説明

ジルコニア粒子を有する調光フィルム

調光フィルムおよび調光フィルムの製造方法を記載する。調光フィルムは、ポリマー材料とジルコニア粒子とを含有する微細構造化表面を有する光学層を含む。このジルコニア粒子は、コロイド状で、結晶質で、実質的に非会合であり、狭いサイズ分布を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光フィルムと、ジルコニア粒子を含有する調光フィルムの製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5,175,030号明細書(ルー(Lu)ら)、第5,183,597号明細書(ルー(Lu))、第5,917,664号明細書(オニール(O’Neill)ら)、第5,919,551号明細書(コブ・ジュニア(Cobb,Jr.)ら)、第6,111,696号明細書(アレン(Allen)ら)、第6,280,063B1号明細書(フォング(Fong)ら)、第6,356,39B1号明細書(ガーディナー(Gardiner)ら)に記載されるようなある種の微細構造化された光学製品は、構造化光学フィルムまたは調光フィルムと呼ばれる場合がある。調光フィルムとしては、たとえば、輝度向上フィルム、反射フィルム、回転フィルムなどを挙げることができる。これらの調光フィルムは、多種多様の用途を有する。たとえば、輝度向上フィルムは、エレクトロルミネッセンスパネル中に含まれる液晶ディスプレイ(LCD)、ラップトップコンピュータ用ディスプレイ、ワードプロセッサ、デスクトップ用モニタ、手持ち式装置、テレビ、ビデオカメラ、ならびに自動車用および航空機用ディスプレイなどのバックライト付きフラットパネルディスプレイの輝度を増加させるために電子製品中に使用することができる。
【0003】
輝度向上フィルム中の材料の屈折率は、バックライト付きディスプレイとともにこのようなフィルムを使用する場合に得られる輝度利得(すなわち、「利得」)と関連がある場合が多い。輝度が改善されると、ディスプレイを照明するためにより少ない電力を使用することによって、より効率的に電子製品を動作させることができる。電力の使用が少なくなると、多くの場合で電力消費量を減らすことができ、電子部品上の熱負荷を減少させることができ、電子製品の寿命を延長させることができる。輝度向上フィルムは、高屈折率(たとえば少なくとも1.4)のポリマー材料を含有することが多い。
【0004】
調光フィルム中に含まれる微細構造は、交互に並ぶ一連の先端および溝などの種々の形態であってよい。ある例においては、調光フィルムは、対称的な先端および溝の規則的な繰り返しパターンを有する。別の例においては、調光フィルムは、非対称の先端および溝を有する。先端および溝の大きさ、方向、あるいは先端および溝の間の距離は、均一の場合もあるし、不均一の場合もある。
【0005】
現行の一部の調光フィルムの欠点の1つは、微細構造の先端に機械的な損傷が起こりやすいことである。たとえば、指の爪、または硬く比較的鋭い端部で軽くこすると、微細構造の先端の破壊または破損が起こる場合がある。先端を破壊するのに十分な条件は、調光フィルムの通常の取扱中に発生しうる。たとえば、輝度向上フィルムの先端は、このようなフィルムを含む液晶ディスプレイの製造プロセス中に破壊される場合がある。
【0006】
微細構造の先端が破壊されると、影響を受けた先端反射性および屈折性が低下し、透過光は実質的にすべてが前方角度に散乱する。調光フィルムがディスプレイ上の輝度向上フィルムであり、そのディスプレイをまっすぐ観察する場合、調光フィルム内の擦り傷を有する領域は、その周囲にある輝度向上フィルムの損傷していない領域よりも暗くなる。しかし、カットオフ角(すなわち、ディスプレイ上の画像を見ることができなくなる角度)付近またはそれを超える角度でディスプレイを観察すると、擦り傷を有する領域は、その周囲にあるフィルムの損傷していない領域よりも実質的に明るく見える。両方の状況において、外見上の観点から擦り傷は好ましくない。多数の擦り傷を有する輝度向上フィルムは、液晶ディスプレイなどの一部のディスプレイにおける使用に容認されない場合がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、微細構造化物品、および微細構造化物品の製造方法を提供する。より詳細には、本発明の微細構造化物品はジルコニア粒子を含有する。このジルコニア粒子は、コロイド状(たとえば100ナノメートル未満)で、結晶質であり、実質的に会合していない。微細構造化物品は、たとえば、輝度向上フィルム、反射フィルム、回転フィルムなどの調光フィルムであってよい。
【0008】
第1の態様においては、微細構造化表面を有する光学層を含む調光フィルムを提供する。この光学層は、ポリマー材料と、複数の表面改質ジルコニア粒子とを含有する。これらのジルコニア粒子は、ジルコニア粒子中の無機酸化物の重量を基準にして0.1〜8重量パーセントのイットリウムを含有する。さらに、これらのジルコニア粒子は、平均一次粒度が30ナノメートル以下であり、分散指数が1〜3であり、強度平均粒度の体積平均粒度に対する比が3.0以下であり、少なくとも70パーセントが立方晶、正方晶、またはそれらの組み合わせである結晶構造を有する。
【0009】
さらに、調光フィルムの製造方法を開示する。第1の方法は、水相中に分散したジルコニア粒子を含有するジルコニアゾルを提供するステップと、ジルコニア粒子の表面を改質して表面改質ジルコニア粒子を形成するステップと、表面改質ジルコニア粒子と有機マトリックスとを含有するコーティング組成物を調製するステップと、このコーティング組成物を微細複製工具に接触させるステップと、コーティング組成物を重合させて、微細構造化表面を有する光学層を形成するステップとを含む。このジルコニアゾルは、ジルコニウム塩を含有する第1の供給材料を調製するステップと、第1の供給材料に対して第1の熱水処理を行ってジルコニウム含有中間体および副生成物を形成するステップと、第1の熱水処理の副生成物の少なくとも一部を除去することによって第2の供給材料を形成するステップと、第2の供給材料に対して第2の熱水処理を行うステップとによって形成される。
【0010】
調光フィルムの第2の製造方法は、水相中に分散したジルコニア粒子を含有するジルコニアゾルを提供するステップと、ジルコニア粒子の表面を改質して表面改質ジルコニア粒子を形成するステップと、表面改質ジルコニア粒子と有機マトリックスとを含有するコーティング組成物を調製するステップと、このコーティング組成物を微細複製工具に接触させるステップと、コーティング組成物を重合させて、微細構造化表面を有する光学層を形成するステップとを含む。このジルコニアゾルは、カルボン酸であって、4個以下の炭素原子を有し、ポリエーテルカルボン酸は実質的に有さないカルボン酸を含む。このジルコニア粒子は、平均一次粒度が50ナノメートル以下であり、分散指数が1〜5であり、強度平均粒度の体積平均粒度に対する比が3.0以下であり、少なくとも50パーセントが立方晶、正方晶、またはそれらの組み合わせである結晶構造を有する。ジルコニアゾルのある実施形態において、ジルコニア粒子は、ジルコニア粒子中の無機酸化物の重量を基準して0.1〜8重量パーセントのイットリウムを含有し、少なくとも70パーセントが立方晶、正方晶、またはそれらの組み合わせ結晶構造を有する。
【0011】
本明細書において使用される場合、単数形(用語「a」、「an」および「the」)は、説明される1つ以上の要素を意味するために、「少なくとも1つ」と同義的に使用される。
【0012】
本明細書において使用される場合、用語「会合」は、凝集および/または集塊が起こった2つ以上の一次粒子の集まりを意味する。同様に、用語「非会合」は、凝集および/または集塊が起こっていない2つ以上の一次粒子の集まりを意味する。
【0013】
本明細書において使用される場合、用語「凝集」または「凝集した」は、一次粒子間の強い会合を意味する。たとえば、一次粒子は互いに化学的に結合することができる。凝集体のより小さな粒子(たとえば、一次粒子)への破壊は、一般に起こりにくい。同様に、用語「非凝集」は、別の一次粒子との間に強い会合を含まない一次粒子を意味する。
【0014】
本明細書において使用される場合、用語「集塊」または「集塊した」は、一次粒子の弱い会合を意味する。たとえば、一次粒子は、電荷または極性によって互いに維持されることができる。集塊体のより小さな粒子(たとえば、一次粒子)への破壊は、凝集体のより小さな粒子への破壊よりも起こりやすい。同様に、用語「非集塊」は、別の一次粒子との間に弱い会合を含まない一次粒子を意味する。
【0015】
本明細書において使用される場合、用語「調光フィルム」は、先端および溝の規則的な繰り返しパターンを有する微細構造化表面を有する物品を意味する。これらの先端および溝は、対称の場合もあるし、非対称の場合もある。先端および溝の大きさ、方向、あるいはそれらの間の距離は、均一の場合もあるし、不均一の場合もある。調光フィルムは、通常、輝度向上フィルム、反射フィルム、または回転フィルムから選択される。調光フィルムについては、たとえば、米国特許第5,175,030号明細書(ルー(Lu)ら)、第5,183,597号明細書(ルー(Lu))、第5,771,328号明細書(ワートマン(Wortman)ら)、第5,917,664号明細書(オニール(O’Neill)ら)、第5,919,551号明細書(コブ・ジュニア(Cobb,Jr.)ら)、第6,111,696号明細書(アレン(Allen)ら)、第6,280,063B1号明細書(フォング(Fong)ら)、第6,356,39B1号明細書(ガーディナー(Gardiner)ら)に、より詳細に記載されている。
【0016】
本明細書において使用される場合、用語「流体力学的粒度」は、本明細書に記載の方法を使用して光子相関分光法(PCS)によって測定される、液相中のジルコニア粒子の体積平均粒度を意味する。
【0017】
本明細書において使用される場合、用語「熱水」は、密閉容器中の水性媒体について、その水性媒体の沸騰を防止するのに必要な圧力以上の圧力で、その水性媒体の標準沸点を超える温度まで加熱する方法を意味する。
【0018】
本明細書において使用される場合、用語「屈折率」または「屈折指数」は、材料(たとえば、有機マトリックスまたはコーティング組成物)の絶対屈折率を意味し、これは、自由空間中の電磁放射線の速度の、対象材料中の電磁放射線の速度に対する比である。この電磁放射線は白色光である。屈折率は、ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh,PA)のフィッシャー・インストルメンツ(Fisher Instruments)などから市販されているアッベ(Abbe)屈折計を使用して測定される。屈折率測定は、使用される個別の屈折計にある程度依存しうる。
【0019】
本明細書において使用される場合、用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート化合物とメタクリレート化合物との両方を意味する。
【0020】
本明細書において使用される場合、用語「微細構造化」または「微細構造」は、微細構造を通って引かれた平均中心線から、形状がずれている突出部およびくぼみなどの不連続を有する表面を意味し、この中心線は、中心線より上の表面形状によって囲まれる面積の合計が、中心線より下の面積の合計に等しくなるように引かれており、この中心線は、物品の公称表面(微細構造を有する)に対して実質的に平行である。これらのずれの高さは、通常少なくとも0.005ミクロン、少なくとも0.01マイクロメートル、または少なくとも0.1マイクロメートルである。これらのずれの高さは、通常750マイクロメートル以下、500マイクロメートル以下、400マイクロメートル以下、200マイクロメートル以下、または100マイクロメートル以下である。一部の表面構造は、フィルム長さまたは幅に沿って延在する複数の長手方向の稜線部を有する。これらの稜線部は、中心線からのずれの高さが約0.1〜約100マイクロメートルである。これらの稜線部は、対称の場合も非対称の場合もある先端および溝の交互パターンを形成することができる。先端および溝の大きさ、方向、あるいはそれらの間の距離は、均一の場合もあるし、不均一の場合もある。ある微細構造化表面においては、稜線部は複数のプリズム頂点から形成されている場合がある。これらの頂点は、鋭い場合、丸みを帯びた場合、平坦な場合、または切頭されている場合がある。
【0021】
本明細書において使用される場合、用語「微細複製工具」は、ポリマー材料中に微細構造化表面を形成するために使用することができる工具を意味する。微細複製工具は微細構造を有し、重合性組成物、ポリマー組成物、またはその両方に微細複製工具を接触させることによってその微細構造が複製される。微細複製工具は、ポリマー材料中の複製微細構造化表面中に形成される表面のネガである表面を有する。
【0022】
本明細書において使用される場合、用語「有機マトリックス」は、あらゆる有機材料を意味し、たとえば、モノマー、オリゴマー、ポリマー、溶媒、架橋剤、開始剤などを含む。有機マトリックスは、上記成分の組み合わせを含むことができる。
【0023】
本明細書において使用される場合、用語「ポリマー」または「ポリマーの」または「ポリマー材料」は、1種類以上のモノマーを反応させることによって調製される材料を意味する。すなわち、これらの用語は、ホモポリマー、コポリマー、およびターポリマーのいずれのことも意味している。本明細書において使用される場合、用語「重合」は、1種類以上のモノマー、オリゴマー、またはそれらの混合物からポリマー材料を形成する反応を意味する。
【0024】
本明細書において使用される場合、用語「重合性組成物」は、ポリマー材料を形成する重合反応を進行可能なモノマー、オリゴマー、またはそれらの混合物を含む組成物を意味する。重合性組成物は、有機マトリックスに含まれる種類の1つである。
【0025】
本明細書において使用される場合、用語「一次粒度」は、会合していない単結晶ジルコニア粒子の大きさを意味する。通常、X線回折(XRD)を使用し、本明細書に記載される方法を使用して、一次粒度が測定される。
【0026】
本明細書において使用される場合、用語「ゾル」は、液相(たとえば水性媒体)中のコロイド粒子の分散体または懸濁液を意味する。ゾル中の粒子は、通常、非集塊、非凝集、またはそれらの組み合わせである。
【0027】
本明細書において使用される場合、用語「ジルコニア」は、酸化ジルコニウムに関する種々の化学量論を意味し、ほとんどの場合ZrO2であり、酸化ジルコニウムまたは二酸化ジルコニウムと呼ばれる場合もある。ジルコニアは、たとえば酸化イットリウムおよび有機材料などの他の化学部分を30重量パーセントまで含有することができる。
【0028】
本発明の上記概要は、本発明の開示されるすべての実施形態またはすべての実施を説明することを意図したものではない。図面、以下の詳細な説明、および実施例は、これらの実施形態をより詳細に例示している。
【0029】
添付の図面に関連する本発明の種々の実施形態の以下の詳細な説明を考慮することによって、本発明をより十分に理解できるであろう。
【0030】
本発明は種々の変更および変形に適用できるが、それらの具体例は、例として図面によって示しており、これより詳細に説明する。しかし、記載される特定の実施形態に本発明が限定されることを意図するものではないことを理解されたい。それどころか、本発明の意図および範囲の中にあるすべての変更、等価物、および代替物を含むことを意図している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
ジルコニア粒子を含有する、調光フィルムなどの微細構造化物品を提供する。このジルコニア粒子は、コロイド状(たとえば100ナノメートル未満)で、結晶質であり、実質的に会合していない。このジルコニア粒子は、調光フィルムの屈折率を増加させることができる、調光フィルムの耐久性を増加させることができる、またはそれらの組み合わせを実現することができる。通常、調光フィルムは、輝度向上フィルム、反射フィルム、回転フィルムなどの形態である。
【0032】
第1の態様においては、微細構造化表面を有する光学層を含む調光フィルムを提供する。この光学層は、ポリマー材料と、複数の表面改質ジルコニア粒子とを含有する。これらのジルコニア粒子は、ジルコニア粒子中の無機酸化物の重量を基準にして0.1〜8重量パーセントのイットリウムを含有する。さらに、これらのジルコニア粒子は、平均一次粒度が50ナノメートル以下であり、分散指数が1〜3であり、強度平均粒度の体積平均粒度に対する比が3.0以下であり、少なくとも70パーセントが立方晶、正方晶、またはそれらの組み合わせである結晶構造を有する。
【0033】
通常、ジルコニア粒子を有する調光フィルムは、ポリマー材料のみを含有する調光フィルムよりも屈折率が高い。ある実施形態においては、調光フィルムは輝度向上フィルムである。別の実施形態においては、調光フィルムは反射フィルムまたは回転フィルムである。
【0034】
本発明のジルコニア粒子は、酸化イットリウムの形態である場合が多いイットリウムを含有する。イットリウムの量は、ジルコニア粒子中の無機酸化物の重量を基準にして0.1〜8重量パーセントの範囲内である。たとえば、イットリウムの量は、ジルコニア粒子中の無機酸化物の重量を基準にして0.5〜8重量パーセントの範囲内、1〜5重量パーセントの範囲内、または1〜4重量パーセントの範囲内であってよい。
【0035】
本発明のジルコニア粒子は、無機酸化物以外に少なくともある程度の有機材料を含有することが多い。この有機材料は、ジルコニア粒子表面に取り付いている場合があり、ジルコニア粒子の調製に使用した前駆体溶液中の塩の陰イオンに由来するものであることが多い。本発明のジルコニア粒子は、粒子の重量を基準にして、多くの場合15重量パーセントまで、12重量パーセントまで、10重量パーセントまで、8重量パーセントまで、または6重量パーセントまでの有機材料を含有する。
【0036】
本発明のジルコニア粒子は結晶である。結晶ジルコニアは、非晶質ジルコニアよりも高い屈折率を有する傾向にある。X線回折を使用して小さな粒子の立方晶および正方晶の結晶構造を別々に定量することは困難なため(すなわち、立方晶ジルコニアの(1 1 1)ピークが、正方晶ジルコニアの場合の(1 0 1)ピークと重なることが多い)、これら2つの結晶構造が併用される。たとえば、これら2つのピークが連結したものは、図1に示されるX線回折パターン中に約30.5°の2θにおいて現れる。ジルコニア粒子の少なくとも70パーセントは、立方晶構造、正方晶構造、またはそれらの組み合わせを有し、残部は単斜晶である。たとえば、あるジルコニア試料中では、ジルコニア粒子の少なくとも75パーセント、少なくとも80パーセント、または少なくとも85パーセントが、立方晶結晶構造、正方晶結晶構造、またはそれらの組み合わせを有する。立方晶および正方晶の結晶構造は、電子顕微鏡下で観察すると立方体状の形状を有する低アスペクト比の一次粒子の形成を促進する傾向にある。
【0037】
本発明のジルコニア粒子は、通常、平均一次粒度が50ナノメートル以下、40ナノメートル以下、30ナノメートル以下、25ナノメートル以下、または20ナノメートル以下である。ジルコニア粒子の非会合粒度を意味する一次粒度は、実施例の項に記載されるようにX線回折によって求めることができる。
【0038】
ジルコニアの粒子は、ゾル中に存在する場合、実質的に非会合(すなわち、非凝集および非集塊)形態で存在する傾向にある。一次粒子間の会合の程度は、流体力学的粒度から求めることができる。流体力学的粒度は、光子相関分光法を使用して測定され、実施例の項においてより詳細に説明している。用語「流体力学的粒度」および「体積平均粒度」は、本明細書において同義的に使用される。ジルコニア粒子が会合している場合、その流体力学的粒度から、ジルコニアゾル中の一次粒子の凝集体および/または集塊体の大きさに関する指標が得られる。ジルコニア粒子が会合していない場合、その流体力学的粒度から一次粒子の大きさに関する指標が得られる。
【0039】
ゾル中のジルコニアの一次粒子間の会合の程度の定量的指標が分散指数である。本明細書において使用される場合、「分散指数」は、流体力学的粒度を一次粒度で割った値として定義される。一次粒度(たとえば、重量平均微結晶サイズ)は、X線回折技術を使用して求められ、流体力学的粒度(たとえば、体積平均粒度)は光子相関分光法を使用して求められる。ゾル中の一次粒子間の会合が減少すると、その分散指数は1の値に近づく。ジルコニア粒子は、通常、1〜5、1〜4、1〜3、1〜2.5、または1〜2の分散指数を有する。
【0040】
光子相関分光法は、ゾル中のジルコニア粒子をさらに特性決定するために使用することができる。たとえば、粒子によって散乱される光の強度は、粒径の6乗に比例する。したがって、光強度分布は、小さい粒子よりも大きい粒子の方が敏感になりやすい。強度平均サイズ(たとえばナノメートルの単位で測定)は、実質的に、機器によって測定される光強度分布の平均値に対応する粒度である。本発明のジルコニア粒子は、70ナノメートル以下、60ナノメートル以下、50ナノメートル以下、40ナノメートル以下、35ナノメートル以下、または30ナノメートル以下の強度平均サイズを有する傾向にある。
【0041】
光子相関分光法を使用した分析中に求められる光強度分布は、粒子の屈折率、および懸濁媒体の屈折率と組み合わせることによって、球形粒子の体積分布を計算することができる。この体積分布から、特定のサイズ範囲の粒子に対応する粒子の全体積パーセント値が得られる。体積平均サイズは、体積分布の平均に対応する粒度である。粒子の体積は、直径の3乗に比例するので、この分布は、強度平均サイズの場合ほどは大きい粒子に対して敏感ではない。すなわち、通常、体積平均サイズは強度平均サイズよりも小さい値となる。本発明のジルコニアゾルは、通常、50ナノメートル以下、40ナノメートル以下、30ナノメートル以下、25ナノメートル以下、20ナノメートル以下、または15ナノメートル以下の体積平均サイズを有する。体積平均サイズは、分散指数の計算に使用される。
【0042】
粒子のサイズが1つのみである試料の場合、強度平均サイズおよび体積平均サイズは同じになる。したがって、強度平均サイズの体積平均サイズに対する比から、粒子のサイズの広がりに関する指標が得られる。大きい値の比は、広い粒度分布に対応する。本発明のジルコニア粒子は、通常、強度平均サイズ(すなわちナノメートルの単位で測定)の体積平均サイズ(すなわちナノメートルの単位で測定)に対する比が、3.0以下、2.5以下、2.0以下、1.8以下、1.7以下、または1.6以下である。
【0043】
本発明のジルコニアゾルは、サイズが小さく、ゾル中の一次ジルコニア粒子が非会合形態を形成しているため、高い光透過率を有することが多い。ゾルの高い光透過率は、透明または半透明の物品を作製する場合に望ましい場合がある。本明細書において使用される場合、「光透過率」は、試料(たとえばジルコニアゾル)を透過する光量を、試料上に入射する全光量で割ったものを意味し、次式を使用して計算することができる。
【0044】
%透過率=100(I/IO
【0045】
式中、Iは、試料を透過する光の強度であり、IOは試料上に入射する光の強度である。光透過率は、600ナノメートルの波長に設定され1cmの経路長が使用される紫外/可視分光光度計を使用して求めることができる。
【0046】
この光透過率は、ゾル中のジルコニア量の関数となる。約1重量パーセントのジルコニアを有するジルコニアゾルの場合、その光透過率は、通常少なくとも70パーセント、少なくとも80パーセント、または少なくとも90パーセントとなる。約10重量パーセントのジルコニアを有するジルコニアゾルの場合、その光透過率は、通常少なくとも20パーセント、少なくとも50パーセント、または少なくとも70パーセントとなる。
【0047】
本発明のジルコニア粒子は表面改質されている。表面改質は、ジルコニア粒子表面に結合して、ジルコニア粒子の表面特性を改質する1種類の表面改質剤または複数種類の表面改質剤の組み合わせとジルコニア粒子とを反応させることを伴う。
【0048】
本発明のジルコニア粒子は、有機マトリックス材料との相溶性を改善するために表面改質されることが多い。本発明の表面改質ジルコニア粒子は、有機マトリックス材料中で非会合、非集塊、またはそれらの組み合わせであることが多い。これらの表面改質ジルコニア粒子を含有し結果として得られる調光フィルムは、高い光学的透明度および低ヘイズを有する。これらの表面改質ジルコニア粒子を加えることによって、ポリマー材料のみを含有するフィルムよりも、輝度向上フィルムの利得を増加させることができる。
【0049】
表面改質剤は、式A−Bで表すことができ、この式中、A基はジルコニア粒子表面に結合することができ、Bは相溶性基である。A基は、吸着、イオン結合の形成、共有結合の形成、またはそれらの組み合わせによって表面に結合することができる。A基の好適な例としては、たとえば、カルボン酸またはそれらの塩、スルホン酸またはそれらの塩、リン酸またはそれらの塩、ホスホン酸およびそれらの塩、シラン類などが挙げられる。相溶性基Bは、反応性の場合も非反応性の場合もあるし、極性の場合も非極性の場合もある。
【0050】
ジルコニア粒子に極性を付与することができる相溶性基Bとしては、たとえばポリエーテルが挙げられる。カルボン酸官能性を有する極性改質剤の具体例としては、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸(MEEAA)、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸(MEAA)、およびモノ(ポリエチレングリコール)スクシネートなどのポリエーテルカルボン酸が挙げられる。
【0051】
ジルコニア粒子に非極性を付与することができる相溶性基Bとしては、たとえば、線状または分岐の芳香族または脂肪族の炭化水素が挙げられる。カルボン酸官能性を有する非極性改質剤の代表例としては、オクタン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0052】
ある実施形態においては、このカルボン酸は、重合性有機マトリックスと反応性であってよい(たとえば、カルボン酸が重合性基を有する)。別の実施形態においては、このカルボン酸には、重合性基を有するカルボン酸と、重合性基を有さないカルボン酸との両方が含まれる。反応性カルボン酸表面改質剤(たとえば、重合性基を有するカルボン酸)としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸β−カルボキシエチル、コハク酸モノ−2−(メタクリロキシエチル)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。極性と、ジルコニア粒子に対する反応性との両方を付与することができる有用な表面改質剤の1つは、コハク酸モノ(メタクリロキシポリエチレングリコール)である。この材料は、放射線硬化性アクリレートおよび/またはメタクリレート有機マトリックス材料に添加する場合に特に好適となりうる。
【0053】
代表的なシランとしては、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、およびヘキシルトリメトキシシランなどのアルキルトリアルコキシシラン;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、および3−(メタクリロキシ)プロピルトリエトキシシランなどのメタクリロキシアルキルトリアルコキシシランまたはアクリロキシアルキルトリアルコキシシラン;3−(メタクリロキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、および3−(アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシランなどのメタクリロキシアルキルアルキルジアルコキシシランまたはアクリロキシアルキルアルキルジアルコキシシラン;3−(メタクリロキシ)プロピルジメチルエトキシシランなどのメタクリロキシアルキルジアルキルアルコキシシランまたはアクリルオキシアルキルジアルキルアルコキシシラン;3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトアルキルトリアルコキシルシラン;スチリルエチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、およびp−トリルトリエトキシシランなどのアリールトリアルコキシシラン;ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリ−t−ブトキシシラン、ビニルトリス(イソブトキシ)シラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、およびビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランなどのビニルシラン;グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどの3−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン;カルバミン酸N−(3−トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチル(PEG3TES)、カルバミン酸N−(3−トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチル(PEG2TES)、およびシルクエスト(SILQUEST)A−1230)などのポリエーテルシラン;ならびにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
調光フィルムの光学層は、表面改質ジルコニア粒子以外にポリマー材料も含有する。本発明の光学層は、通常、80重量パーセントまでの表面改質ジルコニア粒子を含む。ある実施形態においては、本発明の光学層は、75重量パーセントまで、70重量パーセントまで、65重量パーセントまで、60重量パーセントまで、55重量パーセントまで、50重量パーセントまで、45重量パーセントまで、または40重量パーセントまでの表面改質ジルコニアを含む。本発明の光学層は、通常、少なくとも1重量パーセント、少なくとも5重量パーセント、少なくとも10重量パーセント、少なくとも15重量パーセント、少なくとも20重量パーセント、少なくとも25重量パーセント、少なくとも30重量パーセント、少なくとも35重量パーセント、または少なくとも40重量パーセントの表面改質ジルコニア粒子を含む。ある実施形態においては、本発明の光学層は、1〜80重量パーセント、1〜70重量パーセント、1〜60重量パーセント、5〜60重量パーセント、10〜60重量パーセント、20〜60重量パーセント、30〜60重量パーセント、または40〜60重量パーセントの表面改質ジルコニア粒子を含有する。
【0055】
本発明の光学層中のポリマー材料は、十分に高い屈折率を有するあらゆる好適な材料であってよい。このポリマー材料の屈折率は、多くの場合、少なくとも1.40、少なくとも1.45、または少なくとも1.50である。本発明のポリマー材料は、たとえば、1種類以上のモノマー(たとえば、エチレン系不飽和モノマー)、1種類以上のオリゴマー(たとえば、エチレン系不飽和オリゴマー)、またはそれらの組み合わせを含有する重合性組成物を反応させることによって形成することができる。本発明の重合性組成物は、任意選択の架橋剤および任意選択の光開始剤を含むこともできる。
【0056】
ある代表的なポリマー材料は、ハードセグメントおよびソフトセグメントの両方を有するオリゴマー材料を含む重合性組成物から調製される。ハードセグメントは、ポリウレタンであることが多く、ソフトセグメントはポリエステルであることが多い。さらに、重合性組成物は、微細構造化物品を製造するのに適した粘度(たとえば、1,000〜5,000cp)を得るためにモノマーを含むことが多い。たとえば、オリゴマー樹脂は、アクリレート系であることが多く、モノマーは、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族(メタ)アクリレート、またはそれらの組み合わせなどのエチレン系不飽和モノマーである。この重合性組成物は、多くの場合、溶媒を含有せず、光開始剤の存在下で紫外線を使用した場合に架橋性および硬化性である。このような重合性組成物は、たとえば、米国特許第5,183,597号明細書(ルー(Lu))および同第5,175,030号明細書(ルー(Lu)ら)に、より詳細に記載されている。
【0057】
別の代表的なポリマー材料は、高屈折率を有するオリゴマー材料と、反応性希釈剤と、架橋剤(すなわち、架橋剤または架橋性モノマー)とを含む重合性組成物から調製される。この重合性組成物は開始剤を含むことが多い。オリゴマー材料は、ポリマー材料の全体的な光学的性質および抵抗性に寄与する。反応性希釈剤は、重合性組成物の粘度を調整するために加えることができるモノマーである。通常この粘度は、組成物中への気泡の取り込みを最小限にし、完全な微細構造形状を形成できるのに十分な流動性となるように調整される。多官能性架橋剤は、光学層の耐久性を高めるために加えられ、ポリマーのガラス転移温度を上昇させることができる(たとえば、ポリマー材料のガラス転移温度は多くの場合45℃を超える)。これらの代表的なポリマー材料は、2003年9月12日に出願された米国特許出願第10/662085号明細書、2004年9月10日に出願された米国特許出願第10/939184号明細書、および2004年9月10日に出願された米国特許出願第10/938006号明細書に、より詳細に記載されている。
【0058】
これらの代表的なポリマー材料用のオリゴマー材料は、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、またはそれらの組み合わせであることが多い。典型的なオリゴマー材料としては、芳香族ウレタンアクリレート(たとえば、ジョージア州スマーナのサーフェス・スペシャルティーズ(Surface Specialties,Smyrna,GA)よりエベクリル(EBECRYL)6700−20Tとして市販されている)、芳香族ウレタンジアクリレート(たとえば、サーフェス・スペシャルティーズ(Surface Specialties)よりエベクリル(EBECRYL)4849およびエベクリル(EBECRYL)4827として市販されている)、芳香族ウレタントリアクリレート(たとえば、サーフェス・スペシャルティーズ(Surface Specialties)よりエベクリル(EBECRYL)6602として市販されている)、ウレタンアクリレート(たとえば、サートマー(Sartomer)よりCN972として市販されている)、ウレタンアクリレートブレンド(たとえば、トリプロピレングリコールジアクリレートとブレンドされてサートマー(Sartomer)よりCN970A60およびCN973A80として市販されている)、六官能性ウレタンアクリレート(たとえば、サートマー(Sartomer)よりCN975として市販されており、さらにサーフェス・スペシャルティーズ(Surface Specialties)よりエベクリル(EBECRYL)220として市販されている)、ビスフェノールAエポキシジアクリレート(たとえば、サーフェス・スペシャルティーズ(Surface Specialties)よりエベクリル(EBECRYL)608、エベクリル(EBECRYL)1608、およびエベクリル(EBECRYL)3700として市販されている)、改質ビスフェノールAエポキシジアクリレート(たとえば、サーフェス・スペシャルティーズ(Surface Specialties)のエベクリル(EBECRYL)3701)、部分アクリル化ビスフェノールAエポキシジアクリレート(たとえば、エベクリル(EBECRYL)3605として市販されている)、エポキシアクリレート(たとえば、ペンシルバニア州エクストンのサートマー(Sartomer,Exton,PA)よりCN120およびCN104として、ならびにサーフェス・スペシャルティーズ(Surface Specialties)よりエベクリル(EBECRYL)3200として市販されている)、改質エポキシアクリレート(たとえば、サートマー(Sartomer)よりCN115、CN116、CN117、CN118、およびCN119として市販されている)、脂肪族/芳香族エポキシアクリレート(たとえば、サーフェス・スペシャルティーズ(Surface Specialties)よりエベクリル(EBECRYL)3201として市販されている)、およびゴム改質エポキシジアクリレート(たとえば、サーフェス・スペシャルティーズ(Surface Specialties)よりエベクリル(EBECRYL)3302として市販されている)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
これらの代表的なポリマー材料用の典型的な反応性希釈剤モノマーとしては、モノアクリレート、たとえば(メタ)アクリル酸フェニルチオエチル、アクリル酸イソオクチル(たとえば、ペンシルバニア州エクストンのサートマー(Sartomer,Exton,PA)よりSR−440として市販されている)、アクリル酸イソデシル(たとえば、サートマー(Sartomer)よりSR−395として市販されている)、アクリル酸イソボルニル(たとえば、サートマー(Sartomer)よりSR−506として市販されている)、アクリル酸2−フェノキシエチル(たとえば、サートマー(Sartomer)よりSR−339として市販されている)、アルコキシル化アクリル酸テトラヒドロフルフリル(たとえば、サートマー(Sartomer)よりCD−611として市販されている)、および2(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート(たとえば、サートマー(Sartomer)よりSR−256として市販されている);ジアクリレート、たとえば、1,3−ブチレングリコールジアクリレート(たとえば、サートマー(Sartomer)よりSR−212として市販されている)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(たとえば、サートマー(Sartomer)よりSR−238として市販されている)、ネオペンチルグリコールジアクリレート(たとえば、サートマー(Sartomer)よりSR−247として市販されている)、およびジエチレングリコールジアクリレート(たとえば、サートマー(Sartomer)よりSR−230として市販されている)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。他の反応性希釈剤モノマーとしては、たとえば、メチルスチレン、スチレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。
【0060】
これらの代表的なポリマー材料用の典型的な多官能性架橋剤は、トリアクリレート、テトラアクリレート、およびペンタアクリレートである。このような架橋剤としては、トリメチロールプロパントリアクリレート(たとえば、ジョージア州スマーナのサーフェス・スペシャルティーズ(Surface Specialties,Smyrna,GA)よりTMPTA−Nとして市販されており、さらにペンシルバニア州エクストンのサートマー(Sartomer,Exton,PA)よりSR−351として市販されている)、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物(たとえば、サーフェス・スペシャルティーズ(Surface Specialties)よりテトラアクリレート対トリアクリレートの比が約1:1であるPETIAとして市販されており、さらにテトラアクリレート対トリアクリレートの比が約3:1であるPETA−Kとして市販されている)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(たとえば、サートマー(Sartomer)よりSR−295として市販されている)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(たとえば、サートマー(Sartomer)よりSR−444として市販されている)、トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(たとえば、サートマー(Sartomer)よりSR−368として市販されている)、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート(たとえば、サートマー(Sartomer)よりSR−355として市販されている)、およびジペンタエリスリトールペンタアクリレート(たとえば、サートマー(Sartomer)よりSR−399として市販されている)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
これらの重合性組成物は、通常、フリーラジカル重合法を使用して重合される。多くの場合、重合性組成物中には開始剤が含まれる。この開始剤は、熱開始剤、光開始剤、またはその両方であってよい。開始剤の例としては、有機過酸化物、アゾ化合物、キニン類、ニトロ化合物、ハロゲン化アシル、ヒドラゾン類、メルカプト化合物、ピリリウム化合物、イミダゾール類、クロロトリアジン類、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、ジケトン、フェノン類などが挙げられる。市販の光開始剤としては、限定されるものではないが、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(たとえば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)よりダロキュア(DAROCUR)1173として市販されている)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンとの混合物(たとえば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)よりダラキュア(DARACUR)4265として市販されている)、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(たとえば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)よりイルガキュア(IRGACURE)651として市販されている)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキシドと1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンとの混合物(たとえば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)よりイルガキュア(IRGACURE)1800として市販されている)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキシド(たとえば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)よりイルガキュア(IRGACURE)1700として市販されている)と、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(たとえば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)よりイルガキュア(IRGACURE)907として市販されている)と、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(たとえば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)よりイルガキュア(IRGACURE)819として市販されている)との混合物、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィン酸エチル(たとえば、ノースカロライナ州シャーロット(Charlotte,NC)のBASFよりルシリン(LUCIRIN)TPO−Lとして市販されている)、および2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(たとえば、ノースカロライナ州シャーロット(Charlotte,NC)のBASFよりルシリン(LUCIRIN)TPOとして市販されている)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。多くの場合、光開始剤は、重合性組成物中のオリゴマー材料およびモノマー材料の重量を基準にして、約0.1〜10重量パーセントまたは0.1〜5重量パーセントの濃度で使用される。
【0062】
オリゴマー材料と、粘度を低下させるために場合により選択されるモノマーと、光開始剤とを反応させることによって調整されるポリマー材料は、米国特許第6,844,950B2号明細書(チザム(Chisholm)ら)に記載されている。好適なオリゴマーは、ウレタンマルチ(メタ)アクリレートである。代表的なポリマー材料の1つは、2,2,4−トリメチルヘキシレンジイソシアネートと、ポリ(カプロラクトン)ジオールと、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルとを反応させることによって調製される。好適な任意選択のモノマーとしては、たとえば、アルキル(メタ)アクリレート、N−置換(メタ)アクリルアミド、N,N’−二置換(メタ)アクリルアミド、スチレン化合物などが挙げられる。
【0063】
別の代表的なポリマー材料は、次式Iのモノマーを含む重合性組成物の反応生成物である。
【0064】
【化1】

【0065】
式I中、Raは水素またはメチルであり;Qはオキシまたはチオであり;Rcは、非置換またはヒドロキシで置換されたC2〜C12アルキレンであり;nは0〜6の整数であり;mは0〜6の整数であり;各Xは独立して、水素、ブロモ、またはクロロであり;Yは、−C(CH32−、−CH2−、−S−、−S(O)−、または−S(O)2−から選択される二価の結合基である。式Iのモノマーを含む重合性組成物は、米国特許第6,541,591B2号明細書(オルソン(Olson)ら)および米国特許第6,833,391B1号明細書(チザム(Chisholm)ら);ならびに米国特許出願公開第2004/0249100A1号明細書(チザム(Chisholm)ら)および米国特許出願公開第2004/0242720A1号明細書(チザム(Chisholm)ら)に、より詳細に記載されている。さらに別のモノマーまたはオリゴマーを重合性組成物に加えることもできる。これらの重合性組成物は、架橋剤、および光開始剤などの開始剤をさらに含むことができる。
【0066】
式Iのある実施形態においては、Rcは、非置換またはヒドロキシで置換されたC2〜C3アルキレンであり;nは0または1であり;およびmは0または1である。たとえば、Rcは、−CH2CH2−、−CH(CH3)CH2−、または−CH2CH(OH)CH2−から選択することができる。
【0067】
式Iのモノマーは、(メタ)アクリル酸を、たとえば、ビスフェノール−Aジグリシジルエーテル;ビスフェノール−Fジグリシジルエーテル;テトラブロモビスフェノール−Aジグリシジルエーテル;1,3−ビス−{4−[1−メチル−1−(4−オキシラニルメトキシ−フェニル)−エチル]−フェノキシ}−プロパン−2−オール;1,3−ビス−{2,6−ジブロモ−4−[1−(3,5−ジブロモ−4−オキシラニルメトキシ−フェニル)−1メチル−エチル]−フェノキシ}−プロパン−2−オールなどのジエポキシドと反応させることによって調製することができる。
【0068】
式Iの代表的なモノマーとしては、2,2−ビス(4−(2−(メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル)プロパン;2,2−ビス((4−(メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン:アクリル酸3−(4−{1−[4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−3,5−ジブロモ−フェニル]−1−メチル−エチル}−2,6−ジブロモ−フェノキシ)−2−ヒドロキシ−プロピルエステル;アクリル酸3−[4−(1−{4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−3,5−ジブロモ−フェニル]−1−メチル−エチル}−2,6−ジブロモ−フェノキシ)−2−ヒドロキシ−プロピルエステル;アクリル酸3−[4−(1−{4−[3−(4−{1−4−(3アクリロキシロキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−3,5−ジブロモ−フェニル]−1−メチル−エチル}−2,6−ジブロモ−フェノキシ)−2−ヒドロキシ−プロポキシ]−3,5−ジブロモ−フェニル}−1メチル−エチル)−2,6−ジブロモ−フェノキシ]−2−ヒドロキシ−プロピルエステルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ある重合性組成物においては、式Iのモノマーは、2−プロペン酸(1−メチルエチリジエン)ビス[2,6−ジブロモ−4,1−フェニレン)オキシ(2−ヒドロキシ−3,1−プロパンジイル)]エステルを形成するためのテトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとアクリル酸との反応生成物を含む。
【0069】
式Iのモノマーまたは本明細書に記載される他のポリマー組成物と併用される架橋性モノマーは、多くの場合、3つ以上の(メタ)アクリロイル基を含む。このような架橋剤としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、イソシアヌレートトリアクリレート、ジ−(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。複数の架橋剤の混合物を使用することもできる。
【0070】
式Iのモノマーを含有する重合性組成物は、一官能性(メタ)アクリレートを含むこともできる。このようなある重合性組成物においては、一官能性(メタ)アクリレートは、次式IIのものである。
【0071】
【化2】

【0072】
式II中、Arは、非置換、あるいはハロ、アルキル、アリール、アラルキル、またはそれらの組み合わせから選択される1つ以上の置換基で置換された、フェニルまたはナフチルであり;Qはオキシまたはチオであり;Rcは、非置換またはヒドロキシで置換されたC2〜C12アルキレンであり;pは0〜6の整数であり;Raは水素またはメチルである。
【0073】
代表的な式IIのモノマーとしては、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシ−2−メチルエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,4−ジブロモフェノキシエチル、(メタ)アクリル酸2,4,6−トリブロモフェノキシエチル、(メタ)アクリル酸4,6−ジブロモ−2−アルキルフェニル、(メタ)アクリル酸2,6−ジブロモ−4−アルキルフェニル、(メタ)アクリル酸2−(1−ナフチルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ナフチルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(1−ナフチルチオ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ナフチルチオ)エチルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
第1の例において、本発明の重合性組成物は、式Iのモノマーと、(メタ)アクリル酸2,4,6−トリブロモフェノキシアルキルと、芳香族ウレタンヘキサアクリレートとを含むことができる。このような重合性組成物は米国特許第5,908,875号明細書(フォング(Fong)ら)に、より詳細に記載されている。
【0075】
第2の例において、本発明の重合性組成物は、式Iのモノマーと、アクリル酸アルキル置換4,6−ジブロモフェニル、メチルスチレンと、芳香族ウレタンヘキサアクリレートとを含むことができる。このような重合性組成物は、米国特許第6,280,063B1号明細書(フォング(Fong)ら)に、より詳細に記載されている。
【0076】
第3の例において、本発明の重合性組成物は、式Iの第1のモノマーと、(メタ)アクリル酸2,4,6−トリブロモフェノキシアルキル(たとえば、(メタ)アクリル酸2,4,6−トリブロモフェノキシエチル)を含む第2のモノマーと、架橋剤(たとえば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、またはそれらの混合物)とを含む。この重合性組成物は、光開始剤および一官能性反応性希釈剤モノマー(たとえば、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、およびそれらの混合物)を含むこともできる。この重合性組成物は、2003年12月30日に出願された米国特許出願第10/78049号明細書に、より詳細に記載されている。
【0077】
さらに別の具体例においては、本発明の重合性組成物は、式Iの第1のモノマーと、(メタ)アクリル酸フェノキシアルキル(たとえば、アクリル酸フェノキシエチル)などの一官能性反応性希釈剤モノマーを含む第2のモノマーと、架橋剤(たとえば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、またはそれらの混合物)と、光開始剤とを含む。この重合性組成物は、2003年12月30日に出願された米国特許出願第10/747985号明細書に、より詳細に記載されている。
【0078】
別のポリマー材料は、式IIのモノマーは含むが式Iのモノマーは含まない重合性組成物を反応させることによって調製される材料を含む。式IIのモノマーは、たとえば、任意選択の架橋性モノマー、および光開始剤などの任意選択の開始剤と併用することができる。
【0079】
たとえば、ポリマー材料は、(メタ)アクリル酸アルキル置換臭素化フェニル(すなわち、式II中の変数pが0である)を含有する重合性組成物を反応させることによって形成することができる。このような重合性組成物は、米国特許第5,932,626号明細書(フォング(Fong)ら)、第6,107,364号明細書(フォング(Fong)ら)、および第6,355,854号明細書(オルソン(Olson)ら)に、より詳細に記載されている。代表的なアルキル置換臭素化モノマーとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸4,6−ジブロモ−2−sec−ブチルフェニル、(メタ)アクリル酸4,6−ジブロモ−2−tert−ブチルフェニル、および(メタ)アクリル酸4,6−ジブロモ−2−イソプロピルフェニルなどの(メタ)アクリル酸4,6−ジブロモ−2−アルキルフェニル;(メタ)アクリル酸2,6−ジブロモ−4−ノニルフェニルおよび(メタ)アクリル酸2,6−ジブロモ−4−ドデシルフェニルなどの(メタ)アクリル酸2,6−ジブロモ−4−アルキルフェニルが挙げられる。
【0080】
(メタ)アクリル酸アルキル置換臭素化フェニルを含むある重合性組成物は、メチルスチレンなどの高屈折率を有するコモノマー;(メタ)アクリル酸トリブロモフェニルまたは(メタ)アクリル酸ペンタブロモフェニルなどの臭素化芳香族モノマー;あるいはArが非置換フェニル、あるいはアルキル、アリール、アラルキル、またはそれらの組み合わせで置換されたフェニルである式IIによる別のモノマーを含むこともできる。たとえば、米国特許第6,355,754号明細書(オルソン(Olson)ら)に記載されているように、重合性組成物は、(メタ)アクリル酸アルキル置換臭素化フェニル、メチルスチレン、臭素化エポキシジアクリレート、アクリル酸2−フェノキシエチル、および芳香族ウレタンヘキサアクリレートを含むことができる。
【0081】
式IIのモノマーは含むが式Iのモノマーは含まない別の重合性組成物は、米国特許第6,663,978B1号明細書(オルソン(Olson)ら)に、より詳細に記載されている。このようなモノマーとしては、アクリル酸6−(4,6−ジブロモ−2−イソプロピル−フェノキシ)ヘキシル、アクリル酸6−(4,6−ジブロモ−2−sec−ブチルフェノキシ)ヘキシル、アクリル酸2−(1−ナフチルオキシ)エチル、アクリル酸2−(2−ナフチルオキシ)エチル、アクリル酸6−(1−ナフチルオキシ)ヘキシル、アクリル酸6−(2−ナフチルオキシ)ヘキシル、アクリル酸8−(1−ナフチルオキシ)オクチル、アクリル酸8−(2−ナフチルオキシ)オクチル、アクリル酸2−フェニルチオエチル、アクリル酸フェノキシエチル、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
さらに別のポリマー材料は、2004年12月30日に出願された米国特許出願第11/026573号明細書に記載されるような芳香族チオ含有ジアクリレートから形成することができる。この芳香族チオ含有ジアクリレートは、下記の式IIIまたは式IVであってよい。
【0083】
【化3】

【0084】
式Iおよび式IIの両方において、各R1は、次式から独立して選択される。
【0085】
【化4】

【0086】
式中、R3は(CH2xであり;xは2〜8の整数であり;R4は水素またはメチルである。この重合性材料は、架橋性モノマーを含むこともできる。式IIIによる好適なモノマーとしては、アクリル酸2−[7−(2−アクリロイルオキシ−エチルスルファニル)−ナフタレン−2−イルスルファニル]−エチルエステルが挙げられるが、これに限定されるものではない。式IVによる好適なモノマーとしては、アクリル酸2−{4−[4−(2−アクリロイルオキシ−エチルスルファニル)−フェニルスルファニル]−フェニルスルファニル}−エチルエステルが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0087】
別のポリマー材料は、次式Vの芳香族チオ含有ジアクリレートから形成することができる。
【0088】
【化5】

【0089】
式V中、R2は水素またはメチルであり、Arはアリール(たとえば、フェニルまたはナフチル)であり;mは1〜6の整数であり、nは1〜6の整数であり、pは1〜6の整数であり、qは1〜6の整数である。式Vによる好適なモノマーとしては、アクリル酸2−アクリロイルオキシメチル−3−(ナフタレン−2−イルスルファニル)−2−(ナフタレン−2−イルスルファニルメチル)−プロピルエステルおよびアクリル酸2−アクリロイルオキシメチル−3−フェニルスルファニル−2−フェニルスルファニルメチル−プロピルエステルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0090】
さらに別の好適なポリマー材料は、米国特許出願公開第2004/0131826A1号明細書(チザム(Chisholm)ら)に記載されている。このポリマー材料は、(a)(1)(メタ)アクリル酸第3級アルキル、(2)N−置換またはN,N−二置換(メタ)アクリルアミド、または(3)(メタ)アクリル酸C1〜C8第1級または第2級アルキル、から選択される少なくとも1種類の一官能性アクリルモノマーと;(b)少なくとも1種類の多官能性(メタ)アクリレートと;(c)場合により少なくとも1種類のオリゴマー材料と;(d)少なくとも1種類の光開始剤との反応生成物である。
【0091】
成分(a)における好適な第3級アルキル(メタクリレート)は、通常、(メタ)アクリル酸tert−ブチルなどの4〜8個の炭素原子を有するものである。成分(a)における好適なN−置換またはN,N−二置換(メタ)アクリルアミドは、たとえば、N−イソプロピルアクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、およびN,N−ジエチルアクリルアミドなどのように1〜4個の炭素原子を有するアルキル置換基を含む。成分(a)における好適な(メタ)アクリル酸C1〜C8第1級または第2級アルキルとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、およびアクリル酸2−(N−ブチルカルバミル)エチルが挙げられる。
【0092】
成分(b)の多官能性(メタ)アクリレートとしては、たとえば、エチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、およびN,N’−メチレンビスアクリルアミドが挙げられる。
【0093】
本発明の調光フィルムの光学層中に含まれるポリマー材料は多くの場合架橋している(すなわち、このポリマー材料は熱硬化性材料である)が、米国特許出願公開第2004/0233526A1号明細書(カミンスキー(Kaminsky)ら)に記載されているように、熱可塑性材料を使用することもできる。好適な熱可塑性材料としては、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル(たとえば、4〜40個の炭素原子を有する芳香族、脂肪族、または脂環式のジカルボン酸と、2〜24個の炭素原子を有する脂肪族または脂環式のグリコールとの反応によって形成されるポリエステル)、ポリアミド(たとえば、ナイロン6およびナイロン66)、ポリカーボネート(たとえば、ビスフェノール−Aポリカーボネート)、セルロースエステル(たとえば、硝酸セルロース、三酢酸セルロース、二酢酸プロピオン酸セルロース、および酢酸酪酸セルロース)、ポリスチレン、ポリビニル樹脂(たとえば、ポリ塩化ビニルおよびポリ酢酸ビニル)、ポリスルホンアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、ポリフェニレンスルフィド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアセタール、ポリスルホネート、ポリエステルアイオノマー、およびポリオレフィンアイオノマーが挙げられる。これらの熱可塑性材料のコポリマー(たとえば、ポリエチレン酢酸ビニル)または混合物を使用することもできる。
【0094】
本明細書に記載される重合性組成物は、1種類以上の他の有用成分を含有することもできる。たとえば、重合性組成物は、1種類以上の界面活性剤、顔料、フィラー、重合阻害剤、酸化防止剤、耐電防止剤などを含むことができる。このような成分は、有効となることが知られている量で含めることができる。フルオロケミカル界面活性剤などの界面活性剤は、表面張力の低下、濡れ性の改善、コーティングの平滑性の改善、またはコーティングの欠陥数の減少のために、重合組成物中に含めることができる。
【0095】
本発明の光学層は、後述され図面に示されるような多数の有用なパターンのいずれかを有することが可能な構造化または微細構造化された表面を有することができる。微細構造化表面は、フィルムの長さまたは幅に沿って延在する複数の平行な長手方向の稜線部であってよい。これらの稜線部は、複数のプリズム頂点から形成されてよい。これらの頂点は、鋭い場合、丸みを帯びた場合、平坦な場合、または切頭されている場合がある。プリズムパターンは、規則的な場合もあるし、不規則な場合もある。プリズムパターンは、環状プリズムパターン、キューブコーナーパターン、または他のあらゆるレンズ状微細構造であってよい。有用な微細構造の1つは、全内部反射フィルムとして機能可能な調光フィルムを得ることができる規則的なプリズムパターンである。別の有用な微細構造は、再帰反射フィルムとして機能させることができる、または反射フィルムとして使用するための要素として機能させることができるコーナーキューブプリズムパターンである。別の有用な微細構造は、光ディスプレイ中に使用される光学要素として機能させることができるプリズムパターンである。別の有用な微細構造は、光ディスプレイ中に使用される回転フィルムまたは要素として機能させることができるプリズムパターンである。
【0096】
光学層以外に、多くの調光フィルムはベース層をさらに含んでいる。光学層は、ベース層に直接接触させることができるし、ベース層と光結合させることもできる(すなわち、光学層とベース層との間に1つ以上の介在層が存在できる)。ベース層は、光学層が光の流れを誘導または集束することができるサイズ、形状、および厚さとすることができる。ベース層は、光学製品中、すなわち光の流れを制御するよう設計された製品中に使用すると好適な性質および組成を有することができる。材料が、十分に光学的に透明であり、個別の光学製品の内部に組み込んだり内部で使用したりするのに十分な構造的強度を有する限り、ほとんどあらゆる材料をベース層として使用することができる。好ましくは、ベース層材料は、温度、および光学製品の性能が経時により低下する老化に対して十分な抵抗性を有するように選択される。
【0097】
任意の光学製品用のベース層の個別の化学組成および厚さは、構成される個別の光学製品の要求に依存しうる。すなわち、たとえば、強度、透明性、耐熱性、表面エネルギー、光学層に対する接着性などに対する要求のバランスを取るように、材料を選択することができる。
【0098】
有用なベース層材料としては、たとえば、スチレン−アクリロニトリル、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリエーテルスルホン、ポリメタクリル酸メチル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ナフタレンジカルボン酸を主成分とするコポリマーまたはブレンド、ポリシクロ−オレフィン、ポリイミド、ならびにガラスが挙げられる。場合により、ベース材料は、これらの材料の混合物または組み合わせを含有することができる。ベース層は、材料の1つ以上の層を含むことができる。ある実施形態においては、ベース層は、連続相中に懸濁または分散した分散相を含む。
【0099】
一部の調光フィルムの場合、代表的なベース層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリカーボネートから選択される。有用なPETフィルムの例としては、フォトグレードのポリエチレンテレフタレート、およびデラウェア州ウィルミントン(Wilmington,Del)のデュポン・フィルムズ(DuPont Films)より入手可能なメリネックス(MELINEX)(登録商標)PETが挙げられる。
【0100】
あるベース層材料は、光学活性であってよく、偏光材料として機能することができる。本明細書においてフィルムまたは基材とも呼ばれる多数のベース層は、偏光材料として有用であることが光学製品技術分野において知られている。フィルムを通過する光の偏光は、通過する光を選択的に吸収する二色性偏光子をフィルム材料中に含めることによって実現することができる。光の偏光は、位置合わせしたマイカチップなどの無機材料を含めることによって、または連続フィルム内に分散する光変調液晶の液滴など、連続フィルム内に分散する不連続相を含めることによっても実現することができる。別の方法として、異なる材料の複数の微細層から偏光フィルムを作製することができる。フィルム内の偏光材料は、たとえば、フィルムの延伸、電界または磁界の適用、ならびにコーティング技術などの方法を使用することによって、偏光方向に位置合わせすることができる。
【0101】
偏光フィルムの例としては、米国特許第5,825,543号明細書(アウダーカーク(Ouderkirk)ら)および第5,783,120号明細書(アウダーカーク(Ouderkirk)ら)に記載の変更フィルムが挙げられる。これらの偏光フィルムと輝度向上フィルムとの併用については、米国特許第6,111,696号明細書(アレン(Allen)ら)に記載されている。
【0102】
ベース層として使用可能な偏光フィルムの別の例が、米国特許第5,882,774号明細書(ジョンザ(Jonza)ら)に記載されている。市販されているこのようなフィルムの一例は、商品名DBEF(デュアル・ブライトネス・エンハンスメント・フィルム(Dual Brightness Enhancement Film))でミネソタ州セントポール(Saint Paul,MN)の3Mより販売される多層フィルムである。輝度向上フィルム中でのこのような多層偏光調光フィルムの使用は、米国特許第5,828,488号明細書(アウダーカーク(Ouderkirk)ら)に記載されている。
【0103】
これらの一連のベース層材料およびその他の偏光または非偏光フィルムは、前述の光学層とともに使用することもできる。これらのベース層は、たとえば、多層構造を形成する偏光フィルムなどの多数の他のフィルムと併用することができる。さらなるベース材料の一部の例としては、特に、米国特許第5,612,820号明細書(シュレンク(Schrenk)ら)および第5,486,949号明細書(シュレンク(Schrenk)ら)に記載されるフィルムを挙げることができる。個別のベースの厚さは、光学製品に関する前述の要求にも依存しうる。
【0104】
本発明の別の一態様は、調光フィルムの製造方法を提供する。第1の方法は、水相中に分散したジルコニア粒子を含有するジルコニアゾルを提供するステップと、ジルコニア粒子の表面を改質して表面改質ジルコニア粒子を形成するステップと、表面改質ジルコニア粒子と有機マトリックスとを含有するコーティング組成物を調製するステップと、このコーティング組成物を微細複製工具に接触させるステップと、コーティング組成物を重合させて、微細構造化表面を有する光学層を形成するステップとを含む。このジルコニアゾルは、ジルコニウム塩を含有する第1の供給材料を調製するステップと、第1の供給材料に対して第1の熱水処理を行ってジルコニウム含有中間体および副生成物を形成するステップと、第1の熱水処理の副生成物の少なくとも一部を除去することによって第2の供給材料を形成するステップと、第2の供給材料に対して第2の熱水処理を行うステップとによって形成される。
【0105】
このジルコニア粒子は、熱水法によって調製することができる。より具体的には、ジルコニウム塩を含有する第1の供給材料に対して第1の熱水処理を行うことで、ジルコニウム含有中間体および副生成物が形成される。第2の供給材料は、第1の熱水処理中に形成された副生成物の少なくとも一部を除去することによって調製される。次に、この第2の供給材料に対して第2の熱水処理を行うことで、ジルコニア粒子を含有するジルコニアゾルが形成される。
【0106】
第1の供給材料は、ジルコニウム塩を含有する水性前駆体溶液を形成することによって調製される。通常、ジルコニウム塩の陰イオンは、ジルコニアゾルの調製方法中の引き続くステップ中に除去できるように選択される。さらに、この陰イオンは、多くの場合、非腐食性となるように選択され、それによって、熱水反応器などの処理装置に応じて選択される材料の種類の自由度が高まる。
【0107】
通常、ジルコニウム塩の陰イオンは、カルボキシレートである。少なくとも50モルパーセントのカルボキシレート陰イオンが4個以下の炭素原子を有する。たとえば、ある前駆体溶液中、少なくとも60モルパーセント、少なくとも70モルパーセント、少なくとも80モルパーセント、少なくとも90モルパーセント、少なくとも95モルパーセント、少なくとも98モルパーセント、または少なくとも99モルパーセントのカルボキシレート陰イオンが4個以下の炭素原子を有する。
【0108】
4個以下の炭素原子を有する好適なカルボキシレートとしては、ホルメート、アセテート、プロピオネート、ブチレート、またはそれらの組み合わせが挙げられる。これらのカルボキシレート陰イオンは、対応する揮発性酸に転化させることによって、プロセス中に除去できる場合が多い。さらに、これらのカルボキシレート陰イオンは、塩化物イオンまたは硝酸イオンなどの他の陰イオンと比較すると、有機マトリックス材料との相溶性が高いことが多い。
【0109】
ある前駆体溶液において、陰イオンは、4個以下の炭素原子を有するカルボキシレートと、ポリエーテルカルボキシレート陰イオンとの混合物である。好適なポリエーテルカルボキシレート陰イオンは、ポリエーテル末端を有する水溶性モノカルボン酸(すなわち、1分子当たり1つのカルボン酸基)の対応する弱塩基である。このポリエーテル末端は、一般式−O−R−を有する二官能性エーテル基の繰り返しを含み、式中、Rは、たとえば、メチレン、エチレン、およびプロピレン(n−プロピレンおよびイソプロピレンを含む)などのアルキレン基、あるいはそれらの組み合わせである。好適なポリエーテルカルボキシレートは、4つを超える炭素原子を有し、そのようなものとしては、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸(MEEAA)および2−(2−メトキシエトキシ)酢酸(MEAA)などのポリエーテルカルボン酸から形成されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。前駆体溶液中に含まれる場合、ポリエーテルカルボキシレートは、前駆体溶液中のカルボキシレート陰イオンのモル数を基準にして、通常50モルパーセント以下の量で存在する。たとえば、ポリエーテルカルボキシレートの量は、前駆体溶液中のカルボキシレート陰イオンの40モルパーセント以下、30モルパーセント以下、20モルパーセント以下、10モルパーセント以下、5モルパーセント以下、2モルパーセント以下、または1モルパーセント以下とすることができる。
【0110】
ある前駆体溶液は、ポリエーテルカルボキシレートを実質的に含まないか、4つを超える炭素原子を有するカルボキシレートを実質的に含まないか、またはそれらの組み合わせであるかである。本明細書において使用される場合、用語「ポリエーテルカルボキシレートを実質的に含まない」は、前駆体溶液中のカルボキシレートの1モルパーセント未満が、ポリエーテルカルボキシレートまたは対応するポリエーテルカルボン酸であることを意味する。たとえば、前駆体溶液中のカルボキシレートの0.5モルパーセント未満、0.2モルパーセント未満、または0.1モルパーセント未満が、ポリエーテルカルボキシレートまたは対応するポリエーテルカルボン酸となる。本明細書において使用される場合、用語「4つを超える炭素原子を有するカルボキシレートを実質的に含まない」は、前駆体溶液中のカルボキシレートまたは対応するカルボン酸の1モルパーセント未満が、4つを超える炭素原子を有することを意味する。たとえば、カルボキシレートまたは対応するカルボン酸の0.5モルパーセント未満、0.2モルパーセント未満、または0.1モルパーセント未満が、4つを超える炭素原子を有する。
【0111】
ある前駆体溶液は、塩化物などのハロゲン化物を実質的に含まない。本明細書において使用される場合、用語「ハロゲン化物を実質的に含まない」は、前駆体溶液が、10-2モル/リットル未満、10-3モル/リットル未満、10-4モル/リットル未満、または10-5モル/リットル未満のハロゲン化物を有することを意味する。
【0112】
ジルコニウム塩は、多くの場合、酢酸ジルコニウムである。酢酸ジルコニウムは、ZrO((4-n)/2)n+(CH3COO-nなどの式で表すことができ、式中、nは1〜2の範囲内である。ジルコニウムイオンは、前駆体溶液のpHなどに依存して、種々の構造で存在することができる。酢酸ジルコニウムの調製方法は、たとえば、W.B.ブルーメンタール(Blumenthal),「ジルコニウムの化学的挙動」(The Chemical Behavior of Zirconium)、311−338頁、D.バン・ノストランド・カンパニー(D.Van Nostrand Company)、ニュージャージー州プリンストン(Princeton,NJ)(1958年)に記載されている。17重量パーセントまでのジルコニウム、18重量パーセントまでのジルコニウム、20重量パーセントまでのジルコニウム、または22重量パーセントまでのジルコニウムを含有する好適な酢酸ジルコニウム水溶液が、たとえば、マグネシウム・エレクトロン・インコーポレイテッド(Magnesium Elektron,Inc.)(ニュージャージー州フレミントン(Flemington,NJ))より市販されている。
【0113】
ある前駆体溶液は、ジルコニウム塩以外にイットリウム塩も含有する。ジルコニウム塩と同様に、イットリウム塩の陰イオンは、通常、引き続く処理ステップ中に除去可能であり、非腐食性となるように選択される。イットリウム塩の陰イオンは、多くの場合、4個以下の炭素原子を有するカルボキシレートである。たとえば、この陰イオンは、アセテートであってよい。イットリウム塩は、多くの場合、ジルコニウム1グラム当たり0.12グラムまでのイットリウム、ジルコニウム1グラム当たり0.10グラムまでのイットリウム、ジルコニウム1グラム当たり0.08グラムまでのイットリウム、ジルコニウム1グラム当たり0.06グラムまでのイットリウム、またはジルコニウム1グラム当たり0.04グラムまでのイットリウムの量で存在する。
【0114】
通常、前駆体溶液の液相は、大部分が水である。しかし、液相の重量を基準にして20重量パーセントまでの量で、他の混和性共溶媒を液相中に含めることもできる。好適な共溶媒としては、1−メトキシ−2−プロパノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、N,N−ジメチルアセトアミド、およびN−メチルピロリドンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0115】
ある実施形態においては、第1の供給材料は、ジルコニウム塩と、場合によりイットリウム塩とを含む水性前駆体溶液を形成するステップと、次に、前駆体溶液中の陰イオンの少なくとも一部を除去するステップとによって調製される。陰イオンの一部を除去するためには、当技術分野において周知のあらゆる好適な方法を使用することができる。除去方法としては、蒸発、透析、イオン交換、沈殿、濾過などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ある除去方法においては、陰イオンは酸として除去される。理論によって束縛しようと望むものではないが、前駆体溶液中の陰イオンを部分的に除去することによって、引き続く1つ以上の熱水処理ステップ中に集塊体および凝集体が形成するのを軽減することができる。
【0116】
前駆体溶液中の陰イオンを少なくとも部分的に除去する方法の1つでは、陰イオンの酸性形態を蒸発させるために、前駆体溶液を加熱することができる。たとえば、4個以下の炭素原子を有するカルボキシレート陰イオンは、対応するカルボン酸として除去することができる。より具体的に言うと、アセテート陰イオンは酢酸として除去することができる。この加熱によって、カルボン酸のほかに前駆体溶液の液相(たとえば水性媒体)も少なくとも部分的に除去することができる。液相が部分的に除去されることによって、濃縮前駆体が形成される。ある方法においては、固形分を、25重量パーセントまで、50重量パーセントまで、75重量パーセントまで、または100重量パーセントまで増加させることができる。濃縮前駆体は、多くの場合、少なくとも10重量パーセントのジルコニウム、少なくとも15重量パーセントのジルコニウム、少なくとも20重量パーセントのジルコニウム、少なくとも25重量パーセントのジルコニウム、少なくとも30重量パーセントのジルコニウム、少なくとも35重量パーセントのジルコニウム、または少なくとも40重量パーセントのジルコニウムを含有する。たとえば、濃縮前駆体は、11〜43重量パーセントのジルコニウム、または21〜43重量パーセントのジルコニウムを含有することができる。
【0117】
濃縮前駆体を形成するための液相のすべてまたは一部の除去は、第1の熱水処理の前に再配置することができる。濃縮前駆体を水(たとえば、脱イオン水)で希釈することで、第1の供給材料を得ることができる。この第1の供給材料は、前駆体溶液の固形分よりも低い固形分、前駆体溶液の固形分に等しい固形分、または前駆体溶液の固形分よりも高い固形分を有することができる。
【0118】
第1の供給材料は、通常、0.5〜20重量パーセントまたは2〜15重量パーセントの範囲内の固形分を有する。第1の供給材料は、多くの場合、少なくとも0.2重量パーセントのジルコニウム、少なくとも0.5重量パーセントのジルコニウム、少なくとも1重量パーセントのジルコニウム、または少なくとも2重量パーセントのジルコニウムを含有する。ある実施形態においては、第1の供給材料は、6重量パーセントまでのジルコニウム、8重量パーセントまでのジルコニウム、または9重量パーセントまでのジルコニウムを含有する。たとえば、第1の供給材料は、多くの場合、0.2〜9重量パーセントのジルコニウムまたは1〜6重量パーセントのジルコニウムを含有する。
【0119】
第1の供給材料のpHは、通常、酸性範囲内である。たとえば、このpHは、通常、6未満、5未満、4未満、または3未満である。
【0120】
第1の供給材料に対しては、第1の熱水処理が行われる。第1の供給材料中のジルコニウム種は、部分加水分解が起こって、ジルコニウム含有中間体および副生成物が形成される。同様に、第1の供給材料中に場合により存在するイットリウム塩も部分加水分解が起こる。陰イオンがカルボキシレートである場合には、酸性副生成物を放出することによって、この加水分解反応が終了することが多い。たとえば、陰イオンがホルメート、アセテート、プロピオネート、またはブチレートである場合、対応する酸(すなわち、それぞれギ酸、酢酸、プロピオン酸、または酪酸)が加水分解反応中に放出されうる。
【0121】
熱水処理は、バッチ反応器中または連続反応器中で行うことができる。バッチ反応器よりも連続反応器の方が、滞留時間は通常短くなり、温度は通常高くなる。熱水処理の時間は、反応器の温度、および供給材料の濃度に依存して変動しうる。反応器内の圧力は、自発圧力(すなわち、反応器温度における水の蒸気圧)の場合もあるし、液圧(すなわち、ある制限に対して流体を圧送することによって生じる圧力)の場合もあるし、窒素またはアルゴンなどの不活性ガスを加えることによって得られる場合もある。好適なバッチ熱水反応器は、たとえば、パール・インストルメンツ・カンパニー(Parr Instruments Co.)(イリノイ州モリーン(Moline,IL))より入手可能である。好適な連続熱水反応器は、たとえば、米国特許第5,453,262号明細書(ドーソン(Dawson)ら)および第5,652,192号明細書(マトソン(Matson)ら);アジリ(Adschiri)ら,J.Am.Ceram.Soc.,75、1019−1022(1992年);ならびにドーソン(Dawson)、Ceramic Bulletin,67(10)、1673−1678(1988年)に記載されている。
【0122】
ある方法では、少なくとも1つの熱水処理が連続反応器中で行われる。たとえば、第1の熱水処理を連続反応器中で行うことができるが、第2の熱水処理はバッチ反応器中で行われる。別の例では、第1の熱水処理はバッチ反応器中で行うことができるが、第2の熱水処理は連続反応器中で行われる。さらに別の例では、第1および第2の熱水処理の両方が連続反応器中で行われる。
【0123】
第1の熱水処理は、バッチ反応器中、150℃〜300℃の範囲内、155℃〜250℃の範囲内、または160℃〜200℃の範囲内の温度で行うことができる。バッチ反応器中のある第1の熱水処理では、反応器が所望の温度まで加熱され、直後に冷却される。たとえば、所望の温度に到達するまでに約1時間を要する場合がある。バッチ反応器中の別の第1の熱水処理では、反応温度は、少なくとも0.5時間、少なくとも0.75時間、少なくとも1時間、または少なくとも2時間の間維持される。バッチ反応器中の反応温度における時間は、3時間まで、3.5時間まで、4時間まで、5時間まで、6時間まで、または8時間までとすることができる。たとえば、反応温度が維持される時間を、0.25〜8時間、0.5〜6時間、または0.75〜3.5時間とすることができる。
【0124】
あるいは、第1の熱水処理は、連続反応器中、温度150℃〜300℃の範囲内、160℃〜250℃の範囲内、170℃〜220℃の範囲内、または180℃〜215℃の範囲内の温度で、少なくとも1分間行うことができる。ある連続反応器では、滞留時間は、少なくとも2分、少なくとも3分、少なくとも3.5分、または少なくとも4分である。連続反応器中の滞留時間は、8分まで、10分まで、12分まで、15分まで、または20分までとすることができる。たとえば、連続反応器中の滞留時間を1〜20分、2〜15分、または3〜10分とすることができる。
【0125】
第1の供給材料中のジルコニウム塩と、場合によりイットリウム塩とは、第1の熱水処理中に部分加水分解のみが起こる。第1の熱水処理の生成物は、ジルコニウム含有中間体と、種々の副生成物とを液相中に含む。場合によりイットリウム塩が第1の供給材料中に含まれる場合、ジルコニウム含有中間体はイットリウムも含有する。ジルコニウム含有中間体は、部分的にのみ加水分解しており、結晶ジルコニアではない。ジルコニウム含有中間体は、X線回折分析によると実質的に非晶質である。すなわち、ジルコニウム含有中間体のX線回折パターンは、結晶材料を示す比較的狭いピークではなく、広いピークを有する傾向にある。
【0126】
パーセント転化率(すなわち、加水分解の程度)は、熱重量分析(TGA)などを使用して計算することができる。このパーセント転化率の計算方法は、第1の供給材料中のカルボキシレート陰イオンが、ポリエーテルカルボキシレートを有さない場合、4つを超える炭素原子を有するカルボキシレートを有さない場合、またはそれらの組み合わせの場合に、特に好適である。ジルコニウム含有中間体のパーセント転化率は次式によって求めることができ
【0127】
%転化率=100(A−B)/(A−C)
【0128】
式中、Aは第1の供給材料のパーセント重量減であり、Bはジルコニウム含有中間体のパーセント重量減であり、Cはジルコニアゾルのパーセント重量減である。第1の供給材料、中間体、およびジルコニアゾルのパーセント重量減は、分析前に各試料を120℃で30分間乾燥させることによって求められる。熱重量分析装置中で85℃で平衡にした後、各試料を20℃/分の速度で200℃まで加熱する。温度は、200℃で20分間維持し、20℃/分の速度で900℃まで上昇させ、900℃で20分間維持する。第1の供給材料、ジルコニウム含有中間体、およびジルコニアゾルのパーセント重量減は、次式によって計算することができる。
【0129】
%重量減=100(重量200C−重量900C)/重量900C
【0130】
このパーセント重量減は、各乾燥試料中の無機酸化物以外のものに対応している。
【0131】
ジルコニウム含有中間体のパーセント転化率は、通常40〜75パーセントである。ある方法では、ジルコニウム含有中間体のパーセント転化率は45〜70パーセント、50〜70パーセント、55〜70パーセント、または55〜65パーセントである。パーセント転化率は、第1の熱水処理に適した条件を選択するために使用することができる。
【0132】
第1の熱水処理中の加水分解反応が進行して、約75パーセントを超えるパーセント転化率のジルコニウム含有中間体が生成される場合、最終的なジルコニアゾルは、非会合のジルコニア一次粒子ではなく、会合(たとえば凝集および/または集塊)したジルコニア一次粒子を含有する傾向にある。理論によって束縛しようと望むものではないが、反応過程中に加水分解反応の副生成物の少なくとも一部を除去すると好都合となる。したがって、第1の供給材料に対して第1の熱水処理を行い、副生成物の一部を除去した後で第2の熱水処理を行うと好都合である。
【0133】
第2の熱水処理が行われる材料である第2の供給材料は、第1の熱水処理の生成物から調製される。通常、第2の供給材料の調製は、第1の熱水処理中に生成された副生成物の少なくとも一部を除去することを伴う。ジルコニウム塩と、場合によりイットリウム塩との陰イオンから形成されうる酸が、第1の熱水処理の副生成物の1つとなることが多い。この酸性副生成物が、4個以下の炭素原子を有するカルボン酸である場合、この酸は蒸発、透析、イオン交換、沈殿、濾過などの種々の方法によって除去することができる。
【0134】
第1の熱水処理の副生成物の少なくとも一部を除去することによって、液相(たとえば水性媒体)も少なくとも部分的に除去することができる。すなわち、中間体濃縮物を形成することができる。ある実施形態においては、液相の一部のみが除去される(すなわち、中間体濃縮物は液相を有する)。たとえば、第1の熱水処理の一部の生成物は、液相の一部から分離可能な固相を含有する(たとえば、固相を液相から沈殿させることができる)。液相の少なくとも一部は、吸い上げ、デカンテーション、または遠心分離などの方法によって除去することができる。別の実施形態においては、第1の熱水処理の生成物を乾燥させることで、残留物が形成される(すなわち、中間体濃縮物は液相をほとんどまたは全く有さない)。中間体濃縮物の固形分は、多くの場合10〜100重量パーセントの範囲内である。
【0135】
中間体濃縮物は、通常、少なくとも5重量パーセントのジルコニウム、少なくとも8重量パーセントのジルコニウム、少なくとも10重量パーセントのジルコニウム、少なくとも20重量パーセントのジルコニウム、または少なくとも30重量パーセントのジルコニウムを含有する。中間体濃縮物は、30重量パーセントまでのジルコニウム、40重量パーセントまでのジルコニウム、50重量パーセントまでのジルコニウム、または52重量パーセントまでのジルコニウムを含有することができる。たとえば、中間体濃縮物は、5〜52重量パーセントのジルコニウム、または8〜52重量パーセントのジルコニウムを含有することができる。
【0136】
固形分が50重量パーセント以下である場合に、その中間体濃縮物を第2の供給材料として使用することができる。あるいは、中間体濃縮物を水(たとえば、脱イオン水)で希釈して第2の供給材料を形成することもできる。第2の熱水反応器がバッチ反応器である場合、第2の供給材料は、多くの場合、0.5〜50重量パーセントの固形分、または3〜40重量パーセントの固形分を含有する。第2の熱水反応器が連続反応器である場合、第2の供給材料は、多くの場合、0.5〜25重量パーセントの固形分、または7〜22重量パーセントの固形分を含有する。
【0137】
第2の供給材料は、通常、少なくとも0.3重量パーセントのジルコニウムを含有する。第2の反応器がバッチ反応器である場合、第2の供給材料は、多くの場合、少なくとも0.5重量パーセントのジルコニウム、少なくとも1重量パーセントのジルコニウム、または少なくとも2重量パーセントのジルコニウムを含有する。バッチ反応器用の第2の供給材料は、15重量パーセントまでのジルコニウム、20重量パーセントまでのジルコニウム、21重量パーセントまでのジルコニウム、25重量パーセントまでのジルコニウム、または26重量パーセントまでのジルコニウムを含有することができる。たとえば、バッチ反応器用の第2の供給材料は、0.3〜26重量パーセントのジルコニウム、または2〜21重量パーセントのジルコニウムを含有することができる。第2の反応器が連続反応器である場合、第2の供給材料は、多くの場合、少なくとも1重量パーセントのジルコニウム、少なくとも2重量パーセントのジルコニウム、少なくとも4重量パーセントのジルコニウム、または少なくとも8重量パーセントのジルコニウムを含有する。連続反応器用の第2の供給材料は、多くの場合、11重量パーセントまでのジルコニウム、12重量パーセントまでのジルコニウム、または13重量パーセントまでのジルコニウムを含有する。たとえば、連続反応器用の第2の供給材料は、0.3〜13重量パーセントのジルコニウム、または8〜11重量パーセントのジルコニウムを含有することができる。
【0138】
第2の供給材料のpHは、通常7未満である。たとえば、第2の供給材料は6以下または5以下のpHを有することができる。
【0139】
第2の供給材料に対して第2の熱水処理を行うことで、ジルコニアゾルが形成される。第2の熱水処理にバッチ反応器が使用される場合、反応温度は、多くの場合、150℃〜300℃の範囲内、160℃〜250℃の範囲内、または175℃〜200℃の範囲内であり、時間は少なくとも30分である。あるバッチ反応器では、滞留時間は、少なくとも1時間、少なくとも2時間、または少なくとも4時間である。バッチ反応器中の滞留時間は、8時間まで、10時間まで、12時間まで、14時間まで、16時間まで、18時間まで、または24時間までとすることができる。たとえば、バッチ反応器中の滞留時間を、0.5〜24時間、1〜18時間、または1〜14時間とすることができる。あるいは、第2の熱水処理は、連続反応器中、温度150℃〜300℃の範囲内、160℃〜250℃の範囲内、180℃〜220℃の範囲内、または200℃〜215℃の範囲内の温度で、少なくとも1分間行うことができる。ある連続反応器では、滞留時間は、少なくとも1分、少なくとも2分、少なくとも5分、または少なくとも10分である。連続反応器中の滞留時間は、60分まで、80分まで、90分まで、100分まで、または120分までとすることができる。たとえば、連続反応器中の滞留時間を、1〜120分、5〜100分、または10〜90分とすることができる。
【0140】
第2の熱水処理中、ジルコニウム含有中間体は加水分解がさらに進行する。第2の熱水処理の生成物は、結晶ジルコニア粒子を含有するジルコニアゾルである。このジルコニアゾルを120℃の温度で乾燥させると、通常75〜95重量パーセントの無機酸化物を含有するジルコニア粒子を得ることができる。このジルコニア粒子は、ジルコニア(すなわち、ジルコニア)のほかに酸化イットリウム(すなわち、Y23)を含有することができる。本発明のジルコニア粒子は、ある有機材料を含有することもできる。
【0141】
ある実施形態においては、第2の熱水処理中に形成された副生成物を少なくとも部分的に除去するために、ジルコニアゾルがさらに処理される。この副生成物は、多くの場合、ジルコニウム塩、または場合によりイットリウム塩の陰イオンから形成される酸である。ジルコニアゾル中のジルコニア粒子を有機マトリックスと混合して複合材料を形成する場合には、この酸性副生成物を除去することが望ましいことが多い。たとえば、酸性副生成物は、蒸発、イオン交換、沈殿、または透析によって除去可能なカルボン酸である場合がある。本発明のジルコニアゾルは、多くの場合、0.5〜55重量パーセントの固形分、または2〜51重量パーセントの固形分を含有する。
【0142】
本発明のジルコニアゾルは、通常、少なくとも0.3重量パーセントのジルコニウムを含有する。たとえば、本発明のジルコニアゾルは、少なくとも1重量パーセントのジルコニウム、少なくとも2重量パーセントのジルコニウム、少なくとも5重量パーセントのジルコニウム、または少なくとも10重量パーセントのジルコニウムを含有することができる。本発明のジルコニアゾルは、多くの場合、34重量パーセントまでのジルコニウム、35重量パーセントまでのジルコニウム、または37重量パーセントまでのジルコニウムを含有する。たとえば、本発明のジルコニアゾルは、0.3〜37重量パーセントのジルコニア、0.5〜35重量パーセントのジルコニウム、または1〜34重量パーセントのジルコニウムを含有することができる。
【0143】
本発明のジルコニアゾルの調製方法は、少なくとも2回の熱水処理を含む。ある実施形態においては、3回以上の熱水処理が使用される。各熱水処理の間に、直前の熱水処理で形成された酸性副生成物の少なくとも一部を除去することができる。
【0144】
水相中にジルコニア粒子が分散したジルコニアゾルを調製した後で、ジルコニア粒子の表面改質を行う。この表面改質は、表面改質剤を加えることで表面改質ジルコニア粒子を形成するステップを含む。表面改質ジルコニア粒子のある調製方法においては、表面改質剤の添加の前または後に、水相の少なくとも一部を除去することができる。表面改質ジルコニア粒子を有機マトリックスと混合することで、コーティング組成物が形成される。ある方法においては、有機マトリックスを加える前または後に、水相の少なくとも一部を除去することができる。
【0145】
一般に、表面改質は、単純に表面改質剤をジルコニアゾルに加えることによって行うことができる。場合により、表面改質剤の溶解性、および/または水相中の表面改質ジルコニア粒子の相溶性を高めるために、水混和性共溶媒を使用することができる。好適な共溶媒としては、たとえば、1−メトキシ−2−プロパノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの水混和性有機化合物が挙げられる。共溶媒は、表面改質剤の溶解性、および表面改質粒子の溶解性を高めることができる。
【0146】
表面改質反応は、室温(たとえば20℃〜25℃)または高温(たとえば約95℃まで)において行うことができる。表面改質剤がカルボン酸などの酸である場合、通常ジルコニア粒子は、室温において表面改質できる場合が多い。表面改質剤がシラン類である場合、通常ジルコニア粒子は、高温で表面改質される。
【0147】
表面改質反応は、個別の表面改質剤に依存して、酸性条件下または塩基性条件下で行うことができる。たとえば、シラン類は、酸性条件下でジルコニアゾルとともに加熱することができる。アンモニア水溶液などの塩基を加えることで、ジルコニア粒子を沈殿させることができる。表面改質剤が結合したジルコニア粒子の沈殿したものは、液相から分離(たとえば濾過)することができる。分離されたジルコニア粒子は、次に、水混和性溶媒中に分散させることができる。
【0148】
種々の方法を使用して、本発明のジルコニアゾルを有機マトリックス材料と混合してコーティング組成物を形成することができる。一実施形態においては、溶媒交換手順を使用することができる。溶媒混合手順においては、ジルコニアゾル中のジルコニア粒子が表面改質され、最初に有機マトリックス材料が表面改質ジルコニアゾルに加えられる。場合により、有機マトリックス材料の水への混和性を改善するために、有機マトリックス材料を加える前に、1−メトキシ−2−プロパノールまたはN−メチルピロリドンなどの共溶媒をジルコニアゾルに加えることができる。有機マトリックス材料を加えた後、水、および場合による共溶媒を蒸発によって除去すると、有機マトリックス材料中に分散したジルコニア粒子を残留させることができる。好適な蒸発方法としては、たとえば、蒸留、回転蒸発、オーブン乾燥などが挙げられる。
【0149】
あるいは、コーティング組成物の別の調製方法は、ジルコニアゾルを乾燥させて、ジルコニア粒子粉末を形成するステップと、次に、そのジルコニア粒子を有機マトリックス中に分散させるステップとを含む。ゾル中のジルコニア粒子は、乾燥前に表面改質することができるし、有機マトリックスの存在下で表面改質することもできる。ジルコニアゾルは、オーブン乾燥または噴霧乾燥などの従来手段を使用して、粉末になるまで乾燥することができる。たとえば、ジルコニアゾルは、従来のオーブン中、少なくとも70℃の温度で乾燥させることができる。あるジルコニアゾルは、70℃〜90℃の温度で約2〜4時間乾燥させることができる。
【0150】
コーティング組成物のさらに別の調製方法においては、ジルコニアゾル中のジルコニア粒子を、オレイン酸などの非極性カルボン酸で表面改質する。非極性酸によってジルコニア粒子を表面改質すると、粒子が濾過可能な塊状体になる。次に、これらの表面改質されたジルコニア粒子を、ジルコニアゾルの液相から濾過によって分離し、場合により乾燥させて、有機マトリックス材料と混合することによって、コーティング組成物を形成することができる。
【0151】
コーティング組成物のさらに別の調製方法においては、ジルコニアゾル中のジルコニア粒子を、非極性B基を有する表面改質剤で表面改質する。これらの表面改質されたジルコニア粒子は、たとえば、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、スチレンなどの水非混和性の溶媒またはモノマー中に抽出することができる。次に、抽出した表面改質ジルコニア粒子を、オリゴマー材料、モノマー材料、またはポリマー材料と混合することができる。
【0152】
本発明のコーティング組成物は、表面改質ジルコニア粒子と、重合性組成物とを含む。好適な重合性組成物は前述の通りである。本発明の重合性組成物は、溶媒を含有する場合もあるし、溶媒を含まない場合もある。次に、本発明のコーティング組成物を、複数の稜線部を有する微細複製工具(すなわち、微細複製工具表面が微細構造化されている)に接触させる。このコーティング組成物を重合させると、微細構造化表面を有する光学層が形成される。
【0153】
輝度向上フィルムの光学層の微細構造化表面は、全内部反射フィルムを形成するのに十分な交互に並ぶ一連の先端および溝を有する微細構造化表面など、種々の形態で構成することができる。このような微細構造化表面の一例は、対称的な先端および溝の規則的な繰り返しパターンを有する微細構造化表面である。別の微細構造化表面は、先端および溝が対称ではないパターンを有する。輝度向上フィルムに好適な微細構造の例は、米国特許第5,175,030号明細書(ルー(Lu)ら)、第5,183,597号明細書(ルー(Lu))、第5,771,328号明細書(ワートマン(Wortman)ら)、第5,917,664号明細書(オニール(O’Neill)ら)、第5,919,551号明細書(コブ・ジュニア(Cobb,Jr.)ら)、第6,111,696号明細書(アレン(Allen)ら)、第6,280,063B1号明細書(フォング(Fong)ら)、第6,356,39B1号明細書(ガーディナー(Gardiner)ら)に、より詳細に記載されている。
【0154】
微細構造化光学層は、たとえば、(a)重合性組成物を調製するステップと;(b)この重合性組成物を、ネガの微細構造が形成された表面である微細複製工具上に、微細複製工具の空隙を満たすのにかろうじて十分な量で付着させるステップと;(c)少なくとも一方が可撓性である、あらかじめ形成されたベースと微細複製工具との間に、重合性組成物のビーズを移動させることによって、空隙を満たすステップと;(d)この組成物を硬化させるステップとを含む方法によって形成することができる。微細複製工具は、ニッケル、ニッケルめっきした銅、または真鍮などの金属であってもよいし、あるいは、重合条件下で安定であり、重合した材料を微細複製工具からきれいに除去できる表面エネルギーを好ましくは有する熱可塑性材料であってもよい。本明細書に記載される微細構造形状を形成するのに使用される特定の方法は、米国特許第5,691,846号明細書に記載の方法と類似していてもよい。微細構造化物品は、たとえば、5、10、100、1000メートル、またはそれを超える長さなどのあらゆる望ましい長さで、連続法により形成することができる。
【0155】
調光フィルムの第2の製造方法は、水相中に分散したジルコニア粒子を含有するジルコニアゾルを提供するステップと、ジルコニア粒子の表面を改質して表面改質ジルコニア粒子を形成するステップと、表面改質ジルコニア粒子と有機マトリックスとを含有するコーティング組成物を調製するステップと、このコーティング組成物を微細複製工具に接触させるステップと、コーティング組成物を重合させて、微細構造化表面を有する光学層を形成するステップとを含む。ジルコニア粒子を表面改質する前のジルコニアゾルは、4個以下の炭素原子を含有するカルボン酸を含み、ポリエーテルカルボン酸は実質的に存在しない。ジルコニア粒子は、平均一次粒度が50ナノメートル以下であり、分散指数が1〜5であり、強度平均粒度の体積平均粒度に対する比が3.0以下であり、少なくとも50パーセントが立方晶、正方晶、またはそれらの組み合わせである結晶構造を有する。ジルコニアゾルのある実施形態においては、ジルコニア粒子は、ジルコニア粒子中の無機酸化物の重量を基準にして0.1〜8重量パーセントのイットリウムを含有し、少なくとも70パーセントが立方晶、正方晶、またはそれらの組み合わせである結晶構造を有する。
【0156】
この方法では、前述のように、ジルコニア粒子を表面改質し、コーティング組成物を調製することができる。さらに、微細構造化表面は、前述のように、コーティング組成物を微細複製工具に接触させ、コーティング組成物を重合させることによって形成することができる。結果として得られる調光フィルムは、たとえば、輝度向上フィルム、反射フィルム、回転フィルムなどであってよい。
【0157】
本発明の調光フィルムは、液晶ディスプレイパネルなどのディスプレイと併用することができる。図2中に10で全体的に示されるバックライト付き液晶ディスプレイは、拡散体12と液晶ディスプレイパネル14との間に配置することができる調光フィルム11(たとえば輝度向上フィルム)を含む。バックライト付き液晶ディスプレイは、蛍光灯などの光源16と、液晶ディスプレイパネル14に向けて反射させるために光を移動させるための光ガイド18と、これも液晶ディスプレイパネルに向けて光を反射させるための白色反射板20とを含むこともできる。調光フィルム11は、光ガイド18から発せられる光をコリメートし、それによって液晶ディスプレイパネル14の輝度が増加する。輝度の増加によって、液晶ディスプレイパネルによって形成される画像をより鮮明にすることができ、選択された輝度を得るための光源16の出力を減少させることができる。バックライト付き液晶ディスプレイ中の調光フィルム11は、参照番号21で示される、コンピュータ用ディスプレイ(ラップトップ用ディスプレイおよびコンピュータ用モニタ)、テレビ、ビデオレコーダ、モバイル通信装置、携帯用デバイス(たとえば携帯電話および携帯情報端末(PDA))、自動車および航空電子装置用ディスプレイなどの装置において有用となる。
【0158】
調光フィルム11は、図3に示されるように、プリズム22、24、26、および28で代表されるプリズムの配列を含む。たとえば、プリズム22などの各プリズムは、第1の小面30および第2の小面32を有する。プリズム22、24、26、および28は、プリズムが上に形成される第1の表面36と、実質的に平坦または平面であり第1の表面の反対側にある第2の表面38とを有する本体部分34の上に形成することができる。
【0159】
規則的な直角プリズムが直線状に配列することによって、光学性能と、製造の容易さとの両方を得ることができる。直角プリズムとは、頂点角度θが約90°であるが、約70°〜120°または約80°〜100°の範囲内であってもよいことを意味する。プリズム小面は同一である必要はなく、プリズムは互いに対して傾いていてもよい。さらに、フィルムの厚さ40と、プリズムの高さ42との間の関係は重要ではないが、十分に画定されたプリズム小面を有するより薄いフィルムを使用することが望ましい。小面が突出している場合に小面が表面38と形成することができる角度は45°であってよい。しかし、この角度は、小面のピッチ、または頂点の角度θに依存して変動する。
【0160】
図4〜図10は、調光フィルム(たとえば輝度向上フィルム)の構造の代表的な実施形態を示している。これらの図面は一定の縮尺ではなく、特に、構造化表面のサイズは説明の目的で大きく誇張していることに留意されたい。調光フィルムの構造は、以下に説明する複数の実施形態の組み合わせを含むこともできるし、それらを2つ以上含むこともできる。
【0161】
図4を参照すると、調光フィルムの一実施形態の一部の代表的な断面が示されている。調光フィルム130(たとえば輝度向上フィルム)は、第1の表面132と、実質的に直線状に延在する複数のプリズム要素136を含む反対側の構造化表面134とを含む。各プリズム要素136は、第1の側面138および第2の側面138’を有し、これらの上端部が交差して、プリズム要素136のピークまたは頂点142を画定する。隣接するプリズム要素136の側面138、138’の底端部が交差して、プリズム要素間に直線状に延在する溝144を画定する。図4に示される実施形態においては、プリズム頂点142によって画定される二面角が約90度であるが、しかし、この実施形態およびその他の実施形態の二面角の正確な値は、所望の光学パラメータにより変動しうることを理解されたい。
【0162】
調光フィルム130の構造化表面134は、共通基準面から異なる距離で間隔を開けたピークを有するプリズム要素の複数の交互の区域を有するとして説明することができる。共通基準面は任意に選択することができる。共通基準面の好都合な一例は、第1の表面132を含む面であり、別の例は、構造化表面の最下部の溝の底部によって画定される、破線139で示される面である。図4に示される実施形態において、破線139から測定して、低いプリズム要素は、幅が約50マイクロメートルで、高さが約25マイクロメートルであり、高いプリズム要素は、幅が約50マイクロメートルで、高さが約26マイクロメートルである。高いプリズム要素を含む区域の幅は、約1ミクロン〜300マイクロメートルの間であってよい。低いプリズム要素を含む区域の幅は、重要ではなく、200マイクロメートル〜4000マイクロメートルの間であってよい。特定の実施形態においては、低いプリズム要素の区域は、高いプリズム要素の区域と少なくとも同じ幅であってよい。当業者であれば理解できるように、図4に示される光学層は、単なる例であり、本発明の範囲の限定を意図したものではない。たとえば、プリズム要素の高さまたは幅は、実現可能な限度内で変化させることができる(たとえば、約1ミクロン〜約200マイクロメートルの範囲で正確なプリズムの機械加工が実現可能である)。さらに、所望の光学的効果を実現するために、二面角を変更することができるし、プリズム軸を傾斜させることもできる。
【0163】
第1の区域の幅は、約200〜300マイクロメートル未満にすることができる。通常の観察条件下では、人間の眼が、約200〜300マイクロメートル未満の幅の領域で生じる光強度の小さな変動を解像することは困難である。したがって、第1の区域の幅が約200〜300マイクロメートル未満まで減少すると、この区域内で起こりうるあらゆる光結合は、通常の観察条件下では人間の眼で検出できない。
【0164】
1つ以上のプリズム要素の高さをその直線方向に沿って変動させて、共通基準面上に種々の高さで配置されたピークを有するプリズム要素の部分を含む交互の領域を形成することによって、高さの変動する構造化表面を実現することもできる。
【0165】
図5は、調光フィルムの別の実施形態を示しており、これは、1つの高いプリズム要素156を含む区域によって分離された相対的に低いプリズム要素154の区域を有する構造化表面152を、調光フィルム150(たとえば輝度向上フィルム)が有することを除けば、図4に類似している。図4に示される実施形態によく似ているように、高いプリズム要素は、第2のフィルムシートが構造化表面152に物理的に接近するのを制限しており、それによって、ウェットアウト状態が目に見える可能性が低下する。人間の眼は、光導波路フィルムの小面の高さの変化に敏感であり、高いプリズム要素の比較的幅広の区域が、フィルム表面上に見ることができる線として現れることが分かっている。これは、フィルムの光学性能に実質的な影響を与えることはないが、これらの線は、ある種の商業的環境においては望ましくない場合がある。高いプリズム要素の区域の幅を縮小すると、それに対応して、高いプリズム要素によって生じるフィルム中の線が、人間の眼で検出しにくくなる。
【0166】
図6は、調光フィルム(たとえば輝度向上フィルム)の別の実施形態の代表例であり、これらのプリズム要素は、ほぼ同じ大きさであるが、階段または斜面のパターンで配列している。図6に示される調光フィルム160は、第1の表面162と、実質的に直線状の複数のプリズム要素166を含む反対側の構造化表面164とを含む。各プリズム要素は、互いに反対側の側面168、168’を有し、これらの上端部が交差して、プリズムピーク170を画定している。互いに反対側の側面168、168’によって画定される二面角は約90度である。この実施形態において、最も高いプリズムを第1の区域と見なすことができ、隣接するプリズムを第2の区域と見なすことができる。この場合も、第1の区域を、約200〜300マイクロメートル未満とすることができる。
【0167】
図7は、調光フィルム(たとえば輝度向上フィルム)のさらに別の実施形態を示している。図7に示される調光フィルム180は、第1の表面182と、反対側の構造化表面184とを含む。比較的低いプリズム要素を含む第2の区域が、高さの変動するプリズム要素を含むことを、この調光フィルムの特徴とすることができる。図7に示される構造化表面は、プリズム要素の高さの変動によって生じる光学層表面上の線の、人間の眼による視認性を実質的に低下させるというさらなる利点を有する。
【0168】
図8は、ソフトカットオフを得るための調光フィルム(たとえば輝度向上フィルム)の別の実施形態を示している。図8は、全体的に240で示される調光フィルムを示している。調光フィルム240は、ベース層242と、微細構造化光学層244とを含む。ベース層242の外面は平坦であることが好ましいが、複数の構造を有することもできる。さらに、別の基材を使用することもできる。
【0169】
微細構造化光学層244は、その上に形成されたプリズム246、248、および250などの複数のプリズムを有する。プリズム246、248、および250は、それぞれピーク252、254、および256を有する。ピーク252、254、および256のすべては好ましくは90度のピーク角度またはプリズム角度を有するが、60度〜120度の範囲内の角度が含まれる。プリズム246と248との間には谷258が存在する。プリズム248と250との間には谷260が存在する。谷258は、プリズム246に関連していると見なすことができ、谷の角度が70度であり、谷260は、プリズム248に関連していると見なすことができ、谷の角度が110度であるが、他の値を使用することもできる。輝度向上フィルム240は、従来技術の輝度向上フィルムと同様に一部の光を反射して再循環させ、残りの光を屈折させるが、互い違いの方向にプリズムが傾いていることによって、バックライトの見かけの軸上輝度を効果的に増加させる。プリズムの傾きによる効果は、出力光円錐の大きさを増加させることである。
【0170】
図9は、丸みを帯びたプリズム頂点を有する調光フィルム(たとえば輝度向上フィルム)の別の実施形態を示している。調光フィルム330は、光学層と一体的に形成された可撓性ベース層332を特徴とする。この調光フィルムは、1組の互いに反対側の表面334、336を有し、これらの両方がベース層332と一体的に形成されている。表面334は、一連の突出する光拡散要素338を特徴とする。これらの要素は、層332と同じ材料でできた表面内の「バンプ」の形態であってよい。表面336は、ベース層332と一体的に形成された、とがっていない、すなわち丸みを帯びたピーク340を有する直線状プリズムの配列を特徴とする。これらのピークは、弦幅342と、断面ピッチ幅344と、曲率半径346と、根元角348とを特徴とし、弦幅は、断面ピッチ幅の約20〜40%に等しくなり、曲率半径は、断面ピッチ幅の約20〜50%に等しくなる。根元角は、約70〜110度の範囲内、または約85〜95度の範囲内であり、根元角が約90度であることが好ましい。この配列内のプリズムの配置は、所望の光学性能が最大化されるように選択される。
【0171】
丸みを帯びたプリズム頂点の微細構造化物品(たとえば調光フィルム)は、通常、利得の減少が問題となる。しかし、本発明の高屈折率表面改質コロイドナノ粒子を加えることによって、丸みを帯びたプリズム頂点の微細構造化物品の利得の減少を相殺することができる。
【0172】
図10は、平坦または平面状のプリズム頂点を有する調光フィルム(たとえば輝度向上フィルム)の別の実施形態を示している。調光フィルム430は、光学層と一体的に形成された可撓性ベース層432を特徴とする。この輝度向上フィルムは、1組の互いに反対側の表面434、436を有し、これらの両方がベース層432と一体的に形成されている。表面434は、一連の突出する光拡散要素438を特徴とする。これらの要素は、層432と同じ材料でできた表面内の「平坦なバンプ」の形態であってよい。表面436は、ベース層432と一体的に形成された平坦または平面状のピーク440を有する直線状プリズムの配列を特徴とする。これらのピークは、平坦な幅442と断面ピッチ幅444とを特徴とし、この平坦な幅は断面ピッチ幅の約0〜30%にすることができる。
【0173】
光ガイドから光を抽出する別の方法は、減衰全内部反射(TIR)を使用することである。ある種類の減衰TIRでは、光ガイドはくさび形であり、光ガイドの厚い端部上に入射する光線は、光ガイドの上面および底面に対して臨界角になるまで全内部反射する。これらの臨界角となる前の光線は、次に、出力面に対して視射角で抽出される、またはより簡潔には光ガイドから屈折する。ディスプレイ装置の照明において有用となるためには、次に、ディスプレイ装置の観察軸または出力軸に対して実質的に平行になるように、これらの光線が進路変更する必要がある。通常、この進路変更は、回転レンズまたは回転フィルムを使用して行われる。
【0174】
図11〜図13は、回転フィルムを含む照明装置を示している。耐久性の回転フィルムを形成するために、回転フィルムは、本明細書に開示される本発明の材料を含むことができる。回転レンズまたは回転フィルムは、通常、入力面上に形成されたプリズム構造を含み、この入力面は光ガイドに隣接して配置される。通常は出力面に対して30度未満である視射角で光ガイドを出る光線は、このプリズム構造に当たる。回転レンズまたはフィルムによって、ディスプレイの観察軸に対して実質的に平行な方向などの所望の方向に光線が向けられるように、これらの光線は、プリズム構造の第1の表面によって屈折し、プリズム構造の第2の表面によって反射する。
【0175】
図11を参照すると、照明システム510は、光結合した、光源512と;光源反射体514と;出力面518、裏面520、入力面521、および端面522を有する光ガイド516と;裏面520に隣接する反射体524と;入力面528および出力面530を有する第1の光方向転換要素526と;第2の光方向転換要素532と;反射型偏光子534とを含む。光ガイド516は、くさび形またはその変形であってよい。よく知られているように、光ガイドの目的は、光源512よりもはるかに広い領域にわたって、より具体的には、出力面518によって形成される領域の実質的に全体にわたって、光源512からの光を均一に分散させることである。光ガイド516は、小型で薄いパッケージ内でこれらの役割を果たすことがさらに好ましい。
【0176】
光源512は、光ガイド516の入力面521に端部結合したCCFLであってよく、ランプ反射体514は、ランプの空隙を形成しながら光源512の周囲に巻き付けられる反射フィルムであってよい。反射体524は光ガイド516を裏打ちしており、効率的な後方反射体、たとえば、ランベルト面または鏡面フィルム、あるいはそれらの組み合わせであってよい。
【0177】
端部結合した光は、TIRによって閉じ込められて、入力面521から端面522に向けて伝播する。TIRが減衰することによって、光ガイド516から光が抽出される。光ガイド516内に閉じ込められた光線は、くさび角度のために、それぞれTIRによるはね返りを起こしながら上部および底部の壁の面に対する入射角が増加していく。したがって、最終的には、TIRによって閉じ込められなくなるため、光は、出力面518および裏面520のそれぞれから屈折して出てくる。裏面520から屈折して出てきた光は、反射体524によって鏡面反射または拡散反射のいずれかが起こって光ガイド516に戻り、大部分は光ガイド516を透過する。第1の光方向転換要素526は、好ましい観察方向と実質的に平行な方向に沿って、出力面518を出た光線を方向転換させるように配列されている。好ましい観察方向は、出力面518に垂直な方向であってよいが、より典型的には出力面518に対してある角度で存在する。
【0178】
図12に示されるように、第1の光方向転換要素526は光透過性調光フィルムであり、その出力面530は実質的に平面状であり、入力面528にはプリズム538、540、および542の配列536が形成されている。第2の光方向転換要素532も光透過性フィルムであってよく、たとえば、3Mの輝度向上フィルム(Brightness Enhancement Film)製品(ミネソタ州セントポールの3Mカンパニー(3M Company,St.Paul,MN)より商品名「BEFIII」で販売される)などの輝度向上フィルムであってよい。反射型偏光子534は、無機、ポリマー、コレステリック液晶の反射型偏光子またはフィルムであってよい。好適なフィルムは、3Mの拡散反射型偏光フィルム(Diffuse Reflective Polarizer film)製品(3Mカンパニー(3M Company)より商品名「DRPF」で販売される)または鏡面反射型偏光子フィルム(Specular Reflective Polarizer film)製品(3Mカンパニー(3M Company)より商品名「DBEF」で販売される)である。
【0179】
配列536内で、プリズム538、540、および542のそれぞれは、それぞれの隣接するプリズムと比較して異なる側面角度で形成することができる。すなわち、プリズム540は、プリズム538(角度AおよびB)、およびプリズム542(角度EおよびF)とは異なる側面角度(角度CおよびD)で形成することができる。図示されているように、プリズム538は角度AおよびBの合計に等しいプリズム角度、すなわち夾角を有する。同様に、プリズム540は角度CおよびDの合計に等しいプリズム角度を有し、プリズム542は角度EおよびFの合計に等しいプリズム角度を有する。配列536は、異なるプリズム角度に基づく3つの異なるプリズム構造を含むとして示されているが、実質的にあらゆる数の異なるプリズムを使用できることを理解されたい。
【0180】
プリズム538、540、および542は、同じプリズム角度を有するが、プリズムの方向が異なるように形成することもできる。図12中、プリズム538に対してプリズム軸「l」が示されている。プリズム軸lは、プリズム538に関して示されているように、出力面530に対して垂直に配置することができるし、あるいは、プリズム540および542に関してそれぞれ架空の軸「l+」および「l-」で示されるように、光源に向かう方向または離れる方向で出力面に対してある角度で配置することもできる。
【0181】
プリズム538、540、および542は、図12に示されるように配列536内でプリズムの規則的な繰り返しパターンまたは集団543で配列することができ、配列536は類似のプリズムが類似のプリズムに隣接するようには示されていないが、そのような構成を使用することもできる。さらに、配列536内で、プリズム538、540、および542は、プリズム構成538などの第1のプリズム構成から、プリズム構成540などの第2のプリズム構成などに連続的に変化させることもできる。たとえば、プリズム構成は、第1のプリズム構成から第2のプリズム構成に、ある変化度で変化することができる。あるいは、プリズムは、図12に示される構造と類似して、段階的に変化することもできる。各集団543内で、プリズムは、空間リップル周波数より小さくなるように選択されたプリズムピッチを有する。同様に、集団としても、規則的な集団のピッチを有することができる。プリズム配列は図12に示されるように対称である場合もあるし、プリズム配列は非対称である場合もある。
【0182】
図12に示される配列536は、対称の構成を有するプリズムを有するが、図13に示されるような光方向転換要素526’中に形成された配列536’などのプリズム配列を使用することもできる。次に図13を参照すると、配列536’中、プリズム538’はたとえば、角度B’とは等しくない角度A’を有する。同様に、プリズム540’および542’の場合、角度C’は、角度A’とも角度D’とも等しくなく、角度E’は、角度A’、角度C’、および角度F’のいずれとも等しくない。配列536’は、所定の角度を有する1つのダイヤモンド切削工具を使用し、その工具を傾けることによって、異なるプリズム角度を有し対称の突出プリズムをそれぞれ切削することによって、好都合に形成することができる。しかし、1つの切削工具を使用すると、これらのプリズム角度は同じになる、すなわち、A+B=C+D=E+Fとなることを理解されたい。
【0183】
配列536内にわずか2つの異なるプリズム構成を使用し配置できることも考慮されるが、光ガイド516からの出力特性を修正するために必要な種類のプリズムサイズを使用することができる。プリズム側面角度を変動させる目的の1つは、第1の光方向転換要素526での変動する屈折量を拡大し付与することである。プリズム538、540、および542の構成のばらつきは、光ガイドの入力アパーチャのサンプリングを実質的に均一にする機能を果たし、それによって、光ガイド516から抽出された光の不均一性が最小限となる。全体的な結果として、特に光ガイド516の入口端521付近におけるリップル効果が効率的に最小限となる。
【0184】
本発明は、本明細書に記載される特定の例に限定されると見なすべきではなく、むしろ、添付の特許請求の範囲に公正に記載される本発明のすべての態様を含むものと理解すべきである。本発明が適用可能な種々の変更、等価の方法、および多数の構造は、本明細書を検討することによって、本発明が関連する当業者には明らかとなるであろう。
【実施例】
【0185】
試験方法
光子相関分光法(PCS)
体積平均粒度は、マルバーン・シリーズ4700粒度分析装置(Malvern Series 4700 particle size analyzer)(マサチューセッツ州サウスボロのマルバーン・インストルメンツ・インコーポレイテッド(Malvern Instruments Inc.,Southborough,MA)より入手可能)を使用して光子相関分光法(PCS)によって求めた。希釈したジルコニアゾル試料を、シリンジで加えられる圧力を使用して0.2μmフィルタで濾過して、ガラスキュベット内に入れた後、ふたをした。データ収集を開始する前に、試料チャンバーの温度を25℃で平衡化させた。提供されたソフトウェアを使用して、90度の角度でCONTIN解析を行った。CONTINは、一般的な逆変換問題を解析するための数学的方法として広く使用されており、S.W.プロベンチャー(Provencher)、Comput.Phys.Commun.,27、229(1982年)により詳細に記載されている。この解析は、24データビンを使用して行った。以下の値を計算に使用した:水の屈折率は1.333であり、水の粘度は0.890センチポアズであり、ジルコニア粒子の屈折率は1.9である。
【0186】
PCSデータに基づいて、2つの粒度測定について計算した。ナノメートルの単位で報告される強度平均粒度は、散乱光強度分布の平均値に対応する粒度に等しい。散乱光強度は粒径の6乗に比例する。ナノメートルの単位で同様に報告される体積平均粒度は、ジルコニア粒子の屈折率と分散媒体(すなわち水)の屈折率との両方を考慮して散乱光強度分布から計算される体積分布から誘導される。体積平均粒度は、体積分布の平均に対応する粒度に等しい。
【0187】
強度平均粒度を体積平均粒度で割ることによって、粒度分布の指標となる比を得た。
【0188】
結晶構造およびサイズ(XRD分析)
メノウ製乳鉢および乳棒を使用して手で粉砕することによって、乾燥ジルコニア試料の粒度を小さくした。両面テープの断片を接着した顕微鏡用スライドガラスの上に、多めの量の試料をスパチュラで載せた。スパチュラの刃の部分を使用して試料をテープに押し付けることによって、試料を接着剤中に押し込んだ。スパチュラの刃の端部で試料領域をこすることによって過剰の試料を取り除くと、接着剤に接着した粒子の薄い層が残った。こすった後に残った弱く接着した試料は、硬い表面に顕微鏡スライドを強くたたきつけることで除去した。同様の方法で、コランダム(リンデ(Linde)1.0μmアルミナ研磨粉末、ロット番号(Lot Number)C062、インディアナ州インディアナポリスのユニオン・カーバイド(Union Carbide,Indianapolis,IN))を用意し、計測の広がり(instrumental broadening)に関して回折計を較正するために使用した。
【0189】
反射配置、銅Kα放射線、および散乱放射線の比例検出レジストリを有するフィリップス(Philips)垂直回折計を使用して、X線回折スキャンを行った。この回折計には、可変ビームスリット、固定回折ビームスリット、およびグラファイト回折ビームモノクロメーターを取り付けた。0.04度の刻み幅および8秒の滞留時間を使用して、25〜55度の2シータ(2θ)から調査スキャンを行った。45kVおよび35mAのX線発生器設定を使用した。数回の個別のコランダムのマウントについて3つの別々の領域で、コランダム標準物質のデータ収集を行った。薄層試料マウントの3つの別々の領域でデータ収集を行った。
【0190】
観察した回折ピークは、回折データ国際センター(International Center for Diffraction Data)(ICDD)粉末回折データベース(セット1〜47、ICDD、ペンシルバニア州ニュートンスクエア(Newton Square,PA))に含まれる基準回折パターンと比較することで同定し、立方晶/正方晶(C/T)または単斜晶(M)のいずれの形態のジルコニアであるかを決定した。立方相(111)ピークおよび正方相の(101)ピークは、これらの相を合わせたものが報告されているため、分離することができなかった。各ジルコニア形態の量は、相対基準によって評価し、最も大きい回折ピークを有するジルコニアの形態を相対強度値100とした。残りの結晶ジルコニアの形態の最も強い線は、上記の最も大きい線を基準にしてスケール変更して、1〜100の間の値を与えた。
【0191】
コランダムにより観察された最大回折のピーク幅は、プロファイルフィッティングによって求めた。平均コランダムピーク幅とコランダムピーク位置(2θ)との間の関係を、これらのデータの多項フィッティングによって求めることで、コランダムの試験範囲内のあらゆるピーク位置における計測幅(instrumental breadth)を評価するために使用される連続関数を得た。ジルコニアにより観察された最大回折のピーク幅は、観察された回折ピークのプロファイルフィッティングによって求めた。存在することが分かったジルコニア相に依存して、以下のピーク幅を求めた:
立方晶/正方晶の(C/T):(1 1 1)
単斜晶(M):(−1 1 1)、および(1 1 1)
α1およびKα2の波長成分を有するピアソン(Pearson)VII型ピーク形状モデルで説明され、すべての場合で線形バックグラウンドモデルを使用した。幅は、度の単位を有するピーク半値全幅(FWHM)であることが分かった。プロファイルフィッティングは、JADE回折ソフトウェアスイートの機能を使用することによって行った。試料ピーク幅は、同じ薄層試料マウントについて得られた3つの別々のデータ収集について評価した。
【0192】
コランダムの計器較正およびラジアンの単位に変換した補正ピーク幅から得た計測幅値を補間することによって、試料ピークの計測の広がりを補正した。シェラー(Scherrer)の式を使用して一次結晶サイズを計算した。
【0193】
微結晶サイズ(D)=Kλ/β(cosθ)
【0194】
上記シェラー(Scherrer)の式において、
K=形状因子(この場合0.9);
λ=波長(1.540598Å);
β=計測の広がりを補正した後の計算ピーク幅(単位ラジアン)=[計算ピークFWHM−計測幅](単位をラジアンに変換)であり、式中のFWHMは半値全幅であり;
θ=1/2ピーク位置(散乱角度)である。
【0195】
立方晶/正方晶微結晶サイズは、(1 1 1)ピークを使用した3回の測定の平均として求めた。
【0196】
立方晶/正方晶の平均微結晶サイズ=
[D(1 1 1)area1+D(1 1 1)area2+D(1 1 1)area3]/3
【0197】
単斜晶微結晶サイズは、(−1 1 1)ピークを使用した3回の測定および(1 1 1)ピークを使用した3回の測定の平均として求めた。
【0198】
単斜晶平均微結晶サイズ=
[D(−1 1 1)area1+D(−1 1 1)area2+D(−1 1 1)area3
D(1 1 1)area1+D(1 1 1)area2+D(1 1 1)area3]/6
【0199】
立方相/正方相(C/T)および単斜相(M)の加重平均を計算した。
【0200】
加重平均=[(%C/T)(C/Tサイズ)+(%M)(Mサイズ)]/100
【0201】
この式中、
%C/T=ジルコニア粒子の立方晶および正方晶微結晶含有物が寄与するパーセント結晶度;
C/Tサイズ=立方晶および正方晶微結晶のサイズ;
%M=ジルコニア粒子の単斜晶微結晶含有物が寄与するパーセント結晶度;
Mサイズ=単斜晶微結晶のサイズ。
【0202】
分散指数
分散指数は、PCSによって測定した体積平均サイズをXRDによって測定した加重平均微結晶サイズで割った値に等しい。
【0203】
重量パーセント固形分
重量パーセント固形分は、3〜6グラムの試料を120℃で30分間乾燥させることによって求めた。パーセント固形分は、湿潤時試料重量(すなわち、乾燥前の重量、重量wet)および、乾燥試料の重量(すなわち、乾燥後の重量、重量dry)から、次式を使用して計算することができる。
重量%固形分=100(重量dry)/重量wet
【0204】
熱重量分析(TGA)
ジルコニウム含有中間体のパーセント転化率および重量パーセント無機酸化物は、TAインストルメンツ(TA Instruments)(デラウェア州ニューキャッスル(New Castle,DE))のモデル(Model)2950 TGAを使用した熱重量分析によって求めた。
【0205】
ジルコニウム含有中間体のパーセント転化率を求めるために、最初に、試料(たとえば3〜6グラム)をオーブン中120℃で30分間加熱することによって乾燥させた。乾燥した試料(たとえば30〜60mg)をTGA中で85℃で平衡化させた。次に温度を20℃/分の速度で200℃まで上昇させ、200℃で20分間維持し、20℃/分で900℃まで上昇させ、900℃で20分間維持した。有機材料は200℃〜900℃の間で揮発し、ZrO2およびY23などの無機酸化物のみが残留した。次式を使用してパーセント重量減を計算した。
【0206】
%重量減=100(%重量200C−%重量900C)/%重量900C
【0207】
%重量200Cは、200℃における試料の重量(重量200C)と、分析に使用される乾燥試料(たとえば、分析前に120℃で乾燥させた試料)の重量(重量dry)とから計算した。
【0208】
%重量200C=100(重量200C)/重量dry
【0209】
%重量900Cは、900℃における試料の重量(重量900C)と、分析に使用される乾燥試料(たとえば、分析前に120℃で乾燥させた試料)の重量(重量dry)とから計算した。
【0210】
%重量900C=100(重量900C)/重量dry
【0211】
ジルコニウム含有中間体のパーセント転化率は次式によって求められ
【0212】
%転化率=100(A−B)/(A−C)
【0213】
式中、Aは第1の供給材料のパーセント重量減であり、Bはジルコニウム含有中間体のパーセント重量減であり、Cはジルコニアゾルのパーセント重量減である。
【0214】
重量パーセント無機酸化物は、重量パーセント固形分と、900℃における重量パーセント酸化物とから計算した。すなわち、重量パーセント無機酸化物は、次式を使用して計算することができる。
【0215】
重量%無機酸化物=(重量%固形分)(%重量900C)/100
【0216】
屈折率
屈折率は、ミルトン・ロイ・カンパニー(Milton Roy Co.)(ペンシルバニア州アイビーランド(Ivyland,PA))より市販されているアッベ(Abbe)屈折計を使用して測定した。
【0217】
用語解説
特に明記しない限り、すべての化学試薬は、ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,WI)より入手したもの、または入手可能なものである。
本明細書において使用される場合、
【0218】
「SR−351」または「TMPA」は、ペンシルバニア州エクストンのサートマー・カンパニー・インコーポレイテッド(Sartomer Co.,Inc.,Exton,PA)より入手したトリメチロールプロパントリアクリレートを意味し;
【0219】
「BR−31」は、京都の第一工業製薬(Dai−Ichi Kogyo Seiyaku Co.,Ltd.)より入手したアクリル酸トリブロモフェノキシエチルを意味し;
【0220】
「SR−339」は、ペンシルバニア州エクストンのサートマー・カンパニー・インコーポレイテッド(Sartomer Co.,Inc.,Exton,PA)より入手したアクリル酸フェノキシエチルを意味し;
【0221】
「シルクエスト(SILQUEST)A−174」は、ウエストバージニア州サウスチャールストンのOSiスペシャルティーズ・ノース・アメリカ(OSi Specialties North America,South Charleston,WV)より入手したメタクリル酸トリメトキシシリルプロピルを意味し;
【0222】
「シルクエスト(SILQUEST)A−1230」は、ウエストバージニア州サウスチャールストンのOSiスペシャルティーズ・ノース・アメリカ(OSi Specialties North America,South Charleston,WV)より入手した独自開発のシランを意味し;
【0223】
「SR−238」は、ペンシルバニア州エクストンのサートマー・カンパニー・インコーポレイテッド(Sartomer Co.,Inc.,Exton,PA)より入手したヘキサンジオールジアクリレートを意味し;
【0224】
「BCEA」は、ジョージア州スマーナのサイテック・サーフェス・スペシャルティーズ(Cytec Surface Specialties,Smyrna,GA)より入手したアクリル酸β−カルボキシエチルを意味し;
【0225】
「NOEA」は、米国特許第6,541,591号明細書に記載されるように調製したアクリル酸1−ナフタロキシエチルを意味し;
【0226】
「NSEA」は、本願と同一の譲受人に譲渡された同時係属中の米国特許出願第11/026573号明細書に記載されるように調製したアクリル酸2−ナフタルチオエチルを意味し;
【0227】
「RDX−51027」は、ジョージア州スマーナのサーフェス・スペシャルティーズ・インコーポレイテッド(Surface Specialties,Inc.,Smyrna,GA)より入手したテトラブロモビスフェノールAジアクリレートを意味し;
【0228】
「MEEAA」は、ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,WI)より入手したメトキシエトキシ酢酸を意味し;
【0229】
「HDDA」は、ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,WI)より入手したヘキサンジオールジアクリレートを意味し;
【0230】
「TMPTA」は、トリメチロールプロパントリアクリレートを意味し;
【0231】
「TPO−L」は、商品名「ルシリン(LUCIRIN)TPO−L」でニュージャージー州フローハムパークのBASFコーポレーション(BASF Corp.,Florham Park,NJ)より入手可能な2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィン酸エチルを意味し;
【0232】
「プロスタブ(PROSTAB)5198」は、ニューヨーク州タリータウンのチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals,Tarrytown,NY)より入手した重合阻害剤を意味する。
【0233】
輝度向上フィルムの作製
プリズムの側面の傾斜によって画定される90°の頂点角度を有する微細複製工具を使用して、重合性樹脂組成物から輝度向上フィルムを作製した。
【0234】
実施例1〜5、7、および8の樹脂を使用する第1の組の実験においては、隣接する頂点間の平均距離が約50マイクロメートルであり、プリズムの頂点は鋭く、プリズムは、3Mカンパニー(3M Company)より商品名「ビキュイティBEF III90/50フィルム」(VIKUITI BEF III90/50 FILM)で販売される輝度向上フィルムと同様に長さに沿って高さが変動するものであった。重合性樹脂組成物は、約50℃の温度まで加熱し、連続フィルムを形成するのに十分な体積で、微細複製工具上に注いだ。5ミルのポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)をこの重合性樹脂と接触させた。重合性樹脂がPETと微細複製工具との間に広がるように、PET、重合性樹脂、および微細複製工具をコーティングバー装置の下で引っ張った。重合性樹脂の厚さが約25マイクロメートルとなるように、微細複製工具に対してコーティングバーを配置した。微細複製工具とPETフィルムとの間に重合性樹脂層が形成された後、紫外線硬化装置中で重合性樹脂を約3000ミリジュール/cm2に曝露することによって重合性樹脂層を硬化させた。硬化後、重合した樹脂およびPETフィルムを微細複製工具から剥離した。
【0235】
実施例4の樹脂を使用する第2の組の実験においては、隣接する頂点間の平均距離が約24マイクロメートルであり(「HTBEF」)、プリズムの頂点は鋭かった。重合性樹脂組成物は、約50℃の温度まで加熱し、連続フィルムを形成するのに十分な体積で、微細複製工具上に注いだ。2ミルのポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)をこの重合性樹脂と接触させた。重合性樹脂がPETと微細複製工具との間に広がるように、PET、重合性樹脂、および微細複製工具をコーティングバー装置の下で引っ張った。重合性樹脂の厚さが約13マイクロメートルとなるように、微細複製工具に対してコーティングバーを配置した。微細複製工具とPETフィルムとの間に重合性樹脂層が形成された後、紫外線硬化装置中で重合性樹脂を約3000ミリジュール/cm2に曝露することによって重合性樹脂層を硬化させた。硬化後、重合した樹脂およびPETフィルムを微細複製工具から剥離した。
【0236】
実施例6の樹脂を使用し、PETフィルムの代わりに輝度向上フィルム(3Mより商品名「ビキュイティ(VIKUITI)DBEF−P」で市販されている)上にコーティングする第3の組の実験においては、隣接する頂点間の平均距離が約24マイクロメートルであり、プリズムの頂点は鋭かった。重合性樹脂組成物は、約50℃の温度まで加熱し、連続フィルムを形成するのに十分な体積で、微細複製工具上に注いだ。ビキュイティ(VIKUITI)DBEF−Pフィルムをこの重合性樹脂と接触させた。重合性樹脂がビキュイティ(VIKUITI)DBEF−Pフィルムと微細複製工具との間に広がるように、ビキュイティ(VIKUITI)DBEF−Pフィルム、重合性樹脂、および微細複製工具をコーティングバー装置の下で引っ張った。重合性樹脂の厚さが約13マイクロメートルとなるように、微細複製工具に対してコーティングバーを配置した。微細複製工具とビキュイティ(VIKUITI)DBEF−Pフィルムとの間に重合性樹脂層が形成された後、紫外線硬化装置中で重合性樹脂を約3000ミリジュール/cm2に曝露することによって重合性樹脂層を硬化させた。硬化後、重合した樹脂およびビキュイティ(VIKUITI)DBEF−Pフィルムを微細複製工具から剥離した。
【0237】
カリフォルニア州チャッツワースのフォト・リサーチ・インコーポレイテッド(Photo Research,Inc,Chatsworth,CA)より入手可能なスペクトラスキャン(SpectraScan)(登録商標)PR−650スペクトラカラリメーター(SpectraColorimeter)上で、得られた輝度向上フィルムの利得を測定した。実施例の輝度向上フィルムの利得を表1に示す。輝度向上フィルム試料を切断し、フォスター(Foster)DCR II光源を使用したライトパイプを介して照明されるテフロン(登録商標)(Teflon)照明管の上に配置し、プリズムの溝がテフロン(登録商標)照明管の前面と平行になるようにした。テフロン(登録商標)照明管の前面に対して偏光フィルムの通過軸が垂直になるように、偏光フィルムシートを輝度向上フィルムの上に配置した。一部の試料については、同じ輝度向上フィルムの第2のシートを第1のシートの下に配置し、第2のシートの溝の方向が、テフロン(登録商標)照明管の前面に対して垂直になるようにした。
【0238】
利得測定における輝度向上フィルムの構成を、「HBEF III」(3Mカンパニー(3M Company)より商品名「ビキュイティBEF III90/50フィルム」(VIKUITI BEF III90/50 FILM)で販売される輝度向上フィルムと類似の第1の組の実験において作製したフィルム)、「HXBEF III」(第1の組の実験の2枚のHBEF IIIフィルムの積層体であり、各フィルムの頂点稜線部が他方のフィルムと直交するように、テフロン(登録商標)照明管上に配置され、隣接する頂点間の距離は50マイクロメートルである)、「HTBEF」(隣接する頂点間の距離が24マイクロメートルである第2の組の実験で作製したフィルム)、「HXTBEF」(第2の組の実験の2枚のHTBEFフィルムの積層体であり、各フィルムの頂点稜線部が、他方のフィルムの頂点稜線部と直交している)、「HDBEF」(隣接する頂点間の距離が24マイクロメートルである第3の組の実験で作製したフィルム)、「HDBEF/T−BEF」(2枚のフィルムの積層体であり、その一方は第3の組の実験で作製され、他方のフィルムは商品名「ビキュイティ(VIKUITI)T−BEF」で3Mカンパニー(3M Company)より市販されている)と呼ぶ。
【0239】
調製例1:ジルコニアゾル1の調製
酢酸イットリウム水和物(38.58g;ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,WI)より入手した)を、酢酸ジルコニウム溶液(1500.0g;マサチューセッツ州アッシュランドのナイアコール・ナノテクノロジーズ・インコーポレイテッド(Nyacol Nano Technologies,Inc.,Ashland,MA)より入手可能)中に溶解させた。この混合物を室温で終夜乾燥させ、次に強制空気オーブン中90℃で4時間さらに乾燥させた。この結果得られた固体を、12.5重量パーセント溶液を得るのに十分な脱イオン水中に溶解させた。この溶液(すなわち、第1の供給材料)を、206℃に加熱した油浴中に浸漬した100フィートの外径0.25インチのステンレス鋼管に、80ミリリットル/分の速度で圧送した。次に、この流れを氷水浴中に浸漬した別の40フィートの長さの管に通した。背圧調整器を管の末端に配置して、260〜290psigの出口圧力を維持した。このステップにおける生成物は、白色固体の微粒子の懸濁液であった。ロータリーエバポレーターを使用して、この液体懸濁液を14.5重量パーセント固形分まで濃縮した。この濃縮懸濁液(すなわち、第2の供給材料)を、206℃に加熱した油浴中に浸漬した100フィートの外径0.25インチのステンレス鋼管に、10ミリリットル/分の速度で圧送した。次に、この流れを氷水浴中に浸漬した別の40フィートの長さの管に通した。背圧調整器を管の末端に配置して、260〜270psigの出口圧力を維持した。このステップの生成物は、10.5重量パーセント固形分と測定されたゾル(すなわち、ジルコニアゾル)であった。この調製例の特性決定データを表2および3に示す。
【0240】
調製例2:ジルコニアゾル2の調製
酢酸イットリウム水和物(79.5g;ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,WI)より入手した)を酢酸ジルコニウム溶液(3000.0g;マサチューセッツ州アッシュランドのナイアコール・ナノテクノロジーズ・インコーポレイテッド(Nyacol Nano Technologies,Inc.,Ashland,MA))より入手可能)中に溶解させた。この混合物を室温で終夜乾燥させ、次に強制空気オーブン中90℃で4時間さらに乾燥させた。この結果得られた固体を、12.5重量パーセント溶液を得るのに十分な脱イオン水中に溶解させた。この溶液(すなわち、第1の供給材料)を、206℃に加熱した油浴中に浸漬した100フィートの外径0.25インチのステンレス鋼管に、80ミリリットル/分の速度で圧送した。次に、この流れを氷水浴中に浸漬した別の40フィートの長さの管に通した。背圧調整器を管の末端に配置して、250〜310psigの出口圧力を維持した。このステップにおける生成物は、白色固体の微粒子の懸濁液であった。ロータリーエバポレーターを使用して、この液体懸濁液を14.5重量パーセント固形分まで濃縮した。この濃縮懸濁液(すなわち、第2の供給材料)を、206℃に加熱した油浴中に浸漬した100フィートの外径0.25インチのステンレス鋼管に、10ミリリットル/分の速度で圧送した。次に、この流れを氷水浴中に浸漬した別の40フィートの長さの管に通した。背圧調整器を管の末端に配置して、230〜340psigの出口圧力を維持した。このステップの生成物はゾル(すなわち、ジルコニアゾル)であり、ロータリーエバポレーターを使用して濃縮して40.5重量パーセントの濃度のゾルを得た。この調製例の特性決定データは表2および3に含まれている。
【0241】
調製例3:ジルコニアゾル3の調製
調製例2と同じ組成を有する混合物を調製した。調製例2に記載の手順と類似の手順を使用し、より大きな直径の管を有する熱水反応器中で別のジルコニアゾルを調製した。この例の特性決定データは表2および3に含まれている。
【0242】
実施例1
12,000を超えるMWCOを有する透析膜(ミズーリ州セントルイスのシグマ−アルドリッチ・コーポレーション(Sigma−Aldrich Corp.,St.Louis,MO)より入手可能)を使用して、調製例1のジルコニアゾルを約12時間透析することで、10.93重量パーセント固形分の安定なゾルを得た。この透析したジルコニアゾル(435.01g)およびMEEAA(9.85g)を1リットルの丸底フラスコに投入し、その混合物を回転蒸発によって濃縮した。次に、濃縮したゾルにイソプロパノール(30g)およびNSEA(35.00g)を加えることで、分散液を形成した。次に、ロータリーエバポレーターを使用してこの分散液を濃縮することで、48.83重量パーセントのジルコニアを含有し、1.674の屈折率を有する硬化性樹脂を得た。40.09gのこの硬化性樹脂に0.39gのTPO−Lを加えることによって混合物を調製した。次に、10.03gのこの混合物に0.98gのSR−351を加えた。
【0243】
実施例2
12,000を超えるMWCOを有する透析膜(ミズーリ州セントルイスのシグマ−アルドリッチ・コーポレーション(Sigma−Aldrich Corp.,St.Louis,MO)より入手可能)を使用して、調製例1のジルコニアゾルを約12時間透析することで、10.93重量パーセント固形分を有する安定なゾルを得た。この透析したジルコニアゾル(437.02g)およびMEEAA(10g)を1リットルの丸底フラスコに投入し、ロータリーエバポレーターを使用して、その混合物を乾燥するまで濃縮した。こうして得た粉末を脱イオン水中に分散させて、21.45重量パーセントのジルコニアの混合物を得た。この分散液(206.5g)を瓶に投入し、撹拌しながら、1−メトキシ−2−プロパノール(300g)、シルクエスト(SILQUEST)A−174(9.89g)、およびシルクエスト(SILQUEST)A−1230(6.64g)を加えた。次に、この混合物を1リットルのねじ口瓶中に注いで密封し、次に90℃で3時間加熱した。次に、この混合物を丸底フラスコに移し、ロータリーエバポレーターで濃縮して、約25.4重量パーセントのジルコニアの混合物(すなわち濃縮ジルコニア)を得た。
【0244】
脱イオン水(450g)および濃アンモニア水溶液(13.9gの29重量パーセント溶液)を1Lのビーカーに投入した。撹拌しながらこのビーカーに、上記濃縮ジルコニア分散液をゆっくりと加えた。これにより得られた白色沈殿物を減圧濾過によって単離し、脱イオン水で洗浄した。この水分を含む固体生成物を、丸底フラスコ中の1−メトキシ−2−プロパノール中に分散させて、20.53重量パーセント固形分の濃度を有する混合物を得た。この混合物(117.03g)、SR−339(15.12g)、HDDA(1.68g)、プロスタブ(PROSTAB)5198の5重量パーセント水溶液(0.13g)を丸底フラスコに加えた。ロータリーエバポレーターを使用して水および1−メトキシ−2−プロパノールを除去することで、屈折率が1.584の屈折率を有する47.0重量パーセントのジルコニアの硬化性樹脂を得た。
【0245】
実施例3
12,000〜14,000のMWCOを有するスペクトラポール(SPECTRAPOR)透析膜(ペンシルバニア州ウエストチェスターのVWRインターナショナル(VWR International,West Chester,PA)より入手した)を使用して、調製例2のジルコニアゾルを約4.5時間透析することで、33.85重量パーセント固形分を有する安定なゾルを得た。この透析したジルコニアゾル(53.13g)、MEEAA(1.59g)、BCEA(1.14g)、1−メトキシ−2−プロパノール(133g)、NSEA(7.09g)、およびTMPTA(0.97g)を丸底フラスコに投入し、回転蒸発によって濃縮した。このジルコニア含有樹脂は、58.57重量パーセントのジルコニアであり、1.682の屈折率を有した。このジルコニア含有樹脂(21.94g)とTPO−L(0.09g)とを互いに混合した。
【0246】
実施例4
12,000〜14,000のMWCOを有するスペクトラポール(SPECTRAPOR)透析膜(ペンシルバニア州ウエストチェスターのVWRインターナショナル(VWR International,West Chester,PA)より入手した)を使用して、調製例2のジルコニアゾルを約4.5時間透析することで、33.85重量パーセント固形分を有する安定なゾルを得た。この透析したジルコニアゾル(109.90g)、MEEAA(3.28g)、BCEA(2.36g)、1−メトキシ−2−プロパノール(200g)、NOEA(14.68g)、およびTMPTA(2.00g)を丸底フラスコに投入し、回転蒸発によって濃縮した。このジルコニア含有樹脂は、57.22重量パーセントのジルコニアであり、1.661の屈折率を有した。このジルコニア含有樹脂(29.47g)とTPO−L(0.13g)とを互いに混合した。
【0247】
実施例5
12,000〜14,000のMWCOを有するスペクトラポール(SPECTRAPOR)透析膜(ペンシルバニア州ウエストチェスターのVWRインターナショナル(VWR International,West Chester,PA)より入手した)を使用して、調製例2のジルコニアゾルを約4.5時間透析することで、33.85重量パーセント固形分を有する安定なゾルを得た。この透析したジルコニアゾル(144.02g)、MEEAA(4.30g)、BCEA(3.09g)、1−メトキシ−2−プロパノール(300g)、NOEA(10.22g)、TMPTA(4.38g)、BR31(21.89g)、およびプロスタブ(PROSTAB)5198の5重量パーセント水溶液(0.3g)を丸底フラスコに投入した。アルコールおよび水を回転蒸発によって除去した。得られたジルコニア含有樹脂は、46.97重量パーセントのジルコニアであり、1.636の屈折率を有した。ジルコニア含有樹脂(49.03g)とTPO−L(0.26g)とを互いに混合した。
【0248】
実施例6
調製例3のジルコニアゾル(100.00g)、MEEAA(4.44g)、BCEA(2.13g)、1−メトキシ−2−プロパノール(115g)、SR−339/BR31の50/50混合物(29.78g)、およびプロスタブ(PROSTAB)5198の5重量パーセント水溶液(0.12g)を丸底フラスコに投入した。アルコールおよび水を回転蒸発によって除去した。得られたジルコニア含有樹脂は、約53.3重量パーセントのジルコニアであり、1.642の屈折率を有した。この混合物にTPO−Lを加えて、100重量部当たり0.47重量部のTPO−Lを含有する組成物を得た。
【0249】
実施例7
調製例3のジルコニアゾル(50.0g)、MEEAA(2.22g)、BCEA(1.06g)、1−メトキシ−2−プロパノール(75.0g)、およびSR−339とRDX−51207との等重量部混合物(17.60g)を丸底フラスコに投入した。ロータリーエバポレーターを使用して、この混合物を濃縮して、49.59重量パーセントのジルコニアおよび1.639の屈折率を有する硬化性樹脂を得た。100重量部当たり0.5重量部のTPO−Lを含有する組成物を得るのに十分な量のTPO−Lをこの混合物に加えた。
【0250】
実施例8
調製例3のジルコニアゾル(200g)、MEEAA(8.81g)、BCEA(4.22g)、1−メトキシ−2−プロパノール(230g)、BR31/SR−339/TMPTAの38/50/12混合物(59.1g)、およびプロスタブ(PROSTAB)5198の5重量パーセント水溶液(0.24g)を丸底フラスコに投入した。アルコールおよび水を回転蒸発によって除去した。得られたジルコニア含有樹脂は、52.31重量パーセントのジルコニアであり、1.638の屈折率を有した。このジルコニア含有樹脂(116g)とTPO−L(0.55g)とを互いに混合した。
【0251】
実施例9〜19
実施例1〜8の樹脂を使用して作製した各輝度向上フィルムの利得を測定し、表1に示している。表1中、記号「−−−」は、その試料を作製しなかったことを意味する。これらのフィルムの製造に使用した手順は前述のものである。
【0252】
【表1】

【0253】
【表2】

【0254】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0255】
【図1】例示的なジルコニア粒子の代表的なX線回折パターンである。
【図2】バックライト付き液晶ディスプレイ上の説明的な微細構造化調光フィルムの概略図である。
【図3】説明的な微細構造化調光フィルムの斜視図である。
【図4】高さが変動するプリズム要素を有する説明的な微細構造化調光フィルムの断面図である。
【図5】高さが変動するプリズム要素を有する説明的な微細構造化調光フィルムの断面図である。
【図6】説明的な微細構造化調光フィルムの断面図である。
【図7】複数のプリズム要素が異なる高さを有し、それらの底部が異なる面内にある、説明的な微細構造化調光フィルムの断面図である。
【図8】説明的な微細構造化調光フィルムの断面図である。
【図9】説明的な微細構造化調光フィルムの断面図である。
【図10】説明的な微細構造化調光フィルムの断面図である。
【図11】説明的な回転フィルムを含む照明装置の概略図である。
【図12】説明的な回転フィルムの断面図である。
【図13】別の説明的な回転フィルムの断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細構造化表面を有する光学層を含む調光フィルムであって、前記光学層が、
(a)ポリマー材料と、
(b)複数の表面改質ジルコニア粒子とを含有し、前記ジルコニア粒子は、前記ジルコニア粒子中の無機酸化物の重量を基準にして0.1〜8重量パーセントのイットリウムを含み、前記ジルコニア粒子は、平均一次粒度が30ナノメートル以下であり、分散指数が1〜3であり、強度平均粒度の体積平均粒度に対する比が3.0以下であり、少なくとも70パーセントが立方晶、正方晶、またはそれらの組み合わせである結晶構造を有する、調光フィルム。
【請求項2】
前記調光フィルムが、輝度向上フィルム、反射フィルム、または回転フィルムから選択される、請求項1に記載の調光フィルム。
【請求項3】
前記調光フィルムが輝度向上フィルムである、請求項1に記載の調光フィルム。
【請求項4】
前記光学層に隣接するベース層をさらに含む、請求項1に記載の調光フィルム。
【請求項5】
前記光学層が、前記光学層の重量を基準にして、80重量パーセントまでのジルコニア粒子を含む、請求項1に記載の調光フィルム。
【請求項6】
前記ポリマー材料が、高屈折率を有するオリゴマー材料と、反応性希釈剤と、多官能性架橋性モノマーとを含む重合性組成物の反応生成物である、請求項1に記載の調光フィルム。
【請求項7】
前記ポリマー材料が、架橋剤と以下の式I
【化1】

(式中、
aは水素またはメチルであり、
Qはオキシまたはチオであり、
cは、非置換またはヒドロキシで置換されたC2〜C12アルキレンであり、
nは0〜6の整数であり、
mは0〜6の整数であり、
各Xは独立して、水素、ブロモ、またはクロロであり、
Yは、−C(CH32−、−CH2−、−S−、−S(O)−、または−S(O)2−から選択される二価の結合基である)
のモノマーとを含む重合性組成物の反応生成物である、請求項1に記載の調光フィルム。
【請求項8】
前記重合性組成物が以下の式II
【化2】

(式中、
Arは、非置換、あるいはハロ、アルキル、アリール、アラルキル、またはそれらの組み合わせから選択される1つ以上の置換基で置換された、フェニルまたはナフチルであり、
Qはオキシまたはチオであり、
cは、非置換またはヒドロキシで置換されたC2〜C12アルキレンであり、
pは0〜6の整数であり、
aは水素またはメチルである)
のモノマーをさらに含む、請求項7に記載の調光フィルム。
【請求項9】
前記重合性組成物が以下の式II
【化3】

(式中、
Arは、非置換、あるいはハロ、アルキル、アリール、アラルキル、またはそれらの組み合わせから選択される1つ以上の置換基で置換された、フェニルまたはナフチルであり、
Qはオキシまたはチオであり、
cは、非置換またはヒドロキシで置換されたC2〜C12アルキレンであり、
pは0〜6の整数であり、
aは水素またはメチルである)
のモノマーをさらに含む、請求項1に記載の調光フィルム。
【請求項10】
前記ポリマー材料が、臭素化アルキル置換フェニル(メタ)アクリレートを含む重合性組成物の反応生成物である、請求項1に記載の調光フィルム。
【請求項11】
前記重合性組成物が、以下の式IIIのモノマー、以下の式IVのモノマー
【化4】

(式中、
各R1は、以下の式
【化5】

から独立して選択され、
3は(CH2xであり、
xは2〜8の整数であり、および
4は水素またはメチルである)
またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の調光フィルム。
【請求項12】
前記重合性組成物が、以下の式V
【化6】

(式中、
2は水素またはメチルであり、
Arはアリールであり、
mは1〜6の整数であり、
nは1〜6の整数であり、
pは1〜6の整数であり、
qは1〜6の整数である)
のモノマーを含む、請求項1に記載の調光フィルム。
【請求項13】
前記ポリマー材料が熱可塑性材料である、請求項1に記載の調光フィルム。
【請求項14】
前記ジルコニア粒子が、カルボン酸で表面改質されている、請求項1に記載の調光フィルム。
【請求項15】
前記ジルコニア粒子が、重合性基を含まない第1のカルボン酸と、重合性基を含有する第2のカルボン酸とで表面処理されている、請求項14に記載の調光フィルム。
【請求項16】
前記ジルコニア粒子が、シランで表面処理されている、請求項1に記載の調光フィルム。
【請求項17】
調光フィルムの製造方法であって、
水相中に分散したジルコニア粒子を含むジルコニアゾルを提供するステップであって、前記ジルコニアゾルが、
ジルコニウム塩を含有する第1の供給材料を調製し、前記第1の供給材料に対して第1の熱水処理を行って、ジルコニウム含有中間体および副生成物を形成し、
前記第1の熱水処理の前記副生成物の少なくとも一部を除去することによって第2の供給材料を形成し、
前記第2の供給材料に対して第2の熱水処理を行うことを含む方法によって調製されるステップと、
前記ジルコニア粒子の表面を改質して表面改質ジルコニア粒子を形成するステップと、
前記表面改質ジルコニア粒子と有機マトリックスとを含むコーティング組成物を調製するステップと、
前記コーティング組成物を微細複製工具に接触させるステップと、
前記コーティング組成物を重合させて、微細構造化表面を有する光学層を形成するステップとを含む方法。
【請求項18】
前記調光フィルムが輝度向上フィルムである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
調光フィルムの製造方法であって、
水相中に分散したジルコニア粒子を含むジルコニアゾルを提供するステップであって、前記ジルコニアゾルが、4個以下の炭素原子を含有しかつポリエーテルカルボン酸を実質的に含まないカルボン酸をさらに含み、前記ジルコニア粒子は、平均一次粒度が50ナノメートル以下であり、分散指数が1〜5であり、強度平均粒度の体積平均粒度に対する比が3.0以下であり、少なくとも50パーセントが立方晶、正方晶、またはそれらの組み合わせである結晶構造を有するステップと、
前記ジルコニア粒子の表面を改質して、表面改質ジルコニア粒子を形成するステップと、
前記表面改質ジルコニア粒子と有機マトリックスとを含むコーティング組成物を調製するステップと、
前記コーティング組成物を微細複製工具に接触させるステップと、
前記コーティング組成物を重合させて、微細構造化表面を有する光学層を形成するステップとを含む方法。
【請求項20】
前記ジルコニア粒子が、前記ジルコニア粒子中の無機酸化物の重量を基準にして0.1〜8重量パーセントのイットリウムを含有し、少なくとも70パーセントが立方晶、正方晶、またはそれらの組み合わせである結晶構造を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記調光フィルムが輝度向上フィルムである、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2008−533525(P2008−533525A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500770(P2008−500770)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/007601
【国際公開番号】WO2006/098899
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】