説明

スキン化中空繊維膜とその製造方法

【課題】ペルフルオロ化熱可塑性重合体から非対称の中空繊維膜を製造する方法に関し、この方法により製造された膜を提供する。
【解決手段】一方の径にスキン化表面を有し、反対側の径に多孔質な表面を有する中空繊維膜を、ペルフルオロ化熱可塑性重合体から、加熱された臨界溶解温度未満の重合体溶液を直接冷却浴の中に押し出し、液−液相分離により多孔質膜を形成して、製造する。押し出しは、縦軸方向または横軸方向に実施できる。該中空繊維膜は、限外濾過膜及び膜コンタクターとして使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペルフルオロ化熱可塑性重合体から非対称の中空繊維膜を製造する方法に関し、また、そうして製造された膜に関する。
【背景技術】
【0002】
中空繊維膜は多種多様な用途に使用される。限外濾過中空繊維膜は、水溶液からタンパク質及び他の巨大分子を分離するために使用される。限外濾過膜は、通常保持する溶質の大きさで格付けされる。典型的には、約1000ドルトンから約1,000,000ドルトンの溶解又は分散溶質を保持するように、限外濾過膜を製造することができる。限外濾過膜は分子量カットオフ値で格付けされ、これはドルトン即ち分子の質量の単位で表された分子量であり、該値で処理される溶質の供給濃度の規定パーセントが膜により保持又は排除される。製造メーカーは、通常規定パーセントを90%から95%に設定する。また、限外濾過膜は、平均又は見掛け細孔径により表示することもできる。典型的な限外濾過膜の見掛け又は平均細孔径は、約2nmから約50nmの範囲である。
【0003】
中空繊維膜は、典型的には脱ガス又はガス吸収の用途に膜コンタクターとしても使用される。コンタクターは、成分をある相からもう一方の相へ移動させるため、2つの相即ち2つの液相又は1つの液相と1つの気相を接触させる。通常のプロセスはガス吸収等の気−液物質移動であり、該方法ではガス又はガス流の成分が液体に吸収される。液体の脱ガスはもう1つの例であり、この場合、溶解したガスを含有する液体を、大気、真空、又は分離相と接触させて、溶解したガスを取り除く。従来のガス吸収の例においては、ガスを吸収する液体に気泡を分散させて、気−液の表面積を増加させ、気相から吸収すべき化学種の移動速度を上昇させる。逆に、スプレー塔や充填塔等の向流操作において、液体の滴をスプレーしたり、液体を薄膜として輸送することもできる。同様に、混和しない液体の滴を、第2の液体に分散させて移動を促進することもできる。充填カラムや段カラムは、溢流や飛沫同伴等を起こすことなく、2相の個々の速度を広範囲に渡って独立して変化させることができないといった欠陥がある。しかしながら、相が膜で隔てられている場合は、それぞれの相の流速を独立して変化させることができる。更に、比較的低い流速でも、全ての面積が利用できる。これらの利点があるため、中空繊維膜は、コンタクターの用途にますます利用されるようになってきている。
【0004】
疎水性微孔質膜は、通常、膜を濡らさない水溶液とのコンタクター用途に使用される。膜とガス混合物との一方の側を流れる溶液は、もう一方の側を流れる溶液よりも、圧力が低い。膜のそれぞれの側の圧力は、液体の圧力が膜の臨界圧力をこえないように且つガスが液体の中に泡立たないように維持される。臨界圧力、即ち溶液が細孔に侵入する圧力は、膜の製造に使用する材料、膜の細孔径の逆数、及び気相と接触する液体の表面張力に直接左右される。中空繊維膜は、デバイスで非常に高い充填密度を得る能力のため、主として使用される。充填密度は、デバイスの体積当たりの有効濾過表面の量に関係する。また、それらの中空繊維膜は、供給物を表面の内側又は外側に接触しながら作動してもよく、特定の用途ではより有利な供給物に左右される。典型的な接触膜装置の用途は、液体から溶存ガスを取り除くこと、即ち脱ガス、又は液体にガス状物質を加えることである。例えば、半導体ウェーハを洗浄するために超純水にオゾンを添加する。
【0005】
多孔質なコンタクター膜は、非孔質膜より物質移動速度が速いので、多くの用途に好適である。表面張力が低い液体での用途の場合は、小さい孔径がその浸入抵抗により高圧で操作することができる。液体の蒸気圧が高い場合や、高温での操作が蒸気圧を上げる場合には、非孔質のコンタクター膜が好ましい。これらの場合では、多孔質膜を通した蒸発は、実質的な液体のロスを生じ得る。また、多孔質膜への液体の侵入が問題になる場合の高圧の用途でも、非孔質膜が好ましいといえる。更に、液相の表面張力が約20mN/m(ミリニュートン/メーター)未満の用途では、そのような低表面張力の液体が多孔質膜に侵入するので、非孔質膜の方が有利である。
【0006】
中空繊維多孔質膜は、外径と内径を具え、その間に多孔質壁厚を有する、管状フィラメントである。内径は繊維の中空部分を規定し、液体即ち多孔質壁を通して濾過すべき供給流又は濾過が外側表面から行われる場合の透過物のいずれかを運ぶために利用される。内側の中空部分は、ときどき内腔と呼ばれる。
【0007】
中空繊維膜の外側又は内側表面を、スキン化又は非スキン化することができる。スキンは、膜の基材と一体の薄くて緻密な表面層である。スキン化膜の場合は、膜による流動抵抗の大部分が薄いスキン中にある。表面のスキンは、基材の連続的な多孔質構造にする細孔を含んでいてもよく、非孔質の完全なフィルムであってもよい。非対称性は、膜の厚さを横切った細孔径の均一性に関係し、中空繊維の場合、これは繊維の多孔質壁にあたる。非対称の膜は、細孔径が断面での位置の関数である構造をしている。もう1つの非対称性の規定法は、一方の面上の細孔径と反対の面上の細孔径との比である。
【0008】
製造業者は、多様な材料から膜を製造し、材料の最も一般的な部類は合成重合体である。合成重合体の重要な部類は、加熱すれば流動し成形することができ、冷却すれば元の固体の性質を取り戻すことができる熱可塑性重合体である。膜が使用される用途の条件が厳しくなるにつれて、使用できる材料も限られてくる。例えば、マイクロエレクトロニクス産業でウェーハ被覆に使用される有機溶媒系の溶液は、最も一般的な重合体の膜を溶解又は膨潤させ弱らせる。同産業での高温のストリッピング浴は、酸性度が高く高酸化性の化合物からなり、これらは一般的な重合体よりなる膜を破壊する。逆に、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(Poly(PTFE−CO−PFVAE))又はテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のペルフルオロ化熱可塑性重合体は厳しい使用条件に影響されないので、これらの重合体よりなる膜は化学的及び熱的に安定性の低い重合体でできた限外濾過膜よりも明らかな利点がある。これら熱可塑性重合体は熱可塑性でないポリテトラフルオロエチレン(PTFE)よりも利点がある。すなわち、これらは押し出し成形などの標準的なプロセスで成型又は成形できる。本発明のプロセスを使用すれば、PTFEで可能な直径よりも小さな直径の中空繊維膜を製造することができる。宇宙空間での用途等のコンパクトな装置では、直径が小さいほうが有用である。
【0009】
化学的に不活性なので、ポリ(PTFE−CO−PFVAE)やFEP重合体は典型的な溶液鋳造法を用いて膜に成形するのは難しい。これらの重合体は、熱誘起相分離(TIPS)プロセスを用いて膜にすることができる。TIPSプロセスの1例では、重合体と有機溶媒を混合し、押し出し機内で重合体が溶解する温度まで加熱する。膜を押し出しダイを通して押し出しにより成形し、押し出された膜は冷却してゲルを形成する。冷却する間、重合体溶液の温度を上方臨界共溶温度以下に下げる。これは、均質な加熱溶液から2相が生成する温度またはそれより低い温度であり、2相の内1相は主に重合体であり、もう一方の相は主に溶媒である。適当に行えば、溶媒に富んだ相は連続的に相互に接続した多孔性を形成する。次に、溶媒に富んだ相を抽出し、膜を乾燥する。
【0010】
接触用途での利点は、ペルフルオロ化重合体の表面張力が非常に小さいため表面張力が低い液体の使用が可能になることである。例えば、半導体製造産業で用いる高腐食性現像液は、界面活性剤等の表面張力を減少させる添加剤を含有することがある。これらの現像液は典型的な細孔膜で脱ガスすることができない。その理由は、液体が使用圧力で細孔に侵入し、透過して、溶液のロスや余計な蒸発を引き起こすからである。加えて、細孔を満たす液体は、ガス輸送の物質移動抵抗を非常に大きくする。米国特許5,749,941号には、いかにポリプロピレンやポリエチレンでできた従来の中空繊維膜が、漏出を防ぐための溶液添加剤を用いることなく、有機溶媒を含有した水溶液への二酸化炭素や硫化水素の吸収に使用できないかが記載されている。一方、PTFE膜は、おそらくは表面張力が低いため、これらの用途で機能するが、これらを中空繊維に加工するのが難しい。本発明の膜はPTFEに類似した表面張力特性を有する重合体からなり、直径の小さい中空繊維膜により容易に加工される。
【0011】
限外濾過膜は、主にスキン化非対称膜として製造される。なぜなら、この構造が、溶質の有効な保持に必要とされる小さな細孔に対し、透過速度が速いといった利点をもたらすからである。スキン化非対称膜の場合、溶質保持に必要な細孔は表面のスキンの中だけに生ずる。細孔の長さ即ちスキンの厚さを減ずることにより、限外濾過膜に一般的な直径の細孔に固有の高い流動抵抗を相殺するように行われる。この点が、微孔質膜と大きく違う点であり、微孔質膜は通常スキン化されておらず、また通常膜断面で対称性の細孔構造を有する。微孔質膜のより大きな細孔径は、全膜厚での均一な細孔径を持つ膜に対しても、経済的に実現可能な透過速度を有するのに十分である。限外濾過膜の細孔径を有し、膜厚で対称性の細孔径を有する膜は、透過速度が非常に低い。同様に、限外濾過膜と同じ大きさの細孔径を有するコンタクター膜は、小さな細孔がスキン中だけにある非対称のスキン化膜として作らない限り、物質移動抵抗が増大する。
【0012】
非対称スキン化中空繊維は、主に内側の内腔上にスキンを付けて使用される。本発明は、そのような膜とその製造プロセスを記載する。記載されたプロセスは、外側にスキンを付けた非対称中空繊維膜の製造にも適合する。本方法の発明者らは、エアーギャップ即ちダイの先端出口から冷却浴表面までの距離を非常に狭くすることで、外側表面から溶媒が蒸発する時に形成されるスキンの厚さを調節できることを見出した。TIPS法で作られた従前の微孔質ポリ(PTFE−CO−PFVAE)やFEPの膜は、エアーギャップによる押し出しを必要とした。TIPSプロセスで作られたポリ(PTFE−CO−PFVAE)やFEPの膜は、米国特許4,902,45号、4,906,377号、4,990,294号、及び5,032,274号に開示されている。4,902,456号及び4,906,377号特許では、膜は、クラック状開口又は細孔が間隔を空けて即ち1つずつ又は数個の細孔の連続として存在する緻密な表面をしている。4,990,294号及び5,032,274号特許は、ダイから出るにつれて成形膜を溶解した溶媒で覆ったものを使用することを開示している。ある実施例では、シート状の膜は、横軸方向に延伸されている。高い押し出し温度での溶媒の蒸発が速いと、スキン化し、表面の多孔性を調節し難くなることが分かった。スキン化の問題を解決するため、発明者らは、溶媒コーティング法やポスト延伸を用いた。本発明では、緻密なスキンやクラック状開口の問題を、非常に短い距離、好ましくは約0.5インチ以下でエアーギャップを慎重に調節することにより解決するので、均一な表面構造を有する薄いスキンが形成される。
【0013】
そのため、非常に腐食性の高い液体や気体でも機能し、約20mN/mより大きい表面張力の液体でも使用できる非対称中空繊維膜を有することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許5,749,941号
【特許文献2】米国特許4,906,377号
【特許文献3】米国特許4,990,294号
【特許文献4】米国特許5,032,274号
【特許文献5】米国特許4,902,456号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、ペルフルオロ化熱可塑性重合体、特にテトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(Poly(PTFE−CO−PFVAE))又はテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)からなる少なくとも1つの面がスキン化された非対称中空繊維多孔質膜、より詳細には、限外濾過膜及びコンタクター膜をまず提供する。これら膜は、引用可能な記事が公開されていない化学的に厳しい環境で機能できる。これら膜は、表面張力が低いため、水よりも表面張力が低い液体とのコンタクターとして使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
これら膜の製造プロセスが提供される。本プロセスは、多孔質な構造と膜を製造する熱誘起相分離(TIPS)法に基づく。重合体ペレット、好ましくは製造業者から一般的に供給される大きさよりも小さく砕かれ、約100から約1000ミクロン、好ましくは約300ミクロンの大きさに砕かれたものと、クロロトリフルオロエチレンオリゴマー等の溶媒との混合物を、ペースト或いはペースト状稠度までまず混合する。重合体は、混合物の約12重量%から75重量%、好ましくは30重量%から60重量%である。溶媒は、溶液が押し出され冷却されるときに、固−液分離よりむしろ液−液分離で膜形成が起こるように選択される。好ましい溶媒は、クロロトリフルオロエチレンの飽和低分子量重合体である。好ましい溶媒は、ニュージャージー州リバーエッジのハロカーボン・プロダクツ・コーポレーション製のハロバック(HaloVac(登録商標))60である。溶媒の選択は、加熱により重合体を溶解して上方臨界共溶温度溶液を形成するが、該温度で過度に沸騰しないような溶媒の能力で決まる。繊維の押し出しは紡糸と呼ばれ、押し出された繊維のダイの出口から巻き取り位置までの長さは紡糸ラインと呼ばれる。ペーストは、溶解が生ずるように温度が上方臨界共溶温度以上に加熱された押し出し機のバレルに計量して供給される。次に、均一な溶液は、エアーギャップなしで、環状のダイから直接液体冷却浴に押し出される。液体冷却浴は、重合体溶液の上方臨界共溶温度以下の温度に維持される。好ましい浴用の液体は、押し出し温度でも熱可塑性重合体を溶解しない。冷却すると、加熱成形された溶液は相分離を起こし、ゲル状の繊維が生じる。ダイの先端は、鉛直方向の紡糸即ち自由落下体の方向に紡糸ラインを下向きに下ろすために、少し沈められる。水平方向の紡糸では、紡糸ラインが水平の姿勢で直接出され、少なくとも第一ガイドロールまで多かれ少なかれ平面で維持される場合は、特別に設計されたダイが使用される。このダイは、ダイの先端を液密シールを有する開口を通って絶縁物の壁の中に貫通するよう絶縁壁にしっかりと固定する。液体流を冷却するためのトラフは、絶縁壁の反対側にあるくぼみの中に、ダイ突出部の出口を沈めた状態に維持する方法で入れられる。冷却液体はトラフの中を流れ、ダイ突出部の出口を冷却液体の流れに沈め、トラフの深さが足りない場所では溢れる。鉛直方向及び水平方向の方法の何れでも、ブースターヒーターと温度調節手段とを、急激な冷却を防ぐためにダイ先端の溶液の温度を簡単に上げる目的で用いる。この後の工程では、溶解溶媒を抽出により取り除き、こうしてできた中空繊維膜を膜の収縮や破損を防止するように束縛(リストレイント)して乾燥する。乾燥された繊維は200℃から300℃でヒートセットしてもよい。
【0017】
1999年1月29日出願の米国特許出願60/117,852号を参照して本明細書に取り込むが、該出願では中空繊維の外側の径から溶媒が急激に蒸発するのを防ぐために先端が沈んだダイを用いた中空繊維微孔質膜の製造プロセスが開示されている。急激な溶媒の蒸発は、表面での重合体濃度の上昇をもたらし、緻密なスキンを形成した。緻密なスキンは、微孔質膜の特性に悪影響を及ぼした。開示のプロセスでは、約12%から約35%の重合体溶液が膜の製造プロセスに用いられた。約35%より高い濃度の溶液では、多孔性が低くなりすぎ有用な微孔質膜を製造することができないことが分かった。また、開示のプロセスでは、中空繊維微孔質膜を押し出しながら、液体を膜の内腔の中に共押している。この内腔の流体は、押し出し物の表面から溶媒が急激に蒸発し、それによって表面での重合体濃度が上昇し、続いてスキンが形成されるのを防ぐことにより、中空繊維膜の多孔性を調節するのに必要である。
【0018】
本発明では、ダイの先端から出た中空繊維の少なくとも1つの表面からの溶媒蒸発の制御と、より高い重合体固形分の固溶体及び沈潜押し出しプロセスと組み合わせて、ペルフルオロ化熱可塑性重合体から、少なくとも一方の表面がスキン化された非対称中空繊維多孔質膜、より詳細には、限外濾過膜及びコンタクター膜を製造する。記載された目的に好適な膜を製造するために要求される重合体濃度は、約12%から約75%、好ましくは約30%から約60%であることが分かった。更に、スキンが内側表面に形成された好適な実施例では、内腔の液体は溶媒の蒸発を阻害しない流体好ましくは気体で置換される。上記発明の内腔の液体が存在しないと、ダイから出てすぐに、過剰に加熱された溶媒が内腔の内側で蒸発する。溶媒のロスは、内腔の表面上での固体濃度の見掛けの上昇の原因になる。溶融物が急冷されるに従い、非常に薄いスキンが内腔の表面に形成され、一方、膜の残りは、外側表面から細孔形成物が急激に蒸発するのを防ぎ外側表面にスキンが形成するのを阻害する急冷浴に沈められているため、微孔質構造を形成する。
【0019】
外側表面にスキンを持った非対称のスキン化中空繊維膜を製造するため、上記のプロセスは、蒸発を防ぐために内腔に流体を満たし、冷却浴に入る前に外側表面を非常に短いエアーギャップ中で大気に暴露するように設計されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】鉛直方向の押し出しを用いる本発明のプロセスのフローダイアグラムである。
【図2】水平方向の押し出しを用いる本発明のプロセスのフローダイアグラムである。
【図3】鉛直方向の繊維紡糸に用いるダイの図である。
【図4】水平方向の繊維紡糸に用いるダイの図である。
【図5】実施例1における、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体からなる中空繊維微孔質膜の内側表面の2352倍拡大顕微鏡写真である。
【図6】実施例1における、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体からなる中空繊維微孔質膜の外側表面の2526倍拡大顕微鏡写真である。
【図7】実施例3に記載された脱ガス試験の結果を示す。
【図8】実施例4に記載された濾過実験でのサイズ排除クロマトグラフィーの結果を示す。
【図9】実施例6における、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体からなる中空繊維微孔質膜の外側表面を10ミクロンスケールバーで示す顕微鏡写真である。
【図10】実施例6における、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体からなる中空繊維微孔質膜の内側表面を10ミクロンスケールバーで示す顕微鏡写真である。
【図11】実施例6における、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体からなる中空繊維微孔質膜の外側表面近くの断面を10ミクロンスケールバーで示す顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
多孔質膜製造の当業者ならば、本発明の教示を用いることにより、溶媒に溶解して上方臨界共溶温度の溶液を生じ、溶液が冷却されると液−液相分離により2相に分離するペルフルオロ化熱可塑性重合体、より詳しくはテトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(Poly(PTFE−CO−PFVAE))、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、及びそれらの混合物から、非対称中空繊維多孔質膜、特に限外濾過膜及びコンタクター膜を製造することが可能であることに気付く。PFAテフロン(登録商標)は、アルキルが主に又は完全にプロピル基であるテトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体の一例である。FEPテフロン(登録商標)は、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の一例である。いずれもデュポンが製造している。ネオフロン(Neoflon(トレードマーク))PFA(ダイキン工業)は、デュポンのPFAテフロン(登録商標)と類似した重合体である。米国特許5,463,006号には、アルキル基が主にメチルであるテトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体が記載されている。好ましい重合体は、ニュジャージー州ソロファー(Thorofare)のオーシモント・ユー・エス・エー株式会社(Ausimont USA, Inc.)から入手できるハイフロン(Hyflon(登録商標))ポリ(PTFE−CO−PFVAE)620である。
【0022】
ポリ(PTFE−CO−PFVAE)、PFA、及びFEP重合体には、クロロトリフルオロエチレンの飽和低分子量重合体が有効な溶媒であることが見出された。好ましい溶媒は、ニュージャージー州リバーエッジのハロカーボン・プロダクツ・コーポレーション製のハロバック(HaloVac(登録商標))60である。
【0023】
(繊維紡糸組成)
重合体と溶媒のペースト又は分散物は、容器の中で、先に計量された重合体と計量された溶媒とを所定の量混ぜて製造する。重合体は、所望の大きさで得られるか、又は、前もって所望の大きさ、即ち約50から1000ミクロンの大きさ、好ましくは約300ミクロンの大きさに、適当な粉砕プロセスにより細かくされる。この大きさの範囲で入手できる重合体としては、ニュジャージー州ソロファーのオーシモント・ユー・エス・エー株式会社から入手できるハイフロン(HYFLON(登録商標))MFA620がある。より大きいサイズの粒子は、好ましい加熱工程で更に長い加熱時間を必要とせずに、完全に溶解することはなく、より小さい粒子は、プロセスのコストを上昇させるより高価な粉砕を必要とするため、この大きさの範囲が好ましい。この重合体は、混合物の約12%から75%、好ましくは15%から60%の間にある。
【0024】
クロロトリフルオロエチレンの飽和低分子量重合体の例は、ハロバック(HaloVac(登録商標))60(ハロカーボン・プロダクツ・コーポレーション)である。溶媒の選択は、加熱により重合体を溶解して上方臨界共溶温度溶液を形成するが、該温度で過度に沸騰しないような溶媒の能力で決まる。溶媒の沸点より高い温度で溶解が生ずる場合は、押し出し物の中に泡が生じ、紡糸ラインの破損の原因になる。溶媒は単一で純粋な化合物である必要はなく、クロロトリフルオロエチレンの低分子量重合体の分子量又は共重合体比率が異なるものの混合物でもよい。そのような混合物は、溶解度を適当な沸点特性と均衡させるために適用し得る。
【0025】
(溶解と押し出し)
ペースト又は分散物は、従来のツインスクリュー押し出し機の加熱混合ゾーンの中に計量して供給され、好ましくは約270℃から約320℃、より好ましくは285℃から310℃の範囲の温度に加熱され、該温度での溶媒の分解を防ぐために窒素などの不活性雰囲気下で行ってもよい。温度は、使用する重合体の融点に左右される。加熱された溶液は、押し出し機によりインライン加熱計量ポンプに運ばれ、該ポンプは溶液を環状のダイに供給し、押し出し速度を調節する。必要ならば、インラインフィルターを使用することもできる。
【0026】
(繊維の押し出し)
凝固物のように膜が支持されている場合には、中空繊維膜の製造が、シート状の膜等の膜製造で出くわす難点をもたらすことはない。非常に高温で中空繊維を製造する場合には、これらの問題が大きくなる。中空繊維は、重合体の溶液又は分散物を2つの同心チューブでできたダイの環状スペースから押し出すことにより製造される。内側のチューブは凝固中に内腔を規定する内側の径を維持する液体又は気体即ち内腔流体を運び、該内腔流体が液体又は気体かにより中空繊維膜の内側表面上のスキン形成を調節する。作動中、重合体溶液は内腔の流体と共に、液体の浴に共押し出しされる。本発明の熱誘起相分離法では、浴の液体を、使用される重合体溶液が相分離を起こす温度より低い温度に維持する。成形された溶液を冷やすと、相分離が起こり、繊維が凝固する。ロールやウェブキャリア上に被覆又は押し出された平らなシート状の膜、又はマンドレールの内側又は外側表面上に形成される管状の膜とは異なり、押し出された中空繊維は凝固中支持されていない。押し出された溶液は支持されていないため、冷却浴を通して繊維を運ぶ力は、凝固物のような成形された溶液に直接作用している。力が大きすぎる場合、繊維は引き千切れてしまう。
【0027】
本発明の繊維には、有用なプロセスであるためには、克服しなければならない相互に関係した2つの問題がある。これらは、非対称のスキン化膜を有する必要性と、実用的な速度で連続生産するのに十分な強度を有する溶液を押し出せる必要性である。ペルフルオロ化熱可塑性重合体は、高温即ち約260℃から310℃で融解し、溶解させるのが難しい。有効な溶媒は殆ど知られておらず、有用であることが見出されたクロロトリフルオロエチレンの飽和低分子量重合体にも限界がある。これらの溶媒では、分子量がより高い化学種はより高い沸点をもっている。TIPSプロセスでは、溶媒の沸点は重合体の融点よりも25℃から100℃程高く、押し出し温度での揮発性が低くあるべきであるということが、一般に受け入れられている(Lloyd,D.R.et al,J.Membrane Sci.64 1−11(1991))。しかしながら、約290℃より沸点が高いクロロトリフルオロエチレンの飽和低分子量重合体は、上記重合体用の実用的な溶媒でない。その理由は、これらがペルフルオロ化熱可塑性重合体を溶かすのが難しいからである。そのため、沸点が重合体の融点より低いか近い溶媒を使った方法を開発する必要があった。
【0028】
本発明の中空繊維膜の好ましい構造は、1つの表面、好ましくは内側の表面がスキン化されていることである。この構造は、透過を最大にする。内側の表面だけがスキン化された中空繊維膜を得るためには、外側表面の形成を調節して多孔質好ましくは非スキン化外側表面を作るようにすべきである。これらの温度では、溶媒の揮発性が非常に高く、エアーギャップがあると、エアーギャップの中で溶媒を外側表面から急激にロスし、繊維の表面での重合体濃度が上がり、外側にスキンを生じてしまう。溶媒の急激な蒸発による外側のスキン形成を防ぐために、ダイの出口を冷却浴の中に沈める。
【0029】
沈潜押し出しは、一見簡単に見えるが、実際は実施するのが非常に難しい。TIPS処理では、加熱された押し出し物は、冷却表面又は浴の液体に接触する前に、エアーギャップを通る。エアーギャップ、即ちダイの出口から冷却又は急冷表面までの距離は、溶融物を延伸するのに重要な機能を果たす。延伸は、ダイの環状空間に対する膜壁の厚さの比で表すことができる。エアーギャップにより、溶融物の(延伸)速度が上がり、溶融物は速くて経済的な速度で引き上げられる。しかしながら、中空繊維の沈潜押し出しでは、押し出された繊維はダイから出て冷却浴に入り急激に冷えて凝固し、延伸の抵抗になるため、非常に低い延伸比だけが許容され得る。十分に凝固しないと、繊維は切れる傾向が強い。そのため、低い延伸比での繊維の紡糸が必要となる。
【0030】
本発明では、エアーギャップを除くために、沈潜押し出しを完成した。第一に、延伸でのジレンマを避けるために、中空繊維のダイは壁厚を決定する約350から400μの著しく狭いダイギャップで製造される。これは最終的な繊維の寸法に非常に近いため、最小の延伸が要求される。ダイは、先端の約1/16インチだけが急冷浴に接触するように設計及び機械加工された。この改良が、押し出し物の温度調節を可能とする本技術の成功にとって重要である。急冷液体はダイ本体の温度より非常に低いので、従来のダイを沈めると、ダイの温度は溶液が流れなくなる温度まで降下する。先端だけを沈めても、ダイの先端の温度に下がる。マイクロ熱電対と戦略的に位置決めされたブースターヒーターとを、ダイの先端の温度を調節しダイ先端での溶液温度を上げるために用いる。一般に、ダイの先端と冷却浴との正確な接触量は、例えば使用される押し出し装置の設計と冷却浴の温度とに左右される。先端の長いダイには、より能力の高いブースターヒーターとより複雑な制御系が必要になる。先端の短いダイでは、ダイの機械加工がより難しくなり、また設置もより難しくなる。熟練した実施者なら、これらの教示を採用し装置と材料の組み合わせに適応させることができるであろう。
【0031】
図1及び2に示すように、繊維を二通りの姿勢即ち水平方向と鉛直方向の何れかで押し出すことができる。溶液は、定量ポンプにより凡そ紡糸ラインの引き上げ速度にあった容積速度で、環状のダイを通って計量して供給される。これが、弱い押し出し物の破断の原因となる如何なる繊維の著しい引き下げを防ぐのに必要である。内側及び外側の直径、並びにその結果生まれる環状のスペースは、最終的な繊維への要請によって設定される。100ミクロンから250ミクロン、好ましくは150ミクロンから200ミクロンの壁厚が、有用な繊維をもたらす。紡糸ラインの引き上げ速度は、繊維の寸法と押し出し速度とに左右される。毎分約10から約200フィートの速度が可能であり、好ましくは毎分約25から100フィートの速度である。
【0032】
繊維の押し出し中は、ダイの内側の径は繊維の内腔がつぶれるのを防ぐために流体の連続的な流れで満たされている。繊維の寸法に制御されていない変動が生じるのを防ぐために、内腔の流体の流速を注意深く制御する必要がある。沈潜押し出し方法と共に、流体の流れは、スキン化表面の制御に重要な役割を果たす。後記の説明は本発明を限定するものではなく、膜状のスキンの形成を記載する。好ましい方法では、溶媒はダイの中で出る寸前に過加熱され、排出繊維中の溶媒はその沸点より高い温度になっている。内側の径では、その温度の熱移動条件に左右される溶媒の蒸発のために、外気がすぐに過飽和又は飽和に近づき又は到達する。溶媒のロスのために表面の重合体濃度が上昇し、次の相分離がスキンを形成する。膜の透過抵抗は主にスキンに原因があり、該抵抗はスキンの厚さに逆比例することが良く知られているため、スキンはできるだけ薄く均一であるのが望ましい。スキンが速く形成されればされる程、厚さが薄くなるということは、十分理解できることである。これは、初期のスキンが更なる蒸発を抑制し、表面又はその近傍での固体状重合体の増加を減らすからである。しかしながら、蒸発が続くと、表面又はその近傍でより多くの固体状重合体が濃縮し、より厚いスキンが生じる。
【0033】
瞬間冷却が初期スキン形成後の更なる沸騰や蒸発を減らすので、本発明で教示の沈潜押し出しはスキンの厚さを制御するのに重要である。これは最終的なスキンの厚さを制御するだけでなく、形成されたスキンの下の急速な蒸発や沸騰により生じ、泡やスキンの貫通の原因になる欠陥も抑制する。更に、好ましい膜は、その内側の表面上にスキンを持ち、外側の表面上には多孔質の表面を持っているので、沈潜押し出しにより、外側の表面は多孔質で、好ましくは非対称な構造になり、該構造は全体の透過性を最大化する。
【0034】
スキン形成の制御は、内腔ガスを使用する方法により、高めることができる。ガス温度の制御は、内腔雰囲気の飽和又は過飽和限界に影響する。室温又は加熱された内腔ガスが好ましいが、必要なら冷却されたガスを用いてもよい。ヘリウム等の低分子量ガスは、同じ圧力及び温度の条件でより高分子量のガスより物質移動係数が高いことが周知であるので、蒸発速度を制御するためにガスのタイプを使用することができる。ガス混合物もまた、蒸発の制御に使用できる。
【0035】
押し出しプロセス中に繊維に過渡的な変動を与えるが、好ましいガス流の制御方法は、内腔中の圧力を一定値に維持する差圧制御装置を用いることである。
【0036】
ダイは、標準的なクロスヘッドダイからなり、これにダイの突出部を取り付ける。ダイは、二つの温度制御ゾーンを有する。ダイのクロスヘッド部分は、270℃から320℃、好ましくは280℃から290℃の範囲の温度に保たれる。ダイの突出部はダイの出口を取り囲み、290℃から320℃、好ましくは300℃から310℃の範囲に独立して制御される。ダイの突出部の加熱されたゾーンは、溶液温度を溶媒の沸点近く又はそれより高い温度に簡単に上昇させる。
【0037】
図1は、鉛直方向の繊維紡糸に用いるダイの突出部を示す。溶液はクロスヘッドダイから円形入口3に導入され、ダイ出口9に運ばれる。内腔流体は入口2でダイの突出部に導入され、ダイ出口で出る。ヒーター5は、溶液を流体の形態に維持する。温度センサー6は、ヒーター5を溶液の分離温度より高い設定温度に維持するために、温度制御装置と共に用いられる。ダイの先端9は、冷却浴7の中に沈められる。ゲル状膜中空繊維8は、繊維の内側の径を内腔ガスで満たしながら、ダイ出口9を通ってダイの突出部を抜け出る。
【0038】
図2は、水平方向の繊維紡糸に用いるダイの突出部を示す。溶液はクロスヘッドダイから円形入口13に導入され、ダイ出口21に運ばれる。内腔ガスは入口12でダイの突出部に導入され、ダイ出口で出る。ヒーター15は、溶液を流体の形態に維持する。温度センサー16は、ヒーター15を溶液の分離温度より高い設定温度に維持するために、温度制御装置と共に用いられる。ダイの先端22は、ダイの突出部/冷却浴の絶縁物壁19を貫通し、冷却浴のトラフ20の中に保持された冷却浴の流体7と接触する。ゲル状膜中空繊維18は、繊維の内側の径を内腔ガスで満たしながら、ダイ出口21を通ってダイの先端を抜け出る。
【0039】
鉛直方向の押し出しでは、ダイの先端は、排出中のゲル状繊維が冷却浴と接触する前にエアーギャップを通らないように、位置決めされる。図1に示すように、好ましい位置は、ダイが約1.6mm(1/16インチ)沈められた位置である。水平方向の繊維紡糸では、図2に示すように、ダイは絶縁表面にしっかりと固定される。ダイの先端を、液密シールを有する開口を通って絶縁物の中に貫通させる。液体流を冷却するためのトラフは、絶縁シールの反対側にあるくぼみの中に、ダイ突出部の出口を沈めた状態に維持した態様で入れる。トラフは、恒久的に固定されても、取り除き可能であってもよい。トラフは、長さが長い深さと長さが短い深さとを含み、くぼみ中で絶縁物に突き当たる。任意ではあるが、例えば溢れた冷却流体を取り除くポンプ手段を備えることにより、単一深さのトラフもあり得る。冷却液体はトラフの中を流れ、ダイの突出部の出口を冷却液体の流れに沈めたまま、深さが浅いトラフの部分で溢れる。トラフの端と絶縁物の表面の間に冷却液体が少し流れるように、随意トラフを設けることもできる。
【0040】
(冷却浴)
冷却浴は、押し出された繊維の温度を上方臨界共溶温度以下にして、相分離を引き起こす。浴の液体は、ダイから排出中の繊維に泡が形成されるのを防ぐのに十分高い沸点を有し、表面の細孔の形成に悪影響を及ぼさない如何なる液体でもあり得る。浴の温度は25℃から230℃、好ましくは50℃から150℃である。
【0041】
浴の液体は、冷却温度又は加熱された押し出し物が冷却浴に入る点で沸騰せず、繊維と相互作用してスキン形成を引き起こしたり冷却浴の温度で重合体を溶解したり膨潤させたりしない如何なる液体でもあり得る。好ましい液体の例は、鉱油、ジメチルシリコーン油、及びジオクチルフタレートである。他の2置換フタル酸塩を使用してもよい。
【0042】
(抽出と乾燥)
次に、ゲル状の繊維は、実質的に繊維を柔らかくしたり、弱くしたり、又は溶解することなく、溶媒を除去する液体の液体抽出浴に導入される。好ましい抽出溶媒には、1,1ジクロロ−1−フルオロエタン(ゲネソルブ(Genesolve)2000アライド−シグナル、ニュージャージー州)、1,1,2トリクロロトリフルオロエタン(フレオン(Freon)(登録商標)TF、デュポン)、ヘキサン、又はその類似物がある。抽出は、抽出液体の繊維への影響を最小化するため、約20℃から約50℃で通常は行われる。抽出された繊維は、円筒状のコア等の上で、収縮が起こらないように束縛して20℃から50℃で乾燥される。その次に、繊維を200℃から300℃でヒートセットしてもよい。
【0043】
沈潜押し出し法の利点は、中空繊維膜を実用的な長さで連続的に製造できることである。従来技術の方法で作られたペルフルオロ化熱可塑性重合体の中空繊維膜は、押し出し中に簡単に破断し、実用的な長さのものが回収できない。
【0044】
図3は、本発明の中空繊維を製造するための鉛直方向の紡糸の典型的なプロセスを示す。重合体/溶媒のペースト状混合物は、ポンプ装置47、例えば前進空洞ポンプ(progressive cavity pump)により、入口32を通って、加熱バレル押し出し機31に導入される。溶液は、押し出し機31の加熱バレル中で形成される。押し出し機31は、加熱された溶液を、コンジット33を通じて、溶液を計量して供給する溶融ポンプ34の中に運び、次にコンジット35を通ってクロスヘッドダイ36に運ぶ。溶液は、押し出し機31からコンジット33を通って溶融ポンプ34の中に運ばれ、次にコンジット48を通って溶液フィルター49に運ばれ、その次にコンジット35を通ってクロスヘッドダイ36に運ばれてもよい。
【0045】
溶液は、クロスヘッドダイ36を通り、溶液を中空繊維の形状にするダイの突出部1の中に入る。内腔ガスは、ダイのマンドレール38から、ダイから排出中の中空繊維溶液の内側の径に導入される。内腔ガスは、内腔ガス供給手段46により、ダイのマンドレール38に供給される。
【0046】
鉛直方向の繊維紡糸では、溶液は内腔ガスと共に、ダイの突出部1から鉛直に、エアーギャップなしで、溶液が重合体と溶媒の微小相分離を起こしゲル状膜中空繊維8になるように冷却される冷却浴41の中にある冷却浴の流体7の中に押し出される。ゲル状膜中空繊維8は、ガイドローラー43によって冷却浴41を通って導かれ、ゴデロール44により冷却浴41から取り出される。ゲル状膜中空繊維8は、ゴデロール44から交差糸巻き機45によって取り出される。
【0047】
図4は、本発明の中空繊維を製造するための水平方向の紡糸の典型的なプロセスを示す。重合体/溶媒のペースト状混合物は、ポンプ装置47、例えば前進空洞ポンプを用いて、入口32を通って、加熱バレル押し出し機31に導入される。溶液は、押し出し機31の加熱バレル中で形成される。押し出し機31は、加熱された溶液を、コンジット33を通じて、溶液を計量して供給する溶融ポンプ34の中に運び、次にコンジット35を通ってクロスヘッドダイ36に運ぶ。溶液は、押し出し機31からコンジット33を通って溶融ポンプ34の中に運ばれ、次にコンジット48を通って溶液フィルター49に運ばれ、その次にコンジット35を通ってクロスヘッドダイ36に運ばれてもよい。
【0048】
溶液は、クロスヘッドダイ36を通り、溶液を中空繊維の形にするダイの突出部の中に入る。内腔ガスは、ダイのマンドレール38から、ダイから排出中の中空繊維溶液の内側の径に導入される。内腔ガスは、内腔ガス供給手段46により、ダイのマンドレール38に供給される。
【0049】
水平方向の繊維紡糸では、溶液は内腔ガスと共に、ダイの突出部1から、ダイ/冷却浴の絶縁物の壁19を通り、エアーギャップなしで、液体が重合体と溶媒の微小相分離を起こしゲル状膜中空繊維18になるように冷却される冷却浴51の中にある冷却流体20の中に移動される。
【0050】
ゲル状膜中空繊維18は、ガイドローラー43によって冷却浴51から案内され、ゴデロール44により冷却浴51から取り出される。ゲル状膜中空繊維18は、ゴデロール44から交差糸巻き機45によって取り出される。
【0051】
次に、溶媒は、中空繊維膜を著しく弱くし又は悪い影響を与えない溶媒での抽出により、ゲル状繊維から取り除かれる。その次に、繊維は、収縮を最小化するように束縛して、乾燥される。繊維を長さ方向に伸ばしてもよい。繊維をヒートセットしてもよい。
【0052】
本発明の好ましい製品は、内側の径の上にスキンを持った中空繊維膜であるが、外側の表面上にスキンを有するのが望ましいコンタクターの用途があり得る。外側表面がスキン化された膜は、液相が繊維の外殻側の上にある用途に、より適している。外側スキン化膜の場合は、熟練した実施者なら、内腔の中に共押しされた液体又は他の適当な流体を有する本発明の好ましい方法を採用し、外側の表面から溶媒が急激に蒸発するのを制御することができる。急激に蒸発する溶媒の量は、例えば、押し出し速度と、押し出される繊維が出てくるダイの先端出口と繊維が入る冷却浴入口との距離との組合せにより調節される。空気との接触時間、即ち押し出し機の出口と冷却浴の表面との間の雰囲気中に押し出された繊維の外側表面がいる時間は、約0.05秒未満が好ましく、最も好ましいのは0.02秒未満である。
【0053】
(特性評価法)
(流速試験)
ループにした2ふさの繊維を、長さ約1インチの1/4インチ径のポリプロピレン管にはめる。ホットメルトガンを用い、繊維を注封する管の開放端からホットメルト接着剤を押し込む。普通は、繊維間の空間の全てを接着剤で満たすことはない。注封を完了するため、チューブ他端にホットメルト接着剤を塗布する。繊維の長さ即ち注封端からループまでの距離は、約3.5cmとする。ホットメルト接着剤が凝固した後、管を切り繊維の内腔を暴露する。繊維の外径を顕微鏡で測定する。繊維ループを有する管をテストホルダーにはめ込む。イソプロピルアルコール(IPA)をホルダーに注ぎ、ホルダーを塞ぎ、ガスの圧力を13.5psiに設定する。IPA透過物を設定量回収するまでの時間間隔を記録する。
【0054】
(サンプル計算)
IPA流速=V/(T*π*OD*N*L)
IPAフロータイム(FT)=500mlのIPA透過物を回収する秒単位の時間。製版された記載から簡易体積を求めるための測定時間から計算する。
式中の記号は以下を意味する。
V=透過物の体積
T=時間
OD=繊維の外側の直径
N=繊維の本数
L=暴露された繊維1ふさの合計の長さ
【0055】
(侵入圧試験)
ループ形状の数ふさの繊維を、長さ約1インチの1/4インチ径のポリプロピレン管にはめる。ホットメルトガンを用い、繊維を注封する管の開放端からホットメルト接着剤を押し込む。普通は、繊維間の空間の全てを接着剤で満たすことはない。注封を完了するため、チューブの他端にホットメルト接着剤を塗布する。繊維の長さ、即ち注封端からループまでの距離は、約3インチである。ホットメルト接着剤が凝固した後、管を切り繊維の内腔を暴露する。繊維の外径を顕微鏡で測定する。繊維ループを有する管を、テストホルダーにはめ込み、試験流体の入った容器につなぎ、加圧ガスタンク等の圧力発生装置に取り付ける。容器内の圧力は例えば10psi刻みで上昇させ、試験流体は繊維の内腔の中に押し込まれる。試験流体の如何なる侵入も、試験流体が繊維の細孔を満たすことから生じる繊維の暗化として容易に観察される。各工程の圧力を約20分間又は侵入が観察されない限り維持する。侵入が観察されない場合は、圧力を更に次の増分まで上げ、試験を継続する。
【0056】
(目視発泡点)
ループにした2ふさの繊維を、長さ約1インチの1/4インチ径のポリプロピレン管にはめる。ホットメルトガンを用い、繊維を注封する管の開放端からホットメルト接着剤を押し込む。普通は、繊維間の空間の全てを接着剤で満たすことはない。注封を完了するため、チューブの他端にホットメルト接着剤を塗布する。繊維の長さ、即ち注封端からループまでの距離は、約3.5cmとする。ホットメルト接着剤が凝固した後、管を切り繊維の内腔を暴露する。繊維の外径を顕微鏡で測定する。繊維ループを有する管をテストホルダーにはめ込む。注封された繊維のループを、発泡点試験ホルダーにはめ込む。ループをIPAの入ったガラス容器に沈める。繊維の内腔中の空気圧をゆっくりと上げる。最初の泡が外側の繊維表面に現れた時点の圧力を目視発泡点として記録する。
【0057】
(走査電子顕微鏡像)
中空繊維膜のサンプルを、イソプロピルアルコール又は約50容積%のイソプロピルアルコールと水との混合物に浸す。次に、濡れたサンプルを、アルコールを水と置換するために水に浸す。水で濡れたサンプルをピンセットでつまみ、液体窒素の容器の中に軽く浸す。次に、サンプルを取り出し、一対のピンセットを用いて曲げることにより素早く折る。約2mmにカットされたサンプルを、導電性カーボン塗料(ペンシルバニア州ウエストチェスターのストラクチャー・プローブ株式会社)でサンプルスタブに固定する。顕微鏡観察は、ISI−DS130c走査電子顕微鏡(カリフォルニア州ミルピータスのインターナショナル・サイエンティフィック・インスツルメンツ株式会社)で行われた。デジタル化された像をスロー走査フレームつかみにより入手し、TIFフォーマットで保存する。
【実施例】
【0058】
(実施例1)
ニュジャージー州ソロファーのオーシモント・ユー・エス・エー株式会社から入手したハイフロンMFA(HYFLON MFA(登録商標))グレード620(ポリ(PTFE−CO−PFVAE))粉末を、入手した状態のまま使用した。この粉末を、ニュージャージー州リバーエッジのハロカーボン・オイル株式会社製のハロバック(HaloVac(登録商標))60と混合し、重合体固形分が30重量%のペーストを製造する。重合体/溶媒ペースト状混合物を、モイノ(Moyno)(オハイオ州スプリングフィールド)の前進空洞ポンプによって、29mmのスクリューを有するベーカー−パーキンズ(ミシガン州サギノー)のツインスクリュー押し出し機の加熱バレルに導入する。押し出し機のバレル温度は、180℃から300℃の間に設定した。ゼニス(Zenith(登録商標))溶融ポンプ(マサチューセッツ州ウォルサム)を用いて、溶融物を上述の特製の中空繊維ダイに計量して供給した。ダイの環は約300ミクロンであった。繊維の中空部分を維持するため、低体積流量調節装置、即ちブルックス・インスツルメント8744(ペンシルバニア州ハットフィールド)によって、制御された流速で空気を供給した。溶融ポンプと空気圧は、毎分50フィートの紡糸速度で、壁厚が約150ミクロンで内腔直径が540ミクロンの繊維を製造するように調整した。70℃に維持した鉱油を、冷却浴として使用した。内腔のセンタリングの後、ダイを、水平方向沈潜方法で操作した。繊維は、一組のゴデロール上に巻き取った。繊維を、1,1ジクロロ−1−フルオロエタン(フロロカーボン 141b、ICI)で抽出し、続いて乾燥した。
【0059】
図5及び6は、この中空繊維膜の内側及び外側表面を示す。外側表面が多孔質な表面を示す一方、内側表面はスキンを有する。
【0060】
(実施例2)
ニュジャージー州ソロファーのオーシモント・ユー・エス・エー株式会社から入手したハイフロンMFA(登録商標)グレード620(ポリ(PTFE−CO−PFVAE))のペレットを約300ミクロンの大きさに粉砕し、ニュージャージー州リバーエッジのハロカーボン・オイル株式会社製のハロバック(登録商標)60と混合し、重合体固形分が40重量%のペーストを製造する。重合体/溶媒ペースト状混合物を、29mmのスクリューを有するベーカー−パーキンズ(ミシガン州サギノー)のツインスクリュー押し出し機の加熱バレルに導入する。押し出し機のバレル温度は、180℃から285℃の間に設定した。ゼニス溶融ポンプ(マサチューセッツ州ウォルサム)を用いて、溶融物を上述の特製の中空繊維ダイに計量して供給した。ダイの環は約300ミクロンであった。繊維の中空部分を維持するため、低体積流量調節装置、即ちブルックス・インスツルメント8744(ペンシルバニア州ハットフィールド)によって、制御された流速で空気を供給した。溶融ポンプと空気圧は、毎分100フィートの紡糸速度で、壁厚が約250ミクロンで、内腔直径が540ミクロンの繊維を製造するように調整した。35℃に維持したジオクチルフタレートを、冷却浴として使用した。内腔のセンタリングの後、ダイを、水平方向の沈潜方法で操作した。繊維は、一組のゴデロール上に巻き取られた。繊維を、1,1ジクロロ−1−フルオロエタン(ゲネソルブ(Genesolve)2000アライド−シグナル、ニュージャージー州)で抽出し、続いて乾燥した。繊維には100psiまでIPAの発泡点は観測されず、その圧力ではIPAの流れは測定できなかった。これらの結果は、膜のスキンが非孔質であることを示している。
【0061】
(実施例3)
本実施例では、実施例1の膜と類似の方法で作った膜を使用して、水の脱ガスを行う。内腔側を繊維の外殻又は外側から隔てる円筒状のホルダーの中に、繊維の束を作り、注封し、及び設置した。繊維の内径は500μ、繊維の壁は約150μであった。繊維の数は約500本、モジュールの長さは約20cmであった。20℃の水を、繊維の内腔中に圧送し、外殻上の真空度を60Torrに維持した。様々な流速で、膜の束の入口と出口での水の酸素レベルを測定した。
【0062】
同じモジュールを、気化効率用に使用した。このモードでは、20℃の水を、供給水をヘキスト・リキッド・セル(Hoechst Liquid Cel)脱ガス装置で脱ガスする以外は、前述と全く同様にして内腔中に圧送した。一端上で外殻側を低圧空気でパージし、一方、他端は開いたままにした。ガスの流速が低いので、実質的に外殻上でガス圧降下はなかった。全ての実用的な目的には、絶対的なガス圧は760mmHgと想定される。供給水及び出口水の酸素濃度を、異なる流速で測定した。
【0063】
図7に、セルガード・リキッド・セル(Celgard Liquid Cel(登録商標))(ノースカロライナ州シャーロットのヘキスト・セラニーズ)の製品資料からの文献値及びレベック溶液に基づく理論予測と比較した結果を示す。データ分析法を、以下に示す。
【0064】
物質移動係数Kを、次式で計算した。
K=−(Q/A)*ln[Cout−C/Cin−C
式中の記号は以下を意味する。
outは、排出液体中の酸素濃度[ppm]である。
inは、流入液体中の酸素濃度[ppm]である。
は、外殻側でのガス圧における平衡酸素濃度[ppm]である。
Qは、流速[cc/s]である。
Aは、膜面積[cm]である。
シャーウッド数は次のようにして計算した。
Sh=K*D/Dab
式中の記号は以下を意味する。
Kは、物質移動係数[cm/s]である。
Dは、繊維の内径[cm]であり、
abは、水中の酸素拡散率[cm/s]である。
グレーツ又はペクレ数は次のようにして計算した。
Pe又はGr=V*D/(L*Dab
式中の記号は以下を意味する。
Vは、内腔の内側の流速[cm/s]であり、
Lは、繊維の長さ[cm]である。
【0065】
シャーウッド及びグレーツ数は、熱及び物質移動操作を記述するのに用いられる無次元群である。シャーウッド数は、無次元の物質移動係数であり、グレーツ数は境界層の厚さの逆数に関連した無次元群である。
【0066】
S.R.Wickramasinghe(J.Membrane Sci.69(1992)235−250)らは、レベックの方法を用い、中空繊維膜コンタクター中の酸素輸送を分析した。多孔質中空繊維膜の束を使用した。彼らは、理論予測に一致して、グレーツ数に対するシャーウッド数のプロットが、グレーツ数の値が高いところで直線になることを示した。グレーツ数の低いところでの結果は、繊維直径の多分散性により説明され、繊維を通る流れの均一性に影響を与える。彼らの分析は、グレーツ数が低いところで、繊維を通る一様でない流れのために、平均物質移動係数が理論予測以下になることを示した。彼らは、酸素の物質移動は、膜を横切る拡散抵抗により影響を受けないと結論付けた。逆に、レベック理論の予測に従う膜は多孔質であると結論することができ、さもなければ拡散抵抗がレベック理論に従うには高すぎるからである。
【0067】
図7に示された結果は、この実施例の膜は、ペクレ数の高いところでレベック式の直線部分に従うので、多孔質な膜としてふるまうことを示している。直線の領域では、シャーウッド数とグレーツ数の間の関係は、約5から約1000の間のグレーツ数に対して、Sh=1.64(Gr)0.33で与えられる。
【0068】
(実施例4)
同時に出願した我々の番号はMCA397であるが、まだ通し番号が割り当てられていない特許出願の開示内容を参照して取り込み、該出願に記載された方法で、MFAに30%の重合体溶液から実施例1と同様の方法で作った中空繊維膜を注封した。ヘキサメチルジシラン、即ちペンシルバニア州ブリストルのヒュルス・ペトラッチ・システムズ(Huls Petrach Systems)から入手した低表面張力液体で繊維の内腔を満たし、繊維を濡らした。モジュールの一方の端をメタノールを含んだ閉鎖容器に取り付け、圧力を50psiに上げ、メタノールを繊維の内腔の中に繊維の壁を通して押し込んだ。50psiで測定された透過速度は、0.65ml/minであった。容器と全てのラインを空にし、N−メチルピロリドン(オールドリッチ(Aldrich)化学会社、#24,279−9)を容器に仕込んだ。容器を60psiまで加圧し、繊維からメタノールを急激に蒸発させた。60psiで測定された透過速度は、0.25ml/minであった。溶媒を、N−メチルピロリドン中にポリビニルピロリドンが0.5%溶解した溶液と置換した。溶液を入口から内腔を通して、今は開いている出口部分から出るように流しながら、正接流れモードでモジュールを操作した。3つの透過物サンプルを得、最初のものは30分後に得た。
【0069】
透過物と供給物のサンプルをゲルパーミエーションクロマトグラフィーで分析した。分析には、ウォーターズ・アライアンス(Waters Alliance(登録商標))2690溶媒供給装置、410屈折率検出器、及びスチラジェル(Styragel(登録商標))HT(細孔径10Åから10Å)の4−カラムバンクを利用した。移動相はNMP、流速は1.0ml/min、注入体積は100μlであった。サンプルの区画、カラムヒーター、及びRI検出器は40℃で平衡にした。次の6つのPS標準物質、即ち775K、402.1K、43.9K、30.256K、7.5K、及び2.8Kを目盛り定めに用いた。サンプルとPS目盛り定め標準物質を、0.5μmのPTFEミレックス(PTFE Millex(登録商標))フィルターで予備濾過してカラムバンクを保護する。データを、ウィンドウズ(登録商標)用のGPCシェアウェア(オーストラリア国ビクトリアのDr. Mat Bullard)を用いて分析した。
【0070】
図8は、供給溶液と3つの透過溶液のクロマトグラムを示す。透過溶液は供給溶液より溶解した重合体の濃度が低いことが見て取れる。ピークの高さ分析は、高分子量の化学種がより除去されていることを示している。
【0071】
(実施例5)
実施例1記載のプロセスと同様のプロセスで、30%の重合体固形分の溶液から製造した膜サンプルについて侵入試験を実施した。繊維の外径は750ミクロン、内径は485ミクロンであった。イソプロピルアルコールを、試験流体(25℃での表面張力20.93mN/m、化学と物理のCRCハンドブック(CRC Handbook of Chemistry and Physics)、CRC出版社)として使用した。50psiでは、30分後に流体の侵入が観測されなかった。60psiでは、幾らかの侵入が観測された。
【0072】
(実施例6)
スキン化外側表面を有する非対称微孔質テトラフルオロエチレン−ペルフルオロメチルビニルエーテル共重合体(MFA)中空繊維膜を、次の方法で調製した。
【0073】
クロロトリフルオロエチレンオリゴマー(CTFE)(ハロカーボン・プロダクツ製のハロカーボン・オイル#60)中に入れた16%(w/w)のMFA(オーシモント製のハイフロン(登録商標)MFA620)の粉体の混合スラリーを室温で調製し、中空繊維押し出しに使用した。
このスラリーを、計量供給ポンプ(FMIのモデルQV)を経由して、ツインスクリュー押し出し機(ベーカー−パーキンズのモデルMPC/V−30、L/D=13)、溶融ポンプ(ゼニスのモデルHPB5704)、溶融フィルター及び中空繊維ダイからなる押し出し装置に供給した。押し出し機の内側のツインスクリューには、供給スクリュー素子と混合パドルとを組み込んでMFA/CTFE溶融混合物を混合及び運輸する能力を付与する。使用するスクリューの速度は、200rpmであった。この装置の中空繊維ダイは、内側の径の開口が0.016インチで、環状のギャップが0.17インチである。純粋なCTFEオイル(スラリーと同じグレード)を、計量供給ポンプ(ゼニスモデルFF7298)を経由してダイの中心の導管に計量して供給し、該オイルは形成中の中空繊維の内腔を満たす流体として機能した。押し出し装置の種々の領域の温度設定値は、230℃から250℃の範囲であった。この実験の間の溶融ポンプの出力速度は、約20g/minであり、内腔のオイル供給速度は約10g/minであった。
【0074】
内腔オイルで満たした繊維形状をした溶融混合物を、水平方向に、急冷流体として機能する再循環鉱油(ウィトコ(Witco)製ブリトール(Britol)35)が入った急冷浴の中に押し出した。オイルの温度を、外部加熱を使用して、約73℃に維持した。約0.25インチのエアーギャップを、中空繊維ダイの先端と急冷浴の入口との間に維持した。急冷された繊維を一組のゴデロール周りに巻きつけ、120fpmの線速度で巻き取った。このオイルで内腔が満たされたゲル状繊維は、外径〜800μ、内径〜400μである。
【0075】
急冷された繊維からCTFEオイルを取り除くために、或る長さの繊維サンプルを開放長方形の金属製フレームの周りに複数のループ状に巻きつけ、両端を締め付けた。該フレームを、1,1ジクロロ−1−フルオロエタン(フロロカーボン141b、ICI)を含有した脱脂剤(バロン・ブレークスリーMLR−LE)中に約16時間置いた。その後、フレームに巻かれたサンプルを室温で乾燥し、次に、275℃のオーブンの中で約10分間ヒートセットした。
【0076】
最終的に得られた繊維は外観が白色であり、その構造の走査電子顕微鏡写真を図9から11に示す。図10は、繊維の内側(内腔)表面の形態を示し、高度に多孔質な構造をしていることを明らかにしている。図9は、繊維の外側表面の形態を示し、非常に緻密な構造をしていることを明らかにしている。図11は、外側表面近くの繊維の断面の形態を示し、繊維の外側表面上の堅固な層の厚さが、極めて薄いことを示している。
【0077】
中空繊維膜の開発及び生産技術における熟練した実施者なら、本発明の有効性を認識できるであろう。徹底的に可能な全ての組み合わせ、置換、及び変形を示すことは本発明の議論の意図するところではなく、該議論は熟練した実施者の教導のために代表的な方法を示すことを意図するものである。代表する実施例は実施化を実証するために与えるものであり、本発明の範囲を限定するものとして取り上げるべきものではない。発明者らは、クレームの作成時に知られる本発明の最も広い態様を最も広い方法でカバーすることを強く求める。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の径にスキン化表面を、反対側の径に多孔質の表面を有する、ペルフルオロ化熱可塑性重合体よりなる中空繊維膜。
【請求項2】
前記スキン化表面が非孔質である請求項1記載の膜。
【請求項3】
前記スキン化表面が約2nmから約50nmの範囲の平均細孔径を有して多孔質である請求項1記載の膜。
【請求項4】
前記膜が限外濾過膜である請求項1記載の膜。
【請求項5】
一方の径にスキン化表面を、反対側の径に有機溶媒、有機溶媒の混合物、有機溶媒と水との混合物、有機溶媒の混合物と水との混合物、及び水からなる部類に溶解した巨大分子化学種を保持し得る多孔質の表面を有し、該部類のものがその中に他の化学種を溶解していてもよい、ペルフルオロ化熱可塑性重合体よりなる中空繊維限外濾過膜。
【請求項6】
前記膜が500,000ドルトン未満の分子量カットオフ値を有する請求項5記載の膜。
【請求項7】
前記膜が100,000ドルトン未満の分子量カットオフ値を有する請求項6記載の膜。
【請求項8】
前記膜が50,000ドルトン未満の分子量カットオフ値を有する請求項7記載の膜。
【請求項9】
前記膜が10,000ドルトン未満の分子量カットオフ値を有する請求項8記載の膜。
【請求項10】
一方の径にスキン化表面を、反対側の径に多孔質の表面を有するペルフルオロ化熱可塑性重合体よりなる中空繊維膜を具える、中空繊維膜コンタクター。
【請求項11】
前記スキン化表面が非孔質である請求項10記載の膜。
【請求項12】
前記スキン化表面が、約2nmから約50nmの範囲の平均細孔径を有する多孔質の表面である請求項10記載の膜。
【請求項13】
一方の径にスキン化表面を、反対側の径にグレーツ数の範囲が約5から約1000においてシャーウッド数がグレーツ数の0.33乗の約1.64倍と等しい値で液−気物質移動できる多孔質な表面を具える、ペルフルオロ化熱可塑性重合体よりなる中空繊維コンタクター膜。
【請求項14】
一方の径にスキン化表面を、反対側の径に表面張力の値が約20mN/mより大きい液体で液−気物質移動できる多孔質な表面を具える、ペルフルオロ化熱可塑性重合体よりなる中空繊維コンタクター膜。
【請求項15】
一方の径にスキン化表面を、反対側の径にイソプロピルアルコールで約50psiより大きい侵入圧を有する液−気物質移動が可能な多孔質の表面を具える、ペルフルオロ化熱可塑性重合体よりなる中空繊維コンタクター膜。
【請求項16】
侵入圧がイソプロピルアルコールで約10psiより大きい請求項15記載の膜。
【請求項17】
前記ペルフルオロ化熱可塑性重合体が、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、及びそれらの混合物からなる群から選択される請求項1、5、10、13、14、及び15の何れかに記載の膜。
【請求項18】
前記テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体のアルキルが、プロピル、メチル、及びメチルとプロピルの混合からなる群から選択される請求項17記載の膜。
【請求項19】
スキン化内側表面と、膜のその残部の全体に渡って多孔質構造とを有する、ペルフルオロ化熱可塑性重合体から中空繊維膜を製造するにあたり、a)ペルフルオロ化熱可塑性重合体を、該重合体と上方臨界共溶温度溶液を形成する溶媒に溶解させる工程と、b)該溶液を環状のダイから押し出し、該ダイの一部を冷却浴に沈め、該溶液が急激に冷えるのを防ぐために十分高い温度を維持する工程と、c)同時に、ダイの中央部に加圧流体流を供給する工程と、d)該溶液を冷却浴の中に押し出す工程と、e)該溶液を上方臨界共溶温度以下で冷却し、液−液相分離により高分子に富んだ固相と溶媒に富んだ液相の2相に分離させ、ゲル状繊維を形成する工程と、f)該ゲル状繊維から該溶媒を抽出し、実質的に非孔質な内側表面と該繊維のそれ以外の部分の全体に渡り実質的に多孔質な構造とを有する中空繊維膜を形成する工程と、g)該多孔質な中空繊維膜を乾燥する工程とからなることを特徴とする中空繊維膜の製造方法。
【請求項20】
前記ダイの沈められた前記部分が該ダイの先端であり、加圧された流体が気体である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記ペルフルオロ化熱可塑性重合体が、該重合体と上方臨界共溶温度溶液を形成する溶媒に約12重量%から約75重量%の濃度で溶解している、請求項19記載の方法。
【請求項22】
工程(b)が、本質的に水平な姿勢で環状のダイから前記溶媒を押し出す工程と、該溶媒が急激に冷えるのを防ぐのに十分高い温度に該ダイを維持する工程であって該ダイの先端が該ダイの本体と冷却浴とを隔てる壁を貫通している工程と、該ダイの出口を該冷却浴の液体にさらす工程とを含む、請求項19記載の方法。
【請求項23】
前記溶媒の沸点が、ダイの先端出口でのゲル状繊維の温度より低い請求項19記載の方法。
【請求項24】
前記溶媒が、低分子量の飽和クロロトリフルオロ炭化水素重合体である請求項19記載の方法。
【請求項25】
前記溶媒の沸点が290℃未満である請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記溶媒が、ハロバック(HaloVac)60、ハロバック(HaloVac)56、及びそれらの混合物からなる群から選択される請求項24記載の方法。
【請求項27】
前記ペルフルオロ化熱可塑性重合体が、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、及びそれらの混合物からなる群から選択される請求項19記載の方法。
【請求項28】
前記重合体がテトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体であり、該アルキルが、プロピル、メチル、及びメチルとプロピルの混合からなる群から選択される請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記冷却浴の液体が、前記ペルフルオロ化熱可塑性重合体を溶解しない溶媒からなる請求項19記載の方法。
【請求項30】
前記冷却浴の液体が、鉱油、シリコーン油、又はジオクチルフタレートから選択される群からなる請求項19記載の方法。
【請求項31】
スキン化外側表面と、膜のその残部の全体に渡って多孔質構造とを有する、ペルフルオロ化熱可塑性重合体から中空繊維膜を製造するにあたり、a)ペルフルオロ化熱可塑性重合体を、該重合体と上方臨界共溶温度溶液を形成する溶媒に溶解させる工程と、b)該溶液を、該溶液が急激に冷えるのを防ぐのに十分高い温度に維持した環状のダイから押し出す工程と、c)同時に、該ダイの中央部から押し出し物の内腔に液体を供給する工程と、d)該溶液をエアーギャップを経て、約0.05秒未満の空気との接触時間で、前記冷却浴の中に押し出す工程と、e)該溶液を上方臨界共溶温度未満に冷却して、液−液相分離により高分子に富んだ固相と溶媒に富んだ液相との2相に分離させ、ゲル状繊維を形成する工程と、f)該ゲル状繊維から該溶媒を抽出し、実質的に非孔質な内側表面と該繊維のそれ以外の部分の全体に渡って実質的に多孔質な構造とを有する中空繊維膜を形成する工程と、g)該多孔質な中空繊維膜を乾燥する工程とからなることを特徴とする中空繊維膜の製造方法。
【請求項32】
工程(d)の空気との接触時間が、約0.02秒未満である請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記ペルフルオロ化熱可塑性重合体が、該重合体と上方臨界共溶温度溶液を形成する溶媒に約30重量%から約65重量%の濃度で溶解する請求項31記載の方法。
【請求項34】
工程(b)が、本質的に水平な姿勢で環状のダイから前記溶媒を押し出す工程と、該溶媒が急激に冷えるのを防ぐために十分高い温度に該ダイを維持する工程であって、該ダイの先端が該ダイの本体と冷却浴とを隔てる壁を貫通しており、前記押し出し物が該冷却浴と接触する前にエアーギャップを通過する工程とを含む請求項31記載の方法。
【請求項35】
前記溶媒の沸点がダイの先端出口でのゲル状繊維の温度より低い請求項31記載の方法。
【請求項36】
前記溶媒が低分子量の飽和クロロトリフルオロ炭化水素重合体である請求項31記載の方法。
【請求項37】
前記溶媒がハロバック60、ハロバック56、及びそれらの混合物からなる群から選択される請求項31記載の方法。
【請求項38】
前記ペルフルオロ化熱可塑性重合体がテトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、及びそれらの混合物からなる群から選択される請求項31記載の方法。
【請求項39】
前記重合体がテトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体であり、該アルキルが、プロピル、メチル、及びメチルとプロピルの混合からなる群から選択される請求項31記載の方法。
【請求項40】
前記冷却浴の液体が前記ペルフルオロ化熱可塑性重合体を溶解しない溶媒からなる請求項31記載の方法。
【請求項41】
前記冷却浴の液体が鉱油、シリコーン油、及びジオクチルフタレートからなる群から選択される請求項31記載の方法。
【請求項42】
前記内腔に供給される前記液体が、低分子量の飽和クロロトリフルオロ炭化水素重合体、鉱油、シリコーン油、及びジオクチルフタレートからなる群から選択される請求項31記載の方法。
【請求項43】
一方の径にスキン化表面を、反対側の径に多孔質な表面を具え、請求項18及び31の何れかに記載の方法で製造されるペルフルオロ化熱可塑性重合体よりなる中空繊維膜。
【請求項44】
前記ペルフルオロ化熱可塑性重合体が、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、及びそれらの混合物からなる群から選択される請求項43記載の膜。
【請求項45】
前記テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体のアルキルが、本質的に全てプロピル、本質的に全てメチル、及びメチルとプロピルの混合からなる群から選択される請求項43記載の膜。
【請求項46】
前記スキン化表面が非孔質である請求項43記載の膜。
【請求項47】
前記膜が、約2nmから約50nmの範囲の平均細孔径を有する多孔質の表面である請求項43記載の膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−200861(P2011−200861A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−95303(P2011−95303)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【分割の表示】特願2000−595773(P2000−595773)の分割
【原出願日】平成12年1月27日(2000.1.27)
【出願人】(505307471)インテグリス・インコーポレーテッド (124)
【Fターム(参考)】