説明

スイッチング電源装置

【課題】スイッチング電源装置の小型化、軽量化、および製造コストの低減を実現すること。
【解決手段】スイッチング電源装置1は、いわゆる直列共振コンバータであり、トランスTと、トランスTの1次巻線T1と直列接続されたキャパシタC1、C2と、トランスTの第1の2次巻線T2と一体に形成されたインダクタL1と、トランスTの第2の2次巻線T3と一体に形成されたインダクタL2と、を備える。インダクタL1、L2のそれぞれは、流れる電流に対して線形インダクタンス特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電源装置の1つとして、スイッチング電源装置がある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたスイッチング電源装置は、トランスの1次巻線と共振インダクタとキャパシタとを直列に接続した直列共振回路を備える、いわゆる直列共振コンバータである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−308243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以下に、共振インダクタがトランスの1次側に設けられており、400Vの入力を受けて1kWの電力を出力するスイッチング電源装置について検討する。
【0005】
上述のスイッチング電源装置では、共振インダクタのインダクタンスを略10μHにする必要がある。ここで、共振インダクタにおける磁気飽和を防ぐためには、共振インダクタの巻線に所定の巻数が必要となるが、共振インダクタの巻線を所定の巻数設けると、共振インダクタのインダクタンスが10μHより大きくなってしまう。そこで、磁気コアにエアギャップを設けることで、共振インダクタのインダクタンスを略10μHにまで低下させることが考えられる。
【0006】
しかしながら、磁気コアにエアギャップを設けると、エアギャップから磁束が漏れるため、共振インダクタの周囲に設けられた他の部品において誤作動が生じるおそれがある。そこで、共振インダクタを他の部品から十分に離して設けたり、共振インダクタの周りに磁気シールドを設けたりすることが考えられる。ところが、共振インダクタを他の部品から十分に離して設ける場合には、スイッチング電源装置が大型化するという課題があった。一方、共振インダクタの周りに磁気シールドを設ける場合には、磁気シールドを設けることによる製造コストの増加や、重量の増加を招くという課題があった。
【0007】
また、磁気コアにエアギャップを設けると、エアギャップから漏れた磁束により、巻線の交流抵抗の増加を招いてしまう。巻線の交流抵抗が増加すると、電力損失が大きくなって共振インダクタの温度が上昇し、その結果、信頼性が低下してしまう。そこで、エアギャップ近傍を除く領域に巻線を設けたり、巻線にリッツ線を用いたりすることが考えられる。ところが、エアギャップ近傍を除く領域に巻線を設ける場合には、巻線を設けることのできる領域が減少するので、巻線を細くする必要がある。ここで、巻線を細くすると、電気抵抗が増加するので、電力損失が大きくなるという課題があった。一方、巻線にリッツ線を用いる場合には、リッツ線の交流抵抗が低いので、巻線の交流抵抗の増加を抑制できるが、製造コストが増加するという課題があった。
【0008】
そこで、巻線の巻数を減少させることで、エアギャップを極力小さくすることが考えられる。ところが、共振インダクタに印加する電圧を時間で積分した値を積算値とすると、共振インダクタにおける磁気飽和を防ぐためには、積算値に応じた磁気コアの有効断面積および巻線の巻数が必要である。このため、エアギャップを極力小さくするために巻線の巻数を減少させる場合には、磁気コアの有効断面積が拡大してしまい、スイッチング電源装置が大型化するという課題があった。
【0009】
上述の課題を鑑み、本発明は、スイッチング電源装置の小型化、軽量化、および製造コストの低減を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題を解決するために、以下の事項を提案している。
(1)本発明は、トランスと、前記トランスの1次巻線と直列接続されたキャパシタと、前記トランスの1次巻線および前記キャパシタに第1電圧または第2電圧を印加する電圧印加手段と、を備えたスイッチング電源装置であって、前記トランスは、2次巻線を少なくとも1つ有し、前記少なくとも1つのトランスの2次巻線の電圧を整流および平滑する整流平滑手段と、前記少なくとも1つのトランスの2次巻線のそれぞれと直列接続され、流れる電流に対して線形インダクタンス特性を有する少なくとも1つのインダクタと、を備え、前記少なくとも1つのインダクタのそれぞれは、前記少なくとも1つのトランスの2次巻線のそれぞれと一体に形成されることを特徴とするスイッチング電源装置を提案している。
【0011】
この発明によれば、2次巻線を少なくとも1つ有するトランスと、トランスの1次巻線と直列接続されたキャパシタと、トランスの1次巻線およびキャパシタに第1電圧または第2電圧を印加する電圧印加手段と、を備えるスイッチング電源装置に、少なくとも1つのトランスの2次巻線の電圧を整流および平滑する整流平滑手段と、少なくとも1つのトランスの2次巻線のそれぞれと直列接続されて流れる電流に対して線形インダクタンス特性を有する少なくとも1つのインダクタと、を設け、少なくとも1つのインダクタのそれぞれを、少なくとも1つのトランスの2次巻線のそれぞれと一体に形成した。
【0012】
このため、インダクタは、流れる電流に対して線形インダクタンス特性を有し、トランスの2次巻線と同数だけトランスの2次側に設けられる。そして、それぞれのインダクタは、トランスのそれぞれの2次巻線と一体に形成される。したがって、インダクタをトランスの2次巻線とは別個に設ける必要がないので、スイッチング電源装置の小型化、軽量化、および製造コストの低減を実現できる。
【0013】
なお、上述のように、共振インダクタを1次側に設ける従来技術では、10μHのインダクタンスが必要と述べた。トランスには、巻数比の2乗でインピーダンスを変換する性質があるため、巻数比を例えば18:1とすると、1次側で10μHのインダクタンスは、2次側で略30nHに変換される。この程度のインダクタンスは、2次巻線の両端を10〜20mm程度延長すれば得られるので、磁気コアを設ける必要がない。これによれば、磁気コアにエアギャップを設ける必要がなくなるので、エアギャップから磁束が漏れることがなくなる。このため、エアギャップからの磁束漏れの対策を施すことによる、上述のスイッチング電源装置の大型化、重量の増加、製造コストの増加、および電力損失の増加は、生じ得ない。したがって、インダクタがトランスの1次側に設けられた従来のスイッチング電源装置と比べて、スイッチング電源装置の更なる小型化、軽量化、および製造コストの低減を実現できるとともに、電力損失を低減できる。
【0014】
なお、インダクタがトランスの2次側に設けられたスイッチング電源装置は、特開2006−67651号公報や、特許第2507216号公報に開示されている。
【0015】
特開2006−67651号公報に開示されているスイッチング電源装置では、トランスの2次側に設けられるインダクタは、流れる電流に対して非線形インダクタンス特性を有する。ここで、トランスの2次巻線を延長することで得られるインダクタは、線形インダクタンス特性を有するため、非線形インダクタンス特性を有するインダクタは、トランスの2次巻線と一体に形成できない。このため、このスイッチング電源装置では、インダクタをトランスの2次巻線と一体に形成できない。これに対して、本発明のスイッチング電源装置では、トランスの2次側に設けられるインダクタは、流れる電流に対して線形インダクタンス特性を有する。このため、本発明のスイッチング電源装置では、インダクタをトランスの2次巻線と一体に形成できる。したがって、特開2006−67651号公報に開示されているスイッチング電源装置に対して、スイッチング電源装置の小型化、軽量化、および製造コストの低減を実現できる。
【0016】
一方、特許第2507216号公報に開示されているスイッチング電源装置では、トランスの2次側に、インダクタだけでなく、キャパシタも設けられている。ところが、このスイッチング電源装置では、キャパシタを2次側に設けるためにタンク回路を設けなくてはならない。これに対して、本発明のスイッチング電源装置では、キャパシタがトランスの1次側に設けられるため、タンク回路を設ける必要がない。このため、特許第2507216号公報に開示されているスイッチング電源装置に対して、スイッチング電源装置の小型化、軽量化、および製造コストの低減を実現できる。
【0017】
(2)本発明は、トランスと、前記トランスの1次巻線と直列接続されたキャパシタと、前記トランスの1次巻線および前記キャパシタに第1電圧または第2電圧を印加する電圧印加手段と、を備えたスイッチング電源装置であって、前記トランスは、2次巻線を少なくとも1つ有し、前記少なくとも1つのトランスの2次巻線の電圧を整流および平滑する整流平滑手段と、前記少なくとも1つのトランスの2次巻線のそれぞれと直列接続され、流れる電流に対して線形インダクタンス特性を有する少なくとも1つのインダクタと、を備え、前記少なくとも1つのインダクタのそれぞれは、前記少なくとも1つのトランスの2次巻線と前記整流平滑手段とを接続するそれぞれの配線により形成されることを特徴とするスイッチング電源装置を提案している。
【0018】
この発明によれば、2次巻線を少なくとも1つ有するトランスと、トランスの1次巻線と直列接続されたキャパシタと、トランスの1次巻線およびキャパシタに第1電圧または第2電圧を印加する電圧印加手段と、を備えるスイッチング電源装置に、少なくとも1つのトランスの2次巻線の電圧を整流および平滑する整流平滑手段と、少なくとも1つのトランスの2次巻線のそれぞれと直列接続されて流れる電流に対して線形インダクタンス特性を有する少なくとも1つのインダクタと、を設け、少なくとも1つのインダクタのそれぞれを、少なくとも1つのトランスの2次巻線と整流平滑手段とを接続するそれぞれの配線により形成した。
【0019】
このため、インダクタは、流れる電流に対して線形インダクタンス特性を有し、トランスの2次巻線と同数だけトランスの2次側に設けられる。そして、それぞれのインダクタは、トランスの2次巻線と整流平滑手段とを接続するそれぞれの配線により形成される。したがって、インダクタをトランスの2次巻線と整流平滑手段とを接続する配線とは別個に設ける必要がない。また、キャパシタがトランスの1次側に設けられるため、キャパシタをトランスの2次側に設けるためのタンク回路といった回路を設ける必要もない。よって、上述した効果と同様の効果を奏することができる。
【0020】
(3)本発明は、(1)または(2)のスイッチング電源装置について、風を送出する風送出手段を備え、前記少なくとも1つのインダクタは、前記風送出手段から送出された風を受けるように形成されることを特徴とするスイッチング電源装置を提案している。
【0021】
この発明によれば、風を送出する風送出手段を設け、風送出手段から送出された風を受けるようにインダクタを形成した。ここで、インダクタは、トランスの2次巻線と一体に形成されるか、トランスの2次巻線と整流平滑手段とを接続する配線により形成される。このため、風送出手段から送出された風をインダクタで受けることにより、トランスの2次巻線の熱をインダクタを介して大気中に放出させることができ、トランスの2次巻線を冷却できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、スイッチング電源装置の小型化、軽量化、および製造コストの低減を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係るスイッチング電源装置の回路図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係るスイッチング電源装置の回路図である。
【図3】前記スイッチング電源装置の斜視図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係るスイッチング電源装置の回路図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係るスイッチング電源装置の回路図である。
【図6】本発明の第5実施形態に係るスイッチング電源装置の回路図である。
【図7】本発明の第6実施形態に係るスイッチング電源装置の回路図である。
【図8】本発明の第7実施形態に係るスイッチング電源装置の回路図である。
【図9】本発明の第8実施形態に係るスイッチング電源装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、以下の実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0025】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るスイッチング電源装置1の回路図である。スイッチング電源装置1は、いわゆる直列共振コンバータであり、トランスTと、スイッチ素子Q1、Q2と、キャパシタC1、C2、C3と、インダクタL1、L2と、ダイオードD1、D2と、を備える。
【0026】
トランスTの1次巻線T1の一端には、キャパシタC1を介して入力端子IN1が接続されるとともに、キャパシタC2を介して入力端子IN2が接続される。入力端子IN1には、直流電源(図示省略)の正極が接続され、入力端子IN2には、直流電源(図示省略)の負極が接続される。
【0027】
スイッチ素子Q1、Q2は、NチャネルMOSFETで構成される。スイッチ素子Q1のゲートと、スイッチ素子Q2のゲートとには、制御回路(図示省略)が接続される。スイッチ素子Q1のドレインには、入力端子IN1が接続され、スイッチ素子Q2のソースには、入力端子IN2が接続される。また、スイッチ素子Q1のソースと、スイッチ素子Q2のドレインとには、トランスTの1次巻線T1の他端が接続されており、これらスイッチ素子Q1とスイッチ素子Q2とは、ハーフブリッジ回路を形成する。
【0028】
トランスTの第1の2次巻線T2の一端には、インダクタL1を介してダイオードD1のカソードが接続され、トランスTの第1の2次巻線T2の他端には、出力端子OUT1が接続される。インダクタL1は、流れる電流に対して線形インダクタンス特性を有し、トランスTの第1の2次巻線T2と一体に形成される。ダイオードD1のアノードには、出力端子OUT2が接続される。
【0029】
トランスTの第2の2次巻線T3の一端には、インダクタL2を介してダイオードD2のカソードが接続され、トランスTの第2の2次巻線T3の他端には、出力端子OUT1が接続される。インダクタL2は、流れる電流に対して線形インダクタンス特性を有し、トランスTの第2の2次巻線T3と一体に形成される。ダイオードD2のアノードには、出力端子OUT2が接続される。
【0030】
出力端子OUT1と出力端子OUT2とは、キャパシタC3を介して接続される。
【0031】
以上のスイッチング電源装置1は、以下のように動作する。
【0032】
スイッチ素子Q1、Q2は、制御回路(図示省略)から供給される制御信号に基づいて、スイッチングする。
【0033】
スイッチ素子Q1がオン状態であるとともにスイッチ素子Q2がオフ状態である期間では、入力端子IN1に入力された電流が、オン状態のスイッチ素子Q1を介してトランスTの1次巻線T1の他端に供給され、キャパシタC2を介して入力端子IN2に流れる。このため、トランスTの1次巻線T1の他端から一端に電流が流れ、この電流に応じた磁界がトランスTの1次巻線T1の周りに発生する。すると、トランスTの第1の2次巻線T2と、トランスTの第2の2次巻線T3とには、電磁誘導により、トランスTの1次巻線T1の周りに発生した磁界に応じた起電力が生じるが、これら起電力はダイオードD1、D2により整流される。その結果、ダイオードD1、インダクタL1、およびトランスTの第1の2次巻線T2を介して、出力端子OUT1から出力端子OUT2に向かって電流が流れるように、出力端子OUT1と出力端子OUT2との間に電位差が生じ、これら出力端子OUT1、OUT2から電圧が出力されることとなる。なお、出力端子OUT1、OUT2から出力される電圧は、キャパシタC3により平滑化される。
【0034】
一方、スイッチ素子Q1がオフ状態であるとともにスイッチ素子Q2がオン状態である期間では、入力端子IN1に入力された電流が、キャパシタC1を介してトランスTの1次巻線T1の一端に供給され、オン状態のスイッチ素子Q2を介して入力端子IN2に流れる。このため、トランスTの1次巻線T1の一端から他端に電流が流れ、この電流に応じた磁界がトランスTの1次巻線T1の周りに発生する。すると、トランスTの第1の2次巻線T2と、トランスTの第2の2次巻線T3とには、電磁誘導により、トランスTの1次巻線T1の周りに発生した磁界に応じた起電力が生じるが、これら起電力はダイオードD1、D2により整流される。その結果、ダイオードD2、インダクタL2、およびトランスTの第2の2次巻線T3を介して、出力端子OUT1から出力端子OUT2に向かって電流が流れるように、出力端子OUT1と出力端子OUT2との間に電位差が生じ、これら出力端子OUT1、OUT2から電圧が出力されることとなる。なお、出力端子OUT1、OUT2から出力される電圧は、キャパシタC3により平滑化される。
【0035】
以上のスイッチング電源装置1によれば、以下の効果を奏することができる。
【0036】
インダクタL1は、流れる電流に対して線形インダクタンス特性を有し、トランスTの第1の2次巻線T2と一体に形成される。また、インダクタL2は、流れる電流に対して線形インダクタンス特性を有し、トランスTの第2の2次巻線T3と一体に形成される。このため、インダクタL1をトランスTの第1の2次巻線T2と別個に設けたり、インダクタL2をトランスTの第2の2次巻線T3と別個に設けたりする必要がないので、スイッチング電源装置1の小型化、軽量化、および製造コストの低減を実現できる。
【0037】
また、インダクタL1、L2をトランスTの2次側に設けたので、トランスの1次側にインダクタが設けられた従来のスイッチング電源装置と比べて、必要なインダクタンスが減少する。このため、トランスTの第1の2次巻線T2および第2の2次巻線T3を延長して得られるインダクタンスで必要なインダクタンスをまかなうことができ、その結果、磁気コアを設ける必要がなくなる。これによれば、磁気コアにエアギャップを設ける必要がなくなるので、エアギャップから磁束が漏れることがなくなる。このため、エアギャップからの磁束漏れの対策を施すことによる、上述のスイッチング電源装置の大型化、重量の増加、製造コストの増加、および電力損失の増加は、生じ得ない。したがって、インダクタがトランスTの1次側に設けられる場合と比べて、スイッチング電源装置1の更なる小型化、軽量化、および製造コストの低減を実現できるとともに、電力損失を低減できる。
【0038】
また、特開2006−67651号公報に開示されているスイッチング電源装置では、トランスの2次側に、流れる電流に対して非線形インダクタンス特性を有するインダクタが設けられている。ここで、トランスの2次巻線を延長することで得られるインダクタは、線形インダクタンス特性を有するため、非線形インダクタンス特性を有するインダクタは、トランスの2次巻線と一体に形成できない。このため、このスイッチング電源装置では、インダクタをトランスの2次巻線と一体に形成できない。これに対して、上述のスイッチング電源装置1では、トランスTの2次側に設けられるインダクタL1、L2は、流れる電流に対して線形インダクタンス特性を有する。このため、インダクタL1をトランスTの第1の2次巻線T2と一体に形成し、インダクタL2をトランスTの第2の2次巻線T3と一体に形成することができる。したがって、スイッチング電源装置1は、特開2006−67651号公報に開示されているスイッチング電源装置と比べて、小型化、軽量化、および製造コストの低減を実現できる。
【0039】
また、特許第2507216号公報に開示されているスイッチング電源装置では、トランスの2次側に、インダクタだけでなく、キャパシタも設けられている。ところが、このスイッチング電源装置では、キャパシタを2次側に設けるためにタンク回路を設けなくてはならない。これに対して、上述のスイッチング電源装置1では、キャパシタC1、C2がトランスTの1次側に設けられるため、タンク回路を設ける必要がない。このため、スイッチング電源装置1は、特許第2507216号公報に開示されているスイッチング電源装置と比べて、小型化、軽量化、および製造コストの低減を実現できる。
【0040】
また、従来より、スイッチング電源装置に電力を供給する直流電源と並列に入力キャパシタを接続することで、直流電源から電力が供給されなくても、入力キャパシタに蓄えられた電力により、ある一定の期間だけ定格出力を確保しようとする場合があった。ここで、スイッチング電源装置1は、インダクタがトランスの1次側に設けられているスイッチング電源装置や、特許第2507216号公報に開示されているスイッチング電源装置と比べて、同一の設計条件ではより大きな電流を出力できる特性を有する。このため、上述の従来例に係るスイッチング電源装置と比べて、入力電圧が低くても定格出力を確保できるので、入力キャパシタの静電容量を減少させることができる。したがって、上述の従来例に係る直流共振コンバータと比べて、スイッチング電源装置1の更なる小型化および製造コストの低減を実現できる。
【0041】
なお、スイッチング電源装置1では、400Vの入力を受けて12V、1kWの電力を出力する場合、トランスTの巻数比は、18:1程度となる。ここで、インダクタンスは、巻数の2乗に比例するので、トランスの1次側に設けられていた10μHのインダクタをトランスの2次側に移動させると、このインダクタのインダクタンスは、30nHとなる。このため、インダクタL1をトランスTの第1の2次巻線T2と一体に形成するためには、トランスTの第1の2次巻線T2を10〜20mm程度、従来と比べて延長させればよい。また、インダクタL2をトランスTの第2の2次巻線T3と一体に形成するためには、トランスTの第2の2次巻線T3を10〜20mm程度、従来と比べて延長させればよい。
【0042】
<第2実施形態>
図2は、本発明の第2実施形態に係るスイッチング電源装置1Aの回路図である。スイッチング電源装置1Aは、図1に示した本発明の第1実施形態に係るスイッチング電源装置1とは、インダクタL3、L4を備える点が異なる。なお、スイッチング電源装置1Aにおいて、スイッチング電源装置1と同一構成要件については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0043】
インダクタL3は、インダクタL1と同様に、流れる電流に対して線形インダクタンス特性を有し、トランスTの第1の2次巻線T2と一体に形成される。また、インダクタL4は、インダクタL2と同様に、流れる電流に対して線形インダクタンス特性を有し、トランスTの第2の2次巻線T3と一体に形成される。
【0044】
インダクタL3の一端には、トランスTの第1の2次巻線T2の他端が接続され、インダクタL3の他端には、出力端子OUT1と、インダクタL4の一端と、が接続される。インダクタL4の一端には、出力端子OUT1と、インダクタL3の他端と、が接続され、インダクタL4の他端には、トランスTの第2の2次巻線T3の他端が接続される。
【0045】
図3は、スイッチング電源装置1Aの斜視図である。トランスTの1次巻線T1、トランスTの第1の2次巻線T2、およびトランスTの第2の2次巻線T3のそれぞれは、平面視略円環状の基台に巻かれており、トランスTの第1の2次巻線T2とトランスTの第2の2次巻線T3とは、トランスTの1次巻線T1を挟んで対向する位置に設けられる。
【0046】
インダクタL1〜L4のそれぞれは、L字状に形成されている。インダクタL1、L3には、ダイオードD1およびキャパシタC3が実装された基板10が接続され、インダクタL2、L4には、ダイオードD2およびキャパシタC3が実装された基板20が接続される。
【0047】
基板10、20は、略矩形状に形成されており、所定間隔を空けて対向して設けられる。これら基板10と基板20との間には、ヒートシンク30が設けられる。このヒートシンク30は、単位ヒートシンク31、32を備える。単位ヒートシンク31は、基板10に取り付けられており、基台311と、基台311に対して所定間隔ごとに立設された複数の放熱板312と、を備える。また、単位ヒートシンク32は、基板20に取り付けられており、基台321と、基台321に対して所定間隔ごとに立設された複数の放熱板322と、を備える。これら単位ヒートシンク31、32は、放熱板312、322が互いに向かい合う位置に設けられる。
【0048】
ヒートシンク30と対向する位置には、風を送出する風送出装置(図示省略)が設けられる。この風送出装置から送出される風は、ヒートシンク30およびインダクタL1〜L4に当たる。
【0049】
以上のスイッチング電源装置1Aによれば、上述のスイッチング電源装置1が奏することのできる効果に加えて、以下の効果を奏することができる。
【0050】
スイッチング電源装置1Aは、風を送出する風送出装置を備え、この風送出装置から送出される風は、ヒートシンク30およびインダクタL1〜L4に当たる。このため、風送出装置から送出された風をヒートシンク30で受けることにより、単位ヒートシンク31が取り付けられた基板10の熱と、単位ヒートシンク32が取り付けられた基板20の熱と、を大気中に放出させることができ、これら基板10、20を冷却できる。また、風送出装置から送出された風をインダクタL1〜L4で受けることにより、インダクタL1、L3が一体に形成されるトランスTの第1の2次巻線T2の熱と、インダクタL2、L4が一体に形成されるトランスTの第2の2次巻線T3の熱と、を大気中に放出させることができ、これらトランスTの第1の2次巻線T2および第2の2次巻線T3を冷却できる。
【0051】
<第3実施形態>
図4は、本発明の第3実施形態に係るスイッチング電源装置1Bの回路図である。スイッチング電源装置1Bは、図1に示した本発明の第1実施形態に係るスイッチング電源装置1とは、キャパシタC2を備えない点が異なる。なお、スイッチング電源装置1Bにおいて、スイッチング電源装置1と同一構成要件については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0052】
以上のスイッチング電源装置1Bによれば、上述のスイッチング電源装置1と同様の効果を奏することができる。
【0053】
<第4実施形態>
図5は、本発明の第4実施形態に係るスイッチング電源装置1Cの回路図である。スイッチング電源装置1Cは、図1に示した本発明の第1実施形態に係るスイッチング電源装置1とは、キャパシタC1を備えない点が異なる。なお、スイッチング電源装置1Cにおいて、スイッチング電源装置1と同一構成要件については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0054】
以上のスイッチング電源装置1Cによれば、上述のスイッチング電源装置1と同様の効果を奏することができる。
【0055】
<第5実施形態>
図6は、本発明の第5実施形態に係るスイッチング電源装置1Dの回路図である。スイッチング電源装置1Dは、図1に示した本発明の第1実施形態に係るスイッチング電源装置1とは、スイッチ素子Q1A、Q2Aを備える点と、キャパシタC1、C2の代わりにキャパシタC1Aを備える点と、が異なる。なお、スイッチング電源装置1Dにおいて、スイッチング電源装置1と同一構成要件については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0056】
トランスTの1次巻線T1の一端には、キャパシタC1Aを介して、スイッチ素子Q1のソースと、スイッチ素子Q2のドレインと、が接続される。
【0057】
スイッチ素子Q1A、Q2Aは、NチャネルMOSFETで構成される。スイッチ素子Q1Aのゲートと、スイッチ素子Q2Aのゲートとには、制御回路(図示省略)が接続される。スイッチ素子Q1Aのドレインには、入力端子IN1が接続され、スイッチ素子Q2Aのソースには、入力端子IN2が接続される。また、スイッチ素子Q1Aのソースと、スイッチ素子Q2Aのドレインとには、トランスTの1次巻線T1の他端が接続される。これらスイッチ素子Q1A、Q2Aと、スイッチ素子Q1、Q2とは、フルブリッジ回路を形成する。
【0058】
以上のスイッチング電源装置1Dによれば、上述のスイッチング電源装置1と同様の効果を奏することができる。
【0059】
<第6実施形態>
図7は、本発明の第6実施形態に係るスイッチング電源装置1Eの回路図である。スイッチング電源装置1Eは、図1に示した本発明の第1実施形態に係るスイッチング電源装置1とは、ダイオードD1、D2の代わりにスイッチ素子Q3、Q4を備える点が異なる。なお、スイッチング電源装置1Eにおいて、スイッチング電源装置1と同一構成要件については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0060】
スイッチ素子Q3、Q4は、NチャネルMOSFETで構成される。スイッチ素子Q3のゲートと、スイッチ素子Q4のゲートとには、制御回路(図示省略)が接続される。スイッチ素子Q3のドレインには、インダクタL1を介してトランスTの第1の2次巻線T2の一端が接続され、スイッチ素子Q4のドレインには、インダクタL2を介してトランスTの第2の2次巻線T3の一端が接続される。スイッチ素子Q3のソースと、スイッチ素子Q4のソースとには、出力端子OUT2が接続される。
【0061】
以上のスイッチング電源装置1Eによれば、上述のスイッチング電源装置1と同様の効果を奏することができる。
【0062】
<第7実施形態>
図8は、本発明の第7実施形態に係るスイッチング電源装置1Fの回路図である。スイッチング電源装置1Fは、図1に示した本発明の第1実施形態に係るスイッチング電源装置1とは、トランスTの第1の2次巻線T2および第2の2次巻線T3の代わりにトランスTの2次巻線T4を備える点と、ダイオードD1A、D2Aを備える点と、インダクタL2を備えない点と、が異なる。なお、スイッチング電源装置1Fにおいて、スイッチング電源装置1と同一構成要件については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0063】
トランスTの2次巻線T4の一端には、インダクタL1を介して、ダイオードD1のアノードと、ダイオードD2のカソードと、が接続され、トランスTの2次巻線T4の他端には、ダイオードD1Aのアノードと、ダイオードD2Aのカソードと、が接続される。ダイオードD1のカソードと、ダイオードD1Aのカソードとには、出力端子OUT1が接続され、ダイオードD2のアノードと、ダイオードD2Aのアノードとには、出力端子OUT2が接続される。
【0064】
以上のスイッチング電源装置1Fによれば、上述のスイッチング電源装置1と同様の効果を奏することができる。
【0065】
<第8実施形態>
図9は、本発明の第8実施形態に係るスイッチング電源装置1Gの回路図である。スイッチング電源装置1Gは、図1に示した本発明の第1実施形態に係るスイッチング電源装置1とは、インダクタL5を備える点が異なる。なお、スイッチング電源装置1Gにおいて、スイッチング電源装置1と同一構成要件については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0066】
インダクタL5の一端には、トランスTの1次巻線T1の一端が接続され、インダクタL5の他端には、トランスTの1次巻線T1の他端が接続される。
【0067】
以上のスイッチング電源装置1Gによれば、上述のスイッチング電源装置1と同様の効果を奏することができる。
【0068】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0069】
例えば、上述の第2実施形態では、インダクタL1〜L4のそれぞれをL字状に形成したが、これに限らず、例えば平板状に設けてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G;スイッチング電源装置
10、20;基板
30;ヒートシンク
C1、C1A、C2、C3;キャパシタ
T;トランス
L1、L2、L3、L4、L5;インダクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスと、
前記トランスの1次巻線と直列接続されたキャパシタと、
前記トランスの1次巻線および前記キャパシタに第1電圧または第2電圧を印加する電圧印加手段と、
を備えたスイッチング電源装置であって、
前記トランスは、2次巻線を少なくとも1つ有し、
前記少なくとも1つのトランスの2次巻線の電圧を整流および平滑する整流平滑手段と、
前記少なくとも1つのトランスの2次巻線のそれぞれと直列接続され、流れる電流に対して線形インダクタンス特性を有する少なくとも1つのインダクタと、を備え、
前記少なくとも1つのインダクタのそれぞれは、前記少なくとも1つのトランスの2次巻線のそれぞれと一体に形成されることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
トランスと、
前記トランスの1次巻線と直列接続されたキャパシタと、
前記トランスの1次巻線および前記キャパシタに第1電圧または第2電圧を印加する電圧印加手段と、
を備えたスイッチング電源装置であって、
前記トランスは、2次巻線を少なくとも1つ有し、風送出
前記少なくとも1つのトランスの2次巻線の電圧を整流および平滑する整流平滑手段と、
前記少なくとも1つのトランスの2次巻線のそれぞれと直列接続され、流れる電流に対して線形インダクタンス特性を有する少なくとも1つのインダクタと、を備え、
前記少なくとも1つのインダクタのそれぞれは、前記少なくとも1つのトランスの2次巻線と前記整流平滑手段とを接続するそれぞれの配線により形成されることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項3】
風を送出する風送出手段を備え、
前記少なくとも1つのインダクタは、前記風送出手段から送出された風を受けるように形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のスイッチング電源装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−206986(P2010−206986A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51049(P2009−51049)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【Fターム(参考)】