説明

スイッチング素子の駆動装置

【課題】電圧制御形のスイッチング素子S*#の導通制御端子の電圧が正常時におけるシリーズレギュレータ22の出力電圧(ゲート印加電圧VgH)よりも低くなる中間電圧異常に対処できないこと。
【解決手段】ウィンドウコンパレータ70は、ゲート電圧Vgeが、スイッチング素子S*#がオン状態に切り替わる電圧とゲート印加電圧VgHとの間の中間電圧であると判断されることで、論理「H」の信号を出力する。この信号は、ローパスフィルタ72を介して中間電圧異常検出部74に取り込まれる。中間電圧異常検出部74では、ローパスフィルタ72の出力が論理「H」となることで、放電用スイッチング素子30、ソフト遮断用スイッチング素子42およびオフ保持用スイッチング素子60をオン操作して且つ、充電用スイッチング素子24およびシリーズレギュレータ22をオフ状態に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧制御形のスイッチング素子を駆動対象スイッチング素子とするスイッチング素子の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の駆動装置としては、例えば下記特許文献1に見られるように、車載主機に接続されるインバータを構成するスイッチング素子の駆動装置がある。詳しくは、この駆動装置は、駆動対象スイッチング素子を流れる電流が閾値電流以上となることで、インバータをシャットダウンする機能が搭載されたものである。
【0003】
ここで、駆動対象スイッチング素子を流れる電流が閾値電流以上となるのは、その導通制御端子に印加する電圧を高くしていることによる。すなわち、この場合、非飽和領域における電流が上記閾値電流を上回る。これは、駆動対象スイッチング素子の損失を低減するための設定である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−60358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、駆動装置に何らかの異常が生じることで駆動対象スイッチング素子に印加される電圧が低くなると、駆動対象スイッチング素子の損失が大きくなり、ひいては発熱に伴って急激な温度上昇を招くおそれがある。ただし、こうした異常が生じても、駆動対象スイッチング素子を流れる電流は閾値以下に維持されるため、上記シャットダウンする機能等によっては、これに対処することができない。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、電圧制御形のスイッチング素子を駆動対象スイッチング素子とするものにあって、その導通制御端子の電圧異常による不都合を好適に抑制することのできるスイッチング素子の駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段、およびその作用効果について記載する。
【0008】
請求項1記載の発明は、電圧制御形のスイッチング素子を駆動対象スイッチング素子とするスイッチング素子の駆動装置において、前記駆動対象スイッチング素子の導通制御端子の電圧が前記駆動対象スイッチング素子の通常のオン状態時における電圧である通常時オン操作電圧よりも低くて且つ前記駆動対象スイッチング素子のスイッチング状態がオン状態に切り替わる閾値電圧以上である中間の電圧であるか否かを判断する判断手段と、該判断手段によって前記中間の電圧であると判断されることを条件に、前記駆動対象スイッチング素子を強制的にオフ操作するオフ操作手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
上記発明では、中間の電圧であることを条件に駆動対象スイッチング素子が強制的にオフ操作されるため、駆動対象スイッチング素子が損失の大きい領域でオン状態とされ続けることを回避することができる。このため、導通制御端子の電圧異常による不都合を好適に抑制することができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記オフ操作手段は、前記駆動対象スイッチング素子に対するオン操作指令に伴う前記通常時オン操作電圧への移行期間および前記駆動対象スイッチング素子に対するオフ操作指令に伴う通常時のオフ状態時の電圧である通常時オフ操作電圧への移行期間のそれぞれとして想定される期間以外の期間において、前記判断手段によって中間の電圧であると判断されることを条件に前記強制的なオフ操作を行うことを特徴とする。
【0011】
オン操作指令に応じて駆動対象スイッチング素子のスイッチング状態がオン状態に切り替わる際には、導通制御端子の電圧が中間の電圧を通過する。また、オフ操作指令に応じて駆動対象スイッチング素子のスイッチング状態がオフ状態に切り替わる際には、導通制御端子の電圧が中間の電圧を通過する。上記発明では、この点に鑑み、移行期間にあって中間の電圧となる場合に強制的なオフ操作を行わない。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記オフ操作手段は、前記駆動対象スイッチング素子に対するオフ操作指令が入力される期間であって且つ通常時のオフ状態時の電圧である通常時オフ操作電圧への移行期間以外の期間において、前記判断手段によって中間の電圧であると判断されることを条件に前記強制的なオフ操作を行うことを特徴とする。
【0013】
オフ操作指令に応じて駆動対象スイッチング素子のスイッチング状態がオフ状態に切り替わる際には、導通制御端子の電圧が中間の電圧を通過する。上記発明では、この点に鑑み、移行期間にあって中間の電圧となる場合に強制的なオフ操作を行わない。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記オフ操作手段は、前記駆動対象スイッチング素子に対するオン操作指令が入力される期間であって且つ前記通常時オン操作電圧への移行期間以外の期間において、前記判断手段によって中間の電圧であると判断されることを条件に前記強制的なオフ操作を行うことを特徴とする。
【0015】
オン操作指令に応じて駆動対象スイッチング素子のスイッチング状態がオン状態に切り替わる際には、導通制御端子の電圧が中間の電圧を通過する。上記発明では、この点に鑑み、移行期間にあって中間の電圧となる場合に強制的なオフ操作を行わない。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明において、前記通常時オン操作電圧を生成する電源と、前記駆動対象スイッチング素子の導通制御端子と前記電源とを接続する充電経路と、該充電経路を開閉する充電用スイッチング素子と、前記駆動対象スイッチング素子をオン状態とするための電荷を前記導通制御端子から放電させる通常時放電経路と、該通常時放電経路を開閉する放電用スイッチング素子とを備えることを特徴とする。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記通常時放電経路よりもインピーダンスの高いソフト遮断用放電経路と、該ソフト遮断用放電経路を開閉するソフト遮断用スイッチング素子とをさらに備え、前記オフ操作手段は、前記ソフト遮断用スイッチング素子を操作することで前記強制的なオフ操作を行うことを特徴とする。
【0018】
上記発明では、ソフト遮断用放電経路を用いることで、駆動対象スイッチング素子がオフ状態に切り替わり速度を低くすることが可能となり、この場合、サージを抑制することができる。
【0019】
請求項7記載の発明は、請求項5または6記載の発明において、前記放電用スイッチング素子とは別に、前記駆動対象スイッチング素子の導通制御端子と入力端子および出力端子のいずれかとの間を短絡することで前記駆動対象スイッチング素子をオフ状態に保持するオフ保持用スイッチング素子をさらに備え、前記オフ操作手段は、前記オフ保持用スイッチング素子を操作することで前記強制的なオフ操作を行うことを特徴とする。
【0020】
上記発明では、オフ保持用スイッチング素子を用いることで、強制的なオフ操作の確実性を高めることができる。
【0021】
請求項8記載の発明は、請求項5〜7のいずれか1項に記載の発明において、前記オフ操作手段は、前記電源の状態をオフ状態とすることで前記強制的なオフ操作を行うことを特徴とする。
【0022】
上記発明では、電源をオフ状態とすることで、駆動対象スイッチング素子をオン状態とするための電荷が導通制御端子に供給されることを回避することができる。
【0023】
請求項9記載の発明は、請求項5〜8のいずれか1項に記載の発明において、前記オフ操作手段は、前記駆動対象スイッチング素子に対するオン操作指令が入力される期間であって且つ前記通常時オン操作電圧への移行期間以外の期間において、前記判断手段によって中間の電圧であると判断される場合、前記充電用スイッチング素子をオフ操作することを特徴とする。
【0024】
請求項10記載の発明は、請求項5〜9のいずれか1項に記載の発明において、前記オフ操作手段は、前記駆動対象スイッチング素子に対するオン操作指令が入力される期間であって且つ前記通常時オン操作電圧への移行期間以外の期間において、前記判断手段によって中間の電圧であると判断される場合、前記放電用スイッチング素子をオン操作することを特徴とする。
【0025】
請求項11記載の発明は、請求項5〜10のいずれか1項に記載の発明において、前記駆動対象スイッチング素子の導通制御端子と入力端子及び出力端子のいずれかとの間に設けられる複数のツェナーダイオードおよびクランプ用スイッチング素子の直列接続体と、
前記駆動対象スイッチング素子を流れる電流が閾値電流以上となることで前記スイッチング素子の導通制御端子の電圧を規定電圧にクランプすべく前記クランプ用スイッチング素子をオン操作するクランプ制御手段と、前記複数のツェナーダイオードの一部に直列接続された迂回用スイッチング素子とを備え、前記迂回用スイッチング素子が前記ツェナーダイオードの残りと前記クランプ用スイッチング素子の直列接続体に並列接続され、前記オフ操作手段は、前記迂回用スイッチング素子をオン操作することで前記強制的なオフ操作を行うことを特徴とする。
【0026】
請求項12記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記通常時放電経路よりもインピーダンスの高いソフト遮断用放電経路と、該ソフト遮断用放電経路を開閉するソフト遮断用スイッチング素子と、前記放電用スイッチング素子とは別に、前記駆動対象スイッチング素子の導通制御端子と入力端子および出力端子のいずれかとの間を短絡することで前記駆動対象スイッチング素子をオフ状態に保持するオフ保持用スイッチング素子とをさらに備え、前記オフ操作手段は、前記充電用スイッチング素子のオン状態からオフ状態への切り替え操作、前記放電用スイッチング素子のオフ状態からオン状態への切り替え操作、前記ソフト遮断用スイッチング素子のオン操作、前記オフ保持用スイッチング素子のオン操作、および前記電源のオフ操作のうちの少なくとも2つを行うことで、前記強制的なオフ操作を行うことを特徴とする。
【0027】
請求項13記載の発明は、請求項5〜11のいずれか1項に記載の発明において、前記駆動対象スイッチング素子は、高電位側のスイッチング素子および低電位側のスイッチング素子の一対のスイッチング素子の直列接続体を構成するそれぞれのスイッチング素子であり、前記一対のスイッチング素子は、その一方がオン且つ他方がオフとなる第1の状態と前記一方がオフ且つ前記他方がオンとなる第2の状態とを周期的に繰り返すように操作されるものであり、前記一対のスイッチング素子の少なくとも一方について、これを流れる電流が閾値電流以上である場合に前記一対のスイッチング素子の双方を強制的にオフ状態とするフェールセーフ手段をさらに備え、前記オフ操作手段は、前記電源の電圧を変更して前記中間の電圧を前記通常時オン操作電圧側へと移行させることで前記フェールセーフ手段を動作させて前記強制的なオフ操作を行うことを特徴とする。
【0028】
中間の電圧となる異常には、駆動対象スイッチング素子の操作信号がオン操作指令であるかオフ操作指令であるかにかかわらず常時中間の電圧が維持される異常もあると考えられる。この場合、一対のスイッチング素子が交互にオン操作されることで、双方がオン状態となる状態が生じる。しかし、導通制御端子の電圧が中間の電圧であるが故に駆動対象スイッチング素子に流れる電流が閾値電流以上とはならないおそれがある。この点、上記発明では、通常時オン操作電圧側に移行させることで、双方がオン状態となる際に駆動対象スイッチング素子に流れる電流が閾値電流以上となるようにすることができる。
【0029】
請求項14記載の発明は、請求項1〜13のいずれか1項に記載の発明において、前記強制的なオフ操作をする際、その旨を通知する通知手段をさらに備えることを特徴とする。
【0030】
前記通知対象は、前記駆動対象スイッチング素子の操作信号を生成する生成手段であってもよい。
【0031】
請求項15記載の発明は、請求項1〜14のいずれか1項に記載の発明において、前記駆動対象スイッチング素子は、高電位側のスイッチング素子および低電位側のスイッチング素子の一対のスイッチング素子の直列接続体を構成するそれぞれのスイッチング素子であり、前記一対のスイッチング素子は、その一方がオン且つ他方がオフとなる第1の状態と前記一方がオフ且つ前記他方がオンとなる第2の状態とを周期的に繰り返すように操作されるものであり、前記一対のスイッチング素子の少なくとも一方について、これを流れる電流が閾値電流以上である場合に前記一対のスイッチング素子の双方を強制的にオフ状態とするフェールセーフ手段をさらに備え、前記通常時オン操作電圧によって前記駆動対象スイッチング素子を非飽和領域で駆動する際の電流が、前記閾値電流よりも大きいことを特徴とする。
【0032】
中間の電圧となる異常には、駆動対象スイッチング素子の操作信号がオン操作指令であるかオフ操作指令であるかにかかわらず常時中間の電圧が維持される異常もあると考えられる。この場合、一対のスイッチング素子が交互にオン操作されることで、双方がオン状態となる状態が生じる。しかし、導通制御端子の電圧が中間の電圧であるが故に駆動対象スイッチング素子に流れる電流が閾値電流以上とはならないおそれがある。この点、上記発明では、判断手段およびオフ操作手段を備えることで、こうした事態に対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかるドライブユニットの回路構成を示す回路図。
【図3】ゲート電圧とコレクタ電流およびコレクタエミッタ間電圧との関係を示す図。
【図4】ゲート電圧の推移を示すタイムチャート。
【図5】上記実施形態にかかる強制的なオフ操作を示すタイムチャート。
【図6】第2の実施形態にかかるドライブユニットの回路構成を示す回路図。
【図7】同実施形態にかかる中間電圧異常の検出処理の手順を示す流れ図。
【図8】第3の実施形態にかかるドライブユニットの回路構成を示す回路図。
【図9】第4の実施形態にかかるドライブユニットの回路構成を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかるスイッチング素子の駆動装置を車載主機としての回転機に接続されたインバータの駆動装置に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0035】
図1に、本実施形態にかかる制御システムの全体構成を示す。モータジェネレータ10は、車載主機であり、図示しない駆動輪に機械的に連結されている。モータジェネレータ10は、インバータIV及び昇圧コンバータCVを介して高電圧バッテリ12に接続されている。ここで、昇圧コンバータCVは、コンデンサCと、コンデンサCに並列接続された一対のスイッチング素子Scp,Scnと、一対のスイッチング素子Scp,Scnの接続点と高電圧バッテリ12の正極とを接続するリアクトルLとを備えている。そして、スイッチング素子Scp,Scnのオン・オフによって、高電圧バッテリ12の電圧(例えば「288V」)を所定の電圧(例えば「666V」)を上限として昇圧するものである。一方、インバータIVは、スイッチング素子Sup,Sunの直列接続体と、スイッチング素子Svp,Svnの直列接続体と、スイッチング素子Swp,Swnの直列接続体とを備えており、これら各直列接続体の接続点がモータジェネレータ10のU,V,W相にそれぞれ接続されている。これらスイッチング素子Sup,Sun,Svp,Svn,Swp,Swn,Scp,Scnとして、本実施形態では、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)が用いられている。そして、これらにはそれぞれ、ダイオードDup,Dun,Dvp,Dvn,Dwp,Dwn,Dup,Dunが逆並列に接続されている。
【0036】
制御装置18は、低電圧バッテリ16を電源とする制御装置である。制御装置18は、モータジェネレータ10を制御対象とし、その制御量を所望に制御すべく、インバータIVやコンバータCVを操作する。詳しくは、コンバータCVのスイッチング素子Scp,Scnを操作すべく、操作信号gcp、gcnをドライブユニットDUに出力する。また、インバータIVのスイッチング素子Sup,Sun,Svp,Svn,Swp,Swnを操作すべく、操作信号gup,gun,gvp,gvn,gwp,gwnをドライブユニットDUに出力する。ここで、高電位側の操作信号gcp,gup,gvp,gwpと、対応する低電位側の操作信号gcn,gun,gvn,gwnとは、互いに相補的な信号となっている。換言すれば、高電位側のスイッチング素子Scp,Sup,Svp,Swpと、対応する低電位側のスイッチング素子Scn,Sun,Svn,Swnとは、交互にオン状態とされる。
【0037】
ここで、高電圧バッテリ12を備える高電圧システムと低電圧バッテリ16を備える低電圧システムとは、互いに絶縁されており、これらの間の信号の授受は、例えばフォトカプラ等の絶縁素子を備えるインターフェース14を介して行われる。
【0038】
図2に、上記ドライブユニットDUの構成を示す。
【0039】
図示されるように、ドライブユニットDUは、1チップ化された半導体集積回路であるドライブIC20を備えている。ドライブIC20の端子T1には、ドライブユニットDUの電源の電圧Vfbが印加される。ちなみに、この電源は、低電圧バッテリ16の電力を変換するフライバックコンバータとすればよい。
【0040】
上記電圧Vfbは、シリーズレギュレータ22によって降圧され、スイッチング素子S*#(*=u,v,w,c、#=p,n)の導通制御端子(ゲート)に印加するための電圧(ゲート印加電圧VgH)とされる。シリーズレギュレータ22の出力端子は、ドライブIC20の端子T2,T3を介して充電用スイッチング素子24の入力端子に接続されている。充電用スイッチング素子24の出力端子は、ドライブIC20の端子T4に接続され、端子T4は、充電用抵抗体26を介してスイッチング素子S*#のゲートに接続されている。
【0041】
一方、スイッチング素子S*#のゲートは、放電用抵抗体28を介してドライブIC20の端子T5に接続されており、端子T5は、放電用スイッチング素子30を介して端子T6に接続されている。そして、端子T6は、スイッチング素子S*#の出力端子(エミッタ)に接続されている。
【0042】
上記充電用スイッチング素子24および放電用スイッチング素子30は、ドライブIC20内の駆動制御部32によって操作される。すなわち、駆動制御部32では、端子T7を介して入力される上記操作信号g*#に基づき、充電用スイッチング素子24及び放電用スイッチング素子30を相補的にオン・オフすることでスイッチング素子S*#を駆動する。すなわち、操作信号g*#がオン操作指令となることで、充電用スイッチング素子24をオンして且つ放電用スイッチング素子30をオフし、操作信号g*#がオフ操作指令となることで、充電用スイッチング素子24をオフして且つ放電用スイッチング素子30をオンする。
【0043】
上記端子T5は、また、ツェナーダイオード36およびクランプ用スイッチング素子38の直列接続体を介して端子T6に接続されている。ここで、ツェナーダイオード36のブレークダウン電圧は、スイッチング素子S*#に過度の電流が流れない程度にスイッチング素子S*#のゲート電圧を制限するものである。
【0044】
上記端子T5は、さらに、ソフト遮断用抵抗体40およびソフト遮断用スイッチング素子42を介して端子T6に接続されている。
【0045】
一方、上記スイッチング素子S*#は、その入力端子(コレクタ)及び出力端子(エミッタ)間に流れる電流(コレクタ電流)と相関を有する微少電流を出力するセンス端子Stを備えている。そして、センス端子Stは、抵抗体44,46の直列接続体を介してエミッタに電気的に接続されている。これにより、センス端子Stから出力される電流によって抵抗体46に電圧降下が生じるため、抵抗体46による電圧降下量を、スイッチング素子S*#の入力端子及び出力端子間を流れる電流と相関を有する電気的な状態量とすることができる。
【0046】
上記抵抗体46による電圧降下量は、端子T8を介して、コンパレータ48の非反転入力端子に取り込まれる。一方、コンパレータ48の反転入力端子には、基準電源50の基準電圧Vrefが印加されている。これにより、コレクタ電流が閾値電流以上となることで、コンパレータ48の出力信号が論理「L」から論理「H」に反転する。コンパレータ48の出力する論理「H」の信号は、クランプ用スイッチング素子38に印加されるとともに、ディレイ54に取り込まれる。ディレイ54は、入力信号が所定時間に渡って論理「H」となることで、フェール信号FL1を出力する。フェール信号FL1は、スイッチング素子S*#を強制的にオフ状態とすべく、ソフト遮断用スイッチング素子42をオン操作したり、充電用スイッチング素子24および放電用スイッチング素子30の駆動を停止させるべく駆動制御部32に指令するものである。
【0047】
こうした構成によれば、スイッチング素子S*#を過電流が流れる場合には、まずクランプ用スイッチング素子38のオン操作に伴ってツェナーダイオード36がオン状態とされることで、スイッチング素子S*#のゲート電圧が低下する。これにより、スイッチング素子S*#を流れる電流を制限することができる。そしてその後、過電流が所定時間継続する場合には、ソフト遮断用スイッチング素子42がオン状態とされることから、スイッチング素子S*#が強制的にオフとされる。
【0048】
これにより、コレクタ電流が閾値以上となる状態が所定時間以上継続することで、ソフト遮断用スイッチング素子42がオンとされ、ソフト遮断用抵抗体40および放電用抵抗体28を介して、スイッチング素子S*#のゲートの電荷が放電される。ここで、ソフト遮断用抵抗体40は、放電経路の抵抗値を高抵抗とするためのものである。これは、コレクタ電流が過大である状況下にあっては、スイッチング素子S*#をオン状態からオフ状態へと切り替える速度、換言すればコレクタ及びエミッタ間の遮断速度を大きくすると、サージが過大となるおそれがあることに鑑みたものである。このため、コレクタ電流が閾値以上となると判断される状況下にあっては、放電用抵抗体28および放電用スイッチング素子30を備える放電経路よりも抵抗値の大きい経路によってスイッチング素子S*#のゲートを放電させる。
【0049】
なお、フェール信号FL1は、端子T9を介して低電圧システム(制御装置18)に出力される。また、このフェール信号FL1によって、先の図1に示すフェール処理部14aでは、インバータIVやコンバータCVをシャットダウンする。ちなみに、フェール処理部14aの構成は、例えば特開2009−60358号公報の図3に記載のものとすればよい。
【0050】
上記ドライブユニットDUは、さらに、スイッチング素子S*#のゲートおよびエミッタ間を短絡するためのNチャネルMOS型電界効果トランジスタ(オフ保持用スイッチング素子60)を備えている。オフ保持用スイッチング素子60は、スイッチング素子S*#のゲートおよびエミッタ間を低抵抗にて接続すべく、スイッチング素子S*#に極力近接して設けられている。そして、スイッチング素子S*#のゲートおよびエミッタ間を接続させる経路のうち、オフ保持用スイッチング素子60を備える経路のインピーダンスは、放電用抵抗体28を備える経路のインピーダンスよりも低くなるように設定されている。これは、上記操作信号g*#に応じてスイッチング素子S*#がオフ状態とされている際、スイッチング素子S*#の入力端子(コレクタ)や出力端子(エミッタ)とゲートとの間の寄生容量を介してゲートに高周波ノイズが重畳することでスイッチング素子S*#が誤ってオン状態となることを回避するためのものである。
【0051】
上記オフ保持用スイッチング素子60のゲートは、端子T10を介して、ドライブIC20内のオフ保持回路62に接続されている。オフ保持回路62は、端子T4に印加される電圧に基づき、スイッチング素子S*#のゲート電圧をモニタし、この電圧が所定電圧となることで、オフ保持用スイッチング素子60をオン操作する処理を行うものである。また、駆動制御部32から放電用スイッチング素子30のゲートに出力する信号をモニタし、放電用スイッチング素子30がオフ操作されることに同期してオフ保持用スイッチング素子60をオフ操作する処理を行うものでもある。
【0052】
上記スイッチング素子S*#の入出力端子間の電圧(コレクタエミッタ間電圧Vce)と、コレクタ電流Icとの間には、図3に示すような関係がある。すなわち、一般に、スイッチング素子*#が非飽和領域で駆動されない場合には、コレクタ電流Icが大きいほどコレクタエミッタ間電圧Vceが大きくなり、また、このコレクタエミッタ間電圧Vceは、ゲート電圧Vgeが大きいほど小さくなる。これに対し、非飽和領域においては、コレクタ電流Icはゲート電圧Vgeに応じた一定値となる。
【0053】
本実施形態では、スイッチング素子S*#の損失低減の目的でこれを飽和領域で駆動すべく、上記ゲート印加電圧VgHを高く設定する。このため、非飽和領域の電流は、閾値電流Ithよりも大きくなる。これが、スイッチング素子S*#に過電流が流れうる理由である。ちなみに、上記ツェナーダイオード36のブレークダウン電圧は、スイッチング素子S*#の非飽和領域の電流が閾値電流Ithよりも僅かに大きくなる程度の電圧に設定されている。
【0054】
ところで、スイッチング素子S*#のゲートに印加される電圧がシリーズレギュレータ22の本来の出力電圧(ゲート印加電圧VgH)よりも小さくなる異常が生じる場合、スイッチング素子S*#の損失が想定外に大きくなるおそれがある。こうした異常は、例えば以下のような要因によって生じうると考えられる。
【0055】
1.放電用スイッチング素子30がオン状態とならない異常が生じること:この場合、充電用スイッチング素子24がオフ状態に切り替わっても、ゲートの電荷は、ゲートおよびエミッタ間を接続する抵抗体(図示略)等を介して緩やかに放電されるのみとなる。
【0056】
2.放電用スイッチング素子30が導通状態に維持される異常が生じること:この場合、充電用スイッチング素子24がオン操作されることで、シリーズレギュレータ22の出力電圧を、充電用抵抗体26および放電用抵抗体28によって分圧した電圧がゲートに印加される。
【0057】
3.スイッチング素子S*#自体に異常が生じること:例えばゲートおよびコレクタ間のリーク電流等によってゲート電圧Vgeが異常電圧となることが考えられる。
【0058】
4.シリーズレギュレータ22自体に異常が生じること:これにより、ゲート電圧Vgeが低下することが考えられる。
【0059】
5.端子T3と端子T4との短絡異常が生じること:この場合、放電用スイッチング素子30がオン状態となることで、シリーズレギュレータ22の出力電圧を、充電用抵抗体26および放電用抵抗体28によって分圧した電圧がゲートに印加される。
【0060】
こうした異常が生じた場合、スイッチング素子S*#の損失が増大することから温度が急激に上昇するおそれがある。そしてこの場合、温度が閾値温度以上となることでスイッチング素子S*#をオフ操作する保護手段(図示略)による対処が間にあわなくなるおそれがある。特に、上記要因1、5の場合には、操作信号g*#がオフ操作指令となることで本来なら逆アームにのみ電流が流れる場合において、上下アームに短絡電流が流れるために、温度上昇速度が大きくなるおそれがある。ちなみに、この短絡電流は、低く抑えられたゲート電圧Vgeのために、閾値電流Ithに達しないことがあり、この場合、上記過電流保護手段を動作させることもできない。
【0061】
そこで本実施形態では、図4に示すように、スイッチング素子S*#がオン状態に切り替わる電圧以上であって且つシリーズレギュレータ22の本来の出力電圧(ゲート印加電圧VgH)よりも小さい電圧である中間電圧が継続することに基づき、中間電圧異常であると判断する。詳しくは、上記切り替わる電圧以上に設定された低圧側閾値VthL以上であって且つゲート印加電圧VgHよりも小さく設定された高圧側閾値VthH以下である場合に、中間電圧異常であると判断する。
【0062】
具体的には、先の図2に示すように、中間電圧を検出するウィンドウコンパレータ70に、端子T11を介してゲート電圧Vgeが印加される。ウィンドウコンパレータ70は、ゲート電圧Vgeと電源70dの出力電圧(低圧側閾値VthL)との大小を比較するコンパレータ70aと、ゲート電圧Vgeと電源70cの出力電圧(高圧側閾値VthH)との大小を比較するコンパレータ70bとを備えている。そして、これらコンパレータ70a,70bの出力端子には、それぞれダイオード70e,70fのカソードが接続されており、ダイオード70e,70fのアノード側は、抵抗体70gを介して電源70hによってプルアップされている。このプルアップされたアノードが、ウィンドウコンパレータ70の出力端子である。ウィンドウコンパレータ70の出力信号は、ゲート電圧Vgeが低圧側閾値VthLと高圧側閾値VthHとの間の中間電圧となることで論理「H」となる。
【0063】
ウィンドウコンパレータ70の出力端子は、抵抗体72aおよびコンデンサ72bを備えて構成されるCR回路(ローパスフィルタ72)を介して中間電圧異常検出部74に取り込まれる。ここで、ローパスフィルタ72は、先の図4に示したように、スイッチング素子S*#がオン状態に切り替わる際に過渡的に中間電圧となる期間やスイッチング素子S*#がオフ状態に切り替わる際に過渡的に中間電圧となる期間のように短時間の間入力電圧が論理「H」に反転したとしても、これを出力しないように時定数が設定されたものである。なお、ローパスフィルタ72は、上記ディレイ54によって除去される短時間の間、入力電圧が論理「H」に判定したとしても、これを出力しない。一方、中間電圧異常検出部74は、その入力電圧が論理「H」となることで、オン状態への切り替わりやオフ状態への切り替わりに際しての中間電圧となる時間よりも長い時間に渡って中間電圧が検出されることでフェール信号FL2を出力するものである。
【0064】
このフェール信号FL2は、OR回路56を介してソフト遮断用スイッチング素子42をオン操作し、OR回路64を介してオフ保持用スイッチング素子60をオン操作し、駆動制御部32に入力されることで充電用スイッチング素子24をオフ操作するとともに放電用スイッチング素子30をオン操作し、シリーズレギュレータ22をオフ操作するものである。また、フェール信号FL2は、端子T12を介して低電圧側システム側(制御装置18)に出力されることで、低電圧システムに中間電圧異常を通知するものである。
【0065】
図5に、本実施形態にかかる中間電圧異常に関するフェールセーフ処理を示す。詳しくは、図5(a)に、高電位側のスイッチング素子S*pの操作信号g*pの推移を示し、図5(b)に、低電位側のスイッチング素子S*nの操作信号g*nの推移を示し、図5(c)に、高電位側のスイッチング素子S*pのゲート電圧Vgeの推移を示す。また、図5(d)に、高電位側のスイッチング素子S*p用のウィンドウコンパレータ70の出力信号の推移を示し、図5(e)に、高電位側のスイッチング素子S*p用のローパスフィルタ72の出力電圧の推移を示し、図5(f)に、フェール信号FL2の推移を示す。さらに、図5(g)に、高電位側のスイッチング素子S*p用の充電用スイッチング素子24の状態推移を示し、図5(h)に、高電位側のスイッチング素子S*p用の放電用スイッチング素子30の状態推移を示し、図5(i)に、高電位側のスイッチング素子S*p用のソフト遮断用スイッチング素子42の状態推移を示し、図5(j)に、高電位側のスイッチング素子S*p用のオフ保持用スイッチング素子60の状態推移を示し、図5(k)に、高電位側のスイッチング素子S*p用のシリーズレギュレータ22の状態推移を示す。
【0066】
図示されるように、操作信号g*pがオン操作指令に切り替わることで、高電位側のスイッチング素子S*pのゲート電圧Vgeが上昇するものの、この電圧はシリーズレギュレータ22が正常である場合のその出力電圧(ゲート印加電圧VgH)まで上昇することなく中間電圧にとどまる。この場合、ウィンドウコンパレータ70の出力信号が論理「H」となる状態が継続することで、ローパスフィルタ72の出力電圧も論理「H」に移行する。そしてこれにより、フェール信号FL2が立ち上がることで、放電用スイッチング素子30、ソフト遮断用スイッチング素子42およびオフ保持用スイッチング素子60がオン操作されて且つ、充電用スイッチング素子24およびシリーズレギュレータ22がオフ状態に切り替えられる。
【0067】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0068】
(1)スイッチング素子S*#に対するオン操作指令に伴うオン状態への移行期間およびオフ操作指令に伴うオフ状態への移行期間以外において、ゲート電圧が中間電圧となることを条件に、スイッチング素子S*#を操作信号G*#の指示にかかわらずオフ操作した。これにより、中間電圧異常に好適に対処することができる。
【0069】
(2)中間電圧異常が検出される場合、放電用スイッチング素子30、ソフト遮断用スイッチング素子42およびオフ保持用スイッチング素子60をオン操作して且つ、充電用スイッチング素子24およびシリーズレギュレータ22をオフ状態に切り替えた。これにより、これら操作対象のいずれかに異常があったとしても、スイッチング素子S*#を迅速且つ確実にオフ操作することができる。
【0070】
(3)中間電圧異常が検出される場合、その旨を外部に通知した(フェール信号FL2を出力した)。これにより、異常が生じたことをユーザに通知することも可能となる。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0071】
図6に、本実施形態にかかるドライブユニットDUの構成を示す。なお、図6において、先の図2に示した部材と対応する部材については、便宜上、同一の符号を付している。
【0072】
図示されるように、本実施形態では、ウィンドウコンパレータ70の出力信号が中間電圧異常検出部74に直接入力される。中間電圧異常検出部74では、この信号と、操作信号g*#とに基づき、中間電圧異常の有無を判断する。
【0073】
図7に、中間電圧異常検出部74の処理の手順を示す。この処理は、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0074】
この一連の処理では、まずステップS10において、中間電圧異常の検出を禁止するマスキングフラグがオンとなっているか否かを判断する。そして否定判断される場合には、ステップS12において、操作信号g*#がオン操作指令からオフ操作指令に切り替わったときであることとオフ操作指令からオン操作指令に切り替わったときであることとの論理和が真であるか否かを判断する。そして、ステップS12において肯定判断される場合、ステップS14においてマスキングフラグをオンとする。
【0075】
一方、上記ステップS10において肯定判断される場合、ステップS16においてマスキング期間を計時するタイマTの計時動作を開始する。続くステップS18においては、タイマTが閾値Tth以上であるか否かを判断する。そしてステップS18において肯定判断される場合、ステップS20においてマスキングフラグをオフして且つタイマTをリセットする。
【0076】
一方、上記ステップS12において否定判断される場合、ステップS22においてウィンドウコンパレータ70の出力信号が論理「H」であるか否かを判断する。そして、ステップS22において肯定判断される場合、ステップS24において、フェール信号FL2を出力する。
【0077】
なお、上記ステップS14,S20、S24の処理が完了する場合や、ステップS18,S22において否定判断される場合には、この一連の処理を一旦終了する。
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0078】
図8に、本実施形態にかかるドライブユニットDUの構成を示す。なお、図8において、先の図2に示した部材と対応する部材については、便宜上、同一の符号を付している。
【0079】
図示されるように、本実施形態では、スイッチング素子S*#のゲートに印加する電圧を、シリーズレギュレータ22の出力電圧とするか、シリーズレギュレータ22の入力電圧とするかを切り替える切替部80を備え、その切替状態がフェール信号FL2によって操作される。詳しくは、フェール信号FL2が入力されることで、スイッチング素子S*#のゲートに印加する電圧をシリーズレギュレータ22の入力電圧に切り替える。
【0080】
これにより、ゲート電圧Vgeを上昇させることで中間電圧異常を解消することができるため、中間電圧となった要因が上記要因1、5の場合、低電位側のスイッチング素子S*nと高電位側のスイッチング素子S*pとの双方がオン状態となることで貫通電流が流れる際、フェール信号FL1が出力されてインバータIVがシャットダウンされる。
<第4の実施形態>
以下、第4の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0081】
図9に、本実施形態にかかるドライブユニットDUの構成を示す。なお、図9において、先の図2に示した部材と対応する部材については、便宜上、同一の符号を付している。
【0082】
図示されるように、本実施形態では、ツェナーダイオード36の一部とクランプ用スイッチング素子38とに並列に迂回用スイッチング素子82を接続する。そして、フェール信号FL2の出力時にこの迂回用スイッチング素子82がオン状態に切り替えられることで、スイッチング素子S*#をオフ操作する。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0083】
「判断手段について」
中間電圧であるか否かを判断する判断手段としては、ウィンドウコンパレータを備えるもの等、アナログ回路によって構成されるものに限らない。例えば、ゲート電圧VgeをA/D変換器によってデジタルデータに変換し、デジタル処理によって中間電圧であるか否かを判断する手段であってもよい。
【0084】
判断手段としては、充電用抵抗体26および放電用抵抗体28とゲートとの間の電圧をゲート電圧Vgeとして利用するものに限らない。例えば、充電用スイッチング素子24のオフ状態時には、端子T4の電圧をゲート電圧Vgeとして利用するものであってもよい。ただし、充電用スイッチング素子24のオフ操作時にもかかわらず充電用スイッチング素子24が実際にはオン状態となる異常によって中間電圧となる異常が生じる可能性があるなら、充電用抵抗体26および放電用抵抗体28とゲートとの間の電圧をゲート電圧Vgeとして利用することが中間電圧を検出する上で望ましい。
【0085】
「中間電圧異常検出のマスキング期間について」
マスキング期間の生成手段としては、上記各実施形態において例示したものに限らない。例えば、端子T11の電圧をローパスフィルタに印加して且つ、ローパスフィルタの出力信号をウィンドウコンパレータに入力するものであってもよい。さらに、このようにアナログ回路にてマスキング期間を生成するものにおいても、中間電圧異常検出部74において、先の第2の実施形態の要領で、操作信号g*#に基づきデジタル処理によってマスキング期間をさらに設定してもよい。
【0086】
また、操作信号g*#を入力とする場合であっても、マスキング期間をアナログ回路によって生成するものとしてもよい。
【0087】
「強制的なオフ操作に利用する手段について」
強制的なオフ操作に利用する手段としては、上記各実施形態において例示したものに限らない。例えば、上記第1、2の実施形態において、ソフト遮断用スイッチング素子42、オフ保持用スイッチング素子60、シリーズレギュレータ22のうちの1つまたは2つを利用してもよい。この際、第4の実施形態における迂回用スイッチング素子82をさらに利用してもよい。また、操作信号g*#がオン状態を指令する場合、充電用スイッチング素子24をオフ且つ放電用スイッチング素子30をオンするものであってもよい。この際、ソフト遮断用スイッチング素子42、オフ保持用スイッチング素子60、シリーズレギュレータ22のうちの1つまたは2つをさらに利用してもよい。さらに、この際、第4の実施形態における迂回用スイッチング素子82を利用してもよい。
【0088】
なお、複数の手段を利用する場合、これらを同時に操作するものに限らない。例えば、ソフト遮断用スイッチング素子42とオフ保持用スイッチング素子60とを利用する場合において、ソフト遮断用スイッチング素子42をオン操作した後にオフ保持用スイッチング素子60をオン操作してもよい。このように、インピーダンスの大きい経路を先に利用することで、強制的なオフ操作に伴うサージを抑制することができる。
【0089】
「通常時放電経路について」
通常時放電経路としては、スイッチング素子S*#のゲートとエミッタとの間を接続する経路に限らない。例えば、スイッチング素子S*#のエミッタよりも電位の低い端子とゲートとを接続する経路であってもよい。
【0090】
「駆動対象スイッチング素子について」
駆動対象スイッチング素子としては、IGBTに限らず、例えばMOS型電界効果トランジスタ等であってもよい。この際、NチャネルMOS型電界効果トランジスタに限らず、PチャネルMOS型電界効果トランジスタであってもよい。この場合、駆動対象スイッチング素子をオン状態とするための電荷を放電するための放電経路は、例えば導通制御端子および入力端子間を接続する経路とすればよい。
【0091】
また、駆動対象スイッチング素子としては、インバータIVや昇降圧チョッパ回路(コンバータCV)を構成するものに限らない。例えば、高電圧バッテリ12の電圧を降圧して低電圧バッテリ16に印加する降圧コンバータを構成するものであってもよい。
【符号の説明】
【0092】
10…モータジェネレータ、14a…フェール処理部、18…制御装置、70…ウィンドウコンパレータ、72…ローパスフィルタ、74…中間電圧異常検出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧制御形のスイッチング素子を駆動対象スイッチング素子とするスイッチング素子の駆動装置において、
前記駆動対象スイッチング素子の導通制御端子の電圧が前記駆動対象スイッチング素子の通常のオン状態時における電圧である通常時オン操作電圧よりも低くて且つ前記駆動対象スイッチング素子のスイッチング状態がオン状態に切り替わる閾値電圧以上である中間の電圧であるか否かを判断する判断手段と、
該判断手段によって前記中間の電圧であると判断されることを条件に、前記駆動対象スイッチング素子を強制的にオフ操作するオフ操作手段とを備えることを特徴とするスイッチング素子の駆動装置。
【請求項2】
前記オフ操作手段は、前記駆動対象スイッチング素子に対するオン操作指令に伴う前記通常時オン操作電圧への移行期間および前記駆動対象スイッチング素子に対するオフ操作指令に伴う通常時のオフ状態時の電圧である通常時オフ操作電圧への移行期間のそれぞれとして想定される期間以外の期間において、前記判断手段によって中間の電圧であると判断されることを条件に前記強制的なオフ操作を行うことを特徴とする請求項1記載のスイッチング素子の駆動装置。
【請求項3】
前記オフ操作手段は、前記駆動対象スイッチング素子に対するオフ操作指令が入力される期間であって且つ通常時のオフ状態時の電圧である通常時オフ操作電圧への移行期間以外の期間において、前記判断手段によって中間の電圧であると判断されることを条件に前記強制的なオフ操作を行うことを特徴とする請求項1または2記載のスイッチング素子の駆動装置。
【請求項4】
前記オフ操作手段は、前記駆動対象スイッチング素子に対するオン操作指令が入力される期間であって且つ前記通常時オン操作電圧への移行期間以外の期間において、前記判断手段によって中間の電圧であると判断されることを条件に前記強制的なオフ操作を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスイッチング素子の駆動装置。
【請求項5】
前記通常時オン操作電圧を生成する電源と、
前記駆動対象スイッチング素子の導通制御端子と前記電源とを接続する充電経路と、
該充電経路を開閉する充電用スイッチング素子と、
前記駆動対象スイッチング素子をオン状態とするための電荷を前記導通制御端子から放電させる通常時放電経路と、
該通常時放電経路を開閉する放電用スイッチング素子とを備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のスイッチング素子の駆動装置。
【請求項6】
前記通常時放電経路よりもインピーダンスの高いソフト遮断用放電経路と、
該ソフト遮断用放電経路を開閉するソフト遮断用スイッチング素子とをさらに備え、
前記オフ操作手段は、前記ソフト遮断用スイッチング素子を操作することで前記強制的なオフ操作を行うことを特徴とする請求項5記載のスイッチング素子の駆動装置。
【請求項7】
前記放電用スイッチング素子とは別に、前記駆動対象スイッチング素子の導通制御端子と入力端子および出力端子のいずれかとの間を短絡することで前記駆動対象スイッチング素子をオフ状態に保持するオフ保持用スイッチング素子をさらに備え、
前記オフ操作手段は、前記オフ保持用スイッチング素子を操作することで前記強制的なオフ操作を行うことを特徴とする請求項5または6記載のスイッチング素子の駆動装置。
【請求項8】
前記オフ操作手段は、前記電源の状態をオフ状態とすることで前記強制的なオフ操作を行うことを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載のスイッチング素子の駆動装置。
【請求項9】
前記オフ操作手段は、前記駆動対象スイッチング素子に対するオン操作指令が入力される期間であって且つ前記通常時オン操作電圧への移行期間以外の期間において、前記判断手段によって中間の電圧であると判断される場合、前記充電用スイッチング素子をオフ操作することを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載のスイッチング素子の駆動装置。
【請求項10】
前記オフ操作手段は、前記駆動対象スイッチング素子に対するオン操作指令が入力される期間であって且つ前記通常時オン操作電圧への移行期間以外の期間において、前記判断手段によって中間の電圧であると判断される場合、前記放電用スイッチング素子をオン操作することを特徴とする請求項5〜9のいずれか1項に記載のスイッチング素子の駆動装置。
【請求項11】
前記駆動対象スイッチング素子の導通制御端子と入力端子及び出力端子のいずれかとの間に設けられる複数のツェナーダイオードおよびクランプ用スイッチング素子の直列接続体と、
前記駆動対象スイッチング素子を流れる電流が閾値電流以上となることで前記スイッチング素子の導通制御端子の電圧を規定電圧にクランプすべく前記クランプ用スイッチング素子をオン操作するクランプ制御手段と、
前記複数のツェナーダイオードの一部に直列接続された迂回用スイッチング素子とを備え、
前記迂回用スイッチング素子が前記ツェナーダイオードの残りと前記クランプ用スイッチング素子の直列接続体に並列接続され、
前記オフ操作手段は、前記迂回用スイッチング素子をオン操作することで前記強制的なオフ操作を行うことを特徴とする請求項5〜10のいずれか1項に記載のスイッチング素子の駆動装置。
【請求項12】
前記通常時放電経路よりもインピーダンスの高いソフト遮断用放電経路と、
該ソフト遮断用放電経路を開閉するソフト遮断用スイッチング素子と、
前記放電用スイッチング素子とは別に、前記駆動対象スイッチング素子の導通制御端子と入力端子および出力端子のいずれかとの間を短絡することで前記駆動対象スイッチング素子をオフ状態に保持するオフ保持用スイッチング素子とをさらに備え、
前記オフ操作手段は、前記充電用スイッチング素子のオン状態からオフ状態への切り替え操作、前記放電用スイッチング素子のオフ状態からオン状態への切り替え操作、前記ソフト遮断用スイッチング素子のオン操作、前記オフ保持用スイッチング素子のオン操作、および前記電源のオフ操作のうちの少なくとも2つを行うことで、前記強制的なオフ操作を行うことを特徴とする請求項5記載のスイッチング素子の駆動装置。
【請求項13】
前記駆動対象スイッチング素子は、高電位側のスイッチング素子および低電位側のスイッチング素子の一対のスイッチング素子の直列接続体を構成するそれぞれのスイッチング素子であり、
前記一対のスイッチング素子は、その一方がオン且つ他方がオフとなる第1の状態と前記一方がオフ且つ前記他方がオンとなる第2の状態とを周期的に繰り返すように操作されるものであり、
前記一対のスイッチング素子の少なくとも一方について、これを流れる電流が閾値電流以上である場合に前記一対のスイッチング素子の双方を強制的にオフ状態とするフェールセーフ手段をさらに備え、
前記オフ操作手段は、前記電源の電圧を変更して前記中間の電圧を前記通常時オン操作電圧側へと移行させることで前記フェールセーフ手段を動作させて前記強制的なオフ操作を行うことを特徴とする請求項5〜11のいずれか1項に記載のスイッチング素子の駆動装置。
【請求項14】
前記強制的なオフ操作をする際、その旨を通知する通知手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のスイッチング素子の駆動装置。
【請求項15】
前記駆動対象スイッチング素子は、高電位側のスイッチング素子および低電位側のスイッチング素子の一対のスイッチング素子の直列接続体を構成するそれぞれのスイッチング素子であり、
前記一対のスイッチング素子は、その一方がオン且つ他方がオフとなる第1の状態と前記一方がオフ且つ前記他方がオンとなる第2の状態とを周期的に繰り返すように操作されるものであり、
前記一対のスイッチング素子の少なくとも一方について、これを流れる電流が閾値電流以上である場合に前記一対のスイッチング素子の双方を強制的にオフ状態とするフェールセーフ手段をさらに備え、
前記通常時オン操作電圧によって前記駆動対象スイッチング素子を非飽和領域で駆動する際の電流が、前記閾値電流よりも大きいことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載のスイッチング素子の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−34450(P2012−34450A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169944(P2010−169944)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】