説明

スイッチ

【課題】高い取り付け角度の調整を行わせながら、治具の取り扱いを不要とする。
【解決手段】ムービング・ブロック5に支持され該ムービング・ブロック5の外面からスプリング37の弾性力により突出し弾性力に抗して反突出方向へ没入移動可能な係合可動部29と、前記係合可動部29と対向した対向部材(例えばターミナル・ブロック3)に設けられるとともに該係合可動部29を係脱可能に係止してムービング・ブロック5を位置決める係止凹部21とを備えたインヒビタ・スイッチ1であって、ムービング・ブロック3の回転により係止中の係合可動部29を乗り上げさせて没入状態とする乗り上げ内壁面25,27を前記対向部材の前記係止部に連接させて設け、没入状態で係合可動部29の突出移動をロックする移動ロック係合部43と係止突部45とを係合可動部29とムービング・ブロック5とに各別に設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機の変速位置を電気的に検出するインヒビタ・スイッチ等のスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される自動変速機は、シフト操作により選択されたレンジ・ポジションに応じてギヤ段の範囲を制限し、車速及びスロットル開度に応じてギヤ段の切り換えを行なうものである。
【0003】
かかる切り換えのためのレンジ・ポジションを検出するセンサとして、シフト装置に連動して切り換わるスイッチが自動変速機に取り付けられている。このスイッチは、レンジ・ポジションの検出と併せ、車両の付属機器としてのスタータ・モータの駆動とリバース・ランプの点灯とを制御する。特に、シフト装置のニュートラル・ポジションにおいて、スタータ・モータの駆動回路を接続状態とし、その起動を可能とするところから、ニュートラル・スタート・スイッチと称されこともある。
【0004】
かかるスイッチは、その可動盤の軸部がシフト装置のシフト操作に連動する自動変速機のマニュアル・シャフトと嵌合し、自動変速機の筐体に対する前記マニュアル・シャフトの相対回転角度から自動変速機の変速モードを間接的に識別する。このため、例えばニュートラル・ポジションにあるスイッチの可動盤の軸部に、シフト装置によりニュートラル・ポジションに操作されている時の前記マニュアル・シャフトが嵌合できるように自動変速機の筐体に対してスイッチを正確に取り付けること、すなわち自動変速機の筐体に対するスイッチの取り付け角度がずれないように正確に取り付けることが要求される。
【0005】
仮に取り付け角度がずれていると、自動変速機の変速モードの切り替わりと、スイッチの切り替わりのタイミングがずれ、スイッチの出力を使用する種々の機能やシステムが誤動作を招く可能性がある。
【0006】
このため、この種のスイッチでは、自動変速機の筐体に対する取り付け角度を正確に行わせ、誤動作を防止する必要がある。
【0007】
図7(a)は、位置合わせ治具の平面図、(b)は、位置合わせ治具の側面図、(c)は、位置合わせ治具の取り付けを破線で示すインヒビタ・スイッチの断面図である。図8は、位置合わせ治具を用いたインヒビタ・スイッチの斜視図である。
【0008】
ここで、インヒビタ・スイッチ105は自動変速機の筐体に取付穴110を介してボルトで固定されるものである。
【0009】
図7、図8のように、前記取り付け角度の調整の際は、インヒビタ・スイッチ105を自動変速機の筐体に対して取付穴110(長穴)の範囲内で回転可能な程度に緩めにボルトを締めておき、ニュートラル・ポジションにあるマニュアル・シャフト101に位置合わせ治具103の一端(孔103b)を挿入し、インヒビタ・スイッチ105全体を回転させながら位置合わせ治具103の他端の位置決めピン103aをインヒビタ・スイッチ105の位置決め孔107に挿入して可動子109の回転をロックさせ、この状態でボルトを締め付けインヒビタ・スイッチ105を自動変速機の筐体に固定する。これにより、インヒビタ・スイッチ105のニュートラル・ポジションとマニュアル・シャフト101のニュートラル・ポジションとが正確に一致する。
【0010】
このように、位置合わせ治具103を使用することで取り付け角度の調整作業が迅速、正確、かつ容易となる。
【0011】
しかし、位置合わせ治具103を用いると、治具の取り扱いが煩雑となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平8−74978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
解決しようとする問題点は、位置合わせ治具を用いると、高い取り付け角度の調整を行わせることはできるが、治具の取り扱いが煩雑となる点である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、高い取り付け角度の調整を行わせながら、治具の取り扱いを不要とするために、同心円に配列された固定接点を有するターミナル・ブロックと、シフト装置のシフト操作に連動する自動変速機のマニュアル・シャフトに固定され、前記固定接点の配列と同心の回転中心で前記ターミナル・ブロックに回転可能に取り付けられ前記固定接点に接離する可動接点を備えたムービング・ブロックと、前記ムービング・ブロックに支持され該ムービング・ブロックの外面から弾性力により突出し弾性力に抗して反突出方向へ没入移動可能な係合可動部と、前記係合可動部と対向した対向部材に設けられるとともに該係合可動部を係脱可能に係止して前記ムービング・ブロックを位置決める係止部とを備えたスイッチであって、前記ムービング・ブロックの回転により係止中の前記係合可動部を乗り上げさせて没入状態とする乗り上げ内壁面を前記対向部材の前記係止部に連接させて設け、前記没入状態で前記係合可動部の突出移動をロックする移動ロック係合部と移動ロック係止部とを前記係合可動部とムービング・ブロックとに各別に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、同心円に配列された固定接点を有するターミナル・ブロックと、シフト装置のシフト操作に連動する自動変速機のマニュアル・シャフトに固定され、前記固定接点の配列と同心の回転中心で前記ターミナル・ブロックに回転可能に取り付けられ前記固定接点に接離する可動接点を備えたムービング・ブロックと、前記ムービング・ブロックに支持され該ムービング・ブロックの外面から弾性力により突出し弾性力に抗して反突出方向へ没入移動可能な係合可動部と、前記係合可動部と対向した対向部材に設けられるとともに該係合可動部を係脱可能に係止して前記ムービング・ブロックを位置決める係止部とを備えたスイッチであって、前記ムービング・ブロックの回転により係止中の前記係合可動部を乗り上げさせて没入状態とする乗り上げ内壁面を前記対向部材の前記係止部に連接させて設け、前記没入状態で前記係合可動部の突出移動をロックする移動ロック係合部と移動ロック係止部とを前記係合可動部とムービング・ブロックとに各別に設けた。
【0016】
このため、ムービング・ブロックの係合可動部がターミナル・ブロックの係止部に係止され、ムービング・ブロックをターミナル・ブロックに例えばニュートラル・ポジションで位置決めることのできるスイッチを提供できる。
【0017】
このニュートラル・ポジションで位置決めされたスイッチをそのまま自動変速機等の筐体等に固定するだけで、筐体等に対してムービング・ブロックの取り付け角度を正確にニュートラル・ポジションに設定することができる。
【0018】
すなわち、スイッチを自動変速機の筐体にボルト締結により固定する時に、スイッチが例えばニュートラル・ポジションに既に保持されているので、従来のようにスイッチの回転作業を含む位置合わせ治具による位置決め作業が全く不要にでき、自動変速機の筐体に対してスイッチの取り付け角度を正確に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】インヒビタ・スイッチの分解斜視図である。(実施例1)
【図2】要部の拡大平面図である。(実施例1)
【図3】カバーを外したインヒビタ・スイッチの動作を示す平面図である。(実施例1)
【図4】カバーを外したインヒビタ・スイッチの動作を示す平面図である。(実施例1)
【図5】カバーを外したインヒビタ・スイッチの動作を示す平面図である。(実施例1)
【図6】カバーを外したインヒビタ・スイッチの動作を示す平面図である。(実施例1)
【図7】(a)は、位置合わせ治具の平面図、(b)は、位置合わせ治具の側面図、(c)は、位置合わせ治具を破線で示すインヒビタ・スイッチの断面図である。(従来例)
【図8】位置合わせ治具を用いたインヒビタ・スイッチの斜視図である。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0020】
高い取り付け角度の維持をしながら、治具の取り扱いを不要とするという目的を、ムービング・ブロックの係合可動部、移動ロック係合部、及び移動ロック係止部と例えばターミナル・ブロックの係止部、及び乗り上げ内壁面とにより実現した。
【実施例1】
【0021】
図1、図2は、本発明の実施例1に係り、図1(a)は、インヒビタ・スイッチの斜視図、(b)は、インヒビタ・スイッチの分解斜視図、図2は、要部の拡大平断面図、図3〜図6は、カバーを外したインヒビタ・スイッチの位置決め及び位置決め解除を示す平面図である。
【0022】
インヒビタ・スイッチ1は、樹脂製のターミナル・ブロック3、ムービング・ブロック5及びカバー13を備えている。ターミナル・ブロック3には、固定接点7が備えられている。ムービング・ブロック5には、可動接点9が設けられている。固定接点7及び可動接点9は、トランスミッションのレンジ・ポジションの検出と併せて車両の付属機器としてのスタータ・モータの駆動とリバース・ランプの点灯とを行なう接点回路を構成する。特に、固定接点7及び可動接点9は、シフト装置のニュートラル・ポジションにおいて、スタータ・モータの駆動回路を接続状態とし、その起動を可能とする。
【0023】
ターミナル・ブロック3は、極盤11を備え、極盤11に前記固定接点7が配置されている。固定接点7は、複数備えられ同心円上に配列されている。極盤11及びカバー13には、ムービング・ブロック5を回転可能に支持する支持穴15,17が設けられている。支持穴15,17の中心は、固定接点7の同心円の配列と同心に設定されている。
【0024】
これら極盤11及びカバー13は、両者の結合面間にシールが介設され、超音波溶着などにより結合されてムービング・ブロック5を支持した状態で内部の密閉性が保持される。
【0025】
ターミナル・ブロック3の極盤11外周部には、自動変速機の筐体へボルト締結するための取付穴3a、3bが設けられている。
【0026】
極盤11の円弧状壁部19には、係止部として係止凹部21が設けられている。係止凹部21は、断面山形の凹部として形成されている。
【0027】
係止凹部21は、前記ターミナル・ブロック3に後述する係合可動部29を係脱可能に係止して前記ムービング・ブロック5を位置決めるものである。
【0028】
ムービング・ブロック5が係止凹部21に係止される位置は、インヒビタ・スイッチ1が自動変速機の筐体へ取り付けられたとき固定接点7及び可動接点9により自動変速機のニュートラル・ポジションを検出する位置となる。
【0029】
このとき、スタータ・モータの駆動回路を接続状態とし、その起動を可能とする。なお、ムービング・ブロック5が係止凹部21に係止される位置を、パーキング・ポジションとすることもできる。
【0030】
極盤11の円弧状壁部19には、係止凹部21の両側にアールをもって連続する弧状内壁面23が設けられている。弧状内壁面23の曲率中心は、本実施例において固定接点7の同心円の配列と同心に形成されている。なお、弧状内壁面23は、係止凹部21の一側にのみ形成する構成にすることもできる。
【0031】
この弧状内壁面23は、ムービング・ブロック5の回転により後述する係合可動部29をムービング・ブロック5に対し後述する第1の没入状態へ移動させ前記弾性力により弾接させながら摺動させるものである。
【0032】
弧状内壁面23の端部側、本実施例では両端部には、乗り上げ内壁面25,27が設けられている。乗り上げ内壁面25,27は、本実施例においてムービング・ブロック5の通常回転範囲外となるオーバー・ストロークとなる範囲に設けられている。ここで、ムービング・ブロック5の通常回転範囲外とはシフト装置の通常のシフト操作によってムービング・ブロック5が回転しない範囲のことである。
【0033】
但し、弧状内壁面23が係止凹部21の一側にのみ形成される態様の場合、乗り上げ内壁面25,27は、形成された一側の弧状内壁面23の端部側にのみ形成されることになる。
【0034】
この乗り上げ内壁面25,27は、前記ムービング・ブロック5の回転により前記係合可動部29を乗り上げさせて前記第1の没入状態から後述する第2の没入状態とするものである。
【0035】
前記ムービング・ブロック5は、金属製の円筒状部(軸部)31を備え、この円筒状部31がターミナル・ブロック3の支持穴15に相対回転可能に支持されている。この支持により、ムービング・ブロック5がターミナル・ブロック3に前記固定接点7の配列と同心の回転中心で回転可能に取り付けられる。円筒状部31及び支持穴15,17間は、オーリングなどのシール部材が介設され外部に対する密閉性が保持されている。
【0036】
可動接点9は、複数備えられ、ムービング・ブロック5にスプリング33を介して支持され、ムービング・ブロック5の回転と共に極盤11上を摺動し、固定接点7に接離する。
【0037】
前記ムービング・ブロック5の先端側には、係合可動部29が支持されている。
【0038】
係合可動部29の先端は、断面半円状に形成され、この先端が前記係止凹部21に係止される構成となっている。
【0039】
係合可動部29は、ムービング・ブロック5の先端の収容凹部35に収容されている。係合可動部29と収容凹部35の奥側との間にはスプリング37が介設されている。この係合可動部29がムービング・ブロック5の先端側からスプリング37の弾性力により係止凹部21へ突出し、収容凹部35内へ弾性力に抗して反突出方向に没入移動可能となっている。
【0040】
係合可動部29の両側面には、位置決めロック係合部41及び移動ロック係合部43がそれぞれ1つずつ突設されている。ムービング・ブロック5の収容凹部35には、位置決めロック係止部として係止突部45が形成されている。係止突部45は移動ロック係止部も兼ねるもので、収容凹部35の係合可動部29の入り口の幅を、係合可動部29の一側面側に設けられた位置決めロック係合部41(移動ロック係合部43)の突出端から、係合可動部29の他側面側に設けられた位置決めロック係合部41(移動ロック係合部43)の突出端までの幅よりも狭くすることにより構成されている。
【0041】
したがって、移動ロック係合部43と移動ロック係止部(係止突部45)とを前記係合可動部29とムービング・ブロック5とに各別に設けた構成により、後述する第2の没入状態で前記係合可動部29の突出移動をロックする。
【0042】
また、位置決めロック係合部41と位置決めロック係止部(係止突部45)とを前記係合可動部29とムービング・ブロック5とに各別に設けた構成により、前記ムービング・ブロック5の前記係止部としての係止凹部21への係止位置で前記係合可動部29の突出移動をロックし後述する第1の没入状態への移動を許容するとなっている。
【0043】
なお、位置決めロック係合部41は省略することもできる。
[取り付け角度設定及び解除]
インヒビタ・スイッチ1の単体において、スプリング37の弾性力によりムービング・ブロック5の係合可動部29を突出させターミナル・ブロック3の係止凹部21に係止させる(図2,図3参照)。この係止されている位置が、自動変速機の筐体へインヒビタ・スイッチ1が取り付けられたとき固定接点7及び可動接点9により自動変速機のニュートラル・ポジションを検出する位置となっている。
【0044】
次に、このインヒビタ・スイッチ1は、例えば自動変速機組立ラインにおいて、ムービング・ブロック5の回転中心を構成する円筒状部31がシフト装置によりニュートラル・ポジションに操作された自動変速機のマニュアル・シャフトに同心に嵌合固定され、取付穴3a、3bが自動変速機の筐体へボルト締結される。これにより、インヒビタ・スイッチ1のニュートラル・ポジションとマニュアル・シャフトのニュートラル・ポジションとが正確に一致して、インヒビタ・スイッチ1が自動変速機の筐体へ取り付けられる。
【0045】
この筐体への取り付け状態で前記ムービング・ブロック5を左右何れか一方へ回転させると係合可動部29が係止凹部21からターミナル・ブロック3の弧状内壁面23へ移行する(図4参照)。
【0046】
なお、弧状内壁面23及び乗り上げ内壁面27が係止凹部21の一側にのみ形成される態様では、ムービング・ブロック5の前記回転動作は、予め指定された方向となる。
【0047】
前記移行により係合可動部29が、弧状内壁面23により押されスプリング37の弾性力に抗し係合可動部29の反突出方向へ移動した第1の没入状態となる。この係合可動部29は、ムービング・ブロック5の回転と共に弧状内壁面23にスプリング37の弾性力により弾接しながら摺動する。
【0048】
前記ムービング・ブロック5のさらなる回転により、上記のとおりムービング・ブロック5の通常回転範囲外であるオーバー・ストロークとなる範囲までムービング・ブロック5が回転すると、前記係合可動部29が乗り上げ内壁面25又は27を乗り上げ、前記第1の没入状態よりもさらに係合可動部29の反突出方向へ移動した第2の没入状態(図5参照)となり、ムービング・ブロック5の位置決め固定の解除を行わせることができる。
【0049】
この第2の没入状態で前記係合可動部29の突出移動は、移動ロック係合部43が係止突部45に係止されることでロックされる。
【0050】
したがって、以後のムービング・ブロック5の通常回転範囲での回転時に係合可動部29は弧状内壁面23から離間した状態となる。
【0051】
ここで、ムービング・ブロック5の通常回転範囲とはシフト装置の通常のシフト操作によってムービング・ブロック5が回転する範囲のことである。
[実施例の効果]
本発明は、同心円に配列された固定接点7を有するターミナル・ブロック3と、シフト装置のシフト操作に連動する自動変速機のマニュアル・シャフトに固定され、前記固定接点7の配列と同心の回転中心で前記ターミナル・ブロック3に回転可能に取り付けられ前記固定接点7に接離する可動接点9を備えたムービング・ブロック5と、前記ムービング・ブロック5に支持され該ムービング・ブロック5の外面からスプリング37の弾性力により突出し弾性力に抗して反突出方向へ没入移動可能な係合可動部29と、前記係合可動部29と対向したターミナル・ブロック3に設けられるとともに該係合可動部29を係脱可能に係止して前記ムービング・ブロック5を位置決める係止凹部21とを備えたインヒビタ・スイッチ1であって、前記ムービング・ブロック3の回転により係止中の前記係合可動部29を乗り上げさせて没入状態とする乗り上げ内壁面25,27を設け、前記没入状態で前記係合可動部29の突出移動をロックする移動ロック係合部43と係止突部45とを前記係合可動部29とムービング・ブロック5とに各別に設けた。
【0052】
このため、ムービング・ブロック5の係合可動部29がターミナル・ブロック3の係止凹部21に係止され、ムービング・ブロック5をターミナル・ブロック3にニュートラル・ポジションで位置決めることができる。
【0053】
インヒビタ・スイッチ1を自動変速機の筐体にボルト締結により固定する時に、インヒビタ・スイッチ1がニュートラル・ポジションに既に保持されているので、インヒビタ・スイッチ1の回転作業を含む位置合わせ治具による位置決め作業が全く不要にでき、自動変速機の筐体に対してインヒビタ・スイッチ1(ムービング・ブロック5)の取り付け角度を正確に設定することができる。
【0054】
この筐体への取り付け状態で前記ムービング・ブロック5を回転させると係合可動部29が係止凹部21から離脱してターミナル・ブロック3の弧状内壁面23により押されて弾性力に抗し前記第1の没入状態へ移動することができ、この係合可動部29が弧状内壁面23に弾接しながら摺動することができる。
【0055】
前記ムービング・ブロック5のさらなる回転により前記ムービング・ブロック5が通常回転範囲外となるオーバー・ストロークまで回転すると、前記係合可動部29が乗り上げ内壁面25又は27を乗り上げ、前記第1の没入状態から前記第2の没入状態とすることができる。
【0056】
この第2の没入状態で前記係合可動部29の突出移動を移動ロック係合部43及び係止突部45によりロックすることができる。
【0057】
したがって、以後のムービング・ブロック5の回転に係合可動部29が係わることが無く、位置合わせ治具を必要とせずに筐体に対するムービング・ブロック5の取り付け角度の設定及びムービング・ブロック5の位置決め固定の解除を行わせることができる。
【0058】
また、取り付け角度の設定のための位置決め固定及び位置決め固定の解除をインヒビタ・スイッチ1の内部で行わせることができ、インヒビタ・スイッチ1の密閉性を維持させることができる。
【0059】
しかも、ムービング・ブロック5のターミナル・ブロック3に対する位置決め固定を係止凹部21に対する係合可動部29の係止による1箇所で行わせるため、取り付け角度の調整に影響する誤差を抑制することができる。
【0060】
前記乗り上げ内壁面25,27は、前記ムービング・ブロック5の通常回転範囲外となるオーバー・ストロークとなる範囲に設けられた。
【0061】
このため、ムービング・ブロック5の通常回転範囲では、係合可動部29が弧状内壁面23に接しないようにすることができ、操作力を確実に軽減することができる。
【0062】
前記ムービング・ブロック5の前記係止凹部21への係止位置で前記係合可動部29の突出移動をロックし前記第1の没入状態への移動を許容する位置決めロック係合部41と係止突部45とを前記係合可動部29とムービング・ブロック5とに各別に設けた。
【0063】
このため、ムービング・ブロック5をターミナル・ブロック3に組み込んだとき係合可動部29をムービング・ブロック5から突出させた状態を維持しつつ係止凹部21へ係止させることができ、組み付けを容易に行わせることができる。
【0064】
前記ムービング・ブロック5は、回転中心が自動変速機のマニュアル・シャフトに同心に嵌合固定され、前記ターミナル・ブロック3は、前記自動変速機に固定され、前記ムービング・ブロック5の位置決めは、前記自動変速機のニュートラル・ポジション又はパーキング・ポジションに対応する。
【0065】
このため、自動変速機に対するムービング・ブロック5の取り付け角度設定を正確且つ容易に行わせ、インヒビタ・スイッチ1として正確に機能させることができる。
[その他]
前記係止凹部21は、対向部材としてのカバー13のムービング・ブロック5との対向面や、ターミナル・ブロック3の極盤11のムービング・ブロック5との対向面に設けてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 インヒビタ・スイッチ(スイッチ)
3 ターミナル・ブロック(対向部材)
5 ムービング・ブロック
7 固定接点
9 可動接点
21 係止凹部(係止部)
23 弧状内壁面
25,27 乗り上げ内壁面
33 係合可動部
41 位置決めロック係合部
43 移動ロック係合部
45 係止突部(位置決めロック係止部、移動ロック係止部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同心円に配列された固定接点を有するターミナル・ブロックと、
シフト装置のシフト操作に連動する自動変速機のマニュアル・シャフトに固定され、前記固定接点の配列と同心の回転中心で前記ターミナル・ブロックに回転可能に取り付けられ前記固定接点に接離する可動接点を備えたムービング・ブロックと、
前記ムービング・ブロックに支持され該ムービング・ブロックの外面から弾性力により突出し弾性力に抗して反突出方向へ没入移動可能な係合可動部と、
前記係合可動部と対向した対向部材に設けられるとともに該係合可動部を係脱可能に係止して前記ムービング・ブロックを位置決める係止部と、
を備えたスイッチであって、
前記ムービング・ブロックの回転により係止中の前記係合可動部を乗り上げさせて没入状態とする乗り上げ内壁面を前記対向部材の前記係止部に連接させて設け、
前記没入状態で前記係合可動部の突出移動をロックする移動ロック係合部と移動ロック係止部とを前記係合可動部とムービング・ブロックとに各別に設けた、
ことを特徴とするスイッチ。
【請求項2】
請求項1記載のスイッチであって、
前記ムービング・ブロックの回転により係止中の前記係合可動部をまず前記反突出方向へ没入移動した第1の没入状態とさせ前記弾性力により弾接摺動させる弧状内壁面を前記ターミナル・ブロックの前記係止部に隣接して設け、
前記ムービング・ブロックのさらなる回転により前記係合可動部を乗り上げさせて前記第1の没入状態よりもさらに前記反突出方向へ没入移動させた第2の没入状態とする乗り上げ内壁面を弧状内壁面の端部側に設け、
たことを特徴とするスイッチ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のスイッチであって、
前記ムービング・ブロックの前記係止部への係止位置で、前記係合可動部の突出移動をロックし前記第1の没入状態への移動を許容する位置決めロック係合部と位置決めロック係止部とを前記係合可動部と前記ムービング・ブロックとに各別に設け、
たことを特徴とするスイッチ。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のスイッチであって、
前記ムービング・ブロックは、回転中心に前記自動変速機のマニュアル・シャフトに同心に嵌合固定され、
前記ターミナル・ブロックは、前記自動変速機に固定され、
前記ムービング・ブロックの位置決めは、前記自動変速機のニュートラル・ポジション又はパーキング・ポジションに対応する、
ことを特徴とするスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−282801(P2010−282801A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134454(P2009−134454)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(390001236)ナイルス株式会社 (136)
【Fターム(参考)】