説明

スイッチ

【課題】本発明の目的は、導電フィルムまたは導電部に、ユーザがキートップが押し下げられる際に曲げ弾性変形する屈曲部を設けることで、ユーザがキートップの往復動を繰り返しても、タッチセンサの機能が低下せず信頼性を確保できるスイッチを実現することにある。
【解決手段】本発明は、タッチセンサとプッシュ式スイッチエレメントとを備え、前記タッチセンサは自身の押圧部への物体の接近または接触を検知し、前記プッシュ式スイッチエレメントは自身のキートップ部の押圧状態に応じた接続状態をとるスイッチにおいて、前記タッチセンサは、前記押圧部付近に導電パターンが形成された導電フィルムを有し、前記導電パターンに物体が接近または接触したときに前記導電パターンに生じる電気的特性の変化により物体の接近または接触を検知し、前記導電フィルムは、前記押圧部近傍に弾性変形が可能な屈曲部が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチセンサを備えたスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
フィールド機器等を制御するコントローラの操作部等に用いられるスイッチは、タッチセンサとプッシュ式スイッチエレメントとを備えた装置で、タッチセンサが自身の押圧部への物体の接近または接触を検知し、プッシュ式スイッチエレメントがキートップ部の押圧状態に応じたON/OFF状態を検知する。
【0003】
このような従来のスイッチの例を、図面を用いて詳細に説明する。
図6は、従来のスイッチの構成例を示した図である。図6において、プリント基板1は、往復動を行うキートップ11を備えたスイッチエレメント12と、スイッチコネクタ13と、スペーサ孔14と、導電フィルムコネクタ15と、タッチセンサIC16と、タッチセンサコネクタ17が実装されている。スイッチエレメント12は、可動部を備えた押しボタンスイッチ等で、可動部が押圧され一定の位置に達するとON状態となる。スイッチコネクタ13とタッチセンサコネクタ17は、図示しない制御部に接続されている。
スイッチエレメント12とスイッチコネクタ13との間と、導電フィルムコネクタ15とタッチセンサIC16との間と、タッチセンサIC16とタッチセンサコネクタ17との間は、導電性を有する部材によって配線されている。
【0004】
ブラケット2は、プリント基板1の上方に設けられ、キートップ11の往復動のガイドとなる貫通孔21を有し、下面にはスペーサ22が取り付けられている。このスペーサ22はプリント基板1のスペーサ孔14に嵌合され、ブラケット2とプリント基板1との間の一定距離を確保する。
【0005】
導電フィルム3は、ブラケット2の上面に設けられ、弾性を有するプラスチック等で平板状に形成され、金属や導電性プラスチック等で形成された導電部31と、プリント基板1の導電フィルムコネクタ15と接続される端子部32を備えている。導電部31と端子部32は導電性を有する部材によって配線されている。
導電部31と、端子部32および導電フィルムコネクタ15を介して接続されたタッチセンサIC16とにより、導電部31への物体の接近または接続を検知しその状態を出力するタッチセンサを形成する。ここでは、導電部31がタッチセンサの押圧部となる。
【0006】
ベゼル4は、下面部が開口した箱状に形成され、プリント基板1、ブラケット2、導電フィルム3の全体を取り囲むよう配置される。ベゼル4には、導電部31に対面する位置に開口部41を有している。
【0007】
このような、スイッチの動作例を、図面を用いて説明する。
図6において、ユーザの指等がベゼル4の開口部41を通して導電部31に触れると、導電部31やそれに接続された配線等の静電容量が変化し、タッチセンサIC16がこの変化を検出し、ユーザの指等が導電部31に接触または接近を知らせる信号が、タッチセンサコネクタ17を通じて図示しない制御部に出力される。制御部は、この出力に基づいて該当する処理を行う。
【0008】
ユーザがベゼル4の導電部31を、押し下げると、導電部31はキートップ11と接した状態で、スイッチエレメント12の可動部とともに押し下げられる。そして可動部が一定の位置に達するとON状態と判断され、この情報がスイッチコネクタ13を通じて図示しない制御部に伝達され、該当する処理が行われる。
【0009】
特許文献1には、このようなタッチセンサを備えたスイッチの構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−270022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながらこのようなスイッチでは、ユーザがキートップ11を押し下げる際に、平板状の導電フィルム3または導電部31をブラケット2の貫通孔21に押し込むことになる。したがって、導電フィルム3または導電部31は、屈曲および伸張変形させられ、または、貫通孔21の縁と接触による摩擦を受ける。導電フィルム3または導電部31には、弾性変形しやすい素材を用いてはいるが、屈曲および伸張変形の回数が多くなり、また貫通孔21の縁との摩擦を繰り返すと、疲労により導電フィルム3または導電部31の破損等が起き、スイッチの機能も低下して信頼性が損なわれるという課題があった。
【0012】
そこで本発明の目的は、導電フィルムまたは導電部に、ユーザがキートップを押し下げる際に曲げ弾性変形する屈曲部を設けることで、ユーザがキートップの往復動を繰り返しても、タッチセンサの機能が低下せず信頼性を確保できるスイッチを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
タッチセンサとプッシュ式スイッチエレメントとを備え、前記タッチセンサは自身の押圧部への物体の接近または接触を検知し、前記プッシュ式スイッチエレメントは自身のキートップ部の押圧状態に応じた接続状態をとるスイッチにおいて、
前記タッチセンサは、前記押圧部付近に導電パターンが形成された導電フィルムを有し、前記導電パターンに物体が接近または接触したときに前記導電パターンに生じる電気的特性の変化により物体の接近または接触を検知し、
前記導電フィルムは、前記押圧部近傍に弾性変形が可能な屈曲部が形成されていることを特徴とするスイッチ。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明であって、
絶縁性を有する表面シートが、前記導電フィルムの一部または全部を覆うように配置されることを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明であって、
前記表面シートは、前記押圧部と対面する部分に凸状のドームが形成されることを特徴とする。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明であって、
前記押圧部は、前記キートップの上部対面部の外周に沿って、一端を残して切り込みが入れられ、この一端が片持ち支持端となり前記屈曲部を形成することを特徴とする。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明であって、
前記押圧部は、中心付近から周辺部に向かって放射状に切り込みが入れられ、前記周辺部の切り込みの末端間が片持ち支持端となり前記屈曲部を形成することを特徴とする。
【0018】
請求項6記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明であって、
前記押圧部は、前記導電パターンの外周に位置する導電フィルムに、一端を残して切り込みを入れて形成され、この一端が片持ち支持端かつ前記屈曲部となることを特徴とする。
【0019】
請求項7記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明であって、
前記押圧部は、その外周の一部または全部に渡り、弾性を有する弾性部材により前記導電フィルムと接合され、前記弾性部材が前記屈曲部を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、導電フィルムまたは導電部に、キートップの上部対面部の外周に沿って、一端を残して切込みを入れ、この一端が片持ち支持端となり屈曲部を形成する。そして、キートップの押下の際には、この屈曲部が曲げ弾性変形して、導電部のうち、切り込みで囲まれた部分がキートップの往復動とともに円滑に移動するので、導電フィルムまたは導電部の屈曲部以外の部分には応力が発生しにくくなる。このためキートップの往復動を繰り返しても導電フィルムまたは導電部の破損等起きにくいスイッチを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例の構成を示した分解斜視図である。
【図2】図1のスイッチの完成斜視図である。
【図3】図2に示されるスイッチにおいて、A−A’部分での縦断面図である。
【図4】図1のスイッチエレメントおよび導電部付近を抽出した上面図および縦断面図である。
【図5】本発明の他の実施例の構成を示した図である。
【図6】従来のスイッチの構成例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例の構成を示した図である。図4は、スイッチエレメントおよび導電部付近の上面図および縦断面図である。
ここで、図6と同一のものは同一符号を付し、説明を省略する。
図1において、導電フィルム5は、ブラケット2の上面に設けられ、弾性を有するプラスチック等で形成され、導電部51と、プリント基板1の導電フィルムコネクタ15と接続される端子部52を備えている。導電部51には、キートップ11の上部対面部の外周に沿って、一端を残して切り込み53が入れられ、この一端が片持ち支持端となり屈曲部54を形成している。
導電部51と端子部52は導電性を有する部材によって配線されている。
【0023】
表面シート6は、導電フィルム5の上面に設けられる。表面シート6の、導電部51に対応する位置には、エンボス加工により凸状のドーム部61が形成される。
【0024】
ここで、ドーム部61と、導電部51と、端子部52および導電フィルムコネクタ15を介して接続されたタッチセンサIC16と、により、ドーム部61への物体の接近または接続を検知しその状態を出力するタッチセンサを形成する。ドーム部は、タッチセンサの押圧部61となる。
【0025】
図1のスイッチの組み立てを完成したものが、図2および図3に示されている。図2は、図1のスイッチの組み立て完成図、図3は、図2に示されるA−A’部分における縦断面図である。
【0026】
このようなスイッチの動作例を、図1を用いて説明する。
図1において、ユーザの指等が表面シート6のドーム部61に触れると、導電部51やそれに接続された配線等の静電容量等が変化し、タッチセンサIC16がこの変化を検出し、ユーザの指等が導電部51に接触したという信号が、タッチセンサコネクタ17を通じて図示しない制御部に伝達され、必要な処理が行われる。
【0027】
ドーム部61がさらに押し下げられると、導電部51とキートップ11と共にスイッチエレメント12の可動部が押し下げられる。この際に、屈曲部54が片持ち支持端となり、導電フィルム5の屈曲部54には曲げが発生するが、この屈曲部54が曲げ弾性変形して、導電部51のうち切り込み53で囲まれた部分がキートップ11の往復動とともに円滑に移動する。このため、屈曲部54以外の部分については、伸張変形したり、貫通孔21の縁との摩擦で磨耗したりすることが少なくなる。
【0028】
図4の(a)および(b)はスイッチエレメント12と導電部51付近のそれぞれ上面図および縦断面図である。図4において、導電部51に屈曲部54が形成され、この屈曲部54が片持ち支持端となり曲げ変形が加えられる様子が示されている。
【0029】
スイッチエレメント12の可動部が一定の位置に達するとON状態と判断され、この情報がスイッチコネクタ13を通じて図示しない制御部に伝達され、該当する処理が行われる。
【0030】
このように、導電部51に、キートップ11の上部対面部の外周に沿って、一端を残して切込みを入れ、この一端が片持ち支持端となり屈曲部54を形成する。そして、キートップの押下の際には、この屈曲部54が曲げ弾性変形して、導電部51のうち切り込み53で囲まれた部分がキートップ11の往復動とともに円滑に移動するので、導電部51の屈曲部54以外の部分には応力が発生しにくくなる。このためキートップ11の往復動を繰り返しても導電フィルム5または導電部51の破損等起きにくい、信頼性を向上させたスイッチを実現することができる。
【0031】
なお、導電部51の一端を残して切り込みが入れられ、この一端が片持ち支持端となって屈曲部54が形成される構成を示したが、これに限定されるものではなく、切り込みは、図5に示すように、導電フィルム7の一端を残して、導電部71を囲むように切り込み72を入れて、この一端が片持ち支持端である屈曲部73を形成される構成でもよい。
また、導電部の中心付近から周辺部に向かって放射状に切り込みが入れられ、前記周辺部の切り込みの末端間が片持ち支持端となり屈曲部を形成してもよい。
導電部が、その外周の一部または全部に渡り、弾性を有する例えばラバーなどの弾性部材により導電フィルムと接合され、この弾性部材が前記屈曲部を形成してもよい。
【符号の説明】
【0032】
12 スイッチエレメント
15 導電フィルムコネクタ
16 タッチセンサIC
17 タッチセンサコネクタ
5 導電フィルム
51、71 導電部
53、72 切り込み
54、73 屈曲部
6 表面シート
61 ドーム部、押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチセンサとプッシュ式スイッチエレメントとを備え、前記タッチセンサは自身の押圧部への物体の接近または接触を検知し、前記プッシュ式スイッチエレメントは自身のキートップ部の押圧状態に応じた接続状態をとるスイッチにおいて、
前記タッチセンサは、前記押圧部付近に導電パターンが形成された導電フィルムを有し、前記導電パターンに物体が接近または接触したときに前記導電パターンに生じる電気的特性の変化により物体の接近または接触を検知し、
前記導電フィルムは、前記押圧部近傍に弾性変形が可能な屈曲部が形成されていることを特徴とするスイッチ。
【請求項2】
絶縁性を有する表面シートが、前記導電フィルムの一部または全部を覆うように配置されることを特徴とする請求項1記載のスイッチ。
【請求項3】
前記表面シートは、前記押圧部と対面する部分に凸状のドームが形成されることを特徴とする請求項2記載のスイッチ。
【請求項4】
前記押圧部は、前記キートップの上部対面部の外周に沿って、一端を残して切り込みが入れられ、この一端が片持ち支持端となり前記屈曲部を形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスイッチ。
【請求項5】
前記押圧部は、中心付近から周辺部に向かって放射状に切り込みが入れられ、前記周辺部の切り込みの末端間が片持ち支持端となり前記屈曲部を形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスイッチ。
【請求項6】
前記押圧部は、前記導電パターンの外周に位置する導電フィルムに、一端を残して切り込みを入れて形成され、この一端が片持ち支持端かつ前記屈曲部となることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスイッチ。
【請求項7】
前記押圧部は、その外周の一部または全部に渡り、弾性を有する弾性部材により前記導電フィルムと接合され、前記弾性部材が前記屈曲部を形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスイッチ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−150964(P2011−150964A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12942(P2010−12942)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】