説明

スズベースの負極材料を備えたバッテリ

改良型バッテリは、担体材料によって担持されたスズ含有材料を有する負極と、正極と、正極と負極との間に配置された電解質(溶融塩電解質のような)とを含む。スズ含有材料は、例えば電解質の分解を遅らせることができる保護層によって電解質から分離することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、その全ての内容全体が引用により本明細書に組み込まれる、2004年3月16日に出願された米国特許仮出願シリアル番号第60/553,394号に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明はバッテリに関し、詳細にはリチウムイオンバッテリに関する。
【背景技術】
【0003】
従来の有機電解質は高蒸気圧を有することが多く、可燃性であり、爆発する可能性があるので、リチウムイオン(Li−ion)バッテリ用途において安全性は重要な課題である。従って、Liイオンバッテリにおける電解質の改善の必要性がある。
【0004】
溶融塩電解質は、高融点で蒸気圧が低く、従来の有機電解質の安全性の問題の一部を回避する。しかしながら、殆どの溶融塩の酸化電位は約1.0Vから5.0Vであるので、高容量且つ低電圧での負極材料の用途は妨げられている。
【0005】
充電式バッテリの放電中、負極はアノードであり、正極はカソードである。従来より、バッテリの負極端子をアノード、正極端子をカソードと呼ぶ。しかしながら、負極端子はバッテリの充電中は実際にはカソードである。
【0006】
Clerc他に付与された米国特許第6,524,744号は、これらから作られた多層の材料及び電極を開示しているが、触媒担体上でのスズ粒子の使用を開示していない。
【0007】
Nagai他に付与された米国特許第6,548,187号は、Sn−Ti化合物を含有するSnベース合金と、Nb3Sn超伝導ワイヤの前駆体を開示しているが、リチウムイオンバッテリ電極は改善されていない。
【0008】
本明細書に引用される特許は、引用により本明細書に組み込まれる。
【0009】
【特許文献1】米国特許仮出願シリアル番号第60/553,394号
【特許文献2】米国特許第6,524,744号
【特許文献3】米国特許第6,548,187号
【特許文献4】米国特許第4,463,071号
【特許文献5】米国特許第5,552,241号
【特許文献6】米国特許第5,589,291号
【特許文献7】米国特許第6,326,104号
【特許文献8】米国特許第6,365,301号
【特許文献9】米国特許第6,544,691号
【発明の開示】
【0010】
改良型バッテリは、担体材料によって担持されたスズ含有材料を有する負極と、正極と、正極と負極との間に配置された電解質(溶融塩電解質のような)とを含む。バッテリは、リチウムイオンバッテリ、又は他のバッテリタイプとすることができる。スズ含有材料は、スズ合金、スズ化合物、又は他のスズ含有材料とすることができる。スズ含有材料は、保護層によって電解質から分離することができ、該保護層は、電極の分解を遅くするように作用し、或いはバッテリの性能又は安定性に寄与するスズ含有材料、ポリマー、合金、他の金属層、固体電解質層、又は他の材料の酸化形態とすることができる。保護層は、例えば溶融塩電解質の成分である、スズ含有材料の表面上の電解質の分解によって形成することができる。スズ含有材料は、ナノ粒子(約0.5ナノメートルから1ミクロンの平均直径を有する)又はマイクロ粒子(約1ミクロンから1ミリメートルの平均直径を有する)のような粒子の形態とすることができ、該粒子は担体材料によって担持される。負極は、電子伝導性材料及びバインダを更に含むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
スズベース負極及び溶融塩電解質を有する改良型バッテリが記載される。スズベース負極を有するリチウムイオンバッテリは、従来の溶融塩Liイオンバッテリよりも高い安全性、容量性の向上、及び高いセル電圧をもたらす。スズベース負極はまた、可逆性及び耐久性の改善をもたらす。
【0012】
スズは、0.4Vの理論電圧及び993mAh/gの容量を有する。1つの実施例では、スズ含有粒子は、担体材料によって担持される。その結果、スズ含有粒子と担体材料との間の電子的相互作用は、電解質がより低い電位のスズ含有粒子と反応すること、又はこのようなあらゆる反応速度が低下することを防止し、或いは遅延させることができる。
【0013】
従来のLi4Ti512負極は、1.1Vの理論電圧及び150mAh/gの容量を有する。従って、スズベース負極は、従来のセル構成と比較してより高いセル電圧及び容量の向上をもたらすことができる。
【0014】
スズベース負極材料は、溶融塩電解質を有するLiイオンバッテリで用いることができる。以下のことを利用して、溶融塩電解質が分解するのを防ぐのに役立たせることができる。
(1)担体材料と該担体材料の表面上のSn含有ナノ粒子との間の電子的相互作用。
(2)溶融塩又はこのような電解質に溶解した他の化学添加剤の一部分の分解によるSn含有粒子上の固体電解質界面(SEI)層の形成。
(3)例えば不活性担体材料上で担持されたSn含有粒子上のポリマー薄層コーティング。
(4)電位が溶融塩電解質の分解を遅らせ又は防止する高電位窓でSnベース合金或いは部分的に酸化された合金の形成。
【0015】
担体材料は、シート、粗面、他のテクスチャ面、セラミック、ゼオライト、ゾルゲル、焼結形態、層間化合物、又は三次元構造の形態とすることができる。スズ含有粒子は、担体材料の表面上に配置され、又は担体材料を通って分配され、或いは表面近くの領域を通って分配することができる。
【0016】
スズ含有材料は、担体材料との強力な電子的相互作用を有するナノ粒子のような粒子の形態とすることができ、この相互作用は溶融塩電解質の分解を遅らせ又は実質的に防止する。粒子は、実質的に純粋なスズ、スズ合金、スズ含有材料とすることができ、又はコア材料のスズ含有コーティングを含む。コア材料は、本明細書で上述されたような担体材料とすることができる。スズ含有粒子用の支持構造は、完全に単一担体材料から形成することができ、又は強度、信頼性、又は他のバッテリ特性を向上させるために用いられる材料を含む、材料の組合せのような他の材料を含むことができる。
【0017】
例えば粒子の形態のスズ含有材料は、担体材料の表面に化学的に固定することができ、バッテリが循環するときに担体材料とスズ含有粒子との間の相互作用によって、スズ含有粒子の凝集及びスズ含有材料上の溶融塩電解質の分解が防止される。
【0018】
担体材料は、銀(Ag)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、パラジウム(Pd)、タングステン(W)、他の金属、半導体、又は半金属、或いはこれらの合金又は化合物を含むことができる。担体材料は、酸素(例えば酸化チタンのような酸化物として)、窒素(例えば硝酸塩又は窒化物として)、リン(例えばリン化物又はリン酸塩として)、又は炭素(例えば炭化物として)を含有することができる。例えば、触媒担体は、炭化タングステン(WC)、酸化チタンコーティング炭素(TiO2のような)、炭化チタン(TiC)、炭化タンタル(TaC)、他の遷移金属炭化物、他の炭化物、又は他の炭素含有材料とすることができる。化学式表示は例証であり、非化学量論化合物のような他の形態を用いることができる。
【0019】
本発明の実施形態に用いることができる溶融塩電解質は、Giffordに付与された米国特許第4,463,071号、Mamantov他に付与された第5,552,241号、Carlin他に付与された第5,589,291号、Caja他に付与された第6,326,104号、Michotに付与された第6,365,301号、及びGuidottiに付与された第6,544,691号に記載されている。
【0020】
本発明の溶融塩電解質は、アンモニウム、ホスホニウム、オキソニウム、スルホニウム、アミジニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム等のオニウム、及びPF6-、BF4-、CF3SO3-、(CF3SO2)N-、(FSO22-等の低塩基性陰イオンを含むことができる。本発明の溶融塩電解質はまた、Y+-(−SO2Rf2)(−XRf3)を含むことができ、式中Y+は、イミダゾリウムイオン、アンモニウムイオン、スルホニウムイオン、ピリジニウム、(n)(iso)チアゾリルイオン、及び(n)(iso)オキサゾリウムイオンから成るグループから選択された陽イオンであり、これは、前記陽イオンが−CH2Rf1又は−OCH2Rf1(式中RfはC1-10ポリフルオロアルキルである)の少なくとも1つの置換基を有し、Rf2及びRf3が単独でC1-10ペルフルオロフェニルであるか或いは共にC1-10ペルフルオロアルキレンを形成することができ、Xが−SO2−又は−CO−である場合に、任意選択的にC1-10アルキルもしくはエーテル結合を有するC1-10アルキルと置換することができる。
【0021】
リチウムベースのバッテリでは、溶融塩電解質は、以下のLiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiBF4、LiClO4、LiCF3SO3、Li(CF3SO22N、Li(C25SO22N、LiC49SO3、Li(CF3SO23C、LiBPh4、LiBOB、及びLi(CF3SO2)(CF3CO)Nの1つ又はそれ以上のような、リチウム塩を含有することができる。
【0022】
本発明の実施例はまた、好適な塩が用いられる場合には、他のアルカリ金属又は他のカチオンベースバッテリのような他のバッテリを含むことができる。
【0023】
添加剤は、溶融塩電解質のような電解質に溶解させることができる。電解質は、上述の溶融塩及びLi塩の1つ又はそれ以上を含むことができる。電解質はまた、ハロゲン化アルキル、エポキシド、エーテル、有機イオウ化合物及び脂肪族アミン、カルボニル化合物、カルボン酸及びその関連物質、ニトリル、イミン、及びニトロ化合物、芳香族並びに芳香族複素環化合物、並びに同様のもの等の他の有機化合物を含むことができる。添加剤は、セルの循環又は他の印加された電圧プロフィールとすることができる、特定の電気化学的処理の後にSn含有粒子の表面上にSEI層の形成を誘起することができる。形成されたSEI層は、溶融塩電解質の分解を防止することができる。
【0024】
保護層は、Sn粒子、Snベース合金又は部分的に酸化されたSn合金粒子等の粒子とすることができる、スズ含有材料の表面上の薄いポリマー層とすることができる。ポリマーは、良好な弾性、引張り強度、接着力、イオン伝導性、及び熱的安定性を有することができ、これらの特性は、電解質を通りこのようなSnベース粒子の表面までLi−ion移送を可能にし、Snベース粒子の表面上の電解質の分解を防止する。保護層は、固体ポリマー電解質(又はポリマー電解質膜)、例えばポリエチレンオキサイドのようなポリアルキレンオキサイド、ポリカーボネート、PVDF、及びリチウム化合物とのポリマー複合体等の1つ又はそれ以上のポリマーを含むことができる。Li−ion伝導性を増大させるために、薄膜は、硫酸塩(Li224、Li2SO3、Li225等)、過塩素酸塩(LiClO4のような)、カーボネート(Li2CO3のような)、ハロゲン化物(フッ化物、臭化物、及びLiClのような塩化物)、及び他の塩等のリチウム塩を吸着することができる。
【0025】
保護層はまた、リチウムメトキシド(LiOCH3)のようなアルコキシド、形態R−O−Liの他の化合物、有機酸の塩(R−CO2Liのような)を含むことができる。
【0026】
Snベース負極の電位を増大させて、その高容量を維持しながら溶融塩電解質を分解から防ぐために、Sn合金又は部分的に酸化されたSn合金を調製することができ、ここで合金は、スズと、以下の原子種:Mg、Ti、V、Cr、Mo、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、As、Zr、Nb、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sb、Ta、W、Ir、Pt、Au、Pb及びBiの1つ又はそれ以上を含むことができる。
【0027】
図1Aは、例示的なLiイオンバッテリ構造を示す。セルは、集電体10及び22、正極20(正の電気活物質、電子伝導性材料、及びバインダ材料を含む)、電解質(14及び18の)、セパレータ(16)、及び負極12(スズ含有負の電気活物質、電子伝導性材料、及びバインダを含む)を有する。
【0028】
図1Bは、24及び28等の担体材料粒子によって担持されたスズ含有粒子(32のような)を含む、利用可能な負極構造を示す。付加的な電子伝導性材料(34)が存在することができ、又は任意選択的に担体材料及び電子伝導性材料は同じとすることができる。溶融塩電解質は、スズベースの負極材料が低電位であることに起因して、例えば30のスズ含有粒子の表面上で分解することができる。担体材料粒子の表面、及び/又は電子伝導性材料はまた、表面26のようなバインダ材料を支持することができる。粒子間間隙は、溶融塩電解質で満たすことができる。
【0029】
この図は、必ずしも縮尺通りではない。スズ含有粒子はナノ粒子とすることができ、担体材料粒子はマイクロ粒子とすることができる。
【0030】
半電池(対リチウム金属)は、溶融塩電解質及びSnベース負極を有するLiイオンバッテリの概念の可能性を証明するように作製された。
【0031】
図2は、充電/放電性能が、LiイオンバッテリセルSnベース負極(0.4V)と炭素黒鉛(0.1V)との間で異なることを示している。この結果は、Snベース負極を有するLiイオンバッテリ及びメチル−プロピル−ピロリジニウム−ビス−トリフルオロ−スルホニルアミド(Li−TFSIを有するMPP−TFSI)溶融塩が循環可能であることを示している。しかしながら、炭素黒鉛負極及び同じ溶融塩電解質を有するセルは、循環させることができなかった。この結果は、性能が改善したLiイオンバッテリ内のSnベース負極及び溶融塩電解質の用途が潜在的にあることを示唆している。
【実施例1】
【0032】
正極は、85wt%Snベース粉末、電子伝導性材料として10wt%炭素粉末、及びN−メチルピロリドン中のポリフッ化ビニリデンの5wt%溶媒を密に混合することによって製作された。正極膜を形成するために、混合スラリーをドクターブレードを用いて銅ブレード上にキャストし、80℃で30分間乾燥させた。
リチウム金属フォイルは負極として用いられた。
【0033】
正極シート、微小孔性ポリプロピレン膜セパレータ、及び2.83cm2の面積を有する負極シートをスタックし、アルミニウムラミネートパック内に配置した。一定量の溶融塩電解質をラミネートパックに付加した。ここでは、リチウム−ビス−トリフルオロメタン−スルホニルアミド(LiTFSI)と共にメチル−プロピル−ピロリジニウム−ビス−トリフルオロ−スルホニルアミド(MPP−TFSI)を溶融塩電解質として用いた。
【実施例2】
【0034】
正極は、92.5wt%炭素黒鉛粉末、及びN−メチルピロリドン中のポリフッ化ビニリデンの7.5wt%溶媒を密に混合することによって製作された。正極膜を形成するために、混合スラリーをドクターブレードを用いて銅フォイル上にキャストし、80℃で30分間乾燥させた。
リチウム金属フォイルは、負極として用いられた。
【0035】
正極シート、微小孔性ポリプロピレン膜セパレータ、及び2.83cm2の面積を有する負極シートをスタックし、アルミニウムラミネートパック内に配置した。一定量の溶融塩電解質をラミネートパックに付加した。ここでは、リチウム−ビス−トリフルオロメタン−スルホニルアミド(LiTFSI)と共にメチルプロピル−ピロリジニウム−ビス−トリフルオロ−スルホニルアミド(MPP−TFSI)を溶融塩電解質として用いた。
【0036】
(他のスズ含有材料)
スズ含有材料は、マイクロ粒子(例えば、1−500ミクロンの直径範囲)、ナノ粒子(0.5ナノメートル−1ミクロンの直径範囲)、他のサイズの粒子等の粒子を含むことができ、或いはある範囲のサイズを有することができる。スズ含有材料は、スズと、Tiのような第4列金属、Zrのような第5列金属、Taのような第6列金属、及びMgのようなアルカリ土類金属から成るグループからの1つ又はそれ以上との合金を含むことができる。スズ含有材料はまた、As又はBiのような1つ又はそれ以上の他の元素を含むことができる。スズ含有材料中のスズの比率(重量又は原子比率計算による)は、例えば75%以上のような約50%以上とすることができ、スズ含有材料は、90%以上のスズ含有量を有する実質的には金属スズであってもよい。
【0037】
スズ含有材料は、金属スズ、50%を越えるスズのような高スズ含量を有するスズ合金(スズ含有金属間化合物を含む)、スズ化合物(酸化スズ、SnO又はSnO2、リチウム酸化スズLi2SnO3、又は他のスズ含有酸化物等)、或いは他のスズ含有材料とすることができる。
【0038】
例示的なスズ含有材料は、スズ及び別の金属を含む合金(金属間化合物を含む)を含む。金属間化合物Mg2Sn、CoSn2、及びNiSn2を用いてもよい。合金は、二元合金又は三元合金とすることができ、又は3より多くの金属タイプを含むことができる。
【0039】
用いた粒子は、均一な組成物、又はコア材料上にスズ含有コーティングを有することができる。コア材料は非スズ含有材料を含むことができ、コア材料は本明細書に記載したような担体材料とすることができる。
【0040】
スズ含有粒子及び担体材料は、例えば電子的相互作用によってスズ含有粒子と電解質との間の反応を軽減させるように相互作用することができる。電子的相互作用は、例えばスズ含有粒子の電位を修正することによって溶融塩電解質の分解を軽減させることができる。
【0041】
スズ含有粒子は、バッテリが循環する時に相互作用がスズ含有粒子の凝集及びスズ含有粒子上の溶融塩電解質の分解を防止することになるので、担体材料の表面上に化学的に固定することができる。
【0042】
改良型負極は、担体材料の表面全体に分配され、又は担体材料との複合材料として形成された、例えばナノ粒子のようなスズ含有粒子を含む。更に、電解質の分解は、担体材料とスズ含有材料との間の電子的相互作用、及び一方が用いられる場合保護層によって軽減させることができる。スズベースの負の電気活物質の崩壊の問題は、ナノ構造粉末又はナノ粒子としてスズベースの負の電気活物質を設けること、或いは1つ又はそれ以上の他の金属とのスズの合金化のいずれかによって軽減させることができる。量子サイズ効果は、例えば1−50nmのようなほぼ0.5−200nmの範囲内の直径を有するナノ粒子についてスズ含有粒子の電子特性を変更することができる。
【0043】
保護層厚さは、5nmから50nmの間のようなほぼ0.5−200nmの範囲内とすることができる。
【0044】
(スズ含有粒子の形成)
スズ含有粒子は、化学的又は物理的蒸着法、スパッタリング、蒸発、レーザーアブレーション、又は他の蒸着法を使用して担体材料上に形成することができる。
【0045】
スズ含有粒子はまた、ボールミル粉砕又は他のプロセスによって形成することができ、その結果、粒子は何らかの好適な方法によって担体材料上に堆積される。
【0046】
(担体材料組成)
担体材料は、例えば、その構成元素として周期律表の第3又はこれに続く周期の2族から14族に属する少なくとも1つの元素を有する酸化物と、その構成元素として周期律表の第3又はこれに続く周期の2族から14族に属する少なくとも1つの元素を有する炭化物と、その構成元素として周期律表の第3又はこれに続く周期の2族から14族に属する少なくとも1つの元素を有する窒化物と、タングステンとから成るグループから選択された材料である電子伝導性材料のような材料とすることができる。実施例は、酸化物中の金属の酸化数が比較的高く、従って酸化に対する耐性が良好であるSnO2、Ti47、In23/SnO2(ITO)、Ta25、WO2、W1849、CrO2及びTl23を含み、実施例はまた、優れた電気化学的安定性を有するMgO、BaTiO3、TiO2、ZrO2、Al23、及びSiO2を含む。他の実施例は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo及びWの酸化物、炭化物、窒化物、並びに酸窒化物、酸炭化物、混合金属化合物(酸化物、窒化物、及び炭化物)、及び同様のもの等の本明細書で考察された材料の組合せを含む。
【0047】
担体材料は、基板材料上に表面層として形成することができる。例えば、粒子のコアである担体材料は、粒子の外層であってもよい。或いは、基板材料は、担体材料が堆積されるシートであってもよい(更に、Cu、Al、Ni又はTi等の集電体或いはその上のコーティングであってもよい)。基板材料は、例えばカーボンブラック、黒鉛、プラチナ(Pt)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、及び銀(Ag),等の高導電性の金属、Tl23、WO2、及びTi47、酸化スズ等の金属酸化物、並びにWC、TiC及びTaC等の金属炭化物のような電子伝導性材料とすることができる。
【0048】
(負極構成)
リチウムイオンバッテリ用の負極は、本明細書に記載されたスズ含有材料のような負の電気活物質(これはまた、負極活物質、又は同様のものと呼ぶことができる)を含む。負の電気活物質は、スズ粒子、スズ含有粒子、並びにシート、線維、及び同様のもの等の他の形態のスズ含有材料とすることができるスズ含有材料を含む。負の電気活物質は、リチウムイオンと層間化合化、合金化、或いは相互作用を行うことができる。負極は、電子伝導性材料又はバインダを更に含むことができる。
【0049】
電子伝導性材料は、スズ含有粒子に対し担体材料を提供することができる。電子伝導性材料は、スズ含有材料が配置される別個の担体材料のコーティングを有することができる。
【0050】
担体材料は、シート、二次元メッシュ、又は三次元構造の形態とすることができる。担体材料は、シート、粗面、他のテクスチャ面、セラミック、ゼオライト、ゾルゲル、焼結形態、層間化合物、又は三次元構造の形態とすることができる。スズ含有粒子は、担体材料の表面上に配置され、又は担体材料を通って分配され、或いは担体材料に隣接する表面近くの領域を通って分配することができる。
【0051】
(他の担体材料組成)
担体材料は、金属、半導体、半金属、合金、化合物、又はこれらの他の組合せを含むことができる。実施例は、銀(Ag)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、パラジウム(Pd)、タングステン(W)を含む。担体材料は、酸素(例えば酸化チタンのような酸化物として)、窒素(例えば硝酸塩又は窒化物として)、リン(例えばリン化物又はリン酸塩として)、又は炭素(例えば炭化物、又は黒鉛として)含有することができる。例えば、担体材料は、金属炭化物、金属酸化物、金属窒化物、純金属、及び合金から成るグループから選択された1つ又はそれ以上の材料を含むことができる。実施例は、炭化タングステン(WC)、二酸化チタン(TiO2、Ti47)、炭化チタン(TiC)、炭化タンタル(TaC)、他の金属炭化物(遷移金属炭化物のような)、他の炭化物、又は他の炭素含有材料、金属窒化物様鉄窒化物(FeN)、タングステン、プラチナ、及び他の金属又は合金を含む。
【0052】
常に例証とされる化学式及び非化学量論組成を含む他の組成は、指定された化合物を用いることができる。担体材料自体は、別の材料の層上に形成することができる。担体材料は、電子伝導性酸化物、炭化物、又は金属等の固体電子伝導性材料とすることができる。担体材料は、半金属を含むことができる。
【0053】
(正極)
バッテリの正極は、あらゆる好適な材料から形成することができる。リチウムイオンバッテリ用の正極は、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムマンガン酸化物(LiXMn24)、リチウムニッケル酸化物(LiXNiO2)、他のリチウム遷移金属酸化物、リチウム金属リン酸塩、フッ化リチウム金属リン酸塩、及び他のリチウム金属カルコゲニド(リチウム金属酸化物のような)を含むことができ、ここで金属は遷移金属とすることができる。リチウム含量は、バッテリ充電状態に応じて変化する。
【0054】
(他の電極要素)
電極は、電子伝導性材料のような非電気活物質を更に含むことができる。非電気活物質は、正常作動条件下では電解質と実質的に相互作用しない。
【0055】
電子伝導性材料は、黒鉛のような炭素含有材料を含むことができる。他の例示的な電子伝導性材料は、ポリアニリン又は他の伝導性ポリマー、炭素繊維、カーボンブラック(アセチレンブラック、又はケッチェンブラックのような)、及びコバルト、銅、ニッケル、他の金属、又は金属化合物のような非電気活性金属を含む。電子伝導性材料は、粒子(本明細書で用いられるように、用語は顆粒、フレーク、粉末及び同様のものを含む)、繊維、メッシュ、シート、或いは他の二次元又は三次元フレームワークの形態とすることができる。電子伝導性材料は、担体材料と同じとすることができる。
【0056】
電極は、ポリエチレンのようなバインダを更に含むことができる。バインダは、ポリテトラフルオロエチレンのようなフルオロポリマーとすることができる。バインダは、電極の機械的特性を向上させ、電極の製造又は処理を容易にする目的、或いは他の目的のために1つ又はそれ以上の不活物質を含むことができる。例示的なバインダ材料は、フルオロポリマー(ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、及び同様のもの等)、ポリオレフィン及びこれらの誘導体、ポリエチレン酸化物、アクリルポリマー(ポリメタクリレートを含む)、合成ゴム、及び同様のものを含む。
【0057】
電極は、電解質の領域及び/又は電解質、或いは他の1つ又は複数の構成要素から負極を分離するためのイオン伝導保護層を更に含むことができる。電極は、不活性酸化物、ポリマー、及び同様のもの等の他の非導電性、非電気活物質を更に含むことができる。
【0058】
(バッテリ構成)
例示的なバッテリは、正極、負極、電解質、リチウムイオンを含む電解質を含む。例示的なバッテリは、負極及び正極のそれぞれに関連付けられた第1及び第2のカレントコレクタを更に含むことができる。本発明の実施例は、他の非水性電解質二次(充電式)バッテリを含む。
【0059】
例示的なバッテリは、導線と、例えば第1及び第2のカレントコレクタと導通して電気接触を形成する密閉コンテナのような好適なパッケージとを更に含むことができる。
【0060】
バッテリは、負極と正極との間の直接接触を防止する目的で、負極と正極との間に設置された1つ又はそれ以上のセパレータを更に含むことができる。セパレータは任意であり、固体電解質が同じ機能をもたらすことができる。セパレータは、ポリマー(ポリエチレン又はポリプロピレンのような)、ゾルゲル材料、有機修飾シリケート、ガラス、セラミック、ガラスセラミック、又は他の材料等の材料を含む多孔性材料とすることができ、多孔性シート、メッシュ、繊維性マット(布)、又は他の形態のものとすることができる。セパレータは、1つ又は両方の電極の表面に取り付けることができる。
【0061】
(他の用途)
本明細書に記載された負極の他の用途は、他のアルカリイオンバッテリ、他のバッテリ、他の電気化学的デバイス、及び同様のものを含む異なる活性陽イオンを用いた他の充電式バッテリを含む。
【0062】
本発明は、上述の例示的な実施例に限定されない。実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書に記載した方法、装置、組成物、及び同様のものは、例証に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。ここでの変更及び他の用途は、当業者には想起されるであろう。本発明の範囲は、請求項の技術的範囲によって定義される。
【0063】
本明細書において言及された特許、特許出願、又は出版物は、引用により組み込まれるものとして各個々の文書が具体的及び個別に示されているように、同じ範囲の引用により本明細書に組み込まれる。詳細には、2004年3月16日に出願された米国特許仮出願シリアル番号第60/553,394号は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1A】スズベース材料及び溶融塩電解質を含む負極を有する、Liイオンバッテリの構造を示す図である。
【図1B】利用可能な負極構造の詳細を示す図である。
【図2】図1及び1Aに示すようなバッテリを用いて得られた結果を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
10、22 集電体
12 負極
20 正極
14、18 電解質
16 セパレータ
24、28 担体材料粒子
26 バインダ材料
30、32 スズ含有粒子
34 付加的電子伝導性材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、
担体材料によって担持されるスズ含有材料を含む負極と、
前記正極と前記負極との間に配置される溶融塩電解質と、
を含むバッテリ。
【請求項2】
前記バッテリが、リチウムイオンバッテリである請求項1に記載のバッテリ。
【請求項3】
前記スズ含有材料が、スズ合金である請求項1に記載のバッテリ。
【請求項4】
前記スズ含有材料が、保護層によって溶融塩電解質から分離されている請求項1に記載のバッテリ。
【請求項5】
前記保護層が、ポリマー層である請求項1に記載のバッテリ。
【請求項6】
前記保護層が、固体電解質界面(SEI)層である請求項1に記載のバッテリ。
【請求項7】
前記保護層が、溶融塩電解質の分解によって形成され、前記溶融塩電解質が更に分解するのを保護することを特徴とする請求項1に記載のバッテリ。
【請求項8】
前記正極が、スズ含有材料の粒子を含み、前記粒子が担体材料によって担持されることを特徴とする請求項1に記載のバッテリ。
【請求項9】
前記粒子が、ナノ粒子である請求項8に記載のバッテリ。
【請求項10】
前記担体材料が、金属合金である請求項1に記載のバッテリ。
【請求項11】
前記スズ含有材料が、スズと、Mg、Ti、V、Cr、Mo、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、As、Zr、Nb、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sb、Ta、W、Ir、Pt、Au、Pb及びBiを含む元素のグループからの1つ又はそれ以上の元素との合金であることを特徴とする請求項1に記載のバッテリ。
【請求項12】
前記担体材料は、銀、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、バナジウム、パラジウム、及びタングステンから成る金属のグループから選択された1つ又はそれ以上の金属を含む請求項1に記載のバッテリ。
【請求項13】
前記担体材料が、酸化物、窒化物、又は炭化物である請求項1に記載のバッテリ。
【請求項14】
前記スズ含有粒子がナノ粒子であり、前記担体材料が導電体である請求項1に記載のバッテリ。
【請求項15】
前記スズ含有粒子が、50%を上回るスズを含む請求項1に記載のバッテリ。
【請求項16】
前記担体材料が電子伝導性材料であり、前記負極が更にバインダを含む請求項1に記載のバッテリ。
【請求項17】
正極と、
スズ含有粒子を含む負極と、
正極と負極との間に配置された電解質と、
を含み、
前記スズ含有粒子が、該スズ含有粒子によって前記電解質の分解を遅らせるように作用する保護層によって前記電解質から分離されることを特徴とするバッテリ。
【請求項18】
前記保護層が、ポリマーである請求項1に記載のバッテリ。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−501214(P2008−501214A)
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504075(P2007−504075)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/008781
【国際公開番号】WO2005/089392
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(505438890)トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ インコーポレイテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】TOYOTA MOTOR ENGINEERING & MANUFACTURING NORTH AMERICA, INC.
【住所又は居所原語表記】25 ATLANTIC AVENUE,ERLANGER, KENTUCKY 41018, UNITED STATES OF AMERICA
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】