ジペプチジルペプチダーゼ関連の疾患状態の診断および予後
患者試料から識別されたジペプチジルジペプチダーゼのパラメータの測定および疾患と前記パラメータの相関を用いた疾患状態の診断または予後の方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照によりその全内容が本明細書に組み込まれている、2006年3月13日出願の米国仮出願第60/781924号、名称「Method of Diagnosing Disease by Isoform Profiling」、2006年6月9日出願の米国仮出願第60/804397号、名称「Separation and Characterization of Dipeptidyl Peptidase IV Isoforms Using Free Flow Electrophoresis (FFE)」、および2007年3月2日出願の米国仮出願出願番号不明(整理番号P−7148)、名称「Separation and Characterization of Dipeptidyl Peptidase IV Isoforms and/or Isozymes Using Matrix (Free Flow) Electrophoresis」の出願日の権利を主張する。
【0002】
本発明は、概ね、疾患または病状の診断および予後に関する。
【背景技術】
【0003】
疾患のリスク評価または診断の現法は、しばしば、除去の過程である摩耗による診断、または侵襲的手術もしくは生検による診断に依存している。確定診断を得た後でさえ、予後は、通常、主観的要因に基づいている。
【0004】
代謝病などのある種の疾患では、客観的な診断を行うことができる方法がしばしば厄介であり、時間がかかり、そして費用もかかる。例えば、2型糖尿病を診断する第1の方法は、血漿中の血糖レベルを評価する空腹時血漿中ブドウ糖試験である。この試験では、患者が8〜14時間絶食する必要があり、しばしば、何時間かの間から何日間かの間に複数回の採血を必要とする。加えて、空腹時血漿中ブドウ糖試験は2型糖尿病の存在を診断するのには有用であるが、この試験は疾患予後を予測する能力が極めて制限されている。
【0005】
医学では、疾患または病状を診断および治療するための、より非侵襲的であり、肉体的負担が少なく、かつより正確な方法を常に探求している。生物学的過程の理解が拡大し、これらの過程に関連している生化学が明らかになるにつれて、特定の疾患または病状のマーカーまたは指示体として、どの組成物が同定され得るかに関するある種の理論が発展した。プロテアーゼおよびペプチダーゼを、クラスとして、それらの、診断における有用性および患者を治療するための標的としての有用性に関して調査した。
【0006】
一般的背景として、プロテアーゼ/ペプチダーゼは、通常、作用部位、基質選択性、および作用機序など、多くの判定規準によって分類されている。例えば、アミノペプチダーゼは、選択的に、ポリペプチドのN末端残基で作用し、カルボキシペプチダーゼは、選択的に、C末端で作用し、そして、エンドペプチダーゼは、これらの2つの末端の間の部位で作用する。
【0007】
ジペプチジルペプチダーゼ(DPP)は、それらの特異的基質から、ジペプチドユニット、すなわち2アミノ酸ユニットを特異的に切り出すペプチダーゼである。多くの異なったDPPが存在し、基質選択性はしばしば、切断部位のすぐN末端側のアミノ酸残基で表現される。例えば、DPP−I(IUBMB酵素命名法EC.3.4.14.1)は、XaaがArgもしくはLysであるか、またはYaaもしくはZaaがProである場合を除いて、N末端ジペプチドXaa−Yaa−|−Zaaを放出するリソソームシステイン型ペプチダーゼである。DPP−II(IUBMB酵素命名法EC.3.4.14.2)は、YaaがAlaまたはproである場合に優先的に、N末端ジペプチドXaa−Yaa−|−を放出するリソソームセリン型ペプチダーゼである。DPP−III(IUBMB酵素命名法EC.3.4.14.4)は、ペプチドに広範な活性を有するサイトゾルペプチダーゼであるが、Zが任意のアミノ酸である場合、pH9.2で、Arg−Arg−Zへの強い選択性を示す。DPP−IV(IUBMB酵素用語体系EC.3.4.14.4)は、Zaaがproでもヒドロキシプロリンでもないという条件で、Yaaがproである場合に優先的に、Xaa−Yaa−|−ZaaからN末端ジペプチドを放出する膜結合セリン型ペプチダーゼである。
【0008】
DPPは、生理的に重要な広範な活性に関与しており、神経系、内分泌系、免疫系、および消化系の調節と関連付けられている。DPP活性は、タンパク質分解および酵素活性化など、多数の細胞内機能および細胞外機能で実証されている。
【0009】
前述した特定のDPPに関しては、DPP−IVならびにそれに関連したアイソフォームおよびアイソザイムまたは構造類似体、ならびにDPP−IV様の活性を示すタンパク質が広範に研究されている。DPP−IV様の活性を示すタンパク質は、ジペプチジルペプチダーゼIV活性および/または構造類似体、または「DASH」と呼ばれている。DPP−IVは、限定されるものではないが、DPP4、DP4、DAP−IV、FAPβアデノシンデアミナーゼ複合タンパク質2、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(ADAbp)、ジペプチジルアミノペプチダーゼIV;Xaa−Pro−ジペプチジル−アミノペプチダーゼ;Gly−Proナフチルアミダーゼ;ポストプロリンジペプチジルアミノペプチダーゼIV;リンパ球抗原CD26;糖タンパク質GP110;ジペプチジルペプチダーゼIV;グリシルプロリンアミノペプチダーゼ;グリシルプロリンアミノペプチダーゼ;X−プロリルジペプチジルアミノペプチダーゼ;pepX;白血球抗原CD26;グリシルプロリルジペプチジルアミノペプチダーゼ;ジペプチジル−ペプチドヒドロラーゼ;グリシルプロリルアミノペプチダーゼ;ジペプチジルアミノペプチダーゼIV;DPP IV/CD26;アミノアシル−プロリルジペプチジルアミノペプチダーゼ;T細胞誘発分子Tp103;X−PDAP(Burgessら、特許文献1参照)を含めた多くの名前で呼ばれているII型膜タンパク質である。
【0010】
セプラーゼ、線維芽細胞活性化タンパク質α、DPP6、DPP8、DPP9、アトラクチン、N−アセチル化−α−結合酸性ジペプチダーゼI、II、およびL、静止細胞プロリンジペプチダーゼ、胸腺特異的セリンプロテアーゼ、ならびにDPP IV−βなど、多数のDASHタンパク質が報告されている(非特許文献1参照)。
【0011】
DPP−IVは、腸、肝臓、肺、腎臓、および胎盤を含めた様々な異なった組織の上皮細胞および内皮細胞上で構成的に発現される(非特許文献2、3参照)。DPP−IVは、循環Tリンパ球上で発現されており、細胞表面抗原であるCD−26と同義であることが示されている(非特許文献4参照)。膜結合型に加えて、DPP−IVは可溶型でも存在し、DPP−IV活性は血液血漿および滑液などの体液中で見出すことができる(非特許文献4、5参照)。
【0012】
DPP−IVは、神経ペプチド代謝、T細胞活性化、細胞接着、腎臓および腸でのプロリン含有ペプチドの消化、HIV感染およびアポトーシス、ならびにある種のメラノーマ細胞の腫瘍形成能の調節で重要な役割を果たしていると考えられている(非特許文献6、7参照)。
【0013】
DPP−IVの天然基質には、数種のケモカイン、サイトカイン、神経ペプチド、循環ホルモン、および生理活性ペプチドが含まれる(非特許文献8参照)。DPP−IVは、ペプチドホルモンの代謝およびアミノ酸輸送の調節における主要な役割が示唆されている(非特許文献9参照)。
【0014】
DPP−IV発現は、分裂促進性または抗原性の刺激で、T細胞で増大するが、これは免疫系での役割を示唆している(非特許文献6参照)。サイトカイン産生、IL−2媒介細胞増殖、およびB細胞ヘルパー活性などのTリンパ球の他の様々な機能も、DPP−IV活性に依存していることが示されている(非特許文献10参照)。加えて、DPP−IVは、T細胞活性化中および増殖中に同時刺激機能を有するようである(非特許文献11参照)。
【0015】
DPP−IVは、細胞外酵素であるアデノシンデアミナーゼ(ADA)を局在化させるための膜固定化機能(非特許文献12参照)、ならびにコラーゲンおよびフィブロネクチンへの結合による細胞マトリックス結合への参加(非特許文献13参照)を含めた他の生物学的過程に関与している。
【0016】
DPP−IVは、内分泌調節および代謝生理における役割も演じていると考えられている。例えば、DPP−IVは、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)のアミノ末端His−Alaジペプチドを切断して、GLP−1受容体アンタゴニストを生成し、それによって、GLP−1に対する生理反応を短縮する。DPP−IVは、その基質にインシュリン分泌性ホルモンGLP−1および胃抑制ペプチド(GIP)が含まれ、これらは、それらのN末端アミノ酸2残基が除去されることによって不活性化されるので、グルコース代謝の制御に関係付けられている(非特許文献14参照)。
【0017】
正常な生理機能に加えて、DPPは、癌、自己免疫疾患、心臓血管疾患、代謝病、および感染性疾患を含めた疾患状態におけるそれらの役割が研究されている。
【0018】
例えば、DPP−IVは肺転移性乳癌細胞および前立腺癌細胞の接着分子であることが示唆されている(非特許文献15参照)。良性前立腺肥大症を有する患者からの組織ホモジネート中、およびプロスタトソーム(prostatosome)中で高DPP−IV活性が見出されている(非特許文献16参照)。
【0019】
自己免疫疾患である乾癬、関節リウマチ(RA)、および扁平苔癬の患者からのヒト皮膚線維芽細胞で高レベルのDPP−IV発現が見出されている(非特許文献17参照)。
【0020】
DPP−IVは、肥満および食欲調節など、多くの代謝病に関連している。例えば、より広範に研究されているDPP−IV関連代謝病の1つが2型糖尿病である。Mannucciらは、糖尿病における慢性高血糖とDDP−IVとの間の相関関係を定義し、記述している。この研究は、循環DPP−IV活性がII型糖尿病における高血糖の度合いと直接的に相関していると結論付けている。
【0021】
他の研究は、DPP−IVと、血糖レベルを調節するホルモンカスケードに関与する様々なホルモンとの間の相関を論じている。これらの研究は、インシュリン分泌に重要なホルモンをDPP−IVが分解すると結論付けている。詳細には、DPP−IVがグルカゴン様1ペプチド(GLP−1)を分解し、その結果、インシュリン分泌の低減がもたらされ、それゆえに血糖の増大がもたらされると示唆されている。この現象に基づいて、II型糖尿病の治療用にDPP−IVの阻害剤が開発されている(非特許文献18参照)。
【0022】
DPP−IVは、CD4+T細胞におけるHIV−1およびHIV−2ウイルスの侵入および感染性に明らかに必須である(非特許文献19参照)。したがって、DPP−IVの抑制が、この機構も抑制するかもしれないという示唆がいくらかある。
【0023】
【特許文献1】米国特許第7169926号明細書
【非特許文献1】Busek et al., Int. J. Biochem. Cell Biol. 36:408-421 (2004)
【非特許文献2】Hartel et al., Histochemistry 89(2):151-161 (1988)
【非特許文献3】Yaron and Naider, Critical Rev. Biochem. Mol. Biol. 28(1):31-81 (1993)
【非特許文献4】Sedo et al., Arthritis Res. Ther. 7:253-269 (2005)
【非特許文献5】Gorrell, Clinical Sci. 108:277-292 (2005)
【非特許文献6】Mattem et al., Scand. J. Immunol. 33:737 (1991)
【非特許文献7】Pethiyagoda et al., Clin. Exp. Metastasis 18(5):391-400 (2000)
【非特許文献8】Lambeir et al., J. Biol. Chem. 276(32):29839-29845 (2001)
【非特許文献9】Hildebrandt et al., Clin. Sci. (Lond.) 99(2):93-104 (2000)
【非特許文献10】Schon et al., Scand. J. Immunol. 29:127 (1989)
【非特許文献11】von Bonin et al., Immunol. Rev. 161:43-53 (1998)
【非特許文献12】Franco et al., Immunol. Rev. 161: 27-42 (1998)
【非特許文献13】Loster et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 217(1):341-348 (1995)
【非特許文献14】Mannucci et al., Diabetologia 48:1168-1172 (2005)
【非特許文献15】Johnson et al., J. Cell. Biol. 121:1423 (1993)
【非特許文献16】Vanhoof et al., Eur. J. Clin. Chem. Clin. Biochem. 30:333 (1992)
【非特許文献17】Raynaud et al., J. Cell. Physiol. 151:378 (1992)
【非特許文献18】Green et al., Diab. Vasc. Dis. Res. 3(3):159-165 (2006)
【非特許文献19】Wakselman et al., J. Dermatol. Sci. 22:152-160 (2000)
【非特許文献20】DiCarlantonio et al., Gamete Res. 15(2):161 175 (2005)
【非特許文献21】Mazzocco et al., FEBS Journal 273(5):1056 1064 (2006)
【非特許文献22】Schmauser et al., Glycobiol. 9(12):1295 1305 (1999)
【非特許文献23】Harrison's Principles of Internal Medicine
【非特許文献24】Zuo et al., Analytical Biochem. 284:266-278 (2000)
【非特許文献25】Becker et al., J. Micromech. Microeng. 8:24 28 (1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
最近、DPP研究のいくつかの道筋が、DPP関連の疾患状態および病状の処置および治療を開発する手段として、DPPレベルの操作に焦点を合わせた。しかし、これまでのところ、この研究からはわずかな処置および治療しか得られていない。
【課題を解決するための手段】
【0025】
DPPに基づいた治療および診断手段の開発、ならびに生物学的過程におけるその役割が依然として求められている。ここに記載する本発明の実施形態は、DPP関連の疾患状態または病状の予後または診断の方法を対象としている。詳細には、特定のDPPの識別された部分の1つまたは複数のパラメータを測定し、上記測定を、上記疾患状態または病状の存在、不在、または重度と相関させる。
【0026】
ここに記載する本発明の別の実施形態は、DPP関連の疾患状態または病状の予後または診断の方法を対象としている。詳細には、DPPアイソフォームの識別された部分の1つまたは複数のパラメータを測定し、上記測定を、上記疾患状態または病状の存在、不在、または重度と相関させる。
【0027】
記載する発明の別の実施形態は、II型糖尿病の診断または予後の方法を対象としている。詳細には、患者試料から得られたDPP−IVアイソフォームの1つまたは複数の識別された部分の少なくとも1つのパラメータを測定し、上記測定をII型糖尿病の存在、不在、または重度と相関させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本明細書に記載の方法は、ジペプチジルペプチダーゼ(DPP)関連の疾患状態または病状のリスク評価、診断、または予後を提供する。詳細には、記載の方法は、特定のDPPパラメータに関連した疾患状態または病状のリスク評価、診断、または予後の方法に関する。記載の方法の実施形態によれば、識別されたDPP部分のパラメータが測定される。上記測定は、その後、前記疾患状態または病状の存在、不在、または重度と相関される。
【0029】
この出願の目的では、「プロテアーゼ」および「ペプチダーゼ」という用語は同義的に使用され、ペプチドアミド結合の加水分解を触媒する酵素を指す。ジペプチジルペプチダーゼ(DPP)は、ポリペプチドからジペプチドユニットを切り出すプロテアーゼである。
【0030】
本明細書で使用される場合、「特定のDPPの識別された部分」という用語は、何らかの方法でお互いから識別、分離、または単離された、患者試料から得られた特定のDPP(例えば、特定のDPPファミリー、例えば、DPP−I、DPP−II、DPP−III、DPP−IVなどからの1つまたは複数のアイソフォーム)を指す。
【0031】
一実施形態では、上記特定のDPPの少なくとも1つのアイソフォームを、上記DPPの他の少なくとも1つのアイソフォームから識別するであろう何らかの病状に上記特定のDPPを曝露する。識別された部分のそれぞれが特定のDPPの1つまたは複数のDPPアイソフォームを含有してもよく、また、一部の部分がDPPアイソフォームを含有しなくてもよい。別の実施形態では、DPP(1ファミリーまたは複数のファミリーのDPPが含まれてもよい)を、上記DPPの他の少なくとも1つのアイソフォームから上記DPPの少なくとも1つのアイソフォームを識別するであろう何らかの病状に曝露する。
【0032】
詳細には、完全に、または部分的のみに部分に、そして互いから個々のDPPアイソフォームを識別できる。したがって、1つの識別された部分が1つまたは複数のアイソフォームを含有してもよく、あるいは識別された部分のそれぞれが1つのアイソフォームのみを含有してもよい。同様に、1つの識別された部分が1つのアイソフォームを含有してもよく、一方で、他の識別された部分が複数のアイソフォームを含有している。加えて、一部の識別された部分は、1つまたは複数の他の部分が1つまたは複数のDPPアイソフォームを含有している限り、DPPアイソフォームを含有しないでもよい。
【0033】
上記特定のDPPは、DPP−I、DPP−II、DPP−III、またはDPP−IVを含めたいかなる特定のDPPファミリーまたはDASHファミリーの一員でもよい。例示的実施形態では、DPPがDPP−IVである。特定のDPPと指定されていないDPPには、特定のものではないDPPと特定のDPPとの両方が含まれる。
【0034】
本明細書で使用される場合、DPPの「アイソフォーム」という用語は、何らかの物理的な方法で相違しているが、すべてが共通の特徴的触媒活性、相同な一次構造/アミノ酸配列を有するか、または同一の遺伝子座に由来する1つまたは複数のDPP酵素の複数の形態のうちの任意のものを指す。DPPアイソフォームの触媒活性は、触媒の程度または速度が同一である必要はなく、共通の基質プロフィールのみでよい。同様に、アイソフォームの一次構造が同一である必要はなく、その酵素のアミノ酸配列における小さな付加、欠失、または変異の結果生じたものでもよい。
【0035】
アイソフォームは、類似または同一の一次構造を有してもよく、同じ触媒活性を有しても、異なった1つまたは複数の触媒活性を有してもよい。アイソフォームの一次構造は、同じ触媒活性を保持しながら、有意に異なっていることもある。アイソフォームは、同じか、または異なった二次構造、三次構造、および/または四次構造を有してもよいが、それらが同一または類似の一次構造および/または酵素活性を保持し、かつ/または同一の遺伝子座に由来する限り、それらは依然としてお互いのアイソフォームである。
【0036】
アイソフォームは、同一の遺伝子座に由来しても、異なった遺伝子座に由来してもよい。それらは異なった対立遺伝子、複数の遺伝子座、または同一の遺伝子から産生されたメッセンジャーRNAの選択的スプライシングの結果でも、または、多糖、リン酸、スルフヒドリル、シアル酸、または他の基の添加などの翻訳後修飾の結果でもよい。
【0037】
本明細書で使用される場合、「アイソフォーム」にはアイソザイムも含まれる。本明細書で使用される場合、「アイソザイム」(あるいはイソ酵素)という用語は、アイソフォームの1タイプであり、それは一次構造/アミノ酸配列における遺伝学的に決定されている相違から生じる複数の酵素形態のうちの任意のものを指す。
【0038】
同一の触媒活性、遺伝子座、または一次構造を共有する任意の群の酵素は、お互いのアイソフォームである。複数のDPPアイソフォームが知られている。例えば、DPP−Iは、同一の遺伝子(Entrez Gene遺伝子ID:1075)からコードしている転写産物変種に由来する少なくとも2つのアイソフォームで存在している。同様に、DPP−II(非特許文献20参照)、DPP−III(非特許文献21参照)、およびDPP−IV(非特許文献22参照)の複数のアイソフォームが報告されている。
【0039】
例えば、プロリンの後のジペプチド結合を切断するいかなる酵素もDPP−IVアイソフォームである。当業者ならば、DPPの多数のアイソフォームに容易に気づく。本明細書では、すべてのアイソフォームが同定されているわけではない。限定ではなく、例として、DPP−IVアイソフォームには、DPP−IV、DPP−IVの様々なシアル化形態、膜結合DPP−IV、可溶性DPP−IV、ならびに、セプラーゼ、線維芽細胞活性化タンパク質α、DPP6、DPP8、DPP9、アトラクチン、N−アセチル化−α−結合酸性ジペプチダーゼI、II、およびL、静止細胞プロリンジペプチダーゼ、胸腺特異的セリンプロテアーゼ、およびDPP IV−βなど、任意のジペプチジルペプチダーゼIV活性および/または構造ホモログ(DASH)が含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
測定できるDPPパラメータには、量、濃度、活性、発現、または翻訳後修飾の量もしくはタイプが含まれる。
【0041】
DPPの「量」には、DPPの存在、不在、または量が含まれる。DPPの「活性」には、比活性を含めた、酵素活性の存在、不在、量、程度、または速度が含まれる。DPPの「発現」には、DPP発現の存在、不在、速度、または量が含まれる。DPPの「濃度」は、部分に存在する単位容積あたりのDPPアイソフォームの量である。
【0042】
DPPパラメータは、直接的に測定しても、間接的に測定してもよく、また定性的であっても、定量的であってもよい。
【0043】
DPP活性は、DPP活性を定量的または定性的に測定できるいかなるアッセイを用いて測定してもよい。DPPの活性を測定するのに適したアッセイには、検出可能に標識された基質におけるDPP活性の加水分解産物の存在または量を検出するアッセイが含まれる。上記標識は、直接的に検出可能でも、間接的に検出可能でもよく、蛍光発生的でも、化学発光でも、熱量測定でも、放射性でもよい。蛍光発生標識には、7−アミノ−4−メチルクマリン(AMC)および7−アミノ−4−トリフルオロメチルクマリン(AFC)が含まれる。
【0044】
当業者ならば理解するであろうが、シグナルの検出方法は、そのアッセイで使用される正確な検出系に依存するであろう。上記検出系は、質量変化、アミノ酸配列もしくはペプチド長の変化、発色変化、または蛍光発生変化を検出するものでよい。上記検出方法は、当技術分野で記述されている多様な検出スキームの中でもとりわけ、検出可能な変化をもたらす二次酵素反応を含めた二次検出スキームを利用するものでもよい。
【0045】
例えば、放射標識された検出試薬が利用される場合には、シンチレーション計測およびオートラジオグラフィー(通常、走査デンシトメトリーと併用される)など、生物試料からのシグナルを定量できる技術、または生物試料からのシグナルを参照試料からのシグナルと比較できる技術を用いてシグナルが測定されるであろう。化学発光検出系が使用される場合には、シグナルは通常、ルミノメーターを用いて検出されるであろう。蛍光検出系が使用される場合には、分光蛍光光度計を用いて蛍光を測定することができる。検出系からシグナルを検出する方法は当技術分野で周知である。
【0046】
一部の実施形態では、検出可能に標識された基質におけるDPP活性の加水分解産物の存在または量を検出するアッセイを介して、DPP活性を測定する。DPP−IV活性は、DPP−IVによって触媒されるであろう検出可能に標識された任意の基質、すなわちX−Y−Rの加水分解を検出するアッセイを用いて測定できる。式中、Xは任意のアミノ酸であり、YはPro(プロリン)、Ala(アラニン)、またはArg(アルギニン)であり、Rは直接的または間接的に検出可能な任意の標識である。
【0047】
DPP量は、定量的または定性的に1つまたは複数のDPPアイソフォームの量を測定できるいかなるアッセイを用いて測定してもよい。DPP量を測定するのに適したアッセイには、ウェスタンブロット分析、タンパク質分光光度法、ラジオイムノアッセイ、競合結合アッセイ、およびELISAアッセイが含まれるが、これらに限定されない。この点では、1つまたは複数のDPPアイソフォームに特異的な抗体が特に有用である。
【0048】
DPP濃度は、1つまたは複数のDPPアイソフォームの濃度を定量的または定性的に測定できるいかなるアッセイを用いて測定してもよい。DPP濃度を測定するのに適したアッセイには、ウェスタンブロット分析、タンパク質分光光度法、ラジオイムノアッセイ、競合結合アッセイ、およびELISAアッセイが含まれる。この点では、1つまたは複数のDPPアイソフォームに特異的な抗体が特に有用である。
【0049】
DPP発現は、1つまたは複数のDPPアイソフォームの発現を定量的または定性的に測定できるいかなるアッセイを用いて測定してもよい。DPP発現を測定するのに適したアッセイは、通常、DPP mRNAまたはタンパク質を検出し、それらには、ノーザンブロット分析およびウェスタンブロット分析またはこれらの変法(例えば、ファーウェスタン分析、マイクロアレイチップ)が含まれる。
【0050】
翻訳後修飾のタイプまたは程度は、1つまたは複数のDPPアイソフォームの修飾を定量的または定性的に測定できるいかなるアッセイを用いても測定できる。翻訳後修飾のタイプまたは程度を測定するのに適したアッセイには、レクチン結合、ウェスタンブロット分析、タンパク質分光光度法、ラジオイムノアッセイ、競合結合アッセイ、およびELISAアッセイが含まれる。
【0051】
1つまたは複数のパラメータを測定できる。例えば、単一パラメータ(例えば、量、濃度、活性、発現、翻訳後修飾の量またはタイプ)を測定できる。別法では、2つ以上のパラメータを測定できる。例えば、量および濃度、量および活性、量および発現、濃度および活性、濃度および発現、または活性および発現のそれぞれ両者を測定できる。同様に、量、活性、および発現;量、濃度、および発現;または濃度、活性、および発現を測定できる。
【0052】
2種以上の測定を行う場合、それらを同時に行っても、連続して行ってもよい。例えば、活性と同時に量を測定してもよい。別法では、活性の前または後に量を測定してもよい。3種以上の測定を行う場合、それらを同時に行っても、連続して行ってもよい。例えば、翻訳後修飾のタイプおよび活性を同時に測定して、量を翻訳後修飾のタイプおよび活性の前に測定してもよく、または、量、翻訳後修飾のタイプ、および活性をそれぞれ、互いに同時に又は連続して測定する。同様に、さらに多くの測定を行う場合、それらを、互いに同時に又は連続して行ってもよく、各グループが、他のあらゆるグループと同時に又は連続して測られるように、可能な各方法でグループ分けしてもよい。換言すれば、各測定を要因的方法または分配的方法でグループ分けしてもよく、各グループは、他のすべてのグループと連続的に又は同時に測定することができる。
【0053】
複数種の測定の場合に加えて、いかなる所与の測定も、それが1つのパラメータの測定でも、複数のパラメータの測定でも、任意の所与の患者試料に関して複数回行うこと、すなわち反復することができる。
【0054】
加えて、上記部分に関して、いかなる組合せの測定を行ってもよい。例えば、上記部分のうちの1つ、一部、またはすべてに関して、単一のパラメータを測定してもよい。同様に、上記部分の1つ、一部、またはすべてに関して、複数のパラメータを測定してもよい。単一のパラメータを1つまたは一部の部分に関して測定し、その一方で、別のパラメータを他の部分またはすべての部分に関して測定してもよい。例えば、量を1つの部分のみに関して測定してもよく、その一方で、すべての部分の活性を測定してもよい。同様に、1つの部分のみの活性を測定してもよく、その一方で、すべての部分の量を測定してもよい。
【0055】
1つまたは複数のDPPパラメータを測定する場合、患者試料を多数のアリコートに分割して、別々のアリコートを異なったDPPパラメータを測定するのに用いても、反復測定を行うのに用いてもよい。加えて、または別法として、異なったDPPパラメータの測定用、または反復測定用に、識別されたDPP部分のそれぞれを多数のアリコートに分割してもよい。反復測定は本発明の方法に必要ではないが、本発明の実施形態の多くは、反復試験、とりわけデュプリケート試験、およびトリプリケート試験を利用するであろう。
【0056】
別法として、アレイタイプのアッセイ、または多重検出技術を利用したアッセイ(例えば、異なった蛍光色素マーカーで標識された検出試薬を利用したアッセイ)など、異なったDPPパラメータの個々のレベルを単一のアッセイで測定できるアッセイを用いて、複数のDPPパラメータのレベルを単一反応で測定するために、患者試料、またはそれから得られた1アリコートを試験してもよい。
【0057】
本明細書で使用される場合、「DPP関連の疾患または病状」という用語は、1つまたは複数の特定の測定可能DPPパラメータの相違によって特徴付けられる疾患または病状を指す。DPP関連の疾患または病状は、必ずしも、DPPの変化によって引き起こされたものではなく、1つまたは複数のDPPパラメータを測定することによって診断またはモニターできるものである。
【0058】
DPP関連の疾患状態および病状には、代謝病、自己免疫疾患、癌、およびウイルス感染が含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
代謝病は、代謝の障害であり、これには後天性疾患および遺伝病の両方が含まれるが、本明細書でもそのように使用される。それらのうちの多くが非特許文献23に記載されている。一般に、代謝病は、以下の3つの主要クラス、すなわち、糖原病(すなわち、II型糖尿病など、糖質代謝に影響を与える疾患)、脂肪酸酸化障害(すなわち、ファブリ病など、脂肪成分の代謝に影響を与える障害)、およびミトコンドリア疾患(すなわち、リー症候群など、ミトコンドリアに影響を与える障害)に分けられる。
【0060】
本発明で検出できる代謝病状態には、II型糖尿病、低血糖、高血糖、グレーブス病、クッシング症候群、アルカプトン尿症、白子症、ヒスチジン血症、高オルニチン血症、ウィルソン病、テイ−サックス病、ニーマン−ピック病、クラッベ病、パジェット病、メープルシロップ尿症、またはフェニルケトン尿症が含まれるが、これらに限定されない。例示的実施形態では、上記DPPはDPP−IVであり、上記疾患はII型糖尿病である。
【0061】
本発明で検出できる自己免疫疾患には、関節リウマチ、扁平苔癬、乾癬、ぶどう膜炎、溶血性貧血、リウマチ熱、クローン病、ギラン−バレー症候群、乾癬、甲状腺炎、グレーブス病、重症筋無力症、糸球体腎炎、自己免疫性肝炎、または全身性紅斑性狼瘡が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、上記自己免疫疾患は乾癬、関節リウマチまたは扁平苔癬であり、上記DPPはDPP−IVである。
【0062】
本発明で検出できる癌には、乳房;大腸;直腸;肺;中咽頭;下咽頭;食道;胃;膵臓;肝臓;胆のう;輸胆管;小腸;腎臓、膀胱、および尿路上皮を含めた尿路;頚管、子宮、卵巣、絨毛膜癌、および妊娠絨毛性疾患を含めた女性生殖管;前立腺、精のう、精巣、および胚細胞腫を含めた男性生殖管;甲状腺、副腎、および脳下垂体を含めた内分泌腺の原発性および転移性の固形腫瘍および癌腫;血管腫、黒色腫、骨または軟部組織から生じる肉腫、およびカポジ肉腫を含めた皮膚;星状細胞腫、神経膠腫、グリア芽腫、網膜胚種細胞腫、神経腫、神経芽腫、神経鞘腫、および髄腹腫を含めた、脳、神経、眼、および髄膜の腫瘍;緑色腫、プラズマ細胞腫、紅斑期および腫瘍期の菌状息肉症、ならびに皮膚T細胞性リンパ腫/白血病を含めた白血病などの造血器悪性腫瘍から生じた固形腫瘍;ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫の両方を含めたリンパ腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0063】
本発明で検出できるウイルス感染には、アデノウイルス科、ビルナウイルス科、ブンヤウイルス科、コロナウイルス科、フラビウイルス科、ヘルペスウイルス科、オルソミクソウイルス科、パポバウイルス科、パルボウイルス科、ピコルナウイルス科、レオウイルス科、レトロウイルス科(例えば、HIV)、ラブドウイルス科、またはトガウイルス科など、ヒトおよび他の動物にとって病原性であるウイルス科によって引き起こされた感染が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、上記DPPはDPP−IVであり、上記ウイルス病はHIVである。
【0064】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、DPP関連に疾患状態または病状の診断、予後、疾病進行モニタリング、またはリスク評価を必要とする任意の生物を指し、上記患者は、DPP発現に関連した生理学を有する。そのような患者には、ヒト、高等霊長類、他の哺乳動物(例えば、ネコ、イヌ、およびウマなどの家畜哺乳動物、ラットおよびマウスなどの齧歯動物、ならびにライオン、トラ、およびクマなどの野生動物)、鳥類(例えば、ニワトリ、インコ)、および他の動物が含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
本明細書で使用される場合、「患者試料」または「生物試料」という用語は、標的酵素を含有すると予測され得るであろう患者から採取されたか、または由来する任意の試料を指し、それには細胞性試料および無細胞試料の両方が含まれる。患者試料には、筋、肝臓、肺、脾臓、脂肪、乳房、および腫瘍組織などの組織;全血、血漿、血清、および血球などの血液および血液産物;ならびに尿、唾液、涙、粘液、羊水、脳脊髄液、滑膜関節液、および精液などの他の生物体液が含まれるが、これらに限定されない。患者試料は、複数の体液および/または組織の組合せも含有できる。
【0066】
試料は、静脈穿刺、腰椎穿刺、羊水穿刺、および組織生検など、臨床的に許容できるいかなる方法で患者から入手してもよい。
【0067】
試料は、患者から得られたまま直接使用してもよいが、本発明の一態様では、DPPを部分に識別する(例えば、DPPアイソフォームを部分に識別する)前、またはDPPパラメータを測定する前に、試料処理が企図されている。処理には、均質化、希釈、濃縮、超音波処理、凍結、保存剤もしくは他の薬剤との混合、またはこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0068】
加えて、DPPが膜に結合していると予測される細胞または他の組織を含有する試料も、DPPが細胞膜から遊離して、それによって、試料からタンパク質/酵素を分離または単離するための、当技術分野で認められている方法のいずれかで、それが利用可能となるように処理してもよい。膜結合タンパク質を遊離させる方法は当技術分野で周知であり、それらには、凍結/融解、均質化処理、超音波処理、および活性酵素の化学的または酵素的な膜からの遊離が含まれる。
【0069】
一部の例では、EDTA、プロテアーゼ阻害剤、または生物試料の輸送、保存、および取り扱いに適した何らかの他の成分を含む容器内に患者試料を収集する。
【0070】
患者試料が液体で構成される場合、処理には、血液試料中の赤血球、白血球、および血小板など(例えば血漿を得るために)、有核細胞および/または非有核細胞の除去の形態が含まれていてもよく、また、血液から特定の凝固カスケードタンパク質を除くなど(例えば血清を得るために)、特定のタンパク質の除去が含まれていてもよい。例えば、血液は、ヘパリン、クエン酸、またはプロテアーゼ阻害剤を有する容器内に収集してもよく、収集の際にヘパリン、クエン酸、またはプロテアーゼ阻害剤と接触させてもよい。
【0071】
例えば、識別または測定前に総タンパク質含量を正規化するための、試料の濃縮または希釈を、追加の処理に含めてもよい。これらの活動を行うためのプロトコールは当技術分野で周知である。
【0072】
DPPパラメータの測定と、疾患状態または病状とを相関させた後、結果がオペレータに伝達されてもよい。結果には、疾患状態または病状の存在、不在、または重度が含まれている。
【0073】
「オペレータ」は、医師、看護師、医師助手、医療技術者、検査技師、または本発明の1つもしくは複数のステップを実施する機械もしくは装置を操作する任意の者、または患者を含めた、上記診断もしくは予後情報を受信できる任意の者でよい。例えば、上記診断または予後情報は、ファクシミリ、電話、テキストメッセージング、またはEメールを介して患者または患者の代理に自動的に伝達されてもよい。
【0074】
結果を伝えるためのいかなる手段を用いてもよく、それらには、電子スクリーン、デジタルスクリーン、または印刷可能物などの媒体に疾患状態を表示すること、電話、テキストメッセージング、Eメール、またはファクシミリを介して、ブザー、ベル、電子生成音声、または録音音声などの可聴信号を発生させることが含まれるが、これらに限定されない。
【0075】
DPPアイソフォームをDPP部分に部分的または完全に識別するのは、任意のDPPパラメータの測定の前でも、それと同時でもよい。例えば、3つ以上のタイプのDPPアイソフォームが試料中に存在すると仮定した場合、上記アイソフォームを、2つの部分のみに識別して、各部分が複数のタイプのアイソフォームを含有する(すなわち、部分的に識別される)ようにしても、各部分が1つのタイプのアイソフォームのみを含有するように、上記アイソフォームを部分に識別(すなわち、完全に識別)してもよい。同様に、1つの部分が1つのタイプのみのアイソフォームを含有し、他の部分が複数のタイプのアイソフォームを含有するように、上記アイソフォームを2つ以上の部分に部分的に識別してもよい。
【0076】
DPP部分は、物理的な分離もしくは単離、またはアイソフォームを相互に同定もしくは識別する他の方法を含めたいかなる手段で識別してもよい。
【0077】
例えば、識別は、電気泳動移動度または等電点(pI);熱安定性;分子量;アイソフォームの一次構造が相違している場合には、アミノ酸配列;抗体親和性または結合活性;翻訳後修飾の程度またはタイプ;およびKmまたは速度定数などの動態特性などの生化学的性質の相違に基づいたものであり得る。
【0078】
DPP部分を物理的に分離するか、または物理的分離を行わずに部分を識別するのに、異なったDPPアイソフォームに特異的な抗体またはレクチンを用いてもよい。例えば、異なったDPPアイソフォームのそれぞれに特異的な抗体が異なった検出可能標識を有していてもよく、その場合、部分を識別するのに、物理的分離を必要としない。別法では、異なったDPPアイソフォームを部分に物理的に分離するのに、上記抗体を支持体またはカラムで用いてもよい。
【0079】
分離の方法には、pIに基づいて分離を行う等電点焦点法;電荷および/または分子量に基づいて識別を行える、ゲルもしくはフィルターなどのマトリックス中またはゲルフリーの電気泳動法;上記アイソフォームへのレクチン結合の程度またはそれに親和性を有するレクチンの多様性;抗体結合;およびアフィニティークロマトグラフィーまたはサイズ排除クロマトグラフィー法が含まれる。
【0080】
本明細書で使用される場合、「等電点」(pI)という用語は、分子の正味の荷電がなくなるpHである。pIは等電pHとも呼ばれる。したがって、本出願の目的では、「pI」および「等電pH」という用語は同義的に使用される。例示的実施形態では、DPP部分がpIに基づいて識別され、上記特定のDPPがDPP−IVである。
【0081】
等電点焦点法の方法には、フリーフロー電気泳動、等電点電気泳動、またはクロマトフォーカシング、もしくは経時的にpHが変化する緩衝系の、固相を通過する流動によって促進される他の固相媒介の分離法が含まれる。
【0082】
等電点電気泳動では、対象とする試料をゲルスラブ、フィルター、または固定されたpH勾配を含有する他の媒体に直接的に注入または投与する。
【0083】
pH勾配は電場の方向に平行して走行し、試料中のタンパク質は、そのpIに等しいpH環境に達する以前の異なったpH環境を通って一方向に移動することによって相互に分離される。
【0084】
タンパク質がいったんそのpIに達すれば、それはマトリックス物質中で不動となるであろう。この点で、試料をマトリックス物質から取り出して、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)(非特許文献24参照)、平面チップ上での2次元目分離(非特許文献25参照)、蛍光分析などの酵素活性を検出するためのアッセイ、または任意のDPPパラメータを測定するのに適したアッセイなどのさらなる分析に利用にする。
【0085】
フリーフロー電気泳動は、伝統的な電気泳動におけるアクリルアミドゲル、またはクロマトグラフィーで使用される分離相など、いかなる固体マトリックスも使用しない電気泳動法である。代わりに、分析物は、流れ方向に垂直に印加された電場内で、連続的な層流または緩衝溶液中における、それらの電荷量および/または電気泳動移動度に従って分離される。
【0086】
フリーフロー電気泳動を行う機械の一例が、BD(商標)フリーフロー電気泳動システム(Becton Dickenson社、型式#441117)である。このシステムを用いて、分離チャンバーの端にある96本の毛細血管に、識別された試料を収集する。これらの毛細血管は、連続的分画が収集区分(collection divide)中に流入するのを可能にし、その流出液は、複数の画分中に物理的に分離された状態のままとなる。この方法は、少なくとも3つの分離原理、すなわち等電点焦点法(IEF)、ゾーン電気泳動(ZE)、および等速電気泳動(ITP)を介した試料分離に適している。いったん収集されれば、等電点焦点法の後で使用する目的で記載されているアッセイ、すなわち、SDS−PAGE、平面チップ上での2次元目分離、および酵素活性分析のうちのいずれかを介しても、その画分を分析できる。
【0087】
識別および測定は、いかなる特定の順序にも限定されない。識別は、パラメータ測定の前に行われても、後で行われても、測定と同時に行われてもよい。例えば、特定のDPPは、電気泳動などの方法を用いて物理的に部分に分離してもよく、そしてその後、それらの部分のすべてまたは一部の1つまたは複数のパラメータを測定してもよい。
【0088】
別法では、測定および識別が同時に行われる場合、例えば、その検出可能標識からのシグナルを測定する間に、それぞれが異なった検出可能標識に連結されている、異なったDPPアイソフォームに特異的な抗体と患者試料を接触させることによって、特定のDPPを部分に識別してもよい。
【0089】
別の実施形態では、二重検出系を用いて、部分またはアイソフォームを識別できる。例えば、すべてまたはほとんどのDPPアイソフォーム、およびDPPアイソフォームの、さらに小さい部分に特異的な1つまたは複数の抗体またはレクチンに結合する固相結合抗体とDPPアイソフォームを接触させることができる。より特異的な抗体またはレクチンのそれぞれが、特有の検出可能標識を含有している。上記アイソフォームを1つまたは複数の抗体およびレクチンの両方と同時に接触させることも、順次に、例えば、結合抗体と接触させ、その後、より特異的な抗体/レクチンと接触させるか、またはより特異的な抗体/レクチンと接触させ、その後結合抗体と接触させることもできる。
【0090】
DPPを、2つ以上の部分に識別してもよい。部分の数は、所望の識別の程度、および識別を行う方法に依存する。DPPが識別される部分の数に制限はないが、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、36、48、96、100、200、300、384、400、500または1536の部分など、2つ以上の部分にDPPを識別してもよい。例えば、一部の実施形態では、標準的な96ウェルプレートでの操作およびパラメータ測定を可能にするために、例えば96の部分に、DPPアイソフォームを識別するのが好都合である。
【0091】
アイソフォームの完全な識別には、各DPP部分が複数のDPPアイソフォームを含有するべきではなく、一部の部分はDPPアイソフォームを含有しなくてもよい。アイソフォームの部分的な識別には、少なくとも1つのDPP部分が複数のDPPアイソフォームを含有するべきであるが、他の部分はDPPアイソフォームを含有しなくても、1つのDPPアイソフォームを含有しても、複数のDPPアイソフォームを含有してもよい。
【0092】
本発明の特定の実施形態では、複数の時点で個体から患者試料を得る。そのような「連続的」試料採取は、典型的な医学的異常の発症前における、疾患の早期発症の判定に好適であり、それゆえ、より有効な疾病管理または疾患回避にさえ導き得るであろう、より早期の治療戦略を容易にする。そのような連続的試料採取は、患者における疾患、例えばII型糖尿病の進行のモニタリングに関する本発明の態様に好適である。これは、上記疾患に関連して患者が行っている任意の治療の有効性を評価するのに特に有用である。連続的試料採取または反復試料採取は、疾患または病状が発症する個々のリスクを測定するのにも有用であり得る。
【0093】
連続的試料採取は、毎時間、半日に1回、毎日、毎週、毎月、年4回(すなわち3カ月ごと)、半年ごと、毎年、2年ごと、またはさらに少ない頻度など、任意の所望の時間表で実施できる。測定レベルと参照レベルとの比較は、新しい試料が測定される度に行ってもよく、レベルに関するデータは、より低頻度で行われる分析のために保持してもよい。
【0094】
測定または識別は、ex vivoまたはin vitroで行うことが好ましい。一実施形態では、測定および識別の両方がex vivoで行われる。
【0095】
当業者ならば理解するであろうが、本明細書に開示する方法には、患者試料の完全性および/または特徴を決定する様々なDPPパラメータまたは非DPPパラメータ(疾患関連パラメータであってもそうでなくてもよい)のうちのいずれの測定が含まれていてもよい。例えば、性別のマーカーとして、概して雌性で高い、エストロゲンレベルを測定してもよく、またはコレステロールレベルなどの他の化学血液測定を行ってもよい。
【0096】
他の疾患関連の非DPPパラメータを、診断または予後を確認するために測定してもよい。一部の実施形態では、上記非DPPパラメータがヘモグロビンA1Cレベルであり、上記疾患が糖尿病である。総ヘモグロビンの7%未満のヘモグロビンA1Cレベルは、糖尿病の不在を示し、総ヘモグロビンレベルの7%を超えるレベルは糖尿病の存在を示す。非DPPパラメータは、DPPパラメータの前に測定しても、その後に測定してもよく、または同時に測定してもよい。
【0097】
測定されたDPPパラメータを疾患状態または病状に相関させるために、測定されたDPPパラメータを、参照、すなわち標準または内部対照と比較してもよい。陽性または陰性の参照と比較した、個別的または相加的なDPPパラメータの増大、減少、またはシフトを疾患状態と相関させてもよい。
【0098】
別法として、識別された酵素の部分のDPPパラメータを、識別された酵素の別の部分のパラメータと比較してもよく、またはそれを、2つ以上の識別された部分の全測定値と比較してもよい。
【0099】
当然ながら、測定パラメータは、対応するパラメータと比較するべきである。例えば、DPP量を測定する場合には、DPP量の値は、参照または他の部分のDPP量の値と比較するべきである。DPP発現を測定する場合には、それを、参照または他の部分のDPP発現と比較するべきである。
【0100】
特定の実施形態では、連続した範囲の部分のパラメータを測定する。例えば、等電点に基づいて分離されたアイソフォームに関して、隣接したpHまたは等電点に分離された2つ以上の部分の1つまたは複数のパラメータを測定してもよい。
【0101】
連続した範囲の部分にわたって、測定パラメータのプロフィールを入手してもよい。別法として、非連続的な範囲の部分の測定に基づいて測定パラメータのプロフィールを入手してもよい。上記プロフィールはすべての部分に基づくものであっても、部分の部分集合に基づくものであってもよい。
【0102】
疾患状態との相関関係を決定するために様々な部分相互または部分間で行うことのできる様々な比較が多数ある。測定されたパラメータのデータを解析する技法、または上記データを他のデータと比較する技法は、当業者にはよく知られている。それゆえ、そのような技法はすべて、本明細書では詳細に論じられていない。所望の結論(すなわち疾患状態の存在または不在)に達するために、データを解析する例示的技法の1つを、図14のグラフを参照して例示する。図14において、y軸はDPPパラメータ(例えば、活性、発現、量、濃度、翻訳後修飾のタイプまたは量)のレベルを示す。x軸は識別の次元(例えば、pI、pH、またはアイソフォームタイプ)を示す。
【0103】
グラフを参照して、3つの領域、すなわち「a」領域、「b」領域、および「c」領域が強調されている。各領域に関して、範囲内の総測定値(例えば、所与の範囲の曲線下面積)を測定することができ、値「a」および「b」、合計値「c」が得られる。測定できる他の値には、範囲内のピーク値、範囲内でピーク値が到達されている点、範囲内の任意点(例えば特定のpIまたはpH)における特定の活性、測定パラメータが増大または低減する点(例えば屈曲点)、他の測定値との比較におけるx軸に沿った測定パラメータのシフト、ならびにこれらの組合せが含まれる。上記の値は、連続した範囲の部分を測定することによって入手されたプロフィールに基づいて計算しても、単一または複数の部分の測定に基づいて計算してもよい。
【0104】
上記測定値の1つと疾患状態を相関させるために、範囲「a」の値を範囲「b」の値と、範囲「a」の値を範囲「c」の値と、範囲「b」の値を範囲「c」の値と、範囲「a」の値を内部対照または標準と、範囲「b」の値を内部対照もしくは標準と、および/または範囲「c」の値を内部対照もしくは標準と比較することができよう。
【0105】
別法として、1つもしくは複数の所与の識別の次元に関連した任意の範囲における個別な定量測定、またはそのような定量測定の任意の比率を得て、既知の参照値またはそのような測定の値の参照範囲と比較でき、上記参照範囲は、疾患の存在、不在または重度がそれによって判定される尺度を提供するように、臨床試験を通して確立されている。識別(例えばアイソフォーム識別)の次元で、同時に、または連続的に測定され、定量的読み取り値を事前に確立された参照範囲に正規化するのに使用できる内部または外部標準の包含によって定量測定を補足してもよい。
【0106】
本明細書で使用される場合、「標準」という用語は、集団のセグメントから得られる値、通常は平均、中央値または平均値を指す。標準は、陽性標準でも、陰性標準でもよく、同齢集団から得ることができる。同齢集団(そこから標準値を得ることができる)は、試験個体と同じの年齢であることが理想的であるが、ほぼ同齢の集団も許容できる。ほぼ同齢の集団は、試験個体の年齢の約1歳以内、約5歳以内、約10歳以内、約15歳以内、または約20歳以内を含めた1〜20歳以内のものでよく、試験される個体の年齢を包含する様々な年齢の群でもよい。ほぼ同齢の集団は、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、または10年増分のものでよい(例えば62歳の個体の標準値の供給源として働く「5年増分」の群には、58〜62歳個体、59〜63歳個体、60〜64歳個体、61〜65歳個体、または62〜66歳個体が含まれ得る)。
【0107】
陽性標準は、特定の疾患状態を有する集団のセグメントから得られる値、例えば平均値を指す。陰性標準は、特定の疾患状態を有していない集団のセグメントから得られる値、例えば平均値を指す。
【0108】
本明細書で使用される場合、「内部対照」という用語は、疾患状態が既知である単一の患者または患者の群からの1つまたは複数の試料から得られた値を指す。内部対照は、陽性対照でも、陰性対照でも、同一患者対照でもよい。例えば、内部対照は、特定の疾患状態を有する1体または複数の患者からの陽性対照でも、特定の疾患状態を有さない1体または複数の患者からの陰性対照でもよい。最後に、内部対照は、診断される患者から、疾患進行を測定するために、異なった時間に別の身体部位(すなわち血液対肝臓)から得られた試料、または測定前に異なった処理を施された2つ以上試料から得られた試料、または同一タイプもしくは異なったタイプであり得る別々の容器(例えば、2本のEDTA血漿管、または1本のEDTA血漿管および1本の血清管)内に収集された試料から得られた値でよい。
【0109】
内部対照値は、診断される患者の測定と同時に得ても、また別のときに得てもよい。
【0110】
測定値相互、または測定値と参照値との間の比較の結果は、疾患を診断するか、疾患の診断または予後を補助するため、患者の疾患の重度に従って患者を階層化するため、または特定の患者における疾患の進行をモニターするために使用する。したがって、測定値と参照値との比較が、疾患を指示/示唆する相違(すなわち増大または低減)を示す場合、適切な診断が補助または実施される。逆に、参照レベルとの測定レベルの比較が、疾患の診断を指示または示唆する相違を示さない場合、適切な診断は補助または実施されない。
【0111】
複数の疾患関連DPPパラメータが測定されたが、様々な測定が疾患の診断を一致して示唆または指示しなかった場合、「多数者」の示唆または指示(例えば、上記方法が4種の疾患関連DPPパラメータを用い、そのうち3種が疾患を示唆/指示する場合)が用いられる。そのような結果は、個体の疾患の診断を示唆または指示するものと理解されよう。
【0112】
測定値と参照値とを比較する過程は、問題となっている糖尿病関連のDPPパラメータの測定値および参照値のタイプに適切な任意の好都合な方法で実行することができる。「測定」は、定量的または定性的な測定技法を用いて実施でき、測定値と参照値との比較のモードは、利用した測定技術に応じて変化し得る。例えば、DPP活性レベルを測定するのに定性分析を用いる場合、上記レベルは、蛍光反応産物の強度を、目視での比較によって比較しても、分光光度計からのデータの比較(例えば、測定装置から得られた数値データ、または棒グラフなどのグラフィックデータを比較する)によって比較してもよい。しかし、本発明の方法で使用される測定値は、定量的な値であることが最も一般的であろうと予測される。(例えば、試料1mlあたりのDPPアイソフォームのナノグラムなどの濃度または絶対量の定量測定)。他の例では、測定値は定性的である。定量測定を用いた場合、数値データを精査することによって、そしてデータ表示を精査する(例えば棒グラフまたは線グラフなどのグラフ表示を精査する)ことによって比較を行うことができる。
【0113】
比較の方法は、手作業によるもの(本発明の方法の開業医による目視検査など)でも、自動化されているものでもよい。例えば、アッセイ装置(化学発光シグナル測定用のルミノメーターなど)は、それがDPPパラメータの測定値と参照値とを比較するのを可能にする回路およびソフトウェアを含有するものでよい。別法として、測定値と参照値とを比較するのに、分離した装置(例えばデジタルコンピュータ)を用いてもよい。比較用の自動装置は、測定された疾患関連のDPPパラメータの、保存された参照値を含有してもよく、同時に測定された参照試料から得られた参照値と測定値を比較してもよい。
【0114】
一部の実施形態では、本発明の方法は、測定レベルと参照レベルとの「単純」比較または「2成分」比較を用い、例えば、測定レベルと参照レベルとの比較によって、測定レベルが参照レベルより高いか、または低いかが判定される。一部の実施形態では、値の、いかなる相違も疾患を示す。
【0115】
本明細書に記載の通り、パラメータは、定量的(絶対値)に測定しても、定性的(相対値)に測定してもよい。所与の評価のための、疾患関連DPPパラメータレベルは、それぞれが重複しても、しなくてもよい。本明細書に記載の通り、一部の実施形態では、定性的データが疾患状態の所与のレベル(軽度、中度、または重度)を示し、他の実施形態では、定量的データが疾患状態の所与のレベルを示す。
【0116】
本発明の特定の態様では、測定値と参照値との間の相違の規模を判定するのに比較を行い、例えば、測定値と参照値との間の相違の「倍率」またはパーセントを比較する。何らかの最小倍率差より約2倍低いか、または高い倍率差は、例えば疾患の存在を示唆または指示する。DPPの絶対量、濃度、活性または発現を測定し、それを参照の絶対値と比較することによって、倍率差を測定することも、いずれの値も絶対量、濃度、活性、または発現の尺度ではなく、かつ/または両方の値が同時に測定される参照値と標本値との間の相対差によって倍率差を測定することもできる。別法では、例えば「c」に対する「b」と比較された「c」に対する「a」の倍率差、またはアッセイ系の中の測定可能パラメータの任意の他のそのような比率を比較することによって、試験データ自体の中で倍率差を測定してもよい。したがって、特定の診断を示唆または指示する、測定値と参照値との相違の規模は、測定値を生むために測定された特定のパラメータと、使用された参照値とに依存するであろう。
【0117】
本明細書に記載の通り、pIによって分離された、連続した範囲のDPP−IVアイソフォームから得られたDPP−IV活性プロフィールと、II型糖尿病の存在、不在、または重度との間には相関関係がある。この相関関係は、患者試料からの、識別されたDPP−IV部分の1つまたは複数のDPP−IVパラメータを測定するステップと、前記測定されたDPP−IVパラメータを、患者におけるII型糖尿病の存在、不在、または重度と相関させるステップとを含む、II型糖尿病の診断または予後の方法で使用される。特定の実施形態では、DPP−IVパラメータがDPP−IV活性である。特定の実施形態では、DPP−IV部分がpIに基づいて識別される。
【0118】
DPP−IVパラメータを集団標準または内部対照と比較してもよい。陰性集団標準または陰性内部対照からのいかなる相違も、糖尿病の存在または重度と相関させることができる。測定されたDPP−IVパラメータと、陰性参照との相違の程度が大きいほど、予後が重度となる。同様に、陽性集団標準または陽性内部対照とのいかなる相違も、糖尿病の不在と相関させることができる。上記に論じた通り、パラメータには、活性、量、発現または濃度が含まれる。
【0119】
DPP−IV部分は、本明細書に開示したいかなる特徴または方法によって識別してもよい。例示的実施形態では、pIに基づいてDPP−IV部分を識別する。特定の実施形態では、フリーフロー電気泳動によってDPP−IV部分を分離する。
【0120】
図10は、1体の健康患者と1体の糖尿病患者との間における、血漿中の、pI識別されたDPP−IV部分のDPP−IV活性プロフィールの比較を示す。本発明者らは、糖尿病患者におけるDPP−IV活性プロフィールが、より高いpHへとシフトすることを示した。任意の1つまたは複数の点におけるDPP−IV活性プロフィールの、ここに示す任意の健康患者から得られた値からのいかなる相違も、任意の1つまたは複数の点におけるDPP−IV活性プロフィールの、内部陰性対照または集団標準から得られた値からのいかなる相違も、糖尿病と相関させることができる。
【0121】
したがって、DPP−IV活性プロフィールにおける、本明細書で示した任意の陰性標準または集団陰性標準からの、より高いpHへのシフトも、糖尿病を示す。同様に、DPP−IV活性プロフィールにおける、内部陰性対照からの、より高いpHへのシフトは、II型糖尿病の存在を示す。活性プロフィールにおけるシフトが顕著であるほど、疾患は、より重度である。
【0122】
陽性標準は、健康な試料または集団の「正反対」である極端な測定値に関連したものであるが、問題のpI範囲内における最も極端なアイソフォームの測定値で代表させることができる。そのような陽性標準は、例えば、すべてのグリカンの完全な不在が、典型的な健康試料に含有されているアイソフォームから最も遠い測定可能なアイソフォーム状態に相当する場合には、すべてのグリコシル化を完全に除去する化学的または酵素的方法で患者試料を処理することによって確立できるであろう。この処理から生じる極端なアイソフォームは、実際の試料中では、実際には決してありえないが、依然として、アッセイのための測定可能な対照を提供する目的で、最も遠い可能なpH範囲を定めるのには使用できることに留意するべきである。別法として、この「極端な」陽性アイソフォームは、別々に測定してもよいであろう外部対照、または分析されるべき試料へ投入された後で測定される外部対照であり得るであろう。特定の実施形態では、そのような陽性対照は、結果として得られる試料測定の正規化を補助するのにも使用できるであろう。
【0123】
活性における「シフト」とは、1つまたは複数のDPP−IV部分のDPP−IV活性におけるいかなる相違も意味する。例えば、DPP−IV活性の測定値は、1つの識別された部分のみで参照と相違していても、一部またはすべての部分で相違していてもよい。DPP−IV活性レベルの傾向、例えば、より高いpHで、より高い活性レベルであることは、II型糖尿病を検出するのに特に有用である。
【0124】
糖尿病患者および健康患者は、DPP−IVがpIに基づいて識別された場合、DPP−IV活性プロフィールに、2つの主要ピークも示す。糖尿病患者は、約pH4.4および約pH4.8のピークを示す傾向にある。これらのピークには、それぞれ、pI識別されたアイソフォームの総測定活性の約10%が存在している。健康な患者は、約pH3.9および約pH4.1のピークを示す傾向にある。
【0125】
「ピーク」とは、測定されたすべての値に対する少数の局所的な極値の1つを意味する。各値は、識別された部分と関連している。ピーク値は、1つの識別された部分、または識別された部分の1群と関連するものでよい。この値は、したがって、単一の識別された部分に関する離散値、または1範囲の識別された部分に関する複数の離散値の集積であってもよい。例えば、識別された部分の関数である値のプロフィールは、ピークを1つだけ含有するものでも、複数のピークを含有するものでもよい。通常、先端の1、2、3、4、または5つの値のみがピークであると考えられるであろう。任意選択で、例えば、ピークは、好ましくは、その大きさが上昇から低下へと変化する複数の隣接した値からのプロフィール、またはその近傍に関連した値であってもよい。
【0126】
したがって、pH3.9もしくは約pH3.9および/またはpH4.1もしくは約pH4.1にある、pI識別DDP−IVアイソフォームのDPP−IV活性における最大ピークは、糖尿病の不在と相関させることができる。
【0127】
同様に、pH4.4もしくは約pH4.4および/またはpH4.8もしくは約pH4.8にある、pI識別DPP−IVアイソフォームのDPP−IV活性におけるピークは、糖尿病の存在と相関させることができる。連続した範囲における、DPP−IVの総測定活性の少なくとも約10%であるピークは、糖尿病の存在に関して、特に有用である。pH4.4もしくは約pH4.4および/またはpH4.8もしくは約pH4.8のピークが高いほど、より重度の診断となる。
【0128】
図11は、健康患者および糖尿病患者から得られたpI識別されたアイソフォームの累積DPP−IV活性プロフィールを示すプロットである。プロットの各点は、連続した範囲の識別されたアイソフォームのpH増大の関数である総活性の累積パーセントを表す。上記に説明されている通り、DPPアイソフォームは、pHの特定の狭帯域とそれぞれが関連している個別の識別された部分に分離することによって識別される。
【0129】
図12は、測定されたpH範囲の酸性の端から開始して、識別されたアイソフォーム部分の活性を合計した、個々の患者から得られたpI識別されたDPP−IV部分に由来する累積活性が、測定された範囲の総活性の90%に達したpHを示す。健康患者は、約pH4.2以下で識別されたアイソフォームに関して、90%のDPP−IV活性に達した。対照的に、糖尿病患者は、約pH4.4以下で識別されたアイソフォームに関して、90%のDPP−IV活性に達しなかった。より病気の重い患者から得られた累積DPP−IV活性は、さらに高いpHで識別されたアイソフォームを考慮に入れるまで、総累積DPP−IV活性の90%に達しなかった。
【0130】
したがって、試料から得られたpI識別されたDPP−IV部分に由来する累積活性が試料の総活性の90%に達するpHは、DPP−IV活性測定を疾患と相関させるのに使用できる。したがって、約pH4.4以下のpH範囲と関連付けられる等電点で識別されるアイソフォーム中に存在する連続した範囲における、すべての測定された部分の総DPP−IV活性のパーセントが約90%を超えない場合、糖尿病の存在が検出される。連続した範囲における、すべての測定された部分の総DPP−IV活性の少なくとも約10%が、約pH4.4以上のpH範囲と関連付けられる等電点で識別されるアイソフォームに存在している場合、糖尿病の存在が検出される。90%の活性に達する、pH4.4を超えるpHが高いほど、より重度の予後を示す。
【0131】
連続した範囲における、すべての測定された部分の総DPP−IV活性の少なくとも約90%が、約pH4.2以下のpH範囲と関連付けられる等電点で識別されるアイソフォームに存在する場合、糖尿病の不在が検出される。約pH4.4以上のpH範囲と関連付けられる等電点で識別されるアイソフォーム中に存在する連続した範囲における、すべての測定された部分の総DPP−IV活性のパーセントが、約10%を超えない場合、糖尿病の不在が検出される。
【0132】
図13は、測定されたpH範囲の酸性の端から開始して、アイソフォームの活性を合計した、個々の患者から得られたpI識別されたDPP−IV部分に由来する累積活性が総活性の60%に達したpHを示す。健康患者は、pH3.9で、60%のDPP−IV活性に達した。対照的に、糖尿病患者は、約pH4.15以上まで、60%のDPP−IV活性に達しなかった。より病気の重い患者からの累積DPP−IV活性は、さらに高いpHで識別されたアイソフォームを考慮に入れるまで、総累積DPP−IV活性の60%に達しなかった。
【0133】
したがって、試料から得られたpI識別されたDPP−IV部分に由来する累積活性が試料の総活性の60%に達するpHは、DPP−IV活性測定を疾患と相関させるのに使用できる。したがって、約pH4.15以下のpH範囲と関連付けられる等電点で識別されるアイソフォーム中に存在する連続した範囲における、すべての測定された部分の総DPP−IV活性のパーセントが約60%を超えない場合、糖尿病の存在が検出される。連続した範囲における、すべての測定された部分の総DPP−IV活性の少なくとも約40%が、約pH4.15以上のpH範囲と関連付けられる等電点で識別されるアイソフォームに存在する場合、糖尿病の存在が検出される。60%の活性に達する、pH4.15を超えるpHが高いほど、より重度の予後を示す。
【0134】
連続した範囲における、すべての測定された部分の総DPP−IV活性の少なくとも約60%が、約pH3.9以下のpH範囲と関連付けられる等電点で識別されるアイソフォームに存在する場合、糖尿病の不在が検出される。約pH3.9以上のpH範囲と関連付けられる等電点で識別されたアイソフォーム中に存在する連続した範囲における、すべての測定された部分の総DPP−IV活性のパーセントが、約40%を超えない場合、糖尿病の不在が検出される。
【実施例1】
【0135】
タンパク質を電荷量に基づいて分離するフリーフォーム電気泳動(FFE)(BD(商標)フリーフロー電気泳動システム)を用いて、DPP−IVアイソフォームを部分に分離し、特徴分析した。タンパク質アイソフォームの単離は、活性に対する特定の修飾の役割を検査するために行うことが好まれている。活性分析は、特定の活性の増大が、アイソフォームpIの増大と相関していることを示す。これは、翻訳後修飾が、DPP−IV活性の調節に役割を演じているかもしれないことを示唆する。FFEは、酵素修飾を疾患状態と相関させることができるさらなる研究を容易にするかもしれない。
【0136】
FFEは、BD(商標)フリーフロー電気泳動システムを用いて以下の通りに行った。Sigma(商標)社(1〜100mg)から入手したブタDPP−IVを、pH適合分離培地中に希釈した(概ね1:5)。希釈されたタンパク質を、Becton(商標)FFEチャンバーの最も陰極側の試料注入口で添加し、約60mL/hの分離媒体流速、3〜10のpH勾配を用いて、1200〜1500Vおよび20〜25mAの印加によって分離した。
【0137】
等電点焦点法(IEF)−FFE緩衝液および培地は、未変性条件および3〜10のpH勾配を用い、製造会社のプロトコール(Becton(商標)FFE適用マニュアル)に従って調製した。等電点焦点法ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)(IEF)は、T:4%を含むカスタムメイドゲルを用いて、または適切なpH範囲で平衡化されたブランクPrecoats(商標)(Serva社)を用いて行った。タンパク質バンドを検出するために銀染色法が行った。その結果を図3に示す。
【0138】
活性分析は以下の通りに行った。45μlのアッセイ緩衝液(100mM Tris−Cl[pH8.01]0.05%v/v DMSO)を5μlのタンパク質試料に添加し、Tinitialから蛍光の増大を測定した。活性は、30℃における基質Gly−Pro−AMC(250μM)の加水分解から生じた相対蛍光単位(RFU)/分の増大で表した。結果を図2Aおよび2Bに示す。
【0139】
タンパク質のトリプシン消化は、PAGE(IEF)またはSDS−PAGEの後で可視化されたSypro Ruby染色されたバンドを切り出し、その後、キットの指示(Pierce社/Sigma社)に従って消化することによって行った。
【0140】
マトリックス支援レーザー脱離/イオン化法(MALDI)MSは以下の通りに行った。ペプチドを「ゲル内」消化し、抽出し(指示の通り)、ZipTip(登録商標)Pipette Tips(Millipore社)を用いて精製した。消化されたペプチドを1:1でマトリックス(α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸を飽和した60%アセトニトリル溶液)と混合し、ステンレススチールターゲット(Bruker Daltonics社)上に置いた。
【0141】
消化されたタンパク質を同定するために、最初のMALDI−飛行時間(TOF)ペプチド質量フィンガープリント(PMF)を用い、その後、特定のペプチドのTOF/TOF同定を行った(両方ともMascotを用いた)。結果を図4Aおよび4Bに示す。
【実施例2】
【0142】
実施例2で記述する実験は、実施例1で示したものと同一のプロトコールに従ったが、タンパク質試料が健康患者から得られたヒト血漿に由来するものであった点が異なる。
【0143】
ヒト血漿試料(EDTA抗凝血物質)を2体の個体から取得し、実施例1の記載に従ってDPP−IVアイソフォームを部分に分離した。活性は、実施例1の記載の通りに測定した。ブタDPP−IVアイソフォームに類似した活性プロフィールが存在するかどうか確認するために、DPP−IV活性のパターンを検査した。結果を図6Aおよび6Bに示す。
【0144】
図6Aおよび6Bで報告された結果から、DPP−IV活性に関して、ブタDPP−IVで見られものと類似した活性がヒト血漿中に広っていることが観察された。より高いpH値で活性の増大が観測された(約pH5.2で最大)。比活性の測定には、正確なタンパク質(DPP−IV)の定量化が必要であろう。
【0145】
実施例1および2を通して、FFE(IEF)を用いてタンパク質アイソフォームを分離することができ、別々のアイソフォームの生化学的特徴分析が可能になることが実証された。ブタDPP−IVモデルは、異なった比活性を示す多重アイソフォーム(質量分析を用いて同定される)を示す。FFEの後で分析すると、ヒトDPP−IV(血漿中で分離された)は類似の傾向を示す。翻訳後修飾(PTM)がDPP−IV比活性を調節する役割を演じているかもしれない。FFEは、他のタンパク質と同様に、DPP−IVの個々のアイソフォームの潜在的PTMの同定および関連付けを容易にし得る。
【0146】
DPP−IVは、上述の通りに測定した。DPP−IVのブタ実験からの結果と比較した場合、図6Aおよび6Bに示す結果は、FFEの後で分析した際に、同様に分析されたブタDPP−IVと同様な活性傾向をヒトDPP−IVが示すことを示している。
【0147】
併せて、実施例1および2からの結果は、翻訳後修飾(PTM)がDPP−IV比活性を調節する役割を演じているかもしれないこと、および他のタンパク質と同様に、DPP−IVの個々のアイソフォームの潜在的PTMの同定および関連付けをFFEが容易にし得ることを示唆する。
【実施例3】
【0148】
実施例3に記載の実験は、実施例1で示したものと同一のプロトコールに従ったが、タンパク質試料がヒト血漿に由来するものであった点、およびIEFが3〜7のpH勾配で行われた点が異なっていた。詳細には、2型糖尿病(血糖レベル538mg/dL)を有するヒトから1種、および健康なヒトから1種の2種のヘパリン処理ヒト血漿試料を得た。
【0149】
図7および8に示す結果は、糖尿病の試料が、より高い等電位範囲を有するDPP−IVアイソフォームプロフィールを示すことを示している。
【実施例4】
【0150】
4体の健康患者および5体の糖尿病患者からの血漿をplによって識別した。FFEは、Becton(商標)FFEチャンバーを用いて、以下の通りに行った。血漿(1:8希釈)25μlを、グリセロール25μl、0.08%HPMC 25μl、pH3〜7の分離緩衝液125μlと混合した。その後、希釈されたタンパク質を、Becton(商標)FFEチャンバーの最も陰極側の試料注入口で添加し、未変性条件および3〜7のpH範囲を用い、1200〜1500Vおよび20〜25mAを印加して、インターバル等電点焦点法(Interval Isoelectric Focusing)(IIEF)−FFEで分離した。IIEF−FFEは、合計64分間の滞留時間、10℃で行った。50mL/hrの緩衝液流速を5分間隔(5分間前方、その後5分間後方)で合計60分間用いた。試料添加中の溶媒流速180mL/hrにおいて、6000μl/hrで2分間、試料添加を行った。試料添加の後、電圧を印加し、溶媒流速50mL/hr、5分間隔(5分間前方、その後5分間後方)で、合計60分間流れるように設定した。前方への緩衝液流を2分間、300mL/hrに増大させ、休止させ、その後2分間96ウェルに収集する間欠分離に従って試料を収集した。実施例1における概説に従って、DPP−IV活性を試験した。結果を図10および11に示す。
【0151】
図10で、明色の棒グラフは、各pIで1体の健康患者から得られた値を表し、暗色の棒グラフは、各pIで1体の糖尿病患者から得られた平均値を表す。
【0152】
健康患者では、約pH3.9および約pH4.1に、2つの主要ピークが観測される。同様に、糖尿病患者では、約pH4.4および約pH4.8に2つの主要ピークが観測される。糖尿病血漿プロフィールは、健康患者からの血漿プロフィールより高いpH、すなわち右にシフトしている。
【0153】
この実施例では、群1は健康であり(SO4、S11、S07、およびS02)、群2は、診断された糖尿病患者、すなわち、L205−血糖値=約139mg/dL;S09−血糖値未知;S08−血糖値=約90mg/dL、患者の疾患は薬物投与で管理されている;SO1−BG=約150mg/dL;およびS139−BG=約350mg/dLである。
【0154】
健康な対象からの血漿のアリコートを分割し、半分をノイラミニダーゼによって脱シアリル化し、半分を対照として残した。この実施例中で上述した条件下で、各部分を分離し、酵素分析によってアイソフォームプロフィールを測定した。シアル酸の除去は、約pH4.0から約pH5.0までのプロフィールのシフトをもたらした。
【0155】
結果を、図9の棒グラフで表す。
【0156】
脱シアリル化は、表1に示す通り、比活性の2〜3倍の増大をもたらした。
【0157】
【表1】
【0158】
余剰のシアリル化がDPP−IVの有効性(すなわち比活性)を低減させているように見える。それゆえ、シアリル化などの翻訳後修飾は、異なった疾患状態を有する患者が異なったアイソフォームプロフィールを示し得る理由の1つとなっている。
【0159】
複数の試料の実際のpH勾配を説明するために、pH読み取り値対%局所活性(そのpHにおける)を半統合(semi−integrate)した。その後、pH範囲に沿ったパーセント活性を付加した。これを図11に示す。本質的には、これは、いくつのpHで、活性における特定の「閾値」に達したかを明視化することを可能にする。
【0160】
90%における健康および糖尿病のデータを図12、60%におけるデータを図13に示す。90%活性では、健康患者はすべて、極めて厳密にpH4.2の値をとり、一方、糖尿病患者はすべて、おおまかにpH4.4を超える値をとり、より高いpHでは、疾患の重度の増大が伴っている。60%活性では、健康患者はすべて、厳密にほぼpH3.9の値をとり、糖尿病患者はすべて、おおまかにpH4.15を超える値をとっている。
【0161】
ここの記載の本発明を特定の実施形態に関して説明したが、これらの実施形態は本発明の原則および適用を例示するのみであることを理解するべきである。それゆえ、例示した実施形態には多数の改変を加えることができ、添付されている特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに、他の設定も導き出せることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】アイソフォームのフリーフロー電気泳動分離のワークフローを示す図である。
【図2A】未変性IEF−FFE後におけるブタDPP−IVの活性試験の結果を示すグラフである。
【図2B】未変性IEF−FFE後におけるブタDPP−IVの活性試験の結果を示すグラフであり、識別されたブタDPP−IVアイソフォームの比活性(U/ng酵素)を示す。
【図3】ブタDPP−IVの未変性FFE(pH3〜10)分離から生じた画分27〜47の銀染IEFアクリルアミドゲルを示す図である。
【図4A】IEFゲルから切り出された最も酸性のアイソフォームのトリプシン消化タンパク質バンドのペプチド質量フィンガープリント解析を示す図である。PMFの分析は、すべてのアイソフォームがDPP−IVであると同定している。
【図4B】IEFゲルから切り出されたわずかに、より塩基性のアイソフォームのトリプシン消化タンパク質バンドのペプチド質量フィンガープリント解析を示す図である。PMFの分析は、すべてのアイソフォームがDPP−IVであると同定している。
【図5A】MALDI TOF/TOFによる、選択されたDPP−IVピークの確認を示す図である。
【図5B】MALDI TOF/TOFによる、選択されたDPP−IVピークの確認を示す図である。
【図6A】2体の健康対象のヒト血漿から得たFFE識別されたDPP−IVアイソフォームのDPP−IV活性を示す図である。
【図6B】2体の健康対象のヒト血漿から得られたFFE識別されたDPP−IVアイソフォームのDPP−IV活性を示す図である。
【図7】正常ヒト対象からのFFE識別されたアイソフォームのDPP−IV活性プロフィールを示す図である。
【図8】538mg/dLのブドウ糖レベルを有する糖尿病ヒト対象から得られたFFE識別されたアイソフォームのDPP−IV活性プロフィールを示す図である。
【図9】健康ヒト患者から得られたFFE識別されたアイソフォームの脱シアリル化の結果起こるDPP−IVプロフィールシフトの例を示す図である。活性はRFU/分間で表されている。黒塗りの棒グラフは処置された試料を表し、斜線の棒グラフは未処置の試料を表す。
【図10】健康患者(明色の棒グラフ)および糖尿病患者(暗色の棒グラフ)から得られた血漿における、pI識別されたDPP−IVアイソフォーム相互のDPP−IV活性の比較、ならびに糖尿病患者から得られた脱シアリル化アイソフォーム(暗色の線)を示す図である。点線は各部分が識別されたpHを表す。
【図11】健康患者および糖尿病患者から得られたpI識別されたDPP−アイソフォームのpH対DPP−IV活性のブレイクアウトプロットである。S04、S11、S07、およびS02は健康であり、残りは糖尿病である。
【図12】各対象からのpI識別されたDPP−IVアイソフォームIが90%DPP−IV活性に達するpHのプロットである。S04、S11、S07、およびS02は健康であり、残りは糖尿病である。
【図13】各対象からのpI識別されたDPP−IVアイソフォームIが60%DPP−IV活性に達するpHのプロットである。S04、S11、S07、およびS02は健康であり、残りは糖尿病である。
【図14】識別されたDPPアイソフォームの測定パラメータが疾患と相関し得る様々な方法を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照によりその全内容が本明細書に組み込まれている、2006年3月13日出願の米国仮出願第60/781924号、名称「Method of Diagnosing Disease by Isoform Profiling」、2006年6月9日出願の米国仮出願第60/804397号、名称「Separation and Characterization of Dipeptidyl Peptidase IV Isoforms Using Free Flow Electrophoresis (FFE)」、および2007年3月2日出願の米国仮出願出願番号不明(整理番号P−7148)、名称「Separation and Characterization of Dipeptidyl Peptidase IV Isoforms and/or Isozymes Using Matrix (Free Flow) Electrophoresis」の出願日の権利を主張する。
【0002】
本発明は、概ね、疾患または病状の診断および予後に関する。
【背景技術】
【0003】
疾患のリスク評価または診断の現法は、しばしば、除去の過程である摩耗による診断、または侵襲的手術もしくは生検による診断に依存している。確定診断を得た後でさえ、予後は、通常、主観的要因に基づいている。
【0004】
代謝病などのある種の疾患では、客観的な診断を行うことができる方法がしばしば厄介であり、時間がかかり、そして費用もかかる。例えば、2型糖尿病を診断する第1の方法は、血漿中の血糖レベルを評価する空腹時血漿中ブドウ糖試験である。この試験では、患者が8〜14時間絶食する必要があり、しばしば、何時間かの間から何日間かの間に複数回の採血を必要とする。加えて、空腹時血漿中ブドウ糖試験は2型糖尿病の存在を診断するのには有用であるが、この試験は疾患予後を予測する能力が極めて制限されている。
【0005】
医学では、疾患または病状を診断および治療するための、より非侵襲的であり、肉体的負担が少なく、かつより正確な方法を常に探求している。生物学的過程の理解が拡大し、これらの過程に関連している生化学が明らかになるにつれて、特定の疾患または病状のマーカーまたは指示体として、どの組成物が同定され得るかに関するある種の理論が発展した。プロテアーゼおよびペプチダーゼを、クラスとして、それらの、診断における有用性および患者を治療するための標的としての有用性に関して調査した。
【0006】
一般的背景として、プロテアーゼ/ペプチダーゼは、通常、作用部位、基質選択性、および作用機序など、多くの判定規準によって分類されている。例えば、アミノペプチダーゼは、選択的に、ポリペプチドのN末端残基で作用し、カルボキシペプチダーゼは、選択的に、C末端で作用し、そして、エンドペプチダーゼは、これらの2つの末端の間の部位で作用する。
【0007】
ジペプチジルペプチダーゼ(DPP)は、それらの特異的基質から、ジペプチドユニット、すなわち2アミノ酸ユニットを特異的に切り出すペプチダーゼである。多くの異なったDPPが存在し、基質選択性はしばしば、切断部位のすぐN末端側のアミノ酸残基で表現される。例えば、DPP−I(IUBMB酵素命名法EC.3.4.14.1)は、XaaがArgもしくはLysであるか、またはYaaもしくはZaaがProである場合を除いて、N末端ジペプチドXaa−Yaa−|−Zaaを放出するリソソームシステイン型ペプチダーゼである。DPP−II(IUBMB酵素命名法EC.3.4.14.2)は、YaaがAlaまたはproである場合に優先的に、N末端ジペプチドXaa−Yaa−|−を放出するリソソームセリン型ペプチダーゼである。DPP−III(IUBMB酵素命名法EC.3.4.14.4)は、ペプチドに広範な活性を有するサイトゾルペプチダーゼであるが、Zが任意のアミノ酸である場合、pH9.2で、Arg−Arg−Zへの強い選択性を示す。DPP−IV(IUBMB酵素用語体系EC.3.4.14.4)は、Zaaがproでもヒドロキシプロリンでもないという条件で、Yaaがproである場合に優先的に、Xaa−Yaa−|−ZaaからN末端ジペプチドを放出する膜結合セリン型ペプチダーゼである。
【0008】
DPPは、生理的に重要な広範な活性に関与しており、神経系、内分泌系、免疫系、および消化系の調節と関連付けられている。DPP活性は、タンパク質分解および酵素活性化など、多数の細胞内機能および細胞外機能で実証されている。
【0009】
前述した特定のDPPに関しては、DPP−IVならびにそれに関連したアイソフォームおよびアイソザイムまたは構造類似体、ならびにDPP−IV様の活性を示すタンパク質が広範に研究されている。DPP−IV様の活性を示すタンパク質は、ジペプチジルペプチダーゼIV活性および/または構造類似体、または「DASH」と呼ばれている。DPP−IVは、限定されるものではないが、DPP4、DP4、DAP−IV、FAPβアデノシンデアミナーゼ複合タンパク質2、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(ADAbp)、ジペプチジルアミノペプチダーゼIV;Xaa−Pro−ジペプチジル−アミノペプチダーゼ;Gly−Proナフチルアミダーゼ;ポストプロリンジペプチジルアミノペプチダーゼIV;リンパ球抗原CD26;糖タンパク質GP110;ジペプチジルペプチダーゼIV;グリシルプロリンアミノペプチダーゼ;グリシルプロリンアミノペプチダーゼ;X−プロリルジペプチジルアミノペプチダーゼ;pepX;白血球抗原CD26;グリシルプロリルジペプチジルアミノペプチダーゼ;ジペプチジル−ペプチドヒドロラーゼ;グリシルプロリルアミノペプチダーゼ;ジペプチジルアミノペプチダーゼIV;DPP IV/CD26;アミノアシル−プロリルジペプチジルアミノペプチダーゼ;T細胞誘発分子Tp103;X−PDAP(Burgessら、特許文献1参照)を含めた多くの名前で呼ばれているII型膜タンパク質である。
【0010】
セプラーゼ、線維芽細胞活性化タンパク質α、DPP6、DPP8、DPP9、アトラクチン、N−アセチル化−α−結合酸性ジペプチダーゼI、II、およびL、静止細胞プロリンジペプチダーゼ、胸腺特異的セリンプロテアーゼ、ならびにDPP IV−βなど、多数のDASHタンパク質が報告されている(非特許文献1参照)。
【0011】
DPP−IVは、腸、肝臓、肺、腎臓、および胎盤を含めた様々な異なった組織の上皮細胞および内皮細胞上で構成的に発現される(非特許文献2、3参照)。DPP−IVは、循環Tリンパ球上で発現されており、細胞表面抗原であるCD−26と同義であることが示されている(非特許文献4参照)。膜結合型に加えて、DPP−IVは可溶型でも存在し、DPP−IV活性は血液血漿および滑液などの体液中で見出すことができる(非特許文献4、5参照)。
【0012】
DPP−IVは、神経ペプチド代謝、T細胞活性化、細胞接着、腎臓および腸でのプロリン含有ペプチドの消化、HIV感染およびアポトーシス、ならびにある種のメラノーマ細胞の腫瘍形成能の調節で重要な役割を果たしていると考えられている(非特許文献6、7参照)。
【0013】
DPP−IVの天然基質には、数種のケモカイン、サイトカイン、神経ペプチド、循環ホルモン、および生理活性ペプチドが含まれる(非特許文献8参照)。DPP−IVは、ペプチドホルモンの代謝およびアミノ酸輸送の調節における主要な役割が示唆されている(非特許文献9参照)。
【0014】
DPP−IV発現は、分裂促進性または抗原性の刺激で、T細胞で増大するが、これは免疫系での役割を示唆している(非特許文献6参照)。サイトカイン産生、IL−2媒介細胞増殖、およびB細胞ヘルパー活性などのTリンパ球の他の様々な機能も、DPP−IV活性に依存していることが示されている(非特許文献10参照)。加えて、DPP−IVは、T細胞活性化中および増殖中に同時刺激機能を有するようである(非特許文献11参照)。
【0015】
DPP−IVは、細胞外酵素であるアデノシンデアミナーゼ(ADA)を局在化させるための膜固定化機能(非特許文献12参照)、ならびにコラーゲンおよびフィブロネクチンへの結合による細胞マトリックス結合への参加(非特許文献13参照)を含めた他の生物学的過程に関与している。
【0016】
DPP−IVは、内分泌調節および代謝生理における役割も演じていると考えられている。例えば、DPP−IVは、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)のアミノ末端His−Alaジペプチドを切断して、GLP−1受容体アンタゴニストを生成し、それによって、GLP−1に対する生理反応を短縮する。DPP−IVは、その基質にインシュリン分泌性ホルモンGLP−1および胃抑制ペプチド(GIP)が含まれ、これらは、それらのN末端アミノ酸2残基が除去されることによって不活性化されるので、グルコース代謝の制御に関係付けられている(非特許文献14参照)。
【0017】
正常な生理機能に加えて、DPPは、癌、自己免疫疾患、心臓血管疾患、代謝病、および感染性疾患を含めた疾患状態におけるそれらの役割が研究されている。
【0018】
例えば、DPP−IVは肺転移性乳癌細胞および前立腺癌細胞の接着分子であることが示唆されている(非特許文献15参照)。良性前立腺肥大症を有する患者からの組織ホモジネート中、およびプロスタトソーム(prostatosome)中で高DPP−IV活性が見出されている(非特許文献16参照)。
【0019】
自己免疫疾患である乾癬、関節リウマチ(RA)、および扁平苔癬の患者からのヒト皮膚線維芽細胞で高レベルのDPP−IV発現が見出されている(非特許文献17参照)。
【0020】
DPP−IVは、肥満および食欲調節など、多くの代謝病に関連している。例えば、より広範に研究されているDPP−IV関連代謝病の1つが2型糖尿病である。Mannucciらは、糖尿病における慢性高血糖とDDP−IVとの間の相関関係を定義し、記述している。この研究は、循環DPP−IV活性がII型糖尿病における高血糖の度合いと直接的に相関していると結論付けている。
【0021】
他の研究は、DPP−IVと、血糖レベルを調節するホルモンカスケードに関与する様々なホルモンとの間の相関を論じている。これらの研究は、インシュリン分泌に重要なホルモンをDPP−IVが分解すると結論付けている。詳細には、DPP−IVがグルカゴン様1ペプチド(GLP−1)を分解し、その結果、インシュリン分泌の低減がもたらされ、それゆえに血糖の増大がもたらされると示唆されている。この現象に基づいて、II型糖尿病の治療用にDPP−IVの阻害剤が開発されている(非特許文献18参照)。
【0022】
DPP−IVは、CD4+T細胞におけるHIV−1およびHIV−2ウイルスの侵入および感染性に明らかに必須である(非特許文献19参照)。したがって、DPP−IVの抑制が、この機構も抑制するかもしれないという示唆がいくらかある。
【0023】
【特許文献1】米国特許第7169926号明細書
【非特許文献1】Busek et al., Int. J. Biochem. Cell Biol. 36:408-421 (2004)
【非特許文献2】Hartel et al., Histochemistry 89(2):151-161 (1988)
【非特許文献3】Yaron and Naider, Critical Rev. Biochem. Mol. Biol. 28(1):31-81 (1993)
【非特許文献4】Sedo et al., Arthritis Res. Ther. 7:253-269 (2005)
【非特許文献5】Gorrell, Clinical Sci. 108:277-292 (2005)
【非特許文献6】Mattem et al., Scand. J. Immunol. 33:737 (1991)
【非特許文献7】Pethiyagoda et al., Clin. Exp. Metastasis 18(5):391-400 (2000)
【非特許文献8】Lambeir et al., J. Biol. Chem. 276(32):29839-29845 (2001)
【非特許文献9】Hildebrandt et al., Clin. Sci. (Lond.) 99(2):93-104 (2000)
【非特許文献10】Schon et al., Scand. J. Immunol. 29:127 (1989)
【非特許文献11】von Bonin et al., Immunol. Rev. 161:43-53 (1998)
【非特許文献12】Franco et al., Immunol. Rev. 161: 27-42 (1998)
【非特許文献13】Loster et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 217(1):341-348 (1995)
【非特許文献14】Mannucci et al., Diabetologia 48:1168-1172 (2005)
【非特許文献15】Johnson et al., J. Cell. Biol. 121:1423 (1993)
【非特許文献16】Vanhoof et al., Eur. J. Clin. Chem. Clin. Biochem. 30:333 (1992)
【非特許文献17】Raynaud et al., J. Cell. Physiol. 151:378 (1992)
【非特許文献18】Green et al., Diab. Vasc. Dis. Res. 3(3):159-165 (2006)
【非特許文献19】Wakselman et al., J. Dermatol. Sci. 22:152-160 (2000)
【非特許文献20】DiCarlantonio et al., Gamete Res. 15(2):161 175 (2005)
【非特許文献21】Mazzocco et al., FEBS Journal 273(5):1056 1064 (2006)
【非特許文献22】Schmauser et al., Glycobiol. 9(12):1295 1305 (1999)
【非特許文献23】Harrison's Principles of Internal Medicine
【非特許文献24】Zuo et al., Analytical Biochem. 284:266-278 (2000)
【非特許文献25】Becker et al., J. Micromech. Microeng. 8:24 28 (1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
最近、DPP研究のいくつかの道筋が、DPP関連の疾患状態および病状の処置および治療を開発する手段として、DPPレベルの操作に焦点を合わせた。しかし、これまでのところ、この研究からはわずかな処置および治療しか得られていない。
【課題を解決するための手段】
【0025】
DPPに基づいた治療および診断手段の開発、ならびに生物学的過程におけるその役割が依然として求められている。ここに記載する本発明の実施形態は、DPP関連の疾患状態または病状の予後または診断の方法を対象としている。詳細には、特定のDPPの識別された部分の1つまたは複数のパラメータを測定し、上記測定を、上記疾患状態または病状の存在、不在、または重度と相関させる。
【0026】
ここに記載する本発明の別の実施形態は、DPP関連の疾患状態または病状の予後または診断の方法を対象としている。詳細には、DPPアイソフォームの識別された部分の1つまたは複数のパラメータを測定し、上記測定を、上記疾患状態または病状の存在、不在、または重度と相関させる。
【0027】
記載する発明の別の実施形態は、II型糖尿病の診断または予後の方法を対象としている。詳細には、患者試料から得られたDPP−IVアイソフォームの1つまたは複数の識別された部分の少なくとも1つのパラメータを測定し、上記測定をII型糖尿病の存在、不在、または重度と相関させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本明細書に記載の方法は、ジペプチジルペプチダーゼ(DPP)関連の疾患状態または病状のリスク評価、診断、または予後を提供する。詳細には、記載の方法は、特定のDPPパラメータに関連した疾患状態または病状のリスク評価、診断、または予後の方法に関する。記載の方法の実施形態によれば、識別されたDPP部分のパラメータが測定される。上記測定は、その後、前記疾患状態または病状の存在、不在、または重度と相関される。
【0029】
この出願の目的では、「プロテアーゼ」および「ペプチダーゼ」という用語は同義的に使用され、ペプチドアミド結合の加水分解を触媒する酵素を指す。ジペプチジルペプチダーゼ(DPP)は、ポリペプチドからジペプチドユニットを切り出すプロテアーゼである。
【0030】
本明細書で使用される場合、「特定のDPPの識別された部分」という用語は、何らかの方法でお互いから識別、分離、または単離された、患者試料から得られた特定のDPP(例えば、特定のDPPファミリー、例えば、DPP−I、DPP−II、DPP−III、DPP−IVなどからの1つまたは複数のアイソフォーム)を指す。
【0031】
一実施形態では、上記特定のDPPの少なくとも1つのアイソフォームを、上記DPPの他の少なくとも1つのアイソフォームから識別するであろう何らかの病状に上記特定のDPPを曝露する。識別された部分のそれぞれが特定のDPPの1つまたは複数のDPPアイソフォームを含有してもよく、また、一部の部分がDPPアイソフォームを含有しなくてもよい。別の実施形態では、DPP(1ファミリーまたは複数のファミリーのDPPが含まれてもよい)を、上記DPPの他の少なくとも1つのアイソフォームから上記DPPの少なくとも1つのアイソフォームを識別するであろう何らかの病状に曝露する。
【0032】
詳細には、完全に、または部分的のみに部分に、そして互いから個々のDPPアイソフォームを識別できる。したがって、1つの識別された部分が1つまたは複数のアイソフォームを含有してもよく、あるいは識別された部分のそれぞれが1つのアイソフォームのみを含有してもよい。同様に、1つの識別された部分が1つのアイソフォームを含有してもよく、一方で、他の識別された部分が複数のアイソフォームを含有している。加えて、一部の識別された部分は、1つまたは複数の他の部分が1つまたは複数のDPPアイソフォームを含有している限り、DPPアイソフォームを含有しないでもよい。
【0033】
上記特定のDPPは、DPP−I、DPP−II、DPP−III、またはDPP−IVを含めたいかなる特定のDPPファミリーまたはDASHファミリーの一員でもよい。例示的実施形態では、DPPがDPP−IVである。特定のDPPと指定されていないDPPには、特定のものではないDPPと特定のDPPとの両方が含まれる。
【0034】
本明細書で使用される場合、DPPの「アイソフォーム」という用語は、何らかの物理的な方法で相違しているが、すべてが共通の特徴的触媒活性、相同な一次構造/アミノ酸配列を有するか、または同一の遺伝子座に由来する1つまたは複数のDPP酵素の複数の形態のうちの任意のものを指す。DPPアイソフォームの触媒活性は、触媒の程度または速度が同一である必要はなく、共通の基質プロフィールのみでよい。同様に、アイソフォームの一次構造が同一である必要はなく、その酵素のアミノ酸配列における小さな付加、欠失、または変異の結果生じたものでもよい。
【0035】
アイソフォームは、類似または同一の一次構造を有してもよく、同じ触媒活性を有しても、異なった1つまたは複数の触媒活性を有してもよい。アイソフォームの一次構造は、同じ触媒活性を保持しながら、有意に異なっていることもある。アイソフォームは、同じか、または異なった二次構造、三次構造、および/または四次構造を有してもよいが、それらが同一または類似の一次構造および/または酵素活性を保持し、かつ/または同一の遺伝子座に由来する限り、それらは依然としてお互いのアイソフォームである。
【0036】
アイソフォームは、同一の遺伝子座に由来しても、異なった遺伝子座に由来してもよい。それらは異なった対立遺伝子、複数の遺伝子座、または同一の遺伝子から産生されたメッセンジャーRNAの選択的スプライシングの結果でも、または、多糖、リン酸、スルフヒドリル、シアル酸、または他の基の添加などの翻訳後修飾の結果でもよい。
【0037】
本明細書で使用される場合、「アイソフォーム」にはアイソザイムも含まれる。本明細書で使用される場合、「アイソザイム」(あるいはイソ酵素)という用語は、アイソフォームの1タイプであり、それは一次構造/アミノ酸配列における遺伝学的に決定されている相違から生じる複数の酵素形態のうちの任意のものを指す。
【0038】
同一の触媒活性、遺伝子座、または一次構造を共有する任意の群の酵素は、お互いのアイソフォームである。複数のDPPアイソフォームが知られている。例えば、DPP−Iは、同一の遺伝子(Entrez Gene遺伝子ID:1075)からコードしている転写産物変種に由来する少なくとも2つのアイソフォームで存在している。同様に、DPP−II(非特許文献20参照)、DPP−III(非特許文献21参照)、およびDPP−IV(非特許文献22参照)の複数のアイソフォームが報告されている。
【0039】
例えば、プロリンの後のジペプチド結合を切断するいかなる酵素もDPP−IVアイソフォームである。当業者ならば、DPPの多数のアイソフォームに容易に気づく。本明細書では、すべてのアイソフォームが同定されているわけではない。限定ではなく、例として、DPP−IVアイソフォームには、DPP−IV、DPP−IVの様々なシアル化形態、膜結合DPP−IV、可溶性DPP−IV、ならびに、セプラーゼ、線維芽細胞活性化タンパク質α、DPP6、DPP8、DPP9、アトラクチン、N−アセチル化−α−結合酸性ジペプチダーゼI、II、およびL、静止細胞プロリンジペプチダーゼ、胸腺特異的セリンプロテアーゼ、およびDPP IV−βなど、任意のジペプチジルペプチダーゼIV活性および/または構造ホモログ(DASH)が含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
測定できるDPPパラメータには、量、濃度、活性、発現、または翻訳後修飾の量もしくはタイプが含まれる。
【0041】
DPPの「量」には、DPPの存在、不在、または量が含まれる。DPPの「活性」には、比活性を含めた、酵素活性の存在、不在、量、程度、または速度が含まれる。DPPの「発現」には、DPP発現の存在、不在、速度、または量が含まれる。DPPの「濃度」は、部分に存在する単位容積あたりのDPPアイソフォームの量である。
【0042】
DPPパラメータは、直接的に測定しても、間接的に測定してもよく、また定性的であっても、定量的であってもよい。
【0043】
DPP活性は、DPP活性を定量的または定性的に測定できるいかなるアッセイを用いて測定してもよい。DPPの活性を測定するのに適したアッセイには、検出可能に標識された基質におけるDPP活性の加水分解産物の存在または量を検出するアッセイが含まれる。上記標識は、直接的に検出可能でも、間接的に検出可能でもよく、蛍光発生的でも、化学発光でも、熱量測定でも、放射性でもよい。蛍光発生標識には、7−アミノ−4−メチルクマリン(AMC)および7−アミノ−4−トリフルオロメチルクマリン(AFC)が含まれる。
【0044】
当業者ならば理解するであろうが、シグナルの検出方法は、そのアッセイで使用される正確な検出系に依存するであろう。上記検出系は、質量変化、アミノ酸配列もしくはペプチド長の変化、発色変化、または蛍光発生変化を検出するものでよい。上記検出方法は、当技術分野で記述されている多様な検出スキームの中でもとりわけ、検出可能な変化をもたらす二次酵素反応を含めた二次検出スキームを利用するものでもよい。
【0045】
例えば、放射標識された検出試薬が利用される場合には、シンチレーション計測およびオートラジオグラフィー(通常、走査デンシトメトリーと併用される)など、生物試料からのシグナルを定量できる技術、または生物試料からのシグナルを参照試料からのシグナルと比較できる技術を用いてシグナルが測定されるであろう。化学発光検出系が使用される場合には、シグナルは通常、ルミノメーターを用いて検出されるであろう。蛍光検出系が使用される場合には、分光蛍光光度計を用いて蛍光を測定することができる。検出系からシグナルを検出する方法は当技術分野で周知である。
【0046】
一部の実施形態では、検出可能に標識された基質におけるDPP活性の加水分解産物の存在または量を検出するアッセイを介して、DPP活性を測定する。DPP−IV活性は、DPP−IVによって触媒されるであろう検出可能に標識された任意の基質、すなわちX−Y−Rの加水分解を検出するアッセイを用いて測定できる。式中、Xは任意のアミノ酸であり、YはPro(プロリン)、Ala(アラニン)、またはArg(アルギニン)であり、Rは直接的または間接的に検出可能な任意の標識である。
【0047】
DPP量は、定量的または定性的に1つまたは複数のDPPアイソフォームの量を測定できるいかなるアッセイを用いて測定してもよい。DPP量を測定するのに適したアッセイには、ウェスタンブロット分析、タンパク質分光光度法、ラジオイムノアッセイ、競合結合アッセイ、およびELISAアッセイが含まれるが、これらに限定されない。この点では、1つまたは複数のDPPアイソフォームに特異的な抗体が特に有用である。
【0048】
DPP濃度は、1つまたは複数のDPPアイソフォームの濃度を定量的または定性的に測定できるいかなるアッセイを用いて測定してもよい。DPP濃度を測定するのに適したアッセイには、ウェスタンブロット分析、タンパク質分光光度法、ラジオイムノアッセイ、競合結合アッセイ、およびELISAアッセイが含まれる。この点では、1つまたは複数のDPPアイソフォームに特異的な抗体が特に有用である。
【0049】
DPP発現は、1つまたは複数のDPPアイソフォームの発現を定量的または定性的に測定できるいかなるアッセイを用いて測定してもよい。DPP発現を測定するのに適したアッセイは、通常、DPP mRNAまたはタンパク質を検出し、それらには、ノーザンブロット分析およびウェスタンブロット分析またはこれらの変法(例えば、ファーウェスタン分析、マイクロアレイチップ)が含まれる。
【0050】
翻訳後修飾のタイプまたは程度は、1つまたは複数のDPPアイソフォームの修飾を定量的または定性的に測定できるいかなるアッセイを用いても測定できる。翻訳後修飾のタイプまたは程度を測定するのに適したアッセイには、レクチン結合、ウェスタンブロット分析、タンパク質分光光度法、ラジオイムノアッセイ、競合結合アッセイ、およびELISAアッセイが含まれる。
【0051】
1つまたは複数のパラメータを測定できる。例えば、単一パラメータ(例えば、量、濃度、活性、発現、翻訳後修飾の量またはタイプ)を測定できる。別法では、2つ以上のパラメータを測定できる。例えば、量および濃度、量および活性、量および発現、濃度および活性、濃度および発現、または活性および発現のそれぞれ両者を測定できる。同様に、量、活性、および発現;量、濃度、および発現;または濃度、活性、および発現を測定できる。
【0052】
2種以上の測定を行う場合、それらを同時に行っても、連続して行ってもよい。例えば、活性と同時に量を測定してもよい。別法では、活性の前または後に量を測定してもよい。3種以上の測定を行う場合、それらを同時に行っても、連続して行ってもよい。例えば、翻訳後修飾のタイプおよび活性を同時に測定して、量を翻訳後修飾のタイプおよび活性の前に測定してもよく、または、量、翻訳後修飾のタイプ、および活性をそれぞれ、互いに同時に又は連続して測定する。同様に、さらに多くの測定を行う場合、それらを、互いに同時に又は連続して行ってもよく、各グループが、他のあらゆるグループと同時に又は連続して測られるように、可能な各方法でグループ分けしてもよい。換言すれば、各測定を要因的方法または分配的方法でグループ分けしてもよく、各グループは、他のすべてのグループと連続的に又は同時に測定することができる。
【0053】
複数種の測定の場合に加えて、いかなる所与の測定も、それが1つのパラメータの測定でも、複数のパラメータの測定でも、任意の所与の患者試料に関して複数回行うこと、すなわち反復することができる。
【0054】
加えて、上記部分に関して、いかなる組合せの測定を行ってもよい。例えば、上記部分のうちの1つ、一部、またはすべてに関して、単一のパラメータを測定してもよい。同様に、上記部分の1つ、一部、またはすべてに関して、複数のパラメータを測定してもよい。単一のパラメータを1つまたは一部の部分に関して測定し、その一方で、別のパラメータを他の部分またはすべての部分に関して測定してもよい。例えば、量を1つの部分のみに関して測定してもよく、その一方で、すべての部分の活性を測定してもよい。同様に、1つの部分のみの活性を測定してもよく、その一方で、すべての部分の量を測定してもよい。
【0055】
1つまたは複数のDPPパラメータを測定する場合、患者試料を多数のアリコートに分割して、別々のアリコートを異なったDPPパラメータを測定するのに用いても、反復測定を行うのに用いてもよい。加えて、または別法として、異なったDPPパラメータの測定用、または反復測定用に、識別されたDPP部分のそれぞれを多数のアリコートに分割してもよい。反復測定は本発明の方法に必要ではないが、本発明の実施形態の多くは、反復試験、とりわけデュプリケート試験、およびトリプリケート試験を利用するであろう。
【0056】
別法として、アレイタイプのアッセイ、または多重検出技術を利用したアッセイ(例えば、異なった蛍光色素マーカーで標識された検出試薬を利用したアッセイ)など、異なったDPPパラメータの個々のレベルを単一のアッセイで測定できるアッセイを用いて、複数のDPPパラメータのレベルを単一反応で測定するために、患者試料、またはそれから得られた1アリコートを試験してもよい。
【0057】
本明細書で使用される場合、「DPP関連の疾患または病状」という用語は、1つまたは複数の特定の測定可能DPPパラメータの相違によって特徴付けられる疾患または病状を指す。DPP関連の疾患または病状は、必ずしも、DPPの変化によって引き起こされたものではなく、1つまたは複数のDPPパラメータを測定することによって診断またはモニターできるものである。
【0058】
DPP関連の疾患状態および病状には、代謝病、自己免疫疾患、癌、およびウイルス感染が含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
代謝病は、代謝の障害であり、これには後天性疾患および遺伝病の両方が含まれるが、本明細書でもそのように使用される。それらのうちの多くが非特許文献23に記載されている。一般に、代謝病は、以下の3つの主要クラス、すなわち、糖原病(すなわち、II型糖尿病など、糖質代謝に影響を与える疾患)、脂肪酸酸化障害(すなわち、ファブリ病など、脂肪成分の代謝に影響を与える障害)、およびミトコンドリア疾患(すなわち、リー症候群など、ミトコンドリアに影響を与える障害)に分けられる。
【0060】
本発明で検出できる代謝病状態には、II型糖尿病、低血糖、高血糖、グレーブス病、クッシング症候群、アルカプトン尿症、白子症、ヒスチジン血症、高オルニチン血症、ウィルソン病、テイ−サックス病、ニーマン−ピック病、クラッベ病、パジェット病、メープルシロップ尿症、またはフェニルケトン尿症が含まれるが、これらに限定されない。例示的実施形態では、上記DPPはDPP−IVであり、上記疾患はII型糖尿病である。
【0061】
本発明で検出できる自己免疫疾患には、関節リウマチ、扁平苔癬、乾癬、ぶどう膜炎、溶血性貧血、リウマチ熱、クローン病、ギラン−バレー症候群、乾癬、甲状腺炎、グレーブス病、重症筋無力症、糸球体腎炎、自己免疫性肝炎、または全身性紅斑性狼瘡が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、上記自己免疫疾患は乾癬、関節リウマチまたは扁平苔癬であり、上記DPPはDPP−IVである。
【0062】
本発明で検出できる癌には、乳房;大腸;直腸;肺;中咽頭;下咽頭;食道;胃;膵臓;肝臓;胆のう;輸胆管;小腸;腎臓、膀胱、および尿路上皮を含めた尿路;頚管、子宮、卵巣、絨毛膜癌、および妊娠絨毛性疾患を含めた女性生殖管;前立腺、精のう、精巣、および胚細胞腫を含めた男性生殖管;甲状腺、副腎、および脳下垂体を含めた内分泌腺の原発性および転移性の固形腫瘍および癌腫;血管腫、黒色腫、骨または軟部組織から生じる肉腫、およびカポジ肉腫を含めた皮膚;星状細胞腫、神経膠腫、グリア芽腫、網膜胚種細胞腫、神経腫、神経芽腫、神経鞘腫、および髄腹腫を含めた、脳、神経、眼、および髄膜の腫瘍;緑色腫、プラズマ細胞腫、紅斑期および腫瘍期の菌状息肉症、ならびに皮膚T細胞性リンパ腫/白血病を含めた白血病などの造血器悪性腫瘍から生じた固形腫瘍;ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫の両方を含めたリンパ腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0063】
本発明で検出できるウイルス感染には、アデノウイルス科、ビルナウイルス科、ブンヤウイルス科、コロナウイルス科、フラビウイルス科、ヘルペスウイルス科、オルソミクソウイルス科、パポバウイルス科、パルボウイルス科、ピコルナウイルス科、レオウイルス科、レトロウイルス科(例えば、HIV)、ラブドウイルス科、またはトガウイルス科など、ヒトおよび他の動物にとって病原性であるウイルス科によって引き起こされた感染が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、上記DPPはDPP−IVであり、上記ウイルス病はHIVである。
【0064】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、DPP関連に疾患状態または病状の診断、予後、疾病進行モニタリング、またはリスク評価を必要とする任意の生物を指し、上記患者は、DPP発現に関連した生理学を有する。そのような患者には、ヒト、高等霊長類、他の哺乳動物(例えば、ネコ、イヌ、およびウマなどの家畜哺乳動物、ラットおよびマウスなどの齧歯動物、ならびにライオン、トラ、およびクマなどの野生動物)、鳥類(例えば、ニワトリ、インコ)、および他の動物が含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
本明細書で使用される場合、「患者試料」または「生物試料」という用語は、標的酵素を含有すると予測され得るであろう患者から採取されたか、または由来する任意の試料を指し、それには細胞性試料および無細胞試料の両方が含まれる。患者試料には、筋、肝臓、肺、脾臓、脂肪、乳房、および腫瘍組織などの組織;全血、血漿、血清、および血球などの血液および血液産物;ならびに尿、唾液、涙、粘液、羊水、脳脊髄液、滑膜関節液、および精液などの他の生物体液が含まれるが、これらに限定されない。患者試料は、複数の体液および/または組織の組合せも含有できる。
【0066】
試料は、静脈穿刺、腰椎穿刺、羊水穿刺、および組織生検など、臨床的に許容できるいかなる方法で患者から入手してもよい。
【0067】
試料は、患者から得られたまま直接使用してもよいが、本発明の一態様では、DPPを部分に識別する(例えば、DPPアイソフォームを部分に識別する)前、またはDPPパラメータを測定する前に、試料処理が企図されている。処理には、均質化、希釈、濃縮、超音波処理、凍結、保存剤もしくは他の薬剤との混合、またはこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0068】
加えて、DPPが膜に結合していると予測される細胞または他の組織を含有する試料も、DPPが細胞膜から遊離して、それによって、試料からタンパク質/酵素を分離または単離するための、当技術分野で認められている方法のいずれかで、それが利用可能となるように処理してもよい。膜結合タンパク質を遊離させる方法は当技術分野で周知であり、それらには、凍結/融解、均質化処理、超音波処理、および活性酵素の化学的または酵素的な膜からの遊離が含まれる。
【0069】
一部の例では、EDTA、プロテアーゼ阻害剤、または生物試料の輸送、保存、および取り扱いに適した何らかの他の成分を含む容器内に患者試料を収集する。
【0070】
患者試料が液体で構成される場合、処理には、血液試料中の赤血球、白血球、および血小板など(例えば血漿を得るために)、有核細胞および/または非有核細胞の除去の形態が含まれていてもよく、また、血液から特定の凝固カスケードタンパク質を除くなど(例えば血清を得るために)、特定のタンパク質の除去が含まれていてもよい。例えば、血液は、ヘパリン、クエン酸、またはプロテアーゼ阻害剤を有する容器内に収集してもよく、収集の際にヘパリン、クエン酸、またはプロテアーゼ阻害剤と接触させてもよい。
【0071】
例えば、識別または測定前に総タンパク質含量を正規化するための、試料の濃縮または希釈を、追加の処理に含めてもよい。これらの活動を行うためのプロトコールは当技術分野で周知である。
【0072】
DPPパラメータの測定と、疾患状態または病状とを相関させた後、結果がオペレータに伝達されてもよい。結果には、疾患状態または病状の存在、不在、または重度が含まれている。
【0073】
「オペレータ」は、医師、看護師、医師助手、医療技術者、検査技師、または本発明の1つもしくは複数のステップを実施する機械もしくは装置を操作する任意の者、または患者を含めた、上記診断もしくは予後情報を受信できる任意の者でよい。例えば、上記診断または予後情報は、ファクシミリ、電話、テキストメッセージング、またはEメールを介して患者または患者の代理に自動的に伝達されてもよい。
【0074】
結果を伝えるためのいかなる手段を用いてもよく、それらには、電子スクリーン、デジタルスクリーン、または印刷可能物などの媒体に疾患状態を表示すること、電話、テキストメッセージング、Eメール、またはファクシミリを介して、ブザー、ベル、電子生成音声、または録音音声などの可聴信号を発生させることが含まれるが、これらに限定されない。
【0075】
DPPアイソフォームをDPP部分に部分的または完全に識別するのは、任意のDPPパラメータの測定の前でも、それと同時でもよい。例えば、3つ以上のタイプのDPPアイソフォームが試料中に存在すると仮定した場合、上記アイソフォームを、2つの部分のみに識別して、各部分が複数のタイプのアイソフォームを含有する(すなわち、部分的に識別される)ようにしても、各部分が1つのタイプのアイソフォームのみを含有するように、上記アイソフォームを部分に識別(すなわち、完全に識別)してもよい。同様に、1つの部分が1つのタイプのみのアイソフォームを含有し、他の部分が複数のタイプのアイソフォームを含有するように、上記アイソフォームを2つ以上の部分に部分的に識別してもよい。
【0076】
DPP部分は、物理的な分離もしくは単離、またはアイソフォームを相互に同定もしくは識別する他の方法を含めたいかなる手段で識別してもよい。
【0077】
例えば、識別は、電気泳動移動度または等電点(pI);熱安定性;分子量;アイソフォームの一次構造が相違している場合には、アミノ酸配列;抗体親和性または結合活性;翻訳後修飾の程度またはタイプ;およびKmまたは速度定数などの動態特性などの生化学的性質の相違に基づいたものであり得る。
【0078】
DPP部分を物理的に分離するか、または物理的分離を行わずに部分を識別するのに、異なったDPPアイソフォームに特異的な抗体またはレクチンを用いてもよい。例えば、異なったDPPアイソフォームのそれぞれに特異的な抗体が異なった検出可能標識を有していてもよく、その場合、部分を識別するのに、物理的分離を必要としない。別法では、異なったDPPアイソフォームを部分に物理的に分離するのに、上記抗体を支持体またはカラムで用いてもよい。
【0079】
分離の方法には、pIに基づいて分離を行う等電点焦点法;電荷および/または分子量に基づいて識別を行える、ゲルもしくはフィルターなどのマトリックス中またはゲルフリーの電気泳動法;上記アイソフォームへのレクチン結合の程度またはそれに親和性を有するレクチンの多様性;抗体結合;およびアフィニティークロマトグラフィーまたはサイズ排除クロマトグラフィー法が含まれる。
【0080】
本明細書で使用される場合、「等電点」(pI)という用語は、分子の正味の荷電がなくなるpHである。pIは等電pHとも呼ばれる。したがって、本出願の目的では、「pI」および「等電pH」という用語は同義的に使用される。例示的実施形態では、DPP部分がpIに基づいて識別され、上記特定のDPPがDPP−IVである。
【0081】
等電点焦点法の方法には、フリーフロー電気泳動、等電点電気泳動、またはクロマトフォーカシング、もしくは経時的にpHが変化する緩衝系の、固相を通過する流動によって促進される他の固相媒介の分離法が含まれる。
【0082】
等電点電気泳動では、対象とする試料をゲルスラブ、フィルター、または固定されたpH勾配を含有する他の媒体に直接的に注入または投与する。
【0083】
pH勾配は電場の方向に平行して走行し、試料中のタンパク質は、そのpIに等しいpH環境に達する以前の異なったpH環境を通って一方向に移動することによって相互に分離される。
【0084】
タンパク質がいったんそのpIに達すれば、それはマトリックス物質中で不動となるであろう。この点で、試料をマトリックス物質から取り出して、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)(非特許文献24参照)、平面チップ上での2次元目分離(非特許文献25参照)、蛍光分析などの酵素活性を検出するためのアッセイ、または任意のDPPパラメータを測定するのに適したアッセイなどのさらなる分析に利用にする。
【0085】
フリーフロー電気泳動は、伝統的な電気泳動におけるアクリルアミドゲル、またはクロマトグラフィーで使用される分離相など、いかなる固体マトリックスも使用しない電気泳動法である。代わりに、分析物は、流れ方向に垂直に印加された電場内で、連続的な層流または緩衝溶液中における、それらの電荷量および/または電気泳動移動度に従って分離される。
【0086】
フリーフロー電気泳動を行う機械の一例が、BD(商標)フリーフロー電気泳動システム(Becton Dickenson社、型式#441117)である。このシステムを用いて、分離チャンバーの端にある96本の毛細血管に、識別された試料を収集する。これらの毛細血管は、連続的分画が収集区分(collection divide)中に流入するのを可能にし、その流出液は、複数の画分中に物理的に分離された状態のままとなる。この方法は、少なくとも3つの分離原理、すなわち等電点焦点法(IEF)、ゾーン電気泳動(ZE)、および等速電気泳動(ITP)を介した試料分離に適している。いったん収集されれば、等電点焦点法の後で使用する目的で記載されているアッセイ、すなわち、SDS−PAGE、平面チップ上での2次元目分離、および酵素活性分析のうちのいずれかを介しても、その画分を分析できる。
【0087】
識別および測定は、いかなる特定の順序にも限定されない。識別は、パラメータ測定の前に行われても、後で行われても、測定と同時に行われてもよい。例えば、特定のDPPは、電気泳動などの方法を用いて物理的に部分に分離してもよく、そしてその後、それらの部分のすべてまたは一部の1つまたは複数のパラメータを測定してもよい。
【0088】
別法では、測定および識別が同時に行われる場合、例えば、その検出可能標識からのシグナルを測定する間に、それぞれが異なった検出可能標識に連結されている、異なったDPPアイソフォームに特異的な抗体と患者試料を接触させることによって、特定のDPPを部分に識別してもよい。
【0089】
別の実施形態では、二重検出系を用いて、部分またはアイソフォームを識別できる。例えば、すべてまたはほとんどのDPPアイソフォーム、およびDPPアイソフォームの、さらに小さい部分に特異的な1つまたは複数の抗体またはレクチンに結合する固相結合抗体とDPPアイソフォームを接触させることができる。より特異的な抗体またはレクチンのそれぞれが、特有の検出可能標識を含有している。上記アイソフォームを1つまたは複数の抗体およびレクチンの両方と同時に接触させることも、順次に、例えば、結合抗体と接触させ、その後、より特異的な抗体/レクチンと接触させるか、またはより特異的な抗体/レクチンと接触させ、その後結合抗体と接触させることもできる。
【0090】
DPPを、2つ以上の部分に識別してもよい。部分の数は、所望の識別の程度、および識別を行う方法に依存する。DPPが識別される部分の数に制限はないが、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、36、48、96、100、200、300、384、400、500または1536の部分など、2つ以上の部分にDPPを識別してもよい。例えば、一部の実施形態では、標準的な96ウェルプレートでの操作およびパラメータ測定を可能にするために、例えば96の部分に、DPPアイソフォームを識別するのが好都合である。
【0091】
アイソフォームの完全な識別には、各DPP部分が複数のDPPアイソフォームを含有するべきではなく、一部の部分はDPPアイソフォームを含有しなくてもよい。アイソフォームの部分的な識別には、少なくとも1つのDPP部分が複数のDPPアイソフォームを含有するべきであるが、他の部分はDPPアイソフォームを含有しなくても、1つのDPPアイソフォームを含有しても、複数のDPPアイソフォームを含有してもよい。
【0092】
本発明の特定の実施形態では、複数の時点で個体から患者試料を得る。そのような「連続的」試料採取は、典型的な医学的異常の発症前における、疾患の早期発症の判定に好適であり、それゆえ、より有効な疾病管理または疾患回避にさえ導き得るであろう、より早期の治療戦略を容易にする。そのような連続的試料採取は、患者における疾患、例えばII型糖尿病の進行のモニタリングに関する本発明の態様に好適である。これは、上記疾患に関連して患者が行っている任意の治療の有効性を評価するのに特に有用である。連続的試料採取または反復試料採取は、疾患または病状が発症する個々のリスクを測定するのにも有用であり得る。
【0093】
連続的試料採取は、毎時間、半日に1回、毎日、毎週、毎月、年4回(すなわち3カ月ごと)、半年ごと、毎年、2年ごと、またはさらに少ない頻度など、任意の所望の時間表で実施できる。測定レベルと参照レベルとの比較は、新しい試料が測定される度に行ってもよく、レベルに関するデータは、より低頻度で行われる分析のために保持してもよい。
【0094】
測定または識別は、ex vivoまたはin vitroで行うことが好ましい。一実施形態では、測定および識別の両方がex vivoで行われる。
【0095】
当業者ならば理解するであろうが、本明細書に開示する方法には、患者試料の完全性および/または特徴を決定する様々なDPPパラメータまたは非DPPパラメータ(疾患関連パラメータであってもそうでなくてもよい)のうちのいずれの測定が含まれていてもよい。例えば、性別のマーカーとして、概して雌性で高い、エストロゲンレベルを測定してもよく、またはコレステロールレベルなどの他の化学血液測定を行ってもよい。
【0096】
他の疾患関連の非DPPパラメータを、診断または予後を確認するために測定してもよい。一部の実施形態では、上記非DPPパラメータがヘモグロビンA1Cレベルであり、上記疾患が糖尿病である。総ヘモグロビンの7%未満のヘモグロビンA1Cレベルは、糖尿病の不在を示し、総ヘモグロビンレベルの7%を超えるレベルは糖尿病の存在を示す。非DPPパラメータは、DPPパラメータの前に測定しても、その後に測定してもよく、または同時に測定してもよい。
【0097】
測定されたDPPパラメータを疾患状態または病状に相関させるために、測定されたDPPパラメータを、参照、すなわち標準または内部対照と比較してもよい。陽性または陰性の参照と比較した、個別的または相加的なDPPパラメータの増大、減少、またはシフトを疾患状態と相関させてもよい。
【0098】
別法として、識別された酵素の部分のDPPパラメータを、識別された酵素の別の部分のパラメータと比較してもよく、またはそれを、2つ以上の識別された部分の全測定値と比較してもよい。
【0099】
当然ながら、測定パラメータは、対応するパラメータと比較するべきである。例えば、DPP量を測定する場合には、DPP量の値は、参照または他の部分のDPP量の値と比較するべきである。DPP発現を測定する場合には、それを、参照または他の部分のDPP発現と比較するべきである。
【0100】
特定の実施形態では、連続した範囲の部分のパラメータを測定する。例えば、等電点に基づいて分離されたアイソフォームに関して、隣接したpHまたは等電点に分離された2つ以上の部分の1つまたは複数のパラメータを測定してもよい。
【0101】
連続した範囲の部分にわたって、測定パラメータのプロフィールを入手してもよい。別法として、非連続的な範囲の部分の測定に基づいて測定パラメータのプロフィールを入手してもよい。上記プロフィールはすべての部分に基づくものであっても、部分の部分集合に基づくものであってもよい。
【0102】
疾患状態との相関関係を決定するために様々な部分相互または部分間で行うことのできる様々な比較が多数ある。測定されたパラメータのデータを解析する技法、または上記データを他のデータと比較する技法は、当業者にはよく知られている。それゆえ、そのような技法はすべて、本明細書では詳細に論じられていない。所望の結論(すなわち疾患状態の存在または不在)に達するために、データを解析する例示的技法の1つを、図14のグラフを参照して例示する。図14において、y軸はDPPパラメータ(例えば、活性、発現、量、濃度、翻訳後修飾のタイプまたは量)のレベルを示す。x軸は識別の次元(例えば、pI、pH、またはアイソフォームタイプ)を示す。
【0103】
グラフを参照して、3つの領域、すなわち「a」領域、「b」領域、および「c」領域が強調されている。各領域に関して、範囲内の総測定値(例えば、所与の範囲の曲線下面積)を測定することができ、値「a」および「b」、合計値「c」が得られる。測定できる他の値には、範囲内のピーク値、範囲内でピーク値が到達されている点、範囲内の任意点(例えば特定のpIまたはpH)における特定の活性、測定パラメータが増大または低減する点(例えば屈曲点)、他の測定値との比較におけるx軸に沿った測定パラメータのシフト、ならびにこれらの組合せが含まれる。上記の値は、連続した範囲の部分を測定することによって入手されたプロフィールに基づいて計算しても、単一または複数の部分の測定に基づいて計算してもよい。
【0104】
上記測定値の1つと疾患状態を相関させるために、範囲「a」の値を範囲「b」の値と、範囲「a」の値を範囲「c」の値と、範囲「b」の値を範囲「c」の値と、範囲「a」の値を内部対照または標準と、範囲「b」の値を内部対照もしくは標準と、および/または範囲「c」の値を内部対照もしくは標準と比較することができよう。
【0105】
別法として、1つもしくは複数の所与の識別の次元に関連した任意の範囲における個別な定量測定、またはそのような定量測定の任意の比率を得て、既知の参照値またはそのような測定の値の参照範囲と比較でき、上記参照範囲は、疾患の存在、不在または重度がそれによって判定される尺度を提供するように、臨床試験を通して確立されている。識別(例えばアイソフォーム識別)の次元で、同時に、または連続的に測定され、定量的読み取り値を事前に確立された参照範囲に正規化するのに使用できる内部または外部標準の包含によって定量測定を補足してもよい。
【0106】
本明細書で使用される場合、「標準」という用語は、集団のセグメントから得られる値、通常は平均、中央値または平均値を指す。標準は、陽性標準でも、陰性標準でもよく、同齢集団から得ることができる。同齢集団(そこから標準値を得ることができる)は、試験個体と同じの年齢であることが理想的であるが、ほぼ同齢の集団も許容できる。ほぼ同齢の集団は、試験個体の年齢の約1歳以内、約5歳以内、約10歳以内、約15歳以内、または約20歳以内を含めた1〜20歳以内のものでよく、試験される個体の年齢を包含する様々な年齢の群でもよい。ほぼ同齢の集団は、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、または10年増分のものでよい(例えば62歳の個体の標準値の供給源として働く「5年増分」の群には、58〜62歳個体、59〜63歳個体、60〜64歳個体、61〜65歳個体、または62〜66歳個体が含まれ得る)。
【0107】
陽性標準は、特定の疾患状態を有する集団のセグメントから得られる値、例えば平均値を指す。陰性標準は、特定の疾患状態を有していない集団のセグメントから得られる値、例えば平均値を指す。
【0108】
本明細書で使用される場合、「内部対照」という用語は、疾患状態が既知である単一の患者または患者の群からの1つまたは複数の試料から得られた値を指す。内部対照は、陽性対照でも、陰性対照でも、同一患者対照でもよい。例えば、内部対照は、特定の疾患状態を有する1体または複数の患者からの陽性対照でも、特定の疾患状態を有さない1体または複数の患者からの陰性対照でもよい。最後に、内部対照は、診断される患者から、疾患進行を測定するために、異なった時間に別の身体部位(すなわち血液対肝臓)から得られた試料、または測定前に異なった処理を施された2つ以上試料から得られた試料、または同一タイプもしくは異なったタイプであり得る別々の容器(例えば、2本のEDTA血漿管、または1本のEDTA血漿管および1本の血清管)内に収集された試料から得られた値でよい。
【0109】
内部対照値は、診断される患者の測定と同時に得ても、また別のときに得てもよい。
【0110】
測定値相互、または測定値と参照値との間の比較の結果は、疾患を診断するか、疾患の診断または予後を補助するため、患者の疾患の重度に従って患者を階層化するため、または特定の患者における疾患の進行をモニターするために使用する。したがって、測定値と参照値との比較が、疾患を指示/示唆する相違(すなわち増大または低減)を示す場合、適切な診断が補助または実施される。逆に、参照レベルとの測定レベルの比較が、疾患の診断を指示または示唆する相違を示さない場合、適切な診断は補助または実施されない。
【0111】
複数の疾患関連DPPパラメータが測定されたが、様々な測定が疾患の診断を一致して示唆または指示しなかった場合、「多数者」の示唆または指示(例えば、上記方法が4種の疾患関連DPPパラメータを用い、そのうち3種が疾患を示唆/指示する場合)が用いられる。そのような結果は、個体の疾患の診断を示唆または指示するものと理解されよう。
【0112】
測定値と参照値とを比較する過程は、問題となっている糖尿病関連のDPPパラメータの測定値および参照値のタイプに適切な任意の好都合な方法で実行することができる。「測定」は、定量的または定性的な測定技法を用いて実施でき、測定値と参照値との比較のモードは、利用した測定技術に応じて変化し得る。例えば、DPP活性レベルを測定するのに定性分析を用いる場合、上記レベルは、蛍光反応産物の強度を、目視での比較によって比較しても、分光光度計からのデータの比較(例えば、測定装置から得られた数値データ、または棒グラフなどのグラフィックデータを比較する)によって比較してもよい。しかし、本発明の方法で使用される測定値は、定量的な値であることが最も一般的であろうと予測される。(例えば、試料1mlあたりのDPPアイソフォームのナノグラムなどの濃度または絶対量の定量測定)。他の例では、測定値は定性的である。定量測定を用いた場合、数値データを精査することによって、そしてデータ表示を精査する(例えば棒グラフまたは線グラフなどのグラフ表示を精査する)ことによって比較を行うことができる。
【0113】
比較の方法は、手作業によるもの(本発明の方法の開業医による目視検査など)でも、自動化されているものでもよい。例えば、アッセイ装置(化学発光シグナル測定用のルミノメーターなど)は、それがDPPパラメータの測定値と参照値とを比較するのを可能にする回路およびソフトウェアを含有するものでよい。別法として、測定値と参照値とを比較するのに、分離した装置(例えばデジタルコンピュータ)を用いてもよい。比較用の自動装置は、測定された疾患関連のDPPパラメータの、保存された参照値を含有してもよく、同時に測定された参照試料から得られた参照値と測定値を比較してもよい。
【0114】
一部の実施形態では、本発明の方法は、測定レベルと参照レベルとの「単純」比較または「2成分」比較を用い、例えば、測定レベルと参照レベルとの比較によって、測定レベルが参照レベルより高いか、または低いかが判定される。一部の実施形態では、値の、いかなる相違も疾患を示す。
【0115】
本明細書に記載の通り、パラメータは、定量的(絶対値)に測定しても、定性的(相対値)に測定してもよい。所与の評価のための、疾患関連DPPパラメータレベルは、それぞれが重複しても、しなくてもよい。本明細書に記載の通り、一部の実施形態では、定性的データが疾患状態の所与のレベル(軽度、中度、または重度)を示し、他の実施形態では、定量的データが疾患状態の所与のレベルを示す。
【0116】
本発明の特定の態様では、測定値と参照値との間の相違の規模を判定するのに比較を行い、例えば、測定値と参照値との間の相違の「倍率」またはパーセントを比較する。何らかの最小倍率差より約2倍低いか、または高い倍率差は、例えば疾患の存在を示唆または指示する。DPPの絶対量、濃度、活性または発現を測定し、それを参照の絶対値と比較することによって、倍率差を測定することも、いずれの値も絶対量、濃度、活性、または発現の尺度ではなく、かつ/または両方の値が同時に測定される参照値と標本値との間の相対差によって倍率差を測定することもできる。別法では、例えば「c」に対する「b」と比較された「c」に対する「a」の倍率差、またはアッセイ系の中の測定可能パラメータの任意の他のそのような比率を比較することによって、試験データ自体の中で倍率差を測定してもよい。したがって、特定の診断を示唆または指示する、測定値と参照値との相違の規模は、測定値を生むために測定された特定のパラメータと、使用された参照値とに依存するであろう。
【0117】
本明細書に記載の通り、pIによって分離された、連続した範囲のDPP−IVアイソフォームから得られたDPP−IV活性プロフィールと、II型糖尿病の存在、不在、または重度との間には相関関係がある。この相関関係は、患者試料からの、識別されたDPP−IV部分の1つまたは複数のDPP−IVパラメータを測定するステップと、前記測定されたDPP−IVパラメータを、患者におけるII型糖尿病の存在、不在、または重度と相関させるステップとを含む、II型糖尿病の診断または予後の方法で使用される。特定の実施形態では、DPP−IVパラメータがDPP−IV活性である。特定の実施形態では、DPP−IV部分がpIに基づいて識別される。
【0118】
DPP−IVパラメータを集団標準または内部対照と比較してもよい。陰性集団標準または陰性内部対照からのいかなる相違も、糖尿病の存在または重度と相関させることができる。測定されたDPP−IVパラメータと、陰性参照との相違の程度が大きいほど、予後が重度となる。同様に、陽性集団標準または陽性内部対照とのいかなる相違も、糖尿病の不在と相関させることができる。上記に論じた通り、パラメータには、活性、量、発現または濃度が含まれる。
【0119】
DPP−IV部分は、本明細書に開示したいかなる特徴または方法によって識別してもよい。例示的実施形態では、pIに基づいてDPP−IV部分を識別する。特定の実施形態では、フリーフロー電気泳動によってDPP−IV部分を分離する。
【0120】
図10は、1体の健康患者と1体の糖尿病患者との間における、血漿中の、pI識別されたDPP−IV部分のDPP−IV活性プロフィールの比較を示す。本発明者らは、糖尿病患者におけるDPP−IV活性プロフィールが、より高いpHへとシフトすることを示した。任意の1つまたは複数の点におけるDPP−IV活性プロフィールの、ここに示す任意の健康患者から得られた値からのいかなる相違も、任意の1つまたは複数の点におけるDPP−IV活性プロフィールの、内部陰性対照または集団標準から得られた値からのいかなる相違も、糖尿病と相関させることができる。
【0121】
したがって、DPP−IV活性プロフィールにおける、本明細書で示した任意の陰性標準または集団陰性標準からの、より高いpHへのシフトも、糖尿病を示す。同様に、DPP−IV活性プロフィールにおける、内部陰性対照からの、より高いpHへのシフトは、II型糖尿病の存在を示す。活性プロフィールにおけるシフトが顕著であるほど、疾患は、より重度である。
【0122】
陽性標準は、健康な試料または集団の「正反対」である極端な測定値に関連したものであるが、問題のpI範囲内における最も極端なアイソフォームの測定値で代表させることができる。そのような陽性標準は、例えば、すべてのグリカンの完全な不在が、典型的な健康試料に含有されているアイソフォームから最も遠い測定可能なアイソフォーム状態に相当する場合には、すべてのグリコシル化を完全に除去する化学的または酵素的方法で患者試料を処理することによって確立できるであろう。この処理から生じる極端なアイソフォームは、実際の試料中では、実際には決してありえないが、依然として、アッセイのための測定可能な対照を提供する目的で、最も遠い可能なpH範囲を定めるのには使用できることに留意するべきである。別法として、この「極端な」陽性アイソフォームは、別々に測定してもよいであろう外部対照、または分析されるべき試料へ投入された後で測定される外部対照であり得るであろう。特定の実施形態では、そのような陽性対照は、結果として得られる試料測定の正規化を補助するのにも使用できるであろう。
【0123】
活性における「シフト」とは、1つまたは複数のDPP−IV部分のDPP−IV活性におけるいかなる相違も意味する。例えば、DPP−IV活性の測定値は、1つの識別された部分のみで参照と相違していても、一部またはすべての部分で相違していてもよい。DPP−IV活性レベルの傾向、例えば、より高いpHで、より高い活性レベルであることは、II型糖尿病を検出するのに特に有用である。
【0124】
糖尿病患者および健康患者は、DPP−IVがpIに基づいて識別された場合、DPP−IV活性プロフィールに、2つの主要ピークも示す。糖尿病患者は、約pH4.4および約pH4.8のピークを示す傾向にある。これらのピークには、それぞれ、pI識別されたアイソフォームの総測定活性の約10%が存在している。健康な患者は、約pH3.9および約pH4.1のピークを示す傾向にある。
【0125】
「ピーク」とは、測定されたすべての値に対する少数の局所的な極値の1つを意味する。各値は、識別された部分と関連している。ピーク値は、1つの識別された部分、または識別された部分の1群と関連するものでよい。この値は、したがって、単一の識別された部分に関する離散値、または1範囲の識別された部分に関する複数の離散値の集積であってもよい。例えば、識別された部分の関数である値のプロフィールは、ピークを1つだけ含有するものでも、複数のピークを含有するものでもよい。通常、先端の1、2、3、4、または5つの値のみがピークであると考えられるであろう。任意選択で、例えば、ピークは、好ましくは、その大きさが上昇から低下へと変化する複数の隣接した値からのプロフィール、またはその近傍に関連した値であってもよい。
【0126】
したがって、pH3.9もしくは約pH3.9および/またはpH4.1もしくは約pH4.1にある、pI識別DDP−IVアイソフォームのDPP−IV活性における最大ピークは、糖尿病の不在と相関させることができる。
【0127】
同様に、pH4.4もしくは約pH4.4および/またはpH4.8もしくは約pH4.8にある、pI識別DPP−IVアイソフォームのDPP−IV活性におけるピークは、糖尿病の存在と相関させることができる。連続した範囲における、DPP−IVの総測定活性の少なくとも約10%であるピークは、糖尿病の存在に関して、特に有用である。pH4.4もしくは約pH4.4および/またはpH4.8もしくは約pH4.8のピークが高いほど、より重度の診断となる。
【0128】
図11は、健康患者および糖尿病患者から得られたpI識別されたアイソフォームの累積DPP−IV活性プロフィールを示すプロットである。プロットの各点は、連続した範囲の識別されたアイソフォームのpH増大の関数である総活性の累積パーセントを表す。上記に説明されている通り、DPPアイソフォームは、pHの特定の狭帯域とそれぞれが関連している個別の識別された部分に分離することによって識別される。
【0129】
図12は、測定されたpH範囲の酸性の端から開始して、識別されたアイソフォーム部分の活性を合計した、個々の患者から得られたpI識別されたDPP−IV部分に由来する累積活性が、測定された範囲の総活性の90%に達したpHを示す。健康患者は、約pH4.2以下で識別されたアイソフォームに関して、90%のDPP−IV活性に達した。対照的に、糖尿病患者は、約pH4.4以下で識別されたアイソフォームに関して、90%のDPP−IV活性に達しなかった。より病気の重い患者から得られた累積DPP−IV活性は、さらに高いpHで識別されたアイソフォームを考慮に入れるまで、総累積DPP−IV活性の90%に達しなかった。
【0130】
したがって、試料から得られたpI識別されたDPP−IV部分に由来する累積活性が試料の総活性の90%に達するpHは、DPP−IV活性測定を疾患と相関させるのに使用できる。したがって、約pH4.4以下のpH範囲と関連付けられる等電点で識別されるアイソフォーム中に存在する連続した範囲における、すべての測定された部分の総DPP−IV活性のパーセントが約90%を超えない場合、糖尿病の存在が検出される。連続した範囲における、すべての測定された部分の総DPP−IV活性の少なくとも約10%が、約pH4.4以上のpH範囲と関連付けられる等電点で識別されるアイソフォームに存在している場合、糖尿病の存在が検出される。90%の活性に達する、pH4.4を超えるpHが高いほど、より重度の予後を示す。
【0131】
連続した範囲における、すべての測定された部分の総DPP−IV活性の少なくとも約90%が、約pH4.2以下のpH範囲と関連付けられる等電点で識別されるアイソフォームに存在する場合、糖尿病の不在が検出される。約pH4.4以上のpH範囲と関連付けられる等電点で識別されるアイソフォーム中に存在する連続した範囲における、すべての測定された部分の総DPP−IV活性のパーセントが、約10%を超えない場合、糖尿病の不在が検出される。
【0132】
図13は、測定されたpH範囲の酸性の端から開始して、アイソフォームの活性を合計した、個々の患者から得られたpI識別されたDPP−IV部分に由来する累積活性が総活性の60%に達したpHを示す。健康患者は、pH3.9で、60%のDPP−IV活性に達した。対照的に、糖尿病患者は、約pH4.15以上まで、60%のDPP−IV活性に達しなかった。より病気の重い患者からの累積DPP−IV活性は、さらに高いpHで識別されたアイソフォームを考慮に入れるまで、総累積DPP−IV活性の60%に達しなかった。
【0133】
したがって、試料から得られたpI識別されたDPP−IV部分に由来する累積活性が試料の総活性の60%に達するpHは、DPP−IV活性測定を疾患と相関させるのに使用できる。したがって、約pH4.15以下のpH範囲と関連付けられる等電点で識別されるアイソフォーム中に存在する連続した範囲における、すべての測定された部分の総DPP−IV活性のパーセントが約60%を超えない場合、糖尿病の存在が検出される。連続した範囲における、すべての測定された部分の総DPP−IV活性の少なくとも約40%が、約pH4.15以上のpH範囲と関連付けられる等電点で識別されるアイソフォームに存在する場合、糖尿病の存在が検出される。60%の活性に達する、pH4.15を超えるpHが高いほど、より重度の予後を示す。
【0134】
連続した範囲における、すべての測定された部分の総DPP−IV活性の少なくとも約60%が、約pH3.9以下のpH範囲と関連付けられる等電点で識別されるアイソフォームに存在する場合、糖尿病の不在が検出される。約pH3.9以上のpH範囲と関連付けられる等電点で識別されたアイソフォーム中に存在する連続した範囲における、すべての測定された部分の総DPP−IV活性のパーセントが、約40%を超えない場合、糖尿病の不在が検出される。
【実施例1】
【0135】
タンパク質を電荷量に基づいて分離するフリーフォーム電気泳動(FFE)(BD(商標)フリーフロー電気泳動システム)を用いて、DPP−IVアイソフォームを部分に分離し、特徴分析した。タンパク質アイソフォームの単離は、活性に対する特定の修飾の役割を検査するために行うことが好まれている。活性分析は、特定の活性の増大が、アイソフォームpIの増大と相関していることを示す。これは、翻訳後修飾が、DPP−IV活性の調節に役割を演じているかもしれないことを示唆する。FFEは、酵素修飾を疾患状態と相関させることができるさらなる研究を容易にするかもしれない。
【0136】
FFEは、BD(商標)フリーフロー電気泳動システムを用いて以下の通りに行った。Sigma(商標)社(1〜100mg)から入手したブタDPP−IVを、pH適合分離培地中に希釈した(概ね1:5)。希釈されたタンパク質を、Becton(商標)FFEチャンバーの最も陰極側の試料注入口で添加し、約60mL/hの分離媒体流速、3〜10のpH勾配を用いて、1200〜1500Vおよび20〜25mAの印加によって分離した。
【0137】
等電点焦点法(IEF)−FFE緩衝液および培地は、未変性条件および3〜10のpH勾配を用い、製造会社のプロトコール(Becton(商標)FFE適用マニュアル)に従って調製した。等電点焦点法ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)(IEF)は、T:4%を含むカスタムメイドゲルを用いて、または適切なpH範囲で平衡化されたブランクPrecoats(商標)(Serva社)を用いて行った。タンパク質バンドを検出するために銀染色法が行った。その結果を図3に示す。
【0138】
活性分析は以下の通りに行った。45μlのアッセイ緩衝液(100mM Tris−Cl[pH8.01]0.05%v/v DMSO)を5μlのタンパク質試料に添加し、Tinitialから蛍光の増大を測定した。活性は、30℃における基質Gly−Pro−AMC(250μM)の加水分解から生じた相対蛍光単位(RFU)/分の増大で表した。結果を図2Aおよび2Bに示す。
【0139】
タンパク質のトリプシン消化は、PAGE(IEF)またはSDS−PAGEの後で可視化されたSypro Ruby染色されたバンドを切り出し、その後、キットの指示(Pierce社/Sigma社)に従って消化することによって行った。
【0140】
マトリックス支援レーザー脱離/イオン化法(MALDI)MSは以下の通りに行った。ペプチドを「ゲル内」消化し、抽出し(指示の通り)、ZipTip(登録商標)Pipette Tips(Millipore社)を用いて精製した。消化されたペプチドを1:1でマトリックス(α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸を飽和した60%アセトニトリル溶液)と混合し、ステンレススチールターゲット(Bruker Daltonics社)上に置いた。
【0141】
消化されたタンパク質を同定するために、最初のMALDI−飛行時間(TOF)ペプチド質量フィンガープリント(PMF)を用い、その後、特定のペプチドのTOF/TOF同定を行った(両方ともMascotを用いた)。結果を図4Aおよび4Bに示す。
【実施例2】
【0142】
実施例2で記述する実験は、実施例1で示したものと同一のプロトコールに従ったが、タンパク質試料が健康患者から得られたヒト血漿に由来するものであった点が異なる。
【0143】
ヒト血漿試料(EDTA抗凝血物質)を2体の個体から取得し、実施例1の記載に従ってDPP−IVアイソフォームを部分に分離した。活性は、実施例1の記載の通りに測定した。ブタDPP−IVアイソフォームに類似した活性プロフィールが存在するかどうか確認するために、DPP−IV活性のパターンを検査した。結果を図6Aおよび6Bに示す。
【0144】
図6Aおよび6Bで報告された結果から、DPP−IV活性に関して、ブタDPP−IVで見られものと類似した活性がヒト血漿中に広っていることが観察された。より高いpH値で活性の増大が観測された(約pH5.2で最大)。比活性の測定には、正確なタンパク質(DPP−IV)の定量化が必要であろう。
【0145】
実施例1および2を通して、FFE(IEF)を用いてタンパク質アイソフォームを分離することができ、別々のアイソフォームの生化学的特徴分析が可能になることが実証された。ブタDPP−IVモデルは、異なった比活性を示す多重アイソフォーム(質量分析を用いて同定される)を示す。FFEの後で分析すると、ヒトDPP−IV(血漿中で分離された)は類似の傾向を示す。翻訳後修飾(PTM)がDPP−IV比活性を調節する役割を演じているかもしれない。FFEは、他のタンパク質と同様に、DPP−IVの個々のアイソフォームの潜在的PTMの同定および関連付けを容易にし得る。
【0146】
DPP−IVは、上述の通りに測定した。DPP−IVのブタ実験からの結果と比較した場合、図6Aおよび6Bに示す結果は、FFEの後で分析した際に、同様に分析されたブタDPP−IVと同様な活性傾向をヒトDPP−IVが示すことを示している。
【0147】
併せて、実施例1および2からの結果は、翻訳後修飾(PTM)がDPP−IV比活性を調節する役割を演じているかもしれないこと、および他のタンパク質と同様に、DPP−IVの個々のアイソフォームの潜在的PTMの同定および関連付けをFFEが容易にし得ることを示唆する。
【実施例3】
【0148】
実施例3に記載の実験は、実施例1で示したものと同一のプロトコールに従ったが、タンパク質試料がヒト血漿に由来するものであった点、およびIEFが3〜7のpH勾配で行われた点が異なっていた。詳細には、2型糖尿病(血糖レベル538mg/dL)を有するヒトから1種、および健康なヒトから1種の2種のヘパリン処理ヒト血漿試料を得た。
【0149】
図7および8に示す結果は、糖尿病の試料が、より高い等電位範囲を有するDPP−IVアイソフォームプロフィールを示すことを示している。
【実施例4】
【0150】
4体の健康患者および5体の糖尿病患者からの血漿をplによって識別した。FFEは、Becton(商標)FFEチャンバーを用いて、以下の通りに行った。血漿(1:8希釈)25μlを、グリセロール25μl、0.08%HPMC 25μl、pH3〜7の分離緩衝液125μlと混合した。その後、希釈されたタンパク質を、Becton(商標)FFEチャンバーの最も陰極側の試料注入口で添加し、未変性条件および3〜7のpH範囲を用い、1200〜1500Vおよび20〜25mAを印加して、インターバル等電点焦点法(Interval Isoelectric Focusing)(IIEF)−FFEで分離した。IIEF−FFEは、合計64分間の滞留時間、10℃で行った。50mL/hrの緩衝液流速を5分間隔(5分間前方、その後5分間後方)で合計60分間用いた。試料添加中の溶媒流速180mL/hrにおいて、6000μl/hrで2分間、試料添加を行った。試料添加の後、電圧を印加し、溶媒流速50mL/hr、5分間隔(5分間前方、その後5分間後方)で、合計60分間流れるように設定した。前方への緩衝液流を2分間、300mL/hrに増大させ、休止させ、その後2分間96ウェルに収集する間欠分離に従って試料を収集した。実施例1における概説に従って、DPP−IV活性を試験した。結果を図10および11に示す。
【0151】
図10で、明色の棒グラフは、各pIで1体の健康患者から得られた値を表し、暗色の棒グラフは、各pIで1体の糖尿病患者から得られた平均値を表す。
【0152】
健康患者では、約pH3.9および約pH4.1に、2つの主要ピークが観測される。同様に、糖尿病患者では、約pH4.4および約pH4.8に2つの主要ピークが観測される。糖尿病血漿プロフィールは、健康患者からの血漿プロフィールより高いpH、すなわち右にシフトしている。
【0153】
この実施例では、群1は健康であり(SO4、S11、S07、およびS02)、群2は、診断された糖尿病患者、すなわち、L205−血糖値=約139mg/dL;S09−血糖値未知;S08−血糖値=約90mg/dL、患者の疾患は薬物投与で管理されている;SO1−BG=約150mg/dL;およびS139−BG=約350mg/dLである。
【0154】
健康な対象からの血漿のアリコートを分割し、半分をノイラミニダーゼによって脱シアリル化し、半分を対照として残した。この実施例中で上述した条件下で、各部分を分離し、酵素分析によってアイソフォームプロフィールを測定した。シアル酸の除去は、約pH4.0から約pH5.0までのプロフィールのシフトをもたらした。
【0155】
結果を、図9の棒グラフで表す。
【0156】
脱シアリル化は、表1に示す通り、比活性の2〜3倍の増大をもたらした。
【0157】
【表1】
【0158】
余剰のシアリル化がDPP−IVの有効性(すなわち比活性)を低減させているように見える。それゆえ、シアリル化などの翻訳後修飾は、異なった疾患状態を有する患者が異なったアイソフォームプロフィールを示し得る理由の1つとなっている。
【0159】
複数の試料の実際のpH勾配を説明するために、pH読み取り値対%局所活性(そのpHにおける)を半統合(semi−integrate)した。その後、pH範囲に沿ったパーセント活性を付加した。これを図11に示す。本質的には、これは、いくつのpHで、活性における特定の「閾値」に達したかを明視化することを可能にする。
【0160】
90%における健康および糖尿病のデータを図12、60%におけるデータを図13に示す。90%活性では、健康患者はすべて、極めて厳密にpH4.2の値をとり、一方、糖尿病患者はすべて、おおまかにpH4.4を超える値をとり、より高いpHでは、疾患の重度の増大が伴っている。60%活性では、健康患者はすべて、厳密にほぼpH3.9の値をとり、糖尿病患者はすべて、おおまかにpH4.15を超える値をとっている。
【0161】
ここの記載の本発明を特定の実施形態に関して説明したが、これらの実施形態は本発明の原則および適用を例示するのみであることを理解するべきである。それゆえ、例示した実施形態には多数の改変を加えることができ、添付されている特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに、他の設定も導き出せることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】アイソフォームのフリーフロー電気泳動分離のワークフローを示す図である。
【図2A】未変性IEF−FFE後におけるブタDPP−IVの活性試験の結果を示すグラフである。
【図2B】未変性IEF−FFE後におけるブタDPP−IVの活性試験の結果を示すグラフであり、識別されたブタDPP−IVアイソフォームの比活性(U/ng酵素)を示す。
【図3】ブタDPP−IVの未変性FFE(pH3〜10)分離から生じた画分27〜47の銀染IEFアクリルアミドゲルを示す図である。
【図4A】IEFゲルから切り出された最も酸性のアイソフォームのトリプシン消化タンパク質バンドのペプチド質量フィンガープリント解析を示す図である。PMFの分析は、すべてのアイソフォームがDPP−IVであると同定している。
【図4B】IEFゲルから切り出されたわずかに、より塩基性のアイソフォームのトリプシン消化タンパク質バンドのペプチド質量フィンガープリント解析を示す図である。PMFの分析は、すべてのアイソフォームがDPP−IVであると同定している。
【図5A】MALDI TOF/TOFによる、選択されたDPP−IVピークの確認を示す図である。
【図5B】MALDI TOF/TOFによる、選択されたDPP−IVピークの確認を示す図である。
【図6A】2体の健康対象のヒト血漿から得たFFE識別されたDPP−IVアイソフォームのDPP−IV活性を示す図である。
【図6B】2体の健康対象のヒト血漿から得られたFFE識別されたDPP−IVアイソフォームのDPP−IV活性を示す図である。
【図7】正常ヒト対象からのFFE識別されたアイソフォームのDPP−IV活性プロフィールを示す図である。
【図8】538mg/dLのブドウ糖レベルを有する糖尿病ヒト対象から得られたFFE識別されたアイソフォームのDPP−IV活性プロフィールを示す図である。
【図9】健康ヒト患者から得られたFFE識別されたアイソフォームの脱シアリル化の結果起こるDPP−IVプロフィールシフトの例を示す図である。活性はRFU/分間で表されている。黒塗りの棒グラフは処置された試料を表し、斜線の棒グラフは未処置の試料を表す。
【図10】健康患者(明色の棒グラフ)および糖尿病患者(暗色の棒グラフ)から得られた血漿における、pI識別されたDPP−IVアイソフォーム相互のDPP−IV活性の比較、ならびに糖尿病患者から得られた脱シアリル化アイソフォーム(暗色の線)を示す図である。点線は各部分が識別されたpHを表す。
【図11】健康患者および糖尿病患者から得られたpI識別されたDPP−アイソフォームのpH対DPP−IV活性のブレイクアウトプロットである。S04、S11、S07、およびS02は健康であり、残りは糖尿病である。
【図12】各対象からのpI識別されたDPP−IVアイソフォームIが90%DPP−IV活性に達するpHのプロットである。S04、S11、S07、およびS02は健康であり、残りは糖尿病である。
【図13】各対象からのpI識別されたDPP−IVアイソフォームIが60%DPP−IV活性に達するpHのプロットである。S04、S11、S07、およびS02は健康であり、残りは糖尿病である。
【図14】識別されたDPPアイソフォームの測定パラメータが疾患と相関し得る様々な方法を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定のジペプチジルペプチダーゼ(DPP)パラメータを特徴とする疾患状態または病状の診断または予後の方法であって、
患者試料から得られた特定のDPPの1つまたは複数の識別された部分の少なくとも1つのパラメータを測定するステップと、
前記測定されたDPPパラメータを前記疾患状態または病状の存在、不在、または重度と相関させるステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
各部分は1つまたは複数のDPPアイソフォームを含有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各部分は1つのDPPアイソフォームを含有することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
1つまたは複数の部分はDPPアイソフォームを含有せず、他の部分は1つまたは複数のDPPアイソフォームを含有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記疾患状態は代謝病状態、癌、ウイルス感染、および自己免疫疾患からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記疾患状態はII型糖尿病であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記パラメータは、量、濃度、活性、発現、翻訳後修飾型、および翻訳後修飾量からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記パラメータはDPP活性であり、前記測定は、直接的または間接的に検出可能な基質におけるDPP活性の加水分解産物の存在または量を検出するアッセイを介して行われることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記特定のDPPはDPP−IVであり、前記パラメータはDPP−IV活性であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記基質はX−Y−Rであり、式中、Xは任意のアミノ酸であり、Yはプロリン、アラニン、またはアルギニンであり、Rは任意の検出可能な標識であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記パラメータは、1つまたは複数のDPPアイソフォームに特異的な抗体またはレクチンを用いて測定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
複数のDPPパラメータが測定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記患者試料は、組織、血液、血漿、血清、唾液、涙、粘液、尿、羊水、滑膜関節液、精液、脳脊髄液、およびこれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
疾患状態の存在、不在、または重度をオペレータに伝達するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記伝達ステップは、電子スクリーン、デジタルスクリーン、印刷可能物、および可聴信号からなる群から選択される媒体に疾患状態を表示することを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記患者試料中に存在する特定のDPPのDPP部分を識別するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記識別ステップは前記測定ステップの前に行われることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記識別ステップは前記測定ステップと同時に行われることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記患者試料は前記測定ステップの前に処理されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記処理は、均質化、希釈、濃縮、凍結、およびこれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記識別ステップは物理的分離または単離によって行われることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記識別ステップはゲルフリー型式を用いて行われることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ゲルフリー型式は、フリーフロー電気泳動およびマトリックスフリー電気泳動からなる群から選択されることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記DPP部分はDPPアイソフォームの等電点に基づいて識別されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも2つの前記DPP部分が存在することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記相関ステップは、測定されたパラメータを標準の対応するパラメータと比較することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記相関ステップは、測定されたパラメータを内部対照の対応するパラメータと比較することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記パラメータは、前記少なくとも2つの部分に関して測定されることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記相関ステップは、少なくとも1つの部分のパラメータを少なくとも2つの部分に関するすべての測定された対応するパラメータと比較することを含むことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記相関ステップは、少なくとも1つの部分のパラメータを全部分に関するすべての測定された対応するパラメータと比較することを含むことを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記相関ステップは、少なくとも1つの部分の測定されたパラメータを少なくとも1つの他の部分の、対応する測定されたパラメータと比較することを含むことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記相関ステップは、2つ以上の部分に関するすべての測定されたパラメータを標準の対応する全パラメータと比較することを含むことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記相関ステップは、2つ以上の部分に関するすべての測定されたパラメータを内部対照の対応する全パラメータと比較することを含むことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記特定のDPPはDPP−IVであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項35】
あるジペプチジルペプチダーゼ(DPP)パラメータを特徴とする疾患状態または病状の診断または予後の方法であって、
患者試料から得られた1つまたは複数の識別されたDPPアイソフォームの少なくとも1つのパラメータを測定するステップと、
前記測定されたDPPパラメータを前記疾患状態または病状の存在、不在、または重度と相関させるステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項36】
前記疾患状態は代謝病状態、癌、ウイルス感染、および自己免疫疾患からなる群から選択されることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記パラメータは、量、濃度、活性、発現、翻訳後修飾型、および翻訳後修飾量からなる群から選択されることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項38】
複数のDPPパラメータが測定されることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記患者試料は、組織、血液、血漿、血清、唾液、涙、粘液、尿、羊水、滑膜関節液、精液、脳脊髄液、およびこれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項40】
疾患状態の存在、不在、または重度をオペレータに伝達するステップをさらに含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記患者試料中のDPPアイソフォームを識別するステップをさらに含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項42】
前記識別ステップは前記測定ステップの前に行われることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記識別ステップは前記測定ステップと同時に行われることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記患者試料は前記測定ステップの前に処理されることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記識別ステップは、物理的分離または単離によって行われることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記DPP部分は、DPPアイソフォームの等電点に基づいて識別されることを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記相関ステップは、測定されたパラメータを標準の対応するパラメータと比較することを含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項48】
前記相関ステップは、測定されたパラメータを内部対照の対応するパラメータと比較することを含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項49】
前記相関ステップは、少なくとも1つのアイソフォームのパラメータを2つ以上の他のアイソフォームに関するすべての測定された対応するパラメータと比較することを含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項50】
前記相関ステップは、少なくとも1つのアイソフォームのパラメータを全アイソフォームに関するすべての測定された対応するパラメータと比較することを含むことを特徴とする請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記相関ステップは、少なくとも1つのアイソフォームの測定されたパラメータを少なくとも1つの他のアイソフォームの、対応する測定されたパラメータと比較することを含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項52】
前記相関ステップは、2つ以上のアイソフォームに関するすべての測定されたパラメータを標準の対応する全パラメータと比較することを含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項53】
前記相関ステップは、2つ以上のアイソフォームに関するすべての測定されたパラメータを内部対照の対応する全パラメータと比較することを含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項54】
II型糖尿病の診断または予後の方法であって、
患者試料から得られたDPP−IVアイソフォームの1つまたは複数の識別された部分の少なくとも1つのパラメータを測定するステップと、
前記測定されたパラメータをII型糖尿病の存在、不在、または重度と相関させるステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項55】
測定された各部分は、1つまたは複数のDPP−IVアイソフォームを含有することを特徴とする請求項54に記載の方法。
【請求項56】
測定された各部分は、1つのDPP−IVアイソフォームを含有することを特徴とする請求項54に記載の方法。
【請求項57】
1つまたは複数の部分はDPP−IVアイソフォームを含有せず、他の部分は1つまたは複数のDPP−IVアイソフォームを含有することを特徴とする請求項54に記載の方法。
【請求項58】
前記パラメータは、量、濃度、活性、発現、翻訳後修飾型、および翻訳後修飾量からなる群から選択されることを特徴とする請求項54に記載の方法。
【請求項59】
前記パラメータは、DPP−IV活性であることを特徴とする請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記DPP−IV活性は、標識基質におけるDPP−IV活性の加水分解産物の存在または量を検出するアッセイを介して測定されることを特徴とする請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記基質はX−Y−Rであり、式中、Xは任意のアミノ酸であり、Yは、アラニン、プロリン、またはアルギニンであり、Rは任意の検出可能な標識であることを特徴とする請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記パラメータは、1つまたは複数のDPPアイソフォームに特異的な抗体またはレクチンを用いて測定されることを特徴とする請求項54に記載の方法。
【請求項63】
複数のDPP−IVパラメータが測定されることを特徴とする請求項54に記載の方法。
【請求項64】
前記患者試料は、血液、血漿、血清、およびこれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項54に記載の方法。
【請求項65】
II型糖尿病の存在、不在、または重度をオペレータに伝達するステップをさらに含むことを特徴とする請求項54に記載の方法。
【請求項66】
DPP−IVを部分に識別するステップをさらに含むことを特徴とする請求項54に記載の方法。
【請求項67】
前記識別ステップは前記測定ステップの前に行われることを特徴とする請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記DPP−IVアイソフォームは等電点に基づいて識別されることを特徴とする請求項54に記載の方法。
【請求項69】
前記測定されるパラメータはDPP−IV活性であることを特徴とする請求項68に記載の方法。
【請求項70】
連続した範囲の部分の活性が測定されることを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記連続した範囲の部分にわたって活性プロフィールを得るステップをさらに含むことを特徴とする請求項70に記載の方法。
【請求項72】
a.約pH4.4以下のpH範囲と関連付けられる等電点で識別されるアイソフォーム中に存在する連続した範囲における、すべての測定された部分の総DPP−IV活性のパーセントが約90%を超えないこと、
b.約pH4.15以下のpH範囲と関連付けられる等電点で識別されるアイソフォーム中に存在する連続した範囲における、すべての測定された部分の総DPP−IV活性のパーセントが約60%を超えないこと、
c.連続した範囲における、すべての測定された部分の総DPP−IV活性の少なくとも約10%が、約pH4.4以上のpH範囲と関連付けられる等電点で識別されるアイソフォームに存在すること、
d.連続した範囲における、すべての測定された部分の総DPP−IV活性の少なくとも約40%が、約pH4.15以上のpH範囲と関連付けられる等電点で識別されるアイソフォームに存在すること、
e.連続した範囲における総測定活性の少なくとも約10%と関連付けられる、約pH4.4における、DPP−IV活性プロフィールのピーク、
f.連続した範囲における総測定活性の少なくとも約10%と関連付けられる、約pH4.8における、DPP−IV活性プロフィールのピーク、
g.DPP−IV活性プロフィールにおける、内部陰性対照と比較して、より高いpHへのシフト、
h.DPP−IV活性プロフィールにおける、陰性標準と比較して、より高いpHへのシフト、および
i.これらの組合せ
からなる群から選択された活性プロフィール特徴と糖尿病の存在を相関させることを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項73】
a.連続した範囲における、すべての測定された部分の総DPP−IV活性の少なくとも約90%が、約pH4.2以下のpH範囲と関連付けられる等電点で識別されるアイソフォームに存在すること、
b.連続した範囲における、すべての測定された部分の総DPP−IV活性の少なくとも約60%が、約pH3.9以下のpH範囲と関連付けられる等電点で識別されるアイソフォームに存在すること、
c.約pH4.2以上のpH範囲と関連付けられる等電点で識別されるアイソフォーム中に存在する連続した範囲における、すべての測定された部分の総DPP−IV活性のパーセントが、約10%を超えないこと、
d.約pH3.9以上のpH範囲と関連付けられる等電点で識別されるアイソフォーム中に存在する連続した範囲における、すべての測定された部分の総DPP−IV活性のパーセントが約40%を超えないこと、
e.DPP−IV活性プロフィールにおける、内部陽性対照と比較して、より低いpHへのシフト、
f.DPP−IV活性プロフィールにおける、陽性標準と比較して、より低いpHへのシフト、および
g.これらの組合せ
からなる群から選択された活性プロフィール特徴と糖尿病の不在を相関させることを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項1】
特定のジペプチジルペプチダーゼ(DPP)パラメータを特徴とする疾患状態または病状の診断または予後の方法であって、
患者試料から得られた特定のDPPの1つまたは複数の識別された部分の少なくとも1つのパラメータを測定するステップと、
前記測定されたDPPパラメータを前記疾患状態または病状の存在、不在、または重度と相関させるステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
各部分は1つまたは複数のDPPアイソフォームを含有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各部分は1つのDPPアイソフォームを含有することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
1つまたは複数の部分はDPPアイソフォームを含有せず、他の部分は1つまたは複数のDPPアイソフォームを含有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記疾患状態は代謝病状態、癌、ウイルス感染、および自己免疫疾患からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記疾患状態はII型糖尿病であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記パラメータは、量、濃度、活性、発現、翻訳後修飾型、および翻訳後修飾量からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記パラメータはDPP活性であり、前記測定は、直接的または間接的に検出可能な基質におけるDPP活性の加水分解産物の存在または量を検出するアッセイを介して行われることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記特定のDPPはDPP−IVであり、前記パラメータはDPP−IV活性であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記基質はX−Y−Rであり、式中、Xは任意のアミノ酸であり、Yはプロリン、アラニン、またはアルギニンであり、Rは任意の検出可能な標識であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記パラメータは、1つまたは複数のDPPアイソフォームに特異的な抗体またはレクチンを用いて測定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
複数のDPPパラメータが測定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記患者試料は、組織、血液、血漿、血清、唾液、涙、粘液、尿、羊水、滑膜関節液、精液、脳脊髄液、およびこれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
疾患状態の存在、不在、または重度をオペレータに伝達するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記伝達ステップは、電子スクリーン、デジタルスクリーン、印刷可能物、および可聴信号からなる群から選択される媒体に疾患状態を表示することを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記患者試料中に存在する特定のDPPのDPP部分を識別するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記識別ステップは前記測定ステップの前に行われることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記識別ステップは前記測定ステップと同時に行われることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記患者試料は前記測定ステップの前に処理されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記処理は、均質化、希釈、濃縮、凍結、およびこれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記識別ステップは物理的分離または単離によって行われることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記識別ステップはゲルフリー型式を用いて行われることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ゲルフリー型式は、フリーフロー電気泳動およびマトリックスフリー電気泳動からなる群から選択されることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記DPP部分はDPPアイソフォームの等電点に基づいて識別されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも2つの前記DPP部分が存在することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記相関ステップは、測定されたパラメータを標準の対応するパラメータと比較することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記相関ステップは、測定されたパラメータを内部対照の対応するパラメータと比較することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記パラメータは、前記少なくとも2つの部分に関して測定されることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記相関ステップは、少なくとも1つの部分のパラメータを少なくとも2つの部分に関するすべての測定された対応するパラメータと比較することを含むことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記相関ステップは、少なくとも1つの部分のパラメータを全部分に関するすべての測定された対応するパラメータと比較することを含むことを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記相関ステップは、少なくとも1つの部分の測定されたパラメータを少なくとも1つの他の部分の、対応する測定されたパラメータと比較することを含むことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記相関ステップは、2つ以上の部分に関するすべての測定されたパラメータを標準の対応する全パラメータと比較することを含むことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記相関ステップは、2つ以上の部分に関するすべての測定されたパラメータを内部対照の対応する全パラメータと比較することを含むことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記特定のDPPはDPP−IVであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項35】
あるジペプチジルペプチダーゼ(DPP)パラメータを特徴とする疾患状態または病状の診断または予後の方法であって、
患者試料から得られた1つまたは複数の識別されたDPPアイソフォームの少なくとも1つのパラメータを測定するステップと、
前記測定されたDPPパラメータを前記疾患状態または病状の存在、不在、または重度と相関させるステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項36】
前記疾患状態は代謝病状態、癌、ウイルス感染、および自己免疫疾患からなる群から選択されることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記パラメータは、量、濃度、活性、発現、翻訳後修飾型、および翻訳後修飾量からなる群から選択されることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項38】
複数のDPPパラメータが測定されることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記患者試料は、組織、血液、血漿、血清、唾液、涙、粘液、尿、羊水、滑膜関節液、精液、脳脊髄液、およびこれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項40】
疾患状態の存在、不在、または重度をオペレータに伝達するステップをさらに含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記患者試料中のDPPアイソフォームを識別するステップをさらに含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項42】
前記識別ステップは前記測定ステップの前に行われることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記識別ステップは前記測定ステップと同時に行われることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記患者試料は前記測定ステップの前に処理されることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記識別ステップは、物理的分離または単離によって行われることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記DPP部分は、DPPアイソフォームの等電点に基づいて識別されることを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記相関ステップは、測定されたパラメータを標準の対応するパラメータと比較することを含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項48】
前記相関ステップは、測定されたパラメータを内部対照の対応するパラメータと比較することを含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項49】
前記相関ステップは、少なくとも1つのアイソフォームのパラメータを2つ以上の他のアイソフォームに関するすべての測定された対応するパラメータと比較することを含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項50】
前記相関ステップは、少なくとも1つのアイソフォームのパラメータを全アイソフォームに関するすべての測定された対応するパラメータと比較することを含むことを特徴とする請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記相関ステップは、少なくとも1つのアイソフォームの測定されたパラメータを少なくとも1つの他のアイソフォームの、対応する測定されたパラメータと比較することを含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項52】
前記相関ステップは、2つ以上のアイソフォームに関するすべての測定されたパラメータを標準の対応する全パラメータと比較することを含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項53】
前記相関ステップは、2つ以上のアイソフォームに関するすべての測定されたパラメータを内部対照の対応する全パラメータと比較することを含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項54】
II型糖尿病の診断または予後の方法であって、
患者試料から得られたDPP−IVアイソフォームの1つまたは複数の識別された部分の少なくとも1つのパラメータを測定するステップと、
前記測定されたパラメータをII型糖尿病の存在、不在、または重度と相関させるステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項55】
測定された各部分は、1つまたは複数のDPP−IVアイソフォームを含有することを特徴とする請求項54に記載の方法。
【請求項56】
測定された各部分は、1つのDPP−IVアイソフォームを含有することを特徴とする請求項54に記載の方法。
【請求項57】
1つまたは複数の部分はDPP−IVアイソフォームを含有せず、他の部分は1つまたは複数のDPP−IVアイソフォームを含有することを特徴とする請求項54に記載の方法。
【請求項58】
前記パラメータは、量、濃度、活性、発現、翻訳後修飾型、および翻訳後修飾量からなる群から選択されることを特徴とする請求項54に記載の方法。
【請求項59】
前記パラメータは、DPP−IV活性であることを特徴とする請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記DPP−IV活性は、標識基質におけるDPP−IV活性の加水分解産物の存在または量を検出するアッセイを介して測定されることを特徴とする請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記基質はX−Y−Rであり、式中、Xは任意のアミノ酸であり、Yは、アラニン、プロリン、またはアルギニンであり、Rは任意の検出可能な標識であることを特徴とする請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記パラメータは、1つまたは複数のDPPアイソフォームに特異的な抗体またはレクチンを用いて測定されることを特徴とする請求項54に記載の方法。
【請求項63】
複数のDPP−IVパラメータが測定されることを特徴とする請求項54に記載の方法。
【請求項64】
前記患者試料は、血液、血漿、血清、およびこれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項54に記載の方法。
【請求項65】
II型糖尿病の存在、不在、または重度をオペレータに伝達するステップをさらに含むことを特徴とする請求項54に記載の方法。
【請求項66】
DPP−IVを部分に識別するステップをさらに含むことを特徴とする請求項54に記載の方法。
【請求項67】
前記識別ステップは前記測定ステップの前に行われることを特徴とする請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記DPP−IVアイソフォームは等電点に基づいて識別されることを特徴とする請求項54に記載の方法。
【請求項69】
前記測定されるパラメータはDPP−IV活性であることを特徴とする請求項68に記載の方法。
【請求項70】
連続した範囲の部分の活性が測定されることを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記連続した範囲の部分にわたって活性プロフィールを得るステップをさらに含むことを特徴とする請求項70に記載の方法。
【請求項72】
a.約pH4.4以下のpH範囲と関連付けられる等電点で識別されるアイソフォーム中に存在する連続した範囲における、すべての測定された部分の総DPP−IV活性のパーセントが約90%を超えないこと、
b.約pH4.15以下のpH範囲と関連付けられる等電点で識別されるアイソフォーム中に存在する連続した範囲における、すべての測定された部分の総DPP−IV活性のパーセントが約60%を超えないこと、
c.連続した範囲における、すべての測定された部分の総DPP−IV活性の少なくとも約10%が、約pH4.4以上のpH範囲と関連付けられる等電点で識別されるアイソフォームに存在すること、
d.連続した範囲における、すべての測定された部分の総DPP−IV活性の少なくとも約40%が、約pH4.15以上のpH範囲と関連付けられる等電点で識別されるアイソフォームに存在すること、
e.連続した範囲における総測定活性の少なくとも約10%と関連付けられる、約pH4.4における、DPP−IV活性プロフィールのピーク、
f.連続した範囲における総測定活性の少なくとも約10%と関連付けられる、約pH4.8における、DPP−IV活性プロフィールのピーク、
g.DPP−IV活性プロフィールにおける、内部陰性対照と比較して、より高いpHへのシフト、
h.DPP−IV活性プロフィールにおける、陰性標準と比較して、より高いpHへのシフト、および
i.これらの組合せ
からなる群から選択された活性プロフィール特徴と糖尿病の存在を相関させることを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項73】
a.連続した範囲における、すべての測定された部分の総DPP−IV活性の少なくとも約90%が、約pH4.2以下のpH範囲と関連付けられる等電点で識別されるアイソフォームに存在すること、
b.連続した範囲における、すべての測定された部分の総DPP−IV活性の少なくとも約60%が、約pH3.9以下のpH範囲と関連付けられる等電点で識別されるアイソフォームに存在すること、
c.約pH4.2以上のpH範囲と関連付けられる等電点で識別されるアイソフォーム中に存在する連続した範囲における、すべての測定された部分の総DPP−IV活性のパーセントが、約10%を超えないこと、
d.約pH3.9以上のpH範囲と関連付けられる等電点で識別されるアイソフォーム中に存在する連続した範囲における、すべての測定された部分の総DPP−IV活性のパーセントが約40%を超えないこと、
e.DPP−IV活性プロフィールにおける、内部陽性対照と比較して、より低いpHへのシフト、
f.DPP−IV活性プロフィールにおける、陽性標準と比較して、より低いpHへのシフト、および
g.これらの組合せ
からなる群から選択された活性プロフィール特徴と糖尿病の不在を相関させることを特徴とする請求項71に記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2009−529884(P2009−529884A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500509(P2009−500509)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/006653
【国際公開番号】WO2007/106595
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/006653
【国際公開番号】WO2007/106595
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】
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