説明

ジルパテロールおよびこの塩の製造方法

本発明は一般に、ジルパテロールおよびこの塩の製造方法、ならびに特にジルパテロールおよびこの塩の製造に使用することができる中間体の製造方法に関する。本発明により調製されたジルパテロールおよび塩は、家畜、家禽および魚類の、体重増加速度の増加、飼料効率の改善、および/または枝肉赤身割合の増加に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許は、米国特許出願第60/920,885号(2007年3月31日出願)、米国特許出願第60/909,611号(2007年4月2日出願)、および欧州特許出願第EP07105551.1号(2007年4月3日出願)に対する優先権を主張する。これら各特許出願の文章全体が、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、一般に、ジルパテロールおよびこの塩の製造方法、ならびに、特にジルパテロールおよびこの塩の製造に使用することができる中間体の製造方法に関する。本発明は、家畜、家禽および魚類の体重増加速度の増加、飼料効率の改善、および/または枝肉赤身割合の増加のための、本発明により調製されたジルパテロールおよび塩を使用した処理方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
ジルパテロールは、以下の構造、
【0004】
【化1】

を有する公知のβ−2アドレナリン作動薬である。ジルパテロールのIUPAC名は4,5,6,7−テトラヒドロ−7−ヒドロキシ−6−(イソプロピルアミノ)イミダゾ[4,5,1−jk]−[1]ベンゾアゼピン−2(1H)−オンである。ジルパテロールのケミカル・アブストラクツ(Chemical Abstracts)名は4,5,6,7−テトラヒドロ−7−ヒドロキシ−6−[(1−メチル−エチル)アミノ]−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2(1H)−オンである。
【0005】
ジルパテロール、種々のジルパテロール誘導体、ならびにジルパテロールおよびこの誘導体の種々の医薬的に許容される酸付加塩を、例えば家畜、家禽および/または魚類の体重増加速度の増加、飼料効率の改善(即ち、体重増加量当たりの飼料量の減少)、および/または枝肉赤身割合の増加(即ち、屠体軟組織中のタンパク質含有率の増加)のために使用できることが周知である。例えば米国特許4,900,735においてグランダダム(Grandadam)は、ウシ、ブタおよび家禽などの温血動物の体重を増加させ肉品質を向上させるために使用可能なラセミ体のトランスジルパテロールおよびこの塩の畜産用組成物を記載している。さらに、米国特許出願US 2005/0284380には、牛肉生産の増加、牛肉生産を維持しながらの飼料摂取の減少、およびウシの肝膿瘍の発生率の低下のための、イオノフォア/マクロライド/ジルパテロール投与計画の使用が記載されている。
【0006】
ジルパテロールの製造方法は当分野において公知である。例えば米国特許4,585,770において、フレシェ(Frechet)らは、6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オン誘導体および医薬的に許容されるこれらの酸付加塩として特徴付けられる種類に含まれる化合物を記載している。これら誘導体の構造は次式、
【0007】
【化2】

に対応する。ここで、Rは種々の置換基であってよく、波線は6−アミノ基および7−OH基への結合がトランス配置であることを示している。この種類は、Rがイソプロピルである場合にラセミ体のトランスジルパテロールを含んでいる。
【0008】
米国特許4,585,770に報告されている方法では、4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムが中間体として使用さる。この化合物の構造は次式、
【0009】
【化3】

に対応する。米国特許4,585,770に示されているように、4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムは、当分野において長く公知されている出発物質から形成することができる。米国特許4,585,770には、このような2種類の出発物質の使用が示されている。両方の例において、これらの出発物質が使用されて、5,6−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,7−[1H,4H]−ジオンが形成され、次にこれが使用されて4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムが製造される。
【0010】
米国特許4,585,770の一例においては、出発物質は1,3−ジヒドロ−1−(1−メチルエテニル)−2H−ベンゾイミダゾール−2−オンであり、これはJ.Chem.Soc.Perkins,p.261(1982)に記載されている。
【0011】
【化4】

【0012】
米国特許4,585,770には、1,3−ジヒドロ−1−(1−メチルエテニル)−2H−ベンゾイミダゾール−2−オンを、4−ハロ酪酸アルキル(即ち、R−(CH−COOR(式中、RはCl、BrまたはIであり;およびRはC−C−アルキル)、例えば4−ブロモ酪酸メチルまたはエチルなど)および塩基(例えばアルカリ金属)と反応させてブタノエートを形成することができ、次にこれを酸(例えばHSO)をアルカノール(例えばメタノールまたはエタノール)中で使用して加水分解してメチルエテニル置換基を除去できることが示されている。次にこの加水分解生成物を、塩基(例えばNaOHまたはKOH)とアルカノール中で反応させることによって鹸化することでカルボン酸を形成することができる。続いてこのカルボン酸末端の側鎖は、このカルボン酸を塩化チオニルと反応させて塩化物を得て、次にこの塩化物をルイス酸(例えば塩化アルミニウム)で有機溶媒(例えば塩化メチレンまたはジクロロエタン)中で処理することによって環化して、5,6−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,7−[1H,4H]−ジオンを形成することができる。
【0013】
【化5】

【0014】
米国特許4,585,770の4欄第3行から5欄14行;および実施例14の12欄1から68行を参照されたい。
【0015】
米国特許4,585,770の別の例においては、出発物質が1,3−ジヒドロ−1−ベンジル−2H−ベンゾイミダゾール−2−オンであり、これはHelv.,Vol 44,p.1278(1961)に記載されている。
【0016】
【化6】

【0017】
米国特許4,585,770には、1,3−ジヒドロ−1−ベンジル−2H−ベンゾイミダゾール−2−オンを4−ブロモ酪酸エチルおよび水素化ナトリウムと反応させて1,3−ジヒドロ−2−オキソ−3−ベンジル−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエートを形成し、次にこれをメタノール性NaOHと反応させて鹸化することで1,3−ジヒドロ−2−オキソ−3−ベンジル−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタン酸を形成することができることが示されている。次に、このブタン酸酸側鎖は、1,3−ジヒドロ−2−オキソ−3−ベンジル−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタン酸を塩化チオニルと反応させて塩化物を得て、この塩化物を塩化アルミニウムでジクロロエタン中で処理することによって環化することができる。次にこの環化生成物を、o−リン酸の使用によりフェノール中で加水分解して5,6−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,7−[1H,4H]−ジオンを形成することができる。米国特許4,585,770、実施例1、ステップAからD、6欄10行から7欄35行を参照されたい。
【0018】
米国特許4,585,770に報告される方法を使用して、5,6−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,7−[1H,4H]−ジオンを、亜硝酸アルキル(例えば亜硝酸tert−ブチルまたは亜硝酸イソアミル)と、塩基または酸(例えばHCl)の存在下で反応させて、4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムを形成することができる。次にこの4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムを、接触水素化(例えば炭素担持パラジウムの存在下で水素を使用)または水素化ホウ素ナトリウムによって還元することで、ラセミ体のtrans6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オンが形成される。
【0019】
【化7】

【0020】
米国特許4,585,770中の説明的な例においては、4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムは、ラセミ体のtrans6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オンに2段階で変換される;最初に、4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムを炭素担持Pdの存在下でHと反応させ、次に濾過した後、得られた水素化生成物を水素化ホウ素ナトリウムと反応させる。米国特許4,585,770、2欄15行から4欄2行;および実施例1、ステップEおよびF、7欄38行から8欄3行を参照されたい。
【0021】
米国特許4,585,770には、6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オンのトランス立体異性体は、アセトンを還元剤(例えばアルカリ金属ホウ水素化物、またはシアノ水素化ホウ素ナトリウムなどのシアノホウ水素化物)の存在下で使用してアルキル化することで、ラセミ体のトランスジルパテロールを形成できると報告されている。
【0022】
【化8】

【0023】
米国特許4,585,770の、2欄46行から4欄2行;および実施例13、11欄41から68行を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】米国特許第4,900,735号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0284380号明細書
【特許文献3】米国特許第4,585,770号明細書
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】J.Chem.Soc.Perkins,p.261(1982)
【非特許文献2】Helv.,Vol 44,p.1278(1961)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
動物生産におけるジルパテロールおよびこの塩の重要性を考慮すると、ジルパテロールおよびこの塩の費用対効果が高く高収率の製造方法が必要とされ続けている。以下の開示によってこの要求に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、ジルパテロールおよびこの塩の製造方法に関する。このような方法は、ジルパテロールおよびこれらの塩の製造方法、ならびに特にジルパテロールおよびこの塩の製造の中間体として使用できる化合物の製造方法を含んでいる。
【0028】
簡潔に述べると、本発明は、部分的には、ジルパテロールまたはこの塩(例えば医薬的に許容される塩)に関する。本発明の方法は、4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)酪酸(またはこの塩)を、塩化オキサリル、ホスゲンおよび/またはトリホスゲンなどの少なくとも1種類の塩素化剤と反応させることを含む方法によりクロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエート(またはこの塩)を製造するステップを含む。または(またはこれに加えて)、本発明の方法は、8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオン(またはこの塩)を無機亜硝酸塩(例えばNaNOなどの亜硝酸塩)と反応させることを含む方法により4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシム(またはこの塩)を製造するステップを含む。
【0029】
本発明は、部分的には、クロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエートまたはこの塩の製造方法にも関する。この方法は、4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)酪酸(またはこの塩)を塩化オキサリル、ホスゲンおよび/またはトリホスゲンなどの少なくとも1種類の塩素化剤と反応させるステップを含む。
【0030】
本発明は、部分的には、8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオンまたはこの塩の製造方法にも関する。この方法は、4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)酪酸(またはこの塩)を塩化オキサリル、ホスゲンおよび/またはトリホスゲンなどの少なくとも1種類の塩素化剤と反応させることを含む方法によりクロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエート(またはこの塩)を製造するステップを含む。さらに、この方法は、クロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエート(またはこの塩)をルイス酸(例えばAlCl)と反応させるステップを含む。
【0031】
本発明は、部分的には、4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムまたはこの塩の製造方法にも関する。この方法は、8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオン(またはこの塩)を無機亜硝酸塩と反応させるステップを含む。
【0032】
本発明は、部分的には、動物に給餌する方法にも関する。この方法は、動物(例えばウシ動物、ブタ動物または鳥類)に、本発明の方法により製造されたジルパテロールまたはこの塩を給餌するステップを含む。このような給餌方法は、例えば動物の体重増加速度の増加、動物の飼料効率の改善、および/または動物の枝肉赤身割合の増加のために使用することができる。
【0033】
本発明は、部分的には、薬剤を製造するための、本発明の方法により製造されたジルパテロールまたはこの塩の使用にも関する。このような薬剤の使用としては、動物の体重増加速度の増加、動物の飼料効率の改善、および/または動物の枝肉赤身割合の増加が挙げられる。
【0034】
本出願人らの発明のさらなる利点は、本明細書を読むことにより当業者によって明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
この好ましい実施形態の詳細な説明は、他の当業者に本出願人らの発明、この原理、およびこの実際的な応用を知らせることのみを意図しており、そのため他の当業者は、個別の使用の要求に最適化できるように本発明をこの種々の形態で適応させ適用することができる。この詳細な説明およびこの具体例は、本発明の好ましい実施形態を示しており、説明の目的のみを意図している。従って本発明は、本明細書に記載される好ましい実施形態にのみ限定されるものではなく、様々に修正を行うことができる。
【0036】
A.ジルパテロールおよびこの塩の合成
A−1.クロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエートの調製
ある実施形態では、ジルパテロールまたは塩の合成は、クロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエート、
【0037】
【化9】

の調製によって始まる、またはこの調製を含む。一部のこのような実施形態では、例えばクロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエートは、4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)酪酸および少なくとも1種類の塩素化剤とから調製される。一部のこのような実施形態では、塩素化剤は塩化オキサリルを含む。
【0038】
【化10】

【0039】
別の実施形態では、塩素化剤は、これの代わりまたはこれに加えて、例えばホスゲンまたはトリホスゲンを含む。
【0040】
【化11】

【0041】
4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)酪酸試薬(「2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−酪酸」とも公知である。)は、商業的供給元(存在する限りで)から入手することができ、または当分野において公知の方法などを使用して市販の成分から調製することもできる。背景技術の項で前述したように、このような方法としては、米国特許4,585,770に記載の方法などが挙げられる(米国特許4,585,770の全文が本特許に参照により組み入れられる。)。
【0042】
塩素化剤の量は変動し得る。一般に、過剰の塩素化剤の使用が好ましい。ある実施形態では、例えば反応器に投入される塩素化剤(例えば塩化オキサリル)の量は、4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)酪酸のモル数を基準にして約1.05から約1.15当量(または約1.05から約1.11当量、または約1.08から約1.10当量)である。上記範囲よりも少量を使用できると考えられるが、このような量では同時に転化率の低下が発生することがある。さらに、上記範囲よりも多い量を使用できると考えられるが、このような量では同時に望ましくない副生成物が生成されることがある。
【0043】
この反応は、典型的には触媒の存在下で行われる。このような好適な触媒の1つはN,N−ジメチルホルムアミド(「DMF」)を含む。一般に、少なくともDMFの触媒量が反応器に投入される。ある実施形態では、反応器に投入されるDMF量は、4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)酪酸のモル数を基準にして約0.08から約0.22(または約0.10から約0.14)当量である。例えばある実施形態では、DMF量が約0.11当量である。上記範囲よりも少量を使用できると考えられるが、このような量では同時に転化率の低下が発生することがある。さらに、上記範囲よりも多い量を使用できると考えられるが、このような量では同時に望ましくない副生成物が生成されることがある。
【0044】
この反応は、典型的には1種類以上の溶媒の存在下で行われる。ある実施形態では、溶媒は1種類以上の非極性溶媒を含む。このような好適な溶媒の1つはジクロロメタンを含む。ある実施形態では、溶媒(例えばジクロロメタン)の量は、4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)酪酸)1キログラム当たり6.0から約9L(または約6.8から約7.6L)である。例えばある実施形態では、溶媒の量は4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)酪酸1キログラム当たり約7.2Lである。
【0045】
この反応は、広範囲にわたる温度で行うことができる。ある実施形態では、例えばこの反応は約5から約25℃、約10から約25℃、約10から約20℃、または約15から約20℃の温度で行われる。上記範囲より低い温度を使用できると考えられるが、このような温度では同時に反応速度が遅くなる場合がある。さらに、上記範囲より高い温度を使用できると考えられるが、このような温度では、同時に、特に溶媒がジクロロメタンである場合に溶媒が望ましくないほど失われる場合がある。
【0046】
この反応は、種々の雰囲気下で行うことができる。ある実施形態では、例えばこの反応は不活性雰囲気下で行われる。一般に、「不活性雰囲気」は、反応が行われる時間にわたって試薬、生成物、反応混合物中のあらゆる他の成分、または反応器に対して非反応性である雰囲気である。このような雰囲気の1つは、例えばNを含む。一部のこのような実施形態では、この雰囲気はNからなる(または実質的になる。)。
【0047】
この反応は、大気圧、大気圧未満、および大気圧を超えるなどの広範囲にわたる圧力で行うことができる。しかし典型的には大気圧付近で反応を行うことが好ましい。
【0048】
この反応は、様々な種類の反応器を使用して行うことができる。ある実施形態では、例えば反応器は撹拌槽反応器である。ガラス製反応器およびガラスがライニングされた反応器が好ましいことが多いが、反応混合物に曝露されても安定なあらゆる組成物を使用することができる。反応混合物のかき混ぜ(例えば撹拌)は好ましくは、反応器壁上に4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)酪酸試薬が堆積するのが最小限となる(またはより好ましくは実質的または完全に回避される)速度で維持される。撹拌槽反応器を使用するある実施形態では、塩素化剤の投入前または投入中の撹拌速度は塩素化剤を投入した後の撹拌速度よりも遅い。しかし、塩素化剤の投入中の撹拌速度は、好ましくは、変換に悪影響を与える、または気体発生を不都合に遅らせるほどには遅くはない。
【0049】
この反応の反応時間は、例えば反応温度、溶媒の特性、成分の相対量、および所望の転化率などの種々の要因に依存し得る。バッチ反応器中では、反応時間は一般に少なくとも約1分、典型的には少なくとも約5分、およびより典型的には少なくとも約1時間である。ある実施形態では、例えば反応時間は約1時間から約32日間、または約2から約7時間である。例えばある実施形態では、総反応時間は約4時間である。
【0050】
ある実施形態では、反応時間は、塩素化剤が反応器に投入される長い時間を含む。一部のこのような実施形態では、例えば塩素化剤は、約15分から約10時間、約1から約3時間、または約1から約2時間にわたって反応器に投入される。上記範囲より短い時間を使用できると考えられるが、このような時間では、同時に急速な気体発生が起こることがあり、これによって望ましくない溶媒の減少(特に溶媒がジクロロメタンを含む場合)が起こることがある。さらに、上記範囲より長い時間を使用できると考えられるが、このような時間では、同時に、クロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエート生成物の望ましくない分解、ならびに設備および労力の非効率的な使用が生じることがある。
【0051】
塩素化剤が長時間にわたって投入されるある実施形態では、続いて、典型的にはかき混ぜ(例えば撹拌)を追加の時間の間行いながら、反応混合物が維持される(または「熟成される」)。ある実施形態では、この追加の時間は、約45分から約31日間、約1から約4時間、または約1から約2時間である。多くの場合、この追加の時間は、塩素化剤の投入中と同じ反応条件(例えば温度、圧力および/または撹拌速度)を使用して行われる。しかしこれらの条件を変えることもできる。例えばある実施形態では、塩素化剤が約15℃の温度で投入され、混合物が約20℃で熟成される。上記範囲より短い時間を使用できると考えられるが、このような時間では同時に転化率の低下が生じ得る。さらに、上記範囲より長い時間を使用できると考えられるが、このような時間は、同時に望ましくない不純物の生成(クロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエート生成物の分解など)、ならびに設備および労力の非効率的な利用が生じることがある。
【0052】
上記条件下で、クロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエート生成物は一般には溶液中に存在する。この生成物は、例えば当分野において公知の種々の方法を使用して沈殿および精製または単離できることが考慮される。しかし一般には、生成物は沈殿、精製および単離を行うことなく次のステップで使用される。一部のこのような実施形態では、生成混合物は31日以内、24日以内、または9日以内に使用される。より古い生成混合物を使用すると、同時に、望ましくないクロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエートの分解が発生し得る。さらに、これらの時間範囲は、生成混合物が約6℃高い温度には曝されないことを仮定している。生成混合物が約6℃より温度(および特に約25℃を超える温度)に曝されると、望ましくない生成物の分解がより速く生じ得る。
【0053】
A−2.8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオンの調製
ある実施形態では、ジルパテロールまたはこの塩の合成は、8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオンの調製によって始まる、またはこの調製を含む。
【0054】
【化12】

【0055】
ある実施形態では、8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオン(「5,6−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2,7−(1H,4H)−ジオン」とも知られる。)は、例えばクロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエートをルイス酸と、2つの反応(即ち、フリーデル−クラフツ反応、続いて加水分解)を介して反応させることによって調製される。
【0056】
【化13】

【0057】
上記反応中に使用されるクロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエートは、商業的供給元(存在する限りで)から入手する、A−1項で前述した方法を使用して調製する、または異なる方法を使用して調製することができる。ある実施形態では、例えばクロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエートは、塩化チオニルを塩素化剤として使用して4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)酪酸をクロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエートに変換させる、米国特許4,585,770に記載される方法によって調製される。別の実施形態では、クロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエートは、PClを塩素化剤として使用して4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)酪酸をクロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエートに変換することで調製される。ある好ましい実施形態では、クロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエートは、A−1項で前述した方法および塩素化剤を使用し調製される。例えば塩化チオニルまたはPClの代わりにA−1項に記載した塩素化剤(特に塩化オキサリル)を使用すると、同時に、除去が困難な不純物が少なくなる傾向にある。例えば塩化チオニルを使用すると、硫黄不純物が生成される傾向にある。さらにPClではリン不純物が生成される傾向にある。このような不純物の除去によって、所望の生成物の収率が低下する傾向にある。
【0058】
種々のルイス酸(またはこれらの組み合わせ)がこの反応に好適となると考えられるが、ルイス酸は好ましくは塩化アルミニウム(「AlCl」)である。反応器に投入するルイス酸の量は変動し得る。一般に、過剰のルイス酸の使用が好ましい。例えばある実施形態では、反応器に投入されるルイス酸(例えばAlCl)の量は、クロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエートのモル数を基準にして約2.8から約4.0当量(または約3.0から約3.6当量)である。例えばある実施形態では、反応器に投入されるルイス酸の量は、クロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエートのモル数を基準にして約3.3当量である。クロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエートがA−1項により調製されるある実施形態では、このフリーデル−クラフツ反応に使用されるルイス酸の量は、A−1項の反応に使用される4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)酪酸のモル数を基準して約2.8から約4.0当量(または約3.0から約3.6当量)である。例えばある実施形態では、反応器に投入されるルイス酸の量は、A−1項の反応に使用される4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)酪酸のモル数を基準にして約3.3当量である。上記範囲より少ない量の塩化アルミニウムを使用できると考えられるが、このような量によって同時に、転化率の低下および/または望ましくない副生成物の生成が起こり得る。さらに、塩化アルミニウムのより多い量を使用できると考えられるが、このような量によって同時に、後の加水分解中の処理量の減少が起こり得る。
【0059】
フリーデル−クラフツ反応は典型的には1種類以上の溶媒の存在下で行われる。ある実施形態では、例えば溶媒が1種類以上の非極性溶媒を含む。クロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエート試薬がA−1項により調製されるある実施形態では、この溶媒はA−1項で使用される溶媒と同じものである。このような好適な溶媒の1つはジクロロメタンを含む。後述するように、フリーデル−クラフツ反応で使用される溶媒(例えばジクロロメタン)は、加水分解の前、最中、および/または後に、例えば蒸留によって除去することができる。従ってある実施形態では、溶媒は、このような除去に適した沸点を有する。
【0060】
この反応に使用されるこの溶媒の総量は変動し得る。ある実施形態では、溶媒(例えばジクロロメタン)の量は、クロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエート1キログラム当たり約11.1Lである。クロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエート試薬がA−1項により調製されるある実施形態では、A−1項で得られた最終生成混合物(あらゆる溶媒、例えばジクロロメタンを含む。)がフリーデル−クラフツ反応中で使用される。一部のこのような実施形態では、フリーデル−クラフツ反応中に使用される溶媒の総量(A−1項の反応からの溶媒と、フリーデル−クラフツ反応に加えられるあらゆる溶媒とを含む。)は、A−1項の反応中に使用される4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)酪酸1キログラム当たり約12.1Lである。別のこのような実施形態では、フリーデル−クラフツ反応のために(A−1項の生成混合物の一部として投入される溶媒に加えて)反応器に投入される追加の溶媒量は、A−1項の反応中に使用される溶媒量の約0.53から約0.91(または約0.60から約0.71)倍である。一部のこのような実施形態では、例えば追加の量は、A−1項の反応中に使用される量の約0.67倍である。クロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエート試薬がA−1項により調製されるある実施形態では、フリーデル−クラフツ反応中のルイス酸はAlClであり、反応器に投入されるAlClスラリー中に含有される溶媒の総量は、A−1項の反応中に使用される4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)酪酸1キログラム当たり約3.7から約5.3L(または約4.5から約5.1L)である。例えば一部のこのような実施形態では、溶媒量は、A−1項の反応中に使用される4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)酪酸1キログラム当たり約4.8Lである。上記範囲外の溶媒量を使用できると考えられるが、このような量では、同時に、望ましくない副生成物が生成することがある。
【0061】
フリーデル−クラフツ反応は、広範囲にわたる温度で行うことができる。ある実施形態では、フリーデル−クラフツ反応は、約40℃を超える温度で行われる。ある実施形態では、この温度は約45から約65℃である。一部のこのような実施形態では、この温度は約55から約62℃である。別のこのような実施形態では、この温度は約50から約60℃である。例えばある実施形態では、この温度は約60℃である。上記範囲よりも低い温度を使用できると考えられるが、このような温度では、同時に、反応速度が遅くなる、および/または分子間副反応により望ましくない副生成物が生成することがある。さらに、上記範囲より高い温度を使用できると考えられるが、このような温度では、同時に、特に溶媒がジクロロメタンである場合に望ましくない溶媒の減少が起こることがある。
【0062】
ある実施形態では、所望の変換が起こった後に、反応混合物の温度が下げられる。例えば一部のこのような実施形態では、温度が約12℃に下げられる。
【0063】
フリーデル−クラフツ反応は、広範囲にわたる圧力で行うことができる。ある実施形態では、圧力(絶対)は大気圧よりも高い。一部のこのような実施形態では、圧力(絶対)は約2.0から約3.0bar、または約2.6から約2.8barである。例えばある実施形態では、圧力(絶対)は約2.7barである。これらの範囲より高い圧力を使用できると考えられるが、このような圧力では、このような圧力を効率的に取り扱うよう設計されたより費用のかかる設備が必要となることがある。さらに、これらの範囲より低い圧力を使用できると考えられるが、このような圧力では、同時に、特に溶媒がジクロロメタンである場合に望ましくない溶媒の減少が起こることがある。このような圧力では、同時に、望ましくない副生成物が生成される場合もある。
【0064】
フリーデル−クラフツ反応の反応時間は、例えば反応温度、溶媒の特性、成分の相対量、および所望の転化率などの種々の要因に依存し得る。バッチ反応器では、フリーデル−クラフツ反応の反応時間は、一般に少なくとも約1分間であり、典型的には少なくとも約5分間であり、およびより典型的には約1時間を超える。ある実施形態では、例えばフリーデル−クラフツ反応の反応時間は約2.5から約12時間、または約2から約6時間である。例えばある実施形態では、反応時間は約4時間である。
【0065】
ある実施形態では、反応時間には、クロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエートおよびルイス酸が混合される時間が含まれる。ある実施形態では、例えばクロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエートのルイス酸(例えばAlCl)が入れられた反応器へ投入される、またはこの逆が、約2から約10時間の時間にわたって行われる。ある実施形態では、この投入は約3から約6時間の時間にわたって行われる。別の実施形態では、この投入は約2から約5時間の時間にわたって行われる。例えばある実施形態では、クロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエートのルイス酸(例えばAlCl)が入れられた反応器へ投入される、またはこの逆が、約4時間の時間で行われる。これらの範囲より短い投入時間を使用できると考えられるが、このような投入時間では、同時に、分子間副反応により望ましくない副生成物が生成されることがある。さらに、これらの範囲より長い投入時間を使用できると考えられるが、このような投入時間では、同時に、処理量の減少が生じることがある。ある投入時間が存在する場合、反応混合物はその後、典型的には、例えばかき混ぜながら(例えば撹拌)同じ条件(例えば温度および/または圧力)でさらなる時間の間維持(または「熟成」)される。ある実施形態では、例えばこの追加の時間は、約30分から約2時間、または約45から約75分である。例えばある実施形態では、反応混合物は投入後、さらに1時間維持される。これらの範囲より短い熟成時間を使用できると考えられるが、同時に、転化率および収率の低下が生じることがある。さらに、これらの範囲より長い熟成時間を使用できると考えられるが、この場合、同時に、生成物の分解の増加、ならびに設備および労力の非効率的な利用が生じることがある。
【0066】
加水分解反応を開始するために、フリーデル−クラフツ反応で得たスラリーを酸に加える、またはこの逆が行われる。
【0067】
種々の酸(またはこれらの組み合わせ)を加水分解に使用できると考えられるが、酸は好ましくは強酸である。ある実施形態では、例えば酸はHClである。
【0068】
反応器に投入される酸の量は変動し得る。一般に、酸の過剰の使用が好ましい。ある実施形態では、例えば反応器に投入される酸(例えばHCl)の量は、クロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエートのモル数を基準にして約1.05当量である。クロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエートがA−1項により調製されるある実施形態では、加水分解に使用される酸の量は、A−1項の反応中に使用される4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)酪酸のモル数を基準にして約1.05当量である。
【0069】
一般に、好ましくは酸は、反応の他の成分と混合される前に、水溶液の形態で調製される。一部のこのような実施形態では、この酸溶液中のHCl対水の質量比は約0.034から約0.142、または約0.038から約0.061である。例えばある実施形態では、この質量比は約0.044または約0.045である。上記の比よりも小さい質量比を使用できると考えられるが、このような比では、同時に、生成物中の塩不純物の濃度が高くなる場合がある。さらに、上記の比よりも大きい質量比を使用できると考えられるが、このような比では、同時に、収率が低下することがある。
【0070】
加水分解反応に使用される水の量は変動し得る。ある実施形態では、例えば水の総量は、使用されるクロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエートの量を基準にして約73から約245当量(または約147から約196当量)である。クロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエートがA−1項により調製されるある実施形態では、加水分解に使用される水の量は、A−1項の反応中に使用される4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)酪酸のモル数を基準にして約73から約245当量(または約147から約196当量)である。例えばある実施形態では、加水分解に使用される水の量は、A−1項の反応中に使用される4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)酪酸のモル数を基準にして約171当量である。上記範囲よりも少ない量の水を使用できると考えられるが、このような量では、同時に、最終生成物中の望ましくない塩不純物の濃度が高くなることがある。
【0071】
加水分解は、広範囲にわたる温度で行うことができる。この反応は発熱反応であるため、一般に、反応が進行するにつれて反応混合物の温度が上昇する。ある実施形態では、フリーデル−クラフツ反応で得られたスラリーは(好ましくは時間をかけて、例えば何回かに分けて)、約0から約38℃、約0から約20℃、約10から約40℃、または約10から約15℃に温度が維持される速度で、約0℃の温度の水性酸混合物(例えば33%HCl)に加えられる。例えばある実施形態では、水性酸混合物が、約12℃に温度が維持される速度で投入される。投入終了後、すべて(または実質的にすべて)の溶媒が留去されるまで、反応混合物は好ましくは約0から約65℃の温度に維持される。ある実施形態では、この温度は約10から約40℃である。別の実施形態では、この温度は約35から約50℃である。例えばある実施形態では、この温度は約38℃である。上記範囲より低い温度を一般に使用できると考えられるが、このような温度では、同時に、氷が形成される、および加水分解の減少または遅延が起こることがある。さらに、上記範囲より高い温度を一般に使用できると考えられるが、このような温度では、同時に、発泡、溶媒の減少(特に溶媒がジクロロメタンである場合)、および/または生成物の分解が生じることがある。
【0072】
加水分解は、広範囲にわたる圧力で行うことができる。ある実施形態では、加水分解は、準大気圧で行われる。このような準大気圧は、フリーデル−クラフツ反応中に使用した溶媒(例えばジクロロメタン)の留去、および強発熱性加水分解の冷却の両方に好都合となり得る。これによって、処理量を増加させ、エネルギー消費を減少させることができる。ある実施形態では、圧力(絶対)は約100から約1000mbar、約200から約900mbar、または約270から約470mbarである。別の実施形態では、圧力(絶対)は約300mbarからほぼ大気圧までである。例えばある実施形態では、圧力(絶対)は約300mbarである。このような圧力範囲は、約10から約40℃においてジクロロメタンを留去するために特に好適である。一般に、このような圧力範囲は、フリーデル−クラフツ反応で得たスラリーを酸混合物に移動させるとき(またはこの逆のとき)、および反応の残り部分の間に使用することができる。これによって、移動および反応と並行して溶媒の蒸留が可能となる。ある実施形態では、加水分解中に圧力が増加する。一部のこのような実施形態では、例えば加水分解は約300mbarの圧力(絶対)で開始され、次にほぼ大気圧まで上昇させることができる。上記範囲より低い圧力を使用できると考えられるが、このような圧力では、同時に、特に溶媒がジクロロメタンである場合に望ましくない溶媒減少速度が生じることがある。
【0073】
加水分解の反応時間は、例えば反応温度、溶媒の特性、成分の相対量、圧力、および加水分解中に形成された水酸化アルミニウムの溶解などの種々の要因に依存し得る。ある実施形態では、フリーデル−クラフツ反応による溶媒の蒸留が実質的(または完全に)終了するまで反応条件が維持される。
【0074】
ある実施形態では、蒸留物は再利用される。上記反応条件下で、蒸留物は、溶媒および水(例えば約3%(vol/vol)を含む傾向にある。溶媒が非極性である場合(例えばジクロロメタン)、蒸留物中の非極性溶媒および水は、例えばコアレッサーに蒸留物を圧送することによって分離することができる。このようなコアレッサーを使用して、例えば約0.2%(vol/vol)以下の含水率を有する非極性溶媒を得ることができる。ある実施形態では、さらなる水は、例えばモレキュラーシーブ(例えば4Aモレキュラーシーブ)を使用して除去される。乾燥させた非極性溶媒を方法中で再利用することができる。
【0075】
フリーデル−クラフツ反応および加水分解の両方は、種々の雰囲気下で行うことができる。ある実施形態では、例えばどちらも不活性雰囲気下で行われ、これらの雰囲気は異なっていてもよいが、好ましくは同じものである。このような雰囲気の1つは、例えばNを含む。一部のこのような実施形態では、雰囲気はNからなる(または実質的になる。)。
【0076】
フリーデル−クラフツ反応および加水分解の両方は、様々な種類の反応器で行うことができる。ある実施形態では、例えば反応器は撹拌槽反応器である。ガラス製反応器およびガラスがライニングされた反応器が好ましいことが多いが、反応混合物に曝露されても安定なあらゆる組成物を使用することができる。例えば加水分解中、反応混合物と接触する反応器成分は、例えば酸性条件下での劣化に対して抵抗性であるステンレス鋼合金(HASTELLOY(登録商標)を含むことができる。HClガスがフリーデル−クラフツ反応中に生成されるため、フリーデル−クラフツ反応中に使用される反応器は好ましくは、HClガスを安全に除去することができる機構、例えば過圧排気口を含む機構を含む。また、ルイス酸(例えばAlCl)の投入中、およびフリーデル−クラフツ反応の後の残りの段階中、好ましくは、分子間副反応および望ましくない副生成物の生成を最小限にするのに十分な速さであり、反応器壁上へのルイス酸の堆積が最小限になるのに十分な遅さで反応混合物のかき混ぜ(例えば撹拌)が行われる。
【0077】
この加水分解の生成物は、さらなる精製または単離を行うことなく次のステップで使用できると考えられる。しかし、一般に、この生成物は好ましくは単離および精製が行われる。これは、種々の分離および洗浄技術によって行うことができる。例えば生成混合物の温度を、8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオン生成物の所望の量が沈殿する温度まで下げることができる。ある実施形態では、生成混合物の温度が約−5から約20℃、約−5から約5℃、または約0から約5℃の温度に調節される。これらの範囲より低い温度を使用できると考えられるが、このような温度では、同時に、生成物中の望ましくない不純物の濃度が高くなることがある。さらに、これらの範囲より高い温度を使用できると考えられるが、このような温度では、同時に、収率が低下することがある。
【0078】
温度を調節した後、例えば遠心分離などの種々の分離技術を使用して、固体の8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオンを水性混合物から分離することができる。その後、生成物は好ましくは、水を使用して1回以上洗浄される。ある実施形態では、例えば生成物は水で4回洗浄される。洗浄中に使用される水の量は変動し得る。ある実施形態では、例えば1回の洗浄に使用される水の量は、使用されるクロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエート試薬1キログラム当たり約0.9から約1.8kg(または約1.2から約1.7kg)である。クロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエートがA−1項により調製されるある実施形態では、1回の洗浄に使用される水の量は、A−1項の反応に使用される4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)酪酸1キログラム当たり約1から約2kg(または約1.3から約1.8kg)である。例えばある実施形態では、1回の洗浄に使用される水の量は、A−1項の反応に使用される4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)酪酸1キログラム当たり約1.5kgである。上記範囲より少ない量の水を使用できると考えられるが、このような量では、同時に、生成物中に残留する塩不純物の濃度が高くなることがある。さらに、上記範囲より多い量の水を使用できると考えられるが、このような量では、同時に、収率が低下することがある。
【0079】
ある実施形態では、生成物は1種類以上の有機溶媒でも洗浄される。一部のこのような実施形態では、生成物はアセトンで1回以上洗浄される。別の実施形態では、生成物はイソプロパノールで1回以上洗浄される。一部のこのような実施形態では、例えば生成物はイソプロパノールで1回洗浄される。洗浄中に使用されるイソプロパノールの量は変動し得る。ある実施形態では、例えば1回の洗浄に使用されるイソプロパノールの量は、使用されるクロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエート試薬1キログラム当たり約0.9から約4.2kg(または約1.4から約1.7kg)である。クロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエートがA−1項により調製されるある実施形態では、1回の洗浄に使用されるイソプロパノールの量は、A−1項の反応に使用される4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)酪酸1キログラム当たり約1.0から約4.5kg(または約1.5から約1.8kg)である。例えばある実施形態では、1回の洗浄に使用されるイソプロパノールの量は、A−1項の反応に使用される4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)酪酸1キログラム当たり約1.6kgである。上記範囲より少ない量のイソプロパノールを使用できると考えられるが、このような量では、同時に、生成物中に残留する有機不純物の濃度が高くなることがある。さらに、上記範囲より多い量のイソプロパノールを使用できると考えられるが、このような量では、同時に、収率が低下することがある。
【0080】
有機溶媒(例えばイソプロパノール)を使用した生成物の各洗浄は、好ましくは約−5から約20℃、約0から約10℃、または約0から約5℃の温度で行われる。これらの範囲より低い温度を使用できると考えられるが、このような温度では、同時に、生成物中に残留する不純物の濃度が高くなることがある。さらに、これらの範囲より高い温度を使用できると考えられるが、このような温度では、同時に、収率が低下することがある。
【0081】
洗浄下生成物の乾燥(特に完全な乾燥)は、一般に、次のステップで生成物を使用する前には必要ではない。従って、少なくとも一部の実施形態では、洗浄した生成物は、次のステップで使用する前には乾燥されない。これによって、例えばエネルギーと時間とが節約される。
【0082】
塩化アルミニウムがルイス酸としてフリーデル−クラフツ反応中に使用されるある実施形態では、水酸化アルミニウムは、固体の8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオン生成物が反応生成混合物から分離されるときに、水酸化アルミニウムは、生成される上澄み水溶液から回収される。このような実施形態では、この上澄み水溶液は、例えば塩基(典型的には水酸化ナトリウムなどの強塩基)および二酸化炭素で処理することができる。これによって水酸化アルミニウムが沈殿し、次にこれは、例えば遠心分離などの種々の分離技術を使用して回収することができる。例えばPCl以外のA−1項で前述した塩素化剤(特に塩化オキサリル)をフリーデル−クラフツ反応中に使用すると、水酸化アルミニウムが回収される実施形態で特に有益となる傾向にある。対照的にPClは、リン不純物が生成される傾向にあり、そのため水酸化アルミニウムをあまり他に使用できなる。
【0083】
A−3.4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムの調製
ある実施形態では、ジルパテロールまたはこの塩の合成は、4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムの調製によって始まる、またはこの調製を含む。
【0084】
【化14】

【0085】
ある実施形態では、4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムは、例えば8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオンを無機亜硝酸塩と、以下のオキシム化反応を介して反応させることによって調製される。
【0086】
【化15】

【0087】
上記反応中に使用される8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオンは、商業的供給元(存在する限りで)から入手することができ、A−2項で前述した方法を使用して調製することもでき、または異なる方法を使用して調製することもできる。ある実施形態では、8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオンは、米国特許4,585,770に記載の方法によって調製される。ある好ましい実施形態では、8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオンは、A−2項で前述した方法を使用して調製される。
【0088】
無機亜硝酸塩は様々なものであってよい。ある実施形態では、無機亜硝酸塩は、硫酸ニトロシルを含む。
【0089】
【化16】

【0090】
別の実施形態では、無機亜硝酸塩は少なくとも1種類の亜硝酸塩を含む。このような亜硝酸塩は様々な塩から選択することができる。ある実施形態では、亜硝酸塩が亜硝酸ナトリウム(「NaNO」)を含む。
【0091】
無機亜硝酸塩の量は変動し得る。ある実施形態では、例えばこの量は約1.10から約1.26当量である。一部のこのような実施形態では、この量は、8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオン試薬のモル数を基準にして約1.16から約1.26当量(または約1.20から約1.22当量)である。別の実施形態では、この量は、8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオン試薬のモル数を基準にして約1.10から約1.20当量である。これらの範囲より少ない量を使用できると考えられるが、このような量では、同時に、転化率が低下することがある。さらに、これらの範囲より多い量を使用できると考えられるが、このような量では、同時に、望ましくない副生成物が生成することがある。
【0092】
酸は、種々の酸から選択することができる。ある実施形態では、酸は強酸を含む。好ましい酸としてはHClが挙げられる。酸の量は変動し得る。一般に、8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオン試薬の量に対して、過剰の酸が使用される。ある実施形態では、例えばこの量は、8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオン試薬のモル数を基準にして約1.24から約1.75当量(または約1.52から約1.68当量)である。例えばある実施形態では、この量は約1.60当量である。これらの範囲より少ない量の酸を使用できると考えられるが、このような量では、同時に、転化率が低下することがある。さらに、これらの範囲より多い量の酸を使用できると考えられるが、このような量では、同時に、生成物中の不純物濃度が増加することがある。酸濃度が高いと、同時に、反応器の組成物によっては反応器の腐食が発生することもある。
【0093】
この反応は典型的には1種類以上の溶媒の存在下で行われる。ある実施形態では、溶媒はジメチルホルムアミドを含む。ある実施形態では、溶媒の量は、8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオン試薬1キログラム当たり約15.5から約25.6L(または約17.4から約21.0L、または約18.2から約18.3L)である。上記範囲より少ない量を使用できると考えられるが、このような量では、同時に、溶解性の低下および/または望ましくない副生成物の生成が起こることがある。さらに、上記範囲より多い量を使用できると考えられるが、このような量では、同時に、収率が低下することがある。
【0094】
ある実施形態では、この反応は、最初に溶媒(例えばジメチルホルムアミド)、無機亜硝酸塩(例えばNaNO)、および8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオンを混合することで始められる。ある実施形態では、これは約40から約65℃、または約40から約50℃の温度で行われる。例えばある実施形態では、これは約45℃の温度で行われる。上記範囲より低い温度を使用できると考えられるが、このような温度では、同時に、溶解性の低下および/または望ましくない副生成物の生成が起こることがある。さらに、上記範囲より高い温度を使用できると考えられるが、このような温度では、同時に、8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオン試薬の分解が起こることがある。
【0095】
ある実施形態では、得られた混合物は、酸を加える前に予備加熱される。一部のこのような実施形態では、例えば混合物は約47から約63℃、または約48から約55℃に予備加熱される。例えばある実施形態では、混合物は約50℃に予備加熱される。上記範囲より低い温度を使用できると考えられるが、このような温度では、同時に、転化率が低下することがある。さらに、上記範囲より高い温度を使用できると考えられるが、このような温度では、同時に、望ましくない副生成物が生成することがある。
【0096】
予備加熱後、酸(例えばHCl)が反応器に投入される。ある実施形態では、投入される酸は水溶液の形態である。例えば酸がHClである場合、この溶液中のHCl濃度は典型的には約50%以下、約48%以下、約1から約40%、または約32から約33%(質量/体積)である。例えば気体HCl(100%)を使用することもできる。
【0097】
この反応の総反応時間は、例えば反応温度、溶媒の特性、成分の相対量、および所望の転化率などの種々の要因に依存し得る。
【0098】
反応時間には典型的には、酸溶液が残りの反応成分と混合される長い時間が含まれる。一部のこのような実施形態では、例えば酸は約10分から約2時間、約30分から約1時間、または約30から約45分の時間にわたって投入される。上記範囲より短い時間を使用できると考えられるが、このような時間では、同時に、温度の過度な上昇(反応は発熱反応である。)および望ましくない副生成物の生成が起こることがある。上記範囲より長い時間を使用できると考えられるが、このような時間では、転化率の低下、ならびに設備および労力の非効率的な使用が生じることがある。
【0099】
前述したように、この反応が発熱性であるために、典型的には酸の投入中に温度が上昇する。ある実施形態では、温度が、約54から約73℃、約55から約70℃、約60から約70℃、または約60から約66℃の温度まで上昇する。例えばある実施形態では、温度が約63℃まで上昇する。上記範囲より低い温度が好適となる場合もあると考えられるが、このような温度では、同時に、転化率が低下することがある。さらに、上記範囲より高い温度が好適となる場合もあると考えられるが、このような温度では、同時に、望ましくない副生成物が生成することがある。
【0100】
酸が投入された後、この反応混合物は、典型的には追加の時間の間かき混ぜ(例えば撹拌)を行いながら、さらに維持(または「熟成」)される。ある実施形態では、この追加の時間は約15分から約21時間、約15分から約10時間、約15分から約2時間、または約25から約40分である。例えばある実施形態では、追加の時間は約30分である。上記範囲より短い時間を使用できると考えられるが、このような時間では、同時に、転化率が低下することがある。さらに、上記範囲より長い時間を使用できると考えられるが、このような時間では、同時に、望ましくない副生成物の生成、ならびに設備および労力の非効率的な利用が起こることがある。
【0101】
熟成期間中の反応条件(例えば温度、圧力および/または撹拌速度)は、酸の添加中と同じ条件で維持することができる。しかしこれらの条件は異なっていてもよい。ある実施形態では、この追加の時間中の温度は約55から約70℃、約55から約65℃、または約58から約62℃である。例えばある実施形態では、この温度は約60℃である。上記範囲より低い温度を使用できると考えられるが、このような温度では、同時に、転化率が低下することがある。さらに、上記範囲より高い温度を使用できると考えられるが、このような温度では、同時に、望ましくない副生成物が生成することがある。
【0102】
ある実施形態では、熟成期間後に水が反応器に投入される。ある実施形態では、水の添加前の反応混合物の温度が約0から約48℃、約35から約40℃、または約35から約38℃の温度に調節される。上記範囲より低い温度を使用できると考えられるが、このような温度では、同時に、生成物の濾過が困難になったり、収率が低下したりすることがある。さらに、上記範囲より高い温度を使用できると考えられるが、このような温度では、同時に、望ましくない副生成物が生成することがある。ある実施形態では、水の添加前の温度調節が長時間にわたって行われる。一部のこのような実施形態では、例えば温度は、約30分から約5日、約1から約10時間、約3から約5時間、または約2から約4時間の時間にわたって調節される。上記範囲より短い時間を使用できると考えられるが、このような時間では、同時に、生成物の濾過が困難になることがある。さらに、上記範囲より長い時間を使用できると考えられるが、このような温度では、同時に、望ましくない副生成物が生成することがある。一般に、調節された温度は、水の添加の少なくとも一部(または実質的に全部)の間維持される。
【0103】
ある実施形態では、水の添加は長時間にわたって行われる。例えばある実施形態では、水の添加は、約30分から約5時間、約1から約4時間、または約2から約3時間の時間にわたって行われる。上記範囲より短い時間を使用できると考えられるが、このような時間では、同時に、生成物の濾過が困難になる、および収率が低下することがある。さらに、上記範囲より長い時間を使用できると考えられるが、このような温度では、同時に、生成物中の不純物の濃度が高くなることがある。
【0104】
水の量は変動し得る。ある実施形態では、例えばこの量は、8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオン試薬のモル数を基準にして約33から約88当量(または約45から約67当量、または約54から約55当量)である。これらの範囲外の量を使用できると考えられるが、このような量では、生成物中の不純物の濃度が高くなる、および収率が低下することがある。
【0105】
ある実施形態では、生成物の沈殿を促進するために反応混合物の温度が調節される。水が添加される実施形態では、この温度調節は一般に水の添加後に行われる。一部のこのような実施形態では、例えば温度は、約−10から約10℃、約−5から約2℃、または約−2から約0℃の温度まで下げられる。これらの範囲より低い温度を使用できると考えられるが、このような温度では、同時に、氷の形成および/または生成物中の不純物の濃度の増加が起こることがある。さらに、これらの範囲より高い温度を使用できると考えられるが、このような温度では、同時に、結晶化の減少および収率の低下が起こることがある。ある実施形態では、この温度調節が長時間にわたって行われる。一部のこのような実施形態では、例えばこの温度調節が、約1から約10時間、約2から約6時間、約2から約5時間、または約2から約4時間の時間にわたって行われる。これらの範囲より短い時間を使用できると考えられるが、このような時間では、同時に、結晶化の減少およびおよび収率の低下が起こることがある。
【0106】
ある実施形態では、生成物の沈殿を促進するための温度調節が行われた後、ある時間、温度が上記範囲内に維持される。一部のこのような実施形態では、温度は、約14日以下、約1から約40時間、約30分から約2時間、または約45分から約2時間などの範囲内の時間維持される。上記範囲より短い時間を使用できると考えられるが、このような時間では、同時に、結晶化の減少および収率の低下が起こることがある。
【0107】
この反応は、種々の雰囲気下で行うことができるが、好ましくは不活性雰囲気下で行なわれる。例えばこのような雰囲気の1つはNを含む。
【0108】
この反応は、大気圧(絶対)、大気圧(絶対)未満、および大気圧(絶対)を超えるなどの広範囲にわたる圧力で行うことができる。しかし典型的には、ほぼ大気圧(絶対)で反応を行うことが好ましい。
【0109】
この反応は、様々な種類の反応器で行うことができる。ある実施形態では、例えば反応器は撹拌槽反応器である。ガラス製反応器およびガラスがライニングされた反応器が好ましいことが多いが、反応混合物に曝露されても安定なあらゆる組成物を使用することができる。
【0110】
生成混合物は、さらなる単離や精製を行うことなく試薬として後に使用することができると考えられる。しかし通常、4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシム生成物は、最初に生成混合物から分離され、次に生成される。ある実施形態では、これは、例えば当分野において公知の種々の方法を使用して行われる。
【0111】
ある実施形態では、生成混合物中の固体の4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムは、例えば濾過を使用して混合物から分離される。
【0112】
ある実施形態では、溶媒(例えばジメチルホルムアミド)は、精留によって母液から再利用される。母液が水およびジメチルホルムアミドの両方を含む実施形態では、例えば水を除去し、続いてジメチルホルムアミドを蒸留することができる。
【0113】
分離後、生成物は好ましくは、水を使用して1回以上洗浄される。ある実施形態では、例えば生成物は水で2、3または4回洗浄される。1回の洗浄中に使用される水の量は変動し得る。ある実施形態では、例えば洗浄中に使用される水の総量は、合成に使用される8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオン試薬1キログラム当たり約4.4から約9.0L(または約5.4から約7,5L)である。ある実施形態では、例えば水の総量は、合成に使用される8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオン試薬1キログラム当たり約6.0Lである。上記範囲より少ない量の水を使用できると考えられるが、このような量では、同時に、生成物中に残留する不純物の濃度が高くなることがある。さらに、上記範囲より多い量の水を使用できると考えられるが、このような量では、同時に、収率が低下することがある。生成物からの水の分離は、例えば遠心分離を使用して行うことができる。
【0114】
ある実施形態では、生成物は1種類以上の有機溶媒でも洗浄される。一部のこのような実施形態では、生成物はアセトンで1回以上洗浄される。一部のこのような実施形態では、例えば生成物はアセトンで1回洗浄される。1回の洗浄に使用されるアセトンの量は変動し得る。ある実施形態では、例えばアセトンの総量は、合成に使用される8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオン試薬1キログラム当たり約2.2から約8.6L(または約2.8から約4.4L)である。ある実施形態では、例えばアセトンの総量は、合成に使用される8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオン試薬1キログラム当たり約3.2Lである。上記範囲より少ない量のアセトンを使用できると考えられるが、このような量では、同時に、生成物中に残留する不純物および水の濃度が高くなることがある。さらに、上記範囲より多い量のアセトンを使用できると考えられるが、このような量では、同時に、収率が低下することがある。生成物からのアセトンの分離は、例えば遠心分離を使用して行うことができる。
【0115】
ある実施形態では、洗浄した4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシム生成物が乾燥される。ある実施形態では、この固体を約20から約80℃、または約20から約75℃の温度で加熱することによって行われる。例えば一部のこのような実施形態では、生成物が65℃の温度に加熱される。上記範囲より低い温度を使用できると考えられるが、このような温度では、同時に、処理量が減少することがある。さらに、上記範囲より高い温度を使用できると考えられるが、このような量では、同時に、生成物の分解が起こることがある。ある実施形態では、この加熱は約3日未満、または約5から約10時間維持される。上記範囲より長い乾燥時間を使用できると考えられるが、このような長時間では、同時に、処理量の減少、ならびに設備および労力の非効率的な使用が生じることがある。ある実施形態では、この乾燥が真空下で行われる。
【0116】
A−4.ジルパテロールの調製
ジルパテロールは、A−1項、A−2項、またはA−3項のいずれかの生成物から種々の方法を使用して調製することができる。
【0117】
例えばA−3項の生成物を使用し、これを以下の実施例5に示される方法の試薬として直接使用することでジルパテロールを生成することができる。A−2項の生成物を使用したジルパテロールの製造は、例えばこの生成物をA−3項によってA−3項の生成物を製造するための試薬として使用し、続いてA−3項の生成物を実施例5に示される方法の試薬として使用することで行うことができる。さらにA−1項の生成物を使用したジルパテロールの製造は、例えばこの生成物をA−2項によってA−2項の生成物を製造するための試薬として使用し、続いてA−2項の生成物を使用して、A−3項によってA−3項の生成物を製造し、続いて実施例5に示される方法の試薬としてA−3項の生成物を使用することによって行うことができる。これらの方法は、後述のA−5項の例示的で全体的なスキームにおいてさらに説明する。
【0118】
ジルパテロールは、例えば当分野において公知の他の方法と本特許の教示とを組み合わせることによって、A−1項、A−2項およびA−3項の生成物から製造することもできる。例えばA−3項の生成物を試薬として使用し、例えば米国特許4,585,770に記載の合成技術を使用してジルパテロールを生成することができる。A−2項の生成物を使用したジルパテロールの製造は、例えばこの生成物をA−3項によってA−3項の生成物を製造するための試薬として使用し、続いてA−3項の生成物を試薬として使用し、例えば米国特許4,585,770に記載の合成技術を使用することによって行うことができる。さらにA−1項の生成物を使用したジルパテロールの製造は、例えばこの生成物をA−2項によってA−2項の生成物を製造するための試薬として使用し、続いてA−2項の生成物をA−3項によってA−3項の生成物を製造するための試薬として使用し、続いてA−3項の生成物を試薬として使用し、例えば米国特許4,585,770に記載の合成技術を使用することによって行うことができる。例えば米国特許4,585,770の2欄33行から4欄2行、7欄51から68行、および11欄41から48行を参照されたい(4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムからのヒドロキシアミン化合物の調製、続いてこのヒドロキシアミン化合物からのジルパテロール−HClの調製が議論され例示されている。)。
【0119】
A−5.意図される反応スキームの例
本発明では、上記反応のいずれかを使用するあらゆる方法が考慮される。ある実施形態では、本発明の方法は上記反応の1つのみを含む。別の実施形態では、本発明の方法は上記反応の2つ以上を含む。以下のスキームIは、上記すべての反応が使用されるシナリオを包括的に示している。
【0120】
【化17】

【0121】
以下のスキームIIは、上記シナリオを包括的に説明しており、塩素化剤が塩化オキサリルを含み;ルイス酸がAlClを含み;フリーデル−クラフツ反応後の加水分解の酸がHClを含み;無機亜硝酸塩がNaNOを含み;オキシム化に使用される酸がHClを含み;オキシム生成物の単離を促進するためにオキシム化生成混合物に水が加えられ;オキシム塩の形成に使用される塩基がKOHを含み;第1の水素化の触媒が炭素担持パラジウムを含み;イソプロピリデンアミノ化合物の形成に使用される酸が酢酸を含み;第2の水素化の触媒が炭素白金を含み;ジルパテロール遊離塩基の形成に使用される塩基およびアルコールが、それぞれNaOHおよびエタノールを含む。
【0122】
【化18】

【0123】
B.塩
本発明が、上記合成反応中の1種類以上の試薬および/または生成物が塩の形態であってよい実施形態をさらに含むことを理解されたい。例えばHCl塩などの1種類以上の酸付加塩の形態であってよいジルパテロール生成物の場合に特にこのことが言える。塩は、例えば塩基付加塩または酸付加塩であってよい。一般に、酸付加塩は種々の無機酸または有機酸を使用して調製することができ、塩基付加塩は種々の無機塩基および有機塩基を使用して調製することができる。このような塩は典型的には、例えば当分野において公知の方法を使用して、例えば遊離塩基化合物を酸と混合することによって、または遊離酸化合物を塩基と混合することによって形成することができる。塩は、種々の温度および湿度における安定性、または水、油またはその他の溶媒に対する望ましい溶解性などの塩の1つ以上の化学的性質または物理的性質のために好都合となり得る。場合によっては、化合物の単離または精製を促進するために、この化合物の塩を使用することもできる。ある実施形態(特に塩が、動物に投与されていることが意図されている場合、または塩が、動物に投与することが意図された化合物または塩の製造に使用される試薬となる場合)では、この塩は医薬的に許容されるものである。用語「医薬的に許容される」は、医薬品への使用が適切となる塩を特徴付けるために使用される。一般に、医薬的に許容される塩は、この塩が有することがあるあらゆる悪影響より重要となる1つ以上の利点を有する。
【0124】
典型的には酸付加塩の形成に使用することができる無機酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸およびリン酸が挙げられる。有機酸の例としては、例えば脂肪族、脂環式、芳香族、芳香脂肪族、複素環式、カルボン酸およびスルホン酸の種類の有機酸が挙げられる。有機塩の具体例としては、コール酸塩、ソルビン酸塩、ラウリン酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、グリコール酸塩、グルコン酸塩、ジグルコン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸(およびこの誘導体、例えばジベンゾイル酒石酸塩)、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、グルクロン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、ピルビン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、安息香酸塩、アントラニル酸、メシル酸塩、ステアリン酸塩、サリチル酸塩、p−ヒドロキシ安息香酸塩、フェニル酢酸塩、マンデル酸塩(およびこの誘導体)、エンボン酸塩(パモ酸塩)、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パントテン酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、スルファニル酸塩、シクロヘキシルアミンスルホン酸塩、アルゲン酸、β−ヒドロキシ酪酸、ガラクタル酸塩、ガラクツロン酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ドデシル硫酸塩、グリコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ニコチン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パルモ酸塩(palmoate)、ペクチン酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、チオシアン酸塩、トシレートおよびウンデカン酸塩が挙げられる。
【0125】
塩基付加塩の例としては、例えば金属塩および有機塩を挙げることができる。金属塩としては、例えばアルカリ金属(Ia族)塩、アルカリ土類金属(IIa族)塩、およびその他の生理学的に許容される金属塩が挙げられる。このような塩は、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムおよび亜鉛から製造することができる。例えば遊離酸化合物をNaOHと混合することでこのような塩基付加塩塩を形成することができる。有機塩は、トリメチルアミン、ジエチルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N−メチルグルカミン)およびプロカインなどのアミンから製造することができる。塩基性窒素含有基を、C−C−アルキルハロゲン化物(例えばメチル、エチル、プロピルおよびブチルの塩化物、臭化物およびヨウ化物)、硫酸ジアルキル(例えば硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチルおよび硫酸ジアミル)、長鎖ハロゲン化物(例えばデシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルの塩化物、臭化物およびヨウ化物)、アリールアルキルハロゲン化物(例えば臭化ベンジルおよび臭化フェネチル)などの物質で第四級化することができる。
【0126】
C.本発明により調製されたジルパテロールおよびこの塩の使用
本発明により調製されたジルパテロールまたは塩を含有する組成物は一般に、例えば家畜、家禽および/または魚類の体重増加速度の増加、飼料効率の改善、および/または枝肉赤身割合の増加に使用することができる。
【0127】
典型的には、ジルパテロールまたは塩組成物は経口投与される。ある実施形態では、組成物は、意図するレシピエント動物の飲用水に加えられる。別の実施形態では、ジルパテロールまたは塩は、直接またはプレミックスの一部としてのいずれかで意図するレシピエントの餌に加えられる。好適な経口剤形としては、例えば固体剤形(例えば錠剤、硬カプセルまたは軟カプセル、顆粒、粉末など)、ペースト、および液体剤形(例えば溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップなど)が挙げられる。これらの剤形は1種類以上の好適な賦形剤を場合により含む。このような賦形剤としては一般に、例えば甘味剤、香味料、着色剤、保存剤、不活性希釈剤(例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウムまたはカオリン)、造粒剤および崩壊剤(例えばトウモロコシデンプンまたはアルギン酸)、結合剤(例えばゼラチン、アラビアゴムまたはカルボキシメチルセルロース)、および滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルク)が挙げられる。液体組成物は一般に溶媒を含む。この溶媒は好ましくは、組成物の通常の保存温度における温度でジルパテロールまたは塩を溶解した状態で維持するのに十分な化学的性質および量を有する。場合によっては、組成物が1種類以上の保存剤を含むことが望ましいことがある。保存剤が存在することで、例えば組成物をより長時間保存できるようになる。
【0128】
ある実施形態では、ジルパテロールまたは塩は、支持体に付着した粒子の形態であり、これが意図するレシピエント動物に給餌される。支持されたジルパテロールまたは塩は、直接またはプレミックスの一部としてのいずれかで意図するレシピエントの餌に加えることができる。考慮される支持体としては、例えば炭酸カルシウム、石灰石、カキ殻粉、タルク、大豆皮、大豆ミール、大豆飼料、大豆ミルラン、小麦ふすま、もみ殻、コーンミール、コーン胚芽ミール、コーングルテン、デンプン、スクロースおよびラクトースなどの不活性支持体が挙げられる。特に考慮される支持体としては、米国特許5,731,028に記載される支持体などのトウモロコシ穂軸の支持体が挙げられる。トウモロコシ穂軸の支持体を使用するある実施形態では、支持体の大きさは約300から約800μmである。好ましくは、支持体に付着されるジルパテロールまたは塩粒子は、支持体の大きさよりも小さい粒度を有する。従って、例えば支持体が約300から約800μmとなるある実施形態では、粒子(または粒子の少なくとも約95%)が約250μm未満である。ある実施形態では、大部分の粒子の大きさが約50から約200μmである。支持されたジルパテロールまたは塩を製造するときに粉塵が発生するのを回避するために、非常に小さいジルパテロールまたは塩の粒子の使用を回避することが好ましい。ある実施形態では、例えばジルパテロールまたは塩の粒度分布は、約5%未満のジルパテロールまたは塩粒子が約15μm未満の粒度を有するような粒度分布である。例えば米国特許5,731,028(本特許に参照により組み入れられる。)に記載される特定のサイズ分布の結晶ジルパテロールの製造方法は、一般に、上述のサイズ分布を有する結晶を製造する場合に一般に適用することができる。
【0129】
本発明の組成物が飼料に混入される場合、飼料混合物は、例えば種類(例えば種および品種)、年齢、体重、活動性および意図するレシピエントの状態に依存して変化する。ウシおよびブタの場合、多種多様な飼料が当分野において周知であり、多くの場合、穀類;糖類;穀草;アラキジン酸、トーンソール(tournsole)、および大豆プレスケーキ;魚粉などの動物由来の粉末、アミノ酸;鉱物塩;ビタミン類;酸化防止剤などを含む。一般に、ジルパテロールまたは塩組成物は、意図するレシピエント動物に利用および使用されるあらゆる餌に混入することができる。
【0130】
ジルパテロールまたは塩組成物は、直腸などの非経口経路、吸入(例えばミストまたはエアロゾル)、経皮的(例えば経皮パッチ)、または非経口投与(例えば皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、埋め込みデバイス、部分埋め込みデバイスなど)を介して投与することができると考えられる。ある特定の実施形態では、組成物は、皮下埋め込みなどの埋め込みによって投与される。ウシまたはブタの動物への投与の場合、例えば組成物は、耳介後部へのインプラントの形態で投与することができる。
【0131】
一般に、ジルパテロールまたは塩組成物は、ジルパテロールまたは塩の有効量が提供される剤形で投与される。ジルパテロールまたは塩が組成物中の唯一の有効成分である場合に特にこのことが言える。ジルパテロールまたは塩が別の有効成分と共に投与されるのであれば、この投与量は好ましくは、他の有効成分の量とを併せると有効量となる量のジルパテロールまたは塩を含む。ジルパテロールまたは塩の場合、「有効量」は、意図するレシピエント(典型的には家畜、家禽および/または魚類)の体重増加速度の増加、飼料効率の改善、および/または枝肉赤身割合の増加に十分な量である。
【0132】
組成物が経口投与される場合、1日用量を使用することが典型的には好ましい。ジルパテロールまたは塩の好ましい1日用量は典型的には、特にウシおよびブタの動物の場合、約0.01mg/kg(即ち、体重1キログラム当たりのジルパテロールまたは塩のミリグラム数)を超える。一部のこのような実施形態では、1日用量は、約0.01から約50mg/kg、約0.01から約10mg/kg、約0.05から約2mg/kg、約0.1から約1、または約0.1から約0.2mg/kgである。例えばある実施形態では、用量は約0.15mg/kgである。
【0133】
ジルパテロールまたは塩がレシピエント動物の餌に投与されるある実施形態では、餌中のジルパテロールまたは塩の濃度(90%乾燥物質基準)が少なくとも約0.01ppm(重量基準)である。ウシ動物の場合、ジルパテロールまたは塩の濃度は好ましくは約75ppm(重量基準)以下である。ある実施形態では、例えばジルパテロールまたは塩の濃度は、約38ppm以下、約0.5から約20ppm、約3から約8ppm、または約3.7から約7.5ppm(重量基準)である。ブタ動物の場合、ジルパテロールまたは塩の濃度は好ましくは約45ppm(重量基準)以下である。一部のこのような実施形態では、例えばこの濃度は約23ppm以下、約0.5から約20ppm、約2から約5ppm、または約2.2から約4.5ppm(重量基準)である。
【0134】
1日1回の経口投与が典型的には好ましいが、ジルパテロールまたは塩のレシピエントによる代謝などに依存して、より短いまたはより長い投与間の期間を使用することもできると考えられる。より少ない容量を1日に2回以上投与して所望の1日総用量を実現できることが考慮される。場合によっては、このような1日の複数の用量は、所望であれば1日総用量まで増加させるために使用することができる。
【0135】
皮下埋め込みによる投与の場合、ジルパテロールまたは塩の好ましい1日総用量は、典型的には、特にウシまたはブタの動物の場合、約0.05mg/kg(即ち、体重1キログラム当たりのジルパテロールまたは塩のミリグラム数)を超える。一部のこのような実施形態では、1日用量は約0.1から約0.25mg/kgである。
【0136】
ジルパテロールまたは塩組成物が注射により非経口投与される場合、この剤形中のジルパテロールまたは塩の濃度は好ましくは、非経口投与に許容される体積中にジルパテロールまたは塩の所望の治療的有効量が提供されるのに十分な濃度である。経口投与の場合と同様に、注射剤形を1日1回投与することができるが、より短いまたはより長い投与間の期間を使用することもできると考えられる。
【0137】
好ましい投与計画に影響を与える要因としては、例えば種類(例えば種および品種)、年齢、大きさ、性別、食餌、活動性および意図するレシピエントの状態;使用される投与の種類(例えば餌を介した経口投与、飲用水を介した経口投与、皮下埋め込み、他の非経口経路など);投与される個別の組成物の活性、有効性、薬物動態、および毒物学的概要などの薬理学的な考慮事項;ならびに複数の有効成分の組み合わせの一部としてジルパテロールまたは塩が投与されるかどうかを挙げることができる。従ってジルパテロールまたは塩の好ましい量は変動することがあり、従って、前述の典型的な用量から逸脱することがある。通常、このような用量調節の決定は、従来手段を使用した当業者の技術の範囲内である。
【0138】
ジルパテロールまたは塩組成物は、意図するレシピエントに1回投与できることが考慮される。しかし、一般に、組成物は長期間にわたって投与される。動物レシピエントが家畜動物である一部の実施形態では、例えばジルパテロールまたは塩は、少なくとも約2日の間毎日、より典型的には約10から約60日の間毎日、さらにより典型的には約20から約40日の間毎日投与される。ある特定の実施形態では、組成物は、仕上期の最後の約10から最後の約60日の間毎日、または仕上期の最後の約20から最後の約40日の間の毎日投与される。用語「仕上期」は、動物の生育期の後期を意味する。この期間中、家畜動物は典型的にはフィードロット内に閉じ込められる。家畜動物がウシ動物である一部の実施形態では、この期間は約90から約225日間続き、例えば動物の出発体重に依存する。典型的には、ジルパテロールまたはこの塩が投与されない消退期間が仕上期後に存在する。この消退期間の長さは、例えば種類(例えば種および品種)、年齢、体重、活動性、およびレシピエント動物の状態、ならびに動物の肉中の最大許容残留濃度に依存し得る。
【0139】
実施例
以下の実施例は、本発明の実施形態を単に説明するものであって、本開示の残りの部分を限定するものでは決していない。
【実施例1】
【0140】
8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオンの調製
【0141】
パートA.クロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエートの調製
【0142】
【化19】

4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)酪酸(50g;0.227mol)、N,N−ジメチルホルムアミド(1.84g;0.025mol;0.11当量)、およびジクロロメタン(480g;5,652mol;24.89当量)を撹拌槽反応器に投入した。次に塩化オキサリル(31.12g;0.245mol;1.08当量)を、撹拌しながら1時間かけて10から20℃で投入した。次に得られた混合物を10から20℃でさらに1時間撹拌した。上記すべてのステップはN雰囲気下で行った。
【0143】
パートB.8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオンの調製
【0144】
【化20】

60℃および2.7bar(絶対)の圧力において、過圧排気口からHClガスを排出できる撹拌槽反応器中の塩化アルミニウム(100g;0.75mol、3.3当量)のジクロロメタン(320g;3.768mol;16.59当量)中のスラリーに、パートAで得た反応生成混合物を2から5時間かけて加えた。得られたスラリーをこの温度でさらに1時間撹拌した後、12℃に冷却した。別の撹拌槽反応器中で、水(800g;44.407mol;195.59当量)および32.5%HCl水溶液(118g;1.052molのHCl;4.63当量のHCl)を混合した。この混合物を0℃に冷却し、ヘッドスペース中の気体を300mbar(絶対)まで排気した。次に第1の反応器で得たスラリーを、数回にわけて第2の反応器に加えると、ジクロロメタンが蒸溜されながら温度が10から15℃に上昇した。第1の反応器を追加のジクロロメタン(25g;0.294mol;1.3当量)で洗浄し、次にこれを第2の反応器に加えた。次にジクロロメタンの蒸留を300mbarから大気圧圧力(絶対)および12から40℃において完了させた。得られた懸濁液を0℃に冷却した。固形分を濾過し、0℃において、水で4回の洗浄(各回291.25g;合計64.668mol;合計284.83当量)、およびイソプロパノールで1回の洗浄(80g;1.331mol;1.331当量)を行った。上記すべてのステップはN雰囲気下で行った。
【実施例2】
【0145】
4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムの調製
【0146】
【化21】

実施例1の手順により調製した8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオン(50g;純度92.4%;0.228mol)を乾燥させ、イソプロパノール(7.23g;0.12mol;0.53当量)および水(3.01g;0.167mol;0.73当量)と混合した(別の実験および生成では、実施例1の手順により調製した8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオンを、遠心分離して未乾燥の材料として代わりに使用し、水およびイソプロパノールは加えなかった。)。得られた湿潤状態の8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオンを、亜硝酸ナトリウム(純度99.3%で19.05g;0.274mol;1,2当量)およびN,N−ジメチルホルムアミド(800g;10.945mol;47.9当量)と撹拌槽反応器中で混合した。この混合物を50℃に加熱し、次に32%HCl(41.65g;0.366molのHCl;1.6当量のHCl)を30分間かけて加えた。HCl添加終了に近づくと(即ち、1当量を超えるHClが加えられた後)、温度は急速に60から70℃まで上昇した。すべてのHClを加えた後、混合物を60℃でさらに30分間撹拌した。次に混合物を2時間かけて35℃まで冷却した。次に、水(224.71g;12.473mol;54.6当量)を2時間かけて加えた。次に得られた混合物を2時間かけて0℃まで冷却し、この温度で2時間維持した。その後、固体の4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシム生成物を濾過により取り出し、水で4回の洗浄(各回70.1ml;合計15.566mol;合計68.13当量)およびアセトンで1回の洗浄(115.9g;純度99.9%;1.994mol;8.73当量)を行った。上記すべてのステップはN雰囲気下で行った。
【実施例3】
【0147】
8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオンのスケールアップした調製
【0148】
パートA.クロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエートの調製
【0149】
【化22】

ジクロロメタン(3772L)、続いて4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)酪酸(525kg;2.4kmol)を撹拌槽反応器に投入し、次にN,N−ジメチルホルムアミド(21L)を投入した。得られた混合物を10℃に冷却した。その後、塩化オキサリル(326.8kg))を10から15℃において撹拌しながら2から3時間かけて加えた。次に得られた混合物を15から20℃でさらに1から3時間撹拌した。上記すべてのステップはN雰囲気下で行った。変換は工程管理(「IPC」)によって検査した。
【0150】
パートB.8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオンの調製
【0151】
【化23】

塩化アルミニウム(1050kg)および10から20℃のジクロロメタン(2403L)を撹拌槽反応器に投入し、さらに10から20℃のジクロロメタン(112L)で反応器を洗浄した。次にこの反応器をNで2.7bar(絶対)まで加圧し、58から60℃に加熱した。次に、パートAで得た生成混合物を2から5時間かけて加えた。得られたスラリーをさらに1から2時間撹拌し、次に10から20℃に冷却した。その後、圧力を開放した。5℃の第2の撹拌槽反応器中に、水(3675L)を投入し、次に33%HCl水溶液(452L)を投入した。この混合物を0℃に冷却し、ヘッドスペース中の気体を270から470mbar(絶対)まで排気した。第1の反応器の内容物のほぼ半分を5から20℃で第2の反応器に加えた。この混合物を10から30℃でさらに30から90分間維持した。この移送と並行して、および移送の後に、ジクロロメタンを蒸留した。2つの反応器の間のラインをジクロロメタン(150ml)で洗浄した。これにより得られた洗液および第2の反応器の内容物を第3の撹拌槽反応器に移送した。第2および第3の反応器の間の移送ラインを水(200L)で洗浄した。この洗液も第3の反応器に投入した。次に5℃の水(3675L)および33%HCl(452L)を第2の反応器に加えた。得られた混合物を0℃に冷却し、ヘッドスペース中の圧力を270から470mbar(絶対)の間に設定した。第1の反応器の内容物の残り半分を5から20℃において第2の反応器に加えた。この混合物を10から30℃でさらに30から90分間維持した。この移送と並行して、および移送の後に、ジクロロメタンを蒸留した。第1および第2の反応器の間のラインをジクロロメタン(150ml)で洗浄した。これにより得られた洗液およ第2の反応器の内容物を第3の反応器に移送した。第2および第3の反応器の間の移送ラインを水(200L)で洗浄した。この洗液も第3の反応器に投入した。第3の反応器中で、ジクロロメタンを大気圧下30から40℃でさらに蒸留した。蒸留終了後、懸濁液を0から5℃に冷却した後、2つに分けて遠心分離した。得られたケーキのそれぞれについて0から5℃において水で4回の洗浄(各洗浄で390L)およびイソプロパノールで1回の洗浄(508L)を行った。上記すべてのステップはN雰囲気下で行った。
【実施例4】
【0152】
4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムの調製のスケールアップ
【0153】
【化24】

20℃において、N,N−ジメチルホルムアミド(7068L)を撹拌槽反応器に投入し、続いて実施例3の手順により調製した8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオン(合計450kgの未乾燥材料、純粋であれば約405kg)を加えた。この添加漏斗をN,N−ジメチルホルムアミド(105L)で洗浄し、この洗液を反応器に投入した。すべての8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオンが溶液となるまで、得られた混合物を45℃に加熱した。IPCを使用して、混合物中の純粋な8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオンの量を検査し、この測定から(未乾燥8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオンおよびN,N−ジメチルホルムアミドの質量も使用して)、8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオンの正確な量を計算し、次にこれを使用してN,N−ジメチルホルムアミド(17.3kg/kg)、亜硝酸ナトリウム(0.412kg/kg)、および33%HCl(0.873kg/kg)の量を計算した。IPCの間、混合物は20℃に冷却した。次に、亜硝酸ナトリウム(167kg、405kgの8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオンに対して)を加えた。この添加漏斗をN,N−ジメチルホルムアミド(105L)で洗浄し、この洗液を反応器に投入した。次に温度を45℃に上昇させた。続いて、先に計算した量の追加のN,N−ジメチルホルムアミド(97L、8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオン405kgに対して合計7375LのDMFであることに基づく。)を投入した。次に、得られた混合物を48℃に温め、次に33%HCl(353kg、バッチサイズに基づく。)を1時間かけて加えると、添加終了時に温度が60から65℃に上昇した。この混合物を60℃でさらに30分間撹拌した。次に、混合物を1から2時間かけて45℃に冷却した。得られた混合物を第2の反応器に移送した。次に第1の反応器をN,N−ジメチルホルムアミド(105L)で洗浄し、この洗液を第2の反応器に投入した。次に38℃の水(2000L)を2時間かけて加えた。得られた混合物を2から3時間かけて0℃に冷却した後、この温度でさらに2から8時間撹拌した。その後、混合物を0℃で遠心分離し、得られたケーキを水で3回(各回810L)洗浄し、アセトン(1010L)で洗浄し、65℃で減圧乾燥した。IPCを除いて、上記すべてのステップはN雰囲気下で行った。
【実施例5】
【0154】
ジルパテロールの調製
【0155】
パートA.ケトオキシムからのアミノアルコールカリウム塩の形成
【0156】
【化25】

高圧(3bar、絶対)および低圧(1bar、絶対)の間でそれぞれ10分間の撹拌槽反応器のNパージを3回行った。次に圧力を0.9bar(絶対)にした。次に水(790kg)を反応器に投入し、続いて実施例4により調製した4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシム(255kg)を投入した。次に反応器内容物を40℃に加熱した。次に、45%KOH(214kg)を連続的に反応器に投入すると、4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムから対応するカリウム塩が形成されて、この塩は溶解した(これは目視で確認できた。)。次に反応器に活性炭(13kg)を投入した。次に得られた混合物を40℃で30分間撹拌した.得られた混合物をフィルターループに1時間通して濾過して活性炭を除去した。次に混合物を15℃に冷却した。次に5%炭素担持パラジウム触媒(25.5kg、ジョンソン−マッテーイ(Johnson−Matthey))を反応器に投入した。次に反応器を水(50kg)で洗浄した。反応器中の得られた混合物を40℃および5から10bar(絶対)のH圧力で2から6時間撹拌した。その後、反応器を30分かけて排気し、HPLCを使用して反応を分析した。内容物をフィルターループで90分かけて濾過した。得られた濾過ケーキを水(50L)で洗浄し、取り出してパラジウムを回収した。濾過した溶液をHPLCで分析して、変換が完全であることを確認し、続いて次のステップで使用した。
【0157】
パートB.ジルパテロール−HOAcの形成
【0158】
【化26】

パートAで得た溶液を30℃に冷却した。次にアセトン(625L)を反応器に投入した。酢酸を加えてpHを7.5に調整した(約7から約8のpHが好ましい。)。次に得られた混合物を15℃に冷却した。次に、5%炭素担持白金触媒(21.3kg、デグサ(Degussa))を反応器に投入した後、水(50kg)を投入して反応器を洗浄した。ヘッドスペースを、5bar(絶対)の高圧と1bar(絶対)の低圧との間でそれぞれ15分間Hで3回パージした。次に水素圧を9,0bar(絶対、水素化用)にした。混合物を撹拌しながら1時間かけて70℃まで加熱し、次に、攪拌しながらこの温度でさらに1時間維持した。次に反応器を排気し、ヘッドスペースにNをパージした。HPLCを使用して反応を分析した。次に酢酸(8kg)を反応器に投入し、得られた混合物を30℃に冷却した。さらに酢酸を加えてpHを6.8に調整した。次に、混合物をフィルターループを介して1時間かけて移送し、この間30℃に維持した。得られたケーキを7%酢酸水溶液(75L)で洗浄した。濾過した溶液を、次のステップで使用する別の撹拌槽反応器に移送した。
【0159】
パートC.ジルパテロール遊離塩基の形成
【0160】
【化27】

パートBで得た生成物が入れられた撹拌槽反応器に、高圧(2bar、絶対)および低圧(1bar、絶対)の間で各10分間Nを3回パージした。次に圧力を0.9bar(絶対)にした。次に、蒸留によって30から70%まで混合物を濃縮した。濃縮した混合物を65℃に冷却した。エタノール(331L)を反応器に投入し、得られた混合物を50℃に冷却した。25%NaOHを使用してpHを10に調整した。これによってジルパテロール遊離塩基が沈殿した。温度を0℃まで下げて沈殿を促進し、この温度でさらに1時間維持した。固形分を濾過し、水(700L)で洗浄した。
【実施例6】
【0161】
ジルパテロールのHCl塩の合成
ジルパテロールの遊離塩基をエタノール中に溶解させる。次に、HClで飽和させた酢酸エチルを加える。得られた混合物を減圧濾過すると、ジルパテロールのHCl塩を含有する粗生成物が得られる。この粗生成物を熱メタノール中に溶解させる。次に酢酸エチルを加え、混合物を濾過すると最終的なHCl塩の生成物が得られる。
【実施例7】
【0162】
考慮される好適な剤形の第1の例
実施例6のHCl塩2.5または5mg、ならびにラクトース、小麦デンプン、処理デンプン、コメデンプン、タルクおよびステアリン酸マグネシウムの最終重量を100mgにするのに十分な賦形剤を含有する錠剤を調製する。
【実施例8】
【0163】
考慮される好適な剤形の第2の例
顆粒の各1日用量で実施例6のHCl塩を12.5または25含有する顆粒を調製する。
【実施例9】
【0164】
考慮される好適な剤形の第3の例
結晶ラセミ体のトランスジルパテロールを製造するための米国特許5,731,028に記載の方法を使用して実施例6のHCl塩を結晶化させる。結晶の5%未満が15μm未満の大きさを有し、結晶の少なくとも95%が250μm未満の大きさを有する。次に、欧州特許0197188(本特許に参照により組み入れられる。)に記載の方法を使用すると、300から800μmのトウモロコシ穂軸支持体に固定した結晶HCl塩のプレミックスが得られる。このプレミックス中のHCl塩濃度は3%(重量基準)である。
【0165】
本特許(特許請求の範囲を含む。)中の単語「含む」(comprise)、「含む」(comprises)、および「含むこと」(comprising)は、排他的ではなく包括的である解釈されたい。この解釈は、米国特許法に基づいてこれらの単語に与えられる解釈と同じであることを意図している。
【0166】
単語「方法(process)」および「方法」は本特許において交換可能に使用される。
【0167】
本特許中に引用されるすべての参考文献は、本特許に参照により組み入れられる。
【0168】
以上の好ましい実施形態の詳細な説明は、他の当業者に本発明、この原理、およびこの実際的な応用を知らせることのみを意図しており、そのため他の当業者は、個別の使用の要求に最適化できるように本発明をこの種々の形態で適応させ適用することができる。従って本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、様々に修正することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルパテロールまたはこの塩の製造方法であって、
4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)酪酸(またはこの塩)を、塩化オキサリル、ホスゲンおよびトリホスゲンからなる群より選択される少なくとも1種類の塩素化剤と反応させることを含む方法によってクロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエート(またはこの塩)を製造すること;または
8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオン(またはこの塩)を無機亜硝酸塩と反応させることを含む方法によって4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシム(またはこの塩)を製造すること
を含む、方法。
【請求項2】
4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)酪酸(またはこの塩)を、塩化オキサリル、ホスゲンおよびトリホスゲンからなる群より選択される少なくとも1種類の塩素化剤と反応させることを含む方法によってクロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエート(またはこの塩)を製造することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオン(またはこの塩)を無機亜硝酸塩と反応させることを含む方法によって4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシム(またはこの塩)を製造することを含む、請求項1および2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
イソプロピリデンアミノ化合物(またはこの塩)とHとを水素化触媒の存在下で反応させることをさらに含み、イソプロピリデンアミノ化合物が式(WO−1)
【化1】

の構造に対応する、請求項1、2および3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
と反応するイソプロピリデンアミノ化合物の少なくとも一部が、アミノアルコール塩をアセトンおよび酢酸と混合することを含む方法によって製造され、アミノアルコール塩が式(WO−2)、
【化2】

(上式中、Zは陽イオンである。)
の構造に対応する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
クロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエートまたはこの塩の製造方法であって、4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)酪酸(またはこの塩)を、塩化オキサリル、ホスゲンおよびトリホスゲンからなる群より選択される少なくとも1種類の塩素化剤と反応させることを含む、方法。
【請求項7】
8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオンまたはこの塩の製造方法であって、
4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)酪酸(またはこの塩)を、塩化オキサリル、ホスゲンおよびトリホスゲンからなる群より選択される少なくとも1種類の塩素化剤と反応させることを含む方法によってクロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエート(またはこの塩)を製造すること;および
クロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエート(またはこの塩)をルイス酸と反応させることを含む、方法。
【請求項8】
ルイス酸がAlClを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)酪酸(またはこの塩)を塩化オキサリルと反応させることを含む方法によってクロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエート(またはこの塩)を製造すること;
8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオン(またはこの塩)を含む生成混合物を
クロロ2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−1−ブタノエート(またはこの塩)をAlClと混合すること、および
得られた混合物を酸と混合すること
を含む方法によって製造すること、
生成混合物から8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオンを分離すること;および
残りの生成混合物の少なくとも一部を塩基と混合することを含む方法によって、残りの生成混合物の少なくとも一部からAl(OH)を分離すること
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムまたはこの塩の製造方法であって、8,9−ジヒドロ−2H,7H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6−ジオン(またはこの塩)を無機亜硝酸塩と反応させるステップを含む、方法。
【請求項11】
4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)酪酸(またはこの塩)を、ジクロロメタンの存在下で塩素化剤と反応させる、請求項1、2、3、4、5、6、7、8および9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)酪酸(またはこの塩)を、ジメチルホルムアミドの触媒量の存在下で塩素化剤と反応させる、1、2、3、4、5、6、7、8、9および11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
塩素化剤が塩化オキサリルを含む、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、11、および12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
無機亜硝酸塩が亜硝酸塩を含む、請求項1、2、3、4、5,10、11、12および13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
亜硝酸塩がNaNOを含む、請求項14に記載の方法。

【公表番号】特表2010−523485(P2010−523485A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500288(P2010−500288)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/053711
【国際公開番号】WO2008/119754
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(506196247)インターベツト・インターナシヨナル・ベー・ベー (85)
【Fターム(参考)】