説明

スイッチ装置

【課題】操作体の動作速度よりも駆動体の動作速度を高速に設定可能なスイッチ装置を提供する。
【解決手段】揺動自在にケース1に保持される操作体2と、ケース1内に保持されて操作体2により揺動自在な駆動体3と、駆動体3により押圧されるスイッチ素子4とを納め、操作体2は操作される位置22aから所定距離離れた第1回転部20でケース1に対し揺動自在に保持され、駆動体3はスイッチ4を押圧する位置から所定距離離れた第2回転部30でケース1に対し揺動自在に保持され、第1回転部20と第2回転部30の間で操作体2と駆動体3とを相互に揺動自在とする揺動部16が、操作体2と駆動体3により構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺動自在な操作体によってスイッチ操作をなすスイッチ装置に関し、特に操作体と連動して揺動自在な駆動体を介してスイッチ操作をなすスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、パワーウインドウを操作するためのスイッチや、パーキングブレーキのスイッチとして、揺動自在な操作体を備えるスイッチ装置が用いられる。パワーウインドウを操作するスイッチ装置としては、ケースに操作体を揺動自在に設け、ケース内には操作体の揺動に伴い上下動する駆動体を設けると共に、駆動体と対向するようにスイッチ素子を設けたものが知られている。
【0003】
この場合、操作体を揺動させるように操作すると、駆動体が下降してスイッチ素子を押圧し、切替動作がなされる。操作状態を解除すると、スイッチ素子の復元力によって、駆動体及び操作体は元の状態に戻ることができる。このようなスイッチ装置としては、例えば特許文献1に挙げるようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−265740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パーキングブレーキに用いられるスイッチ装置には、同時にオン・オフする2つの切替接点を備えたスイッチ素子が用いられる。この場合、操作体の揺動操作によりスイッチ素子を押圧操作すると、2つの切替接点を同時に切替えることができるように構成されている。これによって、いずれか一方の切替接点に異常があっても、確実に操作が可能となるようにされている。車両側の制御部では、2つの切替接点からの出力が、所定時間(例えば100ms)以内に検出されれば、異常がないものと判断するようにしている。したがって、操作体の揺動操作に伴い、スイッチ素子内の2つの切替接点を確実に所定時間内に切替可能とする必要がある。
【0006】
従来のパワーウインドウに用いられるようなスイッチ装置は、操作体の揺動速度と駆動体の上下動速度がほぼ同じなので、駆動体がそれほど高速には動作しない。このため、スイッチ素子を押圧した際に、2つの切替接点の切替に時間差が生じ、スイッチ素子には異常がないのに車両側で異常を誤検出してしまうおそれがあった。駆動体が高速にスイッチ素子を押圧すれば、このような問題は生じないので、駆動体が操作体よりも高速に動作可能なスイッチ装置が望まれていた。
【0007】
本発明は前記課題を鑑みてなされたものであり、操作体の動作速度よりも駆動体の動作速度を高速に設定可能なスイッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明に係るスイッチ装置は、揺動自在にケースに保持される操作体と、前記ケース内に保持されて前記操作体により揺動自在な駆動体と、該駆動体により押圧されるスイッチ素子とを納めたスイッチ装置であって、
前記操作体は操作される位置から所定距離離れた第1回転部で前記ケースに対し揺動自在に保持され、
前記駆動体は前記スイッチを押圧する位置から所定距離離れた第2回転部で前記ケースに対し揺動自在に保持され、
前記第1回転部と第2回転部の間で前記操作体と駆動体とを相互に揺動自在とする揺動部が、前記操作体と駆動体により構成されることを特徴として構成されている。
【0009】
また、本発明に係るスイッチ装置は、前記揺動部は、前記操作体と揺動体のいずれか一方に軸部が形成され、前記操作体と揺動体のいずれか他方に前記軸部を回転及び摺動自在に保持する保持部が形成されることを特徴として構成されている。
【0010】
さらに、本発明に係るスイッチ装置は、前記保持部は略U字のスリット状または長孔状に形成されることを特徴として構成されている。
【0011】
さらにまた、本発明に係るスイッチ装置は、前記駆動体は、前記第2回転部と前記スイッチを押圧する位置との距離が、前記第2回転部と揺動部との距離より大きいことを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るスイッチ装置によれば、操作体の第1回転部と駆動体の第2回転部の間で操作体と駆動体とを相互に揺動自在とする揺動部が、操作体と駆動体により構成されることにより、操作体の操作位置から第1回転部までの距離と第1回転部から揺動部までの距離の比率と、揺動部から第2回転部までの距離と第2回転部から押圧部による押圧位置までの距離の比率とで、操作体の操作位置における操作速度と駆動体の押圧位置における押圧速度との比率を設定することができるので、スイッチ装置における寸法等の制限の中で、駆動体によるスイッチ素子の押圧速度をできるだけ大きくするような設計を可能とすることができる。
【0013】
また、本発明に係るスイッチ装置によれば、揺動部は、操作体と揺動体のいずれか一方に軸部が形成され、操作体と揺動体のいずれか他方に軸部を回転及び摺動自在に保持する保持部が形成されることにより、簡易な構造で揺動部を構成することができる。
【0014】
さらに、本発明に係るスイッチ装置によれば、保持部は略U字のスリット状または長孔状に形成されることにより、軸部を回転及び摺動自在とする保持部を、簡単な形状で実現することができる。
【0015】
さらにまた、本発明に係るスイッチ装置によれば、駆動体は、第2回転部とスイッチを押圧する位置との距離が、第2回転部と揺動部との距離より大きいことにより、揺動部における揺動速度よりもスイッチの押圧速度を大きくでき、スイッチの確実な押圧操作をなすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態におけるスイッチ装置の分解斜視図である。
【図2】スイッチ装置の断面図である。
【図3】操作体を揺動操作した際のスイッチ装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。図1には、本実施形態におけるスイッチ装置の分解斜視図を示している。この図に示すように、本実施形態のスイッチ装置は、上ケース10と下ケース11からなるケース1に対して操作体2を揺動自在に取付け、ケース1内には2つのスイッチ素子4を配置した基板12を納め、操作体2の揺動操作に伴い、いずれかのスイッチ素子4を押圧操作するように構成されたものである。
【0018】
ケース1を構成する上ケース10には、操作体2を保持する操作体保持部10aが、上方に突出状となるように形成されている。操作体保持部10aの両側面には、それぞれ突起状の軸部10bが形成されている。操作体2にも、これに対応して両側面にそれぞれ孔状の第1回転部20が形成されており、軸部10bを第1回転部20に挿通させることで、操作体2は第1回転部20を中心にケース1に対し揺動自在となる。
【0019】
操作体2は、第1回転部20を有する面と隣接する面のうち一方に、凹状面からなる操作部22が形成される。操作部22は、操作者が指をかけて操作体2を両方向に揺動させることができるほか、他の部品と連係させて操作体2を揺動させることもできる。本実施形態では、操作部22を構成する曲面のうち、上端位置が揺動のための力の加わる操作位置22aであるものとする。
【0020】
スイッチ装置には、操作体2の揺動に対して、クリック感触を付与するための機構が設けられている。そのための機構を構成するのは、上ケース10の内面に固定されるカム部材5と、操作体2に対して弾性部材13を介して取付けられる摺動部材14である。摺動部材14の先端部には、円筒状の先端部材15が転がり自在に取付けられている。
【0021】
カム部材5には、中央部から両側部方向に向かってそれぞれ上り傾斜状のカム面部5bを備えている。カム面部5bには、途中で傾斜角度が変化するポイントが形成されている。また、摺動部材14は、弾性部材13によりカム面部5bに対して押し付けられる方向に付勢されており、先端部材15によってカム面部5bを円滑に摺動することができる。
【0022】
このため、操作体2を揺動させると、摺動部材14に対する付勢力が揺動操作に対する抵抗力となり、適度な操作感を付与することができる。また、摺動部材14がカム面部5bの傾斜角度が変化するポイントを通過するときに、クリック感触を付与することができる。
【0023】
カム部材5はまた、下部に孔状の支軸部5aを有している。この支軸部5aに対して、駆動体3が揺動自在に取付けられる。上ケース10に対して固定されるカム部材5に駆動体3が揺動自在に取付けられることで、駆動体3はケース1に対して揺動自在となる。
【0024】
駆動体3は、支軸部5aに対して挿通される第2回転部30を有している。第2回転部30は、駆動体3の内側に向かう突起状に形成されており、支軸部5aの外面側からこれに嵌合し、ケース1に対して回転自在とされる。なお、図1において第2回転部30は1つだけが表れているが、これと対向する反対側の面にも同様に形成されている。
【0025】
また、駆動体3は、第2回転部30より上方に、突起状の軸部31を有している。軸部31は、駆動体3の外側に向かう突起状に形成されている。操作体2は、第1回転部20の下方に略U字のスリット状に形成された保持部21を有しており、この保持部21に対して駆動体3の軸部31が挿通されることで、駆動体3を操作体2に対して揺動自在とする揺動部16が構成される。このように、駆動体3は、ケース1に対して揺動自在であると共に、操作体2に対しても揺動自在となっている。
【0026】
駆動体3にはさらに、第2回転部30や軸部31が形成された中央部から両側部に向かって、それぞれ押圧部32が伸びるように形成されている。押圧部32は、基板12上に配置された2つのスイッチ素子4、4をそれぞれ押圧できるように、これらと対向配置される。駆動体3が操作体2の揺動操作に伴い揺動することで、押圧部32は、先端側の下面でいずれかのスイッチ素子4の被押圧部4aを押圧する。
【0027】
図2には、スイッチ装置の断面図を示している。図2は、操作体2が揺動操作されていない中立位置にある状態を示している。操作体2が中立位置にあるとき、駆動体3も中立位置にあって、両側の押圧部32は、それぞれスイッチ素子4の被押圧部4aに近接対向した状態となっている。
【0028】
操作体2が中立位置にあるとき、操作体2の第1回転部20と駆動体3の第2回転部30及び揺動部16は、一直線上に並んでおり、揺動部16は第1回転部20と第2回転部30の間の位置に配置される。
【0029】
図2において、操作体2の操作位置22aから第1回転部20までの距離をL1、第1回転部20から揺動部16までの距離をL2、揺動部16から駆動体3の第2回転部30までの距離をL3、第2回転部30から押圧部32の被押圧部4aを押圧する位置までの距離をL4とする。これら各距離は、操作体2と駆動体3の形状によって予め定まるものである。
【0030】
操作体2の操作に伴い、駆動体3の押圧部32において、できるだけ大きい速度でスイッチ素子4を押圧するためには、揺動部16での揺動速度をできるだけ大きくすると共に、押圧部32での揺動速度をできるだけ大きくすることが必要である。揺動部16での揺動速度をできるだけ大きくするためには、操作位置22aから第1回転部20までの距離L1に対する第1回転部20から揺動部16までの距離L2の比率をできるだけ大きくすればよい。また、押圧部32での揺動速度をできるだけ大きくするためには、揺動部16から第2回転部30までの距離L3に対する第2回転部30から押圧部32の被押圧部4aを押圧する位置までの距離L4の比率をできるだけ大きくすればよい。
【0031】
しかし、揺動操作のためには操作体2がある程度の大きさを有している必要があり、また操作位置22aからの回転半径もある程度確保する必要があるので、L1についてはあまり小さくすることはできない。また、スイッチ装置においては、高さ方向や長さ方向の寸法にも制限があることから、操作体2の第1回転部20の位置や、スイッチ素子4の押圧位置は、あまり動かすことはできない。
【0032】
一方で、揺動部16については、スイッチ装置の寸法制限の範囲で、できるだけ下方位置に形成することができる。これにより、L2をできるだけ大きくすると共に、L3をできるだけ小さくすることができ、L1に対するL2の比率を大きくすると共に、L3に対するL4の比率を大きくすることができ、操作体2の操作位置22aにおける操作速度に対する押圧部32によるスイッチ素子4の押圧速度を大きく設定することができる。
【0033】
図3には、操作体2を揺動操作した際のスイッチ装置の断面図を示している。この図では、操作体2の操作位置22aを引き上げる方向に揺動操作した状態を示している。操作体2を揺動操作すると、操作体2は第1回転部20を中心にケース1に対して回動し、それに伴って揺動部16を構成する保持部21が軸部31を揺動させる。このとき、軸部31は保持部21に対しその長手方向にも若干移動する。
【0034】
揺動部16において保持部21が軸部31を揺動させると、駆動体3は第2回転部30を中心にケース1に対して揺動自在となっているから、操作体2の傾倒方向とは反対側に傾倒し、押圧部32がスイッチ素子4の被押圧部4aを押圧する。
【0035】
操作体2を図3とは逆方向、すなわち操作位置22aを押し込む方向に揺動操作した場合には、駆動体3は図3と逆方向に傾倒し、押圧部32によって反対側のスイッチ素子4の被押圧部4aが押圧される。
【0036】
このように、操作体2の揺動操作によって揺動されてスイッチ素子4を押圧する駆動体3を設け、操作体2のケース1に対する回転中心となる第1回転部20と、駆動体3のケース1に対する回転中心となる第2回転部30との間に、操作体2と駆動体3とを相互に揺動自在とする揺動部16を形成したことにより、操作体2の操作位置22aにおける操作速度に対する駆動体3の押圧部32における押圧速度の比率を、L1とL2の比率及びL3とL4の比率の2つで設定することができ、スイッチ装置における寸法等の制限の中で、押圧部32における押圧速度をできるだけ大きくするような設計を可能とすることができる。
【0037】
特に、揺動部16の位置をできるだけ下方に配置することで、L1に対するL2の比率を大きくすると共に、L3に対するL4の比率を大きくすることができて、操作体2の操作位置22aにおける操作速度に比べて押圧部32における押圧速度を大きく設定することができる。これにより、スイッチ素子4の内部に2つの接点が併設されている場合に、押圧操作時において両接点が動作する時間差を小さくすることができ、確実な切替操作を可能とすることができる。
【0038】
本実施形態においては、複数の回転・揺動部位を設けているが、これらにおいて回転軸となる突出部と、これを保持する孔部との関係は、逆であってもよい。本実施形態において、操作体2に設けられる第1回転部20は孔状となっていて、ケース1にこれを軸支する軸部10bが形成されているが、操作体2に軸部を設けてケース1に孔部を設けてもよい。同様に、第2回転部30についても、駆動体3に孔部を設けてケース1に軸部を設けてもよい。
【0039】
また、揺動部16の構成も、駆動体3に保持部を設け、操作体2に軸部を設けるようにしてもよい。また、本実施形態において揺動部16を構成する保持部21は、略U字状のスリットとして形成しているが、保持部21は軸部31を回転及び摺動自在となるように保持できればよく、例えば長孔状に形成されていてもよい。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用は本実施形態には限られず、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。
【符号の説明】
【0041】
1 ケース
2 操作体
3 駆動体
4 スイッチ素子
4a 被押圧部
5 カム部材
10 上ケース
10a 操作体保持部
10b 軸部
11 下ケース
12 基板
13 弾性部材
14 摺動部材
15 先端部材
16 揺動部
20 第1回転部
21 保持部
22 操作部
30 第2回転部
31 軸部
32 押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揺動自在にケースに保持される操作体と、前記ケース内に保持されて前記操作体により揺動自在な駆動体と、該駆動体により押圧されるスイッチ素子とを納めたスイッチ装置であって、
前記操作体は操作される位置から所定距離離れた第1回転部で前記ケースに対し揺動自在に保持され、
前記駆動体は前記スイッチを押圧する位置から所定距離離れた第2回転部で前記ケースに対し揺動自在に保持され、
前記第1回転部と第2回転部の間で前記操作体と駆動体とを相互に揺動自在とする揺動部が、前記操作体と駆動体により構成されることを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
前記揺動部は、前記操作体と揺動体のいずれか一方に軸部が形成され、前記操作体と揺動体のいずれか他方に前記軸部を回転及び摺動自在に保持する保持部が形成されることを特徴とする請求項1記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記保持部は略U字のスリット状または長孔状に形成されることを特徴とする請求項2記載のスイッチ装置。
【請求項4】
前記駆動体は、前記第2回転部と前記スイッチを押圧する位置との距離が、前記第2回転部と揺動部との距離より大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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