スイッチング電源回路
【課題】全対応負荷領域でZVSとなる、シングルエンドの共振形コンバータの実用化を図る。
【解決手段】商用交流電源を整流回路(平滑コンデンサCi含む)で整流平滑化した直流入力電圧を一次側スイッチングコンバータはE級共振形として構成し、このE級共振形コンバータの一次側直列共振回路のチョークコイルを絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1とするスイッチング電源回路を構成する。また、アクティブクランプ回路10を備えて共振電圧パルスのピーク抑制を図って、スイッチング素子等の耐圧を低減する。
【解決手段】商用交流電源を整流回路(平滑コンデンサCi含む)で整流平滑化した直流入力電圧を一次側スイッチングコンバータはE級共振形として構成し、このE級共振形コンバータの一次側直列共振回路のチョークコイルを絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1とするスイッチング電源回路を構成する。また、アクティブクランプ回路10を備えて共振電圧パルスのピーク抑制を図って、スイッチング素子等の耐圧を低減する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧共振形コンバータを備えて成るスイッチング電源回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
共振形によるいわゆるソフトスイッチング電源としては、電流共振形と電圧共振形の形式が広く知られている。現状においては、実用化が容易なことを背景に、2石のスイッチング素子によるハーフブリッジ結合方式の電流共振形コンバータが広く採用されている状況にある。
しかし、現在、例えば高耐圧スイッチング素子の特性が改善されてきている状況にあり、電圧共振形コンバータを実用化するにあたっての耐圧の問題はクリアされてきている状況にある。また、1石のスイッチング素子によるシングルエンド方式で構成した電圧共振形コンバータについては、1石の電流共振形フォワードコンバータと比較して、入力帰還ノイズや直流出力電圧ラインのノイズ成分などの点で有利であることも知られている。
【0003】
図14は、シングルエンド方式による電圧共振形コンバータを備えるスイッチング電源回路の一構成例を示している。
【0004】
この図に示すスイッチング電源回路においては、商用交流電源ACをブリッジ整流回路Di及び平滑コンデンサCiから成る整流平滑回路により整流平滑化することで、平滑コンデンサCiの両端電圧として、整流平滑電圧Eiを生成している。
なお、商用交流電源ACのラインに対しては、1組のコモンモードチョークコイルCMCと、2本のアクロスコンデンサCLから成り、コモンモードのノイズを除去するノイズフィルタが設けられている。
【0005】
上記整流平滑電圧Eiは、直流入力電圧として電圧共振形コンバータに対して入力される。この電圧共振形コンバータは、上記しているように、1石のスイッチング素子Q1を備えたシングルエンド方式による構成を採る。また、この場合の電圧共振形コンバータとしては他励式となっており、MOS−FETのスイッチング素子Q1を、発振・ドライブ回路2によりスイッチング駆動するようにされている。
【0006】
スイッチング素子Q1に対しては、MOS−FETのボディダイオードDDが並列に接続される。また、スイッチング素子Q1のソース−ドレイン間に対して一次側並列共振コンデンサCrが並列に接続される。
【0007】
一次側並列共振コンデンサCrは、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1とによって一次側並列共振回路(電圧共振回路)を形成している。そして、この一次側並列共振回路によって、スイッチング素子Q1のスイッチング動作として電圧共振形の動作が得られるようにされている。
【0008】
発振・ドライブ回路2は、スイッチング素子Q1をスイッチング駆動するために、スイッチング素子Q1のゲートに対して、ドライブ信号としてのゲート電圧を印加する。これにより、スイッチング素子Q1は、ドライブ信号の周期に応じたスイッチング周波数によりスイッチング動作を行う。
【0009】
絶縁コンバータトランスPITは、スイッチング素子Q1 のスイッチング出力を二次側に伝送する。
絶縁コンバータトランスPITの構造としては、例えば、フェライト材によるE字形状コアを組み合わせたEE字形コアを備える。そして、一次側と二次側とで巻装部位を分割したうえで、一次巻線N1と、二次巻線N2を、EE字形コアの中央磁脚に対して巻装している。
そのうえで、絶縁コンバータトランスPITのEE字形コアの中央磁脚に対しては1.0mm程度のギャップを形成するようにしており、これによって、一次側と二次側との間で、k=0.80〜0.85程度の結合係数kを得るようにしている。この程度の結合係数kは疎結合としてみてよい結合度であり、その分、飽和状態が得られにくくなる。また、この結合係数kの値が、リーケージインダクタンス(L1)の設定要素となる。
【0010】
絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1の一端は、スイッチング素子Q1と平滑コンデンサCiの正極端子間に挿入されるようになっていることで、スイッチング素子Q1のスイッチング出力が伝達されるようになっている。絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2には、一次巻線N1により誘起された交番電圧が発生する。
【0011】
この場合、二次巻線N2の一端に対して二次側直列共振コンデンサC2を直列に接続していることで、二次巻線N2のリーケージインダクタンスL2と二次側直列共振コンデンサC2のキャパシタンスとによって二次側直列共振回路(電流共振回路)が形成される。
そのうえで、この二次側直列共振回路に対して、図示するようにして整流ダイオードDo1,Do2、及び平滑コンデンサCoを接続することで、倍電圧半波整流回路を形成している。この倍電圧半波整流回路は、二次巻線N2に誘起される交番電圧V2の2倍に対応するレベルの二次側直流出力電圧Eoを、平滑コンデンサCoの両端電圧として生成する。二次側直流出力電圧Eoは負荷に供給されると共に、定電圧制御用の検出電圧として、制御回路1に入力される。
【0012】
制御回路1は、検出電圧として入力される二次側直流出力電圧Eoのレベルを検出して得られる検出出力を発振・ドライブ回路2に入力する。
発振・ドライブ回路2は、入力される検出出力が示す二次側直流出力電圧Eoのレベルに応じて、二次側直流出力電圧Eoが所定のレベルで一定となるようにして、スイッチング素子Q1のスイッチング動作を制御する。つまり、制御すべきスイッチング動作を得るためのドライブ信号を生成して出力する。これにより、二次側直流出力電圧Eoの安定化制御が行われる。
【0013】
図15及び図16は、上記図14に示した構成の電源回路についての実験結果を示している。なお、実験にあたっては、図14の電源回路の要部について下記のようにして設定している。
絶縁コンバータトランスPITは、コアにEER-35を選定し、中央磁脚のギャップについては、1mmのギャップ長を設定する。また、一次巻線N1及び二次巻線N2のターン数T(巻数)については、それぞれN1=39T、N2=23Tとし、二次巻線N2の1ターン(T)あたりの誘起電圧レベルについては、3V/Tを設定した。絶縁コンバータトランスPITの結合係数kについてはk=0.81を設定した。
また、一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスについてはCr=3900pF、二次側直列共振コンデンサC2のキャパシタンスについてはC2=0.1μFを選定した。これに応じて、一次側並列共振回路の共振周波数fo1=230kHz、二次側直列共振回路の共振周波数fo2=82kHzが設定される。この場合、共振周波数fo1,fo2の相対的関係としては、fo1≒2.8×fo2と表すことができる。
二次側直流出力電圧Eoの定格レベルは135Vであり、対応負荷電力は、最大負荷電力Pomax=200W〜最小負荷電力Pomin=0Wである。
【0014】
図15は、図14に示した電源回路における要部の動作をスイッチング素子Q1のスイッチング周期により示す波形図であり、図15(a)には、最大負荷電力Pomax=200W時における電圧V1、スイッチング電流IQ1、一次巻線電流I1、二次巻線電流I2、二次側整流電流ID1、ID2が示されている。図15(b)には、中間の負荷電力Po=120W時における電圧V1、スイッチング電流IQ1、一次巻線電流I1、二次巻線電流I2が示されている。図15(c)には最小負荷電力Pomin=0W時における電圧V1、スイッチング電流IQ1が示される。
電圧V1は、スイッチング素子Q1の両端に得られる電圧であり、スイッチング素子Q1がオンとなる期間TONにおいて0レベルで、オフとなる期間TOFFにおいて正弦波状の共振パルスとなる波形である。この電圧V1の共振パルス波形が、一次側スイッチングコンバータの動作が電圧共振形であることを示している。
【0015】
スイッチング電流IQ1は、スイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)に流れる電流であり、期間TONにおいて図示する波形により流れ、期間TOFFにおいて0レベルとなる波形として得られる。
一次巻線N1に流れる一次巻線電流I1は、期間TONにおいて上記スイッチング電流IQ1として流れる電流成分と、期間TOFFにおいて一次側並列共振コンデンサCrに流れる電流とを合成したものとなる。
【0016】
また、図15(a)のみにおいて示しているが、二次側整流回路の動作として、整流ダイオードDo1,Do2に流れる整流電流ID1,ID2は、それぞれ図示するようにして正弦波状に流れるものとなる。この場合、整流電流ID1の波形のほうが、整流電流ID2よりも、二次側直列共振回路の共振動作が支配的に現れたものとなっている。
二次巻線N2に流れる二次巻線電流I2は、整流電流ID1,ID2が合成された波形として得られる。
【0017】
図16は、図14に示した電源回路についての、負荷変動に対するスイッチング周波数fs、スイッチング素子Q1のオン期間TON、オフ期間TOFF、及びAC→DC電力変換効率(ηAC→DC)を示している。
先ず、AC→DC電力変換効率(ηAC→DC)を見てみると、負荷電力Po=50W〜200Wまでの広範囲で90%以上となる高効率が得られていることが分かる。このような特性は、シングルエンド方式による電圧共振形コンバータに、二次側直列共振回路を組み合わせた場合に得られるものであることを、先に本出願の発明者は実験で確認している。
【0018】
また、図16のスイッチング周波数fs、オン期間TON、オフ期間TOFFによっては、図14に示す電源回路についての負荷変動に対する定電圧制御特性としてのスイッチング動作が示されることになる。この場合、スイッチング周波数fsは、負荷変動に対してほぼ一定となっている。これに対して、オン期間TON、オフ期間TOFFが図示するようにして相互に逆傾向となるようにしてリニアに変化を示している。このことは、二次側直流出力電圧Eoの変動に対してスイッチング周波数(スイッチング周期)はほぼ一定とされたうえで、オン期間とオフ期間との時比率を変化させるようにしてスイッチング動作を制御しているということを示す。このような制御は、1周期内のオン/オフ期間を可変する、PWM(Pulse Width Modulation)制御であるとみることができる。このPWM制御によって、図14に示す電源回路では、二次側直流出力電圧Eoについての安定化が図られる。
【0019】
図17は、図14に示す電源回路の定電圧制御特性を、スイッチング周波数fs(kHz)と二次側直流出力電圧Eoとの関係により、模式的に示している。
図14に示す電源回路では、一次側並列共振回路と二次側直列共振回路を備えることから、一次側並列共振回路の共振周波数fo1に応じた共振インピーダンス特性と、二次側直列共振回路の共振周波数fo2に応じた共振インピーダンス特性との2つの共振インピーダンス特性を複合的に有することになる。また、図14に示す電源回路では、fo1≒2.8×fo2の関係を有しているとされるので、図17にも示しているように、一次側並列共振周波数fo1に対して二次側直列共振周波数fo2が低い関係となる。
そのうえで、或る一定の交流入力電圧VACの条件でのスイッチング周波数fsに対する定電圧制御特性を想定すると、図示するようにして、一次側並列共振回路の共振周波数fo1に応じた共振インピーダンスの下での最大負荷電力Pomax時/最小負荷電力Pomin時の各定電圧制御特性としては、それぞれ特性曲線A,Bとして示され、二次側直列共振回路の共振周波数fo2に応じた共振インピーダンスの下での最大負荷電力Pomax時/最小負荷電力Pomin時の各定電圧制御特性としては、それぞれ特性曲線C,Dで示されるものとなる。そして、この図17に示す特性の下で、二次側直流出力電圧Eoの定格レベルであるtgにより定電圧制御を図ろうとすると、そのために必要なスイッチング周波数fsの可変範囲(必要制御範囲)は、Δfsで示される区間として表すことができる。
【0020】
図17に示される必要制御範囲Δfsは、二次側直列共振回路の共振周波数fo2に応じた最大負荷電力Pomax時の特性曲線Cから、一次側並列共振回路の共振周波数fo1に応じた最小負荷電力Pomin時の特性曲線Aまでに至るもので、その間に、二次側直列共振回路の共振周波数fo2に応じた最小負荷Pomin時の特性曲線Dと、一次側並列共振回路の共振周波数fo1に応じた最大負荷電力Pomax時の特性曲線Bをまたぐ。
このために、図14に示す電源回路の定電圧制御動作としては、スイッチング周波数fsはほぼ固定とされたうえで、1スイッチング周期における期間TON/TOFFの時比率を変化させるPWM制御の状態により、スイッチング駆動制御を行うものとなる。なお、このことは、図15(a)(b)(c)に示す最大負荷電力Pomax=200W時、負荷電力Po=100W時、最小負荷電力Pomin=0W時に示される1スイッチング周期(TOFF+TON)の期間長についてはほぼ一定とされたうえで、期間TOFF,TONの幅が変化していることによっても示されている。
このような動作は、電源回路における負荷変動に応じた共振インピーダンス特性として、一次側並列共振回路の共振周波数fo1の共振インピーダンス(容量性インピーダンス)が支配的となる状態と、二次側直列共振回路の共振周波数fo2(誘導性インピーダンス)が支配的となる状態との間での遷移が、狭いスイッチング周波数の可変範囲(Δfs)のもとで行われることにより得られるものであるとされる。
【0021】
【特許文献1】特開2000−134925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
上記図14に示す電源回路では次のような問題を有している。
先に説明した図15の波形図において、図15(a)に示される最大負荷電力Pomax時のスイッチング電流IQ1は、ターンオンタイミングであるオフ期間TOFFの終了時点に至るまでは0レベルで、オン期間TONに至ると、先ず負極性の電流がボディダイオードDDに流れ、この後に反転してスイッチング素子Q1のドレイン−ソースを流れるようにして動作する。この動作は、ZVS(Zero Voltage Switching)が適正に行われている状態を示している。
これに対して、図15(b)に示される、中間負荷に対応するPo=120W時のスイッチング電流IQ1は、ターンオンタイミングのオフ期間TOFFの終了時点に至る以前のタイミングで、スイッチング電流IQ1がノイズ的に流れる動作が得られている。この動作は、ZVSが適正に行われていない異常動作である。
【0023】
つまり、図14に示されるようにして、二次側直列共振回路を備える電圧共振形コンバータでは、中間負荷時においてZVSが適正に実行されない異常動作となることが分かっている。図14の電源回路の実際としては、例えば図16に示す区間Aとしての負荷変動範囲の領域で、このような異常動作となることが確認されている。
二次側直列共振回路を備える電圧共振形コンバータは、先にも説明したように、傾向としては負荷変動に対して高効率が良好に維持できる特性を本来有しているが、図15(b)のスイッチング電流IQ1として示すように、スイッチング素子Q1のターンオン時において相応のピーク電流が流れることになるので、これによるスイッチング損失の増加を招き、電力変換効率の低下要因を抱えることになる。
また、いずれにせよ、上記のような異常動作が生じることで、例えば定電圧制御回路系の位相−ゲイン特性にずれが生じることとなって、異常発振状態でのスイッチング動作となる。このために、実用化することは、現実的には困難であるとの認識が現状においては強い。
【課題を解決するための手段】
【0024】
そこで、本発明は上記した課題を考慮して、スイッチング電源回路として次のように構成することとした。
つまり、少なくとも整流素子と平滑コンデンサを備えて形成され、商用交流電源を入力して整流平滑化することで、上記平滑コンデンサの両端電圧として整流平滑電圧を生成する整流平滑回路と、整流平滑電圧を直流入力電圧として入力してスイッチングを行うメインスイッチング素子と、メインスイッチング素子をスイッチング駆動するスイッチング駆動手段とを備える。
また、整流平滑電圧がメインスイッチング素子に入力される経路に対して直列に挿入される第1のインダクタと、メインスイッチング素子に対して並列となる関係により接続され、少なくとも上記第1のインダクタのインダクタンスと自身のキャパシタンスとによって一次側並列共振回路を形成する一次側並列共振コンデンサとを備える。
また、第2のインダクタと、この第2のインダクタと直列となる関係により接続されることで、少なくとも第2のインダクタのインダクタンスと自身のキャパシタンスとによって一次側直列共振回路を形成し、第2のインダクタと自身との直列接続回路がスイッチング素子に対して並列となる関係により接続されるようにして設けられる一次側直列共振コンデンサとを備える。
また、少なくとも、第2のインダクタを一次巻線として巻装するとともに、この一次巻線に得られたスイッチング出力により交番電圧が誘起される二次巻線を巻装して形成され、疎結合とみなされる所要の一次側と二次側との総合結合係数が得られるようにして、自身の結合係数が設定されるコンバータトランスを備える。
また、コンバータトランスの二次巻線に誘起される交番電圧を入力して整流動作を行って、二次側直流出力電圧を生成するように構成された二次側直流出力電圧生成手段を備える。
また、補助スイッチング素子を備え、メインスイッチング素子がオフとなる期間内において補助スイッチング素子がオンとなるオン期間を形成して、このオン期間において一次側並列共振コンデンサに流れるべき充放電電流を補助スイッチング素子に流すようにして設けられるアクティブクランプ回路を備えることとした。
【0025】
なお、本願発明において「結合係数」とは、電磁的な結合の度合いを示すものであり、数値として1が最も結合の度合いが高いことを示し、数値として0が最も結合の度合いが低い(結合していない)ことを示す。また、結合係数の用語は、構成態様によらず総称として一般に用いられるものであるが、コンバータトランス自体の結合係数と区別するために、一次側の全体と二次側の全体との間の電磁的な結合の度合いについては「総合結合係数」という。例えば、コンバータトランスに他のインダクタンス成分が付加されない場合には、結合係数の値と総合結合係数の値とは一致する。
【0026】
上記構成による電源回路は、一次側においてE級スイッチングコンバータとしての回路形態を形成する。E級スイッチングコンバータは、並列共振回路(一次側並列共振回路:電圧共振回路)と直列共振回路(一次側直列共振回路)を備える複合共振形といわれるソフトスイッチングコンバータの一形式である。そのうえで、E級スイッチングコンバータにおける直列共振回路(一次側直列共振回路)を形成するインダクタ(第2のインダクタ)をコンバータトランスの一次巻線として電源回路を構成している。
また、このような構成では、コンバータトランスの一次側と二次側との総合結合係数は、コンバータトランス自身の結合係数と、第1のインダクタとコンバータトランスの一次巻線(第2のインダクタ)との等価的な並列回路により得られる一次側のリーケージインダクタンスにより決定される。本発明は、このようにして総合結合係数が設定されることを考慮したうえで、疎結合としてみなされる所要の総合結合係数が得られるようにして、コンバータトランス自身の結合係数を設定するようにしている。このような総合結合係数の設定とすることで、中間負荷とされる負荷条件でのZVS動作が得られなくなる状態を回避する一要因となる。
このようにして総合結合係数を設定することにより、中間負荷とされる負荷条件範囲の下でZVS(Zero Voltage Switching:ゼロ電圧スイッチング)動作が得られなくなる異常動作を解消して、適正なZVS動作を得ている。
【0027】
また、本発明の下で構成される一次側のE級スイッチングコンバータは、商用交流電源を整流平滑化する整流平滑回路を形成する平滑コンデンサの両端電圧である整流平滑電圧を入力してスイッチングを行うようにされている。このとき、平滑コンデンサからE級スイッチングコンバータに流入する電流は、一次側並列共振回路を形成する第1のインダクタを介してスイッチング素子側に流れるようにされることで、直流となる。
【0028】
さらに、アクティブクランプ回路を備えて、本来は一次側並列共振コンデンサに流れるべき充放電電流を補助スイッチング素子に流すようにすることで、一次側並列共振コンデンサの両端電圧となる電圧共振パルスのピークレベルが抑制される。
【発明の効果】
【0029】
このようにして本発明は、一次側に並列共振回路を備えるスイッチング電源回路として、中間負荷とされる負荷条件範囲の下でZVS(Zero Voltage Switching:ゼロ電圧スイッチング)動作が得られなくなる異常動作が解消される。このことにより、電圧共振形コンバータ(一次側並列共振回路)の構成を含むスイッチングコンバータの実用化が容易に実現されることになる。
また、商用交流電源から整流平滑電圧(直流入力電圧)を生成する整流平滑回路の平滑コンデンサからスイッチングコンバータに流入する電流が直流となることで、上記平滑コンデンサとしての部品素子のキャパシタンスについて小さい値を選定し、また、汎用品を選定することが可能になり、例えば平滑コンデンサの低コスト化や小型化などの効果が得られる。
また、アクティブクランプ回路により電圧共振パルスのピークレベルが抑制されることで、メインスイッチング素子をはじめとする部品素子について、低耐圧品を選定できることになる。これにより、部品素子の性能の向上による電源回路の信頼性向上、コストダウン、回路の小型軽量化が図られる。
さらに、上記した中間負荷時における異常動作の解消、及びアクティブクランプ回路による電圧共振パルスのピークレベルの抑制効果などは、例えばより広範囲の入力電圧レベルに対応することの要因となるものであり、これにより、本発明に基づくスイッチング電源回路は、例えばAC100V系とAC200V系の商用交流電源入力に対応する、いわゆるワイドレンジ対応化なども容易に実現化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態という)について説明するのに先立ち、本実施の形態の背景技術となる、E級共振形によりスイッチング動作するスイッチングコンバータ(以下、E級スイッチングコンバータともいう)の基本構成について、図10及び図11を参照して説明しておく。
図10は、E級スイッチングコンバータとしての基本構成を示している。この図に示すE級スイッチングコンバータは、E級共振形で動作するDC-ACインバータとしての構成を採る。
この図に示すE級スイッチングコンバータは、1石のスイッチング素子Q1を備える。この場合のスイッチング素子Q1はMOS−FETであることとしている。このMOS−FETとしてのスイッチング素子Q1には、ボディダイオードDDが、ドレイン−ソース間に対して並列接続されるようにして形成される。この場合のボディダイオードDDの順方向は、ソースからドレインへの方向に沿ったものとなる。
また、同じくスイッチング素子Q1のドレイン−ソース間に対しては、並列共振コンデンサCrが並列に接続される。
【0031】
スイッチング素子Q1のドレインは、チョークコイルL10の直列接続を介して、直流入力電圧Einの正極と接続される。スイッチング素子Q1のソースは、直流入力電圧Einの負極と接続される。
【0032】
また、スイッチング素子Q1のドレインに対しては、チョークコイルL11の一端が接続され、他端には直列共振コンデンサC11が直列に接続される。直列共振コンデンサC11と直流入力電圧Einの負極との間には、負荷となるインピーダンスZが挿入される。ここでのインピーダンスZの具体例には圧電トランス、高周波対応の蛍光灯などを挙げることができる。
【0033】
このような構成のE級スイッチングコンバータは、チョークコイルL10のインダクタンスと並列共振コンデンサCrのキャパシタンスとにより形成される並列共振回路と、チョークコイルL11のインダクタンスと直列共振コンデンサC11のキャパシタンスとにより形成される直列共振回路とを備える複合共振形コンバータの一形態であるとみることができる。また、スイッチング素子を1つのみ備えて形成される点では、シングルエンド方式の電圧共振形コンバータと同じであるといえる。
【0034】
図11は、上記図10に示した構成のE級スイッチングコンバータについての要部の動作を示している。
スイッチング電圧V1は、スイッチング素子Q1の両端に得られる電圧であり、スイッチング素子Q1がオンとなる期間TONにおいて0レベルで、オフとなる期間TOFFにおいて正弦波状のパルスとなる波形である。このスイッチングパルス波形は、上記並列共振回路の共振動作(電圧共振動作)により得られる。
【0035】
スイッチング電流IQ1は、スイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)に流れる電流であり、期間TOFFでは0レベルで、期間TONにおいては、先ず開始時点から一定期間において、ボディダイオードDDを流れることで負極性となり、この後に反転して正極性となって、スイッチング素子Q1のドレインからソースに流れる。
また、E級スイッチングコンバータの出力として、上記直列共振回路に流れるとされる電流I2は、スイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)に流れるスイッチング電流IQ1と、並列共振コンデンサCrに流れる電流とを合成したものとなり、正弦波成分を含む波形となる。
【0036】
また、上記スイッチング電流IQ1とスイッチング電圧V1との関係によっては、スイッチング素子Q1のターンオフタイミングにおいてZVS動作が得られており、ターンオンタイミングにおいてZVS及びZCS動作が得られていることも示される。
【0037】
また、直流入力電圧Einの正極端子からチョークコイルL10を流れるようにしてE級スイッチングコンバータに流入する電流I1は、チョークコイルL10,L11のインダクタンスについて、L10>L11の関係を設定していることで、図示するようにして所定の平均レベルをとる脈流波形となる。このような脈流波形は、近似的な直流としてみることができる。
【0038】
上記E級スイッチングコンバータは、ピークスイッチ電圧が非常に高いことが知られている。例えば、スイッチング素子Q1のオン時間とオフ時間のデューティ比が2:1の場合、オフ期間のスイッチング電圧V1の波形である並列共振電圧パルスのピーク値は、直流入力電圧Einの5倍程度である。
このようなE級スイッチングコンバータのピークスイッチ電圧を抑制するための技術として、「末次正、伝送線路トランスを用いた電圧クランプ型E級増幅器、信学技報、社団法人電子情報通信学会」の文献には、ダイオードとトランスを用いた電圧クランプ法と、伝送線路トランスを用いた電圧クランプ法とが開示、提案されている。
図12は、前者のダイオードとトランスを用いた電圧クランプ法に対応した構成の回路図であり、図13は、後者の伝送線路トランスを用いた電圧クランプ法に対応した構成の回路図である。なお、これらの図において、図10と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0039】
先ず、図12に示す回路では、インダクタL10とインダクタL10aとを磁気結合したトランスTRと、ダイオードDを備える。ダイオードDとインダクタL10aとの直列接続を、直流入力電圧Einに対して並列となる関係により接続し、インダクタL10については、一方の端部をスイッチング素子Q1のドレインと接続し、他方の端部を直流入力電圧Einの正極と接続する。
このような回路構成では、スイッチング素子Q1のオフ期間においてダイオードDが導通して、ダイオードD−インダクタL10に電流が流れる期間が形成されることで、並列共振コンデンサCrに流れる電流が制限され、これにより、スイッチング電圧のピークが抑制される。
ただし、上記した文献にも記載されているように、この図12に示す電圧クランプ法では、トランスTRのリーケージインダクタンスによるリンギングが発生して、このリンギング成分の電圧がスイッチング電圧に重畳されることになるので、結果的には、効果的にスイッチング電圧が抑制できない。
【0040】
そこで、上記文献では、上記したリンギングの問題を解決するために、図14に示す構成を提案している。
図13に示す構成では、1:2のインピーダンス変換が行われる伝送線路トランスTLT、ダイオードD、及び抵抗RDを備え、これらを図示するようにしてE級スイッチングコンバータに対して接続して形成する。この場合、伝送線路トランスTLTは、同軸ケーブル巻線La、Lbが磁気結合するようにして巻装される2組のトランスTR1、TR2を備え、これらトランスTR1、TR2における上記同軸ケーブル巻線La、Lbを図示するようにして接続する。また、この場合においてダイオードDに対して直列接続される抵抗RDは、インピーダンス調整のために設けられたものである。
しかしながら、この図13に示す構成では、伝送線路トランスを使用することで、インピーダンス整合を厳密に行う必要が生じる。しかし、インピーダンス整合に抵抗を挿入することとすれば、この抵抗による電力損失が問題化する。
【0041】
本実施の形態としては、先に図10に示した基本構成に基づくE級スイッチングコンバータを電源回路に適用する。そのうえで、上記図12及び図13などに示される電圧クランプ法における問題がクリアされるようにして、スイッチング電圧のピークレベルが有効に抑制されるようにする。
【0042】
本実施の形態の電源回路の構成例を図1の回路図に示す。
この図に示すスイッチング電源回路においては、まず、商用交流電源ACのラインに対して、図示するようにして、1組のコモンモードチョークコイルCMCと、2本のアクロスコンデンサCLが挿入される。これらコモンモードチョークコイルCMC、及びアクロスコンデンサCL,CLにより、商用交流電源ACのラインに重畳するコモンモードのノイズを除去するノイズフィルタが形成される。
【0043】
商用交流電源AC(交流入力電圧VAC)は、ブリッジ整流回路Diにより整流され、その整流出力は平滑コンデンサCiに充電される。つまり、ブリッジ整流回路Di及び平滑コンデンサCiから成る整流平滑回路により商用交流電源を整流平滑化する。これにより平滑コンデンサCiの両端電圧として整流平滑電圧Eiが得られる。この整流平滑電圧Eiが、後段のスイッチングコンバータのための直流入力電圧となる。
【0044】
この図において、上記整流平滑電圧Eiを直流入力電圧として入力してスイッチング動作を行うスイッチングコンバータは、上記図10の基本構成に基づいたE級スイッチングコンバータとして形成される。
この場合のスイッチング素子Q1には高耐圧のMOS−FETが選定されている。また、この場合のE級スイッチングコンバータの駆動方式は、発振・ドライブ回路2によりスイッチング素子をスイッチング駆動する他励式である。
【0045】
スイッチング素子Q1のドレインは、チョークコイル巻線N10の直列接続を介して平滑コンデンサCiの正極端子と接続される。従って、この場合には、直流入力電圧(Ei)は、チョークコイル巻線N10の直列接続を介してスイッチング素子Q1に供給されるようになっている。スイッチング素子Q1のソースは一次側アースに接続される。このチョークコイル巻線N10としてのインダクタ(第1のインダクタ)は、図10に示したE級スイッチングコンバータにおけるチョークコイルL10に相当する機能部位となる。また、この場合のチョークコイル巻線N10は、後述するようにして絶縁コンバータトランスPITの構造に含められるようにして巻装されて設けられる。
スイッチング素子Q1のゲートに対しては、発振・ドライブ回路2から出力されるスイッチング駆動信号(電圧)が印加されるようになっている。
【0046】
この場合のスイッチング素子Q1には、MOS−FETが選定されていることから、図示するようにして、ソース−ドレイン間に対して並列に接続されるようにしてボディダイオードDDを内蔵する。このボディダイオードDDとしては、アノードがスイッチング素子Q1のソースと接続され、カソードがスイッチング素子Q1のドレインと接続される状態を形成する。このボディダイオードDDは、スイッチング素子Q1のオン/オフ動作(スイッチング動作)により生じる、逆方向のスイッチング電流を流す経路を形成する。
【0047】
また、スイッチング素子Q1のドレイン−ソース間に対しては、一次側並列共振コンデンサCrが並列に接続される。
一次側並列共振コンデンサCrは、自身のキャパシタンスと絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1のリーケージ(漏洩)インダクタンスL1とによって、スイッチング素子Q1に流れるスイッチング電流に対する一次側並列共振回路(電圧共振回路)を形成する。この一次側並列共振回路が共振動作を行うことによって、スイッチング素子Q1のスイッチング動作として、1つには電圧共振形の動作が得られる。これに応じて、スイッチング素子Q1の両端電圧(ドレイン−ソース間電圧)V1としては、そのオフ期間において正弦波状の共振パルス波形が得られる。
【0048】
また、スイッチング素子Q1のドレイン−ソース間に対しては、後述する絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1と一次側直列共振コンデンサC11とから成る直列接続回路が並列に接続される。この場合には、一次巻線N1の巻き終わり端部をスイッチング素子Q1のドレインと接続し、巻始め端部を一次側直列共振コンデンサC11と接続している。一次側直列共振コンデンサC11の一次巻線N1と接続されない側の極端子は、一次側アース電位にてスイッチング素子Q1のソースと接続される。
【0049】
発振・ドライブ回路2は、例えば他励式によりスイッチング素子Q1を駆動するために、発振回路と、この発振回路により得られた発振信号に基づいて、MOS−FETをスイッチング駆動するためのゲート電圧であるドライブ信号を生成して、スイッチング素子Q1のゲートに印加するようにされる。これにより、スイッチング素子Q1は、ドライブ信号波形に応じて連続的にオン/オフ動作を行う。つまり、スイッチング動作を行う。
【0050】
絶縁コンバータトランスPITは、一次側と二次側とを直流的に絶縁した状態で、一次側スイッチングコンバータのスイッチング出力を二次側に伝送するもので、このために、一次巻線N1と二次巻線N2が巻装される。また、本実施の形態の場合には、チョークコイル巻線N10についても、絶縁コンバータトランスPITの構造内に含まれるようにして巻装される。
なお、絶縁コンバータトランスPITの構造例については、後述する。
【0051】
絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1は、後述するようにして、一次側に形成されるE級スイッチングコンバータにおける一次側直列共振回路を形成するための素子であり、スイッチング素子Q1のスイッチング出力に応じた交番出力が得られる。
【0052】
絶縁コンバータトランスPITの二次側では、一次巻線N1により誘起された交番電圧が二次巻線N2に発生する。
この二次巻線N2に対しては、二次側整流回路として、4本の整流ダイオードDo1,Do2,Do3,Do4から成るブリッジ整流回路と1本の平滑コンデンサCoから成るブリッジ全波整流回路が接続される。
この場合、二次巻線N2の巻き終わり端部は、整流ダイオードDo1のアノードと整流ダイオードDo2のカソードの接続点に接続する。また、二次巻線N2の巻始め端部を、整流ダイオードDo3のアノードと整流ダイオードDo4のカソードの接続点に接続する。整流ダイオードDo1のカソードと整流ダイオードDo3のカソードを平滑コンデンサCoの正極端子に接続する。平滑コンデンサCoの負極端子は二次側アース電位にて、整流ダイオードDo2のアノードと整流ダイオードDo4のアノードの接続点と接続される。
【0053】
上記のようにして形成されるブリッジ全波整流回路によっては、二次巻線N2に誘起(励起)される交番電圧の一方の半周期において、ブリッジ整流回路の整流ダイオード[Do1,Do4]の組が導通して、平滑コンデンサCoに対して整流電流を充電する動作が得られる。また、二次巻線N2に誘起される交番電圧の他方の半周期においては、整流ダイオード[Do2,Do3]の組が導通して平滑コンデンサCoに対して整流電流を充電する動作が得られる。
これによって平滑コンデンサCoの両端電圧として、二次巻線N2に誘起される交番電圧のレベルの等倍に対応したレベルの二次側直流出力電圧Eoが生成される。
このようにして生成される二次側直流出力電圧Eoは、負荷に供給される。また、分岐して制御回路1に対して検出電圧として出力される。
【0054】
制御回路1は、入力された二次側直流出力電圧Eoのレベル変化に応じた検出出力を発振・ドライブ回路2に供給する。発振・ドライブ回路2では、入力された制御回路1の検出出力に応じてスイッチング周波数を可変するようにして、スイッチング素子Q1を駆動する。この動作が二次側直流出力電圧に対する定電圧制御動作となる。
【0055】
この図1に示す電源回路は、スイッチング素子Q1のオフ期間TOFFはほとんど変化を示すことが無く、一定とされたうえで、スイッチング素子Q1のオン期間TON(導通角)の変化によりスイッチング周波数が可変するスイッチング周波数制御としての定電圧制御動作となる。
【0056】
上記のようにしてスイッチング素子Q1のスイッチング周波数及び導通角が可変制御されることにより、電源回路における一次側、二次側の共振インピーダンス、電力伝送有効期間が変化し、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1から二次巻線N2側に伝送される電力量、また、二次側整流回路から負荷に供給すべき電力量が変化することになる。これにより、二次側直流出力電圧Eoのレベル変動がキャンセルされるようにして、二次側直流出力電圧Eoのレベルを制御する動作が得られることになる。つまり、二次側直流出力電圧Eoの安定化が図られる。
【0057】
上記のようにして形成される本実施の形態の電源回路の一次側において形成されるスイッチングコンバータ(Q1、Cr、N10、N1、C11)と、先に図10に示したE級コンバータとしての回路構成とを比較してみると、本実施の形態のスイッチングコンバータは、図10の回路から負荷となるインピーダンスZを省略し、チョークコイルL10として機能するチョークコイル巻線N10として絶縁コンバータトランスPITの構造内に巻装するとともに、チョークコイルL11の巻線を絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1(リーケージインダクタンスL1)と置き換えたものとしてみることができる。また、本実施の形態の一次側スイッチングコンバータでは、チョークコイル巻線N10のインダクタンスと一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスとによって一次側並列共振回路を形成し、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1と一次側直列共振コンデンサC11のキャパシタンスとにより一次側直列共振回路を形成する。
このことから、本実施の形態の一次側スイッチングコンバータは、E級共振形のスイッチング動作を行うE級スイッチングコンバータとして形成されている、ということがいえる。そして、この一次側スイッチングコンバータのスイッチング動作により得られるスイッチング出力(交番出力)を、絶縁コンバータトランスPITにおける磁気結合を介するようにして、チョークコイルL11に相当する一次巻線N1から二次巻線N2に伝達し、二次側にて整流を行って直流出力電圧Eoを得るようにされている。つまり、図1に示す実施の形態の電源回路は一次側にE級スイッチングコンバータを備えるDC-DCコンバータとして構成される。
また、本実施の形態のようにして形成される一次側のE級スイッチングコンバータは、チョークコイル巻線N10、及び一次側並列共振コンデンサCrとともに電圧共振形コンバータを形成するスイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)に対して、一次側直列共振回路を形成する一次巻線N1及び一次側直列共振コンデンサC11の直列接続回路を並列接続した複合共振形コンバータ、ソフトスイッチング電源の構成であるともみることができる。
【0058】
また、この図に示す電源回路の一次側には、アクティブクランプ回路10が備えられる。
アクティブクランプ回路10は、補助スイッチング素子Q2,クランプコンデンサCCL,クランプダイオードDD2を備えて形成される。この場合、補助スイッチング素子Q2についてはMOS−FETが選定される。クランプダイオードDD2は、補助スイッチング素子Q2が備えるボディダイオードとされ、アノードが補助スイッチング素子Q2のソースに対して接続され、カソードが補助スイッチング素子Q2のドレインに対して接続される。
また、補助スイッチング素子Q2を駆動するための駆動回路系として、駆動巻線Ng,コンデンサCg,ゲート抵抗Rg、及びゲート−ドレイン間抵抗R1を備えて成る。
なお、以降において、シングルエンド方式の電圧共振形コンバータを形成する側のスイッチング素子Q1については、上記補助スイッチング素子Q2と区別して、メインスイッチング素子Q1ともいうことにする。
【0059】
補助スイッチング素子Q2のドレインはクランプコンデンサCCLの一方の端子と接続されて、クランプコンデンサCCLの他方の端子は、整流平滑電圧Eiのライン(平滑コンデンサCiの正極端子)に対して接続される。また、補助スイッチング素子Q2のソースは、メインスイッチング素子Q1のドレイン、一次側並列共振コンデンサCrの一方の極端子、及び一次巻線N1の巻終わり端部との接続点に対して接続される。
つまり、本実施の形態のアクティブクランプ回路10としては、上記補助スイッチング素子Q2//クランプダイオードDD2の並列接続回路に対して、クランプコンデンサCCLを直列に接続して成るものとされる。そして、このようにして形成される回路を絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1に対して並列に接続して構成される。
【0060】
また、補助スイッチング素子Q2の駆動回路系としては、図示するように、補助スイッチング素子Q2のゲート−ドレイン間に対してゲート−ドレイン間抵抗R1を挿入する。また、補助スイッチング素子Q2のゲートに対して抵抗Rg−コンデンサCg−駆動巻線Ngの直列接続回路を接続する。これら直列接続回路及び抵抗R1により、補助スイッチング素子Q2のための自励発振駆動回路を形成する。
ここでの駆動巻線Ngは、絶縁コンバータトランスPITに巻装されるチョークコイル巻線N10の巻始め端部側に巻線を追加するようにして形成されており、この場合の巻数としては例えば1T(ターン)としている。これにより、駆動巻線Ngには、チョークコイル巻線N10に得られる交番電圧に応じた電圧が発生する。また、この場合には、一次巻線N1と駆動巻線Ngとについては逆極性の電圧が得られるようにされている。なお、実際としては駆動巻線Ngのターン数は1Tであればその動作は保証されるが、これに限定されるものではない。
【0061】
上記アクティブクランプ回路10は、後述するようにして、メインスイッチング素子Q1//一次側並列共振コンデンサCrの並列回路の両端に発生するスイッチング電圧(並列共振電圧)V1について、メインスイッチング素子Q1のオフ時に発生する電圧共振パルスのピークレベルを抑制するように動作する。
【0062】
ここで、図1の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスPITの構造例を、図2に示す。
先ず、図2に示される絶縁コンバータトランスPITは、例えばフェライト材によるE字形状コアCR1、CR2を互いの磁脚が対向するように組み合わせたEE字形コアを備える。
そして、一次側と二次側の巻装部について相互に独立するようにして分割した形状により、例えば樹脂などによって形成される、ボビンBb1が備えられる。このボビンBb1の一方の巻装部に対して一次巻線N1を巻装する。また、他方の巻装部に対して二次巻線N2を巻装する。
このようにして一次側巻線及び二次側巻線が巻装されたボビンBb1を、上記E字形状コアCR1,CR2から成るEE字形コアの中央磁脚が貫通するようにして取り付けることで、一次側巻線及び二次側巻線とがそれぞれ異なる巻装領域により、EE字形コア部分の中央磁脚に巻装される状態となる。
また、上記EE字形コア(CR1,CR2)に対しては、さらにE字形状コアCR3が図示するようにして組み合わされる。この場合には、EE字形コア(CR1,CR2)におけるE字形状コアCR1側の側面に対して、E字形状コアCR3の脚部端面が対向するようにして組み合わされる。
このE字形状コアCR3に対しては、1つの巻装領域を持つボビンBb2が取り付けられ、その巻装領域に対してチョークコイル巻線N10を巻装する。これにより、チョークコイル巻線N10は、E字形状コアCR3の中央磁脚に対して巻装される状態となる。
【0063】
そして、EE字形コア(CR1,CR2)の中央磁脚に対しては、図のようにして、所定長のギャップG1を形成する。これによって、絶縁コンバータトランスPIT自体における一次側と二次側との結合係数kとしては、例えばk≒0.75程度による疎結合の状態を得るようにしている。つまり、従来技術として図14に示した電源回路の絶縁コンバータトランスPITよりも、さらに疎結合の状態としている。なお、ギャップG1は、E字形状コアCR1,CR2の中央磁脚を、2本の外磁脚よりも短くすることで形成することができる。
また、例えばEE字形状コアCR3の中央磁脚を外磁脚よりも短く形成することで、EE字形状コアCR3の中央磁脚の端部と、EE字形状コアCR1との側面部との間にギャップG2を形成するようにされる。この場合のギャップG2のギャップ長は、上記ギャップG1のギャップ長に対して約1/2を設定することとしている。
【0064】
このようにして、図2に示す絶縁コンバータトランスPITは複合トランスとしての構造を採る。つまり、一次巻線N1と二次巻線N2が直流的に絶縁される状態で巻装される基本構成を採ったうえで、一次側に備えられるチョークコイル巻線N10も巻装される構造である。そして、このような図2に示す構造では、先ず、一次巻線N1及び二次巻線N2に電流が流れることによっては、E字形状コアCR1、CR2から成るEE字形コアにて主たる磁路(磁気回路)を形成するが、チョークコイル巻線N10に電流が流れることによっては、E字形状コアCR3側のみにて主たる磁路を形成する。このようにして磁路が形成されることで、一次巻線N1及び二次巻線N2が形成する磁路の磁束と、チョークコイル巻線N10が形成する磁路の磁束が鎖交する度合いは非常に小さくなる。この結果、チョークコイル巻線N10としては、例えば巻線数やギャップG2のギャップ長などに応じた所定のインダクタンスを有するとともに、一次巻線N1及び二次巻線N2に対する磁気結合の度合い(結合係数)は、0とみなしてよい程度の一定以下にまで小さいものとなる。つまり、チョークコイル巻線N10側と一次巻線N1及び二次巻線N2側とではトランス結合は存在しないものとしてみてよい状態を生じている。これにより、一次巻線N1と二次巻線N2とを結合するコンバータトランス機能と、チョークコイル巻線N10によるチョークコイルとしての機能は、それぞれ相互に影響されることなく独立しているものとされる状態で動作する。従って、一次巻線N1、二次巻線N2及びチョークコイル巻線N10が1つのトランス構造内に含まれているのに関わらず、一次側において適正なE級スイッチングコンバータの動作が得られることになる。
【0065】
例えば本願発明としては、絶縁コンバータトランスPITはEE字形コア(CR1,CR2)に対して一次巻線N1及び二次巻線N2を巻装した構造とし、チョークコイルL10は、絶縁コンバータトランスPITに対して独立した部品として構成してもよい。このような構成では、絶縁コンバータトランスPITとチョークコイルL10とで独立した2つの部品が存在する。これに対して、複合トランスとしての絶縁コンバータトランスPITの構造を採ることとすれば、上記部品は1つにまとめられることとなる。これにより、例えば回路基板における部品配置などがこれまでよりも効率的なものとなって、例えば回路基板サイズの小型化などが図られることになる。
【0066】
絶縁コンバータトランスPITの他の構造例について、図3、図4に示す。
図3に示される絶縁コンバータトランスPITは、例えばフェライト材によるE字形状コアCR11、CR12を互いの磁脚が対向するように組み合わせたEE字形コアを備える。なお、このEE字形コアにおける2本の外磁脚及び1本の中央磁脚の断面サイズは同じであるようにされている。
そのうえで、ボビンBb11において形成される2つに分割された巻装部に対して、それぞれ、一次巻線N1、二次巻線N2を巻装し、このボビンBb11をEE字形コアの一方の外磁脚に対して取り付けるようにする。これにより、一次巻線N1、二次巻線N2は、それぞれ異なる巻装領域により、同じ外磁脚に巻装される状態となる。このようにして一次巻線N1、二次巻線N2を巻装したうえで、EE字形コアの中央磁脚に対しては所定長のギャップG11を形成する。これにより、一次巻線N1と二次巻線N2については、所定の結合係数kによる疎結合とされる結合度が得られる。
また、ボビンBb12の巻装部に対してはチョークコイル巻線N10を巻装して、このボビンBb12をEE字形コアの一方の外磁脚に対して取り付ける。これにより、チョークコイル巻線N10は、一次巻線N1及び二次巻線N2が巻装される外磁脚に対して、中央磁脚を対称にして反対側となる外磁脚に巻装される状態となる。
このような構造では、一次巻線N1及び二次巻線N2による主たる磁路は、これら一次巻線N1及び二次巻線N2が巻回される外磁脚と中央磁脚とをつなぐようにして形成され、チョークコイル巻線N10による主たる磁路は、チョークコイル巻線N10が巻回される外磁脚と中央磁脚とをつなぐようにして形成されることから、この場合にも両磁路の磁束が鎖交する度合いは非常に小さくなる。これにより、チョークコイル巻線N10と、一次巻線N1及び二次巻線N2との磁気的結合度(結合係数)はほぼ0とみなしてよく、トランス結合は存在しないとする状態を、図2の場合と同様に得ることができる。
【0067】
また、図4に示される絶縁コンバータトランスPITは、例えば先ず、フェライト材によるU字形状コアCR21、CR22を互いの磁脚が対向するように組み合わせたUU字形コアを形成し、さらにこのUU字形コアに対して、U字形状コアCR23が組み合わされる。
UU字形コア側におけるU字形状コアCR21、CR22の各2本の磁脚が互いに対向する部位には、図示するようにして、所定ギャップ長のギャップG21、G22が形成される。また、UU字形コア(CR21、CR22)におけるU字形状コアCR22の側面部に対して、U字形状コアCR23の2本の磁脚端部が対向する各部位においては、所定のギャップ長のギャップG23,G24を形成するようにしている。
そのうえで、ボビンBb21において形成される2つに分割された巻装部に対して、一次巻線N1と二次巻線N2をそれぞれ巻装し、このボビンBb21をUU字形コア(CR21、CR22)の一方の磁脚に対して取り付ける。これにより、一次巻線N1及び二次巻線N2は、UU字形コア(CR21、CR22)の一方の磁脚において、それぞれ異なる巻装領域において巻装される状態となり、上記ギャップG21、G22のギャップ長の設定により、一次巻線N1と二次巻線N2については、所定の結合係数kによる疎結合とされる結合度が得られる。
また、ボビンBb22に対してチョークコイル巻線N10を巻装し、U字形状コアCR23の一方の磁脚に対して取り付けることで、チョークコイル巻線N10がU字形状コアCR23の一方の磁脚に巻装される状態とする。このとき、一次巻線N1及び二次巻線N2による主たる磁路はUU字形コア(CR21、CR22)にて形成され、チョークコイル巻線N10による主たる磁路はU字形状コアCR23側にて形成され、両磁路の磁束の鎖交はほとんど無いとされる状態が得られる。これにより、図2、図3と同様に、チョークコイル巻線N10と、一次巻線N1及び二次巻線N2との磁気的結合度(結合係数)はほぼ0とみなされ、トランス結合も存在しないとみなしてよい状態を得ることができる。
【0068】
そして、図1に示した回路形態の電源回路について、後述する図5に示される実験結果を得るのにあたり、要部については、下記のように選定した。
先ず、絶縁コンバータトランスPITについては、図2に示した構造を採用することとして、EE字形コア(CR1,CR2)についてEER-35を選定して、ギャップG1については2.2mmのギャップ長を設定した。一次巻線N1及び二次巻線N2の各巻数(ターン数)Tについては、N1=55T、N2=36Tを選定した。これにより、絶縁コンバータトランスPIT自体における一次側と二次側との結合係数kについてはk=0.71が設定される。
また、EE字形状コアCR3についてはER−35を選定して、ギャップG2については、1.1mmとして、インダクタンスL10=1mHとなるようにしてチョークコイル巻線N10を巻装した。
なお、上記EERのコアは、よく知られているように、製品としてのコアの型式、規格の1つであり、この型式には、EEのあることも知られている。本願においてEE字形という場合には、断面がEE字形状であることに応じて、EER、EEの何れのタイプについてもEE字形のコアであるとして扱うものとする。
また、一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスについてはCr=1500pFを選定した。また、一次側直列共振コンデンサC11のキャパシタンスは、C11=0.027μFを選定した。クランプコンデンサCCLのキャパシタンスについては、CCL=0.068μFを選定した。
対応負荷電力は、最大負荷電力Pomax=200W、最小負荷電力Pomin=0W(無負荷)とし、二次側直流出力電圧Eoの定格レベルは175Vとしている。
【0069】
ここで、図1に示す電源回路における絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1とチョークコイルL10とについてスイッチング周期でみた場合には、並列接続の関係にあることと等価であるとみることができる。チョークコイル巻線N10から発生する磁束は、この場合には、絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2とは結合することがない。このことから、絶縁コンバータトランスPITの一次側におけるリーケージインダクタンスの成分は増加するものとしてみることができる。
このために、絶縁コンバータトランスPITそのものとしての結合係数kとしては、前述したように、例えばk=0.71程度が設定されるのであるが、上記のようにして、絶縁コンバータトランスPITの一次側のリーケージインダクタンスが増加することで、電源回路内における絶縁コンバータトランスPITの総合的な結合係数としては、0.71よりも低い値が得られることになる。つまり、電源回路としてみた、絶縁コンバータトランスPITの一次側と二次側の間の総合的な結合度としては、絶縁コンバータトランスPITの構造自体による結合係数kに対して、より低く設定されることになる。この結合度についての数値を、ここでは、総合結合係数ktとして扱う。
本実施の形態としては、例えば、チョークコイル巻線N10について、先に説明した所定のインダクタンス値を設定することで、総合結合係数ktについて、0.7より小さいとされる疎結合とみなされる所定値を設定することとしている。この場合の総合結合係数ktの設定要素としては、絶縁コンバータトランスPITの構造自体による結合係数kと、チョークコイル巻線N10のインダクタンスであることになる。
【0070】
また、本実施の形態において、図1に示す電源回路の一次側並列共振回路の共振周波数fo1(p)については、次のようにして扱うものとする。
次に説明する図5の波形図に示されるように、図1に示す電源回路における一次側のスイッチングコンバータの動作としては、E級スイッチングコンバータ(メインスイッチング素子Q1)とアクティブクランプ回路10のスイッチング動作が複合的に行われているものとしてみることができる。また、このことは、一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスと、一次側のチョークコイル巻線N10のインダクタンスL10とにより形成されるものとする一次側並列共振回路(ここでは一次側並列共振回路aという)と、クランプコンデンサCCLとチョークコイル巻線N10のインダクタンスL10とにより形成されるものとする並列共振回路(ここでは一次側並列共振回路bという)とが、一次側において複合的に動作しているものとして考えることができる。そのうえで、本実施の形態の回路形態では、チョークコイル巻線N10と一次巻線N1とは、スイッチング周期程度の高周波とされる交流としては並列接続の関係にあるものとして等価的にみることができる。従って、実際において、一次側並列共振回路a及び一次側並列共振回路bを形成するインダクタンスは、チョークコイル巻線N10と一次巻線N1との並列接続により得られる合成インダクタンスであるとして考えるべきことになる。ちなみに、チョークコイル巻線N10のインダクタンスL10は、前述のように1mH程度が設定され、一次巻線N1自体のインダクタンス(リーケージインダクタンス)については、350μH程度が設定される。このことによると、一次側並列共振回路bの共振周波数fo1bは約38kHzとなる。これに対して、一次側並列共振回路aの共振周波数fo1aは約255kHzとなる。
ただし、一次側並列共振コンデンサCrとクランプコンデンサCCLのキャパシタンスを比較すると、例えばCCL=0.068μFであり、Cr=1500pFであることから、クランプコンデンサCCLは、一次側並列共振コンデンサCrに対して非常に大きい値を有していることになる。このことは、一次側スイッチングコンバータの動作において、一次側並列共振回路aと一次側並列共振回路bとでは、クランプコンデンサCCLのキャパシタンスを有する一次側並列共振回路bのほうが支配的になることを意味している。このことから、一次側並列共振回路全体としての並列共振周波数fo1(p)としては、上記38kHz程度若しくは、これより若干高い40kHz前後としてみるべきことになる。
【0071】
また、一次巻線N1と一次側直列共振コンデンサC11とを直列接続することで形成される一次側直列共振回路の共振周波数fo1(s)については、総合結合係数ktに応じた一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1と、一次側直列共振コンデンサC11のキャパシタンス(0.015μF)とにより設定されるものとなり、約69.5kHzとなる。このことから、一次側並列共振回路の共振周波数fo1(p)と、一次側直列共振回路の共振周波数fo1(s)の大小関係は、fo1(p)<fo1(s)で表されることになる。
【0072】
図5の波形図は、上記構成による図1の電源回路における要部の動作を、スイッチング素子Q1のスイッチング周期により示しており、図5(a)には、最大負荷電力Pomax=200W/交流入力電圧VAC=100V時における、スイッチング電圧V1、入力電流I1、クランプ電流IQ2、電流Icr、スイッチング電流IQ1、一次巻線電流I2、一次側直列共振電圧V2、二次側交番電圧V3が示される。図5(b)には、最大負荷電力Pomax=200W/交流入力電圧VAC=230V時における、上記各波形が示されている。
【0073】
入力電流I1は、平滑コンデンサCiから一次側スイッチングコンバータに流入しようとする電流である。入力電流I1がスイッチング素子Q1側に流入する経路である、平滑コンデンサCoの正極端子とスイッチング素子Q1のドレイン側との間のラインには、一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1よりも大きなインダクタンスが設定されたチョークコイル巻線N10が挿入されていることで、入力電流I1は、チョークコイル巻線N10を介するようにして流れることになる。このために、入力電流I1は平均値I0の脈流となる。このような波形の入力電流I1は、直流としてみることができる。つまり、本実施の形態では、平滑コンデンサCiからスイッチングコンバータに流入する電流は直流となる。チョークコイル巻線N10を介して流れた入力電流I1は、一次巻線N1−一次側直列共振コンデンサC11の直列回路と、スイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)、一次側並列共振コンデンサCrに対して分流するようにして流れる。
【0074】
スイッチング電圧V1は、スイッチング素子Q1のドレイン−ソース間の電圧であり、スイッチング電流IQ1は、スイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)に流れる電流となる。スイッチング電圧V1及びスイッチング電流IQ1によっては、スイッチング素子Q1のオン/オフタイミングが示される。1スイッチング周期は、スイッチング素子Q1がオンとなるべき期間TONと、オフとなるべき期間TOFFとに分けられ、スイッチング電圧V1は、期間TONにおいては0レベルで、期間TOFFにおいて電圧共振パルスが得られる波形となる。このスイッチング電圧V1としての電圧共振パルスは、本来は、一次側スイッチングコンバータの動作が電圧共振形であることにより、正弦波状の共振波形として得られる。しかし、本実施の形態では、アクティブクランプ回路10が後述するようにして動作することで、電圧共振パルスのピークが抑制される波形形状となる。
【0075】
スイッチング電流IQ1は、期間TOFFにおいては0レベルであり、この期間TOFFが終了して期間TONが開始されてターンオンタイミングに至ると、先ず、ボディダイオードDDを流れることで負極性の波形となり、続いてドレインからソースに流れることで正極性に反転する波形となる。このようなスイッチング電流IQ1の波形は、適正にZVS(Zero Volt Switching)、ZCS(Zero Current Switching)が行われていることを示している。また、このスイッチング電流IQ1は、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1に得られるリーケージインダクタンスL1を介してメインスイッチング素子Q1に流れるものとしてみることができる。
【0076】
一次巻線電流I2は、スイッチング素子Q1のスイッチング動作に応じて一次巻線N1に流れる電流であり、この場合には一次巻線電流I2は、一次側直列共振回路の出力電流としてみることができる。つまり、スイッチング素子Q1がオン/オフ動作を行うことにより、期間TOFFのスイッチング電圧V1である電圧共振パルスが一次側直列共振回路を形成する一次巻線N1、一次側直列共振コンデンサC11の直列接続回路に印加される。これにより一次側直列共振回路が共振動作を行い、一次巻線電流I2は、スイッチング周期に応じた正弦波状の交番波形となる。また、ここでの一次側直列共振電圧V2は、一次巻線N1の両端電圧として示している。この一次側直列共振電圧V2は、本来は、スイッチング周期に応じた正弦波状の交番波形となるものであるが、アクティブクランプ回路10が動作することによって、期間TOFFにおいては、スイッチング電圧V1とほぼ同等のレベルにてクランプされる波形となる。
【0077】
また、二次側交番電圧V3は、二次側における整流ダイオードDo2の両端電圧、若しくは二次巻線N2の巻き終わり端部と二次側アース間の電位となるもので、二次側整流回路の動作タイミングを示している。二次巻線N2の誘起電圧の正/負で反転するのに応じて、整流ダイオードDo1,Do4の組と整流ダイオードDo2、Do3の組に対して交互に順方向電圧が印加され、これに応じて整流ダイオードDo1,Do4の組と、整流ダイオードDo2、Do3の組が交互に導通する。このようなタイミングの整流動作に応じて、二次側交番電圧V3は、整流ダイオードDo1,Do4の導通期間に応じて二次側直流出力電圧Eoに応じた絶対値レベルによりクランプされた交番波形となる。
【0078】
また、この図5(a)(b)の波形図において、アクティブクランプ回路10の動作は、1スイッチング周期内において遷移する、mode1〜5までの5段階の動作モードとして示される。
先ず、メインスイッチング素子Q1がオンとなる期間TONにおいてはmode1としての動作が得られる。このとき、補助スイッチング素子Q2は、この期間TONにおいてはオフ状態にある。つまり、mode1は、補助スイッチング素子Q2がオフ状態となるように制御されるモードである。
【0079】
このmode1(期間TON)において、スイッチング電流IQ1は、上記もしたように、ターンオン直後において負極性によりクランプダイオードDD2に流れた後に反転して正極性によりメインスイッチング素子Q1のソースからドレインの方向に流れる。
ここで、スイッチング電流IQ1が負極性により流れる期間は、直前の期間td2の終了を以て、一次側並列共振コンデンサCrにおける放電が終了することで、クランプダイオードDDが導通し、クランプダイオードDD→チョークコイル巻線N10を介してスイッチング出力電流IQ1を流すことで、電源側に電力を回生するモードとなる。この電力回生の動作を終了して、スイッチング電流IQ1は、平滑コンデンサCiからの入力電流I1が供給されるようにして、メインスイッチング素子Q1のソース−ドレインを流れるようにされる。
【0080】
上記mode1に対応する期間TONが終了して、期間TOFFに至ったとされると、先ず、mode2に対応する期間td1が開始される。
この期間td1では、メインスイッチング素子Q1がターンオフすることで、一次巻線N1に流れていた電流は、図5に示す電流Icrとして、一次側並列共振コンデンサCrを充電するようにして流れることになる。このときに、一次側並列共振コンデンサCrに流れる充電電流は、この図では負極性によりパルス的に現れる波形となるが、これは部分共振モードとしての動作とされる。また、このときには、メインスイッチング素子Q1に対して並列に一次側並列共振コンデンサCrが接続されていることで、メインスイッチング素子Q1はZVSによりターンオフされる。
【0081】
続いては、補助スイッチング素子Q2がオン状態となるように制御されると共に、メインスイッチング素子Q1がオフ状態にあるように制御される期間となり、これは、図5に示す期間TON2に相当する。
この期間TON2は、アクティブクランプ回路10の動作期間であり、先ずmode3としての動作を行った後にmode4としての動作を行うようにされる。
【0082】
先のmode2の動作では、一次巻線N1とチョークコイル巻線N10の接続点側から一次側並列共振コンデンサCrに流れる電流Icrによって、一次側並列共振コンデンサCrに対する充電が行われるが、これによりmode2に続くmode3の動作としては、一次巻線N1に得られている電圧レベル(V2)が、初期時(期間TON2開始時)におけるクランプコンデンサCCLの両端電圧レベルに対して同電位もしくはそれ以上となる。これにより、補助スイッチング素子Q2に並列接続されるクランプダイオードDD2の導通条件が満たされて導通することで、クランプダイオードDD2→クランプコンデンサCCLの経路で電流が流れるようにされ、クランプ電流IQ2としては、図5に示す期間TON2開始時以降において、負方向から時間経過に従って0レベルに近づく鋸歯状波形が得られることになる。
先に記載したように、例えばクランプコンデンサCCLのキャパシタンスはCCL=0.068μFであるのに対して、一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスはCr=1500pFであり、一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスのほうが、クランプコンデンサCCLのキャパシタンスと比較して相当に小さい。このようなクランプコンデンサCCLと一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスの選定とすれば、mode3としての動作によっては、大部分の電流がクランプ電流IQ2としてクランプコンデンサCCLに対して流れるようにされ、一次側並列共振コンデンサCrに対してはほとんど流れない。この結果、この期間TON2時における一次側並列共振コンデンサCrに対する充電電流量が低減されることとなって、スイッチング電圧V1における電圧共振パルスの傾きは緩やかとなるようにされ、そのピークレベルが抑制されることになる。即ち、電圧共振パルスに対するクランプ動作が得られる。
【0083】
なお、図1に示す構成の下で、アクティブクランプ回路10を備えない場合には、期間TOFFの全期間において充放電電流が流れることで、例えば、図5(a)のスイッチング電圧V1の波形において破線により示すように、電圧共振パルスは正弦波状の急峻な波形となり、このピークレベルは、アクティブクランプ回路10を備える場合より上昇する。
【0084】
そして、期間TON2において上記mode3が終了すると引き続いてmode4としての動作に移行する。
このmode4開始時は、図5に示すクランプ電流IQ2が負の方向から正方向に反転するタイミングとされる。このタイミングでは、補助スイッチング素子Q2は、このクランプ電流IQ2が負極性から正極性に反転するタイミングで、ZVS及びZCSによりターンオンする。
このようにして補助スイッチング素子Q2がオンとなる状態では、このときに得られる一次側並列共振回路の共振作用によって、一次巻線N1→クランプコンデンサCCLを介して、補助スイッチング素子Q2のドレイン→ソースにクランプ電流IQ2が流れ、図5に示すように、正極性により増加していく波形が得られる。
【0085】
ここで、図示していないが、補助スイッチング素子Q2のゲートに印加される電圧は、駆動巻線Ngに誘起された電圧とされ、これは矩形波状のパルス電圧となる。
そして、期間td1及び期間td2は、メインスイッチング素子Q1及び補助スイッチング素子Q2が共にオフとなるスレッシュホールド期間とされ、上記ゲート流入電流が流れることによってこのスレッシュホールド期間が保持されるものである。
【0086】
上記mode4の動作は、補助スイッチング素子Q2がターンオンしていることで、これまで期間TOFFにおいて0レベルとされていた、補助スイッチング素子Q2の両端電圧V2が立ち上がりを開始するタイミングを以て終了するようにされ、続いては、期間td2におけるmode5としての動作に移行する。
mode5では、一次側並列共振コンデンサCrからチョークコイル巻線N10を介して平滑コンデンサCiの側に放電電流を流す動作が得られる。つまり部分共振動作が得られる。この部分共振動作としての放電は、図5では、一次側並列共振コンデンサCrに流れる電流Icrとして、期間td2のみにおいて正極性の方向で流れるパルス状の波形として示されている。
このときにメインスイッチング素子Q1にかかるスイッチング電圧V1の電圧共振パルスは、上述もしたように一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスが、クランプコンデンサCCLのキャパシタンスより小さいことによって、その傾きが大きいものとなり、図示するようにして、急速に0レベルに向かって下降するようにして立ち下がっていく。
そして、補助スイッチング素子Q2は、上記mode4が終了してmode5が開始されるタイミングでターンオフを開始するが、このときには、上記したようにして電圧共振パルス(スイッチング電圧V1)が或る傾きを有して立ち下がることで、ZVSによるターンオフ動作となる。
アクティブクランプ回路10は、このようなmode1〜5の動作を1スイッチング周期ごとに繰り返す。
【0087】
図1に示す電源回路の定電圧制御動作は、前述もしたように、メインスイッチング素子Q1がオフとなる期間TOFF(補助スイッチング素子Q2のオン期間)は一定で、オンとなる期間TONの可変によりスイッチング周波数fsを可変変制御するスイッチング周波数制御となる。スイッチング周波数fsは、負荷変動に対しては軽負荷の傾向となるのに応じて高くなっていく傾向で変化し、交流入力電圧変動に対しては交流入力電圧VACが上昇するのに応じて高くなっていく傾向で変化する。このことは、定電圧制御動作が、軽負荷傾向及び交流入力電圧の上昇傾向に応じて二次側直流出力電圧Eoが上昇するのに応じては、スイッチング周波数fsを高く制御する動作であることを示している。
【0088】
上記スイッチング周波数fsが定電圧制御のために必要とする制御範囲(必要制御範囲)については、交流入力電圧VAC=100V時では、最大負荷電力Pomax=200W〜最小負荷電力Pomin=0Wの範囲に対してΔfs=16.4kHzとなる。また、交流入力電圧VAC=230V時では、最大負荷電力Pomax=200W〜最小負荷電力Pomin=0Wの範囲に対してΔfs=10.9kHzとなる。
【0089】
AC→DC電力変換効率(ηAC→DC)は、重負荷の傾向となるのに従って増加し、また、交流入力電圧VACが高くなるのに応じて増加する傾向であった。
最大負荷電力Pomax=200W時のAC→DC電力変換効率(ηAC→DC)として、交流入力電圧VAC=100V時ではηAC→DC=92.0%、交流入力電圧VAC=230V時ではηAC→DC=91.0%との測定結果が得られた。
【0090】
また、電圧共振パルス(V1)のピークレベル(V1p)は、重負荷の傾向となってスイッチングコンバータに流れる電流の増加に伴い、一次側並列共振コンデンサCrに充電される電流量が増加するのに応じて上昇する特性になる。電圧共振パルス(V1)のピークレベル(V1p)が最大値となる最大負荷電力Pomax=200W時の特性は、図5にも示したように、交流入力電圧VAC=100V時ではV1p≒300V、交流入力電圧VAC=230V時ではV1p≒700Vとなる測定結果が得られている。このピークレベル(V1p)の特性は、アクティブクランプ回路10を備えない場合と比較して、約1/2にまで低減されたものとなっている。
このような電圧共振パルス(V1)のピークレベルV1pの特性とされることで、メインスイッチング素子Q1については、900Vの耐圧品を選定することができる。また、補助スイッチング素子Q2についても同様に900Vの耐圧品を選定することができる。例えば、図1の電源回路からアクティブクランプ回路10を省略した場合には、スイッチング素子Q1には1800V程度の耐圧品を選定する必要がある。つまり、本実施の形態では、メインスイッチング素子Q1(及び補助スイッチング素子Q2)、さらに、メインスイッチング素子Q1に並列接続される一次側並列共振コンデンサCrなどついて、より低耐圧の部品を選定できる。
このようにして、各部品について低圧品を選定できることで、これら部品素子の特性が向上する。例えばメインスイッチング素子Q1について、スイッチング特性がより良好なものとなるため、電力損失の低減や回路としての信頼性の向上が図られる。また、低耐圧品とされることで、部品サイズも小型となるので、回路基板の小型軽量化の促進を図ることも可能になる。また、部品にかかるコストも削減される。
また、本実施の形態のアクティブクランプ回路10による電圧クランプの動作では、例えば、先に図12及び図13により説明した電圧クランプ法のようにして、リンギングの発生や、インピーダンス整合などの問題は生じることが無く、実用的かつ有効に、スイッチング電圧(電圧共振パルス)の抑制効果を得ている、といことがいえる。
【0091】
ところで、本実施の形態の電源回路との比較として、例えば、図14に示したような従来例としての回路構成の電源回路に、本実施の形態と同様のアクティブクランプ回路10の構成を付加した場合には、軽負荷傾向に応じてスイッチング周波数fsが高くなるように制御されると共に、1スイッチング周期内における期間TOFF,TONのデューティ比については、軽負荷の傾向となるのに従って、期間TOFFのほうが期間TONに対して大きくなるようにして変化することが実験により確認されている。これは、アクティブクランプ回路10により電圧共振パルス(V1)のピークレベルが抑制される分、その導通角が拡大するようにして変化する動作を生じることに依る。
一次側並列共振コンデンサCrとクランプコンデンサCCLとのキャパシタンスについては、一次側並列共振コンデンサCrに対してクランプコンデンサCCLのほうを相当に大きく選定するが、電圧共振パルスの抑制の度合いは、この一次側並列共振コンデンサCrとクランプコンデンサCCLのキャパシタンスの差を広げるほど大きくなる。しかし従来の場合には、これに伴って、電圧共振パルス(V1)の導通角が拡大する度合いも大きくなる。1スイッチング周期内における電圧共振パルス(V1)の導通角、つまりメインスイッチング素子Q1がオフとなる期間(TOFF)が拡大することによっては、その分メインスイッチング素子Q1のオン期間(TON)が短縮されることになる。一定以上にオン期間(TON)が短縮されると、メインスイッチング素子Q1におけるスイッチング損失が増加する。
これに対して、本実施の形態では、E級スイッチング動作のスイッチングコンバータに対してアクティブクランプ回路10を組み合わせた構成としたことで、前述もしたように、スイッチング周波数fsの可変制御は、スイッチング素子Q1の期間TOFFを一定としたうえで期間TONを可変するものとなる。つまり、期間TOFFの拡大に伴う期間TONの縮小は生じない。このことから、本実施の形態としては、スイッチング損失の低減が図られることになるものであり、この結果として、先に記載したような良好なAC→DC電力変換効率(ηAC→DC)の特性が得られているものである。
また、上記のようにしてスイッチング素子Q1の期間TOFFが一定となるスイッチング周波数制御の動作となることで、発振・ドライブ回路2を構成するスイッチング駆動用ICについて、安価な汎用のものを選定することが可能となり、例えばコストダウンが図られる。あるいはスイッチング駆動用ICの選択範囲もひろがる。例えば従来の図15の電源回路のようにして、1スイッチング周期内の期間TONと期間TOFFの時比率を可変するPWM制御となる場合には、上記した汎用のICでは対応しきれずに、異常発振に近い動作となる。このために、図15の回路の実際においては、PWM制御に対応可能なスイッチング駆動用ICを採用している。
【0092】
さらに、図1に示される本実施の形態の電源回路と、従来例として図14に示した電源回路とを比較してみると次のことがいえる。
一般的に、一次側に電圧共振形コンバータを備える電源回路は、負荷電力の制御範囲が狭く、また、軽負荷時におけるZVSが維持できないために、そのままでは実用化は不可能であると考えられている。そこで、図14に示したように、一次側電圧共振形コンバータに対して二次側直列共振回路を設け、二次側整流回路として倍電圧半波整流回路を形成した電源回路を構成して本願発明者が実験を行ったところ、それまでの電圧共振形コンバータを備える電源回路よりも、実現化に近づく特性が得られることが確認された。
しかしながら、図14の電源回路では、図15により説明したように、中間負荷時において、スイッチング素子Q1のオフ期間(TOFF)が終了しないうちにスイッチング素子Q1に正極方向(この場合はドレイン→ソース方向)に電流が流れてZVSの動作が得られないという異常動作を生じる。このために、図14の電源回路の構成であっても、依然として実用化は困難な状況であった。
【0093】
これに対して、図1に示した実施の形態の電源回路では、対応負荷電力の全領域にわたってZVS動作が得られることとなった。つまり、中間負荷時における異常動作は解消され、対応負荷電力(Pomax=200W〜Pomin=0W)の全範囲にて適正なスイッチング動作を得ている。E級スイッチングコンバータの基本構成は、1石のスイッチング素子と並列共振回路とを含んでいるので、本実施の形態の電源回路は、シングルエンド方式の電圧共振形コンバータの回路構成を一部に備えるスイッチングコンバータとして、実用化が容易に実現可能となっている、ということがいえる。
【0094】
図14に示される電源回路の中間負荷時の異常動作は、電圧共振形コンバータに二次側直列共振回路を備えた形式の複合共振形コンバータを構成した場合に生じやすいことが確認されている。これは、電圧共振形コンバータを形成する一次側並列共振回路と、二次側直列共振回路(整流回路)とが同時に動作することによる相互作用が主たる原因となっている。
そこで、本実施の形態の場合には、上記した中間負荷時の異常動作は、一次側電圧共振形コンバータと二次側直列共振回路とを組み合わせた回路構成であることがそもそもの要因であると捉えることとした。
そこで先ず、本実施の形態としては、一次側スイッチングコンバータとして、電圧共振形コンバータに代えて、E級スイッチングコンバータを適用した構成のものを備えることとした。
また、総合結合係数kt=0.65程度を設定して、絶縁コンバータトランスPITの一次側と二次側の結合度を従来よりも低下させた。これにより、一次側のスイッチングコンバータの動作と、二次側整流回路の整流動作(スイッチング動作)との相互作用を希薄化した。
このような構成の電源回路とした結果、中間負荷時においてZVSが得られなくなる異常動作が解消されるという実験結果が得られた。具体的には、例えば図15(b)に示した、期間TOFFの終了タイミングの前後で正極性のスイッチング電流IQ1が流れる現象が観察されなくなり、通常のZVSに対応するスイッチング電流IQ1の波形が得られることになる。
そして、図1に示した実施の形態の電源回路の中間負荷時における異常動作の解消は、AC100V系の商用交流電源に対応する交流入力電圧VACの範囲だけではなく、AC200V系の商用交流電源に対応する交流入力電圧VACの範囲の条件でも得られている。
【0095】
また、図14に示す電源回路では、平滑コンデンサCiからスイッチングコンバータに流入する電流は、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1を経由してスイッチング素子Q1、一次側並列共振コンデンサCrに流入する。この場合、平滑コンデンサCiからスイッチングコンバータに流入する電流は一次巻線電流I1となるものであり、スイッチング周期による比較的高い周波数となる。つまり、平滑コンデンサCiに対しては商用交流電源周期に対して高周波で充放電電流が流れる。
平滑コンデンサCiとしての部品素子には高耐圧が要求されることなどに応じてアルミ電解コンデンサがしばしば採用される。アルミ電解コンデンサは、他の種類のコンデンサなどと比較して、高周波で動作させると静電容量が低下すると共に損失角の正接が増加しやすい性質を有している。このために、平滑コンデンサCiに使用するアルミ電解コンデンサには、ESR(等価直列抵抗)が低く、また、許容リップル電流が多い特殊品を選定する必要がある。また、平滑コンデンサCiとしての素子のキャパシタンスについても相応に大きな値を選定する必要が出てくる。例えば図14の電源回路の構成で、本実施の形態と同等の最大負荷電力Pomax=200Wに対応させる場合には、1000μF程度若しくはこれより若干小さいキャパシタンスを選定することになる。このようなアルミ電解コンデンサは、汎用のアルミ電解コンデンサよりも高価であり、また、キャパシタンスの増加に応じた部品価格の上昇も含めてコスト的に不利となる。
【0096】
これに対して図1に示した本実施の形態の電源回路は、平滑コンデンサCiからスイッチングコンバータに流入する電流は、チョークコイル巻線N10を介してスイッチング素子Q1、一次側並列共振コンデンサCr、一次側直列共振回路(N1−C11)に流れるようになっている。このために、平滑コンデンサCoからスイッチングコンバータに流入する電流は、図5の入力電流I1としても示されるように直流となる。このようにして、平滑コンデンサCiからスイッチングコンバータに流入する電流が直流となることで、本実施の形態では、上記した静電容量の低下や損失角の正接の増加の問題は生じることが無く、従って、平滑コンデンサCiとして汎用のアルミ電解コンデンサを選定することができる。また、平滑コンデンサCiとしての素子のキャパシタンスについても、図14の回路の場合よりも低い値を選定できる。図1の回路の実際としては、680μF、若しくはこれより小さい値のキャパシタンスを選定できる。このようにして、本実施の形態では、平滑コンデンサCiについてのコストダウンを図ることが可能になる。
【0097】
また、本実施の形態の電源回路では、絶縁コンバータトランスPITの一次側と二次側との総合結合係数ktとして0.65程度を設定している。この総合結合係数ktは、絶縁コンバータトランスPIT自体の結合係数kと、一次巻線N1とチョークコイルL10とが等価的に並列接続されることによる一次巻線N1のリーケージインダクタンスの見かけ上の増加分とにより得られるものである。
例えば、図14に示した電源回路の構成のもとで、0.65程度の総合結合係数kを得ようとすれば、絶縁コンバータトランスPIT自体の結合係数ktについて0.65程度が設定されるようにすることになる。このためには、例えば、絶縁コンバータトランスPITが図2などに示した構造を採る場合には、ギャップGについて本実施の形態の場合よりも拡大してコアを形成すればよい。しかし、ギャップ長の拡大は渦電流による損失(渦電流損)を増加させる要因となるので、いたずらにギャップ長を拡大していくことは好ましいことではなく、条件などによっては、渦電流損による電力損失が無視できなくなる場合も出てくる可能性がある。
本実施の形態の場合には、上記のようにして一次巻線N1のリーケージインダクタンスの増加分により、0.65程度の総合結合係数ktの値を得ていることで、絶縁コンバータトランスPIT自体の結合係数kについては0.75程度までの低下で抑えることができている。そして、これに伴って、絶縁コンバータトランスPITのコアに形成するギャップGの長さについては、渦電流損について特に考慮する必要はない程度の拡大に抑えることができる。
【0098】
上記のようにして、本実施の形態の電源回路では、絶縁コンバータトランスPITにおける渦電流損失の増加を抑えるように考慮して、絶縁コンバータトランスPIT自体の結合係数kについては、総合結合係数よりも高い値を設定しているが、例えば従来としての図14の電源回路が結合係数k=0.80〜0.85程度であることと比較すれば、相当に低い値を設定している。
このように、本実施の形態の絶縁コンバータトランスPIT自体が有する結合係数kにまで疎結合の状態とすることは、従来の電圧共振形コンバータでは、一次側から二次側への電力伝送ロスの増加による電力変換効率の低下を招くということを理由に、これまで行われてこなかったという背景がある。
また、直流入力電圧がスイッチングコンバータに流入するラインに対して、比較的大きいインダクタンスのチョークコイルL10を挿入することによる電力損失も相応に生じる。
しかしながら、本実施の形態では、先にも説明したように、対応負荷電力のほぼ全領域にわたって、良好とみてよい電力変換効率特性を得ている。
【0099】
本実施の形態において高電力変換効率が得られているのは、下記のような理由によるものとされる。
先ず、電圧共振形コンバータを備える電源回路の構成は、本来、電力変換効率に関しては有利であることが知られている。特に、電圧共振形コンバータとしてシングルエンド方式を採用してスイッチング素子を必要最小限の1石とすることで、例えばハーフブリッジ結合方式、フルブリッジ結合方式、プッシュプル方式などの複数のスイッチング素子を備える構成と比較してスイッチング損失は減少し、このことが電力変換効率の向上要因となる。
本実施の形態のE級スイッチングコンバータも、一次側並列共振回路と1石のスイッチング素子が組み合わされた構成を含むことで、シングルエンド方式の電圧共振形コンバータの構成を含んでいるということがいえ、上記したような電圧共振形コンバータとしての良好な電力変換効率特性を引き継いでいる。
【0100】
そのうえで、本実施の形態としては、上記もしているように中間負荷時における異常動作を解消して、適正なZVS動作が得られるようにしている。この異常動作の現象としては、図15(b)に示したように、ターンオン(期間TON開始)より以前のタイミングでスイッチング素子Q1がオンとなって、正極性のスイッチング電流IQ1がソース−ドレイン間を流れる動作となるのであるが、このようなスイッチング電流IQ1の動作によっては、スイッチング損失を増加させる。本実施の形態では、異常動作に対応するスイッチング電流IQ1の動作が生じないことで、これによるスイッチング損失の増加も無くなり、このことが、電力変換効率の向上要因の1つとなっているものである。
【0101】
また、図5に示されるスイッチング電流IQ1の波形は、ターンオフ時におけるスイッチング電流IQ1のレベルが抑制されているということを意味する。ターンオフ時のスイッチング電流IQ1のレベルが抑制されれば、その分、ターンオフ時のスイッチング損失は低減され、電力変換効率が向上することになる。
このようなスイッチング電流IQ1の波形は、一次側スイッチングコンバータについてE級スイッチング動作としたことで得られるものである。
【0102】
また、前述したように、本実施の形態の電源回路の定電圧制御動作が、スイッチング素子Q1のオフ期間(TOFF)を固定としたスイッチング周波数制御であることも、この場合には、電力変換効率向上の大きな要因となっている。
【0103】
また、これまでの説明から、本実施の形態の電源回路としては、AC100V系とAC200V系との何れの商用交流電源入力(例えばVAC=85V〜264V)にも対応して動作する、いわゆるワイドレンジ対応化も図られていることになる。
つまり、前述したように、本実施の形態の電源回路における定電圧制御のために必要なスイッチング周波数fsの制御範囲(Δfs)は、AC100V系に対応する交流入力電圧VAC=100V時ではΔfs=16.4kHz、AC200V系に対応する交流入力電圧VAC=230V時ではΔfs=10.9kHzであり、非常に狭いものとなっている。また、これらの制御範囲(Δfs)としての実際の周波数値は、現状におけるスイッチング駆動用IC(発振・ドライブ回路2)が対応するスイッチング周波数の可変範囲内に充分に収まるものとなっている。つまり、本実施の形態の電源回路は、AC100V系とAC200V系のいずれの商用交流電源入力の条件であっても、スイッチング周波数制御による定電圧化が可能となっている。
さらに、本実施の形態の電源回路では、AC100V系とAC200V系の何れの商用交流電源入力の条件においても、最大負荷電力時において、91%以上の高い電力変換効率特性が得られている。
【0104】
そして、上記した特性を有したうえで、本実施の形態としては、AC100V系とAC200V系の両者の商用交流電源入力の条件において、中間負荷時における異常動作が解消されている。
また、アクティブクランプ回路10を備えてスイッチング電圧V1のピークレベルの抑制を図ることで、AC200V系の商用交流電源が入力される条件に対しても、要部の部品については、例えば900V程度の実用範囲内の耐圧品を選定できる。
このようにして、本実施の形態の電源回路はワイドレンジ対応としての実用が可能となる。
【0105】
本実施の形態の他に、共振形コンバータを備えたスイッチング電源回路として、ワイドレンジ対応を実現する構成としては、例えばAC100V系/200V系の商用交流電源入力に応じて、一次側スイッチングコンバータの構成をハーフブリッジ/フルブリッジで切り換える構成を採ることが知られている。あるいは、商用交流電源ACについての整流動作を行う整流回路の動作を、AC100V系/200V系の商用交流電源入力に応じて、全波整流/倍電圧整流で切り換える構成とすることが知られている。
【0106】
しかしながら、AC100V系とAC200V系とで回路構成の切り換えを行う場合には、以下のような問題点が生じる。
例えば、このような商用交流電源レベルに応じた切り換えには、入力電圧についての閾値(例えば150V)を設定し、これを上回った場合はAC200V系、下回った場合はAC100V系に対応した回路切換を行うようにされるが、単純にこのような切り換えのみを行っていたのでは、例えばAC200V系の入力時の瞬間停電等による一時的な交流入力電圧の低下に対しても、AC100系に対応した切り換えが行われてしまうおそれがある。つまり、例えば整流動作の切り換え構成を例に挙げれば、AC200V系の入力であるにも関わらず、AC100V系であるとして倍電圧整流回路に切り換えられてしまい、これによってスイッチング素子などが耐圧オーバーとなって破壊される可能性がある。
【0107】
そこで、実際には、上記のような誤動作が生じないようにするために、メインとなるスイッチングコンバータの直流入力電圧だけではなく、スタンバイ電源側のコンバータ回路の直流入力電圧も検出する構成を採るようにされる。
しかしながら、このようにしてスタンバイ電源側のコンバータ回路を検出するということは、基準電圧と入力電圧との比較を行うための例えばコンパレータIC等を実装することになるが、これにより部品点数が増加して、回路製造コストの増加、及び回路基板サイズの大型化が助長されてしまうことになる。
【0108】
また、このように誤動作防止を目的としてスタンバイ電源側のコンバータの直流入力電圧を検出するということは、メイン電源の他にスタンバイ電源を備える電子機器でなければ、実際に使用することができないということになる。つまり、電源を実装可能な電子機器の種類が、スタンバイ電源を備えたものに限定されるわけであり、それだけ利用範囲が狭くなっているという問題も生じる。
【0109】
また、ハーフブリッジ/フルブリッジの切り換えを行う構成では、フルブリッジ構成を可能とするためにスイッチング素子を少なくとも4つ備える必要がある。つまり、切り換えが不要であればハーフブリッジでよく、スイッチング素子が2つで済むものを、この場合はさらに2つ追加しなくてはならない。
また、整流動作の切換を行う構成としても、倍電圧整流動作を得るために平滑コンデンサCiを2本備えるようにしなければならない。つまり全波整流のみとする構成と比較して、平滑コンデンサCiを1本追加しなければならなくなる。
これらの点でも、上記したような回路切換を伴うワイドレンジ対応の構成では、回路製造コストの増加、及び電源回路基板の大型化を招く。特に、整流動作切り換えの構成において、平滑コンデンサCi等は電源回路を構成する部品のうちでも大型の部類に入ることから、このような基板サイズの大型化はさらに助長される。
【0110】
これに対して、本実施の形態の回路構成によりワイドレンジ対応化が実現されるのであれば、先に説明したような、商用交流電源の定格レベルに応じて、直流入力電圧(Ei)を生成するための整流回路系について整流動作を切り換えたり、あるいは、ハーフブリッジ結合方式とフルブリッジ結合方式との間でスイッチングコンバータの形式を切り換える構成を採る必要はなくなる。
そして、このような回路切り換えのための構成が不要となれば、例えば平滑コンデンサCiは1つのみとすることができ、またスイッチング素子としては少なくともハーフブリッジ結合に必要な2つのみとすることが可能となって、その分回路構成部品の削減、回路規模の縮小、及びスイッチングノイズの低減などが図られる。
また、回路切換の構成が不要となれば、切り換えによる誤動作防止のために特別な構成を備えるような必要もなくなり、この点でも構成部品の増加とコストアップの抑制が図られる。さらには、誤動作防止のためにスタンバイ電源を必須としないので、電源回路が使用可能な機器範囲を広げることができる。
【0111】
また、このような実施の形態としての効果を得るのにあたって、一次側にのみ並列共振回路を備えるこれまでの電圧共振形コンバータの構成に対して追加すべき必要最小限の部品は、二次側並列共振コンデンサの1点のみである。つまり、従来の回路切換方式による構成を採る場合よりもはるかに少ない部品追加で、ワイドレンジ対応を実現することができる。
【0112】
図6は、本実施の形態の電源回路としての二次側整流回路の変形例の1つを示している。なお、この図においては、二次巻線N2及び二次側整流回路の構成のみが抜き出されて示されているが、図示されていない他の部分は、絶縁コンバータトランスPITの構造も含めて、先に説明した実施の形態としての構成が採られればよい。
この図6に示される二次側整流回路は両波整流回路とされている。この場合の両波整流回路は、次のようにして形成されている。
先ず、二次巻線N2については、センタータップを施すことで、センタータップを境界にして二次巻線部N2A,N2Bに分割する。センタータップは二次側アースに接続する。
そのうえで、両波整流回路を形成する部品素子として、この場合には、2本の整流ダイオードDo1,Do2、及び1本の平滑コンデンサCoを備える。整流ダイオードDo1のアノードを二次巻線N2における二次巻線部N2A側の端部と接続し、整流ダイオードDo2のアノードを二次巻線N2における二次巻線部N2B側の端部と接続する。整流ダイオードDo1,Do2のカソードを共に平滑コンデンサCoの正極端子に接続し、平滑コンデンサCoの負極端子は二次側アースにて、二次巻線N2のセンタータップと接続する。
【0113】
このようにして形成される二次側両波整流回路では、二次巻線N2に誘起される二次巻線電圧の一方の極性の半周期に対応しては、二次巻線部NA→整流ダイオードDo1→平滑コンデンサCoの経路で整流電流が流れて平滑コンデンサCoに充電を行う。また、二次巻線V3の他方の極性の半周期に対応しては、二次巻線部NB→整流ダイオードDo2→平滑コンデンサCoの経路で整流電流が流れて平滑コンデンサCoに充電を行う。このようにして、二次巻線電圧の正負の各半周期の期間に対応して平滑コンデンサCoに対して整流電流を充電する両波整流動作が行われる。これにより、平滑コンデンサCoの両端電圧としては、二次巻線部N2A,N2Bの誘起電圧レベルの等倍に対応するレベルの二次側直流出力電圧Eoが得られる。
【0114】
また、本実施の形態における、複合トランスとしての絶縁コンバータトランスPITの他の構造例を、図7〜図9に示す。
図7に示される制御トランスPRTとしては、4本の磁脚を有する2つのダブルコの字型コアCR51、CR52を備える。そして、これらダブルコの字型コアCR51、CR52の互いの磁脚の端部を接合するようにして、立体型コアを形成する。なお、この場合において、ダブルコの字型コアCR51、CR52は、互いに同一サイズ形状のものを用いることができる。
このようにして立体型コアを形成した場合には、上記4本の磁脚ごとに対応して、ダブルコの字型コアCR11、CR12の接合部は4つ在ることとなるが、この場合、これら4つの接合部について、それぞれ所定長のギャップG50をそれぞれ形成する。なお、これら複数のギャップG50に設定されるギャップ長は同じであってもよいし、必要に応じて異なる長さが設定されてもよい。この点については、後述する図8、図9の絶縁コンバータトランスPITの構造においても同様である。
【0115】
そして、このようにして形成される立体型コアにおいて、先ず、例えばダブルコの字型コアCR51側の隣り合う2本の磁脚に巻き付けるようにして、チョークコイル巻線N10を所定ターン数(巻数)巻装する。
一方、一次巻線N1及び二次巻線N2は、図示するようにして、ダブルコの字型コアCR52側において、上記チョークコイル巻線N10の巻方向に対して、ちょうど直交するようにさせて、隣り合う2本の磁脚に巻き付けるようにして、所定ターン数を巻装するようにされる。
【0116】
上記のような構造では、チョークコイル巻線N10の巻回方向は、一次巻線N1及び二次巻線N2の巻回方向に対して直交することになる。つまり、複合トランスである絶縁コンバータトランスPITとしては、いわゆる直交型トランスとしての構造が得られる。
【0117】
このようにして、一次巻線N1、二次巻線N2、チョークコイル巻線N10が巻装されることで、先ず、一次巻線N1及び二次巻線N2については、コアサイズやギャップ長等に応じて設定される所定の結合係数により磁気結合された状態を生じる。また、チョークコイル巻線N10は、例えばコアサイズと巻数などの定数から、所定のインダクタンスを有するようにされる。そのうえで、チョークコイル巻線N10の巻回方向が一次巻線N1及び二次巻線N2の巻回方向に対して直交するようにされることで、チョークコイル巻線N10を巻回した2本の磁脚において、一次巻線N1及び二次巻線N2側により形成される磁路は逆方向となって打ち消し合うことになる。これにより、チョークコイル巻線N10と、一次巻線N1及び二次巻線N2との磁気結合度としては、0とみなしてよい程度の一定以下とすることができる。
【0118】
図8に示す絶縁コンバータトランスPITは、立体型コアについて、一方のコアは4本の磁脚を有するダブルコの字型コアCR51のままとするが、他方のコアは、ダブルコの字型コアCR52に代えて、任意の断面がコ字状となるシングルコの字型コアCR60と組み合わせて形成することもできる。なお、このコア構造においても、ダブルコの字型コアCR51の4本の磁脚の端面と、シングルコの字型コアCR60とが対向する部位には、それぞれ、ギャップG50を形成するようにされる。
このコア構造において、チョークコイル巻線N10と、一次巻線N1及び二次巻線N2を、例えば図8と同様のダブルコの字型コアCR51の位置関係、及び巻方向の関係により巻装する。このようにしても、チョークコイル巻線N10と、一次巻線N1及び二次巻線N2の組とが、互いの巻き方向が直交する直交型トランスとしての構成が得られ、図7と同様にして、チョークコイル巻線N10は、所定のインダクタンスを有すると共に、一次巻線N1及び二次巻線N2に対する磁気結合度については0とみなしてよい状態を得ることができる。
【0119】
また、図9に示す絶縁コンバータトランスPITは、2つの半目字型コアCR71,CR72を用意し、これらのコアの互いの磁脚が対向するようにして組み合わせることで1つの平面型の目字型コアを形成する。また、目字型コアにおいては、外側2本と内側2本の計4本の磁脚が対向することになるが、この場合には、これらの4本の磁脚が対向する各面について、それぞれ、所定長のギャップG70を形成する。
そして、一次巻線N1及び二次巻線N2は、一方の半目字型コアCR71における2本の内側磁脚に跨るようにして所定ターン数を巻装する。
チョークコイル巻線N10は、他方の半目字型コアCR72における1本の外側磁脚と、この外側磁脚と隣り合う1本の内側磁脚とに跨るようにして、所定ターン数を巻装する。
【0120】
このような絶縁コンバータトランスPITの構造では、チョークコイル巻線N10が巻回される磁脚位置と、一次巻線N1及び二次巻線N2が巻回される磁脚位置とが互いに異なるようにされているが、この関係としては、図7及び図8に示したように巻回方向を直交させたのと等価となる。従って、この図9に示す構造によっても、絶縁コンバータトランスPITにおいては、チョークコイル巻線N10は、一次巻線N1及び二次巻線N2に対する結合度は0とみなされ、かつ、所要のインダクタンスを有する状態となる。
【0121】
なお、本発明としては、上記各実施の形態として示した構成に限定されるものではない。例えば、一次側のE級スイッチングコンバータの細部の回路形態や、二次側整流回路の構成などは他にも考えられるものである。
また、メインスイッチング素子(及び補助スイッチング素子)については、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、バイポーラトランジスタなど、MOS−FET以外の素子を選定することも考えられる。また、上記各実施の形態では、他励式のスイッチングコンバータを挙げているが、自励式として構成した場合にも本発明は適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明の実施の形態としての電源回路の構成例を示す回路図である。
【図2】実施の形態の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスの構造例を示す図である。
【図3】実施の形態の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスの他の構造例を示す図である。
【図4】実施の形態の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスの他の構造例を示す図である。
【図5】実施の形態の電源回路の要部の動作をスイッチング周期により示す波形図である。
【図6】実施の形態の電源回路に対応する二次側の変形例としての構成例を示す回路図である。
【図7】実施の形態の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスの他の構造例を示す図である。
【図8】実施の形態の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスの他の構造例を示す図である。
【図9】実施の形態の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスの他の構造例を示す図である。
【図10】E級スイッチングコンバータの基本構成例を示す回路図である。
【図11】図10に示すE級スイッチングコンバータの動作を示す波形図である。
【図12】ダイオード及びトランスによる電圧クランプの構成を付加したE級スイッチングコンバータの構成例を示す回路図である。
【図13】伝送線路トランスによる電圧クランプの構成を付加したE級スイッチングコンバータの構成例を示す回路図である。
【図14】従来例としての電源回路の構成例を示す回路図である。
【図15】図14に示した電源回路の要部の動作を示す波形図である。
【図16】図14に示した電源回路についての、負荷変動に対するAC→DC電力変換効率、スイッチング周波数、スイッチング素子のオン期間の変動特性を示す図である。
【図17】従来の電源回路についての定電圧制御特性を概念的に示す図である。
【符号の説明】
【0123】
1 制御回路、2 発振・ドライブ回路、10 アクティブクランプ回路、Di ブリッジ整流回路、Ci 平滑コンデンサ、Q1 スイッチング素子、PIT 絶縁コンバータトランス、N10 チョークコイル巻線、Cr 一次側並列共振コンデンサ、N1 一次巻線、N2(N2A,N2B) 二次巻線、C11 一次側直列共振コンデンサ、Do1,Do2,Do3,Do4 (二次側)整流ダイオード、Co (二次側)平滑コンデンサ、Q2 補助スイッチング素子、CCL クランプコンデンサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧共振形コンバータを備えて成るスイッチング電源回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
共振形によるいわゆるソフトスイッチング電源としては、電流共振形と電圧共振形の形式が広く知られている。現状においては、実用化が容易なことを背景に、2石のスイッチング素子によるハーフブリッジ結合方式の電流共振形コンバータが広く採用されている状況にある。
しかし、現在、例えば高耐圧スイッチング素子の特性が改善されてきている状況にあり、電圧共振形コンバータを実用化するにあたっての耐圧の問題はクリアされてきている状況にある。また、1石のスイッチング素子によるシングルエンド方式で構成した電圧共振形コンバータについては、1石の電流共振形フォワードコンバータと比較して、入力帰還ノイズや直流出力電圧ラインのノイズ成分などの点で有利であることも知られている。
【0003】
図14は、シングルエンド方式による電圧共振形コンバータを備えるスイッチング電源回路の一構成例を示している。
【0004】
この図に示すスイッチング電源回路においては、商用交流電源ACをブリッジ整流回路Di及び平滑コンデンサCiから成る整流平滑回路により整流平滑化することで、平滑コンデンサCiの両端電圧として、整流平滑電圧Eiを生成している。
なお、商用交流電源ACのラインに対しては、1組のコモンモードチョークコイルCMCと、2本のアクロスコンデンサCLから成り、コモンモードのノイズを除去するノイズフィルタが設けられている。
【0005】
上記整流平滑電圧Eiは、直流入力電圧として電圧共振形コンバータに対して入力される。この電圧共振形コンバータは、上記しているように、1石のスイッチング素子Q1を備えたシングルエンド方式による構成を採る。また、この場合の電圧共振形コンバータとしては他励式となっており、MOS−FETのスイッチング素子Q1を、発振・ドライブ回路2によりスイッチング駆動するようにされている。
【0006】
スイッチング素子Q1に対しては、MOS−FETのボディダイオードDDが並列に接続される。また、スイッチング素子Q1のソース−ドレイン間に対して一次側並列共振コンデンサCrが並列に接続される。
【0007】
一次側並列共振コンデンサCrは、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1とによって一次側並列共振回路(電圧共振回路)を形成している。そして、この一次側並列共振回路によって、スイッチング素子Q1のスイッチング動作として電圧共振形の動作が得られるようにされている。
【0008】
発振・ドライブ回路2は、スイッチング素子Q1をスイッチング駆動するために、スイッチング素子Q1のゲートに対して、ドライブ信号としてのゲート電圧を印加する。これにより、スイッチング素子Q1は、ドライブ信号の周期に応じたスイッチング周波数によりスイッチング動作を行う。
【0009】
絶縁コンバータトランスPITは、スイッチング素子Q1 のスイッチング出力を二次側に伝送する。
絶縁コンバータトランスPITの構造としては、例えば、フェライト材によるE字形状コアを組み合わせたEE字形コアを備える。そして、一次側と二次側とで巻装部位を分割したうえで、一次巻線N1と、二次巻線N2を、EE字形コアの中央磁脚に対して巻装している。
そのうえで、絶縁コンバータトランスPITのEE字形コアの中央磁脚に対しては1.0mm程度のギャップを形成するようにしており、これによって、一次側と二次側との間で、k=0.80〜0.85程度の結合係数kを得るようにしている。この程度の結合係数kは疎結合としてみてよい結合度であり、その分、飽和状態が得られにくくなる。また、この結合係数kの値が、リーケージインダクタンス(L1)の設定要素となる。
【0010】
絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1の一端は、スイッチング素子Q1と平滑コンデンサCiの正極端子間に挿入されるようになっていることで、スイッチング素子Q1のスイッチング出力が伝達されるようになっている。絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2には、一次巻線N1により誘起された交番電圧が発生する。
【0011】
この場合、二次巻線N2の一端に対して二次側直列共振コンデンサC2を直列に接続していることで、二次巻線N2のリーケージインダクタンスL2と二次側直列共振コンデンサC2のキャパシタンスとによって二次側直列共振回路(電流共振回路)が形成される。
そのうえで、この二次側直列共振回路に対して、図示するようにして整流ダイオードDo1,Do2、及び平滑コンデンサCoを接続することで、倍電圧半波整流回路を形成している。この倍電圧半波整流回路は、二次巻線N2に誘起される交番電圧V2の2倍に対応するレベルの二次側直流出力電圧Eoを、平滑コンデンサCoの両端電圧として生成する。二次側直流出力電圧Eoは負荷に供給されると共に、定電圧制御用の検出電圧として、制御回路1に入力される。
【0012】
制御回路1は、検出電圧として入力される二次側直流出力電圧Eoのレベルを検出して得られる検出出力を発振・ドライブ回路2に入力する。
発振・ドライブ回路2は、入力される検出出力が示す二次側直流出力電圧Eoのレベルに応じて、二次側直流出力電圧Eoが所定のレベルで一定となるようにして、スイッチング素子Q1のスイッチング動作を制御する。つまり、制御すべきスイッチング動作を得るためのドライブ信号を生成して出力する。これにより、二次側直流出力電圧Eoの安定化制御が行われる。
【0013】
図15及び図16は、上記図14に示した構成の電源回路についての実験結果を示している。なお、実験にあたっては、図14の電源回路の要部について下記のようにして設定している。
絶縁コンバータトランスPITは、コアにEER-35を選定し、中央磁脚のギャップについては、1mmのギャップ長を設定する。また、一次巻線N1及び二次巻線N2のターン数T(巻数)については、それぞれN1=39T、N2=23Tとし、二次巻線N2の1ターン(T)あたりの誘起電圧レベルについては、3V/Tを設定した。絶縁コンバータトランスPITの結合係数kについてはk=0.81を設定した。
また、一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスについてはCr=3900pF、二次側直列共振コンデンサC2のキャパシタンスについてはC2=0.1μFを選定した。これに応じて、一次側並列共振回路の共振周波数fo1=230kHz、二次側直列共振回路の共振周波数fo2=82kHzが設定される。この場合、共振周波数fo1,fo2の相対的関係としては、fo1≒2.8×fo2と表すことができる。
二次側直流出力電圧Eoの定格レベルは135Vであり、対応負荷電力は、最大負荷電力Pomax=200W〜最小負荷電力Pomin=0Wである。
【0014】
図15は、図14に示した電源回路における要部の動作をスイッチング素子Q1のスイッチング周期により示す波形図であり、図15(a)には、最大負荷電力Pomax=200W時における電圧V1、スイッチング電流IQ1、一次巻線電流I1、二次巻線電流I2、二次側整流電流ID1、ID2が示されている。図15(b)には、中間の負荷電力Po=120W時における電圧V1、スイッチング電流IQ1、一次巻線電流I1、二次巻線電流I2が示されている。図15(c)には最小負荷電力Pomin=0W時における電圧V1、スイッチング電流IQ1が示される。
電圧V1は、スイッチング素子Q1の両端に得られる電圧であり、スイッチング素子Q1がオンとなる期間TONにおいて0レベルで、オフとなる期間TOFFにおいて正弦波状の共振パルスとなる波形である。この電圧V1の共振パルス波形が、一次側スイッチングコンバータの動作が電圧共振形であることを示している。
【0015】
スイッチング電流IQ1は、スイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)に流れる電流であり、期間TONにおいて図示する波形により流れ、期間TOFFにおいて0レベルとなる波形として得られる。
一次巻線N1に流れる一次巻線電流I1は、期間TONにおいて上記スイッチング電流IQ1として流れる電流成分と、期間TOFFにおいて一次側並列共振コンデンサCrに流れる電流とを合成したものとなる。
【0016】
また、図15(a)のみにおいて示しているが、二次側整流回路の動作として、整流ダイオードDo1,Do2に流れる整流電流ID1,ID2は、それぞれ図示するようにして正弦波状に流れるものとなる。この場合、整流電流ID1の波形のほうが、整流電流ID2よりも、二次側直列共振回路の共振動作が支配的に現れたものとなっている。
二次巻線N2に流れる二次巻線電流I2は、整流電流ID1,ID2が合成された波形として得られる。
【0017】
図16は、図14に示した電源回路についての、負荷変動に対するスイッチング周波数fs、スイッチング素子Q1のオン期間TON、オフ期間TOFF、及びAC→DC電力変換効率(ηAC→DC)を示している。
先ず、AC→DC電力変換効率(ηAC→DC)を見てみると、負荷電力Po=50W〜200Wまでの広範囲で90%以上となる高効率が得られていることが分かる。このような特性は、シングルエンド方式による電圧共振形コンバータに、二次側直列共振回路を組み合わせた場合に得られるものであることを、先に本出願の発明者は実験で確認している。
【0018】
また、図16のスイッチング周波数fs、オン期間TON、オフ期間TOFFによっては、図14に示す電源回路についての負荷変動に対する定電圧制御特性としてのスイッチング動作が示されることになる。この場合、スイッチング周波数fsは、負荷変動に対してほぼ一定となっている。これに対して、オン期間TON、オフ期間TOFFが図示するようにして相互に逆傾向となるようにしてリニアに変化を示している。このことは、二次側直流出力電圧Eoの変動に対してスイッチング周波数(スイッチング周期)はほぼ一定とされたうえで、オン期間とオフ期間との時比率を変化させるようにしてスイッチング動作を制御しているということを示す。このような制御は、1周期内のオン/オフ期間を可変する、PWM(Pulse Width Modulation)制御であるとみることができる。このPWM制御によって、図14に示す電源回路では、二次側直流出力電圧Eoについての安定化が図られる。
【0019】
図17は、図14に示す電源回路の定電圧制御特性を、スイッチング周波数fs(kHz)と二次側直流出力電圧Eoとの関係により、模式的に示している。
図14に示す電源回路では、一次側並列共振回路と二次側直列共振回路を備えることから、一次側並列共振回路の共振周波数fo1に応じた共振インピーダンス特性と、二次側直列共振回路の共振周波数fo2に応じた共振インピーダンス特性との2つの共振インピーダンス特性を複合的に有することになる。また、図14に示す電源回路では、fo1≒2.8×fo2の関係を有しているとされるので、図17にも示しているように、一次側並列共振周波数fo1に対して二次側直列共振周波数fo2が低い関係となる。
そのうえで、或る一定の交流入力電圧VACの条件でのスイッチング周波数fsに対する定電圧制御特性を想定すると、図示するようにして、一次側並列共振回路の共振周波数fo1に応じた共振インピーダンスの下での最大負荷電力Pomax時/最小負荷電力Pomin時の各定電圧制御特性としては、それぞれ特性曲線A,Bとして示され、二次側直列共振回路の共振周波数fo2に応じた共振インピーダンスの下での最大負荷電力Pomax時/最小負荷電力Pomin時の各定電圧制御特性としては、それぞれ特性曲線C,Dで示されるものとなる。そして、この図17に示す特性の下で、二次側直流出力電圧Eoの定格レベルであるtgにより定電圧制御を図ろうとすると、そのために必要なスイッチング周波数fsの可変範囲(必要制御範囲)は、Δfsで示される区間として表すことができる。
【0020】
図17に示される必要制御範囲Δfsは、二次側直列共振回路の共振周波数fo2に応じた最大負荷電力Pomax時の特性曲線Cから、一次側並列共振回路の共振周波数fo1に応じた最小負荷電力Pomin時の特性曲線Aまでに至るもので、その間に、二次側直列共振回路の共振周波数fo2に応じた最小負荷Pomin時の特性曲線Dと、一次側並列共振回路の共振周波数fo1に応じた最大負荷電力Pomax時の特性曲線Bをまたぐ。
このために、図14に示す電源回路の定電圧制御動作としては、スイッチング周波数fsはほぼ固定とされたうえで、1スイッチング周期における期間TON/TOFFの時比率を変化させるPWM制御の状態により、スイッチング駆動制御を行うものとなる。なお、このことは、図15(a)(b)(c)に示す最大負荷電力Pomax=200W時、負荷電力Po=100W時、最小負荷電力Pomin=0W時に示される1スイッチング周期(TOFF+TON)の期間長についてはほぼ一定とされたうえで、期間TOFF,TONの幅が変化していることによっても示されている。
このような動作は、電源回路における負荷変動に応じた共振インピーダンス特性として、一次側並列共振回路の共振周波数fo1の共振インピーダンス(容量性インピーダンス)が支配的となる状態と、二次側直列共振回路の共振周波数fo2(誘導性インピーダンス)が支配的となる状態との間での遷移が、狭いスイッチング周波数の可変範囲(Δfs)のもとで行われることにより得られるものであるとされる。
【0021】
【特許文献1】特開2000−134925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
上記図14に示す電源回路では次のような問題を有している。
先に説明した図15の波形図において、図15(a)に示される最大負荷電力Pomax時のスイッチング電流IQ1は、ターンオンタイミングであるオフ期間TOFFの終了時点に至るまでは0レベルで、オン期間TONに至ると、先ず負極性の電流がボディダイオードDDに流れ、この後に反転してスイッチング素子Q1のドレイン−ソースを流れるようにして動作する。この動作は、ZVS(Zero Voltage Switching)が適正に行われている状態を示している。
これに対して、図15(b)に示される、中間負荷に対応するPo=120W時のスイッチング電流IQ1は、ターンオンタイミングのオフ期間TOFFの終了時点に至る以前のタイミングで、スイッチング電流IQ1がノイズ的に流れる動作が得られている。この動作は、ZVSが適正に行われていない異常動作である。
【0023】
つまり、図14に示されるようにして、二次側直列共振回路を備える電圧共振形コンバータでは、中間負荷時においてZVSが適正に実行されない異常動作となることが分かっている。図14の電源回路の実際としては、例えば図16に示す区間Aとしての負荷変動範囲の領域で、このような異常動作となることが確認されている。
二次側直列共振回路を備える電圧共振形コンバータは、先にも説明したように、傾向としては負荷変動に対して高効率が良好に維持できる特性を本来有しているが、図15(b)のスイッチング電流IQ1として示すように、スイッチング素子Q1のターンオン時において相応のピーク電流が流れることになるので、これによるスイッチング損失の増加を招き、電力変換効率の低下要因を抱えることになる。
また、いずれにせよ、上記のような異常動作が生じることで、例えば定電圧制御回路系の位相−ゲイン特性にずれが生じることとなって、異常発振状態でのスイッチング動作となる。このために、実用化することは、現実的には困難であるとの認識が現状においては強い。
【課題を解決するための手段】
【0024】
そこで、本発明は上記した課題を考慮して、スイッチング電源回路として次のように構成することとした。
つまり、少なくとも整流素子と平滑コンデンサを備えて形成され、商用交流電源を入力して整流平滑化することで、上記平滑コンデンサの両端電圧として整流平滑電圧を生成する整流平滑回路と、整流平滑電圧を直流入力電圧として入力してスイッチングを行うメインスイッチング素子と、メインスイッチング素子をスイッチング駆動するスイッチング駆動手段とを備える。
また、整流平滑電圧がメインスイッチング素子に入力される経路に対して直列に挿入される第1のインダクタと、メインスイッチング素子に対して並列となる関係により接続され、少なくとも上記第1のインダクタのインダクタンスと自身のキャパシタンスとによって一次側並列共振回路を形成する一次側並列共振コンデンサとを備える。
また、第2のインダクタと、この第2のインダクタと直列となる関係により接続されることで、少なくとも第2のインダクタのインダクタンスと自身のキャパシタンスとによって一次側直列共振回路を形成し、第2のインダクタと自身との直列接続回路がスイッチング素子に対して並列となる関係により接続されるようにして設けられる一次側直列共振コンデンサとを備える。
また、少なくとも、第2のインダクタを一次巻線として巻装するとともに、この一次巻線に得られたスイッチング出力により交番電圧が誘起される二次巻線を巻装して形成され、疎結合とみなされる所要の一次側と二次側との総合結合係数が得られるようにして、自身の結合係数が設定されるコンバータトランスを備える。
また、コンバータトランスの二次巻線に誘起される交番電圧を入力して整流動作を行って、二次側直流出力電圧を生成するように構成された二次側直流出力電圧生成手段を備える。
また、補助スイッチング素子を備え、メインスイッチング素子がオフとなる期間内において補助スイッチング素子がオンとなるオン期間を形成して、このオン期間において一次側並列共振コンデンサに流れるべき充放電電流を補助スイッチング素子に流すようにして設けられるアクティブクランプ回路を備えることとした。
【0025】
なお、本願発明において「結合係数」とは、電磁的な結合の度合いを示すものであり、数値として1が最も結合の度合いが高いことを示し、数値として0が最も結合の度合いが低い(結合していない)ことを示す。また、結合係数の用語は、構成態様によらず総称として一般に用いられるものであるが、コンバータトランス自体の結合係数と区別するために、一次側の全体と二次側の全体との間の電磁的な結合の度合いについては「総合結合係数」という。例えば、コンバータトランスに他のインダクタンス成分が付加されない場合には、結合係数の値と総合結合係数の値とは一致する。
【0026】
上記構成による電源回路は、一次側においてE級スイッチングコンバータとしての回路形態を形成する。E級スイッチングコンバータは、並列共振回路(一次側並列共振回路:電圧共振回路)と直列共振回路(一次側直列共振回路)を備える複合共振形といわれるソフトスイッチングコンバータの一形式である。そのうえで、E級スイッチングコンバータにおける直列共振回路(一次側直列共振回路)を形成するインダクタ(第2のインダクタ)をコンバータトランスの一次巻線として電源回路を構成している。
また、このような構成では、コンバータトランスの一次側と二次側との総合結合係数は、コンバータトランス自身の結合係数と、第1のインダクタとコンバータトランスの一次巻線(第2のインダクタ)との等価的な並列回路により得られる一次側のリーケージインダクタンスにより決定される。本発明は、このようにして総合結合係数が設定されることを考慮したうえで、疎結合としてみなされる所要の総合結合係数が得られるようにして、コンバータトランス自身の結合係数を設定するようにしている。このような総合結合係数の設定とすることで、中間負荷とされる負荷条件でのZVS動作が得られなくなる状態を回避する一要因となる。
このようにして総合結合係数を設定することにより、中間負荷とされる負荷条件範囲の下でZVS(Zero Voltage Switching:ゼロ電圧スイッチング)動作が得られなくなる異常動作を解消して、適正なZVS動作を得ている。
【0027】
また、本発明の下で構成される一次側のE級スイッチングコンバータは、商用交流電源を整流平滑化する整流平滑回路を形成する平滑コンデンサの両端電圧である整流平滑電圧を入力してスイッチングを行うようにされている。このとき、平滑コンデンサからE級スイッチングコンバータに流入する電流は、一次側並列共振回路を形成する第1のインダクタを介してスイッチング素子側に流れるようにされることで、直流となる。
【0028】
さらに、アクティブクランプ回路を備えて、本来は一次側並列共振コンデンサに流れるべき充放電電流を補助スイッチング素子に流すようにすることで、一次側並列共振コンデンサの両端電圧となる電圧共振パルスのピークレベルが抑制される。
【発明の効果】
【0029】
このようにして本発明は、一次側に並列共振回路を備えるスイッチング電源回路として、中間負荷とされる負荷条件範囲の下でZVS(Zero Voltage Switching:ゼロ電圧スイッチング)動作が得られなくなる異常動作が解消される。このことにより、電圧共振形コンバータ(一次側並列共振回路)の構成を含むスイッチングコンバータの実用化が容易に実現されることになる。
また、商用交流電源から整流平滑電圧(直流入力電圧)を生成する整流平滑回路の平滑コンデンサからスイッチングコンバータに流入する電流が直流となることで、上記平滑コンデンサとしての部品素子のキャパシタンスについて小さい値を選定し、また、汎用品を選定することが可能になり、例えば平滑コンデンサの低コスト化や小型化などの効果が得られる。
また、アクティブクランプ回路により電圧共振パルスのピークレベルが抑制されることで、メインスイッチング素子をはじめとする部品素子について、低耐圧品を選定できることになる。これにより、部品素子の性能の向上による電源回路の信頼性向上、コストダウン、回路の小型軽量化が図られる。
さらに、上記した中間負荷時における異常動作の解消、及びアクティブクランプ回路による電圧共振パルスのピークレベルの抑制効果などは、例えばより広範囲の入力電圧レベルに対応することの要因となるものであり、これにより、本発明に基づくスイッチング電源回路は、例えばAC100V系とAC200V系の商用交流電源入力に対応する、いわゆるワイドレンジ対応化なども容易に実現化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態という)について説明するのに先立ち、本実施の形態の背景技術となる、E級共振形によりスイッチング動作するスイッチングコンバータ(以下、E級スイッチングコンバータともいう)の基本構成について、図10及び図11を参照して説明しておく。
図10は、E級スイッチングコンバータとしての基本構成を示している。この図に示すE級スイッチングコンバータは、E級共振形で動作するDC-ACインバータとしての構成を採る。
この図に示すE級スイッチングコンバータは、1石のスイッチング素子Q1を備える。この場合のスイッチング素子Q1はMOS−FETであることとしている。このMOS−FETとしてのスイッチング素子Q1には、ボディダイオードDDが、ドレイン−ソース間に対して並列接続されるようにして形成される。この場合のボディダイオードDDの順方向は、ソースからドレインへの方向に沿ったものとなる。
また、同じくスイッチング素子Q1のドレイン−ソース間に対しては、並列共振コンデンサCrが並列に接続される。
【0031】
スイッチング素子Q1のドレインは、チョークコイルL10の直列接続を介して、直流入力電圧Einの正極と接続される。スイッチング素子Q1のソースは、直流入力電圧Einの負極と接続される。
【0032】
また、スイッチング素子Q1のドレインに対しては、チョークコイルL11の一端が接続され、他端には直列共振コンデンサC11が直列に接続される。直列共振コンデンサC11と直流入力電圧Einの負極との間には、負荷となるインピーダンスZが挿入される。ここでのインピーダンスZの具体例には圧電トランス、高周波対応の蛍光灯などを挙げることができる。
【0033】
このような構成のE級スイッチングコンバータは、チョークコイルL10のインダクタンスと並列共振コンデンサCrのキャパシタンスとにより形成される並列共振回路と、チョークコイルL11のインダクタンスと直列共振コンデンサC11のキャパシタンスとにより形成される直列共振回路とを備える複合共振形コンバータの一形態であるとみることができる。また、スイッチング素子を1つのみ備えて形成される点では、シングルエンド方式の電圧共振形コンバータと同じであるといえる。
【0034】
図11は、上記図10に示した構成のE級スイッチングコンバータについての要部の動作を示している。
スイッチング電圧V1は、スイッチング素子Q1の両端に得られる電圧であり、スイッチング素子Q1がオンとなる期間TONにおいて0レベルで、オフとなる期間TOFFにおいて正弦波状のパルスとなる波形である。このスイッチングパルス波形は、上記並列共振回路の共振動作(電圧共振動作)により得られる。
【0035】
スイッチング電流IQ1は、スイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)に流れる電流であり、期間TOFFでは0レベルで、期間TONにおいては、先ず開始時点から一定期間において、ボディダイオードDDを流れることで負極性となり、この後に反転して正極性となって、スイッチング素子Q1のドレインからソースに流れる。
また、E級スイッチングコンバータの出力として、上記直列共振回路に流れるとされる電流I2は、スイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)に流れるスイッチング電流IQ1と、並列共振コンデンサCrに流れる電流とを合成したものとなり、正弦波成分を含む波形となる。
【0036】
また、上記スイッチング電流IQ1とスイッチング電圧V1との関係によっては、スイッチング素子Q1のターンオフタイミングにおいてZVS動作が得られており、ターンオンタイミングにおいてZVS及びZCS動作が得られていることも示される。
【0037】
また、直流入力電圧Einの正極端子からチョークコイルL10を流れるようにしてE級スイッチングコンバータに流入する電流I1は、チョークコイルL10,L11のインダクタンスについて、L10>L11の関係を設定していることで、図示するようにして所定の平均レベルをとる脈流波形となる。このような脈流波形は、近似的な直流としてみることができる。
【0038】
上記E級スイッチングコンバータは、ピークスイッチ電圧が非常に高いことが知られている。例えば、スイッチング素子Q1のオン時間とオフ時間のデューティ比が2:1の場合、オフ期間のスイッチング電圧V1の波形である並列共振電圧パルスのピーク値は、直流入力電圧Einの5倍程度である。
このようなE級スイッチングコンバータのピークスイッチ電圧を抑制するための技術として、「末次正、伝送線路トランスを用いた電圧クランプ型E級増幅器、信学技報、社団法人電子情報通信学会」の文献には、ダイオードとトランスを用いた電圧クランプ法と、伝送線路トランスを用いた電圧クランプ法とが開示、提案されている。
図12は、前者のダイオードとトランスを用いた電圧クランプ法に対応した構成の回路図であり、図13は、後者の伝送線路トランスを用いた電圧クランプ法に対応した構成の回路図である。なお、これらの図において、図10と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0039】
先ず、図12に示す回路では、インダクタL10とインダクタL10aとを磁気結合したトランスTRと、ダイオードDを備える。ダイオードDとインダクタL10aとの直列接続を、直流入力電圧Einに対して並列となる関係により接続し、インダクタL10については、一方の端部をスイッチング素子Q1のドレインと接続し、他方の端部を直流入力電圧Einの正極と接続する。
このような回路構成では、スイッチング素子Q1のオフ期間においてダイオードDが導通して、ダイオードD−インダクタL10に電流が流れる期間が形成されることで、並列共振コンデンサCrに流れる電流が制限され、これにより、スイッチング電圧のピークが抑制される。
ただし、上記した文献にも記載されているように、この図12に示す電圧クランプ法では、トランスTRのリーケージインダクタンスによるリンギングが発生して、このリンギング成分の電圧がスイッチング電圧に重畳されることになるので、結果的には、効果的にスイッチング電圧が抑制できない。
【0040】
そこで、上記文献では、上記したリンギングの問題を解決するために、図14に示す構成を提案している。
図13に示す構成では、1:2のインピーダンス変換が行われる伝送線路トランスTLT、ダイオードD、及び抵抗RDを備え、これらを図示するようにしてE級スイッチングコンバータに対して接続して形成する。この場合、伝送線路トランスTLTは、同軸ケーブル巻線La、Lbが磁気結合するようにして巻装される2組のトランスTR1、TR2を備え、これらトランスTR1、TR2における上記同軸ケーブル巻線La、Lbを図示するようにして接続する。また、この場合においてダイオードDに対して直列接続される抵抗RDは、インピーダンス調整のために設けられたものである。
しかしながら、この図13に示す構成では、伝送線路トランスを使用することで、インピーダンス整合を厳密に行う必要が生じる。しかし、インピーダンス整合に抵抗を挿入することとすれば、この抵抗による電力損失が問題化する。
【0041】
本実施の形態としては、先に図10に示した基本構成に基づくE級スイッチングコンバータを電源回路に適用する。そのうえで、上記図12及び図13などに示される電圧クランプ法における問題がクリアされるようにして、スイッチング電圧のピークレベルが有効に抑制されるようにする。
【0042】
本実施の形態の電源回路の構成例を図1の回路図に示す。
この図に示すスイッチング電源回路においては、まず、商用交流電源ACのラインに対して、図示するようにして、1組のコモンモードチョークコイルCMCと、2本のアクロスコンデンサCLが挿入される。これらコモンモードチョークコイルCMC、及びアクロスコンデンサCL,CLにより、商用交流電源ACのラインに重畳するコモンモードのノイズを除去するノイズフィルタが形成される。
【0043】
商用交流電源AC(交流入力電圧VAC)は、ブリッジ整流回路Diにより整流され、その整流出力は平滑コンデンサCiに充電される。つまり、ブリッジ整流回路Di及び平滑コンデンサCiから成る整流平滑回路により商用交流電源を整流平滑化する。これにより平滑コンデンサCiの両端電圧として整流平滑電圧Eiが得られる。この整流平滑電圧Eiが、後段のスイッチングコンバータのための直流入力電圧となる。
【0044】
この図において、上記整流平滑電圧Eiを直流入力電圧として入力してスイッチング動作を行うスイッチングコンバータは、上記図10の基本構成に基づいたE級スイッチングコンバータとして形成される。
この場合のスイッチング素子Q1には高耐圧のMOS−FETが選定されている。また、この場合のE級スイッチングコンバータの駆動方式は、発振・ドライブ回路2によりスイッチング素子をスイッチング駆動する他励式である。
【0045】
スイッチング素子Q1のドレインは、チョークコイル巻線N10の直列接続を介して平滑コンデンサCiの正極端子と接続される。従って、この場合には、直流入力電圧(Ei)は、チョークコイル巻線N10の直列接続を介してスイッチング素子Q1に供給されるようになっている。スイッチング素子Q1のソースは一次側アースに接続される。このチョークコイル巻線N10としてのインダクタ(第1のインダクタ)は、図10に示したE級スイッチングコンバータにおけるチョークコイルL10に相当する機能部位となる。また、この場合のチョークコイル巻線N10は、後述するようにして絶縁コンバータトランスPITの構造に含められるようにして巻装されて設けられる。
スイッチング素子Q1のゲートに対しては、発振・ドライブ回路2から出力されるスイッチング駆動信号(電圧)が印加されるようになっている。
【0046】
この場合のスイッチング素子Q1には、MOS−FETが選定されていることから、図示するようにして、ソース−ドレイン間に対して並列に接続されるようにしてボディダイオードDDを内蔵する。このボディダイオードDDとしては、アノードがスイッチング素子Q1のソースと接続され、カソードがスイッチング素子Q1のドレインと接続される状態を形成する。このボディダイオードDDは、スイッチング素子Q1のオン/オフ動作(スイッチング動作)により生じる、逆方向のスイッチング電流を流す経路を形成する。
【0047】
また、スイッチング素子Q1のドレイン−ソース間に対しては、一次側並列共振コンデンサCrが並列に接続される。
一次側並列共振コンデンサCrは、自身のキャパシタンスと絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1のリーケージ(漏洩)インダクタンスL1とによって、スイッチング素子Q1に流れるスイッチング電流に対する一次側並列共振回路(電圧共振回路)を形成する。この一次側並列共振回路が共振動作を行うことによって、スイッチング素子Q1のスイッチング動作として、1つには電圧共振形の動作が得られる。これに応じて、スイッチング素子Q1の両端電圧(ドレイン−ソース間電圧)V1としては、そのオフ期間において正弦波状の共振パルス波形が得られる。
【0048】
また、スイッチング素子Q1のドレイン−ソース間に対しては、後述する絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1と一次側直列共振コンデンサC11とから成る直列接続回路が並列に接続される。この場合には、一次巻線N1の巻き終わり端部をスイッチング素子Q1のドレインと接続し、巻始め端部を一次側直列共振コンデンサC11と接続している。一次側直列共振コンデンサC11の一次巻線N1と接続されない側の極端子は、一次側アース電位にてスイッチング素子Q1のソースと接続される。
【0049】
発振・ドライブ回路2は、例えば他励式によりスイッチング素子Q1を駆動するために、発振回路と、この発振回路により得られた発振信号に基づいて、MOS−FETをスイッチング駆動するためのゲート電圧であるドライブ信号を生成して、スイッチング素子Q1のゲートに印加するようにされる。これにより、スイッチング素子Q1は、ドライブ信号波形に応じて連続的にオン/オフ動作を行う。つまり、スイッチング動作を行う。
【0050】
絶縁コンバータトランスPITは、一次側と二次側とを直流的に絶縁した状態で、一次側スイッチングコンバータのスイッチング出力を二次側に伝送するもので、このために、一次巻線N1と二次巻線N2が巻装される。また、本実施の形態の場合には、チョークコイル巻線N10についても、絶縁コンバータトランスPITの構造内に含まれるようにして巻装される。
なお、絶縁コンバータトランスPITの構造例については、後述する。
【0051】
絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1は、後述するようにして、一次側に形成されるE級スイッチングコンバータにおける一次側直列共振回路を形成するための素子であり、スイッチング素子Q1のスイッチング出力に応じた交番出力が得られる。
【0052】
絶縁コンバータトランスPITの二次側では、一次巻線N1により誘起された交番電圧が二次巻線N2に発生する。
この二次巻線N2に対しては、二次側整流回路として、4本の整流ダイオードDo1,Do2,Do3,Do4から成るブリッジ整流回路と1本の平滑コンデンサCoから成るブリッジ全波整流回路が接続される。
この場合、二次巻線N2の巻き終わり端部は、整流ダイオードDo1のアノードと整流ダイオードDo2のカソードの接続点に接続する。また、二次巻線N2の巻始め端部を、整流ダイオードDo3のアノードと整流ダイオードDo4のカソードの接続点に接続する。整流ダイオードDo1のカソードと整流ダイオードDo3のカソードを平滑コンデンサCoの正極端子に接続する。平滑コンデンサCoの負極端子は二次側アース電位にて、整流ダイオードDo2のアノードと整流ダイオードDo4のアノードの接続点と接続される。
【0053】
上記のようにして形成されるブリッジ全波整流回路によっては、二次巻線N2に誘起(励起)される交番電圧の一方の半周期において、ブリッジ整流回路の整流ダイオード[Do1,Do4]の組が導通して、平滑コンデンサCoに対して整流電流を充電する動作が得られる。また、二次巻線N2に誘起される交番電圧の他方の半周期においては、整流ダイオード[Do2,Do3]の組が導通して平滑コンデンサCoに対して整流電流を充電する動作が得られる。
これによって平滑コンデンサCoの両端電圧として、二次巻線N2に誘起される交番電圧のレベルの等倍に対応したレベルの二次側直流出力電圧Eoが生成される。
このようにして生成される二次側直流出力電圧Eoは、負荷に供給される。また、分岐して制御回路1に対して検出電圧として出力される。
【0054】
制御回路1は、入力された二次側直流出力電圧Eoのレベル変化に応じた検出出力を発振・ドライブ回路2に供給する。発振・ドライブ回路2では、入力された制御回路1の検出出力に応じてスイッチング周波数を可変するようにして、スイッチング素子Q1を駆動する。この動作が二次側直流出力電圧に対する定電圧制御動作となる。
【0055】
この図1に示す電源回路は、スイッチング素子Q1のオフ期間TOFFはほとんど変化を示すことが無く、一定とされたうえで、スイッチング素子Q1のオン期間TON(導通角)の変化によりスイッチング周波数が可変するスイッチング周波数制御としての定電圧制御動作となる。
【0056】
上記のようにしてスイッチング素子Q1のスイッチング周波数及び導通角が可変制御されることにより、電源回路における一次側、二次側の共振インピーダンス、電力伝送有効期間が変化し、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1から二次巻線N2側に伝送される電力量、また、二次側整流回路から負荷に供給すべき電力量が変化することになる。これにより、二次側直流出力電圧Eoのレベル変動がキャンセルされるようにして、二次側直流出力電圧Eoのレベルを制御する動作が得られることになる。つまり、二次側直流出力電圧Eoの安定化が図られる。
【0057】
上記のようにして形成される本実施の形態の電源回路の一次側において形成されるスイッチングコンバータ(Q1、Cr、N10、N1、C11)と、先に図10に示したE級コンバータとしての回路構成とを比較してみると、本実施の形態のスイッチングコンバータは、図10の回路から負荷となるインピーダンスZを省略し、チョークコイルL10として機能するチョークコイル巻線N10として絶縁コンバータトランスPITの構造内に巻装するとともに、チョークコイルL11の巻線を絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1(リーケージインダクタンスL1)と置き換えたものとしてみることができる。また、本実施の形態の一次側スイッチングコンバータでは、チョークコイル巻線N10のインダクタンスと一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスとによって一次側並列共振回路を形成し、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1と一次側直列共振コンデンサC11のキャパシタンスとにより一次側直列共振回路を形成する。
このことから、本実施の形態の一次側スイッチングコンバータは、E級共振形のスイッチング動作を行うE級スイッチングコンバータとして形成されている、ということがいえる。そして、この一次側スイッチングコンバータのスイッチング動作により得られるスイッチング出力(交番出力)を、絶縁コンバータトランスPITにおける磁気結合を介するようにして、チョークコイルL11に相当する一次巻線N1から二次巻線N2に伝達し、二次側にて整流を行って直流出力電圧Eoを得るようにされている。つまり、図1に示す実施の形態の電源回路は一次側にE級スイッチングコンバータを備えるDC-DCコンバータとして構成される。
また、本実施の形態のようにして形成される一次側のE級スイッチングコンバータは、チョークコイル巻線N10、及び一次側並列共振コンデンサCrとともに電圧共振形コンバータを形成するスイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)に対して、一次側直列共振回路を形成する一次巻線N1及び一次側直列共振コンデンサC11の直列接続回路を並列接続した複合共振形コンバータ、ソフトスイッチング電源の構成であるともみることができる。
【0058】
また、この図に示す電源回路の一次側には、アクティブクランプ回路10が備えられる。
アクティブクランプ回路10は、補助スイッチング素子Q2,クランプコンデンサCCL,クランプダイオードDD2を備えて形成される。この場合、補助スイッチング素子Q2についてはMOS−FETが選定される。クランプダイオードDD2は、補助スイッチング素子Q2が備えるボディダイオードとされ、アノードが補助スイッチング素子Q2のソースに対して接続され、カソードが補助スイッチング素子Q2のドレインに対して接続される。
また、補助スイッチング素子Q2を駆動するための駆動回路系として、駆動巻線Ng,コンデンサCg,ゲート抵抗Rg、及びゲート−ドレイン間抵抗R1を備えて成る。
なお、以降において、シングルエンド方式の電圧共振形コンバータを形成する側のスイッチング素子Q1については、上記補助スイッチング素子Q2と区別して、メインスイッチング素子Q1ともいうことにする。
【0059】
補助スイッチング素子Q2のドレインはクランプコンデンサCCLの一方の端子と接続されて、クランプコンデンサCCLの他方の端子は、整流平滑電圧Eiのライン(平滑コンデンサCiの正極端子)に対して接続される。また、補助スイッチング素子Q2のソースは、メインスイッチング素子Q1のドレイン、一次側並列共振コンデンサCrの一方の極端子、及び一次巻線N1の巻終わり端部との接続点に対して接続される。
つまり、本実施の形態のアクティブクランプ回路10としては、上記補助スイッチング素子Q2//クランプダイオードDD2の並列接続回路に対して、クランプコンデンサCCLを直列に接続して成るものとされる。そして、このようにして形成される回路を絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1に対して並列に接続して構成される。
【0060】
また、補助スイッチング素子Q2の駆動回路系としては、図示するように、補助スイッチング素子Q2のゲート−ドレイン間に対してゲート−ドレイン間抵抗R1を挿入する。また、補助スイッチング素子Q2のゲートに対して抵抗Rg−コンデンサCg−駆動巻線Ngの直列接続回路を接続する。これら直列接続回路及び抵抗R1により、補助スイッチング素子Q2のための自励発振駆動回路を形成する。
ここでの駆動巻線Ngは、絶縁コンバータトランスPITに巻装されるチョークコイル巻線N10の巻始め端部側に巻線を追加するようにして形成されており、この場合の巻数としては例えば1T(ターン)としている。これにより、駆動巻線Ngには、チョークコイル巻線N10に得られる交番電圧に応じた電圧が発生する。また、この場合には、一次巻線N1と駆動巻線Ngとについては逆極性の電圧が得られるようにされている。なお、実際としては駆動巻線Ngのターン数は1Tであればその動作は保証されるが、これに限定されるものではない。
【0061】
上記アクティブクランプ回路10は、後述するようにして、メインスイッチング素子Q1//一次側並列共振コンデンサCrの並列回路の両端に発生するスイッチング電圧(並列共振電圧)V1について、メインスイッチング素子Q1のオフ時に発生する電圧共振パルスのピークレベルを抑制するように動作する。
【0062】
ここで、図1の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスPITの構造例を、図2に示す。
先ず、図2に示される絶縁コンバータトランスPITは、例えばフェライト材によるE字形状コアCR1、CR2を互いの磁脚が対向するように組み合わせたEE字形コアを備える。
そして、一次側と二次側の巻装部について相互に独立するようにして分割した形状により、例えば樹脂などによって形成される、ボビンBb1が備えられる。このボビンBb1の一方の巻装部に対して一次巻線N1を巻装する。また、他方の巻装部に対して二次巻線N2を巻装する。
このようにして一次側巻線及び二次側巻線が巻装されたボビンBb1を、上記E字形状コアCR1,CR2から成るEE字形コアの中央磁脚が貫通するようにして取り付けることで、一次側巻線及び二次側巻線とがそれぞれ異なる巻装領域により、EE字形コア部分の中央磁脚に巻装される状態となる。
また、上記EE字形コア(CR1,CR2)に対しては、さらにE字形状コアCR3が図示するようにして組み合わされる。この場合には、EE字形コア(CR1,CR2)におけるE字形状コアCR1側の側面に対して、E字形状コアCR3の脚部端面が対向するようにして組み合わされる。
このE字形状コアCR3に対しては、1つの巻装領域を持つボビンBb2が取り付けられ、その巻装領域に対してチョークコイル巻線N10を巻装する。これにより、チョークコイル巻線N10は、E字形状コアCR3の中央磁脚に対して巻装される状態となる。
【0063】
そして、EE字形コア(CR1,CR2)の中央磁脚に対しては、図のようにして、所定長のギャップG1を形成する。これによって、絶縁コンバータトランスPIT自体における一次側と二次側との結合係数kとしては、例えばk≒0.75程度による疎結合の状態を得るようにしている。つまり、従来技術として図14に示した電源回路の絶縁コンバータトランスPITよりも、さらに疎結合の状態としている。なお、ギャップG1は、E字形状コアCR1,CR2の中央磁脚を、2本の外磁脚よりも短くすることで形成することができる。
また、例えばEE字形状コアCR3の中央磁脚を外磁脚よりも短く形成することで、EE字形状コアCR3の中央磁脚の端部と、EE字形状コアCR1との側面部との間にギャップG2を形成するようにされる。この場合のギャップG2のギャップ長は、上記ギャップG1のギャップ長に対して約1/2を設定することとしている。
【0064】
このようにして、図2に示す絶縁コンバータトランスPITは複合トランスとしての構造を採る。つまり、一次巻線N1と二次巻線N2が直流的に絶縁される状態で巻装される基本構成を採ったうえで、一次側に備えられるチョークコイル巻線N10も巻装される構造である。そして、このような図2に示す構造では、先ず、一次巻線N1及び二次巻線N2に電流が流れることによっては、E字形状コアCR1、CR2から成るEE字形コアにて主たる磁路(磁気回路)を形成するが、チョークコイル巻線N10に電流が流れることによっては、E字形状コアCR3側のみにて主たる磁路を形成する。このようにして磁路が形成されることで、一次巻線N1及び二次巻線N2が形成する磁路の磁束と、チョークコイル巻線N10が形成する磁路の磁束が鎖交する度合いは非常に小さくなる。この結果、チョークコイル巻線N10としては、例えば巻線数やギャップG2のギャップ長などに応じた所定のインダクタンスを有するとともに、一次巻線N1及び二次巻線N2に対する磁気結合の度合い(結合係数)は、0とみなしてよい程度の一定以下にまで小さいものとなる。つまり、チョークコイル巻線N10側と一次巻線N1及び二次巻線N2側とではトランス結合は存在しないものとしてみてよい状態を生じている。これにより、一次巻線N1と二次巻線N2とを結合するコンバータトランス機能と、チョークコイル巻線N10によるチョークコイルとしての機能は、それぞれ相互に影響されることなく独立しているものとされる状態で動作する。従って、一次巻線N1、二次巻線N2及びチョークコイル巻線N10が1つのトランス構造内に含まれているのに関わらず、一次側において適正なE級スイッチングコンバータの動作が得られることになる。
【0065】
例えば本願発明としては、絶縁コンバータトランスPITはEE字形コア(CR1,CR2)に対して一次巻線N1及び二次巻線N2を巻装した構造とし、チョークコイルL10は、絶縁コンバータトランスPITに対して独立した部品として構成してもよい。このような構成では、絶縁コンバータトランスPITとチョークコイルL10とで独立した2つの部品が存在する。これに対して、複合トランスとしての絶縁コンバータトランスPITの構造を採ることとすれば、上記部品は1つにまとめられることとなる。これにより、例えば回路基板における部品配置などがこれまでよりも効率的なものとなって、例えば回路基板サイズの小型化などが図られることになる。
【0066】
絶縁コンバータトランスPITの他の構造例について、図3、図4に示す。
図3に示される絶縁コンバータトランスPITは、例えばフェライト材によるE字形状コアCR11、CR12を互いの磁脚が対向するように組み合わせたEE字形コアを備える。なお、このEE字形コアにおける2本の外磁脚及び1本の中央磁脚の断面サイズは同じであるようにされている。
そのうえで、ボビンBb11において形成される2つに分割された巻装部に対して、それぞれ、一次巻線N1、二次巻線N2を巻装し、このボビンBb11をEE字形コアの一方の外磁脚に対して取り付けるようにする。これにより、一次巻線N1、二次巻線N2は、それぞれ異なる巻装領域により、同じ外磁脚に巻装される状態となる。このようにして一次巻線N1、二次巻線N2を巻装したうえで、EE字形コアの中央磁脚に対しては所定長のギャップG11を形成する。これにより、一次巻線N1と二次巻線N2については、所定の結合係数kによる疎結合とされる結合度が得られる。
また、ボビンBb12の巻装部に対してはチョークコイル巻線N10を巻装して、このボビンBb12をEE字形コアの一方の外磁脚に対して取り付ける。これにより、チョークコイル巻線N10は、一次巻線N1及び二次巻線N2が巻装される外磁脚に対して、中央磁脚を対称にして反対側となる外磁脚に巻装される状態となる。
このような構造では、一次巻線N1及び二次巻線N2による主たる磁路は、これら一次巻線N1及び二次巻線N2が巻回される外磁脚と中央磁脚とをつなぐようにして形成され、チョークコイル巻線N10による主たる磁路は、チョークコイル巻線N10が巻回される外磁脚と中央磁脚とをつなぐようにして形成されることから、この場合にも両磁路の磁束が鎖交する度合いは非常に小さくなる。これにより、チョークコイル巻線N10と、一次巻線N1及び二次巻線N2との磁気的結合度(結合係数)はほぼ0とみなしてよく、トランス結合は存在しないとする状態を、図2の場合と同様に得ることができる。
【0067】
また、図4に示される絶縁コンバータトランスPITは、例えば先ず、フェライト材によるU字形状コアCR21、CR22を互いの磁脚が対向するように組み合わせたUU字形コアを形成し、さらにこのUU字形コアに対して、U字形状コアCR23が組み合わされる。
UU字形コア側におけるU字形状コアCR21、CR22の各2本の磁脚が互いに対向する部位には、図示するようにして、所定ギャップ長のギャップG21、G22が形成される。また、UU字形コア(CR21、CR22)におけるU字形状コアCR22の側面部に対して、U字形状コアCR23の2本の磁脚端部が対向する各部位においては、所定のギャップ長のギャップG23,G24を形成するようにしている。
そのうえで、ボビンBb21において形成される2つに分割された巻装部に対して、一次巻線N1と二次巻線N2をそれぞれ巻装し、このボビンBb21をUU字形コア(CR21、CR22)の一方の磁脚に対して取り付ける。これにより、一次巻線N1及び二次巻線N2は、UU字形コア(CR21、CR22)の一方の磁脚において、それぞれ異なる巻装領域において巻装される状態となり、上記ギャップG21、G22のギャップ長の設定により、一次巻線N1と二次巻線N2については、所定の結合係数kによる疎結合とされる結合度が得られる。
また、ボビンBb22に対してチョークコイル巻線N10を巻装し、U字形状コアCR23の一方の磁脚に対して取り付けることで、チョークコイル巻線N10がU字形状コアCR23の一方の磁脚に巻装される状態とする。このとき、一次巻線N1及び二次巻線N2による主たる磁路はUU字形コア(CR21、CR22)にて形成され、チョークコイル巻線N10による主たる磁路はU字形状コアCR23側にて形成され、両磁路の磁束の鎖交はほとんど無いとされる状態が得られる。これにより、図2、図3と同様に、チョークコイル巻線N10と、一次巻線N1及び二次巻線N2との磁気的結合度(結合係数)はほぼ0とみなされ、トランス結合も存在しないとみなしてよい状態を得ることができる。
【0068】
そして、図1に示した回路形態の電源回路について、後述する図5に示される実験結果を得るのにあたり、要部については、下記のように選定した。
先ず、絶縁コンバータトランスPITについては、図2に示した構造を採用することとして、EE字形コア(CR1,CR2)についてEER-35を選定して、ギャップG1については2.2mmのギャップ長を設定した。一次巻線N1及び二次巻線N2の各巻数(ターン数)Tについては、N1=55T、N2=36Tを選定した。これにより、絶縁コンバータトランスPIT自体における一次側と二次側との結合係数kについてはk=0.71が設定される。
また、EE字形状コアCR3についてはER−35を選定して、ギャップG2については、1.1mmとして、インダクタンスL10=1mHとなるようにしてチョークコイル巻線N10を巻装した。
なお、上記EERのコアは、よく知られているように、製品としてのコアの型式、規格の1つであり、この型式には、EEのあることも知られている。本願においてEE字形という場合には、断面がEE字形状であることに応じて、EER、EEの何れのタイプについてもEE字形のコアであるとして扱うものとする。
また、一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスについてはCr=1500pFを選定した。また、一次側直列共振コンデンサC11のキャパシタンスは、C11=0.027μFを選定した。クランプコンデンサCCLのキャパシタンスについては、CCL=0.068μFを選定した。
対応負荷電力は、最大負荷電力Pomax=200W、最小負荷電力Pomin=0W(無負荷)とし、二次側直流出力電圧Eoの定格レベルは175Vとしている。
【0069】
ここで、図1に示す電源回路における絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1とチョークコイルL10とについてスイッチング周期でみた場合には、並列接続の関係にあることと等価であるとみることができる。チョークコイル巻線N10から発生する磁束は、この場合には、絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2とは結合することがない。このことから、絶縁コンバータトランスPITの一次側におけるリーケージインダクタンスの成分は増加するものとしてみることができる。
このために、絶縁コンバータトランスPITそのものとしての結合係数kとしては、前述したように、例えばk=0.71程度が設定されるのであるが、上記のようにして、絶縁コンバータトランスPITの一次側のリーケージインダクタンスが増加することで、電源回路内における絶縁コンバータトランスPITの総合的な結合係数としては、0.71よりも低い値が得られることになる。つまり、電源回路としてみた、絶縁コンバータトランスPITの一次側と二次側の間の総合的な結合度としては、絶縁コンバータトランスPITの構造自体による結合係数kに対して、より低く設定されることになる。この結合度についての数値を、ここでは、総合結合係数ktとして扱う。
本実施の形態としては、例えば、チョークコイル巻線N10について、先に説明した所定のインダクタンス値を設定することで、総合結合係数ktについて、0.7より小さいとされる疎結合とみなされる所定値を設定することとしている。この場合の総合結合係数ktの設定要素としては、絶縁コンバータトランスPITの構造自体による結合係数kと、チョークコイル巻線N10のインダクタンスであることになる。
【0070】
また、本実施の形態において、図1に示す電源回路の一次側並列共振回路の共振周波数fo1(p)については、次のようにして扱うものとする。
次に説明する図5の波形図に示されるように、図1に示す電源回路における一次側のスイッチングコンバータの動作としては、E級スイッチングコンバータ(メインスイッチング素子Q1)とアクティブクランプ回路10のスイッチング動作が複合的に行われているものとしてみることができる。また、このことは、一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスと、一次側のチョークコイル巻線N10のインダクタンスL10とにより形成されるものとする一次側並列共振回路(ここでは一次側並列共振回路aという)と、クランプコンデンサCCLとチョークコイル巻線N10のインダクタンスL10とにより形成されるものとする並列共振回路(ここでは一次側並列共振回路bという)とが、一次側において複合的に動作しているものとして考えることができる。そのうえで、本実施の形態の回路形態では、チョークコイル巻線N10と一次巻線N1とは、スイッチング周期程度の高周波とされる交流としては並列接続の関係にあるものとして等価的にみることができる。従って、実際において、一次側並列共振回路a及び一次側並列共振回路bを形成するインダクタンスは、チョークコイル巻線N10と一次巻線N1との並列接続により得られる合成インダクタンスであるとして考えるべきことになる。ちなみに、チョークコイル巻線N10のインダクタンスL10は、前述のように1mH程度が設定され、一次巻線N1自体のインダクタンス(リーケージインダクタンス)については、350μH程度が設定される。このことによると、一次側並列共振回路bの共振周波数fo1bは約38kHzとなる。これに対して、一次側並列共振回路aの共振周波数fo1aは約255kHzとなる。
ただし、一次側並列共振コンデンサCrとクランプコンデンサCCLのキャパシタンスを比較すると、例えばCCL=0.068μFであり、Cr=1500pFであることから、クランプコンデンサCCLは、一次側並列共振コンデンサCrに対して非常に大きい値を有していることになる。このことは、一次側スイッチングコンバータの動作において、一次側並列共振回路aと一次側並列共振回路bとでは、クランプコンデンサCCLのキャパシタンスを有する一次側並列共振回路bのほうが支配的になることを意味している。このことから、一次側並列共振回路全体としての並列共振周波数fo1(p)としては、上記38kHz程度若しくは、これより若干高い40kHz前後としてみるべきことになる。
【0071】
また、一次巻線N1と一次側直列共振コンデンサC11とを直列接続することで形成される一次側直列共振回路の共振周波数fo1(s)については、総合結合係数ktに応じた一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1と、一次側直列共振コンデンサC11のキャパシタンス(0.015μF)とにより設定されるものとなり、約69.5kHzとなる。このことから、一次側並列共振回路の共振周波数fo1(p)と、一次側直列共振回路の共振周波数fo1(s)の大小関係は、fo1(p)<fo1(s)で表されることになる。
【0072】
図5の波形図は、上記構成による図1の電源回路における要部の動作を、スイッチング素子Q1のスイッチング周期により示しており、図5(a)には、最大負荷電力Pomax=200W/交流入力電圧VAC=100V時における、スイッチング電圧V1、入力電流I1、クランプ電流IQ2、電流Icr、スイッチング電流IQ1、一次巻線電流I2、一次側直列共振電圧V2、二次側交番電圧V3が示される。図5(b)には、最大負荷電力Pomax=200W/交流入力電圧VAC=230V時における、上記各波形が示されている。
【0073】
入力電流I1は、平滑コンデンサCiから一次側スイッチングコンバータに流入しようとする電流である。入力電流I1がスイッチング素子Q1側に流入する経路である、平滑コンデンサCoの正極端子とスイッチング素子Q1のドレイン側との間のラインには、一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1よりも大きなインダクタンスが設定されたチョークコイル巻線N10が挿入されていることで、入力電流I1は、チョークコイル巻線N10を介するようにして流れることになる。このために、入力電流I1は平均値I0の脈流となる。このような波形の入力電流I1は、直流としてみることができる。つまり、本実施の形態では、平滑コンデンサCiからスイッチングコンバータに流入する電流は直流となる。チョークコイル巻線N10を介して流れた入力電流I1は、一次巻線N1−一次側直列共振コンデンサC11の直列回路と、スイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)、一次側並列共振コンデンサCrに対して分流するようにして流れる。
【0074】
スイッチング電圧V1は、スイッチング素子Q1のドレイン−ソース間の電圧であり、スイッチング電流IQ1は、スイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)に流れる電流となる。スイッチング電圧V1及びスイッチング電流IQ1によっては、スイッチング素子Q1のオン/オフタイミングが示される。1スイッチング周期は、スイッチング素子Q1がオンとなるべき期間TONと、オフとなるべき期間TOFFとに分けられ、スイッチング電圧V1は、期間TONにおいては0レベルで、期間TOFFにおいて電圧共振パルスが得られる波形となる。このスイッチング電圧V1としての電圧共振パルスは、本来は、一次側スイッチングコンバータの動作が電圧共振形であることにより、正弦波状の共振波形として得られる。しかし、本実施の形態では、アクティブクランプ回路10が後述するようにして動作することで、電圧共振パルスのピークが抑制される波形形状となる。
【0075】
スイッチング電流IQ1は、期間TOFFにおいては0レベルであり、この期間TOFFが終了して期間TONが開始されてターンオンタイミングに至ると、先ず、ボディダイオードDDを流れることで負極性の波形となり、続いてドレインからソースに流れることで正極性に反転する波形となる。このようなスイッチング電流IQ1の波形は、適正にZVS(Zero Volt Switching)、ZCS(Zero Current Switching)が行われていることを示している。また、このスイッチング電流IQ1は、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1に得られるリーケージインダクタンスL1を介してメインスイッチング素子Q1に流れるものとしてみることができる。
【0076】
一次巻線電流I2は、スイッチング素子Q1のスイッチング動作に応じて一次巻線N1に流れる電流であり、この場合には一次巻線電流I2は、一次側直列共振回路の出力電流としてみることができる。つまり、スイッチング素子Q1がオン/オフ動作を行うことにより、期間TOFFのスイッチング電圧V1である電圧共振パルスが一次側直列共振回路を形成する一次巻線N1、一次側直列共振コンデンサC11の直列接続回路に印加される。これにより一次側直列共振回路が共振動作を行い、一次巻線電流I2は、スイッチング周期に応じた正弦波状の交番波形となる。また、ここでの一次側直列共振電圧V2は、一次巻線N1の両端電圧として示している。この一次側直列共振電圧V2は、本来は、スイッチング周期に応じた正弦波状の交番波形となるものであるが、アクティブクランプ回路10が動作することによって、期間TOFFにおいては、スイッチング電圧V1とほぼ同等のレベルにてクランプされる波形となる。
【0077】
また、二次側交番電圧V3は、二次側における整流ダイオードDo2の両端電圧、若しくは二次巻線N2の巻き終わり端部と二次側アース間の電位となるもので、二次側整流回路の動作タイミングを示している。二次巻線N2の誘起電圧の正/負で反転するのに応じて、整流ダイオードDo1,Do4の組と整流ダイオードDo2、Do3の組に対して交互に順方向電圧が印加され、これに応じて整流ダイオードDo1,Do4の組と、整流ダイオードDo2、Do3の組が交互に導通する。このようなタイミングの整流動作に応じて、二次側交番電圧V3は、整流ダイオードDo1,Do4の導通期間に応じて二次側直流出力電圧Eoに応じた絶対値レベルによりクランプされた交番波形となる。
【0078】
また、この図5(a)(b)の波形図において、アクティブクランプ回路10の動作は、1スイッチング周期内において遷移する、mode1〜5までの5段階の動作モードとして示される。
先ず、メインスイッチング素子Q1がオンとなる期間TONにおいてはmode1としての動作が得られる。このとき、補助スイッチング素子Q2は、この期間TONにおいてはオフ状態にある。つまり、mode1は、補助スイッチング素子Q2がオフ状態となるように制御されるモードである。
【0079】
このmode1(期間TON)において、スイッチング電流IQ1は、上記もしたように、ターンオン直後において負極性によりクランプダイオードDD2に流れた後に反転して正極性によりメインスイッチング素子Q1のソースからドレインの方向に流れる。
ここで、スイッチング電流IQ1が負極性により流れる期間は、直前の期間td2の終了を以て、一次側並列共振コンデンサCrにおける放電が終了することで、クランプダイオードDDが導通し、クランプダイオードDD→チョークコイル巻線N10を介してスイッチング出力電流IQ1を流すことで、電源側に電力を回生するモードとなる。この電力回生の動作を終了して、スイッチング電流IQ1は、平滑コンデンサCiからの入力電流I1が供給されるようにして、メインスイッチング素子Q1のソース−ドレインを流れるようにされる。
【0080】
上記mode1に対応する期間TONが終了して、期間TOFFに至ったとされると、先ず、mode2に対応する期間td1が開始される。
この期間td1では、メインスイッチング素子Q1がターンオフすることで、一次巻線N1に流れていた電流は、図5に示す電流Icrとして、一次側並列共振コンデンサCrを充電するようにして流れることになる。このときに、一次側並列共振コンデンサCrに流れる充電電流は、この図では負極性によりパルス的に現れる波形となるが、これは部分共振モードとしての動作とされる。また、このときには、メインスイッチング素子Q1に対して並列に一次側並列共振コンデンサCrが接続されていることで、メインスイッチング素子Q1はZVSによりターンオフされる。
【0081】
続いては、補助スイッチング素子Q2がオン状態となるように制御されると共に、メインスイッチング素子Q1がオフ状態にあるように制御される期間となり、これは、図5に示す期間TON2に相当する。
この期間TON2は、アクティブクランプ回路10の動作期間であり、先ずmode3としての動作を行った後にmode4としての動作を行うようにされる。
【0082】
先のmode2の動作では、一次巻線N1とチョークコイル巻線N10の接続点側から一次側並列共振コンデンサCrに流れる電流Icrによって、一次側並列共振コンデンサCrに対する充電が行われるが、これによりmode2に続くmode3の動作としては、一次巻線N1に得られている電圧レベル(V2)が、初期時(期間TON2開始時)におけるクランプコンデンサCCLの両端電圧レベルに対して同電位もしくはそれ以上となる。これにより、補助スイッチング素子Q2に並列接続されるクランプダイオードDD2の導通条件が満たされて導通することで、クランプダイオードDD2→クランプコンデンサCCLの経路で電流が流れるようにされ、クランプ電流IQ2としては、図5に示す期間TON2開始時以降において、負方向から時間経過に従って0レベルに近づく鋸歯状波形が得られることになる。
先に記載したように、例えばクランプコンデンサCCLのキャパシタンスはCCL=0.068μFであるのに対して、一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスはCr=1500pFであり、一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスのほうが、クランプコンデンサCCLのキャパシタンスと比較して相当に小さい。このようなクランプコンデンサCCLと一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスの選定とすれば、mode3としての動作によっては、大部分の電流がクランプ電流IQ2としてクランプコンデンサCCLに対して流れるようにされ、一次側並列共振コンデンサCrに対してはほとんど流れない。この結果、この期間TON2時における一次側並列共振コンデンサCrに対する充電電流量が低減されることとなって、スイッチング電圧V1における電圧共振パルスの傾きは緩やかとなるようにされ、そのピークレベルが抑制されることになる。即ち、電圧共振パルスに対するクランプ動作が得られる。
【0083】
なお、図1に示す構成の下で、アクティブクランプ回路10を備えない場合には、期間TOFFの全期間において充放電電流が流れることで、例えば、図5(a)のスイッチング電圧V1の波形において破線により示すように、電圧共振パルスは正弦波状の急峻な波形となり、このピークレベルは、アクティブクランプ回路10を備える場合より上昇する。
【0084】
そして、期間TON2において上記mode3が終了すると引き続いてmode4としての動作に移行する。
このmode4開始時は、図5に示すクランプ電流IQ2が負の方向から正方向に反転するタイミングとされる。このタイミングでは、補助スイッチング素子Q2は、このクランプ電流IQ2が負極性から正極性に反転するタイミングで、ZVS及びZCSによりターンオンする。
このようにして補助スイッチング素子Q2がオンとなる状態では、このときに得られる一次側並列共振回路の共振作用によって、一次巻線N1→クランプコンデンサCCLを介して、補助スイッチング素子Q2のドレイン→ソースにクランプ電流IQ2が流れ、図5に示すように、正極性により増加していく波形が得られる。
【0085】
ここで、図示していないが、補助スイッチング素子Q2のゲートに印加される電圧は、駆動巻線Ngに誘起された電圧とされ、これは矩形波状のパルス電圧となる。
そして、期間td1及び期間td2は、メインスイッチング素子Q1及び補助スイッチング素子Q2が共にオフとなるスレッシュホールド期間とされ、上記ゲート流入電流が流れることによってこのスレッシュホールド期間が保持されるものである。
【0086】
上記mode4の動作は、補助スイッチング素子Q2がターンオンしていることで、これまで期間TOFFにおいて0レベルとされていた、補助スイッチング素子Q2の両端電圧V2が立ち上がりを開始するタイミングを以て終了するようにされ、続いては、期間td2におけるmode5としての動作に移行する。
mode5では、一次側並列共振コンデンサCrからチョークコイル巻線N10を介して平滑コンデンサCiの側に放電電流を流す動作が得られる。つまり部分共振動作が得られる。この部分共振動作としての放電は、図5では、一次側並列共振コンデンサCrに流れる電流Icrとして、期間td2のみにおいて正極性の方向で流れるパルス状の波形として示されている。
このときにメインスイッチング素子Q1にかかるスイッチング電圧V1の電圧共振パルスは、上述もしたように一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスが、クランプコンデンサCCLのキャパシタンスより小さいことによって、その傾きが大きいものとなり、図示するようにして、急速に0レベルに向かって下降するようにして立ち下がっていく。
そして、補助スイッチング素子Q2は、上記mode4が終了してmode5が開始されるタイミングでターンオフを開始するが、このときには、上記したようにして電圧共振パルス(スイッチング電圧V1)が或る傾きを有して立ち下がることで、ZVSによるターンオフ動作となる。
アクティブクランプ回路10は、このようなmode1〜5の動作を1スイッチング周期ごとに繰り返す。
【0087】
図1に示す電源回路の定電圧制御動作は、前述もしたように、メインスイッチング素子Q1がオフとなる期間TOFF(補助スイッチング素子Q2のオン期間)は一定で、オンとなる期間TONの可変によりスイッチング周波数fsを可変変制御するスイッチング周波数制御となる。スイッチング周波数fsは、負荷変動に対しては軽負荷の傾向となるのに応じて高くなっていく傾向で変化し、交流入力電圧変動に対しては交流入力電圧VACが上昇するのに応じて高くなっていく傾向で変化する。このことは、定電圧制御動作が、軽負荷傾向及び交流入力電圧の上昇傾向に応じて二次側直流出力電圧Eoが上昇するのに応じては、スイッチング周波数fsを高く制御する動作であることを示している。
【0088】
上記スイッチング周波数fsが定電圧制御のために必要とする制御範囲(必要制御範囲)については、交流入力電圧VAC=100V時では、最大負荷電力Pomax=200W〜最小負荷電力Pomin=0Wの範囲に対してΔfs=16.4kHzとなる。また、交流入力電圧VAC=230V時では、最大負荷電力Pomax=200W〜最小負荷電力Pomin=0Wの範囲に対してΔfs=10.9kHzとなる。
【0089】
AC→DC電力変換効率(ηAC→DC)は、重負荷の傾向となるのに従って増加し、また、交流入力電圧VACが高くなるのに応じて増加する傾向であった。
最大負荷電力Pomax=200W時のAC→DC電力変換効率(ηAC→DC)として、交流入力電圧VAC=100V時ではηAC→DC=92.0%、交流入力電圧VAC=230V時ではηAC→DC=91.0%との測定結果が得られた。
【0090】
また、電圧共振パルス(V1)のピークレベル(V1p)は、重負荷の傾向となってスイッチングコンバータに流れる電流の増加に伴い、一次側並列共振コンデンサCrに充電される電流量が増加するのに応じて上昇する特性になる。電圧共振パルス(V1)のピークレベル(V1p)が最大値となる最大負荷電力Pomax=200W時の特性は、図5にも示したように、交流入力電圧VAC=100V時ではV1p≒300V、交流入力電圧VAC=230V時ではV1p≒700Vとなる測定結果が得られている。このピークレベル(V1p)の特性は、アクティブクランプ回路10を備えない場合と比較して、約1/2にまで低減されたものとなっている。
このような電圧共振パルス(V1)のピークレベルV1pの特性とされることで、メインスイッチング素子Q1については、900Vの耐圧品を選定することができる。また、補助スイッチング素子Q2についても同様に900Vの耐圧品を選定することができる。例えば、図1の電源回路からアクティブクランプ回路10を省略した場合には、スイッチング素子Q1には1800V程度の耐圧品を選定する必要がある。つまり、本実施の形態では、メインスイッチング素子Q1(及び補助スイッチング素子Q2)、さらに、メインスイッチング素子Q1に並列接続される一次側並列共振コンデンサCrなどついて、より低耐圧の部品を選定できる。
このようにして、各部品について低圧品を選定できることで、これら部品素子の特性が向上する。例えばメインスイッチング素子Q1について、スイッチング特性がより良好なものとなるため、電力損失の低減や回路としての信頼性の向上が図られる。また、低耐圧品とされることで、部品サイズも小型となるので、回路基板の小型軽量化の促進を図ることも可能になる。また、部品にかかるコストも削減される。
また、本実施の形態のアクティブクランプ回路10による電圧クランプの動作では、例えば、先に図12及び図13により説明した電圧クランプ法のようにして、リンギングの発生や、インピーダンス整合などの問題は生じることが無く、実用的かつ有効に、スイッチング電圧(電圧共振パルス)の抑制効果を得ている、といことがいえる。
【0091】
ところで、本実施の形態の電源回路との比較として、例えば、図14に示したような従来例としての回路構成の電源回路に、本実施の形態と同様のアクティブクランプ回路10の構成を付加した場合には、軽負荷傾向に応じてスイッチング周波数fsが高くなるように制御されると共に、1スイッチング周期内における期間TOFF,TONのデューティ比については、軽負荷の傾向となるのに従って、期間TOFFのほうが期間TONに対して大きくなるようにして変化することが実験により確認されている。これは、アクティブクランプ回路10により電圧共振パルス(V1)のピークレベルが抑制される分、その導通角が拡大するようにして変化する動作を生じることに依る。
一次側並列共振コンデンサCrとクランプコンデンサCCLとのキャパシタンスについては、一次側並列共振コンデンサCrに対してクランプコンデンサCCLのほうを相当に大きく選定するが、電圧共振パルスの抑制の度合いは、この一次側並列共振コンデンサCrとクランプコンデンサCCLのキャパシタンスの差を広げるほど大きくなる。しかし従来の場合には、これに伴って、電圧共振パルス(V1)の導通角が拡大する度合いも大きくなる。1スイッチング周期内における電圧共振パルス(V1)の導通角、つまりメインスイッチング素子Q1がオフとなる期間(TOFF)が拡大することによっては、その分メインスイッチング素子Q1のオン期間(TON)が短縮されることになる。一定以上にオン期間(TON)が短縮されると、メインスイッチング素子Q1におけるスイッチング損失が増加する。
これに対して、本実施の形態では、E級スイッチング動作のスイッチングコンバータに対してアクティブクランプ回路10を組み合わせた構成としたことで、前述もしたように、スイッチング周波数fsの可変制御は、スイッチング素子Q1の期間TOFFを一定としたうえで期間TONを可変するものとなる。つまり、期間TOFFの拡大に伴う期間TONの縮小は生じない。このことから、本実施の形態としては、スイッチング損失の低減が図られることになるものであり、この結果として、先に記載したような良好なAC→DC電力変換効率(ηAC→DC)の特性が得られているものである。
また、上記のようにしてスイッチング素子Q1の期間TOFFが一定となるスイッチング周波数制御の動作となることで、発振・ドライブ回路2を構成するスイッチング駆動用ICについて、安価な汎用のものを選定することが可能となり、例えばコストダウンが図られる。あるいはスイッチング駆動用ICの選択範囲もひろがる。例えば従来の図15の電源回路のようにして、1スイッチング周期内の期間TONと期間TOFFの時比率を可変するPWM制御となる場合には、上記した汎用のICでは対応しきれずに、異常発振に近い動作となる。このために、図15の回路の実際においては、PWM制御に対応可能なスイッチング駆動用ICを採用している。
【0092】
さらに、図1に示される本実施の形態の電源回路と、従来例として図14に示した電源回路とを比較してみると次のことがいえる。
一般的に、一次側に電圧共振形コンバータを備える電源回路は、負荷電力の制御範囲が狭く、また、軽負荷時におけるZVSが維持できないために、そのままでは実用化は不可能であると考えられている。そこで、図14に示したように、一次側電圧共振形コンバータに対して二次側直列共振回路を設け、二次側整流回路として倍電圧半波整流回路を形成した電源回路を構成して本願発明者が実験を行ったところ、それまでの電圧共振形コンバータを備える電源回路よりも、実現化に近づく特性が得られることが確認された。
しかしながら、図14の電源回路では、図15により説明したように、中間負荷時において、スイッチング素子Q1のオフ期間(TOFF)が終了しないうちにスイッチング素子Q1に正極方向(この場合はドレイン→ソース方向)に電流が流れてZVSの動作が得られないという異常動作を生じる。このために、図14の電源回路の構成であっても、依然として実用化は困難な状況であった。
【0093】
これに対して、図1に示した実施の形態の電源回路では、対応負荷電力の全領域にわたってZVS動作が得られることとなった。つまり、中間負荷時における異常動作は解消され、対応負荷電力(Pomax=200W〜Pomin=0W)の全範囲にて適正なスイッチング動作を得ている。E級スイッチングコンバータの基本構成は、1石のスイッチング素子と並列共振回路とを含んでいるので、本実施の形態の電源回路は、シングルエンド方式の電圧共振形コンバータの回路構成を一部に備えるスイッチングコンバータとして、実用化が容易に実現可能となっている、ということがいえる。
【0094】
図14に示される電源回路の中間負荷時の異常動作は、電圧共振形コンバータに二次側直列共振回路を備えた形式の複合共振形コンバータを構成した場合に生じやすいことが確認されている。これは、電圧共振形コンバータを形成する一次側並列共振回路と、二次側直列共振回路(整流回路)とが同時に動作することによる相互作用が主たる原因となっている。
そこで、本実施の形態の場合には、上記した中間負荷時の異常動作は、一次側電圧共振形コンバータと二次側直列共振回路とを組み合わせた回路構成であることがそもそもの要因であると捉えることとした。
そこで先ず、本実施の形態としては、一次側スイッチングコンバータとして、電圧共振形コンバータに代えて、E級スイッチングコンバータを適用した構成のものを備えることとした。
また、総合結合係数kt=0.65程度を設定して、絶縁コンバータトランスPITの一次側と二次側の結合度を従来よりも低下させた。これにより、一次側のスイッチングコンバータの動作と、二次側整流回路の整流動作(スイッチング動作)との相互作用を希薄化した。
このような構成の電源回路とした結果、中間負荷時においてZVSが得られなくなる異常動作が解消されるという実験結果が得られた。具体的には、例えば図15(b)に示した、期間TOFFの終了タイミングの前後で正極性のスイッチング電流IQ1が流れる現象が観察されなくなり、通常のZVSに対応するスイッチング電流IQ1の波形が得られることになる。
そして、図1に示した実施の形態の電源回路の中間負荷時における異常動作の解消は、AC100V系の商用交流電源に対応する交流入力電圧VACの範囲だけではなく、AC200V系の商用交流電源に対応する交流入力電圧VACの範囲の条件でも得られている。
【0095】
また、図14に示す電源回路では、平滑コンデンサCiからスイッチングコンバータに流入する電流は、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1を経由してスイッチング素子Q1、一次側並列共振コンデンサCrに流入する。この場合、平滑コンデンサCiからスイッチングコンバータに流入する電流は一次巻線電流I1となるものであり、スイッチング周期による比較的高い周波数となる。つまり、平滑コンデンサCiに対しては商用交流電源周期に対して高周波で充放電電流が流れる。
平滑コンデンサCiとしての部品素子には高耐圧が要求されることなどに応じてアルミ電解コンデンサがしばしば採用される。アルミ電解コンデンサは、他の種類のコンデンサなどと比較して、高周波で動作させると静電容量が低下すると共に損失角の正接が増加しやすい性質を有している。このために、平滑コンデンサCiに使用するアルミ電解コンデンサには、ESR(等価直列抵抗)が低く、また、許容リップル電流が多い特殊品を選定する必要がある。また、平滑コンデンサCiとしての素子のキャパシタンスについても相応に大きな値を選定する必要が出てくる。例えば図14の電源回路の構成で、本実施の形態と同等の最大負荷電力Pomax=200Wに対応させる場合には、1000μF程度若しくはこれより若干小さいキャパシタンスを選定することになる。このようなアルミ電解コンデンサは、汎用のアルミ電解コンデンサよりも高価であり、また、キャパシタンスの増加に応じた部品価格の上昇も含めてコスト的に不利となる。
【0096】
これに対して図1に示した本実施の形態の電源回路は、平滑コンデンサCiからスイッチングコンバータに流入する電流は、チョークコイル巻線N10を介してスイッチング素子Q1、一次側並列共振コンデンサCr、一次側直列共振回路(N1−C11)に流れるようになっている。このために、平滑コンデンサCoからスイッチングコンバータに流入する電流は、図5の入力電流I1としても示されるように直流となる。このようにして、平滑コンデンサCiからスイッチングコンバータに流入する電流が直流となることで、本実施の形態では、上記した静電容量の低下や損失角の正接の増加の問題は生じることが無く、従って、平滑コンデンサCiとして汎用のアルミ電解コンデンサを選定することができる。また、平滑コンデンサCiとしての素子のキャパシタンスについても、図14の回路の場合よりも低い値を選定できる。図1の回路の実際としては、680μF、若しくはこれより小さい値のキャパシタンスを選定できる。このようにして、本実施の形態では、平滑コンデンサCiについてのコストダウンを図ることが可能になる。
【0097】
また、本実施の形態の電源回路では、絶縁コンバータトランスPITの一次側と二次側との総合結合係数ktとして0.65程度を設定している。この総合結合係数ktは、絶縁コンバータトランスPIT自体の結合係数kと、一次巻線N1とチョークコイルL10とが等価的に並列接続されることによる一次巻線N1のリーケージインダクタンスの見かけ上の増加分とにより得られるものである。
例えば、図14に示した電源回路の構成のもとで、0.65程度の総合結合係数kを得ようとすれば、絶縁コンバータトランスPIT自体の結合係数ktについて0.65程度が設定されるようにすることになる。このためには、例えば、絶縁コンバータトランスPITが図2などに示した構造を採る場合には、ギャップGについて本実施の形態の場合よりも拡大してコアを形成すればよい。しかし、ギャップ長の拡大は渦電流による損失(渦電流損)を増加させる要因となるので、いたずらにギャップ長を拡大していくことは好ましいことではなく、条件などによっては、渦電流損による電力損失が無視できなくなる場合も出てくる可能性がある。
本実施の形態の場合には、上記のようにして一次巻線N1のリーケージインダクタンスの増加分により、0.65程度の総合結合係数ktの値を得ていることで、絶縁コンバータトランスPIT自体の結合係数kについては0.75程度までの低下で抑えることができている。そして、これに伴って、絶縁コンバータトランスPITのコアに形成するギャップGの長さについては、渦電流損について特に考慮する必要はない程度の拡大に抑えることができる。
【0098】
上記のようにして、本実施の形態の電源回路では、絶縁コンバータトランスPITにおける渦電流損失の増加を抑えるように考慮して、絶縁コンバータトランスPIT自体の結合係数kについては、総合結合係数よりも高い値を設定しているが、例えば従来としての図14の電源回路が結合係数k=0.80〜0.85程度であることと比較すれば、相当に低い値を設定している。
このように、本実施の形態の絶縁コンバータトランスPIT自体が有する結合係数kにまで疎結合の状態とすることは、従来の電圧共振形コンバータでは、一次側から二次側への電力伝送ロスの増加による電力変換効率の低下を招くということを理由に、これまで行われてこなかったという背景がある。
また、直流入力電圧がスイッチングコンバータに流入するラインに対して、比較的大きいインダクタンスのチョークコイルL10を挿入することによる電力損失も相応に生じる。
しかしながら、本実施の形態では、先にも説明したように、対応負荷電力のほぼ全領域にわたって、良好とみてよい電力変換効率特性を得ている。
【0099】
本実施の形態において高電力変換効率が得られているのは、下記のような理由によるものとされる。
先ず、電圧共振形コンバータを備える電源回路の構成は、本来、電力変換効率に関しては有利であることが知られている。特に、電圧共振形コンバータとしてシングルエンド方式を採用してスイッチング素子を必要最小限の1石とすることで、例えばハーフブリッジ結合方式、フルブリッジ結合方式、プッシュプル方式などの複数のスイッチング素子を備える構成と比較してスイッチング損失は減少し、このことが電力変換効率の向上要因となる。
本実施の形態のE級スイッチングコンバータも、一次側並列共振回路と1石のスイッチング素子が組み合わされた構成を含むことで、シングルエンド方式の電圧共振形コンバータの構成を含んでいるということがいえ、上記したような電圧共振形コンバータとしての良好な電力変換効率特性を引き継いでいる。
【0100】
そのうえで、本実施の形態としては、上記もしているように中間負荷時における異常動作を解消して、適正なZVS動作が得られるようにしている。この異常動作の現象としては、図15(b)に示したように、ターンオン(期間TON開始)より以前のタイミングでスイッチング素子Q1がオンとなって、正極性のスイッチング電流IQ1がソース−ドレイン間を流れる動作となるのであるが、このようなスイッチング電流IQ1の動作によっては、スイッチング損失を増加させる。本実施の形態では、異常動作に対応するスイッチング電流IQ1の動作が生じないことで、これによるスイッチング損失の増加も無くなり、このことが、電力変換効率の向上要因の1つとなっているものである。
【0101】
また、図5に示されるスイッチング電流IQ1の波形は、ターンオフ時におけるスイッチング電流IQ1のレベルが抑制されているということを意味する。ターンオフ時のスイッチング電流IQ1のレベルが抑制されれば、その分、ターンオフ時のスイッチング損失は低減され、電力変換効率が向上することになる。
このようなスイッチング電流IQ1の波形は、一次側スイッチングコンバータについてE級スイッチング動作としたことで得られるものである。
【0102】
また、前述したように、本実施の形態の電源回路の定電圧制御動作が、スイッチング素子Q1のオフ期間(TOFF)を固定としたスイッチング周波数制御であることも、この場合には、電力変換効率向上の大きな要因となっている。
【0103】
また、これまでの説明から、本実施の形態の電源回路としては、AC100V系とAC200V系との何れの商用交流電源入力(例えばVAC=85V〜264V)にも対応して動作する、いわゆるワイドレンジ対応化も図られていることになる。
つまり、前述したように、本実施の形態の電源回路における定電圧制御のために必要なスイッチング周波数fsの制御範囲(Δfs)は、AC100V系に対応する交流入力電圧VAC=100V時ではΔfs=16.4kHz、AC200V系に対応する交流入力電圧VAC=230V時ではΔfs=10.9kHzであり、非常に狭いものとなっている。また、これらの制御範囲(Δfs)としての実際の周波数値は、現状におけるスイッチング駆動用IC(発振・ドライブ回路2)が対応するスイッチング周波数の可変範囲内に充分に収まるものとなっている。つまり、本実施の形態の電源回路は、AC100V系とAC200V系のいずれの商用交流電源入力の条件であっても、スイッチング周波数制御による定電圧化が可能となっている。
さらに、本実施の形態の電源回路では、AC100V系とAC200V系の何れの商用交流電源入力の条件においても、最大負荷電力時において、91%以上の高い電力変換効率特性が得られている。
【0104】
そして、上記した特性を有したうえで、本実施の形態としては、AC100V系とAC200V系の両者の商用交流電源入力の条件において、中間負荷時における異常動作が解消されている。
また、アクティブクランプ回路10を備えてスイッチング電圧V1のピークレベルの抑制を図ることで、AC200V系の商用交流電源が入力される条件に対しても、要部の部品については、例えば900V程度の実用範囲内の耐圧品を選定できる。
このようにして、本実施の形態の電源回路はワイドレンジ対応としての実用が可能となる。
【0105】
本実施の形態の他に、共振形コンバータを備えたスイッチング電源回路として、ワイドレンジ対応を実現する構成としては、例えばAC100V系/200V系の商用交流電源入力に応じて、一次側スイッチングコンバータの構成をハーフブリッジ/フルブリッジで切り換える構成を採ることが知られている。あるいは、商用交流電源ACについての整流動作を行う整流回路の動作を、AC100V系/200V系の商用交流電源入力に応じて、全波整流/倍電圧整流で切り換える構成とすることが知られている。
【0106】
しかしながら、AC100V系とAC200V系とで回路構成の切り換えを行う場合には、以下のような問題点が生じる。
例えば、このような商用交流電源レベルに応じた切り換えには、入力電圧についての閾値(例えば150V)を設定し、これを上回った場合はAC200V系、下回った場合はAC100V系に対応した回路切換を行うようにされるが、単純にこのような切り換えのみを行っていたのでは、例えばAC200V系の入力時の瞬間停電等による一時的な交流入力電圧の低下に対しても、AC100系に対応した切り換えが行われてしまうおそれがある。つまり、例えば整流動作の切り換え構成を例に挙げれば、AC200V系の入力であるにも関わらず、AC100V系であるとして倍電圧整流回路に切り換えられてしまい、これによってスイッチング素子などが耐圧オーバーとなって破壊される可能性がある。
【0107】
そこで、実際には、上記のような誤動作が生じないようにするために、メインとなるスイッチングコンバータの直流入力電圧だけではなく、スタンバイ電源側のコンバータ回路の直流入力電圧も検出する構成を採るようにされる。
しかしながら、このようにしてスタンバイ電源側のコンバータ回路を検出するということは、基準電圧と入力電圧との比較を行うための例えばコンパレータIC等を実装することになるが、これにより部品点数が増加して、回路製造コストの増加、及び回路基板サイズの大型化が助長されてしまうことになる。
【0108】
また、このように誤動作防止を目的としてスタンバイ電源側のコンバータの直流入力電圧を検出するということは、メイン電源の他にスタンバイ電源を備える電子機器でなければ、実際に使用することができないということになる。つまり、電源を実装可能な電子機器の種類が、スタンバイ電源を備えたものに限定されるわけであり、それだけ利用範囲が狭くなっているという問題も生じる。
【0109】
また、ハーフブリッジ/フルブリッジの切り換えを行う構成では、フルブリッジ構成を可能とするためにスイッチング素子を少なくとも4つ備える必要がある。つまり、切り換えが不要であればハーフブリッジでよく、スイッチング素子が2つで済むものを、この場合はさらに2つ追加しなくてはならない。
また、整流動作の切換を行う構成としても、倍電圧整流動作を得るために平滑コンデンサCiを2本備えるようにしなければならない。つまり全波整流のみとする構成と比較して、平滑コンデンサCiを1本追加しなければならなくなる。
これらの点でも、上記したような回路切換を伴うワイドレンジ対応の構成では、回路製造コストの増加、及び電源回路基板の大型化を招く。特に、整流動作切り換えの構成において、平滑コンデンサCi等は電源回路を構成する部品のうちでも大型の部類に入ることから、このような基板サイズの大型化はさらに助長される。
【0110】
これに対して、本実施の形態の回路構成によりワイドレンジ対応化が実現されるのであれば、先に説明したような、商用交流電源の定格レベルに応じて、直流入力電圧(Ei)を生成するための整流回路系について整流動作を切り換えたり、あるいは、ハーフブリッジ結合方式とフルブリッジ結合方式との間でスイッチングコンバータの形式を切り換える構成を採る必要はなくなる。
そして、このような回路切り換えのための構成が不要となれば、例えば平滑コンデンサCiは1つのみとすることができ、またスイッチング素子としては少なくともハーフブリッジ結合に必要な2つのみとすることが可能となって、その分回路構成部品の削減、回路規模の縮小、及びスイッチングノイズの低減などが図られる。
また、回路切換の構成が不要となれば、切り換えによる誤動作防止のために特別な構成を備えるような必要もなくなり、この点でも構成部品の増加とコストアップの抑制が図られる。さらには、誤動作防止のためにスタンバイ電源を必須としないので、電源回路が使用可能な機器範囲を広げることができる。
【0111】
また、このような実施の形態としての効果を得るのにあたって、一次側にのみ並列共振回路を備えるこれまでの電圧共振形コンバータの構成に対して追加すべき必要最小限の部品は、二次側並列共振コンデンサの1点のみである。つまり、従来の回路切換方式による構成を採る場合よりもはるかに少ない部品追加で、ワイドレンジ対応を実現することができる。
【0112】
図6は、本実施の形態の電源回路としての二次側整流回路の変形例の1つを示している。なお、この図においては、二次巻線N2及び二次側整流回路の構成のみが抜き出されて示されているが、図示されていない他の部分は、絶縁コンバータトランスPITの構造も含めて、先に説明した実施の形態としての構成が採られればよい。
この図6に示される二次側整流回路は両波整流回路とされている。この場合の両波整流回路は、次のようにして形成されている。
先ず、二次巻線N2については、センタータップを施すことで、センタータップを境界にして二次巻線部N2A,N2Bに分割する。センタータップは二次側アースに接続する。
そのうえで、両波整流回路を形成する部品素子として、この場合には、2本の整流ダイオードDo1,Do2、及び1本の平滑コンデンサCoを備える。整流ダイオードDo1のアノードを二次巻線N2における二次巻線部N2A側の端部と接続し、整流ダイオードDo2のアノードを二次巻線N2における二次巻線部N2B側の端部と接続する。整流ダイオードDo1,Do2のカソードを共に平滑コンデンサCoの正極端子に接続し、平滑コンデンサCoの負極端子は二次側アースにて、二次巻線N2のセンタータップと接続する。
【0113】
このようにして形成される二次側両波整流回路では、二次巻線N2に誘起される二次巻線電圧の一方の極性の半周期に対応しては、二次巻線部NA→整流ダイオードDo1→平滑コンデンサCoの経路で整流電流が流れて平滑コンデンサCoに充電を行う。また、二次巻線V3の他方の極性の半周期に対応しては、二次巻線部NB→整流ダイオードDo2→平滑コンデンサCoの経路で整流電流が流れて平滑コンデンサCoに充電を行う。このようにして、二次巻線電圧の正負の各半周期の期間に対応して平滑コンデンサCoに対して整流電流を充電する両波整流動作が行われる。これにより、平滑コンデンサCoの両端電圧としては、二次巻線部N2A,N2Bの誘起電圧レベルの等倍に対応するレベルの二次側直流出力電圧Eoが得られる。
【0114】
また、本実施の形態における、複合トランスとしての絶縁コンバータトランスPITの他の構造例を、図7〜図9に示す。
図7に示される制御トランスPRTとしては、4本の磁脚を有する2つのダブルコの字型コアCR51、CR52を備える。そして、これらダブルコの字型コアCR51、CR52の互いの磁脚の端部を接合するようにして、立体型コアを形成する。なお、この場合において、ダブルコの字型コアCR51、CR52は、互いに同一サイズ形状のものを用いることができる。
このようにして立体型コアを形成した場合には、上記4本の磁脚ごとに対応して、ダブルコの字型コアCR11、CR12の接合部は4つ在ることとなるが、この場合、これら4つの接合部について、それぞれ所定長のギャップG50をそれぞれ形成する。なお、これら複数のギャップG50に設定されるギャップ長は同じであってもよいし、必要に応じて異なる長さが設定されてもよい。この点については、後述する図8、図9の絶縁コンバータトランスPITの構造においても同様である。
【0115】
そして、このようにして形成される立体型コアにおいて、先ず、例えばダブルコの字型コアCR51側の隣り合う2本の磁脚に巻き付けるようにして、チョークコイル巻線N10を所定ターン数(巻数)巻装する。
一方、一次巻線N1及び二次巻線N2は、図示するようにして、ダブルコの字型コアCR52側において、上記チョークコイル巻線N10の巻方向に対して、ちょうど直交するようにさせて、隣り合う2本の磁脚に巻き付けるようにして、所定ターン数を巻装するようにされる。
【0116】
上記のような構造では、チョークコイル巻線N10の巻回方向は、一次巻線N1及び二次巻線N2の巻回方向に対して直交することになる。つまり、複合トランスである絶縁コンバータトランスPITとしては、いわゆる直交型トランスとしての構造が得られる。
【0117】
このようにして、一次巻線N1、二次巻線N2、チョークコイル巻線N10が巻装されることで、先ず、一次巻線N1及び二次巻線N2については、コアサイズやギャップ長等に応じて設定される所定の結合係数により磁気結合された状態を生じる。また、チョークコイル巻線N10は、例えばコアサイズと巻数などの定数から、所定のインダクタンスを有するようにされる。そのうえで、チョークコイル巻線N10の巻回方向が一次巻線N1及び二次巻線N2の巻回方向に対して直交するようにされることで、チョークコイル巻線N10を巻回した2本の磁脚において、一次巻線N1及び二次巻線N2側により形成される磁路は逆方向となって打ち消し合うことになる。これにより、チョークコイル巻線N10と、一次巻線N1及び二次巻線N2との磁気結合度としては、0とみなしてよい程度の一定以下とすることができる。
【0118】
図8に示す絶縁コンバータトランスPITは、立体型コアについて、一方のコアは4本の磁脚を有するダブルコの字型コアCR51のままとするが、他方のコアは、ダブルコの字型コアCR52に代えて、任意の断面がコ字状となるシングルコの字型コアCR60と組み合わせて形成することもできる。なお、このコア構造においても、ダブルコの字型コアCR51の4本の磁脚の端面と、シングルコの字型コアCR60とが対向する部位には、それぞれ、ギャップG50を形成するようにされる。
このコア構造において、チョークコイル巻線N10と、一次巻線N1及び二次巻線N2を、例えば図8と同様のダブルコの字型コアCR51の位置関係、及び巻方向の関係により巻装する。このようにしても、チョークコイル巻線N10と、一次巻線N1及び二次巻線N2の組とが、互いの巻き方向が直交する直交型トランスとしての構成が得られ、図7と同様にして、チョークコイル巻線N10は、所定のインダクタンスを有すると共に、一次巻線N1及び二次巻線N2に対する磁気結合度については0とみなしてよい状態を得ることができる。
【0119】
また、図9に示す絶縁コンバータトランスPITは、2つの半目字型コアCR71,CR72を用意し、これらのコアの互いの磁脚が対向するようにして組み合わせることで1つの平面型の目字型コアを形成する。また、目字型コアにおいては、外側2本と内側2本の計4本の磁脚が対向することになるが、この場合には、これらの4本の磁脚が対向する各面について、それぞれ、所定長のギャップG70を形成する。
そして、一次巻線N1及び二次巻線N2は、一方の半目字型コアCR71における2本の内側磁脚に跨るようにして所定ターン数を巻装する。
チョークコイル巻線N10は、他方の半目字型コアCR72における1本の外側磁脚と、この外側磁脚と隣り合う1本の内側磁脚とに跨るようにして、所定ターン数を巻装する。
【0120】
このような絶縁コンバータトランスPITの構造では、チョークコイル巻線N10が巻回される磁脚位置と、一次巻線N1及び二次巻線N2が巻回される磁脚位置とが互いに異なるようにされているが、この関係としては、図7及び図8に示したように巻回方向を直交させたのと等価となる。従って、この図9に示す構造によっても、絶縁コンバータトランスPITにおいては、チョークコイル巻線N10は、一次巻線N1及び二次巻線N2に対する結合度は0とみなされ、かつ、所要のインダクタンスを有する状態となる。
【0121】
なお、本発明としては、上記各実施の形態として示した構成に限定されるものではない。例えば、一次側のE級スイッチングコンバータの細部の回路形態や、二次側整流回路の構成などは他にも考えられるものである。
また、メインスイッチング素子(及び補助スイッチング素子)については、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、バイポーラトランジスタなど、MOS−FET以外の素子を選定することも考えられる。また、上記各実施の形態では、他励式のスイッチングコンバータを挙げているが、自励式として構成した場合にも本発明は適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明の実施の形態としての電源回路の構成例を示す回路図である。
【図2】実施の形態の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスの構造例を示す図である。
【図3】実施の形態の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスの他の構造例を示す図である。
【図4】実施の形態の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスの他の構造例を示す図である。
【図5】実施の形態の電源回路の要部の動作をスイッチング周期により示す波形図である。
【図6】実施の形態の電源回路に対応する二次側の変形例としての構成例を示す回路図である。
【図7】実施の形態の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスの他の構造例を示す図である。
【図8】実施の形態の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスの他の構造例を示す図である。
【図9】実施の形態の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスの他の構造例を示す図である。
【図10】E級スイッチングコンバータの基本構成例を示す回路図である。
【図11】図10に示すE級スイッチングコンバータの動作を示す波形図である。
【図12】ダイオード及びトランスによる電圧クランプの構成を付加したE級スイッチングコンバータの構成例を示す回路図である。
【図13】伝送線路トランスによる電圧クランプの構成を付加したE級スイッチングコンバータの構成例を示す回路図である。
【図14】従来例としての電源回路の構成例を示す回路図である。
【図15】図14に示した電源回路の要部の動作を示す波形図である。
【図16】図14に示した電源回路についての、負荷変動に対するAC→DC電力変換効率、スイッチング周波数、スイッチング素子のオン期間の変動特性を示す図である。
【図17】従来の電源回路についての定電圧制御特性を概念的に示す図である。
【符号の説明】
【0123】
1 制御回路、2 発振・ドライブ回路、10 アクティブクランプ回路、Di ブリッジ整流回路、Ci 平滑コンデンサ、Q1 スイッチング素子、PIT 絶縁コンバータトランス、N10 チョークコイル巻線、Cr 一次側並列共振コンデンサ、N1 一次巻線、N2(N2A,N2B) 二次巻線、C11 一次側直列共振コンデンサ、Do1,Do2,Do3,Do4 (二次側)整流ダイオード、Co (二次側)平滑コンデンサ、Q2 補助スイッチング素子、CCL クランプコンデンサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも整流素子と平滑コンデンサを備えて形成され、商用交流電源を入力して整流平滑化することで、上記平滑コンデンサの両端電圧として整流平滑電圧を生成する整流平滑回路と、
上記整流平滑電圧を直流入力電圧として入力してスイッチングを行うメインスイッチング素子と、
上記メインスイッチング素子をスイッチング駆動するスイッチング駆動手段と、
上記整流平滑電圧が上記メインスイッチング素子に入力される経路に対して直列に挿入される第1のインダクタと、
上記メインスイッチング素子に対して並列となる関係により接続され、少なくとも上記第1のインダクタのインダクタンスと自身のキャパシタンスとによって一次側並列共振回路を形成する一次側並列共振コンデンサと、
第2のインダクタと、
上記第2のインダクタと直列となる関係により接続されることで、少なくとも上記第2のインダクタのインダクタンスと自身のキャパシタンスとによって一次側直列共振回路を形成し、上記第2のインダクタと自身との直列接続回路が上記スイッチング素子に対して並列となる関係により接続されるようにして設けられる一次側直列共振コンデンサと、
少なくとも、上記第2のインダクタを一次巻線として巻装するとともに、該一次巻線に得られたスイッチング出力により交番電圧が誘起される二次巻線を巻装して形成され、疎結合とみなされる所要の一次側と二次側との総合結合係数が得られるようにして、自身の結合係数が設定されるコンバータトランスと、
上記コンバータトランスの二次巻線に誘起される交番電圧を入力して整流動作を行って、二次側直流出力電圧を生成するように構成された二次側直流出力電圧生成手段と、
補助スイッチング素子を備え、上記メインスイッチング素子がオフとなる期間内において上記補助スイッチング素子がオンとなるオン期間を形成して、該オン期間において上記一次側並列共振コンデンサに流れるべき充放電電流を補助スイッチング素子に流すようにして設けられるアクティブクランプ回路と、
を備えることを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項1】
少なくとも整流素子と平滑コンデンサを備えて形成され、商用交流電源を入力して整流平滑化することで、上記平滑コンデンサの両端電圧として整流平滑電圧を生成する整流平滑回路と、
上記整流平滑電圧を直流入力電圧として入力してスイッチングを行うメインスイッチング素子と、
上記メインスイッチング素子をスイッチング駆動するスイッチング駆動手段と、
上記整流平滑電圧が上記メインスイッチング素子に入力される経路に対して直列に挿入される第1のインダクタと、
上記メインスイッチング素子に対して並列となる関係により接続され、少なくとも上記第1のインダクタのインダクタンスと自身のキャパシタンスとによって一次側並列共振回路を形成する一次側並列共振コンデンサと、
第2のインダクタと、
上記第2のインダクタと直列となる関係により接続されることで、少なくとも上記第2のインダクタのインダクタンスと自身のキャパシタンスとによって一次側直列共振回路を形成し、上記第2のインダクタと自身との直列接続回路が上記スイッチング素子に対して並列となる関係により接続されるようにして設けられる一次側直列共振コンデンサと、
少なくとも、上記第2のインダクタを一次巻線として巻装するとともに、該一次巻線に得られたスイッチング出力により交番電圧が誘起される二次巻線を巻装して形成され、疎結合とみなされる所要の一次側と二次側との総合結合係数が得られるようにして、自身の結合係数が設定されるコンバータトランスと、
上記コンバータトランスの二次巻線に誘起される交番電圧を入力して整流動作を行って、二次側直流出力電圧を生成するように構成された二次側直流出力電圧生成手段と、
補助スイッチング素子を備え、上記メインスイッチング素子がオフとなる期間内において上記補助スイッチング素子がオンとなるオン期間を形成して、該オン期間において上記一次側並列共振コンデンサに流れるべき充放電電流を補助スイッチング素子に流すようにして設けられるアクティブクランプ回路と、
を備えることを特徴とするスイッチング電源回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−311743(P2006−311743A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−133077(P2005−133077)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]