説明

スタンパー受容層用エネルギー線硬化性樹脂組成物、光記録媒体製造用シートおよび光記録媒体

【課題】反射膜または情報記録層に対する接着性に優れるとともに、スタンパーに対する接着力の低いスタンパー受容層を形成することのできるエネルギー線硬化性樹脂組成物、そのようなスタンパー受容層を備えた光記録媒体製造用シート、およびスタンパー受容層と反射膜または情報記録層との接着性に優れた光記録媒体の提供。
【解決手段】光記録媒体のスタンパー受容層を形成するためのエネルギー線硬化性樹脂組成物において、ポリマー含有エネルギー線硬化性成分と、下記一般式(1)


(式中、Rは水素またはメチル基であり、nは0〜5の整数である。)で表される化合物とを含有せしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光記録媒体におけるスタンパー受容層を形成するためのエネルギー線硬化性樹脂組成物、光記録媒体を製造することのできる光記録媒体製造用シート、および光記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ディスクを製造する方法として、スタンパー受容層を備えた光ディスク製造用シートを使用し、光ディスク基板にスタンパー受容層を積層した後、スタンパーの凹凸パターンをスタンパー受容層に転写・固定し、次いでスタンパー受容層上に反射膜(情報記録層)を形成し、その反射膜上に保護シートを積層して光ディスクとする方法が提案されている(特許文献1)。
【0003】
上記スタンパー受容層を構成する材料としては、側鎖にエネルギー線硬化性基を有するアクリル酸エステル共重合体、光重合開始剤、エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分またはオリゴマー成分、エネルギー線硬化性の多官能モノマーまたはオリゴマー成分、架橋剤等を含有するものが開示されている。
【特許文献1】特開2003−123332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記スタンパー受容層においては、アクリル酸エステル共重合体の種類等によっては、必ずしも光ディスクの反射膜に対する接着性が十分ではない場合があった。反射膜は通常、射出成形などの方法によって形成される光ディスク基板の凹凸パターン上や、スタンパーの凹凸形状が転写されたスタンパー受容層上に形成されるが、スタンパー受容層と反射膜との接着性が十分でないと、光ディスクの製造工程中に、スタンパー受容層と反射膜とが分離したり、完成した光ディスクが保管の条件によっては層間で剥離してしまうおそれがある。また、スタンパー受容層の反射膜に対する接着力がスタンパーに対する接着力よりも低い場合には、スタンパーをスタンパー受容層から分離するときに、スタンパー受容層が反射層から剥がれてしまうという問題も生じる。
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、反射膜または情報記録層に対する接着性に優れるとともに、スタンパーに対する接着力の低いスタンパー受容層を形成することのできるエネルギー線硬化性樹脂組成物、そのようなスタンパー受容層を備えた光記録媒体製造用シート、およびスタンパー受容層と反射膜または情報記録層との接着性に優れた光記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、光記録媒体におけるスタンパー受容層を形成するためのエネルギー線硬化性樹脂組成物であって、ポリマー含有エネルギー線硬化性成分と、下記一般式(1)
【化2】


(式中、Rは水素またはメチル基であり、nは0〜5の整数である。)
で表される化合物とを含有することを特徴とするスタンパー受容層用エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供する(請求項1)。
【0007】
なお。本明細書における「光記録媒体」とは、光学的に情報を記録・再生することのできる媒体をいい、主として再生専用型、追記型または書換え型のディスク状の媒体(例えば、CD、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RW、DVD−RAM、LD、Blu−ray Disc、HD DVD、MO等;いわゆる光ディスク(光磁気ディスクを含む))が該当するが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0008】
上記発明(請求項1)に係るエネルギー線硬化性樹脂組成物によるスタンパー受容層は、上記一般式(1)で表される化合物の存在により、反射膜または情報記録層に対する接着性に優れる一方、スタンパーに対する接着力は低いものとなる。なお、本明細書における「反射膜」は、レーザ光の全部または一部を反射する膜であり、半透明膜も含むものとする。
【0009】
上記発明(請求項1)において、前記ポリマー含有エネルギー線硬化性成分は、エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とするか(請求項2)、エネルギー線硬化性を有しないポリマーと、エネルギー線硬化性の多官能モノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物を主成分とする(請求項4)ことが好ましい。前者の場合、前記ポリマー含有エネルギー線硬化性成分は、さらにエネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマーを含有することが好ましい(請求項3)。
【0010】
上記発明(請求項1〜4)において、前記ポリマー含有エネルギー線硬化性成分中に含まれる各成分は、酸性の官能基を実質的に含まないことが好ましい(請求項5)。
【0011】
酸性の官能基として、例えばカルボキシル基を含有しないことにより、カルボキシル基に起因する反射膜の腐食やスタンパー受容層の黄変を防止することができる。ただし、反射膜または情報記録層に対する接着力は、上記一般式(1)で表される化合物により確保される。
【0012】
第2に本発明は、前記エネルギー線硬化性樹脂組成物(請求項1〜5)からなるスタンパー受容層を備えたことを特徴とする光記録媒体製造用シートを提供する(請求項6)。
【0013】
第3に本発明は、前記光記録媒体製造用シート(請求項6)を使用して製造されたことを特徴とする光記録媒体を提供する(請求項7)。
【発明の効果】
【0014】
本発明のエネルギー線硬化性樹脂組成物によれば、反射膜または情報記録層に対する接着性に優れる一方、スタンパーに対する接着力は低いスタンパー受容層を形成することができる。また、本発明の光記録媒体製造用シートによれば、反射膜または情報記録層との接着性に優れたスタンパー受容層を形成することができるとともに、スタンパーをスタンパー受容層から分離するときに、スタンパー受容層が反射膜または情報記録層から剥がれてしまうことを防止することができる。さらに、本発明の光記録媒体においては、スタンパー受容層と反射膜または情報記録層との接着性に優れ、製品の保管中における層間剥離が発生し難いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔エネルギー線硬化性樹脂組成物〕
本実施形態に係るスタンパー受容層用のエネルギー線硬化性樹脂組成物は、
(I)ポリマー含有エネルギー線硬化性成分と、
(II)下記一般式(1)
【化3】


(式中、Rは水素またはメチル基であり、nは0〜5の整数である。)
で表される化合物(以下「化合物(II)」という場合がある。)と
を含有する。
【0016】
I.ポリマー含有エネルギー線硬化性成分
ポリマー含有エネルギー線硬化性成分(I)は、エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分としてもよいし、エネルギー線硬化性を有しないポリマーとエネルギー線硬化性の多官能モノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物を主成分としてもよい。
【0017】
ポリマー含有エネルギー線硬化性成分(I)が、エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とする場合について、以下説明する。
【0018】
エネルギー線硬化性を有するポリマーは、側鎖にエネルギー線硬化性を有する官能基(エネルギー線硬化性基)が導入された(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)(以下「エネルギー線硬化型重合体(A)」という場合がある。)であることが好ましい。このエネルギー線硬化型重合体(A)は、官能基含有モノマー単位を有する(メタ)アクリル系共重合体(a1)と、その官能基に結合する置換基を有する不飽和基含有化合物(a2)とを反応させて得られるものであることが好ましい。なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸エステル」とは、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルを意味し、「(共)重合体」とは、重合体および/または共重合体を意味するものとする。
【0019】
ここで、エネルギー線硬化性基の平均側鎖導入率は、0.1〜30mol%であるのが好ましい。エネルギー線硬化性基の平均側鎖導入率が0.1mol%未満であると、所望のエネルギー線硬化性が得られず、エネルギー線硬化性基の平均側鎖導入率が30mol%を超えると、スタンパー受容層の硬化に伴う体積収縮により光記録媒体に反りが発生することがある。
【0020】
なお、エネルギー線硬化性基の平均側鎖導入率は、次の式によって算出される。
エネルギー線硬化性基の平均側鎖導入率=(エネルギー線硬化性基のモル数/アクリル系共重合体を構成するモノマーの総モル数)×100
【0021】
アクリル系共重合体(a1)は、官能基含有モノマーから導かれる構成単位と、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位とからなる。
【0022】
アクリル系共重合体(a1)の構成単位としての官能基含有モノマーは、重合性の二重結合と、ヒドロキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基とを分子内に有するモノマーであることが好ましく、特に好ましくはヒドロキシル基含有不飽和化合物が用いられる。
【0023】
なお、官能基含有モノマーは、酸性の官能基、例えば、カルボキシル基を有しないものであることが好ましい。カルボキシル基を有する官能基含有モノマーの場合、反射膜または情報記録層に対する接着性を十分に得ることはできるが、当該カルボキシル基に結合する置換基(例えばイソシアネート基やエポキシ基)を有する不飽和基含有化合物(a2)との反応性が低いため、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の側鎖にエネルギー線硬化性基を高い導入率で導入し難い。また、エネルギー線硬化性樹脂組成物の組成または光記録媒体の使用条件によっては、反射膜に腐食を生じたり、スタンパー受容層が黄変してしまうことがある。
【0024】
本実施形態に係るエネルギー線硬化性樹脂組成物は、上記官能基含有モノマーがカルボキシル基を含有しなくても、後述する化合物(II)の存在によって、反射膜または情報記録層に対する接着性を十分に確保することができる。
【0025】
上記官能基含有モノマーのさらに具体的な例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0026】
アクリル系共重合体(a1)を構成する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アルキル基の炭素数が1〜20であるアルキル(メタ)アクリレートが用いられる。これらの中でも、特に好ましくはアルキル基の炭素数が1〜18であるアルキル(メタ)アクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が用いられる。
【0027】
アクリル系共重合体(a1)は、上記官能基含有モノマーから導かれる構成単位を通常3〜100質量%、好ましくは5〜40質量%、特に好ましくは10〜30質量%の割合で含有し、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位を通常0〜97質量%、好ましくは60〜95質量%、特に好ましくは70〜90質量%の割合で含有してなる。
【0028】
アクリル系共重合体(a1)は、上記のような官能基含有モノマーと、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体とを常法で共重合することにより得られるが、これらモノマーの他にも少量(例えば10質量%以下、好ましくは5質量%以下)の割合で、ジメチルアクリルアミド、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、スチレン等が共重合されてもよい。
【0029】
上記官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体(a1)を、その官能基に結合する置換基を有する不飽和基含有化合物(a2)と反応させることにより、エネルギー線硬化型重合体(A)が得られる。
【0030】
不飽和基含有化合物(a2)が有する置換基は、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基含有モノマー単位の官能基の種類に応じて、適宜選択することができる。例えば、官能基がヒドロキシル基、アミノ基または置換アミノ基の場合、置換基としてはイソシアネート基またはエポキシ基が好ましく、官能基がエポキシ基の場合、置換基としてはアミノ基、カルボキシル基またはアジリジニル基が好ましい。このような置換基は、不飽和基含有化合物(a2)1分子毎に一つずつ含まれている。
【0031】
また不飽和基含有化合物(a2)には、エネルギー線重合性の炭素−炭素二重結合が、1分子毎に1〜5個、好ましくは1〜2個含まれている。
このような不飽和基含有化合物(a2)の具体例としては、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、2−(1−アジリジニル)エチル(メタ)アクリレート、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等が挙げられる。
【0032】
不飽和基含有化合物(a2)は、上記アクリル系共重合体(a1)の官能基含有モノマー100当量当たり、通常10〜100当量、好ましくは20〜95当量、特に好ましくは25〜90当量の割合で用いられる。
【0033】
アクリル系共重合体(a1)と不飽和基含有化合物(a2)との反応においては、官能基と置換基との組合せに応じて、反応の温度、圧力、溶媒、時間、触媒の有無、触媒の種類を適宜選択することができる。これにより、アクリル系共重合体(a1)中に存在する官能基と、不飽和基含有化合物(a2)中の置換基とが反応し、不飽和基がアクリル系共重合体(a1)中の側鎖に導入され、エネルギー線硬化型重合体(A)が得られる。
【0034】
この反応における官能基と置換基との反応率は、通常50%以上、好ましくは80%以上であり、未反応の官能基がエネルギー線硬化型重合体(A)中に残留していてもよい。ただし、未反応の官能基として、酸性の官能基、例えば、カルボキシル基はエネルギー線硬化型重合体(A)中に残留しないことが好ましい。
【0035】
このようにして得られるエネルギー線硬化型重合体(A)の重量平均分子量は、10,000以上であるのが好ましく、特に150,000〜1,500,000であるのが好ましく、さらに200,000〜1,000,000であるのが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定したポリスチレン換算の値である。
【0036】
エネルギー線硬化性樹脂組成物中におけるエネルギー線硬化型重合体(A)の含有量は、20〜99.9質量%であることが好ましく、特に30〜80質量%であることが好ましい。エネルギー線硬化型重合体(A)の含有量が20質量%未満では良好な凹凸パターン転写性を得ることが困難であり、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)の含有量が99.9質量%を超えると、相対的に化合物(II)の含有量が少なくなり過ぎて、当該化合物(II)による効果が得られ難くなる。
【0037】
ポリマー含有エネルギー線硬化性成分(I)が、エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とする場合であっても、ポリマー含有エネルギー線硬化性成分(I)は、エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)をさらに含有することが好ましい。このエネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)を含有することにより、スタンパーの凹凸パターンへの追従性が良好になり、凹凸パターンの形状転写性が向上したり、硬化後のスタンパー受容層の弾性率を高くすることができ、転写した形状の保持性が向上する。
【0038】
エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)としては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル等を使用することができる。ただし、上記と同様の理由により、酸性の官能基、例えば、カルボキシル基を実質的に含まないものであることが好ましい。
【0039】
かかるエネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の単官能性アクリル酸エステル類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等の多官能性アクリル酸エステル類、ポリエステルオリゴ(メタ)アクリレート、ポリウレタンオリゴ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)を配合する場合、エネルギー線硬化性樹脂組成物中におけるエネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)の含有量は、5〜80質量%であることが好ましく、特に20〜60質量%であることが好ましい。
【0041】
ここで、エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させるためのエネルギー線として紫外線を用いる場合には、光重合開始剤(C)を添加することが好ましく、この光重合開始剤(C)の使用により、重合硬化時間および光線照射量を少なくすることができる。
【0042】
光重合開始剤(C)としては、具体的には、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4−ジエチルチオキサンソン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノン、(2,4,6−トリメチルベンジルジフェニル)フォスフィンオキサイド、2−ベンゾチアゾール−N,N−ジエチルジチオカルバメート、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−プロペニル)フェニル]プロパノン}、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
光重合開始剤(C)は、エネルギー線硬化型共重合体(A)(エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)を配合する場合には、エネルギー線硬化型共重合体(A)およびエネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)の合計量100質量部)100質量部に対して0.1〜10質量部、特には0.5〜6質量部の範囲の量で用いられることが好ましい。
【0044】
ポリマー含有エネルギー線硬化性成分(I)においては、上記成分以外にも、適宜他の成分を配合してもよい。他の成分としては、例えば、エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分またはオリゴマー成分(D)、架橋剤(E)等が挙げられる。
【0045】
エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分またはオリゴマー成分(D)としては、例えば、ポリアクリル酸エステル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が挙げられ、重量平均分子量(Mw)が3,000〜2,500,000のポリマーまたはオリゴマーが好ましい。
【0046】
架橋剤(E)としては、エネルギー線硬化型共重合体(A)等が有する官能基との反応性を有する多官能性化合物を用いることができる。このような多官能性化合物の例としては、イソシアナート化合物、エポキシ化合物、アミン化合物、メラミン化合物、アジリジン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド化合物、オキサゾリン化合物、金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属塩、アンモニウム塩、反応性フェノール樹脂等を挙げることができる。
【0047】
これら他の成分(D),(E)をポリマー含有エネルギー線硬化性成分(I)に配合することにより、硬化前における粘着性および剥離性、硬化後の強度、他の層との接着性、保存安定性などを改善し得る。これら他の成分の配合量は特に限定されず、エネルギー線硬化型共重合体(A)100質量部に対して0〜40質量部の範囲で適宜決定される。
【0048】
次に、ポリマー含有エネルギー線硬化性成分(I)が、エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分とエネルギー線硬化性の多官能モノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物を主成分とする場合について、以下説明する。
【0049】
エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分としては、例えば、前述したアクリル系共重合体(a1)と同様の成分が使用できる。エネルギー線硬化性樹脂組成物中におけるエネルギー線硬化性を有しないポリマー成分の含有量は、20〜99.9質量%であることが好ましく、特に30〜80質量%であることが好ましい。
【0050】
エネルギー線硬化性の多官能モノマーおよび/またはオリゴマーとしては、前述の成分(B)と同じものが選択される。エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分とエネルギー線硬化性の多官能モノマーおよび/またはオリゴマーとの配合比は、ポリマー成分100質量部に対して、多官能モノマーおよび/またはオリゴマー10〜150質量部であるのが好ましく、特に25〜100質量部であるのが好ましい。
【0051】
この場合においても、上記と同様に、光重合開始剤(C)や架橋剤(E)を適宜配合することができる。
【0052】
II.一般式(1)で表される化合物
下記一般式(1)
【化4】


(式中、Rは水素またはメチル基であり、nは0〜5の整数である。)
で表される化合物(II)において、nの好ましい値は0〜3である。化合物(II)の具体例としては、アクリル酸、2−カルボキシエチルアクリレート等が挙げられる。
【0053】
化合物(II)は、Rが異なるもの、またはnの値が異なるものを混合して使用することもできる。この場合、nの平均値は0〜3であることが好ましい。
【0054】
化合物(II)としては、市販の製品を使用することもできるし、公知の合成法(例えば「機能性アクリル樹脂」大森英三著,1985年(株)テクノシステム発行,第19頁に記載の合成法)によって合成したものを使用することもできる。
【0055】
本実施形態に係るエネルギー線硬化性樹脂組成物が化合物(II)を含有することにより、アクリル系共重合体(a1)の官能基の種類に関わらず、反射膜または情報記録層に対する接着性に優れる一方、スタンパーに対する接着力は低いエネルギー線硬化性樹脂組成物(スタンパー受容層)を得ることができる。
【0056】
エネルギー線硬化性樹脂組成物中における化合物(II)の含有量は、0.1〜50質量%であることが好ましく、特に0.1〜10質量%であることが好ましい。化合物(II)の含有量が0.1質量%未満であると、化合物(II)による反射膜または情報記録層に対する接着性向上効果が得られ難い。化合物(II)の含有量が50質量%を超えると、エネルギー線照射後に未反応の化合物(II)が残留して、光記録媒体製造時にスタンパーの汚染を招くことがある。
【0057】
本実施形態に係るエネルギー線硬化性樹脂組成物は、以上説明したポリマー含有エネルギー線硬化性成分(I)および化合物(II)以外にも、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、粘着付与剤、染料、カップリング剤等の各種添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤の配合量は特に限定されず、エネルギー線硬化性樹脂組成物中、0〜30質量%程度の範囲で適宜決定される。
【0058】
本実施形態に係るスタンパー受容層用のエネルギー線硬化性樹脂組成物は、以上説明した各成分を常法によって混合することにより得られる。
【0059】
〔光記録媒体製造用シート〕
図1は本発明の一実施形態に係る光記録媒体製造用シートの断面図であり、図2(a)〜(f)は同実施形態に係る光記録媒体製造用シートを用いた光ディスクの製造方法の一例を示す断面図である。
【0060】
本実施形態に係る光記録媒体製造用シート1は、スタンパー受容層11と、スタンパー受容層11の両面に積層された剥離シート12,12’とからなる。ただし、剥離シート12,12’は、光記録媒体製造用シート1の使用時に剥離されるものである。
【0061】
スタンパー受容層11は、スタンパーに形成されている凹凸パターンが転写され、ピットまたはグルーブ/ランドが構成される層であって、かつ情報記録層3,3’が形成または接着される層である。
【0062】
このスタンパー受容層11は、前述したエネルギー線硬化性樹脂組成物から構成される。したがって、このスタンパー受容層11は、情報記録層3,3’に対して優れた接着性を示すとともに、スタンパーに対する接着力は低いものとなっている。
【0063】
スタンパー受容層11の硬化前の貯蔵弾性率は1×10〜1×10Paであるのが好ましく、1×10〜5×10Paであるのが特に好ましい。ここで、「硬化前の貯蔵弾性率」の測定温度は、スタンパーと光ディスク製造用シート1とを重ね合わせる(圧着する)作業環境と同じ温度であるものとする。すなわち、スタンパーと光ディスク製造用シート1とを室温で重ね合わせる場合、貯蔵弾性率は、室温下で測定したものであり、スタンパーと光ディスク製造用シート1とを加熱下で重ね合わせる場合、貯蔵弾性率は、加熱温度と同じ温度で測定したものである。
【0064】
スタンパー受容層11の硬化前の貯蔵弾性率が上記のような範囲にあると、スタンパーをスタンパー受容層11に圧着するだけで、スタンパーに形成されている凹凸パターンがスタンパー受容層11に精密に転写され、光ディスクの製造が極めて簡単になる。
【0065】
また、スタンパー受容層11の硬化後の貯蔵弾性率は、1×10Pa以上であるのが好ましく、特に、1×10〜1×1011Paであるのが好ましい。ここで、「硬化後の貯蔵弾性率」の測定温度は、光ディスクの保管環境と同じ温度、すなわち室温であるものとする。
【0066】
スタンパー受容層11の硬化後の貯蔵弾性率が上記のような範囲にあると、スタンパー受容層11に転写されたピットまたはグルーブ/ランドが硬化によって確実に固定され、スタンパーとスタンパー受容層11とを分離する際に、ピットやグルーブ/ランドが破壊されたり、変形したりするおそれがなくなる。
【0067】
スタンパー受容層11の厚さは、形成すべき凹凸パターン(ピット・グルーブ/ランド)の深さ等を考慮して決定され、5〜100μmであることが好ましく、特に5〜60μmであることが好ましく、さらには15〜40μmであることが好ましい。
【0068】
剥離シート12,12’としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンなどの樹脂フィルムをシリコーン系剥離剤等で剥離処理したものを使用することができる。
【0069】
剥離シート12,12’は、スタンパー受容層11に平滑性を付与するために、剥離処理した側(スタンパー受容層11と接触する側)の表面粗さ(Ra)が0.1μm以下であるのが好ましい。また、剥離シート12,12’の厚さは、通常10〜200μm程度であり、好ましくは20〜100μm程度である。
【0070】
なお、剥離シート12,12’のうち、スタンパー受容層11から先に剥離する方は軽剥離タイプのものとし、後に剥離する方は重剥離タイプのものとするのが好ましい。
【0071】
本実施形態に係る光記録媒体製造用シート1は、前述したエネルギー線硬化性樹脂組成物と、所望によりさらに溶媒とを含有する塗布剤を調製し、キスロールコーター、リバースロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、ダイコーター等の塗工機によって剥離シート12の剥離処理面に塗布して乾燥させ、スタンパー受容層11を形成した後、そのスタンパー受容層11の表面にもう1枚の剥離シート12’の剥離処理面を重ねて両者を積層することによって得られる。
【0072】
次に、上記光記録媒体製造用シート1を使用した光ディスクD(片面2層式;光記録媒体の一例)の製造方法の一例について説明する。
【0073】
最初に、図2(a)に示すように、ピットまたはグルーブ/ランドからなる凹凸パターンを有する光ディスク基板2を製造する。この光ディスク基板2は、通常、ポリカーボネートからなり、射出成形等の成形法によって成形することができる。
【0074】
上記光ディスク基板2の凹凸パターン上には、図2(b)に示すように、第1の情報記録層3を形成する。この第1の情報記録層3は、通常、無機系材料からなる膜または当該膜の積層体によって構成され、例えば、反射膜のみ、あるいは下から順に反射膜、誘電体膜、相変化膜および誘電体膜からなる積層体によって構成される。これらの膜は、スパッタリング等の手段によって形成することができる。
【0075】
反射膜の材料としては、例えば、Al、Ag、Au、Cu、Ta、W等の金属やそれらの合金、例えば、Cr、Pt、Nd等が添加されたAl−Cr、Ag−Pt−Cu、Ag−Nd等を使用することができる。反射膜の厚さは、通常3〜200nm程度である。
【0076】
誘電体膜の材料としては、例えば、SiO、ZnS−SiO、Si−SiO、TiO、ZnO、MgO等からなる単一のものまたはそれらを組み合わせたものを使用することができる。誘電体膜および誘電体膜の厚さは、通常20〜200nm程度である。
【0077】
相変化膜の材料としては、例えば、Ge−Te系、Ge−Te−Sb系、Ge−Sn−Te系等のカルコゲン系合金薄膜や、Sb−Te共晶系薄膜等を使用することができる。相変化膜の厚さは、通常5〜20nm程度である。
【0078】
第1の情報記録層3は、下から反射膜と色素膜とからなる積層体であってもよい。色素膜の色素としては、例えば、ポリメチン系色素、アントラキノン系色素、シアニン系色素、フタロシアニン系色素等が挙げられる。色素膜は、スピンコート法などによって形成され、厚さは通常20〜2000nm程度である。
【0079】
次に、光記録媒体製造用シート1の剥離シート12’を剥離除去してスタンパー受容層11を露出させ、図2(c)に示すように、スタンパー受容層11を光ディスク基板2上の第1の情報記録層3表面に圧着する。そして、スタンパー受容層11上に積層されている剥離シート12を剥離除去し、スタンパー受容層11を露出させる。
【0080】
次いで、図2(d)に示すように、露出したスタンパー受容層11の表面にスタンパーSを圧着し、スタンパー受容層11にスタンパーSの凹凸パターンを転写する。この状態で、エネルギー線照射装置を使用して、スタンパーS側または光ディスク基板2側からスタンパー受容層11に対してエネルギー線を照射し、スタンパー受容層11を硬化させる。
【0081】
エネルギー線としては、通常、紫外線、電子線等が用いられる。エネルギー線の照射量は、エネルギー線の種類によって異なるが、例えば紫外線の場合には、光量で100〜500mJ/cm程度が好ましく、電子線の場合には、10〜1000krad程度が好ましい。
【0082】
スタンパーSは、ニッケル合金等の金属材料やノルボネン樹脂等の透明樹脂材料から構成される。なお、図2(d)に示すスタンパーSの形状は板状であるが、これに限定されるものではなく、ロール状であってもよい。
【0083】
スタンパー受容層11が硬化したら、スタンパーSとスタンパー受容層11とを分離する。スタンパー受容層11は、第1の情報記録層3に対する接着力は高く、スタンパーSに対する接着力は低いため、スタンパーSとスタンパー受容層11とを分離するときに、スタンパー受容層11と第1の情報記録層3とが剥離してしまうことが防止される。
【0084】
上記のようにしてスタンパー受容層11にスタンパーSの凹凸パターンが転写・固定され、ピットまたはグルーブ/ランドが形成されたら、次に、図2(e)に示すように、スタンパー受容層11の凹凸パターン上に、第2の情報記録層3’を形成する。
【0085】
この第2の情報記録層3’は、通常、無機系材料からなる膜または当該膜の積層体によって構成され、例えば、反射膜(半透明膜)のみ、あるいは下から順に反射膜(半透明膜)、誘電体膜、相変化膜および誘電体膜からなる積層体によって構成される。また、反射膜(半透明膜)の下側にさらに誘電体膜が形成されることもある。これらの膜は、スパッタリング等の手段によって形成することができる。
【0086】
反射膜(半透明膜)の材料としては、例えば、Al、Ag、Au、Cu、Ta、W等の金属やそれらの合金、例えば、Cr、Pt、Nd等が添加されたAl−Cr、Ag−Pt−Cu、Ag−Nd等を使用することができる。反射膜(半透明膜)の厚さは、通常、3〜20nm程度である。反射膜(半透明膜)以外の膜の材料は、第1の情報記録層3を構成する膜の材料と同様である。
【0087】
最後に、図2(f)に示すように、上記第2の情報記録層3’上に接着剤4を介して保護シート5を積層し、光ディスクDとする。この保護シート5は、光ディスクの受光面やラベル面など、光ディスクDの一部を構成するものであり、例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等の樹脂かならなるシート(フィルム)が用いられる。接着剤4としては、例えば、アクリル系紫外線硬化型接着剤等を用いることができる。
【0088】
上記のようにして得られる光ディスクDにおいては、スタンパー受容層11と第1の情報記録層3および第2の情報記録層3’との接着力が高いため、製造工程中または製品の保管中に生じる層間剥離が発生し難いものとなる。
【0089】
なお、上記の光記録媒体製造方法では、上記光記録媒体製造用シート1を使用して片面2層式の光ディスクを製造したが、これに限定されることなく、例えば、上記光記録媒体製造用シート1を使用して片面1層式の光ディスクを製造することもできる。
【0090】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0091】
例えば、光記録媒体製造用シート1における剥離シート12または剥離シート12’はなくてもよい。
【実施例】
【0092】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0093】
〔実施例1〕
n−ブチルアクリレート52質量部と、メチルメタクリレート20質量部と、2−ヒドロキシエチルアクリレート28質量部とを、酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶媒(質量比50:50)中で反応させ、アクリル系共重合体溶液(固形分濃度35質量%)を得た。
【0094】
上記アクリル系共重合体溶液に、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート33.7質量部(アクリル酸エステル共重合体中の水酸基100当量に対し90当量)および触媒としてジブチルチンジラウレート0.5質量部を添加し、窒素雰囲気下、40℃で48時間反応させて、エネルギー線硬化性基であるメタクリロイル基の平均側鎖導入率が25.4mol%であり、重量平均分子量(Mw)が約78万であるエネルギー線硬化性のアクリル酸エステル共重合体を得た。このエネルギー線硬化性のアクリル酸エステル共重合体にメチルエチルケトンを加え、固形分濃度を30質量%に調整した。
【0095】
また、アクリル酸20gと、フラン20gと、メトキシハイドロキノン0.02gとをオートクレーブ中、160℃で5時間反応させた。反応終了後、フラン及び未反応のアクリル酸を減圧下で除去した。HNMRスペクトルから生成物の構造を確認したところ、下記式(1)で表される化合物(II)であることが分かった。
【化5】


なお、得られた化合物(II)におけるnの平均値は1.3であった。
【0096】
上記エネルギー線硬化性のアクリル酸エステル共重合体100質量部(固形分としては30質量部)と、エネルギー線硬化性の2官能性モノマーとしてのジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学社製,ライトアクリレートDCP−A)25質量部と、上記化合物(II)0.1質量部と、光重合開始剤としての2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製,イルガキュア651)1.7質量部と、ポリイソシアナート化合物からなる架橋剤(東洋インキ製造社製,オリバインBHS−8515)1.5質量部(固形分としては0.56質量部)とを混合し、さらに溶剤としてメチルエチルケトンを加えて固形分濃度を40質量%に調整し、スタンパー受容層用の塗布剤とした。
【0097】
一方、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:50μm)の片面に重剥離型のシリコーン樹脂で剥離処理した重剥離型剥離シート(リンテック社製,SP−PET50C,剥離処理面の表面粗さ:Ra=0.016μm)、およびPETフィルム(厚さ:38μm)の片面に軽剥離型のシリコーン樹脂で剥離処理した軽剥離型剥離シート(リンテック社製,SP−PET38GS,剥離処理面の表面粗さ:Ra=0.023μm)の2種類の剥離シートを用意した。
【0098】
上記スタンパー受容層用の塗布剤を、ナイフコーターによって重剥離型剥離シートの剥離処理面に塗布して90℃で1分間乾燥させ、厚さ25μmのスタンパー受容層を形成し、そのスタンパー受容層の表面に軽剥離型剥離シートの剥離処理面側を貼り合わせ、光記録媒体製造用シートとした。
【0099】
〔実施例2〕
化合物(II)の配合量を0.25質量部とする以外、実施例1と同様にしてスタンパー受容層用の塗布剤を調製した。そして、得られたスタンパー受容層用の塗布剤を使用して、実施例1と同様にして光記録媒体製造用シートを作製した。
【0100】
〔実施例3〕
化合物(II)の配合量を1.0質量部とする以外、実施例1と同様にしてスタンパー受容層用の塗布剤を調製した。そして、得られたスタンパー受容層用の塗布剤を使用して、実施例1と同様にして光記録媒体製造用シートを作製した。
【0101】
〔実施例4〕
化合物(II)の替わりに、アクリル酸0.25質量部を使用する以外、実施例1と同様にしてスタンパー受容層用の塗布剤を調製した。そして、得られたスタンパー受容層用の塗布剤を使用して、実施例1と同様にして光記録媒体製造用シートを作製した。
【0102】
〔実施例5〕
化合物(II)の替わりに、2−カルボキシエチルアクリレート(アルドリッチ社製)0.25質量部を使用する以外、実施例1と同様にしてスタンパー受容層用の塗布剤を調製した。そして、得られたスタンパー受容層用の塗布剤を使用して、実施例1と同様にして光記録媒体製造用シートを作製した。
【0103】
〔実施例6〕
n−ブチルアクリレート85質量部と、2−ヒドロキシエチルアクリレート15質量部とを、酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶媒(質量比50:50)中で反応させ、アクリル系共重合体溶液(固形分濃度35質量%)を得た。
【0104】
得られたアクリル系共重合体溶液100質量部(固形分としては35質量部)と、エネルギー線硬化性の2官能性モノマーとしてのジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学社製,ライトアクリレートDCP−A)20質量部と、上記化合物(II)0.1質量部と、光重合開始剤としての2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製,イルガキュア651)1.7質量部と、ポリイソシアナート化合物からなる架橋剤(東洋インキ製造社製,オリバインBHS−8515)1.5質量部(固形分としては0.56質量部)とを混合し、さらに溶剤としてメチルエチルケトンを加えて固形分濃度を40質量%に調整し、スタンパー受容層用の塗布剤とした。
【0105】
上記スタンパー受容層用の塗布剤を使用して、実施例1と同様にして光記録媒体製造用シートを作製した。
【0106】
〔比較例1〕
化合物(II)の替わりに、下記構造式を有する化合物(共栄化学社製,HOA−MS)0.25質量部を使用する以外、実施例1と同様にしてスタンパー受容層用の塗布剤を調製した。
【化6】


そして、得られたスタンパー受容層用の塗布剤を使用して、実施例1と同様にして光記録媒体製造用シートを作製した。
【0107】
〔比較例2〕
化合物(II)の替わりに、下記構造式を有する化合物(共栄化学社製,HOA−HH)0.25質量部を使用する以外、実施例1と同様にしてスタンパー受容層用の塗布剤を調製した。
【化7】


そして、得られたスタンパー受容層用の塗布剤を使用して、実施例1と同様にして光記録媒体製造用シートを作製した。
【0108】
〔比較例3〕
化合物(II)の替わりに、下記構造式を有する化合物(共栄化学社製,HOA−MPL)0.25質量部を使用する以外、実施例1と同様にしてスタンパー受容層用の塗布剤を調製した。
【化8】


そして、得られたスタンパー受容層用の塗布剤を使用して、実施例1と同様にして光記録媒体製造用シートを作製した。
【0109】
〔比較例4〕
化合物(II)を使用しない以外、実施例1と同様にしてスタンパー受容層用の塗布剤を調製した。そして、得られたスタンパー受容層用の塗布剤を使用して、実施例1と同様にして光記録媒体製造用シートを作製した。
【0110】
〔試験例〕
(1)スタンパー受容層の硬化後の貯蔵弾性率の測定
実施例および比較例で作製した光記録媒体製造用シートに対して紫外線を照射し(リンテック株式会社製,装置名:Adwill RAD−2000m/8を使用。照射条件:照度310mW/cm2,光量300mJ/cm2)、スタンパー受容層を硬化させた。その硬化後のスタンパー受容層の貯蔵弾性率を、動的熱機械測定装置(TA Instruments社製,装置名:Q800)を用いて11Hzで50℃の値を測定した。結果を表1に示す。
【0111】
(2)接着力の測定
実施例および比較例で作製した光記録媒体製造用シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、その替わりに、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート製の基材と厚さ20μmの粘着剤層(リンテック社製,PAT1)とからなるシートを、当該粘着剤層とスタンパー受容層とが接するように貼り合わせた。
【0112】
得られた積層シートを25mmの幅に裁断し、その積層シートから重剥離型剥離シートを剥がして露出したスタンパー受容層を、銀反射膜付き基板またはニッケルメッキ基板に2kgのゴムロールを用いて圧着した。得られた積層体に対して紫外線を照射し(リンテック株式会社製,装置名:Adwill RAD−2000m/8を使用。照射条件:照度310mW/cm2,光量300mJ/cm2)、JIS Z0237に準じて、硬化したスタンパー受容層と銀反射膜との接着力(対Ag反射膜)、および硬化したスタンパー受容層とニッケルとの接着力(対Ni)(共に180゜ピール)を測定した。結果を表1に示す。
【0113】
(3)腐食性試験
実施例および比較例で作製した光記録媒体製造用シートから軽剥離型剥離シートを剥がし、露出したスタンパー受容層を、銀反射膜を蒸着したポリカーポネート基板の反射膜面に貼付した。その後、重剥離型剥離シート側から紫外線を照射し(リンテック株式会社製,装置名:Adwill RAD−2000m/8を使用。照射条件:照度310mW/cm2,光量300mJ/cm2)、スタンパー受容層を硬化させた。
【0114】
次いで、スタンパー受容層から重剥離型剥離シートを剥がして、80℃、90%Rhの恒温恒湿槽に72時間投入した後、共焦点型顕微鏡(レザーテック製,HD100)を用いて反射膜の状態を観察した。腐食が確認されなかったものを○として評価した。
【0115】
【表1】

【0116】
表1から明らかなように、実施例で作製した光記録媒体製造用シートのスタンパー受容層は、スタンパー受容層として好適な貯蔵弾性率を有するとともに、銀反射膜に対しては高い接着力、ニッケルに対しては低い接着力を示し、さらには反射膜の腐食をも抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明は、層間剥離のない光記録媒体を安定して生産するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の一実施形態に係る光記録媒体製造用シートの断面図である。
【図2】同実施形態に係る光記録媒体製造用シートを使用した光ディスク製造方法の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0119】
1…光記録媒体製造用シート
11…スタンパー受容層
12,12’…剥離シート
2…光ディスク基板
3…第1の情報記録層
3’…第2の情報記録層
4…接着剤
5…保護シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光記録媒体におけるスタンパー受容層を形成するためのエネルギー線硬化性樹脂組成物であって、
ポリマー含有エネルギー線硬化性成分と、
下記一般式(1)
【化1】


(式中、Rは水素またはメチル基であり、nは0〜5の整数である。)
で表される化合物と
を含有することを特徴とするスタンパー受容層用エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリマー含有エネルギー線硬化性成分は、エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とすることを特徴とする請求項1に記載のスタンパー受容層用エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリマー含有エネルギー線硬化性成分は、さらにエネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマーを含有することを特徴とする請求項2に記載のスタンパー受容層用エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリマー含有エネルギー線硬化性成分は、エネルギー線硬化性を有しないポリマーと、エネルギー線硬化性の多官能モノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物を主成分とすることを特徴とする請求項1に記載のスタンパー受容層用エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリマー含有エネルギー線硬化性成分中に含まれる各成分は、酸性の官能基を実質的に含まないことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスタンパー受容層用エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のエネルギー線硬化性樹脂組成物からなるスタンパー受容層を備えたことを特徴とする光記録媒体製造用シート。
【請求項7】
請求項6に記載の光記録媒体製造用シートを使用して製造されたことを特徴とする光記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−149229(P2007−149229A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−342852(P2005−342852)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】