説明

スクロール速度制御システム及びプログラム

【課題】スクロール操作手段が大型化することを回避することができるだけでなく、使用面においても優れたスクロール速度制御システム及びプログラムを提供する。
【解決手段】スクロール操作手段2からの信号に基づいてスクロールを制御するための制御手段3が、スクロール操作手段2から出力された信号で構成される信号群に含まれる信号数が設定された設定信号数以上であるか否かを判別する信号数判別手段5と、信号数判別手段5によりスクロール操作手段2からの信号数が設定信号数以上であると判別された場合に、スクロール操作手段2からの信号に無関係に予め設定されている速度で表示画面をスクロールさせる強制スクロール実行手段7と、設定信号数を設定変更するための信号数設定変更手段8とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロール可能な表示画面を有する表示手段と、該表示画面をスクロールすべくスクロール操作ができるよう構成され、該スクロール操作によって信号が出力されるスクロール操作手段と、該スクロール操作手段からの信号に基づいてスクロールを制御するための制御手段とを備えたスクロール速度制御システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記スクロール操作手段としては、ホイール付きマウスが挙げられ、そのホイール付きマウスは、指でホイールを回転させ、回転させたホイールの回転速度に応じて表示画面のスクロール速度が追従するように構成されている。しかし、表示画面に表示したい頁数が多い場合に、ホイールを長い時間回転操作しなければならないだけでなく、スクロール速度を高速にするにも限界があるため、全頁を直ちに確認したい場合には不向きであった。
【0003】
そこで、表示画面をスクロールさせるための回転モードをノーマル回転モードから高速回転モードへ切り替えることにより、ノーマル回転モードにおける最高速度よりも速い速度で表示画面を自動的にスクロールさせることができる切替装置が提案されている。この切替装置は、ホイール付きマウス内に備えられ、ホイールが押し下げられたことを検出すると、ノーマル回転モードから高速回転モードに切り替えるようにしている。そして、前記切替装置が、押し下げ操作されるホイールに当接して下方に移動する接触バーと、この接触バーに連動して下方に移動するてこ部と、該てこ部によって押し下げられるスイッチ部とを備え、ホイールが押し下げられることによって、接触バーがてこ部を介してスイッチ部を押圧作動させることによりホイールが押し下げられたことを検出することができるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3146387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の構成によれば、切替装置を構成する接触バー、てこ部、スイッチ部などの多数の部材を配設するための設置スペースをマウス内に確保しなければならないため、マウスが大型化する不都合があった。
【0006】
また、ホイールを押し下げることにより高速回転モードへ切り替えられる構成であることから、高速回転モードへの切り替わり条件が1つであるため、使用者にとって使用しづらい不都合もあった。
【0007】
本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、スクロール操作手段が大型化することを回避することができるだけでなく、使用面においても優れたスクロール速度制御システム及びプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスクロール速度制御システムは、前述の課題解決のために、スクロール可能な表示画面を有する表示手段と、該表示画面をスクロールすべくスクロール操作ができるよう構成され、該スクロール操作によって信号が出力されるスクロール操作手段と、該スクロール操作手段からの信号に基づいてスクロールを制御するための制御手段とを備えたスクロール速度制御システムであって、前記制御手段は、前記スクロール操作手段から出力された信号で構成される信号群に含まれる信号数が設定された設定信号数以上であるか否かを判別する信号数判別手段と、該信号数判別手段により前記スクロール操作手段からの信号数が設定信号数未満であると判別された場合には、信号群に含まれる信号に基づく速度で表示画面をスクロールさせ、設定信号数以上であると判別された場合には、前記スクロール操作手段からの信号に無関係に予め設定されている速度で表示画面をスクロールさせる強制スクロール実行手段と、前記設定信号数を設定変更するための信号数設定変更手段と、を備えていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明のコンピュータで実行可能なプログラムは、スクロール可能な表示画面を有する表示手段と、該表示画面をスクロールすべくスクロール操作ができるよう構成され、該スクロール操作によって信号が出力されるスクロール操作手段と、該スクロール操作手段からの信号に基づいてスクロールを制御するための制御手段とを備えたコンピュータで実行可能なプログラムであって、コンピュータを、前記スクロール操作手段から出力された信号で構成される信号群に含まれる信号数が設定された設定信号数以上であるか否かを判別する信号数判別手段と、該信号数判別手段により前記スクロール操作手段からの信号数が設定信号数未満であると判別された場合には、信号群に含まれる信号に基づく速度で表示画面をスクロールさせ、設定信号数以上であると判別された場合には、前記スクロール操作手段からの信号に無関係に予め設定されている速度で表示画面をスクロールさせる強制スクロール実行手段と、前記設定信号数を設定変更するための信号数設定変更手段として機能させることを特徴とするプログラムであってもよい。
【0010】
上記本発明の構成によれば、スクロール操作手段から出力された信号で構成される信号群に含まれる信号数が設定された設定信号数以上であるか否かを判別することによって、スクロール操作手段の操作状況、例えば表示画面をスクロールさせるスクロール速度を速くしたいためにスクロール操作手段を速い速度で操作している状況を判別することができ、そのような操作状況であれば、スクロール操作手段からの信号に無関係にスクロール速度を設定速度(例えば高速)に変更して表示画面をスクロールさせる。このようにスクロールさせることによって、頁数が多い場合でも、表示画面を高速で短時間にスクロールさせることができる。前記スクロール操作手段からの信号数が設定信号数未満であると判別された場合には、信号群に含まれる信号に基づく速度で表示画面をスクロールさせることになる。また、設定信号数を設定変更することによって、個人の操作状況に合わせて強制スクロール実行手段を実行する条件を変更することができる。尚、スクロール速度は、通常のスクロール速度よりも高速になるように設定できる他、通常のスクロール速度よりも低速になるように設定することもできる。
【0011】
また、本発明のコンピュータで実行可能なプログラムは、前記スクロール操作手段が、ホイール付きマウスであり、コンピュータを、前記信号数判別手段が、該ホイール付きマウスのホイールを回転させることにより出力された信号で構成される信号群に含まれる信号数からホイールの回転速度を割出す回転速度割出手段を含み、該回転速度割出手段により割出された回転速度が設定回転速度以上であるか否かを判断し、割出されたホイールの回転速度が設定回転速度以上であると判断した場合に、前記強制スクロール実行手段を実行するように機能させてもよい。
【0012】
また、本発明のコンピュータで実行可能なプログラムは、前記スクロール操作手段が、ホイール付きマウスであり、コンピュータを、前記信号数判別手段が、該ホイール付きマウスのホイールを回転させることにより出力された信号で構成される信号群に含まれる信号数からホイールの回転速度を割出す回転速度割出手段を含み、該回転速度割出手段により割出された回転速度が設定回転速度以上であるか否かを判断し、ホイールの回転速度が設定回転速度以上であると判断した場合に、前記信号群を1つカウントするとともに、次の信号群に含まれる信号数からホイールの回転速度が設定回転速度以上であるか否かを判断し、ホイールの回転速度が設定回転速度以上であると判断した場合に、次の信号群を1つカウントし、総カウント数が設定回数以上である場合に、前記強制スクロール実行手段を実行するように機能させてもよい。
【0013】
また、本発明のコンピュータで実行可能なプログラムは、前記スクロール操作手段が、ホイール付きマウスであり、コンピュータを、前記信号数判別手段が、該ホイール付きマウスのホイールを回転させることにより出力された信号で構成される信号群に含まれる信号数からホイールの回転量を割出す回転量割出手段を含み、該回転量割出手段により割出された回転量が設定回転量以上であるか否かを判断し、割出されたホイールの回転量が設定回転量以上であると判断した場合に、前記強制スクロール実行手段を実行するように機能させてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スクロール操作手段側に表示画面をスクロールさせるスクロール速度を変更するための切り替えの構成(ハードウェア)を備えさせるのではなく、ソフトにより行うようにしたので、スクロール操作手段が大型化することを回避することができる。しかも、信号数設定変更手段の設定信号数を変更することによって、個人の操作状況に合わせて強制スクロール実行手段を実行する条件(切り替わり条件)を変更することができ、使用面において優れたスクロール速度制御システム及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】スクロール速度制御システムの概略図である。
【図2】(a)はマウスからの出力信号を示す説明図であり、(b)はマウスからの出力信号をコンピュータが受信して認識したときの入力信号を示す説明図である。
【図3】制御手段のブロック構成図である。
【図4】マウスのプロパティが表示された表示画面である。
【図5】スクロール速度制御を示すフローチャートである。
【図6】他(第2)のスクロール速度制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るスクロール速度制御システムの一実施形態について、図面を参酌しつつ説明する。
【0017】
スクロール速度制御システムは、図1に示すように、デスクトップ型(ノートパソコンのようなラップトップ型でもよい)のパーソナルコンピュータ(以下、コンピュータという)から構成され、そのコンピュータは、スクロール可能な表示画面1Aを備えた表示手段1と、該表示画面1Aをスクロールすべくスクロール操作ができるよう構成され、該スクロール操作によって信号が出力されるスクロール操作手段2と、スクロール操作手段2からの信号に基づいてスクロール速度を制御するための制御手段3とを備えている。
【0018】
前記表示手段1は、文字や図形あるいは画像等を表示することができる表示画面1Aを備えたモニタからなり、表示画面1Aは縦(上下)方向や左右(横)方向にスクロールできるように構成されている。
【0019】
前記スクロール操作手段2は、ホイール付きマウスからなり、このホイール付きマウス2は、マウス本体2Aと、マウス本体2Aの先端部の左右中央部に水平軸芯X回りで回転自在に取り付けたホイール2Bとを備え、ホイール2Bを指で手前側又は奥側に回転させることにより、スクロール操作を行うことができ、スクロール操作に応じた信号が出力されるように構成されている。
【0020】
また、ホイール付きマウス2は、ホイール2Bが所定角度(例えば15度)ずつ回転操作することができるようになっており、ホイール2Bを時間を空けて回転させると、所定角度を回転する度に間欠的に信号を出力し、又ホイール2Bを時間を空けずに連続して回転させると、横並びに連続した信号を出力することになる。具体的には、図2(a)に示すように、図の左端からホイール2Bが15度回転した後、時間を空けて30度連続して回転し、さらに時間を空けて45度連続して回転した後、時間を空けて15度回転し、更に、時間T以上の間隔を空けてホイール2Bが15度回転してから、時間を空けて45度連続して回転した後、時間を空けて15度回転し、さらに時間を空けて30度連続して回転したときに出力された信号を示している。
【0021】
前記制御手段3は、プログラムを実行する、あるいはハードウェアの起動を制御するための処理装置4に設けられている。コンピュータには、前記制御手段3の他、電子メールのプログラム、プリンタ(図示せず)の制御プログラム、OS(Operating System)等の各種のプログラムがインストールされており、コンピュータのハードウェアと協働して各プログラムを実行することができるようになっている。
【0022】
また、前記制御手段3は、図3に示すように、前記ホイール付きマウス2からの出力信号を受信する受信手段Rと、前記ホイール付きマウス2から出力された信号で構成される信号群に含まれる信号数が設定された設定信号数以上であるか否かを判別する信号数判別手段5と、該信号数判別手段5により前記ホイール付きマウス2からの信号数が設定信号数未満であると判別された場合に、予め設定されている通常のスクロール速度で表示画面1Aをスクロールさせる通常スクロール実行手段6と、該信号数判別手段5により前記ホイール付きマウス2からの信号数が設定信号数以上であると判別された場合に、前記ホイール付きマウス2からの信号に無関係に前記スクロール速度を通常のスクロール速度よりも速い設定速度で表示画面1Aをスクロールさせる強制スクロール実行手段7と、前記設定信号数を設定変更するための信号数設定変更手段8とを備えている。
【0023】
前記受信手段Rは、ホイール付きマウス2からの信号を受信するとともに、受信した信号を信号群に区分けして、1つのアクション内で操作されたときの信号であると判断するように構成されている。つまり、図2(a)で示す信号を受信すると、ホイール2Bが回転して出力された信号から次回のホイール2Bの回転により出力される信号までの時間(間隔)が設定時間T未満である場合には、ホイール付きマウス2が1つのアクションで操作されたときの信号であると判断して、それらの信号を一纏め(1つの信号群)にしてスタック(メモリ)に記憶し、記憶された信号群の信号数に基づいて後述するホイール2Bの回転速度、回転量などを算出することができるようになっている。図2(b)では、全部で14個の信号が出力され、時間T以上の間隔を挟んでそれぞれ、7個の信号が1つのアクションで操作されたものであると判断された場合を示している。
【0024】
前記信号数判別手段5は、ホイール付きマウス2のホイール2Bを回転させることにより出力された信号で構成される信号群に含まれる信号数、前述した1つのアクションで操作された信号数からホイールの回転速度を算出する回転速度算出手段9と、ホイール付きマウス2のホイール2Bを回転させることにより出力された信号で構成される信号群に含まれる信号数、前述した1つのアクションで操作された信号数からホイール2Bの回転量を算出する回転量算出手段10と、前記ホイール2Bの回転量が設定回転量以上であり、かつ、前記ホイール2Bの回転速度が設定回転速度以上であると判断した場合に、前記信号群を1つカウント(インクリメント)するとともに、次の信号群に含まれる信号数からホイール2Bの回転量が設定回転量以上であり、かつ、回転速度が設定回転速度以上であるか否かを判断し、ホイール2Bの回転量が設定回転量以上であり、かつ、回転速度が設定回転速度以上であると判断した場合に、次の信号群を1つカウント(インクリメント)し、総カウント数が設定回数以上である場合に、そのカウント数をホイール2Bが急激に操作された操作回数として検出する操作回数検出手段11とを備えている。
【0025】
前記回転速度算出手段9は、前記ホイール2Bの回転速度を、信号数/1アクションの時間(例えば11msecに設定しておく)=7/11=0.63(信号数/msec)として算出する。例えば、設定回転速度を0.5(信号数/msec)に設定したとすると、回転速度算出手段9は、ホイール2Bの回転速度が設定回転速度以上であると判断する。
【0026】
前記回転量算出手段10は、前述したように、1アクションで7つの信号数が出力されたとすると、前記ホイール2Bの回転量を、7×120(1つの信号に対する回転量を120とする)=840として算出する。例えば、設定回転量を480に設定したとすると、回転量算出手段10は、ホイール2Bの回転量が設定回転量以上であると判断する。
【0027】
前記操作回数検出手段11は、ホイール2Bの回転量が設定回転量以上であり、かつ、ホイール2Bの回転速度が設定回転速度以上であると判断した場合には、ホイール2Bが急激に操作された操作回数として1だけカウント(インクリメント)し、その時点から所定時間(例えば100msecよりも多く500msec)内にホイール2Bの回転量が設定回転量以上であり、かつ、ホイール2Bの回転速度が設定回転速度以上であるか否かを判断し、設定回転量以上であり、かつ、設定回転速度以上であると判断した場合には、ホイール2Bが急激に操作された操作回数を更に1だけカウント(インクリメント)し、カウントした総カウント数(この場合2回)が設定した設定回数(例えば2回に設定しておく)以上であると判断した場合に、ホイール2Bが急激に操作された操作回数が設定回数以上であると判断する。
【0028】
前記通常スクロール実行手段6は、信号数判別手段5によりホイール付きマウス2からの信号数が設定信号数未満であると判別された場合、つまりホイール2Bの回転量が設定回転量未満であると判断された場合、又はホイール2Bの回転量が設定回転量以上であっても、ホイール2Bの回転速度が設定回転速度未満であると判断された場合、又はホイール2Bの回転量が設定回転量以上でかつホイール2Bの回転速度が設定回転速度以上であっても、ホイール2Bが急激に操作された操作回数が設定回数未満であると判断された場合に、予め設定されている通常のスクロール速度で表示画面1Aをスクロールさせる。
【0029】
前記強制スクロール実行手段7は、信号数判別手段5によりホイール付きマウス2からの信号数が設定信号数以上であると判別された場合に、前記ホイール付きマウス2からの信号に無関係に前記スクロール速度を通常のスクロール速度よりも速い設定速度に変更して表示画面1Aをスクロールさせる。つまり、ホイール2Bの回転速度が設定回転速度以上であると判断され、かつ、ホイール2Bの回転量が設定回転量以上であると判断され、かつ、ホイール2Bが急激に操作された操作回数が設定回数以上であると判断された場合に、強制スクロール実行手段7を実行して、通常のスクロール速度よりも速い設定速度で表示画面1Aをスクロールさせる。
【0030】
前記信号数設定変更手段8は、前記回転速度算出手段9の閾値(設定値)と、前記回転量算出手段10の閾値(設定値)と、前記操作回数検出手段11の閾値(設定値)を設定できる手段である。具体的には、図4に示すように、表示画面上にホイール付きマウス2のプロパティを表示させる。プロパティが表示されると、ホイール付きマウス2を用いてホイール2Bの回転速度を変更するスライダ15を左右に移動させることによって、ホイール2Bの設定回転速度を設定変更することができる。スライダ15を左側に移動させるほど設定回転速度が遅い速度に設定され、スライダ15を右側に移動させるほど設定回転速度が速い速度に設定される。また、ホイール付きマウス2を用いてホイール2Bの回転量を変更するスライダ16を左右に移動させることによって、ホイール2Bの設定回転量を設定変更することができる。スライダ16を左側に移動させるほど設定回転量が少ない回転量に設定され、スライダ16を右側に移動させるほど設定回転量が多い回転量に設定される。また、ホイール付きマウス2を用いて表示部14の回転数を変更することによって、ホイール2Bが操作された操作回数(設定回数)を設定変更することができる。図では、2になっているが、3以上に設定してもよい。
【0031】
更にまた、前記制御手段3には、スクロール速度設定変更手段101を備えている。図4の表示画面上の高速スクロールのスクロール速度を変更するスライダ12を左右に移動させることによって、表示画面を縦方向(上下方向)にスクロールさせる速度を設定することができる。スライダ12を右側に移動させるほどスクロール速度が速い速度になり、左側に移動させるほどスクロール速度が遅い速度になる。尚、スライダ12を左端に移動させて設定した最低速度は、通常スクロール速度の最高速度よりも速い速度に設定する他、通常スクロール速度の最高速度と同じ速度又は少し遅い速度に設定することもできる。このようにマウスのプロパティを開いてマウス操作に関連する各種の設定変更を一挙に行うことができる。
【0032】
次に、スクロール速度制御を図5のフローチャートに基づいて説明する。受信手段Rが、ホイール付きマウス2からの信号を受信すると(ステップS1)、前回のホイール付きマウス2からの入力信号との時間間隔がT(例えば100msecに設定されている)以内であるか否かを判断し(ステップS2)、T以内であれば、前回の入力信号と同じアクション(1つのアクション)内の信号として認識し、それら信号を信号群として一纏めにしてスタック(メモリ)に記憶させる(ステップS3)。続いて、受信信号無視フラグがOFFであるか否かを判断する(ステップS4)。受信信号無視フラグは、1つのアクション内での受信信号数が設定された設定回転量Rminに達した段階で一旦ホイール付きマウス2からの信号を取り込まないで無視するために設けられたフラグである。
【0033】
前記受信信号無視フラグがOFFであると、回転量算出手段10が、前記スタックに記憶された1つのアクションの合計信号数から合計回転量を算出し、その算出した合計回転量が設定回転量Rmin以上であるか否かを判断する(ステップS5)。1つのアクションの合計回転量が設定回転量Rmin以上であると判断した場合には、受信信号無視フラグをONにして(ステップS6)、以後のホイール付きマウス2からの信号を無視して取り込まない状態にしてから、次の判断に移行する。
【0034】
次に、回転速度算出手段9が、前記スタックに記憶された1つのアクションの合計信号数からホイール2Bの回転速度を算出し、算出した回転速度が設定回転速度Vc以上であるか否かを判断する(ステップS7)。1つのアクション内での受信信号の回転速度が設定回転速度Vc以上であると判断した場合には、操作回数検出手段11が、回転数カウントを1だけインクリメントし(ステップS8)、続いて、回転数カウントが設定回転数Cc(複数であり、例えば2)以上であるか否かを判断する(ステップS9)。このとき、回転数カウントが1であることから、設定回転数Cc(例えば2)未満であり、その結果、ホイール付きマウス2からの信号を受信する状態に戻る(ステップS1)。その後、受信手段Rが、ホイール付きマウス2からの信号を受信すると、前回のホイール付きマウス2からの入力信号との時間間隔がT(例えば100msec)以内であるか否かを判断し(ステップS2)、T以内である場合には、Tを超えるまでホイール付きマウス2からの信号を無視する。つまり、ホイール付きマウス2からの信号を受信しても、受信信号無視フラグがONになっているため、前回の入力信号との時間間隔がTを越えるまでホイール付きマウス2からの信号を無視するのである。
【0035】
その後、前回の入力信号との時間間隔がTを越えると、前回の入力信号との時間間隔がTamin(例えばTよりも大きな500msec)以上であるか否かを判断する(ステップS12)。前回の入力信号との時間間隔がTamin未満であれば、受信信号無視フラグをOFFにしてホイール付きマウス2からの信号を無視しないで取り込む状態にし(ステップS14)、ホイール付きマウス2からの信号を受信する状態に戻す(ステップS1)。そして、前述同様に、ホイール付きマウス2から出力される信号を処理することになる。つまり、ホイール付きマウス2からの信号を受信すると、前回の入力信号との時間間隔がT以内であるか否かを判断し(ステップS2)、T以内であれば、前回の入力信号と同じアクション(1つのアクション)内の信号として認識し、それら信号をスタックに一纏めとして記憶させる(ステップS3)。受信信号無視フラグがOFFである(ステップS4)ことから、回転量算出手段10が、前記スタックに記憶された1つのアクションの合計信号数から合計回転量を算出し、その算出した合計回転量が設定回転量Rmin以上であるか否かを判断する(ステップS5)。1つのアクションの合計回転量が設定回転量Rmin以上であると判断した場合には、受信信号無視フラグをONにして(ステップS6)、以後のホイール付きマウス2からの信号を無視して取り込まない状態にしてから、次の判断に移行する。次に、回転速度算出手段9が、前記スタックに記憶された1つのアクションの合計信号数から1つのアクション内での受信信号の回転速度を算出し、その算出した回転速度が設定回転速度Vc以上であるか否かを判断する(ステップS7)。1つのアクション内での受信信号の回転速度が設定回転速度Vc以上であると判断した場合には、操作回数検出手段11が、回転数カウントを1だけインクリメントする(ステップS8)。このとき、回転数カウントの回転数が前回カウントしたものに足し込まれて2になっていることから、強制スクロール実行手段7が、回転数カウントが設定回転数Cc(例えば2)以上であると判断して(ステップS9)、強制スクロール実行手段7が、通常スクロール実行手段6における最高速度よりも速い設定速度で表示画面1Aを所定時間強制的にスクロールさせる(ステップS10)。
【0036】
このように算出した合計回転量が設定回転量Rmin以上で、かつ、算出した回転速度が設定回転速度Vc以上で、しかも、回転数カウントが設定回転数Cc(例えば2)以上である場合にのみ、強制スクロール実行手段7を実行させる構成であるから、強制スクロール実行手段7を的確に実行させることができる。しかも、それら設定回転量Rmin、設定回転速度Vc、設定回転数Ccを設定変更することによって、個人の操作状況に合わせて強制スクロール実行手段7を実行する条件(タイミング)を変更することができる。
【0037】
前記ステップS7において、受信信号の回転速度が設定回転速度Vc以上でない場合には、回転数カウントをリセットする(ステップS11)。また、ステップS12において、前回の入力信号との時間間隔がTamin(例えば500msec)以上である場合には、回転数カウントをリセットし(ステップS13)、受信信号無視フラグをOFFにしてホイール付きマウス2からの信号を無視しないで取り込む状態にして(ステップS14)、待機状態となる。
【0038】
次に、スクロール速度制御の他(第2)の実施形態を図6(a),(b)のフローチャートに基づいて説明する。図6(a)は、受信フラグ制御のフローチャートであり、ホイール付きマウス2からの受信信号に基づいて動作するようになっている。つまり、ホイール付きマウス2からの信号が入力されると(ステップS20)、受信手段Rが、入力信号を受信し(ステップS21)、受信した信号をスタックに貯めて(ステップS22)から、受信フラグをONにする(ステップS23)。この処理は、ホイール付きマウス2からの信号が入力される度に行われる処理である。
【0039】
図6(b)に示すように、コンピュータから、一定時間間隔に処理を行うタイマーイベントが発行されると、タイマーイベント処理が実行され(ステップS30)、受信フラグがOFFであるか否かを判断する(ステップS31)。受信フラグがONである場合には、ホイール付きマウス2からの信号がスタックに記憶されていると判断し、次のホイール付きマウス2からの信号を受信するまでの未受信時間を加算する(ステップS32)。加算した未受信時間が設定時間T以上であるか否かを判断し(ステップS33)、未受信時間未満である場合にスタック内の信号の全てを1つのアクション分(信号群)として処理し、スタック内に記憶させる(ステップS34)。続いて、回転量算出手段10が、前記スタックに記憶された1つのアクションの合計信号数から1つのアクション内での合計回転量を算出し、その算出した合計回転量が設定回転量Rmin以上であるか否かを判断する(ステップS35)。1つのアクションの合計回転量が設定回転量Rmin以上であると判断した場合には、次の判断に移行する。次に、回転速度算出手段9が、前記スタックに記憶された1つのアクションの合計信号数から1つのアクション内での信号の回転速度を算出し、その算出した回転速度が設定回転速度Vc以上であるか否かを判断する(ステップS36)。回転速度が設定回転速度Vc以上であると判断した場合には、操作回数検出手段11が、回転数カウントを1だけインクリメントする(ステップS37)。
【0040】
続いて、回転数カウントが設定回転数Cc(例えば2)以上であるか否かを判断する(ステップS38)。回転数カウントが1であることから、回転数カウントが設定回転数Cc(例えば2)未満であるとして、再度タイマーイベント処理に戻る(ステップS30)。タイマーイベント処理が実行されると(ステップS30)、前述と同様に、受信フラグがOFFであるか否かを判断し(ステップS31)、受信フラグがONである場合には、ホイール付きマウス2からの信号がスタックに記憶されていると判断し、次のホイール付きマウス2からの信号を受信するまでの未受信時間を加算する(ステップS32)。加算した未受信時間が設定時間T以上であるか否かを判断し(ステップS33)、未受信時間未満である場合にスタック内の信号の全てを1つのアクション分として処理し、スタック内に記憶させる(ステップS34)。
【0041】
次に、回転量算出手段10が、前記スタックに記憶された1つのアクションの合計信号数から1つのアクションの合計回転量を算出し、その算出した合計回転量が設定回転量Rmin以上であるか否かを判断する(ステップS35)。1つのアクションの合計回転量が設定回転量Rmin以上であると判断した場合には、次の判断に移行する。さらに、回転速度算出手段9が、前記スタックに記憶された1つのアクションの合計信号数から1つのアクション内での信号の回転速度を算出し、その算出した回転速度が設定回転速度Vc以上であるか否かを判断する(ステップS36)。回転速度が設定回転速度Vc以上であると判断した場合には、操作回数検出手段11が、回転数カウントを1だけインクリメントする(ステップS37)。このとき、回転数カウントの回転数が2になったことにより、回転数カウントが設定回転数Cc(例えば2)以上であると判断し(ステップS38)、強制スクロール実行手段7が、通常スクロール実行手段6における最高速度よりも速い設定速度で表示画面1Aを所定時間強制的にスクロールさせる(ステップS39)。
【0042】
前記ステップS31において、受信フラグがOFFである場合には、ホイール付きマウス2からの信号が記憶されていないと判断し、前記未受信時間をリセットして(ステップS40)、次のタイマーイベント処理を行うまで待機状態となる。また、ステップS35において、1つのアクションの合計回転量が設定回転量Rmin未満であると判断した場合、又はステップS36において、回転速度が設定回転速度Vc未満であると判断した場合、回転数カウントをリセットして(ステップS41)、次のタイマーイベント処理を行うまで待機状態となる。
【0043】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0044】
前記実施形態では、信号数判別手段5が、回転速度算出手段9と、回転量算出手段10と、操作回数検出手段11とを備えている構成であったが、回転速度算出手段9、回転量算出手段10、操作回数検出手段11のいずれか1つの手段を備えた構成であってもよい。また、それら3つの手段の設定値(設定回転速度、設定回転量、設定回転数)を全て変更できるように構成する他、少なくとも1の設定値を変更できる構成であってもよい。
【0045】
また、前記実施形態では、強制スクロール実行手段7を実行して通常スクロール実行手段6における最高速度よりも速い設定速度に変更して表示画面1Aを所定時間強制的にスクロールさせる構成であったが、通常スクロール実行手段6における最低速度よりも遅い設定速度に変更して表示画面1Aを所定時間強制的に低速でスクロールさせる構成であってもよい。
【0046】
また、前記実施形態では、パーソナルコンピュータを用いたが、マイクロコンピュータ、オフィスコンピュータ、プロセスコンピュータ等の各種のコンピュータを用いることができる。
【0047】
また、前記実施形態では、スクロール操作手段としてホイール付きマウスを示したが、ホイールの無いマウスにスイッチなどを備えさせたものの他、キーボードや専用の入力手段等であってもよく、制御手段3に信号を入力できるものであれば、どのような構成であってもよい。
【0048】
また、前記実施形態では、前回の入力信号との時間間隔がT以内である場合に1つのアクション内の信号として記憶させ、その記憶した合計信号数からホイール2Bの合計回転量が設定回転量Rmin以上で、かつ、回転速度が設定回転速度Vc以上であると判断した場合に、次の判断に移行するようにしたが、例えばタイマー等により所定時間経過毎に合計信号数を算出し、その合計信号数が設定信号数以上であるか否かを判断し、合計信号数が設定信号数以上であると判断した場合に、次の判断に移行するようにしてもよい。また、図5で示したステップS5の判断とステップS7の判断とを入れ替えて実施してもよい。また、図6のステップS35の判断とステップS36の判断とを入れ替えて実施してもよい。
【0049】
また、前記実施形態では、処理装置4に制御手段3を備えさせたが、スクロール操作手段に制御手段3を備えさせて実施することもできる。
【0050】
また、前記実施形態では、ホイールの回転速度を算出する回転速度算出手段としたが、予め算出されたホイールの回転速度をメモリに記憶させ、その記憶された回転速度の中から回転速度を抽出する回転速度抽出手段であってもよい。また、ホイールの回転量を算出する回転量算出手段としたが、予め算出されたホイールの回転量をメモリに記憶させ、その記憶された回転量の中から回転量を抽出する回転量抽出手段であってもよい。前記のようにホイールの回転速度(又は回転量)を算出する場合と抽出する場合を含めるため、特許請求の範囲では、ホイールの回転速度(又は回転量)を割出す回転速度割出手段(又は回転量割出手段)としている。
【符号の説明】
【0051】
1…モニタ(表示手段に相当する)、1A…表示画面、2…ホイール付きマウス(スクロール操作手段に相当する)、2A…マウス本体、2B…ホイール、3…制御手段、4…処理装置、5…信号数判別手段、6…通常スクロール実行手段、7…強制スクロール実行手段、8…信号数設定変更手段、9…回転速度算出手段(回転速度割出手段に相当する)、10…回転量算出手段(回転量割出手段に相当する)、11…操作回数検出手段、12,13,15,16…スライダ、14…表示部、101…スクロール速度設定変更手段、X…水平軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクロール可能な表示画面を有する表示手段と、該表示画面をスクロールすべくスクロール操作ができるよう構成され、該スクロール操作によって信号が出力されるスクロール操作手段と、該スクロール操作手段からの信号に基づいてスクロールを制御するための制御手段とを備えたスクロール速度制御システムであって、
前記制御手段は、前記スクロール操作手段から出力された信号で構成される信号群に含まれる信号数が設定された設定信号数以上であるか否かを判別する信号数判別手段と、該信号数判別手段により前記スクロール操作手段からの信号数が設定信号数未満であると判別された場合には、信号群に含まれる信号に基づく速度で表示画面をスクロールさせ、設定信号数以上であると判別された場合には、前記スクロール操作手段からの信号に無関係に予め設定されている速度で表示画面をスクロールさせる強制スクロール実行手段と、前記設定信号数を設定変更するための信号数設定変更手段と、
を備えていることを特徴とするスクロール速度制御システム。
【請求項2】
スクロール可能な表示画面を有する表示手段と、該表示画面をスクロールすべくスクロール操作ができるよう構成され、該スクロール操作によって信号が出力されるスクロール操作手段と、該スクロール操作手段からの信号に基づいてスクロールを制御するための制御手段とを備えたコンピュータで実行可能なプログラムであって、
コンピュータを、前記スクロール操作手段から出力された信号で構成される信号群に含まれる信号数が設定された設定信号数以上であるか否かを判別する信号数判別手段と、該信号数判別手段により前記スクロール操作手段からの信号数が設定信号数未満であると判別された場合には、信号群に含まれる信号に基づく速度で表示画面をスクロールさせ、設定信号数以上であると判別された場合には、前記スクロール操作手段からの信号に無関係に予め設定されている速度で表示画面をスクロールさせる強制スクロール実行手段と、前記設定信号数を設定変更するための信号数設定変更手段として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項3】
前記スクロール操作手段が、ホイール付きマウスであり、コンピュータを、前記信号数判別手段が、該ホイール付きマウスのホイールを回転させることにより出力された信号で構成される信号群に含まれる信号数からホイールの回転速度を割出す回転速度割出手段を含み、該回転速度割出手段により割出された回転速度が設定回転速度以上であるか否かを判断し、割出されたホイールの回転速度が設定回転速度以上であると判断した場合に、前記強制スクロール実行手段を実行するように機能させることを特徴とする請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記スクロール操作手段が、ホイール付きマウスであり、コンピュータを、前記信号数判別手段が、該ホイール付きマウスのホイールを回転させることにより出力された信号で構成される信号群に含まれる信号数からホイールの回転速度を割出す回転速度割出手段を含み、該回転速度割出手段により割出された回転速度が設定回転速度以上であるか否かを判断し、ホイールの回転速度が設定回転速度以上であると判断した場合に、前記信号群を1つカウントするとともに、次の信号群に含まれる信号数からホイールの回転速度が設定回転速度以上であるか否かを判断し、ホイールの回転速度が設定回転速度以上であると判断した場合に、次の信号群を1つカウントし、総カウント数が設定回数以上である場合に、前記強制スクロール実行手段を実行するように機能させることを特徴とする請求項2に記載のプログラム。
【請求項5】
前記スクロール操作手段が、ホイール付きマウスであり、コンピュータを、前記信号数判別手段が、該ホイール付きマウスのホイールを回転させることにより出力された信号で構成される信号群に含まれる信号数からホイールの回転量を割出す回転量割出手段を含み、該回転量割出手段により割出された回転量が設定回転量以上であるか否かを判断し、割出されたホイールの回転量が設定回転量以上であると判断した場合に、前記強制スクロール実行手段を実行するように機能させることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−3695(P2012−3695A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140641(P2010−140641)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(393010318)エレコム株式会社 (27)
【Fターム(参考)】