説明

スケーラブルなクラッド・モード・ストリッパ装置

【課題】光ファイバからクラッド・モードを除去するクラッド・モード・ストリッパが提供される。
【解決手段】クラッド・モード・ストリッパは、反射ベースと、反射ベース上に配置された透明材料のブロックとを含む。透明材料のブロックは、その底部表面にファイバ用の溝を有する。ファイバは、たとえば屈折率整合ゲルを使用して、ベースに熱的に結合され、ブロックの溝に光学的に結合される。クラッド・モード光は、反射ベースから反射され、ブロックを囲むカバーに吸収される。透明な熱伝導性材料のさらなる薄いブロックは、ファイバと反射ベースとの間に配置されて、屈折率整合ゲルがベースの反射表面に接触することを防止しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバオプティック装置に関し、特に、光ファイバからクラッド・モードの光を除去(strip)するクラッド・モード・ストリッパ(stripper)に関する。
【背景技術】
【0002】
ファイバ・レーザは、アライメントの安定性、スケーラビリティ、およびほぼ回折限界の出力ビームの高い光パワーを含む、従来のレーザに優る有意な利点を有する。ファイバ・レーザでは、利得媒体は、光ファイバの長さであり、光ファイバのコアは、アクティブ・レーザ材料、通常エルビウムかイッテルビウムかまたはその両方などの希土類元素イオンでドープされる。レーザ材料は、通常、ダイオード・レーザまたはダイオード・レーザのアレイのエミッションを使用してポンピングされる。ポンプ光が、内側クラッドに結合して、ドープされたファイバ・コアでファイバ長に沿って吸収される、内側および外側クラッドを有するダブルクラッド・アクティブ光ファイバの出現は、シングル・モード出力レーザ・ビームの輝度および指向性を維持しながら、ファイバ・レーザの総合出力パワーのかなりの増加を可能にした。ほとんどのシングル・モード出力レーザ・ビームにおける数キロワット、さらには数十キロワット程度というパワー・レベルが今や達成可能であり、自動車産業または造船のためのコンクリート穿孔または板金切断などの、いろいろな産業用途を切り開いている。
【0003】
ファイバ・レーザの高い光パワー・レベルにおいて、迷光を管理するという仕事が重要になる。ファイバ・レーザのドープされた溶融シリカ・コアと1つまたは複数の溶融シリカ内側クラッドは、ポリマー製の外部コーティングによって囲まれる。外部ポリマー・コーティングを有することは、光ファイバがそれなしでは非常にもろくなるため必須である。さらに、「ポリマークラッド・ファイバ(polymer−clad fiber)」と呼ばれる一部のファイバの場合、ポリマー層は、外側光クラッドとして機能する。高いポンプ・パワー・レベルでは、わずかな迷光でさえも、ポリマーが損傷されうる温度までポリマーを加熱し、レーザのアクティブ・ファイバの破局的故障をもたらしうる。たとえば、ファイバが一端でポンピングされ、破局的熱故障が他端で起こるファイバ・レーザ配置構成では、ファイバが実際にポンプ端に向かって燃え(burn)始め、高価なダブルクラッド・アクティブ光ファイバ全体を失う可能性がある。
【0004】
ファイバ・レーザでは、迷光および関連する加熱は、いわゆるクラッド・モード、すなわちクラッド内での光伝搬モードによってもたらされる。ダブルクラッド・ファイバでは、内側クラッドのクラッド・モードは、ポンプ光をファイバ・コアに送出するために使用される。クラッド・モードの光は、内側クラッドに漏出するとき、ファイバ・ポリマー・コーティングの局所加熱をもたらし、アクティブ・ファイバの破局的故障をもたらしうる。このため、クラッド・モードは、ダブルクラッド・ファイバの外側クラッド内などの、もはや必要とされない場所または通常存在すべきでない場所では、ファイバから除去される(ストリップされる)必要がある。たとえば、アクティブ光ファイバが一端でポンピングされると、残留内側クラッド光が、ファイバの他端で除去されて、そのさらなる伝搬が防止されうる。さらに、一番外側のクラッド内に存在するクラッド・モードは、アクティブ・ファイバのポンプ端で除去されうる。クラッド光は、残留(未吸収)ポンプ光、アクティブ・ファイバ・コアの増幅自然放出光(amplified spontaneous emission)(ASE)、およびファイバ・コアに漏出するレーザ発振波長のレーザ光を含みうる。
【0005】
クラッド・モードは、いわゆるクラッド・モード・ストリッパ装置またはクラッド・モード・ストリッパを使用して除去される。従来技術のクラッド・モード・ストリッパは、光ファイバのクラッドに接して配置されかつ光学的に結合された高屈折率材料の層を有する。クラッド内に存在するクラッド光は、高屈折率材料に結合し、高屈折率材料または高屈折率材料の周りに配置された不透明固体シールド内に吸収される。屈折率整合ゲルまたは高屈折率ポリマーのコーティングは、通常、クラッド・モード・ストリッパで使用される。例を挙げると、Wilhelmson等は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許4,678,273において、光ファイバを囲む放射線耐性高屈折率材料を有するモード・ストリッパを開示する。
【0006】
光ファイバの長さに沿って除去されるクラッド・モード光のより均一な分布を容易にするために、高屈折率ポリマーの屈折率は、ファイバに沿って変動させられうる。たとえば、Wetter等は、参照により本明細書に組み込まれる「High power cladding light strippers」(Photonics West 2008,Fiber Lasers V:Technology,Systems,and Applications,Proc.of SPIE Vol.6873,687327)という名称の論文において、ファイバ長に沿って変動する屈折率を有するハイパワー・クラッド・モード・ストリッパを開示する。Anderegg等は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許7,349,596において、屈折率の負の温度依存性を有するポリマーが、ファイバに沿って配置されるクラッド・モード・ストリッパ装置を開示する。ポリマーの負の温度依存性は、ポリマーが十分に高い温度まで局所的に加熱されると、局所的なクラッド・モード除去効果を制限する。クラッド・モードは、光ファイバの下流に配置されたコーティングのより冷たい部分によって除去されることができ、結果として、クラッド・モード・ストリッパ装置内の「ホット・スポット(hot spot)」が回避され、温度分布が平均化する。
【0007】
Jurgensenは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許6,999,481において、クラッド・モード・ストリッパ装置を開示しており、クラッド・モードが徐々に漏出するように、シース(外側コーティング)がファイバに沿って徐々に薄化され、したがって、ピーク温度が低下する。Hu等は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公報2008/0131060 A1において、クラッド・モード光を散乱させるために、光散乱材料がファイバ上に配置されるクラッド・モード・ストリッパを開示する。さらに、Frithは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公報2009/0080835 A1において、マルチクラッド・ファイバ用の「グラジュアル(gradual)」クラッド・モード・ストリッパを開示しており、ファイバのクラッドが、ステップ方式で1つずつ除去され、高屈折率材料が、クラッドが除去される場所に複数のステップで配置されて、クラッド・モードが外部に結合される。不利なことには、従来技術の手法は、非常に高い光パワー・レベルに対してスケーラブルでなく、特定のファイバ・タイプおよび特定の光パワー範囲に固有である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許4,678,273
【特許文献2】米国特許7,349,596
【特許文献3】米国特許6,999,481
【特許文献4】米国特許出願公報2008/0131060 A1
【特許文献5】米国特許出願公報2009/0080835 A1
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Wetter等「High power cladding light strippers」Photonics West 2008,Fiber Lasers V:Technology,Systems,and Applications,Proc.of SPIE Vol.6873,687327
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術には、高い光パワー・レベルに対して単純であるがスケーラブル(scalable)であるクラッド・モード・ストリッパ装置はない。したがって、本発明は、こうした装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、コアおよび第1のクラッドを有する光ファイバのクラッド・モードを除去するクラッド・モード・ストリッパが提供され、クラッド・モード・ストリッパは、
クラッド・モードの光を反射するための反射表面を有するベースであって、光ファイバは、反射表面に近接して配置され、光ファイバから熱を連れ去るために反射表面に熱的に結合される、ベースと、
第1の表面を有する透明材料のブロックであって、第1の表面が、ベースの反射表面上に配置され、ブロックから熱を連れ去るために反射表面に熱的に結合されている、ブロックとを備え、
ブロックの第1の表面は、光ファイバを受け入れる溝を有し、
光ファイバの第1のクラッドは、クラッド・モードを光ファイバの第1のクラッドから除去するために溝に光学的に結合し、
溝は、ブロックの第1の表面が反射表面上に配置された後で、光ファイバに実質的な量の機械的応力を加えないように十分に深いものであり、
ブロックの透明材料の屈折率は、光ファイバの第1のクラッドの屈折率と等しいまたはそれより大きい。
【0012】
本発明の別の態様によれば、コアおよび第1のクラッドを有する光ファイバのクラッド・モードを除去するクラッド・モード・ストリッパがさらに提供され、クラッド・モード・ストリッパは、
ベースと、
透明材料の第1のブロックであって、ベース内にまたはベース上に配置され、第1のブロックから熱を連れ去るためにベースに熱的に結合し、第1の表面を有する、第1のブロックと、
第1のブロックの第1の表面に接触する第1の表面を有する、透明材料の第2のブロックとを備え、
第1または第2のブロックの第1の表面は、光ファイバ用の溝を有し、
光ファイバの第1のクラッドは、光ファイバの第1のクラッドからクラッド・モードを除去するために溝に光学的に結合され、
除去されたクラッド・モードの光を少なくとも部分的に遮断するために第1および第2のブロックを囲むための、ベースに熱的に結合した不透明カバーを備える。
【0013】
本発明の別の態様によれば、コアおよび第1のクラッドを有する光ファイバのクラッド・モードを除去する方法がさらに提供され、方法は、
(a)クラッド・モードの光を反射するために、ベースの反射表面に近接して光ファイバを配置するステップと、
(b)光ファイバから熱を連れ去るために光ファイバをベースに熱的に結合させるステップと、
(c)ベースの反射表面上に透明材料のブロックの第1の表面を配置し、ブロックから熱を連れ去るために第1の表面をベースに熱的に結合させるステップであって、
ブロックの第1の表面は光ファイバ用の溝を有し、
溝は、ブロックの第1の表面が反射表面上に配置された後で、光ファイバに実質的な量の機械的応力を加えないように十分に深いものであり、
ブロックの透明材料の屈折率は、光ファイバの第1のクラッドの屈折率と等しいまたはそれより大きい、ステップと、
(d)クラッド・モードを光ファイバの第1のクラッドから除去するために光ファイバの第1のクラッドを溝に光学的に結合させるステップとを含む。
【0014】
例示的な実施形態は、ここで図面に関連して述べられるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のクラッド・モード・ストリッパの側断面図である。
【図2】図1のクラッド・モード・ストリッパのチャネル領域の断面図であり、断面は図1のラインA−Aに沿って切取られる。
【図3】チャネルに沿って切取ったチャネル領域の一実施形態の断面図である。
【図4】溝付き表面を有する透明材料のブロックの断面図である。
【図5】除去された光を検知する光センサを有するクラッド・モード・ストリッパの側断面図である。
【図6】本発明のクラッド・モード・ストリッパの別の実施形態の側断面図である。
【図7】図1のクラッド・モード・ストリッパのプロトタイプの拡大図である。
【図8】図6のクラッド・モード・ストリッパのプロトタイプの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本教示は、種々の実施形態および実施例と共に述べられるが、本教示がこうした実施形態に限定されることは意図されない。反対に、本教示は、当業者によって理解されるように、種々の代替物、変更物、および均等物を包含する。図1〜8では、同じ数字は同じ要素を指す。
【0017】
図1および図2を参照すると、本発明のクラッド・モード・ストリッパ装置100が示される。クラッド・モード・ストリッパ装置100は、反射表面104を有するベース102と、透明材料のブロック106であって、ベース102上に配置され、ブロック106から熱を連れ去るためにベース102に熱的に結合される、透明材料のブロック106と、除去されたクラッド・モードの光を遮断するための、ベース102に熱的に結合したオプションの不透明カバー108と、熱をベース102から除去するための、ベース102に結合した熱電(thermoelectric)(TEC)クーラなどのオプションの放熱器110を有する。ブロック106の底部表面はベース102上に配置される。溝118は、ブロック106内に設けられ、底部表面107から延在する。溝118は、図2でよりよく見られる。コア114および第1のクラッド116を有する光ファイバ112は、光ファイバ112用の溝118内に配置される。光ファイバ112の第1のクラッド116は、光ファイバ112の第1のクラッド116からクラッド・モードを除去するために溝118に光学的に結合される。溝118は、ブロック106の底部表面107がベース102の反射表面104上に配置された後で、光ファイバ112に実質的な量の機械的応力を加えないように光ファイバ112を受け入れるための深さを有する。一実施形態では、溝は、ファイバ径の少なくとも80%を受け入れるのに十分に深い。クラッド・モード光がブロック106内に結合することを保証するために、ブロック106の透明材料の屈折率は、光ファイバ112の第1のクラッド116の屈折率と等しいまたはそれより大きい。
【0018】
動作時、クラッド光は、破線矢印120および実線矢印121で示すように、光ファイバ112の第1のクラッド116から出て、ブロック106内に結合する。破線矢印120は、図1で上方に、すなわち不透明スクリーン108に向かって放出される光に対応し、実線矢印121は、図1で下方に、すなわち反射表面104に向かって放出される光に対応する。反射表面104から反射されると、光121は、実線矢印121が示すように、スクリーン108に向かって上方に伝搬し、スクリーン108は、クラッド光121を吸収する。
【0019】
有利なことには、光ファイバ112は、ベース102の反射表面104に近接し、かつ、熱接触状態で配置される。反射ベース102に対する近接性および反射ベース102との良好な熱接触の結果として、黒矢印122で概略的に示すように、ファイバ112からベース102へ、そして放熱器110へ熱が効率的に伝達されるため、ファイバ112は、過熱を防止される。したがって、クラッド・モード除去装置100では、ベース102に対する近接性による光ファイバ112の良好な放熱が、ベース102の反射表面104による効果的な迷光管理と独自に組み合わされる。良好な熱接触は、除去される光パワーの1ワット当たり0.1℃未満のファイバ112の温度上昇をもたらす。
【0020】
本発明の一実施形態では、ブロック106と不透明カバー108との間の熱結合を低減するために、ブロック106と不透明カバー108との間に空隙124が設けられる。そのため、クラッド・モード光120および121を吸収する結果として生成される熱は、ファイバ112に伝達されず、ベース102に直接伝達される。放熱器110およびベース102は、組合されて単一要素になることができる、または、カバー108は、放熱器110に直接接続されることができる。図1では、カバー108は、放熱器110とベース102の両方に物理的かつ熱的に接続されて示される。
【0021】
従来技術の装置と比較してクラッド・モード・ストリッパ100の1つの利点は、クラッド・モード・ストリッパ100が、クラッド・モードの高い光パワー・レベルに対してスケーラブルであることである。クラッド・モード・ストリッパ100のパワー・ハンドリング能力は、ブロック106およびベース102の総合寸法ならびに溝118の長さに依存する。これらの寸法をスケールアップすることによって、非常に高いパワー・ハンドリング能力が達成されうる。クラッド・モード・ストリッパ100のプロトタイプが、少なくとも150Wの除去された光パワーをハンドリングすることが可能であることが実験的に立証された。
【0022】
図2を参照すると、クラッド・モード・ストリッパ装置100のチャネル118の領域が断面図で示される。断面は、図1のラインA−Aに沿って切取られる。屈折率整合流体またはゲルの層200は、光ファイバ112の第1のクラッド116とブロック106の溝118との間の光学結合を改善するために、光ファイバ112を少なくとも部分的に囲む溝118内に配置される。さらに、層200は、ファイバ112とベース102との間の熱結合を改善するように機能する。層200は、シリコーン、アクリル酸塩、またはゾルゲル材料を含みうる。
【0023】
ブロック106は、好ましくは0.5W/(m*K)より良好な熱伝導率を有する透明材料で作られうる。サファイアは、20W/(m*K)より高い熱伝導率、高い透明度、および優れた機械的特性のために、この用途についての優れた材料である。ブロック106はまた、部分的に吸収性があるように作られることができ、その場合、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)材料が適切である可能性がある。あるいは、ブロック106は、セラミックYAGなどの光セラミック材料で作られうる。好ましくは、ブロック106は、直方体形状を有する。もちろん、他の形状も使用されうる。
【0024】
図2では、溝118は、長方形断面を有するものとして示される。溝118はまた、円柱または多角形断面などの異なる形状の断面を有しうる。さらに、低い開口数(NA)のクラッド・モードの除去を改善するために、溝118は、ブロック106の底部表面107の平面内で湾曲する部分を含むように作られて、ファイバ112が、わずかな曲げを持って溝118内に載置されることが可能になる。こうした溝の例は以下で示されるであろう。
【0025】
光ファイバ112は、第1のクラッド116の周りに配置された第2のクラッド(図示せず)を有するダブルクラッドまたはマルチクラッド光ファイバでありうる。この場合、光ファイバ112の第2のクラッドは、溝118内に配置された光ファイバ112の長さに沿って少なくとも部分的に除去されて、第1のクラッド116を溝118に光学的に結合させうる。光ファイバ112は、アクティブ光ファイバ、すなわち増幅材料がドープされたコアを有するファイバでありうる。光ファイバ112は、シングル・モードまたはマルチモード・ファイバでありうる。除去される必要があるのが、第2のクラッド内のクラッド・モード光であるとき、第2のクラッドは除去される必要はない。
【0026】
光ファイバ112はまた、クラッド・モード・ストリッパ100のクラッド・モード除去性能を改善するためにテーパが付けられうる。ここで図3を参照すると、チャネル118の領域の長手方向断面が示される。クラッド316によって囲まれるコア314を有するファイバ312は、その長さの一部分300に沿ってテーパが付けられる。ファイバ312のテーパ付けの結果として、クラッド・ビーム320A〜320Dがコア314に関して形成する角度は、ビーム320Aからビーム320Dに進むときに増加する。図3で見られる角度の増加は、テーパ付き部分300全体に沿うクラッド・モード除去を容易にする。
【0027】
図4を見ると、ブロック406の断面図が示される。ブロック406は、図1のクラッド・モード・ストリッパ100のブロック106に対応し、ブロック106と同じ目的を果たす。ブロック406と106との差は、矢印420および421でそれぞれ概略的に示すように、除去されたクラッド・モードの光ビーム120および121を散乱させるために、ブロック406が、拡大挿入部400で示す溝付き表面401を有することである。散乱は、ビーム120および121が、ブロック406の外側面からブロック406に戻るように反射すること、および、「ホット・スポット(hot spot)」を形成するかまたは光ファイバ112に再入することを防止する。溝を形成する代わりに、表面401は、同じ目的で、「乳濁性の(milky)」外観になるように粗化されうる。
【0028】
ここで図5を参照すると、クラッド・モード・ストリッパ装置500は、側断面図で示される。クラッド・モード・ストリッパ装置500は、光センサ501がスクリーン108内に搭載されており、除去された光ビーム120、121の光パワーを検知するための適した場所に配置されている。光センサ501によって測定される除去された光の光パワーは、たとえば除去された光パワーが所定のレベルを超えないことを保証するために、制御目的で使用されうる。
【0029】
図6を見ると、クラッド・モード・ストリッパ装置600は、側断面図で示される。クラッド・モード・ストリッパ装置600は、1つのブロック106の代わりに2つのブロック606Aおよび606Bを有する点でクラッド・モード・ストリッパ100と異なる。第1のブロック606Aは、第1のブロック606Aから熱を連れ去るために、ベース102上に配置され、ベース102に熱的に結合される。第1のブロック606Aは第2のブロック606Bに接触する。第1および第2のブロック606Aおよび606Bの接合表面の一方または両方は、光ファイバ112用の溝618を有する。光ファイバ112の第1のクラッド116は、光ファイバ112の第1のクラッド116からクラッド・モード光を除去するために、溝618に光学的に結合される。好ましくは、第1および第2のブロック606Aおよび606Bの接合表面は、光ファイバ112から熱および光を連れ去るために、互いに熱的かつ光学的に結合される。さらに好ましくは、第2のブロック606Bと不透明カバー108との間の熱結合を低減するために、第2のブロック606Bと不透明カバー108との間に空隙124が残される。
【0030】
有利なことには、第1のブロック606Aは、屈折率整合ゲル200とベース102との間の障壁を提供する。ファイバ112からの熱が、第1のブロック606Aからベース102に効率的に伝達されることを保証するために、第1のブロック606Aは、サファイアなどの高い熱伝導率を有する材料から製造されることができ、同様に効率的な熱伝達のために、第1のブロック606Aは、程よく製造されうる程度に薄く作られうる。例を挙げると、第1のブロック606Aは、サファイアで作られる場合、1mm程度の薄さに作られうるが、2mmの厚さがより実用的である。一方、第1のブロック606Aの厚さを増加させることは、ホット・スポットの形成を回避するのに役立つ。その理由は、厚さが増加すると、光がファイバ112からより発散するからである。第1のブロック606Aの1つの実用的な厚さの範囲は、1mmと25mmとの間である。
【0031】
一実施形態では、ベース102は反射性であるが、クラッド・モード・ストリッパ600は、ベース102が反射性でないかまたは部分的に反射性であるときでも、働くであろう。ベース102が、100%反射性でない、たとえば75%以下の反射性であるとき、より多くの光エネルギーが、放熱器110に向かって送られ、この場合望ましい場合がある。
【0032】
ここで図7を参照すると、クラッド・モード・ストリッパ700のプロトタイプの拡大図が示される。クラッド・モード・ストリッパ700は、クラッド・モード・ストリッパ100と同様である。クラッド・モード・ストリッパ700は、反射ベース702、ガラス・ブロック706、および不透明カバー708を有する。反射ベース702および不透明カバー708は、放熱器(図示せず)に取付けられる。ガラス・ブロック706は、ファイバ(図示せず)のためにその底部表面上に湾曲溝718を有する。ガラス・ブロック706の上側表面701は、図4のガラス・ブロック406の溝付き表面401と同様に溝付きである。
【0033】
図8を見ると、クラッド・モード・ストリッパ800のプロトタイプの拡大図が示される。クラッド・モード・ストリッパ700は、クラッド・モード・ストリッパ400と同様である。クラッド・モード・ストリッパ800は、ベース802、2つのガラス・ブロック806Aおよび806B、ならびに不透明カバー808を有する。不透明カバー808は、ベース802に取付けられ、ガラス・ブロック806Aおよび806Bを囲む。底部ガラス・ブロック806Aは、ファイバ(図示せず)のためにその上部表面上に湾曲溝818を有する。
【0034】
本発明によれば、光ファイバ112のクラッド・モードを除去する一般的な方法は、
(a)クラッド・モードの光を反射するために、ベース102の反射表面104に近接して光ファイバ112を配置するステップと、
(b)光ファイバ112から熱を連れ去るために光ファイバ112をベース102に熱的に結合させるステップと、
(c)ベース102の反射表面104上に透明材料のブロック106の底部表面107を配置し、ブロック106から熱を連れ去るために底部表面107をベース102に熱的に結合させるステップと、
(d)クラッド・モードを光ファイバ112の第1のクラッド116から除去するために光ファイバ112の第1のクラッド116を溝118に光学的に結合させるステップとを含む。
【0035】
好ましくは、この方法はまた、
(e)除去されたクラッド・モードの光を少なくとも部分的に遮断するためにブロック106を囲むための不透明カバー108を配置するステップと、
(f)不透明カバー108から熱を連れ去るために、不透明カバー108をベース102に(または放熱器110に)熱的に結合させるステップであって、この熱はステップ(e)における光を遮断する結果として生成されるものであるステップとを含む。さらに好ましくは、ステップ(e)にて、不透明カバー108は、ブロック106と不透明カバー108との間の熱的結合を低減するために、ブロック106と不透明カバー108との間に空隙124を残すように配置される。
【0036】
本発明のクラッド・モード・ストリッパ100、500、600、700、および800ならびに本発明の方法は、ファイバ・レーザ、ファイバ増幅器、ハイパワー・ダイオード・レーザまたはダイオード・レーザ・アレイ用の送出ファイバなどのファイバ送出システム、およびクラッド・モード管理が必要とされる他のシステムにおいて、クラッド・モードを除去するために使用されうる。
【0037】
本発明の1つまたは複数の実施形態の先の説明は、例証および例示のために提示された。網羅的であること、および、開示される厳密な形態に本発明を限定することは意図されない。上記教示に照らして、多くの変更および変形が可能である。本発明の範囲は、この詳細に説明ではなく、添付特許請求の範囲によって制限されることが意図される。
【符号の説明】
【0038】
100、500、600、700、800 クラッド・モード・ストリッパ
102、702、802 ベース
104 反射表面
106、406、606A、606B、706、806A、806B 透明材料のブロック
107 底部表面
108、708、808 不透明カバー
110 放熱器
112、312 光ファイバ
114、314 コア
116、316 クラッド
118、618 溝(チャネル)
120、121 光ビーム
122 黒矢印
124 空隙
200 屈折率整合流体またはゲルの層
300 テーパ付き部分
320A、320B、320C、320D クラッド・ビーム
400 拡大挿入部
401 溝付き表面
420、421 矢印
501 光センサ
701 上側表面
718、818 湾曲溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアおよび第1のクラッドを有する光ファイバのクラッド・モードを除去するクラッド・モード・ストリッパであって、
前記クラッド・モードの光を反射するための反射表面を有するベースであって、前記光ファイバは、前記反射表面に沿ってかつ前記反射表面に近接して配置され、前記光ファイバから熱を連れ去るために前記反射表面に熱的に結合される、ベースと、
第1の表面を有する透明材料のブロックであって、前記第1の表面が、前記ベースの前記反射表面上に配置され、前記ブロックから熱を連れ去るために前記反射表面に熱的に結合されている、ブロックとを備え、
前記ブロックの前記第1の表面は、前記光ファイバを受け入れる溝を有し、
前記光ファイバの前記第1のクラッドは、前記クラッド・モードを前記光ファイバの前記第1のクラッドから除去するために前記溝に光学的に結合され、
前記溝は、前記ブロックの前記第1の表面が前記反射表面上に配置された後で、前記光ファイバに実質的な量の機械的応力を加えないように十分に深いものであり、
前記ブロックの前記透明材料の屈折率は、前記光ファイバの前記第1のクラッドの屈折率と等しいまたはそれより大きい、クラッド・モード・ストリッパ。
【請求項2】
前記除去されたクラッド・モードの光を少なくとも部分的に遮断するために前記ブロックを囲むための、前記ベースに熱的に結合した不透明カバーをさらに備える請求項1に記載のクラッド・モード・ストリッパ。
【請求項3】
前記ブロックと前記不透明カバーとの間の熱的結合を低減するために、前記ブロックと前記不透明カバーとの間に空隙をさらに備える請求項2に記載のクラッド・モード・ストリッパ。
【請求項4】
前記ブロックは、前記除去されたクラッド・モードの光を散乱させるために、粗化されたまたは溝付き表面を有する請求項1に記載のクラッド・モード・ストリッパ。
【請求項5】
前記ブロックの前記透明材料は、サファイア、イットリウム・アルミニウム・ガーネット、および光学セラミックからなる群から選択される請求項1に記載のクラッド・モード・ストリッパ。
【請求項6】
前記溝は、前記光ファイバの直径の少なくとも80%を受け入れる深さを有する請求項1に記載のクラッド・モード・ストリッパ。
【請求項7】
前記溝は、前記クラッド・モードの除去を容易にするために、前記第1の表面の平面内で湾曲する部分を含む請求項1に記載のクラッド・モード・ストリッパ。
【請求項8】
前記光ファイバは、第1のクラッドの周りに配置された第2のクラッドをさらに備え、前記光ファイバの前記第2のクラッドは、前記第1のクラッドを前記溝に光学的に結合するために、前記溝内に配置された前記光ファイバの長さに沿って少なくとも部分的に除去される請求項1に記載のクラッド・モード・ストリッパ。
【請求項9】
熱を前記ベースから除去するための、前記ベースに結合された放熱器をさらに備える請求項1に記載のクラッド・モード・ストリッパ。
【請求項10】
前記クラッド・モードの除去を容易にするために、前記溝と前記光ファイバとの間に配置された屈折率整合層をさらに備える請求項1に記載のクラッド・モード・ストリッパ。
【請求項11】
前記屈折率整合層は、シリコーン、アクリル酸塩、およびゾルゲル材料からなる群から選択される請求項10に記載のクラッド・モード・ストリッパ。
【請求項12】
前記光ファイバをさらに備え、前記光ファイバは、前記溝内に配置されたテーパ付き部分を含み、前記テーパ付き部分に沿って前記クラッド・モードを徐々に除去するのを容易にする請求項1に記載のクラッド・モード・ストリッパ。
【請求項13】
前記光ファイバをさらに備え、前記光ファイバは、アクティブ光ファイバを含む請求項1に記載のクラッド・モード・ストリッパ。
【請求項14】
前記除去されたモードの光の量を検知するように配置された光学センサをさらに備える請求項1に記載のクラッド・モード・ストリッパ。
【請求項15】
コアおよび第1のクラッドを有する光ファイバのクラッド・モードを除去するクラッド・モード・ストリッパであって、
ベースと、
透明材料の第1のブロックであって、前記ベース内にまたは前記ベース上に配置され、前記第1のブロックから熱を連れ去るために前記ベースに熱的に結合し、第1の表面を有する、第1のブロックと、
前記第1のブロックの前記第1の表面に接触する第1の表面を有する、透明材料の第2のブロックとを備え、
前記第1および第2のブロックの少なくとも一方は、前記光ファイバを受け入れるために、前記第1および第2のブロックの少なくとも一方の前記第1の表面の平面内に配置された溝を有し、前記光ファイバの前記第1のクラッドは、前記光ファイバの前記第1のクラッドから前記クラッド・モードを除去するために前記溝に光学的に結合され、
前記除去されたクラッド・モードの光を少なくとも部分的に遮断するために前記第1および第2のブロックを囲むための、前記ベースに熱的に結合した不透明カバーを備えるクラッド・モード・ストリッパ。
【請求項16】
前記第1および第2のブロックの前記第1の表面は、前記光ファイバから熱および光を連れ去るために、互いに熱的かつ光学的に結合される請求項15に記載のクラッド・モード・ストリッパ。
【請求項17】
前記第1のブロックまたは前記第2のブロックと前記不透明カバーとの間の熱的結合を低減するために、前記第1のブロックまたは前記第2のブロックと前記不透明カバーとの間に空隙をさらに備える請求項15に記載のクラッド・モード・ストリッパ。
【請求項18】
前記第1のブロックの厚さは、1mmと25mmとの間である請求項15に記載のクラッド・モード・ストリッパ。
【請求項19】
コアおよび第1のクラッドを有する光ファイバのクラッド・モードを除去する方法であって、
(a)前記クラッド・モードの光を反射するために、ベースの反射表面に沿ってかつ前記反射表面に近接して前記光ファイバを配置するステップと、
(b)前記光ファイバから熱を連れ去るために前記光ファイバを前記ベースに熱的に結合させるステップと、
(c)前記ベースの前記反射表面上に透明材料のブロックの第1の表面を配置し、前記ブロックから熱を連れ去るために前記第1の表面を前記ベースに熱的に結合させるステップであって、
前記ブロックの前記第1の表面は前記光ファイバ用の溝を有し、
前記溝は、前記ブロックの前記第1の表面が前記反射表面上に配置された後で、前記光ファイバに実質的な量の機械的応力を加えないように十分に深いものであり、
前記ブロックの前記透明材料の屈折率は、前記光ファイバの前記第1のクラッドの屈折率と等しいまたはそれより大きい、ステップと、
(d)前記クラッド・モードを前記光ファイバの前記第1のクラッドから除去するために前記光ファイバの前記第1のクラッドを前記溝に光学的に結合させることを含む方法。
【請求項20】
(e)前記除去されたクラッド・モードの光を少なくとも部分的に遮断するために前記ブロックを囲むための不透明カバーを配置するステップと、
(f)前記不透明カバーから熱を連れ去るために前記不透明カバーを前記ベースに熱的に結合させるステップであって、前記熱はステップ(e)における光を遮断する結果として生成されるものであるステップとをさらに含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ステップ(e)にて、前記不透明カバーは、前記ブロックと前記不透明カバーとの間の熱的結合を低減するために、前記ブロックと前記不透明カバーとの間に空隙を残すように配置される請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記除去されたクラッド・モードの光を散乱させるために、粗化することまたは透明材料のブロックに溝を設けることをさらに含む請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−14173(P2012−14173A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143603(P2011−143603)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(502151820)ジェイディーエス ユニフェイズ コーポレーション (90)
【氏名又は名称原語表記】JDS Uniphase Corporation
【住所又は居所原語表記】430 N. McCarthy Boulevard, Milpitas, California, 95035, USA
【Fターム(参考)】