説明

スケール防止剤および(メタ)アクリル酸系重合体

【課題】リン酸カルシウムに対するスケール防止能が極めて優れたスケール防止剤、および、そのようなスケール防止剤に有用な(メタ)アクリル酸系重合体を提供する。
【解決手段】本発明のスケール防止剤は、特定構造の(メタ)アクリル酸系単量体(A)由来の構成単位(a)と、特定構造のスルホン酸系単量体(B)由来の構成単位(b)と、特定構造の(メタ)アクリル酸系単量体(C)由来の構成単位(c)とを有する(メタ)アクリル酸系重合体を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スケール防止剤および(メタ)アクリル酸系重合体に関する。詳細には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム等のスケールの防止効果に極めて優れたスケール防止剤、および、そのようなスケール防止剤に有用な(メタ)アクリル酸系重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却水系やボイラー水系、海水淡水化装置、パルプ溶解釜、黒液濃縮釜等では、内壁に、炭酸カルシウム、リン酸亜鉛、リン酸カルシウム、水酸化亜鉛、ケイ酸マグネシウム等の析出物(スケール)が付着し、熱効率の低下や局部腐食等を生じることがある。
【0003】
上記のようなスケールを効果的に防止するために、(メタ)アクリル酸系重合体を用いたスケール防止剤が提案されている(特許文献1〜3)。
【0004】
しかし、これまでに提案されている(メタ)アクリル酸系重合体を用いたスケール防止剤においては、リン酸カルシウムに対するスケール防止能は十分ではなかった。
【特許文献1】特開2001−087794号公報
【特許文献2】特開2002−003535号公報
【特許文献3】特開2007−038120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、リン酸カルシウムに対するスケール防止能が極めて優れたスケール防止剤、および、そのようなスケール防止剤に有用な(メタ)アクリル酸系重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスケール防止剤は、式(1)で表される(メタ)アクリル酸系単量体(A)由来の構成単位(a)と、式(2)で表されるスルホン酸系単量体(B)由来の構成単位(b)と、式(3)で表される(メタ)アクリル酸系単量体(C)由来の構成単位(c)とを有する(メタ)アクリル酸系重合体を含む。
【化1】

(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、金属原子、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミノ基を表す。)
【化2】

(式(2)中、R、R、Rは、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、pは0または1を表し、Rは、−CH−、−CH−CH−、−CH−O−CH−、−CO−O−CH−CH−、または−CO−NH−C(CH−を表し、Yは−SOXまたは−CHR−CHを表し、R、Rは、同一または異なって、−OHまたは−SOXを表し、RとRの少なくとも一方は−SOXであり、Xは水素原子、金属原子、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミノ基を表す。)
【化3】

(式(3)中、Rは水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、またはヒドロキシエチル基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基を表し、Rが水素原子またはメチル基の場合にはRは水素原子ではない。)
【0007】
好ましい実施形態においては、上記式(2)において、pが1であり、Rが−CH−O−CH−である。
【0008】
好ましい実施形態においては、上記式(2)において、Yが−CH(OH)−CH−SOXである。
【0009】
好ましい実施形態においては、上記式(3)において、Rが炭素数1〜20のアルキル基である。
【0010】
本発明の別の局面によれば、(メタ)アクリル酸系重合体が提供される。本発明の(メタ)アクリル酸系重合体は、式(1)で表される(メタ)アクリル酸系単量体(A)由来の構成単位(a)と、式(2)で表されるスルホン酸系単量体(B)由来の構成単位(b)と、式(4)で表される(メタ)アクリル酸系単量体(D)由来の構成単位(d)とを有する。
【化4】

(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、金属原子、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミノ基を表す。)
【化5】

(式(2)中、R、R、Rは、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、pは0または1を表し、Rは、−CH−、−CH−CH−、−CH−O−CH−、−CO−O−CH−CH−、または−CO−NH−C(CH−を表し、Yは−SOXまたは−CHR−CHを表し、R、Rは、同一または異なって、−OHまたは−SOXを表し、RとRの少なくとも一方は−SOXであり、Xは水素原子、金属原子、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミノ基を表す。)
【化6】

(式(4)中、mは0、1、または2であり、R10は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【0011】
好ましい実施形態においては、上記式(2)において、pが1であり、Rが−CH−O−CH−である。
【0012】
好ましい実施形態においては、上記式(2)において、Yが−CH(OH)−CH−SOXである。
【0013】
好ましい実施形態においては、上記式(4)において、R10が炭素数1〜20のアルキル基である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、リン酸カルシウムに対するスケール防止能が極めて優れたスケール防止剤、および、そのようなスケール防止剤に有用な(メタ)アクリル酸系重合体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
〔スケール防止剤〕
本発明のスケール防止剤は、式(1)で表される(メタ)アクリル酸系単量体(A)由来の構成単位(a)と、式(2)で表されるスルホン酸系単量体(B)由来の構成単位(b)と、式(3)で表される(メタ)アクリル酸系単量体(C)由来の構成単位(c)とを有する(メタ)アクリル酸系重合体を含む。
【化7】

(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、金属原子、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミノ基を表す。)
【化8】

(式(2)中、R、R、Rは、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、pは0または1を表し、Rは、−CH−、−CH−CH−、−CH−O−CH−、−CO−O−CH−CH−、または−CO−NH−C(CH−を表し、Yは−SOXまたは−CHR−CHを表し、R、Rは、同一または異なって、−OHまたは−SOXを表し、RとRの少なくとも一方は−SOXであり、Xは水素原子、金属原子、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミノ基を表す。)
【化9】

(式(3)中、Rは水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、またはヒドロキシエチル基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基を表し、Rが水素原子またはメチル基の場合にはRは水素原子ではない。)
【0016】
上記(メタ)アクリル酸系重合体中における、式(1)で表される(メタ)アクリル酸系単量体(A)由来の構成単位(a)は、1種のみが存在していても良いし、2種以上が併存していても良い。
【0017】
上記構成単位(a)は、式(5)で表されるように、式(1)で表される(メタ)アクリル酸系単量体(A)において不飽和二重結合が重合反応によって開いて単結合となった形態である。
【化10】

【0018】
上記式(1)、式(5)において、Rは水素原子またはメチル基を表す。
【0019】
上記式(1)、式(5)において、Xは水素原子、金属原子、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミノ基を表す。上記金属原子としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属;アルミニウム;鉄;などが挙げられる。Xは、好ましくは、水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム基であり、より好ましくは、水素原子、ナトリウム、カリウムであり、さらに好ましくは、水素原子、ナトリウムである。
【0020】
上記式(1)で表される(メタ)アクリル酸系単量体(A)の具体例としては、例えば、アクリル酸およびその塩、メタクリル酸およびその塩などが挙げられる。本発明の効果をより一層十分に発現させるために、好ましくは、アクリル酸およびその塩であり、より好ましくは、アクリル酸およびそのナトリウム塩である。
【0021】
上記(メタ)アクリル酸系重合体中における上記構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(c)の合計に対する、上記構成単位(a)の含有割合は、好ましくは60〜95モル%、より好ましくは75〜90モル%である。上記含有割合が60モル%未満であると、スケール防止剤としたときに特に炭酸カルシウムに対するスケール防止能を十分に発現できないおそれがある。上記含有割合が95モル%を超えると、スケール防止剤としたときに特にリン酸カルシウムに対するスケール防止能を十分に発現できないおそれがある。
【0022】
上記(メタ)アクリル酸系重合体中における、式(2)で表されるスルホン酸系単量体(B)由来の構成単位(b)は、1種のみが存在していても良いし、2種以上が併存していても良い。
【0023】
上記構成単位(b)は、式(6)で表されるように、式(2)で表されるスルホン酸系単量体(B)において不飽和二重結合が重合反応によって開いて単結合となった形態である。
【化11】

【0024】
上記式(2)、式(6)において、R、R、Rは、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表す。本発明の効果をより一層十分に発現させるために、好ましくは、R、R、Rの全てが水素原子、または、RとRが水素原子でRがメチル基であり、より好ましくは、R、R、Rの全てが水素原子である。
【0025】
上記式(2)、式(6)において、pは0または1を表す。pが1の場合、Rは、−CH−、−CH−CH−、−CH−O−CH−、−CO−O−CH−CH−、または−CO−NH−C(CH−を表す。本発明の効果をより一層十分に発現させるために、好ましくは、pが1であり、Rが−CH−、−CH−CH−、または−CH−O−CH−であり、より好ましくは、pが1であり、Rが−CH−O−CH−である。
【0026】
上記式(2)、式(6)において、Yは−SOXまたは−CHR−CHを表し、R、Rは、同一または異なって、−OHまたは−SOXを表し、RとRの少なくとも一方は−SOXであり、Xは水素原子、金属原子、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミノ基を表す。上記金属原子としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属;アルミニウム;鉄;などが挙げられる。Xは、好ましくは、水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム基であり、より好ましくは、水素原子、ナトリウム、カリウムであり、さらに好ましくは、水素原子、ナトリウムである。本発明の効果をより一層十分に発現させるために、好ましくは、Yが−CH(OH)−CH−SOXである。
【0027】
上記式(2)で表されるスルホン酸系単量体(B)の具体例としては、例えば、ビニルスルホン酸およびその塩、(メタ)アリルスルホン酸およびその塩、3−(メタ)アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸およびその塩、3−(メタ)アリルオキシ−1−ヒドロキシプロパンスルホン酸およびその塩、2−(メタ)アリルオキシエチレンスルホン酸およびその塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびその塩などが挙げられる。本発明の効果をより一層十分に発現させるために、好ましくは、(メタ)アリルスルホン酸およびその塩、3−(メタ)アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸およびその塩であり、より好ましくは、3−(メタ)アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸およびその塩であり、さらに好ましくは、3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸およびそのナトリウム塩である。
【0028】
上記(メタ)アクリル酸系重合体中における上記構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(c)の合計に対する、上記構成単位(b)の含有割合は、好ましくは5〜40モル%、より好ましくは10〜25モル%である。上記含有割合が5モル%未満であると、スケール防止剤としたときに特にリン酸カルシウムに対するスケール防止能を十分に発現できないおそれがある。上記含有割合が40モル%を超えると、スケール防止剤としたときに特に炭酸カルシウムに対するスケール防止能を十分に発現できないおそれがある。
【0029】
上記(メタ)アクリル酸系重合体中における、式(3)で表される(メタ)アクリル酸系単量体(C)由来の構成単位(c)は、1種のみが存在していても良いし、2種以上が併存していても良い。
【0030】
上記構成単位(c)は、式(7)で表されるように、式(3)で表される(メタ)アクリル酸系単量体(C)において不飽和二重結合が重合反応によって開いて単結合となった形態である。
【化12】

【0031】
上記式(3)、式(7)において、Rは水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、またはヒドロキシエチル基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基を表し、Rが水素原子またはメチル基の場合にはRは水素原子ではない。Rは、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基である。
【0032】
上記炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。本発明の効果をより一層十分に発現させるために、Rは、好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基であり、より好ましくは、炭素数1〜5のアルキル基であり、さらに好ましくは、炭素数3のアルキル基であり、特に好ましくは、n−ブチル基である。
【0033】
上記(メタ)アクリル酸系重合体中における上記構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(c)の合計に対する、上記構成単位(c)の含有割合は、好ましくは2〜20モル%、より好ましくは4〜15モル%である。上記含有割合が2モル%未満であると、スケール防止剤としたときに特にリン酸カルシウムに対するスケール防止能を十分に発現できないおそれがある。上記含有割合が20モル%を超えると、スケール防止剤としたときに特に炭酸カルシウムに対するスケール防止能を十分に発現できないおそれがある。
【0034】
上記(メタ)アクリル酸系重合体の全構成単位中における、上記構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(c)の合計の含有割合は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上である。上記含有割合が80モル%未満であると、スケール防止剤としたときにスケール防止能を十分に発現できないおそれがある。
【0035】
上記(メタ)アクリル酸系単量体(C)の一部をスチレンに代えて用いることも可能である。しかし、その場合、スチレンを併用しない場合に比べて、リン酸カルシウムに対するスケール防止能が低下するおそれがある。従って、本発明のように(メタ)アクリル酸系単量体(C)を上記好ましい範囲で用いることが好ましい。
【0036】
上記(メタ)アクリル酸系重合体は、上記構成単位(a)、構成単位(b)、および構成単位(c)以外に、他の単量体(E)由来の構成単位(e)を有していても良い。他の単量体(E)由来の構成単位(e)は、1種のみが存在していても良いし、2種以上が併存していても良い。他の単量体(E)としては、上記単量体(A)、単量体(B)、および単量体(C)と共重合可能な単量体であれば、任意の適切な単量体を採用し得る。
【0037】
上記(メタ)アクリル酸系重合体の重量平均分子量は、好ましくは、2000〜100000、より好ましくは、3000〜80000、さらに好ましくは4000〜60000である。上記(メタ)アクリル酸系重合体の重量平均分子量が上記範囲内にあると、本発明の効果が一層十分に発現され得る。
【0038】
上記(メタ)アクリル酸系重合体は、任意の適切な方法で製造し得る。例えば、上記単量体(A)、単量体(B)、および単量体(C)を含む単量体成分を重合することにより製造し得る。
【0039】
上記重合方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、溶液重合、バルク重合、懸濁重合、乳化重合などが挙げられる。
【0040】
上記重合の際に溶媒を用い得る溶媒としては、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、水、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜4の低級アルコールなどが挙げられる。溶媒は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0041】
上記重合の際には、任意の適切な重合開始剤を用い得る。重合開始剤は1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。上記重合開始剤としては、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、2,2−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕等のアゾ化合物;過酸化水素;t−ブチルヒドロキシパーオキシド等の過酸化物;などが挙げられる。これらの中でも、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩が好ましい。重合率が向上し、残存単量体量を低減できるからである。重合開始剤の使用量は、例えば、全単量体に対して、0.001〜10重量%である。
【0042】
上記重合の際には、亜硫酸塩を用いても良い。亜硫酸塩としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウムなどが挙げられる。これらの中でも、亜硫酸水素ナトリウムが好ましい。亜硫酸塩は、連鎖移動剤として作用し得る。亜硫酸塩は1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0043】
上記重合の際には、重合助剤を用いても良い。重合助剤としては、例えば、鉄、モール塩(硫酸第1鉄アンモニウム6水和物)等の遷移金属化合物;メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸等のメルカプト化合物;アスコルビン酸塩;などが挙げられる。重合助剤は1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0044】
上記重合の際の重合反応温度は、任意の適切な温度を採用し得る。例えば、50〜150℃が好ましく、70〜120℃がより好ましく、80〜110℃がさらに好ましい。
【0045】
上記重合の際、原料や各種添加剤(重合開始剤まど)は、それぞれ、任意の適切な方法で添加すれば良い。例えば、連続添加でも良いし、分割添加でも良い。添加時間は、任意の適切な時間を設定すれば良い。例えば、30〜480分とすることが好ましい。
【0046】
上記重合が終了した時点において、重合反応系における固形分濃度は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは35重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上である。
【0047】
上記重合で得られる(メタ)アクリル酸系重合体は、必要に応じて、さらにアルカリ性物質で中和しても良い。上記アルカリ性物質としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、塩化物、炭酸塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、塩化物、炭酸塩;アンモニア;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン;などが挙げられる。上記アルカリ性物質は1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0048】
本発明のスケール防止剤は、上記(メタ)アクリル酸系重合体を含む。すなわち、本発明のスケール防止剤は、上記(メタ)アクリル酸系重合体単独からなるものであっても良いし、上記(メタ)アクリル酸系重合体と他の添加剤とを含むものであっても良い。上記他の添加剤としては、任意の適切な添加剤を採用し得る。例えば、リン系化合物、ポリアクリル酸および/またはその塩、ポリマレイン酸および/またはその塩、アクリル酸系共重合体、スチレン/マレイン酸系共重合体等のポリカルボン酸系重合体;他のスケール防止剤;スライム防止剤;キレート剤;脱酸素剤;などが挙げられる。上記他の添加剤は1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0049】
本発明のスケール防止剤は、冷却水系、ボイラー水系等の水系の水に対して、任意の適切な量を添加して用いることができる。好ましくは、水に対して、0.1〜100ppmであり、より好ましくは、水に対して、1〜50ppmである。
【0050】
本発明のスケール防止剤は、例えば、冷却水系、ボイラー水系等の水系に、そのまま添加すれば良い。また、本発明のスケール防止剤を水系に添加する際には、リン酸系化合物および/または亜鉛塩を併せて添加しても良い。リン酸系化合物および/または亜鉛塩を併せて添加することにより、水系の流路として用い得る鉄の配管の腐食を防ぐことができる。リン酸系化合物としては、例えば、重合リン酸および/またはその塩、リン酸および/またはその塩、ホスホン酸および/またはその塩などが挙げられる。亜鉛塩としては、例えば、硝酸亜鉛、塩化亜鉛などが挙げられる。添加し得るリン酸系化合物や亜鉛塩は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0051】
本発明のスケール防止剤は、上記のような特定の(メタ)アクリル酸系重合体を含んでいるので、リン酸カルシウムに対するスケール防止能が極めて優れている。また、炭酸カルシウム等のその他のスケールに対するスケール防止能についても優れている。
【0052】
〔(メタ)アクリル酸系重合体〕
本発明の(メタ)アクリル酸系重合体は、式(1)で表される(メタ)アクリル酸系単量体(A)由来の構成単位(a)と、式(2)で表されるスルホン酸系単量体(B)由来の構成単位(b)と、式(4)で表される(メタ)アクリル酸系単量体(D)由来の構成単位(d)とを有する。
【化13】

(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、金属原子、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミノ基を表す。)
【化14】

(式(2)中、R、R、Rは、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、pは0または1を表し、Rは、−CH−、−CH−CH−、−CH−O−CH−、−CO−O−CH−CH−、または−CO−NH−C(CH−を表し、Yは−SOXまたは−CHR−CHを表し、R、Rは、同一または異なって、−OHまたは−SOXを表し、RとRの少なくとも一方は−SOXであり、Xは水素原子、金属原子、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミノ基を表す。)
【化15】

(式(4)中、mは0、1、または2であり、R10は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【0053】
上記(メタ)アクリル酸系重合体中における、式(1)で表される(メタ)アクリル酸系単量体(A)由来の構成単位(a)は、1種のみが存在していても良いし、2種以上が併存していても良い。
【0054】
上記構成単位(a)は、式(5)で表されるように、式(1)で表される(メタ)アクリル酸系単量体(A)において不飽和二重結合が重合反応によって開いて単結合となった形態である。
【化16】

【0055】
上記式(1)、式(5)において、Rは水素原子またはメチル基を表す。
【0056】
上記式(1)、式(5)において、Xは水素原子、金属原子、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミノ基を表す。上記金属原子としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属;アルミニウム;鉄;などが挙げられる。Xは、好ましくは、水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム基であり、より好ましくは、水素原子、ナトリウム、カリウムであり、さらに好ましくは、水素原子、ナトリウムである。
【0057】
上記式(1)で表される(メタ)アクリル酸系単量体(A)の具体例としては、例えば、アクリル酸およびその塩、メタクリル酸およびその塩などが挙げられる。本発明の効果をより一層十分に発現させるために、好ましくは、アクリル酸およびその塩であり、より好ましくは、アクリル酸およびそのナトリウム塩である。
【0058】
上記(メタ)アクリル酸系重合体中における上記構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(d)の合計に対する、上記構成単位(a)の含有割合は、好ましくは60〜95モル%、より好ましくは75〜90モル%である。上記含有割合が60モル%未満であると、スケール防止剤としたときに特に炭酸カルシウムに対するスケール防止能を十分に発現できないおそれがある。上記含有割合が95モル%を超えると、スケール防止剤としたときに特にリン酸カルシウムに対するスケール防止能を十分に発現できないおそれがある。
【0059】
上記(メタ)アクリル酸系重合体中における、式(2)で表されるスルホン酸系単量体(B)由来の構成単位(b)は、1種のみが存在していても良いし、2種以上が併存していても良い。
【0060】
上記構成単位(b)は、式(6)で表されるように、式(2)で表されるスルホン酸系単量体(B)において不飽和二重結合が重合反応によって開いて単結合となった形態である。
【化17】

【0061】
上記式(2)、式(6)において、R、R、Rは、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表す。本発明の効果をより一層十分に発現させるために、好ましくは、R、R、Rの全てが水素原子、または、RとRが水素原子でRがメチル基であり、より好ましくは、R、R、Rの全てが水素原子である。
【0062】
上記式(2)、式(6)において、pは0または1を表す。pが1の場合、Rは、−CH−、−CH−CH−、−CH−O−CH−、−CO−O−CH−CH−、または−CO−NH−C(CH−を表す。本発明の効果をより一層十分に発現させるために、好ましくは、pが1であり、Rが−CH−、−CH−CH−、または−CH−O−CH−であり、より好ましくは、pが1であり、Rが−CH−O−CH−である。
【0063】
上記式(2)、式(6)において、Yは−SOXまたは−CHR−CHを表し、R、Rは、同一または異なって、−OHまたは−SOXを表し、RとRの少なくとも一方は−SOXであり、Xは水素原子、金属原子、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミノ基を表す。上記金属原子としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属;アルミニウム;鉄;などが挙げられる。Xは、好ましくは、水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム基であり、より好ましくは、水素原子、ナトリウム、カリウムであり、さらに好ましくは、水素原子、ナトリウムである。本発明の効果をより一層十分に発現させるために、好ましくは、Yが−CH(OH)−CH−SOXである。
【0064】
上記式(2)で表されるスルホン酸系単量体(B)の具体例としては、例えば、ビニルスルホン酸およびその塩、(メタ)アリルスルホン酸およびその塩、3−(メタ)アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸およびその塩、3−(メタ)アリルオキシ−1−ヒドロキシプロパンスルホン酸およびその塩、2−(メタ)アリルオキシエチレンスルホン酸およびその塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびその塩などが挙げられる。本発明の効果をより一層十分に発現させるために、好ましくは、(メタ)アリルスルホン酸およびその塩、3−(メタ)アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸およびその塩であり、より好ましくは、3−(メタ)アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸およびその塩であり、さらに好ましくは、3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸およびそのナトリウム塩である。
【0065】
上記(メタ)アクリル酸系重合体中における上記構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(d)の合計に対する、上記構成単位(b)の含有割合は、好ましくは5〜40モル%、より好ましくは10〜25モル%である。上記含有割合が5モル%未満であると、スケール防止剤としたときに特にリン酸カルシウムに対するスケール防止能を十分に発現できないおそれがある。上記含有割合が40モル%を超えると、スケール防止剤としたときに特に炭酸カルシウムに対するスケール防止能を十分に発現できないおそれがある。
【0066】
上記(メタ)アクリル酸系重合体中における、式(4)で表される(メタ)アクリル酸系単量体(D)由来の構成単位(d)は、1種のみが存在していても良いし、2種以上が併存していても良い。
【0067】
上記構成単位(d)は、式(8)で表されるように、式(4)で表される(メタ)アクリル酸系単量体(D)において不飽和二重結合が重合反応によって開いて単結合となった形態である。
【化18】

【0068】
上記式(4)、式(8)において、mは0、1、または2である。
【0069】
上記式(4)、式(8)において、R10は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基を表す。好ましくは、R10は炭素数1〜20のアルキル基である。
【0070】
上記炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。本発明の効果をより一層十分に発現させるために、Rは、好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基であり、より好ましくは、炭素数1〜5のアルキル基であり、さらに好ましくは、炭素数4のアルキル基であり、特に好ましくは、n−ブチル基である。
【0071】
上記(メタ)アクリル酸系重合体中における上記構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(d)の合計に対する、上記構成単位(d)の含有割合は、好ましくは2〜20モル%、より好ましくは4〜15モル%である。上記含有割合が2モル%未満であると、スケール防止剤としたときに特にリン酸カルシウムに対するスケール防止能を十分に発現できないおそれがある。上記含有割合が20モル%を超えると、スケール防止剤としたときに特に炭酸カルシウムに対するスケール防止能を十分に発現できないおそれがある。
【0072】
上記(メタ)アクリル酸系重合体の全構成単位中における、上記構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(d)の合計の含有割合は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上である。上記含有割合が80モル%未満であると、スケール防止剤としたときにスケール防止能を十分に発現できないおそれがある。
【0073】
上記(メタ)アクリル酸系重合体は、上記構成単位(a)、構成単位(b)、および構成単位(d)以外に、他の単量体(E)由来の構成単位(e)を有していても良い。他の単量体(E)由来の構成単位(e)は、1種のみが存在していても良いし、2種以上が併存していても良い。他の単量体(E)については、前述の説明が援用される。
【0074】
上記(メタ)アクリル酸系重合体の重量平均分子量は、好ましくは、2000〜100000、より好ましくは、3000〜80000、さらに好ましくは4000〜60000である。上記(メタ)アクリル酸系重合体の重量平均分子量が上記範囲内にあると、本発明の効果が一層十分に発現され得る。
【0075】
上記(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法は、前述の本発明のスケール防止剤に用いる(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法の説明が援用される。
【0076】
上記(メタ)アクリル酸系重合体は、スケール防止剤として有用であるが、その他にも、例えば、水処理剤、分散剤、洗剤ビルダーなどの各種用途に用い得る。
【実施例】
【0077】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、実施例における部および%は重量基準である。
【0078】
<重量平均分子量>
重合体の重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(昭和電工製、商品名「Shodex SYSTEM−21」を用い、下記の条件で測定した。
カラム:昭和電工製「Asahipak GF−710 HQ」および「Asahipak GF−310 HQ」をこの順に接続したもの。
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム/アセトニトリル=7/3(vol比)
流速:0.5ml/min
温度:40℃
検量線:ポリアクリル酸標準サンプル(創和科学製)を用いて作成。
検出器:RI、UV(検出波長:220nm)
【0079】
<リン酸カルシウムスケール抑制率>
225mlのネジ口瓶に、脱イオン水、ホウ酸−ホウ酸ナトリウムpH緩衝液、塩化カルシウム水溶液、実施例・比較例で得られる重合体水溶液、リン酸ナトリウム水溶液をこの順に添加し、pH=8.6、重合体濃度が固形分換算で6mg/L、カルシウム硬度=100mgCaCO/L、リン酸イオン=10mgPO43−/Lの試験液100mlを調製した。密封した後、60℃の熱風乾燥機に入れた。40時間後に、試験液を孔径0.1μmの濾紙で濾過し、濾液中の残留リン酸イオン濃度を分析した。ブランクとして、上記の試験液から重合体を除いたブランク試験液を用意し、同様の操作を行って、残留リン酸イオン濃度を分析した。下記式によって、リン酸カルシウムスケール抑制率を求めた。
リン酸カルシウムスケール抑制率=100×(R−Q)/(P−Q)
P:仕込みリン酸イオン濃度(mg/L)
Q:ブランクの残留リン酸イオン濃度(mg/L)
R:残留リン酸イオン濃度(mg/L)
【0080】
〔実施例1〕
還流冷却器、撹拌機を備えた容量2.5LのSUS製セパラブルフラスコに、脱イオン水84.0gおよびモール塩0.022gを仕込み、撹拌しながら90℃まで昇温して重合反応系とした。次いで、撹拌下、約90℃に保たれた上記重合反応系中に、80%アクリル酸水溶液(以下、80%AAと略す)315.0g、40%3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム(以下、40%HAPSと略す)225.0g、100%n−ブチルアクリレート(以下、100%BAと略す)18.0g、35%亜硫酸水素ナトリウム水溶液(以下、35%SBSと略す)69.5g(単量体組成物中の単量体1モルに対して6.0gに相当)、15%過硫酸ナトリウム(以下、15%NaPSと略す)81.1g(単量体組成物中の単量体1モルに対して3.0gに相当)を、それぞれ別個の滴下ノズルから滴下して、反応溶液とした。なお、各成分の滴下開始は同時であり、滴下時間は、80%AAは180分間、40%HAPSは150分間、100%BAは120分間、35%SBSは175分間、15%NaPSは190分間とした。また、各成分の滴下は一定の滴下速度で連続的に行った。
上記15%NaPSの滴下終了後、さらに30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)し、重合を完結させた。重合体混合物を含む水溶液である重合反応液における固形分濃度は50重量%であった。得られた重合体の重量平均分子量は9000であった。
評価結果を表1に示す。
【0081】
〔実施例2〕
還流冷却器、撹拌機を備えた容量2.5LのSUS製セパラブルフラスコに、脱イオン水89.2g、40%HAPS28.2g、およびモール塩0.010gを仕込み、撹拌しながら90℃まで昇温して重合反応系とした。次いで、撹拌下、約90℃に保たれた上記重合反応系中に、80%AA145.2g、40%HAPS141.2g、100%BA9.7g、35%SBS17.1g(単量体組成物中の単量体1モルに対して3.0gに相当)、15%NaPS53.3g(単量体組成物中の単量体1モルに対して4.0gに相当)を、それぞれ別個の滴下ノズルから滴下して、反応溶液とした。なお、各成分の滴下開始は同時であり、滴下時間は、80%AAは180分間、40%HAPSは130分間、100%BAは120分間、35%SBSは170分間、15%NaPSは200分間とした。また、15%NaPSの滴下速度は滴下開始から130分間は一定とし、滴下開始から130分目以降はそれまでの2倍の滴下速度で連続的に滴下を行った。15%NaPS以外の各成分の滴下は一定の滴下速度で連続的に行った。
上記15%NaPSの滴下終了後、さらに30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)し、重合を完結させた。重合体混合物を含む水溶液である重合反応液における固形分濃度は44重量%であった。得られた重合体の重量平均分子量は19000であった。
評価結果を表1に示す。
【0082】
〔実施例3〕
還流冷却器、撹拌機を備えた容量2.5LのSUS製セパラブルフラスコに、脱イオン水89.2g、40%HAPS28.2g、およびモール塩0.010gを仕込み、撹拌しながら90℃まで昇温して重合反応系とした。次いで、撹拌下、約90℃に保たれた上記重合反応系中に、80%AA145.2g、40%HAPS141.2g、100%α−ヒドロキシメチルアクリル酸n−ブチルエステル(以下、100%RHMAと略す)9.7g、35%SBS17.1g(単量体組成物中の単量体1モルに対して3.0gに相当)、15%NaPS53.3g(単量体組成物中の単量体1モルに対して4.0gに相当)を、それぞれ別個の滴下ノズルから滴下して、反応溶液とした。なお、各成分の滴下開始は同時であり、滴下時間は、80%AAは180分間、40%HAPSは130分間、100%RHMAは120分間、35%SBSは170分間、15%NaPSは200分間とした。また、15%NaPSの滴下速度は滴下開始から130分間は一定とし、滴下開始から130分目以降はそれまでの2倍の滴下速度で連続的に滴下を行った。15%NaPS以外の各成分の滴下は一定の滴下速度で連続的に行った。
上記15%NaPSの滴下終了後、さらに30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)し、重合を完結させた。重合体混合物を含む水溶液である重合反応液における固形分濃度は44重量%であった。得られた重合体の重量平均分子量は20000であった。
評価結果を表1に示す。
【0083】
〔比較例1〕
還流冷却器、撹拌機を備えた容量2.5LのSUS製セパラブルフラスコに、脱イオン水267.5g、40%HAPS100.0g、およびモール塩0.033gを仕込み、撹拌しながら沸点還流状態まで昇温して重合反応系とした。次いで、撹拌下、沸点還流状態に保たれた上記重合反応系中に、80%AA464.9g、40%HAPS518.3g、35%SBS56.2g(単量体組成物中の単量体1モルに対して3.1gに相当)、15%NaPS165.5g(単量体組成物中の単量体1モルに対して3.9gに相当)を、それぞれ別個の滴下ノズルから滴下して、反応溶液とした。なお、各成分の滴下開始は同時であり、滴下時間は、80%AAは180分間、40%HAPSは130分間、35%SBSは180分間、15%NaPSは200分間とした。また、15%NaPSの滴下速度は滴下開始から130分間は一定とし、滴下開始から130分目以降はそれまでの2倍の滴下速度で連続的に滴下を行った。15%NaPS以外の各成分の滴下は一定の滴下速度で連続的に行った。
上記15%NaPSの滴下終了後、さらに30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)し、重合を完結させた。重合体混合物を含む水溶液である重合反応液における固形分濃度は43重量%であった。得られた重合体の重量平均分子量は20000であった。
評価結果を表1に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
表1より、本発明のスケール防止剤、あるいは、本発明の(メタ)アクリル酸系重合体を用いたスケール防止剤は、リン酸カルシウムに対するスケール防止能が極めて優れていることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明のスケール防止剤は、冷却水系やボイラー水系、海水淡水化装置、パルプ溶解釜、黒液濃縮釜等におけるスケール析出防止に有用である。本発明の(メタ)アクリル酸系重合体は、スケール防止剤として有用であるが、その他にも、例えば、水処理剤、分散剤、洗剤ビルダーなどの各種用途に用い得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される(メタ)アクリル酸系単量体(A)由来の構成単位(a)と、式(2)で表されるスルホン酸系単量体(B)由来の構成単位(b)と、式(3)で表される(メタ)アクリル酸系単量体(C)由来の構成単位(c)とを有する(メタ)アクリル酸系重合体を含む、スケール防止剤。
【化1】

(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、金属原子、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミノ基を表す。)
【化2】

(式(2)中、R、R、Rは、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、pは0または1を表し、Rは、−CH−、−CH−CH−、−CH−O−CH−、−CO−O−CH−CH−、または−CO−NH−C(CH−を表し、Yは−SOXまたは−CHR−CHを表し、R、Rは、同一または異なって、−OHまたは−SOXを表し、RとRの少なくとも一方は−SOXであり、Xは水素原子、金属原子、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミノ基を表す。)
【化3】

(式(3)中、Rは水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、またはヒドロキシエチル基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基を表し、Rが水素原子またはメチル基の場合にはRは水素原子ではない。)
【請求項2】
前記式(2)において、pが1であり、Rが−CH−O−CH−である、請求項1に記載のスケール防止剤。
【請求項3】
前記式(2)において、Yが−CH(OH)−CH−SOXである、請求項1または2に記載のスケール防止剤。
【請求項4】
前記式(3)において、Rが炭素数1〜20のアルキル基である、請求項1から3までのいずれかに記載のスケール防止剤。
【請求項5】
式(1)で表される(メタ)アクリル酸系単量体(A)由来の構成単位(a)と、式(2)で表されるスルホン酸系単量体(B)由来の構成単位(b)と、式(4)で表される(メタ)アクリル酸系単量体(D)由来の構成単位(d)とを有する(メタ)アクリル酸系重合体。
【化4】

(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、金属原子、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミノ基を表す。)
【化5】

(式(2)中、R、R、Rは、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、pは0または1を表し、Rは、−CH−、−CH−CH−、−CH−O−CH−、−CO−O−CH−CH−、または−CO−NH−C(CH−を表し、Yは−SOXまたは−CHR−CHを表し、R、Rは、同一または異なって、−OHまたは−SOXを表し、RとRの少なくとも一方は−SOXであり、Xは水素原子、金属原子、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミノ基を表す。)
【化6】

(式(4)中、mは0、1、または2であり、R10は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【請求項6】
前記式(2)において、pが1であり、Rが−CH−O−CH−である、請求項5に記載の(メタ)アクリル酸系重合体。
【請求項7】
前記式(2)において、Yが−CH(OH)−CH−SOXである、請求項5または6に記載の(メタ)アクリル酸系重合体。
【請求項8】
前記式(4)において、R10が炭素数1〜20のアルキル基である、請求項5から7までのいずれかに記載の(メタ)アクリル酸系重合体。


【公開番号】特開2009−28618(P2009−28618A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194142(P2007−194142)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】