説明

スイッチ機構

【課題】小型の携帯電子機器の操作部等に用いられ、押圧操作により動作するスイッチ機構およびスイッチであり、薄く構成した構造にもかかわらず大きな動作ストロークを得ることが可能で、且つ、安定した接触状態を得ることが可能なスイッチ機構およびスイッチの提供。
【解決手段】中央電極11が形成された開口部12と中央電極11の外側に位置する外側電極13とを有するベース部材10と、弾性変形可能な接触子30からなり、中央電極11は開口部12の側壁14から連続して開口部12の周囲に至る範囲で形成され、接触子30と中央電極11は離間し、接触子30と外側電極は接触して、接触子30がベース部材10に載置される構成とすることにより、薄い構造にて、大きなストロークおよび安定した接触状態を得ることを可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性変形可能な接触子と、中央電極および外側電極を有するベース部材とからなるスイッチ機構および、それを用いた小型電子機器に組み込まれるプッシュスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機をはじめとした小型の携帯電子機器の操作部には、小型化に伴い薄型のスイッチが配置される。例えば従来例として特開2008−234889号公報に示すスイッチがある。図7に示すように基板101には中央導電パターン102と外側導電パターン103が形成され、その上に上側に凸形状をなす皿状の接点ばね201が、外周部を外側導電パターン103に接触し、皿状の頂上部202を中央導電パターン102に離間させて基板101に載置し、その上に粘着シート301を貼り付け、接点ばね201が基板101上に固定されることによってスイッチ001が形成され、接点ばね201の頂上部202を押圧部材401によって押圧することにより接点ばね201が反発し、接点ばね201の頂上部が中央導電パターン102に接触し、これによって中央導電パターン102と外側導電パターン103とが短絡しスイッチがON状態となるものである。
【0003】
また、図7に示す従来例においては、スイッチ001の動作ストロークを大きくするために接点ばね201の頂上部202を押圧する押圧部材401を弾性を有するラバーで形成し、これによって接点ばね201の動作ストロークと押圧部材401の圧縮ストロークからスイッチ001の動作ストロークを大きくしているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−234889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来のスイッチ001においては、接点ばね201の頂上部202を押圧することにより接点ばね201が反転し頂上部202がほぼ真下にある中央導電パターン102に当接することにより外側導電パターン103と中央導電パターン102とが接点ばね201を介して短絡しスイッチ001がON状態となるため動作ストロークは接点ばね201の頂上部202と中央導電パターン102との離間距離によって定められることとなり、動作ストロークを大きくする際には接点ばね201の頂上部202と中央電極パターン102との離間距離を大きくする必要があるため、動作方向において大きな高さを有する接点ばね201が必要となり、スイッチ全体の高さが高くなり薄型化が求められる携帯用電気機器等への使用が困難となることが考えられる。
【0006】
また、接点ばね201の動作方向へのストロークを変化させず、スイッチ001の動作ストロークを大きくする際には、図7に示す従来例のように接点ばね201の上に重ねてラバー等の弾性を有する押圧部材401を配置し、接点ばね201のストロークにその押圧部材401の弾性変形量を加えることによりスイッチ001の動作ストロークを大きくする必要がある。この際においてもラバー等からなる押圧部材401のような別部品が必要となり、そのラバー等の押圧部材401が接点ばね201に重ねられて配置されることによりスイッチ001の動作方向の高さが大きくなるという問題点があった。
【0007】
そこで本発明は上述の問題を鑑み、接点ばねを大きくすることなく、また、別部品を加えることなく動作ストロークを大きくすることが可能で、小型、特に薄型の携帯用電気機器に対応可能なスイッチ機構またはスイッチを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この従来の問題を解決するために、請求項1記載のスイッチ機構は、中央電極と前記中央電極から離れて外側に位置する外側電極とを有するベース部材と、弾性変形可能な接触子と、からなり、前記中央電極には開口部が形成され、前記接触子は前記ベース部材に載置され前記接触子と前記外側電極は常に接触し、初期状態において前記接触子と前記中央電極は離間し、前記接触子に押圧力が加わった動作状態において前記接触子と前記中央電極は接触し、前記接触子の一部が前記開口部に入ることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2記載のスイッチ機構は、請求項1の構成に加え、前記中央電極は、前記開口部の側壁から連続して前記開口部の周囲に至る範囲で形成されることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3記載のスイッチ機構は、請求項1又は請求項2の構成に加え、前記ベース部材は、平板であり、前記開口部は前記ベース部材を貫通する貫通孔であることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4記載のスイッチ機構は、請求項1、2又は請求項3の構成に加え、前記接触子は、金属板をドーム状に加工した弾性体であり、外周縁部が前記外側電極に接触して前記ベース部材に載置されることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5記載のスイッチ機構は、請求項1、2、3又は請求項4の構成に加え、前記中央電極は、印刷により形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6記載のスイッチは、中央電極と前記中央電極から離れて外側に位置する外側電極とを有するベース部材と、弾性変形可能な接触子と、該接触子に重なり前記ベース部材に接着されるシートと、からなり、前記ベース部材には前記中央電極から延出した中央電極用出力部と前記外側電極から延出した外側電極用出力部が形成され、前記中央電極には開口部が形成され、前記接触子は前記ベース部材に載置され前記接触子と前記外側電極は常に接触し、初期状態において前記接触子と前記中央電極は離間し、前記接触子に押圧力が加わった動作状態において前記接触子と前記中央電極は接触し、前記接触子の一部が前記開口部に入ることをを特徴とするものである。
【0014】
請求項7記載のスイッチは、請求項6の構成に加え、前記中央電極は、前記開口部の側壁から連続して前記開口部の周囲に至る範囲に形成されることを特徴とするものである。
【0015】
請求項8記載のスイッチは、請求項6又は請求項7の構成に加え、前記ベース部材は、平板であり、前記開口部は前記ベース部材を貫通する貫通孔であり、前記中央電極は前記貫通孔の側壁から前記接触子が載置される平面である表面の前記開口部の周囲、および前記貫通孔の側壁から前記表面の反対面である裏面の前記開口部の周囲に至る範囲に形成されることを特徴とするものである。
【0016】
請求項9記載のスイッチ機構は、請求項6、7又は請求項8の構成に加え、前記外側電極用出力部は、前記外側電極からの延出部が前記ベース部材に形成された貫通孔を経て前記裏面に形成され、前記中央電極用出力部は前記中央電極から延出され前記裏面に形成されることを特徴とするものである。
【0017】
請求項10記載のスイッチ機構は、請求項6、7、8又は請求項9の構成に加え、前記中央電極用出力部および前記外側電極出力部の少なくとも一つは、前記ベース部材の厚み方向の側壁に形成されていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項11記載のスイッチ機構は、請求項6、7、8、9又は請求項10の構成に加え、前記外側電極は、一部が他の部分よりも広く形成されていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項12記載のスイッチ機構は、請求項6、7、8、9、10又は請求項11の構成に加え、前記接触子は、金属板を皿状の皿バネに加工したものであり、外周縁部が前記外側電極に接続して前記ベース部材に載置されることを特徴とするものである。
【0020】
請求項13記載のスイッチ機構は、請求項6、7、8、9、10、11又は請求項12の構成に加え、前記中央電極は、印刷により形成されていることを特徴とするものである。
【0021】
請求項14記載のスイッチ機構は、請求項8、9、10、11、12又は請求項13の構成に加え、前記表面または前記裏面の少なくとも一方には、前記平板が反ることを防止するために、前記中央電極または前記外側電極と同じ材料および同じ加工方法で形成された反り防止部を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によると、中央電極には開口部が形成されるため、弾性変形可能な接触子が押圧力により中央電極に接触した際、接触子の弾性変形した部分の一部が開口部に入り、更に接触子が中央電極に接触した後においても、更に押圧力が加わることにより更に接触子は弾性変形し、開口部の奥方向へ弾性変形することが可能となり、これによって押圧力による接触子の変形量を大きくすることが可能となり、スイッチ機構における動作ストロークを大きくすることが可能となる。
【0023】
請求項2の発明によると、中央電極は開口部の側壁とベース部材の外側電極を有する面からなる角部においても形成されることになるため、弾性変形可能な接触子が押圧力により中央電極に接触した際、接触子は前述の角部において中央電極と接触することとなるため安定した接触状態を維持することが可能となる。
【0024】
請求項3の発明によると、ベース部材は平板であり開口部は貫通孔であることから、接触子が開口部の奥方向へ弾性変形する変形量を大きくとることが可能であり、また、ベース部材と接触子を重ねて構成するため、本機構自体を薄く構成することが可能となる。
【0025】
請求項4の発明によると、接触子はドーム状の弾性体であることから、押圧による弾性変形の過程において反発し、クリック感が得られ、より良い動作フィーリングを得ることが可能となり、また、反転によりドーム状の湾曲部が開口部へと入ることにより、より大きな動作ストロークを得ることが可能となる。
【0026】
請求項5の発明によると、中央電極は印刷によるものであるため電極の形成が容易で、且つ、ベース部材を小さな厚みで形成することが可能となり本スイッチ機構を薄型化することが可能となる。
【0027】
請求項6の発明によると、中央電極には開口部が形成されるため、弾性変形可能な接触子が押圧力により中央電極に接触した際、接触子の弾性変形した部分の一部が開口部に入り、更に接触子が中央電極に接触した後においても、更に押圧力が加わることにより更に接触子は弾性変形し、開口部の奥方向へ弾性変形することが可能となり、これによって押圧力による接触子の変形量を大きくすることが可能となり、スイッチ機構における動作ストロークを大きくすることが可能となる。更にシートを接触子に重ね、ベース部材に接着することにより開口部と接触子との位置関係を安定させ、スイッチにおける接触を安定させることが可能となる。
【0028】
請求項7の発明によると、中央電極は開口部の側壁とベース部材の外側電極を有する面からなる角部においても形成されることになるため、弾性変形可能な接触子が押圧力により中央電極に接触した際、接触子は前述の角部において中央電極と接触することとなるため安定した接触状態を維持することが可能となる。
【0029】
請求項8の発明によると、ベース部材は平板であり開口部は貫通孔であることから、接触子が開口部の方向へ弾性変形する変形量を大きくとることが可能であり、また、ベース部材と接触子を重ねて構成するため、本スイッチ自体を薄く構成することが可能となる。また、中央電極は貫通孔の側壁から接触子が載置される平面である表面の開口部の周囲、および貫通孔の側壁から表面の反対面である裏面の開口部の周囲に至る範囲に形成されているため、中央電極用出力部をベース部材の裏面に形成することが可能となり、スイッチの電気回路基板等への実装をより容易に行なうことができるものである。
【0030】
請求項9の発明によると、外側電極用出力部は外側電極からの延出部がベース部材に形成された貫通孔を経てベース部材の裏面に形成されることにより、外側電極用出力部をベース部材の裏面に形成することが可能となり、スイッチの電気回路基板等への実装をより容易に行なうことができるものである。
【0031】
請求項10の発明によると、中央電極用出力部および外側電極出力部の少なくとも一つがベース部材の厚み方向の側壁に形成されているため、スイッチを電気回路基板等に半田付けにて実装する際、側壁に形成された中央電極用出力部または外側電極出力部と電気回路基板等の実装パターンとの間に半田フィレットが形成されスイッチの実装をより強固にすることが可能となる。
【0032】
請求項11の発明によると、外側電極は一部が他の部分よりも広く形成されていることにより接触子を接触させて載置させる際に、接触子の位置ずれにより、接触子と外側電極とが非接触状態となることを防止することが可能となる。
【0033】
請求項12の発明によると、接触子はドーム状の弾性体であることから、押圧による弾性変形の過程において反発し、クリック感が得られ、より良い動作フィーリングを得ることが可能となり、また、反転によりドーム状の湾曲部が開口部へと入ることにより、より大きな動作ストロークを得ることが可能となる。更にシートを重ね、ベース部材に貼り付けて位置決めする際にも外側電極との接触状態を各接触部において均一な状態に保つことが可能となる。
【0034】
請求項13の発明によると、中央電極は印刷によるものであるため電極の形成が容易で、且つ、ベース部材を小さな厚みで形成することが可能となりスイッチを薄型化することが可能となる。
【0035】
請求項14の発明によると、ベース部材の表面または裏面の少なくとも一方に反り防止部が設けられているため、スイッチを半田付け等で電気回路基板等に実装する際に高温の熱が加わった場合においても、ベース部材しいてはスイッチ自体が反りにより変形することを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】 (a)本発明に係るスイッチの正面斜視図 (b)本発明に係るスイッチを構成するシートを取り除いた状態の本発明に係るスイッチの正面斜視図
【図2】 本発明に係るスイッチの分解正面斜視図
【図3】 (a)本発明に係るスイッチを構成するベース部材の表面側斜視図 (b)本発明に係るスイッチを構成するベース部材の裏面側斜視図
【図4】 本発明に係るスイッチの押圧動作状態における図1(a)のa−a線における断面図
【図5】 (a)本発明に係る第二の実施例におけるスイッチを示す表面側斜視図 (b)本発明に係る第二の実施例におけるスイッチを電気回路基板に実装した際の表面側斜視図
【図6】 (a)本発明に係る第二の実施例におけるスイッチを構成するベース部材の表面側斜視図 (b)本発明に係る第二の実施例におけるスイッチを構成するベース部材の裏面側斜視図
【図7】 従来のスイッチの分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。図1乃至図5は本発明の実施の形態を示したものであり、図1は本発明に係るスイッチの正面図、図2は本発明に係るスイッチの分解正面斜視図、図3の(a)は本発明に係るスイッチを構成するベース部材の表面側斜視図、(b)は本発明に係るスイッチを構成するベース部材の裏面側斜視図、図4は本発明に係るスイッチの押圧動作状態における図1のA−A線における断面図、図5の(a)は本発明に係る第二の実施例におけるスイッチを示す表面側斜視図、(b)は本発明に係る第二の実施例におけるスイッチを電気回路基板に実装した際の表面側斜視図である。スイッチ01は、ベース部材10、接触子30、およびシート40とからなる。
【0038】
ベース部材10は、平板である基板であり、ベース部材10のほぼ中央には円状の貫通孔である開口部12が設けられ、開口部12の側壁14すなわち貫通孔の内側周壁、および側壁14から連続して平板の両面において開口部12の周囲に及ぶ範囲には導電性の中央電極11が形成されている。本実施例においては、ベース部材10である基板はガラスエポキシ材料からなる積層板であり、前記中央電極11および後に述べる外側電極13は銅箔に導電性メッキを施したものがエッチング処理等により形成されたものである。また中央電極11は開口部12の側壁14から連続してベース部材10の表面17および裏面18の開口部12から同心円を成す範囲で形成されるものである。なお前記の表面17とは、後に述べるように接触子30が載置される側の面を示すものであり、裏面18は表面17の反対面である。さらに、外側電極13は表面17において中央電極11の外側に略同心円状に形成されており、その一部は他の部分よりも幅広く形成された外側電極接触部20を形成している。
【0039】
また裏面18に形成された中央電極11からは端部に幅広く形成された中央電極用出力部15を有する延出部が中央電極11に連続して形成されている。そして外側電極13はベース部材10に形成された貫通孔であるスルーホール21にまで及び、更にスルーホール21を介して裏面18にまで及び、端部に幅広い外側電極用出力部16が形成されている。
【0040】
接触子30は、導電性金属からなる薄板金属をドーム状に形成したものであり、接触抵抗を小さくするため表面には高い導電性を得るための金属鍍金が施されている。
【0041】
シート40は、PI(ポリイミド)等の高分子材料からなるフィルム状素材をベース部材10よりも小さく略相似形に形成したものであり、一方の面にはベース部材10の表面17に貼り付けるための粘着剤または粘着テープが塗布または貼り付けられている。
【0042】
次に以上の構成部品によるスイッチ01の組み立ておよび電気回路基板50等への実装について説明する。最初にベース部材10に接触子30を載置する。この際、接触子30のドーム状に湾曲したほぼ中央にある頂上部32が、ベース部材10の中央電極11の開口部12の中心のほぼ真上となるように、中央電極11に離間して位置され、接触子30の縁部31は外側電極13に接触する状態で接触子30がベース部材10に載置される。
【0043】
この状態で次にシート40が粘着剤または粘着テープが塗布または貼り付けられた面をベース部材10の表面17に対向させ、接触子30に重なる状態でベース部材10に貼り付ける。この際、シート40と接触子30とは粘着される場合と、粘着剤または粘着テープが一部において除かれておりシート40と接触子30とが粘着されない場合とを適時選択し得る。このようにしてスイッチ01が完成し、電気回路基板50等へ実装されることとなる。
【0044】
スイッチ01の電気回路基板50等への実装は以下のように行なわれる。図 に示すように第1の実施例においてはベース部材10の裏面18に中央電極用出力部15と外側電極用出力部16が形成されており、電気回路基板50に形成された中央電極用出力部15と外側電極用出力部16に対応する電気回路パターンに中央電極用出力部15および外側電極用出力部16を載置させた後に、ハンダ付けすることによりスイッチ01の電気回路基板50への実装が完了する。
【0045】
また図5および図6に示すように第2の実施例においては、ベース部材10の4つの角部22が凹状に切り欠かれており、この角部22における側壁23、すなわち平板状のベース部材の厚みとなる範囲および、この範囲から連続して表面および裏面における凹状の切り欠き部の周辺が中央電極出力部および外側電極用出力部となっており、この中央電極用出力部および外側電極用出力部を図6に示すように電気回路基板の対応する電気回路パターンに載置し、半田付けすることによりスイッチの電気回路基板への実装が完了する。この際、中央電極用出力部および外側電極用出力部はベース部材の凹状側壁23に設けられているため、実装時の半田付けの際には、凹状側壁23に設けられた中央電極用出力部または外側電極用出力部と対応する電気回路パターンとの間に半田フィレット60が形成されることとなり、これによって強固な実装がなされることとなる。
【0046】
このように完成および実装されたスイッチ01は以下のように動作される。まず、接触子30のドーム状の頂上部32に外部からシート40を介して押圧力が加わることにより、接触子30は弾性変形し頂上部32がベース部材10の開口部12に接近し、ある一定の弾性変形の後にドーム状の湾曲部が反転した時点、あるいは反転した後に更に弾性変形した時点で、接触子30の湾曲部の一部が開口部12に形成された中央電極11に接触することとなる。この際、中央電極11は開口部12の側壁14から連続して表面17の開口部12の周囲に及んでいるため、側壁14と表面17とからなる角部22における中央電極11に接触子30が接触することとなり、これによって接触子30の縁部31が接触している外側電極13と中央電極11とが接触子30を介して短絡し、図4に示すようにスイッチ01がON状態となる。
【0047】
このON状態において、前述のように既に接触子30のドーム状の湾曲部は反転しているため、反転により開口部12に向かって湾曲したドーム状の頂上部32の開口部側の面が、ベース部材10の表面17の高さよりも下方であるベース部材10の裏面18方向に位置することとなる。よって、接触子30の頂上部32の初期状態からの移動距離は、従来のスイッチ機構にあるように開口部を設けることなく中央導電パターンを表面に形成した場合に比較して、図4に示すようにスイッチON状態における頂上部32の開口部側の面とベース部材10の表面との距離Aの移動量をより多く得ることが可能となる。すなわち、スイッチのON状態までの動作ストロークを開口部のない従来のものに比較して距離A大きくすることが可能となる。
【0048】
更にONした後にも、接触子30が塑性変形することなく弾性変形可能な範囲であれば、開口部12があることにより、接触子30の頂上部32を押圧し続けることによって更に頂上部32を下方であるベース部材10の裏面方向に移動させることが可能である。これによって上述のON状態から後の頂上部32の移動距離をαとすれば前記距離Bと合わせて、従来の開口部のないスイッチに比較して動作ストロークがA+αの距離大きくすることが可能となり、より良い動作フィーリングを得ることが可能となる。
【0049】
また先にも述べたようにスイッチ01がON状態となる際には、接触子30の一部が中央電極11を形成する開口部12の側壁14と表面17とからなる角部22に接触するため、より安定した接触状態となり得る。
【0050】
このように本発明におけるスイッチ01は基板等のベース部材10とドーム状の接触子30およびシート40のみによって構成される薄型のスイッチにもかかわらず、中央電極11を開口部12に形成するといった容易な構成とすることで、より大きな動作ストロークを得ることを可能にし、安定した接触状態を得ることを可能にしたものである。
【0051】
また、中央電極11を形成する開口部12を貫通孔とすることにより中央電極用出力部15をベース部材の表面17または裏面18のどちらにも形成することが可能となり、外側電極13においても、ベース部材10である基板等に貫通孔であるスルーホール21を形成することにより外側電極13から連続して延出させ貫通孔を経て裏面18へも外側電極用出力部16を形成することが可能となり、これによって中央電極用出力部15および外側電極用出力部16の位置により左右されるスイッチの電気回路基板等への実装方法に、より大きな自由度をもたせることが可能となる。
【0052】
更には、中央電極用出力部15および外側電極用出力部16の配置に自由度があるため、ベース部材10である基板等の反りを防止するためのソリ防止部19の形成が容易に自由度をもってできることとなり、これによって効率の良いソリ防止対策を施すことが可能となる。
【0053】
なお、本スイッチに用いる接触子は、ドーム形状のみでなく、湾曲部が形成され弾性変形するものであれば本発明に係るスイッチ機構およびスイッチに用いることは可能であり、また材料は金属板のみでなく、ラバー等の弾性を有するものであり導電性を有するもの、あるいは導電処理が施されたものであれば本発明に係るスイッチ機構およびスイッチに用いることは可能である。またベース部材も基板のみでなく、開口部が形成され導電性を有する中央電極、外側電極、中央電極用出力部、外側電極用出力部およびこれらを連続させる導電部が形成できるものであれば、本発明に係るスイッチ機構およびスイッチに用いることは可能である。
【符号の説明】
【0054】
01 スイッチ
10 ベース部材
11 中央電極
12 開口部
13 外側電極
14 側壁
15 中央電極用出力部
16 外側電極用出力部
17 表面
18 裏面
19 反り防止部
20 外側電極接触部
21 スルーホール
22 角部
23 凹状側壁
30 接触子
31 縁部
32 頂上部
40 シート
50 電気回路基板
60 半田フィレット
001 スイッチ
101 基板
102 中央導電パターン
103 外側導電パターン
201 接点ばね
202 頂部
301 粘着シート
401 押圧部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央電極と前記中央電極から離れて外側に位置する外側電極とを有するベース部材と、弾性変形可能な接触子と、からなり、前記中央電極には開口部が形成され、前記接触子は前記ベース部材に載置され前記接触子と前記外側電極は常に接触し、初期状態において前記接触子と前記中央電極は離間し、前記接触子に押圧力が加わった動作状態において前記接触子と前記中央電極は接触し、前記接触子の一部が前記開口部に入ることを特徴とするスイッチ機構。
【請求項2】
前記中央電極は前記開口部の側壁から連続して前記開口部の周囲に至る範囲で形成されることを特徴とする請求項1記載のスイッチ機構。
【請求項3】
前記ベース部材は平板であり、前記開口部は前記ベース部材を貫通する貫通孔であることを特徴とする請求項1又は2記載のスイッチ機構。
【請求項4】
前記接触子は金属板をドーム状に加工した弾性体であり、外周縁部が前記外側電極に接触して前記ベース部材に載置されることを特徴とする請求項1、2又は3記載のスイッチ機構。
【請求項5】
前記中央電極は、印刷により形成されていることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のスイッチ機構。
【請求項6】
中央電極と前記中央電極から離れて外側に位置する外側電極とを有するベース部材と、弾性変形可能な接触子と、該接触子に重なり前記ベース部材に接着されるシートと、からなり、前記ベース部材には前記中央電極から延出した中央電極用出力部と前記外側電極から延出した外側電極用出力部が形成され、前記中央電極には開口部が形成され、前記接触子は前記ベース部材に載置され前記接触子と前記外側電極は常に接触し、初期状態において前記接触子と前記中央電極は離間し、前記接触子に押圧力が加わった動作状態において前記接触子と前記中央電極は接触し、前記接触子の一部が前記開口部に入ることを特徴とするスイッチ。
【請求項7】
前記中央電極は前記開口部の側壁から連続して前記開口部の周囲に至る範囲に形成されることを特徴とする請求項6記載のスイッチ。
【請求項8】
前記ベース部材は平板であり、前記開口部は前記ベース部材を貫通する貫通孔であり、前記中央電極は前記貫通孔の側壁から前記接触子が載置される平面である表面の前記開口部の周囲、および前記貫通孔の側壁から前記表面の反対面である裏面の前記開口部の周囲に至る範囲に形成されることを特徴とする請求項6又は7記載のスイッチ。
【請求項9】
前記外側電極用出力部は、前記外側電極からの延出部が前記ベース部材に形成された貫通孔を経て前記裏面に形成され、前記中央電極用出力部は前記中央電極から延出され前記裏面に形成されることを特徴とする請求項6,7又は8記載のスイッチ。
【請求項10】
前記中央電極用出力部および前記外側電極出力部の少なくとも一つは前記ベース部材の厚み方向の側壁に形成されていることを特徴とする請求項6、7、8又は9記載のスイッチ。
【請求項11】
前記外側電極は一部が他の部分よりも広く形成されていることを特徴とする請求項6、7、8、9又は10記載のスイッチ。
【請求項12】
前記接触子は金属板を皿状の皿バネに加工したものであり、外周縁部が前記外側電極に接触して前記ベース部材に載置されることを特徴とする請求項6、7、8、9、10又は11記載のスイッチ。
【請求項13】
前記中央電極は、印刷により形成されていることを特徴とする請求項6、7、8、9、10、11又は12記載のスイッチ機構。
【請求項14】
前記表面または前記裏面の少なくとも一方には前記平板が反ることを防止するために、前記中央電極または前記外側電極と同じ材料および同じ加工方法で形成された反り防止部を有することを特徴とする請求項8、9、10、11、12又は13記載のスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−230879(P2012−230879A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111859(P2011−111859)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】