説明

スタフィロコッカス−アウレウス−シデロフォアの阻害剤のスクリーニング検定

本発明は、新規なシデロフォアの生合成におけるスタフィロコッカス-アウレウス(s.アウレウス)sbnオペロンの役割の発見に関する。更に本発明は、シデロフォアの生合成を阻害する化合物をスクリーニングする方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、引用をもってその内容全体をここに援用することとする、2004年12月8日出願の米国仮出願第60/607,896に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
背景
鉄は大半の微生物の成長にとって絶対的な要件であり、例外として考えられるは乳酸桿菌
(Archibald (1983) FEMS Microbiol. Lett. 19:29-32) 及びボレリア-ブルグドーフェリ(原語:Borrelia burgdorferi (Posey and Gherardini
(2000) Science 288:1651-1653)である。鉄は、地殻で4番目に最も豊富な元素であるにも係わらず、しばしば成長を制限する栄養物質である。好気条件環境及び生理的pHでは、鉄は三価鉄 (Fe3+) 状態で存在し、不溶性の水酸化物及びオキシ水酸化物沈殿物を形成する。哺乳動物は、鉄を可溶化してホスト細胞に送達する役目をするトランスフェリン及びラクトフェリンなどの高親和性鉄結合糖たんぱく質を持つことにより、鉄の制限を克服する (Weinberg (1999) Emerg. Infect. Dis. 5:346-352)。この結果、細胞外の遊離鉄の制限が更に起きるため、ヒト身体中の遊離鉄の濃度は、生産的な細菌感染を支援するのに必要なそれよりも数オーダー低い濃度である10-18Mの濃度であると推定される (Braun et al., (1998) Bacterial iron transport:
mechanisms, genetics, and regulation, p. 67-145. In A. Sigel and H. Sigel (ed.), Metal Ions in Biological Systems,
vol. 35. Iron transport and storage in microorganisms, plants, and animals.
Marcel Dekker, Inc., New York)。
【0003】
鉄制限を克服するために、細菌はこの必須栄養分を獲得する複数の異なる機序を進化させた。例えばパスツレラ科の仲間は、鉄負荷型のトランスフェリン及びラクトフェリンを認識する受容体を発現すると考えられる (Gray-Owen and Schryvers, (1996) Trends Microbiol. 4:185-91)。しかし最もよくある鉄獲得機序の一つは、シデロフォアと呼ばれる低分子量高親和性の鉄キレート物質と、三価鉄−シデロフォアの複合体を能動的に内部移行させる役目をするコグネート細胞エンベロープ受容体の利用を通じたものである。多くのシデロフォアはホストの鉄をめぐってトランスフェリン及びラクトフェリンと成功裏に競合することができる。実際、酸化鉄−シデロフォアの取り込み系が発現することが、敗血性E.コリ(原語:E. coli )(Williams (1979)
Infect. Immun. 26:925-932), Vibrio anguillarum (Crosa et al. (1980) Infect. Immun. 27:897-902)、エルウィニア-クリサンセミ(原語:Erwinia chrysanthemi )(Enard et al. (1988) J. Bacteriol.
170:2419-2426) 及びシュードモナス-アエルギノーサ(原語:Pseudomonas aeruginosa )(Meyer et
al. (1996) Infect. Immun. 64:518-523)などの細菌において重要な菌力因子である。
【0004】
スタフィロコッカス-アウレウス(原語:Staphylococcus aureus )(S. aureus)は、sstABCD (Morrissey et al. (2000)
Infect. Immun. 68:6281-6288)、sirABC (Heinrichs et al. (1999)
J. Bacteriol. 181:1436-1443) 及びfhuCBG (Sebulsky et al. (2000) J. Bacteriol. 182:4394-4400) オペロンにコードされたものを含め、いくつかの異なる鉄調節ABCトランスポータを持つ。このsst 及びsir 系については輸送される基質は未知であるが、 fhuCBG 遺伝子は、fhuD1 及びfhuD2 と協調して(Sebulsky and Heinrichs (2001) J. Bacteriol. 183:4994-5000)、鉄(III)-ヒドロキサメート複合体の獲得に関与する。多くのコアグラーゼ陰性スタフィロコッカス (CoNS) 及びS.アウレウスの株を含むスタフィロコッカスのいくつかの仲間がシデロフォアを産生する。これらのシデロフォアのうちの二つ、スタフィロフェリンA (Konetschny-Rapp et al.
(1990) Eur. J. Biochem. 191:65-74; Meiwes et
al. (1990) FEMS Microbiol. Lett. 67:201-206) 及びスタフィロフェリンB (Dreschel et al. (1993)
BioMetals. 6:185-192; Haag et al.
(1994) FEMS Microbiol. Lett. 115:125-130)はポリカルボキシレート・クラスのものであるが、三番目のアウレオケリン (Courcol et al. (1997)
Infect. Immun. 65:1944-1948)は化学的に特徴付けられていない。我々の研究につながるような分子−遺伝子学的情報は、スタフィロコッカスのシデロフォアのいずれの合成に関しても、知られていない。
【0005】
S.アウレウスは、小さな皮膚及び創傷感染から、心内膜炎、骨髄炎及び敗血症(Archer (1998) Clin. Infect. Dis. 26:1179-1181)などのより重篤な続発症に至るまで、幅広い感染症を引き起こす流行性のヒト病原体である。S.アウレウスが多くの組織に侵襲して定着する能力は、組織接着を支援するフィブロネクチン-、エラスチン-、及びコラーゲン-結合性のたんぱく質など、いくつかの菌力因子や、組織破壊及び細菌播種を起こす複数のエキソトキシン及びプロテアーゼの発現能に拠るものであろう。この細菌がin vivoでの成長中に鉄を獲得する能力は、その病理発生にとっても重要であると思われ、複数の研究グループが、その産物がホストの鉄化合物の結合及び/又は輸送に関与しているいくつかの異なる遺伝子を特徴付けている (Mazmanian et al. (2003)
Science 299:906-9; Modun et al.
(1998) Infect. Immun. 66:3591-3596; Taylor
and Heinrichs (2002) Mol. Microbiol. 43:1603-1614)。
【0006】
もともと、ペニシリンは最悪のS.アウレウス感染さえも治療するために用いられた。しかし、S.アウレウスのペニシリン耐性株が出現したことで、S.アウレウス感染を治療する上でのペニシリンの有効性は低下してしまい、今日、院内感染で遭遇する大半のS.アウレウス株はペニシリンに応答しない。S.アウレウスのペニシリン耐性株は、ペニシリンをペニシリン酸に転化することで抗生物活性を破壊するラクタマーゼを産生する。更に、このラクタマーゼ遺伝子はしばしば、エピソームで、典型的にはプラスミド上で伝播し、またしばしば、集合的に多剤耐性をもたらすエピソーム性因子上の複数の遺伝子の一つでもある。
【0007】
1960年代に導入されたメチシリンは、S.アウレウスのペニシリン耐性という問題を概ね克服した。これらの化合物では、ペニシリンのうちで抗生物活性を担う部分が保存され、ラクタマーゼを失活させるための良好な基質にペニシリンが成っている所以の他の部分が改変又は変更されている。しかし、アミノグリコシド、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、マクロライド及びリンコサミドを含め、S.アウレウスに対して有効な数多くの他の抗生物質に対する耐性と一緒に、この生物でメチシリン耐性も出現した。 実際に、一般的なS.アウレウスのメチシリン耐性株は多剤耐性である。メチシリン耐性S.アウレウス(MRSA)は、世界中で最も重要な院内病原体の一つになっており、感染コントロール上の深刻な問題を投げかけている。今日では、数多くの株が、事実上全ての抗生物質に対して多耐性であり、その例外はバンコマイシン型糖ペプチド抗生物質である。S.アウレウス感染の薬物耐性は、著しい治療上の問題を呈しているが、その問題は、新しい治療薬が開発されない限り更に悪化するであろう。
【0008】
このように、S.アウレウス感染を治療するための新規かつ有効な治療薬が医学上、緊急に求められているが、未だ満たされていない。
【0009】
発明の概要
本発明は、少なくとも部分的に、その産物がS.アウレウスのシデロフォアの生合成に関与している、鉄調節性の9つの遺伝子オペロン(sbnと指定する)の同定及び特徴付けに基づくものである。sbnオペロンの発現は研究室用S.アウレウス株の鉄制限性の成長にとって重要なだけでなく、in vivoでS.アウレウスが生存するためにも重要である。結果的に、このシデロフォアの生合成に関与する遺伝子及びたんぱく質は、S.アウレウス特異的抗生物質を同定するためのスクリーニング検定で用いることのできる重要な薬物ターゲットなのである。
【0010】
ある局面では、本発明は、sbn オペロン(即ち sbnA、sbnB、sbnC、sbnD、sbnE、sbnF、sbnG、sbnH、及びsbnI )を含む9つの遺伝子のそれぞれ、sbn遺伝子を含有する組換えベクタ、前記組換えベクタを含有するホスト細胞、及び、コードされたポリペプチドを作製する方法、を特徴とする。
【0011】
別の局面では、本発明は、sbnオペロンの遺伝子のそれぞれにコードされたSbnポリペプチドを特徴とする。前記Sbnポリペプチドは、SbnA、SbnB、SbnC、SbnD、SbnE、SbnF、SbnG、SbnH、及びSbnIを包含する。各Sbn ポリペプチドが、(「スタフィロバクチン」とも言及される)S.アウレウスシデロフォアの生合成に必要である。
【0012】
別の局面では、本発明は、スタフィロコッカス-アウレウス(S.アウレウス)への鉄取込みを阻害する抗体、アンチセンスRNA、及びsiRNAを含む、新規な抗生物質を特徴とする。
【0013】
本発明の更なる局面は、S.アウレウスへにおけるスタフィロバクチン生合成を阻害する作用物質を同定するためのスクリーニング検定を特徴とする。ある実施態様では、本検定では、sbn遺伝子産物に結合することで、その生化学的機能に作用物質を同定することができる。別の実施態様では、本検定では、S.アウレウスにおけるSbnポリペプチド及び/又は核酸の発現を阻害する作用物質を同定することができる。
【0014】
開示される本発明の更なる特徴及び利点を、以下の詳細な説明及び請求項と関係させて、以下に論じる。
【0015】
詳細な説明
1. 概論
本発明は、スタフィロバクチンと呼ばれるシデロフォアの生合成におけるスタフィロコッカス-アウレウス(S.アウレウス)sbnオペロンの役割の発見に少なくとも部分的に基づくものである。シデロフォアは、細菌の成長に必要な鉄を獲得するために細菌が用いる高親和性鉄キレータである。ここでは、S.アウレウスにおけるシデロフォア産生を阻害する新規な抗生物質と、シデロフォア生合成の更なる阻害剤を同定するために化合物をスクリーニングする方法を解説する。
【0016】
2. 定義
便宜上、本明細書、実施例及び付属の請求項で用いるいくつかの用語及び文言の意味を下に提供する。他に定義しない限り、ここで用いられる全ての技術及び科学用語は、本発明が属する当業の当業者が通常理解するものと同じ意味を有する。
【0017】
用語「作用物質」は、ここでは、化合物、化合物の混合物、生物巨大分子(例えば核酸、抗体、たんぱく質又はこれらの部分、例えばペプチド)、あるいは、細菌、植物、真菌又は動物(特に哺乳動物)細胞又は組織から作製された抽出物を指すために用いられている。作用物質は、以下に解説されたスクリーニング検定により、同定できよう。このような作用物質は、スタフィロコッカス-アウレウスにおけるsbn媒介性シデロフォア生合成の阻害剤でも、又はアンタゴニストでもよい。このような作用物質の活性により、それは、対象において局所的又は全身的に作用する生物学的、生理学的、又は薬理学的に活性な一物質(又は複数の物質)である「治療薬」として適するものになるであろう。
【0018】
用語「アンタゴニスト」又は「阻害剤」とは、あるたんぱく質の少なくとも一つの生物活性を低下させる又は阻害する作用物質を言う。アンタゴニストは、あるたんぱく質と、標的ペプチド又は酵素基質などの別の分子との間の相互作用を低下させる又は阻害する化合物であろう。またアンタゴニストは、遺伝子の発現を低下させる又は阻害する、あるいは、存在する発現たんぱく質の量を低下させる又は阻害する、化合物であってもよい。
【0019】
ここで用いられる場合、用語「抗体」とは、免疫グロブリンや、免疫グロブリン(例えばIgG、IgD、IgA、IgM 及び IgE)のうちのいずれかの抗原結合部分、即ち、抗原に特異的に結合する(「免疫反応する」)、抗原結合部位を含有するポリペプチド、を言う。抗体は、少なくとも一つのジスルフィド結合で相互に連結された少なくとも一つの重(H)鎖及び少なくとも一つの軽(L)鎖を含む場合がある。用語「VH」とは、抗体の重鎖可変領域を言う。用語「VL」とは、抗体の軽鎖可変領域を言う。例示的な実施態様では、用語「抗体」は具体的にはモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を網羅するものである。「ポリクローナル抗体」とは、一種又は複数種の抗原で免疫された動物の血清から得られた抗体を言う。「モノクローナル抗体」とは、ハイブリドーマ細胞の一個のクローンにより産生される抗体を言う。モノクローナル抗体を作製する技術には、限定はしないが、ハイブリドーマ技術(Kohler & Milstein (1975) Nature 256:495−497を参照されたい);トリオーマ技術;ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor, et al. (1983) Immunol.
Today 4:72を参照されたい)、EBV ハイブリドーマ技術(Cole, et al., 1985 In: Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,
Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96を参照されたい)及びファージ・ディスプレイがある。
【0020】
ポリクローナル又はモノクローナル抗体には、更に操作又は改変を加えてキメラ又はヒト化抗体を作製することができる。「キメラ抗体」は、軽鎖及び重鎖遺伝子が異なる種に属する免疫グロブリンセグメントから成るように遺伝子操作された免疫グロブリン遺伝子にコードされている。例えば、例えばここで解説された通りに得られるものなど、マウスモノクローナル抗体由来の遺伝子可変(V)セグメントの実質的な部分を、ヒト定常(C)セグメントの実質的に部分に接合できよう。このようなキメラ抗体は、マウスモノクローナル抗体よりもヒトに対する方が抗原性に少ないと考えられる。
【0021】
ここで用いられる場合の用語「ヒト化抗体」(HuAb)とは、非ヒト抗体由来のCDRを有しながらも、ヒトフレームワークに実質的に同一(即ち少なくとも85%)なフレームワーク領域を持つキメラ抗体であって、この場合、いずれかの定常領域が、ヒト免疫グロブリン定常領域に対して少なくとも約85-90%、そして好ましくは約95%のポリペプチド配列同一性を有するようなキメラ抗体を言う。例えば、PCT 公報WO 90/07861 及びヨーロッパ特許No. 0451216を参照されたい。おそらくはCDRであるものを除き、このようなHuAbの全部は、一つ以上の天然ヒト免疫グロブリン配列の相当する部分に実質的に同一である。用語「フレームワーク領域」とは、ここで用いられる場合、免疫グロブリン軽鎖及び重鎖可変領域のうちで、Kabat, et al. (1987) Sequences of Proteins of Immunologic
Interest, 4th Ed.,
US Dept. Health
and Human Servicesに定義されているように、単一種内の異なる免疫グロブリン間で比較的に保存されている(即ち、CDR以外)部分を言う。ヒト定常領域DNA配列は、公知の手法に従い多種のヒト細胞から分離することができるが、好ましくは不死化B細胞から分離するとよい。ヒト化抗体を作製するための可変領域又はCDRは、抗原に結合することができるモノクローナル抗体を由来としてもよいが、マウス、ラット、ウサギ、又は他の脊椎動物を含め、いずれの都合のよい哺乳動物源でも産生されよう。
【0022】
用語「抗体」は更に抗体フラグメントも包含する。抗体フラグメントの例には、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2、及びFvフラグメント;限定はしないが、一本鎖Fv(scFv)分子、付属する重鎖部分のない、一つの軽鎖可変ドメインのみを含有する一本鎖ポリペプチド、又は軽鎖可変ドメインの三つのCDRを含有するそのフラグメント、及び(3)付属する軽鎖部分のない、一つの重鎖可変領域のみを含有する一本鎖ポリペプチド、又は重鎖可変領域の三つのCDRを含有するそのフラグメント、を含め、中断のない、一つながりの連続したアミノ酸残基から成る一次構造を有するジアボディやいずれかの抗体フラグメント;並び抗体フラグメントから形成される多重特異的又は多価構造、がある。一つ以上の重鎖を含む抗体フラグメントにおいては、前記(複数の)重鎖には、インタクト抗体の非Fc領域に見られるいずれの定常ドメイン配列(例えばIgGアイソタイプ中のCH1)を含めることもでき、及び/又は、インタクト抗体に見られるいずれのヒンジ領域配列を含めることもでき、及び/又は、重鎖のヒンジ領域配列又は定常ドメイン配列に融合させた又は配置させたロイシン・ジッパー配列を含めることもできる。適したロイシン・ジッパー配列には、Kostelney et al., (1992)
J. Immunol., 148: 1547-1553が教示するjun 及びfos ロイシン・ジッパーや、米国特許第6,468,532号に解説されたGCN4 ロイシン・ジッパーがある。Fab 及びF(ab')2
フラグメントはインタクト抗体のFc フラグメントを欠くものであり、典型的にはパパイン(Fabフラグメントの作製のため)又はペプシン(F(ab)2フラグメントの作製のため)などの酵素を用いたたんぱく質分解により、生じる。
【0023】
抗体は、他の大半の抗原に比べて、ある抗原に優先的に結合するときに、その抗原又は抗原のエピトープに「特異的に結合」することになる。例えば、この抗体は、一つ以上の他のエピトープに対して約50%、20%、10%、5%、1% 又は0.1% 未満の交差反応性を有するかも知れない。
【0024】
用語「保存的置換」とは、広い意味で同様な分子特性を持つアミノ酸同士の間の変更を言う。例えば、脂肪族の基アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシンの内の交換は、保存的とみなすことができる。時には、これらのうちの一つへのグリシンの置換も保存的とみなすことができる。他の保存的な交換には、脂肪族の基アスパラギン酸及びグルタミン酸間;アミド基アスパラギン及びグルタミン間;水酸基セリン及びスレオニン間;芳香族基フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン間;塩基性の基リジン、アルギニン及びヒスチジン間;及び含硫基メチオニン及びシステイン間のもの、がある。時には、メチオニン基及びロイシン基内での置換も保存的とみなすことができる。好適な保存的置換基は、アスパラギン酸−グルタミン酸;アスパラギン−グルタミン;バリン−ロイシン−イソロイシン;アラニン−バリン;フェニルアラニン−チロシン;及びリジン−アルギニン、である。
【0025】
「有効量」とは、治療したときに有益又は所望の臨床結果を生ずるのに充分な量である。有効量は、一回以上の用量にして患者に投与することができる。治療の観点では、有効量とは、患者の感染を減少させるために充分な量である。有効量を達成するための適当な投薬量を決定する場合には、複数の因子が典型的に考慮に入れられる。これらの因子には、患者の年齢、性別及び体重、治療しようとする状態、状態の重篤度、投与される薬剤の形状及び有効濃度、がある。
【0026】
核酸又はヌクレオチド配列を説明するときに用いられる「均等な」とは、機能的に均等なポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を言う。均等なヌクレオチド配列には、対立遺伝子バリアントなど、一箇所以上のヌクレオチドの置換、追加又は欠失を違いとする配列が含まれ、従って、遺伝暗号の縮重が原因で異なる配列が含まれよう。例えば、核酸バリアントには、ヌクレオチドの置換、欠失、又は追加により生ずるものが含まれよう。当該の置換、欠失、又は追加は、一つ以上のヌクレオチドが関与していてもよい。バリアントは、コーディング領域、非コーディング領域、又は両者に変化があるものでもよい。コーディング領域の変化は、保存的又は非保存的なアミノ酸置換、欠失又は追加を生ずる可能性がある。
【0027】
「相同性」又は代替的には「同一性」とは、二つのペプチド間又は二つの核酸分子間の配列類似性を言う。相同性は、比較を目的としたアライメントしてもよい各配列中のある一つの位置を比較することにより、決定できよう。比較された配列中のある位置が、同じ塩基又はアミノ酸で占められていれば、その分子はその位置において相同である。配列間の相同性の程度は、これら配列に共通の対合する又は相同な位置の数の関数である。用語「パーセント同一である」とは、二つのアミノ酸配列間又は二つのヌクレオチド配列間の配列同一性を言う。同一性は、比較を目的としてアライメントしてもよい各配列中のある一つの位置を比較することにより、決定できよう。比較された配列中の均等な位置が同じ塩基又はアミノ酸で占められていれば、その分子はその位置において同一である;均等な部位が同じ又は類似のアミノ酸残基(例えば立体及び/又は電子の性質で類似など)で占められていれば、その分子はその位置において相同(類似)であると言ってよい。相同性、類似性、又は同一性のパーセンテージとしての表現とは、比較された配列に共通の位置にある同一又は類似のアミノ酸の数の関数を言う。FASTA、BLAST、又はENTREZを含め、多様なアライメント・アルゴリズム及び/又はプログラムを用いてよい。FASTA 及びBLASTは、GCG配列解析パッケージ(ウィスコンシン州マジソン、ウィスコンシン大学)の一部として入手可能であり、デフォルト設定などをして用いてもよい。ENTREZ は、メリーランド州ベセズダ、米国国立保健研究所、ナショナル・ライブラリー・オブ・メディスン、ナショナル・センター・フォー・バイオテクノロジー・インフォメーションを通じて入手可能である。ある実施態様では、二つの配列のパーセント同一性を、例えば各アミノ酸ギャップをそれが二つの配列間の単一のアミノ酸又はヌクレオチドのミス対合であるかの如く重みを付けるなど、ギャップ・ウェイトを1にしたGCGプログラムにより判定してもよい。アライメントのための他の技術はMethods in Enzymology, vol. 266: Computer Methods for Macromolecular
Sequence Analysis (1996), ed. Doolittle, Academic Press, Inc., a division of
Harcourt Brace & Co., San Diego, California, USAに解説されている。好ましくは、配列中のギャップを許容するアライメント・プログラムを用いて配列をアライメントするとよい。スミス-ウォーターマンは、配列アライメントでギャップを許容するアルゴリズムの一種である。Meth. Mol. Biol. 70: 173-187 (1997)を参照されたい。更にニードルマン及びワンシュのアライメント法を用いたGAPプログラムを用いて配列をアライメントしてもよい。代替的な検索戦略は、MASPARコンピュータで作動するMPSRCHソフトウェアを用いるものである。 MPSRCHはスミス-ウォーターマンのアルゴリズムを用いて大規模並列コンピュータで配列を採点する。このアプローチは、関係の遠い対合を拾い出す能力に優れており、特に、小さなギャップやヌクレオチド配列エラーに寛容である。核酸にコードされたアミノ酸配列を用いて、たんぱく質及びDNAの両方のデータベースを検索できよう。個々の配列を持つデータベースは、上記のMethods in Enzymology, ed. Doolittleに解説されている。データベースにはGenbank、EMBLや、二本のDNAデータベース(DDBJ)がある。
【0028】
ここで用いられる場合の用語「感染」とは、競合的な代謝、毒素、細胞内複製又は抗原抗体応答が原因で臨床上著明でなかったり、あるいは局所的な細胞損傷に至る場合のある、S.アウレウスなどの微生物の身体組織中への侵襲及び増殖を言う。身体の防御機序が有効であれば、感染は局部的、臨床レベル以下及び一時的であったりする。局所感染は、存続したり、広がって急性、亜急性又は慢性の臨床感染又は疾患状態になることがある。また、微生物がリンパ系又は血管系へ到達できた場合には、局所感染が全身性になることもある。S.アウレウス感染の結果、限定はしないがフルンケル、慢性フルンケル症、インペチゴ、急性骨髄炎、肺炎、心内膜炎、熱傷様皮膚症候群、毒素ショック症候群、及び食中毒を含む疾患又は状態になることがある。
【0029】
用語「阻害する」とは、生物活性、核酸発現、又はたんぱく質発現のいずれかの減少、低下又は完全な阻害を言う。
【0030】
「標識」又は「検出可能な標識」とは、限定はしないが、放射性同位体、蛍光体、化学発光成分、酵素、酵素基質、酵素コファクター、酵素阻害剤、染料、金属イオン、リガンド(例えばビオチン又はハプテン)等を含む検出可能な分子を言う。「蛍光体」とは、検出可能な範囲の蛍光を示すことのできる物質又はその一部分を言う。適した標識の具体的な例には、フルオレセイン、ローダミン、ダンジル、ウンベリフェロン、テキサス・レッド、ルミノール、NADPH、アルファ-又はベータ-ガラクトシダーゼ及び西洋わさびペルオキシダーゼ、がある。
【0031】
ここで遺伝子に関して用いられる用語「変異型」とは、変異型たんぱく質をコードする遺伝子を言う。ここでたんぱく質に関して用いられる用語「変異型」とは、その通常又は正常な生理学的役割を果たさないたんぱく質を意味する。S.アウレウスポリペプチド変異型はアミノ酸の置換、欠失又は追加により、生ずる場合がある。前記の置換、欠失、又は追加には一つ以上の残基が関与することがある。これらの中でも特に好適なのは、S.アウレウスたんぱく質の特性又は活性を変化させる置換、追加及び欠失である。
【0032】
用語「ポリヌクレオチド」及び「核酸」は、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドあるいはこれらの類似体に関係なく、いずれかの長さの重合体型のヌクレオチドを交換可能に言うために用いられている。以下はポリヌクレオチドの非限定的な例である:コーディング又は非コーディング領域、ある遺伝子又は遺伝子断片の連鎖解析から定義される一つ(又は複数の)遺伝子座、エキソン、イントロン、メッセンジャーRNA (mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝状ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクタ、いずれかの配列の分離されたDNA、いずれかの配列の分離されたRNA、核酸プローブ、及びプライマ。ポリヌクレオチドには、メチル化ヌクレオチド及びヌクレオチド類似体など、修飾されたヌクレオチドを含めてもよい。存在する場合のヌクレオチド構造に対する修飾は、当該ポリマのアセンブリ前に付加されたものでも、又は後に付加されたものでもよい。ヌクレオチドの配列の途中には、非ヌクレオチド成分があってもよい。更に、ポリヌクレオチドは、重合体形成後に、標識成分との結合などにより修飾してもよい。
用語「組換え」ポリヌクレオチドは、天然では生じないか、又は、非天然の編成で別のポリヌクレオチドに連結してある、ゲノム、cDNA、半合成、又は合成起源のポリヌクレオチドを意味する。「オリゴヌクレオチド」とは、例えば75、50、25、又は10 ヌクレオチド未満など、約100 ヌクレオチド未満を有する一本鎖ポリヌクレオチドを言う。
【0033】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「たんぱく質」(一本鎖の場合)は、ここでは、アミノ酸の重合体を言うために交換可能に用いられている。該重合体は直線状でも、又は分枝状でもよくまた修飾されたアミノ酸を含んでいてもよく、また途中に非アミノ酸を持っていてもよい。この用語は更に、例えばジスルフィド結合形成、糖鎖付加、脂質化、アセチル化、ホスホリル化、又は標識成分との結合などのいずれか他の操作などにより修飾されたアミノ酸重合体を包含するものである。ここで用いられる場合のこの用語「アミノ酸」とは、グリシン及びDもしくはL型光学異性体の両者、並びにアミノ酸類似体及びペプチドミメティックを含む、天然及び/又は非天然即ち合成のアミノ酸のいずれをも言う。
【0034】
用語「sbnオペロン」とは、ここで用いられる場合、共通のプロモータを持つsbnA、sbnB、sbnC、sbnD、sbnE、sbnF、sbnG、sbnH、及びsbnI を含む、細菌遺伝子の一グループを言う。sbnAコーディング領域の上流にあるプロモータ因子は、鉄の調節を受ける。このオペロンは、ここで示すように、スタフィロバクチンと呼ばれるシデロフォアの生合成を担う。sbn オペロンのヌクレオチド配列がGenbankに寄託されており、登録番号 AY251022を受けている。sbn オペロンの各コーディング領域は、スタフィロバクチン・シデロフォアの生合成に必要なたんぱく質をコードしている。このように、sbnA は推定上のシステインシンターゼをコードしており、sbnB は推定上のオルニチンシクロデアミナーゼをコードしており、sbnC は、エアロバクチン生合成のための推定上のIucC ホモログをコードしており、 sbnD は推定上の外向きフラックスたんぱく質をコードしており、sbnE はシデロフォア生合成たんぱく質をコードしており、sbnF は推定上のヒドロキサメート生合成たんぱく質をコードしており、sbnG は推定上のヒドロキサメート生合成たんぱく質をコードしており、sbnH は推定上のオルニチン又はジアミノピメレートデカルボキシラーゼをコードしており、そしてsbnI は未知のたんぱく質をコードしている。
【0035】
用語「sbn ヌクレオチド」、「sbn 核酸」、又は「sbn 遺伝子」とは、sbnA、sbnB、sbnC、sbnD、sbnE、sbnF、sbnG、sbnH、及びsbnI 核酸を言う。
【0036】
用語「sbn たんぱく質」又は「sbn ポリペプチド」とは、sbn オペロンの各遺伝子の産物、即ち、「SbnA」、「SbnB」、「SbnC」、「SbnC」、「SbnD」、「SbnE」、「SbnF」、「SbnG」、「SbnH」及び「SbnI」を言い、そのフラグメント及び部分や、その生物学的に活性なフラグメント及び部分を包含する。例示的な実施態様では、ここで解説されたsbnポリペプチドは、スタフィロバクチンの生合成に参与する。Sbn ポリペプチドの具体的な機能を以下の更に解説する。
【0037】
用語「Sbn欠損株」とは、少なくとも一つのSbnたんぱく質を発現しない細菌株を言う。
【0038】
用語「スタフィロバクチン」とは、sbnオペロンにより合成され、SirABC 鉄−シデロフォア輸送系により細胞内に輸送される鉄−シデロフォアを言う。
【0039】
用語「低分子」とは、約5 kD未満、約2.5 kD未満、約1.5 kD未満、又は約0.9 kD未満の分子量を有する化合物を言う。低分子は、例えば、核酸、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド核酸、ペプチドミメティック、糖、脂質又は他の有機(炭素を含有する)又は無機分子であってよい。数多くの製薬会社が化学的及び/又は生物学的混合物、しばしば真菌、細菌、又は藻類抽出物の後半なライブラリを有しており、このライブラリを本発明の検定のいずれかでスクリーニングすることができる。用語「低有機分子」とは、有機又は医療用化合物としてしばしば同定される低分子を言い、核酸、ペプチド又はポリペプチドのみである分子を含まない。
【0040】
用語「特異的にハイブリダイズする」とは、検出可能かつ特異的な核酸の結合を言う。本発明のポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド及び核酸は、核酸鎖に、非特異的核酸への相当量の検出可能な結合を抑えるようなハイブリダイゼーション条件及び洗浄条件下で選択的にハイブリダイズする。選択的なハイブリダイゼーション条件を達成するために、当業で公知であり、ここで論じるようなストリンジェントな条件を用いてもよい。一般的には、本発明のポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、及び核酸と、目的の核酸配列との間の核酸配列相同性は、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、又はそれ以上であろう。場合によっては、ハイブリダイゼーション条件及び洗浄条件を、従来のハイブリダイゼーション手法に従って、そしてここで更に解説する通りのストリンジェントな条件下で行う。
【0041】
用語「ストリンジェントな条件」又は「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、二重鎖を形成するような二つの相補ポリヌクレオチド鎖の特異的ハイブリダイゼーションを促進する条件を言う。ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度及びpHのときのポリヌクレオチド二重鎖の熱融解点(Tm)よりも約5℃下になるように選択されよう。相補なポリヌクレオチド鎖の長さをそれらのGC含有量が、当該二本鎖のTm、ひいては所望のハイブリダイゼーション特異性を得るのに必要なハイブリダイゼーション条件を決定するであろう。Tmとは、あるポリヌクレオチド配列の50%が、完全に対合する相補鎖にハイブリダイズする(規定のイオン強度及びpH下での)温度である。場合によっては、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェント度を、特定の二重鎖のTmにほぼ等しくなるように高めることが好ましい場合がある。
【0042】
Tmを推測する多種の技術が利用できる。典型的には、ある二重鎖中のG-C塩基対が、そのTmの約3℃に寄与すると推定され、他方、A-T塩基対は、約2℃に寄与すると推定されており、このとき理論最大値の約80−100℃を上限とする。しかしながら、G-Cのスタッキング、相互作用、溶媒効果、所望の検定温度等を考慮に入れる、より洗練された形のTmが利用できる。例えば、ほぼ60℃の解離温度(Td)を有するプローブを、式:Td
= (((((3 x #GC) + (2 x #AT)) x 37) - 562)/#bp) − 5;(式中 #GC、#AT、及び#bp はそれぞれ、当該二重鎖の形成に関与する、グアニン−シトシン塩基対の数、アデニン−チミン塩基対の数、及び全塩基対の数である)を用いてデザインすることができる。
【0043】
ハイブリダイゼーションは、5xSSC、4xSSC、3xSSC、2xSSC、1xSSC 又は0.2xSSC中で、少なくとも約1時間、2時間、5時間、12時間、又は24時間の場合、行わせてよい。ハイブリダイゼーションの温度は、例えば約25℃(室温)から約45℃、50℃、55℃、60℃、又は65℃になど、反応のストリンジェント度を調節するために高くしてもよい。更にハイブリダイゼーション反応には、ストリンジェン度に影響する別の物質も含めてもよく、例えば50%ホルムアミドの存在下でハイブリダイゼーションを行うと、規定の温度でのハイブリダイゼーションのストリンジェント度が高くなる。
【0044】
ハイブリダイゼーション反応の後に一回の洗浄ステップを続けても、又は、二回以上の洗浄ステップを、同じ又は異なる塩度及び温度で続けてもよい。例えば、約25℃(室温から約45°C、50°C、55°C、60°C、65°C、又はそれ以上に洗浄の温度を上げて、ストリンジェント度を高めてもよい。洗浄ステップを、例えば0.1又は0.2%のDSDなど、界面活性剤の存在下で行ってもよい。例えば、ハイブリダイゼーションの後にそれぞれ65℃での二回の洗浄ステップを約20分間、2×SSC、0.1%のSDS中で行ってもよく、そして選択によってはそれぞれ65℃での更に2回の洗浄ステップを約20分間、0.2×SSC、0.1%のSDS中で行ってもよい。
【0045】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件例には、50% ホルムアミド、10xデンハーツ(0.2% フィッコール、0.2% ポリビニルピロリドン、0.2% ウシ血清アルブミン)及び200μg/mlの変性済み担体 DNA、例えばせん断したサケ精子DNAを含む、又はこれらから成る溶液中での65℃での一晩のハイブリダイゼーション、続いて2xSSC、0.1% SDSでの約20分間のそれぞれ65℃での二回の洗浄ステップ、そして0.2xSSC、0.1%SDS中での約20分間のそれぞれ65℃での二回の洗浄ステップ、がある。
【0046】
ハイブリダイゼーションは、溶液中の二つの核酸をハイブリダイズさせるステップ、又は、溶液中の一つの核酸をフィルタなどの固体の支持体に付着させた核酸にハイブリダイズさせるステップ、を含むであろう。一方の核酸が固体の支持体上にあるとき、プレハイブリダイゼーション・ステップをハイブリダイゼーション・ステップの前に行ってもよい。プレハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーション溶液と同じ溶液及び同じ温度で、(相補なポリヌクレオチド鎖のない状態で)少なくとも約1時間、3時間又は10時間、行ってよい。
【0047】
適したストリンジェント度の条件は当業者に公知であるか、あるいは、当業者が経験的に判断してもよい。例えばCurrent Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y.
(1989), 6.3.1-12.3.6; Sambrook et al.,
1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, N.Y; S.
Agrawal (ed.) Methods in Molecular Biology, volume 20; Tijssen (1993)
Laboratory Techniques in biochemistry and molecular biology-hybridization with
nucleic acid probes, e.g., part I chapter 2 “Overview of principles of
hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays”, Elsevier, New
York; and Tibanyenda, N. et al., Eur.
J. Biochem. 139:19 (1984) and Ebel, S. et
al., Biochem. 31:12083 (1992)を参照されたい。
【0048】
核酸又はアミノ酸配列に関して用いられる場合の用語「実質的に相同な」とは、互いに配列上実質的に同一又は類似であるために、コンホメーションの相同性が生じ、ひいては、一つ以上の有用な程度の生物学的(免疫学的も含む)活性が保持されるような配列を言う。この用語は、配列の通常の進化を意味することは意図されていない。
【0049】
「対象」とは、ヒトを含む、オス又はメスの哺乳動物を言う。
【0050】
「ベクタ」とは、挿入された核酸分子をホスト細胞内へ、及び/又は、ホスト細胞間で、輸送する自己複製性の核酸分子である。この用語は、主に核酸分子の細胞内への挿入のために機能するベクタ、主に核酸の複製のために機能するベクタの複製、及び、DNAもしくはRNAの転写及び/又は翻訳のために機能する発現ベクタ、を含む。更に、上記の機能の二つ以上を提供するベクタも含まれる。ここで用いられる場合の「発現ベクタ」は、適したホスト細胞に導入されたときにポリペプチドに転写及び翻訳され得るポリヌクレオチドであると、定義しておく。「発現系」とは、通常、所望の発現産物を生じるように機能することのできる発現ベクタから成る、適したホスト細胞を意味する。
【0051】
3. Sbn遺伝子
本発明は、ここでsbnオペロンと呼ばれる、S.アウレウス内のシデロフォア生合成遺伝子クラスを含む核酸分子(図1:SEQ ID NO:1)を特徴とする。9つの遺伝子はsbn オペロンを含み、ここでsbnA、sbnB、sbnC、sbnD、sbnE、sbnF、sbnG、sbnH、及びsbnI(図2−10;SEQ ID NO: 2、4、6、8、10、12、14、16、及び18)と呼ばれる。
【0052】
本発明の核酸は、更に、ここで解説されたsbnヌクレオチド配列、その完全相補鎖又は変異型のいずれかを含む、いずれかから成る、又はいずれかから基本的に成るものであろう。更に他の核酸は、sbn遺伝子又はその相補鎖に対して少なくとも約70%、80%、90%、95%、98% 又は 99% の同一性又は相同性を有するヌクレオチド配列を含む、ヌクレオチド配列から成る、又はヌクレオチド配列から基本的に成るものである。実質的に相同な配列はストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を用いて同定できよう。
【0053】
遺伝暗号の縮重が原因で本発明の核酸とは異なる単離された核酸も、本発明の範囲内にある。例えば、数多くのアミノ酸が2つ以上のトリプレットによりデザインされている。同じアミノ酸を明示するコドン、即ち同義(CAU 及び CACはヒスチジンについて同義である)の結果、当該たんぱく質のアミノ酸配列に影響しない「サイレントな」変異が起きる場合がある。しかしながら、本発明のポリペプチドのアミノ酸配列の変化につながらないDNA配列多型も存在するだろうと予測される。当業者であれば、天然の対立遺伝子の差異があるために、ある特定の種の間で、本発明の特定のたんぱく質をコードする核酸の一つ以上(ヌクレオチドの1%未満から最高で約3又は5%又はおそらくはそれ以上)のヌクレオチドにこれらの差異があり得ることは理解されよう。このようなヌクレオチドの差異や、結果的なアミノ酸多型は、いずれも、本発明の範囲内である。
【0054】
ここで開示されたポリペプチドに進化上関係するアミノ酸配列を有するたんぱく質をコードする核酸が提供されるが、この場合「進化上関連する」とは、(例えば対立遺伝子の差異や、又は、示差的なスプライシングにより)天然で生じた異なるアミノ酸配列を有するたんぱく質や、コンビナトリアル変異誘発などにより得られた、本発明のたんぱく質の変異型バリアントを言う。
【0055】
本ポリペプチドの生物学的に活性な部分をコードする、本発明のポリヌクレオチドのフラグメントも提供される。ここで用いられる場合の、ここで開示されたポリペプチドの活性部分をコードする核酸のフラグメントとは、本発明のポリペプチドの完全長アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列よりも少ないヌクレオチドを有するヌクレオチド配列であって、ここで定義された通りの完全長Abnたんぱく質の生物学的活性の少なくとも一部分を保持したポリペプチドをコードしているか、あるいは選択的には、当該完全長たんぱく質の生物学的活性のモジュレータとして機能的である、ものを言う。例えば、このようなフラグメントには、当該ポリペプチドの由来となった元の完全長たんぱく質のうちで、別の分子(例えばポリペプチド、DNA、RNA等)との当該たんぱく質の相互作用を媒介する一ドメインを含有するポリペプチドが含まれる。
【0056】
ここで提供される核酸には、更に、このような組換えポリペプチドの分子クローニング、発現又は精製に有用なリンカ配列、改変された制限エンドヌクレアーゼ部位及び他の配列が含まれよう。
【0057】
ここで提供されるSbnポリペプチドをコードする核酸は、ここで解説されたプロトコルや、当業で公知のものに従って、いずれかの生物を由来とするmRNA又はゲノムDNAから得られよう。例えば本発明のポリペプチドをコードするcDNAは、例えば細菌、ウィルス、哺乳動物等の生物から全mRNAを単離することにより、得られよう。次に、二重鎖cDNAをこの全mRNAから調製した後、適したプラスミド又はバクテリオファージ・ベクタに、数多くの公知の技術のいずれか一つを用いて挿入してもよい。本発明のポリペプチドをコードする遺伝子は、本発明の提供するヌクレオチド配列情報に従って、確立されたポリメラーゼ連鎖反応技術を用いてクローニングできよう。ある局面では、本発明の核酸又はその一フラグメントを増幅する方法は、(a)そのそれぞれが本発明の核酸配列に対して相補な、少なくとも8ヌクレオチド長である一本鎖オリゴヌクレオチドの対を提供するステップであって、この場合、前記オリゴヌクレオチドが相補である相手の配列は、少なくとも10ヌクレオチド、離れている、ステップと、(b)前記オリゴヌクレオチドを、本発明の核酸を含む核酸を含む試料に、前記対のオリゴヌクレオチド間に位置する領域の増幅が可能な条件下で接触させることにより、前記核酸を増幅するステップとを含むであろう。
【0058】
更に本発明は、スタフィロバクチン生合成に必要なたんぱく質(即ち、sbnA、sbnB、sbnC、sbnD、sbnE、sbnF、sbnG、sbnH、及びsbnI 核酸)をコードする単離された遺伝子を含む組換えベクタ、前記組換えベクタを含有するホスト細胞、及びコードされたS.アウレウスポリペプチドを作製する方法、も特徴とする。
【0059】
適したベクタは、感染、形質導入、トランスフェクション、トランスヴェクション、エレクトロポレーション及び形質転換などの公知の技術を用いてホスト細胞に導入できよう。ベクタは、例えばファージ、プラスミド、ウィルス又はレトロウィルスベクタであってよい。レトロウィルスベクタは複製コンピテントでも、又は複製欠陥性でもよい。後者の場合、ウィルスの増殖は一般に補完的なホスト細胞内でのみ起きるであろう。
【0060】
ベクタは、ホスト内での増殖のために選択マーカを含有していてもよい。一般に、プラスミドベクタは、リン酸カルシウム沈殿物などの沈殿物に入れて、あるいは、荷電した脂質との複合体に入れて、導入される。ベクタがウィルスである場合、適したパッケージング細胞株を用いてそれをin vitroでパッケージした後に、ホスト細胞に導入できよう。
【0061】
好適なベクタは、目的のポリヌクレオチドに対するcis作用性制御領域を含むものである。適したtrans作用性因子は、ホストに提供させても、補完的にベクタに提供させても、又は、ホスト細胞への導入時にそのベクタ自体に提供させてもよい。
【0062】
いくつかの実施態様では、ベクタは、誘導性及び/又は細胞種特異的であってもよい特異的発現に役立つ。このようなベクタの中で特に好適なのは、温度及び栄養物質添加剤など、操作が容易な環境因子により誘導できるものである。
【0063】
本発明において有用な発現ベクタには、染色体由来、エピソーム由来、及びウィルス由来ベクタがあり、例えば細菌性プラスミド、バクテリオファージ、酵母エピソーム、酵母染色体因子、バキュロウィルス、パポヴァウィルス、ワクシニアウィルス、アデノウィルス、鶏痘ウィルス、偽狂犬病ウィルス及びレトロウィルスなどのウィルス、並びに、コスミド及びファージミドなど、これらの組合せを由来とするベクタなど、がある。
【0064】
当該のDNAインサートは、他にもあるがファージ・ラムダPLプロモータ、E. coli lac、trp 及びtacプロモータ、SV40初期及び後期プロモータ、並びにレトロウィルスLTRのプロモータなどの適したプロモータに作動的に連鎖していなくてはならない。他の適したプロモータは当業者には公知であろう。発現コンストラクトには、更に、転写開始、終了のための部位や、転写領域には翻訳用のリボゾーム結合部位が含まれるであろう。当該コンストラクトが発現する成熟転写産物のコーディング部分は、好ましくは、その初めに翻訳開始部位と、翻訳されるべきポリペプチドの終わりに適切に配置された終了コドン (UAA、UGA 又はUAG) とが含まれるとよいであろう。
【0065】
提示したように、発現ベクタには、少なくとも一つの選択マーカが含まれることが好ましいであろう。このようなマーカには、真核細胞株の場合にはジヒドロ葉酸レダクターゼ又はネオマイシン耐性遺伝子、そしてE. coli及び他の細菌の培養の場合には、テトラサイクリン、カナマイシン、又はアンピシリン耐性遺伝子がある。適したホストの代表的な例には、限定はしないが、E. coli、ストレプソミセス(原語:Streptomyces )及びサルモネラ-チフィムリウム(原語:Salmonella typhimurium )細胞などの細菌細胞:酵母細胞などの真菌細胞;ドクロソフィラ(原語:Drosophila )S2 及びSf9 細胞などの昆虫細胞;CHO、COS 及びBowes 黒色腫細胞などの動物細胞;並びに植物細胞、がある。上記のホスト細胞のために適した培地及び条件は当業で公知である。
【0066】
細菌で用いるために好適なベクタの中には、Qiagen社から入手可能なpQE70、pQE60 及びpQE9、pQE10 ;Stratagene社から入手可能な pBS ベクタ、Phagescript ベクタ、Bluescript ベクタ、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A ;Novagen社から入手可能な pET シリーズのベクタ;及びPharmacia社から入手可能なptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、pRIT5、がある。好適な真核性ベクタの中には、Stratagene社から入手可能なpWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1 及びpSG;並びにPharmacia社から入手可能なpSVK3、pBPV、pMSG 及びpSVL がある。他の適したベクタは当業者には容易に明白であろう。
【0067】
本発明で用いるのに適した公知の細菌性プロモータには、E. coli
lacI 及びlacZプロモータ、T3、T5 及びT7 プロモータ、gptプロモータ、ラムダPR 及びPLプロモータ、trp プロモータ並びにxyI/tet
キメラ・プロモータがある。適した真核性プロモータには、CMV最初期プロモータ、HSVチミジンキナーゼプロモータ、初期及び後期SV40プロモータ、ラウス肉腫ウィルス(RSV)のものなどのレトロウィルスLTRのプロモータ、並びに、マウスメタロチオネイン-I プロモータなどのメタロチオネインプロモータ、がある。
【0068】
ホスト細胞へのコンストラクトの導入は、リン酸カルシウム沈殿法、DEAE-デキストラン媒介性トランスフェクション、陽イオン性脂質媒介性トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、感染又は他の方法で行うことができる。このような方法は、数多くの標準的な研究室用手引き(例えばDavis, et al., Basic Methods in Molecular Biology
(1986))に解説されている。
【0069】
高等真核生物による本発明のポリペプチドをコードするDNAの転写は、ベクタにエンハンサ配列を挿入することにより、高められよう。エンハンサとは、通常約10乃至300ヌクレオチドであり、ホスト細胞腫でプロモータの転写活性を増す作用をするcis作用性のDNA因子である。エンハンサの例には、複製開始点であるヌクレオチド100位から後ろ側の270位までに位置するSV40エンハンサ、サイトメガロウィルス初期プロモータエンハンサ、複製開始点の後ろ側にあるポリオーマエンハンサ、及びアデノウィルスエンハンサ、がある。
【0070】
翻訳後のポリペプチドの小胞体ルーメン内へ、ペリプラズム間隙へ、又は細胞外環境への分泌のために、例えばアミノ酸配列KDELなどの適した分泌シグナルを、発現されるポリペプチドの取り入れてもよい。前記のシグナルは当該のポリペプチドにとって内因性でも、又はそれらは異種のシグナルであってもよい。
【0071】
目的のポリペプチドのコーディング配列を、異なるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む融合遺伝子の一部として取り入れてもよい。本発明は、本発明の核酸と、本発明の核酸のヌクレオチド配列に対してイン-フレームで連鎖させた少なくとも一つの異種配列とを含むことで、この異種ポリペプチドを含む融合たんぱく質をコードするようにした単離された核酸を考察するものである。前記の異種ポリペプチドを、(a)本発明の核酸にコードされたポリペプチドのC末端、(b)前記ポリペプチドのN末端、又は(c)前記ポリペプチドのC末端及びN末端、に融合させてもよい。場合によっては、前記異種の配列は、それを融合させる相手のポリペプチドの検出、可溶化及び/又は安定化を可能にするポリペプチドをコードするものである。更に他の実施態様では、前記の異種の配列は、polyHis tag、myc、HA、GST、プロテインA、プロテインG、カルモジュリン結合ペプチド、チオレドキシン、マルトース結合たんぱく質、polyアルギニン、poly
His-Asp、FLAG、免疫グロブリンたんぱく質の一部分、及び経細胞輸送ペプチドから成る群より選択されるポリペプチドをコードするものである。
【0072】
本発明のポリペプチドの免疫原性フラグメントを作製したい場合は、融合発現系が有用であろう。例えばロタウィルスのVP6カプシドたんぱく質を、モノマー型又はウィルス粒子の形のいずれかで、ポリペプチドの部分の免疫原性担体たんぱく質として用いてよい。対する抗体を生じさせたい、本発明のポリペプチド部分に対応する核酸配列を、後期ワクシニアウィルス構造たんぱく質のコーディング配列を含む融合遺伝子コンストラクトに取り入れて、当該たんぱく質の部分をビリオンの一部として含む融合たんぱく質を発現する一組の組換えウィルスを作製してもよい。更に、B型肝炎表面抗原もこの役割に利用してよい。同様に、本発明のポリペプチドの一部分と、ポリオウィルスカプシドたんぱく質とを含有する融合たんぱく質をコードするキメラコンストラクトを作製して免疫原性を高めてもよい(例えばEP公報NO: 0259149; 及びEvans et
al., (1989) Nature 339:385; Huang
et al., (1988) J. Virol. 62:3855; and Schlienger et al., (1992) J. Virol.
66:2を参照されたい)。
【0073】
融合たんぱく質は、たんぱく質の発現及び/又は精製を容易にするであろう。例えば本発明のポリペプチドをグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)融合たんぱく質として作製してもよい。このようなGST融合たんぱく質を用いれば、例えばグルタチオン誘導体化マトリックスを用いるなどして、本発明のポリペプチドの精製を簡便化できよう(Current Protocols in
Molecular Biology, eds. Ausubel et al., (N.Y.: John Wiley & Sons,
1991) を参照されたい)。別の実施態様では、組換えたんぱく質の所望の部分のN末端にあるpoly-(His)/エンテロキナーゼ開裂部位配列など、精製リーダ配列をコードする融合遺伝子があれば、Ni2+金属樹脂を用いたアフィニティ・クロマトグラフィによる発現後の融合たんぱく質の精製が可能になるであろう。その後、この精製リーダ配列をエンテロキナーゼによる処理で除去して、精製済みたんぱく質を提供できよう(例えばHochuli et al., (1987) J. Chromatography 411: 177; 及び Janknecht et al., PNAS USA 88:8972を参照されたい)。
【0074】
融合遺伝子を作製する技術は公知である。基本的には、異なるポリペプチドをコードする多様なDNA断片の接合は、平滑末端又は付着末端をライゲーションに用い、制限酵素消化を行って適した末端にし、適宜アルカリホスファターゼ処理して付着末端を充填して不要な接合を防ぎ、酵素によるライゲーションを行うといった常法に従って行われる。別の実施態様では、自動DNA合成装置を用いた常法により、融合遺伝子を合成してもよい。代替的には、アンカー・プライマを用いて遺伝子断片のPCR増幅を行うことで、二つの連続する遺伝子断片間に相補な突出部を生じさせ、その後この突出部をアニールしてキメラ遺伝子配列を作製してもよい(例えば
Current Protocols in
Molecular Biology, eds. Ausubel et al., John Wiley & Sons: 1992を参照されたい)。
【0075】
他の実施態様では、本発明の核酸を、プレート、微量定量プレート、スライド、ビーズ、粒子、スフィア、フィルム、ストランド、沈殿物、ゲル、シート、管材料、容器、キャピラリ、パッド、スライス等を含む固体の表面上に固定してもよい。本発明の核酸を、アレイの一部としてチップ上に固定してもよい。該アレイは、ここで解説された通りの本発明のポリヌクレオチドを一つ以上、含んでいてもよい。ある実施態様では、該チップは、本発明の一つ以上のポリヌクレオチドを、ポリヌクレオチド配列のアレイの一部として含む。
【0076】
別の局面は、「アンチセンス療法」のおける本発明の核酸の使用に関する。ここで用いられる場合のアンチセンス療法とは、本発明のポリペプチドの一つをコードする細胞内mRNA及び/又はゲノムDNAに細胞条件下で特異的にハイブリダイズ又は結合することで、転写及び/又は翻訳を阻害するなどによりそのポリペプチドの発現を阻害するようなオリゴヌクレオチド・プローブ又はそれらの誘導体の投与又はin situ での生成を言う。結合は従来の塩基対相補性によるものでも、又は、例えばDNA二重鎖への結合の場合、二重鎖の大溝との特異的相互作用によるものでもよい。一般的には、アンチセンス療法とは、当業で一般に用いられる範囲の技術を言い、その中には、オリゴヌクレオチド配列への特異的結合に依拠するあらゆる療法が含まれる。
【0077】
当該のオリゴヌクレオチドを、例えばペプチド、ハイブリダイゼーションで惹起される架橋剤輸送剤、ハイブリダイゼーションで惹起される開裂剤等の別の分子に結合させてもよい。アンチセンス分子は「ペプチド核酸(PNA)」でもよい。PNAとは、少なくとも約5ヌクレオチド長を含むオリゴヌクレオチドを、リジンで終わるアミノ酸残基のペプチド骨格に連結して含むアンチセンス分子又は抗遺伝子剤を言う。この末端のリジンは可溶性を当該組成物にもたらす。PNAは相補性の一本鎖DNA又はRNAに優先的に結合して転写の伸長を停止させ、またPEG化すればそれらの細胞内での寿命を伸長させることができる。
【0078】
本発明のアンチセンス・コンストラクトを、細胞内で転写された時に、本発明のポリペプチドをコードするmRNAの少なくとも固有部分に対して相補的なRNAを生じる発現プラスミドなどとして、送達してもよい。代替的には、本アンチセンス・コンストラクトは、ex vivoで生成されると共に、細胞内に導入されたときに本発明のポリペプチドをコードするmRNA及び/又はゲノム配列にハイブリダイズすることで、発現阻害を引き起こすオリゴヌクレオチド・プローブであってよい。このようなオリゴヌクレオチド・プローブは、エキソヌクレアーゼ及び/又はエンドヌクレアーゼなどの内因性ヌクレアーゼに対して耐性であるためにin vivoで安定な修飾されたオリゴヌクレオチドであってよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドとして用いられる核酸分子の例は、DNAのホスホールアミデート、ホスホチオエート及びメチルホスホネート誘導体である(更に米国特許第5,176,996号;第5,264,564号;及び第5,256,775号を参照されたい)。加えて、アンチセンス療法で有用なオリゴマーを構築する一般的なアプローチが、例えばvan der Krol et al.,
(1988) Biotechniques 6:958-976; and
Stein et al., (1988) Cancer Res 48:2659-2668に解説されている。
【0079】
更なる局面では、二本鎖の低分子干渉性RNA
(siRNA)や、同RNAを投与する方法が提供される。siRNAは遺伝子発現を減少又は遮断する。理論に縛られることを望むわけではないが、siRNAは、配列特異的なmRNA分解を媒介することにより遺伝子発現を阻害するものだと広く考えられている。RNA干渉 (RNAi) は、特に動物及び植物における配列特異的な転写後遺伝子サイレンシングのプロセスであり、サイレントになる遺伝子に対して配列上相同な二本鎖RNA (dsRNA)により媒介される
(Elbashir et al. Nature 2001;
411(6836): 494-8)。従って、本発明のポリヌクレオチドの全部又は一部分に対して実質的な配列同一性を有するsiRNA及び長いdsRNAを用いれば、本発明の核酸の発現を阻害できるであろうと考えられる。
【0080】
代替的には、ここで解説されたSir又はFhuC ポリペプチドの発現を減少させる又は遮断するsiRNAを、当該標的遺伝子に対する複数のsiRNAコンストラクトを検査することにより、判定してもよい。ある標的遺伝子に対するこのようなsiRNAを化学合成してもよい。個々のRNA鎖のヌクレオチド配列は、その鎖が、阻害しようとする標的遺伝子に対して一つの相補性領域を有するように、選択される(即ち、相補なRNA鎖は、標的遺伝子の発現時に形成されるmRNA転写産物、又はそのプロセッシング産物の一領域に対して、又は、(+)鎖ウィルスの一領域に対して、相補なヌクレオチド配列を含む)。RNA鎖を合成するステップは、固相合成を含んでいてもよく、この場合、個々のヌクレオチドは、連続する合成サイクル中にヌクレオチド間の3’-5’ホスホジエステル結合の形成を通じて端同士で接合される。
【0081】
ここでは、ここで解説した通りのsbn核酸から基本的に成るヌクレオチド配列を含むsiRNAを提供する。siRNA分子は、その一方が基本的に標的遺伝子の配列に相当する、互いに少なくとも基本的に相補なヌクレオチド配列を各鎖が含むような二本の鎖を含むであろう。標的遺伝子の配列に基本的に相当する該配列を、ここではsiRNAの「センス標的配列」と言及し、それたに対して基本的に相補な配列を「アンチセンス標的配列」と言及する。センス及びアンチセンス標的配列は連続する約15乃至約30ヌクレオチド長;連続する約19乃至約25ヌクレオチド長;連続する約19乃至23ヌクレオチド長、あるいは約19、20、21、22又は23ヌクレオチド長であってよい。センス及びアンチセンス配列の長さは、その長さのセンス及びアンチセンス標的配列を有するsiRNAが、標的遺伝子の発現を、好ましくはホストのインターフェロン応答を著しく誘導することなく、阻害することができるように、決定される。
【0082】
siRNA標的配列は、web.mit.edu/mmcmanus/www/home1.2files/siRNAs
の拡張子を付けたmmcmanusのワールド・ワイド・ウェブで提供されたアルゴリズムのいずれかを用いて予測できよう。
【0083】
センス標的配列は、標的核酸のコーディング又は非コーディング部分あるいはこれらの組合せに基本的又は実質的に同一であってよい。例えば、センス標的配列は、標的核酸あるいはその相補配列の5'側又は3'側非翻訳領域、プロモータ、イントロン又はエキソンに基本的に相補であってよい。更にそれは、このような二つの遺伝子領域間の境界を含む領域に対して基本的に相補であってもよい。
【0084】
センス標的配列のヌクレオチドの塩基組成は、約50%のアデニン (As) 及びチミジン (Ts) 並びに50%のシトシン(Cs) 及びグアノシン(Gs)であってよい。代替的には、塩基組成は、少なくとも50%のCs/Gsであってよく、例えば約60%、70%又は80%のCs/Gsなどであってよい。従って、センス標的配列の選択はヌクレオチドの塩基組成に基づくであろう。siRNAによる標的核酸の到達性に関しては、このようなものは、例えばLee et al. (2002) Nature
Biotech. 19:500で解説されている通りなどで決定できる。このアプローチは、細胞抽出物中などでの基質到達性を判定するためにプローブとして標的核酸に相補なオリゴヌクレオチドを使用することを含む。このオリゴヌクレオチド・プローブと二重鎖を形成した後は、基質はRNaseHに対して感受性になる。従って、PCRなどで判断したときの、あるプローブに対するRNaseH感受性の程度は、選択された部位の到達性を反映したものであり、対応するsiRNAがこの標的遺伝子の転写を阻害する上でどの程度良好に機能するかどうかの予測値となるであろう。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検定用に、あるいは、第一標的配列を同定するためのアンチセンス・オリゴヌクレオチドを特定するために、アルゴリズム特定プライマを用いてもよい。
【0085】
センス及びアンチセンス標的配列は、両者の配列を含むsiRNAが標的遺伝子の発現を阻害できるように、即ち、RNA干渉を媒介できるように、充分に相補的であることが好ましい。例えば、該配列は、細胞内でなど、所望の条件下でハイブリダイゼーションが可能なように充分に相補的であってもよい。従って、センス及びアンチセンス標的配列は、少なくとも約95%、97%、98%、99%、又は100%同一であってもよく、また、せいぜい5個、4個、3個、2個、1個又は0個のヌクレオチド分で異なっていてもよい。
【0086】
センス及びアンチセンス標的配列は、標的核酸又はその相補体以外の配列とはあまり相互作用しないであろう配列であることも好ましい。これは、選択された配列を、標的細胞のゲノム中の他の配列に比較するなどにより、確認することができる。配列の比較は、例えばここで更に解説するBLASTアルゴリズムを用いるなど、当業で公知の方法に従って行うことができる。もちろん、小規模な実験を行って、特定の第一標的配列が、標的核酸の発現を特異的に阻害することができ、他の遺伝子のそれは基本的には阻害しないことを確認することもできる。
【0087】
更にsiRNAは、センス及びアンチセンス配列に加えて配列を含んでいてもよい。例えば、siRNAは、少なくとも一本の鎖が3'側の突出部を有するような、二本の鎖のRNAから成るRNA二重鎖であってもよい。他方の鎖は平滑末端でも、又は突出部を有していてもよい。当該RNA分子が二本鎖であり、両方の鎖が突出部を含むような実施態様では、突出部の長さは、各鎖毎に同じであっても、又は異なっていてもよい。ある具体的な実施態様では、siRNAは、そのそれぞれが一つのRNA鎖上にあり、対になる約19乃至25個のヌクレオチドから成り、約1個乃至約3個、特に約2個のヌクレオチドの突出部をRNAの両方の3’側末端に有するようなセンス及びアンチセンス配列を含む。本発明のRNAの安定性を更に高めるには、3'側突出部を分解に対して安定化させることができる。ある実施態様では、アデノシン又はグアノシンヌクレオチドなどのプリン系ヌクレオチドを含めることで、RNAを安定化させる。代替的には、例えばウリジン2ヌクレオチド3'側突出部を2'-でオキシチミジンに置換するなど、ピリミジン系ヌクレオチドを修飾類似体に置換することも許容され、RNAiの効率に影響しない。2’ヒドロキシルがあまり存在しないことも、少なくとも組織培養培地では、突出部のヌクレアーゼ耐性を高めるであろう。siRNAのRNA鎖は、5’リン酸基及び3’水酸基を有していてもよい。
【0088】
ある実施態様では、siRNA分子は、二重鎖を形成する二本の鎖のRNAを含む。別の実施態様では、siRNAは、センス及びアンチセンス標的配列がハイブリダイズするヘアピン・ループを形成する一本のRNA鎖から成り、二つの標的配列間の配列は、このヘアピン構造のループを基本的に成すスペーサ配列である。該スペーサ配列は、ヌクレオチドのいずれの組合せでもよく、また、いずれの長さでもよいが、但し条件として、この配列を有するスペーサにより連結される二本の相補なオリゴヌクレオチドがヘアピン構造を形成でき、このときスペーサの少なくとも一部分は、ヘアピンの閉じた末端でループを形成しなければならない。例えば、スペーサ配列は、約3乃至約30ヌクレオチド、約3乃至約20ヌクレオチド、約5乃至約15ヌクレオチド、約5乃至約10ヌクレオチド、又は約3乃至約9ヌクレオチドであってよい。その配列は、ヘアピン構造の形成に干渉しなければいずれの配列であってもよい。特に、スペーサ配列は、好ましくは、第一又は第二の標的配列に対して著しい相同性を有する配列でないとよい。なぜなら、それはヘアピン構造の形成に干渉しかねないからである。またスペーサ配列は、当該核酸が導入されるであろう細胞のゲノム配列など、他の配列に類似でないことも好ましい。なぜならそれにより細胞内で望ましくない効果があるかも知れないからである。
【0089】
当業者であれば、RNAなどの核酸に言及する場合、このRNAは、天然で生じるヌクレオチドや、又は、核酸により高い安定性などを提供するヌクレオチド誘導体を含む、又はから成る場合があることは、理解されよう。当該核酸が所望の態様で機能することができれば、いずれの誘導体も許容できる。例えば、あるsiRNAが標的遺伝子の発現を阻害することができれば、そのsiRNAはヌクレオチド誘導体を含んでいてもよい。
【0090】
例えば、siRNAは、安定性又は他の理由から、一つ以上の修飾された塩基及び/又は修飾された骨格を含んでいてもよい。例えば、天然RNAのホスホジエステル結合を修飾して、窒素又は硫黄へテロ原子の少なくとも一つを含むようにしてもよい。更に、例を挙げるとイノシンなどの通常でない塩基や、あるいは、トリチル化塩基などの修飾された塩基などの含むsiRNAを本発明で用いることができる。当業者に公知の多くの有用な目的を果たさせる、多様な修飾をRNAに施すことができることは理解されよう。ここで用いられる場合のsiRNAという用語は、それが内因性のテンプレートを由来とすることを条件に、このような化学的に、酵素的に、又は代謝的に修飾された形のsiRNAを包含する。
【0091】
siRNAを合成する態様には制限はない。従って、手動及び/又は自動化法を用いて、それをin vitro
又は in vivoで合成してもよい。in vitro 合成は、化学的に行っても、あるいは、例えばDNA(又はcDNA)テンプレートの転写用にクローニングされたRNAポリメラーゼ(例えばT3、T7、SP6)などを用いて酵素的に行っても、あるいは両方の混合法で行ってもよい。更に、二本の鎖のそれぞれを化学的などで合成し、この二本の鎖をハイブリダイズさせて二重鎖を形成させることにより、siRNAを調製してもよい。in vivoでは、siRNA を当業で公知の組換え技術を用いて合成してもよい(例えばSambrook, et al.,
Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition (1989); DNA Cloning,
Volumes I and II (D. N Glover ed. 1985); Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait
ed, 1984); Nucleic Acid Hybridisation (B. D. Hames & S. J. Higgins eds.
1984); Transcription and Translation (B. D. Hames & S. J. Higgins eds.
1984); Animal Cell Culture (R. I. Freshney ed. 1986); Immobilised Cells and
Enzymes (IRL Press, 1986); B. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning
(1984); the series, Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.); Gene Transfer
Vectors for Mammalian Cells (J. H.
Miller and M. P. Calos eds. 1987, Cold Spring Harbor Laboratory), Methods in
Enzymology Vol. 154 and Vol. 155 (それぞれWu and Grossman, and Wu, eds.), Mayer and Walker, eds. (1987),
Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology (Academic Press, London),
Scopes, (1987), Protein Purification:
Principles and Practice, Second Edition (Springer-Verlag, N.Y.)及びHandbook of Experimental Immunology, Volumes
I-IV (D. M. Weir and C. C. Blackwell eds 1986)を参照されたい)。例えば、細菌細胞を、siRNAの由来となるDNAテンプレートを含む発現ベクタで形質転換することができる。
【0092】
細胞外で合成された場合のsiRNAを、細胞への導入前に精製してもよい。精製は、溶媒(例えばフェノール/クロロホルム)又は樹脂による抽出、沈殿(例えばエタノール中で)、電気泳動法、クロマトグラフィ、又はこれらの組合せによってよい。しかしながら、精製によってsiRNaが失われる場合があり、従って最小限であっても、あるいは全く行われなくてもよい。siRNAを保存用に乾燥させても、あるいは、RNA鎖のアニーリング及び/又は安定化を促進するために緩衝剤又は塩類を含有させてもよい水溶液中に溶解させてもよい。
【0093】
二本鎖構造は、一本の自己相補性RNA鎖に形成させても、あるいは二本の別々の相補性RNA鎖に形成させてもよい。
【0094】
哺乳動物細胞は細胞外siRNAに応答することができることが公知であるため、dsRNAの輸送機序を有すると考えられる(Asher et al. (1969) Nature 223
715-717)。従って、siRNAを哺乳動物の体腔、間質腔、循環中に細胞外的に投与しても、あるいは経口的に導入してもよい。経口導入の方法には、哺乳動物の食物とのRNAの直接的な混合や、食物として用いられる種を操作して当該RNAを発現するようにした後、 導入しようとする哺乳動物に給餌するといった操作されたアプローチがある。例えばラクトコッカス-ラクティス(原語:Lactococcus lactis)などの食物細菌を形質転換させてdsRNAを産生するようにしてもよい(WO93/17117、WO97/14806を参照されたい)。血管又は血管外循環、血液又はリンパ系や、脳脊髄液は、RNAを注射してもよい部位である。
【0095】
RNAを細胞内的に細胞に導入してもよい。この点では核酸を導入する物理的方法を用いてもよい。siRNAを、Zernicka-Goetz et al. (1997) Development
124, 1133-1137 及び Wianny et al. (1998) Chromosoma 107, 430-439で解説されたマイクロ注射技術を用いて投与してもよい。
【0096】
核酸を細胞内的に導入する他の物理的方法には、例えばsiRNAを金粒子上に固定して、創傷部位に直接、撃ち込むといった遺伝子ガン技術など、siRNAを被覆された粒子の照射がある。このように、本発明は、標的遺伝子の発現を阻害するために遺伝子ガンにsiRNAを用いることを提案するものである。更に、siRNA及び金粒子を含む遺伝子ガン療法に適した組成物も提供される。代替的な物理法には、siRNAの存在下で細胞膜を電気穿孔する方法がある。この方法では大規模にRNAiが可能である。例えば脂質媒介方担体輸送、リン酸カルシウム等の化学的媒介性輸送など、細胞に核酸を導入するための、当業で公知の他の方法を用いてもよい。siRNAを、以下の活性のうちの一つ以上を果たす成分と一緒に導入してもよい:細胞によるRNA取り込みを高める、二重鎖のアニーリングを促進する、アニール後の鎖を安定化させる、あるいは、標的遺伝子の阻害を増加させる。
【0097】
いずれの公知の遺伝子治療法を用いても、RNAを投与することができる。ウィルス粒子中にパッケージングされたウィルス・コンストラクトは、細胞内への発現コンストラクトの効率的な導入と、この発現コンストラクトにコードされたsiRNAの転写の両方を達成するであろう。このように、siRNAを細胞内で生成させることもできる。あるsiRNAの一本又は二本の鎖をコードする核酸を含む発現ベクタなどのベクタを、この目的に用いてもよい。当該核酸には、更に、センス標的配列に対して基本的に相補名アンチセンス配列が含まれるであろう。当該核酸には、更に、センス及びアンチセンス標的配列間のスペーサ配列が含まれていてもよい。当該核酸には、更に、例えばRNAポリメラーゼII又はIIIプロモータ及び転写終了シグナルなど、細胞内でセンス及びアンチセンス配列の発現を命令するプロモータも含まれるであろう。前記配列は作動可能に連鎖しているであろう。
【0098】
ある実施態様では、核酸は、RNAコーディング領域(例えばセンス又はアンチセンス標的配列)を、RNAポリメラーゼIIIプロモータに作動可能に連鎖させて含む。このRNAコーディング領域のすぐあとには、pol
IIIによるRNA合成の終了を命令する pol IIIターミネータ配列が来ていてもよい。pol III ターミネータ配列は、一般に、4個以上の連続したチミジン ("T")残基を有する。ある好適な実施態様では、5個の連続したT残基の集まりをターミネータとして用い、このターミネータにより、pol III の転写が、DNAテンプレートの2番目又は3番目のTで停止させられるため、2乃至3個のウリジン("U")
残基がコーディング配列の3’側末端に加えられるだけである。ヒト又はマウス起源の、あるいはいずれか他の種を由来とするH1
RNA 遺伝子又はU6 snRNA 遺伝子を由来とするプロモータ断片などを含め、多種のpol III プロモータを本発明で用いることができる。加えて、pol IIIプロモータを改変/操作することで、全身的又は組織特異的態様のいずれかでの低化学分子による被誘導能など、他の所望の特性を取り入れることもできる。例えば、ある実施態様では、プロモータをテトラサイクリンにより活性化してもよい。別の実施態様では、プロモータをIPTG(lacI系)により活性化してもよい。
【0099】
siRNAは、細胞をベクタなどの二つの核酸で形質転換することにより細胞内で生成させることができ、この場合の各核酸は発現カセットを含み、更にこの各発現カセットはプロモータ、RNAコーディング配列(一方がセンス標的配列であり、そして他方がアンチセンス標的配列である)及び終了シグナルを含む。代替的には、一個の核酸がこれら二つの発現カセットを含んでいてもよい。更に別の実施態様では、核酸は、センス標的配列を、アンチセンス標的配列に連鎖したスペーサに連鎖させて含む、一本鎖RNAをコードしている。該核酸はベクタ内に存在していてもよく、例えば導入された先の細胞でセンス及びアンチセンス標的配列の発現を可能にする真核性の発現ベクタなどの発現ベクタ内などに存在していてもよい。
【0100】
siRNAを生成するベクタは、例えばPaul et al. (2002) Nature Biotechnology
29:505; Xia et al. (2002) Nature Biotechnology 20:1006; Zeng et al. (2002) Mol.
Cell 9:1327; Thijn et al. (2002) Science 296:550; BMC Biotechnol. 2002
Aug 28;2(1):15; Lee et al. (2002) Nature Biotechnology 19: 500; McManus et al. (2002) RNA 8:842; Miyagishi et al.
(2002) Nature Biotechnology 19:497;
Sui et al. (2002) PNAS 99:5515; Yu et al. (2002) PNAS
99:6047; Shi et al. (2003) Trends Genet. 19(1):9; Gaudilliere et al. (2002) J. Biol. Chem. 277(48):46442; US2002/0182223; US 2003/0027783; WO
01/36646 及び WO 03/006477などに解説されている。更にベクタは市販のものも入手できる。例えばpSilencer はGene Therapy
Systems社から入手でき、pSUPER RNAi 系はOligoengineから入手できる。
【0101】
更にここでは、一つ以上のsiRNAを含む、又は、あるsiRNAのRNAコーディング領域をコードする一つ以上の核酸を含む、組成物も提供する。組成物は医薬組成物であってもよく、薬学的に許容可能な担体を含む。更に、組成物を、細胞に又は対象に投与するための器具に入れて提供してもよい。例えば組成物はシリンジ中又はステント上に在ってもよい。更に組成物は、siRNA又は核酸の細胞内への進入を促す薬剤を含んでいてもよい。
【0102】
一般的には、オリゴヌクレオチドは、引用をもってそのそれぞれの全文をここに援用することとするCaruthers et al., Methods in Enzymology (1992) 211:3-19;
Thompson et al., International PCT
Publication No. WO 99/54459; Wincott et
al., Nucl. Acids Res. (1995)
23:2677-2684; Wincott et al., Methods
Mol. Bio., (1997) 74:59; Brennan et
al., Biotechnol. Bioeng. (1998)
61:33-45; 及びBrennan、米国特許第6,001,311号などに解説された通りに、当業で公知のプロトコルを用いて合成できよう。一般的には、オリゴヌクレオチドの合成では、5'側末端のジメトキシトリチル、そして3'側末端のホスホールアミジトなど、従来の核酸保護基及びカップリング基を用いる。ある非限定的な例では、小規模な合成を、Applied Biosystems社(ドイツ、ヴァイテルシュタット)から販売されているExpedite 8909 RNA 合成装置で、ChemGenes Corporation 社(米国マサチューセッツ州01721、アッシュランド、ホーマーアベニュー200、Ashland Technology Center)から販売されているリボヌクレオシド・ホスホールアミジトを用いて行う。代替的には、Protogene 社(米国カリフォルニア州、パロ・アルト)が製造する装置など、96ウェル・プレート合成装置や、あるいは、引用をもってそのそれぞれの全文をここに援用することとするUsman et al., J. Am. Chem. Soc. (1987) 109:7845;
Scaringe et al., Nucl. Acids Res. (1990) 18:5433; Wincott et al., Nucl. Acids Res.
(1990) 23:2677-2684; 及び Wincott et al., Methods Mol. Bio. (1997) 74:59に解説されたものなどの方法により、合成を行うこともできる。
【0103】
本発明の核酸分子を別々に合成してもよく、またdsRNAs
を、例えばライゲーション(Moore et al., Science (1992) 256:9923; Draper et
al., 国際PCT 公報No. WO 93/23569; Shabarova et al., Nucl. Acids Res. (1991) 19:4247; Bellon et al., Nucleosides & Nucleotides (1997)
16:951; 及びBellon et al., Bioconjugate Chem. (1997) 8:204; あるいは合成及び/又は脱保護後のハイブリダイゼーションなどにより、合成後に形成してもよい。核酸分子は、ゲル電気泳動法により従来の方法を用いて精製することも、あるいは、高圧液体クロマトグラフィ(HPLC;上記の Wincott et al.を参照されたい。その全文を引用をもってここに援用することとする)で精製して水中に再懸濁させることもできる。
【0104】
別の実施態様では、細胞中の特定のmRNA又はポリペプチドのレベルを、リボザイム又はこのようなリボザイムをコードする核酸を細胞内に導入することにより、減少させる。mRNA転写産物を触媒作用により切断するようにデザインされたリボザイム分子を、細胞に導入するか、あるいは細胞内で発現させて、遺伝子Yの発現を阻害することもできる(例えばSarver
et al., 1990, Science 247:1222-1225 及び米国特許第5,093,246号を参照されたい)。よく用いられるリボザイム・モチーフの一つは、そのための基質配列要件が小さいハンマーヘッドである。ハンマーヘッド・リボザイムのデザインはUsman et al., Current Opin. Struct. Biol. (1996) 6:527-533に開示されている。Usmanはまた、リボザイムの治療的使用も論じている。更にリボザイムはLong et al., FASEB J. (1993) 7:25; Symons, Ann.
Rev. Biochem. (1992) 61:641; Perrotta et al., Biochem. (1992)
31:16-17; Ojwang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) (1992)
89:10802-10806; 及び米国特許第5,254,678号に解説された通りにも調製及び使用することができる。HIV-I RNA のリボザイムによる切断は米国特許第5,144,019号に解説されており;リボザイムを用いたRNAの切断法は米国特許第5,116,742号に解説されており;そしてリボザイムの特異性を増す方法は米国特許第5,225,337号及びKoizumi et al., Nucleic Acid Res.
(1989) 17:7059-7071に解説されている。ハンマーヘッド構造におけるリボザイム断片の調製及び使用も、Koizumi et al., Nucleic Acids Res. (1989) 17:7059-7071に解説されている。ヘアピン構造におけるリボザイム断片の調製及び使用はChowrira and
Burke, Nucleic Acids Res. (1992) 20:2835に解説されている。またリボザイムは、Daubendiek and Kool, Nat.
Biotechnol. (1997) 15(3):273-277が解説するようにローリング転写によっても作製することができる。
【0105】
標的遺伝子の調節領域(即ち、遺伝子プロモータ及び/又はエンハンサ)に相補なデオキシリボヌクレオチド配列をターゲティングして、身体内での標的細胞中の遺伝子の転写を妨げる三重螺旋構造を形成させることで、遺伝子発現を減少させることができる。(概略的にはHelene (1991) Anticancer Drug
Des., 6(6):569-84; Helene et al.
(1992) Ann. N.Y.
Acad. Sci., 660:27-36; 及び Maher (1992) Bioassays 14(12):807-15を参照されたい)。
【0106】
更なる実施態様では、RNAアプタマーを細胞内に導入するか、又は細胞内で発現させることができる。RNAアプタマーは、Tat 及びRev RNA (Good et al.
(1997) Gene Therapy 4: 45-54) などのたんぱく質の翻訳を特異的に阻害することのできる、このようなたんぱく質の特異的RNAリガンドである。
【0107】
4. Sbnポリペプチド
ここで解説されたSbnA、SbnB、SbnC、SbnD、SbnE、SbnF、SbnG、SbnH、及び SbnI (図2−10;SEQ ID
NO: 4、7、10、13、16、19、22、25、及び28) を含むS.アウレウスポリペプチドには、天然で精製された産物、化学合成法の産物、及び、細菌、酵母、高等植物、昆虫、及び哺乳動物細胞を含む、原核性又は真核性のホスト細胞から組換え技術により産生された産物、がある。いくつかの実施態様では、ここで開示されたポリペプチドは、Sbnポリペプチドの機能を阻害するものである。
【0108】
ポリペプチドは、更に、ここで開示されたアミノ酸配列のいずれかを含む、いずれかから成る、あるいはいずれかから基本的に成るであろう。更に他のポリペプチドは、Sbnポリペプチドに対して少なくとも約70%、80%、90%、95%、98% or 99% の同一性又は相同性を有するアミノ酸配列を含む、アミノ酸配列から成る、又はアミノ酸配列から基本的に成るものである。例えば、約1、2、3、4、5又はそれ以上のアミノ酸分で天然型Sbnたんぱく質の配列とは異なるようなポリペプチドも考えられる。この違いは保存的置換などの置換、欠失又は追加であってもよい。この違いは、好ましくは、異なる種間では大きく保存されていない領域にあるとよい。このような領域は、多様な種を由来とするSbnたんぱく質のアミノ酸配列をアライメントすることにより、特定することができる。これらのアミノ酸を、例えば別の種に見られるものなどと置換することができる。これら又は他の位置で置換、挿入又は欠失させてもよい他のアミノ酸は、変異誘発研究を生物学的検定と組み合わせることで、特定することができる。
【0109】
ここに包含される他のたんぱく質は、修飾アミノ酸を含むものである。たんぱく質の例は、糖鎖付加、PEG化、リン酸化、又は、由来となった基のたんぱく質の少なくとも一つの生物学的機能を残すいずれか類似のプロセス、により修飾されたものである誘導体たんぱく質である。
【0110】
更に、たんぱく質は、一つ以上の非天然型アミノ酸を含んでいてもよい。例えば、非伝統的なアミノ酸又は化学的アミノ酸類似体を、たんぱく質への置換又は追加として導入することができる。非伝統的なアミノ酸には、限定はしないが、通常のアミノ酸のD型異性体、2,4-ジアミノ酪酸、アルファ-アミノイソ酪酸、4-アミノ酪酸、Abu、2-アミノ酪酸、ガンマ-Abu、イプシロン-Ahx、6-アミノヘキサン酸、Aib、2-アミノイソ酪酸、3-アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t-ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、ベータ-アラニン、フルオロ-アミノ酸、ベータ-メチルアミノ酸、Calpha-メチルアミノ酸、アルファ-メチルアミノ酸などのデザイナーアミノ酸、及び一般的なアミノ酸類似体がある。更に、アミノ酸はD型(右旋性)でも、又はL型(左旋性)でもよい。
【0111】
いくつかの実施態様では、ここで解説されたSbnポリペプチドは、その可溶性を増す、及び/又は、その精製、同定、検出及び/又は構造上の特徴付けを容易にする、ドメインを含有する融合たんぱく質であってもよい。ドメインの例には、例えば、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、プロテインA、プロテインG、カルモジュリン結合ペプチド、チオレドキシン、マルトース結合たんぱく質、HA、myc、poly アルギニン、poly His、poly His-Asp 又はFLAG 融合たんぱく質及びタグがある。ドメインの更なる例には、例えばシグナルペプチド、タイプIII分泌系標的決定ペプチド、経細胞輸送ドメイン、核内局在シグナルなど、たんぱく質のin vivoでの局在を変化させるドメインがある。多様な実施態様では、本発明のポリペプチドは、一種以上の異種融合を含んでいてもよい。ポリペプチドは同じ融合ドメインの多数のコピーを含んでいてもよく、あるいは、二つ以上の異なるドメインへの融合を含んでいてもよい。融合は、当該ポリペプチドのN末端にあっても、当該ポリペプチドのC末端にあっても、あるいは当該ポリペプチドのN及びC末端の両方にあってもよい。更に、融合たんぱく質の構築を容易にしたり、あるいは、融合たんぱく質のたんぱく質発現又は構造上の拘束を最適化したりするために、本発明のポリペプチドと、融合ドメインとの間にリンカ配列を含めることも、本発明の範囲内にある。別の実施態様では、たんぱく質発現後又はその後にタグを取り外すために、融合ポリペプチドと、本発明のポリペプチドとの間にプロテアーゼ開裂部位を含めるように、本ポリペプチドを構築してもよい。適したエンドプロテアーゼの例には、例えばXa因子及びTEV プロテアーゼがある。たんぱく質をシグナル配列に融合させてもよい。例えば、組換えにより調製された場合、当該ペプチドをコードする核酸を、その5'側末端でシグナル配列に連結して、このたんぱく質が細胞から分泌されるようにしてもよい。
【0112】
S.アウレウスポリペプチドは、組換え細胞培養株から、硫安塩析又はエタノール沈殿法、酸抽出法、陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィ、ホスホセルロースクロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、アフィニティ・クロマトグラフィ、ヒドロキシルアパタイト・クロマトグラフィ、レクチン・クロマトグラフィ及び精製に用いられる高速液体クロマトグラフィ(「HPLC」) を含む公知の方法により、回収及び精製することができる。製剤中のたんぱく質の少なくとも約90%が所望のたんぱく質であるなど、たんぱく質を実質的に純粋な製剤として用いてもよい。所望のたんぱく質を少なくとも約50%、60%、70%、又は80%含む組成物も用いてよい。
【0113】
たんぱく質を変性させても、又は未変性のままでもよく、また、その結果凝集させても、又は未凝集のままでもよい。たんぱく質は、当業で公知の方法に従って変性させることができる。
【0114】
いくつかの実施態様では、本発明のポリペプチドを化学的に合成しても、無細胞系でリボゾームにより合成しても、あるいは細胞内でリボゾームにより合成してもよい。本発明のポリペプチドの化学合成は、段階的固相合成、コンホメーション支援されたペプチド断片の再ライゲーションを通じた半合成、クローニングされた又は合成のペプチド・セグメントの酵素ライゲーション、及び、化学的ライゲーション、を含め、多種の当業で公知の方法を用いて行えよう。天然の化学的ライゲーションでは、二つの保護されていないペプチド・セグメントの化学選択的反応を利用して、過渡的なチオエステルで連結された中間体を生成させる。次に、この過渡的なチオエステルで連結された中間体に自発的に転位を行わせて、天然のペプチド結合をライゲーション部位に有する完全長ライゲーション産物を提供する。完全長ライゲーション産物は、無細胞合成で生成されるたんぱく質と化学的に同一である。完全長ライゲーション産物を、可能であればフォールディング修正及び/又は酸化させて、天然のジスルフィド含有たんぱく質分子を形成させてもよい(例えば米国特許第6,184,344号及び第6,174,530号;並びにMuir et
al., Curr. Opin.
Biotech. (1993): vol. 4,
p 420; Miller et al., Science (1989):
vol. 246, p 1149; Wlodawer et al., Science (1989): vol. 245, p 616; Huang et al., Biochemistry (1991): vol. 30, p 7402; Schnolzer, et al., Int. J. Pept. Prot. Res. (1992): vol. 40, p 180-193;
Rajarathnam et al., Science (1994): vol. 264, p 90; R. E.
Offord, “Chemical Approaches to Protein Engineering”, in Protein Design and the
Development of New therapeutics and Vaccines, J. B. Hook, G. Poste, Eds.,
(Plenum Press, New York, 1990) pp. 253-282; Wallace et al., J. Biol. Chem.
(1992): vol. 267, p 3852; Abrahmsen et
al., Biochemistry (1991): vol. 30, p 4151; Chang, et al., Proc. Natl. Acad. Sci.
USA (1994) 91: 12544-12548; Schnlzer et
al., Science (1992): vol., 3256,
p 221; 及び Akaji et al., Chem. Pharm. Bull. (Tokyo) (1985) 33: 184を参照されたい)。
【0115】
いくつかの実施態様では、本発明のポリペプチドの天然型又は実験由来ホモログを提供することも有利であろう。このようなホモログは、天然型の本ポリペプチドの生物活性のうちのいくつかを促進又は阻害するモジュレータとして、限られた能力ではあるが機能するであろう。このように、特定の生物学的効果を、限られた機能のホモログで処理することで、本発明のポリペプチドの生物学的活性の全てに向かうアゴニスト又はアンタゴニストによる処理に比較して、より小さい副作用で、惹起できよう。例えば、野生型である本発明のポリペプチドの、特定のたんぱく質への結合能には干渉するが、当該天然ポリペプチドと他の細胞内たんぱく質との間の複合体形成には実質的に干渉しないようなアンタゴニスト性のホモログを作製できよう。
【0116】
ポリペプチドは、本発明の完全長ポリペプチドを由来としてもよい。そのようなポリペプチドの単離されたペプチジル部分は、このようなポリペプチドをコードする核酸のうちの対応する断片から組換えにより作製されたポリペプチドをスクリーニングすることにより、得られよう。加えて、従来のメリフィールド固相f-Moc又はt-Boc化学法など、当業で公知の技術を用いて、断片を化学合成してもよい。例えば、断片に重複のない所望の長さの断片に、たんぱく質を任意に分割してもよく、あるいは、所望の長さの重複断片に分割してもよい。断片を(組換え又は化学合成により)作製してもよく、本発明のポリペプチドのモジュレータとしての機能する能力など、所望の特性を有するペプチジル断片を特定するために検査してもよい。ある例示的な実施態様では、本発明のたんぱく質のペプチジル部分を、本発明のたんぱく質の離散した部分をそれぞれが含有するチオレドキシン融合たんぱく質などとして発現させることにおり、結合活性や阻害活性について、検査できよう(例えば米国特許第5,270,181号及び第5,292,646号;並びにPCT公報 WO94/02502を参照されたい)。
【0117】
別の実施態様では、切断型のポリペプチドを調製してもよい。切断型のポリペプチドは、N末端及びC末端のいずれか又は両方から取り出された1乃至20個又はそれ以上のアミノ酸残基を有するものである。このような切断型ポリペプチドは、完全長ポリペプチドよりも発現、精製又は特徴付けがし易いと思われる。例えば切断型のポリペプチドは、完全長ポリペプチドよりも、結晶化し易く、高品質の回折結晶を生じ易く、あるいは高い輝度ピークを持つと共に重複するピークは最小限であるようなHSQCスペクトルを生じ易いと考えられる。加えて、切断型のポリペプチドを使用すると、完全長ポリペプチドのうちで特徴付けがより容易な安定かつ活性なドメインを特定できよう。
【0118】
更に、本発明のポリペプチドの構造を、治療上もしくは予防上の効験、又は安定性(例えばex vivoでの貯蔵寿命、in vivoにおけるたんぱく質分解に対する耐性等)を向上させるなどの目的に向けて、改変することも可能である。このような改変されたポリペプチドは、天然型の当該たんぱく質の少なくとも一つの活性を残すようにデザインされていれば、ここで更に詳述されるポリペプチドの「機能的均等物」と考えられる。このような改変されたポリペプチドは、例えばアミノ酸置換、欠失、又は追加などにより作製でき、またこの場合の置換も、全体的又は部分的に保存的アミノ酸置換から成るものであろう。
【0119】
例えば、ロイシンをイソロイシン又はバリンに、アスパラギン酸をグルタミン酸に、スレオニンをセリンに置換するなど、保存的アミノ酸置換を単発で行っても、その結果できる分子の生物学的活性に大きな影響はないだろうと予測される。あるポリペプチドのアミノ酸配列に変更をした結果、機能的ホモログができるかどうかは、そのバリアント・ポリペプチドの、野生型たんぱく質のそれと類似の応答を生じる能力を評価することで、容易に判断できよう。二箇所以上の置換が起きたポリペプチドは、同じ態様で容易に検査できよう。
【0120】
本発明のポリペプチドのコンビナトリアル変異型や切断変異型の組を作製する方法が提供され、潜在的なバリアント配列(例えばホモログ)を特定するために特に有用である。このようなコンビナトリアル・ライブラリをスクリーニングする目的は、本発明のポリペプチドの活性を調節すると思われるホモログなどを作製したり、あるいは選択的には、まったく新規な活性を持つホモログを作製したりすることである。天然型のたんぱく質と比べて選択的な効力を有するコンビナトリアル由来のホモログを作製してもよい。このようなホモログは治療薬の開発に使用できよう。
【0121】
同様に、変異誘発法により、対応する野生型たんぱく質とは劇的に異なる細胞内半減期を有するホモログが生ずる場合がある。例えば、変更後のたんぱく質を、たんぱく質分解や、又は、当該たんぱく質の破壊又は失活を起こす他の細胞プロセスに対してより安定又は不安定にできよう。このようなホモログや、それらをコードする遺伝子を、当該たんぱく質の半減期を調節することによりたんぱく質発現を変化するために、利用できよう。上述したように、このようなたんぱく質を、治療薬又は治療法の開発に使用できよう。
【0122】
同様な態様で、対応する野生型たんぱく質の活性に干渉することができるため、アンタゴニストとして作用するたんぱく質ホモログを、前記のコンビナトリアル法で作製してもよい。
【0123】
この方法の代表的な実施態様では、ある一集団のたんぱく質ホモログのアミノ酸配列を、好ましくは可能な限り相同性が最も高くなるようにアライメントする。このような一集団のバリアントには、例えば一つ以上の種由来のホモログや、あるいは、同じ種ではあるが変異のために異なるものを由来とするホモログが含まれよう。アライメント後の配列の各位置にあるアミノ酸を選抜して、縮重した組のコンビナトリアル配列を作製する。いくつかの実施態様では、前記のコンビナトリアル・ライブラリを、潜在的なたんぱく質配列の少なくとも一部分をそれぞれが含む一ライブラリのポリペプチドをコードする遺伝子の縮重ライブラリを利用して、作製する。例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物を酵素的にライゲートして遺伝子配列にし、縮重組の潜在的ポリヌクレオチド配列が個々のポリペプチドとして、あるいは選択的には一組のより大きな(ファージ・ディスプレイ用など)融合たんぱく質として、発現可能なようにしてもよい。
【0124】
潜在的なホモログのライブラリを縮重オリゴヌクレオチド配列から作製できると思われる数多くの方法がある。縮重遺伝子配列の化学合成を自動DNA合成装置で行ってもよく、またその後、当該の合成遺伝子を、発現に向けて適したベクタにライゲートしてもよい。縮重組の遺伝子の目的の一つは、一個の混合物中に、潜在的たんぱく質配列のうちの所望の組をコードする配列の全てを提供することである。縮重オリゴヌクレオチドの合成は当業で公知である(例えばNarang (1983) Tetrahedron
39:3; Itakura et al. (1981) Recombinant DNA, Proc. 3rd Cleveland Sympos.
Macromolecules, ed. AG Walton, Amsterdam:
Elsevier pp. 273-289; Itakura et al.
(1984) Annu. Rev. Biochem. 53:323;
Itakura et al. (1984) Science 198:1056; Ike et al., (1983) Nucleic Acid Res. 11:477を参照されたい)。このような技術は、他のたんぱく質の定方向開発に用いられてきた(例えばScott et al. (1990) Science
249:386-390; Roberts et al. (1992) PNAS USA 89:2429-2433; Devlin et al. (1990) Science 249: 404-406; Cwirla et
al. (1990) PNAS
USA 87: 6378-6382; や米国特許第5,223,409号、第5,198,346号、及び第5,096,815号を参照されたい)。
【0125】
代替的には、他の形の変異誘発法用いてコンビナトリアル・ライブラリを作製してもよい。例えば、アラニン・スキャンニング変異誘発法等(Ruf et al. (1994) Biochemistry 33:1565-1572; Wang et al. (1994) J. Biol. Chem. 269:3095-3099; Balint et al. (1993) Gene
137:109-118; Grodberg et al. (1993) Eur. J. Biochem. 218:597-601; Nagashima et al. (1993) J. Biol. Chem. 268:2888-2892; Lowman et al. (1991) Biochemistry
30:10832-10838; 及び Cunningham et al., (1989) Science 244:1081-1085)、リンカ・スキャンニング変異誘発法 (Gustin et al. (1993) Virology 193:653-660; Brown et al. (1992) Mol. Cell Biol. 12:2644-2652; McKnight et al. (1982) Science 232:316);飽和変異誘発法 (Meyers et al. (1986) Science
232:613);by PCR 変異誘発法 (Leung et al. (1989) Method Cell Mol
Biol 1:11-19);ランダム変異誘発法 (Miller et al. (1992) A Short Course in Bacterial
Genetics, CSHL Press, Cold Spring Harbor, NY; 及び Greener et al. (1994) Strategies in Mol Biol 7:32-34) を用いてスクリーニングすることにより、たんぱく質ホモログ(アゴニスト及びアンタゴニスト型の両方)を作製し、ライブラリから単離できよう。リンカ・スキャンニング変異誘発法は、特にコンビナトリアル環境において、生理活性のあるたんぱく質の切断型を同定するために魅力的な方法である。
【0126】
点変異及び切断により作製されたコンビナトリアル・ライブラリの遺伝子産物をスクリーニングしたり、特定の性質を有する遺伝子産物を探してcDNAライブラリをスクリーニングしたりするには、幅広い技術が当業で公知である。このような技術は、一般に、コンビナトリアル変異誘発法により作製された、たんぱく質ホモログの遺伝子ライブラリの高速スクリーニングに合うように、適合させられよう。大型の遺伝子ライブラリをスクリーニングするために最も広く用いられている技術は、典型的に、複製可能な発現ベクタ中に遺伝子ライブラリをクローニングするステップと、その結果できたベクタのライブラリで適した細胞を形質転換するステップと、所望の活性を検出すると、その産物が検出された遺伝子をコードするべく他の単離が比較的に容易になるような条件下で当該のコンビナトリアル遺伝子を発現させるステップと、を含む。
【0127】
ある例示的なスクリーニング検定の実施態様では、候補コンビナトリアル遺伝子産物を細胞表面上に呈示させ、そのコンビナトリアル遺伝子産物に対する特定の細胞又はウィルス粒子の結合能を「パンニング検定」で検出する。例えば、ある細菌細胞の表面膜たんぱく質の遺伝子中に当該遺伝子ライブラリをクローニングし (Ladner et al., WO
88/06630; Fuchs et al., (1991) Bio/Technology 9:1370-1371; and Goward et al., (1992) TIBS 18:136-140)、その結果できた融合たんぱく質を、FITC-基質など、この細胞表面たんぱく質に結合する蛍光標識された分子を用いるなど、パンニングにより検出して、潜在的に機能的なホモログを採点してもよい。細胞は蛍光顕微鏡下は視覚的に検査し、分離してもよく、あるいは、細胞の形態から可能であれば、蛍光標示式細胞分取器で分離してもよい。この方法を用いれば、本発明のポリペプチドと相互作用することのできる基質又は他のポリペプチドを特定できよう。
【0128】
同様な態様で、遺伝子ライブラリを融合たんぱく質としてウィルス粒子の表面上に発現させてもよい。例えば、繊維状ファージ系では、外来のペプチド配列を感染性ファージの表面上に発現させて2つの利点をもたらしてもよい。第一に、これらのファージはアフィニティ・マトリックスに大変高い密度で付着すると考えられるため、多数のファージを一度にスクリーニングできよう。第二に、各感染性ファージがコンビナトリアル遺伝子産物をその表面上に呈示するため、特定のファージがアフィニティ・マトリックスから低い収量で回収されたら、そのファージをもう一回感染させて増幅してもよい。ほとんど同一のE. coli繊維状ファージM13、fd、及びf1群がファージ呈示ライブラリで最も頻繁に用いられているが、それは、ファージgIII 又は gVIII 膜たんぱく質のいずれを用いても、ウィルス粒子の最終的なパッケージングを破壊することなく融合たんぱく質を作製できるからである(Ladner et al., PCT 公報 WO 90/02909; Garrard et al., PCT 公報WO 92/09690;
Marks et al., (1992) J. Biol. Chem. 267:16007-16010;
Griffiths et al., (1993) EMBO J. 12:725-734; Clackson et al., (1991) Nature 352:624-628; 及びBarbas et al., (1992) PNAS USA 89:4457-4461)。他のファージ膜たんぱく質も適宜用いてよい。
【0129】
ここで開示されたポリペプチドを還元して、基準たんぱく質の別の細胞内パートナーへの結合を模倣することのできる、ペプチド又は非ペプチド物質などのミメティックを作製してもよい。上述したものなどの変異技術や、チオレドキシン系が、あるたんぱく質のうちで、別のたんぱく質とのたんぱく質対たんぱく質間相互作用に参与する決定基をマッピングするために特に有用である。実例を挙げると、あるたんぱく質のうちで、基質たんぱく質の分子認識に関与する重要な残基を決定し、この残基を用いて、この基質たんぱく質に結合するであろうペプチド・ミメティックを作製してもよい。次に、このペプチド・ミメティックを基質に結合させ、野生型たんぱく質との相互作用に必要な重要な残基を覆うことで、この野生型たんぱく質の阻害剤として用いて、このたんぱく質と基質との間の相互作用を妨げられよう。例えば、スキャンニング変異誘発法を利用するなどにより、あるたんぱく質のうちで基質ポリペプチドの結合に関与するアミノ酸残基をマッピングすると、基質への結合時にこの残基を模倣するペプチド・ミメティック化合物を作製できよう。
【0130】
例えば、ここで解説されたSbnたんぱく質の誘導体は化学修飾されたペプチド及びペプチド・ミメティックでもよい。ペプチド・ミメティックとは、ペプチド及びたんぱく質に基づく、又は、ペプチド及びたんぱく質を由来とする、化合物である。ペプチド・ミメティックは、非天然のアミノ酸、コンホメーション上の高速、等配電子置換等を用いた、公知のペプチド配列の構造修飾により、得ることができる。当該のペプチド・ミメティックは、ペプチドと非ペプチド合成構造との間の構造空間の連続体を構成する。従ってペプチド・ミメティックは、ファーマコフォアの輪郭を描出したり、そして、ペプチドを親ペプチドの活性を持つ非ペプチド化合物に翻訳する際に有用であろう。
【0131】
更に、当該ペプチドのミメトープを提供することもできる。このようなペプチド・ミメティックには、加水分解不能であること(例えば、対応するペプチドを分解するプロテアーゼ又は他の生理条件に対する安定性が高いなど)、特異性が高いこと、及び/又は、細胞分化を刺激する効力が高いこと、などの属性を有させることができる。例示を目的とすると、このような残基の加水分解不能なペプチド類似体は、ベンゾジアゼピン(例えばFreidinger et al., in Peptides: Chemistry and Biology, G.R.
Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands, 1988を参照されたい)、アゼピン(例えばHuffman et al., in Peptides:
Chemistry and Biology, G.R. Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden,
Netherlands, 1988を参照されたい)、置換ガンマラクタム環 (Garvey et al., in Peptides: Chemistry and Biology, G.R.
Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands, 1988)、ケト-メチレンシュードペプチド(Ewenson et al.,(1986) J. Med. Chem. 29:295; 及びEwenson et
al., in Peptides: Structure and
Function (Proceedings of the 9th American Peptide Symposium) Pierce
Chemical Co. Rockland, IL, 1985)、β-ターンジペプチド・コア(Nagai et al., (1985) Tetrahedron Lett 26:647; 及びSato et al. (1986) J Chem Soc Perkin Trans 1:1231)、及びβ-アミノアルコール(Gordon et al. (1985) Biochem Biophys Res Commun 126:419; 及び Dann et
al. (1986) Biochem Biophys Res Commun
134:71)を用いて作製できよう。
【0132】
ペプチド・ミメティックを作製するために実施可能な多種の側鎖置換に加え、本明細書では、ペプチド二次構造のコンホメーション上拘束のあるミミックの使用を具体的に考察する。数多くのサロゲートが、ペプチドのアミド結合の代わりに開発されてきた。アミド結合によく用いられるサロゲートには、以下のグループ:(i)trans-オレフィン、(ii)フルオロアルケン、(iii)メチレンアミノ、(iv)ホスホンアミド、及び(v)スルホンアミド、がある。
【0133】
【化1】

【0134】
サロゲートの例:
【0135】
【化2】



【0136】
加えて、ペプチド骨格のより実質的な修飾に基づくペプチド・ミメティックを用いることもできる。このカテゴリーに入るペプチド・ミメティックには(i)レトロ-インベルソ類似体、及び(ii)N-アルキルグリシン類似体(所謂ペプトイド)がある。
【0137】
【化3】

【0138】
類似体の例:
【0139】
【化4】



【0140】
更に、コンビナトリアル化学法は、新しいペプチド・ミメティックの開発で注目されている。例えば、ある実施態様の所謂「ペプチド・モーフィング」戦略では、幅広いペプチド結合置換体を含むペプチド類似体のライブラリのランダムな作製に焦点が当てられている。
【0141】
【化5】





【0142】
ある実施態様では、ペプチド・ミメティックを当該ペプチドのレトロ-インベルソ類似体として得ることができる。このようなレトロ-インベルソ類似体は、例えばSisto et al. の米国特許第4,522,752号で解説されたものなど、当業で公知の方法に従って作製することができる。あるレトロ-インベルソ類似体は、例えばWO 00/01720で解説された通りに作製することができる。例えば通常のペプチド結合をいくつか含むなどの混合したペプチドを作製してもよいことは理解されよう。一般的な指針として、たんぱく質分解を最も起こし易い部位を変更することが一般的であり、ミメティックの切り換えには、より変化を起こしにくいアミド結合が最適である。最終的な生成物又はその中間体はHPLCで精製することができる。
【0143】
ペプチドは、D型立体異性体である少なくとも一つのアミノ酸又は全てのアミノ酸を含んでいてもよい。他のペプチドは、反転した少なくとも一つのアミノ酸を含むものでもよい。反転したアミノ酸はD型異性体であってもよい。あるペプチドの全てのアミノ酸が反転していても、及び/又は、すべてのアミノ酸がD型立体異性体であってもよい。
【0144】
別の例示的な実施態様では、ペプチド・ミメティックを、あるペプチドのレトロ-エナンチオ類似体として得ることができる。これなどのレトロ-エナンチオ類似体は、市販のD型アミノ酸(又はその類似体)と、例えばWO 00/01720に解説された通りの標準的な固相又は液相ペプチド合成技術とで、合成することができる。最終的な生成物をHPLCで精製すると、純粋なレトロ-エナンチオ類似体が得られよう。
【0145】
更に別の例示的な実施態様では、trans-オレフィン誘導体を当該ペプチドに代えて作製することができる。trans-オレフィン類似体はY.K. Shue et al. (1987) Tetrahedron
Letters 28:3225 の方法や、WO 00/01720に解説された通りに合成することができる。更に、上記の方法で合成されたシュードジペプチドを他のシュードジペプチドに結び付けて、アミド官能基の代わりにいくつかのオレフィン官能基を持つペプチド類似体を作製することも可能である。
【0146】
更に別のクラスのペプチド・ミメティック誘導体にはホスホン酸誘導体がある。このようなホスホン酸誘導体の合成は、公知の合成スキームから適合させることができる。例えば Loots et al. in Peptides: Chemistry and Biology, (Escom
Science Publishers, Leiden, 1988, p. 118); Petrillo et al. in Peptides: Structure
and Function (Proceedings of the 9th American Peptide Symposium, Pierce
Chemical Co. Rockland, IL, 1985)を参照されたい。
【0147】
数多くの他のペプチド・ミメティック構造が当業で公知であり、当該のペプチド・ミメティックでの使用に容易に適合させることができる。実例を挙げると、ペプチド・ミメティックには、1-アザビシクロ[4.3.0]ノナンサロゲート(Kim et al. (1997) J. Org. Chem. 62:2847を参照されたい)、又はN-アシルピペラジン酸(Xi et al. (1998) J. Am. Chem.
Soc. 120:80を参照されたい)、又は2-置換ピペラジン部分を、拘束のあるアミノ酸類似体(Williams et al. (1996) J.
Med. Chem. 39:1345-1348を参照されたい)として、取り入れてもよい。更に他の実施態様では、いくつかのアミノ酸残基を、例えば単環式もしくは二環式の芳香族又はヘテロ芳香族の核、あるいは二芳香族、芳香族−へテロ芳香族、あるいは二へテロ芳香族の核などのアリール又は二アリール部分と置換することができる。
【0148】
当該のペプチド・ミメティックを、例えば高スループットのスクリーニングと組み合わせたコンビナトリアル合成技術などにより、最適化することができる。
【0149】
更に、ミメトープの他の例には、限定はしないが、たんぱく質ベースの化合物、糖質ベースの化合物、脂質ベースの化合物、核酸ベースの化合物、天然有機化合物、合成由来の有機化合物、抗イディオタイプ抗体及び/又は触媒性抗体、あるいはこれらのフラグメント、がある。ミメトープは、例えば天然及び合成化合物のライブラリを、細胞生存及び/又は腫瘍成長を阻害することのできる化合物を探してスクリーニングするなどにより、得ることができる。更にミメトープは、例えば天然及び合成化合物のライブラリ、具体的には化学的又はコンビナトリアル・ライブラリ(即ち、配列又はサイズでは異なるが、同じビルディング・ブロックを有する化合物のライブラリ)などから得ることができる。更に合理的な薬物デザインなどでもミメトープを得ることができる。合理的薬物デザイン法においては、本発明のある化合物の三次元構造を、核磁気共鳴法(NMR)又はX線結晶学などにより、解析することができる。こうして、この三次元構造を用いれば、コンピュータ・モデリングなどにより潜在的なミメトープの構造を予測することができる。次に、この予測されたミメトープ構造を、例えば化学合成、組換えDNA技術などにより作製したり、あるいは、天然源(例えば植物、動物、細菌及び真菌)からミメトープを単離したりすることができる。
【0150】
「ペプチド、そのバリアント及び誘導体」又は「ペプチド及びその類似体」は「ペプチド治療薬」に含まれ、例えばここで解説されたペプチド・ミメティックなど、ペプチド又はその修飾型のいずれをも含むことが意図されている。好適なペプチド治療薬は、細胞生存率を低下させるか、又はアポトーシスを増加させるものである。例えば、ここで解説された検定などで判断した場合に、少なくとも約2、5、10、30又は100の因数で、これらは細胞生存率を低下させる、あるいは、アポトーシスを増加させるであろう。Sbnたんぱく質、そのフラグメント又はバリアントの活性は、適した基質又は結合相手、あるいは、以下に解説する通りの予測された活性について検査するために適した他の試薬を用いて、検定できよう。
【0151】
別の実施態様では、ポリペプチドの活性は、RNA及び/又はタンパク質分子の発現レベルについて検定することにより、判定できよう。転写レベルは、例えばノーザン・ブロット、オリゴヌクレオチド・アレイに対するハイブリダイゼーションを用いたり、あるいは、結果的なたんぱく質産物のレベルを検定したりするなどにより、判定できよう。翻訳レベルは、例えばウェスタン・ブロット法を用いたり、あるいは、たんぱく質産物が生じる検出可能なシグナル(例えば蛍光、発光、酵素活性など)を特定したりすることにより、判定できよう。特定の状況に応じて、単一の遺伝子又は複数の遺伝子の転写及び/又は翻訳のレベルを検出することが好ましいであろう。
【0152】
あるいは、細胞内でのDNA複製、転写及び/又は翻訳の全体的速度を測定することが好ましいこともある。一般的には、これは、結果的なDNA、RNA、又はたんぱく質産物に取り込まれる検出可能な代謝産物の存在下で、細胞を成長させることにより、行われよう。例えばDNA合成の速度は、新たに合成されたDNAに取り込まれるBrdUの存在下で細胞を成長させることにより、判定できよう。こうして、BrdUの量を、抗BrdU抗体を用いて組織化学的に判定できよう。
【0153】
他の実施態様では、本発明のポリペプチドを微量定量プレート、スライド、ビーズ、フィルム等を含む固体表面に固定してもよい。本発明のポリペプチドを、アレイの一部として「チップ」に固定してもよい。複数のアドレスを有するアレイは、これらのアドレスの一つ以上に一つ以上の本発明のポリペプチドを含んでいてもよい。ある実施態様では、前記のチップは、ポリペプチド配列のアレイの一部として、一つ以上の本発明のポリペプチドを含む。
【0154】
他の実施態様では、本発明のポリペプチドを微量定量プレート、スライド、ビーズ、フィルム等を含む固体表面に固定してもよい。本発明のポリペプチドを、アレイの一部として「チップ」に固定してもよい。複数のアドレスを有するアレイは、これらのアドレスの一つ以上に一つ以上の本発明のポリペプチドを含んでいてもよい。ある実施態様では、前記のチップは、ポリペプチド配列のアレイの一部として、一つ以上の本発明のポリペプチドを含む。
【0155】
5. 抗体及びその使用
ここで解説されたSbnポリペプチドに対する抗体を作製するために、ホスト動物にSbnポリペプチド又はSbnペプチドを注射してもよい。ホストには、所望の配列を包含する異なる長さのペプチドを注射してもよい。例えば、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145 又は150アミノ酸であるペプチド抗原を用いてもよい。代替的には、あるたんぱく質のうちの一部分がエピトープを規定してはいるが抗原性であるには短すぎる場合、抗体を作製するためにそれを担体分子に結合させてもよい。いくつかの適した担体分子には、キーホール・リンペット・ヘモシアニン、Ig 配列、TrpE、及びヒト又はウシ血清アルブミン、がある。結合は当業で公知の方法で行えよう。このような方法の一つは、フラグメントのシステイン残基を担体分子のシステイン残基に化合させることである。
【0156】
加えて、三次元のエピトープ、即ち非線形エピトープ、に対する抗体を、例えばたんぱく質の結晶データに基づいて調製してもよい。該注射で得られた抗体を、ここで解説するたんぱく質の短い抗原に対してスクリーニングしてもよい。Sbnペプチドに対する抗体は、そのペプチドに対する活性や、完全長Sbnたんぱく質に対する活性について、検査できよう。抗体は、少なくとも約10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M or 10-12M 又はそれより高い親和性を、ここで解説されたSbn ペプチド及び/又は完全長Sbnたんぱく質に対して有していてよい。当該のDNA配列にとって適した細胞や、抗体発現及び分泌のためのホスト細胞は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(“Catalogue of Cell Lines and Hybridomas”
5th edition (1985) Rockville, Md., U.S.A.)を含め、数多くのソースから得ることができる。
【0157】
ポリクローナル及びモノクローナル抗体は、当業で公知の方法により、作製できよう。モノクローナル抗体は、Kohler and Milstein, Nature
1975; 256: 495-7; 及びCampbellの“Monoclonal Antibody Technology, The Production and Characterization
of Rodent and Human Hybridomas” in Burdon et
al., Eds. Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology,
Volume 13, Elsevier Science Publishers, Amsterdam (1985)が解説した免疫学的方法や、Huse et al, Science (1989) 246: 1275-81が解説した組換えDNA法を含め、公知の手法を用いて調製されたハイブリドーマに産生させてもよい。
【0158】
抗体の精製法は当業で公知である。例えばHarlow and Lane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual,
Cold Spring Harbor Laboratory, N.Yを参照されたい。精製法には、塩析沈殿(例えば硫安による)、イオン交換クロマトグラフィ(例えば陽イオン又は陰イオン交換カラム上で中性pHで泳動させ、次第にイオン強度を上げた段階的勾配で溶出させるなど)、ゲル濾過クロマトグラフィ(ゲル濾過HPLCを含む)、及びプロテインA、プロテインG、ハイドロキシアパタイト、及び抗抗体などの親和性樹脂上のクロマトグラフィ、が含まれよう。抗体は、当業で公知の方法に従ってアフィニティ・カラム上でも精製できよう。
【0159】
他の実施態様には抗体の機能的均等物があり、その中には、例えば、キメラ化、ヒト化、及び一本鎖抗体や、これらのフラグメントがある。機能的均等物を作製する方法はPCT 出願WO 93/21319;ヨーロッパ特許出願No. 239,400;PCT 出願WO 89/09622;ヨーロッパ特許出願
388,745; 及びヨーロッパ特許出願EP 332,424に開示されている。
【0160】
機能的均等物には、本発明の抗体の可変又は超可変領域のアミノ酸配列と実質的に同じアミノ酸配列を持つポリペプチドがある。「実質的に同じ」アミノ酸配列を、ここで、Pearson and Lipman, (1988) Proc
Natl Acd Sci USA 85:
2444-8に従ったFASTA検索法で判定したときに別のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも約80%、そしてより好ましくは少なくとも90%の相同性を持つ配列として、定義しておく。
【0161】
キメラ化抗体は、ヒト抗体定常領域を実質的又は排他的に由来とする定常領域と、ヒト以外の哺乳動物由来の可変領域の配列を実質的又は排他的に由来とする可変領域とを含むものであろう。ヒト化抗体は、対応するヒト抗体領域を実質的に又は排他的に由来とする相補性決定領域(CDR)以外の定常領域及び可変領域と、ヒト以外の哺乳動物を実質的又は排他的に由来とするCDRとを含むものであろう。
【0162】
ヒト以外の適した哺乳動物には、モノクローナル抗体作製のもとになると思われるいずれの哺乳動物も含まれよう。ヒト以外の哺乳動物の適した例には、例えば、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ヤギ、又は霊長類が含まれよう。
【0163】
上述した通りのSbnたんぱく質に対する抗体は、上述した通りに調製できよう。更なる実施態様では、ここで解説したSbnたんぱく質に対する抗体(全抗体又は抗体フラグメント)を、 ポリエチレングリコール分子(PEG) などの生体適合性ある物質に当業者に公知の方法に従って結合させて、抗体の半減期を増してもよい。例えば米国特許第6,468,532号を参照されたい。官能化させたPEGポリマは、例えばNektar Therapeutics社から入手できる。市販のものを入手可能なPEG誘導体には、限定はしないが、アミノ-PEG、PEGアミノ酸エステル、PEG-ヒドラジド、PEG-チオール、PEG-スクシネート、カルボキシメチル化PEG、PEG-プロピオン酸、PEGアミノ酸、PEGスクシンイミジルスクシネート、PEGスクシンイミジルプロピオネート、カルボキシメチル化PEGのスクシンイミジルエステル、PEGのスクシンイミジルカルボネート、アミノ酸PEGのスクシンイミジルエステル、PEG-オキシカルボニルイミダゾール、PEG-ニトロフェニルカルボネート、PEGトレシレート、PEG-グリシジルエーテル、PEG-アルデヒド、PEGビニルスルホン、PEG-マレイミド、PEG-オルトピリジル-ジスルフィド、ヘテロ官能性PEG、PEGビニル誘導体、PEGシラン、及びPEGホスホリド、がある。これらのPEG誘導体を結合させる反応条件は、当該ポリペプチド、PEG化の所望の程度、及び利用するPEG誘導体に応じて、様々であろう。PEG誘導体の選択に関与するいくつかの因子には、所望の付着点(例えばリジン又はシステインR基)、誘導体の加水分解安定性及び反応性、結合の安定性、毒性及び抗原性、分析のための適性等がある。
【0164】
6. 医薬組成物
S.アウレウスSbn抗体、アンチセンス核酸、siRNA、及び他のアンタゴニストは、それらの目的の用途に応じ、当業で公知のように、多様な手段により投与できよう。例えば、このようなS.アウレウス・アンタゴニスト組成物を経口投与する場合は、これらを錠剤、カプセル、顆粒、粉末又はシロップとして調合してもよい。代替的には、本発明の調合物を、注射(静脈内、筋肉内又は皮下)、点滴輸注製剤又は座薬として非経口投与してもよい。眼粘膜経路による適用の場合、本発明の組成物を目薬又は眼用軟膏として調合してもよい。これらの調合物を従来の手段により調製してよいが、必要な場合には、本組成物を、例えば医薬品添加物、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、矯正薬、可溶化剤、懸濁剤、乳化剤又はコーティング剤など、いずれの従来の添加剤と混合してもよい。
【0165】
本発明の処方中、湿潤剤、乳化剤及び潤滑剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなど、や、着色剤、剥離剤、コーティング剤、甘味料、着香料及び芳香剤、保存剤及び抗酸化剤が、調合された薬剤中に存在していてもよい。
【0166】
当該の組成物は経口、鼻腔、局所(口腔及び舌下を含む)、直腸、膣、エーロゾル及び/又は非経口投与に適したものであってよい。本調合物を適宜、単位剤形で提供してもよく、そして製薬業で公知のいずれの方法で調製してもよい。一回分の用量を作製するのに担体物質と配合してもよい組成物量は、治療しようとする対象、及び特定の投与形態に応じて様々である。
【0167】
これらの調合物の調製法には、本発明の組成物を担体、そして選択的には一つ以上の付属成分と会合させるステップが含まれる。一般的には、本調合物は、薬剤を液体の担体、又は微細に分割された固体の担体、又は両者に均一かつ密に会合させた後、必要に応じてその生成物を成型することにより、調製される。
【0168】
経口投与に適した調合物は、それぞれが所定量の当該組成物を活性成分として含む、カプセル、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ(着香した基剤、通常はショ糖及びアカシアゴム又はトラガカントを用いて)、粉末、顆粒の形でも、あるいは、水性もしくは非水性の液体に入れた溶液又は懸濁液として、あるいは、水中油又は油中水液体乳液として、あるいはエリキシル又はシロップとして、あるいは香錠(不活性の基剤、例えばゼラチン及びグリセリン、又はショ糖及びアカシアゴムなどを用いて)としてもよい。本発明の組成物を巨丸剤、舐剤、又はペーストとして投与してもよい。
【0169】
経口投与用の固体剤形(カプセル、錠剤、丸剤、糖衣錠、粉末、顆粒等)では、本組成物を、クエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウムなどの一種以上の薬学的に許容可能な担体、及び/又は、以下:(1)でんぷん、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、マンニトール及び/又は珪酸などの充填剤又は増量剤;(2)カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖及び/又はアカシアゴムなどの結合剤;(3)グリセロールなどの湿潤剤;(4)寒天、炭酸カルシウム、いも又はタピオカでんぷん、アルギン酸、いくつかの珪酸塩、及び炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;(5)パラフィンなどの溶解遅延剤;(6)4級アンモニウム化合物などの吸収加速剤;(7)アセチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤;(8)カオリン及びベントナイト・クレイなどの吸収剤;(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物などの潤滑剤;並びに(10)着色剤、のいずれか、と混合する。カプセル、錠剤及び丸剤の場合、本組成物には更に緩衝剤を含めてもよい。同様な種類の固形組成物も、ラクトース即ち乳糖や高分子量ポリエチレングリコール等の医薬品添加物を用いて軟質及び硬質充填ゼラチンカプセルの充填剤として用いてもよい。
【0170】
錠剤は、圧縮又は鋳型成型により、選択的には一種以上の付属成分と一緒に作製できよう。圧縮錠剤は、結合剤(例えばゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性の希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えばでんぷんグリコール酸ナトリウム又は架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤又は分散剤を用いて調製できよう。成型錠剤は、不活性の液体希釈剤で湿らせた本組成物の混合物を適した機械で成型することにより、作製できよう。錠剤や、例えば糖衣錠、カプセル、丸剤及び顆粒などの他の固形剤形は、選択に応じて、切り込みを付けたり、あるいは、腸溶コーティングなどのコーティング及びシェルや、製薬業で公知の他のコーティングと一緒に調製してもよい。
【0171】
経口投与用の液体剤形には、薬学的に許容可能な乳液、マイクロ乳液、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシルがある。当該組成物に加え、液体剤形は、水又は他の溶媒などの当業で通常用いられる不活性の希釈剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油類(特に綿実油、落花生、コーン、胚芽、オリーブ、ひまし及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにこれらの混合物などの可溶化剤及び乳化剤を含むであろう。
【0172】
懸濁液は、本組成物に加え、例えばエトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天及びトラガカント、並びにこれらの混合物などの懸濁化剤を含んでいてもよい。
【0173】
経口又は経膣投与用の調合物を座薬として提供してもよく、この座薬は、当該組成物を、例えばココアバター、ポリエチレングリコール、座薬用ろう又はサリチル酸塩などを含み、室温では固体であるが体温で液体となるために体腔内で融解して活性物質を放出するような一種以上の適した非刺激性医薬品添加物又は担体と混合することにより、調製できよう。経膣投与に適した調合物には、更に、当業において適していることが公知の担体を含むペッサリ、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレー調合物がある。
【0174】
当該組成物の経皮投与用の剤形には、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ及び吸入剤がある。活性成分は、薬学的に許容可能な担体と、そして必要に応じていずれかの保存剤、緩衝剤、又は推進薬と、無菌条件下で混合できよう。
【0175】
軟膏、ペースト、クリーム及びゲルには、当該組成物には、動物及び植物脂肪、油類、ろう、パラフィン、でんぷん、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、珪酸、タルク及び酸化亜鉛、又はこれらの混合物などの医薬品添加物を含めてよい。
【0176】
粉末及びスプレーは、当該組成物に加え、乳糖、タルク、珪酸、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、及びポリアミド粉末、あるいはこれらの物質の混合物などの医薬品添加物を含有していてもよい。スプレーには、付加的に、クロロフルオロカーボンや、ブタン及びプロパンなどの揮発性非置換炭化水素など、慣例的な推進薬を含めてもよい。
【0177】
選択によっては本発明の組成物をエーロゾルで投与してもよい。これは、本化合物を含有する水性のエーロゾル、リポソーム性製剤、又は固形粒子を調製することにより、達成される。非水性の(例えばフルオロカーボン推進薬)懸濁液を用いることもできよう。音波ネブライザを用いてもよい。なぜならこれらは、当該組成物中に含まれた本化合物の分解を引き起こしかねないせん断力に対する当該作用物質の暴露を抑えるからである。
【0178】
通常、水性のエーロゾルは、本組成物の水性溶液又は懸濁液を、従来の薬学的に許容可能な担体及び安定化剤と一緒に調合することにより、作製される。担体及び安定化剤は、特定の当該組成物の要件に依って様々であるが、その中には、典型的には、非イオン性の界面活性剤(Tweens、Pluronics、又はポリエチレングリコール)、血清アルブミンなどの無害のたんぱく質、ソルビタンエステル、オレイン酸、レシチン、グリシンなどのアミノ酸、緩衝剤、塩類、糖類又は糖アルコール類、がある。エーロゾルは一般に等張の溶液から調製される。
【0179】
非経口投与に適した本発明の医薬組成物は、当該の組成物を一種以上の薬学的に許容可能な無菌の等張の水性又は非水性溶液、分散液、懸濁液又は乳液と、あるいは、使用直前に再構築して無菌の注射用溶液又は分散液にできる無菌粉末と、組み合わせて含むものであり、これらには抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、当該調合物を意図するレシピエントの血液と等張にする溶質、あるいは懸濁剤又は増粘剤を含有させてもよい。
【0180】
本発明の医薬組成物に用いてもよい適した水性及び非水性の担体の例には、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、及びこれらの適した混合物、オリーブ油などの植物油、並びにオレイン酸エチルなどの注射用有機エステル、がある。適した流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤を用いたり、分散液の場合には必要な粒子サイズを維持したり、そして界面活性剤を用いるなどにより、維持できよう。
【0181】
ここで解説された医薬組成物を用いて、限定はしないがフルンケル、慢性フルンケル症、インペチゴ、急性骨髄炎、肺炎、心内膜炎、熱傷様皮膚症候群、トキシックショック症候群、及び食中毒を含むS.アウレウス感染を原因とする状態又は疾患を防止又は治療できよう。
【0182】
7.Sbn媒介性シデロフォア生合成の阻害剤のスクリーニング検定例
一般的には、スタフィロバクチン生合成に干渉することで病原性菌力を減らすことのできる作用物質又は化合物は、開示された検定を用いて、天然生成物又は合成(又は半合成)抽出物又は化学的ライブラリの両方の大型ライブラリをスクリーニングすると、同定することができる。薬物発見及び開発の当業者であれば、作用物質の精確なソース(例えば検査抽出物又は化合物)は、本発明のスクリーニング法にとっては重要でないことを理解されよう。従って、実質的にいかなる数の化学的抽出物又は化合物を、ここで解説された方法を用いてスクリーニングすることができる。このような作用物質、抽出物、又は化合物の例には、限定はしないが、植物-、真菌-、原核生物-又は動物-ベースの抽出物、発酵ブロス、及び合成化合物や、既存する化合物の修飾型がある。限定はしないが、糖質-、脂質-、ペプチド-、及び核酸-ベースの化合物を含め、いずれかの数の化合物のランダム又は定方向合成(例えば半合成又は全合成)を発生させるためには、数多くの方法が利用可能である。合成化合物ライブラリはBrandon Associates 社(ニューハンプシャー州メリマック)及びAldrich Chemical (ウィスコンシン州ミルウォーキー)から市販のものを入手可能である。代替的には、細菌、真菌、植物、及び動物抽出物の形の天然化合物のライブラリが、Biotics社 (英国サセックス)、Xenova社(英国スロー)、Harbor
Branch Oceangraphics Institute (フロリダ州ファウンテイン・ピース)及びPharmnaMar, U.S.A.社(マサチューセッツ州ケンブリッジ)を含む数多くのソースから市販のものを入手可能である。加えて、天然及び合成的に作製されたライブラリは、必要に応じ、例えば標準的な抽出及び画分法など、当業で公知の方法に従って作製される。更に、必要であれば、いずれのライブラリ化合物も、標準的な化学的、物理的、又は生化学的方法を用いて容易に改変される。
【0183】
加えて、薬物発見及び開発の当業者であれば、それらの抗病原性活性が既知の物質の複製物又は反復配列の脱複製(例えば分類学的デレプリケーション、生物学的デレプリケーション、及び化学的デレプリケーション、又はこれらのいずれかの混合物など)や削除の方法を、可能であれば用いるべきであることを容易に理解する。
【0184】
粗抽出物が抗病原性又は抗菌力活性あるいは結合活性を有することが見出されたら、陽性のリード化合物の更なる分画を行って、観察された効果を担う化学的成分を単離することが必要である。このように、抽出、分画、及び精製プロセスの目的は、抗病原性活性を有する粗抽出物中の化学的実体の慎重な特徴付け及び同定である。このような異種の抽出物を分画及び精製する方法は当業で公知である。必要に応じ、病原性の治療にとって有用な作用物質であることが示された化合物を、当業で公知の方法に従って化学修飾する。
【0185】
Sbnにコードされたポリペプチド又はスタフィロバクチンの潜在的な阻害剤又はアンタゴニストには、本発明の核酸配列又はポリペプチドに結合することのその活性を阻害する又は消滅させるような有機分子、ペプチド、ペプチド・ミメティック、ポリペプチド、及び抗体が含まれよう。潜在的なアンタゴニストには、更に、当該ポリペプチドの結合部位に結合することでこれを占拠して細胞結合分子への結合を妨げ、ひいては正常な生物活性が妨げられるといった低分子がある。他の潜在的なアゴニストにはアンチセンス分子がある。
【0186】
7.1 相互作用活性
精製された及び組換えSbnA、SbnB、SbnC、SbnC、SbnD、SbnE、SbnF、SbnG、SbnH 及びSbnI ポリペプチドを用いて、Sbn 遺伝子産物に結合して、たんぱく質対たんぱく質の相互作用を破壊する作用物質を探してスクリーニングする検定法を開発してもよい。SbnA、SbnB、SbnC、SbnC、SbnD、SbnE、SbnF、SbnG、SbnH 又はSbnI の潜在的阻害剤又はアンタゴニストには、SbnA、SbnB、SbnC、SbnC、SbnD、SbnE、SbnF、SbnG、SbnH 又は SbnI のいずれかに結合することでその活性を減らす又は無くす低有機分子、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド・ミメティック、及び抗体があるであろう。
【0187】
ある結合検定例では、反応混合物を、SbnA、SbnB、SbnC、SbnC、SbnD、SbnE、SbnF、SbnG、SbnH 又は SbnIのいずれかの少なくとも生物学的活性部分と、目的の作用物質と、適した相互作用性分子を含むように、作製してもよい。該相互作用性分子は、検査しようとするSbnポリペプチドに依存するであろう。ある好適な実施態様では、目的の作用物質は、特定のSbnポリペプチドに対する抗体である。Sbnポリペプチドへの抗体の結合は、シデロフォアの生合成においてSbnポリペプチドの働きにより阻害されよう。ある特定のSbnポリペプチドと適した相互作用性分子との相互作用を検出及び定量すると、該相互作用を阻害する際のある作用物質の効験を判定する手段となる。該作用物質の効験は、多様な濃度の検査対象の作用物質を用いて得られたデータから採った用量反応曲線を作成することにより、評価することができる。更に、コントロール検定も行って、比較のための基線を提供することもできる。このコントロール検定では、ある特定のSbnポリペプチドと適した相互作用性分子との相互作用を、検査対象の作用物質の非存在下で定量してもよい。
【0188】
ある特定のSbnポリペプチドと適した相互作用性分子との間の相互作用は、多種の技術により検出できよう。複合体形成の調節は、例えば放射性標識、蛍光標識、又は酵素標識されたポリペプチドなどの検出可能に標識されたたんぱく質などを用いて、イムノアッセイにより、又は、クロマトグラフィ検出により、定量することができる。
【0189】
ある特定のSbnたんぱく質と適した相互作用性分子との相互作用の測定は、光学バイオセンサ装置で表面プラズモン共鳴技術を用いて直接、観察してもよい。この方法は、大型の(5kDaを超える)ポリペプチドの相互作用を測定するために特に有用であり、また、たんぱく質間相互作用の阻害剤を求めてスクリーニングを行うように適合させることができる。
【0190】
代替的には、ある特定のSbnポリペプチド又は適した相互作用性分子を固定すると、一方又は両方のたんぱく質の錯体形成していない形から錯体を分離したり、検定の自動化に適応したりするために、好ましいであろう。例えば候補作用物質の存在下及び非存在下などでの、ある特定のSbnたんぱく質の相互作用性分子への結合は、反応体を容れるのに適したいずれの容器内でも行わせることができる。例には、微量定量プレート、試験管、及びマイクロ遠心管がある。ある実施態様では、当該たんぱく質をマトリックスに結合可能にするドメインを加えた融合たんぱく質を提供することができる。例えばグルタチオン-S-トランスフェラーゼ/SbnA (GST/SbnA)融合たんぱく質をグルタチオンセファロース・ビーズ(ミズーリ州セントルイス、Sigma Chemical社)又はグルタチオン誘導体化微量定量プレートに吸着させた後、これを例えば35S-標識相互作用性分子と検査対象の作用物質とに配合した後、この混合物を複合体形成を誘導する条件下、例えば塩例えばpHの生理条件でインキュベートするがことができるが、よりストリンジェントな条件が好ましいであろう。インキュベート後、ビーズを洗浄して未結合の標識を取り除き、マトリックスを固定し、放射性標識を直接(例えばビーズをシンチラント剤に入れるなど)、判定するか、あるいは、その後複合体を解離させた後に上清中で判定することができる。代替的には、複合体をマトリックスから解離させ、SDS-PAGEで分子し、ビーズ画分中に見られる相互作用性分子のレベルを、標準的な電気泳動技術を用いてゲルから定量することができる。
【0191】
たんぱく質及び他の分子をマトリックス上に固定する他の技術も、この検定で用いるために入手できる。例えば、ある特定のSbnたんぱく質又は適した相互作用性分子のいずれかをビオチン及びストレプトアビジンの結合を利用して固定することができる。例えば、ビオチン化SbnA、SbnB、SbnC、SbnC、SbnD、SbnE、SbnF、SbnG、SbnH又はSbnI を、ビオチン-NHS (N-ヒドロキシ-スクシンイミド)から当業で公知の技術(例えばビオチニレーション・キット、Pierce Chemicals社、イリノイ州ロックフォード)を用いて調製し、ストレプトアビジンで被膜した96ウェル・プレート(Pierce Chemical社)のウェルに固定することができる。代替的には、SbnA、SbnB、SbnC、SbnC、SbnD、SbnE、SbnF、SbnG、SbnH 又は SbnIのいずれかとは反応性であるが、当該ポリペプチドの相互作用性分子との間の相互作用には干渉しないような抗体をプレートのウェルに誘導体化することができ、SbnA、SbnB、SbnC、SbnC、SbnD、SbnE、SbnF、SbnG、SbnH 又は SbnI を、抗体結合によりこのウェルに捕獲してもよい。上述したように、相互作用性分子及び検査化合物の製剤を、プレートのポリペプチドを提示するウェル中でインキュベートしてもよく、ウェル内に捕獲された化合物の量を、検査対象の作用物質の存在下又は非存在下で定量することができる。このような複合体を検出する方法の例は、GST固定化複合体に関して上述したものに加え、相互作用性分子と反応性の抗体を用いた複合体の免疫検出法や、あるいは、相互作用性分子に伴う酵素活性の検出に依拠する酵素結合検定法がある。
【0192】
例えば、酵素を化学的に結合させたり、あるいは、相互作用性分子との融合たんぱく質として提供したりすることができる。実例を挙げると、相互作用性分子を西洋わさびペルオキシダーゼに化学的に架橋又は遺伝子融合させ、この複合体中に捕獲されたポリペプチドの量を、当該酵素の色素産生性の基質、例えば3,3'-ジアミノ-ベンザジンテトラヒドロクロリド又は4-クロロ-1-ナフトールなど、で評価することができる。同様に、当該ポリペプチド及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼを含む融合たんぱく質を提供することができ、複合体形成を、そのGST活性を1-クロロ-2,4-ジニトロベンゼンを用いて定量することができる(Habig et al. (1974) J. Biol.
Chem. 249:7130)。
【0193】
7.2 生化学的検定
精製済み及び組換えSbnA、SbnB、SbnC、SbnC、SbnD、SbnE、SbnF、SbnG、SbnH 及び SbnI ポリペプチドを用いて、sbnオペロンを含む各遺伝子産物の生合成活性を阻害する作用物質を求めてスクリーニングするための検定の開発が容易にできよう。SbnA、SbnB、SbnC、SbnC、SbnD、SbnE、SbnF、SbnG、SbnH 又はSbnI の潜在的阻害剤又はアンタゴニストには、SbnA、SbnB、SbnC、SbnC、SbnD、SbnE、SbnF、SbnG、SbnH 又は SbnI のいずれかに結合することでその活性を減らす又は無くすような低有機分子、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド・ミメティック、及び抗体が含まれよう。
【0194】
あるスクリーニング検定の例では、SbnA、SbnB、SbnC、SbnC、SbnD、SbnE、SbnF、SbnG、SbnH 又は SbnIのいずれかの少なくとも生物学的活性部分、検査対象の作用物質、及び基質を含むように、反応混合物を作製してもよい。適した基質は、どのSbnポリペプチドを当該スクリーニング検定で用いようとしているかに依存するであろう。例えば、ある検定例では、SbnB は L-オルニチンをL-プロリンに転化するが、この反応を2つの方法で観察することができる。一つはNAD+のNADHへの転化をNAD+の還元に関する分光検定を用いて観察する方法である。二番目は、HPLCベースの検定法を用いて、L-オルニチンのL-プロリンへの転化を観察する方法である。この反応はスタフィロバクチンの生合成の早いうちに起きる。別の検定では、SbnA活性を、HPLCベースの検定法により観察する。SbnA はO-アセチル-L-セリンをL-2,3-ジアミノプロピオン酸に転化する。この反応産物もやはり、HPLC-ベースの方法により観察する。この反応にはSbnBの参与が必要である。なぜなら、L-オルニチンの提供するアミン基は、O-アセチル-L-セリンのL-2,3-ジアミノプロピオン酸への転化中に用いられるからである。SbnH活性もHPLCを用いて測定することができる。この酵素はL-オルニチンをプトレシンに転化すると考えられる。
【0195】
7.3 発現検定
更なる実施態様では、スタフィロバクチン生合成のアンタゴニストは、sbnA、sbnB、sbnC、sbnD、sbnE、sbnF、sbnG、sbnH、及び sbnI 核酸又はたんぱく質の発現に影響を与えるものでもよい。 このスクリーニングでは、S.アウレウス細胞を対象の化合物で処理した後、sbnA、sbnB、sbnC、sbnD、sbnE、sbnF、sbnG、sbnH、及びsbnI 核酸又はたんぱく質発現に対するこの化合物の効果について検定してもよい。
【0196】
例えば、検査対象の作用物質の存在下又は非存在下で培養されたS.アウレウス細胞から、全RNAを、Chomczynski et al. (1987) Anal. Biochem. 162:156-159に解説された一段階グアニジニウム-チオシアネート-フェノール-クロロホルム法などのいずれかの適した技術を用いて、単離することができる。次に、sbnA、sbnB、sbnC、sbnD、sbnE、sbnF、sbnG、sbnH 又は sbnI の発現を、ノーザン・ブロット分析、ポリメラーゼ連鎖反応法 (PCR)、ポリメラーゼ連鎖反応法と組み合わせた逆転写法(RT-PCR)、及びリガーゼ連鎖反応法と組み合わせた逆転写法 (RT-LCR).などの適した方法により、検定してもよい。
【0197】
ノーザン・ブロット分析は、Harada et al. (1990) Cell 63:303-312に解説された通りに行うことができる。簡単に説明すると、検査対象の作用物質の存在下で培養されたS.アウレウス細胞から全RNA を調製する。ノーザン・ブロットに向けて、このRNAを適した緩衝液(例えばグリオキサール/ジメチルスルホキシド/リン酸ナトリウム緩衝液)中で変性させ、アガロースゲル電気泳動法を行い、ニトロセルロース・フィルタに写し取る。UVリンカによりこのRNAがフィルタに結合したら、このフィルタを、ホルムアミド、SSC、デンハーツ液、変性サケ精子、SDS、及びリン酸ナトリウム緩衝液を含有する溶液中でプレハイブリダイズさせる。 S.アウレウスsbnA、sbnB、sbnC、sbnD、sbnE、sbnF、sbnG、sbnH or sbnI DNA 配列は、いずれかの適した方法(例えば32P-多重添加DNA標識系(Amersham社))で標識し、プローブとして用いてよい。一晩ハイブリダイズさせた後、フィルタを洗浄し、X線フィルムに感光させる。更に、コントロールも行って、比較のための基線を提供することもできる。コントロールでは、S.アウレウス中のsbnA、sbnB、sbnC、sbnD、sbnE、sbnF、sbnG、sbnH 又は sbnI の発現を、検査対象の作用物質の非存在下で定量してもよい。
【0198】
代替的には、SbnA、SbnB、SbnC、SbnD、SbnE、SbnF、SbnG、SbnH 又はSbnI ポリペプチドをコードするmRNAのレベルを、Makino et al. (1990) Technique 2:295-301に解説されたRT-PCR法を用いるなどして検定してもよい。簡単に説明すると、この方法は、検査対象の作用物質の存在下で培養されたS.アウレウス細胞から単離された全RNAを、RTプライマ及び適した緩衝液を含有する反応混合物に加えるステップを含む。プライマをアニールさせるインキュベート後、該混合物にRT 緩衝液、dNTP、DTT、RNase 阻害剤及びリバース・トランスクリプターゼを添加することができる。インキュベートしてRNAの逆転写を行わせた後、標識済みプライマを用いてRT産物のPCRを行う。代替的には、プライマを標識する代わりに、標識済みdNTPをPCR反応混合物に含めることができる。PCR増幅は常法に従ってDNA熱サイクラで行うことができる。適した回数の増幅後、PCR反応混合物をポリアクリルアミドゲルで電気泳動させる。このゲルを乾燥させた後、適したバンドの放射活性を、画像分析装置を用いて定量してもよい。RT 及びPCRの反応成分や条件、試薬及びゲル濃度、並びに標識法は当業で公知である。RT-PCR法の変更例は当業者には明白であろう。本発明の核酸を検出することのできる他のPCR法はPCR Primer: A Laboratory Manual (Dieffenbach et al. eds., Cold
Spring Harbor
Lab Press, 1995)に見ることができる。更にコントロールも行って比較のための基線を提供することもできる。このコントロールにおいては、S.アウレウス中のsbnA、sbnB、sbnC、sbnD、sbnE、sbnF、sbnG、sbnH、又はsbnI の発現を、検査対象の作用物質の非存在下で定量してもよい。
【0199】
代替的には、SbnA、SbnB、SbnC、SbnD、SbnE、SbnF、SbnG、SbnH、及び SbnI ポリペプチドの発現を、S.アウレウス細胞を検査対象の作用物質で処理した後にイムノアッセイなどの抗体ベースの方法を用いて定量してもよい。限定はしないが、ウェスタン・ブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着検定)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降検定法、沈降素反応、ゲル拡散沈降素反応、免疫拡散検定、凝集反応検定、補体−固定検定、免疫放射線測定法、蛍光イムノアッセイ及びプロテインAイムノアッセイなどの技術を用いた競合的及び非競合的検定系を含め、いずれの適したイムノアッセイを用いることもできる。
【0200】
例えば、 SbnA、SbnB、SbnC、SbnD、SbnE、SbnF、SbnG、SbnH 又は SbnI ポリペプチドは、検査対象の作用物質で処理されたS.アウレウス細胞から得られる試料中で、例えば二段階サンドイッチ検定法などにより、検出することができる。一番目の段階では、捕獲試薬(例えばSbnA、SbnB、SbnC、SbnD、SbnE、SbnF、SbnG、SbnH 又はSbnI 抗体のいずれか)を用いて、特定のポリペプチドを捕獲する。この捕獲試薬は選択によっては固相に固定することができる。二番目のステップでは、直接的又は間接的に標識された検出試薬を用いて、捕獲されたマーカを検出する。ある実施態様では、前記の検出試薬は抗体である。検査対象の作用物質で処理されたS.アウレウス細胞中に存在するSbnA、SbnB、SbnC、SbnD、SbnE、SbnF、SbnG、SbnH 又は SbnI ポリペプチドの量を、未処理のS.アウレウス細胞中に存在する量を参照して計算することができる。
【0201】
適した酵素標識には、例えば、基質と反応することで過酸化水素の生成を触媒するオキシダーゼ群のものがある。グルコースオキシダーゼは、良好な安定性を有し、またその基質(グルコース)が容易に利用できるため、特に好適である。あるオキシダーゼ標識の活性は、酵素で標識された抗体/基質反応により形成される過酸化水素の濃度を測定することにより、検定できよう。酵素の他で他の適した標識には、ヨウ素 (125I、121I)、炭素 (14C)、硫黄 (35S)、トリチウム (3H)などの放射性同位体がある。
【0202】
適した蛍光標識の例には、フルオレセイン標識、イソチオシアネート標識、ローダミン標識、フィコエリトリン標識、フィコシアニン標識、アロフィコシアニン標識、o-フタルデヒド標識、及びフルオレスカミン標識、がある。
【0203】
適した酵素標識の例には、マレイン酸デヒドロゲナーゼ、スタフィロコッカスヌクレアーゼ、デルタ-5-ステロイドイソメラーゼ、酵母-アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファ-グリセロールホスフェートデヒドロゲナーゼ、トリオースホスフェートイソメラーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、及びアセチルコリンエステラーゼがある。化学発光標識の例には、ルミノール標識、イソルミノール標識、芳香族アクリジニウムエステル標識、イミダゾール標識、アクリジニウム塩標識、オキサレートエステル標識、ルシフェリン標識、ルシフェラーゼ標識、及びエクオリン標識がある。
【0204】
実施例
以上、概略的に解説した本発明は、以下の実施例を参照されればより容易に理解されよう。しかし、以下の実施例は単に本発明の特定の局面及び実施態様の描写を目的としたものであり、いかなる態様でも、本発明を限定するものとしては意図されていない。
【0205】
実施例1: 材料及び方法
細菌株、プラスミド及び成長培地
ここで用いられる細菌株及びプラスミドを表1に解説する。E.コリ及びS.アウレウス株をそれぞれルリア−ベルタニブロス(Difco社) 及びトリプシン大豆ブロス (Difco社)で慣例どおりに培養した。鉄制限のある細菌成長を、その組成が解説されている
(Sebulsky et
al., (2000) J. Bacteriol. 182:4394-4400)Tris-最小スクシネート培地 (TMS)で行わせた。エチレンジアミン-ジ(o-ヒドロキシフェニル酢酸) (EDDHA) (他に明示しない限り1μm)を添加することで残った鉄をTMS培地からキレートするか、あるいは、50μMのFeCl3を添加することでTMSに鉄を補充した。以下の濃度で抗生物質を用いた:S.アウレウス選抜にはエリスロマイシン(5μg/ml)、リンコマイシン(20μg/ml)、ネオマイシン(50μg/ml)、カナマイシン(50μg/ml)及びテトラサイクリン(4μg/ml)、そしてE.コリ選抜にはアンピシリン(100μg/ml)、テトラサイクリン(10μg/ml)及びエリスロマイシン(300μg/ml)。試薬はすべて、Milli-Q 水精製システム(Millipore社、カナダ、オンタリオ州ミシソーガ)を通して精製された水を用いて作製された。
【0206】
組換えDNA法
プラスミドDNAをE.コリからQiaprepミニ-スピン・キット(Qiagen社)を用いて単離した。制限酵素による消化及びDNAライゲーションを含むDNA操作を標準的な手法 (Sambrook et al., (1989)
Molecular cloning. A laboratory manual, 2nd ed. Cold Spring Harbor Laboratory
Press, Cold Spring Harbor)に従って行った。制限酵素をLife Technologies社、MBI Fermentas社、New England Biolabs社又はRoche Diagnostics社から購入し、DNA ライゲーションをRoche ラピッドDNAライゲーション・キットを用いて行った。PwoI (Roche社)を全てのポリメラーゼ連鎖反応に用いた。オリゴヌクレオチドをLife Technologies社から得、表1で解説する。
【0207】
染色体DNAの単離及びサザン・ブロット法
染色体DNAを多様なスタフィロコッカス株から前に解説された手法(Sebulsky et al., (2000) J. Bacteriol.
182:4394-4400)を用いて単離した。簡単に説明すると、細胞を37℃で10μgのリゾスタフィン(Sigma社)のSTE (0.1 M NaCl、10 mM Tris-HCl、pH 8.0 及び1 mM EDTA、pH 8.0)溶液で溶解させるか、あるいはコアギュラーゼ陰性スタフィロコッカスの場合、
リゾチーム(1μg)をSTEに加えた。 SDS (0.1 %) 及びプロティナーゼ K (0.5 mg) をこの標品に加え、2時間、55℃でインキュベートした。サザン・ブロット法を基本的には前に解説された通り(Sambrook et al., (1989)
Molecular cloning. 研究室用手引き第2版。Cold
Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor)に行い、ハイブリダイゼーションをジゴキシゲニン (DIG) (Roche
Diagnostics社) で標識したプローブで行い、調製し、メーカの指示に従って用いた。発光は、ブロットをHyperfilm
ECL(Amersham Biosciences社)に感光させることにより、検出された。
【0208】
sbnE変異体の構築
sbnEを持つ3037-bp のDNA断片 をS.アウレウスRN6390 の染色体からPCR増幅し、pBCSK+
(BamHI)中にクローニングしてpSED12を作製した。sbnE コーディング領域には、プラスミドpDG782由来のカナマイシン耐性カセットを挿入して非反復NcoI 部位 (クレノウ酵素で末端を磨いたもの)を途中に入れて、pSED17を作製した。破壊されたsbnE遺伝子を含有するBamHI 断片をpSED17から取り出し、温度感受性S.アウレウス自殺プラスミドpAUL-A中にクローニングしてpSED18を作製した。プラスミドpSED18 をS.アウレウスRN4220 に導入してから、S.アウレウスRN6390 にバクテリオファージ80αを用い、以前に解説された方法 (Sebulsky et al., (2000)
J. Bacteriol. 182:4394-4400)を用いて形質導入した。pSED18を持つS.アウレウスRN6390 を対数期中期まで30℃で成長させてから成長温度を42℃に移行させた。42℃で4時間、インキュベートした後、培養物を、カナマイシン及びネオマイシンを含有する培地にプレートし、42℃で一晩、インキュベートした。カナマイシン及びネオマイシンには耐性であるが、エリスロマイシン及びリンコマイシンには感受性であるsbnE変異体を、染色体sbnEと挿入により不活性化させたコピーとの間の対立遺伝子交換の結果、単離した。sbnEへのKmrカセットの染色体挿入をPCRで確認した。
【0209】
転写性lacZ融合体の作製及びβ-ガラクトシダーゼ検定
個々の遺伝子の内部断片を、グラム陽性細菌中では複製しないベクタであるpMUTIN4 (Vagner et al., (1998) Microbiology.
144:3097-3104)の多重クローニング部位中にクローニングした。次に、S.アウレウスRN4220 を組換えpMUTIN4プラスミドで形質転換させ、クローニングされたDNA配列と、該染色体上に存在するものとの間で相同組換えを起こさせると、組換えプラスミドがこの染色体に組み込まれた。染色体の組込みは、pMUTIN4-特異的DNA 配列のPCR増幅により確認された。
【0210】
lacZへの転写融合体を持つS.アウレウス株を、β-ガラクトシダーゼ活性について、前に解説された方法(Taylor and Heinrichs (2002) Mol. Microbiol. 43:1603-1614)を用いて検定した。 簡単に説明すると、培養物を、1μM EDDHA 又は FeCl3を添加したTMS中でO.D.600 = 0.8になるまで成長させた。細胞(5×108)を10 mM リン酸カリウム緩衝液 (pH 7.8)、15 mM EDTA、1 % Triton X-100 及び10μg リゾスタフィン中で37℃で溶解させた。細胞片を遠心分離した後、5μlの上清をβ-ガラクトシダーゼ活性についてGalacto-Light Plus 化学発光レポータ遺伝子キット(Tropix社)をBertholdルミノメータで用いて検定した。バックグラウンドを50 RLU/s に設定したが、提供するデータは、個々の試料の平均ean rlu/s ±標準誤差である。
【0211】
シデロフォア産生検定及びシデロフォアの単離
使用済み培養上清中のシデロフォア活性を色素アズロールS (CAS) を用いて前に解説された手法
(Schwyn and Neilands (1987) Anal. Biochem. 160:47-56)により検定した。培養上清の希釈液を等量のCASシャトル溶液と混合し、30分間、室温で相互作用させた。TMS 培地をブランクとし、DESFERAL(登録商標)を参照基準として役立てて、630 nm での吸光度を判定した。シデロフォア単位は等式1を用いて計算された。
【式1】
【0212】



(1)

【0213】
シデロフォア単離のために、S.アウレウス株をTMS中で48時間、37℃でよく震盪した。遠心分離により培養上清を回収し、凍結乾燥させた。濃縮した上清を100 % メタノールに最初の培養上清の体積の10分の1まで再懸濁させ、Whatman No. 1 フィルタ・ペーパを通過させて粒子状物質を取り除いた。回転蒸発を用いて体積を減らしてからLH-20 カラム (Amersham
Biosciences社)に入れた。画分を採集し、CASシャトル溶液を用いたシデロフォア・プレートバイオアッセイで生物学的活性が陽性と出たものを乾燥させ、水に再懸濁させ、HPLCで調べた。分析的逆相HPLCをシデロフォアの最終精製に用いた。用いたカラムは4.6 x 150 mm Waters
ODS2 Spherisorbだった。0.1%トリフルオロ酢酸 (TFA) の水溶液を溶媒Aとし、他方、0.1% TFA のアセトニトリル溶液を溶媒Bとして用いた。用いられたクロマトグラフィ法は以下の通りだった:流速は0.75 ml/min、6% B を3.5分間、次に6-60% の勾配にしたB を20分間。スタフィロバクチンは210
nmで検出され、ほぼ17分間の保持時間を有していた。スタフィロバクチンを採集し、乾燥させ、再度クロマトグラフィでチェックして純度及び活性を調べてからESI-MSで分析した。
【0214】
電気スプレー電離−質量分析法(ESI-MS)
電気スプレー電離-MS 及びMS/MS分析を、Z-spray ソース(Micromass社、英国マンチェスター)を取り付けたMicromass
quadrupole-time-of-flight (Q-TOF2) 質量分析装置で行った。検出器は、[Glu]-フィブリノペプチド-BのMS/MSスペクトルを用いて較正された。シデロフォア試料の分子質量を、フローインジェクション分析により、1:1 HPLC グレードメタノール:HPLC グレード水の担体溶媒を用い、流速を30μl/分にしたWaters CapLC システムを用いて判定した。以下のパラメータ:キャピラリー電圧3.2 kV;錐体電圧 30-40 V;脱溶媒温度200℃;ソース温度 80℃ を用いて50乃至1800のm/z範囲にしたプラスイオンモードでスペクトルを得た。タンデム型質量スペクトルを、対象となる親イオンについて、アルゴンを衝突ガスとして用い、衝突エネルギーを10乃至30evにして得た。スペクトルは全て、MassLynx
3.5 (Micromass社)を用いて獲得及び処理された。
【0215】
シデロフォア・プレート・バイオアッセイ
シデロフォアの、S.アウレウスの鉄制限成長促進能を、以前に解説された通り(Sebulsky et al., (2000) J.
Bacteriol. 182:4394-4400)に行うシデロフォア・プレート・バイオアッセイを用いて評価した。簡単に説明すると、S.アウレウス RN6390 を、20μMのEDDHAを含有する固形TMS 培地 (1.4 x 104 cells/ml) に取り入れた。精製済みシデロフォアの、S.アウレウスの成長促進能を、プレートを36時間、37℃でインキュベートした後で評価した。
【0216】
マウス腎膿瘍実験
体重25gのメスのSwiss-Webster マウスをCharles River Laboratories Canada社から購入し、マイクロアイソレータ・ケージに入れた。細菌を一晩、TSB中で成長させ、採集し、無菌の生理食塩水中で3回、洗浄した。パイロット実験では、S.アウレウスNewmanは、RN6390よりもこのモデルでより良好にマウスに集落形成したこと、そして急性の、しかし致命的ではない腎感染を得るために尾の静脈に注射する最適なS.アウレウスNewman量は1 x 107
CFUであることが実証された。無菌生理食塩水に懸濁させた細菌を尾の静脈を通じて静脈内投与した。注射された生存細菌数を、接種物の連続希釈液を7.5% NaClを含有するTSB寒天上にプレートすることで確認した。注射後5日目及び6日目にマウスをと殺し、腎臓を無菌的に摘出した。PowerGen 700 ホモジナイザを用いて腎臓を45秒間、0.1% Triton X-100を含有する無菌PBS中で均質化し、ホモジネート希釈液を7.5% NaClを添加したTSB-寒天上にプレートして、回収された細菌を計数した。呈示するデータは、マウス1匹当りで回収された対数CFU である。
【0217】
コンピュータ解析
DNA配列解析、オリゴヌクレオチド・プライマのデザイン及びヌクレオチドの配列アライメントはVector
NTI Suite software package (Informax 社、メリーランド州ベセズダ)を用いて行われた。
【0218】
実施例2: S.アウレウスRN6390 及びNewman はシデロフォアを産生する
ここで我々は、培養S.アウレウスの鉄制限成長においてシデロフォア産生が果たす役割を特徴付けた:更に我々は、この細菌のin vivo成長及び病原性におけるその重要性も調べた。 これを実施するために、我々は、遺伝子的に定義されたシデロフォア欠陥変異型を、シデロフォア産生性のS.アウレウス株から作製した。
【0219】
前の研究では、S.アウレウスの多様な異なる分離株が、スタフィロフェリンA及びスタフィロフェリンBを含む複数のシデロフォア産生能を有すること(Meiwes et al., (1990) FEMS Microbiol. Lett.
67:201-206) 、そして遺伝子的に特徴付けられた株8325-4が、その正体は不明であるシデロフォアを産生したこと (Heinrichs et al. (1999) J. Bacteriol.
181:1436-1443; Horsburgh et al.,
(2001) J. Bacteriol. 183:468-475)を示している。我々は、我々の研究室で用いた2つの更なるS.アウレウス株である株RN6390及び株Newmanが、これらの細胞を鉄枯渇の状態で成長させたときには容易に検出可能な量のシデロフォア活性を産生したが、鉄補充培地での成長中には、ごく僅かなシデロフォアしか産生しなかったことを実証した(図11)。シデロフォアの産生や、鉄(III)-シデロフォアの取り込みを含み、高親和性の鉄獲得系が、典型的にはFurにより数多くの異なる細菌で調節されていることに注目しつつ、我々は更に、株6390及びNewman でシデロフォアが外来の鉄濃度により、Furたんぱく質を通じて実際に調節されていたことを示した。なぜならRN6390 (H295) 及びNewman (H706)の両方のfur 由来体は、高レベルのシデロフォア活性を、鉄補充培地で成長させた場合にも産生したからである(図11)。これらの発見は、Horsburgh et al. のS.アウレウス 8325-4 を用いた公開された結果(Horsburgh
et al., (2001) J. Bacteriol.
183:468-475)と一致するものである。
【0220】
実施例3: S.アウレウスからのシデロフォアの単離
更に我々は、どのシデロフォアがS.アウレウスRN6390及び関連する株によって産生されたのかを特定したいと考えた。シデロフォア産生がfurのバックグラウンドで抑制解除されると考えて、我々はシデロフォアを株H295 (RN6390 fur::Km)の培養上清から単離した。我々の最初の実験では、スタフィロフェリンA及びスタフィロフェリンBの、公開された手法(Haag et al. (1994) FEMS
Microbiol. Lett. 115:125-130; Meiwes et
al. (1990) FEMS Microbiol. Lett. 67:201-206)を用いた単離に焦点を当てた。しかしながら、これらの精製の結果、非常に僅かな CAS-陽性物質しか生じなかったことから、株RN6390 はスタフィロフェリンA又はスタフィロフェリンBを全く、又はごく僅かしか、産生しないことが示唆された。しかし、オルニバクチンを単離するために以前用いられた手法(Sokol et al. (1999)
Infect Immun. 67:4443-55)を用いた培養上清の抽出では、かなりの量のCAS-陽性物質の単離ができた。メタノール抽出培養上清のLH-20カラムを通したクロマトグラフィでは、CAS-陽性であり、かつ、シデロフォア・プレート・バイオアッセイでS.アウレウスの鉄制限成長を促進した、別々の画分が出た。逆相HPLCによる更なる精製では、生物学的活性を保持した物質の孤立したピークが生じた。この単離された物質の電気スプレー電離質量分析法 (ESI-MS) 分析では、それが、以前に特徴付けられたスタフィロコッカス・シデロフォアよりも遥かに大きいm/z=822の分子を豊富に不含有していることが示された(スタフィロフェリンA m/z = 480;スタフィロフェリンB m/z
= 448)。我々は、活性LH-20画分中に、スタフィロフェリンA又はスタフィロフェリンBのいずれかの質量と合致する化合物の存在を検出できなかった。まとめると、これらの結果は、我々が単離したのは、スタフィロコッカスで前に同定されたことのないシデロフォアであるということを強く示唆するものである。このシデロフォアをここでスタフィロバクチンと呼び、その分子構造を解明する努力を続行中である。シデロフォアの構造に関しては、可能性の一つとしては、スタフィロフェリン分子の一つは、スタフィロバクチンの構造の一部を含むのではないかというものである。
【0221】
実施例4: S.アウレウス中のシデロフォア生合成遺伝子クラスタの同定及び解析
スタフィロコッカス中のシデロフォア生合成の基盤にある遺伝子情報を解析するために、我々は、いくつかの株を由来とするS.アウレウスゲノム配列を検索し、その産物が、シデロフォア生合成で実証された役割を持つ酵素に対して有意な類似性を共有する複数の開放読み取り枠(orf)を特定した。具体的には、我々は、その産物が他の細菌の公知又は予測されるシデロフォア生合成酵素に対して有意な類似性を持つ、スタフィロコッカス染色体(図12)上のsirABC オペロンとgalE との間に位置する11.5kbの遺伝子クラスタを特定した(表2を参照されたい)。SirABC たんぱく質が、高い類似性を鉄(III)-シデロフォア輸送たんぱく質 (Heinrichs et al., (1999) J. Bacteriol. 181:1436-1443)に対して持つが、(UDP-ガラクトース-4-エピメラーゼをコードする)galE が、ヌクレオチド-糖前駆体形成に関与している。前記の11.5kbの遺伝子クラスタがシデロフォア生合成に関与していると仮定しつつ、我々は、シデロフォア生合成(原語:siderophore biosynthesis)のためのコーディング領域sbnを指定した。
【0222】
sbn遺伝子クラスタがS.アウレウスのシデロフォア生合成に関与していたことを確認するために、我々は5番目の開放読み取り枠(sbnE)をS.アウレウスRN6390のカナマイシン耐性カセットで挿入により不活性化させることで、株H672を作製した。鉄制限したH672からの使用済み培養上清のメタノール抽出物は、シデロフォア・プレート・バイオアッセイでS.アウレウス成長を促進した物質を全く含有していなかった。しかし、生物学的に活性なシデロフォアは、野生型株(RN6390)と、sbnEを持つプラスミドpSED32が補充された、sbnEの発現がこのベクタ上に存在するplacプロモータにより駆動された株H672の両方の鉄制限培養上清のメタノール抽出物から、一致して離された。鉄制限した野生型株から単離されたスタフィロバクチン分子は、H672 及びH675(RN6390 fur sbn)の鉄制限上清には完全になかった。これらの結果は、シデロフォア、そしてより具体的にはスタフィロバクチンの産生に関与する鍵となる遺伝子としてsbnE を示唆するものである。更にsbnE::km 変異もS.アウレウスNewmanに導入して株H686を作製した。スタフィロバクチンは鉄枯渇H686の上清では検出不能であったが、鉄枯渇Newmanの培養上清では容易に検出可能だった。これらの結果はESI-MSで確認された。
【0223】
実施例5: sbnABCDEFGHI 遺伝子はオペロンを含み、鉄はFurを通じてその転写を調節する
sbn遺伝子座の最初の9つの開放読み取り枠のうちで予測されるコーディング領域は、重複しているか、あるいは、互いを分離する大変短い非コーディング領域セグメントを有するが、他方、ほぼ600bpが、9番目のコーディング領域の3'側末端と9番目のコーディング領域の5'側末端との間に存在する。このことから、そのオペロンは、9つの開放読み取り枠から成ると思われることが示唆された。9番目のコーディング領域は未知の機能を持つ予測上のたんぱく質をコードしており、11番目のコーディング領域の産物は、ブタンジオールデヒドロゲナーゼ(アセトインレダクターゼ)
に対して有意な類似性を示し、そして12番目のコーディング領域は、galEであり、多糖生合成において糖-ヌクレオチド前駆体形成に関与している UDP-ガラクトース-4-エピメラーゼをコードしている。
【0224】
sbnオペロンの転写調節を特徴付けようと、そしてこのオペロンの境界を引こうと、標的決定された染色体
lacZ レポータ遺伝子融合体を、推定sbnオペロンの内部及び外部の両方で、いくつかのコーディング領域に対して作製した。その後、β-ガラクトシダーゼの発現を、細胞を鉄補充成長培地又は鉄不足成長培地のいずれかで成長させた場合のlacZ融合体を持つ株で追跡した。50μlのFeCl3の存在下で成長させた場合、sbnA、sbnF、sbnH 及び sbnI への融合体を持つ株におけるβ-ガラクトシダーゼの発現は低いバックグラウンド・レベルにあり、他方、SA0121 及びgalE への融合体を持つ株での発現はバックグラウンドの遥かに上方だった(表3)。しかし、鉄不足培地で成長させた場合、全ての株が高レベルのβ-ガラクトシダーゼ発現を示した。これらの結果は、sbnオペロンの転写が9番目のコーディング領域(sbnI)を通じて鉄調節されること、そしてこの9番目のコーディング領域及びgalEの発現は鉄調節されず、おそらくはシデロフォアの産生において何の役割も果たしていないこと、を示している。sbnAが鉄不足成長条件下では高レベルまで転写されたこと、他方、更に下流にあるsbn遺伝子は、同様な成長条件下でそれより少量まで転写されたようである、という観察は、このオペロンの発現は、sbnAコーディング領域の上流に存在する一個の鉄調節プロモータ配列により制御されていることを示している。
【0225】
推定上のsbnA 開始コドンの前には、スタフィロコッカス・シャイン-ダルガルノ配列(AGGAAGA) に似た配列がある(図13)(Novick (1991) Genetic systems in
staphylococci, p. 587-636. In J. H.
Miller (ed.), Methods in Enzymology, vol. 204. Academic Press, Inc., San Diego, CA)。従って、ほぼ50bp更に上流にある、コンセンサスFurボックスに驚くべき相似性を持つ19-bp
の配列
(TGAGAATCATTATCAATTA) が見つかったことから、sbnオペロンの発現は、外来の鉄濃度により、S.アウレウスFurホモログを通じて調節されることが示された。これはシデロフォアの産生がfurバックグラウンドで抑制解除されたという我々の先の観察(上記を参照)とも一致するものであろう。実際に、fur欠損バックグラウンドでは、sbnF-lacZ融合体を持つ株からのβ-ガラクトシダーゼ発現は、細胞を鉄補充培地で成長させたときには大変高く、そのことからも、Fur たんぱく質が鉄リッチな成長条件下でsbnオペロンの転写を抑制することが示されている。
【0226】
実施例6: sbnE 変異体は鉄不足培地で成長欠陥を示す
S.アウレウス、RN6390 及びNewmanのin vitro成長に対するシデロフォア産生の寄与度を評価するために、それらの同遺伝子型sbnE::km 変異体(それぞれH672 及びH686)及び相補な変異体を規定の最小培地で成長させた。10μM EDDHA 及び50μM FeCl3
(鉄補充培地)を添加したTMS培地で成長させた場合、全ての株の増殖収率は認められるほど互いに異ならなかった(図14A)。しかし、H672 及びH686 (sbnE
変異体) の両者の成長は、それらの同遺伝子型親や、プラスミドpSED32 (複数コピーのsbnE 遺伝子を持つ)を持つsbnE変異体に対し、同一ではあるがFeCl3
を欠く培地では大きく損なわれていた(図14B)。鉄充分な培地、対、鉄不足培地では、FeCl3 があるかないかの点でしたか異ならないため、sbnE 変異体の成長表現型の不良は、EDDHAによる他の必須要素のキレートがおそらくは原因であったとする示唆は除外することができた。このように、sbnE 変異体は、鉄獲得時にのみ、損なわれる。
【0227】
RN6390及びNewmanのsbnE 変異型由来株であるそれぞれH672 及びH686 は、鉄リッチな培地ではこれらの同遺伝子型野生型親と同等に成長したが、このsbnE 変異型は、厳しい鉄枯渇条件(即ち、10μMのEDDHAを添加したTMS)下では、野生型とは対照的にそれらの成長能を大きく損ねていた。しかしながら、我々は、鉄制限が中程度のレベル(即ち、1μMのEDDHAを添加したTMS)では、H672 及びH686 は野生型とほぼ同程度に成長したことを観察した。これらの条件下で成長させた変異型の上清は、CAS検定では正の反応をしたが、我々は、培養上清中にスタフィロバクチンを検出することはできなかった。更に我々は、
S.アウレウスRN6390 が、厳しい鉄制限下では、S.アウレウスNewmanよりも有意により良好に成長したこと、そしてCAS検定で測定したときにより高いレベルのシデロフォア活性を生じたようであることを観察した。結論的に、我々は、sbnオペロン中の変異型(例えばsbnC::Km
及び sbnE::Km)はスタフィロバクチンを産生しないこと、そして全ての sbn 遺伝子が血清中での成長には必要であることを見出したのである。更に、sbnE 遺伝子は、鉄補充成長には不可欠ではないが、鉄制限成長には必要である。
【0228】
S.アウレウス RN6390 が、Newmanにはない付加的なシデロフォアを産生すること、そしてそれらが中程度のレベルの鉄制限下で産生されること、が考えられる。厳しい鉄制限条件下での成長検定におけるNewmanとRN6390の有意に長い時間のずれ(図14B)は、この議論を裏付けるものであろう。あるいは、これら2つの株の間でスタフィロバクチン産生の調節に違いがあるのかも知れない。例えば、sbn遺伝子の発現に必要な鉄制限レベルや、又は、産生されるスタフィロバクチンの量は、Newman とRN6390では異なるかも知れない。他の研究グループが、スタフィロコッカスの異なるメンバーにより産生されるシデロフォアのレベルの違いを報告している (Courcol et al. (1997) Infect. Immun. 65:1944-1948; Lindsay et
al. (1994) Infect. Immun. 62:2309-2314)。
【0229】
実施例7: シデロフォア産生は、S.アウレウスの菌力を高める
S.アウレウスは、血中が鉄制限的な環境であるという事実にも係わらず、この環境で生存及び複製することができる。更に、最近の研究では、S.アウレウスが、ヘム及びヘモグロビンなどのホストの鉄源への結合能を持つたんぱく質を発現することができることが実証されている (Mazmanian et al. (2003)
Science 299:906-9)。このように、S.アウレウスにおけるシデロフォア産生がこの細菌の病理発生に関与しているかどうかを判断するために、sbnE 変異体のマウスでの集落形成能を、その同遺伝子型の親のそれと比較した。Swiss-Webster マウスを、S.アウレウス感染のマウス腎膿瘍モデルで用いた。0日目のSwiss-Webster マウスに107cfuのS.アウレウスを尾の静脈を通じて注射した。2乃至3日目に、我々は、マウスが病気になり、著しい体重減少及びグルーミング不足を示した。4乃至10日目の間にマウスは瀕死になり、我々は、後4分体の炎症を共通して観察した。S.アウレウスNewmanを注射された個々のマウスの腎臓は、平均で1 x 108 個を超える細菌を注射後5及び6日目の両方で含有していた(図15)。これらのマウスの腎臓には、複数の皮質及び髄質の膿瘍があった。対照的に、H686 (Newman sbnE::km) を注射したマウスの腎臓には、観察可能な膿瘍がなく、その腎臓から採集された平均細胞数は、注射後5日目で1 x 107 未満であり、6日目には何の細菌も採集できなかった(図15)ことから、sbnE 変異型細菌は、このモデルでは著しく弱毒化されていることが示された。sbnE 変異型は、マウス膿瘍モデルではあまり致命的ではない。従って、これらのデータは、シデロフォア産生が、S.アウレウスのinvivoでの生存能において重要な因子であることを意味するものである。
【0230】
実施例8: sbnオペロンはS.アウレウスには存在するが、コアギュラーゼ陰性のスタフィロコッカスには存在しない
S.アウレウスの病原性にとってシデロフォア産生が重要であることが実証されたため、我々は、sbn遺伝子がS.アウレウスに特異的かどうか、あるいはこれらが他のスタフィロコッカスにも存在するのかどうかを調べた。スタフィロコッカスのいくつか他のメンバーの中でsbnA、sbnC、sbnE 及びsbnH ホモログを検出しようと、ストリンジェンシーの低いハイブリダイゼーション条件下で行われるドット・ブロット実験を行った。sbn遺伝子は、検査された全てのS.アウレウス研究室株及び臨床株で容易に検出されたが(用いた株の完全なリストは表1を参照されたい)、我々は、13種の異なるコアギュラーゼ陰性スタフィロコッカスのいずれにも、これらの遺伝子の存在を検出できなかった(表1を参照されたい)。これらの遺伝子のホモログも、S.エピデルミディス(原語: S. epidermidis )ATCC 12228 又は RP62Aのゲノム配列に存在しなかった。前の調査ではS.エピデルミディス株にスタフィロフェリンが存在することが実証されていた (Meiwes et al. (1990)
FEMS Microbiol. Lett. 67:201-206)ため、このことは、sbn オペロンが、以前にはスタフィロコッカスで明らかにされていなかったシデロフォアの産生を担っているという考察を更に裏付けるものである。このように、sbn オペロンはスタフィロコッカスの中でもS.アウレウスに特異的であるようである。
【0231】
更に、我々の結果は、菌力因子が相対的にないことを大きな原因としてS.アウレウスよりも一般に病原性の小さいCoNSが、スタフィロバクチン産生能を欠くと思われることも示唆している。ここで記載したように、sbnオペロンの発現を通じて合成されるこのシデロフォアの産生能は、マウス腎膿瘍モデルにおけるS.アウレウスの菌力亢進と相関するため、CoNS対S.アウレウスの菌力の違いを決定する、もう一つの鍵となる決定因子であろう。
【0232】
実施例9: sbn oオペロンはラルストニア-ソラナセアラム(原語:Ralstonia solanacearum )に見られる
興味深いことに、データベースを検索すると、その産物がsbnたんぱく質に驚くべき類似性を持つ植物病原性物質ラルストニア(以前のシュードモナス)-ソラナセアラムの完全なゲノム配列中のメガプラスミド上に存在する、似たような大きさのオペロンが明らかになった(表4を参照)。実際、2つのオペロンが同じ祖先から進化した可能性が高い。なぜなら、ラルストニア・ホモログは、S.アウレウスのsbn遺伝子と同じ目に存在するからである。しかし、ラルストニアのsbnE ホモログは、ラルストニア・オペロンのうちの残りのコーディング領域と比較して相補的な鎖上に存在する。S.アウレウス及びR.ソラナセアラムの領域間のもう一つの小さな違いは、R.ソラナセアラムsbnC 及びsbnD ホモログが融合して一つのコーディング領域になったと思えることである。S.アウレウスのsbnオペロンと、R.ソラナセアラムの相同DNA領域との間の驚くべき相違点は、各オペロンの G+C のmol% である。R.ソラナセアラム中のオペロンは72mol% のG+C を有するのに対し、S.アウレウス sbn オペロンは、37mol% のG+C を有する。S.アウレウスのゲノムのmol% G+C はほぼ32 %である。
【0233】
実施例10: Sbn 変異表現型
sbn たんぱく質の機能を図16に示す。
【0234】
SbnAは推定上のシステインシンターゼ、具体的にはO-アセチル-L-セリンスルフヒドリラーゼ、をコードしている。従ってSbnA はL-セリン(又はO-アセチル-L-セリン)のL-2,3-ジアミノプロピオン酸への転化に関与している可能性が高く、sbnBの活性と連動していると思われる。sbnA 遺伝子へのlacZの融合体を作製し、sbnA遺伝子が鉄調節されることを実証するために用いた。
【0235】
SbnB は推定上のオルニチンシクロデアミナーゼをコードしており、SbnAと協働してL-2,3-ジアミノプロピオン酸という、スタフィロバクチンの考えられる前駆体を産生していると思われる。オルニチンシクロデアミナーゼはオルニチンの脱アミノとプロリンへの環化を媒介し、NAD+に依存した。Tetカセットを挿入してsbnB の変異を作った。sbnB 変異体は鉄制限培地での成長を損なわれており、スタフィロバクチンを産生しなかった。更に我々は、プロリンを添加してもsbnB変異を迂回しないことを観察したことから、プロリンは、スタフィロバクチン合成に必要な好ましい産物ではないであろうことが示唆された。プロリンがシデロフォア前駆体である可能性は低いが、アンモニアは、スタフィロバクチン生合成にとって好ましい産物であろう。具体的には、SbnA 及びSbnBは、スタフィロバクチンBの前駆体であるジアミノプロピオン酸を産生すると思われる。我々は、sbnB::Tet
変異型の鉄制限表現型を、ジアミノプロピオン酸を血清に加えることにより克服できることを観察した。更に我々は、マウス腎膿瘍実験で、sbnB 欠損株が菌力を損なわれていることも観察した(データは図示せず、n=7 匹のマウス)。
【0236】
SbnCは、エアロバクチン生合成で最終的な縮合反応を行う)エアロバクチン生合成のための推定上IucC
ホモログをコードしている。Kmカセットを挿入してsbnC の変異を作った。この sbnC 変異体は、sbnB 変異体で観察されたとの同様な成長表現型を鉄制限培地で示した。更に、このsbnC 変異体はスタフィロバクチンを産生しない。
【0237】
SbnD は推定上の多剤外向きフラックス・ポンプをコードしている。Kmカセットを挿入してsbnD の変異を作った。このsbnD 変異体は、sbnB 及びsbnC変異体で観察されたとの同様な成長表現型を鉄制限培地で示した。ナリジクス酸、テトラサイクリン、臭化エチジウム及びノルフロキサシンに対し、この株及び野生型株では、MIC (最小阻害濃度)値に違いは観察されなかった。
【0238】
SbnE は、エアロバクチン生合成のための推定上IucA ホモログをコードしている。
【0239】
SbnF は、エアロバクチン生合成のための推定上 IucC ホモログをコードしている。sbnF遺伝子が鉄調節されることを実証するために、sbnE遺伝子に対するlacZ 融合体を作製し、用いた。
【0240】
SbnG は推定上アドラーゼをコードしている。
【0241】
SbnH は推定上オルニチン又はジアミノピメレートデカルボキシラーゼをコードしている。Tetカセットを挿入してsbnH に変異を作り、その変異体の鉄制限培地での成長を損なわせた。更に、sbnH 遺伝子の lacZ への融合体を作り、この融合体を用いて、sbnH 遺伝子が鉄調節されることを実証した。
【0242】
SbnI は公共データベースのいずれのたんぱく質に対して相同性を示さないが、sbnI遺伝子に対するlacZ 融合体は、この遺伝子が鉄調節されることを示す。
【0243】
実施例11: 生化学的検定
S.アウレウスでSbnA、SbnB 及びSbnH の生化学的活性を破壊する作用物質をスクリーニングするための検定は、以下の通りに行えよう。SbnB はL-オルニチンをL-プロリンに転化するが、この反応は2つの方法により観察することができる。一つは、NAD+ のNADH への転化を、NAD+の還元について分光分析法を用いて観察する方法である。二番目は、HPLCベースの検定を用いて、L-オルニチンのL-プロリンへの転化を観察する方法である。この反応は、スタフィロバクチンの生合成中、早い時期に起きる。別の検定では、SbnA活性をHPLCベースの検定により観察する。SbnAはO-アセチル-L-セリンをL-2,3-ジアミノプロピオン酸に転化する。この反応生成物もやはり、HPLCベースの方法で観察される。この反応にはSbnBの参与が必要である。なぜなら、L-オルニチンの提供するアミン基が、O-アセチル-L-セリンの L-2,3-ジアミノプロピオン酸への転化中に用いられるからである。SbnH 活性もまた、HPLCを用いて測定することができる。この酵素は、L-オルニチンをプトレシンに転化するようである。阻害剤のスクリーニングには、この反応の最終生成物を無くすような化合物のスクリーニングが伴うであろう。
【0244】
実施例12: 発現検定
S.アウレウスでSbnAの発現を破壊する作用物質をスクリーニングするための検定は以下の通りに行えよう。野生型S.アウレウス細胞を検査対象の作用物質の存在下又は非存在下で、トリプシンダイズブロス(TSB)(Difco社)中で一晩、培養することになるであろう。24時間の培養後、この細胞を1X PBS (リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄した後、37℃で10μgのリゾスタフィンのSTE(0.1 M NaCl、10 mM Tris-HCl [pH 8.0]、1 mM EDTA [pH 8.0])溶液を用いて溶解させるであろう。次にこの細胞ライセートを、抗SbnA抗体で予め被覆したプレートに移し、45乃至60分間、室温でインキュベートすることになるであろう。コントロールとして、未処理のS.アウレウス細胞の細胞ライセートを用いるであろう。水で3回、洗浄した後、アルカリホスファターゼ (AP) 又は西洋わさびペルオキシダーゼ
(HRP) のいずれかに結合させた二次抗体を加え、1時間、インキュベートするであろう。次にプレートを洗浄して、遊離した抗体複合体から結合したものを分離することになるであろう。化学発光性の基質(西洋わさびペルオキシダーゼの場合、アルカリホスファターゼ又はPierce社のSuper Signal ルミノール溶液)を用いて、結合抗体を検出するであろう。マイクロプレート・ルミノメータを用いて、化学発光シグナルを検出するであろう。検査対象の作用物質で処理された細胞から得られた細胞ライセート試料中にシグナルがないことは、この検査対象の作用物質がSbnAの発現を阻害するものであることを示すものであろう。同様な発現検定を、SbnB、SbnC、SbnD、SbnE、SbnF、SbnG、SbnH、SbnI 及び/又はスタフィロバクチンについても行ってよい。
【0245】
本発明の実施にあたっては、他に指定しない限り、当業者の技術範囲内である細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、及び免疫学の従来技術を用いるであろう。このような技術は文献に記載されている。例えばMolecular Cloning: A
Laboratory Manual, 2nd Ed., ed. by
Sambrook, Fritsch and Maniatis (Cold Spring Harbor Laboratory Press: 1989); DNA Cloning, Volumes I and II (D. N.
Glover ed., 1985); Oligonucleotide
Synthesis (M. J. Gait ed., 1984); Mullis et al. U.S. Patent No: 4,683,195; Nucleic Acid Hybridization (B. D. Hames & S. J. Higgins eds.
1984); Transcription And Translation
(B. D. Hames & S. J. Higgins eds. 1984); Culture Of Animal Cells (R. I. Freshney, Alan R. Liss, Inc., 1987);
Immobilized Cells And Enzymes (IRL
Press, 1986); B. Perbal, A Practical
Guide To Molecular Cloning (1984); the treatise, Methods In Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.); Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells
(J. H. Miller and M. P. Calos eds., 1987, Cold Spring Harbor Laboratory); Methods In Enzymology, Vols. 154 and 155
(Wu et al. eds.), Immunochemical Methods In Cell And Molecular
Biology (Mayer and Walker, eds., Academic Press, London, 1987); Handbook Of Experimental Immunology,
Volumes I-IV (D. M. Weir and C. C. Blackwell, eds., 1986); Antibodies: A
Laboratory Manual, and Animal Cell Culture (R. I. Freshney, ed. (1987)), Manipulating the Mouse Embryo, (Cold
Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1986)を参照されたい。
【0246】
引用による援用
ここで言及したすべての公開文献及び特許を、各個々の公開文献又は特許を具体的かつ個別に、引用により援用することを提示したのと同じく、それらの全文を引用をもってここに援用するものとする。矛盾があれば、ここでのいずれかの定義を含め、本出願を上位とする。
【0247】
均等物
当業者であれば、ごく慣例的な実験を用いるのみで、ここに記載した本発明の具体的な実施例の均等物を数多く、認識され、あるいは確認できることである。このような均等物は以下の請求項に包含されるものとして、意図されている。
【0248】
【表1】













【0249】
【表2】


【0250】
【表3】





【0251】
【表4】



【図面の簡単な説明】
【0252】
【図1】図1は、sbnオペロンの核酸配列 (SEQ ID NO: 1)を示す。
【図2】図2は、SbnAの(A)核酸配列 (SEQ ID NO: 2)、(B) SEQ ID NO:2の逆相補配列 (SEQ ID NO: 3)、及び(C) アミノ酸配列(SEQ ID NO: 4)を示す。
【図3】図3は、SbnBの (A) 核酸配列 (SEQ ID NO: 5)、 (B) SEQ ID NO: 5 の逆相補配列(SEQ ID NO: 6)、及び(C) アミノ酸配列(SEQ ID NO: 7)を示す。
【図4】図4は、SbnC の (A) 核酸配列 (SEQ ID NO: 8)、(B) SEQ ID NO: 8の逆相補配列 (SEQ ID NO: 9)、及び (C) アミノ酸配列(SEQ ID NO: 10)を示す。
【図5】図5は、SbnDの (A) 核酸配列 (SEQ ID NO: 11)、(B) SEQ ID NO: 11の逆相補配列 (SEQ ID NO: 12)、及び (C) アミノ酸配列 (SEQ ID NO: 13)を示す。
【図6】図6は、SbnEの (A) 核酸配列 (SEQ ID NO: 14)、(B) SEQ ID NO: 14の逆相補配列 (SEQ ID NO: 15)、及び (C) アミノ酸配列 (SEQ ID NO: 16)を示す。
【図7】図7は、SbnFの (A) 核酸配列 (SEQ ID NO: 17)、(B) SEQ ID NO: 17の逆相補配列 (SEQ ID NO: 18)、及び (C) アミノ酸配列 (SEQ ID NO: 19)を示す。
【図8】図8は、SbnG の(A) 核酸配列 (SEQ ID NO: 20)、(B) SEQ ID NO: 20の逆相補配列 (SEQ ID NO: 21)、及び (C) アミノ酸配列 (SEQ ID NO: 22)を示す。
【図9】図9は、SbnH の(A) 核酸配列 (SEQ ID NO: 23)、(B) SEQ ID NO: 23の逆相補配列 (SEQ ID NO: 24)、及び(C) アミノ酸配列 (SEQ ID NO: 25)を示す。
【図10】図10は、SbnIの(A) 核酸配列 (SEQ ID NO: 26)、(B) SEQ ID NO: 26の逆相補配列(SEQ ID NO: 27)、及び(C) アミノ酸配列 (SEQ ID NO: 28)を示す。
【図11】図11は、RN6390、Newman、及びそれらの各 fur 由来株 H295 及びH706の使用済み培養上清中のシデロフォアレベルを示す。細菌は、培地を添加した鉄不足(白抜き棒)又は鉄補充(50μMの塩化鉄を添加した鉄不足培地)(灰色棒)で成長させたが、両RN6390 及びNewman (塗りつぶした棒)のfur::km 由来株は、鉄補充培地で成長させた。シデロフォア単位は実施例1で解説する通りに計算された。
【図12】図12は、S.アウレウス染色体のsir-galE 領域の概略図を示す。矢印は個々のコーディング領域を表す。sbn オペロン内のコーディング領域を開放矢印で表し、sir コーディング領域を灰色の矢印で示し、鉄取込みには関与していないであろうコーディング領域を黒い矢印で示す。SA0121 は、N315 ゲノム配列を由来とする名称を持つ仮定上の開放読み取り枠(orf)である。Bud は推定上のブタンジオールデヒドロゲナーゼであり、galE はUDP-ガラクトース-4-エピメラーゼをコードしている。
【図13】図13は、sirABC のプロモータ領域及びsbn オペロン(センス鎖、SEQ ID NO: 29;アンチセンス鎖、SEQ IDNO: 30)を示す。推定上のFurボックス配列はボックスに入れてある。更に、sirA 及びsbnA 遺伝子の推定上の開始コドンを、推定上のシャイン-ダルガルノ(S.D.)配列と一緒に示す。
【図14】図14A−Bは、S.アウレウスの成長に対するsbnE 変異の影響を示すグラフである。50μMのFeCl3の存在下(パネルA)又は非存在下(パネルB)における10μMのEDDHAを添加したTMS培地中のS.アウレウスRN6390 (●)、Newman(○)、H672 (RN6390 sbnE::Km) (▼)、H686 (Newman sbnE::Km) (▽)、H672 + pSED32 (■)及びH686 +pSED32 (□) の成長曲線。 細菌は激しく震盪させた枝付きフラスコ内で成長させ、成長はKlett メータを用いて観察された。成長実験は、三つの別々の実験で二重にして行われた。代表的な実験結果を示す。
【図15】図15は、sbnE 変異型がマウス腎膿瘍モデルでは損なわれていることを示すグラフである。12匹のマウスから成る2つの群に、1×10個の細菌を尾の静脈を通じて注射した。一つの群にはS.アウレウスNewmanを施し、二番目の群には、N686(Newman sbnE::Km)を感染させた。感染後5日目(8匹のマウス)及び6日目(4匹のマウス)の両方でマウス腎から採った CFU をプロットにする。各記号は、一匹の動物の腎臓中のスタフィロコッカス数を表し、点線はこの検定系でのスタフィロコッカスの検出限界を表す。データは三つの個別の実験の代表である。統計学的有意度は、ステューデントの独立t検定を用いて判定され、有意度が高いことが見つかった(P < 0.003)。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO: 2のヌクレオチド配列を含む単離された核酸。
【請求項2】
SEQ ID NO: 5のヌクレオチド配列を含む単離された核酸。
【請求項3】
SEQ ID NO: 8のヌクレオチド配列を含む単離された核酸。
【請求項4】
SEQ ID NO: 11のヌクレオチド配列を含む単離された核酸。
【請求項5】
SEQ ID NO: 14のヌクレオチド配列を含む単離された核酸。
【請求項6】
SEQ ID NO: 17のヌクレオチド配列を含む単離された核酸。
【請求項7】
SEQ ID NO: 20のヌクレオチド配列を含む単離された核酸。
【請求項8】
SEQ ID NO: 23のヌクレオチド配列を含む単離された核酸。
【請求項9】
SEQ ID NO: 26のヌクレオチド配列を含む単離された核酸。
【請求項10】
SEQ ID NO: 4を含む単離されたSbn ポリペプチド。
【請求項11】
SEQ ID NO: 7を含む単離されたSbn ポリペプチド。
【請求項12】
SEQ ID NO: 10を含む単離されたSbn ポリペプチド。
【請求項13】
SEQ ID NO: 13を含む単離されたSbn ポリペプチド。
【請求項14】
SEQ ID NO: 16を含む単離されたSbn ポリペプチド。
【請求項15】
SEQ ID NO: 19を含む単離されたSbn ポリペプチド。
【請求項16】
SEQ ID NO: 22を含む単離されたSbn ポリペプチド。
【請求項17】
SEQ ID NO: 25を含む単離されたSbn ポリペプチド。
【請求項18】
SEQ ID NO: 28を含む単離されたSbn ポリペプチド。
【請求項19】
SEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 7、SEQ ID NO: 10、SEQ ID NO: 13、SEQ ID NO: 16、SEQ ID NO: 19、SEQ ID NO: 22、SEQ ID NO: 25、又は SEQ ID NO: 28 に対する抗体と薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【請求項20】
SEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 7、SEQ ID NO: 10、SEQ ID NO: 13、SEQ ID NO: 16、SEQ ID NO: 19、SEQ ID NO: 22、SEQ ID NO: 25、又は SEQ ID NO: 28 のフラグメントであるポリペプチドと薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【請求項21】
SEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 8、SEQ ID NO: 11、SEQ ID NO: 14、SEQ ID NO: 17、SEQ ID NO: 20、SEQ ID NO: 23、又は SEQ ID NO: 26 に対してアンチセンスな核酸と薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【請求項22】
SEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 8、SEQ ID NO: 11、SEQ ID NO: 14、SEQ ID NO: 17、SEQ ID NO: 20、SEQ ID NO: 23、又は SEQ ID NO: 26 の核酸を含むsiRNA分子と薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【請求項23】
請求項19に記載の医薬組成物を有効量、対象に投与するステップを含む、前記対象において、S.アウレウス感染により引き起こされる、又は、S.アウレウス感染が寄与する疾患又は状態を治療又は防止する方法。
【請求項24】
請求項20に記載の医薬組成物を有効量、対象に投与するステップを含む、前記対象において、S.アウレウス感染により引き起こされる、又は、S.アウレウス感染が寄与する疾患又は状態を治療又は防止する方法。
【請求項25】
請求項21に記載の医薬組成物を有効量、対象に投与するステップを含む、前記対象において、S.アウレウス感染により引き起こされる、又は、S.アウレウス感染が寄与する疾患又は状態を治療又は防止する方法。
【請求項26】
請求項22に記載の医薬組成物を有効量、対象に投与するステップを含む、前記対象において、S.アウレウス感染により引き起こされる、又は、S.アウレウス感染が寄与する疾患又は状態を治療又は防止する方法。
【請求項27】
Sbnポリペプチドに結合してシデロフォアの生合成を阻害する作用物質を同定する方法であって、
(i)前記Sbnポリペプチドを、適した相互作用性分子に、前記Sbnポリペプチドと前記相互作用性分子との間の相互作用が作用物質の非存在下では可能である条件下で、作用物質の存在下で接触させるステップと、
(ii)前記Sbnポリペプチドと前記相互作用性分子との間の相互作用のレベルを判定するステップであって、前記作用物質の存在下における前記Sbnポリペプチドと前記相互作用性分子との間の相互作用の、前記作用物質の非存在下に比較したときのレベルの違いは、前記作用物質が、前記Sbnポリペプチドと前記相互作用性分子との間の相互作用を阻害することの指標である、ステップと
を含む、方法。
【請求項28】
前記Sbnポリペプチドが、スタフィロコッカス-アウレウスSbnA、SbnB、SbnC、SbnD、SbnE、SbnF、SbnG、SbnH 及びSbnIから成る群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
シデロフォアの生合成を阻害する作用物質を同定する方法であって、
(i)Sbnポリペプチドを、基質に、Sbnポリペプチドと前記基質との間の相互作用が作用物質の非存在下では可能である条件下で、前記作用物質の存在下で接触させるステップと、
(ii)前記Sbnポリペプチドの生化学的活性を判定するステップであって、前記作用物質の存在下における前記Sbnポリペプチドの活性レベルの、前記作用物質の非存在下に比較したときの低下は、前記作用物質が前記Sbnポリペプチドを阻害することの指標である、ステップと
を含む、方法。
【請求項30】
前記Sbn ポリペプチドがスタフィロコッカス-アウレウスSbnA、SbnB、SbnC、SbnD、SbnE、SbnF、SbnG、SbnH 及びSbnIから成る群より選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
スタフィロコッカス-アウレウス中のSbnA、SbnB、SbnC、SbnD、SbnE、SbnF、SbnG、SbnH 及び SbnIから成る群より選択されるポリペプチドの発現を阻害する作用物質を同定する方法であって、
(i)前記作用物質の存在下又は非存在下で野生型スタフィロコッカス-アウレウス株を培養するステップと、
(ii)Sbnポリペプチドの発現を比較するステップであって、前記作用物質で処理された細胞中のSbnポリペプチドの発現の方が大きく減少していることは、前記作用物質がスタフィロコッカス-アウレウス中のSbnポリペプチドの発現を阻害することの指標である、ステップと
を含む、方法。
【請求項32】
スタフィロコッカス-アウレウス中のsbnA、sbnB、sbnC、sbnD、sbnE、sbnF、sbnG、sbnH 及び sbnI 核酸から成る群より選択される核酸の発現を阻害する作用物質を同定する方法であって、
(i)前記作用物質の存在下又は非存在下で野生型スタフィロコッカス-アウレウス株を培養するステップと、
(ii)sbn核酸の発現を比較するステップであって、前記作用物質で処理された細胞中のsbn核酸の発現の方が大きく減少していることは、前記作用物質がスタフィロコッカス-アウレウス中のsbn核酸の発現を阻害することの指標である、ステップと
を含む、方法。

【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【公表番号】特表2008−512108(P2008−512108A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530803(P2007−530803)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【国際出願番号】PCT/IB2005/004081
【国際公開番号】WO2006/043182
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(505408929)ザ ユニバーシティー オブ ウェスタン オンタリオ (4)
【Fターム(参考)】