スクロール式流体機械
【課題】 スクロールのラップ部の歯先に溝が設けてあり、この溝に嵌入したシール部材の側面以外の面積を設計時に調整することにより、シール部材を相手方のスクロールの鏡板又は溝の壁面に押し付ける力を調整できるスクロール式流体機械を提供する。
【解決手段】 渦巻状のラップ部3B、11Bの歯先に設けた溝5、13と、この溝5、13に嵌入したシール部材6、14とからなるスクロール式流体機械において、このシール部材6、14の長手方向に、シール部材6、14から突出して溝内に沿って流動する空気を遮断することにより高圧側と低圧側の差圧室20A、20B、21A、21Bを画成するリップ部7、8が複数設けてある。
このリップ部7、8には、高圧側と低圧側の少なくとも一方の差圧室20A、20B、21A、21B内の圧力を直接受圧する受圧面7A、8Aを、シール部材6、14の長手方向に延びるように設けてある。
【解決手段】 渦巻状のラップ部3B、11Bの歯先に設けた溝5、13と、この溝5、13に嵌入したシール部材6、14とからなるスクロール式流体機械において、このシール部材6、14の長手方向に、シール部材6、14から突出して溝内に沿って流動する空気を遮断することにより高圧側と低圧側の差圧室20A、20B、21A、21Bを画成するリップ部7、8が複数設けてある。
このリップ部7、8には、高圧側と低圧側の少なくとも一方の差圧室20A、20B、21A、21B内の圧力を直接受圧する受圧面7A、8Aを、シール部材6、14の長手方向に延びるように設けてある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気圧縮機、真空ポンプ等に用いられるスクロール式流体機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スクロールのラップ部の歯先に沿って矩形状の溝を設け、この溝にシール部材を嵌入したスクロール式流体機械が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このシール部材は断面が矩形であり、底面にはシール部材の長手方向と直交する切込みを入れることにより前記溝の底面に接触する複数の底面リップ部が設けられている。また、前記シール部材の内側面にも同様の切込みを入れることにより前記溝の内壁面に接触する複数の側面リップ部が設けられている。
【0004】
この底面リップ部は、前記溝内に圧縮空気が侵入すると、この圧縮空気を受圧して前記溝の底面に向かって弾性変形する。また、前記側面リップ部は、前記溝の内壁面に向かって弾性変形する。
【0005】
この両リップ部は、前記溝内に侵入した圧縮空気が溝に沿って流動することを妨げるように作用する。
【0006】
そして、各リップ部間の圧縮空気の圧力を前記シール部材の底面が受圧することにより、シール部材は浮上して相手方のスクロールの鏡板にその上側面が押し付けられる。また、前記シール部材の内側面が受圧することにより、前記溝の外壁面にシール部材の外側面が押し付けられる。
【0007】
そして、各ラップにより画成される圧縮室が確実にシールされる。
【0008】
このような従来のスクロール式流体機械において、定常運転状態における前記シール部材の上側面を相手方のスクロールの鏡板に押し付ける力や前記シール部材の外側面を前記溝の外壁面に押し付ける力は、圧縮空気を受圧する前記シール部材の底面又は内側面の面積によって決まる。
よって、従来のスクロール式流体機械において、設計段階におけるシール部材の押し付け力の設定は、シール部材の底面又は内側面の面積を調整することにより行われる。
【0009】
【特許文献1】特開平8−93669号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、前記シール部材の底面又は内側面の面積を変化させると、そのシール部材の寸法や形状に応じた溝を設ける必要がある。
【0011】
即ち、前記シール部材の底面又は内側面の面積を広げると、前記溝の寸法を大きくする必要があるため前記スクロールを大きくしなければならず、また、前記シール部材の底面又は内側面の面積を狭くすると前記シール部材の強度が低下する。
【0012】
そこで、本発明は、前記シール部材の底面又は内側面等の面積以外の調整により、前記シール部材を相手方のスクロールの鏡板又は前記溝の壁面に押し付ける力を設計時に調整できるスクロール式流体機械を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決すべく、請求項1に記載のように、鏡板に渦巻状に形成されたラップ部を立設した一方のスクロールと、該一方のスクロールに対向して設けられ鏡板に渦巻状に形成されたラップ部を立設した他方のスクロールと、前記両スクロールのラップ部のうち少なくとも一方のラップ部の歯先に沿って設けられた溝と、該溝に嵌入され前記溝内に沿って流動する空気を遮断するように突出して高圧側と低圧側の差圧室を画成するリップ部を複数有するシール部材とを備えたスクロール式流体機械において、前記リップ部に、高圧側と低圧側の少なくとも一方の前記差圧室内の圧力を直接受圧する受圧面を、前記シール部材の長手方向に延びるように設けたことを特徴とするスクロール式流体機械を提供するものである。
【0014】
本発明は、請求項2に記載のように、請求項1に記載のスクロール式流体機械において、前記複数のリップ部の各受圧面の受圧面積を少なくとも2種類としたことを特徴とするスクロール式流体機械を提供するものである。
【0015】
本発明は、請求項3に記載のように、請求項1又は2に記載のスクロール式流体機械において、前記溝の断面形状が内壁面、外壁面及び底面からなる矩形であり、前記シール部材の断面形状が前記他方のスクロールの鏡板に接触する上側面と前記底面に対向する下側面と前記内壁面に対向する内側面と前記外壁面に対向する外側面とからなる矩形であり、前記リップ部が前記シール部材の下側面と内側面のうち少なくとも一方に設けられ前記溝の底面又は内壁面に向かって突出して形成されたことを特徴とするスクロール式流体機械を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るスクロール式流体機械は、請求項1によれば、前記リップ部に、高圧側と低圧側の少なくとも一方の前記差圧室内の圧力を直接受圧する受圧面を、前記シール部材の長手方向に延びるように設けた構成としたので、設計段階で前記リップ部の受圧面の受圧面積を任意に設定することができ、前記シール部材を他方のスクロールの鏡板や前記溝の側面等への押し付ける力を予め決める際の自由度が広がる。
【0017】
また、請求項2に記載の発明によると、複数のリップ部の各受圧面の受圧面積を少なくとも2種類としたので、前記シール部材の長手方向の位置に応じて前記受圧面の受圧面積を異ならせることができ、押し付け力を細かく設定することができる。
【0018】
また、請求項3に記載の発明によると、前記リップ部が前記シール部材の下側面と内側面のうち少なくとも一方に設けられ前記溝の底面又は内壁面に向かって突出して形成されているので、前記リップ部の受圧面で圧縮空気を受圧して前記シール部材の上側面を他方のスクロールの鏡板、或いは、前記シール部材の外側面を前記溝の外壁面への押し付け力を個別に調整できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下図示する好ましい実施の形態により、本発明に係るスクロール式流体機械の実施の形態を説明する。
【0020】
図1に示すように、本発明に係るスクロール式流体機械は、一端側が開口した有底筒状のケーシング1と、このケーシング1の一端側に取付けられた固定スクロール3と、ケーシング1の他端側に取付けられた電動モータ2と、この電動モータ2の回転軸2Aに回転可能に設けられた駆動軸9と、この駆動軸9の先端側に旋回可能に設けられ固定スクロール3のラップ部3Bとの間に複数の圧縮室17を画成するラップ部11Bを有する旋回スクロール11とから大略構成されている。
【0021】
固定スクロール3は、円板状の鏡板3Aと、この鏡板3Aの表面側に立設された渦巻状のラップ部3Bとから大略構成され、該ラップ3Bの歯先に沿って溝5を形成してあり、この溝5内には、渦巻状のシール部材6を嵌入してある。
【0022】
ここで、溝5はラップ部3Bの幅方向中間部に位置して形成してあり、ラップ部3Bの渦巻形状に沿ってその巻始め端から巻終り端まで延びており、溝5の断面形状は、図7に示すように、底面5A、内壁面5B及び外壁面5Cからなる矩形である。
【0023】
シール部材6は、溝5の底面5Aに対向する下側面6Aと、この下側面6Aと上下方向で対向し旋回スクロール11の鏡板11Aの表面に接触する上側面6Bと、溝5の内壁面5B、外壁面5Cに対面し渦巻状をなすシール部材6の径方向内側、外側に位置する内側面6C、外側面6Dとから構成されており、その断面形状は、矩形である。
【0024】
そして、このシール部材6は、内側面6C、外側面6Dが溝5内に僅かな隙間をもった状態で溝5内に挿入され、後述するように溝5の底面5A上から相手方となる旋回スクロール11の鏡板11Aの表面に向けて浮上可能となっている。
【0025】
なお、固定スクロール3の外周側には、最外周の圧縮室17に空気を吸込む筒状の吸込口15を取り付けてあり、固定スクロール3の中央部には、中心の圧縮室17内の圧縮された圧縮空気を外部に吐出する筒状の吐出口16を取り付けてある。
【0026】
駆動軸9は、基端側が電動モータ2の回転軸2Aに対して螺着され、ケーシング1の中央部位に位置して設けた主軸受10により軸受けされた状態で電動モータ2により回転駆動される。また、駆動軸9の先端側には略円筒状をなす偏心ブッシュ4が取付けられている。
【0027】
旋回スクロール11は、円板状の鏡板11Aと、この鏡板11Aの表面側に立設された渦巻状のラップ部11Bとから大略構成され、該ラップ部11Bの歯先に沿って溝13を形成してあり、この溝13内には、固定スクロール3と同様に渦巻状のシール部材14を嵌入してある。
【0028】
また、旋回スクロール11の鏡板11Aの背面側には、その中央部位に位置して円筒状のボス部11Cが突設されている。このボス部11Cの外周側には旋回軸受12が取り付けられ、この旋回軸受12は偏心ブッシュ4の旋回軸受穴4A内に挿入されている。
【0029】
さらに、旋回スクロール11の鏡板11Aの背面側とケーシング1の間には、その外周部位に位置して自転防止機構としてのボールカップリング30が取り付けられている。
【0030】
なお、溝13及びシール部材14の形状及び構成は、上記溝5及びシール部材6と略同様であるため、その説明を省略する。
【0031】
図1に示すように、固定スクロール3と旋回スクロール11とは、軸線P−Pに対して軸線O−Oを寸法δだけ偏心した状態で、旋回スクロール11のラップ部11Bが固定スクロール3のラップ部3Bに対し重ね合わせるように配設される。これにより、この旋回スクロール11を固定スクロール3に対して旋回させたときに、その旋回に応じて各ラップ部3B、11B間に容積が変化する複数の圧縮室17、17、…が画成されるようになっている。
【0032】
次に、シール部材6の細部について説明する。なお、シール部材14は、シール部材6と同様の構成であるため、その説明を省略する。
【0033】
まず、シール部材6の下側面6Aに設けた底面リップ部7について説明する。
【0034】
図3及び図4に示すように、シール部材6の下側面6Aには、運転時に溝5内に沿って溝5の底面5Aとシール部材6の下側面6Aとの間を通って流動する空気を遮断するように突出するリップ部として底面リップ部7を複数設けてある。
【0035】
この底面リップ部7は、図3に示すように、シール部材6の長手方向Aに沿って一定間隔の切込線6Kをシール部材6の下側面6Aから上側面6B側に向かって、それぞれ斜めに入れることにより、薄肉のリップ部として設けてある。
【0036】
この切込線6Kは、図4に示すように、直線状の切込始線6Eから図中一点鎖線で示す直線状の切込終線6Fまで切込まれている。
【0037】
また、シール部材6を直線的に伸長した状態で切込始線6Eと切込終線6Fは、シール部材6の内側面6C又は外側面6Dに対してそれぞれ傾斜してあり、互いに略平行関係にしてある。
【0038】
この切込線6Kを入れることで、底面リップ部7は、運転時に溝5内に侵入した圧縮空気の圧力により、溝5内の高圧側(図3の左)から低圧側(図3の右)に向かって弾性変形し、溝5内に沿って流動する空気を遮断するように突出して高圧側の差圧室20Aと低圧側の差圧室20Bを画成することができる。
【0039】
ここで、「空気を遮断する」とは、底面リップ部7により高圧側の差圧室20Aと低圧側の差圧室20Bとの差圧を生じる程度に空気の流れを遮断することをいい、多少漏れてもよい。
【0040】
底面リップ部7において、図3及び図4に示すように、溝5の底面5Aに向かって突出すると共にシール部材6の長手方向Aに延びるように形成される側面が、差圧室20A、20B内の圧縮空気の圧力を直接受圧する受圧面7Aとなる。
【0041】
そして、この受圧面7Aを、シール部材6を直線的に伸長した状態でシール部材6の内側面6C及び外側面6Dに対して角度α傾斜させて形成したので、溝5内に侵入した圧縮空気の圧力を直接受圧することにより受圧面7Aの点Pには差圧室20A、20B内の差圧が力Ftとして作用する。そして、この力Ftは、図中に矢印で示すように固定スクロール3の外周方向に作用する力、即ち、シール部材6の外側面6Dを溝5の外壁面5Cに接触させる力Faと、溝5の渦方向に作用する力Fbに分解することができ、この力Faによりシール部材6の外側面6Bを溝5の外壁面5Cに接触させることができる。
【0042】
よって、設計時に、この角度αを小さく設定すると、シール部材6の外側面6Dを溝5の外壁面5Cに押し付ける力Faが大きくなり、一方で、角度αを大きく設定すると、押し付ける力Faが小さくなる。
【0043】
ここで、溝5の渦方向の長さは、シール部材6の全長と略一致させてあるから、溝5の渦方向に作用する力Fbによりシール部材6が溝5内で渦方向に移動することは殆どない。
【0044】
次に、シール部材6の内側面6Cに設けた側面リップ部8について説明する。
【0045】
図5及び図6に示すように、シール部材6の内側面6Cには、運転時に溝5内に沿って溝5の内壁面5Bとシール部材6の内側面6Cとの間を通って流動する空気を遮断するように突出するリップ部として側面リップ部8を複数設けてある。
【0046】
この側面リップ部8は、図5に示すように、シール部材6の長手方向Bに沿って一定間隔の切込線6Lをシール部材6の内側面6Cから外側面6D側に向かって、それぞれ斜めに入れることにより、薄肉のリップ部として設けてある。
【0047】
この切込線6Lは、図6に示すように、直線状の切込始線6Gから図中一点鎖線で示す直線状の切込終線6Hまで切込まれている。
【0048】
また、シール部材6を直線的に伸長した状態で切込始線6Gと切込終線6Hは、シール部材6の下側面6A又は上側面6Bに対してそれぞれ傾斜してあり、互いに略平行関係にしてある。
【0049】
この切込線6Lを入れることで、側面リップ部8は、運転時に溝5内に侵入した圧縮空気の圧力により、溝5内の高圧側(図5の上)から低圧側(図5の下)に向かって弾性変形し、溝5内に沿って流動する空気を遮断するように突出して高圧側の差圧室21Aと低圧側の差圧室21Bを画成することができる。
【0050】
ここで、「空気を遮断する」とは、側面リップ部8により高圧側の差圧室21Aと低圧側の差圧室21Bとの差圧を生じる程度に空気の流れを遮断することをいい、多少漏れてもよい。
【0051】
側面リップ部8において、図5及び図6に示すように、溝5の内側面6Cに向かって突出すると共にシール部材6の長手方向Bに延びるように形成される側面が、差圧室21A、21B内の圧縮空気の圧力を直接受圧する受圧面8Aとなる。
【0052】
そして、この受圧面8Aを、シール部材6を直線的に伸長した状態でシール部材6の内側面6C及び外側面6Dに対して角度β傾斜させて形成したので、溝5内に侵入した圧縮空気の圧力を直接受圧することにより受圧面8Aの点Qには差圧室21A、21B内の差圧が力Fsとして作用する。そして、この力Fsは図中に矢印で示すように固定スクロール3の軸方向に作用する力、即ち、シール部材6の上側面6Bを相手方の旋回スクロール11の鏡板11Aの表面に接触させる力Fcと、溝5の渦方向に作用する力Fdに分解することができ、この力Fcによりシール部材6の上側面6Bを相手方の旋回スクロール11の鏡板11Aの表面に接触させることができる。
【0053】
よって、設計時に、この角度βを小さく設定すると、シール部材6の上側面6Bを相手方の旋回スクロール11の鏡板11Aの表面に押し付ける力Fcが大きくなり、一方で、角度βを大きく設定すると、シール部材6の上側面6Bを鏡板11Aの表面に押し付ける力Fcが小さくなる。
【0054】
ここで、溝5の渦方向の長さは、シール部材6の全長と略一致させてあるから、溝5の渦方向に作用する力Fdによりシール部材6が溝5内で渦方向に移動することは殆どない。
【0055】
また、シール部材6、14は、耐摩耗性や摺動性に優れた弾性樹脂材料、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)またはポリスルフォン(PSF)等を用いている。
【0056】
本実施の形態によるスクロール式空気圧縮機は上述の如き構成を有するもので、次にその動作について説明する。
【0057】
まず、ケーシング1の外部から電動モータ2によって駆動軸9を回転駆動すると、この回転は、この駆動軸9の先端に取り付けられた偏心ブッシュ4から旋回軸受12を介して旋回スクロール11に伝えられ、この旋回スクロール11は駆動軸9の軸線O−Oを中心にして寸法δの旋回半径をもった旋回運動を行う。
【0058】
そして、この旋回運動によって各ラップ部3B、11Bの間に画成される圧縮室17、17、…は中央側に向けて連続的に縮小し、吸込口15から吸込んだ空気を順次圧縮しつつ、この圧縮空気を吐出口16から外部のエアタンク(図示せず)等に向けて吐出する。
【0059】
ここで、圧縮運転が開始されると、ラップ部3B、11Bの溝5、13内には高圧側の圧縮室17から圧縮空気の一部が侵入し、例えば、固定スクロール3側のシール部材6は、このシール部材6の下側面6Aと側面リップ部8の受圧面8Aで圧縮空気の圧力を受圧することにより、溝5内から浮上し、シール部材6の上側面6Bを相手方となる旋回スクロール11の鏡板11Aの表面に接触させることができ、また、シール部材6の内側面6Cと底面リップ部7の受圧面7Aで圧縮空気の圧力を受圧することにより、シール部材6の外側面6Dを溝5の外壁面5Cに接触させることができる。
【0060】
よって、ラップ部3の先端部から固定スクロール3の径方向に向かって圧縮空気が漏れることを防止することができる。
【0061】
また、シール部材6に形成した各底面リップ部7と側面リップ部8は、溝5内に侵入した圧縮空気の圧力により、その各先端部が溝5の底面5Aと内壁面5Bに向かって弾性変形することによって、溝5の底面5A、内壁面5Bとシール部材6との間で渦方向に連通して形成される隙間を通って流動する空気を遮断し、この隙間を伝って高圧側の圧縮室17から低圧側の圧縮室17に向け圧縮空気が漏れるのを防止することができる。
【0062】
なお、前記実施の形態では、固定スクロール3と旋回スクロール11とを用いた場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、互いに対向した2つのスクロールが何れも回転する全系回転型(両回転型)や、旋回スクロールの鏡板の両面にラップ部を形成し、それぞれのラップ部側に固定スクロールを設けることにより、2つの圧縮室を有する両歯型を用いた構成としてもよい。
【0063】
また、前記実施の形態では、固定スクロール3のラップ部3Bと旋回スクロール11のラップ部11Bとにそれぞれ溝5、13を形成し、これらの溝5、13内にシール部材6、14を嵌入するものとしたが、本発明はこれに限らず、固定スクロール3のラップ部3Bと旋回スクロール11のラップ部11のうち、いずれか一方のラップ部に溝を形成し、この溝にシール部材を嵌入するように構成してもよい。
【0064】
また、前記実施の形態では、シール部材6の下側面6Aに底面リップ部7を一体形成すると共に、シール部材6の内側面6Cに側面リップ部8を一体形成するものとしたが、本発明はこれに限らず、シール部材6の下側面6A、内側面6C及び外側面6Dのうち、いずれか一方の側面にリップ部を形成するように構成してもよい。
【0065】
また、前記実施の形態では、溝5及びシール部材6の断面形状を矩形にしたが、本発明はこれに限らず、上記断面形状を三角形、台形又は半円形とするように構成してもよい。 例えば、溝5及びシール部材6の断面形状を三角形にした場合では、シール部材の2つの側面が、溝の高圧側の壁面と低圧側の壁面に対向するように嵌入され、溝の高圧側の壁面に対向するシール部材の側面にのみリップ部を設けるだけで、運転中に溝とシール部材の間を流動する空気を遮断できる。また、リップ部の受圧面で圧力を受圧することによりシール部材を相手方のスクロールの鏡板の表面及び溝の低圧側の壁面に押し付けることができる。
【0066】
また、前記実施の形態では、各底面リップ部7の受圧面7Aが空気圧力を受圧する受圧面積を略同一になるように形成し、同様に各側面リップ部8の受圧面8Aの受圧面積も略同一になるように形成したが、本発明はこれに限らず、図8に記載するようにシール部材60の上側面61又は下側面62に対するリップ部の受圧面63の傾斜角度γ1、γ2、γ3、γ4…をそれぞれ設定してもよい。
【0067】
例えば、シール部材60の高圧側から一定範囲までシール部材60の上側面61又は下側面62に対する各受圧面63の傾斜角度γを高圧側から低圧側に向かって徐々に小さくするように設定(γ1<γ2<γ3<γ4)することで、溝5内の高圧側では、受圧面63の傾斜角度γ1が低圧側の受圧面63の傾斜角度γ4と比べて大きいからリップ部の受圧面積は小さくなり、シール部材60の上側面61が相手側のスクロールの鏡板の表面に高い面圧で接触することを防止してスクロールを旋回動作させる際に機械損失を低減できる。一方で、低圧側の受圧面63の傾斜角度γ4が高圧側の受圧面63の傾斜角度γ1と比べて小さいからリップ部の受圧面積は大きくなり、鏡板の表面にシール部材60の上側面61を押し付ける力を大きくできる。
【0068】
また、前記実施の形態では、底面リップ部7及び側面リップ部8に高圧側の差圧室20A、21Aと低圧側の差圧室20B、21Bの空気圧力を直接受圧する受圧面をそれぞれ形成したが、本発明はこれに限らず、高圧側の差圧室と低圧側の差圧室のうち、いずれか一方の差圧室の空気圧力を受圧する受圧面を形成するように構成してもよい。例えば、図9に記載するように溝の内壁面に溝内に沿って流動する空気を遮断するように、型成形により図9(b)に示すように突出して形成した側面リップ部30に低圧側の差圧室31内の均一な圧力を直接受圧する受圧面34のみを形成することもでき、これによりシール部材35は、このシール部材35の下側面33が受圧する空気圧力と、受圧面34が受圧する空気圧力により溝5の底面5Aから浮上し、シール部材35の上側面37を相手方のスクロールの鏡板の表面に接触させることができる。
【0069】
また、前記実施の形態では、底面リップ部7は圧縮空気の高圧側から低圧側に向かって弾性変形し、溝5の底面5Aとシール部材6との間を気密にシールする一方、側面リップ部8は圧縮空気の高圧側から低圧側に向かって弾性変形し、溝5の内壁面5Bとシール部材6との間を気密にシールするように構成したが、本発明はこれに限らず、溝に嵌入され溝の底面又は側面に溝内に沿って流動する空気を遮断して高圧側と低圧側の差圧室を画成する底面リップ部又は側面リップ部を、図10(b)及び図11(b)に示すように型成形により突出して形成してもよい。例えば、図10及び図11に記載するように高圧側の差圧室42、52の空気圧力を直接受圧する受圧面44a、54aと低圧側の差圧室41、51の空気圧力を直接受圧する受圧面44b、54bをリップ部40、50に、シール部材45、55の長手方向Cに延びるように形成することもできる。
【0070】
さらに、前記実施の形態では、スクロール式流体機械をスクロール式空気圧縮機として用いる場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば真空ポンプ,冷媒圧縮機等に適用してもよいものである。
【0071】
なお、本発明で定義する「受圧面」は、シール部材の長手方向と直交する短手方向の中間部に位置してシール部材の長手方向に延びるように設けてあり、高圧側と低圧側の少なくとも一方の差圧室内の均一な圧力を直接受圧する面のことである。
【0072】
よって、例えば、図9に記載する実施の形態において、側面リップ部30に、シール部材35の短手方向Dに延びる側面36a、36b、36cが形成してあるが、これらは、シール部材の長手方向に延びる面ではないので、本発明で定義する「受圧面」には該当しない。
【0073】
また、側面リップ部30には、シール部材35の長手方向Cに延びる端面36d、36eが形成してあるが、これらは、シール部材35の短手方向Dの中間部に位置して設けた面ではなく、また、相手方のスクロールの鏡板と端面36dの間に生じる不均一な圧力、又は、溝の底面と端面36eの間に生じる不均一な圧力を受圧する面であるから、本発明で定義する差圧室31内の均一な圧力を直接受圧する「受圧面」には該当しない。
【0074】
なお、上記では「受圧面」の定義について、側面リップ部の場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、底面リップ部の場合でも同様である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係るスクロール式流体機械の実施の形態を示す概略部分縦断面図。
【図2】図1の矢示a−a方向からみた概略部分横断面図。
【図3】図1に記載のシール部材6の底面リップ部7の開いた状態を示す概略縦断面図。
【図4】図3に記載の底面リップ部7の閉じた状態を示す概略平面図。
【図5】図1に記載のシール部材6の側面リップ部8の開いた状態を示す概略縦断面図。
【図6】図5に記載の側面リップ部8の閉じた状態を示す概略平面図。
【図7】図5の矢示b−b方向からみた概略縦断面図。
【図8】本発明の他の実施の形態を示す概略平面図。
【図9】本発明の他の実施の形態を示す概略平面図。
【図10】本発明の他の実施の形態を示す概略平面図。
【図11】本発明の他の実施の形態を示す概略平面図。
【符号の説明】
【0076】
3 固定スクロール
3A 鏡板
3B ラップ
5 溝
6 シール部材
7 底面リップ部
7A 受圧面
8 側面リップ部
8A 受圧面
11 旋回スクロール
11A 鏡板
11B ラップ
13 溝
14 シール部材
17 圧縮室
20A 差圧室
20B 差圧室
21A 差圧室
21B 差圧室
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気圧縮機、真空ポンプ等に用いられるスクロール式流体機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スクロールのラップ部の歯先に沿って矩形状の溝を設け、この溝にシール部材を嵌入したスクロール式流体機械が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このシール部材は断面が矩形であり、底面にはシール部材の長手方向と直交する切込みを入れることにより前記溝の底面に接触する複数の底面リップ部が設けられている。また、前記シール部材の内側面にも同様の切込みを入れることにより前記溝の内壁面に接触する複数の側面リップ部が設けられている。
【0004】
この底面リップ部は、前記溝内に圧縮空気が侵入すると、この圧縮空気を受圧して前記溝の底面に向かって弾性変形する。また、前記側面リップ部は、前記溝の内壁面に向かって弾性変形する。
【0005】
この両リップ部は、前記溝内に侵入した圧縮空気が溝に沿って流動することを妨げるように作用する。
【0006】
そして、各リップ部間の圧縮空気の圧力を前記シール部材の底面が受圧することにより、シール部材は浮上して相手方のスクロールの鏡板にその上側面が押し付けられる。また、前記シール部材の内側面が受圧することにより、前記溝の外壁面にシール部材の外側面が押し付けられる。
【0007】
そして、各ラップにより画成される圧縮室が確実にシールされる。
【0008】
このような従来のスクロール式流体機械において、定常運転状態における前記シール部材の上側面を相手方のスクロールの鏡板に押し付ける力や前記シール部材の外側面を前記溝の外壁面に押し付ける力は、圧縮空気を受圧する前記シール部材の底面又は内側面の面積によって決まる。
よって、従来のスクロール式流体機械において、設計段階におけるシール部材の押し付け力の設定は、シール部材の底面又は内側面の面積を調整することにより行われる。
【0009】
【特許文献1】特開平8−93669号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、前記シール部材の底面又は内側面の面積を変化させると、そのシール部材の寸法や形状に応じた溝を設ける必要がある。
【0011】
即ち、前記シール部材の底面又は内側面の面積を広げると、前記溝の寸法を大きくする必要があるため前記スクロールを大きくしなければならず、また、前記シール部材の底面又は内側面の面積を狭くすると前記シール部材の強度が低下する。
【0012】
そこで、本発明は、前記シール部材の底面又は内側面等の面積以外の調整により、前記シール部材を相手方のスクロールの鏡板又は前記溝の壁面に押し付ける力を設計時に調整できるスクロール式流体機械を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決すべく、請求項1に記載のように、鏡板に渦巻状に形成されたラップ部を立設した一方のスクロールと、該一方のスクロールに対向して設けられ鏡板に渦巻状に形成されたラップ部を立設した他方のスクロールと、前記両スクロールのラップ部のうち少なくとも一方のラップ部の歯先に沿って設けられた溝と、該溝に嵌入され前記溝内に沿って流動する空気を遮断するように突出して高圧側と低圧側の差圧室を画成するリップ部を複数有するシール部材とを備えたスクロール式流体機械において、前記リップ部に、高圧側と低圧側の少なくとも一方の前記差圧室内の圧力を直接受圧する受圧面を、前記シール部材の長手方向に延びるように設けたことを特徴とするスクロール式流体機械を提供するものである。
【0014】
本発明は、請求項2に記載のように、請求項1に記載のスクロール式流体機械において、前記複数のリップ部の各受圧面の受圧面積を少なくとも2種類としたことを特徴とするスクロール式流体機械を提供するものである。
【0015】
本発明は、請求項3に記載のように、請求項1又は2に記載のスクロール式流体機械において、前記溝の断面形状が内壁面、外壁面及び底面からなる矩形であり、前記シール部材の断面形状が前記他方のスクロールの鏡板に接触する上側面と前記底面に対向する下側面と前記内壁面に対向する内側面と前記外壁面に対向する外側面とからなる矩形であり、前記リップ部が前記シール部材の下側面と内側面のうち少なくとも一方に設けられ前記溝の底面又は内壁面に向かって突出して形成されたことを特徴とするスクロール式流体機械を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るスクロール式流体機械は、請求項1によれば、前記リップ部に、高圧側と低圧側の少なくとも一方の前記差圧室内の圧力を直接受圧する受圧面を、前記シール部材の長手方向に延びるように設けた構成としたので、設計段階で前記リップ部の受圧面の受圧面積を任意に設定することができ、前記シール部材を他方のスクロールの鏡板や前記溝の側面等への押し付ける力を予め決める際の自由度が広がる。
【0017】
また、請求項2に記載の発明によると、複数のリップ部の各受圧面の受圧面積を少なくとも2種類としたので、前記シール部材の長手方向の位置に応じて前記受圧面の受圧面積を異ならせることができ、押し付け力を細かく設定することができる。
【0018】
また、請求項3に記載の発明によると、前記リップ部が前記シール部材の下側面と内側面のうち少なくとも一方に設けられ前記溝の底面又は内壁面に向かって突出して形成されているので、前記リップ部の受圧面で圧縮空気を受圧して前記シール部材の上側面を他方のスクロールの鏡板、或いは、前記シール部材の外側面を前記溝の外壁面への押し付け力を個別に調整できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下図示する好ましい実施の形態により、本発明に係るスクロール式流体機械の実施の形態を説明する。
【0020】
図1に示すように、本発明に係るスクロール式流体機械は、一端側が開口した有底筒状のケーシング1と、このケーシング1の一端側に取付けられた固定スクロール3と、ケーシング1の他端側に取付けられた電動モータ2と、この電動モータ2の回転軸2Aに回転可能に設けられた駆動軸9と、この駆動軸9の先端側に旋回可能に設けられ固定スクロール3のラップ部3Bとの間に複数の圧縮室17を画成するラップ部11Bを有する旋回スクロール11とから大略構成されている。
【0021】
固定スクロール3は、円板状の鏡板3Aと、この鏡板3Aの表面側に立設された渦巻状のラップ部3Bとから大略構成され、該ラップ3Bの歯先に沿って溝5を形成してあり、この溝5内には、渦巻状のシール部材6を嵌入してある。
【0022】
ここで、溝5はラップ部3Bの幅方向中間部に位置して形成してあり、ラップ部3Bの渦巻形状に沿ってその巻始め端から巻終り端まで延びており、溝5の断面形状は、図7に示すように、底面5A、内壁面5B及び外壁面5Cからなる矩形である。
【0023】
シール部材6は、溝5の底面5Aに対向する下側面6Aと、この下側面6Aと上下方向で対向し旋回スクロール11の鏡板11Aの表面に接触する上側面6Bと、溝5の内壁面5B、外壁面5Cに対面し渦巻状をなすシール部材6の径方向内側、外側に位置する内側面6C、外側面6Dとから構成されており、その断面形状は、矩形である。
【0024】
そして、このシール部材6は、内側面6C、外側面6Dが溝5内に僅かな隙間をもった状態で溝5内に挿入され、後述するように溝5の底面5A上から相手方となる旋回スクロール11の鏡板11Aの表面に向けて浮上可能となっている。
【0025】
なお、固定スクロール3の外周側には、最外周の圧縮室17に空気を吸込む筒状の吸込口15を取り付けてあり、固定スクロール3の中央部には、中心の圧縮室17内の圧縮された圧縮空気を外部に吐出する筒状の吐出口16を取り付けてある。
【0026】
駆動軸9は、基端側が電動モータ2の回転軸2Aに対して螺着され、ケーシング1の中央部位に位置して設けた主軸受10により軸受けされた状態で電動モータ2により回転駆動される。また、駆動軸9の先端側には略円筒状をなす偏心ブッシュ4が取付けられている。
【0027】
旋回スクロール11は、円板状の鏡板11Aと、この鏡板11Aの表面側に立設された渦巻状のラップ部11Bとから大略構成され、該ラップ部11Bの歯先に沿って溝13を形成してあり、この溝13内には、固定スクロール3と同様に渦巻状のシール部材14を嵌入してある。
【0028】
また、旋回スクロール11の鏡板11Aの背面側には、その中央部位に位置して円筒状のボス部11Cが突設されている。このボス部11Cの外周側には旋回軸受12が取り付けられ、この旋回軸受12は偏心ブッシュ4の旋回軸受穴4A内に挿入されている。
【0029】
さらに、旋回スクロール11の鏡板11Aの背面側とケーシング1の間には、その外周部位に位置して自転防止機構としてのボールカップリング30が取り付けられている。
【0030】
なお、溝13及びシール部材14の形状及び構成は、上記溝5及びシール部材6と略同様であるため、その説明を省略する。
【0031】
図1に示すように、固定スクロール3と旋回スクロール11とは、軸線P−Pに対して軸線O−Oを寸法δだけ偏心した状態で、旋回スクロール11のラップ部11Bが固定スクロール3のラップ部3Bに対し重ね合わせるように配設される。これにより、この旋回スクロール11を固定スクロール3に対して旋回させたときに、その旋回に応じて各ラップ部3B、11B間に容積が変化する複数の圧縮室17、17、…が画成されるようになっている。
【0032】
次に、シール部材6の細部について説明する。なお、シール部材14は、シール部材6と同様の構成であるため、その説明を省略する。
【0033】
まず、シール部材6の下側面6Aに設けた底面リップ部7について説明する。
【0034】
図3及び図4に示すように、シール部材6の下側面6Aには、運転時に溝5内に沿って溝5の底面5Aとシール部材6の下側面6Aとの間を通って流動する空気を遮断するように突出するリップ部として底面リップ部7を複数設けてある。
【0035】
この底面リップ部7は、図3に示すように、シール部材6の長手方向Aに沿って一定間隔の切込線6Kをシール部材6の下側面6Aから上側面6B側に向かって、それぞれ斜めに入れることにより、薄肉のリップ部として設けてある。
【0036】
この切込線6Kは、図4に示すように、直線状の切込始線6Eから図中一点鎖線で示す直線状の切込終線6Fまで切込まれている。
【0037】
また、シール部材6を直線的に伸長した状態で切込始線6Eと切込終線6Fは、シール部材6の内側面6C又は外側面6Dに対してそれぞれ傾斜してあり、互いに略平行関係にしてある。
【0038】
この切込線6Kを入れることで、底面リップ部7は、運転時に溝5内に侵入した圧縮空気の圧力により、溝5内の高圧側(図3の左)から低圧側(図3の右)に向かって弾性変形し、溝5内に沿って流動する空気を遮断するように突出して高圧側の差圧室20Aと低圧側の差圧室20Bを画成することができる。
【0039】
ここで、「空気を遮断する」とは、底面リップ部7により高圧側の差圧室20Aと低圧側の差圧室20Bとの差圧を生じる程度に空気の流れを遮断することをいい、多少漏れてもよい。
【0040】
底面リップ部7において、図3及び図4に示すように、溝5の底面5Aに向かって突出すると共にシール部材6の長手方向Aに延びるように形成される側面が、差圧室20A、20B内の圧縮空気の圧力を直接受圧する受圧面7Aとなる。
【0041】
そして、この受圧面7Aを、シール部材6を直線的に伸長した状態でシール部材6の内側面6C及び外側面6Dに対して角度α傾斜させて形成したので、溝5内に侵入した圧縮空気の圧力を直接受圧することにより受圧面7Aの点Pには差圧室20A、20B内の差圧が力Ftとして作用する。そして、この力Ftは、図中に矢印で示すように固定スクロール3の外周方向に作用する力、即ち、シール部材6の外側面6Dを溝5の外壁面5Cに接触させる力Faと、溝5の渦方向に作用する力Fbに分解することができ、この力Faによりシール部材6の外側面6Bを溝5の外壁面5Cに接触させることができる。
【0042】
よって、設計時に、この角度αを小さく設定すると、シール部材6の外側面6Dを溝5の外壁面5Cに押し付ける力Faが大きくなり、一方で、角度αを大きく設定すると、押し付ける力Faが小さくなる。
【0043】
ここで、溝5の渦方向の長さは、シール部材6の全長と略一致させてあるから、溝5の渦方向に作用する力Fbによりシール部材6が溝5内で渦方向に移動することは殆どない。
【0044】
次に、シール部材6の内側面6Cに設けた側面リップ部8について説明する。
【0045】
図5及び図6に示すように、シール部材6の内側面6Cには、運転時に溝5内に沿って溝5の内壁面5Bとシール部材6の内側面6Cとの間を通って流動する空気を遮断するように突出するリップ部として側面リップ部8を複数設けてある。
【0046】
この側面リップ部8は、図5に示すように、シール部材6の長手方向Bに沿って一定間隔の切込線6Lをシール部材6の内側面6Cから外側面6D側に向かって、それぞれ斜めに入れることにより、薄肉のリップ部として設けてある。
【0047】
この切込線6Lは、図6に示すように、直線状の切込始線6Gから図中一点鎖線で示す直線状の切込終線6Hまで切込まれている。
【0048】
また、シール部材6を直線的に伸長した状態で切込始線6Gと切込終線6Hは、シール部材6の下側面6A又は上側面6Bに対してそれぞれ傾斜してあり、互いに略平行関係にしてある。
【0049】
この切込線6Lを入れることで、側面リップ部8は、運転時に溝5内に侵入した圧縮空気の圧力により、溝5内の高圧側(図5の上)から低圧側(図5の下)に向かって弾性変形し、溝5内に沿って流動する空気を遮断するように突出して高圧側の差圧室21Aと低圧側の差圧室21Bを画成することができる。
【0050】
ここで、「空気を遮断する」とは、側面リップ部8により高圧側の差圧室21Aと低圧側の差圧室21Bとの差圧を生じる程度に空気の流れを遮断することをいい、多少漏れてもよい。
【0051】
側面リップ部8において、図5及び図6に示すように、溝5の内側面6Cに向かって突出すると共にシール部材6の長手方向Bに延びるように形成される側面が、差圧室21A、21B内の圧縮空気の圧力を直接受圧する受圧面8Aとなる。
【0052】
そして、この受圧面8Aを、シール部材6を直線的に伸長した状態でシール部材6の内側面6C及び外側面6Dに対して角度β傾斜させて形成したので、溝5内に侵入した圧縮空気の圧力を直接受圧することにより受圧面8Aの点Qには差圧室21A、21B内の差圧が力Fsとして作用する。そして、この力Fsは図中に矢印で示すように固定スクロール3の軸方向に作用する力、即ち、シール部材6の上側面6Bを相手方の旋回スクロール11の鏡板11Aの表面に接触させる力Fcと、溝5の渦方向に作用する力Fdに分解することができ、この力Fcによりシール部材6の上側面6Bを相手方の旋回スクロール11の鏡板11Aの表面に接触させることができる。
【0053】
よって、設計時に、この角度βを小さく設定すると、シール部材6の上側面6Bを相手方の旋回スクロール11の鏡板11Aの表面に押し付ける力Fcが大きくなり、一方で、角度βを大きく設定すると、シール部材6の上側面6Bを鏡板11Aの表面に押し付ける力Fcが小さくなる。
【0054】
ここで、溝5の渦方向の長さは、シール部材6の全長と略一致させてあるから、溝5の渦方向に作用する力Fdによりシール部材6が溝5内で渦方向に移動することは殆どない。
【0055】
また、シール部材6、14は、耐摩耗性や摺動性に優れた弾性樹脂材料、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)またはポリスルフォン(PSF)等を用いている。
【0056】
本実施の形態によるスクロール式空気圧縮機は上述の如き構成を有するもので、次にその動作について説明する。
【0057】
まず、ケーシング1の外部から電動モータ2によって駆動軸9を回転駆動すると、この回転は、この駆動軸9の先端に取り付けられた偏心ブッシュ4から旋回軸受12を介して旋回スクロール11に伝えられ、この旋回スクロール11は駆動軸9の軸線O−Oを中心にして寸法δの旋回半径をもった旋回運動を行う。
【0058】
そして、この旋回運動によって各ラップ部3B、11Bの間に画成される圧縮室17、17、…は中央側に向けて連続的に縮小し、吸込口15から吸込んだ空気を順次圧縮しつつ、この圧縮空気を吐出口16から外部のエアタンク(図示せず)等に向けて吐出する。
【0059】
ここで、圧縮運転が開始されると、ラップ部3B、11Bの溝5、13内には高圧側の圧縮室17から圧縮空気の一部が侵入し、例えば、固定スクロール3側のシール部材6は、このシール部材6の下側面6Aと側面リップ部8の受圧面8Aで圧縮空気の圧力を受圧することにより、溝5内から浮上し、シール部材6の上側面6Bを相手方となる旋回スクロール11の鏡板11Aの表面に接触させることができ、また、シール部材6の内側面6Cと底面リップ部7の受圧面7Aで圧縮空気の圧力を受圧することにより、シール部材6の外側面6Dを溝5の外壁面5Cに接触させることができる。
【0060】
よって、ラップ部3の先端部から固定スクロール3の径方向に向かって圧縮空気が漏れることを防止することができる。
【0061】
また、シール部材6に形成した各底面リップ部7と側面リップ部8は、溝5内に侵入した圧縮空気の圧力により、その各先端部が溝5の底面5Aと内壁面5Bに向かって弾性変形することによって、溝5の底面5A、内壁面5Bとシール部材6との間で渦方向に連通して形成される隙間を通って流動する空気を遮断し、この隙間を伝って高圧側の圧縮室17から低圧側の圧縮室17に向け圧縮空気が漏れるのを防止することができる。
【0062】
なお、前記実施の形態では、固定スクロール3と旋回スクロール11とを用いた場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、互いに対向した2つのスクロールが何れも回転する全系回転型(両回転型)や、旋回スクロールの鏡板の両面にラップ部を形成し、それぞれのラップ部側に固定スクロールを設けることにより、2つの圧縮室を有する両歯型を用いた構成としてもよい。
【0063】
また、前記実施の形態では、固定スクロール3のラップ部3Bと旋回スクロール11のラップ部11Bとにそれぞれ溝5、13を形成し、これらの溝5、13内にシール部材6、14を嵌入するものとしたが、本発明はこれに限らず、固定スクロール3のラップ部3Bと旋回スクロール11のラップ部11のうち、いずれか一方のラップ部に溝を形成し、この溝にシール部材を嵌入するように構成してもよい。
【0064】
また、前記実施の形態では、シール部材6の下側面6Aに底面リップ部7を一体形成すると共に、シール部材6の内側面6Cに側面リップ部8を一体形成するものとしたが、本発明はこれに限らず、シール部材6の下側面6A、内側面6C及び外側面6Dのうち、いずれか一方の側面にリップ部を形成するように構成してもよい。
【0065】
また、前記実施の形態では、溝5及びシール部材6の断面形状を矩形にしたが、本発明はこれに限らず、上記断面形状を三角形、台形又は半円形とするように構成してもよい。 例えば、溝5及びシール部材6の断面形状を三角形にした場合では、シール部材の2つの側面が、溝の高圧側の壁面と低圧側の壁面に対向するように嵌入され、溝の高圧側の壁面に対向するシール部材の側面にのみリップ部を設けるだけで、運転中に溝とシール部材の間を流動する空気を遮断できる。また、リップ部の受圧面で圧力を受圧することによりシール部材を相手方のスクロールの鏡板の表面及び溝の低圧側の壁面に押し付けることができる。
【0066】
また、前記実施の形態では、各底面リップ部7の受圧面7Aが空気圧力を受圧する受圧面積を略同一になるように形成し、同様に各側面リップ部8の受圧面8Aの受圧面積も略同一になるように形成したが、本発明はこれに限らず、図8に記載するようにシール部材60の上側面61又は下側面62に対するリップ部の受圧面63の傾斜角度γ1、γ2、γ3、γ4…をそれぞれ設定してもよい。
【0067】
例えば、シール部材60の高圧側から一定範囲までシール部材60の上側面61又は下側面62に対する各受圧面63の傾斜角度γを高圧側から低圧側に向かって徐々に小さくするように設定(γ1<γ2<γ3<γ4)することで、溝5内の高圧側では、受圧面63の傾斜角度γ1が低圧側の受圧面63の傾斜角度γ4と比べて大きいからリップ部の受圧面積は小さくなり、シール部材60の上側面61が相手側のスクロールの鏡板の表面に高い面圧で接触することを防止してスクロールを旋回動作させる際に機械損失を低減できる。一方で、低圧側の受圧面63の傾斜角度γ4が高圧側の受圧面63の傾斜角度γ1と比べて小さいからリップ部の受圧面積は大きくなり、鏡板の表面にシール部材60の上側面61を押し付ける力を大きくできる。
【0068】
また、前記実施の形態では、底面リップ部7及び側面リップ部8に高圧側の差圧室20A、21Aと低圧側の差圧室20B、21Bの空気圧力を直接受圧する受圧面をそれぞれ形成したが、本発明はこれに限らず、高圧側の差圧室と低圧側の差圧室のうち、いずれか一方の差圧室の空気圧力を受圧する受圧面を形成するように構成してもよい。例えば、図9に記載するように溝の内壁面に溝内に沿って流動する空気を遮断するように、型成形により図9(b)に示すように突出して形成した側面リップ部30に低圧側の差圧室31内の均一な圧力を直接受圧する受圧面34のみを形成することもでき、これによりシール部材35は、このシール部材35の下側面33が受圧する空気圧力と、受圧面34が受圧する空気圧力により溝5の底面5Aから浮上し、シール部材35の上側面37を相手方のスクロールの鏡板の表面に接触させることができる。
【0069】
また、前記実施の形態では、底面リップ部7は圧縮空気の高圧側から低圧側に向かって弾性変形し、溝5の底面5Aとシール部材6との間を気密にシールする一方、側面リップ部8は圧縮空気の高圧側から低圧側に向かって弾性変形し、溝5の内壁面5Bとシール部材6との間を気密にシールするように構成したが、本発明はこれに限らず、溝に嵌入され溝の底面又は側面に溝内に沿って流動する空気を遮断して高圧側と低圧側の差圧室を画成する底面リップ部又は側面リップ部を、図10(b)及び図11(b)に示すように型成形により突出して形成してもよい。例えば、図10及び図11に記載するように高圧側の差圧室42、52の空気圧力を直接受圧する受圧面44a、54aと低圧側の差圧室41、51の空気圧力を直接受圧する受圧面44b、54bをリップ部40、50に、シール部材45、55の長手方向Cに延びるように形成することもできる。
【0070】
さらに、前記実施の形態では、スクロール式流体機械をスクロール式空気圧縮機として用いる場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば真空ポンプ,冷媒圧縮機等に適用してもよいものである。
【0071】
なお、本発明で定義する「受圧面」は、シール部材の長手方向と直交する短手方向の中間部に位置してシール部材の長手方向に延びるように設けてあり、高圧側と低圧側の少なくとも一方の差圧室内の均一な圧力を直接受圧する面のことである。
【0072】
よって、例えば、図9に記載する実施の形態において、側面リップ部30に、シール部材35の短手方向Dに延びる側面36a、36b、36cが形成してあるが、これらは、シール部材の長手方向に延びる面ではないので、本発明で定義する「受圧面」には該当しない。
【0073】
また、側面リップ部30には、シール部材35の長手方向Cに延びる端面36d、36eが形成してあるが、これらは、シール部材35の短手方向Dの中間部に位置して設けた面ではなく、また、相手方のスクロールの鏡板と端面36dの間に生じる不均一な圧力、又は、溝の底面と端面36eの間に生じる不均一な圧力を受圧する面であるから、本発明で定義する差圧室31内の均一な圧力を直接受圧する「受圧面」には該当しない。
【0074】
なお、上記では「受圧面」の定義について、側面リップ部の場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、底面リップ部の場合でも同様である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係るスクロール式流体機械の実施の形態を示す概略部分縦断面図。
【図2】図1の矢示a−a方向からみた概略部分横断面図。
【図3】図1に記載のシール部材6の底面リップ部7の開いた状態を示す概略縦断面図。
【図4】図3に記載の底面リップ部7の閉じた状態を示す概略平面図。
【図5】図1に記載のシール部材6の側面リップ部8の開いた状態を示す概略縦断面図。
【図6】図5に記載の側面リップ部8の閉じた状態を示す概略平面図。
【図7】図5の矢示b−b方向からみた概略縦断面図。
【図8】本発明の他の実施の形態を示す概略平面図。
【図9】本発明の他の実施の形態を示す概略平面図。
【図10】本発明の他の実施の形態を示す概略平面図。
【図11】本発明の他の実施の形態を示す概略平面図。
【符号の説明】
【0076】
3 固定スクロール
3A 鏡板
3B ラップ
5 溝
6 シール部材
7 底面リップ部
7A 受圧面
8 側面リップ部
8A 受圧面
11 旋回スクロール
11A 鏡板
11B ラップ
13 溝
14 シール部材
17 圧縮室
20A 差圧室
20B 差圧室
21A 差圧室
21B 差圧室
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡板に渦巻状に形成されたラップ部を立設した一方のスクロールと、
該一方のスクロールに対向して設けられ鏡板に渦巻状に形成されたラップ部を立設した他方のスクロールと、
前記両スクロールのラップ部のうち少なくとも一方のラップ部の歯先に沿って設けられた溝と、
該溝に嵌入されたシール部材と、
該シール部材の長手方向に複数設けられ、該シール部材から突出して前記溝内に沿って
流動する空気を遮断することにより高圧側と低圧側の差圧室を画成するリップ部とを備えたスクロール式流体機械において、
前記リップ部に、前記シール部材の長手方向に延び、前記高圧側と低圧側の少なくとも一方の差圧室内の圧力を直接受圧する受圧面を設けたことを特徴とするスクロール式流体機械。
【請求項2】
請求項1に記載のスクロール式流体機械において、前記複数のリップ部の各受圧面の受圧面積を少なくとも2種類としたことを特徴とするスクロール式流体機械。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスクロール式流体機械において、前記溝の断面形状が内壁面、外壁面及び底面からなる矩形であり、前記シール部材の断面形状が前記他方のスクロールの鏡板に接触する上側面と前記底面に対向する下側面と前記内壁面に対向する内側面と前記外壁面に対向する外側面とからなる矩形であり、前記リップ部が前記シール部材の下側面と内側面のうち少なくとも一方に設けられ前記溝の底面又は内壁面に向かって突出して形成されたことを特徴とするスクロール式流体機械。
【請求項1】
鏡板に渦巻状に形成されたラップ部を立設した一方のスクロールと、
該一方のスクロールに対向して設けられ鏡板に渦巻状に形成されたラップ部を立設した他方のスクロールと、
前記両スクロールのラップ部のうち少なくとも一方のラップ部の歯先に沿って設けられた溝と、
該溝に嵌入されたシール部材と、
該シール部材の長手方向に複数設けられ、該シール部材から突出して前記溝内に沿って
流動する空気を遮断することにより高圧側と低圧側の差圧室を画成するリップ部とを備えたスクロール式流体機械において、
前記リップ部に、前記シール部材の長手方向に延び、前記高圧側と低圧側の少なくとも一方の差圧室内の圧力を直接受圧する受圧面を設けたことを特徴とするスクロール式流体機械。
【請求項2】
請求項1に記載のスクロール式流体機械において、前記複数のリップ部の各受圧面の受圧面積を少なくとも2種類としたことを特徴とするスクロール式流体機械。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスクロール式流体機械において、前記溝の断面形状が内壁面、外壁面及び底面からなる矩形であり、前記シール部材の断面形状が前記他方のスクロールの鏡板に接触する上側面と前記底面に対向する下側面と前記内壁面に対向する内側面と前記外壁面に対向する外側面とからなる矩形であり、前記リップ部が前記シール部材の下側面と内側面のうち少なくとも一方に設けられ前記溝の底面又は内壁面に向かって突出して形成されたことを特徴とするスクロール式流体機械。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−100516(P2007−100516A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−287568(P2005−287568)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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