説明

スイッチング電源制御用半導体装置

【課題】起動回路への電流流入端子とブラウンアウト検出のための電圧検出端子を共通化し、ブラウンアウトを検出するための専用入力端子を設けることなくブラウンアウトの検出を可能とするスイッチング電源制御用半導体装置を提供する。
【解決手段】端子VHは、起動回路110に電流を流入させる電流流入端子と、分圧抵抗RおよびRの接続点116から分圧電圧を取り出してブラウンアウト検出コンパレータ113の+端子に電圧を印加するための電圧検出端子を兼ねる。ブラウンアウト検出コンパレータ113において+端子に印加される分圧電圧と基準電圧VREF1とが比較される。起動回路110が停止しているときに基準電圧VREF1が接続点116の分圧電圧よりも高い場合には、ブラウンアウトの検出状態となり、論理合成回路130で合成の後、遅延回路133で所定の遅延時間後にドライバー制御回路135に論理Lを出力することで、PWM比較器134からの高速パルス信号の出力を阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源制御用半導体装置に関し、特にブラウンアウト(誤動作保護が必要な低電圧AC入力印加)を検出するための専用入力端子を設けることなくブラウンアウトの検出を可能とするスイッチング電源制御用半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスイッチング電源制御用半導体装置、例えば、電源端子Vccと、スイッチング動作を一時停止させるためのミュート端子Mと、出力端子OUTと、フィードバック端子FBを有するスイッチング電源制御用ICにおいて、トランスの1次側のコイルに入力される入力電圧を検出する電圧検出回路の出力によりスイッチ素子を動作させて、該スイッチ素子に接続されるミュート端子Mを抵抗を介してグランドにショートさせることで、主スイッチング素子の動作を一時的に停止させるスイッチング電源制御用半導体装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また従来、例えば、入力電圧を検出する入力電圧検出手段と、コンデンサによって規定される時定数にて交流電圧の一周期より長い動作時間を得るタイマーと、前記コンデンサの充放電を行う充放電手段と、前記入力電圧検出手段の検出結果に基づいて前記充放電手段を制御するタイマー制御手段とを備えたスイッチング電源制御用半導体装置において、トランスの1次側のコイルに入力される入力電圧の値をタイマーの動作中は確実に検出するとともに、入力電圧検出手段によって検出された電圧値に基づいてタイマーのコンデンサの充放電をタイマー制御手段が制御可能とするブラウンアウト検出機能を有するスイッチング電源制御用半導体装置が知られている(特許文献2参照)。
【0004】
また従来、トランスの1次側のコイルに入力される入力電圧及び2次側のコイルから得られる出力電圧について、異常による入力電圧および出力電圧の低下を即座に検知してスイッチング動作を停止し、かつ、入力電圧の低下による停止後入力電圧が一時的に上昇しても安定に停止状態を維持するようにしたブラウンアウト検出機能を有するDC-DCコンバータが知られている(特許文献3参照)。
【0005】
さらに、従来、トランスの1次側の主巻線とグランドとの間に接続されたスイッチ素子をオン/オフして、トランスの2次側に接続された負荷に電力を供給するスイッチング電源制御用半導体装置において、コンデンサが外付けされるとともにトランスの1次側の補助巻線から電源電圧が入力される電源端子と、トランスの1次側に供給される電圧が入力される起動用端子と、起動用端子から電源端子に起動電流を流してコンデンサを充電する充電用起動素子と、起動時において起動電流が流れるように制御する制御回路と、起動電流を一定となるようにする起動電流一定回路を有する起動回路と、を備えるスイッチング電源制御用半導体装置が知られている(特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2006−14465号公報
【特許文献2】特開2006−304485号公報
【特許文献3】特開2001−258249号公報
【特許文献4】特開2006−204082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1〜3に開示されたスイッチング電源制御用半導体装置にあっては、いずれもトランスの1次側のコイルに入力される入力電圧の検出を行うものであるが、ブラウンアウト検出のためのブラウンアウト検出専用ピンと起動電流流入充電専用ピンとを、それぞれ別個に設ける必要があった。そのためにスイッチング電源制御用半導体装置のピン数が多くなるという課題があった。半導体装置のピン数は常に削減が求められていて、ピン数の増加はそれに逆行するものとなる。
【0007】
また上記特許文献4に開示されたスイッチング電源制御用半導体装置にあっては、本発明と同様の起動回路を開示しているが、スイッチング電源制御用半導体装置のピン数を削減することについて言及していない。
【0008】
上記特許文献4に開示されたスイッチング電源制御用半導体装置において、電流流入充電用端子VHにてブラウンアウトの検出を行うことができればピン数を削減することは可能になるが、以下の問題がある。すなわち、トランスの1次側のコイルに入力電圧を供給するためのAC(交流)電源から起動時に起動電流を起動回路に流入させる場合、AC(交流)電源からの入力電圧が高電圧入力端子VHに直接印加されるため、高電圧入力端子VHとグランドGND間のショートなどの異常対策として数Kオームの高抵抗の電流制限抵抗RVHを設ける必要がある。起動回路がオンしている場合には電流制限抵抗RVHを介して起動回路に起動電流が流れるため、これにより電流制限抵抗RVHでの電圧降下が発生して、電流制限抵抗RVHの高電位側の電圧をブラウンアウト検出コンパレータで正確に検出することが困難となる。したがって、それを避けようとすれば、上述した特許文献1〜3に開示されたスイッチング電源制御用半導体装置と同様に、ブラウンアウト検出専用ピンと起動電流流入充電専用ピンを設けて集積回路化することなり、その結果、ブラウンアウト検出専用ピンと起動電流流入充電専用ピンがそれぞれ必要になるためにピン数が多くなるという課題があった。
【0009】
そこで本発明の目的は、上記した課題を解決するために、起動回路への電流流入端子とブラウンアウト検出のための電圧検出端子を共通化し、ブラウンアウトを検出するための専用入力端子を設けることなくブラウンアウトの検出を可能とするスイッチング電源制御用半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、コンデンサが外付けされ、商用電源の交流電圧を全波整流して得られる電圧が1次巻線に印加されるトランスの補助巻線から電源電圧が入力される電源端子と、前記商用電源の交流電圧を半波整流もしくは全波整流して得られる電圧が制限抵抗を介して入力される電流流入端子と、該電流流入端子から前記電源端子に起動電流を流して前記コンデンサを充電する起動回路と、を有するスイッチング電源制御用半導体装置において、
前記起動回路をオン状態に制御して前記起動電流を前記コンデンサに充電させるとともに前記起動回路をオフ状態に制御してブラウンアウトの検出を行わせる制御手段と、
該制御手段が前記起動回路をオフ状態に制御したとき、ブラウンアウト状態の発生を検知するコンパレータと、
該コンパレータ出力と前記制御手段出力を入力とし、前記ブラウンアウト状態の発生が一定時間継続したことを検知してブラウンアウトを検出するブラウンアウト検出手段と、
を備え、
前記起動回路のオフ状態にのみ前記ブラウンアウトの検出を行うことで前記起動回路への電流流入端子と前記ブラウンアウトの検出のための電圧検出端子を共通化したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、起動回路をオン/オフさせ、起動回路への電流流入がない期間にのみ電流流入端子の電圧を検出することで入力交流電源ラインから電流流入端子までのインピーダンスの影響を受けることなく且つ交流入力電圧の変動を精度よく監視することが可能となる。これにより電流流入端子と電圧検出端子を共通化して、ブラウンアウト検出のための専用入力端子を設けずにブラウンアウトの検出を可能とするスイッチング電源制御用半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るスイッチング電源制御用半導体装置の構成を示すブロック図である。図1において、スイッチング電源制御用半導体装置(以下、電源制御用ICと略記する)100の構成を太線枠内に示し、太線枠内の凸部が電源制御用IC100の端子を表している。
【0013】
すなわち、端子VH(101)は、図示省略した商用電源を半波整流したAC入力電圧1が印加される高電圧入力端子であり、この高電圧入力端子VH(101)は、起動回路110に電流を流入させるとともに電源端子VCC(後述する)に外付けされたコンデンサに充電電流を流す電流流入端子と、電源制御用IC100内において分圧抵抗R(111)およびR(112)の直列回路に接続されて分圧抵抗R(111)およびR(112)の接続点116から分圧電圧を取り出してブラウンアウト検出コンパレータ113の+端子に印加する電圧検出端子を兼ねている。なお、分圧抵抗R(111)およびR(112)は高抵抗になるよう設定されるため、端子VH(101)から分圧抵抗R(111)およびR(112)を経由してグランドへ流れる電流は無視することができる。
【0014】
端子VCC(102)は、起動時には電流流入端子(101)を経て起動回路110に流入する起動電流iVHを端子VCCに外付けされたコンデンサ4に流してコンデンサ4を充電する。したがい、起動電流iVHによりコンデンサ4が充電されている期間は、高電圧入力端子VH(101)の電圧は端子VCC(102)の電圧より高くなっている。また図示省略した商用電源を全波整流したAC入力電圧が印加されるトランス(図示省略)の補助巻線(図示省略)に誘起される交流電圧を整流用のダイオード(図示省略)を介してコンデンサ4の+端子に接続するとともに、コンデンサ4の+端子を端子VCCに接続する。これにより、端子VCCの電圧がコンデンサ4に対する充電とともに次第に上昇して所定のレベルを越えるようになったら、端子VCCから電源制御用IC100内の各構成要素に電源を供給する。したがって、端子VCC(102)は電源端子と呼ばれる。
【0015】
端子OUT(103)は、図示省略した商用電源を全波整流したAC入力電圧が印加されるトランス(図示省略)の1次側の主巻線(図示省略)に接続された主スイッチング素子(通常はMOSFET等で構成されるパワートランジスタ:図示省略)のゲート端子(図示省略)に、電源制御用IC100の出力信号を与える端子である。電源制御用IC100の出力信号を端子OUTから主スイッチング素子(図示省略)のゲート端子(図示省略)に与えて主スイッチング素子(図示省略)をオン/オフ制御し、これにより図示せざるトランスの2次側に誘起される交流電圧を整流して所望の直流出力電圧を得るようにしている。端子OUT(103)に関連するこの部分の構成は、特許文献4の図2にあるものと同じである。
【0016】
なお電源制御用IC100は、上記した端子VH(101),端子VCC(102),端子OUT(103)以外に上記した主スイッチング素子(図示省略)を流れる電流を抵抗(図示省略)を介して電圧で検知するIS(電流検出)端子、上記のようにして得る直流出力電圧をフィードバック制御するためのFB(フィードバック)端子などが設けられるが、本発明の主題と直接関係しないため図示およびこれ以上の説明を省略する。
【0017】
上述したように端子VH(101)は、起動回路110に電流を流入させる電流流入端子と、分圧抵抗R(111)およびR(112)の接続点116から分圧電圧を取り出してブラウンアウト検出コンパレータ113の+端子に電圧を印加する電圧検出端子を兼ねているが、一方で端子VH(101)には図示省略した商用電源を半波整流したAC入力電圧1が逆流阻止用ダイオード2、電流制限抵抗RVH3(通常3kΩ以上)を介して印加される。なお、端子VH(101)に印加される電圧として半波整流を例にして本発明の動作を説明するが、これに限定されるものでなく、全波整流でも同様に実現可能であることは云うまでもない。ここで半波整流を例にしたのは、起動回路110がオフされていても僅かな電流が起動回路110に流れるため、全波整流を用いるよりも半波整流を用いることで少しでもオフ期間における起動回路110への流入電流を削減するためである。
【0018】
起動時には起動回路110がオンに制御され、半波整流したAC入力電圧1から電流制限抵抗RVH3を介して起動回路110に起動電流iVHが流入し、流入した起動電流iVHは電源端子VCC(102)に外付けされたコンデンサ4に流れてコンデンサ4を充電し、端子VCC(102)の電圧を上昇させる。なお起動回路110のON(オン)/OFF(オフ)動作を制御する制御信号ON/OFFは、VCC検出コンパレータ120の出力を監視する制御回路121から出力されるもので、出力制御信号122として起動時には制御信号ONを出力するようにされる。これについては後述する。
【0019】
上述したように端子VH(101)は、分圧抵抗R(111)およびR(112)の接続点116から分圧電圧を取り出してブラウンアウト検出コンパレータ113の+端子に分圧電圧を印加するための電圧検出端子でもある。一方、ブラウンアウト検出コンパレータ113の−端子には基準電圧VREF1(114)が印加され、ブラウンアウト検出コンパレータ113において+端子に印加される分圧電圧と基準電圧VREF1とが比較される。そして基準電圧VREF1(114)が接続点116の分圧電圧よりも低い場合には、ブラウンアウト検出コンパレータ113の出力115は論理H(High)となる。一方、基準電圧VREF1(114)が接続点116の分圧電圧よりも高い場合には、ブラウンアウト検出コンパレータ113の出力115は論理L(Low)となる。従い、ブラウンアウトが検出された状態(AC入力電圧1が低下してブラウンアウト検出用のしきい値電圧VthBO(図3参照)よりも低くなる状態)ではブラウンアウト検出コンパレータ113の出力115は論理Lとなり、論理Lの出力が次段の論理合成回路130に入力される。なお、ブラウンアウト検出コンパレータ113は、ブラウンインの検出(後述する)も行うヒステリシスコンパレータで構成されている。ブラウンアウト検出コンパレータ113における2つの基準電圧(図示例では単独の電圧源(基準電圧VREF1(114))として示している)は、後述する図2および図3のタイミングチャートに示すブラウンイン検出用のしきい値電圧VthBIおよびブラウンアウト検出用のしきい値電圧VthBOを、上記した分圧抵抗R(111)およびR(112)で抵抗分割した電圧に設定される。参考のためここでブラウンアウト検出用のしきい値電圧とブラウンイン検出用のしきい値電圧VthBIの具体的な値の一例を挙げておく。いま図示していない商用AC電源が100Vacであるとした場合、ブラウンアウト検出用のしきい値VthBO = 70Vac = 70*(√2) Vdcに設定され、ブラウンイン検出用のしきい値電圧VthBI = 80Vac = 80*(√2) Vdcに設定される。
【0020】
図1の図示例で論理合成回路130は、ノア回路131と反転回路132によって構成され、論理合成回路130への入力信号としてノア回路131にブラウンアウト検出コンパレータ113の出力115と制御回路121の出力122が入力される。そしてブラウンアウトの検出が行われるのは、制御回路121の出力122がOFF信号となっているときである。このOFF信号は論理レベルではL(Low)を表すように設定されている。従い、ブラウンアウトが検出される場合(具体的には図3参照)は、ブラウンアウト検出コンパレータ113の出力115の論理Lと、制御回路121の出力122の論理Lとがノア回路131に入力され、ノア回路131の出力が論理Hとなり、これが反転回路132に入力されるため、反転回路132の出力は論理Lとなり、この論理Lが遅延回路133に入力される。一方、ブラウンアウト検出コンパレータ113の出力115が遅延回路133のリセット信号として遅延回路133に入力されていて、遅延回路133で所定の遅延時間(>商用電源の周期)が計測されるまでの間に遅延回路133をリセットする信号(論理レベルH)が入力されない場合には、遅延回路133の出力として論理Lをドライバー制御回路135に入力する(リセットする信号が入力された場合も含む。それ以外の場合は、遅延回路133の出力として論理Hがドライバー制御回路135に入力される。)。その結果、ドライバー制御回路135は、PWM比較器134からのパルス幅変調された高速パルス信号のドライバー136への出力を阻止する。そのためドライバー136を介して端子OUT(103)から出力される電源制御用IC100の出力信号を上述した主スインチング素子(図示省略)のゲートへの入力を停止させて、主スインチング素子(図示省略)のオン/オフ動作を停止させる(オフのままとする)。なお上記した論理合成回路130の構成は、図示例のノア回路131と反転回路132による論理合成に限定されるものではなく、その趣旨を変えない範囲でいかようにも変形可能である。
【0021】
上記の構成によると、ブラウンアウトの検出は起動回路110がオフしている期間のみ行われるが、ブラウンインの検出は起動回路110のオン/オフに関係なく常時行われることになる。この場合、起動回路110がオンしているときは、電流制限抵抗RVH3における電圧ドロップのため、AC入力電圧1がブラウンイン検出用のしきい値電圧VthBIよりさらに大きくならないとブラウンインを検出しないことになるが、これはAC入力電圧1が十分大きいことを検出しているので、ブラウンインと判断して問題ない。これを第1のブラウンイン検出方式とする。また、ブラウンインの検出を、ブラウンアウトの検出と同様に起動回路110がオフしている期間に限定してもよい。この場合を第2のブラウンイン検出方式とすると、これを実現するためには、例えば、制御回路121の出力122の反転信号とブラウンアウト検出コンパレータ113の出力115との論理和信号を生成し、この論理和信号が論理レベルHになったときに遅延回路133をリセットするようにすればよい。
【0022】
次にVCC検出コンパレータ120について説明する。VCC検出コンパレータ120においては、電源端子VCC(102)の電源電圧123がVCC検出コンパレータ120の−端子に入力され、基準電圧VREF2(124)がVCC検出コンパレータ120の+端子に入力され、電源端子VCC(102)の電源電圧123と基準電圧VREF2(124)とが比較される。そして基準電圧VREF2(124)がVCC電源電圧123よりも高い場合には、VCC検出コンパレータ120の出力は論理H(High)となる。この論理Hの信号が制御回路121に入力され、制御回路の出力122は論理Hとして出力され、これが制御信号ONとなる。起動時には制御信号ONの状態に置かれている。
【0023】
一方、基準電圧VREF2(124)がVCC電源電圧123よりも低い場合には、VCC検出コンパレータ120の出力は論理L(Low)となる。この論理Lの信号が制御回路121に入力され制御回路の出力122の論理Lとして出力され、これが制御信号OFFとなる。ブラウンアウトの検出タイミング時にはこの状態に置かれる。これについては後述する。なお、VCC検出コンパレータ120はヒシテリシスコンパレータで構成され、VCC検出コンパレータ120における2つの基準電圧(図示例では単独の電圧源(基準電圧VREF2(124))として示している)は、後述する図2および図3のタイミングチャートで示すVccBOH(第1のしきい値電圧)とVccBOL(第2のしきい値電圧)に設定される。
【0024】
図2は、本発明の実施形態に係る起動時におけるブラウンアウト解除動作を説明するタイミングチャートである。図2のタイミングチャートにおいて、起動開始の時刻t0において起動回路110は上述したようにONの状態にされており、半波整流されたAC入力電圧1が高電圧入力端子VH(101)に入力されると起動電流iVHが流れ、また電源端子VCC(102)の電源電圧123は起動開始時には略0Vであるが、時間の経過とともに序々に上昇していく。
【0025】
起動回路110は上記特許文献4の図1および図1に関する記載にあるように、起動電流iVHを定電流化する起動電流一定回路(図示せず)を有しており、高電圧入力端子VH(101)の電圧が電源端子VCC(102)の電圧よりある程度高くなっていれば定電流化させることができる。図2に示されるように、高電圧入力端子VH(101)の立ち上がりにおける起動電流iVHの波形は、高電圧入力端子VH(101)の入力波形に略比例する形になり、ある程度、高電圧入力端子VH(101)の電圧が高くなると起動電流iVHは定電流特性を示すようになる。また、起動電流iVHによって電源端子VCC(102)の電圧が上昇していくにつれ、起動電流iVHの立ち上がりが高電圧入力端子VH(101)の立ち上がりより徐々に遅れるようになる。
【0026】
時刻t1になった時点で、VCC検出コンパレータ120の−端子に入力される電源端子VCC(102)の電圧123が基準電圧VREF2(124)の第1のしきい値電圧VCC BOHを超えるのをVCC検出コンパレータ120が検出して論理Lを出力し、この論理Lが制御回路121に入力される。その結果、制御回路121は出力122としてOFF信号を出力する。したがって、起動回路110はOFFの状態となり、ブラウンインとブラウンアウトの両方を検出できる期間となる。しかしながら時刻t1から時刻t2の期間には高電圧入力端子VH(101)の電圧がブラウンインを検出するブラウンアウト検出コンパレータ113の−端子に印加されるブラウンイン検出用のしきい値電圧VthBIを超えることがないためブラウンアウト解除はなされない。また、起動回路110はOFFの状態なので起動電流iVHが流れず、したがい、電源端子VCC(102)に接続されたコンデンサ4に充電電流が流れないため電源端子VCC(102)の電位が低下する。電源端子VCC(102)の電位が低下して、VCC検出コンパレータ120の+端子に印加される基準電圧VREF2(124)の第2のしきい値電圧VCC BOLを下回ると、VCC検出コンパレータ120はこれを検出して論理Hを出力し、この論理Hが制御回路121に入力される。その結果、制御回路121は出力122としてON信号を出力する。したがって、時刻t2の時点で起動回路110はONの状態となり、再び充電電流iVHをコンデンサ4に流すようになる。そして時刻t3の時点において、VCC検出コンパレータ120の−端子に入力される電源端子VCC(102)の電圧123が基準電圧VREF2(124)の第1のしきい値電圧VCC BOHを超えるのをVCC検出コンパレータ120が検出したら制御回路121は出力122としてOFF信号を出力して、ブラウンインおよびブラウンアウトの両方を検出期間とせしめる。ブラウンイン検出可能期間(第1のブラウンイン検出方式の場合は常時、第2のブラウンイン検出方式の場合は起動回路110がOFFのとき)に、高電圧入力端子VH(101)の入力電圧がブラウンインを検出するブラウンアウト検出コンパレータ113の−端子に印加されるブラウンイン検出用のしきい値電圧VthBIを超えたことをブラウンアウト検出コンパレータ113が検出し出力115として論理Hを出力することでブラウンアウト解除すなわちブラウンインとなる。図2では、時刻t3の時点で高電圧入力端子VH(101)の入力電圧がブラウンイン検出用のしきい値電圧VthBIを超えたことをブラウンアウト検出コンパレータ113が検出し、ブラウンインを行えたことで電源制御用IC(100)は正常動作に入ることができる。
【0027】
図3は、本発明の実施形態に係るブラウンアウト動作(本当にブラウンアウトの状態であるかを判定する動作)を説明するタイミングチャートである。図3のタイミングチャートにおいて、時刻t10においては、電源制御用IC100が正常に動作している状態を示している。すなわち起動回路110は図2に示したブラウンイン後の正常動作によってOFFの状態にされており(遅延回路133の出力信号により、ブラウンインの状態では、VCC検出コンパレータ120の出力によらず起動回路110はOFFの状態にされる)、またブラウンイン検出用のしきい値電圧VthBIを超えた、半波整流されたAC入力電圧1が高電圧入力端子VH(101)に入力されている。また、ブラウンインの状態なので上記のように遅延回路133はOFFの状態になっていて、通常のスイッチング動作が行われているので、電源端子VCC(102)の電源電圧123は補助巻線から供給される定常値(設定電圧)に維持されている。
【0028】
時刻t10から時刻t11の期間においては、起動回路110がOFFの状態であるため、ブラウンアウトの検出を行うことが可能な期間となっている。しかし、半波整流されたAC入力電圧1が入力される高電圧入力端子VH(101)のピーク電圧が、ブラウンインを検出するブラウンアウト検出コンパレータ113の−端子に印加されるブラウンイン検出用のしきい値電圧VthBIより高いので、ピーク電圧によりその都度遅延回路133がリセットされて、ブラウンアウトによる停止状態になることはない。
【0029】
そして時刻t11において半波整流されたAC入力電圧1が入力される高電圧入力端子VH(101)の電圧(AC入力電圧1の瞬時値)がブラウンアウトを検出するブラウンアウト検出コンパレータ113の−端子に印加されるブラウンアウト検出用のしきい値電圧VthBOより下回った時点でブラウンアウト動作を開始する。このとき、上述したようにブラウンアウト検出コンパレータ113の出力115が論理Lとなり、論理Lの出力が次段の論理合成回路130に入力される。一方、このタイミングでは、制御回路121の出力122はOFF信号となっている。このOFF信号は論理レベルではL(Low)を表すように設定されている。従い、ブラウンアウトが検出されるタイミングではブラウンアウト検出コンパレータ113の出力115の論理Lと、制御回路121の出力122の論理Lとがノア回路131に入力され、ノア回路131の出力が論理Hとなり、これが反転回路132に入力されるため、反転回路132の出力は論理Lとなり、この論理Lが遅延回路133に入力される。
【0030】
そして時刻t12において、遅延回路133が所定の遅延時間を計測し終えた得た場合にはドライバー制御回路135に論理Lを出力することでPWM比較器134からのパルス幅変調された高速パルス信号のドライバー136への出力を阻止する。その結果、ドライバー136を介して端子OUT(103)から出力される電源制御用IC100の出力信号を上述した主スインチング素子(図示省略)のゲートへの入力を停止させて主スインチング素子(図示省略)のオン/オフ動作を停止させる(オフのままとする)。また、ブラウンアウトが検出されてスイッチング電源のスイッチング動作が停止したことに伴い、電源端子VCC(102)の電源電圧123がVCC検出コンパレータ120の+端子に印加される基準電圧VREF2(124)の第2のしきい値電圧VCC BOLを下回ると、VCC検出コンパレータ120はこれを検出して論理Hを出力し、この論理Hが制御回路121に入力され、その結果、制御回路121は出力122としてON信号を出力する。したがい、時刻t12の時点で起動回路110はONの状態となり、充電電流iVHをコンデンサ4に流すようになる。これにより図3に示したブラウンアウト動作から図2に示したブラウンアウト解除の動作に移行することになる。
【0031】
時刻t13から時刻t14までの期間は、ブラウンインとブラウンアウトの両方を検出できる期間となるが、高電圧入力端子VH(101)への入力電圧がブラウンインを検出するブラウンアウト検出コンパレータ113の−端子に印加されるブラウンイン検出用のしきい値電圧VthBIを超えることがないためブラウンアウト解除はなされない。時刻t14以降においても、高電圧入力端子VH(101)への入力電圧がブラウンインを検出するブラウンアウト検出コンパレータ113の−端子に印加されるブラウンイン検出用のしきい値電圧VthBIを超えることがないため、ブラウンアウト解除はなされない。
【0032】
電源端子VCC(102)の電圧123が、VCC検出コンパレータ120の+端子に印加される基準電圧VREF2(124)の第2のしきい値電圧VCC BOLと第1のしきい値電圧VCC BOHとの間を遷移するに従い起動回路110はONの状態とOFFの状態を繰り返す。そして、第2のブラウンイン検出方式の場合、起動回路110がOFFの状態のときに電源端子VCC(102)の電圧123がブラウンイン検出用のしきい値電圧VthBIを超えていれば、図2の時刻t3におけるのと同様にしてブラウンアウト解除の動作を行う。また、第1のブラウンイン検出方式の場合、単に電源端子VCC(102)の電圧123がブラウンイン検出用のしきい値電圧VthBIを超えると、ブラウンアウト解除の動作を行う。
【0033】
以上において、図示省略した商用電源を半波整流したAC入力電圧1の瞬時値を用いブラウンアウト,ブラウンインの検出を行うようにした場合について説明したが、同じく図示省略しているが商用電源を整流するためのダイオードブリッジの出力を当該ダイオードブリッジの直後に付けるコンデンサで平滑化した電圧値を用いてブラウンアウト,ブラウンインの検出を行うようにすることもできる。
【0034】
また、半波整流したAC入力電圧を使う場合でなく、全波整流波形を使う場合のブラウンアウト,ブラウンインの検出方式としては、一般に、2つの方式が知られている。すなわち第1の方式として、力率向上(PFC:Power Factor Correction)を図る電源制御ICの場合におけるブラウンアウト,ブラウンインの検出方式では、ダイオードブリッジの直後に付けるコンデンサCiの容量値を小さくするので(この場合、コンデンサCiは主スイッチング素子のスイッチングに伴うリップルを除去する機能を持つ)、波形は正弦波の絶対値波形となり、上に説明した実施の形態における半波整流したAC入力電圧を使う場合と同様の検出方法となる。また第2の方式として、PFCではない電源制御ICの場合におけるブラウンアウト,ブラウンインの検出方式では、コンデンサCiの値を大きくしてダイオードブリッジの出力を平滑化するので、交流入力電圧の瞬時値ではなく、平均値を使ってブラウンアウト,ブラウンインの検出を行う。このように全波整流波形を使う場合のブラウンアウト,ブラウンインの検出方式の上記した第1の方式および第2の方式のどちらも、最初に入力電圧と基準電圧をヒステリシスコンパレータで比較するが、上記した第2の方式のように平均値を使う場合は、原理的にはブラウンアウト/ブラウンイン検出コンパレータの出力側に付けられる次段のタイマーは不要になる。ただ、他の機能とのからみで実際はタイマーを使うことが多い。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係るスイッチング電源制御用半導体装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る起動時におけるブラウンアウト解除動作を説明するタイミングチャートである。
【図3】本発明の実施形態に係るブラウンアウト検出動作を説明するためのタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0036】
1 半波整流したAC入力電圧
2 逆流阻止用ダイオード
3 電流制限抵抗RVH
4 コンデンサ
100 電源制御用IC
101 高電圧入力端子VH
102 電源端子VCC
103 出力端子OUT
110 起動回路
111 分圧抵抗R
112 分圧抵抗R
113 ブラウンアウト検出コンパレータ
114 基準電圧VREF1
115 コンパレータ出力
116 接続点
120 VCC検出コンパレータ
121 制御回路
122 制御回路121の出力
123 電源電圧(コンパレータ入力)
124 基準電圧VREF2
130 論理合成回路
131 ノア回路
132 反転回路
133 遅延回路
134 PWM比較器
135 ドライバー制御回路
136 ドライバー
iVH 起動電流(充電電流)
VthBI ブラウンイン検出用のしきい値電圧
VthBO ブラウンアウト検出用のしきい値電圧
VccBOH 基準電圧VREF2の第1のしきい値
VccBOL 基準電圧VREF2の第2のしきい値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサが外付けされ、商用電源の交流電圧を全波整流して得られる電圧が1次巻線に印加されるトランスの補助巻線から電源電圧が入力される電源端子と、前記商用電源の交流電圧を半波整流もしくは全波整流して得られる電圧が制限抵抗を介して入力される電流流入端子と、該電流流入端子から前記電源端子に起動電流を流して前記コンデンサを充電する起動回路と、を有するスイッチング電源制御用半導体装置において、
前記起動回路をオン状態に制御して前記起動電流を前記コンデンサに充電させるとともに前記起動回路をオフ状態に制御してブラウンアウトの検出を行わせる制御手段と、
該制御手段が前記起動回路をオフ状態に制御したとき、ブラウンアウト状態の発生を検知するコンパレータと、
該コンパレータ出力と前記制御手段出力を入力とし、前記ブラウンアウト状態の発生が一定時間継続したことを検知してブラウンアウトを検出するブラウンアウト検出手段と、
を備え、
前記起動回路のオフ状態にのみ前記ブラウンアウトの検出を行うことで前記起動回路への電流流入端子と前記ブラウンアウトの検出のための電圧検出端子を共通化したことを特徴とするスイッチング電源制御用半導体装置。
【請求項2】
前記コンパレータは、2つの基準電圧を有するヒステリシスコンパレータで構成され、前記2つの基準電圧のうちの1つを前記ブラウンアウト検出に用いる基準電圧と異なる基準電圧を用いることで、前記ブラウンアウト検出手段をブラウンアウト解除の検出に使用することを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源制御用半導体装置。
【請求項3】
前記電源端子の入力電圧と基準電圧の比較を行う比較手段を備え、
該比較手段の出力を前記制御手段に加えることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源制御用半導体装置。
【請求項4】
前記比較手段は、2つの基準電圧を有するヒステリシスコンパレータで構成されていることを特徴とする請求項3に記載のスイッチング電源制御用半導体装置。
【請求項5】
前記請求項1ないし4に記載のスイッチング電源制御用半導体装置を用いてスイッチング素子を制御することを特徴とするAC−DCコンバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−268316(P2009−268316A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−117691(P2008−117691)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(503361248)富士電機デバイステクノロジー株式会社 (1,023)
【Fターム(参考)】