説明

スイッチ

【課題】ノブの操作時にノブの照明輝度が大きく変化しないようにする。
【解決手段】プッシュノブ10、20と、プリント基板70上の光源73からの光をプッシュノブに導いてプッシュノブを照明するレンズ90と、を備え、レンズ90が、プッシュノブの操作により移動して、レンズ90の入射面92cと光源73との距離が変化するスイッチであって、レンズ90に、レンズ90に入射した光の光路を横切る凹溝98を形成すると共に、プリント基板70上の凹溝98に対応する位置にレンズ90側に突出する突出壁68を設けて、レンズ90が、入射面92cと光源73との距離が短くなる方向に移動した際に、突出壁68がレンズ90の移動量に応じて凹溝98に挿入されて、光路をレンズ90の移動量に応じて遮断し、プッシュノブ10、20を照明する光の量が、レンズ90の移動にかかわらず略一定になるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノブが照明されるようにしたスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光源からの光を、導光体とレンズとを介してノブに導いて、ノブを照明するようにしたスイッチが開示されている。
このスイッチでは、光源から照射されて導光体に入射した光は、レンズの基板側の下方からレンズに向けて照射され、照射された光のうちのレンズに入射した光が、ノブに導かれて、ノブが照明される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−185558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のスイッチでは、レンズがノブの操作に連動して移動するようになっており、ノブが操作されると、レンズと、光源からの光をレンズに向けて照射する導光体との距離が変化する。
例えば、ノブが押圧されて、レンズが導光体に近づく方向に移動すると、レンズと導光体との距離が短くなって、より多くの光がレンズに入射するようになるので、ノブの照明輝度が大きくなる。また、レンズが導光体から離れる方向に移動すると、レンズと導光体との距離が長くなって、レンズに入射する光の量が少なくなるので、ノブの照明輝度が小さくなる。
そのため、特許文献1のスイッチでは、ノブの操作時にレンズに入射する光の量が変化するために、ノブの照明輝度が大きく変化してしまう。
【0005】
よって、ノブが照明されるようにしたスイッチにおいて、ノブの操作時にノブの照明輝度が大きく変化しないようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、可動接点操作用のノブと、光源と、光源からの光をノブに導いてノブを照明するレンズと、を備え、レンズが、ノブの操作により移動して、レンズと光源との距離が変化するスイッチであって、レンズに、レンズに入射した光の光路を横切る凹溝を形成すると共に、基板の凹溝に対応する位置にレンズ側に突出する突出壁を設けて、レンズが光源との距離が短くなる方向に移動した際に、突出壁が、レンズの移動量に応じて凹溝に挿入されて、光路が移動量に応じて遮断されるようにした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、レンズと光源との距離が短くなる方向にレンズが移動すると、突出壁が、レンズの移動量に応じてレンズの凹溝に挿入されて、レンズ内の光路をレンズの移動量に応じて遮断する。
よって、レンズが光源に近づいてレンズに入射する光の量が増えるほど、突出壁による光路の遮断量が大きくなり、レンズが光源から離れてレンズに入射する光の量が少なくなるほど遮断量が小さくなることで、ノブを照明する光の量をほぼ一定にすることができる。これにより、ノブの操作時にレンズと光源との距離が変化することに起因して、ノブの照明輝度が大きく変化することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係るスイッチの平面図である。
【図2】実施形態に係るスイッチの分解斜視図である。
【図3】図1におけるA−A線断面図である。
【図4】実施形態に係るスイッチのレンズを説明する図である。
【図5】図1におけるB−B線断面図である。
【図6】ラバコンシートを説明する図である。
【図7】突出壁の作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、実施の形態にかかるスイッチ1の平面図である。
【0010】
図1に示すように、実施の形態にかかるスイッチ1は、リング形状のプッシュノブ10および円形のプッシュノブ20が上面に露出させて設けられたスイッチであり、例えば車両用ハンドルに埋め込まれて、車載機器の操作などに用いられる。
プッシュノブ10は、周方向に沿って90度間隔で被操作位置が設けられた4方向スイッチであり、例えば実施の形態では、図中「□」で示す領域a〜dに、ユーザが機器を操作するために押圧する被操作位置が設定されている。
プッシュノブ10は、図中点線で囲むリング状の領域α内が、スイッチ1の内部に設けた光源からの光が照射されて照明される面とされている。
プッシュノブ20は、上面全体が被操作部とされており、中央の点線で囲む円形領域β内が照明される面とされている。なお、プッシュノブ10およびプッシュノブ20はともに、光透過性のある樹脂材料から形成されている。
【0011】
図2は、図1に示すスイッチ1の分解斜視図である。
図2に示すように、スイッチ1は、アッパケース30とロアケース40とからなる本体ケース内に、ベース50、ラバコンシート60、そしてプリント基板70などが設けられて構成される。
プッシュノブ10は、ジョイント80を介してベース50に取り付けられ、レンズ90は、ジョイント80の内側で、プッシュノブ20とラバコンシート60との間で挟み込まれた状態で配置される。
【0012】
アッパケース30は、上面視において矩形形状を有しており、中央部にプッシュノブ10およびプッシュノブ20の上面を露出させる開口31が設けられている。
【0013】
図3は、図1におけるA−A線断面図である。
図3に示すように、プッシュノブ10では、中央部に形成された開口11を全周に亘って囲む内壁12が、発光面10aとは反対側の面から下方向(レンズ90の方向)に延出して設けられており、プッシュノブ10の外周縁にも、内壁12と同方向に伸びる外壁13が、内壁12を所定間隔で囲むように設けられている。
外壁13の延出長さh1は、内壁12の延出長さh2よりも短く設定されており、外壁13の下端には、径方向外側に延出するフランジ部14が形成されている。フランジ部14は、上面視においてプッシュノブ10の外壁13の全周に亘って形成されており、フランジ部14の下面14aは、後記するプッシュロッド100をプリント基板70側に押圧する押圧面となる。
【0014】
図2に示すように、プッシュノブ10では、外壁13の下端から下方向に突出させて取付部15が設けられている。
取付部15は、上面視において、開口11を挟んで対向する位置に設けられており、プッシュノブ10は、取付部15の孔15aに、後記するジョイント80の外側突起82を径方向の内側から外側に挿通させることで、ジョイント80に支持されて、一軸(図1においてY−Y線で示す軸)周りに揺動可能とされている。
【0015】
図3に示すように、プッシュノブ20は、有底の円筒形状を有しており、上壁部24の周縁から下方向に伸びる周壁部21の下端には、径方向外側に延びるフランジ部22が全周に亘って形成されている。
周壁部21の長さh3は、プッシュノブ10の内壁12の長さh2よりも長く形成されており、スイッチ1において、プッシュノブ10の内壁12の下端が、プッシュノブ20のフランジ部22の上面に載置された状態で、プッシュノブ10と、プッシュノブ20とが組み付けられるようになっている。
【0016】
また、周壁部21の外周面には、軸方向(図3において上下方向)に延びる突起23が、計三カ所、周方向に沿って90度間隔で設けられている(図2参照)。突起23は、プッシュノブ20の上壁部24の発光面20aとは反対側の面からフランジ部22までの範囲に形成されている。
この突起23は、プッシュノブ10の内壁12に形成されたガイド溝16(図2参照)と整合する幅で形成されており、突起23は、プッシュノブ10の開口11内に配置されたプッシュノブ20が、上下移動するときのガイドとして機能する。
【0017】
ジョイント80は、上面視においてリング形状を有しており、中央の開口81を挟んで対向する位置、具体的には図1におけるY−Y線とジョイント80とが交差する位置の下端には、径方向外側に突出する円柱形状の外側突起82が設けられている。
図3に示すように、ジョイント80の外径は、プッシュノブ10の外壁13の内径よりも小さく設定されており、ジョイント80とプッシュノブ10とを組み付けた際に、断面視において、ジョイント80の少なくとも上側半分が、プッシュノブ10の外壁13に囲まれた空間内に配置されるようになっている。
【0018】
さらに、図2に示すように、ジョイント80の内周面では、開口81を挟んで対向する位置の下端に、径方向内側に突出する円柱形状の内側突起83が設けられている。
ここで、内側突起83は、外側突起82から、ジョイント80の周方向に90度オフセットした位置に設けられており、内側突起83を、後記するベース50に設けられたジョイント取付部54の孔54aに、径方向外側から内側に挿通させることで、ジョイント80が、ベース50において一軸(図1においてX−X線で示す軸)周りに揺動可能に支持されるようになっている。
【0019】
ここで、ジョイント80の揺動軸(図1においてX−X線で示す軸)と、プッシュノブ10の揺動軸(図2においてY−Y線で示す軸)とは、互いに直交しているので、プッシュノブ10が組み付けられたジョイント80をベース50に取り付けると、プッシュノブ10は、図1においてX−X線で示す軸と、Y−Y線で示す軸の2軸周りに揺動可能となる。
よって、プッシュノブ10では、周方向において90度おきに被操作位置(図中「□」示す)が、揺動方向に基づいて設定されている。
【0020】
図4の(a)は、レンズ90をロアケース40側から見た平面図であり、(b)は、(a)におけるC−C断面を拡大して示した図であり、入射面92cからレンズ90内に入射した光の光路Hを模式的に示した図である。
【0021】
レンズ90は、平面視において略円形形状の本体部91と、本体部91の端部から接線方向に延出する延出部92とを備えており、図1において二点差線で示すように、本体部91がプッシュノブ20の下方に位置し、延出部92がプッシュノブ10の下方側に突出するように、設けられている。
【0022】
図3に示すように、レンズ90では、本体部91の上側の面が、後記する光源73から入射した光を、プッシュノブ10およびプッシュノブ20に向けて出射する出射面とされている。
本体部91の中央部には、プッシュノブ20の周壁部21の内径と整合する外径の円柱部93が、上方に延出して形成されており、円柱部93の上端面が、上方に位置するプッシュノブ20に向けて光を出射する出射面93aとなっている。
さらに、円柱部93を囲むようにリング形状の凹部94が形成されており、凹部94は、プッシュノブ20の下端に形成されたフランジ部22が載置されて、プッシュノブ20を支持するための支持部となっている。
また、リング状の凹部94を囲む周壁部95は、プリント基板70側の下面91aから所定距離離間した位置から上方に進むに従って縮径すると共に、円柱部93の出射面93aを超えた位置からさらに大きく縮径しており、プッシュノブ10に向けて光を出射する出射面95a、95bを成している。
【0023】
本体部91の下面91aには、略円柱形状の開口96と、開口96を囲むように設けられた円筒形状の被支持部97が設けられている。
被支持部97の下端97aは、本体部91の下面91aよりも下方に突出しており、後記するスイッチ65の被押圧部65b(突起65e)で支持されている。
【0024】
図5は、図1におけるB−B断面図であり、レンズ90の凹溝98とラバコンシート60の突出壁68との位置関係を説明する図である。
図4および図5に示すように、レンズ90の延出部92では、先端部に、プリント基板70側に突出する突出部92aが設けられており、突出部92aの下端面が、光源73から照射された光が入射する入射面92cとされている。突出部92aの上面は、傾斜面92dとされており、入射面92cから入射した光が、傾斜面92dで反射されて、光の進行方向が、延出部92の本体部91側に変えられるようになっている。
【0025】
図4に示すように、入射面92cからレンズ90に入射したのち、傾斜面92dで反射されて延出部92から本体部91に向かう光の光路H上には、光路Hを直交する方向に横切って凹溝98が形成されている。図5に示すように、凹溝98は、レンズ90のラバコンシート60側の下面で開口している。
図4の(a)に示すように、平面視において凹溝98は、延出部の幅Wよりも大きい長さ寸法W1で形成されており、凹溝98のレンズ90の中心(開口96)側の端部98bは、後記する突出壁68の挿入部68aの端部の外形に整合させて、曲面状を成している。
【0026】
また、図4の(b)に示すように、断面視において凹溝98は、延出部92の厚みheよりも小さい深さ寸法hgで形成されており、本体部91に向かう光の総てが凹溝98と交差しないようになっている。
【0027】
実施の形態では、凹溝98と光路Hとが略直交するように設けられており、凹溝98内に後記する突出壁68の挿入部68a(図5参照)が挿入されていない状態において、傾斜面92d側から本体部91に向かう光は、進行方向が保持されたままで、凹溝98を通過するようになっている。
【0028】
なお、凹溝98の領域を超えて本体部91内に導かれた光は、本体部91内を反射しながら本体部91の全体に行き渡ったのち、上方に設けた出射面93a、95a、95b(図3参照)から、それぞれ対応するプッシュノブ20、プッシュノブ10に向けて出射される。
【0029】
図2および図3に示すように、ベース50の上壁部51の中央部には、レンズ90を内側に収容する開口52が設けられており、この開口52の周縁には、上方に延出する周壁部53が、全周に亘って設けられている。
図2に示すように、周壁部53の開口52を挟んで対向する位置に、ジョイント取付部54が設けられている。ジョイント取付部54には、ジョイント80の内側突起83を挿通させる孔54aが形成されており、ジョイント80は、ベース50において1軸(図1においてX−X線で示す軸)周りに揺動可能に支持される。
【0030】
ベース50の周壁部53の外周面には、周方向に沿って90度間隔で、プッシュロッド取付部55が、径方向外側に延出して設けられている。
図3に示すように、プッシュロッド取付部55は、ベース50の上壁部51から上方に突出して形成されており、後記するプッシュロッド100の押圧部100aを収容する収容部56を内側に形成すると共に、プッシュロッド100の軸100bを挿通する挿通孔57が、上下方向に貫通して設けられている。
【0031】
プッシュロッド100は、押圧部100aを、後記するスイッチ64の上に載置させ、軸100bの上端をプッシュノブ10のフランジ部14の下面14aに当接させて設けられており、図中上下方向に移動可能に設けられている。
【0032】
さらに、図2および図5に示すように、上壁部51において、レンズ90の延出部92の直上に位置する範囲には、プッシュノブ10側に突出する遮光壁部58が形成されている。
遮光壁部58は、延出部92の入射面92cの直上の位置から、延出部92の上方の全域に亘って、延出部92との接触を避けつつ延出部92を覆うように設けられており、入射面92cから入射した光が、延出部92の上部から漏出しても、漏出した光が、遮光壁部58で遮られて、プッシュノブ10に直接照射されないようにするために設けられている。
【0033】
図3、図4に示すように、ベース50は、上壁部51の周縁からロアケース40側に延出した周壁部51aを、ロアケース40の周壁部41にインロー嵌合させて、ロアケース40に取り付けられる。そして、その状態で、アッパケース30の周壁部32を、ベース50の周壁部51aにインロー嵌合させることで、アッパケース30とロアケース40とからなるスイッチ1の本体ケースが形成される。
【0034】
図6は、ラバコンシート60の斜視図である。
図3に示すように、ラバコンシート60は、ロアケース40内に配置されたプリント基板70の周縁に、周壁部61を外嵌させて、プリント基板70に載置されている。
ラバコンシート60は、プリント基板70に載置される載置部62と、載置部62同士を繋ぐ上壁部63と、スイッチ64、65と、レンズ90の凹溝98に挿入される突出壁68(図5、図6参照)と、を備えており、これらは可撓性と弾性に優れたゴム系の材料から一体に形成されている。
【0035】
図3および図5に示すように、載置部62は、プリント基板70上に露出する固定接点71、72、および光源73を囲むように設けられている。
【0036】
図3に示すように、スイッチ64は、プリント基板70の表面に露出する固定接点71と、固定接点71と対になる可動接点66が下面に設けられた円筒部64aと、円筒部64aの上に設けられて、円筒部64aよりも一回り大きい直径を有する略円筒形状の被押圧部64bと、被押圧部64bの下端側の周縁から載置部62側に延出する周壁部64cとから構成される。
【0037】
周壁部64cは、被押圧部64bから離れるにつれて内径が広くなるように形成されており、その先端は載置部62に接続している。周壁部64cは、プリント基板70から上方に所定距離離間した位置に被押圧部64bを位置させて、その下端に接続する円筒部64aの可動接点66と、プリント基板70の固定接点71とを離間させている。
【0038】
スイッチ64は、被押圧部64bでプッシュロッド100をプッシュノブ10側に付勢した状態で配置されている。
ユーザによるプッシュノブ10の操作により、プッシュノブ10が押し下げられてプッシュロッド100がプリント基板70側に押し込まれると、プッシュロッド100は、スイッチ64をプリント基板70側に付勢する。
この際、周壁部64cが撓んで変形し、円筒部64aと被押圧部64bをプリント基板70側へ移動させるので、スイッチ64は、円筒部64aの可動接点66がプリント基板70の固定接点71と接触するまで、プリント基板70側に移動する。
また、プッシュノブ10の押し下げが終了すると、ラバコンシート60は弾性に富む材料から構成されているので、周壁部64cの復元力により、被押圧部64bがプッシュロッド100を持ち上げながら上方に移動して、円筒部64aの下端に設けられた可動接点66を、プリント基板70の固定接点71から離間させるようになっている。
【0039】
スイッチ65は、被押圧部65bの形状のみが、前記したスイッチ64と大きく異なる。スイッチ65の被押圧部65bの上端部には、上面視において、中心から周縁部に掛けて傾斜する傾斜面65dが設けられており、スイッチ65の上端部が、円錐形状を成している。
傾斜面65dには、周縁から所定距離離れた位置に、上方に延びる可撓性の突起65eが、被押圧部65bの周方向に沿って所定間隔で合計4つ設けられている(図6参照)。
スイッチ65は、突起65eを、レンズ90の被支持部97の下端97aに当接させて、レンズ90をプッシュノブ20側に付勢した状態で配置されている。
【0040】
ここで、レンズ90の下側は、被支持部97と当接するスイッチ65のみで支持されており、被支持部97は上面視においてレンズ90の本体部91の中心を支持している。よって、レンズ90は、被支持部97を中心として、360度方向の何れにも、傾くことができるようになっている。
図3に示すように、プッシュノブ20は、レンズ90の本体部91における中央に載置されているので、プッシュノブ20が操作された際には、レンズ90は、真下に位置するスイッチ65のみをプリント基板70側に移動させる。
【0041】
一方、プッシュノブ10は、その内壁12を、レンズ90の周縁側の凹部94に係止させた状態で設けられているので、プッシュノブ10の被操作位置a〜d(図1参照)の何れかが押されると、その際にプッシュノブ10に作用した押圧力は、内壁12からレンズ90に伝わって、レンズ90を、押し込まれた被操作位置a〜dの方向に傾ける力として作用する。
【0042】
例えば、図3において、図中左側に示したプッシュノブ10の部分がプリント基板70側に押されると、プッシュノブ10の内壁12が、レンズ90の左側をプリント基板70側に押し下げて、レンズ90が左側に傾けられる。
【0043】
実施の形態では、プッシュノブ10は4方向スイッチであるので、図6に示すように、ラバコンシート60の中央のスイッチ65を中心として90度間隔でスイッチ64が設けられている。
ラバコンシート60において、スイッチ64およびスイッチ65は、それぞれプリント基板70の固定接点71、72に対応する位置に設けられている。
【0044】
図5に示すように、ラバコンシート60では、プリント基板70の光源73に対応する位置に、薄肉部67が設けられている。薄肉部67は、光源73へのゴミや汚れの付着を防止するために、載置部62同士を繋いで、光源73から発光される光の光路を横切るように設けられている。
薄肉部67は、ラバコンシート60の他の部分よりも非常に薄く形成されており、光源73から発光された光を透過可能な厚みで、ラバコンシート60と一体に形成されている。
【0045】
さらに、ラバコンシート60では、レンズ90の凹溝98に対応する位置に、突出壁68が形成されている。
突出壁68は、ラバコンシート60の上壁部63から、レンズ90側に突出して形成されており、凹溝98に挿入される板状の挿入部68aと、挿入部68aと上壁部63とを接続し、挿入部68aを、プリント基板70のレンズ90側の上方で支持する支持部68bとを備えている。
【0046】
挿入部68aは、レンズ90側の上方から見て、レンズ90の凹溝98に沿って延びており、長手方向における両端は曲面状に形成されている(図6参照)。
図5に示すように、支持部68bは、断面視において略U字形状を有しており、挿入部68aの厚み方向(図5において左右方向)の両側に設けられている。支持部68bは、挿入部68aの厚み方向の一端および他端から上壁部63よりもプリント基板70側の下方に直線状に延びたのち、それぞれレンズ90側の上方から見て挿入部68aから離れる方向に向けて湾曲して、断面視略U字形状を成している。そして、支持部68bの先端は、挿入部68aの周囲に位置するラバコンシート60の上壁部63に、プリント基板70側から連結している。
【0047】
挿入部68aと支持部68bとは、上壁部63よりもレンズ90側の上方で互いに連結されており、挿入部68aは、支持部68bによりプリント基板70のレンズ90側の上方で、移動可能に保持されている。
プッシュノブ10、20の操作により、例えばレンズ90がプリント基板70側に移動して挿入部68aと干渉しても、挿入部68aが支持部68bを変形させながら容易に変位できるようにすることで、レンズ90の移動が阻害されないようにするためである。
【0048】
上壁部63から、突出壁68の上端までの高さhaは、レンズ90がプッシュノブ10、20によりプリント基板70側に押し下げられていない通常位置にある場合において、突出壁68が凹溝98の外に位置する高さとされている。レンズ90内の光路を遮断しないようにするためである。
また、挿入部68aの高さhbは、レンズ90がプッシュノブ10によりプリント基板70側に押し下げられた作動位置にある場合において、挿入部68aが凹溝98の底98aに突き当てられる高さ寸法(凹溝98の深さ寸法hgよりも若干長い寸法)に設定される。レンズ90内の光路のうち、凹溝98と交差する光路を確実に遮断するためである。
【0049】
なお、挿入部68aの厚みおよび幅は、凹溝98と交差する光路を遮断できる範囲内で、凹溝98に挿入可能な厚みおよび幅に設定されている。
【0050】
図2に示すように、プリント基板70には、図示しない配線が設けられており、上面70aに、ラバコンシート60の可動接点66と対になる固定接点71、72と、LEDからなる光源73とが設けられている。
プリント基板70において固定接点71は、プッシュノブ10の4つの被操作位置a〜d(図1参照)の真下であってスイッチ64の可動接点66に対向する位置で、表面に露出しており、固定接点72は、プッシュノブ20の真下であって、スイッチ65の可動接点66に対向する位置で、表面に露出している。
プリント基板70には、図示しないコネクタ端子が接続されており、コネクタ端子の出力に基づいて、プッシュノブ20と、プッシュノブ10の4つの被操作位置a〜dのうちの何れの被操作位置が操作されたのか、そしてその操作時間などが検出できるようになっている。
【0051】
光源73は、プリント基板70上に一つのみ設けられており、光源73の直上に位置するレンズ90の受光面に向けて光を照射する。
【0052】
図7は、突出壁68の作用を説明する図であって、(a)は、レンズ90がプリント基板70側に移動する前の通常位置にある場合を示す図であり、(b)は、レンズ90がプリント基板70側に移動した作動位置にあり、凹溝98に突出壁68の挿入部68aが挿入された状態を示す図である。
【0053】
かかる構成のスイッチ1における突出壁68の作用を説明する。
プッシュノブ10、20が操作されておらず、レンズ90が通常位置にある場合、図7の(a)に示すように、突出壁68の挿入部68aは、レンズ90の凹溝98の外に位置している。
そのため、入射面92cからレンズ90に入射した光源73からの光は、傾斜面92dで反射されたのち、凹溝98を通過して、レンズ90の本体部91内に導かれる。そして、レンズ90の出射面93a、95a、95b(図3参照)から照射されて、プッシュノブ10、20を照明する。
すなわち、レンズ90に入射した光の総てがプッシュノブ10、20の照明に用いられる。
【0054】
プッシュノブ10、20が操作されて、レンズ90が、図7の(a)に示す位置から矢印で示す方向に移動した場合には、図7の(b)に示すように、突出壁68の挿入部68aは、レンズ90の移動量に応じて凹溝98に挿入される。
ここで、レンズ90がプリント基板70側に移動すると、レンズ90の入射面92cとプリント基板70上の光源73との距離が短くなるので、距離が短くなった分だけ、入射面92cからレンズ90に入射する光の量が増加する。
【0055】
実施の形態では、挿入部68aの凹溝98への挿入量は、レンズ90がプリント基板70側に移動してレンズ90に入射する光の量が増加するほど大きくなり、光路Hの凹溝98内を通過する部分での光の遮断量が大きくなる。
そして、図7の(b)に示す、プッシュノブ10が完全に押し込まれてレンズ90がプリント基板70に最も近接する作動位置まで移動した場合には、光路Hのうち、凹溝98を通過しない部分の光のみが、プッシュノブ10、20の照明に用いられる。
【0056】
実施の形態では、レンズ90が移動して、レンズ90に入射する光が多くなるほど、プッシュノブ10、20の照明に用いられる光が絞られて、レンズ90が移動していない場合と略同じ量の光で、プッシュノブ10、20が照明されるように、凹溝98の深さや範囲、そして凹溝98への挿入部68aの挿入量が決定されている。
よって、プッシュノブ10、20の操作時にレンズ90の入射面92cと光源73との距離が変化することに起因して、プッシュノブ10、20の照明強度が大きく変化することを、好適に防止できる。
【0057】
ここで、実施の形態におけるプッシュノブ10、20が、発明におけるノブに相当し、実施の形態におけるラバコンシート60が、発明における保持部材に相当する。
【0058】
以上の通り、実施の形態では、可動接点66の操作用のプッシュノブ10、20と、プリント基板70に設けられた光源73と、光源73からの光をプッシュノブ10、20に導いてプッシュノブ10、20を照明するレンズ90と、を備え、レンズ90が、プッシュノブ10、20の操作により移動して、レンズ90の入射面92cと光源73との距離が変化するスイッチ1であって、レンズ90に、レンズ90に入射した光の光路Hを横切る凹溝98を形成すると共に、プリント基板70上の凹溝98に対応する位置にレンズ90側に突出する突出壁68を設けて、レンズ90が、入射面92cと光源73との距離が短くなる方向に移動した際に、突出壁68の挿入部68aが、レンズ90の移動量に応じて凹溝98に挿入されて、光路Hが、レンズ90の移動量に応じて挿入部68aで遮断されるようにした。
これにより、入射面92cと光源73との距離が短くなる方向にレンズ90が移動して、レンズ90に入射する光の量が増えるほど、凹溝98への挿入部68aの挿入量が大きくなって、挿入部68aによる光路Hの遮断量が大きくなる。そして、入射面92cと光源73との距離が長くなる方向にレンズ90が移動して、レンズ90に入射する光の量が減少するほど、凹溝98への挿入部68aの挿入量が小さくなって、挿入部68aによる光路Hの遮断量が小さくなる。
よって、入射面92cと光源73との距離が変化しても、プッシュノブ10、20を照明する光の量をほほ一定にすることができるので、プッシュノブ10、20の操作時にレンズ90の入射面92cと光源73との距離が変化することに起因して、プッシュノブ10、20の照明輝度が大きく変化することを防止できる。
【0059】
さらに、レンズ90のプリント基板70側の下面91aは、可動接点66をプリント基板70上の固定接点71の上方で、固定接点71に接離可能に保持するラバコンシート60で支持されており、プッシュノブ10、20は、レンズ90に載置されている構成とした。
これにより、プッシュノブ10、20が操作されてプリント基板70側に押圧されると、レンズ90がプッシュノブ10、20と一体にプリント基板70側に移動するので、プッシュノブ10、20の移動量がそのままレンズ90の移動量となる。よって、光路Hの突出壁68による遮断量を、プッシュノブ10、20の実際の移動量(操作量)に応じた適切な量にすることができる。
【0060】
また、突出壁68は、プッシュノブ10、20の操作を検知するスイッチ64、65を構成するラバコンシート60と一体に形成されている構成とした。
これにより、突出壁68をラバコンシート60と別体に設ける場合に比べて、突出壁68を位置精度良く配置することができる。また、一度に突出壁68とスイッチ64、65が形成されたラバコンシート60が得られるので、製造の手間が省けて、スイッチ1の製造コストの低減に寄与できる。
【0061】
また、突出壁68は、凹溝98と整合する形状の挿入部68aと、挿入部68aを、プリント基板70のレンズ90側の上方で移動可能に支持する支持部68bとを備え、ラバコンシート60と一体に、可撓性と弾性に優れたゴム系の材料から形成されている構成とした。
これにより、プッシュノブ10、20の操作によりレンズ90が押し下げられた際に、挿入部68aがレンズ90によりプリント基板70側に押されても、レンズ90の移動が阻害されることがない。
また、突出壁68が可撓性と弾性に優れた材料から形成されているので、レンズ90の移動により突出壁68の干渉が繰り返されても、干渉による疲労で突出壁68が簡単に壊れることがない。
【0062】
なお、実施の形態では、光源73がプリント基板70に直接設けられている場合を例示したが、光源73から照射された光がレンズ90に入射してプッシュノブ10、20に導かれるのであれば、例えば、光源をプリント基板から離れた位置に配置し、プリント基板のターミナルから延びるリード線に接続して設けるようにしても良い。さらに、光源を、プリント基板ではなく、端子や固定接点などに導通した導電板が絶縁樹脂でインサート成形されたターミナルブロックに設けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0063】
1 スイッチ
10 プッシュノブ
20 プッシュノブ
30 アッパケース
40 ロアケース
50 ベース
60 ラバコンシート
61 周壁部
62 載置部
63 上壁部
64 スイッチ
65 スイッチ
66 可動接点
67 薄肉部
68 突出壁
68a 挿入部
68b 支持部
70 プリント基板
71 固定接点
72 固定接点
73 光源
80 ジョイント
90 レンズ
91 本体部
92 延出部
92c 入射面
92d 傾斜面
93 円柱部
93a 出射面
94 凹部
95 周壁部
95a 出射面
95b 出射面
96 開口
97 被支持部
98 凹溝
98a 底
98b 端部
100 プッシュロッド
H 光路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動接点操作用のノブと、
光源と、
前記光源からの光を前記ノブに導いて前記ノブを照明するレンズと、を備え、
前記レンズが、前記ノブの操作により移動して、前記レンズと前記光源との距離が変化するスイッチであって、
前記レンズに、前記レンズに入射した光の光路を横切る凹溝を形成すると共に、
基板の前記凹溝に対応する位置に前記レンズ側に突出する突出壁を設けて、
前記レンズが前記光源との距離が短くなる方向に移動した際に、前記突出壁が、前記レンズの移動量に応じて前記凹溝に挿入されて、前記光路が前記移動量に応じて遮断されるようにしたことを特徴とするスイッチ。
【請求項2】
前記レンズの前記基板側の下面は、前記可動接点を前記基板の固定接点の上方で保持する保持部材で支持されており、前記ノブは前記レンズに載置されていることを特徴とする請求項1に記載のスイッチ。
【請求項3】
前記突出壁は、前記保持部材と一体に形成されていることを特徴とする請求項1また請求項2に記載のスイッチ。
【請求項4】
前記突出壁は、
前記凹溝と整合する形状の挿入部と、
前記挿入部を、前記基板の前記レンズ側の上方で移動可能に支持する支持部と、を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のうちの何れか一項に記載のスイッチ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−257654(P2010−257654A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104362(P2009−104362)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(390001236)ナイルス株式会社 (136)
【Fターム(参考)】