説明

スイッチング電源装置

【課題】入力電圧が変動した場合においても補正による適切な過電流検出を行うことができるスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】直流電源Viの両端に接続され、スイッチング素子Qhとスイッチング素子Qlとが直列に接続された第1直列回路と、スイッチング素子Qlに並列に接続され、共振コンデンサCriと共振リアクトルLrとトランスT1の1次巻線Npとが直列に接続された第2直列回路と、トランスT1の2次巻線Nsの電圧を整流平滑する整流平滑回路と、スイッチング素子Qhとスイッチング素子Qlとを交互にオン/オフさせる制御回路と、スイッチング素子Qhがオン時の共振コンデンサCriに流れる電流を検出する電流検出部と、電流検出部により検出された電流を電圧信号に変換するとともに、電圧信号の電圧値が第1基準電圧値以上である期間に電圧信号を積分する積分回路と、積分回路による出力電圧が第2基準電圧値以上である場合にスイッチング素子Qhをオフさせる過電流保護部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過電流検出を行う保護回路を有する半波電流共振型のスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から過電流検出を行う保護機能付きのスイッチング電源装置が使用されている。特許文献1には、過電流保護機能を有するスイッチングレギュレータが記載されている。このスイッチングレギュレータは、スイッチング素子に流れる電流を検出する過電流検出手段と、スイッチング素子のゲート端子に入力されるスイッチングパルスを積分する積分回路とを備えており、過電流検出手段により過電流が検出されるとともに、積分回路によってスイッチングパルスのパルス幅が許容範囲外である場合に、保護回路が動作するものである。
【0003】
このスイッチングレギュレータにおいては、瞬時の負荷変動で誤動作してしまうことを解決するために、ゲートパルスを積分する積分回路の充電経路と放電経路とを異なるものとし、保護回路の感度を下げて誤動作を防ぐことができる。
【0004】
特許文献2には、外部ノイズや内部電流ノイズ等による誤動作を防止する電源装置が記載されている。この電源装置は、スイッチング素子がオフしている期間等の動作の必要がない期間において、過電流検出回路による過電流検出動作を禁止することで不用意なノイズによる誤動作を防止するものである。
【0005】
図11は、従来の半波電流共振回路の構成を示す回路図である。この半波電流共振回路は、トランスT1の二次巻線Ns側が半波整流回路となっている電流共振型のスイッチング電源装置である。図11に示すように、直流電源Viにハイサイドのスイッチング素子Qhとローサイドのスイッチング素子Qlが直列に接続されている。これらのスイッチング素子の各々にはボディダイオードが並列に接続されている。また、ローサイドのスイッチング素子Qlには、電圧共振コンデンサCrvが並列に接続されている。
【0006】
さらにローサイドのスイッチング素子Qlには、リアクトルLrとトランスT1の一次巻線Np(励磁インダクタンスLp)と共振コンデンサCriとからなる直列共振回路が並列に接続されている。
【0007】
トランスT1の二次巻線NsにはダイオードRCと平滑コンデンサとが直列に接続され、平滑コンデンサにより平滑された直流電力が負荷Roに供給されている。なお、ハイサイド及びローサイドのスイッチング素子Qh,Qlには、例えばMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等が使用される。
【0008】
このスイッチング電源装置は、スイッチング素子Qh,Qlを交互にオン、オフさせ、スイッチング素子Qhがオンしてスイッチング素子Qlがオフした状態において、リアクトルLr、一次巻線Npの励磁インダクタンスLp、及び共振コンデンサCriが共振し、共振電流が直流電源Viの正極から流れて共振コンデンサCriを充電させる。
【0009】
次に、スイッチング素子Qhがオフし、スイッチング素子Qlがオンすると、トランスT1の一次巻線Npには、共振コンデンサCriの充電電圧が印加され、一次巻線Npの両端の電圧が逆になり、トランスT1の二次巻線Nsに接続されたダイオードRCがオンする。
【0010】
すなわち、リアクトルLrと共振コンデンサCriとは共振し、共振電流が流れることにより二次巻線Ns側にエネルギを伝達する。二次巻線Ns側に伝達されたエネルギは、ダイオードRCを介して整流され、平滑コンデンサに充電される。この平滑コンデンサは、抵抗Roに直流電力を供給する。
【0011】
トランスT1の二次側に伝達されるエネルギは、共振コンデンサCriの充電容量によって決まるので、スイッチング素子Qhのオン期間を変化させることで、トランスT1の二次側へ伝達されるエネルギを変化させることができる。
【0012】
また、二次側へ伝達されるエネルギは、共振コンデンサCriとリアクトルLrとで共振した共振電流に対応するので、二次側へエネルギが伝達される期間は一定であり、スイッチング素子Qlのオン期間の長さには依存しない。
【0013】
したがって、この半波電流共振回路は、入力電圧、負荷に応じてスイッチング素子Qhのオン幅を変調して出力電圧を制御する。一方、スイッチング素子Qlのオン幅は一定である。共振コンデンサCriが十分に大きい場合には、この共振コンデンサCriに蓄えられるエネルギーは一定である。このため、回路1次側に流れる電流も負荷が同じであれば入力電圧が変動してもピーク値は一定となる(理想状態)。したがって、この半波電流共振回路における過電流の検出は、共振コンデンサCriに並列に電流検出用のコンデンサC1を接続し、分流された電流を検出抵抗R1に流し、この検出抵抗R1の両端に現れた電圧を検出することにより行われ、当該電圧が所定値以上であるか否かに基づいて過電流判定を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平1−170369号公報
【特許文献2】特開平10−163836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、スイッチング素子のオン抵抗や共振コンデンサCriが小さい場合に現れるリップル、ラインレギュレーションの影響により入力電圧によって回路1次側に流れる電流のピーク値が変動してしまう。
【0016】
図12は、図11に示す従来の半波電流共振回路において、入力電圧Vin(直流電源Vi)を変化させた場合の動作波形を比較する波形図であり、共振コンデンサCriに流れる共振電流と、検出抵抗R1の両端にあらわれる検出電圧との波形を示している。図12に示すように、検出電圧のピーク値は、入力電圧の高低によって変動する。
【0017】
ここで、半波電流共振回路において共振コンデンサCriに流れる電流は、図12に示すように交流波形となる。このため、図11に示す回路における過電流検出は、この交流波形のピーク値を読み取ることになる。また、特許文献1に記載されているような積分回路を検出抵抗R1に接続した場合においても、負の電流期間に積分回路が放電される為、ピーク値を検出することになり、図12に示すようにピーク値が変動した場合に検出値も変動してしまう。
【0018】
この検出値の誤差は、図12に示す値は小さい変動であるが、回路2次側の出力電流でみると、数Aに拡大されるため大きな問題となる。
【0019】
図13は、図11に示す従来の半波電流共振回路に検出電流を整流する整流ダイオードD1と積分回路(抵抗R2とコンデンサC2)とを追加した場合の構成を示す回路図である。先行技術においては、フライバック及びフォワード方式を用いていたため、1次側の電流は負にならない。図13に示す半波電流共振回路は、整流ダイオードD1を追加することで先行技術と同条件になると考えられる。この場合においても積分回路のコンデンサに蓄えられるエネルギはピーク充電となる。
【0020】
また、図示されていないが、この積分回路のコンデンサに放電用の抵抗を並列に接続した場合においては、当該抵抗が大きい場合にはピーク充電となり積分回路のコンデンサの両端電圧がピーク値で一定となる一方、各周期で放電される程の小さい抵抗にした場合には検出回路でピーク値を読み取ることになる。いずれにしても、共振電流のピーク値の影響は避けられない。このため、入力電圧が変動した場合に過電流検出値が変動する問題が生じる。
【0021】
図14は、図13に示す従来の半波電流共振回路において、入力電圧Vin(直流電源Vi)を変化させた場合の動作波形を比較する波形図であり、共振コンデンサCriに流れる共振電流と、積分回路のコンデンサ両端の検出電圧Vocと、ダイオードD1のアノード−Gnd間電圧(検出抵抗R1の両端電圧)との波形を示している。
【0022】
図14(a)は入力電圧Vinが低い場合の動作波形を示す一方、図14(b)は入力電圧Vinが高い場合の動作波形を示している。いずれの波形も出力の負荷は一定で、入力の電圧のみを変化させたときの波形である。図14に示すように、入力電圧が低い場合と高い場合とを比較すると、検出電圧Vocは差を有していることがわかる。すなわち、入力電圧Vinが低い場合の検出電圧Vocは、入力電圧Vinが高い場合の検出電圧Vocに比して低いものとなっている。
【0023】
したがって、検出電圧Vocを用いて過電流検出を行うとすると、図13に示すスイッチング電源装置は、入力電圧の変動に応じて過電流検出回路による保護動作点が変動を生じるという問題がある。
【0024】
また、上述した特許文献1,2に記載の技術は、いずれもノイズや負荷変動による一時的な過電流による停止を防止するものであるが、半波電流共振回路に適用した場合には入力電圧の変動に応じて同様の問題を生ずると考えられる。
【0025】
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するもので、入力電圧が変動した場合においても補正による適切な過電流検出を行うことができるスイッチング電源装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明に係るスイッチング電源装置は、上記課題を解決するために、直流電源の両端に接続され、第1スイッチ素子と第2スイッチ素子とが直列に接続された第1直列回路と、前記第2スイッチ素子に並列に接続され、共振コンデンサと共振リアクトルとトランスの1次巻線とが直列に接続された第2直列回路と、前記トランスの2次巻線の電圧を整流平滑する整流平滑回路と、前記整流平滑回路の出力電圧に基づいて前記第1スイッチ素子と前記第2スイッチ素子とを交互にオン/オフさせる制御回路と、前記第1スイッチ素子がオン時の前記共振コンデンサに流れる電流を検出する電流検出部と、前記電流検出部により検出された電流を電圧信号に変換するとともに、前記電圧信号の電圧値が第1基準電圧値以上である期間に前記電圧信号を積分する積分回路と、前記積分回路による出力電圧と第2基準電圧値とを比較し、前記積分回路による出力電圧が前記第2基準電圧値以上である場合に前記第1スイッチ素子をオフさせる過電流保護部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、入力電圧が変動した場合においても補正による適切な過電流検出を行うことができるスイッチング電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例1の形態のスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
【図2】本発明の実施例1の形態のスイッチング電源装置において入力電圧を変化させた場合の動作波形を比較する波形図である。
【図3】本発明の実施例1の形態のスイッチング電源装置において抵抗R1を調整した場合の積分回路の出力電圧を比較する図である。
【図4】本発明の実施例1の形態のスイッチング電源装置において誤差0%時の各部の動作波形を示す波形図である。
【図5】本発明の実施例1の形態のスイッチング電源装置において第1基準電圧値を上限付近に設定した場合の動作波形の1例を示す波形図である。
【図6】本発明の実施例1の形態のスイッチング電源装置において第1基準電圧値を下限付近に設定した場合の動作波形の1例を示す波形図である。
【図7】本発明の実施例1の形態のスイッチング電源装置の別の構成例を示す回路図である。
【図8】本発明の実施例1の形態のスイッチング電源装置において誤差0%時の各部の動作波形を示す波形図である。
【図9】本発明の実施例1の形態のスイッチング電源装置の別の構成例を示す回路図である。
【図10】本発明の実施例1の形態のスイッチング電源装置において誤差0%時の各部の動作波形を示す波形図である。
【図11】従来の半波電流共振回路の構成を示す回路図である。
【図12】従来の半波電流共振回路において入力電圧を変化させた場合の動作波形を比較する波形図である。
【図13】従来の半波電流共振回路に検出電流を整流する整流ダイオードと積分回路とを追加した場合の構成を示す回路図である。
【図14】従来の半波電流共振回路の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明のスイッチング電源装置の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0030】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。まず、本実施の形態の構成を説明する。図1は、本発明の実施例1のスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。このスイッチング電源装置は、図1に示すように、トランスT1の二次巻線Ns側が半波整流回路となっている電流共振型のスイッチング電源装置である。図13に示す従来の装置と異なる点は、抵抗R3,R4,R5、基準電圧Vref1、及びスイッチQ1,Q2が追加されている点である。なお、図1において、図13における従来装置の構成要素と同一ないし均等のものは、前記と同一符号を以て示す。
【0031】
ハイサイドのスイッチング素子Qhは、本発明の第1スイッチ素子に対応する。また、ローサイドのスイッチング素子Qlは、本発明の第2スイッチ素子に対応する。これらのスイッチング素子Qh,Qlは、例えばMOSFETである。スイッチング素子Qhとスイッチング素子Qlとが直列に接続された直列回路は、本発明の第1直列回路に対応し、直流電源Viの両端に接続されている。この直流電源Viは、例えば、商用交流電源を全波整流し、平滑コンデンサで平滑することで得られた直流電圧を出力する電源回路により構成される。
【0032】
また、共振コンデンサCriと共振リアクトルLrとトランスT1の1次巻線Npとが直列に接続された直列回路は、本発明の第2直列回路に対応し、スイッチング素子Qlに並列に接続されている。また、スイッチング素子Qlには電圧共振コンデンサCrvが並列に接続されている。
【0033】
ダイオードRCと平滑コンデンサCoとによる直列回路は、本発明の整流平滑回路に対応し、トランスT1の二次巻線Nsに並列接続され、トランスT1の二次巻線Nsの電圧を整流平滑するものであり、図からわかるように半波整流平滑回路として動作する。この整流平滑回路で得られた平滑コンデンサCoの直流電圧は、図1に示すスイッチング電源装置の出力電圧となり、平滑コンデンサCoに並列接続された負荷Roに直流電力を供給する。
【0034】
また、図1には詳細が図示されていないが、図1に記載のスイッチング電源装置は、制御回路を有している。この制御回路は、上述した整流平滑回路の出力電圧(負荷Roの両端に印加される電圧)に基づいて、出力電圧が所定の値に保持されるようにスイッチング素子Qhとスイッチング素子Qlとを交互にオン/オフさせる。
【0035】
コンデンサC1、及び抵抗R1,R3は、本発明の電流検出部に対応し、スイッチング素子Qhがオン時の共振コンデンサCriに流れる電流を検出する。すなわち、スイッチング素子Qhがオン時において回路を流れる電流は、共振コンデンサCriとコンデンサC1とにより分流される。その際にコンデンサC1に流れる電流は、共振コンデンサCriに流れる電流に比例しており、抵抗R1と抵抗R3とに流れる。
【0036】
抵抗R1,R2,R3,R5、基準電圧Vref1、スイッチQ1,Q2、ダイオードD1、コンデンサC2、及び抵抗R4は、本発明の積分回路に対応し、電流検出部により検出された電流を電圧信号に変換するとともに、当該電圧信号の電圧値が第1基準電圧値以上である期間に当該電圧信号を積分する。第1基準電圧値は、抵抗R1,R3の大きさの比率を調節することにより予め設定することができる値であり、スイッチQ1がオフからオンに切り替わる際における、抵抗R1,R3による直列回路の両端電圧である。
【0037】
すなわち、コンデンサC1を流れる電流は、抵抗R1,R3により電圧信号に変換される。この電圧信号による電圧値(抵抗R1,R3による直列回路の両端電圧)が第1基準電圧値未満である場合には、スイッチQ1がオフしており、基準電圧Vref1がベースに印加されたスイッチQ2はオンしている。したがって、コンデンサC1を電流が流れ始めたときにおいて、電圧信号による電圧は、積分回路の抵抗R2を介してコンデンサC2を充電しようとするが、スイッチQ2がオンしていることによりGndレベルにクランプされているため、C2を充電できない。
【0038】
一方、回路の電流値が上昇し、電圧信号による電圧値が第1基準電圧値以上になると、抵抗R3の両端電圧は、スイッチQ1をオンさせる。これによりスイッチQ2がオフするため、電圧信号による電圧は、積分回路の抵抗R2を介してコンデンサC2の充電を開始する。回路の電流が下降すると、スイッチQ1がオフするため、再びスイッチQ2がオンし、コンデンサC2の充電は停止する。
【0039】
図2は、本実施例のスイッチング電源装置において、入力電圧Vin(直流電源Viの電圧)を変化させた場合の動作波形を比較する波形図である。また、図2中の電圧V1は、第1基準電圧値を示す。
【0040】
図13に示すような従来回路における積分回路は、ピーク充電となるため、図2中の丸で示した共振電流のピーク付近の期間でコンデンサが充電される。この期間で充電されると、入力電圧に対する差が少ないため、補正は不可能である。
【0041】
これに対し、本実施例のスイッチング電源装置は、図2中の矢印で示した期間が入力電圧の大小に応じて差が大きいことを利用して入力電圧に対する補正を可能とするものであり、検出電圧(抵抗R1,R3による直列回路の両端電圧)が第1基準電圧値V1以上の期間にのみ、積分回路のコンデンサC2に充電する。
【0042】
すなわち、本実施例のスイッチング電源装置における積分回路は、抵抗R1,R3による直列回路の両端電圧が図2に示すV1以上の電圧のみコンデンサC2に充電する。
【0043】
図2中の点線で示した波形は、入力電圧が低電圧の場合における波形である。また、実線で示した波形は、入力電圧が高電圧の場合における波形である。特定の電圧以上を充電した場合、入力電圧が低電圧の場合は充電時間が長く、入力電圧が高電圧の場合は充電時間が短い。このため、充電時間が長い場合にはコンデンサC2に蓄えるエネルギが大きく、短い場合にはコンデンサC2に蓄えられるエネルギが小さくなる。第1基準電圧値V1が低い場合にはこの差は大きくなり、第1基準電圧値V1が高い場合にはこの差は小さくなる。
【0044】
すなわち、本実施例のスイッチング電源装置は、入力電圧の大小に応じて共振電流(それに伴う検出電圧)のピーク値が変動したとしても、第1基準電圧値V1を調整することにより、コンデンサC2に蓄えられるエネルギを調節し、入力電圧に対する補正を行うことができる。例えば、本実施例のスイッチング電源装置は、第1基準電圧値V1を調整することにより、入力電圧が高い場合でも低い場合でも、同じ大きさのエネルギがコンデンサC2に蓄えられるように構成することができ、入力電圧が変動した場合においても適切な過電流検出を行うことが可能となる。
【0045】
また、図1には詳細が図示されていないが、図1に記載のスイッチング電源装置は、過電流保護部を有している。この過電流保護部は、積分回路による出力電圧Vocと第2基準電圧値とを比較し、積分回路による出力電圧Vocが第2基準電圧値以上である場合に、スイッチング素子Qhをオフさせる。第2基準電圧値は、予め過電流保護部に設定された値であり、過電流と認められる電流が共振電流として流れた場合に、抵抗R4の両端電圧Vocが当該第2基準電圧値を超えるように設定する。
【0046】
その他の構成は、図11,13で説明した従来の装置と同様であり、重複した説明を省略する。
【0047】
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。過電流が流れていない通常の動作は、図11,13で説明した従来の装置と同様である。負荷短絡等の回路異常時に過電流が流れた場合には、電圧信号による電圧値(抵抗R1,R3による直列回路の両端電圧)が第1基準電圧値V1以上となり、コンデンサC2に充電される電圧が上昇する。このため、図1に示すような簡単な構成で過電流検出、及び過電流検出値の入力電圧に対する補正を同時に一つの回路で行うことができる。
【0048】
図3は、本実施例のスイッチング電源装置において、抵抗R1を調整した場合における積分回路の出力電圧Vocを比較する図であり、シミュレーションにより得られた結果を示している。ただし、各定数は、抵抗R2:330Ω、抵抗R3:100Ω、コンデンサC2:0.1μF、抵抗R4:10kΩである。
【0049】
図3に示す例においては、抵抗R1を140Ωとした場合において、入力電圧が高い場合と低い場合とにおける積分回路の出力電圧Vocが一致しており、誤差0%となっている。すなわち、このシミュレーション結果によれば、抵抗R1を140Ωとした場合に入力電圧の高低にかかわらず積分回路の出力電圧Vocが一致するため、本実施例のスイッチング電源装置における過電流保護部は、出力電圧Vocに基づいて適切な過電流検出を行うことができる。
【0050】
図4は、本実施例のスイッチング電源装置において誤差0%時(抵抗R1を140Ωとした場合)の各部の動作波形を示す波形図である。ここで、図4(a)は、入力電圧Vinが低い場合の動作波形を示す。図4(b)は、入力電圧Vinが高い場合の動作波形を示す。また、太い実線は、共振電流の波形を示す。細い実線は、積分回路の出力電圧Vocを示す。さらに、細い破線は、ダイオードD1に流れる電流を示す。
【0051】
図4に示すように、積分回路の出力電圧Vocは、入力電圧Vinが低い場合と高い場合とで等しい値となっており、入力電圧に対する補正が有効に働いていることがわかる。また、ここでは共振電流のゼロからピーク値を100%とした場合の約80%以上を積分することでVocが一致している。
【0052】
第1基準電圧値V1を電圧信号(抵抗R1,R3による直列回路の両端電圧)の最大電圧値に対するパーセンテージで表す場合に、入力電圧Vinの高低にかかわらず積分回路の出力電圧Vocを一致させる第1基準電圧値V1は、抵抗値に応じて上下するものの、上限及び下限が存在する。
【0053】
図5は、本実施例のスイッチング電源装置において第1基準電圧値V1を上限付近に設定した場合の動作波形の1例を示す波形図であり、入力電圧Vinが高い場合と低い場合の共振電流及び従来装置と本発明における積分回路の出力電圧Vocを線種分けして描いている。また、図5の場合においては、第1基準電圧値V1は、電圧信号(抵抗R1,R3による直列回路の両端電圧)の最大電圧値に対して75%である。
【0054】
図5に示すように、従来装置の場合においては、入力電圧Vinが高い場合と低い場合とで積分回路の出力電圧Vocに差があるところ、本実施例のスイッチング電源装置は、入力電圧Vinの高低にかかわらず積分回路の出力電圧Vocに差が無い。
【0055】
また、図6は、本実施例のスイッチング電源装置において第1基準電圧値V1を下限付近に設定した場合の動作波形の1例を示す波形図である。図6の場合においては、第1基準電圧値V1は、電圧信号(抵抗R1,R2による直列回路の両端電圧)の最大電圧値に対して15%である。
【0056】
図6に示すように、従来装置の場合においては、入力電圧Vinが高い場合と低い場合とで積分回路の出力電圧Vocに差があるところ、本実施例のスイッチング電源装置は、入力電圧Vinの高低にかかわらず積分回路の出力電圧Vocに差が無い。
【0057】
上述したように、電流検出に使用する抵抗値に応じて、入力電圧Vinの高低にかかわらず積分回路の出力電圧Vocを一致させる第1基準電圧値V1を任意に設定することはできるが、その値には上限及び下限が存在する。上限あるいは下限を越える値を第1基準電圧値V1として設定すると、入力電圧Vinに応じた補正が困難となる。
【0058】
第1基準電圧値V1によって、積分回路の時定数、特に抵抗R4の抵抗値が大きく関与するため、積分回路の出力電圧Vocの出力される電圧値が左右される。下限を超えていくと出力される電圧が低下し、また、上限値を超えた設定を行った場合、従来のピーク値を検出する方法に近づくこととなる。
【0059】
これらの上限あるいは下限を越えた場合に、常に入力補正が不可能となるわけではないが、本発明によるスイッチング電源装置の過電流検出に適切な抵抗を使用した場合に、入力電圧Vinの高低にかかわらず積分回路の出力電圧Vocを一致させる第1基準電圧値は、電圧信号の最大電圧値に対して15%以上、あるいは80%以下に入ると考えられる。
【0060】
上述のとおり、本発明の実施例1の形態に係るスイッチング電源装置によれば、入力電圧Vinが変動した場合においても補正による適切な過電流検出を行うことができる。
【0061】
すなわち、本実施例のスイッチング電源装置は、電圧信号の電圧値が第1基準電圧値以上である期間に電圧信号を積分する積分回路を備えているので、充電タイミングを調整することができ、第1基準電圧値を予め適切な値に調整することにより適切に過電流検出を行うことができ、入力電圧の変動に応じたピーク値変動の影響を回避することができる。特に、本発明は、共振コンデンサに流れる電流が交流波形となる半波電流共振回路に適用することにより、上述した効果を発揮することができる。
【0062】
なお、図7は、本実施例のスイッチング電源装置の別の構成例を示す回路図である。図1に示すスイッチング電源装置と異なる点は、積分回路が抵抗R1,R2,R4、基準電圧Vref2、オペアンプOP1、ダイオードD1、及びコンデンサC2で構成されている点である。この積分回路は、実施例1と同様に、電流検出部により検出された電流を電圧信号に変換するとともに、当該電圧信号の電圧値が第1基準電圧値以上である期間に当該電圧信号を積分する。オペアンプOP1は、入力の差分をゲイン倍して出力する。また、第1基準電圧値は、基準電圧Vref2の大きさを調節することにより予め設定することができる値である。
【0063】
すなわち、コンデンサC1を流れる電流は、抵抗R1により電圧信号に変換される。この電圧信号による電圧値(抵抗R1の両端電圧)が第1基準電圧値(基準電圧Vref2)未満である場合には、オペアンプ1は電圧を出力しないので、コンデンサC2は充電されない。
【0064】
一方、回路の電流値が上昇し、電圧信号による電圧値(抵抗R1の両端電圧)が第1基準電圧値(基準電圧Vref2)以上になると、オペアンプOP1は、抵抗R1に発生した電圧と基準電圧Vref2との差分をゲイン倍した電圧を出力する。この電圧は、積分回路の抵抗R2を介してコンデンサC2の充電を開始する。回路の電流が下降すると、コンデンサC2の充電は再び停止する。
【0065】
図8は、図7に示すスイッチング電源装置において誤差0%時(入力電圧にかかわらず積分回路の出力電圧Vocが一致する場合)の各部の動作波形を示す波形図である。ここで、図8(a)は、入力電圧Vinが低い場合の動作波形を示す。図8(b)は、入力電圧Vinが高い場合の動作波形を示す。また、太い実線は、共振電流の波形を示す。細い実線は、積分回路の出力電圧Vocを示す。さらに、細い破線は、抵抗R2に流れる電流を示す。
【0066】
図8に示すように、積分回路の出力電圧Vocは、入力電圧Vinが低い場合と高い場合とで等しい値となっており、入力電圧に対する補正が有効に働いていることがわかる。
【0067】
さらに、図9は、本実施例のスイッチング電源装置の別の構成例を示す回路図である。図1に示すスイッチング電源装置と異なる点は、積分回路が抵抗R1,R2,R4,R5、基準電圧Vref3、スイッチQ1、及びコンデンサC2で構成されている点である。この積分回路は、実施例1と同様に、電流検出部により検出された電流を電圧信号に変換するとともに、当該電圧信号の電圧値が第1基準電圧値以上である期間に当該電圧信号を積分する。第1基準電圧値は、基準電圧Vref3の大きさを調節することにより予め設定することができる値である。
【0068】
すなわち、コンデンサC1を流れる電流は、抵抗R1により電圧信号に変換される。この電圧信号による電圧値(抵抗R1の両端電圧)が第1基準電圧値(基準電圧Vref3)未満である場合には、スイッチQ1が導通しないので、コンデンサC2は充電されない。
【0069】
一方、回路の電流値が上昇し、電圧信号による電圧値(抵抗R1の両端電圧)が第1基準電圧値(基準電圧Vref3)以上になると、スイッチQ1が導通し、コンデンサC2の充電が開始される。回路の電流が下降すると、コンデンサC2の充電は再び停止する。
【0070】
図10は、図9に示すスイッチング電源装置において誤差0%時(入力電圧にかかわらず積分回路の出力電圧Vocが一致する場合)の各部の動作波形を示す波形図である。ここで、図10(a)は、入力電圧Vinが低い場合の動作波形を示す。図10(b)は、入力電圧Vinが高い場合の動作波形を示す。また、太い実線は、共振電流の波形を示す。細い実線は、積分回路の出力電圧Vocを示す。さらに、細い破線は、抵抗R3に流れる電流を示す。
【0071】
図10に示すように、積分回路の出力電圧Vocは、入力電圧Vinが低い場合と高い場合とで等しい値となっており、入力電圧に対する補正が有効に働いていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明に係るスイッチング電源装置は、電気機器等に使用され、過電流検出を行う保護回路を有する半波電流共振型のスイッチング電源装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0073】
C1,C2 コンデンサ
Co 平滑コンデンサ
Cri 共振コンデンサ
Crv 電圧共振コンデンサ
D1 ダイオード
Lp 励磁インダクタンス
Lr リアクトル
Np 1次巻線
Ns 2次巻線
OP1 オペアンプ
Q1,Q2 スイッチ
Qh,Ql スイッチング素子
R1〜R4 抵抗
RC ダイオード
Ro 負荷
T1 トランス
Vi 直流電源
Vin 入力電圧
Voc 積分回路の出力電圧
Vref1〜Vref3 基準電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の両端に接続され、第1スイッチ素子と第2スイッチ素子とが直列に接続された第1直列回路と、
前記第2スイッチ素子に並列に接続され、共振コンデンサと共振リアクトルとトランスの1次巻線とが直列に接続された第2直列回路と、
前記トランスの2次巻線の電圧を整流平滑する整流平滑回路と、
前記整流平滑回路の出力電圧に基づいて前記第1スイッチ素子と前記第2スイッチ素子とを交互にオン/オフさせる制御回路と、
前記第1スイッチ素子がオン時の前記共振コンデンサに流れる電流を検出する電流検出部と、
前記電流検出部により検出された電流を電圧信号に変換するとともに、前記電圧信号の電圧値が第1基準電圧値以上である期間に前記電圧信号を積分する積分回路と、
前記積分回路による出力電圧と第2基準電圧値とを比較し、前記積分回路による出力電圧が前記第2基準電圧値以上である場合に前記第1スイッチ素子をオフさせる過電流保護部と、
を備えることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記整流平滑回路は、半波整流平滑回路であることを特徴とする請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記積分回路は、前記第1基準電圧値が前記電圧信号の最大電圧値に対して15%以上の電圧値に設定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記積分回路は、前記第1基準電圧値が前記電圧信号の最大電圧値に対して80%以下の電圧値に設定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のスイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−157092(P2012−157092A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11704(P2011−11704)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】