説明

スイッチング電源装置

【課題】通常のスイッチング動作時における制御回路の端子電圧を高く設定した場合であっても、電圧降下回路の作用により端子電圧を急激に降下させて過負荷の保護動作を早急に開始させる。
【解決手段】過負荷状態時にスイッチングトランス5を構成する補助巻線52の出力電圧が降圧されたとき、制御IC320の電源端子P320cに印加される端子電圧を過負荷状態時に降圧された出力電圧よりもさらに降下させることにより、通常のスイッチング動作時における端子電圧が高く設定された場合であっても、トランジスタ31のスイッチング動作を制御して、その動作を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源装置に係り、特に、過負荷保護機能を有するスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種のスイッチング電源装置として、1次側に過電圧が入力されたときの絶縁トランスの飽和と1次側回路素子の耐圧トランスとの増大とをともに抑制することができる電源装置が開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
この電源装置によれば、制御回路の起動後、その制御回路の電源となる補助巻線に過電圧が印加されると、この過電圧を、過電圧保護回路により制御回路が動作を継続せしめる動作電圧以下にクランプさせるので、制御回路の動作を停止させることができ、スイッチング素子とトランスが停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−90561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、背景技術に記載した特許文献1の電源装置によれば、制御回路にて過電圧の発生を検出する閾値と過負荷の発生を検出する閾値とがそれぞれ固定されているため、通常のスイッチング動作時において制御回路の端子電圧との比較により過電圧の保護動作、過負荷の保護動作の双方の動作タイミングが決定されることになる。ここで、過電圧の保護を早急に動作させるにあたって、通常のスイッチング動作時の端子電圧を上昇させると、過負荷の発生を検出する閾値までの差が大きくなってしまい、過負荷の保護動作が開始するまでに過電流が流れ、負荷の迅速な保護が困難であった。
【0006】
本発明は、この難点を解消するためになされたもので、通常のスイッチング動作時における制御回路の端子電圧を高く設定した場合であっても、電圧降下回路の作用により端子電圧を急激に降下させて過負荷の保護動作を早急に開始させることができるスイッチング電源装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の目的を達成するため、本発明の第1の態様であるスイッチング電源装置は、1次側の直流電圧の電力を2次側へ伝達するための1次巻線及び2次巻線並びに1次巻線へのスイッチング動作を制御するための動作電圧を電源供給する補助巻線を有するスイッチングトランスと、補助巻線の出力電圧に基づいてスイッチングトランスを駆動させるためのトランジスタと、トランジスタのスイッチング動作を制御して過電圧保護を行うための制御ICを有するスイッチング制御回路と、スイッチングトランスの2次巻線の電圧を整流・平滑して負荷に電源供給するための2次側整流平滑回路と、2次側整流平滑回路の出力電圧を前記制御ICを介して一定に保つ制御を行うための定電圧制御回路と、負荷の過負荷状態時に補助巻線の出力電圧が降圧されたとき制御ICの電源端子に印加される端子電圧を過負荷状態時に降圧された出力電圧よりもさらに降下させて過負荷保護を行うための電圧降下回路とを備えるものである。
【0008】
また、本発明の第2の態様であるスイッチング電源装置は、本発明の第1の態様において、電圧降下回路は、補助巻線の電圧を分圧するための第1の分圧抵抗と、分圧された電圧と対比して負荷の正常状態又は過負荷状態を判別してオン/オフが反転する状態判別トランジスタと、状態判別トランジスタが過負荷状態を判別したとき補助巻線の出力電圧を分圧して端子電圧を過負荷状態時に降圧された出力電圧よりもさらに降下して制御ICの電源端子に印加するための第2の分圧抵抗とを有するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のスイッチング電源装置によれば、過負荷状態時にスイッチングトランスを構成する補助巻線の出力電圧が降圧されたとき、制御ICの電源端子に印加される端子電圧を過負荷状態時に降圧された出力電圧よりもさらに降下させることにより、通常のスイッチング動作時における過電圧保護のための端子電圧が高く設定された場合であっても、トランジスタのスイッチング動作を制御して、その動作を停止させることができるため、負荷に過電流が流れることはなく、安全かつ確実な過負荷保護が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施例によるスイッチング電源装置の具体的な構成を示す回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のスイッチング電源装置を適用した最良の実施の形態例について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施例によるスイッチング電源装置の具体的な構成を示す回路ブロック図である。このスイッチング電源装置には、家電機器等の負荷1と、交流電源(商用電源)2と、交流電源2からの交流電圧Vinが印加され、この交流電圧Vinを直流電圧に変換するための電源入力制御部3と、負荷1を動作させる出力電圧Voutを生成するための電源出力制御部4と、1次側である電源入力制御部3及び2次側である電源出力制御部4間を絶縁し、1次側の直流電圧を2次側へ伝達するためのスイッチングトランス5と、負荷1が接続される2つの端子(以下、それぞれ出力端子、GND端子という。)P1、P2とが設けられている。
【0013】
スイッチングトランス5には、1次側である電源入力制御部3からの直流電圧を2次側である電源出力制御部4に伝達するための1次巻線50及び2次巻線51と、1次巻線50へのスイッチング動作を制御するための動作電圧を電源供給する補助巻線52とが備えられている。
【0014】
電源入力制御部3には、交流電源2からの交流電圧Vinを整流・平滑して直流電圧に変換するための1次側整流平滑回路30と、スイッチングトランス5を構成する補助巻線52からの電源供給に基づいて1次巻線50のスイッチング動作を行うための(NPN型の)トランジスタ31と、トランジスタ31のスイッチング動作、すなわち、オン/オフの反転を制御するための制御IC320を有するスイッチング制御回路32と、負荷1の過負荷状態時にスイッチングトランス5を構成する補助巻線52の出力電圧が降圧されたとき、制御IC320の電源端子P320cに印加される端子電圧を当該過負荷状態時に降圧された出力電圧よりもさらに降下させて過負荷保護を行うための電圧降下回路33とが備えられている。
【0015】
この電源入力制御部3において、1次側整流平滑回路30は、ダイオードブリッジDB、コンデンサC1を有している。また、スイッチング制御回路32は、ダイオードD1、コンデンサC2、抵抗R1、フォトカプラPCを構成する(NPN型の)トランジスタ(以下、受光トランジスタという。)Q1、制御IC320を有している。さらに、電圧降下回路33は、ダイオードD2、コンデンサC3、抵抗(第1、第2の分圧抵抗を含む。)R2〜R8、(NPN型の)第1、第2の状態判別トランジスタQ2、Q3、(PNP型の)第3の状態判別トランジスタQ4を有している。
【0016】
電源入力制御部3の具体的な接続の態様として、1次側整流平滑回路30を構成するダイオードブリッジDBの整流側の一方及び他方間には、交流電源2が並列接続されている。また、ダイオードブリッジDBの(+)端子及び(−)端子の両端子間には、コンデンサC1が並列接続されている。また、ダイオードブリッジDBの(+)端子には、スイッチングトランス5を構成する1次巻線50(の両端)を経由してトランジスタ31のコレクタが接続されており、このトランジスタ31のエミッタには、基準電位点が接続されている。また、トランジスタ31のベースには、スイッチング制御回路32を構成する制御IC320の制御端子P320aが接続されている。さらに、トランジスタ31のエミッタには、スイッチング制御回路32を構成する抵抗R1を経由して基準電位点が接続されている。
【0017】
スイッチング制御回路32を構成する制御IC320のフィードバック端子P320bには、フォトカプラPCを構成する受光トランジスタQ1のコレクタ、エミッタを経由して基準電位点が接続されている。また、制御IC320の電源端子P320cには、電圧降下回路33を構成するダイオードD2(のカソード及びアノード)、(第2の分圧抵抗を構成する)抵抗R7、ダイオードD1(のカソード及びアノード)、スイッチングトランス5を構成する補助巻線52(の両端)を経由して基準電位点が接続されている。また、制御IC320のOCP端子P320dには、抵抗R1を経由して基準電位点が接続されている。
【0018】
スイッチング制御回路32を構成する制御IC320の電源端子P320cと電圧降下回路33を構成するダイオードD2のカソードとの間には、コンデンサC3を経由して基準電位点が接続されている。また、ダイオードD2のアノード及び(第2の分圧抵抗を構成する)抵抗R7間には、抵抗R2(の一端)、抵抗R3(の一端)、第3の状態判別トランジスタQ4のエミッタがそれぞれ並列接続されている。また、抵抗R2には、第1の状態判別トランジスタQ2のコレクタ、エミッタを経由して基準電位点が接続されており、この第1の状態判別トランジスタQ2のベースは、(第1の分圧抵抗を構成する)抵抗R5、抵抗R6間に接続されている。また、抵抗R3には、第2の状態判別トランジスタQ3のコレクタ、エミッタを経由して基準電位点が接続されており、この第2の状態判別トランジスタQ3のベースは、抵抗R2及び状態判別トランジスタQ2のコレクタ間に接続されている。また、第3の状態判別トランジスタQ4のベースは、抵抗R4を経由して抵抗R3及び第2の状態判別トランジスタQ3のコレクタ間に接続されており、この第3の状態判別トランジスタQ4のコレクタには、(第2の分圧抵抗を構成する)抵抗R8を経由して基準電位点が接続されている。さらに、(第2の分圧抵抗を構成する)抵抗R7及びダイオードD1のカソード間には、(第1の分圧抵抗を構成する)抵抗R5、抵抗R6を経由して基準電位点が接続されているとともに、コンデンサC2が並列接続されている。
【0019】
電源出力制御部4には、スイッチングトランス5を構成する1次巻線50から誘起された後、2次巻線51にて受電される直流電圧を整流・平滑して出力電圧Voutを生成し、負荷1に電源供給するための2次側整流平滑回路40と、2次側整流平滑回路40の出力電圧を、電源入力制御部3のスイッチング制御回路32を構成する制御IC320を介して一定に保つ制御を行うための定電圧制御回路41とが備えられている。
【0020】
この電源出力制御部4において、2次側整流平滑回路40は、ダイオードD3、コンデンサC4を有している。また、定電圧制御回路41は、抵抗(分圧抵抗を含む。)R9〜R12、フォトカプラPCを構成するダイオード(以下、発光ダイオードという。)D4、シャントレギュレータSRを有している。
【0021】
電源出力制御部4の具体的な接続の態様として、2次側整流平滑回路40を構成するダイオードD3のアノードには、スイッチングトランス5を構成する2次巻線51(の両端)を経由して基準電位点が接続されており、このダイオードD3のカソードには、出力端子P1が接続されている。また、ダイオードD3のカソード及び出力端子P1間には、コンデンサC4が並列接続されているとともに、定電圧制御回路41を構成する抵抗R11、抵抗R12を経由して基準電位点が接続されている。さらに、2次巻線51の他端及びGND端子P2間には、基準電位点が接続されている。
【0022】
定電圧制御回路41において、フォトカプラPCを構成する発光ダイオードD4のアノードは、抵抗R9を経由して2次側整流平滑回路40を構成するダイオードD3のカソード及び出力端子P1間に接続されている。また、発光ダイオードD4のカソード及びシャントレギュレータSRのカソード間は、抵抗R10を経由して、2次側整流平滑回路40を構成するダイオードD3のカソード及び出力端子P1間に接続されている。また、シャントレギュレータSRのリファレンスは、直列接続された抵抗R11、抵抗R12間に接続されており、出力端子P1の電位を分圧して当該シャントレギュレータのリファレンスに供給している。さらに、シャントレギュレータSRのアノードには、基準電位点が接続されている。
【0023】
このように構成された本発明の実施例によるスイッチング電源装置において、以下、具体的な動作について説明する。
【0024】
図1において、電源入力制御部3の1次側整流平滑回路30を構成するダイオードブリッジDBの整流側の一方及び他方の両端間に、交流電源2からの交流電圧Vinが印加されると、この交流電圧Vinは、ダイオードブリッジDBを経由して整流された後、コンデンサC1を経由して平滑されることにより、直流電圧が生成される。また、前述の直流電圧が生成されると、電源入力制御部3のスイッチング制御回路32を構成する制御IC320が起動し、制御IC320の制御端子P320aからトランジスタ31にベース電流が電源供給され、このトランジスタ31がオフ状態からオン状態に反転し、スイッチングトランス5を構成する1次巻線50に直流電圧が印加されるため、1次巻線50から誘起された(+)電圧が補助巻線52にて受電されるとともに、同様に誘起された(−)電圧が2次巻線51にて受電される。
【0025】
また、スイッチングトランス5を構成する補助巻線52にて受電された(+)電圧は、電源入力制御部3のスイッチング制御回路32を構成するダイオードD1、コンデンサC2を経由して整流・平滑された後、電圧降下回路33を構成する(第1の分圧抵抗を構成する)抵抗R5、抵抗R6により分圧される。
【0026】
さらに、電圧降下回路33において、前述の分圧された(+)電圧の電圧レベルが、第1の状態判別トランジスタQ2のベース−エミッタ間電圧より高くなると、この第1の状態判別トランジスタQ2がオフからオンに反転されるため、第2の状態判別トランジスタQ3のベース電圧が「0V」となり、第3の状態判別トランジスタQ4のベース電圧は、抵抗R3、抵抗R4により上昇する。このようにベース電圧が上昇すると、第3の状態判別トランジスタQ4はオンからオフに反転されるため、制御IC320の電源端子P320cには、ダイオードD1、コンデンサC2、(第2の分圧抵抗を構成する)抵抗R7、ダイオードD2、コンデンサC3を順次経由して整流・平滑された電圧が印加されることになる。このような電源供給が行われると、制御IC320は、トランジスタ31をオンのまま保持することができる。
【0027】
一方、スイッチングトランス5を構成する2次巻線51にて受電された(−)電圧は、電源出力制御部4の2次側整流平滑回路40を構成するダイオードD3に逆方向の電圧で印加されるため、出力電圧Voutが生成されることはなく、これと同時に、補助巻線52に接続された(電源入力制御部3の)スイッチング制御回路32を構成する制御IC320の制御端子P320cまでの電源供給路が形成され、形成された電源供給路上のコンデンサC2、コンデンサC3をそれぞれ充電させることにより、制御IC320の電源端子P320cに印加される端子電圧が所定の閾値を超え、これを検出した制御IC320は、トランジスタ31をオンからオフに反転させることで1次巻線50に逆起電力が発生する。これにより、1次巻線50から誘起された(−)電圧が補助巻線52にて受電されるとともに、同様に誘起された(+)電圧が2次巻線51にて受電される。
【0028】
また、スイッチングトランス5を構成する補助巻線52にて受電された(−)電圧は、前述の(+)電圧の電源供給時と同様、ダイオードD1、コンデンサC2、(第2の分圧抵抗を構成する)抵抗R7、ダイオードD2、コンデンサC3を順次経由して整流・平滑された後、制御IC320の電源端子P320cに印加されることになる。このような電源供給が行われると、制御IC320は、トランジスタ31をオフのまま保持することができる。
【0029】
さらに、スイッチングトランス5を構成する2次巻線51にて受電された(+)電圧は、電源出力制御部4の2次側整流平滑回路40を構成するダイオードD3に順方向の電圧で印加されるため、コンデンサC4が放電状態となって出力電圧Voutを生成し、この後、2次巻線51のエネルギーが放出され、当該2次巻線の(−)電圧及び補助巻線52の(+)電圧がそれぞれ「0V」になると、トランジスタ31はオフから反転して、再びオンとなる。
【0030】
すなわち、前述までの動作が繰返されることによって、電源入力制御部3のトランジスタ31のオン/オフが反転する。
【0031】
次に、電源出力制御部4の定電圧制御回路41を構成する抵抗R11、抵抗R12を経由して分圧された出力電圧Voutにより、シャントレギュレータSRに流れ込むシャント電流が所定の閾値を超えると、このシャントレギュレータSRはオフからオンに反転し、抵抗R10を経由してアノード電流が流れ込むフォトカプラPCを構成する発光ダイオードD4をオフからオンに反転させることができる。この動作に連動するフィードバック制御によって、(電源入力制御部3の)スイッチング制御回路32のフォトカプラPCを構成する受光トランジスタQ1がオフからオンに反転する。
【0032】
ここで、出力電圧Voutが上昇した場合には、電源出力制御部4の定電圧制御回路41を構成するシャントレギュレータSRが電流を引き込み、フォトカプラPCを構成する発光ダイオードD4に電流を流すことにより、(電源入力制御部3の)スイッチング制御回路32のフォトカプラPCを構成する受光トランジスタQ1のインピーダンスを下げることで、出力電圧Vout(の電圧レベル)を低下させて定電圧制御を行うことができる。一方、出力電圧Voutが低下した場合には、シャントレギュレータSRが電流を引き込まず、フォトカプラPCを構成する発光ダイオードD4に電流を流さないことにより、受光トランジスタQ1のインピーダンスを上げることで、出力電圧Vout(の電圧レベル)を上昇させて定電圧制御を行うことができる。
【0033】
次に、出力端子P1及びGND端子P2にそれぞれ接続された負荷1にて例えば、故障、破損等が発生し、出力電圧Voutが上昇(異常上昇)して(例えば、軽度の)過電圧になると、この過電圧は、スイッチングトランス5を構成する2次巻線51から誘起された後、補助巻線52にて受電される。なお、補助巻線52にて受電された過電圧の電圧レベルは、当該補助巻線の巻数及び2次巻線51の巻数に対応して、当該2次巻線に発生した(+)電圧の電圧レベルよりも低い値であり、電源入力制御部3のスイッチング制御回路32を構成するダイオードD1を導通させ、このダイオードD1、コンデンサC2、電圧降下回路33の(第2の分圧抵抗を構成する)抵抗R7、ダイオードD2、コンデンサC3を順次経由して整流・平滑された後、制御IC320の電源端子P320cに印加される。
【0034】
また、電源入力制御部3のスイッチング制御回路32を構成する制御IC320は、電源端子P320cに印加された端子電圧が、所定の過電圧検出閾値よりも高いことを検出し、トランジスタ31のスイッチング動作を制御して、その動作を停止させることができる。これにより、安全かつ確実に過電圧の発生から負荷1を保護することができる。
【0035】
次に、電源入力制御部3のスイッチング制御回路32を構成する制御IC320は、OCP端子P320dに接続された抵抗R1にかかる電圧を監視しており、出力電圧Voutが一定の値以上とならないように制御しているため、例えば、過電流が流れるように(負荷1が)過負荷状態になると出力電圧Voutが低下する。このように出力電圧Voutが低下すると、スイッチングトランス5を構成する2次巻線51の出力電圧が降圧され、これに連動して補助巻線52の出力電圧も降圧される。
【0036】
また、前述の過負荷状態において降圧されたスイッチングトランス5を構成する補助巻線52の出力電圧は、電源入力制御部3のスイッチング制御回路32を構成するダイオードD1を導通させ、このダイオードD1、コンデンサC2の経路で整流・平滑されるものの、この出力電圧により(第1の分圧抵抗を構成する)抵抗R6にかかる電圧レベルが第1の状態判別トランジスタQ2のベース−エミッタ間電圧よりも低くなるため、第1の状態判別トランジスタQ2はオンからオフに反転する。
【0037】
電源入力制御部3の電圧降下回路33を構成する第1の状態判別トランジスタQ2がオンからオフに反転すると、第2の状態判別トランジスタQ3のベース−エミッタ間には抵抗R3を介して電流が流れるため、この第2の状態判別トランジスタQ3がオフからオンに反転する。また、これに連動して、第3の状態判別トランジスタQ4のエミッタから抵抗R4を経由して電流が流れるため、この第3の状態判別トランジスタQ4は、オフからオンに反転する。ここで、第3の状態判別トランジスタQ4がオフからオンに反転すると、スイッチング制御回路32を構成する制御IC320の電源端子P320cの端子電圧は、(第2の分圧抵抗を構成する)抵抗R7、抵抗R8により分圧された値となり、過負荷状態時において降圧された補助巻線52の出力電圧よりもさらに低い電圧レベルであって、所定の過保護検出閾値よりも低いと制御IC320にて検出される。この制御IC320は、トランジスタ31のスイッチング動作を制御して、その動作を停止させることができる。これにより、負荷1に過電流が流れることはなく、安全かつ確実な過負荷保護が可能となる。
【0038】
前述までの説明から明らかなように、本発明のスイッチング電源装置によれば、過負荷状態時にスイッチングトランス5を構成する補助巻線52の出力電圧が降圧されたとき、制御IC320の電源端子P320cに印加される端子電圧を過負荷状態時に降圧された出力電圧よりもさらに降下させることにより、通常のスイッチング動作時における端子電圧が高く設定された場合であっても、トランジスタ31のスイッチング動作を制御して、その動作を停止させることができるため、負荷1に過電流が流れることはなく、安全かつ確実な過負荷保護が可能となる。
【0039】
なお、本発明のスイッチング電源装置においては、特定の実施の形態をもって説明してきたが、この形態に限定されるものでなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られた如何なる構成のスイッチング電源装置であっても採用できるということはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0040】
1……負荷
5……スイッチングトランス
50……1次巻線
51……2次巻線
52……補助巻線
31……トランジスタ
32……スイッチング制御回路
320……制御IC
P320c…電源端子
33……電圧降下回路
R5、R6……第1の分圧抵抗
R7、R8……第2の分圧抵抗
Q2、Q3、Q4……(第1、第2、第3の)状態判別トランジスタ
40……2次側整流平滑回路
41……定電圧制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次側の直流電圧の電力を2次側へ伝達するための1次巻線(50)及び2次巻線(51)並びに前記1次巻線へのスイッチング動作を制御するための動作電圧を電源供給する補助巻線(52)を有するスイッチングトランス(5)と、
前記補助巻線の出力電圧に基づいて前記スイッチングトランスを駆動させるためのトランジスタ(31)と、
前記トランジスタのスイッチング動作を制御して過電圧保護を行うための制御IC(320c)を有するスイッチング制御回路(32)と、
前記スイッチングトランスの前記2次巻線の電圧を整流・平滑して負荷(1)に電源供給するための2次側整流平滑回路(40)と、
前記2次側整流・平滑回路の出力電圧を前記制御ICを介して一定に保つ制御を行うための定電圧制御回路(41)と、
前記負荷の過負荷状態時に前記補助巻線の出力電圧が降圧されたとき前記制御ICの電源端子(P320c)に印加される端子電圧を前記過負荷状態時に降圧された出力電圧よりもさらに降下させて過負荷保護を行うための電圧降下回路(33)とを備えることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記電圧降下回路は、前記補助巻線の電圧を分圧するための第1の分圧抵抗(R5、R6)と、前記分圧された電圧と対比して前記負荷の正常状態又は過負荷状態を判別してオン/オフが反転する状態判別トランジスタ(Q2、Q3、Q4)と、前記状態判別トランジスタが前記過負荷状態を判別したとき前記補助巻線の出力電圧を分圧して前記端子電圧を前記過負荷状態時に降圧された出力電圧よりもさらに降下して前記制御ICの電源端子に印加するための第2の分圧抵抗(R7、R8)とを有することを特徴とする請求項1記載のスイッチング電源装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−120259(P2012−120259A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265079(P2010−265079)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000100908)アイホン株式会社 (777)
【Fターム(参考)】