説明

ジブクレーンのブレーキ装置

【課題】吊荷用フックが見えない状況でもその実際の降下速度を確実に把握し得、ブレーキペダル操作を伴う作業を円滑に行うことができるジブクレーンのブレーキ装置を提供する。
【解決手段】吊荷用ウインチ11の回転速度ωを検出する回転速度検出手段17と、該回転速度検出手段17で検出された吊荷用ウインチ11の回転速度ωに応じてブレーキペダル19に振動を与える振動付与手段20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジブクレーンのブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図2はジブクレーンの一例を示す側面図であって、図2中、1は無端状のクローラ2を備えた走行体、3は走行体1の上部に旋回自在に設置された旋回体、4は旋回体3の前部に起伏自在に枢着されたジブ、5はAフレームである。
【0003】
前記Aフレーム5は、下端を旋回体3の後方側に支持されて立設された垂直フレーム5aと、下端を旋回体3の前方側に支持されて前記垂直フレーム5a上端側へ斜め上方へ向けて延在し、上端を垂直フレーム5aの上端に接続された傾斜フレーム5bとを備えている。
【0004】
又、図2中、6はAフレーム5の上端に設けられたシーブブロック、7は先端をジブ4の先端上部に接続されたジブ支持索8に接続されたシーブブロック、9は旋回体3に配置されたジブ起伏ウインチ、10はジブ起伏ウインチ9により巻取り・繰出し可能で且つシーブブロック6,7間に掛け回されたジブ4の起伏用ワイヤロープ、11は旋回体3に配置された吊荷用ウインチ、12は吊荷用ウインチ11により巻取り・繰出し可能で且つシーブブロック13,14,15に掛け回された吊荷用ワイヤロープ、16は吊荷用ワイヤロープ12が掛け回されるシーブブロック15と一体に設けられ且つジブ4の先端から吊り下げられた吊荷用フックであり、前記ジブ起伏ウインチ9により起伏用ワイヤロープ10の巻取り・繰出しを行うことによってジブ4を起伏させる一方、前記吊荷用ウインチ11により吊荷用ワイヤロープ12の巻取り・繰出しを行うことによって吊荷用フック16を昇降させるようになっている。
【0005】
そして、基礎工事等に用いられる杭工法の一つとしてオールケーシング工法と称されるものがあり、該オールケーシング工法は、図2に示される如く、地盤G中に全周回転駆動装置Aを用いて鋼管からなるケーシングCを圧入し、前記ジブクレーンのジブ4先端から吊り下げられた吊荷用フック16にハンマーグラブHを吊り下げ、該ハンマーグラブHをケーシングC内に降下させ、シェルSを開閉させて地中掘削、排土作業を行い、前記ハンマーグラブHによる地中掘削、排土作業にて所定の深さに達したら、図示していない鉄筋かごを前記ケーシングC内に挿入し、トレミー管(図示せず)によりコンクリートを打設した後、前記トレミー管及びケーシングCを引抜いて回収するようにした工法である。
【0006】
尚、前記オールケーシング工法に用いられる装置と関連する一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−138394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前述の如きオールケーシング工法において、オペレータは前記吊荷用ウインチ11のブレーキ装置のブレーキペダルを操作しながら、前記吊荷用フック16から吊り下げられたハンマーグラブHをケーシングC内に降下させる作業を行うが、該ケーシングC内のハンマーグラブHはオペレータから全く見えないため、ハンマーグラブHがどれくらいの速度で降下しているか判らず、オペレータは、前記吊荷用ウインチ11のブレーキ装置のブレーキペダル操作を、前記吊荷用ワイヤロープ12の動きや吊荷用ウインチ11自体の動きを注視しながら行っているのが現状であった。
【0009】
しかしながら、前記吊荷用ワイヤロープ12の動きは見にくく、又、吊荷用ウインチ11自体の動きを見るためにはオペレータが後方を向く必要があり、これらの動きから前記ハンマーグラブHの実際の降下速度を把握することは難しく、改善が望まれていた。
【0010】
本発明は、斯かる実情に鑑み、吊荷用フックが見えない状況でもその実際の降下速度を確実に把握し得、ブレーキペダル操作を伴う作業を円滑に行うことができるジブクレーンのブレーキ装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、旋回体に、ジブを起伏自在に枢着すると共に、該ジブの先端から吊り下げられた吊荷用フックを吊荷用ワイヤロープの巻取り・繰出しを行うことによって昇降させる吊荷用ウインチを設け、該吊荷用ウインチの回転をブレーキペダル操作により制動・制動解除するよう構成したジブクレーンのブレーキ装置において、
前記吊荷用ウインチの回転速度を検出する回転速度検出手段と、
該回転速度検出手段で検出された吊荷用ウインチの回転速度に応じてブレーキペダルに振動を与える振動付与手段と
を備えたことを特徴とするジブクレーンのブレーキ装置にかかるものである。
【0012】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0013】
例えば、オペレータが前記吊荷用ウインチのブレーキ装置のブレーキペダルを操作しながら、前記吊荷用フックから吊り下げられたハンマーグラブをケーシング内に降下させる作業を行うオールケーシング工法においては、該ケーシング内のハンマーグラブはオペレータから全く見えないが、この作業中、回転速度検出手段により吊荷用ウインチの回転速度が検出され、該回転速度検出手段で検出された吊荷用ウインチの回転速度に応じて振動付与手段によりブレーキペダルに振動が与えられ、該ブレーキペダルから伝わる足の感触によりオペレータは、ハンマーグラブがどれくらいの速度で降下しているか把握することが可能となるため、オペレータは、前記吊荷用ウインチのブレーキ装置のブレーキペダル操作を、前記吊荷用ワイヤロープの動きや吊荷用ウインチ自体の動きを注視しなくても行うことが可能となる。
【0014】
前記ジブクレーンのブレーキ装置においては、前記振動付与手段を、
前記回転速度検出手段で検出された吊荷用ウインチの回転速度に応じた電気信号を出力するコントローラと、
前記ブレーキペダルに取り付けられ且つ前記コントローラから出力される電気信号により前記回転速度が遅い時はプッシュプルロッドの出入回数が少なく前記回転速度が速い時はプッシュプルロッドの出入回数が多くなるよう駆動されて前記ブレーキペダルを叩くプッシュプルソレノイドと
から構成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のジブクレーンのブレーキ装置によれば、吊荷用フックが見えない状況でもその実際の降下速度を確実に把握し得、ブレーキペダル操作を伴う作業を円滑に行うことができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例を示す概要構成図である。
【図2】ジブクレーンによるオールケーシング工法を用いた掘削作業を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0018】
図1は本発明の実施例であって、図中、図2と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図2に示す従来のものと同様であるが、本実施例の特徴とするところは、図1に示す如く、吊荷用ウインチ11の回転速度ωを検出する回転速度検出手段17と、該回転速度検出手段17で検出された吊荷用ウインチ11の回転速度ωに応じて吊荷用ウインチ11のブレーキ装置18のブレーキペダル19に振動を与える振動付与手段20とを備えた点にある。
【0019】
本実施例の場合、前記吊荷用ウインチ11は、軸受21にて回転自在に支持され且つ吊荷用ワイヤロープ12が巻付けられたウインチドラム22を、油圧モータ又は電動モータ等の回転駆動装置23により減速機24を介して回転駆動するようにしてなる構成を有しており、前記吊荷用ウインチ11のブレーキ装置18は、前記ウインチドラム22の外周面所要箇所にブレーキ用ディスク25を取り付け、該ブレーキ用ディスク25の周縁部を把持・開放可能なブレーキシリンダ26を配設し、該ブレーキシリンダ26に対し油圧ユニット27で循環される圧油を、前記ブレーキペダル19の操作と連動するブレーキバルブ28の切換により給排可能とし、該ブレーキペダル19をオペレータが踏み込むと、前記油圧ユニット27で循環される圧油がブレーキバルブ28を介してブレーキシリンダ26へ供給され、該ブレーキシリンダ26にてブレーキ用ディスク25の周縁部が把持され前記吊荷用ウインチ11の制動が行われる一方、前記ブレーキペダル19からオペレータが足を離すと、前記ブレーキシリンダ26へ供給されていた圧油がブレーキバルブ28を介して油圧ユニット27のタンク側へ排出され、該ブレーキシリンダ26によるブレーキ用ディスク25の周縁部の把持が開放され前記吊荷用ウインチ11の制動が解除されるようにしてなる構成を有している。
【0020】
一方、前記回転速度検出手段17としては、前記ウインチドラム22のフランジ部の周縁部に対向配置した近接センサ17Aを用いるようにしてあり、該ウインチドラム22のフランジ部の周縁部に、その周方向へ所要ピッチで凸部(或いは凹部)(図示せず)を形成し、前記ウインチドラム22の回転時に前記凸部(或いは凹部を形成していない部分)を近接センサ17Aで検出することにより、吊荷用ウインチ11の回転速度ωを検出するようにしてある。この場合、前記ウインチドラム22のフランジ部の周縁部に、その周方向へ所要ピッチで凸部(或いは凹部)を形成する代わりに、歯車と同様の歯を刻設し、該歯の部分を近接センサ17Aで検出することにより、吊荷用ウインチ11の回転速度ωを検出することも可能である。又、前記ウインチドラム22のフランジ部の周縁部に、その周方向へ所要ピッチで磁石を取り付け、その磁場をセンサで検出することにより、吊荷用ウインチ11の回転速度ωを検出することも可能である。尚、前記回転速度検出手段17としては、近接センサ17Aの代わりに、ロータリーエンコーダを前記ウインチドラム22の軸部に設けるようにしても良い。
【0021】
又、前記振動付与手段20は、前記回転速度検出手段17で検出された吊荷用ウインチ11の回転速度ωに応じた電気信号Eを出力するコントローラ29と、前記ブレーキペダル19に取り付けられ且つ前記コントローラ29から出力される電気信号Eにより前記回転速度ωが遅い時はプッシュプルロッド30aの出入回数が少なく前記回転速度ωが速い時はプッシュプルロッド30aの出入回数が多くなるよう駆動されて前記ブレーキペダル19を叩くプッシュプルソレノイド30とから構成してある。
【0022】
次に、上記実施例の作用を説明する。
【0023】
例えば、オペレータが前記吊荷用ウインチ11のブレーキ装置18のブレーキペダル19を操作しながら、前記吊荷用フック16から吊り下げられたハンマーグラブHをケーシングC内に降下させる作業を行うオールケーシング工法においては、該ケーシングC内のハンマーグラブHはオペレータから全く見えないが、この作業中、回転速度検出手段17としての近接センサ17Aにより吊荷用ウインチ11の回転速度ωが検出され、該回転速度検出手段17としての近接センサ17Aで検出された吊荷用ウインチ11の回転速度ωに応じた電気信号Eが振動付与手段20を構成するコントローラ29からプッシュプルソレノイド30へ出力され、該プッシュプルソレノイド30は、前記回転速度ωが遅い時はプッシュプルロッド30aの出入回数が少なくなるよう駆動されて前記ブレーキペダル19を叩く一方、前記回転速度ωが速い時はプッシュプルロッド30aの出入回数が多くなるよう駆動されて前記ブレーキペダル19を叩く形となる。
【0024】
この結果、前記振動付与手段20を構成するコントローラ29及びプッシュプルソレノイド30によりブレーキペダル19に振動が与えられ、該ブレーキペダル19から伝わる足の感触によりオペレータは、ハンマーグラブHがどれくらいの速度で降下しているか把握することが可能となるため、オペレータは、前記吊荷用ウインチ11のブレーキ装置18のブレーキペダル19の操作を、前記吊荷用ワイヤロープの動きや吊荷用ウインチ11自体の動きを注視しなくても行うことが可能となる。
【0025】
こうして、吊荷用フック16が見えない状況でもその実際の降下速度を確実に把握し得、ブレーキペダル19の操作を伴う作業を円滑に行うことができる。
【0026】
尚、本発明のジブクレーンのブレーキ装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0027】
3 旋回体
4 ジブ
11 吊荷用ウインチ
12 吊荷用ワイヤロープ
16 吊荷用フック
17 回転速度検出手段
17A 近接センサ
18 ブレーキ装置
19 ブレーキペダル
20 振動付与手段
22 ウインチドラム
23 回転駆動装置
24 減速機
25 ブレーキ用ディスク
26 ブレーキシリンダ
27 油圧ユニット
28 ブレーキバルブ
29 コントローラ
30 プッシュプルソレノイド
30a プッシュプルロッド
C ケーシング
E 電気信号
H ハンマーグラブ
ω 回転速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回体に、ジブを起伏自在に枢着すると共に、該ジブの先端から吊り下げられた吊荷用フックを吊荷用ワイヤロープの巻取り・繰出しを行うことによって昇降させる吊荷用ウインチを設け、該吊荷用ウインチの回転をブレーキペダル操作により制動・制動解除するよう構成したジブクレーンのブレーキ装置において、
前記吊荷用ウインチの回転速度を検出する回転速度検出手段と、
該回転速度検出手段で検出された吊荷用ウインチの回転速度に応じてブレーキペダルに振動を与える振動付与手段と
を備えたことを特徴とするジブクレーンのブレーキ装置。
【請求項2】
前記振動付与手段を、
前記回転速度検出手段で検出された吊荷用ウインチの回転速度に応じた電気信号を出力するコントローラと、
前記ブレーキペダルに取り付けられ且つ前記コントローラから出力される電気信号により前記回転速度が遅い時はプッシュプルロッドの出入回数が少なく前記回転速度が速い時はプッシュプルロッドの出入回数が多くなるよう駆動されて前記ブレーキペダルを叩くプッシュプルソレノイドと
から構成した請求項1記載のジブクレーンのブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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