説明

スイッチング電源装置

【課題】スイッチング素子を制御する制御回路を2次側に設けつつも、電源オン時に安定した起動を実現できるスイッチング電源装置を提供すること。
【解決手段】絶縁型トランス10の1次巻線12に流れる電流を制御するスイッチング素子13を設け、2次側の出力電圧Voutに基づいて前記スイッチング素子13のスイッチングを制御するスイッチング電源装置1において、1次側に入力される入力電圧Vinで動作し、電源オンに伴って前記スイッチング素子13のスイッチングを制御するPWM信号Sp1を出力する1次側制御IC14と、2次側に設けられて前記出力電圧Voutで動作し、前記スイッチング素子13のスイッチングを制御するPWM信号Sp2を出力する2次側制御IC25と、を備え、電源オン時には前記1次側制御IC14のPWM信号Sp1に基づき前記1次巻線12の電流を制御し、前記2次側制御IC25がPWM信号Sp2の出力を開始したときには、当該PWM信号Sp2に基づいて前記1次巻線12の電流を制御する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁型のスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電源装置としてスイッチング電源装置が知られている。スイッチング電源装置は、スイッチング素子と、このスイッチング素子の動作を制御する制御ICとを備え、制御ICが入力電圧に応じたデューティ比のPWM信号を生成してスイッチング素子をオン/オフする、いわゆるPWM制御(PWM:Pulse Width Modulation)を実行することで、所定の出力電圧を高効率に生成するものである。
またスイッチング電源装置には、電圧変換器に絶縁トランスを備え、1次側と2次側とを絶縁した絶縁型のスイッチング電源装置が知られている。絶縁型のスイッチング電源装置は、高効率であり、なおかつ絶縁性に優れ、また絶縁トランスに複数の2次巻線を設けることで多出力の電源装置を簡単に構成できることから、入力電圧を複数の出力電圧に変換する用途に広く用いられている。
【0003】
ところで、絶縁型のスイッチング電源装置では、出力電圧をフィードバック制御するために、出力電圧検出用の3次巻線(フィードバック巻線)を1次側に設け、当該3次巻線に誘起した電圧に基づいてPWM信号のデューティ比を調整する構成が知られている。しかしながら、この構成では、1次側で検出された電圧でフィードバック制御が行われるため、2次側の負荷変動による出力電圧の変化が検出されず、これに対応できない。
【0004】
そこで、出力電圧を検出する電圧検出回路を2次側に設け、当該電圧検出回路の出力を1次側に帰還して上記制御ICに入力することでフィードバック制御する構成とし、2次側の出力電圧を直接的に検出することで、負荷変動に応じて変化する出力電圧を良好に制御できる。
特に、2次側で出力電圧を検出するスイッチング電源装置では、電圧検出回路を内蔵する制御ICを2次側に設け、当該制御ICで出力電圧を検出してPWM信号を生成し、このPWM信号を1次側に伝送する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この構成によれば、2次側に電圧検出回路を別途に設けなくとも制御ICが備える電圧検出回路で出力電圧を検出しフィードバック制御することができる。また、出力電圧を1次側に帰還する構成に比べ、帰還信号の位相遅延に起因して制御ループが帯域制限されることがなく、特に過渡応答に位相遅延の影響がでることがない、などのメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2003−523711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、制御ICを2次側に設ける場合、1次側への入力電圧の入力開始(電源オン)のタイミングで2次側の制御ICが動作可能にすべく、電源オン時に制御ICに確実に電圧を供給する必要がある。
2次側の制御IC用に個別に予備電源を設ければ、電源オンのタイミングで制御ICを確実に動作させることができるが、予備電源の分だけコストが高くなる。特に、スイッチング電源装置を多出力型に構成し、出力ごとに制御ICを設ける構成とした場合には、それぞれに予備電源が必要となり、コストが増大してしまう。
【0007】
これに対し、上記の特許文献1の技術では、1次巻線にパルス変圧器を設けて2次側の制御ICの動作電力を生成することで、予備電源を不要としている。
しかしながら、電源オンのタイミングで入力電圧が十分でないと、制御ICに出力する電圧が不十分となり起動に失敗することがある。このため、特許文献1に示されるように、起動の失敗を防止するために、電源オンに伴って共振する共振回路を1次側に設け、当該共振回路の共振によって電源オン時にスイッチング素子を複数回にわたってオンすることで、確実に制御ICを起動するといった構成が別途に必要となる。しかしながら、スイッチング電源装置を、複数の出力ごとにスイッチング素子を設けて多出力型に構成した場合、共振回路の共振は主に出力ごとのスイッチング系に寄生するため、各出力に共通した共振回路を設けることができない。このため、出力ごとに共振回路を設ける必要があることから回路構成が複雑化し、また装置コストが増大する。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、スイッチング素子を制御する制御回路を2次側に設けつつも、電源オン時に安定した起動を実現できるスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、絶縁型トランスの1次巻線に流れる電流を制御するスイッチング素子を設け、2次側の出力電圧に基づいて前記スイッチング素子のスイッチングを制御するスイッチング電源装置において、1次側に入力される入力電圧で動作し、電源オンに伴って前記スイッチング素子のスイッチングを制御する第1制御信号を出力する1次側制御回路と、2次側に設けられて前記出力電圧で動作し、前記スイッチング素子のスイッチングを制御する第2制御信号を出力する2次側制御回路と、を備え、電源オン時には前記1次側制御回路の第1制御信号に基づき前記1次巻線の電流を制御し、前記2次側制御回路が第2制御信号の出力を開始したときには、当該第2制御信号に基づいて前記1次巻線の電流を制御することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、電源オンのタイミングでは1次側制御回路の第1制御信号に基づいて1次巻線の電流が制御されることで出力電圧を2次側に出力でき、当該出力電圧により2次側に設けた2次側制御回路を確実に動作開始させることができる。そして、2次側制御回路が第2制御信号の出力を開始したときには、2次側に設けた2次制御回路の第2制御信号に基づいて1次巻線の電流が制御されるため、帰還遅延を抑えた制御が可能になる。
【0011】
また本発明は、上記スイッチング電源装置において、前記1次側制御回路の第1制御信号により動作する第1スイッチング素子と、前記2次側制御回路の第2制御信号により動作する第2スイッチング素子と、を備え、前記1次巻線の電流を制御するスイッチング素子を、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との間で切り換えて、前記1次巻線の電流の制御を、前記1次側制御回路の第1制御信号に基づく制御から前記2次側制御回路の第2制御信号に基づく制御に切り換えることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、1次巻線の電流を制御するスイッチング素子を、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子との間で切り換えて、1次側制御回路の制御から2次側制御回路の制御に切り換えるため、単一のスイッチング素子に入力する信号を第1制御信号、及び第2制御信号の間で切り換える構成に比べて動作の信頼性が高められる。
【0013】
また本発明は、上記スイッチング電源装置において、前記1次巻線の電流の制御を、前記1次側制御回路の第1制御信号に基づく制御から前記2次側制御回路の第2制御信号に基づく制御に切り換えるときに、前記第1制御信号に基づいて前記1次巻線に電流が流れる期間の後に、電流を流さない期間を挟んで切り換えることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、切り換え時に、第1制御信号に基づいて1次巻線に電流が流れる期間と、第2制御信号に基づいて1次巻線に電流が流れる期間とが連続することが無いから、瞬間的に過電圧が発生するのを防止できる。
【0015】
また本発明は、上記スイッチング電源装置において、前記1次巻線の電流の制御を、前記2次側制御回路の第2制御信号に基づく制御に切り換えたときに、前記1次側制御回路を停止することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、2次側制御回路の第2制御信号に基づく制御に切り換えたときに、1次側制御回路を停止するため、省電力化が図られる。
【0017】
また本発明は、上記スイッチング電源装置において、1次側に複数の前記1次巻線を設け、それぞれの1次巻線に前記スイッチング素子を設け、2次側に前記1次巻線ごとに前記2次巻線を設けて多出力型に構成し、前記出力ごとに、対応する1次側のスイッチング素子を制御する前記2次側制御回路を設けたことを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、出力ごとに、対応する1次側のスイッチング素子を制御する2次側制御回路を設けたため、出力ごとに出力電圧がフィードバック制御されることとなり、各出力の負荷が相互に無関係に変動したときのクロスレギュレーションの発生を抑えることができる。
【0019】
また本発明は、上記スイッチング電源装置において、前記スイッチング素子のそれぞれを共通の前記1次側制御回路で制御したことを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、複数のスイッチング素子のそれぞれを共通の1次側制御回路で制御するため、装置コストを抑え、また回路規模に占める1次側制御回路の比率を小さくできる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、電源オンのタイミングでは1次側制御回路の第1制御信号に基づいて1次巻線の電流が制御されることで出力電圧を2次側に出力でき、当該出力電圧により2次側に設けた2次側制御回路を確実に動作開始させることができる。そして、2次側制御回路が第2制御信号の出力を開始したときには、2次側に設けた2次制御回路の第2制御信号に基づいて1次巻線の電流が制御されるため、帰還遅延を抑えた制御が可能になる。
また本発明において、前記1次側制御回路の第1制御信号により動作する第1スイッチング素子と、前記2次側制御回路の第2制御信号により動作する第2スイッチング素子と、を備え、前記1次巻線の電流を制御するスイッチング素子を、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との間で切り換えて、前記1次巻線の電流の制御を、前記1次側制御回路の第1制御信号に基づく制御から前記2次側制御回路の第2制御信号に基づく制御に切り換える構成とすれば、単一のスイッチング素子に入力する信号を第1制御信号、及び第2制御信号の間で切り換える構成に比べて動作の信頼性が高められる。
また本発明において、前記1次巻線の電流の制御を、前記1次側制御回路の第1制御信号に基づく制御から前記2次側制御回路の第2制御信号に基づく制御に切り換えるときに、前記第1制御信号に基づいて前記1次巻線に電流が流れる期間の後に、電流を流さない期間を挟んで切り換える構成とすれば、切り換え時に、第1制御信号に基づいて1次巻線に電流が流れる期間と、第2制御信号に基づいて1次巻線に電流が流れる期間とが連続することが無いから、瞬間的に過電圧が発生するのを防止できる。
また本発明において、前記1次巻線の電流の制御を、前記2次側制御回路の第2制御信号に基づく制御に切り換えたときに、前記1次側制御回路を停止する構成とすれば、2次側制御回路の第2制御信号に基づく制御に切り換えたときに、1次側制御回路を停止するため、省電力化が図られる。
また本発明において、1次側に複数の前記1次巻線を設け、それぞれの1次巻線に前記スイッチング素子を設け、2次側に前記1次巻線ごとに前記2次巻線を設けて多出力型に構成し、前記出力ごとに、対応する1次側のスイッチング素子を制御する前記2次側制御回路を設ける構成とすれば、出力ごとに、対応する1次側のスイッチング素子を制御する2次側制御回路を設けたため、出力ごとに出力電圧がフィードバック制御されることとなり、各出力の負荷が相互に無関係に変動したときのクロスレギュレーションの発生を抑えることができる。
また本発明において、前記スイッチング素子のそれぞれを共通の前記1次側制御回路で制御する構成とすれば、複数のスイッチング素子のそれぞれを共通の1次側制御回路で制御するため、装置コストを抑え、また回路規模に占める1次側制御回路の比率を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係るスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
【図2】2次側制御ICの回路図である。
【図3】切換回路の回路図である。
【図4】第1実施形態の変形例に係るスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
【図5】第1実施形態の電源系統スレイブの変形例に係る回路図である。
【図6】同変形例における切換回路の回路図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
【図8】起動検出回路及び切換回路の構成を示す図である。
【図9】PWM信号の切換動作を示すタイミングチャートである。
【図10】第2実施形態の切換回路の変形例に係る回路図である。
【図11】同変形例におけるPWM信号の切換動作を示すタイミングチャートである。
【図12】第2実施形態の切換回路の他の変形例に係る回路図である。
【図13】同変形例におけるPWM信号の切換動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1は、本実施形態に係る絶縁型のスイッチング電源装置1の回路図である。
スイッチング電源装置1は、車両駆動用の3相の駆動モータを駆動するインバータ回路が負荷として接続されるものであり、図1に示すように、他励式及びフライバック式のDC−DCコンバータとして構成され、絶縁型トランス10を有する。絶縁型トランス10の1次側には、直流電源たる車両のイグニッション電源IGが接続されており、車両のイグニッションスイッチがオンされると当該イグニッション電源IGから入力電圧Vinが1次側に入力される。スイッチング電源装置1は、1次側に入力された入力電圧Vinを変換し、2次側に所定電圧レベルの複数の出力電圧Voutを出力する。具体的には、スイッチング電源装置1は、インバータ回路が備える6つのIGBTのゲート端子ごとに設けられた6つのゲートドライブ回路UH、UL、VH、VL、WH、WLのそれぞれに出力電圧Voutを出力する、いわゆる多出力型に構成されている。
【0024】
かかるスイッチング電源装置1の構成について詳述すると、絶縁型トランス10の1次側には、互いに並列に接続された複数(本実施形態では7個)の1次巻線12と、1次巻線ごとに直列に接続されて当該1次巻線に流れる電流を制御するスイッチング素子13とが設けられている。さらに1次側には、各スイッチング素子13にPWM信号Sp1を出力してスイッチングを制御する1次側制御IC14が設けられている。この1次側制御IC14は、スイッチング素子13ごとに設けることもできるが、本実施形態では、各スイッチング素子13に共通に1次側制御14を設けており、これにより回路規模に占める1次側制御IC14の比率を小さくしている。
この1次側制御IC14は、入力電圧Vinで動作する回路であって、入力電圧Vinの入力開始(電源オン)に伴ってPWM信号Sp1の出力を開始する。
【0025】
一方、絶縁型トランス10の2次側に、1次巻線12ごとに対応して設けられた2次巻線15と、2次巻線15ごとに設けられた出力回路18とが備えられて、多出力型に構成されており、これら出力回路18のうち、1つには電圧検出回路22が設けられ、残余の出力回路18には2次側制御IC25が設けられている。
出力回路18は、ダイオード16、及び平滑用コンデンサ17を有し、スイッチング素子13のスイッチングに伴って各1次巻線12に生じる電流変化に伴って2次巻線15のそれぞれに誘起される起電力をダイオード16、及び平滑用コンデンサ17によって整流、平滑化し出力電圧Voutを出力する。
本実施形態では、ゲートドライブ回路UH、UL、VH、VL、WH、WLに接続される出力回路18の出力電圧の定格は共に同一である。7つの出力回路18のうちの1つには、図1中の出力HVccに高圧側マイコン21が負荷として接続され、残余の6つの出力回路18には、それぞれゲートドライブ回路UH、UL、VH、VL、WH、WLが負荷として接続される。
【0026】
高圧側マイコン21は、上位の車載コンピュータであるECU(エンジンコントロールユニット)の制御の下、ゲートドライブ回路UH、UL、VH、VL、WH、WLの温度や電圧等を検出してECUに出力するものであり、定常的に略一定の電力を消費する電子回路である。すなわち、この高圧側マイコン21が接続された出力回路18では高圧側マイコン21による負荷変動が殆どない事から出力電圧Voutが安定しており、この出力回路18に上記電圧検出回路22を設けて出力電圧Voutを検出することで安定して2次側の出力電圧Voutが検出される。
電圧検出回路22には、出力電圧Voutを抵抗R1、R2で分割した分割電圧Vdetが入力され、この分割電圧Vdetと、参照定電圧Vref(図2)との比較結果を示すフィードバック信号Saを出力する。参照定電圧Vrefは、出力電圧Voutの定格電圧に応じて規定された電圧値である。すなわち、分割電圧Vdetが参照定電圧Vrefを超えている場合には、出力電圧Voutが定格電圧を超過し、これとは逆に、分割電圧Vdetが参照電圧を下回っている場合には、出力電圧Voutが定格電圧を下回っている事が示される。
電圧検出回路22は、出力電圧Voutが定格電圧を超えている場合には、フィードバック信号SaをHighレベルとし、出力電圧Voutが定格電圧を下回っている場合には、フィードバック信号SaをLowレベルとする。なお、出力電圧Voutが定格電圧と等しい場合にフィードバック信号SaをHighレベル/Lowレベルのどちらにするかは任意である。
【0027】
電圧検出回路22のフィードバック信号Saは、フォトカプラ等の絶縁素子23を介して1次側の1次側制御IC14に帰還される。1次側制御IC14は、電圧検出回路22のフィードバック信号Saに基づいて、出力電圧Voutを定格電圧に近づけるようにデューティ比を調整したPWM信号Sp1を生成しバッファ回路24を介してスイッチング素子13に入力する。
具体的には、1次側制御IC14は、フィードバック信号SaがHighレベルである場合(出力電圧Voutの超過状態)、PWM信号Sp1のデューティ比を最小デューティ比にし、これとは逆に、フィードバック信号SaがLowレベルである場合(出力電圧Voutの不足状態)、PWM信号Sp1のデューティ比を最大デューティ比とする。これにより、出力電圧Voutがフィードバック制御される。上述の通り、この1次側制御IC14によって1次側の各スイッチング素子13が制御され、対応する各出力回路18に出力電圧Voutが出力される。
【0028】
一方、ゲートドライブ回路UH、UL、VH、VL、WH、WLが負荷として接続されている出力回路18のそれぞれには、電圧検出回路22に代えて、上記2次側制御IC25が接続されている。
2次側制御IC25は、対応する出力回路18の出力電圧Voutで動作し、当該出力回路18と対を成す1次側のスイッチング素子13に対し、スイッチングを制御するPWM信号Sp2を絶縁素子23及び切換回路26を介して出力する。
切換回路26は、スイッチング素子13の前段に設けられ、スイッチング素子13に入力する信号をPWM信号Sp1、Sp2の間で切り換える回路である。
具体的には、切換回路26は、電源オンに伴い出力電圧Voutが2次側制御IC25の動作開始電圧を超えて当該2次側制御IC25からPWM信号Sp2が出力開始されるまでの間、1次側制御IC14のPWM信号Sp1をスイッチング素子13に出力し、PWM信号Sp2の出力開始後は、当該PWM信号Sp2をスイッチング素子13に出力する。
これにより、スイッチング電源装置1にあっては、電源オンの当初は、1次側制御IC14の制御で動作し、2次側制御IC25が動作を開始した後は当該2次側制御IC25の制御に切り換えて動作することとなる。
【0029】
なお、以下の説明では、2次側の出力回路18に電圧検出回路22を備え、当該電圧検出回路22のフィードバック信号Saに基づいて出力電圧Voutがフィードバック制御される電源系統を電源系統マスタBmと称し、2次側の出力回路18に2次側制御IC25を備え当該2次側制御IC25によってフィードバック制御される電源系統を電源系統スレイブBsと称して、それぞれを必要に応じて区別することとする。
【0030】
さて、上記2次側制御IC25、及び1次側制御IC14は互いに同一回路構成を成しており、その構成について2次側制御IC25を代表して説明する。
図2は、2次側制御IC25の回路図である。
2次側制御IC25は、内蔵電圧検出回路30と、発振回路31と、PWMコンパレータ32と、バッファ回路33とを備えている。
内蔵電圧検出回路30は、電源系統マスタBmが備える電圧検出回路22と同様に、出力電圧Voutの超過の有無を示すフィードバック信号Saを出力する。すなわち、内蔵電圧検出回路30は、上記参照定電圧Vrefを出力する定電圧源35と、出力電圧Voutの分割電圧Vdetと参照定電圧Vrefとを比較してフィードバック信号Saを出力するコンパレータ36とを備え、分割電圧Vdetが参照定電圧Vrefを超えている場合(出力電圧Voutの超過状態)、Highレベルのフィードバック信号Saを出力し、分割電圧Vdetが参照定電圧Vrefを下回っている場合(出力電圧Voutの不足状態)、Lowレベルのフィードバック信号Saを出力し、このフィードバック信号SaがPWMコンパレータ32に入力される。
2次側制御IC25が内蔵電圧検出回路30を内蔵するため、電源系統スレイブBsの2次側においては、別途に電圧検出回路22を設けずとも、出力電圧Voutの超過の有無(過不足)を検出し、フィードバック制御が可能になる。
なお、同図に示す2次側制御IC25が1次側制御IC14として用いられる場合には、出力電圧Voutの高低を示すフィードバック信号Saに接続される。
【0031】
発振回路31は、PWM信号Sp2のベース信号となる一定周期の三角波を生成し、PWMコンパレータ32に出力する。
PWMコンパレータ32は、デューティ比がフィードバック信号Saの信号レベルに応じた可変されたPWM信号Sp2を生成し、バッファ回路33を介してスイッチング素子13のゲート端子に供給する。
具体的には、PWMコンパレータ32には、発振回路31が生成する三角波信号Stと、内蔵電圧検出回路30からのフィードバック信号Saとが入力されており、PWMコンパレータ32は、フィードバック信号Saの信号レベルに応じて三角波信号Stのデューティ比を最大デューティ比、及び最小デューティ比の間で、上記出力電圧Voutと参照定電圧Vrefの差分に応じて調整してPWM信号Sp2を生成する。
かかるPWM信号Sp2は、バッファ回路33を介して絶縁素子23に入力され1次側に伝送され、対応するスイッチング素子13の切換回路26に入力される。
【0032】
図3は、切換回路26の回路図である。
切換回路26は、上述の通り、2次側制御IC25からPWM信号Sp2が出力開始されるまで1次側制御IC14のPWM信号Sp1を出力し、PWM信号Sp2の出力開始後は、当該PWM信号Sp2を出力する回路である。
具体的には、切換回路26は、大別すると、波形成形回路40と、NOR回路41と、信号遮断回路42と、NOT回路43と、ディレイ回路44とを備えている。
波形成形回路40は、絶縁素子23を介して1次側に伝送されたPWM信号Sp2の波形を成形するものであり、プルアップ抵抗45と、このオープンコレクタのトランジスタ46とを備え、NOR回路41にPWM信号Sp2を出力する。
【0033】
信号遮断回路42は、波形成形回路40からPWM信号Sp2が出力されたときにNOR回路41へのPWM信号Sp1の入力を遮断する。すなわち、信号遮断回路42は、PWM信号Sp2のHighレベルの信号入力に応じてオンし、NOR回路41のPWM信号Sp1の入力端をアース電位に接続するトランジスタ47と、PWM信号Sp2のHighレベルの信号入力によりチャージされてトランジスタ47のオン電圧を保持するコンデンサ48と、逆流防止用のダイオード49とを備えて構成されている。
PWM信号Sp2にはHighレベルの信号が短い周期で含まれることから、PWM信号Sp2が出力されている間はコンデンサ48が充電状態に保持されトランジスタ47が継続的にオンになり、これにより、NOR回路41へのPWM信号Sp1の入力が継続的に遮断される。
【0034】
かかる構成の下、信号遮断回路42によってPWM信号Sp1が遮断されていない間、すなわち、PWM信号Sp2が出力されていない間は、NOR回路41に入力されるPWM信号Sp2の信号レベルはLowレベルであるから、当該NOR回路41からはPWM信号Sp1の反転信号が出力される。
一方、信号遮断回路42がPWM信号Sp1を遮断している場合、すなわち、PWM信号Sp1が出力されている場合は、NOR回路41に入力されるPWM信号Sp1の信号レベルがLowレベルとなるから、当該NOR回路41からはPWM信号Sp2の反転信号が出力される。
【0035】
NOT回路43は、NOR回路41の出力を反転して出力する回路であり、これにより、切換回路26からは、PWM信号Sp2が入力されていない間、PWM信号Sp1が出力され、またPWM信号Sp2が入力されている間は、当該PWM信号Sp2が出力される。
電源系統スレイブBsにあっては、切換回路26からPWM信号Sp2が出力されることで、スイッチング素子13がPWM信号Sp2に基づいてスイッチングし、これにより、出力電圧Voutのフィードバック制御が1次側制御IC14から2次側制御IC25に切り換えられることとなる。
【0036】
ただし、切換回路26にてPWM信号Sp1からPWM信号Sp2に出力する信号を急に切り換えると、切り換え時に、PWM信号Sp1のHighレベル(オン期間)とPWM信号Sp2のHighレベル(オン期間)とが繋がって、デューティ比の大きなパルス信号がスイッチング素子13に入力される場合があり、瞬間的な過電圧が生じる原因となる。
そこで、本実施形態では、切換回路26に、上記ディレイ回路44を設けている。すなわち、ディレイ回路44は、PWM信号Sp1の出力停止とPWM信号Sp2の出力開始との間に時間差を設けて、1次巻線12に電流を流さないオフ期間を作ることで、PWM信号Sp1のオン期間とPWM信号Sp2のオン期間とが連続するのを防止する回路である。
具体的には、ディレイ回路44は、NOR回路41へのPWM信号Sp1の入力が信号遮断回路42によって遮断されたときから時間をあけてNOR回路41へのPWM信号Sp2の入力を開始する。すなわち、ディレイ回路44は、NOR回路41のPWM信号Sp2の入力端をアースに接続するトランジスタ50と、このトランジスタ50のオン電圧を保持してトランジスタ50を継続的にオンするコンデンサ51と、このコンデンサ51をPWM信号Sp2の入力に伴って放電してトランジスタ50をオフし、NOR回路41にPWM信号Sp2を入力するトランジスタ52とを備えている。
【0037】
これにより、切換回路26にPWM信号Sp2が入力されたときには、信号遮断回路42によってNOR回路41へのPWM信号Sp1の入力が遮断されるとともに、ディレイ回路44のコンデンサ51が放電開始される。そして、当該放電によりトランジスタ50がオフしたタイミングでPWM信号Sp2のNOR回路41への入力が開始される。
これにより、PWM信号Sp1の出力が停止したタイミングからコンデンサ51の放電によるディレイ分が経過するまで、スイッチング素子13への信号入力が停止して1次巻線12に電流が流れないオフ期間となり、その後にPWM信号Sp2の出力が開始される。したがって、デューティ比の大きなパルス信号がスイッチング素子13に入力されることがなく、切り換え時に瞬間的な過電圧が生じる事がない。
【0038】
以上説明したように、本実施形態によれば、電源オン時の1次側制御IC14の制御による出力電圧Voutの上昇に伴って2次側制御IC25が動作開始したときに、スイッチング素子13の制御を1次側制御IC14から2次側制御IC25に切り換える構成とした。
この構成により、電源オンのタイミングでは1次側制御IC14が動作することで、2次側に出力電圧Voutを確実に出力し、この出力電圧Voutにより2次側制御IC25を起動させることができる。そして、2次側制御IC25の起動後は、スイッチング素子13の制御信号が2次側で生成されることから、帰還遅延のない出力電圧のフィードバック制御が実現される。
【0039】
また本実施形態によれば、スイッチング素子13の制御を1次側制御IC14から2次側制御IC25に切り換えるときに、1次側制御IC14からスイッチング素子13へのPWM信号Sp1の出力を停止したときから時間をあけて2次側制御IC25のPWM信号Sp2をスイッチング素子13に出力する構成としたため、切り換え時には、1次巻線12に電流が流れない期間が必ず設けられる。これにより、デューティ比の大きなパルス信号がスイッチング素子13に入力されることが確実に防止され、切り換え時に瞬間的な過電圧が生じる事がない。
【0040】
また本実施形態によれば、2次側の複数の出力回路18ごとに、対応する1次側のスイッチング素子13を制御する2次側制御IC25を設けたため、出力回路18ごとに出力電圧Voutがフィードバック制御されることとなり、各出力回路18の負荷が相互に無関係に変動したときのクロスレギュレーションを抑えることができる。
【0041】
また本実施形態によれば、複数のスイッチング素子13のそれぞれを共通の1次側制御IC14で制御する構成としたため、装置コストを抑え、また回路規模に占める1次側制御IC14の比率を小さくできる。
【0042】
なお、第1実施形態において、次のような変形が可能である。
<変形例1−1>
上述した実施形態では、図1に示すように、電源系統マスタBmにおいて、2次側に電圧検出回路22を設けて出力電圧Voutをフィードバック制御する構成とした。しかしながら、これに限らない。すなわち、図4に示すように、スイッチング電源装置100の1次側に出力電圧検出用の3次巻線(フィードバック巻線)122Aを設け、当該3次巻線122Aに誘起した電圧を1次側制御IC14に入力し、この電圧に基づいて1次側制御IC14がPWM信号Sp1のデューティ比を調整する構成としても良い。
【0043】
<変形例1−2>
上述した実施形態では、電源系統スレイブBsにおいて、PWM信号Sp1、Sp2のいずれかを同一のスイッチング素子13に排他的に供給する構成として、1次側制御IC14による制御と、2次側制御IC25による制御とを切り換える構成としたが、これに限らない。
すなわち、図5に示すように、PWM信号Sp1によりスイッチングが制御されるスイッチング素子213Aと、PWM信号Sp2によりスイッチングが制御されるスイッチング素子213Bとを互いに並列に1次巻線12に接続し、PWM信号Sp2の出力の有無に応じて、スイッチング素子213A及び213Bのそれぞれを排他的に有効にする切換回路226を設けることで、1次巻線12に流れる電流を制御するスイッチング素子をスイッチング素子213A、213Bの間で切り換えて、1次側制御IC14による制御と、2次側制御IC25による制御とを切り換える構成としても良い。
【0044】
図6は、本変形例における切換回路226の回路図である。
この切換回路226は、バッファ回路261と、信号遮断回路242と、ディレイ回路244とを備えている。バッファ回路261は、絶縁素子23を介して入力されるPWM信号Sp2の波形成形器として機能する。また信号遮断回路242は、PWM信号Sp2(のHighレベル)が出力されたときにスイッチング素子213AへのPWM信号Sp1の入力を遮断するものである。すなわち、信号遮断回路242は、第1実施形態の信号遮断回路42と略同様の構成を有し、PWM信号Sp2のHighレベルの信号入力に応じてオンしてスイッチング素子213AのPWM信号Sp1の入力端をアース電位に接続するトランジスタ47と、PWM信号Sp2のHighレベルの信号入力によりチャージされてトランジスタ47のオン電圧を保持するコンデンサ48と、逆流防止用のダイオード49とを備えて構成されている。
【0045】
ディレイ回路244は、PWM信号Sp1を遮断したときから時間をおいてPWM信号Sp2をスイッチング素子213Bに入力することで、PWM信号Sp1からPWM信号Sp2への切り換え時に、スイッチング素子213A、213Bの両方がオンになる期間が重複し、瞬間的な過電圧が生じる事を防止する。すなわち、ディレイ回路244は、スイッチング素子213BのPWM信号Sp2の入力端をアースに接続するトランジスタ250と、このトランジスタ250のオン電圧を保持してトランジスタ250を継続的にオンするコンデンサ251と、このコンデンサ251からの逆流を防止するダイオード252とを備えている。このコンデンサ251の高電位側は、上記スイッチング素子213Aの入力端に接続されており、PWM信号Sp2の入力に伴ってトランジスタ47がオフすることでグラウンドに接続され、放電を開始する。
【0046】
したがって、切換回路226にPWM信号Sp2が入力されたときには、信号遮断回路242によってスイッチング素子213AへのPWM信号Sp1の入力が遮断され、当該スイッチング素子213Aのスイッチングが停止する。これと同時に、ディレイ回路244ではコンデンサ251が放電を開始し、当該放電によりトランジスタ250がオフしたタイミングでPWM信号Sp2のスイッチング素子213Bへの入力が開始され、当該スイッチング素子213Bがスイッチングを開始する。
これにより、PWM信号Sp1で動作するスイッチング素子213Aが停止したタイミングから、コンデンサ251の放電によるディレイ分が経過したときにPWM信号Sp2で動作するスイッチング素子213Bが動作を開始するため、スイッチング素子213A、213Bの両方がオンになる期間が重複することがなく、切り換え時に瞬間的な過電圧が生じる事がない。
【0047】
このように、本変形例によれば、1次巻線12の電流を制御するスイッチング素子を、スイッチング素子213A、213Bの間で切り換えて、1次側制御IC14の制御から2次側制御IC25の制御に切り換えるため、単一のスイッチング素子に入力する信号をPWM信号Sp1、Sp2の間で切り換える構成に比べて動作の信頼性が高められる。
【0048】
<第2実施形態>
上述した第1実施形態では、多出力型のスイッチング電源装置1を例示したが、本実施形態では、出力が1つの形態を説明する。
図7は、本実施形態に係るスイッチング電源装置300の構成を示す回路図である。
この図に示すように、スイッチング電源装置300では、1次側に出力電圧検出用の3次巻線(フィードバック巻線)322Aを設けて、3次巻線322Aの電圧Vaを1次側制御IC14に入力し、この電圧Vaに基づいて1次側制御IC14がPWM信号Sp1のデューティ比を調整して出力電圧Voutのフィードバック制御を行うように構成され、さらに、起動検出回路370と、この起動検出回路370の出力に基づいて動作する切換回路326と、を備える点で第1実施形態と構成を異にしている。
【0049】
図8は、起動検出回路370及び切換回路326の構成を示す図である。
起動検出回路370は、2次側制御IC25の起動(すなわち、PWM信号Sp2の出力開始)に応じて出力する信号を切り換える回路である。すなわち、起動検出回路370は、コンデンサ375を有する検出回路373と、このコンデンサ375からの逆流を防止するダイオード372と、バッファ回路371、374を有し、コンデンサ375の充電電圧に応じたHigh又はLowレベルの信号を切換指示信号Sc及び停止信号Sbとして出力する。停止信号Sbは、1次側制御IC14に動作停止を指示する信号である。
【0050】
コンデンサ375は、PWM信号Sp2のHighレベルの信号入力で充電されるものであり、PWM信号Sp2にはHighレベルの信号が短い周期で含まれることから、PWM信号Sp2が出力されている間はコンデンサ375が充電状態に維持される。したがって、起動検出回路370からは、PWM信号Sp2が出力されている間は、コンデンサ375の充電によってHighレベルの信号が出力され、これとは逆に、PWM信号Sp2が出力されていない間は、コンデンサ375が放電状態となることでLowレベルの信号が出力される。
【0051】
切換回路326は、起動検出回路370の切換指示信号Scの信号レベルに応じてPWM信号Sp1、PWM信号Sp2のいずれかを排他的に出力する。すなわち、切換指示信号Scの信号レベルがLowレベルの間、PWM信号Sp1を出力し、Highレベルの間はLowレベルを出力するAND回路380と、切換指示信号Scの信号レベルがHighレベルの間、PWM信号Sp1を出力しLowレベルの間は当該Lowレベルを出力するAND回路381と、これらAND回路380、381の論理和を出力するOR回路382と、バッファ回路383とを備えている。
【0052】
かかる構成の下、図9に示すように、2次側制御IC25のPWM信号Sp2が起動検出回路370に入力されたタイミングtaで停止信号Sb及び切換指示信号ScがHighレベルに遷移する。これらのうち停止信号Sbは1次側制御IC14に入力され、当該1次側制御IC14がPWM信号Sp1の出力を停止する。また、切換指示信号ScがHighレベルになることで、切換回路326は、出信号をPWM信号Sp1からPWM信号Sp2にタイミングtaで切り換え、スイッチング素子13に出力する。
これにより、スイッチング素子13の制御が1次側制御IC14から2次側制御IC25に切り換えられる。また切り換え後には、1次側制御IC14が停止することから省電力化が図られる。
【0053】
このように本実施形態によれば、第1実施形態で述べた効果の他に、次のような効果を奏する。
すなわち、本実施形態によれば、2次側制御IC25のPWM信号Sp2に基づく制御に切り換わったときに、1次側制御IC14を停止する構成としたため、電力消費を抑えることができる。
【0054】
なお、本実施形態のスイッチング電源装置300に対しては、次のような変形が可能である。
【0055】
<変形例2−1>
第2実施形態では、2次側制御IC25のPWM信号Sp2が起動検出回路370に入力されたタイミングtaで、切換回路326が出信号をPWM信号Sp1からPWM信号Sp2にタイミングtaで切り換える構成とした。
この構成においては、前掲図9に示すように、PWM信号Sp1のパルスPu1がHighレベルのときに、切り換えが行われると、このパルスPu1に、PWM信号Sp2のパルスPu2が連続し、オン期間Wtが長いパルス信号がスイッチング素子13に出力されてしまい、瞬間的に過電圧が生じる。
そこで、本変形例では、図10に示すように、切り換え時に、PWM信号Sp1とPWM信号Sp2とのオン期間が連続するのを防止するためのラッチ部444を切換回路426に設ける構成としている。なお、図10において、図8と同一の部材については同じ符号を付して、説明を省略する。
【0056】
このラッチ部444は、切換回路426の出力端に設けられたAND回路483に入力する信号の信号レベルを切り換えることで、当該切換回路426の出力の許可/停止を切り換え可能に構成されている。具体的には、ラッチ部444は、ラッチ回路491と、ラッチ回路491にセット信号を入力するAND回路490とを備えている。AND回路490は、切換回路426が出力するPWM信号Sp1とPWM信号Sp2とが共にHighレベルになるとき、すなわちOR回路382への入力が共にHighレベルのときに、ラッチ回路491にセット信号を出力する。ラッチ回路491は、セット信号の入力によりAND回路483への出力状態をLowレベル状態に保持し、またPWM信号Sp2がLowレベルになったときにラッチ解除される。
【0057】
これにより、図11に示すように、2次側制御IC25のPWM信号Sp2のパルスPu2が起動検出回路370に入力されたタイミングtaにおいて、1次側制御IC14のPWM信号Sp1のパルスPu1がHighレベルのときには、ラッチ部444が作動することで、切換回路426の出力が停止し、その後、PWM信号Sp2がLowレベルに遷移したタイミングtbでラッチ解除される。
これにより、切換時のタイミングtaにおいて、PWM信号Sp1のパルスPu1がHighレベルのときには、オフ期間(すなわち、1次巻線12に電流が流れない期間)が必ず設けられることから、オン期間Wtが長いパルス信号がスイッチング素子13に出力されてしまうことがなく、瞬間的な過電圧の発生を防止できる。
【0058】
<変形例2−2>
上述の変形例2−1では、PWM信号Sp1とPWM信号Sp2とのオン期間が連続するのを防止するためにラッチ回路491を用いた構成を例示したが、これに限らない。
すなわち、図12に示すように、PWM信号Sp1の出力を停止させるための切換指示信号Sc1に対して、PWM信号Sp2の出力を許可させるための切換指示信号Sc2をディレイ回路595により遅延させ切換回路326に入力する構成としても良い。
これにより、図13に示すように、切換時のタイミングtaにおいて、切換指示信号Sc1によりPWM信号Sp1の出力が停止された後、ディレイ回路595による遅延時間が経過したタイミングtcで切換指示信号Sc2によりPWM信号Sp2の出力が開始されるから、PWM信号Sp1とPWM信号Sp2の間に、必ずオフ期間(すなわち、1次巻線12に電流が流れない期間)が設けられる。これより、オン期間Wtが長いパルス信号がスイッチング素子13に出力されてしまうことがなく、瞬間的な過電圧の発生を防止できる。
【0059】
なお、上述した第1及び第2実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。
【0060】
例えば、上述した各実施形態において、2次側制御IC25が内蔵電圧検出回路30を内蔵する構成に限らず、2次側制御IC25の外部に備える構成としても良い。
また例えば、第2実施形態及び第2実施形態の変形例にて説明した各切換回路326、426を第1実施形態の切換回路26に用いても良い。
【符号の説明】
【0061】
1、100、300 スイッチング電源装置
18 出力回路
10 絶縁型トランス
12 1次巻線
13 スイッチング素子
14 1次側制御IC(1次側制御回路)
15 2次巻線
18 出力回路
22 電圧検出回路
25 2次側制御IC(2次側制御回路)
26、226、326 切換回路
30 内蔵電圧検出回路
44、244 ディレイ回路
122A、322A 3次巻線
213A スイッチング素子(第1スイッチング素子)
213B スイッチング素子(第2スイッチング素子)
370 起動検出回路
444 ラッチ部
595 ディレイ回路
Bm 電源系統マスタ
Bs 電源系統スレイブ
Sp1 PWM信号(第1制御信号)
Sp2 PWM信号(第2制御信号)
Vin 入力電圧
Vout 出力電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁型トランスの1次巻線に流れる電流を制御するスイッチング素子を設け、2次側の出力電圧に基づいて前記スイッチング素子のスイッチングを制御するスイッチング電源装置において、
1次側に入力される入力電圧で動作し、電源オンに伴って前記スイッチング素子のスイッチングを制御する第1制御信号を出力する1次側制御回路と、
2次側に設けられて前記出力電圧で動作し、前記スイッチング素子のスイッチングを制御する第2制御信号を出力する2次側制御回路と、を備え、
電源オン時には前記1次側制御回路の第1制御信号に基づき前記1次巻線の電流を制御し、前記2次側制御回路が第2制御信号の出力を開始したときには、当該第2制御信号に基づいて前記1次巻線の電流を制御する
ことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記1次側制御回路の第1制御信号により動作する第1スイッチング素子と、
前記2次側制御回路の第2制御信号により動作する第2スイッチング素子と、を備え、
前記1次巻線の電流を制御するスイッチング素子を、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との間で切り換えて、前記1次巻線の電流の制御を、前記1次側制御回路の第1制御信号に基づく制御から前記2次側制御回路の第2制御信号に基づく制御に切り換えることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記1次巻線の電流の制御を、前記1次側制御回路の第1制御信号に基づく制御から前記2次側制御回路の第2制御信号に基づく制御に切り換えるときに、前記第1制御信号に基づいて前記1次巻線に電流が流れる期間の後に、電流を流さない期間を挟んで切り換える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記1次巻線の電流の制御を、前記2次側制御回路の第2制御信号に基づく制御に切り換えたときに、前記1次側制御回路を停止することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
1次側に複数の前記1次巻線を設け、それぞれの1次巻線に前記スイッチング素子を設け、2次側に前記1次巻線ごとに前記2次巻線を設けて多出力型に構成し、
前記出力ごとに、対応する1次側のスイッチング素子を制御する前記2次側制御回路を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
前記スイッチング素子のそれぞれを共通の前記1次側制御回路で制御した
ことを特徴とする請求項5に記載のスイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−139003(P2012−139003A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288519(P2010−288519)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】