説明

スイッチ装置

【課題】接点部の接触抵抗が小さい構造とすることにより、接点部に安価な電極材を用いることができコスト低減を図るスイッチ装置を提供する。
【解決手段】車両のステアリングスイッチ1であって、直列に接続される複数の抵抗R1〜R3と、抵抗R1〜R3の各端に接続し、同時に作動する2つの接点部を有する複数の押圧スイッチ11〜14と、抵抗R1の端に接続し複数の押圧スイッチの入力に応じて分圧した電圧を出力する出力端子TOUTとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ装置に関し、特に複数のスイッチ入力を抵抗分割により単一の出力に変換するスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のステアリングホイールには、例えば運転中にカーオーディオ等の操作をするための複数のスイッチ(ステアリングスイッチ)が設けられている。ステアリングスイッチの出力は、シャフトに備えられるステアリングロールコネクタ(SRC)を介して車両本体側の制御装置に伝送される。その一方で複数のステアリングスイッチからの出力を車両本体側に並列に接続しようとすると、その数だけ配線やステアリングロールコネクタのスリップ接点が必要となり、複雑化及び大型化してしまう。このため従来のステアリングスイッチは、抵抗分割回路を用いてスイッチの入力位置に応じた電圧を切り換えて出力するようにして、ステアリングロールコネクタ内の配線数の低減を図っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−011792号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の抵抗分割方式のステアリングスイッチによれば、接点部の錆や経時劣化により接触抵抗が大きくなると、各スイッチ入力に応じた出力電圧も変動するため、隣接するスイッチ間で出力が干渉するおそれがあった。このため、接触抵抗が小さくかつ経時劣化が少ないAu等の貴金属を接点部に用いてスイッチ出力間のマージンを確保せざるを得ずコスト高を招いていた。
【0005】
そこで、本発明の目的は、接点部の接触抵抗が小さい構造とすることにより、接点部に安価な電極材を用いことができコスト低減を図るスイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]上記目的を達成するため本発明に係るスイッチ装置は、直列に接続される複数の抵抗と、前記複数の抵抗の各端に接続し、同時に作動する2つの接点部を有する複数のスイッチと、前記直列に接続される複数の抵抗のうち一の抵抗の端に接続し、前記複数のスイッチの作動に応じて分圧した電圧を出力する出力端子と、を備える。
【0007】
[2]また、前記[1]に記載のスイッチ装置であって、前記2つの接点部は、カーボン電極からなる。
【0008】
[3]また、前記[1]又は[2]に記載のスイッチ装置であって、前記複数のスイッチは、車両のステアリングホイールに設けられるステアリングスイッチである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のスイッチ装置によれば、同時に作動する2つの接点部を有する複数のスイッチを有しているので、接点部の接触抵抗を小さく抑えることができる。これにより、接点部にカーボン電極等の安価な電極材を用いてコスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施の形態によるステアリングスイッチが備えられる、車両の操舵装置の分解斜視図である。
【図2】図2は、ステアリングスイッチが備えられる抵抗分割回路の回路図である。
【図3】図3は、第1の押圧スイッチのプリント配線基板及びラバードームの一部を破断して示す平面図である。
【図4】図4(a)は、図3におけるX−X線で切断した第1の押圧スイッチの断面図である。図4(b)は、図3におけるY−Y線で切断した第1の押圧スイッチの断面図である。
【図5】図5は、第1〜第4の押圧スイッチの入力ごとの出力端子及びコモン端子間の抵抗と出力の理論式を表で示す図である。
【図6】図6(a)は、図1に示したステアリングスイッチにおいて第1〜第4の各押圧スイッチの入力に対する出力と各出力間のマージンを表で示す図である。図6(b)従来のステアリングスイッチの出力と各出力間のマージンを表で示す図である。図6(c)は、パラメータ条件を表で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(ステアリングスイッチの構成)
以下、本発明に係るスイッチ装置の実施の形態として車両のステアリングホイールに備えられるステアリングスイッチ1を説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態によるステアリングスイッチ1が備えられる操舵装置2全体の分解斜視図である。
【0013】
車両の操舵装置2は、円環状のステアリングホイール3と、ステアリングコラムポスト4と、ステアリングロールコネクタ5とを備えている。ステアリングロールコネクタ5は、ステータ51とロテータ52とを備えており、ステータ51がステアリングコラムポスト4に固定されている。
【0014】
ロテータ52の中央部の開口からはステアリングシャフト6が突出しており、ステアリングシャフト6の先端部6aにステアリングホイール3の支持体であるステアリングパッド31のフレームが裏面側で嵌合固定されている。また、ステアリングパッド31のフレームにはステアリングロールコネクタ5のロテータ52が固定され、ステアリングホイール3と一体に回転するように構成されている。
【0015】
ステアリングパッド31の運転者に対向する側の面には、ステアリングスイッチ1を構成する第1〜第4の4つの押圧スイッチ11,12,13,14が配設されている。本実施の形態におけるステアリングスイッチ1は、カーオーディオ装置を操作するためのものであり、例えば第1の押圧スイッチ11は「SEEK_U(次に再生する曲の頭出し)」、第2の押圧スイッチ12は「SEEK_D(再生中の曲の頭出し)」、第3の押圧スイッチ13は「VOL+(音量増)」、第4の押圧スイッチ14は「VOL−(音量減)」の操作の用に割り当てられている。
【0016】
ステアリングスイッチ1を構成する第1〜第4の押圧スイッチ11〜14のいずれかが押圧操作されることにより、次に説明する抵抗分割回路20により対応する電圧値に分圧された単一の出力VOUTがステアリングロールコネクタ5を介して車両側の図示しないカーオーディオ装置に伝送される。
【0017】
図2は、ステアリングスイッチ1が備えられる抵抗分割回路20の回路図である。抵抗分割回路20は、直列に接続された第1〜第4の抵抗R1,R2,R3,R4を備えている。
【0018】
第1の抵抗R1の一端は、出力VOUTの出力端子TOUTに接続される。また、第1の抵抗R1の前記一端は、第1の押圧スイッチ11を介してコモン端子TCOM(フレームグランド)に接続される。
【0019】
第2の抵抗R2の一端は、第1の抵抗R1の他端に接続される。また、第1の抵抗R1が接続される当該第2の抵抗R2の一端は、第2の押圧スイッチ12を介してコモン端子TCOMに接続される。
【0020】
第3の抵抗R3の一端は、第2の抵抗R2の他端に接続される。また、第2の抵抗R2が接続される当該第3の抵抗R3の一端は、第3の押圧スイッチ13を介してコモン端子TCOMに接続される。
【0021】
第3の抵抗R3の他端は、第4の押圧スイッチ14を介してコモン端子TCOMに接続される。
【0022】
第4の抵抗R4は、出力端子TOUTとコモン端子TCOMとの間に接続される。
【0023】
定電圧電源V(電源電圧VIN)と出力端子TOUTとの間には、第5の抵抗R5とダイオードDとが直列に接続される。
【0024】
図3は、第1の押圧スイッチ11のプリント配線基板15及びラバードーム16の一部を破断して示す平面図である。また、図4(a)は、図3におけるX−X線で切断した第1の押圧スイッチ11の断面図、図4(b)は、図3におけるY−Y線で切断した第1の押圧スイッチ11の断面図である。
【0025】
第2〜第4の押圧スイッチ12,13,14の構成は、第1の押圧スイッチ11と同様であるため、ここでは図3及び図4を参照して第1の押圧スイッチ11の構成のみ代表して説明する。
【0026】
第1の押圧スイッチ11は、プリント配線基板15と、ラバードーム16と、スイッチノブ11aとを備えている。図3に示すように、プリント配線基板15には、棒状の固定接点17a,17b,17c,17dがラバードーム16内の4箇所に厚膜形成されている。
【0027】
固定接点17aと固定接点17bとは、プリント配線15Aを介して電気的に短絡し、同様に固定接点17cと固定接点17dもプリント配線15Aを介して短絡している。
【0028】
ラバードーム16は、例えばシリコンゴムを素材とする弾性部材により中空ドーム状に形成される。ラバードーム16は、ドーム状の本体の頂部に一体形成された円柱状のヘッド16hと、本体の外周縁に一体形成されたフランジ部16fと、本体の内部でプリント配線基板15に向けて延びる隔壁状の一対のプッシャ16a,16bとを有している。
【0029】
プッシャ16aの先端で固定接点17aに対向する位置には、可動接点18aが形成される。また、プッシャ16bの先端で固定接点17bに対向する位置には、可動接点18bが形成される。
【0030】
また、プッシャ16aの先端で固定接点17cに対向する位置には、可動接点18aが形成され、プッシャ16bの先端で固定接点17dに対向する位置には、可動接点18bが形成される。2つの可動接点18a,18bは、いずれもラバードーム16本体内で互いに電気的に短絡している。
【0031】
ラバードーム16は、4つの固定接点17a,17b,17c,17dを内部に収容する所定の位置において、プリント配線基板15にフランジ部16fの端面を接着することにより実装される。
【0032】
なお、固定接点17a,17b,17c,17d及び可動接点18a,18bは、例えばカーボン電極により形成するのが望ましい。カーボン電極は、錆が発生しないことから経時劣化が少なく比較的接触抵抗の値が安定していると共に、価格が安い等の有利な点がある。また、接点電極としては、ステンレスや真鍮等の比較的安価な金属電極を用いてもよい。
【0033】
スイッチノブ11aは、ステアリングパッド31のパッドパネル31aに嵌合して取り付けられる。また、スイッチノブ11aは、その裏面にラバードーム16のヘッド16hが当接し、ラバードーム16の弾性復元力がスイッチノブ11aに作用した状態で突起部11bがパッドパネル31aの開口縁に当接することにより、パッドパネル31aから抜け止されている。
【0034】
押圧スイッチ11は、操作者によりスイッチノブ11aが押圧操作されると、ラバードーム16がスイッチノブ11aに抗力を作用させながら弾性変形する。スイッチノブ11aが接点位置に達する状態では、固定接点17aと可動接点18aとが接触し、固定接点17bと可動接点18bとが接触することにより、固定接点17aと固定接点17bとが短絡(オン)する。同時に、固定接点17cと可動接点18aとが接触し、固定接点17dと可動接点18bとが接触して、固定接点17cと固定接点17dとが短絡(オン)する。
【0035】
また、接点位置のスイッチノブ11aから指が離されると、ラバードーム16の弾性復元力によりスイッチノブ11aが元の位置に戻り、固定接点17aと17b及び固定接点17cと17dが同時に遮断(オフ)する。
【0036】
このように、押圧スイッチ11は、同時に作動する2つの接点部として、固定接点17aと固定接点17bとの間を可動接点18a及び可動接点18bからなる導体でオンオフさせる第1の接点部と、固定接点17cと固定接点17d間を可動接点18a及び可動接点18bからなる導体でオンオフさせる第2の接点部の2つの並列する接点部とを備えて構成される。これにより、本実施形態の押圧スイッチは、従来の1つの接点部のみからなる押圧スイッチよりも接触抵抗が1/2となっている。
【0037】
なお、本発明に係るスイッチ装置は、第1〜第4の各押圧スイッチ11〜14の固定接点及び可動接点に相当する各接点部の面積を拡張して接触抵抗を低減させるものでもよい。また、本発明は、第1〜第4の押圧スイッチ11〜14に相当する各スイッチの接点部の数を3つ以上とすることで、より接触抵抗を低減させる構成であってもよい。
【0038】
(ステアリングスイッチの動作)
図2及び図5を参照しながら、本実施の形態によるステアリングスイッチ1の動作を説明する。ここで図5は、第1〜第4の押圧スイッチ11,12,13,14の各入力ごとの出力端子TOUT及びコモン端子TCOM間の抵抗と出力VOUTの理論式を表で示す図である。
【0039】
第1〜第4の押圧スイッチ11,12,13,14のいずれも押圧操作されていないオフの状態では、出力端子TOUTとコモン端子TCOMとの抵抗RSW0は、第4の抵抗R4と同一となる。よって、出力VOUTは、電源電圧VINからダイオードDの順方向電圧降下分Vdを引いた電圧を、第5の抵抗R5と抵抗RSW0(RSW0=R4)とで分圧した電圧となる。
【0040】
第1の押圧スイッチ11がオンのときには、出力端子TOUTとコモン端子TCOMとの抵抗RSW1は、押圧スイッチ11の接触抵抗Rcと第4の抵抗R4とが並列してなる抵抗(Rc×R4/(Rc+R4))と同一となる。よって、出力VOUTは、電源電圧VINからダイオードDの順方向電圧降下分Vdを引いた電圧を、第5の抵抗R5と抵抗RSW1とで分圧した電圧となる。
【0041】
第2の押圧スイッチ12がオンのときには、出力端子TOUTとコモン端子TCOMとの抵抗RSW2は、第1の抵抗R1と押圧スイッチ12の接触抵抗Rcとが直列してなる抵抗(R1+Rc)に第4の抵抗R4が並列してなる抵抗((R1+Rc)×R4/(R1+R4+Rc))と同一となる。よって、出力VOUTは、電源電圧VINからダイオードDの順方向電圧降下分Vdを引いた電圧を、第5の抵抗R5と抵抗RSW2とで分圧した電圧となる。
【0042】
第3の押圧スイッチ13がオンのときには、出力端子TOUTとコモン端子TCOMとの抵抗RSW3は、第1の抵抗R1、第2の抵抗R2及び押圧スイッチ13の接触抵抗Rcとが直列してなる抵抗(R1+R2+Rc)に第4の抵抗R4が並列してなる抵抗((R1+R2+Rc)×R4/(R1+R2+R4+Rc))と同一となる。よって、出力VOUTは、電源電圧VINからダイオードDの順方向電圧降下分Vdを引いた電圧を、第5の抵抗R5と抵抗RSW3とで分圧した電圧となる。
【0043】
第4の押圧スイッチ14がオンのときには、出力端子TOUTとコモン端子TCOMとの抵抗RSW4は、第1の抵抗R1、第2の抵抗R2、第3の抵抗R3及び押圧スイッチ14の接触抵抗Rcとが直列してなる抵抗(R1+R2+R3+Rc)に第4の抵抗R4が並列してなる抵抗((R1+R2+R3+Rc)×R4/(R1+R2+R3+R4+Rc))と同一となる。よって、出力VOUTは、電源電圧VINからダイオードDの順方向電圧降下分Vdを引いた電圧を、第5の抵抗R5と抵抗RSW4とで分圧した電圧となる。
【0044】
次に具体的な例で効果の比較を説明する。
【0045】
図6(a)は、ステアリングスイッチ1において第1〜第4の各押圧スイッチ11,12,13,14の入力に対する出力VOUTと、各出力間のマージン(電位差)を表で示す図である。図6(b)は比較のために、従来のステアリングスイッチの出力とマージンを示す図である。また、共通するパラメータ条件を図6(c)に示す。
【0046】
図6(a)と(b)とを比較して解るように、本実施の形態のステアリングスイッチ1によれば、第1〜第4の押圧スイッチ11,12,13,14がそれぞれ2つの接点部を有しているので、オン時の接触抵抗Rcが従来のものよりも小さいく出力電圧間のマージンが大きく改善されている。特に、第1と第2の押圧スイッチ11,12の出力間のマージンが顕著に改善されている。
【0047】
これにより、固定接点17a,17b,17c,17d及び可動接点18a,18bの電極の劣化に起因する出力間の干渉を効果的に抑制することがきる。したがって、固定接点17a,17b,17c,17d及び可動接点18a,18bとしてAu等の高価な貴金属電極を用いなくても、例えばカーボン電極等の比較的安価な電極材を採用することができ、ステアリングスイッチ1のコストが低減する。
【0048】
以上、本発明に好適な実施の形態を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、各押圧スイッチに相当するスイッチが有する接点部を2以上とすることや、接点部の接触面積をより広くする等して接触抵抗の低減を目的とする変更は本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
1…ステアリングスイッチ、11,12,13,14…押圧スイッチ、11a…スイッチノブ、11b…突起部、
2…操舵装置、3…ステアリングホイール、31…ステアリングパッド、31a…パッドパネル、4…ステアリングコラムポスト、5…ステアリングロールコネクタ、51…ステータ、52…ロテータ、6…ステアリングシャフト、6a…先端部、
15…プリント配線基板、15A…プリント配線、16…ラバードーム、16a…ヘッド、16b…プッシャ、16f…フランジ部、16h…ヘッド、17a,17b,17c,17d…固定接点、18a,18b…可動接点、20…抵抗分割回路、
COM…コモン端子、TOUT…出力端子、VIN…電源電圧、VOUT…出力、V…定電圧電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続される複数の抵抗と、
前記複数の抵抗の各端に接続し、同時に作動する2つの接点部を有する複数のスイッチと、
前記直列に接続される複数の抵抗のうち一の抵抗の端に接続し、前記複数のスイッチの作動に応じて分圧した電圧を出力する出力端子と、を備えるスイッチ装置。
【請求項2】
前記2つの接点部は、カーボン電極からなる請求項1に記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記複数のスイッチは、車両のステアリングホイールに設けられるステアリングスイッチである請求項1又は2に記載のスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−210581(P2011−210581A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77806(P2010−77806)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】