説明

スケール変換装置、方法及びプログラム

【課題】変換前の楽譜データのルート及びスケールを指定しなくても、スケール変換を行うことができるスケール変換装置を提供することを課題とする。
【解決手段】複数の音符データを含む楽譜データを記憶する記憶手段と、変換後のルート及びスケールを指定するスケール指定手段と、前記記憶手段に記憶されている音符データが前記スケール指定手段により指定されたルート及びスケール上の音階音として存在する場合には前記記憶手段に記憶されている音符データをそのまま確定して使用し、前記記憶手段に記憶されている音符データが前記スケール指定手段により指定されたルート及びスケール上の音階音として存在しない場合には、前記スケール指定手段により指定されたルート及びスケール上の音階音であって前記記憶手段に記憶されている音符データに最も近い音高の音符データに変換するスケール変換手段とを有することを特徴とするスケール変換装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スケール変換装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、スケール変換装置のスケール変換画面を示す図である。ユーザは、現在の音階のルート及びスケール301を選択し、さらに新規の音階のルート及びスケール302を選択する。すると、現行の音階と新規の音階との間の変換テーブル303が表示され、現在の音階から新規の音階へスケール変換を行うことができる。
【0003】
しかし、一般人(特に初心者)には、楽譜を見て、その楽譜のルート及びスケールを判別し、現在の音階のルート及びスケール301を選択することは困難であり、音楽的知識を必要とする。現在の音階のルート及びスケール301を選択しないと、スケール変換を行うことができないため、スケール変換を容易に行うことができない。
【0004】
また、特開平3−37698号公報には、旋律内の各構成音を旋律の音階上の位置として求め、求められた各構成音の音階上の位置を変換の目的とする音階上の位置に対応させることにより旋律間の音階変換を行うことを特徴とした旋律データ変換方式が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平3−37698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、変換前の楽譜データのルート及びスケールを指定しなくても、スケール変換を行うことができるスケール変換装置、方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスケール変換装置は、複数の音符データを含む楽譜データを記憶する記憶手段と、変換後のルート及びスケールを指定するスケール指定手段と、前記記憶手段に記憶されている音符データが前記スケール指定手段により指定されたルート及びスケール上の音階音として存在する場合には前記記憶手段に記憶されている音符データをそのまま確定して使用し、前記記憶手段に記憶されている音符データが前記スケール指定手段により指定されたルート及びスケール上の音階音として存在しない場合には、前記スケール指定手段により指定されたルート及びスケール上の音階音であって前記記憶手段に記憶されている音符データに最も近い音高の音符データに変換するスケール変換手段とを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明のスケール変換方法は、変換後のルート及びスケールを指定するスケール指定ステップと、記憶手段に記憶されている音符データが前記スケール指定ステップにより指定されたルート及びスケール上の音階音として存在する場合には前記記憶手段に記憶されている音符データをそのまま確定して使用し、前記記憶手段に記憶されている音符データが前記スケール指定ステップにより指定されたルート及びスケール上の音階音として存在しない場合には、前記スケール指定ステップにより指定されたルート及びスケール上の音階音であって前記記憶手段に記憶されている音符データに最も近い音高の音符データに変換するスケール変換ステップとを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明のプログラムは、変換後のルート及びスケールを指定するスケール指定ステップと、記憶手段に記憶されている音符データが前記スケール指定ステップにより指定されたルート及びスケール上の音階音として存在する場合には前記記憶手段に記憶されている音符データをそのまま確定して使用し、前記記憶手段に記憶されている音符データが前記スケール指定ステップにより指定されたルート及びスケール上の音階音として存在しない場合には、前記スケール指定ステップにより指定されたルート及びスケール上の音階音であって前記記憶手段に記憶されている音符データに最も近い音高の音符データに変換するスケール変換ステップとをコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
変換前の楽譜データのルート及びスケールを指定しなくても、変換後のルート及びスケールを指定すれば、スケール変換を行うことができる。これにより、音楽的知識がない人でも、簡単にスケール変換を行い、音楽の変化を楽しむことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図2は、本発明の実施形態によるスケール変換装置(コンピュータ)のハードウエア構成例を示すブロック図である。スケール変換装置は、例えばパーソナルコンピュータで構成される。バス201には、中央処理装置(CPU)202、ROM203、RAM204、ネットワークインタフェース205、入力装置206、出力装置207及び外部記憶装置208が接続されている。
【0012】
CPU202は、データの処理又は演算を行うと共に、バス201を介して接続された各種構成要素を制御するものである。ROM203には、予めCPU202の制御手順(コンピュータプログラム)を記憶させておき、このコンピュータプログラムをCPU202が実行することにより、起動する。外部記憶装置208にコンピュータプログラムが記憶されており、そのコンピュータプログラムがRAM204にコピーされて実行される。RAM204は、データの入出力、送受信のためのワークメモリ、各構成要素の制御のための一時記憶として用いられる。外部記憶装置208は、例えばハードディスク記憶装置やCD−ROM等であり、電源を切っても記憶内容が消えない。CPU202は、RAM204内のコンピュータプログラムを実行することにより、スケール変換装置の処理を行う。
【0013】
ネットワークインタフェース205は、インターネット等のネットワークに接続するためのインタフェースである。入力装置206は、例えばキーボード及びマウス等であり、各種指定又は入力等を行うことができる。出力装置207は、ディスプレイ及びプリンタ等である。出力装置207内のディスプレイには、図4の画面が表示される。
【0014】
図1は、上記のコンピュータプログラムの機能を説明するためのブロック図である。コンピュータがコンピュータプログラムを実行することにより、スケール変換装置(方法)が実現される。スケール変換装置(方法)100は、記憶手段(ステップ)101、スケール指定手段(ステップ)102、音高指定手段(ステップ)103、スケール変換手段(ステップ)104、表示手段(ステップ)105、変換前試聴手段(ステップ)106、変換後試聴手段(ステップ)107及びスケール試聴手段(ステップ)108を有する。
【0015】
図4は、出力装置207内のディスプレイに表示されるスケール変換画面の例を示す図である。ユーザがスケール変換を指示すると、表示手段105は、図4の画面を表示する。記憶手段101は、複数の音符データを含む楽譜データを記憶する。表示手段105は、記憶手段101に記憶されている変換前の楽譜データ401を表示する。ユーザは、入力装置206内のマウスを用いて、変換後のルート404及びスケール405を選択する。すると、それに従い、スケール指定手段102は、変換後のルート404及びスケール405を指定する。ルート404は、C、D、E等の12個の根音の中から選択される。スケール405は、例えばメジャー・スケール、ナチュラル・マイナー・スケール、ハーモニック・マイナー・スケール等の中から選択される。例えば、ルート404は「C」が選択され、スケール405は「ナチュラル・マイナー・スケール」が選択される。表示手段105は、スケール指定手段102により指定されたルート404及びスケール405の音階音の楽譜402を表示する。ユーザは、楽譜402を参照しながら、ルート404及び405を選択することができる。ルート404として「C」が選択され、スケール405として「ナチュラル・マイナー・スケール」が選択された場合、そのスケールの楽譜402の音階音は、「C」、「D」、「E♭」、「F」、「G」、「A♭」、「B♭」である。
【0016】
ユーザがマウスでスケール試聴ボタン409をクリックすると、スケール試聴手段108は、スケール指定手段102により指定されたルート404及びスケール405の音階音の楽譜402を演奏し、ユーザはそれを試聴することができる。これにより、ユーザは、指定したルート404及びスケール405の楽譜402の音階音を、表示により確認することができ、さらに試聴により確認することができる。
【0017】
スケール変換手段104は、記憶手段101に記憶されている音符データがスケール指定手段102により指定されたルート404及びスケール405上の音階音として存在する場合には記憶手段101に記憶されている音符データをそのまま確定して使用し、記憶手段101に記憶されている音符データがスケール指定手段102により指定されたルート404及びスケール405上の音階音として存在しない場合には、スケール指定手段102により指定されたルート404及びスケール405上の音階音であって記憶手段101に記憶されている音符データに最も近い音高の音符データに変換する。
【0018】
表示手段105は、記憶手段101に記憶されている変換前の楽譜データ401、及びスケール変換手段104により変換された変換後の楽譜データ403をならべて表示する。
【0019】
スケール変換手段104は、変換前の楽譜データ401の音を、変換後のルート404及びスケール405上の音階音にすべて丸める。この際、変換前の楽譜データ401の音が、変換後のルート404及びスケール405上の最も近い2個の音階音に対して半音単位の音程差が同じである場合は、なるべくすべてのスケール音を使うように、音の割り当てを行う。
【0020】
また、ユーザは、マウスを用いて、第1のタイプ406又は第2のタイプ407を選択することができる。音高指定手段103は、第1のタイプ406が選択されたときには、記憶手段101に記憶されている音符データを変換する音高として上の音高を指定し、第2のタイプ407が選択されたときには、記憶手段101に記憶されている音符データを変換する音高として下の音高を指定する。スケール変換手段104は、記憶手段101に記憶されている音符データがスケール指定手段102により指定されたルート404及びスケール405上の音階音として存在しない場合には、音高指定手段103の指定に従い、スケール指定手段102により指定されたルート404及びスケール405上の音階音であって、かつ記憶手段101に記憶されている音符データに最も近い上の音高又は下の音高の音符データに変換することができる。その詳細は、後に図5を参照しながら説明する。
【0021】
例えば、変換前の楽譜データ401において、「C」、「D」、「F」、「G」は、変換後のスケールの楽譜402の構成音として存在するので、そのまま、変換後の楽譜データ403でも、「C」、「D」、「F」、「G」として使用する。これに対して、変換前の楽譜データ401において、「E」、「A」、「B」は、変換後のスケールの楽譜402の構成音として存在しないので、それぞれ、変換後の楽譜データ403では、変換後のスケールの楽譜402の構成音として存在する「E♭」、「A♭」、「B♭」に変換される。
【0022】
ユーザがマウスで変換前試聴ボタン408をクリックすると、変換前試聴手段106は、変換前の楽譜データ401を演奏し、ユーザはそれを試聴することができる。また、ユーザがマウスで変換後試聴ボタン410をクリックすると、変換後試聴手段107は、変換後の楽譜データ403を演奏し、ユーザはそれを試聴することができる。これにより、ユーザは、変換前の楽譜データ401及び変換後の楽譜データ403を、表示により比較することができ、さらに試聴により比較することができる。ユーザがマウスで「OK」ボタン411をクリックすると、変換後の楽譜データ403が確定し、記憶手段101に記憶される。
【0023】
ユーザが変換後のルート404及びスケール405を指定すると、「OK」ボタン411をクリックしなくても、その直後にリアルタイムで、表示手段106は、指定したスケールの楽譜402及び変換後の楽譜データ403を表示する。
【0024】
図5は、スケール変換装置のCPU202が行う処理を示すフローチャートである。ステップS501では、スケール変換手段104は、変換前の楽譜データ401の音とスケール指定手段102により指定された楽譜402のスケール上の最も近い音との半音単位の音程差を計算し、その音程差から変換後の楽譜データ403の音高を決定する。
【0025】
図6は、現在の音高601、第1の新しい音高602及び第2の新しい音高603の対応を示すテーブルの図であり、RAM204に記憶される。現在の音高601は、変換前の楽譜データ401の音符データの音高である。第1の新しい音高602及び第2の新しい音高602は、現在の音高601に対応し、変換後の楽譜データ403の音高の候補である。
【0026】
ステップS501において、スケール変換手段104は、上記の最も近い音が2つある場合は、その2つの音高を第1の新しい音高602及び第2の新しい音高603として保存しておく。例えば、現在の音高601の「E3」は、指定スケールの楽譜402の音階音として存在せず、最も近い音として2つの音高「E♭3」及び「F3」が存在する。その場合、スケール変換手段104は、第1の新しい音高602として「E♭3」を記憶し、第2の新しい音高603として「F3」を記憶する。現在の音高601の「A3」及び「B3」も同様である。
【0027】
また、スケール変換手段104は、最も近い音が1つしかない場合は、その最も近い音の音高を第1の新しい音高602として記憶し、第2の新しい音高602は存在しないとして例えば「−1」を記憶させる。例えば、現在の音高601の「C3」は、指定スケールの楽譜402の音階音として存在し、最も近い音として1つの音高「C3」が存在する。その場合、スケール変換手段104は、第1の新しい音高602として「C3」を記憶し、第2の新しい音高603として「−1」を記憶する。現在の音高601の「D3」、「F3」、「G3」及び「C4」も同様である。
【0028】
次に、ステップS502では、スケール変換手段104は、最も近い音が1つであるときには、その最も近い1つの音を変換後の音高として確定する。例えば、現在の音高601の「C3」は、第1の新しい音高602の「C3」をそのまま使用することが確定する。現在の音高601の「D3」、「F3」、「G3」及び「C4」も同様である。
【0029】
次に、ステップS503では、スケール変換手段104は、確定していない音の音名毎に下の音の音名と上の音名の確定している音の数を数える。
【0030】
図7は、音名701、下の音の確定している数702及び上の音の確定している数703のテーブルを示す図であり、RAM204に記憶される。スケール変換手段104は、最も近い音が2つある現在の音高601として音名701が「E」、「A」及び「B」のテーブルを作成する。音名701の「E」は、下の音「E♭」の確定している数702が「0」であり、上の音「F」の確定している数703が「1」である。音名701の「A」は、下の音「A♭」の確定している数702が「0」であり、上の音「B♭」の確定している数703が「0」である。音名701の「B」は、下の音「B♭」の確定している数702が「0」であり、上の音「C」の確定している数703が「2」である。
【0031】
次に、ステップS504では、スケール変換手段104は、下の音の確定している数702及び上の音の確定している数703の一方が0で、他方が1以上である場合には、0の方は使われていない音なので、その音に確定する。例えば、音名701の「E」は下の音「E♭」の確定している数702が0であるので、下の音「E♭」に確定する。また、音名701の「B」は下の音「B♭」の確定している数702が0であるので、下の音「B♭」に確定する。これにより、スケール変換手段104は、現在の音高601の「E3」を第1の新しい音高602の「E♭3」に変換し、現在の音高601の「B3」を第1の新しい音高602の「B♭3」に変換することになる。これにより、音名701の「E」及び「B」が確定し、「A」が未確定になる。
【0032】
次に、ステップS505では、スケール変換手段104は、確定していない音の数が減ったか否かを判定する。例えば、ステップS504の前は確定していない音の数が「E」、「A」及び「B」の3個であったの対し、ステップS504の後では確定していない音の数が「A」の1個に減っている。減っている場合にはステップS503へ戻り、減っていない場合にはステップS506へ進む。
【0033】
ステップS503に戻ると、音名701の「B」が「B♭」に確定しているので、音名701の「A」は、下の音「A♭」の確定している数702が「0」であり、上の音「B♭」の確定している数703が「1」である。
【0034】
次に、ステップS504では、スケール変換手段104は、下の音の確定している数702及び上の音の確定している数703の一方が0で、他方が1以上である場合には、0の方は使われていない音なので、その音に確定する。例えば、音名701の「A」は下の音「A」の確定している数702が0であるので、下の音「A♭」に確定する。
【0035】
上記の処理により、すべての音名701の変換後の音名が確定する。すべての音名701の変換後の音名が確定しないときには、ステップS506へ進む。すなわち、下の音の確定している数702及び上の音の確定している数703が最後まで0の場合又は共に1以上の場合には、ステップS506へ進む。
【0036】
ステップS506では、下の音の確定している数702及び上の音の確定している数703が最後まで0の場合又は共に1以上の場合には、スケール変換手段104は、音高指定手段103により指定された上の音高又は下の音高の音符データへの変換に確定する。例えば、ユーザにより第1のタイプ406が指定されれば、最も近い2つの音の音高のうちの上の音高への変換を確定し、第2のタイプ407が指定されれば、最も近い2つの音の音高のうちの下の音高への変換を確定する。
【0037】
以上のように、スケール変換手段104は、変換前の楽譜データ401の音を、変換後のルート404及びスケール405上の音階音にすべて丸める。この際、変換前の楽譜データ401の音が、変換後のルート404及びスケール405上の最も近い2個の音階音に対して半音単位の音程差が同じである場合は、なるべくすべてのスケール音を使うように、音の割り当てを行う。
【0038】
スケール変換手段104は、記憶手段101に記憶されている音符データがスケール指定手段102により指定されたルート404及びスケール405上の音階音として存在しない場合において、スケール指定手段102により指定されたルート404及びスケール405上の音階音であって記憶手段101に記憶されている音符データに最も近い音高が2個ある場合であって、最も近い2個の音高のうちの一方が既に確定している音符データの音階音であり、かつ最も近い2個の音高のうちの他方が未だ確定していない音階音である場合には、記憶手段101に記憶されている音符データを確定していない音階音であって最も近い音高の音符データへ変換する。
【0039】
また、音高指定手段103は、記憶手段101に記憶されている音符データを変換する音高として上の音高(第1のタイプ406)又は下の音高(第2のタイプ407)を指定する。スケール変換手段104は、記憶手段101に記憶されている音符データがスケール指定手段102により指定されたルート404及びスケール405上の音階音として存在しない場合において、スケール指定手段102により指定されたルート404及びスケール405上の音階音であって記憶手段101に記憶されている音符データに最も近い音高が2個ある場合であって、最も近い2個の音高が共に未だ確定していない音階音である場合又は共に既に確定している音階音である場合には、記憶手段101に記憶されている音符データを最も近い2個の音高のうちで音高指定手段103により指定された上の音高(第1のタイプ406)又は下の音高(第2のタイプ407)の音符データへ変換する。
【0040】
丸める際にスケール上の最も近い音が2個ある場合、ステップS501〜S505の処理を行わずに、仮にすべてについてステップS506のように強制的に上の音又は下の音で丸めてしまう場合を説明する。例えば、図4の場合、スケール上の最も近い音が2個あるE、A、Bを強制的に下の音で丸めれば、楽譜403のようになる。しかし、次に、この楽譜403をCのメジャー・スケールに変換する場合、スケール上の最も近い音が2個あるE♭、A♭、B♭を下の音で丸めてしまうと、C、D、D、F、G、G、A、Cというスケールになってしまう。つまり、スケール上の最も近い音が2個ある場合に強制的にどちらかの音に丸めるような処理だと、同じ音を重複して使用してしまい、スケールの音で使わない音が出てきてしまう。また、今、例を挙げた、Cメジャー・スケールを一度Cナチュラル・マイナー・スケールにして、またCメジャー・スケールに戻すような処理をした時に、元に戻らなくなってしまう。本実施形態の図5のスケール変換方法だと、このようなケースでも問題なく変換できる利点がある。
【0041】
なお、本実施形態においては、最後まで音名が確定しないとき、全ての未確定音名を、音高指定手段103により指定された上の音高又は下の音高の音符データヘの変換に確定するようにしているが、この音高指定手段103による指定は、必ずしも図4の第1のタイプ406、第2のタイプ407のように全ての未確定音名に対して上の音高又は下の音高のように2種類に確定するものである必要はなく、例えば、各未確定音名に対して、上の音高にするか下の音高にするかを尋ねるようにしてもよい。
【0042】
本実施形態は、現在の楽譜データ401の音を新しいスケール上の音にすべて丸める。この際、スケール上の音をなるべく多く使うように音の割り当てを行う。また、現在の楽譜データ401のスケールを指定する必要はない。現在の楽譜データ401のスケールが何であるかを知ることは、特に初心者にとっては難しい。現在の楽譜データ401のスケールを指定しなくても、スケール変換できれば、誰にでも簡単に変換後のスケールを指定して、その音楽の変化を楽しむことができる。
【0043】
変換前の楽譜データのルート及びスケールを指定しなくても、変換後のルート及びスケールを指定すれば、スケール変換を行うことができる。これにより、音楽的知識がない人でも、簡単にスケール変換を行い、音楽の変化を楽しむことができる。
【0044】
本実施形態は、図2のコンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、プログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを記録したCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体又はかかるプログラムを伝送するインターネット等の伝送媒体も本発明の実施形態として適用することができる。また、上記のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。上記のプログラム、記録媒体、伝送媒体及びコンピュータプログラムプロダクトは、本発明の範疇に含まれる。記録媒体としては、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
【0045】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態によるコンピュータプログラムの機能を説明するためのブロック図である。
【図2】本発明の実施形態によるスケール変換装置(コンピュータ)のハードウエア構成例を示すブロック図である。
【図3】スケール変換装置のスケール変換画面を示す図である。
【図4】出力装置内のディスプレイに表示されるスケール変換画面の例を示す図である。
【図5】スケール変換装置のCPUが行う処理を示すフローチャートである。
【図6】現在の音高、第1の新しい音高及び第2の新しい音高の対応を示すテーブルの図である。
【図7】音名、下の音の確定している数及び上の音の確定している数のテーブルを示す図である。
【符号の説明】
【0047】
100 スケール変換装置
101 記憶手段
102 スケール指定手段
103 音高指定手段
104 スケール変換手段
105 表示手段
106 変換前試聴手段
107 変換後試聴手段
108 スケール試聴手段
201 バス
202 CPU
203 ROM
204 RAM
205 ネットワークインタフェース
206 入力装置
207 出力装置
208 外部記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の音符データを含む楽譜データを記憶する記憶手段と、
変換後のルート及びスケールを指定するスケール指定手段と、
前記記憶手段に記憶されている音符データが前記スケール指定手段により指定されたルート及びスケール上の音階音として存在する場合には前記記憶手段に記憶されている音符データをそのまま確定して使用し、前記記憶手段に記憶されている音符データが前記スケール指定手段により指定されたルート及びスケール上の音階音として存在しない場合には、前記スケール指定手段により指定されたルート及びスケール上の音階音であって前記記憶手段に記憶されている音符データに最も近い音高の音符データに変換するスケール変換手段と
を有することを特徴とするスケール変換装置。
【請求項2】
前記スケール変換手段は、前記記憶手段に記憶されている音符データが前記スケール指定手段により指定されたルート及びスケール上の音階音として存在しない場合において、前記スケール指定手段により指定されたルート及びスケール上の音階音であって前記記憶手段に記憶されている音符データに最も近い音高が2個ある場合であって、前記最も近い2個の音高のうちの一方が既に確定している音符データの音階音であり、かつ前記最も近い2個の音高のうちの他方が未だ確定していない音階音である場合には、前記記憶手段に記憶されている音符データを前記確定していない音階音であって最も近い音高の音符データへ変換することを特徴とする請求項1記載のスケール変換装置。
【請求項3】
さらに、前記記憶手段に記憶されている音符データを変換する音高として上の音高又は下の音高を指定する音高指定手段を有し、
前記スケール変換手段は、前記記憶手段に記憶されている音符データが前記スケール指定手段により指定されたルート及びスケール上の音階音として存在しない場合において、前記スケール指定手段により指定されたルート及びスケール上の音階音であって前記記憶手段に記憶されている音符データに最も近い音高が2個ある場合であって、前記最も近い2個の音高が共に未だ確定していない音階音である場合又は共に既に確定している音階音である場合には、前記記憶手段に記憶されている音符データを前記最も近い2個の音高のうちで前記音高指定手段により指定された上の音高又は下の音高の音符データへ変換することを特徴とする請求項2記載のスケール変換装置。
【請求項4】
さらに、前記記憶手段に記憶されている変換前の楽譜データ、及び前記スケール変換手段により変換された変換後の楽譜データをならべて表示する表示手段を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスケール変換装置。
【請求項5】
さらに、前記変換前の楽譜データの演奏により試聴するための変換前試聴手段と、
前記変換後の楽譜データの演奏により試聴するための変換後試聴手段とを有することを特徴とする請求項4記載のスケール変換装置。
【請求項6】
前記表示手段は、前記スケール指定手段により指定されたルート及びスケールの音階音の楽譜を表示することを特徴とする請求項4記載のスケール変換装置。
【請求項7】
さらに、前記スケール指定手段により指定されたルート及びスケールの音階音の楽譜の演奏により試聴するためのスケール試聴手段とを有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のスケール変換装置。
【請求項8】
変換後のルート及びスケールを指定するスケール指定ステップと、
記憶手段に記憶されている音符データが前記スケール指定ステップにより指定されたルート及びスケール上の音階音として存在する場合には前記記憶手段に記憶されている音符データをそのまま確定して使用し、前記記憶手段に記憶されている音符データが前記スケール指定ステップにより指定されたルート及びスケール上の音階音として存在しない場合には、前記スケール指定ステップにより指定されたルート及びスケール上の音階音であって前記記憶手段に記憶されている音符データに最も近い音高の音符データに変換するスケール変換ステップと
を有することを特徴とするスケール変換方法。
【請求項9】
変換後のルート及びスケールを指定するスケール指定ステップと、
記憶手段に記憶されている音符データが前記スケール指定ステップにより指定されたルート及びスケール上の音階音として存在する場合には前記記憶手段に記憶されている音符データをそのまま確定して使用し、前記記憶手段に記憶されている音符データが前記スケール指定ステップにより指定されたルート及びスケール上の音階音として存在しない場合には、前記スケール指定ステップにより指定されたルート及びスケール上の音階音であって前記記憶手段に記憶されている音符データに最も近い音高の音符データに変換するスケール変換ステップと
をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−186073(P2010−186073A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30441(P2009−30441)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)
【Fターム(参考)】