説明

ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤およびその中間体の製造方法

【課題】ジペプチジルペプチダーゼIVのシクロプロピル縮合ピロリジンベースの阻害剤の製造方法の提供。
【解決手段】構造1の酸をギ酸アンモニウム,ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド,ジチオスレイトール及び部分精製フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ/ギ酸デヒドロゲナーゼ酵素濃縮物(PDH/FDH)と処理することにより還元アミノ化に供し、単離することなく、得られた(αS)−α−アミノ−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸をジ−tert−ブチルジカルボネートと処理して製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年4月14日に出願された米国仮出願番号60/561,986号による優先権を主張し、該出願の全開示を参照により本明細書に引用する。
【0002】
本発明は、糖尿病およびその合併症、高血糖症、X症候群、高インスリン血症、肥満およびアテローム性動脈硬化症および関連疾患、並びに免疫変調性疾患および慢性炎症性腸疾患の治療に用いられるジペプチジルペプチダーゼIVのシクロプロピル縮合ピロリジンベースの阻害剤を製造するための中間体として用いられる(αS)−α−[[(1,1−ジメチルエトキシ)カルボニル]−アミノ]−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ジペプチジルペプチダーゼIVは、膜に結合した非古典的なセリンアミノペプチダーゼであり、これらに限らないが腸、肝臓、肺および腎臓を含む様々な組織に存在している。この酵素はまた、循環しているT−リンパ球にも存在しており、そこではCD−26と称される。ジペプチジルペプチダーゼIVは、インビボで内因性のペプチドGLP−1(7−36)およびグルカゴンの代謝的開裂を担っており、他のペプチド、例えばGHRH、NPY、GLP−2およびVIPに対してインビトロでタンパク質分解活性を示している。
【0004】
GLP−1(7−36)は、小腸におけるプログルカゴンの翻訳後プロセシングの結果生じる29個のアミノ酸のペプチドである。このペプチドは、インビボで多数の作用を有する。例えば、GLP−1(7−36)は、インスリン分泌を刺激し、グルカゴン分泌を阻害する。このペプチドは満腹感を促進し、胃内容排出を遅らせる。GLP−1(7−36)の連続注入による外部からの投与は、糖尿病患者に有効であることが示されている。しかし、外部からのペプチドは連続的に治療に用いるには余りにも速く分解されてしまう。
【0005】
GLP−1(7,36)の内因性レベルを増強するために、ジペプチジルペプチダーゼIVの阻害剤が開発されている。Hamannらによる米国特許第6,395,767号は、ジペプチジルペプチダーゼIVのシクロプロピル縮合ピロリジンベースの阻害剤を開示している。これら阻害剤を化学的に合成する方法は、米国特許第6,395,767号並びに文献に開示されている。例えば、Sagnardら、Tet-Lett. 1995 36: 3148-3152;Tverezovskyら、Tetrahedron 1997 53: 14773-14792;およびHanessianら、Bioorg. Med. Chem. Lett. 1998 8: 2123-2128を参照されたい。米国特許第6,395,767号に開示されている好ましい阻害剤は、式M':
【化1】

で示される(1S,3S,5S)−2−[(2S)−2−アミノ−2−(3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]−1−デシル)−1−オキソエチル]−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−カルボニトリルおよびそれに対応する一水和物である(1S,3S,5S)−2−[(2S)−2−アミノ−2−(3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]−1−デシル)−1−オキソエチル]−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−カルボニトリル(M”)である。
【0006】
このジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤の製造に用いる中間体を製造するために適用した方法が、EP 0 808 824 A2に開示されている。ImashiroおよびKurodaのTetrahedron Letters 2001 42: 1313-1315、ReetzらのChem. Int. Ed. Engl. 1979 18: 72、ReetzおよびHeimbachらのChem. Ber. 1983 116: 3702-3707、ReetzらのChem. Ber. 1983 116: 3708-3724も参照のこと。
【0007】
本発明は、ジペプチジルペプチダーゼIVのシクロプロピル縮合ピロリジンベースの阻害剤の製造に使用するための新規な製造方法および化合物を提供する。
【0008】
米国特許第6,395,767においてHamannらは、遊離塩基M’またはその塩の製造に用いられる中間体である(αS)−α−[[(1,1−ジメチルエトキシ)カルボニル]−アミノ]−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸の合成方法であって、アダマンタンカルボン酸から8工程の合成を含む方法を記載している。
【0009】
米国特許出願第10/716,012(2003年11月18日出願)(弁護士ファイルLA84NP)は、(αS)−α−[[(1,1−ジメチルエトキシ)カルボニル]−アミノ]−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸の製造方法であって、出発物質として3−ヒドロキシ−α−オキソトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸を使用し、酵素還元的アミノ化を用いて(αS)−α−アミノ−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸を製造、単離し、これを別工程で所望の生成物に変換する方法を開示している。
【0010】
酵素還元的アミノ化工程には、ギ酸アンモニウム、DTTおよびNADの存在下、水酸化アンモニウムをpH調整のために用い、酵素ギ酸デヒドロゲナーゼ酵素(FDH)と組み合わせた様々な形の酵素フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(PDH)の使用が含まれる。過剰なアンモニウムイオンが存在する場合には、BOC基の導入との干渉の可能性を避けるために、さらに後続の工程の前にアンモニアを除去することが必要であろう。
【0011】
PDHおよび/またはFDH酵素を製造する細胞を、発酵ブロスから単離し、使用に供するまで保存する。使用前に、細胞から酵素を放出させるために細胞をミクロ流動化(microfluidized)し、共に存在する細胞破砕物は還元的アミノ化における使用に供する前に除去しなければならない。
【発明の概要】
【0012】
本発明に従い、部分精製されたフェニルアラニンデヒドロゲナーゼおよび/またはギ酸デヒドロゲナーゼ酵素(PDH/FDH)濃縮物を製造する方法であって、以下の工程:
a.フェニルアラニンデヒドロゲナーゼおよび/またはギ酸デヒドロゲナーゼを製造し得る微生物の発酵ブロスを製造し;
b.該ブロスをミクロ流動化(microfluidization)させて、得られた細胞から活性を放出させ、PDHおよび/またはFDH活性を有するミクロ流動化ブロスを得;
c.細胞破砕物を凝集させてDNAおよび不要なタンパク質を除去するために、該ブロスを凝集剤で処理することにより清浄化し;
d.清浄化ブロスを濾過し;そして
e.該ブロスを濃縮して、PDHについて少なくとも約400IU/ml、FDHについて少なくとも約20IU/mlのPDH/FDH活性を有する部分精製された酵素濃縮物を得ること
を含む方法が提供される。
【0013】
さらに、本発明に従い、以下の構造:
【化2】

を有するアミン体を製造する方法であって、以下の工程:
a.以下の構造:
【化3】

を有するケト酸の水溶液を、最大約2モル当量のギ酸アンモニウム、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、ジチオスレイトールおよび部分精製されたフェニルアラニンデヒドロゲナーゼ/ギ酸デヒドロゲナーゼ酵素(PDH/FDH)と処理し;そして
b.反応物のpHを水酸化ナトリウムで約7.0〜約8.6、好ましくは8.0+/−0.2に維持して、望ましくない過剰アンモニウムイオンを実質的に含まない所望のアミン体を得ること
を含む方法が提供される。
【0014】
さらに本発明に従い、以下の構造:
【化4】

を有するBOC保護アミン体を製造するための方法であって、以下の工程:
a.以下の構造を有するアミノ酸(αS)−α−アミノ−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸:
【化5】

(部分精製フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ/ギ酸デヒドロゲナーゼ酵素を用いて、上記ケト酸1:
【化6】

の還元的アミノ化において製造される)
の水溶液を提供し;そして
b.上記水溶液をジ−tert−ブチルジカルボネートと処理してBOC保護アミン体を得ること
を含む方法が提供される。
【0015】
本発明の別の態様において、以下の構造3:
【化7】

を有するBOC保護アミン体を製造する方法であって、以下の工程:
a.部分精製されたフェニルアラニンデヒドロゲナーゼ/ギ酸デヒドロゲナーゼ酵素(PDH/FDH)を製造し(上述のように);
b.以下の構造1:
【化8】

を有するケト酸の水溶液をギ酸アンモニウム、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、ジチオスレイトールおよび部分精製フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ/ギ酸デヒドロゲナーゼ酵素(PDH/FDH)と処理し;
c.反応混合物のpHを水酸化ナトリウムで約7.0〜約8.6、好ましくは8.0+/−0.2に維持して、望ましくない過剰アンモニウムイオンを実質的に含まない所望のアミン2:
【化9】

を得;そして
d.アミノ酸中間体2を単離せずに、上記水溶液をジ−tert−ブチルジカルボネートと処理して構造3のBOC保護アミンを得ること
を含む方法が提供される。
【0016】
本発明の方法は、部分的に精製された酵素を用い、水酸化アンモニウムに対してpH調整用に水酸化ナトリウムを用いることにより顕著に改善された処理方法を提供し、処理時間を短縮し、中間体の単離を必要とせずに結晶生成物の単離を可能にする。さらに、本発明の方法は、後続の工程に存在するアンモニウムイオンを最小量にしてBOC基の導入と干渉しないようにし得る反応条件を用いる部分精製PDH/FDH酵素の製造を提供する。さらに、式1の酸の還元的アミノ化において、部分精製PDH/FDH酵素濃縮物を使用することにより、生物変換反応後の、式2の上記アミノ酸中間体の樹脂カラムによる単離の必要性をなくすことを可能にする。反応工程は、BOC化反応、得られる所望のBOC保護中間体の抽出および結晶化を直接継続するのに十分にきれいなもの(細胞破砕物が含まれておらず、タンパク質レベルが低い)であろう。
【0017】
好ましい態様において、以下の式M:
【化10】

で示されるジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤である(1S,3S,5S)−2−[(2S)−2−アミノ−2−(3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]−1−デシル)−1−オキソエチル]−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−カルボニトリル安息香酸塩(1:1)、またはその遊離塩基M’:
【化11】

およびその一水和物M”
【化12】

を製造するための本発明の方法における中間体としてBOC保護化合物3を用いる。
【0018】
これらの阻害剤は、以下の式3:
【化13】

で示されるBOC保護された(αS)−α−アミノ−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(本発明に従い製造される部分精製されたPDH/FDH酵素を用いることにより製造する)および以下の式J:
【化14】

で示される(1S,3S,5S)−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−カルボキサミド酸塩、例えば塩酸塩またはメタンスルホン酸塩(メシルまたはMSA塩)の2つのフラグメントのカップリングにより最終的に生成される。
【0019】
(1S,3S,5S)−2−[(2S)−2−アミノ−2−(3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]−1−デシル)−1−オキソエチル]−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−カルボニトリル安息香酸塩(1:1)およびその対応する遊離塩基およびその一水和物などのシクロプロピル縮合ピロリジンベースの化合物は、糖尿病およびその合併症、高血糖症、X症候群、高インスリン血症、肥満およびアテローム性動脈硬化症および関連疾患、並びに免疫変調性疾患および慢性炎症性腸疾患の治療に有用なジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤である。本発明において、BOC保護された化合物(本発明に従い部分精製されたPDH/FDH酵素を用いた還元的アミノ化工程を経て製造される)を、(1S,3S,5S)−2−[(2S)−2−アミノ−2−(3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]−1−デシル)−1−オキソエチル]−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−カルボニトリル安息香酸塩(1:1)およびその対応する遊離塩基およびその一水和物などのシクロプロピル縮合ピロリジンベースの化合物の製造に用いる。
【0020】
(発明の詳細な説明)
本発明の部分精製PDH/FDH酵素濃縮物の製造実施においては、PDHおよび/またはFDH活性を発現している微生物を発酵させる。発酵ブロスを、8000〜約30000psiの範囲内、好ましくは約12000〜約20000psiの圧力下で、約4℃〜30℃の範囲内、好ましくは約8℃〜約15℃、より好ましくは40℃以下の温度でブロスを維持しながら操作するミクロフルイダイザー(microfluidizer)を通すことになろう。全ブロスは、好ましくは珪藻土(例えば、Dicalite(Grefco Minerals,Inc.の登録商標)およびセライト(World Minerals,Inc.の登録商標))などの濾過助剤およびポリエチレンイミン水溶液などの凝集剤または加熱などの他の凝集因子をブロスに加えることによりDNAおよび他の高分子タンパク質を除去して、清浄化されるであろう。次いで、この混合物をフィルタープレスを用いて濾過し、濾液を回収する。濾過ケーキを水で洗浄し、その水を回収して濾液に加えるが、それら全てを清浄化ブロスと称する。
【0021】
清浄化ブロスを100000MWCO(分子量カットオフ)膜を通して限外濾過して、より低い分子量(100000以下)の不純物を除去する。
【0022】
清浄化した濾液を濃縮して、PDH力価が約400〜約1000IU/ml、好ましくは約500〜約600IU/mlであって、FDH力価が約20〜約200IU/ml、好ましくは約75〜約150IU/mlである酵素濃縮物を得る。
【0023】
濃縮物中の全酵素活性回収率は、約65〜約95%、好ましくは約75〜約90%の範囲内であろう。
【0024】
本明細書中で用いられる「部分精製(された)」PDH/FDH酵素という用語は、少なくともDNAの一部および他の高分子量タンパク質およびより低い分子量の不純物が除去されたPDH/FDH酵素を示す。
【0025】
3−ヒドロキシ−α−オキソトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式1の酸)の還元的アミノ化反応の実施において、式1の酸の混合水溶液を製造し、その混合物を、強アルカリ金属塩基、例えばアルカリ金属水酸化物、好ましくはNaOHを用いて、約7.0〜約8.6、好ましくは約7.8〜約8.2の範囲内のpHに調整して式1の酸の溶液を得る。炭素(例えば、Darco KB)を加えて混合物を濾過し、濾液および洗浄液を合わせて澄明な液体を得てもよい。
【0026】
この溶液に、ギ酸アンモニウムを、ギ酸アンモニウム:式1の酸のモル比が約1.9:1〜約2.5:1、好ましくは約2:1の範囲内となる量で加える。得られた混合物のpHを、強アルカリ金属塩基、例えばアルカリ金属水酸化物、好ましくはNaOHを用いて約7.0〜約8.6、好ましくは約7.8〜約8.2の範囲内に調整する。
【0027】
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)および所望により還元剤、例えばジチオスレイトールまたはβ−メルカプトエタノール、好ましくはジチオスレイトールを、NAD:式1の酸のモル比が約500:1〜約1500:1、好ましくは約900:1〜約1200:1の範囲内となる量で加える。固体を溶解後、部分精製したPDH/FDH酵素濃縮物(式1の1グラム当たり約400〜約600IU PDH)を加える。NaOHなどの強塩基を用いてpHを約7.0〜約8.6、好ましくは約7.7〜約8.2の範囲内に再調整する。
【0028】
この混合物を約25〜45℃、好ましくは約37〜約40℃の範囲内の温度に温め、水で希釈し、式1の酸の還元的アミノ化反応を実施して、(αS)−α−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式2のアミン体)を生成する間、前述のアルカリ金属塩基、好ましくはNaOHで、pHを約7.0〜約8.6、好ましくは約7.8〜約8.2の範囲内に維持する。
【0029】
式2のアミン体のBOC保護は、式2のアミン体を単離せずに達成されるが、これはアミン体2が細胞破砕物を含まないであろうことを理由とする。ジ−tert−ブチルジカルボネート:式2のアミン体のモル比が約2:1〜約2.5:1、好ましくは約2.0:1〜約2.2:1の範囲内となるように、ジ−tert−ブチルジカルボネートを式2のアミン体溶液の少なくとも一部に加える。反応混合物のpHを前述のNaOHなどの強塩基を用いて約8.5〜約12.5、好ましくは約9.5〜約10.5の範囲内に調整する。
【0030】
得られたBOC保護化合物(式3)を抽出し、回収し、結晶化してBOC保護された式3のアミン体を得る。
【0031】
上記に示したように本発明の一態様として、中間体化合物である、3−ヒドロキシ−α−オキソトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式1)の還元的アミノ化またはトランスアミノ化によりフラグメント(αS)−α−アミノ−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式2)を製造する方法が提供される。この方法の好ましい態様において、3−ヒドロキシ−α−オキソトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式1)は、上記の本発明の部分精製されたフェニルアラニンデヒドロゲナーゼ/ギ酸デヒドロゲナーゼ酵素濃縮物を用いて酵素的に行う還元的アミノ化により、(αS)−α−アミノ−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式2)に変換される。本発明において、有用なフェニルアラニンデヒドロゲナーゼの例としては、これらに限定されないが、スポロサルシナ(Sporosarcina)種由来のもの、またはサーモアクチノミセス・インターミディアス(Thermoactinomyces intermedius)などのサーモアクチノミセス(Thermoactinomyces)種由来のフェニルアラニンデヒドロゲナーゼが挙げられる。還元的アミノ化は、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)またはピキア・パストリス(Pichia pastoris)において発現されるサーモアクチノミセス・インターミディアス(Thermoactinomyces intermedius)、ATCC 33205のフェニルアラニンデヒドロゲナーゼを用いて行うのが好ましい。フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ サーモアクチノミセス・インターミディアス(Thermoactinomyces intermedius)、ATCC 33205を発現するE.coliおよびピキア・パストリス(Pichia pastoris)の組換え株の構築および増殖は、Hansonらの文献:Enzyme and Microbial Technology 2000 26: 348-358により記載されている。また、メタノールでのピキア・パストリス(Pichia pastoris)の増殖は、ギ酸デヒドロゲナーゼの産生を惹起する(Hansonら、Enzyme and Microbial Technology 2000 26: 348-358)。
【0032】
ピキア・パストリス(Pichia pastoris)(ATCC 20864)ギ酸デヒドロゲナーゼおよびサーモアクチノミセス・インターミディアス(Thermoactinomyces intermedius)(ATCC 33205)フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ遺伝子の改変形を発現するプラスミドを含むE.coli細胞は、ブダペスト条約の規定のもと、国際寄託当局に寄託および受領されている。寄託は、2002年6月25日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(10801 University Boulevard in Manassas、Virginia、20110-2209)に行った。ATCC受託番号はPTA-4520である。この細胞株への公的アクセスに対する全ての制限は、本特許出願への特許付与により除かれ、取り消し不可であろう。寄託は、公的寄託機関において寄託の日から30年の期間または試料の最後の請求から5年間または特許の有効期間のいずれか遅い日まで維持されるであろう。上記細胞株は寄託の際に生存していた。生存試料が寄託機関により分配され得ない場合には、該寄託は交換されるであろう。
【0033】
ピキア・パストリス(Pichia pastoris)(ATCC 20864)のギ酸デヒドロゲナーゼおよびサーモアクチノミセス・インターミディアス(Thermoactinomyces intermedius)(ATCC 33205)のフェニルアラニンデヒドロゲナーゼの修飾形を発現するプラスミドpBMS-2000-PPFDH-PDH mod.を含むエシェリキア・コリ(Escherichia coli) JM110のフェニルアラニンヒドロゲナーゼが最も好ましい。
【0034】
3−ヒドロキシ−α−オキソトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式1)の(αS)−α−アミノ−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式2)への還元的アミノ化を以下の反応式Iに示す:
【化15】

【0035】
反応式Iに示すように、この反応にはアンモニアおよび還元されたニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)が必要である。この反応で生成したニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)は、ギ酸デヒドロゲナーゼによるギ酸の二酸化炭素への酸化によってNNADHにリサイクルされる。この反応からの(αS)−α−アミノ−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式2)の予測収率は80〜100%であり、予測鏡像体過剰率は99%を超える。また、本明細書の実施例1〜7を参照のこと。
【0036】
中間体化合物3−ヒドロキシ−α−オキソトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式1)を、以下の反応式II:
【化16】

に示す方法に従い製造することができる。
【0037】
反応式IIに示すように、この方法において、臭化アダマンチル(式A)を塩化亜鉛触媒によりアルキル化して、α−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式B)を得る。次いで、α−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式B)をメタノール中の塩化アセチルを用いてエステル化し、α−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸メチルエステル(式C)を生成する。次いで、α−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸メチルエステル(式C)をスワン酸化によりα−オキソトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸メチルエステル(式D)に変換する。次いで、α−オキソトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸メチルエステル(式D)をヒドロキシル化して3−ヒドロキシ−α−オキソトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸メチルエステル(式1a)を生成し、次いでこれを加水分解して3−ヒドロキシ−α−オキソトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式1)を生成する。
【0038】
または、中間体化合物である3−ヒドロキシ−α−オキソトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式1)を反応式IIIに示す方法に従って製造することができる。
【化17】

【0039】
反応式IIIに示すように、(2,2−ジクロロ−1−メトキシ-ビニルオキシ)トリメチルシラン1bを、わずかに改変したKurodaら(EP 08 08 824A3;Imashiro and Kuroda Tetrahedron Letters 2001 42: 1313-1315)の方法により製造する。ブロモアダマンタンを塩化亜鉛の影響下1bで処理すると(Reetzら、Chem.Int.Ed.Engl. 1979 18:72, ReetzおよびHeimbach Chem. Ber. 1983 116: 3702-3707、Reetzら、Chem. Ber. 1983 116: 3708-3724)、式VIIで示されるアダマンタン−1−イルジクロロ酢酸メチルエステルが得られる。次いで、式VIIで示されるアダマンタン−1−イルジクロロ酢酸メチルエステルを濃硫酸中の一酸化窒素でヒドロキシル化して式VIIIで示されるジクロロ(3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル)酢酸メチルエステルを定量的収量で得る。式VIII化合物をメタノール中の水酸化ナトリウム水溶液で室温にて加水分解すると式IXで示されるジクロロ(3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル)酢酸が得られる。引き続きジクロロ(3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル)酢酸(式IX)を弱塩基、好ましくは重炭酸ナトリウムを用いて、高温で処理すると中間体化合物である3−ヒドロキシ−α−オキソトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式1)のみが生成する。
【0040】
反応式IIIA
【化18】

反応式IIIAに示すように、中間体化合物である3−ヒドロキシ−α−オキソトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式I)を1ポット法で製造することができる。示したように、式VIIIの化合物をアルゴンなどの不活性雰囲気中、テトラヒドロフラン(または水酸化カリウムや水酸化リチウムなどの他の塩基)中の水酸化ナトリウム水溶液で処理して対応のナトリウム塩を得る。このナトリウム塩を回収することなく、このナトリウム塩を含有する反応混合物を塩酸などの酸で処理してpHを約0.50、好ましくは約0.20以下まで下げて対応のケト酸IIを生成し、これを水から再結晶させてケト酸Iの結晶を生成させることができる。
【0041】
(1S,3S,5S)−2−[(2S)−2−アミノ−2−(3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]−1−デシル)−1−オキソエチル]−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−カルボニトリルの製造に用いるフラグメント(1S,3S,5S)−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−カルボキサミド(式J)を、下記反応式IVに示す方法に従い製造することができる。
【化19】

【0042】
反応式IVに示すように、L−ピログルタミン酸(式E)を、まずエステル化し、L−ピログルタミン酸エチルエステル(式F;SQ 7539)を得る。次いで、このL−ピログルタミン酸エチルエステルを窒素原子上でBOC保護して(5S)−2−オキソピロリジン−1,5−ジカルボン酸 1−(1,1−ジメチルエチル),5−エチルエステル(式G)を得る。次いで、スーパーハイドライド(SuperHydride)還元および脱離を行って、4,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1,5−ジカルボン酸 1−(1,1−ジメチルエチル),5−エチルエステル(式G')を生成する。次いでBOC−DHPEE IIIを水酸化リチウムを用いた鹸化により加水分解してBOC−DHPを生成する。次いで、塩化メシル続いてアンモニアを用い、混合無水物を経てBOC−DHPでアミド体を生成させて、(5S)−5−アミノカルボニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−カルボン酸 1−(1,1−ジメチルエチル)エステル(式G”)を製造する。次いで、(5S)−5−アミノカルボニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−カルボン酸 1−(1,1−ジメチルエチル)エステル(式G”)をシモンズ・スミス反応によりシクロプロパン化して、[1S−(1α,3β,5α]−3−アミノカルボニル)−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−カルボン酸 1,1−ジメチルエチルエステル(式H)を生成する。次いで、BOC基を除去し、その結果、フラグメント(1S,3S,5S)−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−カルボキサミド(式J)の塩酸塩やメタンスルホン酸塩などの酸塩を生成する。
【0043】
反応式IVに示すように、(5S)−5−アミノカルボニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−カルボン酸 1−(1,1−ジメチルエチル)エステル(式G”)の[1S−(1α,3β,5α]−3−アミノカルボニル)−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−カルボン酸 1,1−ジメチルエチルエステル(式H)への変換は、シモンズ・スミス反応におけるシクロプロパン化により行われる。この反応では、(5S)−5−アミノカルボニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−カルボン酸 1−(1,1−ジメチルエチル)エステルを第一の反応器中で塩化メチレンに溶解する。第二の反応器では塩化メチレンを−30℃に冷却し、ジメトキシエタンおよびジエチル亜鉛の30%トルエン溶液を加え、次いでジヨードメタンを加える。次いで、この混合物を第一の反応器に加え、次いで飽和重炭酸塩溶液を加える。得られた反応混合物を沈殿が生じるまで攪拌する。次いで、沈殿物を濾過し、洗浄し、塩化メチレンに2回またはそれ以上再懸濁する。次いで、濾液を水相と有機相に分離し、有機相を半飽和食塩水で洗浄する。溶媒を除去し、ヘプタンと交換してヘプタン中の[1S−(1α,3β,5α]−3−アミノカルボニル)−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−カルボン酸 1,1−ジメチルエチルエステル(式H)の粗生成物のスラリーを得る。
【0044】
別法として、(5S)−5−アミノカルボニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−カルボン酸 1−(1,1−ジメチルエチル)エステル(式G”)を反応式IVAに示すように製造することができる。
【化20】

【0045】
反応式IVAに示すように、4,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1,5−ジカルボン酸 1−(1,1−ジメチルエチル)エステルのDCHA塩Xを水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属塩基で処理してナトリウム塩などの対応する塩を生成させる。
【0046】
また、4,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1,5−ジカルボン酸 1−(1,1−ジメチルエチル)エステルのナトリウム塩XIは、対応するエチルエステルから、該エチルエステル(好ましくはトルエン中の該エチルエステルの溶液)をエタノールおよび水酸化ナトリウムで処理することにより調製することができる。
【0047】
ナトリウム塩XIの溶液を塩化アンモニウムやリン酸二水素ナトリウムなどの緩衝液で処理して溶液のpHを7未満、好ましくは約6〜6.5に低下させ、ナトリウム塩の緩衝溶液を4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライド(DMT−MM)で処理して活性化DMT−エステル体XIIを生成し、これをアンモニアまたは硫酸アンモニウム、塩化アンモニウムまたは水酸化アンモニウムなどの他の塩基で処理して(5S)−5−アミノカルボニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−カルボン酸 1−(1,1−ジメチルエチル)エステルG”を生成する。
【0048】
4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライド(DTM−MM)の製造は、反応式VIAに示すように、2−Cl−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン(CDMT)およびN−メチルモルホリンを約0〜約10℃の低下した温度で反応させてDMT−MMを生成することによりなされる。
【0049】
4,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1,5−ジカルボン酸 1−(1,1−ジメチルエチル)エステルのDCHA塩Xは、対応するナトリウム塩XIから製造することができるが、これは予め調製したDCHA塩Xの水溶液をメチルt−ブチルエーテル(MTBE)で処理し、反応混合物のpHをH3PO4などの酸を用いて2.5〜3に調節することによりなされる。有機層を分離し、食塩水で処理して対応するナトリウム塩XIを生成する。得られた反応混合物を冷却し、DCHAで処理して対応するDCHA塩Xを生成する。
【0050】
反応式IVB
【化21】

また、反応式IVAにおける化合物Hは、反応式IVBに示すように、N−BOC 4,5−デヒドロプロリンエチルエステルG”のシクロプロパン化により以下のようにして製造できる。
【0051】
N−BOC 4,5−デヒドロプロリンエチルエステルG”をトルエン、塩化メチレンまたはジクロロエタンなどの無水有機溶媒の存在下、約−30℃〜約0℃の範囲の低下した温度にてジエチル亜鉛およびクロロヨードメタンで処理してN−BOC 4,5−メタノプロリンエチルエステルXVを得る。
【0052】
得られたBOC 4,5−メタノプロリンエチルエステルXV(シン異性体とアンチ異性体の8:1混合物)を窒素雰囲気などの不活性雰囲気下、メチルアミン水溶液と処理することにより分離し、シン (S)−BOC−4,5−メタンプロリンエチルエステル(XVI)(XVIIから分離)を回収する。
【0053】
エタノールまたはトルエンやTHFなどの他の有機溶媒中のs−BOC−4,5−メタノプロリンエチルエステルXVIを、水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液などの塩基と処理して対応するs−BOC−メタノプロリン遊離酸XVIIIを生成する。
【0054】
N−メチルモルホリンの存在下、約−8℃を超えないような低温でTHFまたは塩化メチレン;クロロギ酸イソブチルまたは塩化メシルなどの有機溶媒に遊離酸XVIIIを溶解し、次いで反応混合物をアンモニアで処理してs−BOC−メタノプロリンアミドHを生成することにより、遊離酸XVIIIを対応するs−BOC−メタノプロリンアミドHに変換する。
【0055】
本発明の別の側面は、(αS)−α−アミノ−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式3)および(1S,3S,5S)−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−カルボキサミド(式J)のフラグメントをカップリングして、(1S,3S,5S)−2−[(2S)−2−アミノ−2−(3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]−1−デシル)−1−オキソエチル]−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−カルボニトリル安息香酸塩(1:1)を生成するカップリングの方法に関する。これらフラグメントのカップリングを下記の反応式Vに示す。
【化22】

【0056】
実施例3に示すように、単離された(部分精製された)PDH/FDH酵素濃縮物を用いた生物変換から単離することなく式2の化合物を用いる。
【0057】
反応式Vに示すように、(αS)−α−アミノ−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式2)のフラグメントを、まずBOC保護して(αS)−α[[(1,1−ジメチルエトキシ)カルボニル]アミノ]−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式3)を生成するが、これは水酸化ナトリウムなどの塩基の存在下、2をBOC2Oで処理し、酢酸イソプロピル抽出により分離し、次いで酢酸イソプロピル/ヘプタンを用いて結晶化して、遊離酸3を単離することにより行われる(実施例3、工程3を参照)。または、遊離酸3を酢酸エチル(EtOAc)抽出により分離する(実施例8Mを参照)。
【0058】
テトラヒドロフラン(THF)などの適当な有機溶媒(約−10℃〜約0℃の範囲の温度に冷却)中の式3の化合物の溶液を塩化メタンスルホニル(塩化メシル)、およびヒューニッヒ塩基(ジイソプロピルエチルアミンまたはDIPEA)で処理して対応するメタンスルホン酸塩VIを生成する。
【0059】
次いで、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)または他の公知のカップリング剤の存在下、カップリング反応を用いて(αS)−α[[(1,1−ジメチルエトキシ)カルボニル]アミノ]−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式3)メタンスルホン酸塩を(1S,3S,5S)−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−カルボキサミド(式J)にカップリングし、3−(アミノカルボニル)−αS)−α−(3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]−1−デシル)−β−オキソ−(1S,3S,5S)−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−エタンカルバミン酸 1,1−ジメチルエチルエステル(式K)を生成する。式Kの化合物をピリジンやトリエチルアミンなどの有機塩基および無水トリフルオロ酢酸で処理することにより脱水し、次いで約0℃〜約10℃に冷却し、水酸化ナトリウムまたはKOHやLiOHなどの他の強塩基を加えることにより反応物を加水分解して化合物Lを生成する。次いで、3−シアノ−(αS)−α−(3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]−1−デシル)−β−オキソ−(1S,3S,5S)−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−エタンカルバミン酸 1,1−ジメチルエチルエステル(式L)を脱保護(および安息香酸ナトリウムで処理)し、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤である(1S,3S,5S)−2−[(2S)−2−アミノ−2−(3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]−1−デシル)−1−オキソエチル]−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−カルボニトリル安息香酸塩(1:1)(式M)を生成する。
【0060】
反応式Vに戻ると、化合物Lを反応式VIAに記載するように塩酸などの強酸と処理することにより脱保護できる。
【化23】

【0061】
反応式VIAを参照すると、遊離塩基一水和物M”をBOC保護中間体Lから以下のようにして生成することができる。
【0062】
BOC保護中間体Lを、反応温度を約20〜25℃の範囲に維持しながら塩化メチレンおよびメタノールの存在下、濃塩酸と処理して塩酸塩L’を生成する。塩酸塩L’を塩酸、次いで水酸化ナトリウムまたは他の強塩基と処理して遊離塩基M’を生成する。次いで、遊離塩基M’を水と処理して遊離塩基一水和物M”を生成する。
【0063】
本発明化合物および方法を用いて製造したジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤は、糖尿病およびその合併症、高血糖症、X症候群、高インスリン血症、肥満およびアテローム性動脈硬化症および関連疾患、並びに免疫変調性疾患および慢性炎症性腸疾患の治療に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下の実施例は本発明の好ましい態様を表す。
【0065】
実施例1
プラスミドpBMS2000-PPFDH-PDHmodの構築
発現ベクターpBMS2000-PPFDH-PDHmodの2工程構築を用いた。適合性の制限エンドヌクレアーゼ開裂部位とともにP.pastorisのFDH遺伝子の5’末端および3’末端を含むオリゴヌクレオチドプライマー:
【化24】

を用い、P.pastorisのFDH遺伝子を発現ベクターpBMS2000(pBMS2000はS.W.Liuらの米国特許第6,068,991号(2000年5月30日発行)に開示されている)にサブクローニングした。それぞれ1×TaqPlus反応緩衝液(Stratagene、LaJolla、CA)、0.2mMの各デオキシヌクレオチド三リン酸(dATP、dCTP、dGTPおよびdTTP)、0.4nMの各オリゴヌクレオチド、2.5UのTaqPlus DNAポリメラーゼ(Stratagene)、およびクローン化されたP.pastorisのFDH遺伝子を含む10pgのプラスミドDNAを含有する100μLずつの反応液4つにおいてP.pastorisのFDH遺伝子の高忠実度PCR増幅を行った。増幅条件は、自動伸長パーキン・エルマー モデル480サーモサイクラーを用い、94℃で4分間インキュベート後、94℃で1分間;50℃で1分間;および72℃で1.5分間の25サイクルを含むものであった。
【0066】
このPCR反応混合物を等容量のフェノール:クロロホルム(1:1)(GibcoBRL、Gaithersburg、MD)で抽出し、13,000×gで5分間遠心した。上部の水相をとり、新たなマイクロ遠心管に入れた。0.1容量の3M酢酸ナトリウムおよび2容量の氷冷エタノールを加えてDNAを沈殿させた。13,000×gで5分間遠心分離後、液体を管から吸引し、ペレットを0.5mLの氷冷70%エタノールで洗浄した。液体を再び吸引し、ペレットを室温で30分間風乾させた。
【0067】
増幅したDNAを、各20単位のBspHIおよびBamHIを用い、37℃で3時間、全量50μLで消化した。これと平行してpBMS2000ベクター(2μg)をBspHIおよびBamHIで消化した。消化した試料を1.0%TAEアガロースゲル上で2時間、100vで電気泳動した。FDH遺伝子(1100塩基対フラグメント)および線状化ベクター(4700塩基対フラグメント)に対応するバンドを別々にゲルから切り出し、QIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen、Chartsworth、CA)を用いて精製した。単離したフラグメントの濃度を低分子量ラダー(Invitrogen Corp.、Carlsbad、CA)に対する電気泳動により推定し、5:1(挿入物:ベクター)のモル比にて全量10μLにおいて22℃で2時間、ライゲートした。15μLのdH2Oおよび250μLの1−ブタノールを加えてDNAを沈殿させ、マイクロ遠心管中、13,000×gで5分間ペレット化した。液体を吸引除去し、DNAをSpeedVac(Savant Instruments、Farmingdale、NY)で5分間、低加熱下で乾燥させた。ペレットを5μLのdH2Oに再懸濁した。
【0068】
再懸濁したDNAを、エレクトロポレーションにより0.04mLのE.coliDH10Bコンピテント細胞(Invitrogen)に25μFおよび250Ωで形質転換した。SOC培地を直ちに加え(0.96mL;SOC=1リットル当たり0.5%酵母抽出物、2%トリプトン、10mM NaCl、2.5mM KCl、10mM MgCl2、10mM MgSO4および20mMグルコース)、細胞をシェーカー中で1時間、37℃および225rpmでインキュベートした。プラスミドDNAを含むコロニーを、50μg/mlの硫酸カナマイシン(Sigma Chemicals、St.Louis、MO)を含むLB寒天プレートで選択した。所望の挿入物を有するプラスミドは、RapidCycler(Idaho Technology、Salt Lake City、UT)を用いたキャピラリー管でのコロニーPCRにより同定した。各反応混合物は、50mM Tris−HCl(pH8.3)、4mM MgCl2、0.25mg/mLのウシ血清アルブミン、2%スクロース400、0.1mMクレゾールレッド、0.4nMの各プライマー(配列番号1および配列番号2)、および2.5UのTaq DNAポリメラーゼ(Promega Corp.、Madison、WI)を含んでいた。反応混合物を10μLずつに分け、丸底マイクロタイタープレートのウェルにピペッティングした。カナマイシン耐性コロニーを使い捨てプラスチック接種針を用いて拾い、反応混合物にかき混ぜて入れ、LBカナマイシン寒天に移した。各反応混合物の一部を30μL容キャピラリー管に入れ、管の両端をフレームシールした。細胞を溶解し、94℃で30秒インキュベートしてDNAを変性し、RapidCycler Thermocycler(Idaho Technology、Salt Lake City、UT)を用いて94℃で0秒間、40℃で0秒間、および72℃で60秒間の30サイクルを用いて増幅を行った。試料を1.0%TAEアガロースゲル上で2時間、100vにて電気泳動した。17の試験した試料のうち7試料が1100塩基対で強いバンドを示した。このプラスミド(本明細書中でpBMS2000-PPFDHと称する)を含む1つのコロニーをプラスミド構築における次の工程のために選択した。
【0069】
「PDHmod」は、(3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル)オキソ酢酸の(S)−アミノ(3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル)酢酸への完全な変換に必要なカルボキシル末端の最後の2つのアミノ酸および別の12アミノ酸の変化により、開示されたDNA配列(Takadaら、J. Biochem. 109, pp. 371-376 [1991])とは異なっている改変したThermoactinomycetes intermediusフェニルアラニンデヒドロゲナーゼをいう。この変化をプラスミドpPDH9K/10(Donovanらの特許WO200004179(2000年1月27日発行)に詳細が記載されている)に導入し、次いでこのプラスミドをP.pastoris SMD1168(ATCC 74408株として寄託)に形質転換した。
【0070】
天然PDH遺伝子の3’末端および対応するアミノ酸を以下に示す:
【化25】

【0071】
PDHmod遺伝子の3’末端および対応するアミノ酸を以下に示す(変化したまたは新規なアミノ酸は太字):
【化26】

【0072】
適合性の制限エンドヌクレアーゼ開裂部位とともにPDHmod遺伝子の5'末端および3'末端を含むオリゴヌクレオチドプライマー:
【化27】

を調製した。
【0073】
PCRによるPDHmodの増幅および精製のための反応条件は、ATCC 74408から調製した染色体DNAを反応のための鋳型として含めた以外はP.pastorisのFDH遺伝子に用いたものと同じであった。得られたフラグメントを各20単位のNdeIおよびSmaIを用い、25℃で1時間、次いで37℃で2時間、全容量50μLで消化した。これと平行して、開始コドンにNdeI部位を有するpBMS2000ベクターのバージョン(2μg)を同一条件を用いてNdeIおよびSmaIで消化した。消化した試料を別々に1.0%TAEアガロースゲル上で2時間、100vで電気泳動した。PDHmod遺伝子(1200塩基対フラグメント)および線状化ベクター(4700塩基対フラグメント)に対応するバンドをゲルから切り出し、QIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen)を用いて精製した。これら2つのフラグメントのライゲーション、E.coliの形質転換、およびPDHmod遺伝子を有する挿入物(pBMS2000-PDHmodを形成)を含むコロニーのスクリーニングを上記のように行った。
【0074】
pBMS2000-PPFDH-PDHmodの構築のため、pBMS2000-PDHmod(2μg)を50μLの反応物中、各10UのHindIIIおよびSmaIを用いて25℃で1時間、次いで37℃で1時間開裂させた。10単位のT4 DNAポリメラーゼ(Invitrogen)および4つの全てのデオキシリボヌクレオシド三リン酸の2.5mMの混合物(2μL)を加え、試料を11℃で20分間インキュベートした。反応液を1.0%TAEアガロースゲル上で2時間、100vで電気泳動した。1800塩基対フラグメントを切り出し、QIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen)を用いて単離した。このフラグメントは、順にtacプロモーター、groES遺伝子、およびPDHmod遺伝子(転写融合物として)を含んでいる。次に、pBMS2000-PPFDH(2μg)を10単位の制限エンドヌクレアーゼSmaIを用い、50μL容量で2時間、25℃で消化し、次いで0.4Uのエビアルカリホスファターゼ(United States Biochemicals、Cleveland、OH)で1時間、37℃で処理した。プラスミドDNAを1.0%TAEアガロースゲル上で2時間、100vで電気泳動し、単離し、QIAquickキットを用いて抽出した。これら2つのフラグメントを6.5:1(挿入物:ベクター)のモル比で16℃にて4時間、10μLの最終容量でライゲートした。1−ブタノール抽出および遠心分離後、DNAをエレクトロコンピテントなDH10B細胞に形質転換した。カナマイシン耐性コロニーを、FDHについて既に記載したように2つのPDHmod-特異的プライマーを用いてPDHmod遺伝子の存在についてスクリーニングした。第二ラウンドのPCRスクリーニングは、それぞれPPFDHの5’末端およびPDHmod遺伝子の3’末端に相同なDNAプライマーを用いて行った。1400塩基対フラグメントの増幅を支持することができる構築物のみが2つの遺伝子を同じ方向で有していた。そのようなプラスミドの1つが見出され、方向性がKpnIを用いた診断的制限消化によって確認され、これにより5422塩基対および1826塩基対の予想されたフラグメントが得られた。このプラスミドを「pBMS2000-PPFDH-PDHmod」と表した。
【0075】
実施例2
FDHおよびPDHmodの発現
pBMS2000-PPFDH-PDHmodをエシェリキア・コリ(Escherichia coli) JM110に形質転換した。振盪フラスコでの検討においてJM110(pBMS2000-PPFDH-PDHmod)をMT5培地(2.0% Yeastamine、4.0%グリセロール、0.6%リン酸ナトリウム[二塩基性]、0.3%リン酸カリウム[一塩基性]、0.125%硫酸アンモニウム、0.0256%硫酸マグネシウム[七水和物;滅菌1M溶液からオートクレーブ後に添加]、および50μg/mLの硫酸カナマイシン[濾過滅菌した50mg/mL溶液からオートクレーブ後に添加])中、28℃、250rpmで18時間増殖させた。600nmでの光学密度(OD600)を記録し、0.35の開始OD600を与えるに十分な細胞を新鮮なMT5/カナマイシン培地に加えた。OD600が0.8〜1.0となるまで、フラスコを250rpm、28℃で振盪した。滅菌濾過した1Mイソプロピルチオ−β−D−ガラクトピラノシド(IPTG)を最終濃度35μMで加えることにより両遺伝子の発現を誘導し、発酵を24〜48時間続けた。細胞を6,500×gで5分間遠心分離することによってペレット化し、等容量の50mMギ酸アンモニウム(pH7.0)で1回洗浄し、再度ペレット化した。細胞を−20℃で凍結保存するか、または直ちに用いた。ペレットを50mMリン酸アンモニウム(pH7.0)中、10mL/g(湿細胞重量)で再懸濁し、Fisher Scientific Model 50 Sonic Dismembrator(Fisher Scientific、Pittsburgh、PA)(マイクロチップで動力設定15)を用いて3×15秒間超音波処理した。細胞破砕物は、13,000×gにて室温で5分間遠心分離することによりペレット化した。
【0076】
試料を70℃で10分間加熱した。1mLの1Mジチオスレイトール溶液を混合物に加え、10μLを10%NuPAGE(登録商標) Bis-Trisポリアクリルアミドミニ・ゲルに適用した。電気泳動を200vで50〜60分間行い、ゲルを0.1%(w/v)クマシーブルー(Sigma)、40%(v/v)エタノールおよび10%(v/v)酢酸からなる溶液で染色した。染色液に浸漬したゲルを沸騰が明らかとなるまで電子レンジで加熱し、次いでオービタルシェーカーで40rpmにて15分間振盪した。ゲルを脱イオン水で十分に洗浄し、脱色溶液(GelClear(登録商標);Invitrogen)で覆った。この溶液を再び沸点ちょうどまで加熱し、少なくとも2時間穏やかに振盪した。誘導によりMr 43,000および40,000に2つの顕著なバンドが認められ、これらはFDHおよびPDHmodのサブユニットの予想された分子量に対応していた。また試料は、実施例4、6および7に記載するようにして試験したときにFDHおよびPDHの両活性を有していることがわかった。この組換えE.coli株にSC16496の内部表示を与えた。
【0077】
SC16496を引き続き15リットルおよび250リットル容量で発酵させた。15リットル発酵のために、1mLの凍結SC16496を入れた一つのバイアルを室温で解凍し、4リットルフラスコ中の50μg/mLのカナマイシンを含む1リットルのMT5培地に加えた。このフラスコを28℃、250rpmで24時間インキュベートし、Braun発酵装置中の13リットルのMT5培地(15Lの最終容量に基づいて成分を1回分とした)に移した。それぞれ50μg/mLおよび0.0246%の最終濃度を与えるのに十分な硫酸カナマイシンおよび硫酸マグネシウム七水和物を500mLの蒸留水に溶解し、0.2ミクロン酢酸セルロース濾過ユニットにより濾過滅菌した。この溶液をタンクに加え、直ちに接種した。最初のOD600は約0.35であった。
【0078】
発酵作業パラメーターは以下の通りであった:
作業容量:16リットル
温度:28℃
換気:1.0vvm
圧力:690mbar
攪拌:500rpm
必要に応じてNH4OHを用いてpHを6.8に調節
発泡は必要に応じてUCON(Dow Chemical Companyにより製造されたフルオロカーボン溶媒混合物)を添加して調節した。
【0079】
OD600 0.8〜1.0(接種後約2時間)で濾過滅菌したIPTG(500mLのdH2Oに溶解)を無菌的に加えて最終濃度を35μMとした。発酵をさらに48時間続けた時点でタンクの内容物を10℃に過冷した。細胞を遠心分離により回収し、0.1用量の50mMギ酸アンモニウム、pH7.0で1回すすいだ。細胞ペーストをプラスチック容器に入れ、必要とされるまで−70℃で保存した。
【0080】
250Lタンクについては、接種物は以下のようにして調製した:1mLの凍結SC16496を解凍し、50μg/mLのカナマイシンを有する300mLのMT5培地に加えた。フラスコを28℃、250rpmで24時間増殖させた。OD600を決定し、80 OD単位を与える適当な容量の細胞を取り、250mLの新鮮なMT5培地に加えた。細胞をBraun発酵装置中の10LのMT5/カナマイシン培地に無菌的に加え(最初のOD600〜0.008)、上で開示した発酵作業パラメーター下で16時間増殖させた。次いで、培養液を適当な濃度のカナマイシンおよび硫酸マグネシウムを含む250LのMT5に移した。これら条件下でのSC16496の倍加時間が90分であることに基づき、250L中の10Lの接種物は0.30〜0.35の開始OD600を与えるはずである。誘発、増殖、回収および保存は、15L発酵について記載したものと同様に行った。
【0081】
実施例3
単離した(部分精製)PDH/FDH酵素濃縮物を用いた、3−ヒドロキシ−α−オキソトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式1)からの(αS)−α−アミノ−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式2)を介した(αS)−α−[[(1,1−ジメチルエトキシ)カルボニル]アミノ]−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式3)の短縮(telescoped)製造
【0082】
工程1:PDH/FDH酵素濃縮物の単離
エシェリキア・コリ(Escherichia coli) JM110(pBMS2000-PPFDH-PDHmod)の発酵ブロス(30リットル)を4000Lタンク発酵(実施例2と類似した方法を用いて製造)から得、マイクロフルイダイザー(MicrofluidicsモデルM-110Y、作動圧力12,000〜20,000psi)に通し(1回)、ブロスの温度を40℃以下に保ちながら細胞から活性を放出させた。ミクロ流動化ブロスのPDH/FDH活性は、PDHについては32IU/ML、FDHについては8IU/mlであった。
【0083】
ブロス全体を清澄化するため、十分に攪拌したブロスに4.5kgのセライトを加えた。次いで、0.201Lの30%ポリエチレンイミン水溶液を加え、30分間混合した。次いで、混合物をフィルタープレス(Ertel Alsopモデル8-ESSC-10)を用いて濾過し、18Lの濾液を得た。濾過ケークを12Lの水で洗浄して容量を30Lに戻した。この工程の収率は、活性が31IU/mlとなったPDHでは97%の活性の回収がなされ、FDHの活性は8IU/mlであった。
【0084】
清澄化したブロスを100000MWCOフィルターカセット(Millipore Pellicon 2ユニット、ポリエーテルスルホン低タンパク質結合カセット、0.5m2フィルター面積)により限外濾過した。ポンプの循環速度は400mL/分であった。清澄化した濾液を1.5Lに濃縮し、PDH力価が567IU/mLでFDH力価が136IU/mLの酵素濃縮物を得た。浸透液をアッセイしたところ、活性は認められなかった。濃縮物中の全酵素活性回収率は84%であった。
【0085】
工程2:還元的アミノ化
3−ヒドロキシ−α−オキソトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式1)(1.00kg;4.46mol)を20L容器に加え、次いで水(5L)を加えた。この混合物を攪拌し、10N NaOHでpHを調節してpH〜8として溶液を得た。Darco KBBカーボン(100g)を加え、混合物を5分間攪拌し、次いで5μの濾紙を用いてブフナー漏斗で濾過した。フィルターを水で洗浄し(2×1L)、濾液および洗液を合わせて透明な溶液を得た。
【0086】
攪拌しながらギ酸アンモニウム(0.562Kg;8.92mol)を加え、10N NaOHを用いてpHを再び〜7.5に調節した。ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(2.65g)およびジチオスレイトール(1.54g)を加えた。固形分が溶解したときにPDH/FDH酵素濃縮物を加えた(1.03L;PDHを500000IU)。10N NaOHを用いてpHを周囲温度で〜8.0に再調節した。
【0087】
次いで、混合物を〜40℃に温め、水で全容量10Lに希釈した。42時間攪拌している間、pHを7.7〜8.3に維持した。得られた溶液は、0.955Kg(95.1%)の生成物(αS)−α−アミノ−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式2)を含んでいた。
【0088】
工程3:BOC保護
(αS)−α−アミノ−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式2)の溶液の一部(477.5g;2.12mol)にジ−tert−ブチルジカルボネート(1.022kg;4.68mol)を加えた。この混合物を、pHスタット滴定器で10N NaOHを用いてpHを10に調節し維持しながら周囲温度で攪拌した。反応はBoc2Oの添加後4時間で完了し、このとき残存する出発物質は1.0%未満であった。
【0089】
混合物のpHを35%H2SO4で〜8に調節し、混合物にi−PrOAc(5.0L)を加えた。次いで、混合物のpHを35%H2SO4で2.0に調節し、このpHで5〜10分間維持した。Dicalite(250g)を加え、混合物を〜10分間攪拌し、次いでブフナー漏斗中の濾紙上のDicalite(250g)のパッドで濾過した。Dicaliteパッドを2.5Lのi−PrOAcでさらに洗浄した。
【0090】
濾液を10N NaOHでpH8に調節した。1時間沈殿させた後、界面を含む有機層を廃棄した。水層にi−PrOAc(7.5L)を加えた。混合物を35%H2SO4でpH〜2.0の酸性にし、次いで〜40℃に加熱し、穏やかに攪拌しながら4時間維持した。層を分離し、有機抽出物を取っておいた。界面を含む水層をi−PrOAc(3.75L)で抽出し、2時間後に40℃で層を再び分離した。界面を含む水層をi−PrOAc(3.75L)で再び抽出し、2時間後に40℃で層を分離した。
【0091】
合わせた有機抽出物(〜15L)を蒸留により〜4.5Lに濃縮した。次いで、この溶液にヘプタン(〜10L)を10〜15分間かけて加え、その間温度を〜82−89℃に維持した。反応器ジャケットの温度を70℃に設定し、この温度で1時間維持した。冷却後すぐに結晶化が生じた。次いで、反応器ジャケットの温度を40℃に設定し、この温度で30分間維持した。
【0092】
懸濁液を周囲温度に冷却し、次いでさらに0〜5℃に冷却した。0〜5℃で1時間攪拌した後、生成物を濾過した。生成物をヘプタン(2.5L)で洗浄し、次いで40℃で真空乾燥して607.0g(88%収率)の(αS)−α−[[(1,1−ジメチルエトキシ)カルボニル]アミノ]−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式3)を得た。
【0093】
実施例4
フェニルアラニンデヒドロゲナーゼアッセイA
フェニルアラニンデヒドロゲナーゼアッセイAは、40℃で1mL中に以下のものを含んでいた:0.4mM NADH、5mMフェニルピルビン酸ナトリウム、HClでpH8.75に調節した0.75M NH4OH。吸光度の低下を340nmでモニターした。酵素活性単位は、吸光度の変化速度に基づき、μモル/分として計算した。
【0094】
実施例5
フェニルアラニンデヒドロゲナーゼアッセイB
フェニルアラニンデヒドロゲナーゼアッセイBは、40℃で1mL中に以下のものを含んでいた:1mM NAD、10mM L−フェニルアラニン、1N NaOHでpH10.0に調節した0.1M K2HPO4。吸光度の増加を340nmでモニターした。酵素活性単位は、吸光度の変化速度に基づき、μモル/分として計算した。
【0095】
実施例6
フェニルアラニンデヒドロゲナーゼアッセイC
フェニルアラニンデヒドロゲナーゼアッセイCは、40℃で1.0mL中に以下のものを含んでいた:0.4mM NADH、50mM 3−ヒドロキシ−α−オキソトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(1当量のNaOH溶液に溶解)、HClでpH8.75に調節した0.75M NH4OH。吸光度の低下を340nmでモニターした。酵素活性単位は、吸光度の変化速度に基づき、μモル/分として計算した。
【0096】
実施例7
ギ酸デヒドロゲナーゼアッセイ
ギ酸デヒドロゲナーゼアッセイは、40℃で1mL中に以下のものを含んでいた:1mM NAD、100mMギ酸アンモニウム、100mMリン酸カリウム緩衝液(pH8.0)。吸光度の増加を340nmでモニターした。酵素活性単位は、吸光度の変化速度に基づき、μモル/分として計算した。
【0097】
実施例8
式M':
【化28】

の製造
A.ZnCl2触媒された臭化アダマンチル(式A)のカップリング
乾燥容器に7.5kgの臭化アダマンチルを入れた。次いで、塩化メチレン(22.5リットル)を室温で加えて固形の臭化アダマンタンを溶解した。溶解は吸熱性であるので、次の工程の前に反応混合物の温度を20℃に戻した。次いで、反応混合物に塩化亜鉛(1.05kg)を入れ、20℃で約5分間攪拌した。次いで、反応温度を20〜25℃に維持しながら反応混合物にトリス(トリメチルシロキシ)エチレン(15.3kg)を入れ、得られた混合物を2時間攪拌した。この混合後にトリス(トリメチルシロキシ)エチレン(5.10kg)を加えた。この添加の間、温度を30℃以下に維持した。反応液をさらに12〜15時間、20〜25℃に維持し、この時点で反応混合物を塩化メチレン(15L)で希釈し、0〜5℃に冷却した。次いで、反応混合物を半飽和NH4Cl溶液を用いて、最初は滴下の様式により処理した。添加の間、温度を30℃未満に維持した。濃い懸濁液が得られた。この懸濁液に酢酸エチル(93.75L)を加えた。混合物を15分間激しく攪拌すると、有機層と水層は分離した。有機層を保存し、水層を酢酸エチル(各洗浄で18.75L)で2回洗浄した。次いで、酢酸エチル洗液および有機層を合わせ、水(37.5L)、次いで食塩水で半飽和した水(37.5L)で洗浄した。有機層を再び分離し、蒸発させて結晶を生成させた。次いで、22.5Lの最終容量でヘプタンへの溶媒交換を行った。得られた懸濁液を5〜10℃に1時間冷却し、生成物のα−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式B)を濾過により得た。α−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式B)の収量は6.96kg(33.11mol,95%)であった。
【0098】
B.α−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式B)のエステル化による式Cのエステル体の生成
まず不活性雰囲気を反応器内に生じさせた。次いで、反応器にメタノール(35.00L)、次いでα−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式B)(14.00kg)を入れて懸濁液を生成した。懸濁液を0〜5℃に冷却し、塩化アセチルを反応混合物の温度が5〜10℃に維持されるような様式で加えた。塩化アセチルの添加完了後、反応混合物を20〜25℃に温め、20〜25℃で2時間攪拌した。次いで、反応混合物を真空下、40℃で濃縮すると薄い油状物が得られた。この油状物を酢酸エチル(71.96L)に溶解し、室温に戻した。得られた混合物を水(各洗浄で28.78L)で2回洗浄し、各洗浄後に有機層と水層とを分離した。有機層を保存し、一方、水層は合わせて3N NaOH溶液でpH9.5に調節した。次いで、合わせた水層を酢酸エチル(各抽出に14.39L)で2回抽出した。各抽出後の有機層を分離し、保存した有機層と合わせた。次いで、これら合わせた有機層を飽和重炭酸ナトリウム溶液(28.78L)、次いで食塩水(43.18L)で洗浄した。次いで、全ての揮発成分を真空下、40℃で除去し、静置により結晶化する無色から薄黄色の油状物が得られた。この油状物は、13.29kg(59.26mol,89%)のα−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸メチルエステル(式C)を含んでいた。
【0099】
C.α−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸メチルエステル(式C)のスワン酸化によるα−オキソトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸メチルエステル(式D)の生成
三頸フラスコ(22L)は、メカニカルスターラー、温度プローブおよび滴下漏斗を備えており、窒素を一晩パージした。次いで、塩化オキサリル(500mL,5.73mol)を加え、次いでCH2Cl2(8L)を加えた。得られた溶液をアセトン/ドライアイス浴で−69℃に冷却した。次いで、内部温度を−60℃以下に維持しながら、ジメチルスルホキシド(DMSO;700mL,9.86mol)の溶液を約30分かけてゆっくり加えた。温度を−60〜−70℃に維持しながら、溶液を20分間攪拌した。内部温度を−60℃以下に維持しながら、CH2Cl2(1.7L)中のα−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸メチルエステル(式C)(990g,4.42mol)の溶液を約30分間かけてゆっくりと加えた。得られた溶液を30分間攪拌した。次いで、NEt3(3L,21.5mol)を加えてトリエチルアミン塩酸塩の重いスラリーを生成した。反応混合物を室温に温め、水(1L)を加えてトリエチルアンモニウム塩(TEA塩)を溶解させた。次いで、反応混合物を丸底フラスコに移し、濃縮減量してジクロロメタン(DCM)およびNEt3を除去した。EtOAc(12L)を加え、得られた水層および有機層を分離した。有機層を水(各洗浄に2L)で3回洗浄し、次いで食塩水で洗浄した(2L)。次いで、有機層を無水Na2SO4で蒸発乾燥させてα−オキソトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸メチルエステル(式D)のわずかに黄色の固体を得た。収率は約104%であった。
【0100】
D.α−オキソトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸メチルエステル(式D)の3−ヒドロキシ−α−オキソトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸メチルエステル(式1a)へのヒドロキシル化
エルレンマイヤーフラスコに95〜98%H2SO4(495mL)を入れ、氷浴で8℃に冷却した。次いで、HNO3(30mLの水に50mLの70%HNO3を加えることにより調製した50%を47.5mL)をフラスコに加え、混合物を再び氷浴で8℃に冷却した。固体のα−オキソトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸メチルエステル(式D)(100g,0.45mol)を30〜60分かけて少しずつ混合物に加え、28℃未満の温度を維持した。氷浴で冷却しながら、反応混合物を攪拌した。反応の進行を薄層クロマトグラフィー(TLC)または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のどちらかでモニターした。TLCについては、シリカゲルを用い、溶媒はEtOAc/MeOH/ヘキサン(9/1/10);KMnO4であった。HPLCについては、4.6×50mm、C18、3ミクロン、120オングストロームカラムを、10%アセトニトリル/H2Oから100%アセトニトリルへの7分間での勾配、2.5mL/分の流速で用いた。モニター波長は200nmであった。反応が完了したら(約1時間後)、冷水(1.5L)およびEtOAc(500mL)を加えて反応をクエンチした。さらに水およびEtOAc(各500mL)を加えて水層と有機層との分離を助けた。次いで、水層を3等量(各500mL)のEtOAcで抽出した。有機層を合わせて、食塩水(400mL)で洗浄した。次いで洗浄した有機層を減圧下で濃縮して3−ヒドロキシ−α−オキソトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸メチルエステル(式1a)を含む130gの黄色の油状残渣を得た。
【0101】
E.3−ヒドロキシ−α−オキソトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式1)への3−ヒドロキシ−α−オキソトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸メチルエステル(式1a)の加水分解
実施例Dの黄色の油状残渣をテトラヒドロフラン(300mL)に溶解し、氷浴で5℃に冷却した。温度を30℃以下に維持しながら、1リットルの1N水酸化ナトリウムを溶液にゆっくりと加えてpHを約7に調節した。次いで、さらに500mLの1N NaOHを加えてpHを約14に調節した。次いで、氷浴で冷却しながら反応混合物を攪拌し、反応の進行を実施例23に記載のようにTLCまたはHPLCによりモニターした。約30分後に反応が完了したら、EtOAc(500mL)を加え、水層と有機層を分離した。水層をさらに500mLのEtOAcで洗浄した。水層を濃HClで酸性にした。溶液がpH7に達したときにEtOAc(500mL)を加え、次いでpHが0.7に達するまでさらに濃HClを加えた。添加した濃HClの全量は150mLであった。次いで、水層をEtOAc(4×400mL)で抽出し、合わせた有機層を400mLの水、次いで400mLの食塩水で洗浄した。次いで、洗浄した有機層をMgSO4で乾燥させ、濃縮した。収量は薄黄色の固体が88gであった。この固体を100mLのEtOAcおよび300mLのヘプタンに30分間攪拌しながら溶解し、次いで濾過および風乾すると85gの褐色の固体(85%;3−ヒドロキシ−α−オキソトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式1))が得られた。
【0102】
E’.1ポット法を用いる3−ヒドロキシ−α−オキソトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式1)の製造
1.ジクロロ(3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル)酢酸メチルエステル(式VIII)の製造
10N HNO3の調製:100mL容の容量フラスコに濃HNO3(88.25g,〜62.58mL,〜1.0mol)を入れ、氷浴で冷却した。水(35mL)を加えた。混合の熱が放散した後、溶液を室温に温めた。次いで、フラスコに水をマークのところまで満たして10N HNO3を得た。
【0103】
熱電対温度計を備えた250mL三頸フラスコに、濃H2SO4(103g,〜56mL)を入れた。氷浴で0.4℃に冷却後、10N HNO3(5.68mL,56.8mmol)を〜30分かけて加えた。この酸混合物の温度が〜1.0℃に下がったら冷浴を除いた。式VIIのアダマンタン−1−イルジクロロ酢酸メチルエステル(15.0g,54.11mmol;乳鉢/乳棒で軽く砕いて大きな塊/結晶を破砕)を少しずつ(10分毎に1.25g;1時間50分の添加時間)加えた。〜5時間後、反応混合物は透明で薄黄色の溶液であった。
【0104】
〜24時間攪拌後、反応混合物は非常に薄い黄色の溶液であった。メカニカルスターラーおよび熱電対温度計を備えた四頸Mortonフラスコ(1L)に、水(250mL)および尿素(8.0g,0.133mol、HNO3に対して〜2.34当量)を入れた。得られた溶液に酢酸エチル(230mL)を加えた。得られた2相混合物を氷浴で〜1.0℃に冷却した。上記の反応混合物を、冷却したEtOAc/水/尿素混合物に〜15分かけて加えた。さらに酢酸エチルおよび水(各〜50mL)を用いて、移し入れを完了した。〜45分間攪拌した後、冷浴を除き、混合物を攪拌して温めた。4.5時間後に(クエンチの開始から)、得られた混合物をさらに酢酸エチル(〜100mL)を用いて分液漏斗(1L)に移し、移すのを完了した。水性画分を除き、酢酸エチル(1×80mL)で抽出した。有機画分を合わせて、水(2×90mL)、1N NaHCO3(4×90mL)および食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧下で除去して式VIIIのジクロロ(3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル)酢酸メチルエステルを無色に近い固体として得た:15.67g(98.7%粗生成物収率)。この粗物質は、精製することなく式IXのジクロロ(3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル)酢酸を調製するのに用いることができる。しかし所望なら、この粗物質(15.65g)をメタノール(102mL)および水(85mL)から再結晶して綿毛状の固体(mp 114.8〜115.0℃)を91%の収率で得ることができる。
【0105】
元素分析値:C13H18Cl2O3
計算値:C, 53.25; H, 6.18; Cl, 24.18%
実測値:C, 53.24; H, 6.24; Cl, 24.31%
1H NMR (500.16MHz, CDCl3)δ3.857 (s, 3H), 2.298 (br m, 2H), 1.824 (s, 2H), 1.793 (d, 4H, =2.75Hz), 1.682, 1.629 (br AB q, 4H), 1.529 (m, 3H) ppm
13C NMR (127.78 MHz, CDCl3)δ165.929, 94.281, 68.932, 54.150, 44.478, 44.529, 44.020, 35.750, 34.759, 30.149 ppm
Lab HPLC:
YMC ODS-A S3 120Å(4.6×50mm),λ=200nm, 2.5ml/分
溶媒:A = 水中の0.2%H3PO4
B = 水中の90%CH3CN
勾配:10分間で20%Aから100%Bへ

【0106】
2.3−ヒドロキシ−α−オキソトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸の製造
圧を均等にする滴下漏斗およびアルゴン導入口を備えた250mL容三頸フラスコに、上記工程1に記載の方法により製造したジクロロ(3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル)酢酸メチルエステル(式VIII)(15g,51.16mmol)を入れ、次いでテトラヒドロフラン(30mL,不安定化)を加えた。数分攪拌した後、式VIIIのメチルエステルの大部分は溶解して濁った溶液を生成した。この溶液に蒸留水(30mL)を加えると、ゆるい懸濁液が生成した。滴下漏斗に1N NaOH(69mL、69mmol、式VIIIの化合物の投入量に対して〜1.35当量)を入れた。NaOHを70分かけて滴下により加えてほぼ無色の溶液を得、これを周囲温度で攪拌した。
【0107】
〜16時間でのHPLC分析は、式VIII化合物の加水分解が完了したことを示した。この反応混合物はpHが13.24の透明な無色溶液であり、これに〜6N HCl(2.8mL)を加えてpH7.40に調節した。固体のNaHCO3(11.2g,0.133mol、2.60当量)を加えて懸濁液を生成した。
【0108】
4時間15分加熱した後のHPLC分析は、反応が完了したことを示す。5時間加熱後、熱源を除き、反応混合物(透明で無色な溶液)を冷却した。室温に冷却した後、反応混合物を冷蔵庫(+4℃)で4日間保存した。
【0109】
冷所で4日間保存した後、反応混合物は依然として透明で無色な溶液であり、HPLC分析は保存による変化を殆ど示さない。室温に温めた後、混合物(pH7.77)に濃HCl(11mL必要、CO2発生;pH〜1.40にて無色の固体が沈殿し始めた)を注意深く加えてpH0.20の酸性にした。その結果得られた懸濁液をEtOAc(×4、全量〜500mL;各EtOAc抽出後に水性画分についてHPLC分析を行った)で抽出した。1回目のEtOAc抽出後の水層(pH0.38)に濃HCl(〜1.6mL必要)を加えてpH0.18に調節した。2回目のEtOAc抽出後の水層(pH0.37)に濃HCl(〜0.8mL必要)を加えてpH0.17に調節した。水層は、残りのEtOAc抽出(抽出#3、pH0.19;抽出#4、pH0.19)の後にさらなるpH調節は必要なかった。有機画分を合わせた。乾燥(MgSO4)後、溶媒を減圧下で除去して粗の標記の式II化合物を無色に近い顆粒状の固体として得、これを真空(ポンプ)下で16時間乾燥させた:11.42g(99.53%収率);HPLC,100%(面積%)。
元素分析値:C12H16Cl2O3 [55465-020-31、TR46373]
計算値:C, 64.27%; H, 7.19%
実測値:C, 64.19%; H, 7.09%
【0110】
粗生成物である式1aの化合物(5.0g)を蒸留水(19mL)中で〜85℃に加熱しながら溶解し、次いで熱源から取り出し、冷却した。この物質は〜53℃で結晶化し始めた。室温で〜2時間静置した後、固体を濾過により回収し、氷冷水で洗浄した。濾過ケークに窒素を引くことにより水の大部分を除去した。次いでこの物質を真空下(ポンプ)で17時間乾燥させて標記の式1a化合物を大きな無色針状物として得た:4.33g(86.6%回収);融点164.5〜165.6℃(Mettler FP800システムにて);HPLC,100%(面積%)。
元素分析値:C12H16Cl2O3 [55465-023-15、TR46905]
計算値:C, 64.27%; H, 7.19%
実測値:C, 64.42%; H, 7.04%
【0111】
F.L−ピログルタミン酸(式E)のエステル化によるL−ピログルタミン酸エチルエステル(式F)の生成
反応容器にエタノール(49.0L)を入れ、−5℃に冷却した。次いで、混合物の温度が0℃を超えない方法で反応容器に塩化チオニル(4.97kg)を入れた。塩化チオニルの添加完了後、混合物を再び−5℃に冷却し、添加の間に温度が0℃と−5℃との間に維持されるようにL−ピログルタミン酸(式E)を少しずつ加えた。酸添加後、反応混合物を20〜25℃に加熱し、5時間攪拌した。次いで、反応混合物を最初の容量の約15%まで真空下(Tmax 45℃)で蒸発させた。次いで、残存する油状物をトルエン(49L)に溶解した。次いで、トルエン溶液を約10℃に冷却し、最大温度が20〜25℃となるようにトリエチルアミン(8.45kg)をゆっくり加えた。得られた懸濁液を30分間攪拌し、次いで濾過した。濾過ケークをトルエン(約5L)で洗浄した。濾液を50℃、真空下で全量約10Lまで減らした。シクロヘキサン(8L)を50℃でゆっくり加え、その後に約30℃に冷却することにより結晶化を開始した。種晶生成後、混合物を20〜25℃に冷却し、シクロヘキサンの2回目の8L分を入れた。次いで、混合物を6〜8℃に冷却し、1時間攪拌し、得られた結晶を濾去した。この結晶をシクロヘキサン(各4L)で2回洗浄した。収量は、無色針状物としてのL−ピログルタミン酸エチルエステル(式F)が4.89kg(82%)であった。
【0112】
G.L−ピログルタミン酸エチルエステル(式G)のBOC保護
L−ピログルタミン酸エチルエステル(式F)(5.00kg)を室温でトルエン(24.97L)に溶解した。次いで、この溶液に4−ジメチルアミノピリジン(0.19kg)を加えた。次いで、反応混合物の温度が25℃を超えないような方法でトルエン(24.97L)に溶解した無水BOC(7.29kg)の溶液を反応混合物に入れた。完全に添加した後、反応混合物を25℃で3時間攪拌した。次いで、反応混合物に半飽和NaHCO3溶液(49.94L)を入れ、10分間激しく攪拌し、その後に有機層と水層を分離した。分離した有機層を水(24.97L)で2回洗浄した。次いで、有機層を真空下、最高50℃で溶媒から蒸発させた。残存する無色からわずかに黄色がかった油状物は静置すると結晶化した。理論的収量は、(5S)−2−オキソピロリジン−1,5−ジカルボン酸,1−(1,1−ジメチルエチル),5−エチルエステル(式G)8.18kg(31.81mol)であった。
【0113】
H.SuperHydride還元および脱離
(5S)−2−オキソピロリジン−1,5−ジカルボン酸,1−(1,1−ジメチルエチル),5−エチルエステル(式G)(4.80kg)をトルエン(30.97L;Kf max 0.01%水)に溶解し、−50℃に冷却した。この溶液に反応温度が−45℃を超えないような方法で、SuperHydride(LiEt3BH:THF中に1M;19.96L)を入れた。添加完了後、混合物を−45〜−50℃で30分間攪拌した。次いで、温度が−45℃を超えないような方法で反応混合物にN−エチルジイソプロピルアミン(DIPEA;14.47L)を加えた。ジメチルアミノピリジン(0.030kg)を固体として混合物に加えた。次いで、反応温度が−45℃を超えないような方法で反応混合物に無水トリフルオロ酢酸(TFAA)(4.70kg)を加えた。添加完了後、反応混合物を20〜25℃に1時間内温め、この温度でさらに2時間維持した。次いで、反応混合物を0℃に冷却し、反応温度が5℃を超えないような方法でゆっくりと水(48.00L)を入れた。次いで、水層と有機層を分離し、有機層を再び48Lの水(0〜5℃)で洗浄した。次いで、有機層を蒸発させ、40℃で脱気した。黄味を帯びた油状物が、4,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1,5−ジカルボン酸,1−(1−ジメチルエチル),5−エチルエステル(BOC−DHPEE)(式G’)の収量4.5kg(18.66mol、100%)で得られた。
【0114】
I.BOC−DHPEE(式G’)の加水分解
4,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1,5−ジカルボン酸,1−(1,1−ジメチルエチル),5−エチルエステル(BOC−DHPEE)(式G’)(6.00kg)およびエタノール(24.00L)から製造した溶液を0〜5℃に冷却し、この温度で水(20.87L)中の水酸化リチウム水和物(2.09kg)の溶液でゆっくりと処理して濁った溶液を生成した。次いで、この濁った溶液を20〜25℃に温め、この温度で2時間攪拌した。次いで、反応混合物を最高温度40℃、真空下で約10.5Lの容量まで蒸発させ、水(24.00L)およびt−ブチルメチルエーテル(TBMEまたはMTBE、24L)を入れ、10分間混合した。得られた有機層と水層を分離し、水層に再び24LのTMBEを入れた。次いで、この混合物を5〜10℃に冷却し、激しく攪拌しながらH3PO4 85%−水(1:4)を用いてpHを2.3〜2.3に調節した。この工程の間、安定性のために温度を5〜10℃に維持した。得られた有機層と水層を分離した。有機層を保存し、水層を、予め5〜10℃に冷却した24LのTBMEで再び抽出した。得られた有機層を保存していた有機層と合わせ、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(4.82kg)を入れた。次いで、溶液を蒸発させ、最高温度30℃、真空下で脱気した。収量は7.84kg(22.88mol,92%)[N−BOCデヒドロプロリン*DIPEA(BOC−DHP)]であった。
【0115】
J.BOC−DHPのアミド生成
実施例Iに記載の鹸化によって合成したBOC−DHPは、水を含んでいるかもしれない。従って、反応を行う前にトルエンとの共沸蒸留を適用した。しかし、試薬が過剰なため、原料は水を除去する前のBOC−DHPの量に基づいて計算した。共沸蒸留では、BOC−DHPをトルエンを用いて約30%溶液まで希釈した。トルエンを真空下、40℃で除いた。次いで、処理したBOC−DHP(6.00kg)をTHF(48.0L)に溶解した。この溶液にDIPEA(2.26kg)を入れ、反応混合物を−20〜−25℃に冷却した。次いで、塩化メシル(3.01kg)をゆっくり加えた。この添加の間に塩酸DIPEAが沈殿した。次いで、得られた懸濁液を−20℃で2時間攪拌し、次いで表面下の気体導入口によりアンモニアで飽和させた。アンモニアを添加する間、反応物を0℃に加熱した。飽和後、反応混合物を20℃に加熱し、3時間攪拌した。攪拌後、反応混合物を濾過して塩酸塩を除去した。濾過ケークをTHF(12L)で数回洗浄した。濾液を真空下、最高温度40℃で濃縮し、次いで塩化メチレン(33.33L)に溶解した。この溶液を水(26.66L)で洗浄した。得られた有機層と水層を分離し、水層を塩化メチレン(各20L)で2回抽出した。得られた有機層を合わせ、真空濃縮および脱気して過剰のヒューニッヒ塩基を除去した。収量は(5S)−5−アミノカルボニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−カルボン酸 1−(1,1−ジメチルエチル)エステル(BOC−DHPA)(式G”)について、3.35kg(15.77mol,90%)であった。
【0116】
K.(5S)−5−アミノカルボニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−カルボン酸 1−(1,1−ジメチルエチル)エステル(式G”)のシクロプロパン化
第一の反応器である反応器Aに、塩化メチレン(18.0L)に溶解した(BOC−DHPA)(式IV)(4kg)を入れ、20℃に維持した。第二の反応器である反応器Bには塩化メチレン(18.00L)を入れ、−30℃に冷却した。次いで、反応器Bにジメトキシエタン(DME)(3.36kg)、次いでトルエン中のジエチル亜鉛(15.36kg)の30%溶液を−30〜−25℃の温度に維持しながら入れた。次いで、反応温度を−30〜−25℃に維持しながら、ジヨードメタン(19.99kg)を反応器Bに入れた。ジヨードメタンの添加完了後、混合物を−30〜−25℃で45分間攪拌した。次いで、この混合物を冷却パイプ(−20〜−25℃)により反応器Aに入れた。反応が完了するまで反応器Aの反応温度が22〜24℃に維持されるように、約5%の部分にて添加をゆっくりと行った。反応完了後、反応器Aの混合物を5〜10℃に冷却した。次いで、この反応混合物に、反応温度が15℃を超えない方法で飽和重炭酸塩溶液(21.6L)をゆっくりと入れた。この添加後、反応混合物を少なくとも1時間攪拌すると、その間に沈殿が生成した。懸濁液を濾過した。得られた濾過ケークを容器に戻し、塩化メチレン(14.4L)で30分間再度スラリー化し、再度濾過した。この第二の濾過後、濾過ケークをさらに塩化メチレン(7.2L)で洗浄した。次いで、濾液を水層と有機層に分離し、有機層を半飽和食塩水(21.6L)で洗浄した。次いで、溶媒を最高温度30℃で真空除去し、ヘプタンと交換した。ヘプタン中の粗生成物のスラリーが得られた。溶媒交換後のこの懸濁液の最終容量は14.4Lであった。粗生成物を濾過により単離した。濾過ケークをヘプタン(2.9L)で洗浄し、次いで真空乾燥して一定の重量とした。粗生成物の収量は2.76kg(12.2mol,72%)[1S−(1α,3β,5α]−3−アミノカルボニル)−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−カルボン酸 1,1−ジメチルエチルエステル(式H)であった。精製するため、この粗物質を8倍量の酢酸ブチル/ヘプタンの1:1混合物中に20〜22℃で4時間スラリー化した。この物質を濾過し、濾過ケークを約1倍量のヘプタンで洗浄した。収量は2.11kg(9.33mol,55%)[1S−(1α,3β,5α]−3−アミノカルボニル)−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−カルボン酸 1,1−ジメチルエチルエステル(式H)であった。
【0117】
L.[1S−(1α,3β,5α)]−3−(アミノカルボニル)−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−カルボン酸 1,1−ジメチルエチルエステル(式H)の脱保護による(1S,3S,5S)−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−カルボキサミド(式J)の生成
メカニカルスターラーおよび熱電対を備えた100mLの二頸フラスコに[1S−(1α,3β,5α]−3−アミノカルボニル)−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−カルボン酸 1,1−ジメチルエチルエステル(式H)(5.0g,22.1mmol)およびTHF(20mL)を入れた。次いで、HCl(EtOAc中2.5M,25mL,62.5mmol)を懸濁液に加えた。得られた溶液を室温で18時間攪拌すると、その間に沈殿が観察された。反応の完了をHPLCによりモニターした。メチルt−ブチルエーテル(MTBE)(30mL)を懸濁液に加え、攪拌をさらに30分間続けた。次いで、懸濁液をN2保護下に濾過して白色固体を得、これをMTBE(20mL)で洗浄した。該固体をオーブン中、減圧下で48時間乾燥させて、(1S,3S,5S)−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−カルボキサミドの塩酸塩(式J;3.6g,100%)を得た。
【0118】
M.(αS)−α−アミノ−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式2)のBOC保護による(αS)−α[[(1,1−ジメチルエトキシ)カルボニル]アミノ]−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸、式3の酸の生成
遊離酸(式3)を製造するための好ましい方法を実施例3に記載する。別法として、以下の方法を用いて遊離酸を製造することができる:
(αS)−α−アミノ−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式2)(469g,2.08mol)を、温度プローブおよびpHプローブを備えた相分離器中、氷冷1N NaOH(5L,5mol,2.4当量)に溶解した。THF(2.5L)を溶液に加えた。次いで、固体のBoc2Oを加え、反応混合物を周囲温度で約1時間攪拌した。次いで、EtOAc(4L)を攪拌しながら加え、得られた有機層と水層を分離した。水層のpHを濃HClで7に調節した。次いで、EtOAc(4L)を加え、さらにHClを加えてpHを約1に下げた。添加した濃HClの全量は510mLであった。有機層と水層を再び分離し、水層をEtOAc(3×3L)で抽出した。次いで、有機層を合わせ、水(3L)および食塩水(3L)で洗浄した。次いで、洗浄した有機層をNa2SO4で乾燥し、エバポレーターにおいて室温で濃縮して乾燥させた。収量は(αS)−α[[(1,1−ジメチルエトキシ)カルボニル]アミノ]−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式3)について542gであった。
【0119】
N.3−シアノ−(αS)−α−(3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]−1−デシル)−β−オキソ−(1S,3S,5S)−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−エタンカルバミン酸 1,1−ジメチルエチルエステル(式K)を生成するカップリング反応
温度計、メカニカルスターラーおよび気体導入口を備えた2L容の三頸フラスコに、(αS)−α[[(1,1−ジメチルエトキシ)カルボニル]アミノ]−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式3)(50g,153.8mmol)を入れた。THF(200mL)を加え、攪拌して透明な溶液を得た。この溶液をアセトン−ドライアイス−水浴で−6℃に冷却した。次いで、塩化メタンスルホニル(Mes−Cl)(13.1mL,169mmol、1.1当量)を一度に加え、次いでジイソプロピルエチルアミン(94mL,539mmol,1.1当量)を加えた。このジイソプロピルエチルアミンは約4分かけてゆっくり加えて内部温度を8℃以下に保った。全ての酸が混合無水物に変換されるまで、反応混合物を0℃で攪拌した。次いで、(1S,3S,5S)−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−カルボキサミド塩酸塩(32.5g、200mmol,1.1当量)およびヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)(1.04g,7.6mmol,0.05当量)を一度に加え、フラスコを冷浴から取り出した。反応混合物を室温で2時間攪拌し、次いで室温で終夜放置した。
【0120】
O.3−シアノ−(αS)−α−(3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]−1−デシル)−β−オキソ−(1S,3S,5S)−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−エタンカルバミン酸 1,1−ジメチルエチルエステル(式L)を生成する脱水および加水分解
実施例Nの反応混合物にピリジン(6当量,922mmol,74.6mL)を加え、反応混合物を冷浴で−8℃に冷却した。次いで、温度を10℃以下に維持しながら、無水トリフルオロ酢酸(TFAA)(4当量,616mmol,87mL)を6分かけてゆっくり加えた。反応液を24℃で0.5時間攪拌し、HPLC(30mL,0.5mL AcN,0.5mL H2O)で実施例Nの化合物(K)の消失についてチェックした。
【0121】
次いで、反応液を冷浴で約−3℃に冷却した。反応温度を10℃以下に維持しながら、NaOH(5N,6当量,0.925mol,185mL)を反応液に10分かけて加えた(水性pH=9.9)。K2CO3水溶液(319g,15当量,510mLのH2Oに溶解)を5分かけて加えた(温度=8℃、水性pH11.1)。反応を7時間40分かけて行った。HPLC(30μL,0.5mL AcN,0.5mL H2O)によって測定されるように全ての中間体が最後から2番目まで加水分解されたときに反応は完了した。
【0122】
次いでEtOAc(500mL)を反応混合物に加え、得られた水層と有機層とを分離した。有機層を500mLの緩衝溶液(2M H3PO4,1M NaH2PO4)で洗浄した。温度は15℃から23℃に上昇した;添加時間:5分、水性V=560mL、pH=4.5、HPLCにより32mgの生成物;有機性V=1080mL。有機層を第二の500mL緩衝溶液で洗浄した;水性V=780mL、pH=2.5、HPLCにより415mgの生成物;有機性V=800mL、1.02v/v%ピリジン。有機層を300mLの食塩水で洗浄した;水性V=350mL、pH=1.8,HPLCにより20mgの生成物。有機層を130mLの飽和NaHCO3溶液で洗浄した;水性V=176mL、pH=6.0、780mgの生成物。有機層を300mLの半飽和食塩水で洗浄した;水性V=330mL、pH=5.2、25mgの生成物;有機性V=650mL、ピリジン0.045v/v%。5gのDarcoを有機層に加え、5分間攪拌し、50gのシリカで濾過し、4×25mLのEtOAcで洗浄、有機性V=750mL、ピリジン0.04v/v%。
【0123】
次いで、有機層を約133mLまで蒸留した。溶液が曇るまで有機層を1時間攪拌した。133mLのヘプタンを15分かけて加え、スラリーを終夜攪拌した。133mLのヘプタンを一晩かけて加えた。混合物を機械的攪拌により20分間激しく攪拌した。固形分を濾去し、濾過ケークを50mLの5%EtOAc/ヘプタンで洗浄した;母液からの溶媒除去後に3.4gの生成物が8.86gの粗生成物において見出された。乾燥生成物の結晶を真空下、50℃で終夜加熱した。467gの生成物が得られた、〜73%、96.6AP。
【0124】
P.(1S,3S,5S)−2−[(2S)−2−アミノ−2−(3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]−1−デシル)−1−オキソエチル]−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−カルボニトリル安息香酸塩(1:1)(式M)を生成する脱保護
3−シアノ−(αS)−α−(3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]−1−デシル)−β−オキソ−(1S,3S,5S)−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−エタンカルバミン酸 1,1−ジメチルエチルエステル(式L)(5.0g,12.04mmol)を、温度計、メカニカルスターラー、および気体導入口を備えた三頸フラスコに入れた。EtOAc(約45〜50mL)を加えて透明な溶液とした。濃HCl(3.00mL,37%w/w%,36.14mmol,3当量)を室温で加え、固体が生成するまで反応混合物を攪拌した。次いで、水(30mL)を加え、混合物を1〜2分間攪拌した。この反応混合物を分液漏斗に移し、反応混合物の層を、明確に相が分割するまで分離させた。温度を25℃以下に維持しながら、水層を25%NaOHで約6より低いpHに調節した。
【0125】
次いで、水層にイソプロピルアルコール(IPA;2〜3mL)を加え、次いで安息香酸ナトリウム(6.5mLの水に2.6gの安息香酸ナトリウムを溶解することにより調製した安息香酸ナトリウム溶液を0.65mL)を加えることによって塩交換した。次いで、残りの安息香酸ナトリウム溶液を滴下漏斗で滴下して加えた。得られた反応混合物を室温で16〜24時間攪拌した。次いで、反応混合物中の固形分をブフナー漏斗で濾過し、AgNO3を用いたClテストで固体が陰性を示すまで水で洗浄した。次いで、固体をヘプタン(10mL)で洗浄して水を除去し、漏斗上で風乾し、真空オーブンにおいて35℃で、KF≦5%まで乾燥させた。収率は79%、4.1gであった。
【0126】
Q.化合物L:
【化29】

の脱保護による遊離塩基M’:
【化30】

の製造
実施例Oの化合物(L)(300g,0.723mol、効力90.6%)、塩化メチレン(3L)、メタノール(288mL,7.23mol)および濃塩酸(36%)(288mL、7.23mol)を、メカニカルスターラー、温度プローブおよびN2ガス導入口を備えた三頸の12Lフラスコに入れた。反応温度を約20〜約25℃の範囲に維持しながら反応を行った。反応混合物を18時間攪拌し、2層に分離し、上部の水層を回収した。水層に塩化メチレン(6L)および水(720mL)を加え、5N NaOH(〜600mL)を滴下して加えてpHを9.0〜10.5に調節した。
【0127】
式:
【化31】

の塩酸塩(HPLCにより同定)(式L’)を含む有機相を塩化メチレン(6L)および水(720mL)で処理し、反応温度を20〜25℃に維持しながら5N水酸化ナトリウム溶液(〜600mL)を滴下して加えて、pHを9〜10.5に調節した。NaCl(120g)を加え、混合物を20分間攪拌して層を分離させた。有機層(6.2L)を回収し(〜174gの化合物M’を含有)、水層(1.75L)は廃棄した(6.5gの化合物M’を含有)。
【0128】
有機層を1%NH4Cl食塩水溶液(450mL)で洗浄した(1%NH4Cl食塩水溶液は1gのNH4Cl、25gのNaClおよび74gのH2Oを含んでいた)。得られた相分離から6.0Lの有機層を回収し(溶液中に〜176gの化合物M’を含んでいた)、1.4gの化合物M’(〜0.4%)を含む水層(0.45L)は廃棄した。
【0129】
25℃/50mmHgでCH2Cl2を留去しながら酢酸エチル(〜4L)を有機層に加えた。最終容量が2.5Lに達したら蒸留を停止した。有機層をポリッシュ(polish)濾過して固体のNaClを除去し、〜1Kg(1Lの酢酸エチル中に化合物M’が〜170g)GC分析:DCM<0.1%まで濃縮した。水(17mL)を滴下して加え、10分後に結晶化が始まった。17mLの水を加え、得られたスラリーを30分間攪拌し、濾過し、濾過ケークを酢酸エチルで洗浄し、室温で乾燥させて186gの化合物M’を収率81%で得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分精製されたフェニルアラニンデヒドロゲナーゼおよび/またはギ酸デヒドロゲナーゼ酵素(PDH/FDH)濃縮物を製造する方法であって、以下の工程:
a.フェニルアラニンデヒドロゲナーゼおよび/またはギ酸デヒドロゲナーゼを製造し得る微生物の発酵ブロスを製造し;
b.該ブロスをミクロ流動化させて、得られた細胞から活性を放出させ、PDHおよび/またはFDH酵素を含むミクロ流動化ブロスを得;
c.該ブロスを凝集剤で処理することにより細胞破砕物を凝集させてDNAおよび不要なタンパク質を除去して、該ブロスを清浄化し;
d.清浄化ブロスを濾過し;そして
e.該ブロスを濃縮して、PDHについて少なくとも約400IU/ml、FDHについて少なくとも約20IU/mlのPDH/FDH活性を有する部分精製された酵素濃縮物を得ること
を含む方法。
【請求項2】
ブロスを、約12000〜約20000psiの範囲内の圧力下でミクロ流動化する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ブロスの温度を約25℃以下に保ちながら該ブロスをミクロ流動化する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ブロスの温度を約25℃以下に保つ、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
フェニルアラニンデヒドロゲナーゼをSporosarchina、Thermoactinomyces属から得る、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
フェニルアラニンデヒドロゲナーゼをThermoactinomyces intermediusから得る、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
フェニルアラニンデヒドロゲナーゼが、Thermoactinomyces intermedius、ATCC 33205から得られ、Escherichia coliまたはPichia pastorisにおいて発現される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
微生物がEsherichia coli JM110(pBMS 2000-PPDFDH-PDH-mod)である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
清浄化ブロスを限外濾過する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
以下の構造:
【化1】

を有するアミン体を製造する方法であって、以下の工程:
a.以下の構造:
【化2】

を有するケト酸の水溶液をギ酸アンモニウム、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、ジチオスレイトールおよび部分精製されたフェニルアラニンデヒドロゲナーゼ/ギ酸デヒドロゲナーゼ酵素(PDH/FDH)で処理し;そして
b.反応混合物のpHを水酸化ナトリウムで調整し、望ましくない過剰なアンモニウムイオンを実質的に含まない所望のアミン体を得ること
を含む方法。
【請求項11】
部分精製されたフェニルアラニンデヒドロゲナーゼ/ギ酸デヒドロゲナーゼ酵素を請求項1に記載の方法により製造する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
3−ヒドロキシ−α−オキソトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸、ギ酸アンモニウム、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、ジチオスレイトールおよび部分精製されたフェニルアラニンデヒドロゲナーゼ/ギ酸デヒドロゲナーゼ酵素の水溶液を約35〜約40℃の範囲内の温度に温めて約24〜約48時間の範囲内の時間、約7.8〜約8.2の範囲内のpHで維持してアミン体を製造する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
以下の構造:
【化3】

を有するBOC保護されたアミン体を製造するための方法であって、以下の工程:
a.以下の構造を有するアミノ酸(αS)−α−アミノ−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸:
【化4】

(部分精製フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ/ギ酸デヒドロゲナーゼ酵素を用いて、請求項12に記載のケト酸:
【化5】

の還元的アミノ化において製造される)の水溶液
を提供し;そして
b.上記水溶液をジ−tert−ブチルジカルボネートと処理してBOC保護アミン体を得ることを
を含む方法。
【請求項14】
(αS)−α−アミノ−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸の水溶液およびジ−tert−ブチルジカルボネートの混合物のpHを約8.5〜約12.5の範囲内に維持する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
BOC保護アミン体を反応混合物から単離して、BOC保護アミン体を結晶化させる工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法により製造された部分精製されたフェニルアラニンデヒドロゲナーゼ/ギ酸デヒドロゲナーゼ酵素。
【請求項17】
PDHおよびFDH活性を有することを特徴とする部分精製されたフェニルアラニンデヒドロゲナーゼ/ギ酸デヒドロゲナーゼ。
【請求項18】
以下の構造:
【化6】

を有するBOC保護アミン体を製造するために提供される方法であって、以下の工程:
a.部分精製されたフェニルアラニンデヒドロゲナーゼ/ギ酸デヒドロゲナーゼ酵素濃縮物を製造し;
b.以下の構造:
【化7】

を有するケト酸の水溶液を、ギ酸アンモニウム、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、ジチオスレイトールおよび部分精製フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ/ギ酸デヒドロゲナーゼ酵素濃縮物(PDH/FDH)と処理し;
c.反応混合物のpHを水酸化ナトリウムで調節して、望ましくない過剰アンモニウムイオンを実質的に含まない所望のアミン体:
【化8】

を得;そして
d.アミノ酸中間体を単離せずに、上記水溶液をジ−tert−ブチルジカルボネートと処理して以下の構造:
【化9】

を有するBOC保護アミン体を得ること
を含む方法。
【請求項19】
部分精製されたフェニルアラニンデヒドロゲナーゼ/ギ酸デヒドロゲナーゼ酵素が、以下の工程:
a.フェニルアラニンデヒドロゲナーゼおよび/またはギ酸デヒドロゲナーゼを製造し得る微生物の発酵ブロスを製造し;
b.該ブロスをミクロ流動化させて得られた細胞から活性を放出させ、PDHおよび/またはFDH活性を有するミクロ流動化ブロスを得;
c.該ブロスを凝集剤と処理することにより細胞破砕物を凝集させて、該ブロスを清浄化し;
d.清浄化ブロスを濾過し;そして
e.該ブロスを濃縮して、PDHについて少なくとも約400IU/ml、FDHについて少なくとも約20IU/mlのPDH/FDH活性を有する精製された酵素濃縮物を得ること
により製造される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
以下の構造:
【化10】

を有する遊離塩基化合物を生成するための方法であって、請求項13に記載の方法により製造した以下の構造:
【化11】

を有するBOC保護化合物を提供し、BOC保護化合物を塩化メシルおよびヒューニッヒ塩基および以下の構造:
【化12】

を有する化合物Jおよび1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)と処理し、構造K:
【化13】

を有するBOC保護中間体化合物を生成し、ピリジンおよびトリフルオロ酢酸無水物の存在下で中間体Kを脱水し、次いで強塩基の存在下で反応生成物を加水分解して以下の化合物L:
【化14】

を生成し、そして化合物Lを塩酸と処理して対応する以下の塩酸塩L':
【化15】

を生成し、化合物L'を塩酸および水酸化ナトリウムと処理して遊離塩基化合物M'を生成する方法。

【公開番号】特開2011−177177(P2011−177177A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−57781(P2011−57781)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【分割の表示】特願2007−508513(P2007−508513)の分割
【原出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(391015708)ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー (494)
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
【Fターム(参考)】