説明

ジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒を利用した寒冷地対応ヒートポンプに多段エジェクタを組み込んだサイクルシステム

【課題】 ジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒を暖房用/給湯用冷媒として用いたときに、寒冷地で効率が著しく低下する問題を解消したヒートポンプのサイクルシステムを提供する。
【解決手段】 ジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒を利用した寒冷地対応ヒートポンプのサイクルシステムであって、圧縮機と、凝縮器と、凝縮器から圧縮機への液相の混合物冷媒の流れ方向に直列に配置され、かつ液相の混合物冷媒の少なくとも一部をそれぞれ蒸発させて、気相の混合物冷媒にする複数の蒸発器と、複数の蒸発器に送られる液相の混合物冷媒をそれぞれ減圧膨張・加速させて、液相の混合物冷媒の温度を低下させるための複数のエジェクタとを備え、各蒸発器において混合物冷媒が蒸発するときの温度が、エジェクタによって混合物冷媒の温度を低下させることによって、外気温より高くならないことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプに多段エジェクタを組み込んだサイクルシステムに関し、より詳細には、ジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒を利用したヒートポンプが、寒冷地において外気温が低い場合でもその効率を低下させないように、多段エジェクタを組み込んだサイクルシステムに関する。本発明は、このようなサイクルシステムを有する暖房システムまたは給湯システムにも関する。
【背景技術】
【0002】
現在、二酸化炭素は、オゾン破壊係数ゼロ、地球温暖化係数1で、環境への負荷が極めて小さく、かつ毒性、可燃性が無く安全で安価であること、臨界温度が31.1℃と低く、空調や給湯用では、サイクルの高圧側が容易に超臨界になることから冷媒と被冷却流体との温度差が小さい加熱を行うことができるので、給湯のように昇温幅が大きい加熱プロセスでは、高い成績係数(COP)が得られること、圧縮機単位流入体積当たりの加熱能力が大きく、熱伝導率が高いことから、エコキュート(登録商標)の名称でヒートポンプ給湯機用冷媒として普及利用されている。
【0003】
図1に、二酸化炭素を冷媒として利用する従来の暖房用/給湯用ヒートポンプ100の代表的な構成図を示す。図1に示されるヒートポンプは、圧縮機101、凝縮器102、膨張弁103、蒸発器104、二酸化炭素冷媒用の配管105、および加熱されるべき水用の配管106を備える。図1の矢印で示されるように、二酸化炭素冷媒は、配管105を介して、圧縮機101、凝縮器102、膨張弁103、および蒸発器104の順番で循環する。また加熱されるべき水は、水用の配管106を介して凝縮器102に導入され、凝縮器102で加熱された後で暖房用/給湯用として使用される。
【0004】
図2に、二酸化炭素を冷媒として利用した従来の暖房用/給湯用ヒートポンプ100におけるサイクルを、横軸がエンタルピーを表しかつ縦軸が温度を表す線図を用いて示す。なお、図2における5は外気温を表し、6は造温水過程を表す線である。
【0005】
図1および図2を参照して、従来のヒートポンプのサイクルを、各構成部品の動作および各構成部品における冷媒の状態に基づいて以下に簡単に説明する。
【0006】
蒸発器104で外部から熱を奪いながら蒸発した低圧低温の気相の二酸化炭素は、圧縮機101へ送られる。この蒸発器104における状態は、図2の4〜1に対応する。二酸化炭素冷媒は、温度は低温で一定のままであるが、外部から熱を奪うことによってエンタルピーは増大して、液相から気化し続けて飽和蒸気線に近付く。
【0007】
この低圧低温の気相の二酸化炭素は、圧縮機101で断熱圧縮されて高圧高温の気相の二酸化炭素になり、凝縮器2へ送られる。この圧縮機101における状態は、図2の1〜2に対応する。二酸化炭素冷媒は、温度が上昇した過熱状態の気相の二酸化炭素になる。
【0008】
温度が上昇した過熱状態の気相の二酸化炭素は、凝縮器102において放熱し冷却される。この凝縮器102における状態は、図2の2〜3に対応する。過熱状態の気相の二酸化炭素(図2の2)から、超臨界圧の状態で冷却されてエンタルピーが減少し、液相の二酸化炭素になる(図2の3)。この凝縮器102において、気相の二酸化炭素冷媒から放出される熱を利用して、水用の配管106から導入される水を加熱して、暖房または給湯に用いる。
【0009】
高圧で温度が低下した液相の二酸化炭素は、凝縮器102から膨張弁103へ送られる。膨張弁103で、液相の二酸化炭素は、圧力が急激に低下しかつ温度が急激に低下して、低圧低温の液相の二酸化炭素になる。この膨張弁104における状態は、図2の3〜4に対応する。二酸化炭素は、エンタルピーが同一で温度が急激に低下する。
【0010】
低圧低温の液相の二酸化炭素は、再び蒸発器104で外部から熱を奪い蒸発して、図2の4〜1に対応する状態になり、低圧低温の気相の二酸化炭素になる。
【0011】
二酸化炭素冷媒がこのようなサイクルを繰り返すことによって、ヒートポンプ100が動作して、凝縮器102において水を加熱する。
【0012】
このように動作するヒートポンプにおいて冷媒として二酸化炭素を用いることは、普及利用されているが、二酸化炭素冷媒の作動圧が、約10MPaと他の冷媒と比べると非常に高く、そのため、ヒートポンプにおける各構成部品を超高圧仕様にしなければならない問題があった。そのため、作動圧が低い冷媒の開発が大きな課題となっている。
【0013】
本発明者らは、例えば特願2005−55957公報で開示するように、二酸化炭素超臨界冷媒に代わる、オゾン層破壊の危険性がなく、地球温暖化に及ぼす悪影響が小さく、かつ不燃性ないし難燃性で、低圧において作動する等の優れた性能を有する、安全で毒性のない給湯/暖房用冷媒組成物を提供するために、ジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒を用いることを見出した。
【0014】
すなわち、物性的に伝熱効果の高い二酸化炭素(0.02W/mK)とより高い比熱を有するジメチルエーテル(138J/molK)とを混合することによって、極めて高い熱効率を示す物性になり、低圧で作動する成績係数(COP)の優れた暖房用/給湯用冷媒となることを見出した。このジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒を利用した暖房用/給湯用ヒートポンプは、外気温5℃程度の条件下で、数値シミュレーションと実証実験の結果、3.5MPa以下の低圧で作動し、かつ高い成績係数(COP)が得られることが判明した。
【0015】
このように、二酸化炭素冷媒と比べて低圧で作動するジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒を、暖房用/給湯用冷媒として用いると、温暖地では全く問題なく良好に動作するが、特に寒冷地、例えば北海道の札幌など冬季に外気温が零下10℃以下になる場合には、効率が著しく低下する問題があった。
【0016】
このジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒を、寒冷地において外気温が低い場合に効率が低下する問題について、図3を参照して説明する。図3は、図2と同様に、横軸がエンタルピーを表しかつ縦軸が温度を表す線図であり、冷媒としてジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒を用いた場合のサイクルを示す線図である。
【0017】
ジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒は、非共沸特性を有する。そのために、図3の14〜11に示してあるように、蒸発時に温度が一定ではなく、蒸発するにつれて蒸発温度が上昇する性質を持っている。
【0018】
寒冷地で外気温(図3の線15)が低い場合には、図3に示される点17において、蒸発器104における混合物冷媒の温度と、外気温とが等しくなり、点17より右側では、混合物冷媒の温度が外気温より高い状態になる。このように、蒸発器104内での混合物冷媒の温度が外気温より高くなると、混合物冷媒の蒸発過程の途中で外気から熱を得ることができなくなる。そのため、混合物冷媒の蒸発が蒸発器104で完了しないことになり、ヒートポンプの効率が低下する。
【0019】
この問題を解決する1つの方法として、蒸発器104における混合物冷媒の蒸発温度が、蒸発の最終過程においても外気温より低くなるように、蒸発圧力をさらに低下させて、混合物冷媒の温度を低下させる方法が考えられる。このサイクルを図4に示す。この図4も、図2および図3と同様に横軸がエンタルピーを表しかつ縦軸が温度を表す線図で表す。図4における24〜21が、蒸発器104での混合物冷媒の蒸発過程での温度であり、外気温15より低くなっている。
【0020】
しかしながら、この方法は、圧縮機101における圧縮仕事を増大させ、成績係数(COP)が低下するという他の問題を生じる。さらに、蒸発器104全体がより低圧になると、蒸発過程での圧力損失でさらに成績係数(COP)が低下する。また、寒冷地で外気温が低下している状態では、混合物冷媒の蒸発圧力が低下して、圧縮機101が循環できる混合物冷媒の流量の低下も招くことになる。以上のように、蒸発器104における混合物冷媒の蒸発温度が、蒸発の最終過程においても外気温より低くなるように、蒸発圧力をさらに低下させる方法は、他の問題を生じるために好ましい方法ではない。
【0021】
一方、ヒートポンプにおいて、膨張弁103の代わりにエジェクタを使用する方法が提案されている。例えば、万尾達徳、谷野正幸、岡崎多佳志、井上誠司著、「エジェクタを用いた冷媒再循環による冷凍サイクルの性能向上」、高砂熱学工業総合研究所報、第18号、頁105〜115、2004年を参照されたい。
【0022】
膨張弁103で冷媒が膨張するとき、圧力と熱のエネルギーの一部は、冷媒流体の運動エネルギーに変換されて、冷媒流体の乱流という形態になる。この運動エネルギーは、圧縮機101の圧縮仕事の15%を占め、通常はただ無駄に熱エネルギーに変えられていた。しかし、膨張弁の代わりに二相流エジェクタを使用することにより、凝縮器102で凝縮した高温高圧の液相の冷媒は、エジェクタのノズルで減圧加速され、高速の二相流となる。さらに、この二相流エジェクタは、蒸発器104で吸熱して気相となった冷媒をエジェクタの出口部にあるディフューザで減速昇圧させる。
【0023】
冷媒の二相流は、気液分離器で気相の冷媒と液相の冷媒とに分離されて、液相の冷媒は蒸発器へ送られ、気相の冷媒は圧縮機に送られる。エジェクタのディフューザで、高速の二相流の運動エネルギーが圧力エネルギーに変換されるため、圧縮機の圧縮仕事が軽減されて成績係数(COP)が向上する。また、膨張弁を備える冷凍サイクルでは熱に変えられて、低温の冷媒を暖めていたエネルギーが取り除かれるので、冷凍能力が向上する。
【0024】
膨張弁の代わりにエジェクタを用いた、二酸化炭素冷媒を用いたヒートポンプにおけるサイクルを、図2から図4と同様の横軸がエンタルピーを表しかつ縦軸が温度を表す線図である図5に表す。図5の3〜4’が、エジェクタによる二酸化炭素冷媒の状態に対応する。
【0025】
ヒートポンプサイクルで膨張弁の代わりにエジェクタを用いる技術は、膨張弁で無駄に消費されていたエネルギーを無くして、圧縮機の仕事を軽減することを目的に検討されていた。ヒートポンプサイクルにおいて膨張弁の代わりに、エジェクタを多段構成で用いることを、ジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒を寒冷地においてヒートポンプに使用するときの効率が低下する問題を解決するための手段として用いるという発想は、これまでなされておらず、また検討もされなかった。
【特許文献1】特願2005−55957公報
【非特許文献1】万尾達徳、谷野正幸、岡崎多佳志、井上誠司著、「エジェクタを用いた冷媒再循環による冷凍サイクルの性能向上」、高砂熱学工業総合研究所報、第18号、頁105〜115、2004年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明は、ジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒を暖房用/給湯用冷媒として用いたときに、寒冷地で効率が著しく低下する問題を解消するヒートポンプのサイクルシステムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
請求項1に係る発明によれば、ジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒を利用した寒冷地対応ヒートポンプのサイクルシステムであって、
低圧低温の気相のジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒を吸入圧縮して、高圧高温の気相の混合物冷媒にする圧縮機と、
圧縮機に接続され、かつ高圧高温の気相の混合物冷媒を液相に凝縮し放熱させて、高圧の液相の混合物冷媒にする凝縮器と、
凝縮器から圧縮機への液相の混合物冷媒の流れ方向に直列に配置され、かつ液相の混合物冷媒の少なくとも一部をそれぞれ蒸発させて、気相の混合物冷媒にする複数の蒸発器と、
複数の蒸発器に送られる液相の混合物冷媒をそれぞれ減圧膨張・加速させて、液相の混合物冷媒の温度を低下させるための複数のエジェクタとを備え、
各蒸発器において混合物冷媒が蒸発するときの温度が、エジェクタによって混合物冷媒の温度を低下させることによって、外気温より高くならないことを特徴とする。
【0028】
このような複数の蒸発器および複数のエジェクタを有する構成によって、外気温が零下10℃以下になる場合もある寒冷地であっても、各蒸発器において混合物冷媒が蒸発するときの温度が、エジェクタによって低下されて、外気温より高くならない。そのため、低圧で作動しかつ成績係数(COP)の優れた冷媒であるジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒を利用して、効率が低下しないヒートポンプのサイクルシステムを提供することができる。
【0029】
請求項2に係る発明によれば、複数の蒸発器が、第1の蒸発器と第2の蒸発器とを備え、複数のエジェクタが、第1段のエジェクタと第2段のエジェクタとを備え、
第1段のエジェクタが、凝縮器から送られる高圧の液相の混合物冷媒と、第1の蒸発器からの気相の混合物冷媒とを含む混合物冷媒を減圧膨張・加速させて、温度を低下させた混合物冷媒にし、
第1の蒸発器が、第1のエジェクタからの温度を低下させた混合物冷媒の一部を蒸発させ、
第2段のエジェクタが、第1の蒸発器からの混合物冷媒を、減圧膨張・加速させて再度温度を低下させて第2の蒸発器へ引き込み、かつ第1のエジェクタからの混合物冷媒の一部、および第2の蒸発器からの混合物冷媒を圧縮機に送り、
第2の蒸発器が、第1の蒸発器から引き込まれ再度温度を低下させた混合物冷媒を蒸発させることを特徴とする。
【0030】
このような2台の蒸発器および2段のエジェクタを有する構成によって、比較的簡単な構成を用いて、寒冷地であっても、ジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒を利用した、効率が低下しないヒートポンプのサイクルシステムを提供することができる。
【0031】
請求項3に係る発明によれば、第1段のエジェクタと第1の蒸発器との間に第1の気液分離器を備え、第1の蒸発器と第2の蒸発器との間に第2の気液分離器を備え、
第1の気液分離器が、第1段のエジェクタからの気相および液相が混在する混合物冷媒を、気相の混合物冷媒と液相の混合物冷媒とに分離し、気相の混合物冷媒を第2段のエジェクタへ送り、液相の混合物冷媒を第1の蒸発器へ送り、
第2の気液分離器が、第1の蒸発器からの気相および液相が混在する混合物冷媒を、気相の混合物冷媒と液相の混合物冷媒とに分離し、気相の混合物冷媒を第1段のエジェクタへ送り、液相の混合物冷媒を第2の蒸発器へ送ることを特徴とする。
【0032】
このように気液分離器を備える構成により、気相および液相が混在する混合物冷媒を気相と液相とに分離して、混合物冷媒を効率的に利用したヒートポンプのサイクルシステムを提供することができる。
【0033】
請求項4に係る発明によれば、第2段のエジェクタと圧縮機との間に第3段のエジェクタを備え、第2の蒸発器と第3段のエジェクタとの間に第3の蒸発器を備え、
第3段のエジェクタが、第2の蒸発器からの混合物冷媒を、減圧膨張・加速させて再度温度を低下させて第3の蒸発器へ引き込み、かつ第2段のエジェクタからの混合物冷媒の一部、および第3の蒸発器からの混合物冷媒を圧縮機に送り、
第3の蒸発器が、第2の蒸発器から引き込まれ再度温度を低下させた液相の混合物冷媒を蒸発させることを特徴とする。
【0034】
このような3台の蒸発器および3段のエジェクタを有する構成によって、2台の蒸発器および2段のエジェクタの構成で対応できないような外気温がより低温である場合であっても、ジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒を利用した、効率が低下しないヒートポンプのサイクルシステムを提供することができる。
【0035】
請求項5に係る発明によれば、第2の蒸発器と第2段のエジェクタとの間に第3の気液分離器を備え、
第3の気液分離器が、第2の蒸発器からの気相および液相が混在する混合物冷媒を、気相の混合物冷媒と液相の混合物冷媒とに分離し、気相の混合物冷媒を第2段のエジェクタへ送り、液相の混合物冷媒を第3の蒸発器へ送ることを特徴とする。
【0036】
3台の蒸発器および3段のエジェクタを有する構成において、気液分離器を備えることによって、気相および液相が混在する混合物冷媒を気相と液相とに分離して、混合物冷媒を効率的に利用したヒートポンプのサイクルシステムを提供することができる。
【0037】
請求項6に係る発明によれば、外気温を検知する外気温検知手段と、第2の蒸発器からの出力を、第3の気液分離器を介して第3の蒸発器へ接続するかまたは第2段のエジェクタに直接接続するかを切り替える第1の切替手段と、第2段のエジェクタからの出力を、第3段のエジェクタを介して圧縮機に接続するかまたは圧縮機に直接接続するかを切り替える第2の切替手段とを備え、
該外気温検知手段が検知した外気温に応じて、第1の切替手段および第2の切替手段を用いて、第2の蒸発器からの混合物冷媒を、第2段のエジェクタを介して直接圧縮機へ送るか、あるいは第3の気液分離器、第3の蒸発器、および第3段のエジェクタを介して圧縮機へ送るかを切り替えることを特徴とする。
【0038】
このような外気温に応じて蒸発器の台数およびエジェクタの段数を切り替える構成を有することによって、外気温に対して最適な台数の蒸発器および段数のエジェクタを有するヒートポンプのサイクルシステムを提供することができる。
【0039】
請求項7に係る発明によれば、外気温を検知する外気温検知手段と、該外気温検知手段が検知した外気温に応じて、ジメチルエーテルと二酸化炭素の混合物冷媒の混合比を変更するための混合比変更手段を備えることを特徴とする。
【0040】
このような外気温に応じて混合物冷媒における混合比を変更する構成を有することによって、外気温により適した混合比のジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒を利用した、ヒートポンプのサイクルシステムを提供することができる。
【0041】
請求項8に係る発明によれば、凝縮器から送られる液相の混合物冷媒と、圧縮機へ送られる気相の混合物冷媒との間で熱交換する内部熱交換器を備え、凝縮器から送られる液相の混合物冷媒の温度をより低下させ、かつ圧縮機へ送られる気相の混合物冷媒の温度をより上昇させることを特徴とする。
【0042】
このような内部熱交換器を備える構成を有することによって、圧縮機に送られる気相の混合物冷媒の温度がより高くなり、それに伴い圧縮機出口での気相の混合物冷媒の温度をより高くすることができ、サイクル効率の向上を計り、圧縮機の圧縮仕事を低減することができる。また、凝縮器から送られる液相の混合物冷媒の温度が低下し、蒸発器に入る液相の混合物冷媒の流量が増加し、液相の混合物冷媒の二酸化炭素濃度が高くなり、吸熱量が増加する。
【0043】
請求項9に係る発明によれば、圧縮機へ送られる気相の混合物冷媒と、外気との間で熱交換する外部熱交換器を備え、圧縮機へ送られる気相の混合物冷媒の温度をより上昇させることを特徴とする。
【0044】
このような外部熱交換器を備える構成を有することによって、外気温より低い温度で蒸発した気相の混合物冷媒の温度がより高くなり、それに伴い圧縮機出口での気相の混合物冷媒の温度をより高くすることができ、サイクル効率の向上を計り、圧縮機の圧縮仕事を低減することができる。
【0045】
請求項10に係る発明によれば、暖房システムが、上述のようなサイクルシステムを有する特徴とする。
【0046】
外気温が零下10℃以下になる場合もある寒冷地であっても、ジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒を利用して効率が低下しないヒートポンプのサイクルシステムを用いた暖房システムを提供することができる。
【0047】
請求項11に係る発明によれば、給湯システムが、上述のようなサイクルシステムを有する特徴とする。
【0048】
外気温が零下10℃以下になる場合もある寒冷地であっても、ジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒を利用して効率が低下しないヒートポンプのサイクルシステムを用いた給湯システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
図6に、ジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒を用いたヒートポンプのサイクルシステムに、膨張弁の代わりに多段エジェクタ(図6に示される例では3段のエジェクタ)を設けた本発明によるサイクルを、図2から図5と同様の横軸がエンタルピーを表しかつ縦軸が温度を表す線図で示す。
【0050】
図6で、13〜34が1段目のエジェクタ、35〜36が2段目のエジェクタ、および37〜38が3段目のエジェクタでのジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒の状態を示す。また、34から35が第1の蒸発器、36から37が第2の蒸発器、および38から31が第3の蒸発器での混合物冷媒の状態を示す。各蒸発器における混合物冷媒の温度が、外気温15より常に低いことが示されている。
【0051】
図7に、本発明の第1の実施形態である、2台の蒸発器および2段のエジェクタを用いた暖房用/給湯用ヒートポンプの構成図を示す。
【0052】
図7に示されるヒートポンプは、圧縮機201、凝縮器202、1段目のエジェクタ203、2段目のエジェクタ213、第1の蒸発器204、第2の蒸発器214、第1の気液分離器221、第2の気液分離器222、第1の膨張弁231、第2の膨張弁232、ジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒用の配管205、加熱されるべき水用の配管206、外気を第2の蒸発器214へ導入するための配管240、外気を第2の蒸発器214から排出するための配管241、外気を第1の蒸発器204へ導入するための配管242、および外気を第1の蒸発器204から排出するための配管243を備える。
【0053】
図7の矢印で示されるように、ジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒は、以下のように循環する。
【0054】
低圧低温の気相のジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒は、圧縮機201で断熱圧縮されて高圧高温の気相の混合物冷媒になり、凝縮器202へ送られる。
【0055】
高圧高温の気相の混合物冷媒は、凝縮器202において放熱し冷却されて、高圧の液相の混合物冷媒になる。凝縮器202において、高圧高温の気相の混合物冷媒から放出される熱を利用して、水用の配管206から導入される水を加熱して、暖房または給湯に用いる。
【0056】
高圧の液相の混合物冷媒は、凝縮器202から第1のエジェクタ203へ送られる。ここで、第1のエジェクタ203は、二相流エジェクタ203である。
【0057】
二相流エジェクタ203の構成を図8に示す。二相流エジェクタ203は、ノズル部401と、混合部402と、ディフューザ部403とを備える。凝縮器202から送られる高圧の液相の混合物冷媒410は、ノズル部401に導入され、第1の気液分離器221および第2のエジェクタ213を介して、圧縮機201によって引き込まれて減圧加速される。そのときに生じる差圧によって、図8においてノズル部401の下方に示される開口部から、第2の気液分離器222からの気相の混合物冷媒420を吸引する。二相流エジェクタ203の混合部402において、ノズル部401からの混合物冷媒の高速ミスト流と気相の混合物冷媒とが混合される。さらに、二相流エジェクタ203のディフュ−ザ部403において、液相および気相が混在する状態の混合物冷媒の速度エネルギーが圧力エネルギーに変換される。
【0058】
第1のエジェクタ203からの液相および気相が混在する状態で温度を低下された混合物冷媒は、第1の気液分離器221で、液相の混合物冷媒と気相の混合物冷媒とに分離される。気相の混合物冷媒は、第2のエジェクタ213へ送られ、液相の混合物冷媒は、第1の膨張弁231を介して第1の蒸発器204へ送られる。
【0059】
第1の蒸発器204へ送られた液相の混合物冷媒は、配管241から導入される外気から熱を奪って、その一部が蒸発する。第1の蒸発器204で熱が奪われて低温になった外気は、配管242を介して排出される。第1の蒸発器204において、混合物冷媒は蒸発しながら温度が上昇するが、その混合物冷媒の温度が外気温より高くならないように、本発明ではさらなる第2の蒸発器214および第2段のエジェクタ214が設けられている。
【0060】
第1の蒸発器204で一部が蒸発して温度が上昇した、液相および気相が混在する状態の混合物冷媒は、第2の気液分離器222で、液相の混合物冷媒と気相の混合物冷媒とに分離される。気相の混合物冷媒は、第1のエジェクタ203へ送られ、液相の混合物冷媒は、第2の膨張弁232を介して、第2のエジェクタ213によって第2の蒸発器214に引き込まれる。そのとき、減圧されて再度温度が低下される。
【0061】
そのため、第2の蒸発器214における混合物冷媒は、蒸発しながらその温度が上昇しても外気温より高くならない。なお、第2の蒸発器214および第1の蒸発器204のそれぞれに外気が導入される。
【0062】
第2の蒸発器214で蒸発した気相の混合物冷媒、および第1の気液分離器221で分離された気相の混合物冷媒は、第2のエジェクタ213を介して圧縮機210へ送られる。
【0063】
ジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒は、このような2段のエジェクタ203および213を備えるサイクルによって、各蒸発器204および214における混合物冷媒の蒸発温度が、外気温より高くならないように制御される。
【0064】
このように多段のエジェクタを組み込むことによって、各蒸発器での混合物冷媒の蒸発過程で、混合物冷媒の圧力を低下させその温度を下げて、外気温より混合物冷媒の温度が高くなることを防ぎ、混合物冷媒の蒸発を完了させることができる。混合物冷媒の蒸発圧力を下げるときに、エジェクタで動力を回収することで、圧縮機の圧縮仕事の増大を避け、成績係数(COP)の低下を防ぐことができる。また、エジェクタを組み込むことによって、蒸発器全体が低圧にならないので、蒸発過程での圧力損失を低減でき、成績係数(COP)の低下を防ぐことができる。さらに、エジェクタを使用することにより、蒸発器から送られる気相の混合物冷媒を、比較的高い圧力に保つことができ、寒冷地において外気温が低い場合でも、混合物冷媒の流量の低下を低減できる。
【0065】
図9に、本発明の第2の実施形態である、3台の蒸発器および3段のエジェクタを用いた暖房用/給湯用ヒートポンプの構成図を示す。
【0066】
図9に示されるヒートポンプは、圧縮機301、凝縮器302、1段目のエジェクタ303、2段目のエジェクタ313、3段目のエジェクタ323、第1の蒸発器304、第2の蒸発器314、第3の蒸発器324、第1の気液分離器321、第2の気液分離器322、第3の気液分離器323、第1の膨張弁331、第2の膨張弁332、第3の膨張弁333、ジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒用の配管305、加熱されるべき水用の配管306、外気を第3の蒸発器324へ導入するための配管340、外気を第3の蒸発器324から排出するための配管341、外気を第2の蒸発器314へ導入するための配管342、外気を第2の蒸発器314から排出するための配管343、外気を第1の蒸発器304へ導入するための配管344、および外気を第1の蒸発器304から排出するための配管345を備える。
【0067】
図7に示される2台の蒸発器および2段のエジェクタを用いた暖房用/給湯用ヒートポンプの構成に対して、3段目のエジェクタ323、第3の蒸発器324、第3の気液分離器323、第3の膨張弁333、および外気を導入するための配管などが追加されている。
【0068】
図9に示されるヒートポンプは、さらに、外部熱交換器350、内部熱交換器360、およびジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒の混合比を変更するための混合比変更手段370を備える。
【0069】
図9に示される3台の蒸発器および3段のエジェクタを用いた暖房用/給湯用ヒートポンプにおけるジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒は、図7を参照して上述された2台の蒸発器および2段のエジェクタを用いたヒートポンプの場合とほぼ同じように循環する。異なるところは、第2の蒸発器314から送られるジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒が、気相ではなく、液相および気相が混在する状態の混合物冷媒であり、第3の気液分離器323によって、気相の混合物冷媒と液相の混合物冷媒とに分離される。気相の混合物冷媒は、第2のエジェクタ313へ送られ、液相の混合物冷媒は、第3の膨張弁333を介して第3の蒸発器324へ送られる。
【0070】
液相の混合物冷媒は、第3のエジェクタ323を介して圧縮機301によって第3の蒸発器324に引き込まれ、減圧されて低温になる。第2の蒸発器314における蒸発で温度が上昇した液相の混合物冷媒は、この第3のエジェクタ323の作用によって再度温度が低下され、第3の蒸発器324で混合物溶媒が蒸発して温度が上昇しても外気温より高くならない。第3の蒸発器324で蒸発した気相の混合物冷媒は、第3のエジェクタを介して圧縮機301へ送られる。
【0071】
ジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒は、このような3段のエジェクタ303、313、および323を備えるサイクルによって、各蒸発器304、314、および324における混合物冷媒の蒸発温度が、外気温より高くならないように制御される。そのため、外気温がさらに低い場合であっても、上述の2台の蒸発器および2段エジェクタの構成と同様の効果を得ることができる。
【0072】
なお、多段エジェクタ構成を有する本発明のヒートポンプのサイクルシステムにおいて、外気温に応じて最適な数の蒸発器および段数のエジェクタの構成に切り替えることができる。そのために、図示されていない外気温を検出する外気温検知手段を備えることができる。外気温検知手段は、どのような手段であっても良く、検知した外気温を電気信号の形態で出力できる手段が望ましい。
【0073】
図9には図示されていないバルブなどの第1の切替手段および第2の切替手段を備えることができ、第1の切替手段は、第2の蒸発器314からの出力を、第3の気液分離器323を介して第3の蒸発器324へ接続するか、または第2段のエジェクタ313に直接接続するかを切り替える。第2の切替手段は、第2段のエジェクタ313からの出力を、第3段のエジェクタ323を介して圧縮機301に接続するか、または圧縮機301に直接接続するかを切り替える。外気温検知手段が検知した外気温が、所定の閾値より高い場合には、第1の切替手段および第2の切替手段を用いて、第2の蒸発器314からの混合物冷媒を、第2段のエジェクタ313を介して直接圧縮機301へ送り、2台の蒸発器および2段エジェクタを有する構成とする。また、外気温検知手段が検知した外気温が、所定の閾値より低い場合には、第1の切替手段および第2の切替手段を用いて、第2の蒸発器314からの混合物冷媒を、第3の気液分離器323、第3の蒸発器324、および第3段のエジェクタ323を介して圧縮機301へ送り、3台の蒸発器および3段エジェクタを有する構成とする。なお、さらなる切替手段を設けて、1段エジェクタおよび1台の蒸発器だけを有する構成にすることも可能である。
【0074】
また、外気温に応じた最適なヒートポンプを達成する別の方法として、ジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒の混合比を変更するための混合比変更手段370を用いる方法も考えられる。外気温検知手段によって検知された外気温に応じて、混合比変更手段370によってジメチルエーテルと二酸化炭素との混合比を変更して、最適な混合比の混合物冷媒によって効率の良い動作を可能にすることができる。このような構成によって、圧縮機301入口の混合物冷媒の圧力を高く保つことができ、混合物冷媒の流量の低下を防ぐことができる。なお、混合比変更手段を備える構成と、蒸発器の台数およびエジェクタの段数を切り替える構成とを併用することもできる。
【0075】
内部熱交換器360は、凝縮器302から送られる高圧の液相の混合物冷媒と、圧縮機301へ送られる気相の混合物冷媒との間で熱交換するためのものである。この内部熱交換器360によって、凝縮器302から送られる液相の混合物冷媒は、温度がより低下し、かつ圧縮機301へ送られる気相の混合物冷媒は、温度がより上昇する。圧縮機301に送られる気相の混合物冷媒の温度がより高くなりため、圧縮機301出口での気相の混合物冷媒の温度をより高くすることができ、サイクル効率の向上が計かられ、圧縮機301の圧縮仕事を低減することができる。
【0076】
また、凝縮器302から送られる高圧の液相の混合物冷媒の温度がさらに低下して、第1の蒸発器304に入る液相の混合物冷媒の流量が増加し、液相の混合物冷媒の二酸化炭素濃度が高くなり、吸熱量が増加する。
【0077】
この様子が図10に示されている。図10の左側は、ジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒を用いて膨張弁を使用するサイクルの場合の内部熱交換器の効果を示す、横軸がエンタルピーでありかつ縦軸が温度の線図である。図10の右側は、ジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒の気液平衡線図を示す。図10の右側の気液平衡線図は、縦軸が温度を表し、横軸がジメチルエーテル(DME)および二酸化炭素(CO)の濃度を表し、50は気相線であり、60は液相線である。但し、図10の左側の線図と図10の右側の気液平衡線図との温度スケールは異なる。
【0078】
図10の左側の線図で、43〜43’が内部熱交換器によって、混合物冷媒の温度が低下されている状態である。内部熱交換器を介さずに圧力が低下されて到達する温度44と、内部熱交換器を介して温度が低下した状態で圧力が低下されて到達する温度44’とは異なる。これらの温度44および44’に対応するのが、図10右側の気液平衡線図における温度74および74’である。これらの温度74および温度74’の差75によって、液相線60で示される二酸化炭素の濃度84と濃度84’との間には差85が存在する。この差85は、液相の混合物冷媒における二酸化炭素の濃度の差であり、内部熱交換器の存在によって、蒸発器に送られる液相の混合物冷媒における二酸化炭素濃度が増大し、吸熱量が増大することになる。
【0079】
外部熱交換器350は、圧縮機301へ送られる気相の混合物冷媒と、外気との間で熱交換するものである。この外部熱交換器350によって、圧縮機301へ送られる気相の混合物冷媒の温度がより上昇し、圧縮機301出口での気相の混合物冷媒の温度をより高くすることができ、サイクル効率の向上が計かられ、圧縮機301の圧縮仕事を低減することができる。
【0080】
このような内部熱交換器および外部熱交換器は、2台の蒸発器および2段エジェクタの構成を有するヒートポンプ、および3台より多い蒸発器および3段より多い段数のエジェクタの構成を有するヒートポンプにも、もちろん適用可能である。
【0081】
図7および図9に示されるヒートポンプの構成は一例であって、様々な変更および修正が可能である。
【0082】
以上のように、本発明によれば、ジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒を暖房用/給湯用冷媒として用いたときに、寒冷地で効率が著しく低下する問題を解消した、多段エジェクタを組み込んだヒートポンプのサイクルシステムを提供することができる。またこのようなサイクルシステムを用いた、暖房システムまたは給湯システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】二酸化炭素を利用した暖房用/給湯用ヒートポンプの代表的な構成図を示す。
【図2】二酸化炭素を冷媒として利用した従来のサイクルを示す、横軸がエンタルピーでありかつ縦軸が温度の線図である。
【図3】寒冷地においてジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒を利用したサイクルでの効率低下を説明する、横軸がエンタルピーでありかつ縦軸が温度の線図である。
【図4】蒸発器における混合物冷媒の蒸発温度が、蒸発の最終過程においても外気温より低くなるように、蒸発圧力をさらに低下させる方法を示す、横軸がエンタルピーでありかつ縦軸が温度の線図である。
【図5】膨張弁の代わりにエジェクタを用いた、二酸化炭素冷媒を用いたヒートポンプにおけるサイクルを示す、横軸がエンタルピーでありかつ縦軸が温度の線図である。
【図6】ジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒を用いたヒートポンプに、膨張弁の代わりに多段エジェクタを設けた本発明によるサイクルを示す、横軸がエンタルピーを表しかつ縦軸が温度を表す線図である。
【図7】本発明の第1の実施形態である、2台の蒸発器および2段のエジェクタを用いたヒートポンプの構成図を示す。
【図8】二相流エジェクタの構成図を示す。
【図9】本発明の第2の実施形態である、3台の蒸発器および3段のエジェクタを用いたヒートポンプの構成図を示す。
【図10】内部熱交換器の作用を示す図である。
【符号の説明】
【0084】
101、201、301 圧縮機
102、202、302 凝縮器
103、231、232、331、332、333 膨張弁
104、204、214、304、314、324 蒸発器
105、205、305 冷媒用の配管
106、206、306 水用の配管
203、213、303、313、323 エジェクタ
221、224、321、322、323 気液分離器
240、241、242、243、340、341、342、343、344、345 外気用の配管
350 外部熱交換器
360 内部熱交換器
370 混合比変更手段
401 ノズル部
402 混合部
403 ディフューザ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒を利用した寒冷地対応ヒートポンプのサイクルシステムであって、
低圧低温の気相のジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒を吸入圧縮して、高圧高温の気相の混合物冷媒にする圧縮機と、
圧縮機に接続され、かつ高圧高温の気相の混合物冷媒を液相に凝縮し放熱させて、高圧の液相の混合物冷媒にする凝縮器と、
凝縮器から圧縮機への液相の混合物冷媒の流れ方向に直列に配置され、かつ液相の混合物冷媒の少なくとも一部をそれぞれ蒸発させて、気相の混合物冷媒にする複数の蒸発器と、
複数の蒸発器に送られる液相の混合物冷媒をそれぞれ減圧膨張・加速させて、液相の混合物冷媒の温度を低下させるための複数のエジェクタとを備え、
前記各蒸発器において混合物冷媒が蒸発するときの温度が、エジェクタによって混合物冷媒の温度を低下させることによって、外気温より高くならないことを特徴とするサイクルシステム。
【請求項2】
前記複数の蒸発器が、第1の蒸発器と第2の蒸発器とを備え、前記複数のエジェクタが、第1段のエジェクタと第2段のエジェクタとを備え、
第1段のエジェクタが、凝縮器から送られる高圧の液相の混合物冷媒と、第1の蒸発器からの気相の混合物冷媒とを含む混合物冷媒を減圧膨張・加速させて、温度を低下させた混合物冷媒にし、
第1の蒸発器が、第1のエジェクタからの温度を低下させた混合物冷媒の一部を蒸発させ、
第2段のエジェクタが、第1の蒸発器からの混合物冷媒を、減圧膨張・加速させて再度温度を低下させて第2の蒸発器へ引き込み、かつ第1のエジェクタからの混合物冷媒の一部、および第2の蒸発器からの混合物冷媒を圧縮機に送り、
第2の蒸発器が、第1の蒸発器から引き込まれ再度温度を低下させた混合物冷媒を蒸発させることを特徴とする、請求項1に記載のサイクルシステム。
【請求項3】
第1段のエジェクタと第1の蒸発器との間に第1の気液分離器を備え、第1の蒸発器と第2の蒸発器との間に第2の気液分離器を備え、
第1の気液分離器が、第1段のエジェクタからの気相および液相が混在する混合物冷媒を、気相の混合物冷媒と液相の混合物冷媒とに分離し、気相の混合物冷媒を第2段のエジェクタへ送り、液相の混合物冷媒を第1の蒸発器へ送り、
第2の気液分離器が、第1の蒸発器からの気相および液相が混在する混合物冷媒を、気相の混合物冷媒と液相の混合物冷媒とに分離し、気相の混合物冷媒を第1段のエジェクタへ送り、液相の混合物冷媒を第2の蒸発器へ送ることを特徴とする、請求項2に記載のサイクルシステム。
【請求項4】
第2段のエジェクタと圧縮機との間に第3段のエジェクタを備え、第2の蒸発器と第3段のエジェクタとの間に第3の蒸発器を備え、
第3段のエジェクタが、第2の蒸発器からの混合物冷媒を、減圧膨張・加速させて再度温度を低下させて第3の蒸発器へ引き込み、かつ第2段のエジェクタからの混合物冷媒の一部、および第3の蒸発器からの混合物冷媒を圧縮機に送り、
第3の蒸発器が、第2の蒸発器から引き込まれ再度温度を低下させた液相の混合物冷媒を蒸発させることを特徴とする、請求項2または3に記載のサイクルシステム。
【請求項5】
第2の蒸発器と第2段のエジェクタとの間に第3の気液分離器を備え、
第3の気液分離器が、第2の蒸発器からの気相および液相が混在する混合物冷媒を、気相の混合物冷媒と液相の混合物冷媒とに分離し、気相の混合物冷媒を第2段のエジェクタへ送り、液相の混合物冷媒を第3の蒸発器へ送ることを特徴とする、請求項4に記載のサイクルシステム。
【請求項6】
外気温を検知する外気温検知手段と、第2の蒸発器からの出力を、第3の気液分離器を介して第3の蒸発器へ接続するかまたは第2段のエジェクタに直接接続するかを切り替える第1の切替手段と、第2段のエジェクタからの出力を、第3段のエジェクタを介して圧縮機に接続するかまたは圧縮機に直接接続するかを切り替える第2の切替手段とを備え、
該外気温検知手段が検知した外気温に応じて、第1の切替手段および第2の切替手段を用いて、第2の蒸発器からの混合物冷媒を、第2段のエジェクタを介して直接圧縮機へ送るか、あるいは第3の気液分離器、第3の蒸発器、および第3段のエジェクタを介して圧縮機へ送るかを切り替えることを特徴とする、請求項5に記載のサイクルシステム。
【請求項7】
外気温を検知する外気温検知手段と、該外気温検知手段が検知した外気温に応じて、ジメチルエーテルと二酸化炭素の混合物冷媒の混合比を変更するための混合比変更手段を備えることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のサイクルシステム。
【請求項8】
凝縮器から送られる液相の混合物冷媒と、圧縮機へ送られる気相の混合物冷媒との間で熱交換する内部熱交換器を備え、凝縮器から送られる液相の混合物冷媒の温度をより低下させ、かつ圧縮機へ送られる気相の混合物冷媒の温度をより上昇させることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のサイクルシステム。
【請求項9】
圧縮機へ送られる気相の混合物冷媒と、外気との間で熱交換する外部熱交換器を備え、圧縮機へ送られる気相の混合物冷媒の温度をより上昇させることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のサイクルシステム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のサイクルシステムを有することを特徴とする暖房システム。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載のサイクルシステムを有することを特徴とする給湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−266523(P2006−266523A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−81467(P2005−81467)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(504209655)国立大学法人佐賀大学 (176)
【出願人】(591090736)石油資源開発株式会社 (70)
【出願人】(000187149)昭和炭酸株式会社 (60)
【出願人】(397066627)エヌ・ケイ・ケイ株式会社 (18)
【出願人】(000241957)北海道電力株式会社 (78)