のフェノール及び73.93重量%のDEC(DEC/フェノールのモル比=2.56)であった。結果を図7に図示する。触媒はオンストリーム時間と共に失活した。約100時間オンストリーム後、触媒は殆ど活性を有していなかった。
【0178】
第1回触媒再活性化:材料を反応器から排出させた後、反応器中の触媒を乾燥トルエンで10ml/分で上向流で周囲温度で1時間洗浄した後、過剰のトルエンを反応器から排出させた。反応器中の触媒を124℃(255°F)で250cc/分で上向流で流れる窒素ガス中で1時間乾燥した。水(4重量%)とエタノールの混合溶液を反応器に2.2ml/分で上向流で154℃(310°F)及び大気圧で6時間通した。触媒を154℃(310°F)で150cc/分の窒素中上向流で1時間25分乾燥した。チタンn−ブトキシド溶液(800mlのトルエン中67.5gのチタンn−ブトキシド)を反応器に15ml/分で上向流で室温で20分間、次いで134℃(275°F)及び3.4バール(35psig)で6時間循環させた。冷却後、過剰の溶液を反応器から排出させた。触媒を4ml/分のトルエンで上向流で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を138℃(280°F)で300cc/分の窒素ガス中上向流で2時間乾燥し、第2エステル交換反応サイクルにおいて使用した。
【0179】
第2エステル交換サイクル:再活性化した触媒を第1エステル交換サイクルと同一の条件で同一の供給物溶液を用いて第2エステル交換サイクルにかけた。結果を図7に図示する。第1エステル交換サイクルと同様の結果を得た。
【0180】
第2回触媒再活性化:第2回触媒再活性化を第1回触媒再活性化と同一方法で実施した。
【0181】
第3エステル交換サイクル:第2回触媒再活性化から得た再活性化した触媒を、第1エステル交換サイクルと同一の条件で可溶性チタン種を同一の供給物溶液に添加して第3エステル交換サイクルにかけた。第3エステル交換サイクルの結果を図7に図示する。第1エステル交換サイクルと同様の結果を得たが、触媒は一定の触媒活性を長時間維持した。270時間オンストリームで採取したサンプルのトレース分析は47重量ppmのTiを示した。サンプルを270時間オンストリームで採取した後、供給物リザーバーに新しい供給物を再充填した。残念ながら、チタンn−ブトキシドと混合すると供給物は濁るようになった。濁りは供給物溶液中の含水量が前の供給物溶液よりも予期せぬほどに高いことに起因したと考えられる。触媒活性はこの新しい供給物溶液で素早く低下した。この新しい供給物との複合生成物のトレース分析は9重量ppmのTiを示した。供給物流中の含水量は約650重量ppm未満に維持されるべきであることが知見された。
【0182】
ブランクラン(Tiアルコキシド触媒の固定化を実施することなく):同一反応器に、酸化ケイ素ペレットを約52℃で攪拌しながら水酸化ナトリウム溶液(570mlの水中10gのNaOH)で5分間処理して調製した25ml(9.54g)の酸化ケイ素ペレット担体を充填した。シリカを冷水で十分に洗浄した後、熱水(約80℃)で洗浄して、シリカ上の微量のナトリウムを除去した。処理したシリカをまず室温で乾燥し、次いで130℃で1.5時間乾燥した後、真空オーブン中で150℃で1時間乾燥した。触媒は担体に対してグラフトされていなかった。エステル交換反応は、同一条件(168℃(335°F)及び2.4バール(20psig)の沸騰反応条件下、0.2ml/分の供給物速度で上向流で;供給物組成は26.07重量%のフェノール及び73.93重量%のDEC(DEC/フェノールのモル比=2.56であった)下で上記と同じ組成供給物中42重量ppmのTiで実施した。結果を図7に図示する。フェノールの変換率はランを通して2%未満であった。
【0183】
この一連の実験(実験5)は、失活した触媒を再活性し、触媒サイクル時間を250時間以上に延長させることができることをうまく立証している。ブランクランは、エステル交換を実施する前に触媒を作成しなければならないことを明白に立証している。或いは、反応器の外部で前もって作成したグラフトしたチタンアルコキシド触媒を用いてエステル交換を開始することを選択してもよい。本実験は、一定の触媒活性を維持するために供給物中の含水量を約650重量ppm未満に維持しなければならないことがあることをも示している。
【0184】
実験6
本実験の目的は、一連の複数の反応器におけるシリカ担体上に担持させた酸化チタン触媒の存在下での芳香族カーボネートの連続製造を立証することであった。実験3における同一の顆粒状シリカゲル(40.7g)を攪拌しながら周囲温度で水酸化ナトリウム溶液(500mlの水中6.86gのNaOH)で7分間処理した。シリカゲルをまず冷水で十分洗浄した後、熱水(約80℃)で洗浄して、シリカ上の微量のナトリウムを除去した。処理したシリカゲルを140℃で2時間、345℃で3時間、次いで375℃で2時間乾燥した。30ml(10.99g)に、チタンn−ブトキシド(4.71g)を乾燥トルエン(80ml)中に溶解することにより調製したチタンn−ブトキシド溶液を含浸させた。含浸させたシリカゲル担体を500℃で3時間か焼した。シリカ上に担持させた酸化チタン触媒のチタン含量は、使用したチタンn−ブトキシドの量に基づいて5.48重量%のTiであった。25ml(9.8g)のシリカ上に担持させた酸化チタン触媒を反応器に充填した。DECのフェノールとのエステル交換を各種条件下で実施した。0〜308時間オンストリームの間の供給物はDECとフェノールの2つの異なる混合物であった。これらの供給物を使用して、DECのフェノールとの第1エステル交換を実施した。Ti(OEt)4−x(OPh)x(ここで、x=〜2)のストック溶液を混合することにより調製したDEC/PhOH供給物溶液(0〜308時間オンストリーム)中のチタン含量は59重量ppmのTiであった。Ti(OEt)4−x(OPh)xのストック溶液は、120℃〜125℃でDECとフェノール(PhOH)(25重量%)の混合溶液中に適量のチタンテトラエトキシドを3時間混合することにより調製した溶液からエタノールを蒸留することにより調製した。308時間〜986時間オンストリームの間の供給物は、第1エステル交換の複合生成物からエタノールを蒸留することにより調製した。これらの供給物を使用して第2エステル交換を実施した。この反応は一連の第2反応器または多段接触蒸留カラムの供給ポイント以下の幾つかの段における反応と均等である。986時間〜1136時間オンストリームの間の供給物は、第2エステル交換からの複合生成物からエタノールを蒸留することにより調製した。これらの供給物を使用して第3エステル交換を実施した。第2または第3エステル交換のための供給物に可溶性チタン触媒成分は混合しなかった。供給物組成を表4にリストする。エステル交換は185℃(365°F)、2.9バール(27psig)及び0.24ml/分の供給物速度で実施した。本実験の結果を図8に図示する。図8におけるフェノールの変換率は第1エステル交換から第3エステル交換までの全フェノール変換率である。ラン(1362時間の連続運転)を通して触媒失活の兆候はなかった。ランの終了時に反応器から回収した触媒の試験は、重質ポリマーが殆ど沈着していなかったことを示した。触媒の分析は2.3重量%のTiを示し、このことは生成物流への浸出のために約58%のTiが損失したことを示している。686、887及び1293時間オンストリームで採取した生成物流中のTiのトレース分析はそれぞれ75、57及び78重量ppmのTiを示した。
【0185】
本実験の結果は、微量の可溶性Ti化合物を供給物流に添加することにより長い触媒サイクル時間で、一連の複数の反応器を用いる芳香族カーボネートの連続製造を明白に立証している。本実験は、可溶性有機チタン化合物を形成することにより過剰量の酸化チタンは洗い流され得るので触媒上に大量の酸化チタンが必要でないことがあることも示唆し得る。触媒サイクル時間は触媒再活性化のために必要な時間よりも十分に長い。EPC及びDPCの合計選択率は、変換されたフェノールに基づき、ラン条件に応じて約98モル%〜約93%であった。
【0186】
【表4】
【0187】
実験7
本実験の目的は、シリカゲル担体上に固定化したチタンエトキシド触媒の存在下でDECのフェノールとのエステル交換を実施することにより一連の複数の反応器における芳香族カーボネートの連続製造を立証することであった。
【0188】
本実験は実験7A及び7Bの2部から構成されている。実験7Aでは、エステル交換を実施する前にTiエトキシドのシリカゲル担体上への固定化を実施した。供給物は各種量の可溶性Ti(OEt)4−x(OPh)x(ここで、x=〜2)化合物を含有していた。実験7Bでは、反応器中の25mlのスペースに25mlのシリカゲル担体を充填し、エステル交換をシリカ上の担体にTiテトラエトキシドをグラフトせずに実施した。
【0189】
実験7A
現場での触媒作成のために使用した担体は球状に成形したシリカゲル球(直径1.7〜4mm)であった。このシリカゲル担体は、約6個のヒドロキシル基/nm2、392m2/gのBET、0.633cm3/gの細孔容積、6.48nmの平均細孔直径及び約0.58g/mlの見かけ嵩密度(ABD)を有していた。このシリカゲル担体(25ml;1446g)を反応器に充填した。チタンエトキシド溶液(800mlのトルエン中45.25gのチタンエトキシド)を反応器に15ml/分で上向流で周囲温度で20分間、次いで135℃(275°F)及び3.4バール(35psig)で6時間循環させて、チタンエトキシドをシリカゲル担体上にグラフトした。冷却後、系中の過剰の溶液を排出させ、次いで触媒をトルエンで4ml/分で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を300cc/分の窒素ガス流速中38℃(280°F)で2時間乾燥した。
【0190】
EPC及びDPCを製造する反応を各種条件で実施した。結果を図9A及び9Bに図示する。第1エステル交換反応はすべてTi(OEt)4−x(OPh)x(ここで、x=〜2)として59ppmのTiを供給物流に添加して実施した。ただし、709時間〜799時間オンストリームの間は151ppmのTiを添加した。第1エステル交換のためにランを185℃(365°F)、2.9バール(27psig)及び0.24ml/分で開始した。最初の50時間オンストリーム後温度をゆっくり174℃(345°F)に低下させ、次の96時間オンストリームの間供給物速度を0.5ml/分にゆっくり上昇させた。その後、第1及び第2エステル交換はすべて174℃(345°F)、2.9バール(27psig)及び0.5ml/分の条件で実施した。第1、第2及び第3エステル交換からの複合生成物からエタノールを蒸留することにより、第2、第3及び第4エステル交換のための供給混合物を調製した。973時間〜1064時間オンストリームの間、混合エステル交換及び不均化反応は174℃(345°F)、2.4バール(20psig)及び0.5ml/分の供給物速度で実施した。反応のための供給物の組成は、18.553重量%のDEC、0.108重量%のエチルブチルカーボネート、0.283重量%のフェネトール、0182重量%の未知物質、57.508重量%のフェノール、22.03重量%のEPC、0.054%のp−フェノキシフェニルメチルカーボネート及び1.282%のDPCであった。結果は、主要反応が不均化であることを示している。しかし、データの分析は、不均化のための供給物からDECを除去する必要があることも示唆している。図9Aでは、第2エステル交換を174℃(345°F)、2.4バール(20psig)及び0.5ml/分で実施し、供給物中のTi濃度は44重量ppmのTi〜69重量ppmのTiの範囲とした。図9Bでは、第2エステル交換を174℃(345°F)、2.9バール(27psig)及び0.5ml/分で実施し、供給物中のTi濃度は45重量ppmのTi〜75重量ppmのTiの範囲とした。第3エステル交換を174℃(345°F)、2.5バール(22psig)及び0.5ml/分で実施し、供給物中のTi濃度は52重量ppmのTi〜74重量ppmのTiの範囲とした。第4エステル交換を174℃(345°F)、2.4バール(20psig)及び0.5ml/分で実施し、供給物中のTi濃度は51重量ppmのTi〜73重量ppmのTiの範囲とした。
【0191】
芳香族カーボネートの選択率はフェノールの変換率と共に低下した。第1エステル交換中のEPC及びDPCの合計選択率はフェノールに基づいて約99モル%である。第4エステル交換中のEPC及びDPCの合計選択率はフェノールに基づいて94〜95モル%であった。
【0192】
固体触媒は、触媒活性に関連しない実験の終了まで14ヶ月にわたり使用した。図9A及び9Bは、触媒失活が14ヶ月にわたり全くまたは殆どなかったことを強く示唆している。触媒床の頂部及び底部から注意深く採取した2つの触媒サンプルの分析は両触媒サンプル上に同一量の0.28重量%のTi(550℃でか焼したもの)を示した。本実験は、微量の可溶性チタン化合物を供給物流に添加することにより長い触媒サイクル(14ヶ月以上)を得ることができることをうまく立証している。
【0193】
実験7B(ブランクラン)
本実験の目的は、エステル交換を実施しながらTiアルコキシドをシリカ担体上に固定化するための試みであった。各種量の可溶性Ti(OEt)x(OPh)4−x化合物を供給物流に添加した。DECのフェノールとのエステル交換を174℃(345°F)及び2.9バール(27psig)で実施した。結果を図10に図示する。
【0194】
実験5(図7)及び実験7B(図10)中のブランクを結果(図9A及び9B)と比較すると、エステル交換を実施する前にチタンアルコキシドをシリカゲル担体に固定化する必要が明らかにある。比較実験1及び2(図4)を図9A及び9Bと比較すると、微量の可溶性活性有機金属化合物を供給物に添加する新規な固体触媒技術が従来技術よりも優れていることも明白に立証される。
【0195】
実験8
本実験の目的は、固体触媒の非存在下であるが可溶性Ti触媒成分の存在下でのEPCのDPC及びDECへの不均化を立証することであった。実験7における第4エステル交換からの複合生成物からエタノール、DEC及びフェノールの一部を窒素ブランケット下で蒸留することにより不均化のための供給物を調製した。供給混合物中の均一Ti触媒は第4エステル交換複合生成物由来であった。供給混合物に追加の可溶性Ti触媒を添加しなかった。トルエンを2つの供給混合物に添加して、沸騰型反応器のための蒸気相を形成した。第1供給物組成は、16.26重量%のトルエン、1.61重量%のDEC、49.33重量%のフェノール、30.91重量%のEPC及び0.78重量%のDPCであり、残部は微量のMPCを含めた副生成物であった。第2供給物組成は、16.15重量%のトルエン、1.61重量%のDEC、49.28重量%のフェノール、31.08重量%のPC及び0.80重量%のDPCであり、残部は微量のMPCを含めた副生成物であった。第1及び第2供給物中の均一触媒の濃度はそれぞれ180重量ppm及び200重量ppmのTiであった。
【0196】
不均化は、25mlの空触媒スペース(固体触媒の非存在下)を有する反応器において179℃(355°F)及び2.9バール(27psig)で実施した。供給物速度は、最初の72時間オンストリームの間は0.5ml/分で上向流、その後は0.60ml/分で上向流であった。不均化反応の結果を図11に図示する。実験結果は、DPCに加えて少量のEPCも生成されることを示している。キサントンが約35重量ppmの量で不均化中に製造された唯一の新規副生成物であった。ジフェニルエーテルはサンプル分析で検出されなかった。すべての副生成物の選択率は3.0モル%〜3.3モル%であった。本実験は、本明細書中に開示されている実施形態に従うDPC及びDECを製造するためのEPC不均化をうまく立証している。
【0197】
実験9
本実験はDPCの精製を立証している。実験8からの複合不均化生成物を実験室蒸留機器を用いることにより蒸留して、エタノール、DEC及び実質量のフェノールを除去した。蒸留フラスコ中の残りの材料は以下の組成:0.024%のEtOH、0.204%のDEC、0.017%のフェネトール、1.619%の未知物質、12.563%のフェノール、25.377%のEPC、59.474%のDPC及び0.723%の重質物質を有していた。真空蒸留することにより、粗なDPC(235〜245℃の蒸気温度でカット)を得た。この粗なDPCの組成は、0.535%の未知物質、2.112%のフェノール、0.013%のフェニルエーテル、0.030%のEPC、94.555%のDPC、0.026%のキサントン及び2.73%の重質物質であった。この粗なDPCをヘキサン中5重量%のジエチルエーテルの混合物を用いて5回再結晶化した。最終DPC生成物は0.4重量ppmのキサントン及び11.6重量ppmのフェノールの不純物を有していた。トレース分析により他の不純物は検出されなかった。このDPC生成物は、市販されている高純度DPC(28.7ppmの未知物質及び67.2重量ppmのフェノール)よりも高い純度を有している。
【0198】
環状カーボネートのアルコールとのエステル交換によるジアルキルカーボネート
ジアルキルカーボネートは、固体触媒の存在下で環状カーボネートのアルコールとのエステル交換を実施することにより連続的に製造される。上記したように、本明細書中に開示されている実施形態はジアルキルカーボネート(例えば、DMC、DEC等)を連続製造するために特に有用であり得る。エステル交換のための均一触媒は多数ある。担持させた金属酸化物または混合金属酸化物触媒、或いは多孔質担体上に均一触媒に固定化することにより作成した固体触媒の存在下で環状カーボネートのアルコールとのエステル交換を実施することによりジアルキルカーボネートを製造する場合、触媒は大型商業用反応器の運転のためには許容できないほど短いサイクル寿命しか有していない。有機カーボネートの取扱い時に関与する永久的触媒失活は、不均一触媒の活性触媒成分が反応媒体に浸出することにより生ずる。従って、ジアルキルカーボネート(DMC)は一般的に均一触媒の存在下でエステル交換を実施することにより製造されている。
【0199】
しかしながら、本明細書中に開示されている実施形態は固体触媒の存在下でジアルキルカーボネートを製造する方法を提供する。固体触媒は周期表のII、III、IV、V及びVI族からの1つ以上の元素を含み得る。第1タイプの固体触媒は、表面官能基(例えば、ヒドロキシ、カルボニル、アルコキシ、ヒドロキシルとアルコキシの混合物、塩素等)を有し得る多孔質担体上に固定化して1つ以上の上記元素の有機金属化合物を含む。担体には、シリカ、酸化チタン、ゼオライト材料(例えば、MCM−41、MCM−48、SBA−15)、炭素及び/または炭素質材料等が含まれ得る。第2タイプの固体触媒は、多孔質担体上に堆積して1つ以上の上記元素の金属酸化物、水酸化物またはオキシ水酸化物を含む。安定な触媒活性を維持するために、供給物流に微量の可溶性触媒成分を添加する。そうすることにより、触媒サイクル寿命を商業用反応器に適するまで延長し得る。
【0200】
エステル交換は任意の物理デバイス、例えば慣用の固定床反応器、接触蒸留カラム、沸騰型反応器、分壁蒸留カラム、パルスフロー反応器、またはこれらの反応器の組合せにおいて実施され得る。組合せの例は、固定床沸騰型反応器、その後に接触蒸留カラム反応器を含み得る。環状カーボネートの第一アルコール(例えば、エタノールまたはメタノール)とのエステル交換は、2つのエチルプロピレングリコールカーボネート中間体がある2ステップ反応として実施され得る。反応生成物は、プロピレングリコールのDECによるO−アルキル化により製造されるプロピレングリコールエチルエーテル異性体のような少量の副生成物をも含有している。エステル交換は単一反応ゾーまたは複数の反応ゾーンにおいて実施され得る。
【0201】
図18は、本明細書中に開示されている実施形態に従って固体触媒の存在下でプロピレンカーボネートのエタノールとのエステル交換を実施することによりDEC及びプロピレングリコール共生成物を連続製造するための単純化したプロセスフロー図を例示する。例示されているエステル交換は、接触蒸留反応器101において反応混合物の組成に応じてほぼ減圧〜約11.4バール(すなわち、約7psia〜65psia)の圧力下、約149℃〜約177℃(約300°F〜350°F)の温度で実施され得る。接触蒸留反応器101に加えて、方法は2つの蒸留カラム102及び114を含む。接触蒸留カラム101は反応ゾーンRZを含み、ここには固体触媒が充填され得る。新鮮プロピレンカーボネート供給物105を再循環流117と合体し、合体された流れ106を接触蒸留カラム101に固体触媒床反応ゾーンRZ上の適当な位置で導入する。
【0202】
DECを軽質成分から分離するために、カラム101頭上流107のエタノール、DEC及び軽質物質(例えば、二酸化炭素)の混合物をDEC回収カラム102に導入する。ライン111からガス抜きされたガスから液体エタノールを分離するために、カラム102頭上流108を気液分離ドラム110に導入してもよい。流れ112中のドラム110から回収された液体エタノールを新鮮エタノール供給物流103と合体し、合体された流れ104を加熱するとエタノール蒸気が生じ、この蒸気は接触蒸留カラム101に反応ゾーンRZの下の適当な位置で導入される。蒸留カラム102底部流109は生成物DECを含有しており、DECは貯蔵タンク(図示せず)または他の下流プロセスに送られ得る。
【0203】
接触蒸留カラム101からのプロピレングリコール、プロピレンカーボネート、反応中間体及び副生成物(例えば、1−エトキシ−2−プロパノール、重質物質等)を含有している底部流113及び微量の触媒を第2蒸留カラム114に導入して、プロピレングリコール、1−エトキシ−2−プロパノール等を含有している頭上流115を回収する。プロピレングリコールは蒸留(図示せず)により流れ115中の混合物から回収され得る。カラム114底部流116はライン117及び106を介して接触蒸留カラム101に再循環される。システムに重質物質が蓄積するのを防止するために、底部流116の一部を流れ118を介してシステムからパージしてもよい。
【0204】
微量の可溶性有機金属化合物をライン119を介して触媒反応ゾーンの上の接触蒸留カラム101に導入する。幾つかの実施形態では、触媒反応ゾーンRZを流下する液体反応混合物が微量の、典型的には5重量ppm〜約100重量ppmの可溶性金属成分(例えば、Mg、Ca、Zn、La、AcまたはTi化合物)を含有するような速度で触媒溶液を供給する。
【0205】
ジアルキルカーボネートの製造を以下の実験により例示する。
【0206】
実験10
本実験の目的は、DEC及びプロピレングリコールを製造するための固体触媒の存在下でのプロピレンカーボネートのエタノールとのエステル交換を立証することであった。固体触媒は、シリカゲル担体上にチタンエトキシドを固定化することにより現場作成する。
【0207】
25ml(直径1.7〜4mm)の球状シリカゲル担体を反応器に充填した。担体の重量は10.097gであった。このシリカゲル担体は、約6個のヒドロキシル基/mm2、314m2/gのBET、1.055cm3/gの細孔容積及び13.46nmの平均細孔直径を有していた。チタンエトキシド溶液(800mlのトルエン中40gのチタンエトキシド)を反応器に15ml/分で上向流で周囲温度で30分間、次いで135℃(275°F)及び3.4バール(35psig)で6時間循環させて、シリカゲル担体上にチタンエトキシドをグラフトさせた。冷却後、過剰の溶液を反応器から排出させ、次いで触媒をトルエンで4ml/分で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を300cc/分の窒素ガス流中138℃(280°F)で2時間乾燥した。
【0208】
プロピレンカーボネートとエタノールの混合溶液を調製し、混合供給物溶液にチタンエトキシドとして45ppmのTiを混合した。エステル交換を各種供給混合物を用いて上向流液相中、174℃(345°F)及び17.9バール(245psig)で実施した。ラン条件を表5にリストする。本実験の結果を図12に図示する。
【0209】
【表5】
【0210】
本実験の結果は、微量の可溶性Ti化合物を供給物流に添加することにより、シリカゲル担体上に固定化した固体Tiアルコキシド触媒の存在下で環状カーボネート(例えば、プロピレンカーボネート)のエタノールとのエステル交換を実施することによりDEC(ジアルキルカーボネート)が製造され得ることを明白に立証している。供給物流中に微量のTiを添加しないと、触媒活性は図12に示すようにラン時間1397〜1469にわたって急速に低下する。
【0211】
実験11
本実験の目的は、DEC及びプロピレングリコールを製造するための固体触媒の存在下でのプロピレンカーボネートのエタノールとのエステル交換を立証することである。本実験は比較実験11A(本発明外)及び11Bの2部から構成されている。
【0212】
比較実験11A
エステル交換を均一マグネシウムtert−ブトキシドの存在下で実施した。供給混合物のエタノール/プロピレンカーボネートのモル比は6.85であった。均一触媒の濃度は57重量ppmのMgであった。エステル交換は168℃(335°F)、17.9バール(245psig)及び0.5ml/分で実施した。結果を図13に図示する。プロピレンカーボネートの平均変換率は約24.3モル%である。DEC及びプロピレングリコールの平均選択率はそれぞれ95.7モル%及び94.3モル%である。
【0213】
実験11B
エステル交換を固体触媒の存在下で実施した、出発固体触媒はシリカゲル担体上に担持させたMgOであった。硝酸マグネシウム溶液は、Mg(NO3)2・6H2O(10.098g)を脱イオン水(22.73g)中に溶解することにより調製した。30ml(11.777g)の実験10で使用した同一のシリカゲル担体上に硝酸マグネシウムを初期含浸により堆積させた。含浸生成物を真空オーブンにおいて100℃で1時間乾燥した後、510℃で2時間か焼して、シリカゲル上に担持させたMgOを作成した。25ml(10.77g)のこのMgO及びシリカゲルの表面混合酸化物触媒を反応器に充填した。プロピレンカーボネートのエタノールとのエステル交換を表6にリストした各種条件下で実施した。
【0214】
【表6】
【0215】
反応生成物は1−エトキシ−2−プロパノール及び副生成物としてジプロピレングリコールを含有していた。生成物サンプル中にジエチルエーテルは検出されなかった。結果を図14にも図示する。第1エステル交換のDEC及びプロピレングリコールの平均選択率はそれぞれ95.3モル%及び94.8モル%であった。通常、選択率はプロピレンカーボネートの変換率と共にゆっくり低下する。また、選択率はEtOH/プロピレンカーボネートのモル比と共に上昇する。第2エステル交換のDEC及びプロピレングリコールの平均選択率はそれぞれ94.0モル%及び92.8モル%である。
【0216】
本明細書中に開示されている実施形態に従う尿素及びアルコールからのジアルキルカーボネート
先に掲げた刊行物、例えばP.Ballら及びD.Wangらによれば、尿素及びアルコールからのジアルキルカーボネートを製造するために有用な不均一触媒にはAl2O3、Sb2O3及びシリカが含まれ得る。溶融SiO2は触媒ではないが、PPh3の存在下で触媒となり得る。シリカ上に担持させたZnO及びMgOも尿素及びアルコールからジアルキルカーボネートを製造するために使用され得る。
【0217】
しかしながら、金属酸化物触媒(例えば、ZnOまたはMgO)は反応条件下で固体触媒から浸出して、永久的な触媒失活が生ずる。触媒サイクル寿命は、接触蒸留によりDMCまたはDEC及びアンモニアが液体触媒反応媒体から素早く除去され、ジアルキルカーボネートの生産性及び選択率が改善されるので、接触蒸留カラム反応器を用いるジアルキルカーボネートの商業製造において非常に重要である。加えて、上記した不均一触媒は均一ジブチルスズジメトキシド触媒ほど有効でない。
【0218】
本明細書中に開示されている実施形態によれば、ジアルキルカーボネートは固体触媒の存在下で2ステップで尿素をアルコールでアルコーリシスすることにより連続的に製造され得る。両反応ステップは平衡反応である。ジアルキルカーボネートを製造するために使用されるアルコールの例には、メタノール、エタノール、プロパノール等が含まれる。反応の第1ステップでは、第1反応ゾーンとして働く反応蒸留カラム(プレ反応器)において触媒の存在下または非存在下で尿素をアルコールと反応させて、アルキルカルバメート及びアンモニアを製造する。第1ステップ反応のために触媒は必要でない。供給物流中の不純物(例えば、水及びアンモニウムカルバメート)は第1反応ゾーンにおいてCO2及びアンモニアとして除去され、下流触媒が保護される。第2ステップ反応では、第2反応ゾーンとして働く1つ以上の接触蒸留カラム(主反応器)において固体触媒の存在下で第1反応ゾーンで製造されたアルキルカルバメートをアルコールと反応させて、ジアルキルカーボネート及びアンモニアを製造する。2ステップ反応を以下に例示し得る:
【0219】
【化5】
固体触媒は、例えば担体(例えば、シリカまたは炭素質材料)上に有機チタン化合物を固定化することにより作成され得る。反応の開始時には2つのタイプの触媒がある。第1タイプの触媒は、担体(例えば、シリカまたは炭素質材料)上に固定化した金属アルコキシド、炭酸モノエステルの金属塩またはこれらの混合物である。第2タイプの触媒は、担体(例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、炭素質材料等)上に担持させた金属酸化物である。活性金属成分は元素、例えばSn、Sb、Ti、Zr、Zn、Mg、Ca等であり得る。
【0220】
ここでも、長いサイクル寿命にわたって触媒活性を維持するために少量の可溶性金属化合物を反応器に入る反応物流に添加する。そうすることにより、触媒サイクル寿命を商業プロセスで使用するのに適するまで延長させ得る。定常条件下での作動触媒は担体上に固定化した金属アルコキシド、金属アルコキシアルキルカーボネート(炭酸モノエステルの塩)、或いはこれらのオリゴマーまたは混合物であると考えられる。反応混合物中の可溶性有機金属化合物(例えば、ジブチルスズジアルコキシド)の濃度は米国特許No.7,074,951において使用されている均一触媒より有意に低い。
【0221】
高沸点溶媒(例えば、トリグリム)は第2ステップにおける溶媒として使用され得、反応速度及び選択率を改善するための助触媒として働く。重要なことは、溶媒の沸点が高いために、反応を低圧下で実施し得る。低圧は、ストリッピングガスとしての過剰のエタノール蒸気と共にDEC及びアンモニアが液体反応媒体から蒸気相に素早く除去されるのを助け、高いDEC生産性及び選択率が得られる。本明細書中に開示されている実施形態は、固体触媒存在下でジアルキルカーボネートを製造するための代替改良方法を提供する。この方法は、以下の実験14において立証されているように均一触媒をベースとする方法と比較してプロセス流中のスズ触媒の濃度が実質的に低下しているので「よりグリーンな」方法であり得る。プロセス流中の微量の可溶性触媒化合物はシステム中に留まる。プロセス流中の可溶性触媒化合物を回収または分離する必要がない。
【0222】
図15は、本明細書中に開示されている実施形態に従うDECの連続製造方法のフロー図を図示している。供給物流中の不純物を除去するため及び尿素をエチルカルバメート(EC)に変換するためのプレ反応器として二重直径蒸留カラム反応器36が使用されている。尿素溶液はドラム34において尿素供給物31及びエタノール流33を混合することにより調製される。エタノール流33は新鮮エタノール供給物32及び再循環流74からのエタノールを含有し得る。
【0223】
ドラム34からの尿素溶液35を二重直径塔型反応器36の上のより狭いカラム区画の中間に導入する。反応器36は、供給物中の不純物(水及びアンモニウムカルバメート)、エタノール及び尿素を取り除き、尿素をECに変換するためのプレ反応器として働く。プレ反応器36からの蒸気流37はアンモニア、二酸化炭素及びエタノールから構成されている。きれいになった混合溶液はプレ反応器36から底部流38として取り除かれる。この流れ38を主反応器39(接触蒸留カラム)に固体触媒を含んでいる触媒反応ゾーン39Rの上の位置で導入する。
【0224】
再循環エタノール流40を過熱されているエタノール蒸気として反応器39に触媒反応ゾーン39Rの下の位置で導入する。接触蒸留カラム39からの底部流をライン42、44及び78を介してカラム39の頂部のライン38の供給ポイントの上の位置に再循環する。再循環ループからの小スリップ流43はDEC回収カラム63からの底部流65と合体されて、流れ66となる。この流れ66は、固体触媒を含んでいる別の小型接触蒸留カラムであるクリーンアップ反応器67に触媒反応ゾーンの上の位置で導入される。スリップ流43は、エタノール、アンモニア、エチルアミン、ジエチルエーテル、DEC、エチルカルバメート、N−エチルエチルカルバメート、トリグリム(TG)、重質物質及び微量の可溶性触媒成分を含有し得る。DEC回収カラム63からの底部流65は、エチルカルバメート、N−エチルエチルカルバメート、TG及び微量の触媒を含有し得る。クリーンアップ反応器67からの頭上流68は、アンモニア、エチルアミン、CO2、ジエチルエーテル、エタノール及びDECを含有し得る。クリーンアップ反応器67からの底部流69は、アンモニア、エチルアミン、CO2、ジエチルエーテル、エタノール、N−エチルエチルカルバメート、エチルカルバメート、ヘテロ環式化合物及び微量の可溶性触媒成分を含有し得る。
【0225】
反応器67からの底部流69を冷却/フィルターシステム70において冷却して、ヘテロ環式化合物を沈殿させる。沈殿した固体副生成物はライン71を介してシステム70から除去される。システム70からの液体流72は2つの流れ77及び78に分割されて、それぞれクリーンアップ反応器67及び主反応器39に再循環される。
【0226】
主反応器39からの頭上流41をクリーンアップ反応器67からの頭上流68と合体して、流れ42とし得る。主反応器39からの頭上流41は、アンモニア、CO2、エチルアミン、ジエチルテル、エタノール、エチルカルバメート、N−エチルエチルカルバメート、DEC、TG及び微量の触媒を含有し得る。合体された流れ42は蒸留カラム43に導入され、ここでは軽質及び重質化合物が分離される。蒸留カラム43からのアンモニア、CO2、エチルアミン、ジエチルエーテル及びエタノールを含有し得る頭上流44をプレ反応器36からの頭上流37と合体して、蒸留カラム46に導入するための流れ45とする。
【0227】
蒸留カラム46からの頭上流47を冷却して、CO2をアンモニアと反応させてアンモニウムカルバメートを形成させる。アンモニウムカルバメートは液体アンモニア中で沈殿して、冷却/フィルターシステム48からライン49を介して固体として除去される。冷却/フィルターシステム48からの液体アンモニア流50はアンモニア貯蔵タンクに送られる。
【0228】
カラム46からの底部流51は、エチルアミン、ジエチルエーテル、エタノール及び微量のDECを含有し得る。流れ51をエチルアミン回収カラム52に導入する。頭上エチルアミン流53は貯蔵タンクに送られる。カラム52からの底部流54は蒸留カラム43からの底部流55と合体して、流れ56とする。流れ56をエーテル回収カラム57に導入する。エーテルは蒸留カラム57から頭上流58として除去され、頭上流58はエーテル貯蔵タンクに送られる。蒸留カラム57からの底部流59は蒸留カラム60(エタノール回収カラム)に導入される。
【0229】
頭上流61としての回収されたエタノールを主反応器39、クリーンアップ反応器67及びプレ反応器36(または、ドラム34)に再循環する。エタノール再循環流74は蒸留カラム60(エタノール回収カラム)の頭上流61の小部分である。流れ61は3つの流れ40、73及び74に分割される。流れ73はクリーンアップ反応器67に再循環される。流れ74は尿素溶液を調製するためにドラム34に再循環される。流れ61の大部分であり得る流れ40は主反応器39に再循環される。エタノール回収カラム60からの底部流62はDEC回収カラム63に導入される、生成物DECは蒸留カラム63から頭上流64として回収され、DEC貯蔵タンクに送られる。カラム63からの底部流65は、エチルカルバメート、N−エチルエチルカルバメート、TG及び微量の可溶性触媒成分を含有し得る。この流れ65はライン66を介してクリーンアップ反応器67に送られる。
【0230】
DMCは、図15に関して記載したDECの製造方法と同様の方法でメタノール及び尿素から製造され得る。しかしながら、最終生成物DMCはメタノール−DMC共沸混合物を有するプロセス流から回収されることが理解される。メタノール−DMC共沸混合物を溶媒抽出蒸留技術により分解することによりDMCを回収することは文書で十分立証されており、例えば米国特許No.7,074,951に記載されている。
【0231】
実験12
本実験の目的は、DEC及びアンモニアを製造するための固体触媒の存在下でのエチルカルバメートのエタノールとの反応を立証することである。固体触媒は、現場技術によりシリカゲル上にジブチルスズジメトキシドを固定化することにより作成した。
【0232】
25ml(14.79g)の実験7Aで使用した球状に成形したシリカゲル担体を反応器に充填した。ジブチルスズジメトキシド溶液は、ジブチルスズジメトキシド(87g)を乾燥トルエン(2L)中で混合することにより調製した。この溶液を反応器に上向流で周囲温度及び大気圧で充填した。この溶液を上向流で2ml/分で流しながら、反応器を110℃(230°F)にゆっくり加熱した。110℃(230°F)で、反応器を3.4バール(35psig)下に置いた後、135℃(275°F)に加熱し続けた。135℃(275°F)及び3.4バール(35psig)で、ジブチルスズジメトキシド溶液を反応器に0.5ml/分で上向流で6時間通した。冷却後、反応器中の過剰の溶液を排出させ、次いで触媒を乾燥トルエンで4ml/分で上向流で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を300cc/分のN2流中下向流で大気圧下、104℃(220°F)で2時間乾燥した。
【0233】
反応は、沸騰型反応器中の固体触媒床に13.2重量%のエチルカルバメート、31.36重量%のトリグリム及び55.44重量%のエタノールの溶液を上向流で窒素ガスと共に通すことにより実施した。下向流反応器において反応を実施してもよい。微量のジブチルスズジメトキシドをこの溶液と混合した。反応条件を表7にリストし、この試験の結果を図16に図示する。反応生成物の分析は微量のN−エチルエチルカルバメート及びジエチルエーテルを示した。エチルカルバメートに基づくDECの選択率は98.5モル%〜99.9モル%の範囲であり、エチルカルバメートの変換率が上昇するにつれて選択率が低下する一般的傾向があった。
【0234】
【表7】
【0235】
本実験は、DECが尿素及びエタノールから製造され得ることをうまく立証している。第1ステップでは、触媒の非存在下で尿素をエタノールと反応させることによりエチルカルバメートを製造した(US 7,074,951を参照されたい)。第2ステップでは、固体触媒の存在下、浸出による金属の損失を相殺するために供給物流に微量の可溶性有機金属化合物を添加しながらエチルカルバメートのエタノールとの反応を実施することによりDECを製造した。第2ステップにおけるDECの商業製造を1つ以上の接触蒸留カラムにおいて実施することが好ましい。
【0236】
ジアルキルカーボネート方法及びジアリールカーボネート方法の統合
共沸混合物プロセス流を分離するための溶媒をベースとする抽出蒸留ユニットを必要とせず、よってエネルギーコスト及び建築費が節約され、GHG(温室ガス)CO2の大気への放出を低減させるジアリールカーボネートを製造するための統合方法が開示されている。従って、統合方法は従来のジアリールカーボネートの製造方法に比してよりグリーンな方法である。
【0237】
よりグリーンな方法は、本明細書中に開示されている実施形態に従うジアルキルカーボネートの製造方法及びジアリールカーボネートの製造方法を統合することにより得られ得る。例えば、ジアルキルカーボネートは統合方法のフロントエンドで製造され得、その少なくとも一部をその後統合方法のバックエンドにおいて使用してジアリールカーボネートを製造する。上記したように、ジアルキルカーボネートは(1)エポキシド及び二酸化炭素から製造され得るような環状カーボネートのエステル交換及び(2)アンモニア及び二酸化炭素を用いて合成され得る尿素とアルコール間の反応の2つのプロセスの1つを介して製造され得る。上記した2つのプロセスの少なくとも1つを介して統合方法のフロントエンドで製造されるジアルキルカーボネートは、その後ジアリールカーボネートを製造するために統合方法のバックエンドにおいてアリールヒドロキシ化合物と反応され得る。
【0238】
よって、本明細書中に開示されている実施形態に従ってジアリールカーボネートを製造するための統合方法は、専らエタノール及びCO2から生成されるジアルキルカーボネートから製造され得る。DECのEPC(エチルフェニルカーボネート)へのエステル交換のプロセスステップからの共生成物エタノールはDECを製造するために再循環される。EPCはDPC及び共生成物DECを製造するために不均化される。DECは二酸化炭素及びエタノールから中間体を介して製造される。エタノール及びDECは共沸混合物を形成しないので(共沸混合物を形成するメタノール及びDMCと比較して)、DECを製造するために抽出蒸留ユニットを必要としない。二酸化炭素及びフェノールからDPCを製造するための方法は、以下に詳記する各種多ステップ反応ルートを用いて実施され得る。
【0239】
本明細書中に開示されている実施形態に従ってDECからDPCを製造するための統合方法の利点は、エネルギーの節約及びプラントを建築するための原料の節約が含まれ得る。実施形態に従う方法は、共沸混合物を形成する組成物から材料を分離する必要がなく、よって本明細書中に開示されている方法の設備及びエネルギーの使用が共沸混合物(DMC及びメタノール)を生ずるDMCからのDPCの製造に比して抑制され得る。
【0240】
本明細書中に開示されている実施形態に従ってDEC及びDPCを製造するための統合方法を使用すると、更に独立型方法に比して幾つかの利点が与えられ得る。統合の1つの利点は、バックエンドDPC方法で製造されるエタノール共生成物をフロントエンドDEC方法のための供給原料として戻って再循環し得ることである。従って、全体の材料供給原料コストを減らすことができる。幾つかの実施形態では、DEC方法に供給する前に再循環させたエタノール共生成物の全部または一部を新鮮なエタノールメーキャップ流と合体させてもよい。他の実施形態では、再循環させたエタノール共生成物だけでDEC方法を供給するのに十分であり得る。或いは、DPCを製造する統合プラントの開始時にDECを製造するための合成エタノールの代わりに及び/またはメーキャップエタノールとしてバイオエタノールを使用することを選択してもよい。
【0241】
統合DEC及びDPC方法を用いる別の利点は、DEC方法へのエタノール供給原料の乾燥に関連するエネルギーコスト及び原料建築費の節約である。例えば、エタノールは周囲(例えば、大気水分)から水を吸収する傾向にある吸湿性化合物である。エタノール供給物中に含まれている水不純物は、例えば触媒を無力または失活することにより、プロセスラインを閉塞させることによりDEC方法に悪影響を及ぼし得る。従って、DECユニットへの新鮮エタノール供給物は、典型的には水不純物を分離することにより高純度エタノールを製造するために乾燥させなければならない。対照的に、バックエンドDPC方法から回収されたエタノール共生成物は水不純物を全くまたは殆ど含有していないことがある。従って、エタノールをDEC方法に再循環させるならば、材料建築及びエネルギーコストを含めた乾燥コストが実質的に低減され、ゼロになることさえある。
【0242】
統合DEC及びDPC方法を用いるさらに別の利点は、プロセッシング設備の重複が排除されることからの建築及び運転コストの節約であり得る。例えば、DEC及びDPC方法は各々DECをエタノールから分離するためのセパレーターを必要とし得る。DEC方法では、反応器流出液は分離を必要とし得るDEC及び未反応エタノールの両方を含有し得る。DPC方法では、エステル交換から回収された軽質流出液は、これまた分離を必要とし得るDEC及びエタノールの両方を含有し得る。しかしながら、本明細書中に開示されている実施形態に従うDEC方法及びDPC方法の統合により、DEC及びエタノールを分離するための単一システムを使用することができ、よって建築及び運転コストが節約される。
【0243】
本明細書中に開示されている実施形態に従ってジアリールカーボネートを製造するための1つの方法は、1)二酸化炭素をエポキシドと反応させて環状カーボネートを製造すること、2)環状カーボネートをエタノールとエステル交換してジエチルカーボネートを製造すること、3)ジエチルカーボネートをエステル交換してエチルアリールカーボネートを形成すること、及び4)エチルアリールカーボネートを不均化してジアリールカーボネートを形成することを含む。これらの反応の各々は1つ以上の反応ゾーンにおいて実施され得、反応ゾーンの中間または両端は反応生成物、反応物質及び/または反応副生成物を分離するための1つ以上の分離段であり得る。
【0244】
例えば、アンモニアプラント、合成ガスプラントまたは発電装置で利用可能な二酸化炭素を環状カーボネート合成反応器においてエポキシド(例えば、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの少なくとも1つ)と接触させて環状カーボネートを製造してもよい。環状カーボネート合成反応器からの環状カーボネートを含有する流出液を本明細書中に開示されている実施形態に従ってエステル交換触媒の存在下でエタノールと接触させてジエチルカーボネート及びグリコールを製造してもよい。ジエチルカーボネート生成物及び未反応エタノールは回収され、分離され得る。次いで、ジエチルカーボネートは、エチルフェニルカーボネートを製造するために及び本明細書中に開示されている実施形態に従って不均化反応によりエチルフェニルカーボネートからジフェニルカーボネートを更に製造するためにエステル交換反応に供給され得る。ジエチルカーボネートを製造するためにエタノールを環状カーボネートをエステル交換するためのシステムに戻してもよい。
【0245】
本明細書中に開示されている実施形態に従ってジアリールカーボネートを製造するための別の方法は、二酸化炭素をアンモニアと反応させることにより製造され得る尿素を伴う。次いで、尿素をエタノールでアルコーリシスすると、ジエチルカーボネートが製造され得る。ジエチルカーボネートはジアリールカーボネートを形成するために上記したエステル交換及び不均化にかけられ得る。これらの反応の各々は1つ以上の反応ゾーンにおいて実施され得、反応ゾーンの中間または両端は反応生成物、反応物質及び/または反応副生成物を分離するための1つ以上の分離段であり得る。
【0246】
ここで図19を参照すると、本明細書中に開示されている実施形態に従ってジアリールカーボネートを製造するための統合方法の単純化したブロックフロー図が図示されている。図19に図示されているように、ジアリールカーボネート(例えば、DPC)はCO2、エポキシド及びフェノールから製造される。
【0247】
環状カーボネート(エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネート)を製造するために、二酸化炭素及びエポキシド(例えば、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシド)をフローライン201及び202を介して反応ゾーン203に導入する。エステル交換触媒の存在下でエタノールとのエステル交換を実施するために、合成ゾーン203からの環状カーボネート流204及びエタノール流207を接触蒸留反応器システム205に導入する。必要ならば、流れ207を介して反応ゾーン205に供給するために、新鮮なメーキャップエタノール流206をエタノール再循環流220及び/または210と合体させてもよい。例えば生成物DECをエタノールから分離するために、反応ゾーン205からの頭上流208は蒸留カラムであり得る第1分離ゾーン209に送られる。分離ゾーン209からの頭上エタノール流210はエステル交換ゾーン205に戻って再循環される。第1分離ゾーン209からのDEC流211(底部液体流)は第2エステル交換ゾーン217に供給される。
【0248】
未変換環状カーボネート及び反応中間体から生成物グリコールを分離するために、エステル交換ゾーン205からの底部流212は1つ以上の蒸留カラムを含み得る第2分離ゾーン213に送られる。分離ゾーン213からの生成物グリコールはライン214を介して除去される。環状カーボネートを含めた残留する重質物質液体流215は第1エステル交換ゾーン205に戻って再循環される。
【0249】
EPC及びエタノール共生成物を製造すべく触媒の存在下でのDECのフェノールとのエステル交換を実施すると同時にエタノール及び未反応DECからEPCを分離するために、新鮮フェノール流216を少なくとも1つの接触蒸留反応器システムを含む第2エステル交換ゾーン217に導入する。エステル交換ゾーン217からのエタノール、DEC、軽量物質及び少量のフェノールを含有している頭上流218を第3分離ゾーン219に送られる。流れ218中に含有しているエタノール及びDECの分離は上述したように抽出蒸留を必要としない。
【0250】
エタノール流220はライン207を介して第1エステル交換ゾーン205に再循環される。軽質物質はライン221を介してガス抜きされる。DEC及びフェノールを含有している底部流222はライン222を介して第2エステル交換ゾーン217に戻って再循環される。第2エステル交換ゾーン217からの生成物EPC、フェノール及び少量のDPを含有している底部流223は、部分真空下で運転される少なくとも1つの接触蒸留反応器システムを含むEPC不均化ゾーン224に送られる。反応ゾーン224からのDEC、フェノール及び少量のエタノールを含有している頭上流225はエステル交換ゾーン217の接触蒸留カラムの頂部に戻って再循環される。反応ゾーン224からの底部流226は流れ226中の材料を分離するための2つ以上の蒸留カラムを含む第4分離ゾーン227に送られる。分離ゾーン227からの未変換EPC及び微量のフェノールを含有している流れ228は不均化反応ゾーン224の接触蒸留カラムの頂部に戻って再循環される。
【0251】
分離ゾーン227からの最終生成物DPC流229はDPC貯蔵タンクに送られる。流れ226中の重質物質は、所要により廃棄または更なる処理をするためにライン230を介してゾーン227から除去される。更なるオプションとして、分離ゾーン213から回収されたグリコールを脱水反応器232において脱水してエポキシド及び水を形成し得、その後エポキシドは上記したように環状カーボネートを形成すべく再循環される。グリコールの再循環の結果は本質的に共生成物を含まないDPC方法である。ある環境では、例えばグリコールのためにアウトレットが利用できないような共生成物を含まない方法が望ましい。
【0252】
ここで図20を参照すると、本明細書中に開示されている実施形態に従ってジアリールカーボネートを製造するための統合方法の単純化したブロックフロー図が例示されており、同一番号は同一パーツを表す。ジアリールカーボネート(DPC)は代替方法に従ってCO2及びフェノールから製造される。この代替方法においてアンモニアは、図19に図示されているプロセスルートとは異なり中間体ビヒクルDECを製造するために関与している。
【0253】
二酸化炭素流240、及びアンモニアメーキャップ流241とアンモニア再循環流250の合体流であるアンモニア流260を尿素合成ユニット242に導入する。尿素合成の共生成物H2Oを合成ユニット242からライン243を介して除去する。合成ゾーン242からの生成物尿素流244、及びエタノール再循環流253とエタノールメーキャップ流246の合体流であるエタノール供給物流247を尿素アルコーリシス反応ゾーン245に導入する。
【0254】
ゾーン245における尿素アルコーリシス反応は2ステップ反応である。第1ステップでは、エチルカルバメート(C2H5O−CONH2)を製造し且つ不純物(例えば、アンモニウムカルバメート)を共生成物アンモニアと一緒に除去するために、尿素の第1アルコーリシスを通常触媒の非存在下でエタノールを用いて実施する。尿素をエタノール中に溶解させてもよく、生じた尿素溶液を反応蒸留カラムにポンプ輸送する。同時に、アンモニアを頭上流の一部として除去すべくアンモニア共生成物を液相から蒸気相にストリッピングするために、過熱したエタノール蒸気をカラムの底部区画に導入する。カラムから回収した底部フラクションはエチルカルバメート、少量の尿素及びエタノールを含む。第2ステップでは、別の反応蒸留カラムにおいてDEC及び共生成物アンモニアを製造するために、エチルカルバメート及び残留する尿素の第2アルコーリシスを触媒の存在下でエタノールを用いて実施する。
【0255】
尿素アルコーリシスゾーン245からの生成物流248を1つまたは複数の蒸留カラムを含む分離ゾーン249に送る。分離ゾーン249からのアンモニアをライン250及び260を介して尿素合成ゾーン242に再循環する。回収されたエタノール流251をライン251を介して尿素アルコーリシスゾーン245に戻って再循環する。分離ゾーン249からのDECは、反応ゾーン217においてフェノールとのエステル交換を実施するためのDEC供給物流252となる。DECを製造するために、反応ゾーン217におけるDECのフェノールとのエステル交換の共生成物エタノールをライン253及び247を介して尿素アルコーリシスゾーン245に戻って再循環する。
【0256】
このポイントからのDPCを製造するための残りのプロセスステップは図19について先に挙げた記載と同一である。或いは、尿素を尿素製造業者から掛けで購入して、アンモニア共生成物を返済してもよい。このことは、小型オンサイト尿素合成ユニットを運転するよりも尿素コストの点でより安価であり、エネルギー消費の点でより効果的であり得る。
【0257】
上述したように、図19及び20に関して記載されているDPCの製造方法は本質的に新鮮エタノール供給物なしで実施され得る。エタノールは最初DECを製造するための尿素または環状カーボネートのエステル交換の間に消費され、その後エタノールはジアリールカーボネート(DPC)を製造するためのDECのアリールヒドロキシル化合物(例えば、フェノール)とのエステル交換の間に生成される。反応副生成物中のエタノールの消費を除いてエタノールがほぼ同一のモル比で消費され、生成されるので、本明細書中に開示されている方法はエタノールに関して本質的に閉ループプロセスを用いて運転され得る。よって、エタノール原料及びプレコンディショニング(乾燥)コストは独立型DEC方法に比して実質的に低減され得る。
【0258】
上のエステル交換及び不均化反応を実施するための反応ゾーンは1つ以上の反応器中に含まれ得る1つまたは複数の固体触媒を含み得る。反応器は、液相中でまたは液体と蒸気の二相の存在下でエステル交換を実施するための各種運転モードのために任意の物理的形状を有し得る。本明細書中に記載されている反応を実施するために任意のタイプの反応器を使用し得る。有機カーボネートまたは有機カルバメート反応が関与する反応を実施するのに適した反応器の例には、蒸留カラム反応器、分壁蒸留カラム反応器、慣用の環状固定床反応器、バブルカラム反応器、場合により蒸留カラムを備えたスラリー反応器、パルスフロー反応器、スラリー固体触媒がカラムを流下する接触蒸留カラム、またはこれらの反応器の組合せが含まれ得る。
【0259】
本明細書中に開示されている実施形態に従い、上に詳記した1つ以上の均一触媒、不均一触媒及び固体触媒を含めたこれらの統合方法においてDEC、EPC及びDPCを製造するためのエステル交換及び不均化反応のために有用な触媒は上記した通りであり得る。不均一触媒は任意の物理的形態、例えば攪拌式タンク反応運転またはスラリー接触蒸留カラム反応器のために粉末、または成形材料(球、顆粒、ペレット、押出物、織布、メッシュ等)を有し得る。
【0260】
実施例
すべての実験反応を一段の垂直方向に載置した直径1.3cm(1/2インチ)×長さ6.5cm(25インチ)の寸法を有する蒸留カラム、固定触媒床を含み、蒸気及び液相が共存する上向流沸騰型反応器として運転する接触蒸留反応系において実施した。反応器は別々にコントロールされる頂部及び底部加熱ゾーンを有していた。固体触媒の容量は25mlであった。
【0261】
以下の実験例は、共沸混合物の溶媒抽出蒸留を必要とすることなく、本発明に従ってジエチルカーボネート(DEC)及びフェノールから、または二酸化炭素及びフェノールからジフェニルカーボネート(DPC)を製造する実施形態を説明している。
【0262】
実験13
本実験は、図19に示すように本発明に従ってジエチルカーボネート(DEC)を製造するための実施形態を説明する。DECを製造するための固体触媒の存在下でのプロピレンカーボネート(環状カーボネート)のエタノールとのエステル交換を下表8にリストする各種条件で実施した。
【0263】
【表8】
【0264】
出発固体エステル交換触媒はシリカゲル上に担持させたMgOであった。硝酸マグネシウム溶液は、Mg(NO3)2・6H2O(10.1g)を脱イオン水(22.7g)中に溶解することにより調製した。初期含浸により硝酸マグネシウムを30ml(11.8g)のシリカゲル担体上に堆積させた。シリカゲル担体(直径〜3mmの球)は314m2/gのBET表面積、1.06cm3/gの細孔容積及び13.46nmの平均細孔直径を有していた。含浸生成物を真空オーブンにおいて100℃で1時間乾燥した後、510℃で2時間か焼して、シリカゲル上に担持させたMgOを作成した。25ml(10.77g)のシリカゲル上に担持させたMgO触媒を反応器に充填した。
【0265】
安定な触媒活性を得るために、上表8に示すようにマグネシウムtert−ブトキシドもさまざまな微量で反応供給物溶液に添加した。通常、本明細書中に開示されている実施形態に関して上記したように、微量の可溶性有機アルカリ土類化合物(例えば、アルコキシド、グリコールオキシドまたはその混合物)の添加は長い触媒サイクル時間及び安定性を得るために使用され得る。
【0266】
エステル交換反応生成物はl−エトキシ−2−プロパノール及び副生成物としてジプロピレングリコールを含んでいた。生成物サンプル中にジエチルエーテルは検出されなかった。実験13の結果も図21に図示する。第1エステル交換におけるDEC及びプロピレングリコールを形成するための平均選択率はそれぞれ95.3モル%及び94.8モル%であった。選択率はプロピレンカーボネートの変換率と共にゆっくり低下し、エタノール対プロピレンカーボネートのモル比が高くなると上昇する。例えば、第2エステル交換におけるDEC及びプロピレングリコールの平均選択率はそれぞれ94.0モル%及び92.8モル%であった。
【0267】
実験14
本実験は、図20に示すように本発明に従ってジエチルカーボネート(DEC)を製造するための実施形態を説明する。DEC及びアンモニア副生成物を製造するための固体触媒の存在下でのエチルカルバメートのエタノールでのアルコーリシスを下表9にリストした各種条件で実施した。
【0268】
【表9】
【0269】
現場技術によりシリカゲル上にジブチルスズジメトキシドを固定化することにより固体触媒を作成した。触媒を作成するために、25ml(14.79g)の球状に成形した概算直径が3mmのシリカゲル担体を反応器に充填した。シリカゲル担体は、約6個のヒドロキシル基/nm2、392m2/gのBET、0.633cm3/gの細孔容積、6.48nmの平均細孔直径及び約0.58g/mlのABDを有していた。
【0270】
ジブチルジメトキシド溶液は、ジブチルスズジメトキシド(87g)を乾燥トルエン(2L)中に混合することにより調製した。反応器にこの溶液を上向流で周囲温度及び大気圧で充填した。ジブチルジメトキシド溶液を上向流で2ml/分の速度で添加しながら、反応器を110℃(230°F)の温度にゆっくり加熱した。110℃(230°F)で反応器を3.4バール(35psig)の圧力下に置いた後、135℃(275°F)に加熱した。
【0271】
反応器温度を135℃(275°F)に、反応器圧力を3.4バール(35psig)に維持しながら、ジブチルスズジメトキシド溶液を反応器に0.5ml/分で上向流で6時間通した。冷却後、反応器中の過剰の溶液を排出させ、次いで触媒を乾燥トルエンで4ml/分で上向流で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を104℃(220°F)の温度及び大気圧で300cc/分の窒素下向流パージ下で2時間乾燥した。
【0272】
DECを製造するためのエチルカルバメートのエタノールでのアルコーリシス反応は、13.2重量%のエチルカルバメート、31.36重量%のトリグリム及び55.44重量%のエタノールの溶液を沸騰条件下で上記した固体触媒床に上向流で窒素ガスと一緒に通すことにより実施した。下向流反応器において反応を実施してもよい。反応中この溶液に微量のジブチルスズジメトキシドを混合した。
【0273】
反応条件を上表9にリストし、本実験の結果を図22に図示する。エチルカルバメートに基づくDECの選択率は98.5モル%〜99.9モル%の範囲であり、エチルカルバメートの変換率が上昇するにつれて選択率が低下する一般的傾向があった。
【0274】
実験15
本実験は、図19に示すように本発明に従ってエチルフェニルカーボネート(EPC)を製造するための実施形態を説明する。エチルフェニルカーボネート(EPC)を製造するためのDECのフェノールとのエステル交換はシリカゲル担体上に固定化したチタンエトキシド触媒の存在下で実施した。
【0275】
25ml(14.47g)の量の上記実験14と同一のシリカゲル担体を反応器に充填した後、チタンエトキシドを固定化した。チタンエトキシド溶液は、チタンエトキシド(45.25g)をトルエン(800ml)中に溶解することにより調製した。次いで、このチタンエトキシド溶液を反応器に15ml/分の流速で上向流で周囲温度及び大気圧で30分間循環させた。次いで、チタンエトキシドをシリカゲル担体上に135℃(275°F)及び3.4バール(35psig)で17時間グラフトした。冷却後、過剰のチタンエトキシド溶液を反応器から排出させ、触媒をトルエンで4ml/分の速度で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を300cc/分の窒素ガス流下で138℃(280°F)で4時間乾燥した。
【0276】
エチルフェニルカーボネート(EPC)を製造するためのDECのフェノールとのエステル交換は、345℃及び27psigの沸騰型反応器条件下でDECの23重量%溶液を反応器に0.5ml/分でポンプ輸送することにより実施した。
【0277】
全860時間オンストリーム時間の間触媒性能を安定化させるために、Ti(OEt)4−x(OPh)x(ここで、x=2)の形態のチタンを供給物流に55重量ppmの濃度で導入した。EPC及びDPCへのエステル交換反応の合計選択率は約99モル%であった。本実験の結果を図23に図示する。
【0278】
実験16
本実験は、図19に示すように本発明に従ってジフェニルカーボネート(DPC)を製造するための実施形態を例示する。DPC及びDECを製造するためのEPCの不均化を可溶性チタン触媒の存在下で実施した。
【0279】
不均化反応のための供給物は、上記実験15に開示されているのと同様の実験により調製した複合エステル交換生成物からエタノール、DEC及びフェノールの一部を窒素ブランケット下で蒸留することにより調製した。不均化反応のための供給混合物中の均一チタン触媒は、上記実験15に開示されているエステル交換反応器に元々導入したものであった。追加可溶性チタン触媒は供給混合物に添加しなかった。2つの供給混合物にトルエンを添加して、沸騰型反応器に対する蒸気相を形成した、
第1供給物の組成は、16.26重量%のトルエン、1.61重量%のDEC、49.33重量%のフェノール、30.91重量%のEPC、0.78重量%のDPCであり、組成残部の正味はアルキル交換反応からの副生成物(例えば、MPC)が占めている。第2供給物の組成は、16.15重量%のトルエン、1.61重量%のDEC、49.28重量%のフェノール、31.08重量%のEPC、0.80重量%のDPCであり、組成残部はアルキル交換反応からの副生成物(例えば、MPC)が占めている。第1及び第2供給物中の均一触媒の濃度はそれぞれ180重量ppm及び200重量ppmチタンであった。
【0280】
不均化反応は、25mlの空触媒スペース(固体触媒の非存在下)を有する反応器において179℃(355°F)及び2.9バール(27psig)で実施した。供給物速度は最初の72時間オンストリームの間0.5ml/分で上向流、次いでその後は0.60ml/分で上向流であった。不均化反応の結果を図24に図示する。キサントンが不均化中に約35重量ppmの量で生成された唯一の新しい副生成物であった。生成物サンプル分析でジフェニルエーテルは検出されなかった。すべての副生成物の選択率は3.0モル%〜3.3モル%であった。
【0281】
本明細書中に開示されている実施形態に従うバイオディーゼルの製造
バイオディーゼルは、均一触媒及び固体触媒の存在下で植物油及び動物脂のメタノールとのエステル交換を実施することにより製造されてきた。バイオディーゼルを製造するための供給原料は高級脂肪酸のエステルである植物油及び動物脂である。用語「脂」(液体ならば、植物または動物油)は通常脂肪酸のグリセロールとのエステル(グリセリド)に限定され、用語「ワックス」は他のアルコールのエステルに限定される。バイオディーゼルの製造に関与する基本的化学は天然エステル(主に、グリセリド)の第1級アルコール(典型的には、メタノールまたはエタノール)との接触交換反応である。塩基(通常、NaOH、KOH、カリウムメトキシドまたはナトリウムメトキシド)のアルコール溶液が触媒として使用され得る。従って、バイオディーゼルは各種の飽和及び不飽和脂肪酸のメチルまたはエチルエステルの混合物である。共生成物はグリセロールであり、その量は16〜25重量%である。バイオディーゼルは、供給物中の水の量または使用する触媒に応じて幾つかの脂肪酸(エステルの加水分解生成物)を少量含有し得る。
【0282】
【化6】
天然産物グリセリドのアルキル基R1、R2及びR3は通常鎖長及び不飽和度に違いがある。アルキル基は通常直鎖であり、4〜26の範囲の偶数個の炭素原子を有する。例外は、イルカ中に比較的大量に存在する分岐状イソ吉草酸(CH3)2CHCH2COOHである。幾つかの不飽和脂肪酸はアルキル鎖中に2または3個の二重結合を有する。不飽和脂肪酸はその同等飽和脂肪酸よりも低い融点を有している。不飽和脂肪酸の鎖長は通常C10−C24の範囲である。カノーラ油はコーン油よりもC16−C20鎖長中に多くの不飽和を有している。
【0283】
一般的に、塩基触媒はカルボン酸エステルのアルコールとのエステル交換のために酸触媒よりも有効である。従来技術(背景技術の欄を参照されたい)に開示されている不均一触媒も塩基触媒である。残念ながら、活性触媒成分は反応条件下で固体触媒から浸出して、触媒失活が生ずる。アルミン酸亜鉛触媒は余り活性でない触媒であり、多くの塩基触媒(例えば、MgOまたはCaO)よりも高い反応温度及び遅い供給速度を必要とする。しかしながら、後者はアルミン酸亜鉛よりも固体触媒からより一層早く浸出する。
【0284】
植物油または動物脂のエステル交換は、沸騰型反応器、パルスフロー反応器または接触蒸留カラムにおいて固体触媒の存在下でメタノールまたはエタノールを用いて、供給混合物中に微量の可溶性接触成分を存在させて1ステップまたは2ステップ反応で実施され得る。出発触媒は、担体(例えば、シリカ、アルミナ炭素及び/または炭素質材料)上に担持させて金属酸化物(例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ランタン等)を含み得る。炭素及び炭素質担体が担体の表面上に有機金属化合物を固定化させるために表面官能基(例えば、ヒドロキシル、カルボニルまたはその両方)を有していることが好ましい。
【0285】
担持金属酸化物、水酸化物またはオキシ水酸化物を作成するために表面官能基が不要なことがある。炭素質担体は、炭水化物(例えば、木材、ヤシ殻、澱粉、セルロース、澱粉とセルロースの混合物、糖、メチルセルロース等)を高温で制御熱脱水することにより作成され得る。炭素質担体は担持されていなくても担持されていてもよい。担持炭素質材料を作成するためには、炭水化物を適当な多孔質担体上に堆積させた後、不活性雰囲気または不活性ガス、少量の酸素または蒸気、またはその両方から構成される雰囲気中で300℃〜1000℃の高温で制御熱脱水する。炭素質材料に対する担体は任意の無機材料(例えば、アルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニア、クレー、シリカ−アルミナ等)であり得る。
【0286】
2ステップ方法では、第1反応器後でのトリグリセリドの変換率は約90%以上であり得る。第1エステル交換反応器からの反応生成物流中の残留する未変換トリグリセリド、ジグリセリド及びモノグリセリドは第2エステル交換反応器において完全に変換され得る。エステル交換は2相反応であるので、沸騰型またはパルスフロー反応器中でエステル交換を実施すると、大きなトリグリセリド分子、メチルエステル及び粘性のグリセロールが触媒細孔を介してバルク液体媒体と殆どの触媒反応が生じる触媒ペレットの内部の間をあちこち移動するのが促進される。高い生産性が得られる。本明細書中に開示されている触媒は高い活性を有しているので、エステル交換をより低い温度及び圧力で実施し得る。このことは建築費及び光熱費が少ないことを意味する。
【0287】
反応器への供給物流に対する可溶性触媒成分の添加は、幾つかの実施形態では約0.5重量ppm〜約500重量ppm、他の実施形態では約5重量ppm〜約250重量ppm、他の実施形態では10重量ppm〜50重量ppmである。可溶性触媒化合物の例には、その中でも亜鉛2−メトキシエトキシド、カルシウム2−メトキシエトキシド、亜鉛2−メトキシプロポキシド、亜鉛エトキシド、亜鉛アルコキシアルキルカーボネート、カルシウム2−メトキシプロポキシド、カルシウムエトキシド、カルシウムメトキシド、カルシウムアルコキシアルキルカーボネート、マグネシウム2−メトキシエトキシド、マグネシウム2−メトキシプロポキシド、マグネシウムエトキシド、マグネシウムメトキシド、マグネシウムブトキシド、マグネシウムアルコキシアルキルカーボネート、ランタンアルコキシド、ランタンアルコキシアルキルカーボネート、カルボン酸の亜鉛塩、カルボン酸のマグネシウム塩、カルボン酸のカルシウム塩、並びにMg、Ca及びZnグリセリドが含まれる。これらの混合物を使用してもよい。Ca、Mg、Zn及びLaの可溶性化合物は、液相中または液体と蒸気の存在下でこれらの金属の酸化物または水酸化物を有機カーボネートまたは有機カーボネートとアルコールの混合物、カルボン酸、または有機カルボン酸とアルコール(例えば、メタノール、2−メトキシエタノール等)の混合物と93℃〜260℃(200°F〜500°F)、好ましくは121℃〜232℃(250°F〜450°F)の温度で反応させることにより得られ得る。場合により、再循環のために金属成分を回収するように選択してもよい。こうして調製した溶液は、長い触媒サイクル時間を得るために反応器への供給物流に微量の上記金属を添加するために有用である。固体金属アルコキシド、金属水酸化物または金属酸化物触媒上の活性金属または金属成分の総量は、幾つかの実施形態では約0.05重量%〜約20重量%、他の実施形態では約0.07重量%〜約12重量%である。
【0288】
場合により、ジ−またはモノ−グリセリドの全部または一部は、第2反応器または場合により第3反応器におけるメタノールとのエステル交換に加えて、DMC、メチル2−エチル−1−ヘキシルカーボネート、メチルカルバメート、2−エチル−1−ヘキシルカルバメート、尿素またはこれらの混合物との反応により有機カーボネート、有機カルバメートまたはその両方に変換され得る。得られた有機カーボネート及びカルバメートは微粒子、NOx放出を減少させたり、ジーゼルセタンを向上させるためのバイオディーゼル添加剤として役立ち得る。
【0289】
天然植物油は少量の各種遊離脂肪酸を含有し得るので、遊離脂肪酸は固体塩基触媒の存在下でアルコールとのエステル交換を実施する前に予備処理により除去されなければならない。予備処理方法の例は酸触媒の存在下での遊離脂肪酸のメタノールとのエステル交換である。前記酸触媒の1つは炭素質担体上に固定化したスルホン酸である。担体には、多孔質担体上に担持または堆積させたヤシ殻または炭水化物を制御熱脱水することにより作成されるものが含まれ得る。接触蒸留反応器において固体酸触媒の存在下で遊離脂肪酸のアルコールとのエステル化反応を実施することは、反応ゾーンから水が頭上流として連続除去され、エステル化反応を完了に向けて進め、トリグリセリドのアルコールとのエステル交換を実施する前にエステ化生成物を別に乾燥するステップを排除できるという利点を有する。別の重要な利点はエステル化時間が短いことである。
【0290】
以下の実施例におけるエステル交換反応はすべて下向流反応器において実施した。固定床反応器の寸法は直径1.3cm(1/2インチ)×長さ53.3cm(21インチ)であった。反応器は別々にコントロールされる頂部及び底部加熱ゾーンを有していた。供給物メタノール流及び植物油流(植物油中6重量%のメタノール)を2つの流れが触媒反応ゾーンを流下する反応器の頂部区画に別々にポンプ輸送した。微量の可溶性触媒成分をメタノール流または既に部分的に変換された生成物流に混合した。固体触媒の容量は15mlであった。
【0291】
実験17
本実験の目的は、下向流沸騰型反応器または接触蒸留反応器における固体触媒の存在下でのカノーラ油のメタノールとのエステル交換を立証することであった。固体触媒はシリカゲル上に担持させたMgOである。
【0292】
硝酸マグネシウム溶液は、Mg(NO3)2・6H2O(10.96g)を脱イオン水(24g)中に溶解することにより調製した。この硝酸マグネシウム溶液を30ml(11.91g)のシリカゲル球状担体(1.7〜4mmの直径;約6個のヒドロキシル基/mm2,314m2/gのBET,1.055cm3/gの細孔容積及び13.46nmの平均細孔直径)にインシピエント・ウェットネス技術により含浸させた。シリカゲル球状担体はオイル滴下技術により作成した。含浸生成物を100℃で1時間乾燥した後、510℃で2時間か焼した。
【0293】
15ml(6.30g)のMgO/SiO2触媒を反応器に充填した。カノーラ油供給物(地元の食料品店から購入)は、メタノール(5.39重量%)をカノーラ油(94.6重量%)と混合することにより調製した。この供給物の遊離脂肪酸の酸価は0.48mg KOH/gであった。カノーラ油のメタノールとのエステル交換は、165℃(330°F)及び19.4バール(267psig)でカノーラ油供給物及びメタノールを各々0.2ml/分で供給することにより実施した。マグネシウムエトキシドをメタノール供給物中に溶解して、触媒反応ゾーン中Mgを28重量ppmとした。
【0294】
流出液流は2つの透明な層から構成されていた。上層は生成物メチルエステル及び少量の未変換トリグリセリドを含有している。上層からのメタノールを除いて、反応生成物中の未変換トリグリセリドの平均含量は約1.2重量%であった。下層は殆どの未変換トリグリセリドを含有している。結果は適当な触媒性能を示す図17に図示する。
【0295】
実験18
本実験の目的は、第1反応器からの流出液流(放置すると2層)中の残留する変換されていないまたは部分的に変換された材料を第2下向流沸騰型反応器または接触蒸留反応器において変換し、または場合により単一エステル交換反応器の前面に再循環することを立証することであった。
【0296】
硝酸マグネシウム溶液は、Mg(NO3)2・6H2O(9.04g)を脱イオン水(19.1g)中に溶解することにより調製した。この硝酸マグネシウム溶液を22ml(9.14g)のシリカゲル球状担体(9〜14メッシュ,309m2/gのBET及び1.03cm3/gの細孔容積)にインシピエント・ウェットネス技術により含浸させた。含浸生成物を150℃で1時間乾燥した後、510℃で2時間か焼した。完成触媒は4.5重量%のMgを含んでいた。
【0297】
実験13において使用した同一反応器に15ml(7.2g)のMgO/SiO2触媒を充填した。カノーラ油のメタノールとの第1エステル交換反応からの複合生成物の2層を、第2エステル交換反応のための供給物として使用するために複合生成物から分離漏斗を用いて分離した。底部複合生成物供給物の組成は、25.4重量%のトリグリセリド、8.5重量%のジグリセリド、3.1重量%のモノグリセリド、0.1重量%のグリセリン、47.1重量%のメチルエステル及び15.8重量%のメタノールであった。供給物は約8.5重量ppmの可溶性Mg種を含んでおり、0.32mg KOH/gの遊離脂肪酸値を有していた。エステル交換は、160℃(320°F)及び19.5バール(268psig)で0.12ml/分の供給物及び0.10ml/分のメタノールを下向流沸騰型反応器にポンプ輸送することにより実施した。2つの供給物流のいずれにも追加のMgアルコキシドを添加しなかった。反応器流出液流は透明な明黄色溶液(単一層)であった。
【0298】
頂部複合生成物供給物の組成は、1.12重量%のトリグリセリド、0.57重量%のジグリセリド、3.78重量%のモノグリセリド、7.47重量%のメチルエステル、0.03重量%のグリセリン及び87.03重量%のメタノールであった。この供給物の遊離脂肪酸値は0.51mg KOH/gであった。エステル交換は、同一の触媒を用いて同一の温度及び圧力で0.2ml/分の供給物流速で実施した。反応器に追加のメタノールをポンプ輸送しなかった。過剰のメタノールを留去し、粗なバイオディーゼルを回収するために複合頂部及び底部複合生成物供給物からのこれらの2つの最終エステル交換生成物を合体した。回収した粗なバイオディーゼルは、0.36重量%の未変換トリグリセリドを含んでおり、0.74mg KOH/g 遊離脂肪酸値を有していた。
【0299】
上記実験結果は、固体触媒の存在下で植物油のアルコール(例えば、メタノール)とのエステル交換を実施することによりバイオディーゼルが製造され得ることをうまく立証している。
【0300】
触媒系
本明細書中の各種実施形態について記載したように、反応器中の反応ゾーンまたは触媒床は本明細書中に開示されている実施形態に従って1つ以上のアルコーリシス触媒を含み得、反応ゾーンまたは触媒床が2つ以上の不均一触媒、固体触媒またはその組合せを有していることも包含される。例えば、触媒は2つ以上の金属酸化物、すなわち担体上に堆積または固定化させた2つ以上の異なる金属酸化物を有する混合金属酸化物触媒を含み得、金属酸化物または混合金属酸化物は多孔質であってもよい。
【0301】
本明細書中で使用されている固体または不均一触媒は、触媒の活性金属成分だけでなく、それ自身により触媒を区別し得る担体の特性を指す。例えば、異なる物性(例えば、結晶性、ポロシメトリー、密度、サイズ等)を有するが、同一の化学組成を有する2つの異なる触媒担体は本明細書中で2つの異なる担体と定義される。
【0302】
同様に、固体または不均一触媒は担体上の活性成分の濃度、例えば担体上1重量%の金属酸化物対3重量%の金属酸化物に基づいて異なり得る。各触媒は類似の金属酸化物、並びに類似の担体組成及び構造を有し得るが、金属充填により実質的に異なる触媒挙動を生じ得る。
【0303】
よって、本明細書中に開示されている実施形態において使用されている「2つ以上の」触媒は複数の活性触媒成分、異なる担体構造/組成、活性成分の異なる充填量、或いは金属元素、金属充填量及び担体の組合せまたは変更を有する触媒を含み得る。
【0304】
本明細書中に開示されている実施形態に従う2つ以上の触媒を有する反応ゾーンは有利には触媒の異なる特性を利用し得る。例えば、接触蒸留反応ゾーンは最小の重合または汚損で所望の変換率を与えるように複数の触媒を含むように製作され得る。例えば、低い活性及び/または高い選択率を有する触媒は、ポリマー前駆体の濃度が最高であり得る触媒床の部分に使用され得る。或いは、大きい平均細孔直径または有利には蒸留カラム反応器中の液体トラフィックにより触媒から不純物を洗浄できる他の特性を有する触媒は、ポリマー前駆体の濃度が最高であり得る反応ゾーンの底部に向かって使用され得る。高い活性または高い表面積を有する触媒は、ポリマー前駆体濃度が低い触媒床の部分に選択的に配置され得る。このように、触媒床は所望の変換率(活性及び選択率)を与え、触媒床内の触媒の汚損が少ないまたは全くなく、よって触媒サイクル時間を延長させ、反応器性能を高めるように製作され得る。
【0305】
水
上述したように、供給物流の水分含有量は、幾つかの実施形態では約700ppm未満、他の実施形態では約600ppm未満であるようにコントロールされ得る。供給物流中または反応ゾーン中に微量の水を使用すると触媒サイクル時間が改善され及び/または固体触媒上の重質ポリマー材料の蓄積が減少し、その結果失活速度がより遅くなり得ることが予期せぬことに知見された。
【0306】
1つの理論に縛られないが、水の存在下で不均一及び均一触媒を用いると触媒性能が改善されるメカニズムは十分に理解されていないことに注目されたい。しかしながら、(a)触媒上へのポリマーの沈着が触媒を失活させること及び(b)反応条件下での活性金属の固体触媒からの浸出が触媒を永久的に失活させることに注目されたい。微量の水の使用により、(a)本明細書中に開示されている実施形態においてエステル交換及び/または不均化反応中に形成され得るポリマーが解重合され得及び/または(b)反応条件下で担体に対して1つ以上の浸出触媒または添加均一触媒を固定する、堆積させるまたはつなぎ留めるように反応に関与し得ると理論上想定される。供給物中のまたは反応ゾーンに直接または間接的に水を注入することにより添加された約600重量ppm未満の量の微量の水により、解重合、現場触媒再活性化またはその組合せの効果が得られ得る。
【0307】
しかしながら、供給物流または反応ゾーン中の余りに多い水は、可溶性触媒が沈殿したり及び/または固体触媒上にゲルが形成され、これらが反応器の運転及び最適の触媒性能に関連する望ましくない問題を引き起こす恐れがあるので避けなければならない。本明細書中に開示されている実施形態における供給物流または反応ゾーン中の微量の水は、約1重量ppm〜約600重量ppm、他の実施形態では約2重量ppm〜500重量ppm、他の実施形態では約5重量ppm〜約400重量ppm、さらに他の実施形態では約50重量ppm〜約250重量ppmの範囲であり得る。
【0308】
再び図19及び20を参照すると、本明細書中に開示されている実施形態に従ってジアリールカーボネートを製造するための各フロースキームでは水は反応副生成物として生成され得る。図19の方法に関して、水はグリコールを脱水してエポキシドを形成する間に生成され得る。図20の方法に関して、水はアンモニア及び二酸化炭素からの尿素の合成中に製造され得る。これらの反応ステップから回収された水を1つ以上のエステル交換及び/または不均化反応ゾーンへの添加水として使用して、各反応ゾーン内の水を上記した範囲に維持し得る。
【0309】
反応器中に使用される内部デバイス
上記したように、本明細書中に開示されている実施形態において使用される反応器は、エステル交換を液相中または液体と蒸気の二相の存在下で実施するための各種運転モードのために任意の物理的形状を有し得る。任意のタイプの反応器が本明細書中に記載されている反応を実施するために使用され得る。有機カーボネートまたは有機カルバメート反応を含む反応を実施するのに適した反応器の例には、蒸留カラム反応器、分壁蒸留カラム反応器、慣用の管状固定床反応器、バブルカラム反応器、場合により蒸留カラムを備えたスラリー反応器、パルスフロー反応器、スラリー固体触媒がカラムを流下する接触蒸留カラム、またはこれらの反応器の組合せが含まれ得る。
【0310】
本明細書中に開示されている実施形態において使用される反応器は、更に蒸気−液体分離のため及び蒸気−液体トラフィックを反応器内へ向けるための内部物理デバイスまたは2つ以上の内部デバイスの組合せを含み得る。各種内部デバイスは任意の形状の物理デバイスであり得、その1つ以上のデバイスが効果的蒸気−液体分離及び蒸気−液体トラフィックを促進する限り複数の目的を有し得る。
【0311】
吸熱平衡反応を取り扱う場合、高変換率のために効果的蒸気−液体分離及び蒸気−液体トラフィックの両方を同時に実施することが必要であり、気化熱及び反応熱の2つの合わさった作用のために反応媒体の冷却効果により複雑になる。高変換率を達成するためには、反応生成物の1つを液体反応媒体から蒸気相に除去しなければならず、次いで蒸気を反応ゾーンから素早く除去しなければならず、これには気化熱及び効果的蒸気トラフィックを必要とする。このようなケースの例がジアルキルカーボネート(例えば、DEC)のフェノールとのエステル交換である。その結果、液体反応媒体が冷却され、これにより変換率が低下する。気化熱及び反応の吸熱性は相反しており、そのために変換率が低下する。慣用の管状プラグフロー反応器では、内部加熱システムを使用し得、または反応器間を間断的に加熱する複数の小型反応器を使用し得る。
【0312】
気体及び液体を効果的に分離し、吸熱反応のための熱を供給する内部補助デバイスの1つ以上を反応ゾーン中に使用し得る。前記デバイスは、反応ゾーンの中間に内部的に熱を供給する接触蒸留カラムに対するデバイスを1つ以上有する液体再分配トレーであり得る。前記した1つ以上のデバイスは高変換率を得るために蒸気の液体からのより効果的な分離を促進し、吸熱反応のための熱を供給しなければならない。ジアルキルカーボネート(例えば、DEC)のフェノールとのエステル交換または環状カーボネートのエタノールとのエステル交換は、固体触媒、均一触媒またはその両方の使用に関わらず接触蒸留カラムの反応ゾーン中に1つ以上の前記デバイスを使用することにより利益を得なければならない。
【0313】
発熱反応の場合、通常低い選択率及び/または低い触媒性能をもたらす暴走反応または反応ゾーンの乾燥(低い液体トラフィック)を防止するために内部冷却デバイスを使用し得る。内部デバイスは蒸気−液相の分離のために効果的であり、蒸気−液体トラフィックを促進しなければならない。
【0314】
内部加熱または冷却デバイスは、カラム内でDECを部分的に凝縮させ、フェノールを大部分凝縮させるようにカラム内の任意の高さに、例えばエステル交換反応器のようなカラムの精留区画の頂部に配置され得る。
【0315】
上記したように、本明細書中に開示されている実施形態は、供給物に微量の可溶性有機金属化合物を導入することにより各種固体触媒に対して長い触媒サイクル時間を与える。本明細書中に開示されている他の実施形態は、有機カーボネートまたは有機カルバメートを安定な速度で連続的に製造するための方法;固定化固体触媒を現場作成するための技術;商業用固定床反応器のために適するように長い触媒サイクル時間及び使用可能時間のために安定な触媒活性を維持するための技術;及び失活した固体触媒の現場再活性化方法を含み得る。
【0316】
有利には、本明細書中に開示されている実施形態は、長いサイクル寿命を有し、よって頻繁な運転停止及び触媒交換に関連する運転コストが低下するエステル交換触媒を提供し得る。加えて、使用する可溶性有機金属化合物が微量であるために、均一触媒の各種生成物流からの除去を実質的に減じ得る。
【0317】
開示は限定数の実施形態しか含んでいないが、この開示の利益を受けている当業者は、本発明の範囲を逸脱しない他の実施形態を考えつくことができることを認識している。従って、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1反応ゾーンにおいて、エポキシド及び二酸化炭素を反応させて、環状カーボネートを含む第1反応生成物を形成し;
第2反応ゾーンにおいて、第1エステル交換触媒の存在下で、環状カーボネートをエタノールとエステル交換して、ジエチルカーボネート及びグリコールを含む第2反応生成物を形成し;
第2反応生成物を分離して、第1ジエチルカーボネートフラクション及び第1グリコールフラクションを回収し;
第3反応ゾーンにおいて、第2エステル交換触媒の存在下で、第1ジエチルカーボネートフラクションの少なくとも一部をアリールヒドロキシ化合物とエステル交換して、エチルアリールカーボネート及びエタノールを含む第3反応生成物を形成し;
第3反応生成物を分離して、エチルアリールカーボネートフラクション及び第1エタノールフラクションを回収し;
第4反応ゾーンにおいて、不均化触媒の存在下で、エチルアリールカーボネートフラクションの少なくとも一部を不均化して、ジアリールカーボネート及びジエチルカーボネートを含む第4反応生成物を形成し;
第4反応生成物を分離して、ジアリールカーボネートフラクション及び第2ジエチルカーボネートフラクションを回収し;
第1エタノールフラクションの少なくとも一部を第2反応ゾーンに再循環させ;
第2ジエチルカーボネートフラクションの少なくとも一部を第3反応ゾーンに再循環させる;
ことを含む、ジアリールカーボネートの製造方法。
【請求項2】
第1グリコールフラクションの少なくとも一部を脱水して、エポキシド及び水を形成し;
エポキシドから水を分離し;
エポキシドの少なくとも一部を第1反応ゾーンに再循環させる;
ことを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1エステル交換触媒及び第2エステル交換触媒が、各々独立して固体エステル交換触媒、可溶性有機金属化合物及びその組合せの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第1エステル交換触媒が、固体エステル交換触媒を含み、更に微量の可溶性有機金属化合物を第2反応ゾーンに供給することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
可溶性有機金属化合物を、反応物質の全重量に基づいて1ppm〜200ppmの範囲の割合で供給する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第2エステル交換触媒が、固体エステル交換触媒を含み、更に微量の可溶性有機金属化合物を第3反応ゾーンに供給することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
可溶性有機金属化合物を、反応物質の全重量に基づいて1ppm〜200ppmの範囲の割合で供給する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第3反応ゾーンにおける水の濃度を、1重量ppm〜600重量ppmの範囲に維持することを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
固体エステル交換触媒及び可溶性有機金属化合物が、各々独立してII族〜VI族元素の少なくとも1つを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、
第2反応ゾーンが、環状カーボネートをエタノールとエステル交換すると同時に第2反応生成物を分離するための接触蒸留反応器システムを含み;
第3反応ゾーンが、ジエチルカーボネートをアリールヒドロキシル化合物とエステル交換すると同時に第3反応生成物を分離するための接触蒸留反応器システムを含み;
第4反応ゾーンが、エチルアリールカーボネートを不均化すると同時に第4反応生成物を分離するための接触蒸留反応器システムを含み;
第1ジエチルカーボネートフラクションが、ジエチルカーボネート及びエタノールを含み、方法は更に
第1ジエチルカーボネートフラクションを分離して、第3ジエチルカーボネートフラクション及び第2エタノールフラクションを回収し、
第2エタノールフラクションを第2反応ゾーンに再循環させる
ことを含み;
第1グリコールフラクションが、グリコール及び環状カーボネートを含み、方法は更に、
第1グリコールフラクションを分離して、第2グリコールフラクション及び環状カーボネートフラクションを回収し、
環状カーボネートフラクションを第2反応ゾーンに再循環させる
ことを含み;
ジアリールカーボネートフラクションが、ジアリールカーボネート、エチルアリールカーボネート、アリールヒドロキシル化合物及び反応副生成物を含み、方法は更に
ジアリールカーボネートフラクションを分離して、ジアリールカーボネート生成物フラクション、ジアリールカーボネートより重質の化合物を含む反応副生成物フラクション、及びエチルアリールカーボネート及びアリールヒドロキシル化合物の少なくとも1つを含む少なくとも1つの再循環フラクションを回収し、
少なくとも1つの再循環を第4反応ゾーンに再循環させる
ことを含み;
第1エタノールフラクションが、エタノール及びジエチルカーボネートを含み、方法は更に、
第1エタノールフラクションを分離して、第3エタノールフラクション及び第4ジエチルカーボネートフラクションを回収し、
第4ジエチルカーボネートフラクションを第3反応ゾーンに再循環させ、
第3エタノールフラクションの少なくとも一部を第2反応ゾーンに再循環される第1エタノールフラクションの少なくとも一部として供給する;
ことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
第2グリコールフラクションの少なくとも一部を脱水して、エポキシド及び水を形成し;
エポキシドから水を分離し;
エポキシドの少なくとも一部を第1反応ゾーンに再循環させる;
ことを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第2、第3及び第4反応ゾーの少なくとも1つが、接触蒸留反応器システムを含み、少なくとも1つの接触蒸留反応器システムが、蒸気−液体分離を促進し、蒸気−液体トラフィックを接触蒸留反応器システム内に向ける内部熱交換デバイスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
第2反応ゾーン、第3反応ゾーン及び第4反応ゾーンの少なくとも1つが、触媒長寿を促進し、触媒汚損を制限するように配置された2つ以上のエステル交換触媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
2つ以上のエステル交換触媒が、異なる活性金属成分、異なる担体組成及び異なる担体特性の少なくとも1つを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
エタノールに関して本質的に閉ループで運転する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
第1反応ゾーンにおいて、アンモニア及び二酸化炭素を反応させて、尿素を含む第1反応生成物を形成し;
第2反応ゾーンにおいて、第1エステル交換触媒の存在下で、尿素をエタノールとエステル交換して、ジエチルカーボネート及びアンモニアを含む第2反応生成物を形成し;
第2反応生成物を分離して、第1ジエチルカーボネートフラクション及び第1アンモニアフラクションを回収し;
第3反応ゾーンにおいて、第2エステル交換触媒の存在下で、第1ジエチルカーボネートフラクションの少なくとも一部をアリールヒドロキシ化合物とエステル交換して、エチルアリールカーボネート及びエタノールを含む第3反応生成物を形成し;
第3反応生成物を分離して、エチルアリールカーボネートフラクション及びエタノールフラクションを回収し;
第4反応ゾーンにおいて、不均化触媒の存在下で、エチルアリールカーボネートフラクションの少なくとも一部を不均化して、ジアリールカーボネート及びジエチルカーボネートを含む第4反応生成物を形成し;
第4反応生成物を分離して、ジアリールカーボネートフラクション及び第2ジエチルカーボネートフラクションを回収し;
エタノールフラクションの少なくとも一部を第2反応ゾーンに再循環させ;
第2ジエチルカーボネートフラクションの少なくとも一部を第3反応ゾーンに再循環させる;
ことを含む、ジアリールカーボネートの製造方法。
【請求項17】
アンモニアフラクションの少なくとも一部を、第1反応ゾーンに再循環させることを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
第1エステル交換触媒及び第2エステル交換触媒が、各々独立して固体エステル交換触媒、可溶性有機金属化合物及びその組合せの少なくとも1つを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
第1エステル交換触媒が、固体エステル交換触媒を含み、更に微量の可溶性有機金属化合物を第2反応ゾーンに供給することを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
可溶性有機金属化合物を、反応物質の全重量に基づいて1ppm〜200ppmの範囲の割合で供給する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
第2エステル交換触媒が、固体エステル交換触媒を含み、更に微量の可溶性有機金属化合物を第3反応ゾーンに供給することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
可溶性有機金属化合物を、反応物質の全重量に基づいて1ppm〜200ppmの範囲の割合で供給する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
第3反応ゾーン中の水の濃度を、1重量ppm〜600重量ppmの範囲に維持することを更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
固体エステル交換触媒及び可溶性有機金属化合物が、各々独立してII族〜VI族元素の少なくとも1つを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
請求項16に記載の方法であって、
第2反応ゾーンが、
尿素の少なくとも一部をエタノールとエステル交換してエチルカルバメート及びアンモニアを含む第5反応生成物を形成するための触媒を含むまたは含まない第1尿素蒸留反応ゾーン、
第5反応生成物中のエチルカルバメートを、エタノールとエステル交換してジエチルカーボネート及びアンモニアを含む第6反応生成物を形成するための接触蒸留反応器システムを含む第2尿素反応ゾーン、及び
第5及び第6反応生成物を分離して第1ジエチルカーボネートフラクション及びアンモニアフラクションを回収するための1つ以上の蒸留カラム
を含み;
第3反応ゾーンが、ジエチルカーボネートをアリールヒドロキシル化合物とエステル交換すると同時に第3反応生成物を分離するための接触蒸留反応器システムを含み;
第4反応ゾーンが、エチルアリールカーボネートを不均化すると同時に第4反応生成物を分離するための接触蒸留反応器システムを含み;
第1ジエチルカーボネートフラクションが、ジエチルカーボネート及びエタノールを含み、方法は更に
第1ジエチルカーボネートフラクションを分離して、第3ジエチルカーボネートフラクション及び第2エタノールフラクションを回収し、
第2エタノールフラクションを第2反応ゾーンに再循環させる
ことを含み;
第1グリコールフラクションが、グリコール及び環状カーボネートを含み、方法は更に
第1グリコールフラクションを分離して、第2グリコールフラクション及び環状カーボネートフラクションを回収し、
環状カーボネートフラクションを第2反応ゾーンに再循環させる
ことを含み;
ジアリールカーボネートフラクションが、ジアリールカーボネート、エチルアリールカーボネート、アリールヒドロキシル化合物及び反応副生成物を含み、方法は更に
ジアリールカーボネートフラクションを分離して、ジアリールカーボネート生成物フラクション、ジアリールカーボネートより重質の化合物を含む反応副生成物フラクション、及び少なくとも1つのエチルアリールカーボネート及びアリールヒドロキシル化合物の少なくとも1つを含む再循環フラクションを回収し、
少なくとも1つの再循環を第4反応ゾーンに再循環させる;
ことを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
第2、第3及び第4反応ゾーンの少なくとも1つが、接触蒸留反応器システムを含み、少なくとも1つの接触蒸留反応器システムが、蒸気−液体分離を促進し、蒸気−液体トラフィックを接触蒸留反応器システム内に向ける内部熱交換デバイスを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
第2反応ゾーン、第3反応ゾーン及び第4反応ゾーンの少なくとも1つが、触媒長寿を促進し、触媒汚損を制限するように配置された2つ以上のエステル交換触媒を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
2つ以上のエステル交換触媒が、異なる活性金属成分、異なる担体組成及び異なる担体特性の少なくとも1つを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
エタノールに関して本質的に閉ループで運転する、請求項16に記載の方法。
【請求項1】
第1反応ゾーンにおいて、エポキシド及び二酸化炭素を反応させて、環状カーボネートを含む第1反応生成物を形成し;
第2反応ゾーンにおいて、第1エステル交換触媒の存在下で、環状カーボネートをエタノールとエステル交換して、ジエチルカーボネート及びグリコールを含む第2反応生成物を形成し;
第2反応生成物を分離して、第1ジエチルカーボネートフラクション及び第1グリコールフラクションを回収し;
第3反応ゾーンにおいて、第2エステル交換触媒の存在下で、第1ジエチルカーボネートフラクションの少なくとも一部をアリールヒドロキシ化合物とエステル交換して、エチルアリールカーボネート及びエタノールを含む第3反応生成物を形成し;
第3反応生成物を分離して、エチルアリールカーボネートフラクション及び第1エタノールフラクションを回収し;
第4反応ゾーンにおいて、不均化触媒の存在下で、エチルアリールカーボネートフラクションの少なくとも一部を不均化して、ジアリールカーボネート及びジエチルカーボネートを含む第4反応生成物を形成し;
第4反応生成物を分離して、ジアリールカーボネートフラクション及び第2ジエチルカーボネートフラクションを回収し;
第1エタノールフラクションの少なくとも一部を第2反応ゾーンに再循環させ;
第2ジエチルカーボネートフラクションの少なくとも一部を第3反応ゾーンに再循環させる;
ことを含む、ジアリールカーボネートの製造方法。
【請求項2】
第1グリコールフラクションの少なくとも一部を脱水して、エポキシド及び水を形成し;
エポキシドから水を分離し;
エポキシドの少なくとも一部を第1反応ゾーンに再循環させる;
ことを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1エステル交換触媒及び第2エステル交換触媒が、各々独立して固体エステル交換触媒、可溶性有機金属化合物及びその組合せの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第1エステル交換触媒が、固体エステル交換触媒を含み、更に微量の可溶性有機金属化合物を第2反応ゾーンに供給することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
可溶性有機金属化合物を、反応物質の全重量に基づいて1ppm〜200ppmの範囲の割合で供給する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第2エステル交換触媒が、固体エステル交換触媒を含み、更に微量の可溶性有機金属化合物を第3反応ゾーンに供給することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
可溶性有機金属化合物を、反応物質の全重量に基づいて1ppm〜200ppmの範囲の割合で供給する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第3反応ゾーンにおける水の濃度を、1重量ppm〜600重量ppmの範囲に維持することを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
固体エステル交換触媒及び可溶性有機金属化合物が、各々独立してII族〜VI族元素の少なくとも1つを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、
第2反応ゾーンが、環状カーボネートをエタノールとエステル交換すると同時に第2反応生成物を分離するための接触蒸留反応器システムを含み;
第3反応ゾーンが、ジエチルカーボネートをアリールヒドロキシル化合物とエステル交換すると同時に第3反応生成物を分離するための接触蒸留反応器システムを含み;
第4反応ゾーンが、エチルアリールカーボネートを不均化すると同時に第4反応生成物を分離するための接触蒸留反応器システムを含み;
第1ジエチルカーボネートフラクションが、ジエチルカーボネート及びエタノールを含み、方法は更に
第1ジエチルカーボネートフラクションを分離して、第3ジエチルカーボネートフラクション及び第2エタノールフラクションを回収し、
第2エタノールフラクションを第2反応ゾーンに再循環させる
ことを含み;
第1グリコールフラクションが、グリコール及び環状カーボネートを含み、方法は更に、
第1グリコールフラクションを分離して、第2グリコールフラクション及び環状カーボネートフラクションを回収し、
環状カーボネートフラクションを第2反応ゾーンに再循環させる
ことを含み;
ジアリールカーボネートフラクションが、ジアリールカーボネート、エチルアリールカーボネート、アリールヒドロキシル化合物及び反応副生成物を含み、方法は更に
ジアリールカーボネートフラクションを分離して、ジアリールカーボネート生成物フラクション、ジアリールカーボネートより重質の化合物を含む反応副生成物フラクション、及びエチルアリールカーボネート及びアリールヒドロキシル化合物の少なくとも1つを含む少なくとも1つの再循環フラクションを回収し、
少なくとも1つの再循環を第4反応ゾーンに再循環させる
ことを含み;
第1エタノールフラクションが、エタノール及びジエチルカーボネートを含み、方法は更に、
第1エタノールフラクションを分離して、第3エタノールフラクション及び第4ジエチルカーボネートフラクションを回収し、
第4ジエチルカーボネートフラクションを第3反応ゾーンに再循環させ、
第3エタノールフラクションの少なくとも一部を第2反応ゾーンに再循環される第1エタノールフラクションの少なくとも一部として供給する;
ことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
第2グリコールフラクションの少なくとも一部を脱水して、エポキシド及び水を形成し;
エポキシドから水を分離し;
エポキシドの少なくとも一部を第1反応ゾーンに再循環させる;
ことを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第2、第3及び第4反応ゾーの少なくとも1つが、接触蒸留反応器システムを含み、少なくとも1つの接触蒸留反応器システムが、蒸気−液体分離を促進し、蒸気−液体トラフィックを接触蒸留反応器システム内に向ける内部熱交換デバイスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
第2反応ゾーン、第3反応ゾーン及び第4反応ゾーンの少なくとも1つが、触媒長寿を促進し、触媒汚損を制限するように配置された2つ以上のエステル交換触媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
2つ以上のエステル交換触媒が、異なる活性金属成分、異なる担体組成及び異なる担体特性の少なくとも1つを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
エタノールに関して本質的に閉ループで運転する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
第1反応ゾーンにおいて、アンモニア及び二酸化炭素を反応させて、尿素を含む第1反応生成物を形成し;
第2反応ゾーンにおいて、第1エステル交換触媒の存在下で、尿素をエタノールとエステル交換して、ジエチルカーボネート及びアンモニアを含む第2反応生成物を形成し;
第2反応生成物を分離して、第1ジエチルカーボネートフラクション及び第1アンモニアフラクションを回収し;
第3反応ゾーンにおいて、第2エステル交換触媒の存在下で、第1ジエチルカーボネートフラクションの少なくとも一部をアリールヒドロキシ化合物とエステル交換して、エチルアリールカーボネート及びエタノールを含む第3反応生成物を形成し;
第3反応生成物を分離して、エチルアリールカーボネートフラクション及びエタノールフラクションを回収し;
第4反応ゾーンにおいて、不均化触媒の存在下で、エチルアリールカーボネートフラクションの少なくとも一部を不均化して、ジアリールカーボネート及びジエチルカーボネートを含む第4反応生成物を形成し;
第4反応生成物を分離して、ジアリールカーボネートフラクション及び第2ジエチルカーボネートフラクションを回収し;
エタノールフラクションの少なくとも一部を第2反応ゾーンに再循環させ;
第2ジエチルカーボネートフラクションの少なくとも一部を第3反応ゾーンに再循環させる;
ことを含む、ジアリールカーボネートの製造方法。
【請求項17】
アンモニアフラクションの少なくとも一部を、第1反応ゾーンに再循環させることを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
第1エステル交換触媒及び第2エステル交換触媒が、各々独立して固体エステル交換触媒、可溶性有機金属化合物及びその組合せの少なくとも1つを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
第1エステル交換触媒が、固体エステル交換触媒を含み、更に微量の可溶性有機金属化合物を第2反応ゾーンに供給することを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
可溶性有機金属化合物を、反応物質の全重量に基づいて1ppm〜200ppmの範囲の割合で供給する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
第2エステル交換触媒が、固体エステル交換触媒を含み、更に微量の可溶性有機金属化合物を第3反応ゾーンに供給することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
可溶性有機金属化合物を、反応物質の全重量に基づいて1ppm〜200ppmの範囲の割合で供給する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
第3反応ゾーン中の水の濃度を、1重量ppm〜600重量ppmの範囲に維持することを更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
固体エステル交換触媒及び可溶性有機金属化合物が、各々独立してII族〜VI族元素の少なくとも1つを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
請求項16に記載の方法であって、
第2反応ゾーンが、
尿素の少なくとも一部をエタノールとエステル交換してエチルカルバメート及びアンモニアを含む第5反応生成物を形成するための触媒を含むまたは含まない第1尿素蒸留反応ゾーン、
第5反応生成物中のエチルカルバメートを、エタノールとエステル交換してジエチルカーボネート及びアンモニアを含む第6反応生成物を形成するための接触蒸留反応器システムを含む第2尿素反応ゾーン、及び
第5及び第6反応生成物を分離して第1ジエチルカーボネートフラクション及びアンモニアフラクションを回収するための1つ以上の蒸留カラム
を含み;
第3反応ゾーンが、ジエチルカーボネートをアリールヒドロキシル化合物とエステル交換すると同時に第3反応生成物を分離するための接触蒸留反応器システムを含み;
第4反応ゾーンが、エチルアリールカーボネートを不均化すると同時に第4反応生成物を分離するための接触蒸留反応器システムを含み;
第1ジエチルカーボネートフラクションが、ジエチルカーボネート及びエタノールを含み、方法は更に
第1ジエチルカーボネートフラクションを分離して、第3ジエチルカーボネートフラクション及び第2エタノールフラクションを回収し、
第2エタノールフラクションを第2反応ゾーンに再循環させる
ことを含み;
第1グリコールフラクションが、グリコール及び環状カーボネートを含み、方法は更に
第1グリコールフラクションを分離して、第2グリコールフラクション及び環状カーボネートフラクションを回収し、
環状カーボネートフラクションを第2反応ゾーンに再循環させる
ことを含み;
ジアリールカーボネートフラクションが、ジアリールカーボネート、エチルアリールカーボネート、アリールヒドロキシル化合物及び反応副生成物を含み、方法は更に
ジアリールカーボネートフラクションを分離して、ジアリールカーボネート生成物フラクション、ジアリールカーボネートより重質の化合物を含む反応副生成物フラクション、及び少なくとも1つのエチルアリールカーボネート及びアリールヒドロキシル化合物の少なくとも1つを含む再循環フラクションを回収し、
少なくとも1つの再循環を第4反応ゾーンに再循環させる;
ことを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
第2、第3及び第4反応ゾーンの少なくとも1つが、接触蒸留反応器システムを含み、少なくとも1つの接触蒸留反応器システムが、蒸気−液体分離を促進し、蒸気−液体トラフィックを接触蒸留反応器システム内に向ける内部熱交換デバイスを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
第2反応ゾーン、第3反応ゾーン及び第4反応ゾーンの少なくとも1つが、触媒長寿を促進し、触媒汚損を制限するように配置された2つ以上のエステル交換触媒を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
2つ以上のエステル交換触媒が、異なる活性金属成分、異なる担体組成及び異なる担体特性の少なくとも1つを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
エタノールに関して本質的に閉ループで運転する、請求項16に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
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【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公表番号】特表2013−500968(P2013−500968A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522886(P2012−522886)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/042292
【国際公開番号】WO2011/014374
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/042292
【国際公開番号】WO2011/014374
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】
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