説明

スイッチング電源回路及び該スイッチング電源回路における制御方法

【課題】スイッチング時に発生する損失を低減し、かつ、小型化に寄与する。
【解決手段】補助スイッチ部9がオフ状態となると、トランス7の一次巻線15は、例えば、第2スイッチング素子4の寄生ダイオード4bからトランス7の一次巻線15を経て第3スイッチング素子5の寄生ダイオード5bに至る経路に沿って電流を流し続け、第2スイッチング素子4の寄生コンデンサ4cと、第3スイッチング素子5の寄生コンデンサ5cとに蓄積された電荷を放電させる。こうして、放電が完了したタイミングで、第2スイッチング素子4及び第3スイッチング素子5をオン状態となるように制御することによって、第2スイッチング素子4及び第3スイッチング素子5に印加される電圧が0のときに、第2スイッチング素子4及び第3スイッチング素子5がオン状態とされる。これによって、オン時のスイッチングで発生する損失が低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スイッチング電源回路及び該スイッチング電源回路における制御方法に係り、直流安定化電源を供給するために用いられ、特に、フルブリッジ形のスイッチング電源回路及び該スイッチング電源回路における制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、電子機器の省エネルギ化や小型化に伴って、内蔵されるスイッチング電源回路にも省エネルギ化や小型化が求められている。
このようなスイッチング電源回路は、例えば、複数のスイッチング素子を有し入力直流電圧を高周波交流に変換する変換部と、トランスと、交流を直流に変換する整流平滑回路と、スイッチング素子をPWM(Pulse Width Modulation)制御によりオン/オフ制御するスイッチング制御回路とから概略構成されている。
【0003】
上記変換部においては、4つのスイッチング素子をブリッジ状に接続し、ブリッジ上の隣り合わない2つのスイッチング素子を1つのペアとして用い、2つのペアを交互にオン/オフするフルブリッジ形(例えば、特許文献1、特許文献2等参照。)や、2つのコンデンサで分圧された入力電圧を、2つのスイッチング素子によって交互にオン/オフするハーフブリッジ形等が採用される(例えば、特許文献3等参照。)。
図5には、フルブリッジ形のスイッチング電源回路が示されている。このスイッチング電源回路101は、同図に示すように、直流電源102と、第1スイッチング素子103、第2スイッチング素子104、第3スイッチング素子105及び第4スイッチング素子106と、トランス107と、共振用インダクタ108と、整流回路111と、平滑回路112と、PWM制御回路113とを備えてなっている。
【0004】
第1スイッチング素子103と第2スイッチング素子104とは直列接続されて、直流電源102に並列に接続されている。また、第3スイッチング素子105と第4スイッチング素子106とは直列接続されて、直流電源102に並列に接続されている。直列接続された第1スイッチング素子103と第2スイッチング素子104との接続点と、直列接続された第3スイッチング素子105と第4スイッチング素子106との接続点とは、直列接続されたトランス107の1次巻線及び共振用インダクタ108を介してブリッジ状に接続された構成とされている。
【0005】
第1スイッチング素子103(第2スイッチング素子104、第3スイッチング素子105、第4スイッチング素子106)は、それぞれ、例えばnMOSFET(nチャネル型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor))103a(104a,105a,106a)を有してなり、寄生ダイオード103b(104b,105b,106b)及び寄生コンデンサ103c(104c,105c,106c)を含み、寄生ダイオード103b(104b,105b,106b)及び寄生コンデンサ103c(104c,105c,106c)は、nMOSFET103a(104a,105a,106a)に並列に接続されるように形成されている。
【0006】
この例では、PWM制御回路113の制御によって、第1スイッチング素子103と第4スイッチング素子106とは、同時にオン/オフされ、かつ、第2スイッチング素子104と第3スイッチング素子105とは、同時にオン/オフされる。
また、PWM制御回路113の制御によって、第1スイッチング素子103と第2スイッチング素子104とは、相補的にオン/オフされ、かつ、第3スイッチング素子105と第4スイッチング素子106とは相補的にオン/オフされる。
すなわち、第1スイッチング素子103(第3スイッチング素子105)がオフ状態の期間内で、第2スイッチング素子104(第4スイッチング素子106)がオン状態とされ、第2スイッチング素子104(第4スイッチング素子106)がオフ状態の期間内で第1スイッチング素子103(第3スイッチング素子105)がオン状態とされる。
こうして、第1スイッチング素子103及び第4スイッチング素子106(第2スイッチング素子104及び第3スイッチング素子105)は、オン/オフを繰り返して、直流電圧を方形波に変換して、トランス107の一次巻線115の両端に方形波状の電圧を発生させている。
【0007】
トランス107は、一次巻線115と、第1の二次巻線116及び第2の二次巻線117とを有し、巻数比は、例えば、n:1:1(n:実数)とされている。
一次巻線115と、共振用インダクタ108とは直列接続され、共振用インダクタ108の一端は、一次巻線115と接続され、他端は、直列接続された第1スイッチング素子103と第2スイッチング素子104との接続点に接続されている。また、一次巻線115の一端は、共振用インダクタ108と接続され、他端は、直列接続された第3スイッチング素子105と第4スイッチング素子106との接続点に接続されている。
【0008】
整流回路111は、直列接続された第1整流ダイオード123及び第2整流ダイオード124が、トランス7の第1の二次巻線116及び第2の二次巻線117に並列に接続されて概略構成されている。
平滑回路112は、直列接続された第1平滑インダクタ125及び第2平滑インダクタ126が、直列接続された第1整流ダイオード123及び第2整流ダイオード124に並列に接続され、第1整流ダイオード123と第2整流ダイオード124との接続点と、第1平滑インダクタ125と第2平滑インダクタ126との接続点とに平滑コンデンサ127が接続して、概略構成されている。平滑コンデンサ127には、所定の直流電圧が印加される負荷128が接続されている。
【0009】
こうして、第1スイッチング素子103及び第4スイッチング素子106(第2スイッチング素子104及び第3スイッチング素子105)によって変換され、トランス107の一次巻線115の両端に発生した方形波状の電圧は、巻数比にしたがって、第1の二次巻線116及び第2の二次巻線117へ伝達され、整流回路111及び平滑回路112によって整流及び平滑化され、PWM制御回路113の制御によって、一定の電圧として出力される。
【0010】
PWM制御回路113は、負荷128の両端の電圧を検出し、出力電圧を内部基準電圧と比較して得られる誤差増幅信号に応じてPWM信号を生成し、一定の出力が得られるように、第1スイッチング素子103、第2スイッチング素子104、第3スイッチング素子105及び第4スイッチング素子106を制御する。
また、PWM制御回路113は、第1スイッチング素子103と第4スイッチング素子106を、同時にオン/オフし、かつ、第2スイッチング素子104と第3スイッチング素子105とを、同時にオン/オフするように制御する。
【0011】
また、PWM制御回路113は、第1スイッチング素子103と第2スイッチング素子104とを、相補的にオン/オフし、かつ、第3スイッチング素子105と第4スイッチング素子106とを相補的にオン/オフするように制御する。
すなわち、PWM制御回路113は、第1スイッチング素子103(第3スイッチング素子105)がオフ状態の期間内で、第2スイッチング素子104(第4スイッチング素子106)をオン状態とし、第2スイッチング素子104(第4スイッチング素子106)がオフ状態の期間内で第1スイッチング素子103(第3スイッチング素子105)をオン状態とするように制御する。
【0012】
次に、図6を参照して、このスイッチング電源回路101の動作について説明する。
まず、PWM制御回路113は、図6に示すように、時刻tが(t=t100)で、第1スイッチング素子103及び第4のスイッチング素子106へ制御信号(ゲート信号)ga,gdを送って、第1スイッチング素子103及び第4のスイッチング素子106をオフ状態からオン状態へ遷移させる。
【0013】
これによって、トランス7の一次巻線115には、電圧vaが印加され、電流iaが流れる。トランス107の第1の二次巻線116及び第2の二次巻線117には、巻数比に応じて、電圧(va/n)が誘起され、平滑回路112には、電圧(va/n)が印加され、負荷128に出力される。
第1平滑インダクタ125、負荷128、第2整流ダイオード124、トランス107の第1の二次巻線116及び第2の二次巻線117を通して電流が流れ、これにより、トランス107の一次巻線115に電流が流れる。
【0014】
次に、PWM制御回路113は、時刻tが(t=t101)で、第1スイッチング素子103及び第4のスイッチング素子106をオン状態からオフ状態へ遷移させる。
次に、PWM制御回路113は、時刻tが(t=t102)で、第2スイッチング素子104及び第3スイッチング素子105へ制御信号(ゲート信号)gb,gcを送って、第2スイッチング素子104及び第3スイッチング素子105をオフ状態からオン状態へ遷移させる。
【0015】
これによって、トランス107の一次巻線115には、第1スイッチング素子103及び第4のスイッチング素子106オン時とは逆方向に電圧vaが印加され、電流iaが流れる。トランス107の第1の二次巻線116及び第2の二次巻線117には、巻数比に応じて、電圧(va/n)が誘起され、平滑回路112には、電圧(va/n)が印加され、負荷128に出力される。
【0016】
第2平滑インダクタ126、負荷128、第1整流ダイオード123、トランス107の第1の二次巻線116及び第2の二次巻線117を通して電流が流れ、これにより、トランス7の一次巻線115に電流が流れる。
次に、PWM制御回路113は、時刻tが(t=t103)で、第2スイッチング素子4及び第3スイッチング素子5をオン状態からオフ状態へ遷移させる。
以下、上述した時刻tが(t100≦t≦t103)の動作を、時刻tが(t≧t103)においても、周期的に繰り返される。
【0017】
しかしながら、時刻tが(t=t100)で、第1スイッチング素子103及び第4のスイッチング素子106をオフ状態からオン状態へ遷移するときに、寄生コンデンサ103c,104cを短絡させることとなるので、寄生コンデンサ103c,104cに蓄積されたエネルギが損失となり、かつ、サージ状の短絡電流が流れる。これによって、ノイズが発生し、信頼性が低下するという問題がある。
【0018】
また、時刻tが(t=t101)で、第1スイッチング素子103及び第4のスイッチング素子106がオン状態からオフ状態へ遷移するときに、トランス7の漏れインダクタと寄生コンデンサ103c,104cとが共振して、サージ状の電圧が発生し、エネルギが損失が生じると共に、これによって、ノイズが発生し、信頼性が低下するという問題がある。
時刻tが(t=t102)での第2スイッチング素子104及び第3スイッチング素子105のオン時、時刻tが(t=t103)での第2スイッチング素子4及び第3スイッチング素子5をオフ時においても同様である。
【0019】
このため、例えば、第2スイッチング素子104をオンとする前に、寄生ダイオード104bと第4のスイッチング素子106が共にオンとなるようにして、トランス107の一次巻線115を短絡させて、第2スイッチング素子104の寄生コンデンサ104cを放電させ、印加される電圧が0のときに、第2スイッチング素子104をオンとする(ゼロ電圧スイッチングを行う)技術が提案されている(例えば、特許文献2等参照。)。
【特許文献1】特開2000−224855号公報
【特許文献2】特開2000−278943号公報
【特許文献3】特開平9−163740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
解決しようとする問題点は、上述した従来技術では、十分な小型化が困難であるという点である。
すなわち、例えば、各スイッチング素子について、寄生コンデンサに蓄えられた電荷による放電電流を流すために、定格に余裕のあるスイッチング素子を用いる必要があり、かつ、全て(4つ)共に比較的大きな定格のスイッチング素子を用いる必要があるので、装置の小型化が困難となる。
【0021】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、スイッチング時に発生する損失を低減して効率を向上させ、かつ、信頼性を向上させることができると共に、一段と小型化に寄与することができるスイッチング電源回路及び該スイッチング電源回路における制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、第1のスイッチング手段と第2のスイッチング手段との直列接続からなる第1の直列スイッチング群と、第3のスイッチング手段と第4のスイッチング手段との直列接続からなる第2の直列スイッチング群とが、直流電源の両極間に並列接続され、上記第1の直列スイッチング群と上記第2の直列スイッチング群との間に、少なくともトランスの一次巻線を含むインダクタがブリッジ接続され、かつ、スイッチング制御手段が、上記第1乃至第4のスイッチング手段のオン/オフを制御して、上記直流電源から供給される電流を、上記第1のスイッチング手段、上記一次巻線、及び上記第4のスイッチング手段を通る第1の経路と、上記第3のスイッチング手段、上記一次巻線、及び上記第2のスイッチング手段を通る第2の経路とに交互に流す構成のスイッチング電源回路に係り、上記インダクタを短絡させるための短絡用スイッチを備えると共に、上記スイッチング制御手段は、上記第1乃至第4のスイッチング手段の全てが、オフ状態のとき、上記短絡用スイッチをオン状態とすることを特徴としている。
【0023】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載のスイッチング電源回路に係り、上記スイッチング制御手段は、上記第1のスイッチング手段と上記第4のスイッチング手段とを、略同時にオン/オフし、かつ、上記第2のスイッチング手段と上記第3のスイッチング手段とを、略同時にオン/オフし、上記第2のスイッチング手段及び上記第3のスイッチング手段がオフ状態の期間内で、上記第1のスイッチング手段及び上記第4のスイッチング手段をオン状態とし、上記第1のスイッチング手段及び上記第4のスイッチング手段がオフ状態の期間内で、上記第2のスイッチング手段及び上記第3のスイッチング手段をオン状態とすることを特徴としている。
【0024】
また、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のスイッチング電源回路に係り、上記スイッチング制御手段は、上記第1のスイッチング手段及び上記第4のスイッチング手段のオン期間終了時から所定の休止期間経過後に、上記短絡用スイッチをオン状態とすると共に、上記第2のスイッチング手段及び上記第3のスイッチング手段のオン期間終了時から所定の休止期間経過後に、上記短絡用スイッチをオン状態とすることを特徴としている。
【0025】
また、請求項4記載の発明は、請求項1、2又は3記載のスイッチング電源回路に係り、上記スイッチング制御手段は、上記第1のスイッチング手段及び上記第4のスイッチング手段のオン期間開始時から所定の休止期間前に、上記短絡用スイッチをオフ状態とすると共に、上記第2のスイッチング手段及び上記第3のスイッチング手段のオン期間開始時から所定の休止期間前に、上記短絡用スイッチをオフ状態とすることを特徴としている。
【0026】
また、請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1に記載のスイッチング電源回路に係り、上記短絡用スイッチは、双方向スイッチを有してなることを特徴としている。
【0027】
また、請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1に記載のスイッチング電源回路に係り、上記トランスの上記一次巻線には、共振用インダクタが直列に接続され、上記短絡用スイッチは、直列に接続された上記一次巻線及び上記共振用インダクタに、並列に接続され、上記直列に接続された上記一次巻線及び上記共振用インダクタを短絡させることを特徴としている。
【0028】
また、請求項7記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか1に記載のスイッチング電源回路に係り、上記第1乃至第4のスイッチング手段及び上記短絡用スイッチは、MOSFETを有してなり、寄生容量を含んでいることを特徴としている。
【0029】
また、請求項8記載の発明は、請求項1乃至7のいずれか1に記載のスイッチング電源回路に係り、上記トランスの二次巻線に接続され、負荷に直流電流を供給するための整流回路を備えたことを特徴としている。
【0030】
また、請求項9記載の発明は、請求項1乃至8のいずれか1に記載のスイッチング電源回路に係り、上記スイッチング制御手段は、上記第1乃至第4のスイッチング手段及び上記短絡用スイッチをPWM制御することを特徴としている。
【0031】
また、請求項10記載の発明は、第1のスイッチング手段と第2のスイッチング手段との直列接続からなる第1の直列スイッチング群と、第3のスイッチング手段と第4のスイッチング手段との直列接続からなる第2の直列スイッチング群とが、直流電源の両極間に並列接続され、上記第1の直列スイッチング群と上記第2の直列スイッチング群との間に、少なくともトランスの一次巻線を含むインダクタがブリッジ接続され、かつ、スイッチング制御手段が、上記第1乃至第4のスイッチング手段のオン/オフを制御して、上記直流電源から供給される電流を、上記第1のスイッチング手段、上記一次巻線、及び上記第4のスイッチング手段を通る第1の経路と、上記第3のスイッチング手段、上記一次巻線、及び上記第2のスイッチング手段を通る第2の経路とに交互に流すスイッチング電源回路における制御方法に係り、上記インダクタを短絡させるための短絡用スイッチが設けられると共に、上記スイッチング制御手段は、上記第1乃至第4のスイッチング手段の全てが、オフ状態のとき、上記短絡用スイッチをオン状態とすることを特徴としている。
【0032】
また、請求項11記載の発明は、請求項10記載のスイッチング電源回路における制御方法に係り、上記スイッチング制御手段は、上記第1のスイッチング手段と上記第4のスイッチング手段とを、略同時にオン/オフし、かつ、上記第2のスイッチング手段と上記第3のスイッチング手段とを、略同時にオン/オフし、上記第2のスイッチング手段及び上記第3のスイッチング手段がオフ状態の期間内で、上記第1のスイッチング手段及び上記第4のスイッチング手段をオン状態とし、上記第1のスイッチング手段及び上記第4のスイッチング手段がオフ状態の期間内で、上記第2のスイッチング手段及び上記第3のスイッチング手段をオン状態とすることを特徴としている。
【0033】
また、請求項12記載の発明は、請求項10又は11記載のスイッチング電源回路における制御方法に係り、上記スイッチング制御手段は、上記第1のスイッチング手段及び上記第4のスイッチング手段のオン期間終了時から所定の休止期間経過後に、上記短絡用スイッチをオン状態とすると共に、上記第2のスイッチング手段及び上記第3のスイッチング手段のオン期間終了時から所定の休止期間経過後に、上記短絡用スイッチをオン状態とすることを特徴としている。
【0034】
また、請求項13記載の発明は、請求項10、11又は12記載のスイッチング電源回路における制御方法に係り、上記スイッチング制御手段は、上記第1のスイッチング手段及び上記第4のスイッチング手段のオン期間開始時から所定の休止期間前に、上記短絡用スイッチをオフ状態とすると共に、上記第2のスイッチング手段及び上記第3のスイッチング手段のオン期間開始時から所定の休止期間前に、上記短絡用スイッチをオフ状態とすることを特徴としている。
【0035】
また、請求項14記載の発明は、請求項10乃至13のいずれか1に記載のスイッチング電源回路における制御方法に係り、上記短絡用スイッチは、双方向スイッチを有してなることを特徴としている。
【0036】
また、請求項15記載の発明は、請求項10乃至14のいずれか1に記載のスイッチング電源回路における制御方法に係り、上記トランスの上記一次巻線には、共振用インダクタが直列に接続され、上記短絡用スイッチは、直列に接続された上記一次巻線及び上記共振用インダクタに、並列に接続され、上記直列に接続された上記一次巻線及び上記共振用インダクタを短絡させることを特徴としている。
【0037】
また、請求項16記載の発明は、請求項10乃至15のいずれか1に記載のスイッチング電源回路における制御方法に係り、上記第1乃至第4のスイッチング手段及び上記短絡用スイッチは、MOSFETを有してなり、寄生容量を含んでいることを特徴としている。
【0038】
また、請求項17記載の発明は、請求項10乃至16のいずれか1に記載のスイッチング電源回路における制御方法に係り、上記トランスの二次巻線には、負荷に直流電流を供給するための整流回路が接続されていることを特徴としている。
【0039】
また、請求項18記載の発明は、請求項10乃至17のいずれか1に記載のスイッチング電源回路における制御方法に係り、上記スイッチング制御手段は、上記第1乃至第4のスイッチング手段及び上記短絡用スイッチをPWM制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0040】
この発明の構成によれば、スイッチング制御手段が、短絡用スイッチを、第1乃至第4のスイッチング手段の全てがオフ状態の期間内に、オン状態とするので、例えば、第1乃至第4のスイッチング手段に含まれる寄生容量に蓄積された電荷を放電させて、印加される電圧が略0のときに、第1のスイッチング手段及び第4のスイッチングと、第2のスイッチング手段及び第3のスイッチングとを、オン状態とすることによって、スイッチング時に発生する損失を低減して効率を向上させ、かつ、信頼性を向上させることができると共に、一段と小型化に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
スイッチング制御手段が、短絡用スイッチを、第1乃至第4のスイッチング手段の全てがオフ状態の期間内に、オン状態とし、例えば、第1乃至第4のスイッチング手段に含まれる寄生容量に蓄積された電荷を放電させて、印加される電圧が略0のときに、第1のスイッチング手段及び第4のスイッチングと、第2のスイッチング手段及び第3のスイッチングとを、オン状態とすることによって、スイッチング時に発生する損失を低減して効率を向上させ、かつ、信頼性を向上させると共に、一段と小型化に寄与するという目的を実現した。
【実施例1】
【0042】
図1は、この発明の第1実施例であるスイッチング電源回路の構成を示すブロック図、図2は、同スイッチング電源回路の補助スイッチ部の構成を示すブロック図、また、図3は、同スイッチング電源回路の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0043】
この例のスイッチング電源回路1は、フルブリッジ形のスイッチング電源回路であり、図1に示すように、バッテリ等の直流電源2と、第1スイッチング素子3、第2スイッチング素子4、第3スイッチング素子5及び第4スイッチング素子6と、トランス7と、共振用インダクタ8と、補助スイッチ部9と、整流回路11と、平滑回路12と、PWM制御回路13とを備えてなっている。
【0044】
第1スイッチング素子3と第2スイッチング素子4とは直列接続されて、直流電源2に並列に接続されている。また、第3スイッチング素子5と第4スイッチング素子6とは直列接続されて、直流電源2に並列に接続されている。直列接続された第1スイッチング素子3と第2スイッチング素子4との接続点と、直列接続された第3スイッチング素子5と第4スイッチング素子6との接続点とは、直列接続されたトランス7の1次巻線(コイル)及び共振用インダクタ8を介してブリッジ状に接続された構成とされている。
第1スイッチング素子3(第2スイッチング素子4、第3スイッチング素子5、第4スイッチング素子6)は、それぞれ、nチャネル型MOSFET(以下、nMOSFETという。)3a(4a,5a,6a)を有してなり、寄生ダイオード3b(4b,5b,6b)及び寄生コンデンサ3c(4c,5c,6c)を含み、寄生ダイオード3b(4b,5b,6b)及び寄生コンデンサ3c(4c,5c,6c)は、nMOSFET3a(4a,5a,6a)に等価的に並列に接続されるように形成されている。
【0045】
この例では、PWM制御回路13の制御によって、第1スイッチング素子3と第4スイッチング素子6とは、同時にオン/オフされ、かつ、第2スイッチング素子4と第3スイッチング素子5とは、同時にオン/オフされる。
また、PWM制御回路13の制御によって、第1スイッチング素子3と第2スイッチング素子4とは、相補的にオン/オフされ、かつ、第3スイッチング素子5と第4スイッチング素子6とは相補的にオン/オフされる。
すなわち、第1スイッチング素子3(第3スイッチング素子5)がオフ状態の期間内で、第2スイッチング素子4(第4スイッチング素子6)がオン状態とされ、第2スイッチング素子4(第4スイッチング素子6)がオフ状態の期間内で第1スイッチング素子3(第3スイッチング素子5)がオン状態とされる。
【0046】
トランス7は、一次巻線15と、第1の二次巻線16及び第2の二次巻線17とを有し、巻数比は、例えば、n:1:1(n:実数)とされている。
一次巻線15と、共振用インダクタ8とは直列接続され、共振用インダクタ8の一端は、一次巻線15と接続され、他端は、直列接続された第1スイッチング素子3と第2スイッチング素子4との接続点に接続されている。また、一次巻線15の一端は、共振用インダクタ8と接続され、他端は、直列接続された第3スイッチング素子5と第4スイッチング素子6との接続点に接続されている。
【0047】
補助スイッチ部9は、図1及び図2に示すように、直列接続された共振用インダクタ8及びトランス7の一次巻線15に並列に接続されている。すなわち、補助スイッチ部9の一端は、直列接続された第1スイッチング素子3と第2スイッチング素子4との接続点に接続され、他端は、直列接続された第3スイッチング素子5と第4スイッチング素子6との接続点に接続されている。
補助スイッチ部9は、第5スイッチング素子19と第6スイッチング素子21とが互いに極性を逆向きにして直列接続されて概略構成されている。
【0048】
第5スイッチング素子19(第6スイッチング素子21)は、それぞれ、nMOSFET19a(21a)を有してなり、寄生ダイオード19b(21b)及び寄生コンデンサ19c(21c)を含み、寄生ダイオード19b(21b)及び寄生コンデンサ19c(21c)は、nMOSFET19a(21a)に等価的に並列に接続されるように形成されている。
【0049】
補助スイッチ部9では、PWM制御回路13の制御によって、第1補助スイッチング素子19及び第2補助スイッチング素子21は、第1スイッチング素子3及び第4スイッチング素子6と、第2スイッチング素子4及び第3スイッチング素子5とが、共にオフ状態の期間内に、同時にオン状態とされる。
補助スイッチ部9がオン状態とされることによって、直列接続された一次巻線15及び共振用インダクタ8の両端が短絡され、第1スイッチング素子3及び第4スイッチング素子6(第2スイッチング素子4及び第3スイッチング素子5)のゼロ電圧スイッチングが可能となり、オン時のスイッチングに伴う損失の低減に寄与する。
【0050】
ここで、第1スイッチング素子3及び第4スイッチング素子6(第2スイッチング素子4及び第3スイッチング素子5)のオン状態からオフ状態への遷移のタイミングと、第1補助スイッチング素子19及び第2補助スイッチング素子21のオフ状態からオン状態への遷移のタイミングとの時間差としての期間tdaと、第1補助スイッチング素子19及び第2補助スイッチング素子21のオン状態からオフ状態への遷移のタイミングと、第1スイッチング素子3及び第4スイッチング素子6(第2スイッチング素子4及び第3スイッチング素子5)のオフ状態からオン状態への遷移のタイミングとの時間差としての期間tdbは、それぞれ、所定の時間に設定される。
この例では、期間差tda、期間差tdbは、共に略50[nsec]とされる。
【0051】
整流回路11は、直列接続された第1整流ダイオード23及び第2整流ダイオード24が、トランス7の第1の二次巻線16及び第2の二次巻線17に並列に接続されて概略構成されている。
平滑回路12は、直列接続された第1平滑インダクタ25及び第2平滑インダクタ26が、直列接続された第1整流ダイオード23及び第2整流ダイオード24に並列に接続され、第1整流ダイオード23と第2整流ダイオード24との接続点と、第1平滑インダクタ25と第2平滑インダクタ26との接続点とに平滑コンデンサ27が接続して、概略構成されている。平滑コンデンサ27には、所定の直流電圧が印加される負荷28が接続されている。
【0052】
PWM制御回路13は、負荷28の両端の電圧を検出し、出力電圧を内部基準電圧と比較して得られる誤差増幅信号に応じてPWM信号を生成し、一定の出力が得られるように、第1スイッチング素子3、第2スイッチング素子4、第3スイッチング素子5及び第4スイッチング素子6を制御する。
また、PWM制御回路13は、第1スイッチング素子3と第4スイッチング素子6を、同時にオン/オフし、かつ、第2スイッチング素子4と第3スイッチング素子5とを、同時にオン/オフするように制御する。
【0053】
また、PWM制御回路13は、第1スイッチング素子3と第2スイッチング素子4とを、相補的にオン/オフし、かつ、第3スイッチング素子5と第4スイッチング素子6とを相補的にオン/オフするように制御する。
すなわち、PWM制御回路13は、第1スイッチング素子3(第3スイッチング素子5)がオフ状態の期間内で、第2スイッチング素子4(第4スイッチング素子6)をオン状態とし、第2スイッチング素子4(第4スイッチング素子6)がオフ状態の期間内で第1スイッチング素子3(第3スイッチング素子5)をオン状態とするように制御する。
【0054】
また、PWM制御回路13は、補助スイッチ部9の第1補助スイッチング素子19及び第2補助スイッチング素子21を、第1スイッチング素子3及び第4スイッチング素子6と、第2スイッチング素子4及び第3スイッチング素子5とが、共にオフ状態の期間内に、同時にオン状態とするように制御する。
ここで、第1スイッチング素子3及び第4スイッチング素子6(第2スイッチング素子4及び第3スイッチング素子5)のオン状態からオフ状態への遷移のタイミングと、第1補助スイッチング素子19及び第2補助スイッチング素子21のオフ状態からオン状態への遷移のタイミングとの時間差としての期間tdaと、第1補助スイッチング素子19及び第2補助スイッチング素子21のオン状態からオフ状態への遷移のタイミングと、第1スイッチング素子3及び第4スイッチング素子6(第2スイッチング素子4及び第3スイッチング素子5)のオフ状態からオン状態への遷移のタイミングとの時間差としての期間tdbは、それぞれ、所定の時間に設定される。
この例では、期間Δtda、期間Δtdbは、例えば、寄生容量等に起因するスイッチング素子の完全なオフ状態への移行の遅れや、制御信号(ゲート信号)の遅延を考慮して設定され、共に略50[nsec]とされる。
【0055】
次に、図3を参照して、この例のスイッチング電源回路1の動作について説明する。
PWM制御回路13は、第1スイッチング素子3及び第4のスイッチング素子6のオン期間と、第2のスイッチング素子4及び第3のスイッチング素子5のオン期間との間に、第1補助スイッチング素子19及び第2補助スイッチング素子21のオン期間を設けるように、第1スイッチング素子3乃至第6スイッチング素子21を制御する。
まず、PWM制御回路13は、図3に示すように、時刻tが(t=t0)で、第1スイッチング素子3及び第4のスイッチング素子6へ制御信号(ゲート信号)g1,g4を送って、第1スイッチング素子3及び第4のスイッチング素子6をオフ状態からオン状態へ遷移させる。
【0056】
これによって、トランス7の一次巻線15には、電圧vpが印加され、電流ipが流れる。トランス7の第1の二次巻線16及び第2の二次巻線17には、巻数比に応じて、電圧(vp/n)が誘起され、平滑回路12には、電圧(vp/n)が印加され、負荷28に出力される。
第1平滑インダクタ25、負荷28、第2整流ダイオード24、トランス7の第1の二次巻線16及び第2の二次巻線17を通して電流が流れ、これにより、トランス7の一次巻線15に電流が流れる。
【0057】
次に、PWM制御回路13は、時刻tが(t=t1)で、第1スイッチング素子3及び第4のスイッチング素子6をオン状態からオフ状態へ遷移させ、時刻tが(t=t2)で、補助スイッチ部9の第1補助スイッチング素子19及び第2補助スイッチング素子21へ制御信号g5,g6を送って、第1補助スイッチング素子19及び第2補助スイッチング素子21をオフ状態からオン状態へ遷移させる。ここで、期間Δtdaは、(Δtda=t2−t1)であり、略50[nsec]に設定される。
【0058】
時刻tが(t=t1)で、第1スイッチング素子3及び第4のスイッチング素子6がオフ状態となると、トランス7の一次巻線15に印加される電圧vpは、0となるが、補助スイッチ部9(第1補助スイッチング素子19及び第2補助スイッチング素子21)がオン状態となることによって、トランス7の一次巻線15が短絡され、トランス7の漏れインダクタに貯えられたエネルギが保持されて、トランス7の一次巻線15には、略一定の電流が流れる。
【0059】
次に、PWM制御回路13は、時刻tが(t=t3)で、補助スイッチ部9(第1補助スイッチング素子19及び第2補助スイッチング素子21)を、オン状態からオフ状態へ遷移させ、時刻tが(t=t4)で、第2スイッチング素子4及び第3スイッチング素子5をオフ状態からオン状態へ遷移させる。ここで、期間Δtdbは、(Δtdb=t4−t3)であり、略50[nsec]に設定される。
【0060】
時刻tが(t=t3)で、補助スイッチ部9がオフ状態となると、トランス7の一次巻線15は、漏れインダクタンスに起因して、第2スイッチング素子4の寄生ダイオード4bからトランス7の一次巻線15を経て第3スイッチング素子5の寄生ダイオード5bに至る経路に沿って電流を流し続け、第2スイッチング素子4の寄生コンデンサ4cと、第3スイッチング素子5の寄生コンデンサ5cとに蓄積された電荷を放電させる。
【0061】
こうして、放電が完了したタイミングで、すなわち、時刻tが(t=t4)で、第2スイッチング素子4及び第3スイッチング素子5をオン状態となるように制御することによって、第2スイッチング素子4及び第3スイッチング素子5に印加される電圧が0のときに、第2スイッチング素子4及び第3スイッチング素子5がオン状態とされる。これによって、オン時のスイッチングで発生する損失が低減される。
時刻tが(t=t4)で、第2スイッチング素子4及び第3スイッチング素子5をオン状態とされると、これによって、トランス7の一次巻線15には、第1スイッチング素子3及び第4のスイッチング素子6オン時とは逆方向に電圧vpが印加され、電流ipが流れる。
【0062】
トランス7の第1の二次巻線16及び第2の二次巻線17には、巻数比に応じて、電圧(vp/n)が誘起され、平滑回路12には、電圧(vp/n)が印加され、負荷28に出力される。
第2平滑インダクタ26、負荷28、第1整流ダイオード23、トランス7の第1の二次巻線16及び第2の二次巻線17を通して電流が流れ、これにより、トランス7の一次巻線15に電流が流れる。
【0063】
次に、PWM制御回路13は、時刻tが(t=t5)で、第2スイッチング素子4及び第3スイッチング素子5をオン状態からオフ状態へ遷移させ、時刻tが(t=t6)で、補助スイッチ部9の第1補助スイッチング素子19及び第2補助スイッチング素子21へ制御信号g5,g6を送って、補助スイッチ部9(第5スイッチング素子19及び第6スイッチング素子21)をオフ状態からオン状態へ遷移させる。ここで、期間Δtdaは、(Δtda=t6−t5=t2−t1)である。
【0064】
時刻tが(t=t5)で、第2スイッチング素子4及び第3スイッチング素子5がオフ状態となると、トランス7の一次巻線15に印加される電圧vpは、0となるが、補助スイッチ部9(第1補助スイッチング素子19及び第2補助スイッチング素子21)がオン状態となることによって、トランス7の一次巻線15が短絡され、トランス7の一次巻線15には、略一定の電流が流れる。
【0065】
次に、PWM制御回路13は、時刻tが(t=t7)で、補助スイッチ部9の第1補助スイッチング素子19及び第2補助スイッチング素子21へ制御信号g5,g6を送って、第1補助スイッチング素子19及び第2補助スイッチング素子21オン状態からオフ状態へ遷移させ、時刻tが(t=t8)で、第1スイッチング素子3及び第4のスイッチング素子6へ遷移させる。ここで、期間Δtdbは、(Δtdb=t8−t7=t4−t3)である。
【0066】
時刻tが(t=t7)で、補助スイッチ部9がオフ状態となると、トランス7の一次巻線15は、漏れインダクタンスに起因して、第4のスイッチング素子6の寄生ダイオード6bからトランス7の一次巻線15を経て第1スイッチング素子3の寄生ダイオード3bに至る経路に沿って電流を流し続け、第1スイッチング素子3の寄生コンデンサ3cと、第4のスイッチング素子6の寄生コンデンサ6cとに蓄積された電荷を放電させる。
【0067】
こうして、放電が完了したタイミングで、すなわち、時刻tが(t=t8)で、第1スイッチング素子3及び第4のスイッチング素子6をオン状態となるように制御することによって、第1スイッチング素子3及び第4のスイッチング素子6に印加される電圧が0のときに、第1スイッチング素子3及び第4のスイッチング素子6がオン状態とされる。これによって、オン時のスイッチングで発生する損失が低減される。
以下、上述した時刻tが(t0≦t≦t8)の動作を、時刻tが(t≧t8)においても、周期的に繰り返される。
【0068】
このように、この例の構成によれば、時刻tが(t=t3)で、補助スイッチ部9がオフ状態となると、トランス7の一次巻線15は、漏れインダクタンスに起因して、第2スイッチング素子4の寄生ダイオード4bからトランス7の一次巻線15を経て第3スイッチング素子5の寄生ダイオード5bに至る経路に沿って電流を流し続け、第2スイッチング素子4の寄生コンデンサ4cと、第3スイッチング素子5の寄生コンデンサ5cとに蓄積された電荷を放電させる。こうして、放電が完了したタイミングで、第2スイッチング素子4及び第3スイッチング素子5をオン状態となるように制御することによって、第2スイッチング素子4及び第3スイッチング素子5に印加される電圧が0のときに、第2スイッチング素子4及び第3スイッチング素子5がオン状態とされる。これによって、オン時のスイッチングで発生する損失が低減される。
【0069】
また、時刻tが(t=t7)で、補助スイッチ部9がオフ状態となると、トランス7の一次巻線15は、漏れインダクタンスに起因して、第4のスイッチング素子6の寄生ダイオード6bからトランス7の一次巻線15を経て第1スイッチング素子3の寄生ダイオード3bに至る経路に沿って電流を流し続け、第1スイッチング素子3の寄生コンデンサ3cと、第4のスイッチング素子6の寄生コンデンサ6cとに蓄積された電荷を放電させる。こうして、放電が完了したタイミングで、第1スイッチング素子3及び第4のスイッチング素子6をオン状態となるように制御することによって、第1スイッチング素子3及び第4のスイッチング素子6に印加される電圧が0のときに、第1スイッチング素子3及び第4のスイッチング素子6がオン状態とされる。これによって、オン時のスイッチングで発生する損失が低減される。
【0070】
また、第1スイッチング素子3及び第4のスイッチング素子6(第2スイッチング素子4及び第3スイッチング素子5)のオフ時にも、トランス7の一次巻線15の漏れインダクタンスと、寄生コンデンサ3c,6c(4c,5c)との共振によるサージ状の電圧の発生による損失も防止することができる。
このように、オン時及びオフ時のスイッチングで発生する損失を低減することができるので、高効率化を達成することができる。
また、サージ状の短絡電流や電圧の発生を抑制することができるので、安定した高品質の直流電源を提供することができ、直流電源としての信頼性を向上させることができる。
【0071】
また、損失が低減されることによって、例えば発熱対策に要する部品(例えば、ヒートシンク等)を削減することができるので、設計上の自由度を向上させることができると共に、構成部品を削減し、コストを低減することができる。
また、トランス7の一次巻線15を短絡するための専用の単一の補助スイッチ部を設けたので、短絡電流を流すために定格の比較的大きなスイッチング素子を必要とする従来技術に比べて、小型のスイッチング素子で足り、装置の小型化に寄与することができる。
【0072】
また、第1スイッチング素子3及び第4スイッチング素子6(第2スイッチング素子4及び第3スイッチング素子5)のオン状態からオフ状態への遷移のタイミングと、第1補助スイッチング素子19及び第2補助スイッチング素子21のオフ状態からオン状態への遷移のタイミングとの時間差としての期間tdaと、第1補助スイッチング素子19及び第2補助スイッチング素子21のオン状態からオフ状態への遷移のタイミングと、第1スイッチング素子3及び第4スイッチング素子6(第2スイッチング素子4及び第3スイッチング素子5)のオフ状態からオン状態への遷移のタイミングとの時間差としての期間tdbは、それぞれ、所定の時間に設定されているので、確実にスイッチング動作を行わせることができる。
【実施例2】
【0073】
図4は、この発明の第2実施例であるスイッチング電源回路の構成を示すブロック図である。
この例が上述した実施例1と大きく異なるところは、整流回路において、ダイオードに代えて、MOSFETからなるスイッチング素子を用いた点である。
これ以外の構成は、上述した実施例1の構成と略同一であるので、その説明を簡略にする。
【0074】
この例のスイッチング電源回路1Aは、フルブリッジコンバータであり、図4に示すように、バッテリ等の直流電源2と、第1スイッチング素子3、第2スイッチング素子4、第3スイッチング素子5及び第4スイッチング素子6と、トランス7と、共振用インダクタ8と、補助スイッチ部9と、整流回路31と、平滑回路12と、PWM制御回路32とを備えてなっている。
【0075】
整流回路31は、直列接続された第1整流用スイッチング素子33及び第2整流用スイッチング素子34が、トランス7の第1の二次巻線16及び第2の二次巻線17に並列に接続されて概略構成されている。
第1整流用スイッチング素子33(第2整流用スイッチング素子34)は、nMOSFET33a(34a)を有してなり、寄生ダイオード33b(34b)及び寄生コンデンサ33c(34c)を含み、寄生ダイオード33b(34b)及び寄生コンデンサ33c(34c)は、nMOSFET33a(34a)に並列に接続されるように形成されている。
【0076】
この例では、PWM制御回路32の制御によって、第1整流用スイッチング素子33と第2整流用スイッチング素子34とは相補的にオン/オフされる。すなわち、第1整流用スイッチング素子33は、第2整流用スイッチング素子34がオフ状態の期間内でオン状態とされ、第2整流用スイッチング素子34は、第1整流用スイッチング素子33がオフ状態の期間内でオン状態とされる。
【0077】
この例の構成によれば、上述した実施例1と略同一の効果を得ることができる。
【0078】
以上、この発明の実施例を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。
例えば、上述した実施例では、スイッチング素子として、nMOSFETを用いる場合について述べたが、pMOSFETを用いることもできるし、MOSFETに限らず、バイポーラトランジスタやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等を用いることもできる。
【0079】
また、補助スイッチ(双方向スイッチ)として、2つのnMOSFETの組合せに代えて、例えば、交流スイッチング素子としての双方向サイリスタを用いても良い。
また、第1乃至第4のスイッチング手段として、それぞれ、単一のスイッチング素子に代えて、複数のスイッチング素子を直列に接続して、これらを同時にオン/オフさせるように構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0080】
スイッチング電源回路として、昇圧型のほか、降圧型のものに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】この発明の第1実施例であるスイッチング電源回路の構成を示すブロック図である。
【図2】同スイッチング電源回路の補助スイッチ部の構成を示すブロック図である。
【図3】同スイッチング電源回路の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】この発明の第2実施例であるスイッチング電源回路の構成を示すブロック図である。
【図5】従来技術を説明するための説明図である。
【図6】従来技術を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0082】
1,1A スイッチング電源回路
3 第1スイッチング素子(第1のスイッチング手段、第1の直列スイッチング群の一部)
3a,4a,5a,6a nMOSFET(MOSFET)
3b,4b,5b,6b 寄生ダイオード
3c,4c,5c,6c 寄生コンデンサ(寄生容量)
4 第2スイッチング素子(第2のスイッチング手段、第2の直列スイッチング群の一部)
5 第3スイッチング素子(第3のスイッチング手段、第2の直列スイッチング群の一部)
6 第4スイッチング素子(第4のスイッチング手段、第1の直列スイッチング群の一部)
7 トランス
8 共振用インダクタ
9 補助スイッチ部(短絡用スイッチ)
11 整流回路
12 平滑回路
13 PWM制御回路(スイッチング制御手段)
15 一次巻線
16 第1の二次巻線(二次巻線)
17 第2の二次巻線(二次巻線)
19 第1補助スイッチング素子
19a,21a nMOSFET(MOSFET)
19b,21b 寄生ダイオード
19c,21c 寄生コンデンサ(寄生容量)
21 第2補助スイッチング素子
Δtda 期間(休止期間)
Δtdb 期間(休止期間)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のスイッチング手段と第2のスイッチング手段との直列接続からなる第1の直列スイッチング群と、第3のスイッチング手段と第4のスイッチング手段との直列接続からなる第2の直列スイッチング群とが、直流電源の両極間に並列接続され、
前記第1の直列スイッチング群と前記第2の直列スイッチング群との間に、少なくともトランスの一次巻線を含むインダクタがブリッジ接続され、かつ、
スイッチング制御手段が、前記第1乃至第4のスイッチング手段のオン/オフを制御して、前記直流電源から供給される電流を、前記第1のスイッチング手段、前記一次巻線、及び前記第4のスイッチング手段を通る第1の経路と、前記第3のスイッチング手段、前記一次巻線、及び前記第2のスイッチング手段を通る第2の経路とに交互に流す構成のスイッチング電源回路であって、
前記インダクタを短絡させるための短絡用スイッチを備えると共に、
前記スイッチング制御手段は、前記第1乃至第4のスイッチング手段の全てが、オフ状態のとき、前記短絡用スイッチをオン状態とすることを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項2】
前記スイッチング制御手段は、前記第1のスイッチング手段と前記第4のスイッチング手段とを、略同時にオン/オフし、かつ、前記第2のスイッチング手段と前記第3のスイッチング手段とを、略同時にオン/オフし、
前記第2のスイッチング手段及び前記第3のスイッチング手段がオフ状態の期間内で、前記第1のスイッチング手段及び前記第4のスイッチング手段をオン状態とし、前記第1のスイッチング手段及び前記第4のスイッチング手段がオフ状態の期間内で、前記第2のスイッチング手段及び前記第3のスイッチング手段をオン状態とすることを特徴とする請求項1記載のスイッチング電源回路。
【請求項3】
前記スイッチング制御手段は、前記第1のスイッチング手段及び前記第4のスイッチング手段のオン期間終了時から所定の休止期間経過後に、前記短絡用スイッチをオン状態とすると共に、前記第2のスイッチング手段及び前記第3のスイッチング手段のオン期間終了時から所定の休止期間経過後に、前記短絡用スイッチをオン状態とすることを特徴とする請求項1又は2記載のスイッチング電源回路。
【請求項4】
前記スイッチング制御手段は、前記第1のスイッチング手段及び前記第4のスイッチング手段のオン期間開始時から所定の休止期間前に、前記短絡用スイッチをオフ状態とすると共に、前記第2のスイッチング手段及び前記第3のスイッチング手段のオン期間開始時から所定の休止期間前に、前記短絡用スイッチをオフ状態とすることを特徴とする請求項1、2又は3記載のスイッチング電源回路。
【請求項5】
前記短絡用スイッチは、双方向スイッチを有してなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載のスイッチング電源回路。
【請求項6】
前記トランスの前記一次巻線には、共振用インダクタが直列に接続され、前記短絡用スイッチは、直列に接続された前記一次巻線及び前記共振用インダクタに、並列に接続され、前記直列に接続された前記一次巻線及び前記共振用インダクタを短絡させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載のスイッチング電源回路。
【請求項7】
前記第1乃至第4のスイッチング手段及び前記短絡用スイッチは、MOSFETを有してなり、寄生容量を含んでいることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1に記載のスイッチング電源回路。
【請求項8】
前記トランスの二次巻線に接続され、負荷に直流電流を供給するための整流回路を備えたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1に記載のスイッチング電源回路。
【請求項9】
前記スイッチング制御手段は、前記第1乃至第4のスイッチング手段及び前記短絡用スイッチをPWM制御することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1に記載のスイッチング電源回路。
【請求項10】
第1のスイッチング手段と第2のスイッチング手段との直列接続からなる第1の直列スイッチング群と、第3のスイッチング手段と第4のスイッチング手段との直列接続からなる第2の直列スイッチング群とが、直流電源の両極間に並列接続され、
前記第1の直列スイッチング群と前記第2の直列スイッチング群との間に、少なくともトランスの一次巻線を含むインダクタがブリッジ接続され、かつ、
スイッチング制御手段が、前記第1乃至第4のスイッチング手段のオン/オフを制御して、前記直流電源から供給される電流を、前記第1のスイッチング手段、前記一次巻線、及び前記第4のスイッチング手段を通る第1の経路と、前記第3のスイッチング手段、前記一次巻線、及び前記第2のスイッチング手段を通る第2の経路とに交互に流すスイッチング電源回路における制御方法であって、
前記インダクタを短絡させるための短絡用スイッチが設けられると共に、
前記スイッチング制御手段は、前記第1乃至第4のスイッチング手段の全てが、オフ状態のとき、前記短絡用スイッチをオン状態とすることを特徴とするスイッチング電源回路における制御方法。
【請求項11】
前記スイッチング制御手段は、前記第1のスイッチング手段と前記第4のスイッチング手段とを、略同時にオン/オフし、かつ、前記第2のスイッチング手段と前記第3のスイッチング手段とを、略同時にオン/オフし、
前記第2のスイッチング手段及び前記第3のスイッチング手段がオフ状態の期間内で、前記第1のスイッチング手段及び前記第4のスイッチング手段をオン状態とし、前記第1のスイッチング手段及び前記第4のスイッチング手段がオフ状態の期間内で、前記第2のスイッチング手段及び前記第3のスイッチング手段をオン状態とすることを特徴とする請求項10記載のスイッチング電源回路における制御方法。
【請求項12】
前記スイッチング制御手段は、前記第1のスイッチング手段及び前記第4のスイッチング手段のオン期間終了時から所定の休止期間経過後に、前記短絡用スイッチをオン状態とすると共に、前記第2のスイッチング手段及び前記第3のスイッチング手段のオン期間終了時から所定の休止期間経過後に、前記短絡用スイッチをオン状態とすることを特徴とする請求項10又は11記載のスイッチング電源回路における制御方法。
【請求項13】
前記スイッチング制御手段は、前記第1のスイッチング手段及び前記第4のスイッチング手段のオン期間開始時から所定の休止期間前に、前記短絡用スイッチをオフ状態とすると共に、前記第2のスイッチング手段及び前記第3のスイッチング手段のオン期間開始時から所定の休止期間前に、前記短絡用スイッチをオフ状態とすることを特徴とする請求項10、11又は12記載のスイッチング電源回路における制御方法。
【請求項14】
前記短絡用スイッチは、双方向スイッチを有してなることを特徴とする請求項10乃至13のいずれか1に記載のスイッチング電源回路における制御方法。
【請求項15】
前記トランスの前記一次巻線には、共振用インダクタが直列に接続され、前記短絡用スイッチは、直列に接続された前記一次巻線及び前記共振用インダクタに、並列に接続され、前記直列に接続された前記一次巻線及び前記共振用インダクタを短絡させることを特徴とする請求項10乃至14のいずれか1に記載のスイッチング電源回路における制御方法。
【請求項16】
前記第1乃至第4のスイッチング手段及び前記短絡用スイッチは、MOSFETを有してなり、寄生容量を含んでいることを特徴とする請求項10乃至15のいずれか1に記載のスイッチング電源回路における制御方法。
【請求項17】
前記トランスの二次巻線には、負荷に直流電流を供給するための整流回路が接続されていることを特徴とする請求項10乃至16のいずれか1に記載のスイッチング電源回路における制御方法。
【請求項18】
前記スイッチング制御手段は、前記第1乃至第4のスイッチング手段及び前記短絡用スイッチをPWM制御することを特徴とする請求項10乃至17のいずれか1に記載のスイッチング電源回路における制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−304578(P2006−304578A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−127037(P2005−127037)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(000168285)エヌイーシーコンピュータテクノ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】