説明

ジョイント端子および電池セルの接続構造

【課題】電池セルの電極端子の接続作業にかかる手間を省くことが可能なジョイント端子、および電池セルの接続構造を提供する。
【解決手段】隣り合う電池セル20の電極端子21を接続するジョイント端子10であって、前記電極端子21にそれぞれ接続される一対の接続部11A,11Bを有し、前記各接続部11A,11Bは、前記電極端子21に対する接続方向の略直交方向における両端のうち少なくとも一方が互いに連結された一対の対向壁12を有し、この一対の対向壁12は、間に差し込まれた前記電極端子21と弾性的に接触するように設定されている。このような構成によれば、ボルト締め作業が不要になり、電極端子21の接続作業にかかる手間を省くことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣り合う電池セルの電極端子を接続するジョイント端子、およびこのジョイント端子により隣り合う電池セルの電極端子を接続する電池セルの接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の電池セルを直列に接続してなる電池モジュールが知られている(例えば特許文献1)。この電池モジュールにおいては、複数の電池セルは、各電池セルに設けられた正負の電極端子が隣り合うように並べられ、隣り合う正負の電極端子は、バスバーにより接続されている。バスバーのうち正負の電極端子に対応する位置にはそれぞれボルト挿通孔が設けられ、バスバーは、各ボルト挿通孔から各電極端子に設けられた螺合孔にボルトを挿通して締め付けることで固定されている。
【特許文献1】特開平9−237617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のように、電池セルの電極端子にバスバーをボルト締めする構造では、各電極端子の一つ一つに対してボルト締め作業を行わなければならないため、作業に手間がかかるという問題があった。
【0004】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電池セルの電極端子の接続作業にかかる手間を省くことが可能なジョイント端子、および電池セルの接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のジョイント端子は、隣り合う電池セルの電極端子を接続するジョイント端子であって、前記電極端子にそれぞれ接続される一対の接続部を有し、前記各接続部は、前記電極端子に対する接続方向の略直交方向における両端のうち少なくとも一方が互いに連結された一対の対向壁を有し、この一対の対向壁は、間に差し込まれた前記電極端子と弾性的に接触するように設定されている。
【0006】
このような構成によれば、各接続部の一対の対向壁間に電極端子をそれぞれ差し入れるようにしてジョイント端子を電池セル側に押し込むと、対向壁が電極端子を弾性的に挟み込んだ状態になる。したがって、ボルト締め作業を行うことなく、ジョイント端子を電極端子に接続することができるから、電極端子の接続作業にかかる手間を省くことができる。
また、一対の対向壁は、電極端子に対する接続方向の略直交方向における両端のうち少なくとも一方が互いに連結されている。したがって、一対の対向壁を、接続方向に対して略直交方向に長くすることで、電極端子を弾性的に挟み込むために必要な弾性力を備えるように設定することができる。すなわち、このような設定をするために、ジョイント端子を接続方向に大型化しなくて済む。
【0007】
前記一対の対向壁のうち少なくとも一方には、前記電極端子が嵌合可能な孔部が設けられているものとしてもよい。このような構成によれば、電極端子は対向壁の孔部に嵌合するから、ジョイント端子の接続部と電極端子との接続状態を確実に保持することができる。
【0008】
また、前記孔部は、前記一対の接続部の両方に設けられ、そのうち少なくとも一方の接続部に設けられた前記孔部は、前記接続方向の幅寸法よりも前記接続方向の略直交方向の幅寸法が大きい横長形状をなしているものとしてもよい。このような構成によれば、隣り合う電池セルの電極端子の間隔に多少のばらつきがあっても、ジョイント端子を接続することができる。
【0009】
また、前記対向壁には、前記接続方向前側の縁から前記孔部にかけて前記電極端子を案内する案内溝が形成されているものとしてもよい。このような構成によれば、ジョイント端子を電池セル側に押し込むと、電極端子は、案内溝に案内されて孔部に嵌合する。すなわちジョイント端子の押し込み方向が案内溝により誘導されるから、ジョイント端子の接続を容易に行うことができる。
【0010】
また、前記案内溝の前記接続方向前側の縁における幅寸法は、前記電極端子の幅寸法よりも大きく設定されているものとしてもよい。このような構成によれば、電極端子に対してジョイント端子の位置を厳密にあわせなくても、ジョイント端子を接続することができる。
【0011】
また、前記対向壁のうち前記接続方向前側の縁部には、同接続方向前側に向かって相手の対向壁と離れる向きの傾斜をなす誘い込み面が形成されているものとしてもよい。
本発明の電池セルの接続構造は、前記ジョイント端子により、隣り合う電池セルの電極端子を接続する電池セルの接続構造であって、前記電極端子は、前記一対の対向壁の間に差し込まれたときに、この対向壁に接触する球面を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電池セルの電極端子の接続作業にかかる手間を省くことが可能なジョイント端子、および電池セルの接続構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1について、図1〜図7を参照しつつ詳細に説明する。
本実施形態におけるジョイント端子10は、電気自動車やハイブリッド車等に搭載される電池モジュールにおいて、隣り合う電池セル20の正負の電極端子21を電気的に接続するものである。
【0014】
電池セル20は、全体として円柱状に形成された本体部22と、この本体部22における軸方向の一方の端面および他方の端面に垂直に突出して設けられた正負の電極端子21とを備えている。複数の電池セル20は、互いに隣り合う電池セル20が軸方向に逆向きになるよう(正負の電極端子21が隣り合って配置されるよう)にして並べられ、図示しない保持部材により一体に保持されている。
【0015】
電極端子21は、金属製(銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等)であって、切削加工、鋳造、または鍛造等、公知の手法により形成されている。正負の電極端子21は略同形・同大に形成され、各電極端子21の突出端には、球形状をなす頭部21Aがそれぞれ設けられている。なお、頭部21Aの外周面が、本発明における球面に該当する。
【0016】
ジョイント端子10は、例えば、銅、銅合金、ステンレス鋼(SUS)等の金属製の板材を、所定の形状にプレス加工することにより形成されている。以下、各構成部材において、電極端子21に対する接続方向前側(図1の下側)を下方、同接続方向後側(同上側)を上方とし、また図1の右側を右方、左側を左方として説明する。
【0017】
ジョイント端子10は、隣り合う電池セル20の正負の電極端子21にそれぞれ接続される一対の接続部11A,11Bを有している。なお、図1の右側の接続部を第1接続部11A、左側の接続部を第2接続部11Bと称する。
【0018】
第1接続部11Aおよび第2接続部11Bは、図2および図3に示すように、それぞれ略U字形状をなし、互いに接近・離間方向(対向方向)に弾性変位可能な一対の対向壁12を有している。各対向壁12は、左右方向(電極端子21に対する接続方向の略直交方向)に長い略長方形の板状をなしている。一対の対向壁12は、左右方向における両端のうち一方が互いに連結され、各対向壁12は、互いの連結部分(以後、屈曲部13と称する)から、それぞれ同方向に片持ち状に延出する形態をなしている。自然状態における一対の対向壁12の間の間隔は、電極端子21の頭部21Aの最大幅寸法よりも小さく設定されている。なお、第1接続部11Aおよび第2接続部11Bは、互いに略同形・同大とされている。
【0019】
各接続部11A,11Bのうち屈曲部13とは反対側の端部は、電極端子21が接触する部分とされ、この接触部分には、電極端子21の頭部21Aが嵌合可能な孔部14が設けられている。孔部14は、各接続部11A,11Bの一対の対向壁12の両方に設けられ、各対向壁12を壁厚方向に打ち抜いて形成されている。
【0020】
各接続部11A,11Bに設けられた一対の孔部14は、互いに対向する位置に配置され、互いに略同形・同大とされている。第1接続部11Aに設けられた孔部14は略円形状をなし、第2接続部11Bに設けられた孔部14は、左右方向に長い長円形状をなしている(図1参照)。第2接続部11Bの孔部14の孔縁は、左右方向の中央部分は左右に延びる直線状をなし、両端部分は左右対称な円弧状をなしている。なお、孔部14は、各対向壁12の短手方向(上下方向)の略中央位置に設けられている。
【0021】
各対向壁12には下縁(電極端子21に対する接続方向前側の縁)から孔部14にかけて電極端子21を案内する案内溝15が形成されている。案内溝15は、孔部14を有する全ての対向壁12に設けられ、対向壁12を壁厚方向に打ち抜いて形成されている。なお、ジョイント端子10に設けられた案内溝15は、全てが略同形・同大とされている。
【0022】
案内溝15は、全体として、対向壁12の下縁から孔部14に向かって幅狭となり、下縁(入り口)における幅寸法は、孔部14の左右方向の最大幅寸法、および電極端子21の幅寸法よりも大きく設定されている。案内溝15の下側部分は、下方に向かって幅寸法が少しずつ広がるテーパ形状をなすテーパ部15A、上側部分は、幅寸法が略一定の一定部15Bとなっている。テーパ部15Aは、孔部14を中心にして左右対称の形状をなしている。なお、案内溝15の一定部15Bは、幅寸法が孔部14の左右方向の最大幅寸法よりも小さく、各孔部14の左右方向の略中央位置につながっている。
【0023】
第1接続部11Aおよび第2接続部11Bは、図3に示すように、左右方向に逆向きの姿勢、言い換えると、両接続部11A,11Bの屈曲部13がジョイント端子10の中央部に配置され、孔部14が設けられた側の端部がジョイント端子10の右端、または左端に配置される姿勢で、連結部16を介して互いに連結されている。
【0024】
連結部16は、左右方向に長い略長方形の板状をなし、その長手方向寸法は、第1接続部11Aおよび第2接続部11Bの長手方向寸法と略同等の寸法とされている。そして、連結部16の右端側に第1接続部11Aが、左端側に第2接続部11Bが連結され、第1接続部11Aおよび第2接続部11Bは、屈曲部13とは反対側の端部が、それぞれ連結部16の右方および左方に突出した状態となっている。なお、案内溝15と孔部14とは、連結部16よりも右方および左方に位置している。
【0025】
連結部16には、各接続部11A,11Bの一対の対向壁12のうち一方の対向壁12が連結している。各接続部11A,11Bの対向壁12は、それぞれ連結部16の長手方向に延びる両縁の長さ方向の略半分に連結している。なお、各接続部11A,11Bの屈曲部13および他方の対向壁12は連結部16には連結されておらず、フリーな状態になっている。
【0026】
上記したジョイント端子10は、金属製の板材を所定形状(図6参照)に打ち抜いた後、各接続部11A,11Bを連結部16に対して略垂直に屈曲するとともに、各接続部11A,11BをそれぞれU字形に屈曲させることで製造される。なお、図6には、屈曲位置を一点鎖線で示した。
【0027】
次に、隣り合う正負の電極端子21をジョイント端子10により接続する作業について説明する。
まず、複数の電池セル20を、正負の電極端子21が隣り合うように並べる。
次いで、ジョイント端子10を、連結部16が上側、各接続部11A,11Bが下側になる向きにして、各接続部11A,11Bが、各電極端子21の上方に配されるように位置合わせする(図1参照)。
【0028】
そして、ジョイント端子10を、下側(電池セル20側)に移動させる。すると、各案内溝15の入り口に各電極端子21の頭部21Aが入り込んでいく。ここで、ジョイント端子10の位置が、電極端子21に対して左右方向(正負の電極端子21の並列方向)にずれていたときには、電極端子21の頭部21Aは、案内溝15のテーパ部15Aに当接する。そのままジョイント端子10を下方へ押し込むと、テーパ部15Aの傾斜により電極端子21の頭部21Aは案内溝15の上方へ案内される。そして、テーパ部15Aの途中位置に頭部21Aが至ると、頭部21Aとテーパ部15Aとの当接力が強まり、これにより一対の対向壁12は、互いに離間方向へ弾性変位し始める。なお、この時点で、ジョイント端子10は、電極端子21に対して正規の位置(電極端子21に対して左右方向にずれていない位置)に配されている。
【0029】
そして、ジョイント端子10をさらに下方へ押し込むと、一対の対向壁12の弾性変位量は少しずつ大きくなり、電極端子21の頭部21Aが一定部15Bに至ったときには、対向壁12の弾性変位量は最大となる。さらにジョイント端子10を押し込むと、電極端子21の頭部21Aはそれぞれ孔部14に嵌合し、同時に、一対の対向壁12は、互いに接近方向へ弾性復帰して、孔部14の孔縁が頭部21Aの外周面に押し付けられた状態になる。こうして、正負の電極端子21にジョイント端子10が接続され、電池セル20が直列に接続された状態になる。
【0030】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用および効果について説明する。
ジョイント端子10は、電極端子21にそれぞれ接続される第1接続部11Aおよび第2接続部11Bを有し、各接続部11A,11Bは、左右方向(電極端子21に対する接続方向の略直交方向)における両端のうち一方が互いに連結された一対の対向壁12を有し、この一対の対向壁12は、間に差し込まれた電極端子21と弾性的に接触するように設定されている。
【0031】
これにより、各接続部11A,11Bの対向壁12間に電極端子21をそれぞれ差し入れるようにしてジョイント端子10を電池セル20側に押し込むと、一対の対向壁12が電極端子21を弾性的に挟み込んだ状態になる。したがって、ボルト締め作業を行うことなく、ジョイント端子10を電極端子21に接続することができるから、電極端子21の接続作業にかかる手間を省くことができる。
【0032】
また、一対の対向壁12は、左右方向における両端のうち一方が互いに連結されている。これにより、一対の対向壁12を左右方向に長くすることで、電極端子21を弾性的に挟み込むために必要な弾性力を備えるように設定することができる。ここで、例えば一対の対向壁の上端が互いに連結されている場合には、同様の設定をしようとした場合、対向壁を上下方向(接続方向)に長くしなければならず、ジョイント端子が上下方向に大型化してしまうおそれがある。ジョイント端子が上下方向に大型化すると、電池モジュールの上下方向寸法(電池セル20の軸線方向における寸法)がその分大きくなり、すなわち電池モジュールの大型化を招く事態となる。しかしながら、本実施形態においては、一対の対向壁12を左右方向に長くすることで、必要な弾性力を備えるように設定することができるから、ジョイント端子10を上下方向に大型化しなくて済み、もって電池モジュールの大型化を防ぐことができる。
【0033】
また、一対の対向壁12には、電極端子21が嵌合可能な孔部14が設けられている。これにより、電極端子21が対向壁12の孔部14に嵌合し、一対の対向壁12の間から離脱しにくくなるから、ジョイント端子10と電極端子21との接続状態を確実に保持することができ、もって接続信頼性を向上させることができる。
【0034】
また、孔部14は、第1接続部11Aおよび第2接続部11Bの両方に設けられ、そのうち第2接続部11Bに設けられた孔部14は、左右方向(電極端子21に対する接続方向の略直交方向)に長い形状をなしている。これにより、隣り合う電池セル20の電極端子21の左右方向の間隔に多少のばらつきがあっても、ジョイント端子10を接続することができる。
【0035】
また、対向壁12には、下縁(電極端子21に対する接続方向前側の縁)から孔部14にかけて電極端子21を案内する案内溝15が形成されている。これにより、ジョイント端子10を電池セル20側に押し込むと、電極端子21は、案内溝15に案内されて孔部14に嵌合する。すなわちジョイント端子10の押し込み方向が案内溝15により誘導されるから、ジョイント端子10の接続を容易に行うことができる。
【0036】
また、案内溝15は、対向壁12の下縁における幅寸法が、電極端子21の頭部21Aの幅寸法よりも大きく設定されている。したがって、電極端子21に対してジョイント端子10の位置を厳密にあわせなくても、ジョイント端子10を接続することができる。
【0037】
<実施形態2>
次に、本発明を具体化した実施形態2に係るジョイント端子30を図8〜図12によって説明する。
本実施形態のジョイント端子30は、孔部31および案内溝32が、対向壁12を外側(相手の対向壁12と離れる側)へ凹ませてなるものである点で、実施形態1とは相違する。なお、実施形態1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0038】
本実施形態に係るジョイント端子30は、実施形態1と同様に、正負の電極端子21にそれぞれ接続される第1接続部11Aおよび第2接続部11Bを有し、各接続部11A,11Bは、互いに接近・離間方向に弾性変位可能な一対の対向壁12を有している。一対の対向壁12は、実施形態1と同様、左右方向における両端のうち一方が互いに連結されており、電極端子21が間に差し込まれたときには、この電極端子21に弾性的に接触するようになっている。
【0039】
そして、各接続部11A,11Bには、各対向壁12を外側(相手の対向壁12と離れる側)へ凹ませることで、電極端子21の頭部21Aが嵌合可能な孔部31が形成されている。各接続部11A,11Bに設けられた一対の孔部31は、実施形態1と同様、互いに対向する位置に配置され、互いに略同形・同大とされている。また、実施形態1と同様、第1接続部11Aに設けられた孔部31は略円形状をなし、第2接続部11Bに設けられた孔部31は、左右方向に長い長円形状をなしている。なお、すべての孔部31の孔縁は面取りされている。
【0040】
また、各対向壁12には、対向壁12を外側へ凹ませることで、下縁(電極端子21に対する接続方向前側の縁)から孔部31にかけて電極端子21を案内する案内溝32が形成されている。案内溝32は、実施形態1と同様、孔部31を有する全ての対向壁12に設けられている。
【0041】
案内溝32は、実施形態1と同様、全体として、対向壁12の下縁から孔部31に向かって幅狭となる形状をなし、下縁(入り口)における幅寸法が、孔部31の左右方向の最大幅寸法、および電極端子21の幅寸法よりも大きく設定されている。また、実施形態1と同様、案内溝32の下側部分は、下方に向かって幅寸法が少しずつ広がるテーパ形状をなすテーパ部32A、上側部分は、幅寸法が略一定の一定部32Bとなっている。そして、実施形態1と同様、案内溝32の一定部32Bは、幅寸法が孔部31の左右方向の最大幅寸法よりも小さく、各孔部31の左右方向の略中央位置につながっている。
【0042】
そして、各対向壁12のうち下側の縁部(電極端子21に対する接続方向前側の縁部)には、下方に向かって相手の対向壁12と離れる向きの傾斜をなす誘い込み面33が形成されている。詳しくは、誘い込み面33は、案内溝32を形成する凹み部分のうちテーパ部32Aを形成する部分(案内用凹部34と称する)を、相手の対向壁12と離れる向きに屈曲することで形成されている。すなわち、案内用凹部34の内側面が、誘い込み面33とされている。対向壁12の自然状態における一対の誘い込み面33の間隔は、下縁においては、電極端子21の頭部21Aの最大幅寸法よりも若干大きく設定されている。なお、案内用凹部34の下縁は、孔部31を形成する凹み部分(孔用凹部35と称する)よりも外側に凹んでいる(図11および図12参照)。
【0043】
上記のように構成された実施形態2によれば、以下の効果を奏する。
各接続部11A,11Bの対向壁12間に電極端子21をそれぞれ差し入れるようにしてジョイント端子30を電池セル20側に押し込むと、一対の対向壁12が電極端子21を弾性的に挟み込んだ状態になるから、実施形態1と同様、電極端子21の接続作業にかかる手間を省くことができる。
また、一対の対向壁12は、左右方向の両端のうち一方が互いに連結されているから、実施形態1と同様、一対の対向壁12を、左右方向に長くすることで必要な弾性力を確保することができ、ジョイント端子30を、上下方向に大型化しなくて済む。
【0044】
さらに、対向壁12の下縁部(接続方向前側の縁部)には、下側に向かって相手の対向壁12と離れる向きの傾斜をなす誘い込み面33が形成されている。これにより、ジョイント端子30を電池セル20側に押し込むときに、ジョイント端子30の位置が電池セル20に対して正負の電極端子21の並び方向とは略直交方向にずれていたとしても、電極端子21の頭部21Aは、誘い込み面33に当接して誘い込み面33の傾斜により案内され、孔部31に嵌合する。したがって、ジョイント端子30の位置がずれていても、誘い込み面33によりジョイント端子30は誘導されるから、ジョイント端子30の接続を容易に行うことができる。
【0045】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0046】
(1)上記実施形態では、各接続部11A,11Bは、U字形に屈曲されたものであるが、これに限らず、例えば、各接続部は、断面が略長円形をなすリング状(左右方向における両端が互いに連結された形状)のものであってもよい。
【0047】
(2)上記実施形態では、各接続部11A,11Bは、U字形に屈曲されることで、一対の対向壁12が屈曲部13を介して一体に形成されているが、これに限らず、例えば、各接続部は、一対の対向壁と、これらを連結する繋ぎ部材とを有し、一対の対向壁を、繋ぎ部材に対して溶接等により連結することで一体に形成したものであってもよい。
【0048】
(3)上記実施形態では、ジョイント端子10(30)は、正負の電極端子21を接続するものとされているが、これに限らず、ジョイント端子は、正負の電極端子のうち正極端子同士、負極端子同士を接続するものであってもよい。
【0049】
(4)上記実施形態では、一対の対向壁12の両方に孔部14(31)が設けられているが、これに限らず、例えば孔部は一対の対向壁の一方のみに設けられていても良く、また一対の対向壁の両方ともに孔部を設けることなく、平坦な板面により電極端子を挟み込む構造としてもよい。
【0050】
(5)上記実施形態では、第1接続部11Aおよび第2接続部11Bに設けられた孔部14(31)のうち第1接続部11Aに設けられた孔部14(31)は円形状をなし、第2接続部11Bに設けられた孔部14(31)は、左右方向に長い長円形状とされているが、これに限らず、例えば、両接続部の孔部をともに左右方向に長い長円形状としてもよく、また両接続部の孔部をともに円形状としてもよい。また、孔部の形状は、円形状および長円形状に限らず、例えば多角形状であってもよい。
【0051】
(6)上記実施形態では、対向壁12には、電極端子21を案内する案内溝15(32)が設けられているが、必ずしも案内溝は設けなくてもよい。
(7)上記実施形態では、案内溝15(32)は、幅寸法が変化するものとされているが、案内溝15は全体にわたり幅寸法が略一定とされていてもよい。
【0052】
(8)上記実施形態では、一対の対向壁12は、電極端子21との接触により互いに離間方向に弾性変位するものとされているが、これに限らず、一対の対向壁のうち一方の対向壁は他方の対向壁に比べて非常に剛性が高いものとされ、電極端子との接触により他方の対向壁のみが離間方向に弾性変位するものであってもよい。
【0053】
(9)実施形態1では、孔部14および案内溝15は、ともに対向壁12を打ち抜いて形成され、実施形態2では、孔部31および案内溝32は、ともに対向壁12を凹ませることで形成されているが、これに限らず、例えば、孔部および案内溝の一方は対向壁を打ち抜いて形成し、他方は対向壁を凹ませることで形成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施形態1にかかるジョイント端子と電極端子とを表す正面図
【図2】ジョイント端子の外観斜視図
【図3】同下面図
【図4】同上面図
【図5】同側面図
【図6】同展開図
【図7】ジョイント端子と電極端子との接続状態を表す正面図
【図8】実施形態2にかかるジョイント端子の外観斜視図
【図9】同正面図
【図10】同下面図
【図11】同上面図
【図12】同側面図
【符号の説明】
【0055】
10,30…ジョイント端子
11A…第1接続部(接続部)
11B…第2接続部(接続部)
12…対向壁
14,31…孔部
15,32…案内溝
20…電池セル
21…電極端子
33…誘い込み面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う電池セルの電極端子を接続するジョイント端子であって、
前記電極端子にそれぞれ接続される一対の接続部を有し、
前記各接続部は、前記電極端子に対する接続方向の略直交方向における両端のうち少なくとも一方が互いに連結された一対の対向壁を有し、この一対の対向壁は、間に差し込まれた前記電極端子と弾性的に接触するように設定されているジョイント端子。
【請求項2】
前記一対の対向壁のうち少なくとも一方には、前記電極端子が嵌合可能な孔部が設けられている請求項1に記載のジョイント端子。
【請求項3】
前記孔部は、前記一対の接続部の両方に設けられ、そのうち少なくとも一方の接続部に設けられた前記孔部は、前記接続方向の幅寸法よりも前記接続方向の略直交方向の幅寸法が大きい横長形状をなしている請求項2に記載のジョイント端子。
【請求項4】
前記対向壁には、前記接続方向前側の縁から前記孔部にかけて前記電極端子を案内する案内溝が形成されている請求項2または請求項3に記載のジョイント端子。
【請求項5】
前記案内溝の前記接続方向前側の縁における幅寸法は、前記電極端子の幅寸法よりも大きく設定されている請求項4に記載のジョイント端子。
【請求項6】
前記対向壁のうち前記接続方向前側の縁部には、同接続方向前側に向かって相手の対向壁と離れる向きの傾斜をなす誘い込み面が形成されている請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のジョイント端子。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のジョイント端子により、隣り合う電池セルの電極端子を接続する電池セルの接続構造であって、
前記電極端子は、前記一対の対向壁の間に差し込まれたときに、この対向壁に接触する球面を有する電池セルの接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−123391(P2010−123391A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295857(P2008−295857)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】