説明

スクアリリウム化合物、該化合物を含有する熱現像感光材料及び画像形成方法

【課題】 高温、高湿下における保存性に優れた熱現像感光材料及び画像形成方法を提供することである。
【解決手段】 支持体上の少なくとも一方の面に、感光性ハロゲン化銀を含有する感光層を有する熱現像感光材料において、下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
【化1】


(式中、R1及びR2は各々独立に、水素原子または置換基を表す。但し、R1及びR2が共に水素原子であることはなく、R1及びR2が共に置換基である場合、R1及びR2は異なった置換基を表す。Q1及びQ2は各々独立に6員の複素環を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な染料を含む熱現像感光材料及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療や印刷製版の分野では、画像形成材料の湿式処理に伴う廃液が作業性の上で問題となっており、近年では、環境保全、省スペースの観点からも処理廃液の減量が強く望まれている。
【0003】
そこで、レーザー・イメージャーやレーザー・イメージセッターにより効率的な露光が可能で、高解像度で鮮明な黒色画像形成することができる写真技術用途の光熱写真材料に関する技術が必要とされてきている。
【0004】
係る技術として、例えば特許文献1、2または非特許文献1等に記載されるように、支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀粒子及び還元剤を含有する熱現像感光材料(以下、単に感光材料ともいう)が知られている。この感光材料では、溶液系処理薬品を一切使用しないため、より簡便で環境を損なわないシステムをユーザーに提供することができる。
【0005】
ところで、これらの感光材料には、露光時に入射する光の反射、屈折による鮮鋭性の劣化を防止するためにアンチハレーション(AH)染料やアンチイラジエーション(AI)染料が広く用いられてきた。AH染料やAI染料に要求される特性として、所望の波長の光を充分に吸収すること、ハロゲン化銀乳剤に悪影響を及ぼさないこと、及び現像処理後には感光材料に汚染を残さないこと等が挙げられる。
【0006】
しかしながら、近赤外、特に700〜850nmに吸収極大を持ち、可視部の副吸収が非常に少ない赤外染料はほとんど知られておらず、わずかに報告されている例としては、例えば、特許文献3、4に、スクアリリウム染料が記載されている。しかし、これらに記載の染料を感光材料に用いた場合、感光材料中での熱安定性が満足できるものではなく、さらなる改善が求められていた。
【特許文献1】米国特許3,152,904号明細書
【特許文献2】米国特許3,487,075号明細書
【非特許文献1】D.H.Klosterboer:ドライシルバー写真材料(Dry Silver Photographic Materials),Handbook of Imaging Materials,Marcel Dekker,Inc.48頁,1991
【特許文献3】特開昭58−220143号公報
【特許文献4】米国特許6,482,950号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高温、高湿下における保存性に優れた熱現像感光材料及び画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0009】
(請求項1)
支持体上の少なくとも一方の面に、感光性ハロゲン化銀を含有する感光層を有する熱現像感光材料において、下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、R1及びR2は各々独立に、水素原子または置換基を表す。但し、R1及びR2が共に水素原子であることはなく、R1及びR2が共に置換基である場合、R1及びR2は異なった置換基を表す。Q1及びQ2は各々独立に6員の複素環を表す。)
(請求項2)
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の熱現像感光材料。
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、R3は置換基を表す。Q1及びQ2は前記一般式(1)のQ1及びQ2と同義である。)
(請求項3)
前記一般式(2)で表される化合物が、下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする請求項2に記載の熱現像感光材料。
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、R3は前記一般式(2)のR3と同義である。X1及びX2は、各々独立にO、S、Se、TeまたはN−Rを表し、Rはアルキル基またはアリール基を表す。R4〜R7は、各々独立に水素原子または置換基を表す。)
(請求項4)
前記一般式(3)において、X1及びX2が異なることを特徴とする請求項3に記載の熱現像感光材料。
【0016】
(請求項5)
前記一般式(3)で表される化合物が、下記一般式(4)で表される化合物であることを特徴とする請求項3または4に記載の熱現像感光材料。
【0017】
【化4】

【0018】
(式中、R3は前記一般式(2)のR3と同義である。R4〜R7は、前記一般式(3)のR4〜R7と同義である。)
(請求項6)
請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱現像感光材料にレーザー光源を用いて露光した後、80〜250℃で現像することを特徴とする画像形成方法。
【0019】
(請求項7)
前記一般式(4)で表されることを特徴とするスクアリリウム化合物。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、高温、高湿下における保存性に優れた熱現像感光材料及び画像形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明者は鋭意研究の結果、支持体上の少なくとも一方の面に、感光性ハロゲン化銀を含有する感光層を有する熱現像感光材料において、前記一般式(1)で表される化合物を含有する熱現像感光材料により、高温、高湿下における保存性に優れた熱現像感光材料が得られることを見出した。
【0022】
また、前記一般式(4)で表される化合物は、本発明に好ましく用いられる新規化合物である。
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
〔一般式(1)で表される化合物〕
前記一般式(1)において、R1及びR2は各々独立に、水素原子または置換基を表す。但し、R1及びR2が共に水素原子であることはなく、R1及びR2が共に置換基である場合、R1及びR2は異なった置換基を表す。R1及びR2で表される置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、シアノ基等が挙げられる。好ましくは、R1が水素原子、かつR2がアルキル基またはアリール基の場合であり、さらに好ましくは、R1が水素原子、かつR2がアルキル基の場合である。
【0025】
1及びQ2は各々独立に6員の複素環を表し、複素環としては、ピリリウム、チオピリリウム、セレノピリリウム、テルノピリリウム、ピリジニウム、ベンズピリリウム、ベンズチオピリリウム、ベンズセレノピリリウム等が挙げられるが、好ましくはピリリウム、チオピリリウムまたはセレノピリリウムであり、さらに好ましくはピリリウムまたはチオピリリウムである。
【0026】
これらの複素環は、置換基を有していてもよく、置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アニリノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基、ホスファト基、スルファト基等が挙げられる。
【0027】
〔一般式(1)で表される化合物〕
前記一般式(2)において、R3は置換基を表し、置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、シアノ基等が挙げられる。好ましくは、アルキル基またはアリール基であり、さらに好ましくは、アルキル基である。
【0028】
1及びQ2は、前記一般式(1)のQ1及びQ2と同義である。
【0029】
〔一般式(3)で表される化合物〕
前記一般式(3)において、R3は前記一般式(2)のR3と同義である。
【0030】
1及びX2は、各々独立にO、S、Se、TeまたはN−Rを表し、Rはアルキル基またはアリール基を表す。好ましくは、OまたはSである。
【0031】
4〜R7は、各々独立に水素原子または置換基を表し、置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アミノ基、アニリノ基、アシルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アシル基、ヒドラジノ基、ウレイド基等が挙げられる。
【0032】
〔一般式(4)で表される化合物〕
前記一般式(4)において、R3は前記一般式(2)のR3と同義である。
【0033】
4〜R7は、前記一般式(3)のR4〜R7と同義である。
【0034】
以下に、一般式(1)〜(4)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
【化5】

【0036】
【化6】

【0037】
【化7】

【0038】
【化8】

【0039】
一般式(1)〜(4)で表される化合物は、熱現像感光材料の如何なる層に添加してもよいが、好ましくは感光層、支持体に対し感光層側の非感光層または感光層の反対側に形成されたフィルター層に添加することが好ましく、支持体に対し感光層側の非感光層または感光層の反対側に形成されたフィルター層に添加することがさらに好ましい。一般式(1)〜(4)で表される化合物の添加量は、1m2当たり1×10-5〜10ミリモルが好ましく、1×10-4〜1ミリモルがより好ましく、1×10-3〜1×10-1ミリモルが最も好ましい。
【0040】
一般式(1)〜(4)で表される化合物は公知の方法に従って添加することができる。すなわち、メタノールやエタノール等のアルコール類、メチルエチルケトンやアセトン等のケトン類、ジメチルスルホオキシドやジメチルホルムアミド等の極性溶媒等に溶解して塗布液に添加することができる。また、1μm以下の微粒子にして水や有機溶媒に分散して添加することもできる。微粒子分散技術については多くの技術が開示されているが、これらに準じて分散することができる。
【0041】
〔熱現像感光材料〕
続いて、本発明の熱現像感光材料について説明する。
【0042】
(有機銀塩)
本発明では有機銀塩を用いることが好ましい。本発明に用いられる有機銀塩は、還元可能な銀源であり、還元可能な銀イオン源を含有する有機酸である。有機酸としては、脂肪族カルボン酸、炭素環式カルボン酸、複素環式カルボン酸、複素環式化合物等があるが、特に長鎖(10〜30、好ましくは15〜25の炭素原子数)の脂肪族カルボン酸及び含窒素複素環を有する複素環式カルボン酸等が好ましく用いられる。また、配位子が4.0〜10.0の銀イオンに対する総安定定数を有する有機銀塩錯体も有用である。
【0043】
このような有機酸銀塩の例としては、Research Disclosure(以降、RDと略す)第17029及び第29963に記載されている。中でも、脂肪酸の銀塩が好ましく用いられ、特に好ましく用いられるのは、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀及びステアリン酸銀である。
【0044】
前述の有機銀塩化合物は、水溶性銀化合物と、銀と錯形成する化合物を混合することにより得られるが、正混合法、逆混合法、同時混合法等が好ましく用いられる。また、特開平9−127643号に記載されているようなコントロールドダブルジェット法を用いることも可能である。
【0045】
本発明においては、有機銀塩は平均粒径が1μm以下でありかつ単分散であることが好ましい。有機銀塩の平均粒径とは、有機銀塩の粒子が、例えば、球状、棒状、あるいは平板状の粒子の場合には、有機銀塩粒子の体積と同等な球を考えたときの直径をいう。平均粒径は、好ましくは0.01〜0.8μm、特に0.05〜0.5μmが好ましい。また、単分散とは、後述のハロゲン化銀の場合と同義であり、好ましくは単分散度が1〜30%である。本発明においては、有機銀塩が平均粒径1μm以下の単分散粒子であることがより好ましく、この範囲にすることで濃度の高い画像が得られる。さらに、有機銀塩は、平板状粒子が全有機銀の60個数%以上であることが好ましい。本発明において、平板状粒子とは平均粒径と厚さの比、いわゆる下記式で表されるアスペクト比(ARと略す)が3以上のものをいう。
【0046】
AR=平均粒径(μm)/厚さ(μm)
このような有機銀粒子は、必要に応じてバインダーや界面活性剤等と共に予備分散した後、メディア分散機または高圧ホモジナイザ等で分散粉砕することが好ましい。上記予備分散で用いることのできる分散機としては、例えば、アンカー型、プロペラ型等の一般的攪拌機や高速回転遠心放射型攪拌機(ディゾルバ)、高速回転剪断型撹拌機(ホモミキサ)を使用することができる。また、上記メディア分散機としては、例えば、ボールミル、遊星ボールミル、振動ボールミル等の転動ミルや、媒体攪拌ミルであるビーズミル、アトライター、その他バスケットミル等を挙げることができ、また高圧ホモジナイザとしては、例えば、壁、プラグ等に衝突するタイプ、液を複数に分けてから高速で液同士を衝突させるタイプ、細いオリフィスを通過させるタイプ等、さまざまなタイプを用いることができる。
【0047】
本発明に用いられる有機銀粒子を分散する際に用いられる装置類において、有機銀粒子が接触する部材の材質として、例えば、ジルコニア、アルミナ、窒化珪素、窒化ホウ素等のセラミックス類またはダイヤモンドを用いることが好ましく、特にジルコニア(Zr)を用いることが好ましい。
【0048】
本発明に用いられる有機銀粒子は、銀1g当たり0.01〜0.5mgのZrを含有することが好ましく、特に好ましくは0.01〜0.3mgのZrを含有する場合である。上記分散を行う際、バインダー濃度、予備分散方法、分散機運転条件、分散回数等を最適化することは、本発明に用いられる有機銀塩粒子を得る方法として非常に好ましい。
【0049】
(感光性ハロゲン化銀)
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀は、画像形成後の白濁を低く抑えるため及び良好な画質を得るために、平均粒子サイズが小さい方が好ましく、平均粒子サイズが0.1μm以下、より好ましくは0.01〜0.1μm、特に0.02〜0.08μmが好ましい。ここでいう粒子サイズとは、電子顕微鏡で観察される個々の粒子像と等しい面積を有する円の直径(円相当径)を指す。また、感光性ハロゲン化銀は、単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる単分散度が40%以下をいう。さらに好ましくは30%以下であり、特に好ましくは20%以下である。
【0050】
単分散度=(粒径の標準偏差)/(平均粒径値)×100
感光性ハロゲン化銀粒子の形状については、特に制限はないが、ミラー指数〔100〕面の占める割合が高いことが好ましく、この割合が50%以上、さらには70%以上、特に80%以上であることが好ましい。ミラー指数〔100〕面の比率は、増感色素の吸着における〔111〕面と〔100〕面との吸着依存性を利用したT.Tani,J.Imaging Sci.,29,165(1985)により求めることができる。
【0051】
また、本発明において、もう一つの好ましい感光性ハロゲン化銀の形状は、平板粒子である。ここでいう平板粒子とは、投影面積の平方根を粒径r(μm)とし、垂直方向の厚みをh(μm)とした時のアスペクト比(r/h)が3以上のものをいう。その中でも、アスペクト比は3〜50が好ましい。また、平板粒子の粒径は0.1μm以下であることが好ましく、さらに0.01〜0.08μmが好ましい。これらの平板粒子は、米国特許第5,264,337号、同第5,314,798号、同第5,320,958号等に記載されており、容易に目的の平板粒子を得ることができる。
【0052】
感光性ハロゲン組成としては、特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀のいずれであってもよい。本発明に用いられる乳剤は、P.Glafkides著Chimie et Physique Photographique(Paul Montel社刊、1967年)、G.F.Duffin著 Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊、1966年)、V.L.Zelikman et al著Making and Coating Photographic Emulsion(The Focal Press刊、1964年)等に記載された方法に基づいて調製することができる。
【0053】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀には、周期表の6〜11族に属する金属イオンを含有することが好ましい。上記の金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Auが好ましい。
【0054】
これらの金属イオンは、金属錯体または金属錯体イオンの形でハロゲン化銀に導入できる。これらの金属錯体または金属錯体イオンとしては、下記一般式で表される6配位金属錯体が好ましい。
【0055】
一般式〔ML6m
式中、Mは周期表の6〜11族の元素から選ばれる遷移金属、Lは配位子、mは0、−、2−、3−または4−を表す。Lで表される配位子の具体例としては、例えば、ハロゲン化物(弗化物、塩化物、臭化物及び沃化物)、シアン化物、シアナート、チオシアナート、セレノシアナート、テルロシアナート、アジド及びアコの各配位子、ニトロシル、チオニトロシル等が挙げられ、好ましくはアコ、ニトロシル及びチオニトロシル等である。アコ配位子が存在する場合には、配位子の一つまたは二つを占めることが好ましい。Lは同一でもよく、また異なっていてもよい。
【0056】
Mとしては、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)及びオスミウム(Os)が好ましく、これらを含む遷移金属錯体イオンの具体例としては、〔RhCl63-、〔RuCl63-、〔ReCl63-、〔RuBr63-、〔OsCl63-、〔IrCl64-、〔Ru(NO)Cl52-、〔RuBr4(H2O)〕2-、〔Ru(NO)(H2O)Cl4-、〔RhCl5(H2O)〕2-、〔Re(NO)Cl52-、〔Re(NO)(CN)52-、〔Re(NO)Cl(CN)42-、〔Rh(NO)2Cl4-、〔Rh(NO)(H2O)Cl4-、〔Ru(NO)(CN)52-、〔Fe(CN)63-、〔Rh(NS)Cl5〕2-、〔Os(NO)Cl5〕2-、〔Cr(NO)Cl5〕2-、〔Re(NO)Cl5-、〔Os(NS)Cl4(TeCN)〕2-、〔Ru(NS)Cl52-、〔Re(NS)Cl4(SeCN)〕2-、〔Os(NS)Cl(SCN)42-、〔Ir(NO)Cl52-、〔Ir(NS)Cl52-等が挙げられる。
【0057】
前述した金属イオン、金属錯体または金属錯体イオンは、一種類でもよいし、同種の金属及び異種の金属を二種以上併用してもよい。これらの金属イオン、金属錯体または金属錯体イオンの含有量としては、一般的にはハロゲン化銀1モル当たり1×10-9〜1×10-2モルが適当であり、好ましくは1×10-8〜1×10-4モルである。
【0058】
これらの金属を提供する化合物は、ハロゲン化銀粒子形成時に添加し、ハロゲン化銀粒子中に組み込まれることが好ましく、ハロゲン化銀粒子の調製、即ち、核形成、成長、物理熟成、化学増感の前後の任意の段階で添加してもよいが、特に核形成、成長、物理熟成の段階で添加するのが好ましく、さらには核形成、成長の段階で添加するのが好ましく、核形成の段階で添加するのが最も好ましい。
【0059】
添加に際しては、数回に渡って分割して添加してもよく、ハロゲン化銀粒子中に均一に含有させることもできるし、特開昭63−29603号、特開平2−306236号、同3−167545号、同4−76534号、同6−110146号、同5−273683号等に記載されているように、粒子内に分布を持たせて含有させることもできる。好ましくは、粒子内部に分布を持たせることである。これらの金属化合物は、水あるいは適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類)に溶解して添加することができるが、例えば、金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を、粒子形成中の水溶性銀塩溶液または水溶性ハライド溶液中に添加しておく方法、あるいは銀塩溶液とハライド溶液が同時に混合されるとき第3の水溶液として添加し、3液同時混合の方法でハロゲン化銀粒子を調製する方法、粒子形成中に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入する方法、あるいはハロゲン化銀調製時に予め金属のイオンまたは錯体イオンをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させる方法等がある。特に、金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を、水溶性ハライド溶液に添加する方法が好ましい。
【0060】
粒子表面に添加する時には、粒子形成直後または物理熟成時途中、もしくは終了時または化学熟成時に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入することもできる。
【0061】
本発明においては、感光性ハロゲン化銀粒子は、粒子形成後に脱塩してもしなくてもよいが、脱塩を施す場合、例えば、ヌーデル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている方法により、水洗、脱塩することができる。
【0062】
(化学増感)
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子は、化学増感されていることが好ましい。好ましい化学増感法としては、当業界でよく知られている硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法等を用いることができる。また、金化合物や白金、パラジウム、イリジウム化合物等の貴金属増感法や還元増感法を用いることができる。
【0063】
硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法に好ましく用いられる化合物としては、公知の化合物を用いることができるが、例えば、特開平7−128768号等に記載の化合物を使用することができる。テルル増感剤としては、例えば、ジアシルテルリド類、ビス(オキシカルボニル)テルリド類、ビス(カルバモイル)テルリド類、ジアシルテルリド類、ビス(オキシカルボニル)ジテルリド類、ビス(カルバモイル)ジテルリド類、P=Te結合を有する化合物、テルロカルボン酸塩類、Te−オルガニルテルロカルボン酸エステル類、ジ(ポリ)テルリド類、テルリド類、テルロール類、テルロアセタール類、テルロスルホナート類、P−Te結合を有する化合物、含Teヘテロ環類、テルロカルボニル化合物、無機テルル化合物、及びコロイド状テルル等を用いることができる。
【0064】
貴金属増感法に好ましく用いられる化合物としては、例えば、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレナイド、あるいは米国特許第2,448,060号、英国特許第618,061号等に記載されている化合物を好ましく用いることができる。
【0065】
還元増感法に用いられる化合物としては、例えば、アスコルビン酸、二酸化チオ尿素の他に例えば、塩化第一スズ、アミノイミノメタンスルフィン酸、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることができる。また、ハロゲン化銀乳剤のpHを7以上またはpAgを8.3以下に保持して熟成することにより、還元増感することができる。また、粒子形成中に銀イオンのシングルアディション部分を導入することにより、還元増感することができる。
【0066】
(還元剤)
本発明の熱現像感光材料には還元剤を内蔵させることが好ましい。還元剤としては、一般に知られているものが挙げられ、例えば、フェノール類、2個以上のフェノール基を有するポリフェノール類、ナフトール類、ビスナフトール類、2個以上の水酸基を有するポリヒドロキシベンゼン類、2個以上の水酸基を有するポリヒドロキシナフタレン類、アスコルビン酸類、3−ピラゾリドン類、ピラゾリン−5−オン類、ピラゾリン類、フェニレンジアミン類、ヒドロキシルアミン類、ハイドロキノンモノエーテル類、ヒドロオキサミン酸類、ヒドラジド類、アミドオキシム類、N−ヒドロキシ尿素類等があり、さらに詳しくは例えば、米国特許第3,615,533号、同第3,679,426号、同第3,672,904号、同第3,751,252号、同第3,782,949号、同第3,801,321号、同第3,794,488号、同第3,893,863号、同第3,887,376号、同第3,770,448号、同第3,819,382号、同第3,773,512号、同第3,839,048号、同第3,887,378号、同第4,009,039号、同第4,021,240号、英国特許第1,486,148号、ベルギー特許第786,086号、特開昭50−36143号、同50−36110号、同50−116023号、同50−99719号、同50−140113号、同51−51933号、同51−23721号、同52−84727号、特公昭51−35851号に具体的に例示された還元剤等を挙げることができ、本発明は上記の公知な還元剤の中から適宜選択して使用することができる。選択方法としては、実際に還元剤を含む熱現像感光材料を作製し、その写真性能を直接評価することにより、還元剤の適否を確認する方法が最も効率的である。
【0067】
上記還元剤の中で、有機銀塩として脂肪族カルボン酸銀塩を使用する場合の好ましい還元剤としては、2個以上のフェノール基がアルキレン基または硫黄によって連結されたポリフェノール類、特にフェノール基のヒドロキシ置換位置に隣接した位置の少なくとも一つにアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等)またはアシル基(例えばアセチル基、プロピオニル基等)が置換したフェノール基の2個以上がアルキレン基または硫黄によって連結されたポリフェノール類、例えば1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)メタン、(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メタン、6,6′−ベンジリデン−ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノール)、6,6′−ベンジリデン−ビス(2−t−ブチル−4−メチルフェノール)、6,6′−ベンジリデン−ビス(2,4−ジメチルフェノール)、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1,5,5−テトラキス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2,4−エチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロパン等の米国特許第3,589,903号、同第4,021,249号、英国特許第1,486,148号、特開昭51−51933号、同50−36110号、同50−116023号、同52−84727号、特公昭51−35727号に記載されたポリフェノール化合物、米国特許第3,672,904号に記載されたビスナフトール類、例えば、2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、6,6′−ジブロモ−2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、6,6′−ジニトロ−2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、ビス(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)メタン、4,4′−ジメトキシ−1,1′−ジヒドロキシ−2,2′−ビナフチル等、さらに米国特許第3,801,321号に記載されているようなスルホンアミドフェノールまたはスルホンアミドナフトール類、例えば、4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、4−ベンゼンスルホンアミドナフトール、特開2003−302723及び特開2003−315954に記載されたポリフェノール化合物等を挙げることができる。特に好ましくは、特開2003−302723及び特開2003−315954に記載されたポリフェノール化合物である。
【0068】
本発明の熱現像感光材料に使用される還元剤の量は、使用する有機銀塩や還元剤の種類、その他の添加剤により一様ではないが、一般的には有機銀塩1モル当たり0.05〜10モル、好ましくは0.1〜3モルの範囲が適当である。またこの範囲内においては、上述した還元剤を2種以上併用してもよい。本発明においては、前記還元剤を塗布直前に感光層塗布液に添加し塗布することが、感光層塗布液の停滞時間による写真性能変動を小さくする上で好ましい。
【0069】
次に、本発明の熱現像感光材料の上記説明した項目を除いた構成要素について説明する。
【0070】
本発明の熱現像感光材料は、上述の有機銀塩、感光性ハロゲン化銀及び還元剤等を含有する感光層及び保護層をこの順に支持体上に積層させたもので、さらに、必要に応じて支持体と上記感光層との間に中間層を設置してなるものが好ましい。
【0071】
また、感光層とは反対の面には搬送性確保や、保護層とのブロッキング防止のためにバックコート層を設置した熱現像感光材料も好適に用いることができる。なお、各層は単一層でもよいし、組成が同一あるいは異なる2層以上の複数の層で構成されていてもよい。
【0072】
(バインダー樹脂)
また、本発明では上述の各層を形成するために、バインダー樹脂が好ましく用いられる。このようなバインダー樹脂としては、従来から用いられている透明または半透明なバインダー樹脂を適時選択して用いることができ、そのようなバインダー樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール系樹脂、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸酪酸セルロー等のセルロース系樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリルゴム共重合体等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリポロピレン等の塩化ビニル系樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上の樹脂を併用して用いてもよい。
【0073】
なお、前記バインダー樹脂は、本発明の目的を損なわない限り、保護層、中間層、あるいは必要な場合に設けられるバックコート層の各層に適時選択して用いることができる。なお、中間層やバックコート層には、活性エネルギー線で硬化可能なエポキシ樹脂やアクリルモノマー等を層形成バインダー樹脂として使用してもよい。本発明では、以下に示す水系バインダー樹脂も好ましく用いられる。
【0074】
好ましい水系バインダー樹脂としては、水溶解性ポリマーまたは水分散性疎水性ポリマー(ラテックス)を使用することができる。例えば、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン−アクリル酸共重合体、塩化ビニリデン−イタコン酸共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリル酸共重合体等である。これらは、水性の塗布液を構成するが、塗布後乾燥し、塗膜を形成する段階で均一な樹脂膜を形成するものである。これらを使用する場合には、有機銀塩、ハロゲン化銀、還元剤等を水性の分散液として、これらのラテックスと混合して均一な分散液とした後、塗布することで感光層を形成することができる。乾燥により、ラテックスは粒子が融合し均一な膜を形成する。さらに、ガラス転位点が−20〜80℃のポリマーが好ましく、特に−5〜60℃が好ましい。ガラス転位点が高いと、熱現像する温度が高くなり、低いとカブリやすくなり、感度低下や軟調化を招くからである。水分散ポリマーは、平均粒子径が1nmから数μmの範囲の微粒子にして分散されたものが好ましい。水分散疎水性ポリマーはラテックスとよばれ、水系塗布のバインダーとして広く使用されている中で耐水性を向上させるというラテックスが好ましい。バインダーとして耐水性を得る目的のラテックス使用量は、塗布性を勘案して決められるが、耐湿性の観点からは多いほど好ましい。全バインダーに対するラテックスの比率は50〜100質量%が好ましく、特に80〜100質量%が好ましい。
【0075】
本発明において、これらのバインダー樹脂としては、固形分量として、銀付量の0.25〜10倍の量、例えば、銀付量が2.0g/m2の場合、ポリマーの付き量は0.5〜20g/m2であることが好ましい。また、さらに好ましくは銀付量の0.5〜7倍、例えば、銀付量が2.0g/m2なら、1.0〜14g/m2である。バインダー樹脂量が銀付量の0.25倍以下では、銀色調が大幅に劣化し、使用に耐えない場合があるし、銀付量の10倍以上では、軟調になり使用に耐えなくなる場合がある。
【0076】
さらに、本発明に係る感光層には、上述した必須成分、バインダー樹脂以外に、必要に応じてカブリ防止剤、調色剤、増感色素、強色増感を示す物質(強色増感剤ともいう)等各種添加剤を添加してもよい。
【0077】
(カブリ防止剤)
本発明において、カブリ防止剤としては、例えば、米国特許第3,874,946号及び同第4,756,999号に開示されているような化合物、−C(X1)(X2)(X3)(ここでX1及びX2はハロゲン原子を表し、X3は水素またはハロゲン原子を表す)で表される置換基を1以上備えたヘテロ環状化合物、特開平9−288328号、同9−90550号、米国特許第5,028,523号及び欧州特許第600,587号、同第605,981号、同第631,176号等に開示されている化合物等を適時選択して用いることができる。
【0078】
(色調剤)
現像後の銀色調を改良する目的で添加される色調剤としては、例えば、イミド類(例えば、フタルイミド);環状イミド類、ピラゾリン−5−オン類、及びキナゾリノン(例えば、スクシンイミド、3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−フェニルウラゾール、キナゾリン及び2,4−チアゾリジンジオン);ナフタールイミド類(例えば、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタールイミド);コバルト錯体(例えば、コバルトのヘキサミントリフルオロアセテート)、メルカプタン類(例えば、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール);N−(アミノメチル)アリールジカルボキシイミド類(例えば、N−(ジメチルアミノメチル)フタルイミド);ブロックされたピラゾール類、イソチウロニウム(isothiuronium)誘導体及びある種の光漂白剤の組み合わせ(例えば、N,N′−ヘキサメチレン(1−カルバモイル−3,5−ジメチルピラゾール)、1,8−(3,6−ジオキサオクタン)ビス(イソチウロニウムトリフルオロアセテート)、及び2−(トリブロモメチルスルホニル)ベンゾチアゾールの組み合わせ);メロシアニン染料(例えば、3−エチル−5−((3−エチル−2−ベンゾチアゾリニリデン(ベンゾチアゾリニリデン))−1−メチルエチリデン)−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン);フタラジノン、フタラジノン誘導体またはこれらの誘導体の金属塩(例えば、4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメチルオキシフタラジノン、及び2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン);フタラジノンとスルフィン酸誘導体の組み合わせ(例えば、6−クロロフタラジノン+ベンゼンスルフィン酸ナトリウムまたは8−メチルフタラジノン+p−トエンスルフィン酸ナトリウム);フタラジン+フタル酸の組み合わせ;フタラジン(フタラジンの付加物を含む)とマレイン酸無水物、及びフタル酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸またはo−フェニレン酸誘導体及びその無水物(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸及びテトラクロロフタル酸無水物)から選択される少なくとも1つの化合物との組み合わせ;キナゾリンジオン類、ベンズオキサジン、ナルトキサジン誘導体;ベンズオキサジン−2,4−ジオン類(例えば、1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオン);ピリミジン類及び不斉−トリアジン類(例えば、2,4−ジヒドロキシピリミジン)、及びテトラアザペンタレン誘導体(例えば、3,6−ジメルカプト−1,4−ジフェニル−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレン)を挙げることができ、好ましい色調剤としては、フタラゾン、フタラジンである。なお、色調剤は、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、後述する保護層に添加してもよい。
【0079】
(増感色素)
増感色素としては、例えば、アルゴンイオンレーザー光源に対しは、特開昭60−162247号、特開平2−48635号、米国特許第2,161,331号、西独特許第936,071号、特開平5−11389号等に記載のシンプルメロシアニン類を、ヘリウムネオンレーザー光源に対しては、特開昭50−62425号、同54−18726号、同59−102229号に示された三核シアニン色素類、特開平7−287338号に記載されたメロシアニン類を、LED光源及び赤外半導体レーザー光源に対しては、特公昭48−42172号、同51−9609号、同55−39818号、特開昭62−284343号、特開平2−105135号に記載されたチアカルボシアニン類を、赤外半導体レーザー光源に対しては特開昭59−191032号、同60−80841号に記載されたトリカルボシアニン類、特開昭59−192242号、特開平3−67242号の一般式(IIIa)、(IIIb)に記載された4−キノリン核を含有するジカルボシアニン類等が有利に選択される。さらに、赤外レーザー光源の波長が750nm以上、さらに好ましくは800nm以上のような波長域のレーザーに対応するためには、特開平4−182639号、同5−341432号、特公平6−52387号、同3−10931号、米国特許第5,441,866号、特開平7−13295号等に記載されている増感色素が好ましく用いられる。
【0080】
(強色増感剤)
強色増感剤としては、RD第17643、特公平9−25500号、特開昭43−4933号、同59−19032号、同59−192242号、特開平5−341432号等に記載されている化合物を適時選択して用いることができ、本発明では、下記一般式(M)で表される複素芳香族メルカプト化合物、実質的にこのメルカプト化合物を生成する一般式(Ma)で表されるジスルフィド化合物を用いることができる。
【0081】
一般式(M)
Ar−SM
一般式(Ma)
Ar−S−S−Ar
一般式(M)において、Mは水素原子またはアルカリ金属原子を表し、Arは1個以上の窒素、硫黄、酸素、セレニウムもしくはテルリウム原子を有する複素芳香環または縮合複素芳香環を表す。複素芳香環は、好ましくは、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンズオキサゾール、ナフトオキサゾール、ベンゾセレナゾール、ベンゾテルラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリンまたはキナゾリンである。また、一般式(Ma)において、Arは上記一般式(M)の場合と同義である。
【0082】
上記の複素芳香環は、例えば、ハロゲン原子(例えば、Cl、Br、I)、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、アルキル基(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するもの)及びアルコキシ基(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するもの)からなる群から選ばれる置換基を有することができる。
【0083】
本発明に用いられる強色増感剤は、有機銀塩及びハロゲン化銀粒子を含む乳剤層中に銀1モル当たり0.001〜1.0モルの範囲で用いるのが好ましく、特に0.01〜0.5モルの範囲にするのが好ましい。
【0084】
本発明に係る感光層には、ヘテロ原子を含む大環状化合物を含有させることができる。ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、硫黄原子及びセレン原子の少なくとも1種を含む9員環以上の大環状化合物が好ましく、12〜24員環がより好ましく、さらに好ましいのは15〜21員環である。
【0085】
代表的な化合物としてはクラウンエーテルで、下記のPedersonが1967年に合成し、その特異な報告以来、数多く合成されているものである。これらの化合物は、C.J.Pederson、Journal of American Chemical Society vol,86(2495)、7017〜7036(1967)、G.W.Gokel、S.H,Korzeniowski、“Macrocyclic polyether synthesis”、Springer−Vergal(1982)等に記載されている。
【0086】
本発明に係る感光層には上述した添加剤以外に、例えば、界面活性剤、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、被覆助剤等を用いてもよい。これらの添加剤及び上述したその他の添加剤は、RD Item17029(1978年6月p.9〜15)に記載されている化合物が好ましく用いられる。
【0087】
本発明において、感光層は単層でもよく、組成が同一あるいは異なる複数の層で構成してもよい。なお、感光層の膜厚は通常10〜30μmである。
【0088】
次に、本発明の熱現像感光材料の層構成として必須である支持体と保護層について詳述する。
【0089】
(支持体)
本発明の熱現像感光材料に用いられる支持体としては、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、トリアセチルセルロース等の各樹脂フィルム、さらには前記樹脂を2層以上積層してなる樹脂フィルム等を挙げることができる。
【0090】
本発明に係る支持体は、後述の画像記録方法において、潜像形成後、熱で現像して画像形成することから、フィルム状に延伸しヒートセットしたものが寸法安定性の点で好ましい。なお、本発明の効果を阻害しない範囲で酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等のフィラーを添加してもよい。なお、支持体の厚みは、10〜500μm程度、好ましくは25〜250μmである。
【0091】
(保護層)
本発明の熱現像感光材料に用いられる保護層としては、上述の感光層で記載したバインダー樹脂を必要に応じて選択して用いることができる。
【0092】
保護層に添加される添加剤としては、熱現像後の画像の傷つき防止や搬送性を確保する目的でフィラーを含有することが好ましく、フィラーを添加する場合の含有量は、層形成組成物中0.05〜30質量%含有することが好ましい。
【0093】
さらに、滑り性や帯電性を改良するため、保護層には潤滑剤、帯電防止剤を含有してもよい、このような潤滑剤としては、例えば、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、(変性)シリコーンオイル、(変性)シリコーン樹脂、フッ素樹脂、フッ化カーボン、ワックス等を挙げることができ、また、帯電防止剤としては、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、非イオン性界面活性剤、高分子帯電防止剤、金属酸化物または導電性ポリマー等、「11290の化学商品」化学工業日報社、p.875〜876等に記載の化合物、米国特許第5,244,773号カラム14〜20に記載された化合物等を挙げることができる。さらに、本発明の目的を阻害しない範囲で、感光層に添加される各種添加剤を保護層に添加してもよく、これら添加剤の添加量は、保護層形成成分の0.01〜20質量%程度が好ましく、さらに好ましくは、0.05〜10質量%である。
【0094】
本発明において、保護層は単層でもよく、組成が同一あるいは異なる複数層の層で構成してもよい。なお、保護層の膜厚は通常1.0〜5.0μmである。
【0095】
本発明では、上述の感光層、支持体及び保護層以外に、支持体と感光層との膜付を改良するための中間層を、また搬送性や帯電防止を目的としてバックコート層を設置してもよく、設置する場合の中間層の厚みは通常0.05〜2.0μmであり、バックコート層の厚みは通常0.1〜10μmである。
【0096】
〔熱現像感光材料の製造〕
本発明に係る感光層用塗布液、保護層用塗布液及び必要に応じて設置される中間層及びバックコート層用の各塗布液は、上述の成分を、それぞれ溶媒に溶解もしくは分散して調製することができる。
【0097】
上記調製で用いることのできる溶媒としては、有機合成化学協会編の「溶剤ポケットブック」等に示されている溶解度パラメーターの値が6.0〜15.0の範囲のものであればよく、本発明に係る各層を形成する塗布液に用いることのできる溶媒としては、ケトン類として、例えば、アセトン、イソフォロン、エチルアミルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。アルコール類として、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。グリコール類として、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等が挙げられる。エーテルアルコール類として、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。エーテル類として、例えば、エチルエーテル、ジオキサン、イソプロピルエーテル等が挙げられる。エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸イソプロピル等が挙げられる。炭化水素類としてn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。塩化物類として、例えば、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロベンゼン等が挙げられるが、本発明の効果を阻害しない範囲であればこれらに限定されない。
【0098】
また、これらの溶媒は、単独または数種類組合わせて使用できる。なお、熱現像感光材料中の上記溶媒の残留量は、塗布後の乾燥工程の温度条件等を適宜設定することにより調整でき、残存溶媒量は合計量で5〜1000mg/m2が好ましく、さらに好ましくは、10〜300mg/m2である。
【0099】
塗布液を調製する際に、分散が必要な場合には、例えば、二本ロールミル、三本ロールミル、ボールミル、ペブルミル、コボルミル、トロンミル、サンドミル、サンドグラインダー、Sqegvariアトライター、高速インペラー分散機、高速ストーンミル、高速度衝撃ミル、ディスパー、高速ミキサー、ホモジナイザ、超音波分散機、オープンニーダー、連続ニーダー等、従来から公知の分散機を適宜選択して用いることができる。
【0100】
上述のようにして調製した塗布液を塗布するには、例えば、エクストルージョン方式の押し出しコータ、リバースロールコータ、グラビアロールコータ、エアドクターコータ、ブレードコータ、エアナイフコータ、スクイズコータ、含浸コータ、バーコータ、トランスファロールコータ、キスコータ、キャストコータ、スプレーコータ等の、公知の各種コータステーションを適時選択して用いることができる。これらのコータの中で、形成層の厚みムラをなくすためには、エクストルージョン方式の押し出しコータやリバースロールコータ等のロールコータを用いることが好ましい。
【0101】
また、保護層を塗布する場合、感光層がダメージを受けないものであれば特に制限はないが、保護層形成塗布液に用いられる溶媒が、感光層を溶解する可能性がある場合には、上述したコータステーションの中で、エクストルージョン方式の押し出しコータ、グラビアロールコータ、バーコータ等を使用することができる。なお、これらの中でグラビアロールコータ、バーコータ等接触する塗布方法を用いる場合には、搬送方向に対して、グラビアロールやバーの回転方向は順転でもリバースでもよく、また順転の場合には等速でも、周速差を設けてもよい。
【0102】
さらに、各構成層を積層する際には、各層毎に塗布乾燥を繰り返してもよいが、ウェット−オン−ウェット方式で同時重層塗布して乾燥させてもよい。その場合、例えば、リバースロールコータ、グラビアロールコータ、エアドクターコータ、ブレードコータ、エアナイフコータ、スクイズコータ、含浸コータ、バーコータ、トランスファロールコータ、キスコータ、キャストコータ、スプレーコータ等とエクストルージョン方式の押し出しコータとの組み合わせにより塗布することができ、このようなウェット−オン−ウェット方式における重層塗布においては、下側の層が湿潤状態になったままで上側の層を塗布するので、上下層間の接着性が向上する。
【0103】
さらに、本発明では少なくとも感光層用塗布液を塗布した後、本発明の目的を有効に引き出すために、塗膜を乾燥させる温度を65〜100℃の範囲であることが好ましい。乾燥温度が65℃よりも低い場合は、反応が不十分であるため、経時による感度の変動が起こる場合が有り、また、100℃よりも高い場合には、製造直後の熱現像感光材料自身にカブリ(着色)を生じる場合があるため好ましくない。また、乾燥時間は乾燥時の風量により一概に規定できないが、通常2〜30分の範囲で乾燥させることが好ましい。
【0104】
なお、上述の乾燥温度は、塗布後直ぐに前述の温度範囲の乾燥温度で乾燥させてもよいし、乾燥の際に生じる塗布液のマランゴニーや、温風の乾燥風によって生じる表面近傍が初期に乾燥することにより生ずるムラ(ユズ肌)を防止する目的からは、初期の乾燥温度を65℃よりも低温で行い、その後前述の温度範囲の乾燥温度で乾燥させてもよい。
【0105】
以上、本発明の熱現像感光材料及びその好適な製造方法により、本発明の目的を達成することはできるが、さらに、画像記録方法を最適化することにより、干渉縞のない鮮明な画像を得ることができる。
【0106】
〔画像記録方法〕
次いで、本発明の熱現像感光材料に好適な画像記録方法について詳述する。
【0107】
本発明で用いることのできる画像記録方法としては、露光面とレーザ光のなす角度、レーザの波長、使用するレーザの数により三つの態様に大別され、それらを単独で行ってもよいし、二種以上の態様を組み合わせてもよく、このような画像形成方法にすることで干渉縞のない鮮明な画像を得ることができる。
【0108】
本発明において、画像記録方法として好適な態様としては、熱現像感光材料の露光面とレーザ光のなす角が実質的に垂直になることがないレーザ光を用いて、走査露光により画像を形成することが挙げられる。このように、入射角を垂直からずらすことにより、仮に層間界面での反射光が発生した場合においても、感光層に達する光路差が大きくなることから、レーザ光の光路での散乱や減衰が生じて干渉縞が発生しにくくなる。なお、ここで、「実質的に垂直になることがない」とはレーザ走査中に最も垂直に近い角度として好ましくは55〜88度、より好ましくは60〜86度、さらに好ましくは65〜84度であることをいう。
【0109】
また、本発明の画像記録方法におけるさらに好適な態様としては、露光波長が単一でない縦マルチレーザを用いて、走査露光により画像を形成することが挙げられる。このような、波長に幅を有する縦マルチレーザ光で走査すると縦単一モードの走査レーザ光に比べ、干渉縞の発生が低減される。なお、ここでいう縦マルチとは、露光波長が単一でないことを意味し、通常露光波長の分布が5nm以上、好ましくは10nm以上になるとよい。露光波長の分布の上限には特に制限はないが、通常60nm程度である。
【0110】
さらに、上述した画像記録方法において、走査露光に用いるレーザとしては、一般によく知られている、ルビーレーザ、YAGレーザ、ガラスレーザ等の固体レーザ;He−Neレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、CO2レーザ、COレーザ、He−Cdレーザ、N2レーザ、エキシマーレーザ等の気体レーザ;InGaPレーザ、AlGaAsレーザ、GaAsPレーザ、InGaAsレーザ、InAsPレーザ、CdSnP2レーザ、GaSbレーザ等の半導体レーザ;化学レーザ、色素レーザ等を用途に併せて適時選択して使用できるが、これらの中でもメンテナンスや光源の大きさの問題から、波長が600〜1200nmの半導体レーザを好ましく用いることが好ましい。
【0111】
なお、レーザ・イメージャやレーザ・イメージセッタで使用されるレーザにおいて、熱現像感光材料に走査されるときの熱現像感光材料露光面でのビームスポット径は、一般に短軸径として5〜75μm、長軸径として5〜100μmの範囲であり、レーザ光走査速度は熱現像感光材料固有のレーザ発振波長における感度とレーザパワーによって、熱現像感光材料毎に最適な値に設定することができる。
【0112】
本発明では、本発明の熱現像感光材料にこれらのレーザー光源を用いて露光した後、80〜250℃で現像し画像形成することが好ましい。
【0113】
〔スクアリリウム化合物の合成例〕
本発明に用いられるスクアリリウム染料の合成方法を、以下の合成例で説明する。合成例における全ての生成物の分子構造は、プロトン核磁気共鳴分析並びに質量分析で確認した。
【0114】
合成例1:例示化合物sq−1
下記合成ルートにより例示化合物sq−1を得た。
【0115】
【化9】

【0116】
(中間体Aの合成)
窒素雰囲気下、2,6−ジ−tert−ブチル−4H−ピラン−4−オン(J.Org.Chem.2000,65,2236−2238に記載の方法で合成した)4.5gをテトラヒドロフラン25mlに溶解した。この溶液を水冷し、臭化エチルマグネシウム(0.96mol/L テトラヒドロフラン溶液)を滴下した。滴下終了後、室温で1時間撹拌を行った。反応液を氷水冷却し、水250mlを徐々に加え、次にテトラフルオロホウ酸(42質量%水溶液)50mlを加えた。室温で1時間撹拌した後、塩化メチレン60mlで3回抽出を行い、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧ろ過で硫酸マグネシウムを除いた後、減圧濃縮により溶媒を留去した。得られた結晶をジイソプロピルエーテル50mlで洗浄し、中間体Aを5.5g得た。
【0117】
(例示化合物sq−1の合成)
2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルチオピリリウム ヨード塩(特開2001−11070に記載の方法で合成した)2.5g、中間体A2.2g、3,4−ジヒドロキシ−3−シクロブテン−1,2−ジオン0.4g、n−プロパノール50mlを順次混合し、加熱還流を2時間行った。反応液を室温に戻し、1時間撹拌を行い、析出結晶をろ過した。ろ液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製することにより、例示化合物sq−1を0.5g得た。
【0118】
Mass:m/z 521(M+)
λmax:787.5nm(2−ブタノン中)
ε:230,000(2−ブタノン中)
1H−NMR(CDCl3):δ=1.32(s,9H,CH3)、1.33(s,9H,CH3)、1.35(s,9H,CH3)、1.39(s,9H,CH3)、2.33(s,3H,CH3)、6.03(s,1H,CH)、6.35(s,1H,CH)、6.85(s,1H,CH)、9.01〜9.08(br,2H,CH)
【実施例】
【0119】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、特に断りない限り、実施例中の「%」は「質量%」を表す。
【0120】
実施例1
〔下引済み写真用支持体の作製〕
市販の2軸延伸熱固定済みの厚さ175μm、光学濃度0.170に青色着色したPETフィルムの両面に8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、片方の面に下記下引塗布液a−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し、乾燥して下引層A−1とし、また反対側の面に下記下引塗布液b−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し、乾燥して下引層B−1とした。
【0121】
《下引塗布液a−1》
ブチルアクリレート(30%)/t−ブチルアクリレート(20%)/スチレン(25%)/2−ヒドロキシエチルアクリレート(25%)の共重合体ラテックス液(固形分30%) 270g
C−1 0.6g
ヘキサメチレン−1,6−ビス(エチレンウレア) 0.8g
水で1lに仕上げる
《下引塗布液b−1》
ブチルアクリレート(40%)/スチレン(20%)/グリシジルアクリレート(40%)/の共重合体ラテックス液(固形分30%) 270g
C−1 0.6g
ヘキサメチレン−1,6−ビス(エチレンウレア) 0.8g
水で1lに仕上げる
引き続き、下引層A−1及び下引層B−1の表面に、8W/m2・分のコロナ放電を施し、下引層A−1の上には、下記下引上層塗布液a−2を乾燥膜厚0.1μmになるように塗設し、乾燥して下引上層A−2とし、下引層B−1の上には下記下引上層塗布液b−2を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し、乾燥して帯電防止機能を持つ下引上層B−2とした。
【0122】
《下引上層塗布液a−2》
ゼラチン 0.4g/m2になる量
C−1 0.2g
C−2 0.2g
C−3 0.1g
シリカ粒子(平均粒径3μm) 0.1g
水で1lに仕上げる
《下引上層塗布液b−2》
C−4 60g
C−5を成分とするラテックス液(固形分20%) 80g
硫酸アンモニウム 0.5g
C−6 12g
ポリエチレングリコール(重量平均分子量600) 6g
水で1lに仕上げる
《バック面側塗布》
メチルエチルケトン(MEK)830gを攪拌しながら、この中にセルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社、CAB381−20)84.2g及びポリエステル樹脂(Bostic社、VitelPE2200B)4.5gを添加し、溶解した。次に、この溶液に、0.57ミリモルの赤外染料(表1に記載)を添加し、さらにメタノール43.2gに溶解したF系活性剤(旭硝子社、サーフロンKH40)4.5gと他のF系活性剤(大日本インク社、メガファッグF120K)2.3gを添加して、溶解するまで十分に攪拌を行った。最後に、メチルエチルケトンに1%の濃度でディゾルバ型ホモジナイザにて分散したシリカ(W.R.Grace社、シロイド64X6000)を75g添加、攪拌しバック面側用の塗布液を調製した。
【0123】
このように調製したバック面塗布液を、上記作製した下引済み写真用支持体の下引上層B−2上に乾燥膜厚が3.5μmになるように押し出しコーターにて塗布し、乾燥温度100℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて5分間かけて乾燥した。
【0124】
《感光性ハロゲン化銀乳剤Aの調製》
下記溶液を調製した。
【0125】
(A1)
フェニルカルバモイル化ゼラチン 88.3g
化合物(A)(10%メタノール水溶液) 10ml
臭化カリウム 0.32g
水で5429mlに仕上げる
(B1)
0.67mol/L硝酸銀水溶液 2635ml
(C1)
臭化カリウム 51.55g
沃化カリウム 1.47g
水で660mlに仕上げる
(D1)
臭化カリウム 154.9g
沃化カリウム 4.41g
塩化イリジウム(1%溶液) 0.93ml
水で1982mlに仕上げる
(E1)
0.4mol/L臭化カリウム水溶液 下記銀電位制御量
(F1)
水酸化カリウム 0.71g
水で20mlに仕上げる
(G1)
56%酢酸水溶液 18.0ml
(H1)
無水炭酸ナトリウム 1.72g
水で151mlに仕上げる
化合物(A):
HO(CH2CH2O)n−(CH(CH3)CH2O)17−(CH2CH2O)m
(m+n=5〜7)
特公昭58−58288号、同58−58289号に示される混合攪拌機を用いて溶液(A1)に溶液(B1)の1/4量及び溶液(C1)全量を温度45℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により4分45秒を要して添加し、核形成を行った。1分後、溶液(F1)の全量を添加した。この間pAgの調整を(E1)を用いて適宜行った。6分間経過後、溶液(B1)の3/4量及び溶液(D1)の全量を、温度45℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により14分15秒かけて添加した。5分間攪拌した後、40℃に降温し、溶液(G1)を全量添加し、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分2000mlを残して上澄み液を取り除き、水を10リットル加え、攪拌後、再度ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除き、さらに水を10リットル加え、攪拌後、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除いた後、溶液(H1)を加え、60℃に昇温し、さらに120分攪拌した。最後にpHが5.8になるように調整し、銀量1モル当たり1161gになるように水を添加し、感光性ハロゲン化銀乳剤Aを得た。
【0126】
この乳剤は平均粒子サイズ0.058μm、粒子サイズの変動係数12%、〔100〕面比率92%の単分散立方体沃臭化銀粒子であった。
【0127】
次に上記乳剤に硫黄増感剤S−5(0.5%メタノール溶液)240mlを加え、さらにこの増感剤の1/20モル相当の金増感剤Au−5を添加し、55℃にて120分間攪拌して化学増感を施した。
【0128】
《粉末有機銀塩Aの調製》
4720mlの純水にベヘン酸130.8g、アラキジン酸67.7g、ステアリン酸43.6g、パルミチン酸2.3gを80℃で溶解した。次に1.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し、濃硝酸6.9mlを加えた後、55℃に冷却して脂肪酸ナトリウム溶液を得た。上記の脂肪酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、45.3gの上記感光性ハロゲン化銀乳剤Aと純水450mlを添加し5分間攪拌した。
【0129】
次に1mol/Lの硝酸銀溶液702.6mlを2分間かけて添加し、10分間攪拌し有機銀塩分散物を得た。その後、得られた有機銀塩分散物を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて攪拌後、静置させて有機銀塩分散物を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。その後、排水の電導度が2μS/cmになるまで脱イオン水による水洗、排水を繰り返し、遠心脱水を実施した後、得られたケーキ状の有機銀塩を、気流式乾燥機フラッシュジェットドライヤー(株式会社セイシン企業製)を用いて、窒素ガス雰囲気及び乾燥機入り口熱風温度の運転条件により含水率が0.1%になるまで乾燥して、有機銀塩の乾燥済み粉末有機銀塩Aを得た。
【0130】
なお、有機銀塩組成物の含水率測定には赤外線水分計を用いた。
【0131】
《予備分散液Aの調製》
ポリビニルブチラール粉末(Monsanto社製、Butvar B−79)14.57gをメチルエチルケトン1457gに溶解し、VMA−GETZMANN社製ディゾルバDISPERMAT CA−40M型にて攪拌しながら粉末有機銀塩A500gを徐々に添加して十分に混合することにより予備分散液Aを調製した。
【0132】
《感光性乳剤分散液1の調製》
予備分散液Aをポンプを用いてミル内滞留時間が1.5分間となるように、0.5mm径のジルコニアビーズ(東レ製トレセラム)を内容積の80%充填したメディア型分散機DISPERMAT SL−C12EX型(VMA−GETZMANN社製)に供給し、ミル周速8m/sにて分散を行なうことにより感光性乳剤分散液1を調製した。
【0133】
《安定剤液の調製》
1.0gの安定剤1、0.31gの酢酸カリウムをメタノール4.97gに溶解し安定剤液を調製した。
【0134】
《赤外増感色素液Aの調製》
19.2mgの増感色素1、1.488gの2−クロロ−安息香酸、2.779gの安定剤2及び365mgの5−メチル−2−メルカプトベンズイミダゾールを31.3mlのMEKに暗所にて溶解し赤外増感色素液Aを調製した。
【0135】
《添加液aの調製》
現像剤としての還元剤1を27.98gと1.54gの4−メチルフタル酸、0.92ミリモルの前記赤外染料(表1に記載)をMEK110gに溶解し添加液aとした。
【0136】
《添加液bの調製》
3.56gのカブリ防止剤2、3.43gのフタラジンをMEK40.9gに溶解し添加液bとした。
【0137】
《感光層塗布液の調製》
不活性気体雰囲気下(窒素97%)において、前記感光性乳剤分散液1(50g)及びMEK15.11gを攪拌しながら21℃に保温し、カブリ防止剤1(10%メタノール溶液)390μlを加え、1時間攪拌した。さらに臭化カルシウム(10%メタノール溶液)494μlを添加して20分攪拌した。続いて、安定剤液167mlを添加して10分間攪拌した後、1.32gの前記赤外増感色素液を添加して1時間攪拌した。その後、温度を13℃まで降温してさらに30分攪拌した。13℃に保温したまま、ポリビニルブチラール(Monsanto社 Butvar B−79)13.31gを添加して30分攪拌した後、テトラクロロフタル酸(9.4%MEK溶液)1.084gを添加して15分間攪拌した。さらに攪拌を続けながら、12.43gの添加液a、1.6mlのDesmodurN3300(モーベイ社社製の脂肪族イソシアネート、10%MEK溶液)、4.27gの添加液bを順次添加し攪拌することにより感光層塗布液を得た。
【0138】
《マット剤分散液の調製》
セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社、7.5gのCAB171−15)をMEK42.5gに溶解し、その中に、炭酸カルシウム(Speciality Minerals社、Super−Pflex200)5gを添加し、ディゾルバ型ホモジナイザにて8000rpmで30min分散しマット剤分散液を調製した。
【0139】
《表面保護層塗布液の調製》
MEK(メチルエチルケトン)865gを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社、CAB171−15)を96g、ポリメチルメタクリル酸(ローム&ハース社、パラロイドA−21)を4.5g、ビニルスルホン化合物(VSC)を1.5g、ベンズトリアゾールを1.0g、F系活性剤(旭硝子社、サーフロンKH40)を1.0g添加し溶解した。次に上記マット剤分散液30gを添加して攪拌し、表面保護層塗布液を調製した。
【0140】
【化10】

【0141】
【化11】

【0142】
【化12】

【0143】
【化13】

【0144】
《感光層面側塗布》
前記感光層塗布液と表面保護層塗布液を押し出し(エクストルージョン)コーターを用いて同時に重層塗布することにより感光材料を作製した。塗布は、感光層は塗布銀量1.9g/m2、表面保護層は乾燥膜厚で2.5μmになるようにして行った。その後、乾燥温度75℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて、10分間乾燥を行い、熱現像感光材料を得た。
【0145】
《露光及び現像処理》
上記のように作製した熱現像感光材料の乳剤面側から、波長785nmの半導体レーザを露光源とした露光機によりレーザ走査による露光を与えた。この際に、感光材料の露光面と露光レーザ光の角度を75度として画像を形成した。
【0146】
その後、ヒートドラムを有する自動現像機を用いて熱現像感光材料の保護層とドラム表面が接触するようにして、123℃で15秒熱現像処理した。その際、露光及び現像は23℃、50%RHに調湿した部屋で行った。
【0147】
(鮮鋭性の評価)
内部が25℃、55%RHに保たれた密閉容器中に、作製した熱現像感光材料を3枚入れた後、25℃または50℃で各々7日間保持した。各試料中の2枚目について、胸部画像(胸部ファントムを用いて得られた画像試料)を出力し、この画像について目視で観察して、鮮鋭性を以下の基準で判断した。その結果を表1に示す。
【0148】
A:非常にシャープ
B:良好だがわずかにボケがある
C:ボケが目立ち、読影に若干支障があるもの
D:ボケにより読影困難
【0149】
【表1】

【0150】
表1より、本発明の赤外染料を用いた熱現像感光材料は、比較例に比べ、高温、高湿での保存において鮮鋭性が優れていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上の少なくとも一方の面に、感光性ハロゲン化銀を含有する感光層を有する熱現像感光材料において、下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
【化1】

(式中、R1及びR2は各々独立に、水素原子または置換基を表す。但し、R1及びR2が共に水素原子であることはなく、R1及びR2が共に置換基である場合、R1及びR2は異なった置換基を表す。Q1及びQ2は各々独立に6員の複素環を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の熱現像感光材料。
【化2】

(式中、R3は置換基を表す。Q1及びQ2は前記一般式(1)のQ1及びQ2と同義である。)
【請求項3】
前記一般式(2)で表される化合物が、下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする請求項2に記載の熱現像感光材料。
【化3】

(式中、R3は前記一般式(2)のR3と同義である。X1及びX2は、各々独立にO、S、Se、TeまたはN−Rを表し、Rはアルキル基またはアリール基を表す。R4〜R7は、各々独立に水素原子または置換基を表す。)
【請求項4】
前記一般式(3)において、X1及びX2が異なることを特徴とする請求項3に記載の熱現像感光材料。
【請求項5】
前記一般式(3)で表される化合物が、下記一般式(4)で表される化合物であることを特徴とする請求項3または4に記載の熱現像感光材料。
【化4】

(式中、R3は前記一般式(2)のR3と同義である。R4〜R7は、前記一般式(3)のR4〜R7と同義である。)
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱現像感光材料にレーザー光源を用いて露光した後、80〜250℃で現像することを特徴とする画像形成方法。
【請求項7】
前記一般式(4)で表されることを特徴とするスクアリリウム化合物。

【公開番号】特開2006−106469(P2006−106469A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−294664(P2004−294664)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】