説明

スイッチング電源回路およびこれを用いた電子機器

【課題】電流制御方式で出力電圧に依存する発振回路を用いたスイッチング電源回路において、コスト上昇を抑えつつソフトスタート時の出力電圧の発振を抑えることができるスイッチング電源回路を提供する。
【解決手段】ソフトスタート電圧Vssと基準電圧Vrefと帰還電圧Vadjを入力とするエラーアンプEA10は、ソフトスタート電圧Vssと基準電圧Vsとを比較するコンパレータ8の出力に応じてゲインを切替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電流制御方式のスイッチング電源回路の回路構成を図8に示す。図8に示す従来のスイッチング電源回路は、定電流源Icと、コンデンサCsと、エラーアンプEA100と、コンパレータ1と、発振回路2と、ロジック部3と、バッファ4、5と、スイッチSW1、SW2と、電流アンプ6と、スロープ補償部7と、平滑用コイルLと、抵抗R10、R20と、平滑用コンデンサCoと、を備えている。
【0003】
グランドと電源電圧VDDとの間に定電流源IcとコンデンサCsが直列接続され、定電流源IcとコンデンサCsとの接続点の電圧であるソフトスタート電圧VssがエラーアンプEA100の二つの非反転端子の一方に入力される。エラーアンプEA100の他方の非反転端子には基準電圧Vrefが入力される。また、エラーアンプEA100の反転端子には、出力電圧Voを抵抗R10と抵抗R20で分圧した帰還電圧Vadjが入力される。なお、電源電圧VDDは、例えば、不図示のシリーズレギュレータにより入力電圧VINから生成される。
【0004】
エラーアンプEA100は、非反転端子に入力された基準電圧Vrefとソフトスタート電圧Vssのうち最小のものと、反転端子に入力された帰還電圧Vadjとの差分を増幅してエラーアンプ出力電圧Veをコンパレータ1に出力する。平滑コイルLに流れるコイル電流ILの検出電圧を電流アンプ6が増幅して出力し、その出力電圧がスロープ補償部7により補償された電流アンプ出力電圧Vcがコンパレータ1に入力される。低周波発振を防ぐために電流帰還ループにスロープ補償を行っている。
【0005】
コンパレータ1は、エラーアンプ出力電圧Veと電流アンプ出力電圧Vcとを比較し、比較結果をロジック部3に出力する。発振回路2は、帰還電圧Vadjに応じて発振周波数を変化させ、発振信号をロジック部3に出力する。ロジック部3は、例えばRSフリップフロップで構成され、発振回路2が出力する発振信号とコンパレータ1の出力に基づきパルス信号を生成してバッファ4および5に出力する。バッファ4および5は、ロジック部3の出力するパルス信号に基づきスイッチSW1、SW2の駆動用の駆動信号を生成してスイッチSW1、SW2に出力する。スイッチSW1とスイッチSW2は交互にオンオフするよう制御され、スイッチSW1とスイッチSW2の接続点であるノードVSWには入力電圧VINからグランドまでの振幅を有するパルス信号が発生する。発生したパルス信号は平滑用コイルLと平滑用コンデンサCoにより平滑化され、出力電圧Voとして出力される。
【0006】
帰還電圧Vadjに応じて発振周波数を変化させる発振回路2を備えているが、これは、過電流保護機能などで出力電圧Voが低下した場合に発振周波数を下げることによって最小ONパルス幅で制限されるデューティ比以下のデューティ比での動作を可能とし、過電流設定値の超過を防ぐことを目的としている。
【0007】
また、図8で示す従来のスイッチング電源回路は、スイッチング電源回路の起動時に入力電圧VINからの突入電流を抑制するために出力電圧Voを緩やかに立ち上げるソフトスタート機能を有している。なお、従来のソフトスタート機能の一例としては例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−257759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記従来のスイッチング電源回路のソフトスタート機能については、以下のような問題点があった。図9の上段に従来の出力電圧Voの波形例を、図9の下段にソフトスタート電圧Vssの波形例を示す。また、図10に従来のスイッチング電源回路におけるソフトスタート時の各部信号の波形例を示す。
【0010】
スイッチング電源回路の起動タイミングであるタイミングt1からソフトスタート電圧Vssは立ち上がり、ソフトスタート電圧Vssはタイミングt2で基準電圧Vrefに達する(図9の下段)。タイミングt1からタイミングt2までの期間がソフトスタート期間であり、この期間ではエラーアンプEA100はソフトスタート電圧Vssと帰還電圧Vadjとの差分を増幅してエラーアンプ出力電圧Veを出力する。タイミングt2以降もソフトスタート電圧Vssは上昇し、あるタイミングで一定電圧となる。タイミングt2以降、エラーアンプEA100は、基準電圧Vrefと帰還電圧Vadjとの差分を増幅してエラーアンプ出力電圧Veを出力する。タイミングt2以降が通常動作期間となる。
【0011】
発振防止のためエラーアンプEA100のゲインを従来低めに設定している場合があり、その場合、ソフトスタート機能開始時にエラーアンプEA100の出力であるエラーアンプ出力電圧Veが出力電圧Voに追従しない(図10)。そして、追従しない間に発振回路2により発振周波数が上昇し、コイル電流ILに対応する電流アンプ出力電圧Vcのリップルが小さくなり、コイル電流ILの平均値となる出力電流Ioが上昇する。出力電流Ioの急激な上昇により、出力電圧Voはソフトスタート電圧Vssによる設定値より高い値にオーバーシュートし、発振してしまう。その出力電圧Voの発振波形の一例が図9の上段に示される。
【0012】
上記問題点を鑑み、本発明は、電流制御方式で出力電圧に依存する発振回路を用いたスイッチング電源回路において、コスト上昇を抑えつつソフトスタート時の出力電圧の発振を抑えることができるスイッチング電源回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明は、起動時に徐々に増加するソフトスタート電圧と第1基準電圧と出力電圧に応じた帰還電圧とを入力とするエラーアンプと、前記帰還電圧に発振周波数が依存する発振回路と、前記エラーアンプの出力とスイッチングによる電流の検出信号とを比較する第1コンパレータと、前記第1コンパレータの出力と前記発振回路の出力とに基づきスイッチングのためのパルス信号を生成するパルス信号生成部と、を備えたスイッチング電源回路において、前記ソフトスタート電圧と第2基準電圧とを比較する第2コンパレータを備え、前記エラーアンプは、前記第2コンパレータの出力に応じてゲインを変更可能である構成とする。
【0014】
このような構成によれば、ソフトスタート時にエラーアンプのゲインを高めにすることで、エラーアンプの出力が出力電圧に追従し、発振回路による発振周波数が上昇して電流の検出信号のリップルが小さくなっても出力電圧が急激に上昇することがなく、出力電圧の発振を抑えることができる。また、エラーアンプのゲインを変更する構成は少ない回路の追加で実現でき、コスト上昇を抑えることができる。
【0015】
また、上記構成において、前記エラーアンプは、差動入力部である入力トランジスタと、テール電流を流すテール電流トランジスタと、前記入力トランジスタのソースまたはエミッタと前記テール電流トランジスタとの間に接続される抵抗と、を有し、前記第2コンパレータの出力に応じて前記抵抗はショートするか否かが切替えられる構成としてもよい。
【0016】
また、上記構成において、前記エラーアンプは、スイッチと、前記スイッチの切替えに応じて接続が切替えられる電流制限抵抗と、前記電流制限抵抗により制限された電流をテール電流へ変換するカレントミラー回路と、を有し、前記第2コンパレータの出力に応じて前記スイッチは切替えられる構成としてもよい。
【0017】
また、上記構成において、前記エラーアンプは、差動入力部である入力トランジスタと、前記入力トランジスタのドレインまたはコレクタに接続されるゲイン設定用抵抗と、を有し、前記第2コンパレータの出力に応じて前記ゲイン設定用抵抗はショートするか否かが切替えられる構成としてもよい。
【0018】
また、上記構成において、前記エラーアンプは、差動入力部である入力トランジスタと、前記入力トランジスタの一方の前段に設けられ前記帰還電圧を入力とするソースフォロアまたはエミッタフォロアと、前記入力トランジスタの他方の前段に設けられ前記ソフトスタート電圧および前記第1基準電圧を入力とするソースフォロアまたはエミッタフォロアと、を有し、前記第2基準電圧は前記第1基準電圧である構成としてもよい。
【0019】
また、本発明の電子機器は、上記いずれかの構成のスイッチング電源回路を備えることとする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、電流制御方式で出力電圧に依存する発振回路を用いたスイッチング電源回路において、コスト上昇を抑えつつソフトスタート時の出力電圧の発振を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係るスイッチング電源回路の構成例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るスイッチング電源回路におけるソフトスタート時の各部信号の波形例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係るスイッチング電源回路をLED照明装置に適用した例を示す図である。
【図4】本発明に係るエラーアンプの構成例を示す図である。
【図5】本発明に係るエラーアンプの構成例を示す図である。
【図6】本発明に係るエラーアンプの構成例を示す図である。
【図7】本発明に係るエラーアンプの構成例を示す図である。
【図8】従来のスイッチング電源回路の構成例を示す図である。
【図9】従来および本発明における出力電圧の波形例と、ソフトスタート電圧の波形例を示す図である。
【図10】従来のスイッチング電源回路におけるソフトスタート時の各部信号の波形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、同一の部分には同一の符号を付している。それらの名称および機能は同一であるため、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0023】
本発明の実施形態に係るスイッチング電源回路の構成例を図1に示す。図1に示すスイッチング電源回路は、上述した図8に示す従来の電流制御方式のスイッチング電源回路においてエラーアンプとしてエラーアンプEA10を用い、コンパレータ8を追加した構成としている。コンパレータ8の反転端子にはソフトスタート電圧Vssが入力され、非反転端子には基準電圧Vsが入力される(基準電圧Vsは基準電圧Vrefと同一の値である)。そして、コンパレータ8の出力であるコンパレータ出力電圧Vcompがエラーアンプ10に入力される。
【0024】
エラーアンプEA10は、エラーアンプ出力VcompがHighレベルの場合にゲインを高くし、Lowレベルの場合にゲインを低くする機能を有する。図2に本発明の実施形態に係るスイッチング電源回路におけるソフトスタート時の各部信号の波形例を示す。また、図9の中段に本発明の実施形態に係るスイッチング電源回路の出力電圧Voの波形例を示す。スイッチング電源回路が起動しソフトスタート電圧Vssが基準電圧Vs(=Vref)より低いと、エラーアンプ出力VcompがHighレベルとなり、エラーアンプEA10はゲインを高くする。これにより、エラーアンプ出力電圧Veが出力電圧Voに追従するので、発振回路2による発振周波数の上昇により電流アンプ出力電圧Vcのリップルが小さくなっても、出力電流Ioが急激に上昇することはなくなる(図2)。従って、出力電圧Voがオーバーシュートすることがなくなり、出力電圧Voの発振を抑えることができる(図2の下段、図9の中段)。
【0025】
本発明の実施形態に係るスイッチング電源回路をLED照明装置に適用した構成例を図3に示す。交流電圧VaをダイオードブリッジDB1および平滑用コンデンサC1により直流電圧である入力電圧VINに変換してスイッチング電源回路に入力する。スイッチング電源回路の出力側に一または複数のLEDからなるLEDモジュールLED1が接続される。本発明の実施形態に係るスイッチング電源回路によりソフトスタート時の出力電圧Voの発振を抑えることで、交流ラインへのノイズ混入低減、輻射ノイズ低減を行うことができる。
【0026】
図1で示す本発明の実施形態に係るスイッチング電源回路におけるエラーアンプEA10の構成例を図4に示す。図4で示すエラーアンプは、差動入力部であるNchMOSトランジスタN1、N2と、ゲインに関わる抵抗R1、R2、R3、R4と、テール電流を流すNchMOSトランジスタN3と、テール電流を2分割するPchMOSトランジスタP1、P2と、スイッチ用のNchMOSトランジスタN4、N5と、最小電圧選択回路9と、エラーアンプ出力段10と、を有している。最小電圧選択回路9は、入力される基準電圧Vrefとソフトスタート電圧Vssを比較し、小さい方の電圧をNchMOSトランジスタN2のゲートに出力する。また、NchMOSトランジスタN1のゲートには帰還電圧Vadjが入力される。エラーアンプ出力段10は、差動回路の出力を受け、それらの差を増幅してエラーアンプ出力電圧Veを出力する。
【0027】
NchMOSトランジスタN1のソースとNchMOSトランジスタN4のドレインとの接続点と、NchMOSトランジスタN2のソースとNchMOSトランジスタN5のドレインとの接続点とは、抵抗R3と抵抗R4により直列接続される。抵抗R3と抵抗R4との接続点は、NchMOSトランジスタN4のソースとNchMOSトランジスタN5のソースとの接続点と接続される。NchMOSトランジスタN4のソースとNchMOSトランジスタN5のソースとの接続点は、NchMOSトランジスタN3のドレインと接続される。NchMOSトランジスタN4とNchMOSトランジスタN5のゲートにはそれぞれコンパレータ出力電圧Vcompが入力される。
【0028】
コンパレータ出力電圧Vcompはソフトスタート時にはHighレベルとなっており、NchMOSトランジスタN4、N5は共にON状態となり、抵抗R3と抵抗R4がショートされる。これにより、エラーアンプのゲインは高くなる。また、ソフトスタートが終わり通常動作時にはコンパレータ出力電圧VcompはLowレベルとなっており、NchMOSトランジスタN4、N5は共にOFF状態となり、抵抗R3と抵抗R4が効くようになり、エラーアンプのゲインは低くなる。
【0029】
ここで、NchMOSトランジスタN1、N2のトランスコンダクタンスをgmとし、抵抗R3、R4の抵抗値をrとすると、抵抗R3とR4がショートされていない場合、差動入力部のトランスコンダクタンスGmは(1)式のように表せる。
Gm=gm/(1+gm・r) (1)
また、抵抗R3とR4がショートされている場合は、Gmは(2)式のように表せる。
Gm=gm (2)
このことから、抵抗R3とR4がショートされている場合のほうがエラーアンプのゲインが高くなる。
【0030】
このような図4の構成のエラーアンプを図1のスイッチング電源回路に適用することにより、ソフトスタート時の出力電圧Voの発振を抑えることができる。なお、図4の構成のエラーアンプにおいて、差動入力部のNchMOSトランジスタN1、N2の代わりにnpn型バイポーラトランジスタとし、npn型バイポーラトランジスタのコレクタを抵抗R1、R2に接続し、エミッタを抵抗R3、R4に接続し、ベースに帰還電圧Vadjと最小電圧選択回路9の出力を入力するようにしてもよい。
【0031】
図1で示す本発明の実施形態に係るスイッチング電源回路におけるエラーアンプEA10の別の構成例を図5に示す。図5に示すエラーアンプは、差動入力部であるNchMOSトランジスタN1、N2と、ゲインに関わる抵抗R1、R2と、テール電流を流すNchMOSトランジスタN3と、テール電流を2分割するPchMOSトランジスタP1、P2と、テール電流決定用の抵抗R5、R6と、カレントミラー回路用のNchMOSトランジスタN6と、インバータINVと、スイッチ用のPchMOSトランジスタP3と、最小電圧選択回路9と、エラーアンプ出力段10と、を有している。
【0032】
NchMOSトランジスタN3、N6のゲート同士が接続され、NchMOSトランジスタN6のゲートとドレインとが接続され、NchMOSトランジスタN3、N6のソースがグランド接続され、カレントミラー回路を構成している。また、電源電圧VDDは抵抗R5の一端とPchMOSトランジスタP3のソースに接続される。PchMOSトランジスタP3のドレインには抵抗R6の一端が接続され、抵抗R6の他端と抵抗R5の他端とがNchMOSトランジスタN6のドレインに接続される。また、インバータINVにコンパレータ出力電圧Vcompが入力され、インバータINVの出力はPchMOSトランジスタP3のゲートに入力される。
【0033】
コンパレータ出力電圧Vcompはソフトスタート時にはHighレベルとなっており、インバータINVによりPchMOSトランジスタP3はON状態となり、抵抗R6と抵抗R5が並列に接続される。これにより、テール電流が増加し、エラーアンプのゲインが高くなる。また、ソフトスタートが終わり通常動作時にはコンパレータ出力電圧VcompはLowレベルとなっており、インバータINVによりPchMOSトランジスタP3はOFF状態となり、抵抗R6が効かなくなり、テール電流が減少し、エラーアンプのゲインは低くなる。
【0034】
テール電流をItとすると、NchMOSトランジスタN1、N2のトランスコンダクタンスgmは(3)式で表せる。
gm=√(It・β) (3)
但し、βはNchMOSトランジスタN1、N2のプロセスや形状による定数
従って、テール電流Itが増加することでエラーアンプのゲインが高くなる。
【0035】
このような図5の構成のエラーアンプを図1のスイッチング電源回路に適用することにより、ソフトスタート時の出力電圧Voの発振を抑えることができる。
【0036】
図1で示す本発明の実施形態に係るスイッチング電源回路におけるエラーアンプEA10のさらに別の構成例を図6に示す。図6に示すエラーアンプは、差動入力部であるNchMOSトランジスタN1、N2と、ゲインに関わる抵抗R1、R2、R7、R8と、テール電流を流すNchMOSトランジスタN3と、テール電流を2分割するPchMOSトランジスタP1、P2と、スイッチ用のPchMOSトランジスタP7、P8と、最小電圧選択回路9と、エラーアンプ出力段10と、を有している。
【0037】
PchMOSトランジスタP1のドレインとNchMOSトランジスタN1のドレインとの接続点と、PchMOSトランジスタP2のドレインとNchMOSトランジスタN2のドレインとの接続点との間に抵抗R8、R1、R2、R7が直列に接続される。PchMOSトランジスタP1、P2のゲート同士の接続点と、抵抗R1、R2の接続点とが接続される。PchMOSトランジスタP7のソースが抵抗R8、R1の接続点に接続され、PchMOSトランジスタP7のドレインがPchMOSトランジスタP1のドレインとNchMOSトランジスタN1のドレインとの接続点に接続される。PchMOSトランジスタP8のソースが抵抗R2、R7の接続点に接続され、PchMOSトランジスタP8のドレインがPchMOSトランジスタP2のドレインとNchMOSトランジスタN2のドレインとの接続点に接続される。PchMOSトランジスタP7、P8のゲートにコンパレータ出力電圧Vcompが入力される。
【0038】
コンパレータ出力電圧Vcompはソフトスタート時にはHighレベルになっており、PchMOSトランジスタP7、P8はOFF状態となり、抵抗R8、R1、R2、R7が直列に接続されることにより、エラーアンプのゲインは高くなる。また、ソフトスタートが終わり通常動作時にはコンパレータ出力電圧VcompはLowレベルになっており、PchMOSトランジスタP7、P8はON状態となり、抵抗R8、R7がショートされることによりエラーアンプのゲインは低くなる。
【0039】
抵抗R8、R7の抵抗値をr1、抵抗R1、R2の抵抗値をr2とすると、エラーアンプ出力段10の手前までのゲインGainは(4)式のように表せる。
Gain=gm・(r1+r2) (4)
従って、抵抗R8、R1、R2、R7が直列に接続されることでエラーアンプのゲインが高くなる。
【0040】
このような図6の構成のエラーアンプを図1のスイッチング電源回路に適用することにより、ソフトスタート時の出力電圧Voの発振を抑えることができる。なお、図6の構成のエラーアンプにおいて、差動入力部のNchMOSトランジスタN1、N2の代わりにnpn型バイポーラトランジスタとし、npn型バイポーラトランジスタのコレクタを抵抗R8、R7に接続し、エミッタをNchMOSトランジスタN3のドレインに接続し、ベースに帰還電圧Vadjと最小電圧選択回路9の出力を入力するようにしてもよい。
【0041】
図1で示す本発明の実施形態に係るスイッチング電源回路におけるエラーアンプEA10のさらに別の構成例を図7に示す。なお、図7ではコンパレータ8の接続についても示している。図7に示すエラーアンプは、差動入力部であるNchMOSトランジスタN1、N2と、ゲインに関わる抵抗R1、R2、R3、R4と、テール電流を流すNchMOSトランジスタN3と、テール電流を2分割するPchMOSトランジスタP1、P2と、スイッチ用のNchMOSトランジスタN4、N5と、エラーアンプ出力段10と、定電流源I1、I2と、ソースフォロアのPchMOSトランジスタP4、P5、P6と、を有している。
【0042】
PchMOSトランジスタP4のソースに定電流源I1とNchMOSトランジスタN1のゲートが接続され、PchMOSトランジスタP4のドレインがグランド接続され、PchMOSトランジスタP4のゲートに帰還電圧Vadjが入力される。これにより、NchMOSトランジスタN1の前段に帰還電圧Vadjを入力とするソースフォロアが構成される。
【0043】
PchMOSトランジスタP5のソースに定電流源I2とNchMOSトランジスタN2のゲートが接続され、PchMOSトランジスタP5のドレインがグランド接続され、PchMOSトランジスタP5のゲートにソフトスタート電圧Vssが入力される。これにより、NchMOSトランジスタN2の前段にソフトスタート電圧Vssを入力とするソースフォロアが構成される。また、PchMOSトランジスタP6のソースに定電流源I2とNchMOSトランジスタN2のゲートが接続され、PchMOSトランジスタP6のドレインがグランド接続され、PchMOSトランジスタP6のゲートに基準電圧Vrefが入力される。これにより、NchMOSトランジスタN2の前段に基準電圧Vrefを入力とするソースフォロアが構成される。
【0044】
図1ではコンパレータ8の非反転端子に基準電圧Vsを入力しているが、図7では基準電圧Vrefをコンパレータ8の非反転端子に入力するようにし、基準電圧Vsを不要にしている。
【0045】
ここで、定電流源I1、I2の電流をi1とし、βをPchMOSトランジスタP4、P5、P6のプロセスや形状による定数とし、VthをPchMOSトランジスタP4、P5、P6のスレッシュ電圧とする。このとき、PchMOSトランジスタP4のオーバードライブ電圧は√(2・i1/β)となり、NchMOSトランジスタN1のゲート電圧はVadj+Vth+√(2・i1/β)となる。
【0046】
コンパレータ8の出力が切替るVss=VrefとなるときにはPchMOSトランジスタP5とP6には同じ電流が流れるため、PchMOSトランジスタP5、P6のオーバードライブ電圧は√(i1/β)となり、NchMOSトランジスタN2のゲート電圧はVref+Vth+√(i1/β)となる。
【0047】
また、Vss>VrefでPchMOSトランジスタP5に電流が流れなくなるのは、VssがVrefより√(i1/β)分高くなるときである。PchMOSトランジスタP5に電流が流れない場合、PchMOSトランジスタP6のオーバードライブ電圧は√(2・i1/β)となるので、NchMOSトランジスタN2のゲート電圧はVref+Vth+√(2・i1/β)となる。このゲート電圧が通常動作時にNchMOSトランジスタN1のゲート電圧と比較すべき基準電圧である。NchMOSトランジスタN2のゲート電圧が基準電圧となるVssよりも√(i1/β)分低いVssでコンパレータ8の出力を切替えてエラーアンプのゲインを切替えることができる。
【0048】
なお、図7の構成のエラーアンプにおいて、PchMOSトランジスタを用いたソースフォロアの代わりにpnp型バイポーラトランジスタを用いたエミッタフォロアを設けるようにしてもよい。
【0049】
本発明に係るスイッチング電源回路は電子機器全般に搭載可能であるが、特に、LED照明装置、光ストレージ装置、液晶テレビなどの電子機器に用いると好適である。
【符号の説明】
【0050】
1 コンパレータ
2 発振回路
3 ロジック部
4 バッファ
5 バッファ
6 電流アンプ
7 スロープ補償部
8 コンパレータ
9 最小電圧選択回路
10 エラーアンプ出力段
Ic 定電流源
Cs コンデンサ
L 平滑用コイル
Co 平滑用コンデンサ
R10、R20 抵抗
SW1、SW2 スイッチ
EA10、EA100 エラーアンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
起動時に徐々に増加するソフトスタート電圧と第1基準電圧と出力電圧に応じた帰還電圧とを入力とするエラーアンプと、前記帰還電圧に発振周波数が依存する発振回路と、前記エラーアンプの出力とスイッチングによる電流の検出信号とを比較する第1コンパレータと、前記第1コンパレータの出力と前記発振回路の出力とに基づきスイッチングのためのパルス信号を生成するパルス信号生成部と、を備えたスイッチング電源回路において、
前記ソフトスタート電圧と第2基準電圧とを比較する第2コンパレータを備え、前記エラーアンプは、前記第2コンパレータの出力に応じてゲインを変更可能であることを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項2】
前記エラーアンプは、差動入力部である入力トランジスタと、テール電流を流すテール電流トランジスタと、前記入力トランジスタのソースまたはエミッタと前記テール電流トランジスタとの間に接続される抵抗と、を有し、前記第2コンパレータの出力に応じて前記抵抗はショートするか否かが切替えられることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
【請求項3】
前記エラーアンプは、スイッチと、前記スイッチの切替えに応じて接続が切替えられる電流制限抵抗と、前記電流制限抵抗により制限された電流をテール電流へ変換するカレントミラー回路と、を有し、前記第2コンパレータの出力に応じて前記スイッチは切替えられることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
【請求項4】
前記エラーアンプは、差動入力部である入力トランジスタと、前記入力トランジスタのドレインまたはコレクタに接続されるゲイン設定用抵抗と、を有し、前記第2コンパレータの出力に応じて前記ゲイン設定用抵抗はショートするか否かが切替えられることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
【請求項5】
前記エラーアンプは、差動入力部である入力トランジスタと、前記入力トランジスタの一方の前段に設けられ前記帰還電圧を入力とするソースフォロアまたはエミッタフォロアと、前記入力トランジスタの他方の前段に設けられ前記ソフトスタート電圧および前記第1基準電圧を入力とするソースフォロアまたはエミッタフォロアと、を有し、前記第2基準電圧は前記第1基準電圧であることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載のスイッチング電源回路を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−120289(P2012−120289A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266515(P2010−266515)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】