説明

スイッチ装置、伝送路切り替え装置、製造方法、および試験装置

【課題】剛性を高めつつ、物理的な破壊を防いだアクチュエータを提供する。
【解決手段】スイッチ装置は、第1接点122が設けられた基体110と、第2接点134を移動させて第1接点122と接触または離間させるアクチュエータと、を備え、アクチュエータは、支持層150と、支持層150上に形成され、第1駆動電圧に応じて伸縮する第1圧電膜136と、第1圧電膜136上に絶縁材料で形成され、第1圧電膜136の端部の少なくとも一部において支持層150と接して端部を覆う第1保護膜152と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ装置、伝送路切り替え装置、製造方法、および試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電膜と当該圧電膜に電圧を印加する電極とを設け、当該圧電膜に電圧が印加されて当該圧電膜が伸縮することによって、伸縮に応じた動作をするアクチュエータが知られていた(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 特開2001−191300
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このようなアクチュエータは、圧電膜を伸縮させて動作して接点を接触または離間させるスイッチとして用いた場合、接点同士が凝着して接点を離間させることができなくなることがあった。また、支持層上に圧電膜を成膜してアクチュエータを形成する場合、圧電膜を支持層ごと圧電膜の焼成温度まで熱処理することになる。したがって、このようなアクチュエータを製造する過程で、当該アクチュエータに割れ、欠け、またはヒビ等の物理的な破壊が生じる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、第1接点が設けられた基体と、第2接点を移動させて第1接点と接触または離間させるアクチュエータと、を備え、アクチュエータは、支持層と、支持層上に形成され、第1駆動電圧に応じて伸縮する第1圧電膜と、第1圧電膜上に絶縁材料で形成され、第1圧電膜の端部の少なくとも一部において支持層と接して当該端部を覆う第1保護膜と、を有するスイッチ装置を提供する。
【0005】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本実施形態に係るスイッチ装置100の構成例を示す。
【図2】本実施形態に係るスイッチ装置100の側面図を示す。
【図3】本実施形態に係るスイッチ装置100を形成する製造方法の一例を示す。
【図4】本実施形態に係る台座部140となる基板上に第1保護膜152を形成した段階の断面を示す。
【図5】本実施形態に係る第1保護膜152上に電極層162、第1圧電膜136、および電極層164を形成した段階の断面を示す。
【図6】本実施形態に係る電極層162、第1圧電膜136、および電極層164を加工した段階の断面を示す。
【図7】本実施形態に係る電極層164上に支持層150、電極層166、第2圧電膜138、および電極層168を形成した段階の断面を示す。
【図8】本実施形態に係る電極層166、第2圧電膜138、および電極層168を加工した段階の断面を示す。
【図9】本実施形態に係る電極層166、第2圧電膜138、および電極層168を加工した段階の上面図を示す。
【図10】本実施形態に係る電極層168上に第2保護膜154を形成した段階の断面を示す。
【図11】本実施形態に係る支持層150、第2保護膜154、および第1保護膜152を加工して、第2接点部132を形成した段階の断面を示す。
【図12】本実施形態に係る支持層150、第2保護膜154、および第1保護膜152を加工して、第2接点部132を形成した段階の上面図を示す。
【図13】本実施形態に係る基板を加工して、台座部140を形成した段階の断面を示す。
【図14】本実施形態に係る基板を加工して、台座部140を形成した段階の下面図を示す。
【図15】本実施形態に係る台座部140と、基体下部110とを接続した段階の断面を示す。
【図16】本実施形態に係る台座部140と、基体上部170とを接続した段階の断面を示す。
【図17】本実施形態に係る試験装置410の構成例を被試験デバイス400と共に示す。
【図18】本実施形態に係る伝送路切り替え装置500の構成例を示す。
【図19】本実施形態に係るループバック試験する試験装置の構成例を被試験デバイス400と共に示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0008】
図1は、本実施形態に係るスイッチ装置100の構成例を示す。図2は、本実施形態に係るスイッチ装置100の側面図を示す。スイッチ装置100は、圧電膜と、圧電膜に電圧を印加する電極とを、絶縁膜で覆ったアクチュエータ130を備える。スイッチ装置100は、アクチュエータ130の剛性を高めつつ、アクチュエータ130の割れ、欠け、またはヒビ等の物理的な破壊を防ぐ。
【0009】
スイッチ装置100は、第1接点122と、第2接点134とを接触または離間させることにより、第1接点122および第2接点134の間の電気的導通または非導通を切り換える。スイッチ装置100は、パッケージ等に密封されて収容された装置であってよい。スイッチ装置100は、基体下部110と、第1接点部120と、アクチュエータ130と、台座部140と、基体上部170と、制御部180とを備える。
【0010】
基体下部110は、第1接点部120が設けられる平坦な第1面を有する。基体下部110は、ガラス基板等の絶縁体であってよく、これに代えてシリコン等の半導体基板等であってよい。基体下部110は、ビア112と、配線部114とをさらに有してよい。また、基体下部110は、第1接点部120が設けられる第1面と、第1面とは異なる第2面とに、配線部114を有してよい。
【0011】
ビア112は、基体下部110の第1面および第2面を貫通し、第1接点部120と配線部114とを電気的に接続する金属で被服される。また、ビア112は、基体下部110の第1面の配線部114と、第2面の配線部114とを電気的に接続する金属で形成されてもよい。ビア112は、導電性材料が充填されて、貫通孔が形成される基体下部110の上面と下面の密閉性を保つように形成されてよい。ビア112は、基体下部110に設けられる第1接点部120の数およびアクチュエータ130に供給する電気信号の数に応じて、基体下部110に複数設けられてもよい。
【0012】
配線部114は、スイッチ装置100を通過させる信号またはアクチュエータ130に供給する電気信号を伝送する。配線部114は、少なくとも1つのビア112に対して信号を送信または受信させるべく、基体下部110の第1面または第2面に設けられる配線パターンであってよい。配線部114は、ランド、コネクタ、および/またはアンテナ等を含み、外部からスイッチ装置100に通過させる信号を送受信してよい。
【0013】
第1接点部120には、第1接点122が設けられる。第1接点部120は、複数設けられてよい。第1接点122は、突部のない平面状のパッドであってよい。第1接点部120は、アルミニウム、タングステン、パラジウム、ロジウム、金、白金、ルテニウム、インジウム、イリジウム、オスミウム、モリブデン、および/またはニッケルを含んでよい。ここで、第1接点122は、これらの材料を含む2以上の材料の合金であってよい。
【0014】
アクチュエータ130は、第2接点134を有し、第2接点134を移動させて第1接点122と接触または離間させる。アクチュエータ130は、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法を用いる半導体製造装置等によって成膜されてよい。アクチュエータ130は、第2接点部132と、第1圧電膜136と、第2圧電膜138と、支持層150と、第1保護膜152と、第2保護膜154と、突出部156と、第1圧電膜136の電極層162および電極層164と、第2圧電膜138の電極層166および電極層168と、を有する。
【0015】
第2接点部132には、第2接点134が設けられる。第2接点部132は、第1接点部120と同様の金属を含んでよい。第2接点134は、第1接点122に面で接触するように、突部のない平面であってもよい。これに代えて、第2接点134は、突起を有する形状であってよい。
【0016】
第2接点134は、第1接点122の破壊または劣化を防ぐように、半球状の形状であってよく、これに代えて先端を丸めた針状の形状であってもよい。一例として、第2接点134は、第1接点122と接触して伝送線路を形成する場合に、伝送する信号の周波数に応じた伝送線路幅等を形成するように、予め定められた形状で設けられてよい。
【0017】
本実施例において、スイッチ装置100は、2つの第1接点部120が基体下部110に設けられ、2つの第1接点122と1つの第2接点134とを接触/離間する。これにより、スイッチ装置100は、第2接点134を介して第1接点122aと第1接点122bとの間の電気的導通または非導通を切り換える。配線部114は、外部からの電気信号を第1接点122aへと伝送し、スイッチ装置100がONの場合に当該電気信号を第1接点122bから外部へと伝送してよい。
【0018】
これに代えて、スイッチ装置100は、基体下部110に第1接点部120を有し、アクチュエータ130に外部からの電気信号を第2接点134へと伝送する配線を有してもよい。また、当該配線は、外部からの電気信号が第1接点部120に伝送され、第2接点134を介して受け取り、外部へと伝送してもよい。スイッチ装置100は、第2接点134から第1接点122への信号伝送をON/OFFし、ONの場合に外部から入力された信号を第2接点134から第1接点122を介して外部へと伝送してよい。
【0019】
第1圧電膜136は、支持層150上に形成され、第1駆動電圧に応じて伸縮する。第1圧電膜136は、第1駆動電圧を印加された場合に、アクチュエータ130の長さ方向に伸縮して、第1接点122と第2接点134との距離が変化する方向にアクチュエータ130を湾曲させるように配される。
【0020】
第1圧電膜136は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)のウルツ鉱型の結晶、またはチタン酸バリウム(BTO)等のペロブスカイト系強誘電体等により形成されてよい。第1圧電膜136は、例えば、幅方向Wに90μm、長さ方向Lに750μm、厚さ方向Hに0.5μmのPZTの圧電膜である。
【0021】
第2圧電膜138は、支持層150の第2圧電膜138が形成される面とは異なる面上に、支持層150を介して第1圧電膜136に対向して設けられ、第2駆動電圧に応じて伸縮する。第2圧電膜138は、第1圧電膜136と同様に、ペロブスカイト系強誘電体等を用いてよい。また、第2圧電膜138は、第2駆動電圧を印加された場合に、アクチュエータ130の長さ方向に伸縮して、第1接点122と第2接点134との距離が変化する方向にアクチュエータ130を湾曲させるように配される。
【0022】
第2圧電膜138は、第1圧電膜136と略同一の材料で、かつ、第1圧電膜136と略同一の形状で形成されることが望ましい。第2圧電膜138は、例えば、幅方向Wに90μm、長さ方向Lに750μm、厚さ方向Hに0.5μmのPZTの圧電膜である。
【0023】
アクチュエータ130は、第1圧電膜136および第2圧電膜138の伸縮に伴い第2接点134を移動させて第1接点122と接触または離間させる。ここで、第1圧電膜136および第2圧電膜138は、アクチュエータ130の厚さ方向の中心面の両側に設けられてよい。また、第1圧電膜136および第2圧電膜138は、アクチュエータ130の厚さ方向の中心面からの距離および厚さが略同一であってよい。また、アクチュエータ130は、厚さ方向の中心面に対し略対称に積層された複数の膜を有してよい。ここで、図中の一点鎖線が、アクチュエータ130の厚さ方向の中心面を示す。
【0024】
支持層150は、第1圧電膜136および第2圧電膜138の間に設けられる。支持層150は、力の印加によって変形する弾性を有し、第1圧電膜136および/または第2圧電膜138が伸縮して力を印加することによって、湾曲される。また、支持層150は、アクチュエータ130が撓みすぎるのを抑制する剛性を有し、第1圧電膜136および第2圧電膜138の電界の印加が停止すると、アクチュエータ130は初期位置に戻る。
【0025】
支持層150は、第1圧電膜136または第2圧電膜138が形成される場合に、当該圧電膜と共に焼成温度に加熱される。そこで支持層150は、第1圧電膜136および第2圧電膜138の焼成温度に加熱しても破壊されない材質で形成される。第1圧電膜136および第2圧電膜138をPZT等で形成する場合、焼成温度は、略700℃以上に達する場合もある。したがって、支持層150は、第1圧電膜136および第2圧電膜138の焼成温度に加熱しても、割れ、欠け、またはヒビ等の物理的な破壊が生じない材質で形成することが望ましい。
【0026】
また、支持層150は、第1圧電膜136および第2圧電膜138の焼成温度に加熱しても圧電膜または電極層と化学反応を生じ難い材質で形成されることが望ましい。第1支持層150は、圧電膜の焼成温度の加熱によって、圧電膜または電極層と化合物を形成して、割れ、欠け、またはヒビ等の物理的な破壊が生じない材質で形成することが望ましい。また、この場合、支持層150は、圧電膜の焼成温度の加熱によって、第1圧電膜136および第2圧電膜138の圧電定数等の膜特性を劣化させない材質で形成することが望ましい。
【0027】
また、支持層150は、絶縁層でよい。支持層150は、絶縁層で形成されることで、例えば700℃程度の圧電膜の焼成温度に耐え、金属膜よりも安価なCVD等の製造方法により短時間で形成することができる。
【0028】
支持層150は、例えば、酸化シリコン(SiO)である。これに代えて、支持層150は、窒化シリコン(SiN)でよい。支持層150は、一例として、幅方向Wに90μm、長さ方向Lに750μm、厚さ方向Hに4μmの酸化シリコン(SiO)である。これに代えて、支持層150は、アルミニウム、金、白金等の導電体、ガラス等の絶縁体、またはシリコン等の半導体を用いてよい。
【0029】
突出部156は、アクチュエータ130の可動端である先端部において、第1圧電膜136および第2圧電膜138が設けられていない支持層150の部分である。第2接点部132は、突出部156上に設けられてよい。これによって、第2接点134は、電極層162、電極層164、電極層166、および電極層168と離間された位置に形成することができ、それぞれの電極層に供給される電気信号の影響を低減させることができる。
【0030】
電極層162および電極層164は、第1圧電膜136の上面および下面に設けられ、第1圧電膜136に第1駆動電圧を印加する。ここで、第1駆動電圧は、正または負の一定電圧でよい。電極層162および電極層164は、アクチュエータ130の長さ方向Lに延伸する平板形状を有してよい。電極層162および電極層164は、アルミニウム、金、白金、銅、インジウム、タングステン、モリブデン、ルテニウム、イリジウム等の低抵抗で加工が容易な金属であってよく、ルテニウムオキサイド(RuO)、イリジウムオキサイド(IrO)等酸化物電極、セラミック電極、または、シリコン等の半導体を用いてもよい。
【0031】
電極材料としてシリコンを用いる場合には、不純物を高濃度にドープしたシリコンを用いることが好ましい。本実施例の電極層162および電極層164は、厚さ方向Hの厚さが0.2μmの白金である。ここで、白金を成膜する場合、チタン、タンタル、クロム等を成膜してから白金を成膜してよい。
【0032】
電極層166および電極層168は、第2圧電膜138の上面および下面に設けられ、第2圧電膜に第2駆動電圧を印加する。電極層166および電極層168は、アクチュエータ130の長さ方向Lに延伸する平板形状を有してよい。電極層166および電極層168は、電極層162および電極層164と略同一の形状、および略同一の材質でよい。また、電極層166は、電極層164と略同一の形状および略同一の材質でよく、電極層168は、電極層162と略同一の形状および略同一の材質でよい。
【0033】
第1保護膜152は、第1圧電膜136上に絶縁材料で形成され、第1圧電膜136の端部の少なくとも一部において支持層150と接して当該端部を覆う。第1保護膜152および支持層150は、第1圧電膜136、電極層162および電極層164が露出しないように各層を覆うように形成されてよい。一例として、第1保護膜152および支持層150は、各層を完全に覆う。ここで、第1保護膜152および支持層150は、電極層162および電極層164がそれぞれ配線部114と接続される接続部を露出させて形成されてよい。
【0034】
ここで、第1保護膜152および支持層150は、第1圧電膜136、電極層162および電極層164の一部を覆って形成されてよい。例えば、第1保護膜152および支持層150は、各層の側部を覆う。即ち、第1保護膜152および支持層150は、アクチュエータ130の側部において覆う。また、第1保護膜152および支持層150は、アクチュエータ130の側部の支持層150側を覆ってもよい。
【0035】
第2保護膜154は、第2圧電膜138上に絶縁材料で形成され、第2圧電膜138の端部の少なくとも一部において支持層150と接して当該端部を覆う。第2保護膜154および支持層150は、第2圧電膜138、電極層168および電極層166が露出しないように各層を覆うように形成されてよい。一例として、第2保護膜154および支持層150は、各層を完全に覆う。ここで、第2保護膜154および支持層150は、電極層162、電極層164、電極層168および電極層166がそれぞれ配線部114と接続される接続部を露出させて形成されてよい。
【0036】
ここで、第2保護膜154および支持層150は、第2圧電膜138、電極層168および電極層166の一部を覆って形成されてよい。例えば、第2保護膜154および支持層150は、各層の側部を覆う。即ち、第2保護膜154および支持層150は、アクチュエータ130の側部において覆う。また、第2保護膜154および支持層150は、アクチュエータ130の側部の支持層150側を覆ってもよい。
【0037】
第1保護膜152および第2保護膜154は、酸化シリコンまたは窒化シリコン(SiN)で形成されてよい。第1保護膜152および第2保護膜154は、支持層150と同種の絶縁材料で形成されてよく、望ましくは、支持層150と略同一の絶縁材料で形成される。即ち、第1保護膜152および第2保護膜154は、支持層150と同様に、弾性および剛性を有し、支持層150と密着性よく、強く結合して形成される。
【0038】
これによって、略同一の弾性および剛性を有する第1保護膜152、第2保護膜154、および支持層150は、第1圧電膜136、第2圧電膜138、電極層162、電極層164、電極層166、および電極層168を包み込むので、アクチュエータ130を製造する過程またはアクチュエータ130を湾曲させる場合において、各層の割れ、欠け、またはヒビ等の物理的な破壊を防ぐことができる。また、第1保護膜152および第2保護膜154は、剛性を有するので、アクチュエータ130の剛性を高めることができる。
【0039】
また、第1保護膜152および第2保護膜154は、支持層150と略同一の材料で形成されるので、支持層150と略同一の剛性および弾性を持つことができる。したがって、第1保護膜152および第2保護膜154は、アクチュエータ130が変位した場合に、アクチュエータ130内部の剛性および弾性の不一致に起因する応力の発生を抑えることができる。また、複数の膜が積層されたことによって生じるアクチュエータ130がそる方向に働く残留応力および熱応力等と、そりを抑える方向に働く残留応力および熱応力等とを、略同一にさせて打ち消し合わせることによりアクチュエータ130のそりを抑えることができる。
【0040】
これによって、アクチュエータ130は、接点同士の凝着を防ぐことができる。また、第1保護膜152、第2保護膜154、および支持層150は、第2圧電膜138、電極層162、電極層164、電極層166、および電極層168を外部へ露出させないので、これらの層を酸化等から防ぐこともできる。
【0041】
台座部140は、アクチュエータ130の固定端を基体上部170に固定し、半導体材料で形成される。台座部140は、半導体材料をエッチングして形成される。台座部140は、一例として、シリコン基板から形成されてよい。アクチュエータ130は、一例として、台座部140を介して基体上部170に固定される。
【0042】
本実施例において、台座部140は、アクチュエータ130を基体上部170に固定することを説明したが、これに代えて、基体下部110において、第1接点部120の近傍で第1接点部120と離間した位置に配されてよい。この場合、台座部140の厚みは、アクチュエータ130の最大変位量と同等もしくはそれ以下であってよい。ここで、アクチュエータ130の最大変位量とは、第1圧電膜136および/または第2圧電膜138に印加できる最大の駆動電圧を印加した場合における、アクチュエータ130の変位量を意味してよい。
【0043】
アクチュエータ130は、長さ方向Lの一方の端部で台座部140に支持される。第1圧電膜136または第2圧電膜138に電圧を印加すると、アクチュエータ130において台座部140に支持されていない第2接点部132側の端部は、厚さ方向に屈曲する(図中、下向きに変位する)、若しくは、反り返る(図中、上向きに変位する)ことができる。
【0044】
制御部180は、第1駆動電圧を第1圧電膜136に、第2駆動電圧を第2圧電膜138にそれぞれ供給する。制御部180は、第1接点122と第2接点134とを接触させてスイッチ装置100をON状態にする場合に、第2圧電膜138に第2駆動電圧を印加して第2圧電膜138を縮める。また、制御部180は、第1接点122と第2接点134とを離間させてスイッチ装置100をOFF状態にする場合に、第2圧電膜138への第2駆動電圧の供給を停止する。
【0045】
ここで、本実施例の第1圧電膜136および第2圧電膜138は、アクチュエータ130の厚さ方向の中心面からの距離および厚さが略同一なので、第1圧電膜136がそりを生じさせる応力と、第2圧電膜138がそりを抑える応力とを、略同一にさせることができる。また、アクチュエータ130は、厚さ方向の中心面に対し略対称に積層された複数の膜を有しているので、複数の膜が積層されたことによって生じるアクチュエータ130がそる方向に働く残留応力および熱応力等と、そりを抑える方向に働く残留応力および熱応力等とを、略同一にさせてアクチュエータ130のそりを抑えることができる。このように、アクチュエータ130は、熱応力によるそりを抑えることができるので、様々な環境温度においてもスイッチング動作を実行することができる。
【0046】
また、制御部180は、第1接点122と第2接点134とを接触させてスイッチ装置100をON状態にする場合に、第2圧電膜138に第2駆動電圧を印加して第2圧電膜を縮めてもよい。また、制御部180は、第1接点122と第2接点134とを離間させてスイッチ装置100をOFF状態にする場合に、第2圧電膜138への第2駆動電圧の供給を停止してよい。
【0047】
これに代えて制御部180は、第1接点122と第2接点134とを接触させてスイッチ装置100をON状態にする場合に、第1圧電膜136に第1駆動電圧を印加して第1圧電膜136を伸ばしてもよい。また、制御部180は、第1接点122と第2接点134とを離間させてスイッチ装置100をOFF状態にする場合に、第1圧電膜136への第1駆動電圧の供給を停止してよい。
【0048】
また、制御部180は、第1接点122と第2接点134とを接触させてスイッチ装置100をON状態にする場合に、第1圧電膜136に第1駆動電圧を印加して第1圧電膜136を伸ばし、第2圧電膜138に第2駆動電圧を印加して第2圧電膜138を縮めてもよい。制御部180は、第1接点122と第2接点134とを離間させてスイッチ装置100をOFF状態にする場合に、第1圧電膜136および第2圧電膜138への駆動電圧の供給を停止してよい。
【0049】
また、制御部180は、第1接点122と第2接点134とを離間させてスイッチ装置100をOFF状態にする場合に、第1圧電膜136に第1駆動電圧とは正負の異なる電圧を印加してアクチュエータ130の戻りを付勢してもよい。同様に、制御部180は、スイッチ装置100をOFF状態にする場合に、第2圧電膜138に第2駆動電圧とは正負の異なる電圧を印加してアクチュエータ130の戻りを付勢してもよい。
【0050】
制御部180は、第1駆動電圧および第2駆動電圧として、予め定められた値を、対応する第1圧電膜136および第2圧電膜138にそれぞれ供給してよい。制御部180は、電子回路等のハードウェアであってよく、これに代えて、プログラム等により動作するソフトウェアであってもよい。
【0051】
本実施例において、第2接点部132は、突出部156上に設けられることを説明したが、これに代えて、第2保護膜154上の可動端側に設けられてもよい。この場合、アクチュエータ130は、突出部156は無くてもよい。
【0052】
図3は、本実施形態に係るスイッチ装置100を形成する製造方法の一例を示す。また、図4から図16は、本実施形態に係るスイッチ装置100が形成される過程におけるスイッチ装置100の断面を示す。
【0053】
まず、台座部140となる基板上に、第1保護膜152を形成する(S300)。本実施例において、基板はシリコン基板であり、第1保護膜152は酸化シリコンである。第1保護膜152は、CVD法で形成されてよい。一例として、酸化シリコンの第1保護膜152は、TEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)を原料として、酸素またはオゾンと反応することで形成される。図4は、本実施形態に係る台座部140となる基板上に第1保護膜152を形成した段階の断面を示す。
【0054】
次に、第1保護膜152上に電極層162、第1圧電膜136、および電極層164を形成する(S310)。電極層162および電極層164は、白金(Pt)を含み、蒸着またはスパッタによって形成されてよい。第1圧電膜136は、ゾルゲル液を塗布して熱処理することで成膜するゾルゲル法によって形成されてよい。本実施例において、第1圧電膜136は、PZTゾルゲル液を塗布して形成されるPZT膜である。
【0055】
図5は、本実施形態に係る第1保護膜152上に電極層162、第1圧電膜136、および電極層164を形成した段階の断面を示す。ここで、電極層164は、フォトリソグラフィによって、第1圧電膜136上に予め定められた形状で形成されてよい。
【0056】
次に、電極層162、第1圧電膜136、および電極層164を加工する(S320)。電極層162、第1圧電膜136、および電極層164は、後に加工して形成される支持層150の表面積よりも小さくなるように、表面形状をエッチング等によって加工される。ここで、第1保護膜152は、エッチングストップ層として用いられてよい。ここで、電極層164が予め定められた形状で形成されている場合は、電極層162および第1圧電膜136を加工して、電極層164と略同一の形状に加工してもよい。
【0057】
図6は、本実施形態に係る電極層162、第1圧電膜136、および電極層164を加工した段階の断面を示す。ここで、第1圧電膜136および電極層164は、電極層162が有する後に配線部114と接続される接続部を、基板の上面方向に露出するように形成されてよい。
【0058】
次に、電極層164上に支持層150を形成する(S330)。本実施例において、支持層150は、酸化シリコンであり、電極層162、第1圧電膜136、および電極層164を覆って形成される。支持層150は、第1保護膜152と同様にCVD法で形成されてよい。支持層150および第1保護膜152は、同一の材料で形成されるので、両者で形成される酸化シリコン層の内部に、電極層162、第1圧電膜136、および電極層164が配置されるように形成される。
【0059】
次に、支持層150上に、電極層166、第2圧電膜138、および電極層168を形成する(S340)。電極層166、第2圧電膜138、および電極層168は、第1保護膜152上に電極層162、第1圧電膜136、および電極層164を形成するステップS310と同様に形成されてよい。図7は、本実施形態に係る電極層164上に支持層150、電極層166、第2圧電膜138、および電極層168を形成した段階の断面を示す。ここで、電極層168は、フォトリソグラフィによって、第2圧電膜138上に予め定められた形状で形成されてよい。
【0060】
次に、電極層166、第2圧電膜138、および電極層168を加工する(S350)。電極層166、第2圧電膜138、および電極層168は、電極層162、第1圧電膜136、および電極層164を加工するステップS320と同様に加工されてよい。図8は、本実施形態に係る電極層166、第2圧電膜138、および電極層168を加工した段階の断面を示す。
【0061】
ここで、電極層166は、電極層162および電極層164が有する後に配線部114と接続されるそれぞれの接続部を、基板の上面方向に露出するように形成されてよい。また、第2圧電膜138および電極層168は、電極層162、電極層164、および電極層166が有する後に配線部114と接続されるそれぞれの接続部を、基板の上面方向に露出するように形成されてよい。
【0062】
図9は、本実施形態に係る電極層166、第2圧電膜138、および電極層168を加工した段階の上面図を示す。本図において、複数の電極層および圧電膜で形成され1つのアクチュエータ130が、基板上に形成されている例を示す。ここで、製造に用いる基板の直径は、2インチ以上の基板を用いてよく、この場合、複数のアクチュエータ130が当該基板上に形成される。
【0063】
本段階において、電極層166、第2圧電膜138、および電極層168は、後に加工される支持層150の表面形状よりも小さくなるように加工されているので、基板上の一部は、支持層150が露出している。また、電極層162、電極層164、および電極層166と、対応する配線部114とがそれぞれ接続される各電極層の接続部は、上方から露出するように形成される。
【0064】
次に、電極層168上に第2保護膜154を形成する(S360)。本実施例において、第2保護膜154は、酸化シリコンであり、支持層150と共に、電極層168、第2圧電膜138、および電極層166を覆って形成される。第2保護膜154は、支持層150および第1保護膜152と同様に、CVD法で形成されてよい。第2保護膜154および支持層150は、同一の材料で形成されるので、両者で形成される酸化シリコン層の内部に、電極層168、第2圧電膜138、および電極層166が配置されるように形成される。図10は、本実施形態に係る電極層168上に第2保護膜154を形成した段階の断面を示す。
【0065】
次に、支持層150、第1保護膜152、および第2保護膜154を加工する(S370)。ここで、支持層150、第2保護膜154、および第1保護膜152は、第1圧電膜136、第2圧電膜138、電極層162、電極層164、電極層166、および電極層168を覆ったまま、アクチュエータ130の形状に加工される。
【0066】
また、支持層150、第1保護膜152、および第2保護膜154は、アクチュエータ130の可動端である先端部において、第2圧電膜138および第1圧電膜136が設けられていない突出部156を残して形成される。支持層150、第1保護膜152、および第2保護膜154は、エッチングによって形成されてよい。
【0067】
次に、突出部156上に、第2接点部132を形成する(S380)。図11は、本実施形態に係る支持層150、第1保護膜152、および第2保護膜154を加工して、第2接点部132を形成した段階の断面を示す。ここで、支持層150および第2保護膜154は、各電極の接続部が露出するように形成される。
【0068】
図12は、本実施形態に係る支持層150、第1保護膜152、および第2保護膜154を加工して、第2接点部132を形成した段階の上面図を示す。本段階において、支持層150、第1保護膜152、および第2保護膜154は、アクチュエータ130の表面形状に加工されているので、基板上の一部は、台座部140となる基板が露出している。また、電極層162、電極層164、電極層166、および電極層168の接続部は、上方から露出する。
【0069】
次に、基板を加工して、台座部140を形成する(S390)。ここで、台座部140は、半導体基板のアクチュエータ130が形成される面と反対の他方の面から、第1保護膜152をエッチングストップ層として、半導体基板の一部がエッチングされて除去されて形成される。本段階において、アクチュエータ130は、基板と分離され、台座部140を固定端として自立する。図13は、本実施形態に係る基板を加工して、台座部140を形成した段階の断面を示す。
【0070】
図14は、本実施形態に係る基板を加工して、台座部140を形成した段階の下面図を示す。即ち、本図は、台座部140側から見たアクチュエータ130を示す。アクチュエータ130の台座部140側は、第1保護膜152が露出する。ここで、台座部140は、開口部142が設けられてよい。開口部142は、アクチュエータ130と電気信号をやりとりする電気配線の接続作業に用いられてよい。
【0071】
次に、台座部140は、基体下部110および基体上部170と、それぞれ接続される。本実施例の基体下部110および基体上部170は、それぞれガラス基板で形成され、台座部140とは、電圧を印加しつつ加熱して接合する陽極接合によってそれぞれ接合されてよい。
【0072】
図15は、本実施形態に係る台座部140と、基体下部110とを接続した段階の断面を示す。電極層162、電極層164、電極層166、および電極層168の接続部は、基体下部110に設けられた配線部114とそれぞれ接続されてよい。ここで、接続部と配線部114とは、圧着によって接続されてよい。また、当該接続の作業は、台座部140の開口部142から実行してよい。
【0073】
図16は、本実施形態に係る台座部140と、基体上部170とを接続した段階の断面を示す。このようにして形成したスイッチ装置100は、基体の外部に設けられた制御部180からの制御信号に応じて、アクチュエータ130が駆動され、第1接点122と第2接点134が接触または離間する。
【0074】
以上のように、本実施形態によるスイッチ装置100は、第1圧電膜136、第2圧電膜138、電極層162、電極層164、電極層166、および電極層168を、支持層150と略同一の弾性および剛性を有する第1保護膜152および第2保護膜154で包み込んで形成されるアクチュエータを備えることができる。以上の本実施形態のスイッチ装置100は、第1圧電膜136および第2圧電膜138を有するアクチュエータ130を備えることを説明したが、これに代えて、3以上の圧電膜を積層させたアクチュエータ130を備えてもよい。この場合、アクチュエータ130は、本例の第1圧電膜136上および/または第2圧電膜138上に、圧電膜と電極を多層に積層させてよい。
【0075】
これに代えて、スイッチ装置100は、第2圧電膜138または第1圧電膜136のどちらか一方の圧電膜を有するアクチュエータ130を備えてもよい。ここで、アクチュエータ130が第2圧電膜138を有する場合、台座部140となる基板上に、第1保護膜152を形成する代わりに、支持層150を形成してよい。支持層150は、第1保護膜152と同様の絶縁材料を用いているので、台座部をエッチングする場合にエッチングストップ層として用いることができる。
【0076】
図17は、本実施形態に係る試験装置410の構成例を被試験デバイス400と共に示す。試験装置410は、アナログ回路、デジタル回路、アナログ/デジタル混載回路、メモリ、およびシステム・オン・チップ(SOC)等の少なくとも1つの被試験デバイス400を試験する。試験装置410は、被試験デバイス400を試験するための試験パターンに基づく試験信号を被試験デバイス400に入力して、試験信号に応じて被試験デバイス400が出力する出力信号に基づいて被試験デバイス400の良否を判定する。
【0077】
試験装置410は、試験部420と、信号入出力部430と、制御装置440とを備える。試験部420は、被試験デバイス400との間で電気信号を授受して被試験デバイス400を試験する。試験部420は、試験信号発生部423と、期待値比較部426とを有する。
【0078】
試験信号発生部423は、信号入出力部430を介して1または複数の被試験デバイス400に接続されて、被試験デバイス400へ供給する複数の試験信号を発生する。試験信号発生部423は、試験信号に応じて被試験デバイス400が出力する応答信号の期待値を生成してよい。
【0079】
期待値比較部426は、信号入出力部430から受信した被試験デバイス400の応答信号に含まれるデータ値と試験信号発生部423が生成する期待値とを比較する。期待値比較部426は、比較結果に基づき、被試験デバイス400の良否を判定する。
【0080】
信号入出力部430は、試験すべき被試験デバイス400と試験部420との間を電気的に接続して、試験信号発生部423が発生した試験信号を当該被試験デバイス400に送信する。また、信号入出力部430は、試験信号に応じて当該被試験デバイス400が出力する応答信号を受信する。信号入出力部430は、受信した被試験デバイス400の応答信号を期待値比較部426へと送信する。信号入出力部430は、複数の被試験デバイス400を搭載するパフォーマンスボードであってよい。信号入出力部430は、スイッチ装置100を有する。
【0081】
スイッチ装置100は、試験部420および被試験デバイス400の間に設けられ、試験部420および被試験デバイス400の間を電気的に接続または切断する。試験装置410は、本実施形態に係るスイッチ装置100によって電気的な接続または切断を実行してよい。
【0082】
本例において、信号入出力部430は1つの被試験デバイス400に接続され、スイッチ装置100は、1つの被試験デバイス400の入力信号ラインおよび出力信号ラインにそれぞれ1つ設けられる例を説明した。これに代えて信号入出力部430は、複数の被試験デバイス400に接続され、スイッチ装置100は、複数の被試験デバイス400の入力信号ラインおよび出力信号ラインのそれぞれに1つ設けられてよい。また、信号入出力部430から1つの被試験デバイス400へ接続される信号入出力ラインが1つの場合、1つの入出力ラインに1つのスイッチ装置100が設けられてよい。
【0083】
制御装置440は、試験装置410の試験を実行すべく、試験部420および信号入出力部430に制御信号を送信する。制御装置440は、試験プログラムに応じて、試験部420に、試験信号の発生または応答信号と期待値との比較等を実行させる制御信号を送信する。また、制御装置440は、試験プログラムに応じて、接続すべき信号入出力ラインに設けられたスイッチ装置100の接続の指示、および切断すべき信号入出力ラインに設けられたスイッチ装置100の切断の指示等を、信号入出力部430に送信する。
【0084】
以上の本実施形態に係る試験装置410は、剛性を高めつつ、割れ、欠け、またはヒビ等の物理的な破壊を防ぐことができるアクチュエータ130を備えたスイッチ装置100を用いて試験を実行することができる。また、試験装置410は、電圧制御による低消費電力のスイッチング制御で、かつ、長寿命化させたスイッチ装置100を用いて試験を実行することができる。また、試験装置410は、接点間の凝着を低減させたスイッチ装置100を用いて試験を実行することができる。
【0085】
図18は、本実施形態に係る伝送路切り替え装置500の構成例を示す。伝送路切り替え装置500は、入力端と複数の出力端のそれぞれの間に各々接続された複数のスイッチ装置100を備える。本実施例の伝送路切り替え装置500は、入力端Aと出力端BおよびCのそれぞれの間に各々接続された複数のスイッチ装置100aおよびスイッチ装置100bを備える。
【0086】
伝送路切り替え装置500は、スイッチ装置100aをON状態にし、かつ、スイッチ装置100bをOFF状態にすることで、入力端Aと出力端Bとを電気的に接続し、かつ、入力端Aと出力端Cとを電気的に切断する。また、伝送路切り替え装置500は、スイッチ装置100aをOFF状態にし、かつ、スイッチ装置100bをON状態にすることで、入力端Aと出力端Bおよび出力端Cとを電気的に切断し、かつ、出力端Bと出力端Cとを電気的に接続する。
【0087】
このように、伝送路切り替え装置500は、複数のスイッチ装置をそれぞれON/OFFすることで、入力端と複数の出力端との伝送路を切り換える。伝送路切り替え装置500は、複数のスイッチ装置が1つのパッケージ等に密封されて収容された装置であってよい。
【0088】
図19は、本実施形態に係るループバック試験する試験装置の構成例を被試験デバイス400と共に示す。本実施形態のループバック試験する試験装置は、図17で説明した試験装置410と、図18で説明した伝送路切り替え装置500の組み合わせで構成される。そこで、図17、18に示された本実施形態に係る試験装置410および伝送路切り替え装置500の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。
【0089】
本試験装置は、試験装置410からの試験信号を被試験デバイス400に供給する場合に、伝送路切り替え装置500のスイッチ装置100aをON状態にし、かつ、スイッチ装置100bをOFF状態にする。また、本試験装置は、被試験デバイス400から出力される信号を当該被試験デバイス400にループバックする場合に、伝送路切り替え装置500のスイッチ装置100aをOFF状態にし、かつ、スイッチ装置100bをON状態にする。
【0090】
これによって、本試験装置は、試験装置410から被試験デバイス400を試験するための試験信号を被試験デバイス400に入力させる伝送路と、被試験デバイス400からの信号をループバックさせて当該被試験デバイス400に入力させる伝送路とを切り換えることができる。本実施形態に係るループバック試験する試験装置は、1つの伝送路切り替え装置500を備える例を説明したが、これに代えて、2以上の伝送路切り替え装置500を備え、試験装置410と被試験デバイス400との複数の伝送路を切り換えることによって、試験信号による被試験デバイス400の試験とループバック試験とを切り換えてよい。
【0091】
以上の本実施形態に係るループバック試験する試験装置によれば、剛性を高めつつ、割れ、欠け、またはヒビ等の物理的な破壊を防ぐことができるアクチュエータ130を備えたスイッチ装置100を用いて試験信号による試験とループバック試験とを切り換えることができる。また、本試験装置は、電圧制御による低消費電力のスイッチング制御で、かつ、長寿命化させたスイッチ装置100を用いて2つの試験を切り換えることができる。また、本試験装置は、接点間の凝着を低減させたスイッチ装置100を用いて2つの試験を切り換えることができる。
【0092】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0093】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0094】
100 スイッチ装置、110 基体下部、112 ビア、114 配線部、120 第1接点部、122 第1接点、130 アクチュエータ、132 第2接点部、134 第2接点、136 第1圧電膜、138 第2圧電膜、140 台座部、142 開口部、150 支持層、152 第1保護膜、154 第2保護膜、156 突出部、162 電極層、164 電極層、166 電極層、168 電極層、170 基体上部、180 制御部、400 被試験デバイス、410 試験装置、420 試験部、423 試験信号発生部、426 期待値比較部、430 信号入出力部、440 制御装置、500 伝送路切り替え装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1接点が設けられた基体と、
第2接点を移動させて前記第1接点と接触または離間させるアクチュエータと、
を備え、
前記アクチュエータは、
支持層と、
前記支持層上に形成され、第1駆動電圧に応じて伸縮する第1圧電膜と、
前記第1圧電膜上に絶縁材料で形成され、前記第1圧電膜の端部の少なくとも一部において前記支持層と接して当該端部を覆う第1保護膜と、
を有するスイッチ装置。
【請求項2】
前記アクチュエータは、前記支持層の前記第1圧電膜が形成される面とは異なる面上に、前記支持層を介して前記第1圧電膜に対向して設けられる第2圧電膜を更に有し、
前記第2圧電膜上に絶縁材料で形成され、前記第2圧電膜の端部の少なくとも一部において前記支持層と接して当該端部を覆う第2保護膜と、
を有する請求項1に記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記第2圧電膜は、第2駆動電圧に応じて伸縮する請求項2に記載のスイッチ装置。
【請求項4】
前記支持層は、前記第1圧電膜および前記第2圧電膜が設けられていない突出部を、前記アクチュエータの可動端部となる端部に有し、
前記第2接点は、前記突出部に設けられる請求項2または3に記載のスイッチ装置。
【請求項5】
前記第1圧電膜および前記第2圧電膜は、前記アクチュエータの厚さ方向の中心面の両側に設けられ、前記アクチュエータの厚さ方向の中心面からの距離および厚さが略同一である請求項2から4のいずれか1項に記載のスイッチ装置。
【請求項6】
前記アクチュエータは、厚さ方向の中心面に対し略対称に積層された複数の膜を有する請求項5に記載のスイッチ装置。
【請求項7】
前記第1圧電膜および前記第2圧電膜は、PZT膜である請求項2から6のいずれか1項に記載のスイッチ装置。
【請求項8】
前記支持層は、絶縁材料で形成される請求項1から7のいずれか1項に記載のスイッチ装置。
【請求項9】
前記絶縁材料は、SiOまたはSiNである請求項1から8のいずれか1項に記載のスイッチ装置。
【請求項10】
前記アクチュエータの固定端を前記基体に固定し、半導体材料で形成される台座部を更に備える請求項1から9のいずれか1項に記載のスイッチ装置。
【請求項11】
半導体基板の一方の面上に、剛性を有する支持層と、前記支持層上に形成される第1圧電膜と、前記第1圧電膜上に絶縁材料で形成され、前記第1圧電膜の端部の少なくとも一部において前記支持層と接して当該端部を覆う保護膜と、を有するアクチュエータを形成するアクチュエータ形成段階と、
前記支持層上に接点を形成する接点形成段階と、
前記半導体基板の他方の面から、前記保護膜または前記支持層をエッチングストップ層として、前記半導体基板の一部がエッチングされて除去されるエッチング段階と、
を備えるスイッチ装置の製造方法。
【請求項12】
前記アクチュエータ形成段階は、
前記半導体基板の一方の面上に、前記支持層を形成する支持層形成段階と、
前記第1圧電膜を形成する第1圧電膜形成段階と、
前記第1圧電膜を加工して、前記第1圧電膜の表面積を前記支持層の表面積よりも小さくする加工段階と、
前記保護膜を形成する保護膜形成段階と、
を有する請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
入力端と複数の出力端のそれぞれの間に各々接続された複数の請求項1から10のいずれか1項に記載のスイッチ装置を備える伝送路切り替え装置。
【請求項14】
被試験デバイスをループバック試験する試験装置であって、
前記被試験デバイスとの間で電気信号を授受して前記被試験デバイスを試験する試験部と、
前記試験部および前記被試験デバイスの間に設けられ、前記試験部からの信号を前記被試験デバイスに供給するか、前記被試験デバイスからの信号を前記被試験デバイスにループバックさせるかを切り換える請求項13に記載の伝送路切り替え装置と、
を備える試験装置。
【請求項15】
被試験デバイスを試験する試験装置であって、
前記被試験デバイスとの間で電気信号を授受して前記被試験デバイスを試験する試験部と、
前記試験部および前記被試験デバイスの間に設けられ、前記試験部および前記被試験デバイスの間を電気的に接続または切断する請求項1から10のいずれか1項に記載のスイッチ装置と、
を備える試験装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2012−243389(P2012−243389A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108688(P2011−108688)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(390005175)株式会社アドバンテスト (1,005)
【Fターム(参考)】