説明

スイッチング電源装置及びサージ吸収回路

【課題】少ない部品点数で構成することができ、電源効率を有効に改善することができるスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】本発明によるスイッチング電源装置(10)は、直流入力を交流に変換するスイッチング回路をなすトランジスタ(Q1)と、前記交流が入力された非絶縁型トランス(T)と、非絶縁型トランスから出力された交流を整流するダイオード(D2)と、ダイオード(D2)の出力部から非絶縁型トランス(T)の入力部に向かう電流方向を順方向として、ダイオード(D2)の出力部と非絶縁型トランス(T)の入力部との間に接続されたダイオード(D3)とを備える。スイッチング動作の過程でダイオード(D2)のカソード側に発生したサージが、ダイオード(D3)を介して非絶縁型トランス(T)の1次側に吸収される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源装置及びサージ吸収回路に関し、特に、スイッチング電源装置が備えるトランスの2次側に設けられた整流器で発生するサージを抑制するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図7(a)に、従来のスイッチング電源装置の構成を示す。同図に示すスイッチング電源装置は、入力端子TIN、グランド端子GND、入力コンデンサC1、トランジスタQ1、トランスT、主ダイオードD2、環流ダイオードD1、チョークコイルLO、出力端子TOUTを備えて構成される。
【0003】
このスイッチング電源装置によれば、入力端子TINに印加された直流入力Vinが、トランジスタQ1のスイッチング動作により交流に変換されてトランスTの1次巻線に供給される。トランスTの1次巻線に供給された交流により、その2次巻線には所望電圧の交流が誘起される。2次巻線に誘起された交流は、主ダイオードD2により直流に変換された後、出力巻線LOおよび出力端子TOUTを介し直流出力Voutとして出力される。上記動作の過程で主ダイオードD2がオフすると、環流ダイオードD1からチョークコイルLOに電流が供給され、これにより直流出力Voutが安定化される。
【0004】
ところで、上述の従来のスイッチング電源装置によれば、トランジスタQ1のスイッチング動作に伴ってトランスTの2次巻線を流れる電流の向きが切り替わり、主ダイオードD3がオフすると、トランスTの1次側と2次側との間の漏れ磁束等に起因して、主ダイオードD2のカソード側に、図7(b)に示すようなサージが発生する。
【0005】
一般には、このサージは、主ダイオードD2にCRスナバ回路を併設することにより、ある程度改善できる。しかし、CRスナバ回路は、抵抗素子で電力消費することによりサージを吸収することを基本原理としているため、本来的に電力損失を伴い、電源効率低下の原因となる。特に、2次側のダイオードの個数が増えると、それらに併設されるCRスナバ回路の数も増えるため、電力損失が一層増加する。
【0006】
このようなCRスナバ回路の問題を解決する技術として、サージエネルギーを一旦コイルに蓄えて出力側に放出する無損失スナバ回路が提案されている(特許文献1参照)。また、本願出願人により提案された技術として、サージエネルギーをコンデンサに蓄積するサージ吸収回路が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平09−224374号公報
【特許文献2】特開2007−181280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の従来技術に係る無損失スナバ回路によれば、部品点数が多く、サージを出力側に放出するまでの電流経路上に多数の素子が介在するため、各素子での電力損失が顕在化し、電源効率の改善には限界があるという問題がある。
また、上述のサージ吸収回路によれば、コンデンサに蓄積されたサージエネルギーを補助電源として利用することができる。しかしながら、補助電源が必要となる非常事態が発生しなければ、コンデンサに蓄積されたサージエネルギーは利用されず、従ってサージエネルギーを十分に利用することができない可能性がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、簡単な構成でサージエネルギーを電力として有効に吸収して利用することができ、電源効率を有効に改善することができるスイッチング電源装置及びサージ吸収回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るスイッチング電源装置は、直流入力を交流に変換するスイッチング回路と、前記交流が入力された非絶縁型トランスと、前記非絶縁型トランスから出力された交流を整流する第1整流素子と、前記第1整流素子の出力部から前記非絶縁型トランスの入力部に向かう電流方向を順方向として、前記第1整流素子の出力部と前記トランスの入力部との間に接続された第2整流素子と、を備えたスイッチング電源装置の構成を有する。この構成において、例えば、前記第1整流素子の出力部と前記非絶縁型トランスの入力部との間に、前記第2整流素子と直列接続して設けられ、前記非絶縁型トランスの入力部の電圧に対して前記第1整流素子の出力部の電圧を所定電圧にクランプする電圧クランプ部を更に備えてもよい。
【0011】
また、本発明に係るサージ吸収回路は、非絶縁型トランスを備えたスイッチング電源装置に設けられ、前記非絶縁型トランスから出力された交流を整流する第1整流素子の出力部に発生するサージを吸収するためのサージ吸収回路であって、前記第1整流素子の出力部から前記非絶縁型トランスの入力部に向かう電流方向を順方向として、前記第1整流素子の出力部と前記非絶縁型トランスの入力部との間に接続された第2整流素子を備えたサージ吸収回路の構成を有する。この構成において、例えば、前記第1整流素子の出力部と前記非絶縁型トランスの入力部との間に、前記第2整流素子と直列接続して設けられ、前記非絶縁型トランスの入力部の電圧に対して前記第1整流素子の出力部の電圧を前記所定電圧にクランプする電圧クランプ部を更に備えてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡単な構成でサージエネルギーを入力電力として吸収し、電源効率を有効に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係るスイッチング電源装置およびサージ吸収回路の構成例を示す回路図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るスイッチング電源装置およびサージ吸収回路の動作を説明するための波形図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るスイッチング電源装置およびサージ吸収回路の構成例を示す回路図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るスイッチング電源装置およびサージ吸収回路の動作を説明するための波形図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係るスイッチング電源装置およびサージ吸収回路の動作を説明するための波形図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係るスイッチング電源装置およびサージ吸収回路の構成例を示す回路図である。
【図7】従来技術に係るスイッチング電源装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態から第4実施形態を順に説明する。
なお、各図において、共通する要素には同一符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0015】
(第1実施形態)
まず、図1を参照して、本発明の第1実施形態を説明する。
図1は、第1実施形態によるスイッチング電源装置10の構成例を示す。
スイッチング電源装置10は、概略的には、前述の図7(a)に示す従来装置の構成と比較して、ダイオードD3(第2整流素子)からなるサージ吸収回路S10を更に備えて構成される。具体的には、スイッチング電源装置10は、入力端子TIN、グランド端子GND(所定電位ノード)、入力コンデンサC1、非絶縁型トランスT、トランジスタQ1、主ダイオードD2、還流ダイオードD1、チョークコイルLO、出力端子TOUTを備える。
【0016】
入力端子TINには直流入力Vinが印加され、入力端子TINとグランド端子GNDとの間には入力コンデンサC1が接続される。また、入力端子TINには、非絶縁型トランスTの入力部をなす1次巻線L1の一端が接続され、この1次巻線の他端とグランド端子GNDとの間には、上記直流入力Vinを交流に変換するるためのスイッチング回路をなすトランジスタQ1が接続される。
【0017】
非絶縁型トランスTの出力部をなす2次巻線L2の一端は、非絶縁型トランスTから出力された交流を整流するための主ダイオード(第1整流素子)D2の入力部をなすアノードに接続され、その2次巻線L2の他端はグランド端子GNDに接続される。本第1実施形態では、非絶縁型トランスTの2次巻線L2の巻数N2が1次巻線L1の巻数N1以下であり、これにより、非絶縁型トランスTの2次巻線L2に誘起される電圧V2が、その1次巻線L1に供給される直流入力Vinの電圧以下であるものとする。
【0018】
ここで、「非絶縁型トランス」なる用語について補足説明する。本願において、「非絶縁型トランス」なる用語は、その1次側の電圧の基準ノードと、2次側の電圧の基準ノードが電気的に接続された形式のトランスを意味する。本第1実施形態では、1次巻線L1に供給される直流入力Vinの基準ノードと、2次巻線L2に誘起される電圧の基準ノードはグランドであり、これら1次側の基準ノードと2次側の基準ノードはグランド端子GNDを介して電気的に接続されている。本発明は、このような非絶縁型トランスを備えたスイッチング電源装置の構成を前提としている。
【0019】
説明を図1に戻す。主ダイオードD2の出力部をなすカソードはチョークコイルLOの一端に接続され、このチョークコイルLOの他端は出力端子TOUTに接続される。また、チョークコイルLOの一端は、主ダイオードD2の出力部をなすカソードと共に、還流ダイオードD1の出力部をなすカソードと接続され、この還流ダイオードD1の入力部をなすアノードはグランド端子GNDに接続される。
【0020】
主ダイオードD2および還流ダイオードD1の各出力部をなすカソードと、非絶縁型トランスTの入力部をなす1次巻線L1の一端との間には、本第1実施形態の特徴部であるサージ吸収回路S10をなすダイオードD3(第2整流素子)が接続される。このダイオードD3は、主ダイオードD2および還流ダイオードD1の各出力部から非絶縁型トランスTの入力部に向かう電流方向を順方向とするように備えられる。具体的には、ダイオードD3の入力部をなすアノードは、主ダイオードD2および還流ダイオードD1の各出力部をなすカソードに接続され、ダイオードD3の出力部をなすカソードは、非絶縁型トランスTの入力部をなす1次巻線L1の一端に接続される。
【0021】
なお、本第1実施形態では、ダイオードD3のアノードを、主ダイオードD2および還流ダイオードD1の各カソードに接続するものとするが、サージが発生するカソードを有する2次側のダイオードであれば、どのようなダイオードのカソードにダイオードD3のアノードを接続してもよい。また、本第1実施形態では、ダイオードD3のカソードを非絶縁型トランスTの入力部をなす1次巻線L1の一端に接続するものとするが、非絶縁型トランスTの入力電力の供給経路上であれば、どのようなノードであってもよい。
【0022】
次に、本第1実施形態に係るスイッチング電源装置10の動作について、サージ吸収回路S10に着目して説明する。
トランジスタQ1からなるスイッチング回路が所定のスイッチング動作(周知のスイッチング動作)を実施すると、入力端子TINを介して供給された直流入力Vinが高周波の交流電流に変換されて非絶縁型トランスTの1次巻線L1に供給され、その2次巻線L2に交流が誘起される。2次巻線L2に誘起された交流は主ダイオードD2によって整流され、チョークコイルLO及び出力端子TOUTを介して直流出力Voutとして外部の負荷(図示なし)に供給される。環流ダイオードD1の動作は従来装置と同様である。
【0023】
ここで、前述のように、本第1実施形態では、非絶縁型トランスTの2次巻線L2に誘起される電圧V2は1次巻線L1に供給される直流入力Vin以下であり、この電圧V2は主ダイオードD2のカソード側に電圧V2’となって現れる。このため、サージが発生する前の状態、即ち主ダイオードD2が逆バイアス状態とされる前の順バイアス状態では、ダイオードD3は逆バイアス状態とされ、オフ状態にある。従って、サージが発生していない状況では、ダイオードD3はスイッチング電源装置10の動作に何ら関与しない。
【0024】
しかしながら、動作の過程で主ダイオードD2のカソード側にサージが発生すると、ダイオードD3がオン状態になる。具体的には、動作の過程で、トランジスタQ1がオン状態からオフ状態に切り替わると、非絶縁型トランスTの1次巻線L1を流れる電流が遮断される。これにより、2次巻線L2を流れる電流の向きが切り替わり、主ダイオードD2が順バイアス状態から逆バイアス状態とされ、オフ状態になる。このとき、非絶縁型トランスTの漏れ磁束等に起因して、主ダイオードD2のカソード側にサージが発生する。
【0025】
このサージにより、図2に例示するように、主ダイオードD2のカソード側の電圧V2’が上昇し、直流入力Vinの電圧よりも高くなる。この結果、ダイオードD3が順バイアス状態とされてオン状態になり、このダイオードD3を介して主ダイオードD3のカソード側から非絶縁型トランスTの入力部(1次側)に向けてサージ電流が流れる。これにより、主ダイオードD3のカソード側に発生したサージのうち、図2に波線で示す部分(直流入力Vinを超える部分)が、非絶縁型トランスTの入力電力としてダイオードD3を介して吸収される。吸収されたサージによる電流成分は、トランジスタQ1のスイッチング動作により非絶縁型トランスTの1次巻線L1の励磁電流として利用される。
【0026】
ここで、図2に示す例は、非絶縁型トランスTの2次巻線L2に誘起される電圧V2が直流入力Vinの電圧よりも低い場合に相当し、サージが発生しない状態において、主ダイオードD2のカソード側に現れる電圧V2’が直流入力Vinよりも低い場合を表している。この例に示すように、サージが発生しても、電圧V2’が直流入力Vinの電圧に達するまでは、ダイオードD3は逆バイアス状態とされるので、サージは吸収されないが、サージにより電圧2’が直流入力Vinを超えると、ダイオードD3が順バイアス状態とされ、これにより直流入力Vinを超えるサージ成分が吸収される。
【0027】
上述したように、第1実施形態によれば、主ダイオードD2がオン状態からオフ状態に移行した際に発生するサージは、ダイオードD3を介して非絶縁型トランスTの入力電力として吸収される。従って、極めて簡単な構成でサージを電力として有効に利用することができ、電源効率を有効に改善することが可能になる。また、サージを吸収する経路上にはダイオードD3しか存在しないので、サージを吸収する過程で発生する損失を最小限に抑えることができ、サージを有効に吸収することができる。
【0028】
なお、上述の第1実施形態では、主ダイオードD2がオン状態からオフ状態に移行する際に発生するサージを吸収する場合を例として説明したが、還流ダイオードD2がオン状態からオフ状態に移行する際に発生するサージについても同様に説明することができる。
【0029】
(第2実施形態)
次に、図3を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。
上述の第1実施形態では、非絶縁型トランスTの2次巻線L2の巻数N2が1次巻線L1の巻数N1以下であるものとしたが、本第2実施形態では、非絶縁型トランスTの2次巻線L2の巻数N2が1次巻線L1の巻数N1よりも多く、非絶縁型トランスTの2次巻線L2に誘起される電圧V2が、その1次巻線L1に供給される直流入力Vinの電圧よりも高いものとする。
【0030】
図3は、本第2実施形態によるスイッチング電源装置20の構成例を示す。
スイッチング電源装置20は、前述の図1に示す第1実施形態によるスイッチング電源装置10の構成において、ダイオードD2の出力部をなすカソードと非絶縁型トランスTの入力部をなす1次巻線L1の一端との間に、ダイオードD3と直列にツェナーダイオードZDを備える。ここで、ダイオードD3とツェナーダイオードZDはサージ吸収回路S20を構成する。その他の構成は、上述の第1実施形態と同様である。
【0031】
具体的には、非絶縁型トランスTの1次巻線L1の一端には、ツェナーダイオードZDのアノードが接続され、このツェナーダイオードZDのカソードはダイオードD3のカソードに接続される。ツェナーダイオードZDは、非絶縁型トランスTの1次巻線L1に供給される直流入力Vinの電圧を基準として、ダイオードD2の出力部をなすカソードの電圧が所定電圧Vbに到達したときに導通(降伏)することにより、ダイオードD2の出力部の電圧を上記所定電圧Vbにクランプする電圧クランプ部として機能する。
【0032】
上記所定電圧Vbは、ツェナーダイオードZDの降伏電圧によって与えられ、非絶縁型トランスTの2次巻線L2に誘起される電圧V2と1次巻線L1に供給される直流入力Vinとの電位差(V2−Vin)に応じて決定される。この電位差は、1次巻線L1の巻数N1と2次巻線L2の巻数N2との巻数比に依存することから、上記所定電圧Vbは、1次巻線L1の巻数N1と2次巻線L2の巻数N2との巻数比に応じて決定されると言い換えることができる。
【0033】
本第2実施形態では、所定電圧Vbは、非絶縁型トランスTの2次巻線L2に誘起される電圧V2と1次巻線L1に供給される直流入力Vinとの間の電位差(V2−Vin)と概ね等しく設定されるものとするが、説明の便宜上、所定電圧Vbは、ツェナーダイオードZDの降伏電圧よりもわずかに低い値に設定されるものとする。換言すれば、直流入力VinとダイオードD2のカソード側の電圧V2’との電位差が、1次巻線L1の巻数N1と2次巻線L2の巻数N2との巻数比によって決定される所定電圧Vbである限り、ツェナーダイオードZDは降伏せず、上記電位差が所定電圧Vbを超えたときにツェナーダイオードZDが降伏するように、このツェナーダイオードの降伏電圧が設定されるものとする。
【0034】
ただし、所定電圧Vbおよびツェナーダイオードの降伏電圧に関する上記の定義は、説明の便宜のためのものであり、この例に限定されず、サージを吸収できる範囲で、所定電圧Vbを上記電位差(V2−Vin)よりも高い値に設定してもよく、逆に、非絶縁型トランスTの2次側から1次側へのサージ以外の電力の逆流を実質的に抑制することができる範囲で、所定電圧Vbを上記電位差(V2−Vin)よりも低い値に設定してもよい。
【0035】
次に、本第2実施形態の動作を説明する。
トランジスタQ1からなるスイッチング回路が所定のスイッチング動作(周知のスイッチング動作)を実施すると、非絶縁型トランスTの2次巻線L2に、1次巻線L1に供給される直流入力Vinよりも所定電圧Vbだけ高い電圧V2を有する交流が誘起される。非絶縁型トランスTの2次側に誘起された交流は主ダイオードD2によって整流された後、チョークコイルLO及び出力端子TOUTを介して外部の負荷(図示なし)に供給される。環流ダイオードD1の動作は従来装置と同様である。
【0036】
このような動作の過程で、スイッチング回路をなすトランジスタQ1がオン状態からオフ状態に切り替わると、上述の第1実施形態と同様のメカニズムにより、主ダイオードD2のカソード側にサージが発生する。
【0037】
ここで、本第2実施形態では、非絶縁型トランスTの2次巻線L2に誘起される電圧V2は、直流入力Vinよりも所定電圧Vbだけ高い電圧であり、電圧V2’となってダイオードD2のカソード側に現れる。このため、サージが発生しなければ、電圧V2’は直流入力Vinよりも所定電圧Vbだけ高い電圧となる。この場合、ツェナーダイオードZDの端子間電圧は所定電圧Vbに等しくなるので、ツェナーダイオードZDは降伏せず、ダイオードD3はオフ状態に維持される。従って、サージが発生していない状況では、ツェナーダイオードZDおよびダイオードD3は、スイッチング電源装置10の動作に何ら関与しない。
【0038】
しかしながら、動作の過程で主ダイオードD2のカソード側にサージが発生すると、主ダイオードD2のカソード側の電圧V2’が上昇し、図4に示すように、電圧V2’が直流入力Vinに所定電圧Vbを加算した電圧(Vin+Vb)を超える。これによりツェナーダイオードZDの端子間電圧が所定電圧Vbを超え、ツェナーダイオードZDが導通(降伏)すると共にダイオードD3が導通する。
【0039】
ツェナーダイオードZDおよびダイオードD3が導通すると、直流入力Vinに対して電圧V2’が概ね所定電圧Vbにクランプされる。この結果、ダイオードD3およびツェナーダイオードZDを介して、主ダイオードD3のカソード側から非絶縁型トランスTの入力部に向けてサージ電流が流れ、サージが非絶縁型トランスTの入力電力として吸収される。
【0040】
上述したように、第2実施形態によれば、非絶縁型トランスTの2次巻線L2の巻数N2が1次巻線L1の巻数N1よりも多く、2次側の電圧が1次側の電圧よりも高く設定されたスイッチング電源装置において、主ダイオードD2のカソード側に発生するサージを非絶縁型トランスTの入力電力として有効に吸収することができる。
【0041】
なお、第2実施形態では、第1実施形態と同様にダイオードD3を備えたので、その原理上、2次側の電圧が1次側の電圧以下である場合にも、サージを吸収することができる。ただし、2次側の電圧が1次側の電圧よりも高い場合に限定すれば、ダイオードD3を省略することも可能である。
【0042】
(第3実施形態)
次に、図5を参照して、本発明の第3実施形態を説明する。
図5は、本第3実施形態によるスイッチング電源装置30の構成例を示す。
スイッチング電源装置30は、前述の図2に示す第2実施形態によるスイッチング電源装置20の構成において、ダイオードD3の出力部とグランド端子GND(所定電位ノード)との間に接続されたコンデンサC2を更に備える。本第3実施形態では、ダイオードD3とツェナーダイオードZDとコンデンサC2は、サージ吸収回路S30を構成する。その他の構成は第2実施形態と同様である。
なお、本第3実施形態では、第2実施形態の構成を前提とするが、第1実施形態の構成を前提としてコンデンサC2を備えてもよい。
【0043】
本第3実施形態では、好ましくは、ダイオードD3とコンデンサC2は、サージの発生個所である主ダイオードD2のカソードまたは還流ダイオードD1のカソードの近くに配置され、サージの発生個所からコンデンサC2までの配線経路長が、可能な限り短く設定される。
【0044】
本第3実施形態によれば、例えば主ダイオードD2のカソード側に発生したサージのエネルギーは、ダイオードD3を介してコンデンサC2に速やかに蓄積される。このコンデンサC2に蓄積されたサージエネルギーは、サージが消滅した後続サイクルで、コンデンサC2から徐々に非絶縁型コンデンサZDの入力部に転送され、この非絶縁型トランスTの入力電力として吸収される。従って、本第3実施形態によれば、サージの発生個所と、非絶縁型トランスTの入力部との間の配線距離が長い場合であっても、サージを有効に吸収することが可能になる。
【0045】
(第4実施形態)
次に、図6を参照して、本発明の第4実施形態を説明する。
図6は、本第4実施形態によるスイッチング電源装置40の構成例を示す。
スイッチング電源装置40は、前述の図5に示す第3実施形態によるスイッチング電源装置30の構成において、ダイオードD3のカソードとツェナーダイオードZDとの間に介挿されるようにして、ダイオードD2の出力部と非絶縁型トランスTの入力部との間に直列接続されたダイオードD4(第3整流素子)および抵抗素子Rを更に備える。本第4実施形態では、ダイオードD3、ツェナーダイオードZD、コンデンサC2、抵抗素子Rは、サージ吸収回路S40を構成する。その他の構成は第3実施形態と同様である。
なお、本第4実施形態では、第3実施形態の構成を前提とするが、第1実施形態または第2実施形態の構成を前提としてダイオードD4および抵抗素子Rを備えてもよい。
【0046】
ここで、ダイオードD4は、主ダイオードD2の出力部から非絶縁型トランスTの入力部に向かう電流方向を順方向とした整流特性を有し、ダイオードD3およびツェナーダイオードZDと直列接続されている。また、抵抗素子Rは、ダイオードD3およびツェナーダイオードZDおよびダイオードD4と直列接続される。具体的には、ダイオードD4のアノードはダイオードD3のカソードに接続され、ダイオードD4のカソードは抵抗素子Rの一端に接続され、抵抗素子Rの他端はツェナーダイオードZDのカソードに接続される。
【0047】
本第4実施形態によれば、スイッチング電源装置40の起動時に非絶縁型トランスTの1次側に瞬時的に高電圧が発生しても、ダイオードD4およびダイオードD3の2つのダイオードにより、非絶縁型トランスTの2次側への上記高電圧の伝達が阻止される。従って、仮に上記高電圧によりダイオードD4およびダイオードD3のうちの1つが破壊されたとしても、残りのダイオードにより、1次側と2次側との間の絶縁を確保することができる。従って、第4実施形態によれば、装置の安定的動作を確保することができる。
【0048】
また、本第4実施形態によれば、ツェナーダイオードZDが降伏した場合に、このツェナーダイオードZDを流れるサージ電流を、抵抗素子Rにより緩和することができ、このサージ電流によるツェナーダイオードZDの劣化または破壊を防止することができる。従って、本第4実施形態によれば、装置の信頼性を向上させることができる。
【0049】
なお、本第4実施形態では、ダイオードD4および抵抗素子Rの両方を備えるものとしたが、これに限定されることなく、何れか一方のみを備えてもよい。
以上で本発明の第4実施形態を説明した。
【0050】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変形可能である。
例えば、上述の実施形態では、非絶縁型トランスTの1次側のスイッチング回路を1石フォワード回路により構成したが、これに限定されず、ハーフブリッジ回路、フルブリッジ回路、RCC回路など、1次側のスイッチング回路の形式は問わない。
【0051】
また、上述の実施形態では、2次側に主ダイオードD2を設け、これにより非絶縁型トランスTの出力を整流するものとしたが、これに代えてトランジスタ等のスイッチ手段を設け、いわゆる同期整流を行うものとしてもよい。この場合、同期整流の際にトランジスタに発生するサージがダイオードD3を介して非絶縁型トランスTの1次側に吸収されるので、同様に電源効率を改善することが可能になる。
【符号の説明】
【0052】
10,20,30,40…スイッチング電源装置
C1…入力コンデンサ
C2…コンデンサ
D1…還流ダイオード
D2…主ダイオード
D3,D4…ダイオード
GND…グランド端子
L1…1次巻線
L2…2次巻線
LO…チョークコイル
Q1…トランジスタ
R…抵抗素子
S10,S20,S30,S40…サージ吸収回路
T…非絶縁型トランス
TIN…入力端子
TOUT…出力端子
ZD…ツェナーダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流入力を交流に変換するスイッチング回路と、
前記交流が入力された非絶縁型トランスと、
前記非絶縁型トランスから出力された交流を整流する第1整流素子と、
前記第1整流素子の出力部から前記非絶縁型トランスの入力部に向かう電流方向を順方向として、前記第1整流素子の出力部と前記トランスの入力部との間に接続された第2整流素子と、
を備えたスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記第1整流素子の出力部と前記非絶縁型トランスの入力部との間に、前記第2整流素子と直列接続して設けられ、前記非絶縁型トランスの入力部の電圧に対して前記第1整流素子の出力部の電圧を所定電圧にクランプする電圧クランプ部を更に備えたことを特徴とする請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記第2整流素子の出力部と所定電位ノードとの間に接続されたコンデンサを更に備えたことを特徴とする請求項1または2の何れか1項記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記第1整流素子の出力部から前記非絶縁型トランスの入力部に向かう電流方向を順方向として、前記第1整流素子の出力部と前記非絶縁型トランスの入力部との間に、前記第2整流素子および前記電圧クランプ素子と直列接続して設けられた第3整流素子を更に備えたことを特徴とする請求項1から3の何れか1項記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記第1整流素子の出力部と前記非絶縁型トランスの入力部との間に、前記第2整流素子および前記電圧クランプ部および前記第3整流素子と直列接続して設けられた抵抗素子を更に備えたことを特徴とする請求項1から4の何れか1項記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
非絶縁型トランスを備えたスイッチング電源装置に設けられ、前記非絶縁型トランスから出力された交流を整流する第1整流素子の出力部に発生するサージを吸収するためのサージ吸収回路であって、
前記第1整流素子の出力部から前記非絶縁型トランスの入力部に向かう電流方向を順方向として、前記第1整流素子の出力部と前記非絶縁型トランスの入力部との間に接続された第2整流素子を備えたサージ吸収回路。
【請求項7】
前記第1整流素子の出力部と前記非絶縁型トランスの入力部との間に、前記第2整流素子と直列接続して設けられ、前記非絶縁型トランスの入力部の電圧に対して前記第1整流素子の出力部の電圧を前記所定電圧にクランプする電圧クランプ部を更に備えたことを特徴とする請求項6記載のサージ吸収回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−55860(P2013−55860A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194113(P2011−194113)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【Fターム(参考)】