説明

スクラッチカード部材、スクラッチカード、スクラッチカード部材の製造方法およびスクラッチカードの製造方法

【課題】 記録層の上層に形成された剥離層に対する剥離性隠蔽層の転写品質が良好で、かつ、転写された剥離性隠蔽層が爪等で削ったときに削れる度合いを安定させることができ、感熱紙の種類を変更しても良好な剥離性能を有するスクラッチカードを提供する。
【解決手段】 剥離性隠蔽層12の剥離性を高めるための剥離層11を、感熱記録媒体14の表面の凹凸を緩和する下地層としての目止め層11aと、この目止め層11aの上層に形成され剥離性隠蔽層12の剥離強度を制御する剥離制御層11bとの2層で構成する。これにより、記録層15の上層に形成された剥離層11に対する剥離性隠蔽層12の転写品質を良好にすることができ、かつ、転写された剥離性隠蔽層12が爪等で削ったときに削れる度合いを安定させることができるので、剥離性隠蔽層12の剥離層11に対する転写品質および剥離性隠蔽層12のスクラッチ性能を安定して良好な状態に保つことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクラッチカード部材、スクラッチカード、スクラッチカード部材の製造方法およびスクラッチカードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙、フィルム等の基材上に文字又は図柄等の隠蔽情報を記録し、その上層に爪やコイン等の機械的な手段により簡単に剥離可能な隠蔽層が設けられたスクラッチカードは、スピードくじやゲーム等に使用されている。
【0003】
このようなスクラッチカードを実現する方法としては、オフセット印刷により形成する方法や、隠蔽情報をオフセット印刷や凸版印刷により形成し、剥離性隠蔽層をスクリーン印刷法やグラビア印刷法により形成する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、上記したような印刷法によれば、比較的大型な装置を用いて製造するため、オンデマンドに情報を入れたりすることが困難であること、スクラッチカードの消費量が期待するより少なかったりすると設備償却費等の比率が増大し、コストが比較的に高価になる等の問題がある。
【0005】
そこで、このような問題を解決すべく、基材上に電子供与性化合物と電子受容性化合物を含有する感熱記録層、電子線又は紫外線硬化型の樹脂からなる剥離層を設け、剥離性隠蔽層を熱転写記録方式により形成する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。この方法によれば、隠蔽したい隠蔽情報をサーマルヘッド等により記録し、さらにその上層に形成された剥離層上に熱転写方式により剥離性隠蔽層を積層して隠蔽情報を隠蔽することにより、オンデマンドで必要な部分に隠蔽情報及び剥離性隠蔽層を形成できる利点があり、経済的である。
【0006】
ここで、従来のスクラッチカード100の構成について図7及び図8を参照して説明する。図7及び図8に示すように、スクラッチカード100は、基材としての感熱紙101上にプレ印刷部102及びスクラッチ部103を有している。プレ印刷部102は、スクラッチカード100の説明等の情報をオフセット印刷や凸版印刷等により印刷するためのものである。スクラッチ部103には、感熱紙101上に記録された文字又は図柄等の隠蔽情報104を覆うように剥離性隠蔽層105が設けられている。このような剥離性隠蔽層105は、爪やコイン等の機械的手段により容易に剥離可能であり、スクラッチ部103の剥離性隠蔽層105を爪やコイン等の機械的手段により剥離することにより(剥離箇所106(図7参照))、下部に隠蔽されている隠蔽情報104(図7参照)が視認可能になる。また、図8に示すように、感熱紙101上には剥離層107が形成されている。この剥離層107は、剥離性隠蔽層105のスクラッチ性能(爪等で削った場合の削れ易さ)を高めるために設けられている。
【0007】
スクラッチカード100の基材となる感熱紙101は、感熱紙基材101aと、感熱紙UC層101bと、文字や図柄等の隠蔽情報104をサーマルヘッドにより印字される感熱発色層101cと、感熱紙保護層101dとで構成されている。なお、感熱紙保護層101dには、サーマルヘッドとの相性(スティッキング防止等の)を考慮し、顔料101eが含有されている。
【0008】
一方、スクラッチカード100の剥離性隠蔽層105の熱転写方式に使用されるインクリボンにおいては、その基材の一方の面には剥離性隠蔽層105を形成する熱転写インク(転写材)が設けられ、基材の他方の面(熱転写インクが設けられている面とは逆側の面)には、サーマルヘッドにより熱が印加されてもスティッキングが生じないようにバックコート層が設けられている。
【0009】
この熱転写方式により剥離性隠蔽層105をスクラッチカード100の隠蔽情報104が記録された記録層(感熱発色層101c及び感熱紙保護層101d)の上層に設けられている剥離層107の表面に転写する際に、剥離性隠蔽層105を形成する熱転写インク(転写材)が剥離層107に対してある程度密着しない場合には、インクリボンの基材から熱転写インクが剥離しなくなるという現象が生ずるという問題がある。そのために剥離性隠蔽層105を形成する熱転写インク(転写材)と剥離層107との密着性をある程度有し、また、転写された剥離性隠蔽層105は、スクラッチカード100における所定の剥離性能を有しなければならないという微妙な関係を満たすことが求められる。
【0010】
【特許文献1】特開平04-220399号公報
【特許文献2】特開2003−103936公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、感熱紙保護層101dには顔料101eが含有されているとともに、感熱紙基材101aの材料が木材の繊維等から形成されていることから、感熱紙101の表面は、通常は1.5μm〜7μm程度の凹凸がある。このように表面に凹凸がある感熱紙101の表面に対して、剥離層107をオフセット印刷や凸版印刷等で印刷して形成した場合には、感熱紙保護層101dの顔料101eを剥離性能に影響がでない程度に覆うことができない場合がある。このようにうまく顔料101eを覆うことができない場合には、転写された剥離性隠蔽層105が感熱紙101の感熱紙保護層101dの表面に剥離層107を介さずに直接接触することとなり、その接触部位の接着力が大きい場合は、転写された剥離性隠蔽層105の一部がはみ出した顔料101eと直接接着されるので剥離しにくくなる現象が生ずる。図7に示す剥離箇所106は、剥離性隠蔽層105が綺麗にはがれない様子を示したものである。
【0012】
このような感熱紙101の表面の凹凸は感熱紙101の種類によって異なり、また、感熱紙101の種類によって剥離性隠蔽層105との相性も異なることとなるので、スクラッチ性能は安定しない結果となる。
【0013】
本発明は、記録層の上層に形成された剥離層に対する剥離性隠蔽層の転写品質を良好にすることができ、かつ、転写された剥離性隠蔽層が爪等で削ったときに削れる度合いを安定させることができ、感熱紙の種類を変更しても良好な剥離性能を有するスクラッチカードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のスクラッチカード部材は、感熱記録媒体の表面または記録層に形成される隠蔽情報を機械的に剥離可能に隠蔽する剥離性隠蔽層の熱転写を許容し、前記剥離性隠蔽層の剥離性を高めるための剥離層が前記感熱記録媒体上に形成されているスクラッチカード部材において、前記剥離層を、前記感熱記録媒体表面の凹凸を緩和する下地層としての目止め層と、この目止め層の上層に形成され前記剥離性隠蔽層の剥離強度を制御する剥離制御層との2層で構成した。
【0015】
本発明のスクラッチカードは、感熱記録媒体の表面または記録層に形成されている隠蔽情報を機械的に剥離可能に隠蔽する剥離性隠蔽層と、前記感熱記録媒体上に形成され前記剥離性隠蔽層の剥離性を高めるための剥離層とを備えるスクラッチカードにおいて、前記剥離層を、前記感熱記録媒体表面の凹凸を緩和する下地層としての目止め層と、この目止め層の上層に形成され前記剥離性隠蔽層の剥離強度を制御する剥離制御層との2層で構成した。
【0016】
本発明のスクラッチカード部材の製造方法は、感熱記録媒体の表面または記録層に形成される隠蔽情報を機械的に剥離可能に隠蔽する剥離性隠蔽層の熱転写を許容するスクラッチカード部材の製造方法において、前記感熱記録媒体上に、当該感熱記録媒体表面の凹凸を緩和する下地層としての目止め層を印刷法により形成する工程と、前記目止め層の上層に、前記剥離性隠蔽層の剥離強度を制御する剥離制御層を印刷法により形成する工程と、を有している。
【0017】
本発明のスクラッチカードの製造方法は、感熱記録媒体の表面または記録層に形成される隠蔽情報を機械的に剥離可能に隠蔽する剥離性隠蔽層が前記感熱記録媒体上に形成されているスクラッチカードの製造方法において、前記感熱記録媒体の前記記録層の上層に、当該感熱記録媒体表面の凹凸を緩和する下地層としての目止め層を印刷法により形成する工程と、前記目止め層の上層に、前記剥離性隠蔽層の剥離強度を制御する剥離制御層を印刷法により形成する工程と、前記記録層に隠蔽情報を記録する工程と、前記剥離制御層の表面であって前記隠蔽情報に対応する位置に、熱転写方式によって前記剥離性隠蔽層を形成する工程と、を有している。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、剥離性隠蔽層の剥離層に対する転写品質および剥離性隠蔽層のスクラッチ性能を安定して良好な状態に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の一形態を図1ないし図6に基づいて説明する。
【0020】
ここで、図1はスクラッチカード1を概略的に示す平面図、図2はスクラッチカード1の剥離性隠蔽層12の一部を剥離した例を示す平面図である。図1及び図2に示すように、スクラッチカード1は、基材2上にプレ印刷部3及びスクラッチ部4を有している。
【0021】
プレ印刷部3は、スクラッチカード1の説明等の情報をオフセット印刷や凸版印刷等により印刷するためのもので、例えばUV硬化型印刷インキの乾燥皮膜により形成されている。
【0022】
スクラッチ部4には、基材2上に記録された文字又は図柄等の隠蔽情報10を覆うように剥離性隠蔽層12が設けられている。このような剥離性隠蔽層12は、爪やコイン等の機械的手段により容易に剥離可能であり、スクラッチ部4の剥離性隠蔽層12を爪やコイン等の機械的手段により剥離することにより(剥離箇所5(図2参照))、下部に隠蔽されている隠蔽情報10(図2参照)が視認可能になる。図2には、スクラッチ部4の剥離箇所5を剥離すると「はずれ」等の隠蔽情報10が視認できることを示している。
【0023】
ここで、スクラッチカード1の構成について詳述する。
【0024】
図3は、スクラッチカード1の構成を示す断面図である。図3に示すように、本実施の形態においては、スクラッチカード1の基材2として感熱紙14を用いている。感熱紙14は、感熱紙基材14aと、感熱紙UC層14bと、感熱発色層14cと、感熱紙保護層14dとで構成されている。場合によっては、感熱紙基材14aの裏面にカール防止のためや耐水性向上を目的とした裏面層が設けられる。
【0025】
感熱発色層14cは、文字や図柄等をサーマルヘッド33(図6参照)により印字することにより、隠蔽情報10を構成する。
【0026】
感熱紙保護層14dには、サーマルヘッド33との相性(スティッキング防止等の)を考慮し、顔料14eが含有されている。なお、顔料14eは、感熱紙保護層14dが設けられていない感熱紙14においては、感熱発色層14cに含有されている。
【0027】
このような感熱発色層14cと感熱紙保護層14dとにより、記録層15が形成されている。
【0028】
また、記録層15の表面に使用目的に応じてオフセット印刷等により文字や図柄等を印刷することにより、プレ印刷部3または隠蔽情報10を形成可能である。より詳細には、記録層15上に設けるプレ印刷部3は、オフセット印刷等で、例えば、UV硬化型アクリル樹脂等を含有する印刷インキが使用可能である。例えば、T&K TOKA社製のUV RNC、UV NVRシリーズ等の有色またはメジウム等の印刷インキが使用可能で、具体的には、UV RNCの有色インクを用いてオフセット印刷法により印刷することができる。
【0029】
また、図3に示すように、感熱紙14上には剥離層11が形成されている。この剥離層11は、下地層として目止め層11aと、剥離層11上に積層される剥離性隠蔽層12の剥離特性を制御するための剥離制御層11bとをオフセット印刷や凸版印刷等の印刷方法により積層することにより構成されている。このように剥離層11をオフセット印刷や凸版印刷等の印刷方法により目止め層11aと剥離制御層11bとの2層構造としたのは、感熱紙14の凹凸の度合いが変化した場合であっても、剥離層11(目止め層11aと剥離制御層11bの積層体)の厚さを制御することを可能とするためである。これによって使用する感熱紙14に対応して、剥離性を制御するための最適な厚さ積層体を形成することができるので、スクラッチ性能を安定させることができる。また、剥離制御層11bには、シリコーン系樹脂を少なくとも混合させる。このように剥離制御層11bにシリコーン系樹脂を混合させるのは、剥離性隠蔽層12の剥離強度をシリコーン系樹脂の量によりコントロールするためである。また、剥離制御層11bには、目止め層11aに使用する樹脂または目止め層11aと密着性がある樹脂を含有させる。
【0030】
なお、目止め層11a及び剥離制御層11bの印刷は、前述したプレ印刷部3と同一の印刷工程(オフセット印刷等)で形成することが可能であり、プレ印刷部3と同一の印刷工程(オフセット印刷等)で形成することにより、製造コストを低減することが可能である。
【0031】
剥離層11の目止め層11aは、プレ印刷部3と同様に、オフセット印刷等で、例えばUV硬化型アクリル樹脂等を含有するメジウム印刷インキが使用可能である。例えば、T&K TOKA社製のUV RNC、UV NVRシリーズ等のメジウム印刷インキが使用可能で、感熱紙14の凹凸に応じてこの塗布量を印刷する積層回数等により制御可能である。具体的には、UV RNCのメジウムインキを用い、オフセット印刷法により、乾燥重量1.5g/m〜2g/mを印刷する。
【0032】
剥離層11の剥離制御層11bは、目止め層11aに用いた印刷インキにUV硬化型のシリコーン樹脂を混合したインキを用いる。混合するシリコーン樹脂としては、例えばT&K TOKA社製のUVハクリOPニスのUP−200、UP−2、UP−3が使用可能で、要求されるスクラッチ性能により使用する材料および混合する量を調節する。塗布量は、乾燥重量で1.5g/m〜2g/mを印刷する。このインクの場合、目止め層11aの材料が混合されているので、目止め層11aとは相性がよく密着するが、UVハクリOPニス同士の重ね印刷は、はじき等が発生するので避けた方がよく、感熱紙の凹凸による剥離性隠蔽層12の剥離性能の変化防止は、目止め層11aにより行う。具体的には、UV RNCにUP−2を5%〜10%程度混合したインキをオフセット印刷法で乾燥重量1.8g/mを印刷する。
【0033】
ここで、目止め層11aの代わりに剥離制御層11bを積層することは、剥離制御層11b内に含まれるシリコーン系樹脂によりオフセット等で印刷するときに、はじきが発生する場合があるので好ましくない。また、剥離制御層11bのみでは、いろいろな種類の感熱紙14の凹凸には対応できず、スクラッチ性能が安定しない。
【0034】
また、色々な種類の感熱紙14表面の凹凸に対応するために、剥離制御層11bを一層の構造にし、剥離性隠蔽層12との剥離強度を剥離制御層11bのシリコーン系樹脂量を変化させた場合、熱転写方式による剥離性隠蔽層12の転写品質が悪化する。すなわち、熱転写方式による剥離性隠蔽層12の転写品質を維持し、感熱紙14の表面の凸凹に対応する手段として、剥離層11の構成を目止め層11aおよび剥離制御層11bからなる2層構造の積層体としたために剥離性隠蔽層12のスクラッチ特性の制御を可能にすることができたものである。
【0035】
なお、図4に示すように、剥離層11上に剥離性隠蔽層12が熱転写により形成されていない状態の中間工程におけるスクラッチカードは、スクラッチカード部材1aと呼ばれる。図4(a)は、プレ印刷部3が設けられていないスクラッチカード部材1a、図4(b)は、プレ印刷部3が設けられているスクラッチカード部材1aを示す。
【0036】
次に、剥離性隠蔽層12の熱転写方式による形成について詳述する。図5は剥離性隠蔽層12を形成する剥離性隠蔽熱転写リボン20を示す断面図である。図5に示すように、剥離性隠蔽熱転写リボン20は、PET(Polyethylene Terephthalate)フィルム21の一方の面にサーマルヘッド33とのマッチングやPETフィルム21の耐熱性向上のため、0.2μm程度のSi系樹脂が塗布されたバックコート層22が設けられている。また、バックコート層22とは反対側の面には、サーマルヘッド33から熱エネルギーを得て容易に転写できるように主成分がWAXからなる熱転写剥離層23、実際に隠蔽情報10を隠蔽するための例えばAl紛が含有している銀色の隠蔽熱転写インク層24、剥離層11にうまく転写するための熱転写接着層25が順次積層されている。
【0037】
PETフィルム21のプラスチックフィルム支持体は、熱転写方式の支持体として一般に使用されているものが使用できる。適したプラスチックフィルム支持体としては、厚さ2.5μm〜15μmを有するポリエチレンテレフタレートのようなポリエステルフィルム、ポリカーボネイトフィルム、またはポリアミドフィルム等が挙げられる。特に好ましくは、耐熱性がよくかつ極めて薄いフィルムを得ることが出来るポリエチレンテレフタレートである。バックコート層22は、例えば大日精化(株)製のダイアロマーSP-2105、SP-3333等のシリコーン系の耐熱性樹脂材を乾燥重量で0.01g/m〜1g/m、好ましくは0.1g/m〜0.5g/mを塗工したものである。
【0038】
熱転写剥離層23は、ワックスや熱可塑性樹脂を主成分とする熱可塑性物質からなり、サーマルヘッド33から熱エネルギーを得て容易に隠蔽熱転写インク層24が転写できるようにするものである。具体的には、ワックスとしては天然ワックスであるカルナバワックス等が使用できる。熱可塑性樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂やポリアミド樹脂等が使用できる。乾燥重量で0.1g/m〜2.0g/m、好ましくは0.3g/m〜1.5g/mを塗工したものである。
【0039】
隠蔽熱転写インク層24は、アルミニウム粉末や二酸化チタン等を主成分とする隠蔽性材料からなる熱転写インク層で、転写性を向上する目的でワックスや熱可塑性樹脂あるいはオイル等を使用することができる。乾燥重量で1.0g/m〜10g/m、好ましくは2〜5g/mを塗工したものである。
【0040】
熱転写接着層25は、感熱紙14の剥離層11へ隠蔽熱転写インク層24が転写しやすくする目的で形成されるものである。ワックスや熱可塑性樹脂を主成分とする熱可塑性物質からなる。具体的には、ワックスとしては天然ワックスであるカルナバワックス等が使用できる。熱可塑性樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂やポリアミド樹脂等が使用できる。乾燥重量で0.01g/m〜2.0g/m、好ましくは0.1g/m〜1.0g/mを塗工したものである。
【0041】
次に、スクラッチカード1を実際に発行するための方法に関して図6を用いて説明する。スクラッチカード1の発行には、スクラッチカード発行装置30として、東芝テック(株)製のCI―200プリンタを用いて行った。図6は、スクラッチカード1の発行に使用したスクラッチカード発行装置30の各部の構成を概略的に示す構成図である。図5に示すように、スクラッチカード発行装置30は、第1の印字ユニット31(直接発色方式)と第2の印字ユニット32(熱転写方式)とで構成されている。
【0042】
第1の印字ユニット31は、サーマルヘッド33とプラテンローラ34とを有しており、サーマルヘッド33とプラテンローラ34との間に供給用スタッカ(図示せず)から搬送ガイド37aを介してスクラッチカード部材1aを供給する。このような第1の印字ユニット31では、スクラッチカード部材1aの感熱紙14の感熱発色層14cに対するサーマルヘッド33からの熱エネルギーによりスクラッチカード部材1aの記録層15の感熱発色層14cに隠蔽情報10、および日付等の表示が必要な情報を一般の感熱紙同様に直接発色方式を印字する。隠蔽情報10等が印字されたスクラッチカード部材1aは、プラテンローラ34の回転作用により搬送ガイド37bを介して第2の印字ユニット32へと搬送される。
【0043】
第2の印字ユニット32は、サーマルヘッド33とプラテンローラ34とに加えて、前述した剥離性隠蔽熱転写リボン20の巻き出しロール35と巻き取りロール36とを有している。このような第2の印字ユニット32では、第1の印字ユニット31により隠蔽情報10等を印字後、搬送ガイド37bを介して供給されたスクラッチカード部材1aの隠蔽したい部分に対し、サーマルヘッド33からの熱エネルギーにより巻き出しロール35から供給された剥離性隠蔽熱転写リボン20を溶融させ、サーマルヘッド33とプラテンローラ34の間に狭持されたスクラッチカード部材1aに剥離性隠蔽熱転写リボン20の隠蔽熱転写インク層24を転写する。これにより、スクラッチカード部材1aへの剥離性隠蔽層12の転写が行われ、スクラッチカード1が完成する。
【0044】
このようにして得られたスクラッチカード1は、プラテンローラ34の回転作用により搬送ガイド37cを介して保管用スタッカ(図示せず)に運ばれスタックされる。
【0045】
具体的には、第1の印字ユニット31により、“はずれ”、“当たり”等の隠蔽情報10をエネルギー設定+7で印字し、第2の印字ユニット32により、剥離性隠蔽層12をエネルギー設定−7で転写してスクラッチカード1を得る。第1の印字ユニット31の印字エネルギーは、感熱紙14の感度により変える。
【0046】
なお、第2の印字ユニット32で剥離性隠蔽熱転写リボン20を転写する際の熱エネルギーにより、第2の印字ユニット32のサーマルヘッド33とプラテンローラ34の間に狭持されたスクラッチカード部材1a(隠蔽情報10等が印字されたスクラッチカード部材1a)が発色しないよう、スクラッチカード発行装置30の駆動条件、感熱紙14の感度、剥離性隠蔽熱転写リボン20の感度にする。
【0047】
このようにして得られたスクラッチカード1は、感熱紙14の表面の凹凸の影響が、目止め層11aにより緩和され、剥離制御層11bにより安定した剥離性隠蔽層12の転写品質と剥離性能の両立が可能になる。
【0048】
また、使用環境等の変化や基材厚等の理由により、使用できる市販の感熱紙14が異なる場合でも目止め層11aにより安定した品質を得ることができる。
【実施例】
【0049】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、勿論これらに限定されるものではない。
【0050】
[第1の実施例]
「スクラッチカード部材」
感熱紙 :120LB(リコー社製)
プレ印刷:UV RNC有色インキ(T&K TOKA(株))
塗布量は乾燥重量1.5g/m
剥離層 :目止め層:UV RNCメジウムインキ(T&K TOKA(株))
塗布量は乾燥重量1.8g/m
剥離制御層:RNCメジウム94を重量部、UV UP−2を6重量部
塗布量は、乾燥重量1.8g/m
「剥離性隠蔽熱転写リボン」
バックコート層 :Si系樹脂を乾燥重量0.2g/m
熱転写剥離層 :WAX、樹脂混合物を乾燥重量0.3g/m
隠蔽熱転写インク層:WAX、樹脂、アルミ粉末混合体を乾燥重量4.0g/m
熱転写接着層 :ポリアミド系樹脂を乾燥重量0.4g/m
「スクラッチカード発行条件(CI−200:東芝テック社製)」
第1の印字ユニット:印字エネルギー設定+10
第2の印字ユニット:印字エネルギー設定−7
以上のようにしてスクラッチカード1を得た。
【0051】
[第2の実施例]
「スクラッチカード部材」
感熱紙 :130LAB1(リコー社製)
「スクラッチカード発行条件(CI−200:東芝テック社製)」
第1の印字ユニット:印字エネルギー設定+7
第2の印字ユニット:印字エネルギー設定−7
その他は、第1の実施例と同様にしてスクラッチカード1を得た。
【0052】
[第3の実施例]
「スクラッチカード部材」
感熱紙 :F3(王子社製)
剥離層 :剥離制御層:RNCメジウム90を重量部、UV UP−2を10重量部
乾燥重量は1.8g/m2
その他は第1の実施例と同様にしてスクラッチカード1を得た。
【0053】
[第1の比較例]
「スクラッチカード部材」
剥離層 :目止め層:目止め層なし
その他は、第1の実施例と同様にしてスクラッチカード1を得た。
【0054】
[第2の比較例]
「スクラッチカード部材」
剥離層 :目止め層:目止め層なし
その他は、第3の実施例と同様にしてスクラッチカード1を得た。
【0055】
[第3の比較例]
「スクラッチカード部材」
剥離層 :剥離制御層:シリコーン樹脂なし
その他は第1の実施例と同様にしてスクラッチカード1を得た。
【0056】
[第4の比較例]
「スクラッチカード部材」
剥離層 :剥離制御層:シリコーン樹脂のみで、目止め層の樹脂混合せず
その他は第1の実施例と同様にしてスクラッチカード1を得た。
【0057】
[第5の比較例]
「スクラッチカード部材」
剥離層 :剥離層なし
その他は、第1の実施例と同様にしてスクラッチカード1を得た。
【0058】
[評価結果]
かくして得られたスクラッチカード1について以下の評価試験を行い、その結果を表1に示す。
【0059】
[1.表面粗さ]
表面粗さは、東洋精機社製のマイクロトポグラフで荷重10kgの条件で測定した。印字性能は、スクラッチカード発行装置30(CI−200:東芝テック社製)の第1の印字ユニット31で最適な印字エネルギーの設定において印字濃度が1.2以上であって、隠蔽情報10として問題があるかどうかを目視で判定した。
(評価基準)
○:良好
×:問題あり
【0060】
[2.転写品質]
転写品質は、スクラッチカード発行装置30(CI−200:東芝テック社製)で最適な印字エネルギーの設定で剥離性隠蔽熱転写リボン20を用いて、第1の印字ユニット31により印字されたスクラッチカード1上の隠蔽情報10を隠蔽するように転写された場合の隠蔽状態や端部、ボイド等の有無等の転写品質を目視で判断した。
(評価基準)
○:良好
×:ボイド等転写品質が悪い
【0061】
[3.スクラッチ性能]
スクラッチ性能の評価は、10円玉で剥離性隠蔽層12を引掻くことによる剥離の状態を目視で評価した。
(評価基準)
○:剥離状態が良好であり、剥離したとき隠蔽情報10も容易に認識できる状態
△:隠蔽情報10は容易に認識できるが、剥離性隠蔽層12を剥離しても部分的に残って取れない部分が存在している
×:剥離性隠蔽層12が容易に剥離できない状態
【0062】
【表1】

【0063】
表1に示すように、目止め層11aを印刷すると感熱紙14の表面粗さが改善、スクラッチ性能が第1の実施例と第1の比較例および第3の実施例と第2の比較例を比較することにより、改善されていることがわかる。
【0064】
これは、目止め層11aが感熱紙14の凹凸を改善し、剥離制御層11bが感熱紙14の凹凸の隙間に入り込むのを軽減するため、剥離性隠蔽層12がほぼ完全に剥離制御層11bと接触するため、スクラッチ性能が向上すると思われる。
【0065】
また、目止め層11aは、第1の実施例、第2の実施例、第3の実施例で示したように感熱紙14の種類が異なっていても効果を有していることがわかる。なお、第3の実施例で示したように、目止め層11aでは、完全に感熱紙14の凹凸がまだ3μm以上あったが、剥離制御層11bのシリコーン樹脂の量を多くすることによりスクラッチ性能を改善することができた。しかし、目止め層11aを2度印刷等により感熱紙14の凸凹を改善していれば、剥離制御層11bのシリコーン樹脂量を同じでもよい。
【0066】
第3の比較例で示したように、剥離制御層11bにシリコーン樹脂が添加されていない場合、転写品質等は良いが、スクラッチ性能が劣化する。これは、目止め層で使用する樹脂、例えばRNC単独では、剥離性隠蔽層12との密着性がよく、剥離が困難になるためで、シリコーン樹脂により剥離性能すなわちスクラッチ性能を向上させる働きがあることがわかる。
【0067】
第4の比較例で示したように、剥離制御層11bにシリコーン樹脂だけになると剥離性隠蔽層12が転写できない。これは、剥離制御層11bよりも剥離性隠蔽熱転写リボン20のPETフィルム21との相性が極めて良く、バック転写(一度は、インキ受像紙側に転写されようとするが、熱転写リボンの基材側に戻ってしまう現象)して転写品質が悪くなる。シリコーン樹脂の量が多くなると転写品質は低下していく。逆にシリコーン樹脂の量をコントロールすることにより、転写品質を維持できる範囲でスクラッチ性能を変化させることができる。
【0068】
第5の比較例で示したように剥離層11が全くないとスクラッチ性能が悪く、剥離性隠蔽層12を剥離することはできない。これは、剥離性隠蔽層12と感熱紙14との密着性が良いためで、仮に感熱紙14を選定し、さらに剥離性隠蔽熱転写リボン20の材料を変えて剥離性隠蔽層12が剥離できるようにしたとしても、用途等により感熱紙14を変えると、剥離性隠蔽熱転写リボン20を再度開発する必要がある。
【0069】
このように本実施の形態によれば、剥離層11として目止め層11aおよび剥離制御層11bを積層構造としているので、剥離性隠蔽層12の剥離層11に対する転写品質および剥離性隠蔽層12のスクラッチ性能を安定して良好な状態に保つことができる。また、転写品質が許す範囲で、シリコーン樹脂量をコントロールすることにより、スクラッチ性能をコントロールすることができる。
【0070】
なお、本実施の形態においては、感熱記録媒体として感熱紙14を用いた場合について例示したが、感熱紙14に限るものではなく、剥離層11を印刷時に発色等せず、剥離性隠蔽層12を転写時に発色等が生じない程度の感度であれば、これに限るものでない。
【0071】
また、本実施の形態においては、目止め層11aは、実施例で使用したものに限るものでなく、感熱紙14との相性や剥離制御層11bのシリコーン樹脂に問題なく、サーマルヘッド33に摩耗等に影響を及ぼさない材料では何でもよい。例えば、アクリルエポキシ樹脂、アクリルアルキッド樹脂等が使用できる。
【0072】
さらに、本実施の形態においては、剥離制御層11bは、剥離性隠蔽層12やサーマルヘッド33との適合性および目止め層11aと混合したときに問題が無ければよい。例えば、このような樹脂成分としては信越化学社製のUV硬化型シリコーン樹脂でも良い。また、フッ素樹脂微粒子やSi樹脂微粒子、WAX微粒子等剥離性能を有する微粒子を目止め層11aに混合して印刷しても同様な効果が得られる。
【0073】
さらにまた、本実施の形態においては、感熱発色層14cに隠蔽情報10を形成した例を示したが、剥離層11を形成する前にプレ印刷部3の一部を隠蔽情報10として扱い、剥離層11を形成した後、熱転写方式により剥離性隠蔽層12を形成してもよい。
【0074】
なお、本実施の形態においては、剥離層11を印刷する方法としてオフセット印刷の例を示したが、これに限るものでなく、凸版印刷、フレキソ印刷法により形成しても同一の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施の一形態のスクラッチカードを概略的に示す平面図である。
【図2】スクラッチカードの剥離性隠蔽層の一部を剥離した例を示す平面図である。
【図3】スクラッチカードの構成を示す断面図である。
【図4】スクラッチカード部材の構成を示す断面図であり、(a)はプレ印刷部が設けられていないスクラッチカード部材、(b)はプレ印刷部が設けられているスクラッチカード部材である。
【図5】剥離性隠蔽層を形成する剥離性隠蔽熱転写リボンを示す断面図である。
【図6】スクラッチカードの発行に使用したスクラッチカード発行装置の各部の構成を概略的に示す構成図である。
【図7】従来のスクラッチカードを概略的に示す平面図である。
【図8】スクラッチカードの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0076】
1 スクラッチカード
1a スクラッチカード部材
10 隠蔽情報
11 剥離層
11a 目止め層
11b 剥離制御層
12 剥離性隠蔽層
14 感熱記録媒体
15 記録層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感熱記録媒体の表面または記録層に形成される隠蔽情報を機械的に剥離可能に隠蔽する剥離性隠蔽層の熱転写を許容し、前記剥離性隠蔽層の剥離性を高めるための剥離層が前記感熱記録媒体上に形成されているスクラッチカード部材において、
前記剥離層を、前記感熱記録媒体表面の凹凸を緩和する下地層としての目止め層と、この目止め層の上層に形成され前記剥離性隠蔽層の剥離強度を制御する剥離制御層との2層で構成した、
ことを特徴とするスクラッチカード部材。
【請求項2】
前記剥離制御層は、少なくとも前記目止め層に使用するバインダー樹脂成分と前記剥離性隠蔽層の剥離強度を制御する樹脂成分との混合成分からなる、
ことを特徴とする請求項1記載のスクラッチカード部材。
【請求項3】
前記剥離制御層を形成する前記剥離性隠蔽層の剥離強度を制御する樹脂成分は、シリコーン樹脂である、
ことを特徴とする請求項1または2記載のスクラッチカード部材。
【請求項4】
感熱記録媒体の表面または記録層に形成されている隠蔽情報を機械的に剥離可能に隠蔽する剥離性隠蔽層と、前記感熱記録媒体上に形成され前記剥離性隠蔽層の剥離性を高めるための剥離層とを備えるスクラッチカードにおいて、
前記剥離層を、前記感熱記録媒体表面の凹凸を緩和する下地層としての目止め層と、この目止め層の上層に形成され前記剥離性隠蔽層の剥離強度を制御する剥離制御層との2層で構成した、
ことを特徴とするスクラッチカード。
【請求項5】
前記剥離制御層は、少なくとも前記目止め層に使用するバインダー樹脂成分と前記剥離性隠蔽層の剥離強度を制御する樹脂成分との混合成分からなる、
ことを特徴とする請求項4記載のスクラッチカード。
【請求項6】
前記剥離制御層を形成する前記剥離性隠蔽層の剥離強度を制御する樹脂成分は、シリコーン樹脂である、
ことを特徴とする請求項4または5記載のスクラッチカード。
【請求項7】
感熱記録媒体の表面または記録層に形成される隠蔽情報を機械的に剥離可能に隠蔽する剥離性隠蔽層の熱転写を許容するスクラッチカード部材の製造方法において、
前記感熱記録媒体上に、当該感熱記録媒体表面の凹凸を緩和する下地層としての目止め層を印刷法により形成する工程と、
前記目止め層の上層に、前記剥離性隠蔽層の剥離強度を制御する剥離制御層を印刷法により形成する工程と、
を有していることを特徴とするスクラッチカード部材の製造方法。
【請求項8】
感熱記録媒体の表面または記録層に形成される隠蔽情報を機械的に剥離可能に隠蔽する剥離性隠蔽層が前記感熱記録媒体上に形成されているスクラッチカードの製造方法において、
前記感熱記録媒体の前記記録層の上層に、当該感熱記録媒体表面の凹凸を緩和する下地層としての目止め層を印刷法により形成する工程と、
前記目止め層の上層に、前記剥離性隠蔽層の剥離強度を制御する剥離制御層を印刷法により形成する工程と、
前記記録層に隠蔽情報を記録する工程と、
前記剥離制御層の表面であって前記隠蔽情報に対応する位置に、熱転写方式によって前記剥離性隠蔽層を形成する工程と、
を有していることを特徴とするスクラッチカードの製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−15535(P2006−15535A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193789(P2004−193789)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【出願人】(000225267)内外カーボンインキ株式会社 (14)
【Fターム(参考)】