説明

スイッチ装置および試験装置

【課題】圧電膜の変位を大きくして動作させるスイッチ装置を提供する。
【解決手段】スイッチ装置100は、第1接点122が設けられた接点部120と、第2接点134を有し、第2接点134を移動させて第1接点122と接触または離間させるアクチュエータと、第1駆動電圧を制御する制御部200と、を備え、アクチュエータは、第1駆動電圧に応じて伸縮する第1圧電膜136と、第1圧電膜136上に設けられる支持層と150、を有し、制御部200は、第1圧電膜136に第1の抗電界以下の電界を印加する電圧から、第1圧電膜136に第1の抗電界以上の電界を印加する電圧まで変化させて第1圧電膜136を縮ませ、第1圧電膜136に第2の抗電界未満の電界を印加する電圧を出力して第1圧電膜136を伸ばす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ装置および試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電膜を備えたアクチュエータを駆動する回路は、圧電膜に電圧を印加して当該圧電膜を伸縮させて、アクチュエータを湾曲させていた。このような駆動回路は、上面と下面に圧電膜を備えたアクチュエータに対して、それぞれの圧電膜に印加する印加電圧を制御して、一方の圧電膜を伸ばし、他方を縮ませるバイモルフ駆動をさせていた(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 特開2000−80540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような圧電膜の伸縮は、全長の1%以下程度なので、アクチュエータの変位も本体の大きさに対して僅かなものになっていた。また、圧電膜の伸縮特性が、正負の印加電界に対して複雑な特性を持つ場合、圧電膜の伸縮特性の一部しか用いることができず、アクチュエータの変位量を大きくすることができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、第1接点が設けられた接点部と、第2接点を有し、第2接点を移動させて第1接点と接触または離間させるアクチュエータと、第1駆動電圧を制御する制御部と、を備え、アクチュエータは、第1駆動電圧に応じて伸縮する第1圧電膜と、第1圧電膜上に設けられる支持層と、を有し、制御部は、第1圧電膜に第1の抗電界以下の電界を印加する電圧から、第1圧電膜に第1の抗電界以上の電界を印加する電圧まで変化させて第1圧電膜を縮ませ、第1圧電膜に第2の抗電界未満の電界を印加する電圧を出力して第1圧電膜を伸ばす、スイッチ装置を提供する。
【0005】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本実施形態に係るスイッチ装置100の構成例を示す。
【図2】本実施形態に係るスイッチ装置100の側面図を示す。
【図3】本実施形態に係る圧電膜の印加電界と分極量の特性の一例を示す。
【図4】本実施形態に係る圧電膜の印加電界と変位の特性の一例を示す。
【図5】本実施形態に係る試験装置410の構成例を被試験デバイス400と共に示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0008】
図1は、本実施形態に係るスイッチ装置100の構成例を示す。図2は、本実施形態に係るスイッチ装置100の側面図を示す。スイッチ装置100は、圧電膜が縮む方向に電界を印加する場合は抗電界を超える範囲まで駆動電圧を印加する一方で、圧電膜が伸びる方向に電界を印加する場合は抗電界を超えない範囲で駆動電圧を印加して、アクチュエータ130の変位を大きくする。
【0009】
スイッチ装置100は、第1接点122と、第2接点134とを接触または離間させるスイッチ装置であって、パッケージ等に密封されて収容されてよい。スイッチ装置100は、基板110と、第1接点部120と、アクチュエータ130と、台座部140と、第1電源部180と、第2電源部190と、制御部200とを備える。
【0010】
基板110は、第1接点部120が設けられる平坦な第1面を有する。基板110は、絶縁体でよい。基板110は、絶縁性のガラス基板でよく、これに代えてシリコン等の半導体基板等でよい。基板110は、ビア112と、配線部114とをさらに有してよい。また、基板110は、第1接点部120が設けられる第1面とは異なる第2面に配線部114を有してよい。
【0011】
ビア112は、第1接点部120と配線部114とを電気的に接続する金属で形成される。ビア112は、導電性材料が充填されて、貫通孔が形成される基板110の上面と下面の密閉性を保つように形成されてよい。ビア112は、基板110に設けられる第1接点部120の数に応じて、基板110に複数備わってよい。
【0012】
配線部114は、スイッチ装置100を通過させる信号を伝送する。配線部114は、少なくとも1つのビア112に対して信号を送信または受信させるべく、基板110の第2面に設けられる配線パターンでよい。配線部114は、ランド、コネクタ、アンテナ等を含み、外部からスイッチ装置100に通過させる信号を送受信してよい。
【0013】
第1接点部120には、第1接点122が設けられる。第1接点122は、突部のない平面であってよい。第1接点部120は、アルミニウム、タングステン、パラジウム、ロジウム、金、白金、ルテニウム、インジウム、イリジウム、オスミウム、モリブデン、および/またはニッケルを含んでよい。ここで、第1接点122は、これらの材料を含む2以上の材料の合金であってよい。
【0014】
本実施例において、スイッチ装置100は、2つの第1接点部120が基板110に設けられ、2つの第1接点122と1つの第2接点134とが接触/離間する。これにより、スイッチ装置100は、一方の第1接点122aから第2接点134を介して他方の第1接点122bへの信号伝送をON/OFFする。この場合、配線部114は、外部からの信号を第1接点122aへと伝送し、スイッチ装置100がONの場合に当該信号を第1接点122bから外部へと伝送する。
【0015】
これに代えて、スイッチ装置100は、1つの第1接点部120が基板110に設けられ、外部からの信号がアクチュエータ130を介して第2接点134へと伝送する配線部がアクチュエータ130に設けられ、1つの第1接点122と第2接点134とが接触/離間してもよい。これにより、スイッチ装置100は、第2接点134から第1接点122への信号伝送をON/OFFする。配線部114は、スイッチ装置100がONの場合に外部から入力された信号を第1接点122から外部へと伝送する。
【0016】
アクチュエータ130は、第2接点134を有し、第2接点134を移動させて第1接点122と接触または離間させる。アクチュエータ130は、半導体プロセスによって成膜されてよい。アクチュエータ130は、第2接点部132と、第1圧電膜136と、第2圧電膜138と、支持層150と、露出部152と、第1圧電膜136の電極層162および電極層164と、第2圧電膜138の電極層166および電極層168と、を有する。
【0017】
第2接点部132には、第2接点134が設けられる。第2接点部132は、第1接点部120と同様の金属を含んでよい。第2接点134は、第1接点122に面で接触するように、突部のない平面であってもよい。これに代えて、第2接点134は、第1接点122の破壊または劣化を防ぐように、半球状の形状でよく、これに代えて先端を丸めた針状の形状であってもよい。一例として、第2接点134は、第1接点122と接触して伝送線路を形成する場合に、伝送する信号の周波数に応じた伝送線路幅等を形成するように、予め定められた形状で設けられてよい。
【0018】
第1圧電膜136は、第1駆動電圧に応じて伸縮する。第1圧電膜136は、第1駆動電圧を印加された場合に、アクチュエータ130の長さ方向に伸縮して、第1接点122と第2接点134との距離が変化する方向にアクチュエータ130を湾曲させるように配される。
【0019】
第1圧電膜136は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)のウルツ鉱型の結晶、またはチタン酸バリウム(BTO)等のペロブスカイト系強誘電体等を用いてよい。第1圧電膜136は、例えば、幅方向Wに90μm、長さ方向Lに750μm、厚さ方向Hに0.5μmのPZTの圧電膜である。
【0020】
第2圧電膜138は、第1圧電膜136の積層方向に対して並行に設けられ、第2駆動電圧に応じて伸縮する。第2圧電膜138は、第1圧電膜136と同様に、ペロブスカイト系強誘電体等を用いてよい。第2圧電膜138は、第1圧電膜136と略同一の材料で、かつ、第1圧電膜136と略同一の形状で形成されることが望ましい。第2圧電膜138は、例えば、幅方向Wに90μm、長さ方向Lに750μm、厚さ方向Hに0.5μmのPZTの圧電膜である。
【0021】
アクチュエータ130は、第1圧電膜136および第2圧電膜138の伸縮に伴い第2接点134を移動させて第1接点122と接触または離間させる。ここで、第1圧電膜136および第2圧電膜138は、アクチュエータ130の厚さ方向の中心面の両側に設けられてよい。また、第1圧電膜136および第2圧電膜138は、アクチュエータ130の厚さ方向の中心面からの距離および厚さが略同一であってよい。また、アクチュエータ130は、厚さ方向の中心面に対し略対称に積層された複数の膜を有してよい。ここで、図中の点線が、アクチュエータ130の厚さ方向の中心面を示す。
【0022】
支持層150は、第1圧電膜136および第2圧電膜138の間に設けられる。即ち、支持層150は、第1圧電膜136上に設けられ、第2圧電膜138は、支持層150上に設けられる。支持層150は、力の印加によって変形する弾性を有し、第1圧電膜136が伸縮して力を印加することによって、アクチュエータ130は湾曲する。また、支持層150は、アクチュエータ130が撓みすぎるのを抑制する剛性を有し、第1圧電膜136の電界の印加が停止すると、アクチュエータ130は初期位置に戻る。
【0023】
支持層150は、アルミニウム、金、白金等の導電体、ガラス等の絶縁体、またはシリコン等の半導体を用いてよい。
【0024】
支持層150は、第1圧電膜136または第2圧電膜138が形成される場合に、第1圧電膜136または第2圧電膜138と共に焼成温度に加熱される。そこで支持層150は、第1圧電膜136および第2圧電膜138の焼成温度に加熱しても破壊されない材質で形成される。第1圧電膜136および第2圧電膜138をPZT等で形成する場合、焼成温度が略700℃以上に達する場合もある。したがって、支持層150は、第1圧電膜136および第2圧電膜138の焼成温度に加熱しても、割れ、掛け、またはヒビ等の物理的な破壊が生じない材質で形成することが望ましい。
【0025】
また、第1支持層150は、第1圧電膜136および第2圧電膜138の焼成温度に加熱しても圧電膜または電極層と化学反応を生じ難い材質で形成されることが望ましい。第1支持層150は、圧電膜の焼成温度の加熱によって、圧電膜または電極層と化合物を形成して、割れ、掛け、またはヒビ等の物理的な破壊が生じない材質で形成することが望ましい。また、この場合、第1支持層150は、圧電膜の焼成温度の加熱によって、第1圧電膜136または第2圧電膜138の圧電定数等の膜特性を劣化させない材質で形成することが望ましい。
【0026】
また、支持層150は、絶縁層でよい。支持層150は、絶縁層で形成されることで、例えば700℃程度の圧電膜の焼成温度に耐え、金属膜よりも安価なCVD等の製造方法により短時間で形成することができる。
【0027】
支持層150は、酸化シリコン(SiO)または窒化シリコン(SiN)を含んでよい。支持層150は、例えば、SiOでよい。これに代えて、支持層150は、SiNでよい。支持層150は、一例として、幅方向Wに90μm、長さ方向Lに750μm、厚さ方向Hに4μmの酸化シリコン(SiO)である。
【0028】
露出部152は、アクチュエータ130の可動端である先端部において、第1圧電膜136および第2圧電膜138が設けられていない支持層150の部分である。第2接点134は、露出部152に設けられてよい。これに代えて、第2接点134は、電極層162の可動端側に設けられてもよい。この場合、支持層150は、支持層150の端部まで第1圧電膜136、第2圧電膜138、電極層162、電極層164、電極層166、および電極層168で覆われてよい。
【0029】
電極層162および電極層164は、第1圧電膜136の上面と下面とにそれぞれ備わり、第1圧電膜136に第1駆動電圧を印加する。電極層162および電極層164は、アクチュエータ130の長さ方向Lに延伸する平板形状を有してよい。電極層162および電極層164は、アルミニウム、金、白金、銅、インジウム、タングステン、モリブデン、ルテニウム、イリジウム等の低抵抗で加工が容易な金属でよく、ルテニウムオキサイド(RuO)、イリジウムオキサイド(IrO)等酸化物電極、セラミック電極または、シリコン等の半導体を用いてもよい。
【0030】
電極材料としてシリコンを用いる場合には、不純物を高濃度にドープしたシリコンを用いることが好ましい。電極層162および電極層164は、一例として、厚さ方向Hの厚さが0.2μmの白金である。ここで、白金をスパッタ等の真空蒸着で成膜する場合、チタン、タンタル等を成膜してから白金を成膜してよい。
【0031】
電極層166および電極層168は、第2圧電膜138の上面と下面とにそれぞれ備わり、第2圧電膜に第2駆動電圧を印加する。電極層166および電極層168は、アクチュエータ130の長さ方向Lに延伸する平板形状を有してよい。電極層166および電極層168は、電極層162および電極層164と略同一の形状、および略同一の材質でよい。また、電極層166は、電極層164と略同一の形状および略同一の材質でよく、電極層168は、電極層162と略同一の形状および略同一の材質でよい。
【0032】
台座部140は、基板110において、第1接点部120の近傍で第1接点部120と離間した位置に配される。台座部140は、SiO等の絶縁体を用いてもよい。これに代えて、台座部140は、シリコンまたはガラス等によって形成される基板110の一部であってよい。なお、台座部140の厚みは、アクチュエータ130の最大変位量と同等もしくはそれ以下であってよい。ここで、アクチュエータ130の最大変位量とは、第1圧電膜136に印加できる最大の駆動電圧を印加した場合における、アクチュエータ130の変位量を意味してよい。
【0033】
アクチュエータ130は、一例として、台座部140を介して基板110上に固定される。アクチュエータ130は、長さ方向Lの一方の端部で台座部140に支持される。第1圧電膜136に電圧を印加すると、アクチュエータ130において台座部140に支持されていない第2接点部側の端部は、厚さ方向に屈曲する(図中、下向きに変位する)、若しくは、反り返る(図中、上向きに変位する)ことができる。
【0034】
また、アクチュエータ130は、台座部140に支持され、台座部140は、アクチュエータ130の上方で固定されてよい。例えば、アクチュエータ130は、アクチュエータ130を密封するパッケージに収納され、台座部140は、アクチュエータ130の上方に設けられる当該パッケージの蓋部に固定される。
【0035】
第1電源部180は、第1圧電膜136に第1駆動電圧を印加する。第1電源部180は、制御部200から受け取る制御信号に応じて、第1駆動電圧を第1圧電膜136に供給してよい。第2電源部190は、第2圧電膜138に第2駆動電圧を印加する。第2電源部190は、制御部200から受信する制御信号に応じて、第2駆動電圧を第2圧電膜138に供給してよい。
【0036】
制御部200は、第1駆動電圧を出力する第1電源部180および第2駆動電圧を出力する第2電源部190を制御する。制御部200は、第1電源部180および第2電源部190に制御信号を送信して、第1電源部180および第2電源部190を制御してよい。
【0037】
制御部200は、第1接点122と第2接点134とを接触させてスイッチ装置100をON状態にする場合に、第1圧電膜136に第1駆動電圧を印加する。また、制御部200は、第1接点122と第2接点134とを離間させてスイッチ装置100をOFF状態にする場合に、第1圧電膜136への第1駆動電圧の供給を停止する。
【0038】
また、制御部200は、第1接点122と第2接点134とを離間させてスイッチ装置100をOFF状態にする場合に、第2圧電膜138に第2駆動電圧を印加してよい。また、制御部200は、第1接点122と第2接点134とを接触させてスイッチ装置100をON状態にする場合に、第2圧電膜138への第2駆動電圧の供給を停止してよい。
【0039】
制御部200は、第1駆動電圧および第2駆動電圧として、予め定められた値を、対応する第1圧電膜136および第2圧電膜138にそれぞれ供給してよい。制御部200は、電子回路等のハードウェアであってよく、これに代えて、プログラム等により動作するソフトウェアであってもよい。
【0040】
以上の本実施例のアクチュエータ130は、一例として、厚さ方向Hに、電極層162(白金、0.25μm)/第1圧電膜136(PZT、0.5μm)/電極層164(白金、0.25μm)/支持層150(SiO、4μm)/電極層166(白金、0.25μm)/第2圧電膜138(PZT、0.5μm)/電極層168(白金、0.25μm)が積層される。また、アクチュエータ130は、全体の厚さ6μmに対し、第2接点部132以外の部分が対称に形成されていてよい。
【0041】
図3は、本実施形態に係る圧電膜の印加電界と分極量の特性の一例を示す。図中の横軸は、圧電膜への印加電界を示す。ここで、印加電界は、圧電膜を挟む2枚の電極によって当該圧電膜に印加されるので、電界が加わる方向として、圧電膜の膜厚方向と並行に一方の電極に向く例えばプラス(+)方向と、他方の電極に向く例えばマイナス(−)方向の二つがある。また、印加電界の電界強度は、2枚の電極に印加する電圧の絶対値に応じて増減する。
【0042】
そこで、図中の横軸において、印加電界が零から右方向は、圧電膜に+方向の電界が印加され、印加電界の強度の増加に応じて右方向に移動することを表す。また、印加電界が零から左方向は、圧電膜に−方向の電界が印加され、印加電界の強度の増加に応じて左方向に移動することを表す。縦軸は、印加電界に応じた圧電膜の分極量を示す。図に示されたように、強誘電体材料の圧電膜は、印加電界と分極量の特性が、印加電界圧の履歴に応じて異なる曲線上で遷移する(例えば、図中の曲線O−L−Mと曲線O−N−M)。
【0043】
例えば、圧電膜が曲線O−L−Mの特性を示す状態において、電界強度がEで分極量が零のL点から、M点を超えるように電界を一旦増加させると、圧電膜の特性が曲線O−N−Mに変化する。この結果、電界強度をEにしないと、元の分極量の零に戻らなくなる。
【0044】
例えば、このような圧電膜に、電界強度Eを印加して分極特性の分極量が零のL点にあった状態から、M点を超えるように+方向の印加電界強度を増加させると、分極量を零にするべく印加電界を減少させてもL点には戻らずに、N点の方向に移動する状態に移行する。ここで、L点にあった状態から、M点を超えない範囲で印加電界強度を増加させた場合は、分極量を零にするべく印加電界をEへと減少させるとL点の状態に戻る。
【0045】
また、電界強度Eを印加して分極特性の分極量が零のN点にあった状態から、O点を超えるように−方向の印加電界強度を増加させると、分極量を零にするべく印加電界を減少させてもN点には戻らずに、L点の方向に移動する状態に移行する。ここで、N点にあった状態から、O点を超えない範囲で印加電界強度を増加させた場合は、分極量を零にするべく印加電界をEへと減少させるとN点の状態に戻る。
【0046】
このように、圧電膜に一旦M点を超える電界を印加してから印加電界を減少させると、圧電膜の状態は、印加電界に応じてM−N−Oの曲線のように変化する。ここで、圧電膜の分極量の正負は、N点を境に反転するので、N点の状態となる電界Eを抗電界と呼ぶ。また、圧電膜に印加する電界を、一旦O点を超えるまで減少させてから増加させると、圧電膜の状態は、印加電界に応じてO−L−Mの曲線のように変化する。ここで、圧電膜の分極量の正負は、L点を境に反転するので、L点の状態となる電界Eを抗電界と呼ぶ。
【0047】
ここで、圧電膜の状態がM−N−O曲線のように変化する場合において、印加電界を抗電界E近辺で変化させても、分極反転は生じない。同様に、圧電膜の状態がM−O−L−M曲線のように変化する場合において、印加電界を抗電界E近辺で変化させても、分極反転は生じない。
【0048】
図4は、本実施形態に係る圧電膜の印加電界と変位の特性の一例を示す。図中の横軸は、圧電膜への印加電界を示す。+方向と−方向で表される横軸は、図3で説明した横軸と同様なので説明は省略する。縦軸は、印加電界に応じた圧電膜の変位を示す。この特性は、図3の印加電界と分極量が履歴曲線を示す特性に対応した、圧電膜の変位の一例であり、当該変位特性も履歴曲線を示す。
【0049】
例えば、図3において、圧電膜が曲線O−L−M上を遷移する状態において、O→L→Mと変化させた場合、圧電膜の分極量は、最小値から最大値へと変化する。ここで圧電膜の歪みは、分極量の絶対値に応じて増加するので、図3のO→L→Mの変化に応じて、図4においては、C→D→Aと変位の極大値から極小値を経て再び極大値へと移動する。
【0050】
ここで、圧電膜に抗電界Eを印加することで、変位は極小値となる。極小値および極大値の変位量は、圧電膜の材質および膜質等に起因し、本例のPZTを用いた圧電膜は、変位の極大値が縮む方向であり、極小値が伸びる方向である。
【0051】
また、このような圧電膜に一旦A点を超える電界を印加してから印加電界を減少させると、圧電膜の変位は、図3のM→N→Oの変化に対応して、図4においては、A→B→Cと変位の極大値から極小値を経て再び極大値へと移動する。ここで、圧電膜に抗電界Eを印加することで、変位は極小値となる。
【0052】
圧電膜の伸縮を制御する場合、印加電界と変位がほぼリニアな関係を示す領域を用いることが望ましい。したがって、従来、このような特性を持つ圧電膜は、例えば、G点からH点の範囲で用いられるように、駆動電界を抗電界EおよびEより小さい範囲で設定されていた。
【0053】
そして圧電膜を伸ばす場合にはH点の状態に、縮ませる場合にはG点の状態にして、伸縮の変位の絶対値を略同一とするように制御する。このように制御することによって、例えば、上面と下面に圧電膜を備えたアクチュエータに対して、一方の圧電膜をH点の状態にして伸ばし、他方をG点の状態にして縮ませるバイモルフ駆動をさせていた。
【0054】
ここで、圧電膜をゾル−ゲル法等で膜質を均一に成膜すること等で、圧電膜の印加電界に対する変位の特性は、図4に示すように、ほぼリニアな関係を示す領域が拡大する。したがって、このような圧電膜は、縮ませる方向としてA点の状態まで変位させることができる。そこで、本実施形態においては、このような圧電膜に対して、圧電膜を縮ませる場合はI点まで縮め、圧電膜を伸ばす場合はH点まで伸ばすように、伸縮を制御する。これにより、圧電膜の伸縮特性のほぼリニアな領域を用いることができ、アクチュエータの変位量を大きくすることができる。
【0055】
即ち、制御部200は、第1圧電膜136に第1の抗電界未満の電界を印加する電圧から、第1圧電膜136に第1の抗電界を超える電界を印加する電圧まで変化させて第1圧電膜136を縮ませ、第1圧電膜136に第2の抗電界未満の電界を印加する電圧を出力して第1圧電膜を伸ばす。本例において、第1の抗電界は図中の抗電界Eであり、第2の抗電界は抗電界Eである。即ち、制御部200は、図中のH点からI点までの状態を用いて第1圧電膜136の伸縮を制御する。
【0056】
これに代えて、制御部200は、第1圧電膜136に第2の抗電界E未満の電界を印加する電圧から、第2の抗電界Eを超える電界を印加する電圧まで変化させて第1圧電膜136を縮ませ、第1圧電膜136に第1の抗電界E未満の電界を印加する電圧を出力して第1圧電膜を伸ばしてよい。即ち、制御部200は、図中のL点からM点までの状態を用いて第1圧電膜136の伸縮を制御する。
【0057】
これに代えて、制御部200は、第1圧電膜136に第1の抗電界Eを超える電界を印加する電圧を用いて第1圧電膜を伸縮させてもよい。即ち、制御部200は、図中のJ点からK点までの状態を用いて第1圧電膜136の伸縮を制御する。これに代えて、制御部200は、第1圧電膜136に第2の抗電界Eを超える電界を印加する電圧を用いて第1圧電膜を伸縮させてもよい。即ち、制御部200は、図中のQ点からR点までの状態を用いて第1圧電膜136の伸縮を制御する。
【0058】
同様に、制御部200は、第2駆動電圧を制御して、第2圧電膜138に第1の抗電界E未満の電界を印加する電圧から、第2圧電膜138に第1の抗電界Eを超える電界を印加する電圧まで変化させて第2圧電膜138を縮ませ、第2圧電膜138に第2の抗電界E未満の電界を印加する電圧を出力して第2圧電膜138を伸ばす。即ち、制御部200は、図中のH点からI点までの状態を用いて第2圧電膜138の伸縮を制御する。
【0059】
これに代えて、制御部200は、図中のL点からM点までの状態、J点からK点までの状態、またはQ点からR点までの状態を用いて第2圧電膜138の伸縮を制御してよい。このように、制御部200は、圧電膜の印加電界と変位の特性に応じて、圧電膜を伸ばす場合と縮ませる場合の駆動電圧を制御することで、圧電膜をより大きく変位させることができる。
【0060】
本実施例においては、このような圧電膜を設けたアクチュエータ130をスイッチ装置100として利用することを説明した。この場合、アクチュエータ130は、第1圧電膜136の力の印加が停止するとアクチュエータ130を初期位置に戻す剛性を有する支持層150を設けているので、少なくとも、第2接点134を第1接点122の一方向に動かせればよい。したがって、制御部200は、第1圧電膜136を縮ませてアクチュエータ130を第1接点122方向に動かすことで、圧電膜を伸ばす方向に比べて、最大変位量を大きくすることができる。
【0061】
これによって、スイッチ装置100は、OFFの状態の第2接点134と第1接点122を十分離間させることができ、アクチュエータ130の製造段階の残留応力、温度依存、または経年劣化等の理由により、そりが生じた場合に接点同士が接触することを防ぐことができる。また、この場合、スイッチ装置100は、圧電膜の分極を反転させることなく一方向に動かすことでON/OFFを切り換えることができるので、圧電膜の分極を反転させて動作させた場合に比べて圧電膜の寿命を長くすることができる。
【0062】
また、制御部200は、第1接点122および第2接点134を接触させる場合に、第1圧電膜136を縮める第1駆動電圧を第1圧電膜136に印加してアクチュエータ130を第1圧電膜136側へ曲げ、第1接点122および第2接点134を接触状態から切断状態へと切り替える場合に、第1駆動電圧を遮断すると共に、第2圧電膜138を縮める第2駆動電圧を第2圧電膜138に印加してアクチュエータ130の戻りを付勢する。
【0063】
これによって、制御部200は、第1圧電膜136および第2圧電膜138をそれぞれ一方向に動かすことで、圧電膜の押し込み力をON/OFF動作の両方に用いることができる。このようなスイッチ装置100は、OFF状態にする場合に第2接点134と第1接点122とを離間させる方向にも外力を加えることができるので、接点同士の凝着を防ぐことができる。
【0064】
また、制御部200は、第1接点122および第2接点134を接触状態から離間させる場合に、第1圧電膜136に第2の抗電界未満の電界を印加して第1圧電膜136を伸ばしてアクチュエータの戻りを付勢する。これによって、スイッチ装置100は、圧電膜に分極反転を生じさせずに、圧電膜にアクチュエータの戻りを付勢させることができる。
【0065】
ここで、制御部200は、アクチュエータ130の初期位置、累積使用時間、または累積使用回数に応じて、第2圧電膜138によりアクチュエータ130の戻りを付勢するか否かを切り替えてよい。アクチュエータ130は、剛性を有する状態であれば、第1圧電膜136の力の印加が停止すると、アクチュエータ130は初期位置に戻る。したがって、スイッチ装置100をOFF状態にする場合に、制御部200は、アクチュエータ130が剛性を有する状態であれば、第2圧電膜138によるアクチュエータ130の戻りを付勢しなくてもよい。
【0066】
ここで、制御部200は、アクチュエータ130の累積使用時間または累積使用回数を記憶する。制御部200は、一例として、予め定められた累積使用時間または累積使用回数に応じて、第2圧電膜138によるアクチュエータ130の戻りを付勢するか否かを切り替える。
【0067】
より詳しくは、制御部200は、記憶したアクチュエータ130の累積使用時間または累積使用回数が予め定められた基準時間よりも大きくなった場合に、アクチュエータ130の戻りを付勢する。これによって、スイッチ装置100は、累積使用時間または累積使用回数に応じてアクチュエータ130の剛性が低減しても、第2圧電膜138によるアクチュエータ130の戻りを付勢するので、接点同士の凝着を防ぎ、また、スイッチングのオフ時間を略一定に保つことができる。
【0068】
また、制御部200は、第1接点122および第2接点134が切断状態の初期位置を測定して記憶してもよい。例えば、アクチュエータ130は、疲労が蓄積すると剛性が低減するので、初期位置が第1接点122側に移動する。
【0069】
より詳しくは、制御部200は、測定したアクチュエータ130の初期位置が記憶した初期位置よりも予め定められた基準距離以上に第1接点122側に移動した場合に、アクチュエータ130の戻りを付勢する。このように、スイッチ装置100は、アクチュエータ130の初期位置に応じて、第2圧電膜138によるアクチュエータ130の戻りを付勢することで、接点同士の凝着を防ぎ、また、スイッチングのオフ時間を略一定に保つことができる。
【0070】
ここで、スイッチ装置100は、アクチュエータ130の初期位置を測定するモニタ部を設けてよい。モニタ部は、第1圧電膜136または第2圧電膜138の印加電圧が遮断された状態における圧電膜の変位電圧を測定してよい。例えば、モニタ部は、電極層166および電極層168に接続され、電極層間の電位差を第2圧電膜138に生成される変位電圧として検出する。
【0071】
また、制御部200は、要求されるスイッチング速度に応じて第2圧電膜138によりアクチュエータ130の戻りを付勢するか否かを切り替えてよい。ここで、要求されるスイッチング速度は、予め定められた一定のスイッチング速度であってよく、これに代えて、スイッチ装置100が動作中に定められて動的に変化するスイッチング速度であってもよい。
【0072】
制御部200は、スイッチ装置100のONからOFFに切り替わる場合に要求されるスイッチング速度が、アクチュエータ130が有する剛性で初期位置に戻る時間よりも遅い場合、第2圧電膜138によるアクチュエータ130の戻りを付勢しなくてよい。
【0073】
また、制御部200は、スイッチ装置100の要求されるスイッチング速度が、アクチュエータ130が有する剛性で初期位置に戻るまでの速度よりも速い場合、第2圧電膜138によるアクチュエータ130の戻りを付勢する。これによって、スイッチ装置100は、要求されるスイッチング速度が遅い場合は、圧電膜への駆動電圧を印加しないので、圧電膜を長寿命化させることができる。
【0074】
以上の実施例において、制御部200は、第1接点122および第2接点134を接触状態から切断状態へと切り替える場合に、第1駆動電圧を遮断すると共に、第2圧電膜138を縮める第2駆動電圧を第2圧電膜138に印加してアクチュエータ130の戻りを付勢することを説明した。これに代えて、またはこれに加えて、制御部200は、第1接点122および第2接点134を接触させる場合に、第1圧電膜136に第1の抗電界E未満の電界を印加する電圧から、第1の抗電界Eを超える電界を印加する電圧まで変化させて、第1圧電膜136を縮める第1駆動電圧を印加すると共に、第2圧電膜138の第2の抗電界E未満の電界を与えて第2圧電膜を伸ばす第2駆動電圧を印加して押込みを付勢してよい。
【0075】
これによって、制御部200は、第1接点122および第2接点134を強く接触させ、例えば接点間に形成される酸化膜または付着物等を除去することができるので、接点間の接触抵抗が増大することを防止できる。また、制御部200は、押込みを付勢することによって、スイッチをON状態に切り替える切り換え時間を高速にすることができる。
【0076】
また、制御部200は、第1接点122および第2接点134を接触させる場合に、第1圧電膜136に第2の抗電界E未満の電界を印加する電圧から、第2の抗電界Eを超える電界を印加する電圧まで変化させて、第1圧電膜136を縮める第1駆動電圧を印加すると共に、第2圧電膜138の第1の抗電界E未満の電界を与えて第2圧電膜を伸ばす第2駆動電圧を印加してもよい。
【0077】
この場合、制御部200は、第1圧電膜136を縮めて第2圧電膜138を伸ばす、いわゆるバイモルフ動作をさせる。そして制御部200は、それぞれの圧電膜の圧電特性に応じて、伸びる方向と縮む方向がそれぞれ最適な変位となるように駆動電圧をそれぞれ与え、かつ、分極反転しないようにそれぞれの圧電膜が一方向に動作するように制御する。これによって、制御部200は、第1圧電膜136および第2圧電膜138を効率的に動作させ、かつ、長寿命化させることができる。
【0078】
以上のように、圧電膜は、履歴曲線を有する複雑な特性を有するので、制御部200は、予め第1圧電膜136および第2圧電膜138の印加電圧と変位の特性を測定して測定結果を記憶してよい。また、圧電膜の履歴曲線は、印加電界の周波数に依存する場合があるので、制御部200は、予め第1圧電膜136および第2圧電膜138の印加電圧と変位の周波数特性を測定して測定結果を記憶してもよい。制御部200は、測定結果に基づいて第1駆動電圧および第2駆動電圧を設定してよい。
【0079】
また、このような圧電膜は、同じ電界を印加しても、例えば、H点からI点までを遷移する状態にあるとは限らないので、制御部200は、第1圧電膜136および第2圧電膜138に、スイッチ装置100を動作させる初期段階において、予め定められた電界を印加してよい。例えば、制御部200は、H点からI点までの状態を用いて第1圧電膜136の伸縮を制御する場合、初期段階において、第1圧電膜136にA点の超える電界を印加する。
【0080】
図5は、本実施形態に係る試験装置410の構成例を被試験デバイス400と共に示す。試験装置410は、アナログ回路、デジタル回路、アナログ/デジタル混載回路、メモリ、およびシステム・オン・チップ(SOC)等の少なくとも1つの被試験デバイス400を試験する。試験装置410は、被試験デバイス400を試験するための試験パターンに基づく試験信号を被試験デバイス400に入力して、試験信号に応じて被試験デバイス400が出力する出力信号に基づいて被試験デバイス400の良否を判定する。
【0081】
試験装置410は、試験部420と、信号入出力部430と、制御装置440とを備える。試験部420は、被試験デバイス400との間で電気信号を授受して被試験デバイス400を試験する。試験部420は、試験信号発生部423と、期待値比較部426とを有する。
【0082】
試験信号発生部423は、信号入出力部430を介して1または複数の被試験デバイス400に接続されて、被試験デバイス400へ供給する複数の試験信号を発生する。試験信号発生部423は、試験信号に応じて被試験デバイス400が出力する応答信号の期待値を生成してよい。
【0083】
期待値比較部426は、信号入出力部430から受信した被試験デバイス400の応答信号に含まれるデータ値と試験信号発生部423が生成する期待値とを比較する。期待値比較部426は、比較結果に基づき、被試験デバイス400の良否を判定する。
【0084】
信号入出力部430は、試験すべき被試験デバイス400と試験部420との間を電気的に接続して、試験信号発生部423が発生した試験信号を当該被試験デバイス400に送信する。また、信号入出力部430は、試験信号に応じて当該被試験デバイス400が出力する応答信号を受信する。信号入出力部430は、受信した被試験デバイス400の応答信号を期待値比較部426へと送信する。信号入出力部430は、複数の被試験デバイス400を搭載するパフォーマンスボードであってよい。信号入出力部430は、スイッチ装置100を有する。
【0085】
スイッチ装置100は、試験部420および被試験デバイス400の間に設けられ、試験部420および被試験デバイス400の間を電気的に接続または切断する。試験装置410は、本実施形態に係るスイッチ装置100によって電気的な接続または切断を実行してよい。
【0086】
本例において、信号入出力部430は1つの被試験デバイス400に接続され、スイッチ装置100は、1つの被試験デバイス400の入力信号ラインおよび出力信号ラインにそれぞれ1つ設けられる例を説明した。これに代えて信号入出力部430は、複数の被試験デバイス400に接続され、スイッチ装置100は、複数の被試験デバイス400の入力信号ラインおよび出力信号ラインのそれぞれに1つ設けられてよい。また、信号入出力部430から1つの被試験デバイス400へ接続される信号入出力ラインが1つの場合、1つの入出力ラインに1つのスイッチ装置100が設けられてよい。
【0087】
制御装置440は、試験装置410の試験を実行すべく、試験部420および信号入出力部430に制御信号を送信する。制御装置440は、試験プログラムに応じて、試験部420に、試験信号の発生または応答信号と期待値との比較等を実行させる制御信号を送信する。また、制御装置440は、試験プログラムに応じて、接続すべき信号入出力ラインに設けられたスイッチ装置100の接続の指示、および切断すべき信号入出力ラインに設けられたスイッチ装置100の切断の指示等を、信号入出力部430に送信する。
【0088】
以上の本実施形態に係る試験装置410は、圧電膜の圧電特性に応じた変位量でアクチュエータ130を動作させ、最大変位量を大きくしたスイッチ装置100を用いて試験を実行することができる。また、試験装置410は、電圧制御による低消費電力のスイッチング制御で、かつ、長寿命化させたスイッチ装置100を用いて試験を実行することができる。また、試験装置410は、接点間の凝着を低減させたスイッチ装置100を用いて試験を実行することができる。
【0089】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0090】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0091】
100 スイッチ装置、110 基板、112 ビア、114 配線部、120 第1接点部、122 第1接点、130 アクチュエータ、132 第2接点部、134 第2接点、136 第1圧電膜、138 第2圧電膜、140 台座部、150 支持層、152 露出部、162 電極層、164 電極層、166 電極層、168 電極層、180 第1電源部、190 第2電源部、200 制御部、400 被試験デバイス、410 試験装置、420 試験部、423 試験信号発生部、426 期待値比較部、430 信号入出力部、440 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1接点が設けられた接点部と、
第2接点を有し、前記第2接点を移動させて前記第1接点と接触または離間させるアクチュエータと、
第1駆動電圧を制御する制御部と、
を備え、
前記アクチュエータは、前記第1駆動電圧に応じて伸縮する第1圧電膜と、前記第1圧電膜上に設けられる支持層と、を有し、
前記制御部は、前記第1圧電膜に第1の抗電界未満の電界を印加する電圧から、前記第1圧電膜に第1の抗電界を超える電界を印加する電圧まで変化させて前記第1圧電膜を縮ませ、前記第1圧電膜に第2の抗電界未満の電界を印加する電圧を出力して前記第1圧電膜を伸ばす、
スイッチ装置。
【請求項2】
前記アクチュエータは、前記支持層上に設けられる、第2駆動電圧に応じて伸縮する第2圧電膜を更に有し、
前記制御部は、前記第2駆動電圧を制御して、前記第2圧電膜に第1の抗電界未満の電界を印加する電圧から、前記第2圧電膜に第1の抗電界を超える電界を印加する電圧まで変化させて前記第2圧電膜を縮ませ、前記第2圧電膜に第2の抗電界未満の電界を印加する電圧を出力して前記第2圧電膜を伸ばす、
請求項1に記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1接点および前記第2接点を接触させる場合に前記第1圧電膜を縮める前記第1駆動電圧を前記第1圧電膜に印加して前記アクチュエータを前記第1圧電膜側へ曲げ、
前記第1接点および前記第2接点を接触状態から切断状態へと切り替える場合に、前記第1駆動電圧を遮断すると共に、前記第2圧電膜を縮める前記第2駆動電圧を前記第2圧電膜に印加して前記アクチュエータの戻りを付勢する
請求項2に記載のスイッチ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記アクチュエータの初期位置、累積使用時間、または累積使用回数に応じて、前記第2圧電膜により前記アクチュエータの戻りを付勢するか否かを切り替える請求項2または3に記載のスイッチ装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1接点および前記第2接点を接触させる場合に、前記第1圧電膜を縮める前記第1駆動電圧を印加すると共に、前記第2圧電膜の前記第2の抗電界未満の電界を与えて前記第2圧電膜を伸ばす第2駆動電圧を印加して前記アクチュエータの押込みを付勢する請求項2から4のいずれか1項に記載のスイッチ装置。
【請求項6】
前記第1圧電膜および前記第2圧電膜は、前記アクチュエータの厚さ方向の中心面の両側に設けられる請求項2から5のいずれか1項に記載のスイッチ装置。
【請求項7】
前記第1圧電膜および前記第2圧電膜は、前記アクチュエータの厚さ方向の中心面からの距離および厚さが略同一である請求項6に記載のスイッチ装置。
【請求項8】
前記アクチュエータは、厚さ方向の中心面に対し略対称に積層された複数の膜を有する請求項7に記載のスイッチ装置。
【請求項9】
前記第1圧電膜および前記第2圧電膜は、PZT膜である請求項2から8のいずれか1項に記載のスイッチ装置。
【請求項10】
前記支持層は、前記第1圧電膜または前記第2圧電膜が形成される場合に、前記第1圧電膜または前記第2圧電膜と共に焼成温度に加熱される請求項9に記載のスイッチ装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記第1接点および前記第2接点を接触状態から離間させる場合に、前記第1圧電膜に前記第2の抗電界未満の電界を印加して前記第1圧電膜を伸ばして前記アクチュエータの戻りを付勢する
請求項1から10のいずれか1項に記載のスイッチ装置。
【請求項12】
前記支持層は、絶縁膜である請求項1から11のいずれか1項に記載のスイッチ装置。
【請求項13】
前記支持層は、SiOまたはSiNを含む請求項12に記載のスイッチ装置。
【請求項14】
被試験デバイスを試験する試験装置であって、
前記被試験デバイスとの間で電気信号を授受して前記被試験デバイスを試験する試験部と、
前記試験部および前記被試験デバイスの間に設けられ、前記試験部および前記被試験デバイスの間を電気的に接続または切断する請求項1から13のいずれか1項に記載のスイッチ装置と、
を備える試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−238669(P2012−238669A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105610(P2011−105610)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(390005175)株式会社アドバンテスト (1,005)
【Fターム(参考)】