説明

スチレン系樹脂発泡体

【課題】 難燃性に優れ、さらには耐熱性およびリサイクル性に優れたスチレン系樹脂発泡体を提供する。
【解決手段】 ハロゲン系難燃剤を含有するスチレン系樹脂発泡体であって、スチレン系樹脂発泡体中でのハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度(窒素気流下(50ml/分)、昇温速度10℃/分にて測定)を300℃以下とすることにより、難燃性に優れたスチレン系樹脂発泡体が得られ、さらに、該熱重量減少開始温度を260〜280℃とすることにより、耐熱性およびリサイクル性にも優れたスチレン系樹脂発泡体が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性に優れたスチレン系樹脂発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂発泡体は、緩衝材、魚箱、食品トレー、断熱建材等に幅広く使用されている。これらのうち、特に断熱建材に使用する場合等、火災に対する安全性を確保する必要があることから、難燃性が要求される場合があり、有機ハロゲン系化合物、中でもヘキサブロモシクロドデカン等の臭素系難燃剤が広く用いられている。ただし、こうした難燃剤を用いた場合、ある種の難燃剤の添加量が多すぎると、発泡体の耐熱性や機械物性等諸物性の低下が見られることがあり、また逆に、添加量を抑えると十分な難燃性が得られない等の問題が見られることがあった。こうした問題は、難燃剤の種類や量、さらにはその他の添加剤や製造条件等の変更によっても生ずる場合があり、それぞれの相関関係は、未だ不明確である部分も多かった。
【0003】
一方、各種樹脂と難燃剤の熱分解挙動を適合させることにより、効率的な難燃設計を行う検討がなされてきた(例えば、非特許文献1参照)。ポリスチレン系樹脂発泡体における上記のような課題に対しても、使用する難燃剤の分解開始温度の高低に起因する問題であるとの記載が見られるが、具体的な分解開始温度の限定にはいたっていない(特許文献1参照)。また、ポリスチレンおよび難燃剤の単独での熱分解挙動と、配合組成物やその発泡体内での、ポリスチレンおよび難燃剤の熱分解挙動は必ずしも一致するものではない。例えば、木材等においては、無処理品と難燃剤処理品との熱重量減少挙動の相違と、難燃挙動の相違との相関を求める検討がなされている(例えば、非特許文献2参照)。しかしながら、ポリスチレン系樹脂発泡体においては、その熱重量減少挙動と難燃性等諸物性との関係は明らかにされていなかった。
【特許文献1】特開2003−292664号公報
【非特許文献1】西沢仁 : ポリマーの難燃化, 大成社, 55頁(1988)
【非特許文献2】西沢仁 : 高分子の難燃化技術, シーエムシー出版, 67−74頁(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況の下、本発明が解決しようとする課題は、難燃性に優れたスチレン系樹脂発泡体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題の解決のために鋭意研究の結果、ハロゲン系難燃剤を含有するスチレン系樹脂発泡体において、スチレン系樹脂発泡体中でのハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度(窒素気流下(50ml/分)、昇温速度10℃/分にて測定)を300℃以下とすることにより、難燃性に優れたスチレン系樹脂発泡体が得られることを見出し、本発明に至った。また、上記熱重量減少開始温度を260〜280℃とすることにより、優れた難燃性とともに、耐熱性・リサイクル性にも優れた発泡体が得られ、さらに、発泡剤としてオゾン破壊係数が0の化合物を用いることにより、環境適合性にも優れた発泡体が得られることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(12)に関する。
(1)ハロゲン系難燃剤を含有するスチレン系樹脂発泡体であって、スチレン系樹脂発泡体中でのハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度(窒素気流下(50ml/分)、昇温速度10℃/分にて測定)が300℃以下であることを特徴とするスチレン系樹脂発泡体。
(2)スチレン系樹脂発泡体が押出発泡してなることを特徴とする(1)記載のスチレン系樹脂発泡体。
(3)スチレン系樹脂発泡体中でのハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度が260〜280℃であることを特徴とする(1)または(2)に記載のスチレン系樹脂発泡体。
(4)ハロゲン系難燃剤がハロゲン化脂肪族基含有化合物であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体に関する。
(5)ハロゲン化脂肪族基含有化合物の、5%熱重量減少温度(窒素気流下(50ml/分)、昇温速度10℃/分にて測定)が、250℃以上であることを特徴とする(4)記載のスチレン系樹脂発泡体。
(6)前記ハロゲン化脂肪族基含有化合物が、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートおよび/またはテトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)であることを特徴とする(4)または(5)記載のスチレン系樹脂発泡体。
(7)発泡剤として、炭化水素およびハロゲン化炭化水素からなる群より選ばれ、かつ、オゾン破壊係数が0である少なくとも1種の化合物を用いることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体。
(8)スチレン系樹脂発泡体中でのハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度の、該ハロゲン系難燃剤単体の熱重量減少開始温度(該ハロゲン系難燃剤単体を窒素気流下(50ml/分)、昇温速度10℃/分にて測定)に対する低下幅が、5℃以上であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体。
(9)Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ru、Pd、Ag、Sn、W、Os、PtまたはCeの酸化物、ハロゲン化物および燐酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属化合物を含有することを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体。
(10)金属化合物が酸化鉄であることを特徴とする(9)記載のスチレン系樹脂発泡体に関する。
(11)スチレン系樹脂発泡体を形成する気泡が、主として気泡径0.25mm以下の気泡および気泡径0.3〜1mmの気泡より構成されることを特徴とする(1)〜(10)のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体。
(12)スチレン系樹脂が、(1)〜(11)のいずれかに記載のスチレン系樹脂発泡体を再生してなるスチレン系樹脂組成物を含有することを特徴とする(1)〜(11)のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、難燃性に優れたスチレン系樹脂発泡体が提供される。
【0008】
本発明のスチレン系樹脂発泡体は、その優れた難燃性の点から、種々の用途、特に建築用断熱材の用途に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いられるスチレン系樹脂としては、特に限定はなく、例えば、スチレン単量体のみから得られるスチレンホモポリマー、スチレン単量体およびスチレンと共重合可能な単量体またはその誘導体から得られるランダム、ブロックあるいはグラフト共重合体、後臭素化ポリスチレン、ゴム強化ポリスチレンなどの変性ポリスチレンなどが具体例としてあげられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0010】
スチレンと共重合可能な単量体としては、例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレンなどのスチレン誘導体、ジビニルベンゼンなどの多官能性ビニル化合物、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリロニトリルなどの(メタ)アクリル系化合物、ブダジエンなどのジエン系化合物またはその誘導体、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸無水物などがあげられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0011】
スチレン系樹脂のうちでは、加工性の面から、スチレンホモポリマー、スチレン−アクリロニトリル共重合体、(メタ)アクリル酸共重合ポリスチレン、無水マレイン酸変性ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレンなどが好ましい。
【0012】
本発明で用いられるハロゲン系難燃剤は、本発明の効果に適合できるものであれば特に制限はなく、ハロゲン原子を有する化合物であればよい。
【0013】
具体的には、例えば、(a)テトラブロモエタン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ジブロモエチルジブロモシクロヘキサン、ジブロモジメチルヘキサン、2−(ブロモメチル)−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、ジブロモネオペンチルグリコール、トリブロモネオペンチルアルコール、ペンタエリスリチルテトラブロミド、モノブロモジペンタエリスリトール、ジブロモジペンタエリスリトール、トリブロモジペンタエリスリトール、テトラブロモジペンタエリスリトール、ペンタブロモジペンタエリスリトール、ヘキサブロモジペンタエリスリトール、ヘキサブロモトリペンタエリスリトール、ポリブロム化ポリペンタエリスリトール、などの臭素化脂肪族化合物あるいはその誘導体、あるいは臭素化脂環式化合物あるいはその誘導体、(b)ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ビス(2,4,6ートリブロモフェノキシ)エタン、テトラブロモ無水フタル酸、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、ペンタブロモベンジルアクリレート、トリブロモフェニルアリルエーテル、2,3−ジブロモプロピルペンタブロモフェニルエーテルなどの臭素化芳香族化合物あるいはその誘導体、(c)テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAジアリルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジメタリルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルのトリブロモフェノール付加物、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2−ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールS、などの臭素化ビスフェノール類およびその誘導体、(d)テトラブロモビスフェノールAポリカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとブロモ化ビスフェノール付加物エポキシオリゴマーなどの臭素化ビスフェノール類誘導体オリゴマー、(e)臭素化アクリル樹脂、(f)エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートなどの臭素および窒素原子含有化合物、(g)トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、トリス(ブロモフェニル)ホスフェートなどの臭素およびリン原子含有化合物、(h)塩素化パラフィン、塩素化ナフタレン、パークロロペンタデカン、塩素化芳香族化合物、塩素化脂環式化合物、などの塩素含有化合物、(i)臭化アンモニウムなどの臭素化無機化合物、などが挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。さらには、本発明のスチレン系樹脂の1種である臭素化ポリスチレン樹脂も難燃剤として用いることができる。
【0014】
本発明で用いられるハロゲン系難燃剤としては、後述するスチレン系樹脂発泡体中でのハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度が300℃以下を満たしやすく、より良好な難燃性を発現させるために、上記のうち、特に、ハロゲン化脂肪族基含有化合物が好ましく用いられる。具体的には、例えば、テトラブロモエタン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ジブロモエチルジブロモシクロヘキサン、ジブロモジメチルヘキサン、2−(ブロモメチル)−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、ジブロモネオペンチルグリコール、トリブロモネオペンチルアルコール、ペンタエリスリチルテトラブロミド、モノブロモジペンタエリスリトール、ジブロモジペンタエリスリトール、トリブロモジペンタエリスリトール、テトラブロモジペンタエリスリトール、ペンタブロモジペンタエリスリトール、ヘキサブロモジペンタエリスリトール、ヘキサブロモトリペンタエリスリトール、ポリブロム化ポリペンタエリスリトール、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2−ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等が挙げられる。
【0015】
また、後述するスチレン系樹脂発泡体中でのハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度が260〜280℃を満たしやすく、良好な難燃性と耐熱性等の諸物性とを両立させるために、上記のうち、特に、5%熱重量減少温度(窒素気流下(50ml/分)、昇温速度10℃/分にて測定)が250℃以上である、ハロゲン化脂肪族基含有化合物がさらに好ましく用いられる。具体的には、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2−ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等が挙げられる。
これらのうち、特に、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)および/またはトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートが、入手が容易で、後述の発泡体熱重量減少温度が制御しやすいことなどから、最も好ましく用いられる。
【0016】
本発明で用いられるハロゲン系難燃剤の含有量は、発泡体中のハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度を後述の範囲とし、JIS A9511に規定される難燃性が得られるように、発泡剤添加量、発泡体密度、他の添加剤の種類あるいは添加量などにあわせて適宜調整されるものであるが、概ねスチレン系樹脂100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜15重量部、さらに好ましくは1〜10重量部である。ハロゲン系難燃剤の含有量が0.1重量部未満、もしくは20重量部を超えた場合、スチレン系樹脂発泡体中でのハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度を後述の範囲とし難く、その結果、本発明の目的とする難燃性などの発泡体としての良好な諸特性が得られがたい傾向がある。
【0017】
本発明では、スチレン系樹脂発泡体中における前記ハロゲン系難燃剤において、下記の方法により測定した熱重量減少開始温度(窒素気流下(50ml/分)、昇温速度10℃/分にて測定)が300℃以下であることで優れた難燃性が得られる。
【0018】
本発明における熱重量減少開始温度は、一般的な熱重量測定装置、例えば、(株)島津製作所製TGA-50またはDTG−50を用いて測定(熱重量法)すればよい。また、測定試料としては、発泡体をそのまま用いるが、常温でプレス後、ピンセットを用いて折りたたみ、できる限り気泡を含まない形状として測定することが、測定精度を向上させるために好ましい。
【0019】
本発明におけるスチレン系樹脂発泡体中でのハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度は、図1に示すように、測定試料重量を100%として縦軸にとり、温度を横軸にとった際の熱重量減少曲線において、下記の方法にて難燃剤に由来すると確認される熱重量減少曲線における重量減少開始前の接線と、該重量減少曲線の最も傾きが大きい部分の接線との交点の温度としている。
なお、発泡体中のハロゲン系難燃剤由来の熱重量減少曲線は、熱重量測定-質量分析同時測定装置(TG−MS)等を用いて測定を行い、当該難燃剤もしくはその分解物が発生する温度範囲を同定すること等により確認できる。その温度範囲における上記接線交点温度から熱重量減少開始温度を求めることができる。
【0020】
スチレン系樹脂発泡体中でのハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度を300℃以下とすることにより、スチレン系樹脂発泡体を加熱した際、スチレン系樹脂の分解により可燃性ガスが発生するよりも十分早く、ハロゲン系難燃剤が分解もしくは揮発し、気相中での可燃性ガスまたは酸素の希釈、ラジカル反応抑制等への寄与が大きくなるため、難燃効果が得られるものと考えられる。
【0021】
スチレン系樹脂発泡体中でのハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度を300℃以下とする方法としては、特に制限するものではないが、ハロゲン系難燃剤単体の熱重量減少開始温度(ハロゲン系難燃剤単体を窒素気流下(50ml/分)、昇温速度10℃/分にて測定)が300℃以下のものを使用することの他、ハロゲン系難燃剤単体の熱重量減少開始温度が300℃超のものを使用する場合であっても、例えば、分解促進剤等の助剤の併用や、該ハロゲン系難燃剤を樹脂に添加する前に加熱する等の前処理を行う方法、発泡体製造時の温度や圧力等の条件変更等の手段を挙げることができる。
【0022】
スチレン系樹脂発泡体中でのハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度が300℃を超えると、十分な難燃効果が得られない傾向がある。また、スチレン系樹脂発泡体中でのハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度は、より良好な難燃性と耐熱性等諸物性とを両立させる観点から、260〜280℃であることがさらに好ましい。
【0023】
本発明においては、特に、スチレン系発泡体中でのハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度の、該ハロゲン系難燃剤単体の熱重量減少開始温度(該ハロゲン系難燃剤単体を窒素気流下(50ml/分)、昇温速度10℃/分にて測定)に対する低下幅が、5℃以上であることが、スチレン系樹脂発泡体の熱安定性を維持しつつ、優れた難燃性を得る点で好ましい。
【0024】
本発明で用いられる発泡剤は、特に限定するものではないが、環境適合性の観点から、炭化水素およびハロゲン化炭化水素からなる群より選ばれ、かつ、オゾン破壊係数が0である少なくとも1種の化合物(以下、オゾン破壊係数が0である化合物ともいう)、および、必要に応じて、これら以外の他の発泡剤(以下、他の発泡剤ともいう)を使用することが好ましい。なお、オゾン破壊係数とは、トリクロロモノフルオロメタン(CFC−11:CCl3F)の単位重量当たりのオゾン破壊量を1とした場合の相対値を意味し、オゾン破壊係数が0とは、実質的にオゾン破壊作用がないかあるいはオゾン破壊作用があったとしてもオゾン破壊係数は0.01以下であることを意味する。
【0025】
本発明で用いられる炭化水素であってオゾン破壊係数が0の化合物としては、例えば、炭素数3〜5の飽和炭化水素が挙げられ、具体的には、例えば、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、c−ペンタンなどが挙げられる。炭素数3〜5の飽和炭化水素のうちでは、発泡性の点から、プロパン、n−ブタン、i−ブタンあるいはこれらの混合物が好ましい。また、発泡体の断熱性能の点から、n−ブタン、i−ブタンあるいはこれらの混合物が好ましく、特に好ましくはi−ブタンである。
【0026】
本発明で用いられるハロゲン化炭化水素であってオゾン破壊係数が0の化合物としては、オゾン破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンが挙げられ、具体的には、例えば、トリフルオロメタン(HFC−23:CHF3)、ジフルオロメタン(HFC−32:CH22)、1,1,1,2,2−ペンタフルオロエタン(HFC−125:CHF2CF3)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a:CH2FCF3)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a:CH3CF3)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a:CH3CHF2)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea:CF3CHFCF3)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236fa:CF3CH2CF3)、1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245ca:CH2FCF2CHF2)、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HFC−245cb:CF3CF2CH3)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa:CF3CH2CHF2)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc:CF3CH2CF2CH3)などが挙げられる。これらのうちでは、発泡成形性の観点から、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a:CH2FCF3)がより好ましい。
【0027】
さらに、炭素数3〜5の飽和炭化水素を用いる場合には、発泡体を構成する気泡構造としては、気泡径が概ね0.25mm以下の比較的気泡径の小さい気泡(小気泡)と、気泡径が概ね0.3mmから1mm程度の比較的気泡径の大きな気泡(大気泡)が海島状に混在してなる特徴的な気泡構造とすることが断熱性の点から好ましい。
【0028】
炭化水素およびハロゲン化炭化水素からなる群より選ばれ、かつ、オゾン破壊係数が0である1種以上の化合物は、単独で使用してもよく、または2種以上を混合して使用してもよい。
【0029】
本発明では、炭化水素およびハロゲン化炭化水素からなる群より選ばれ、かつ、オゾン破壊係数が0である少なくとも1種の化合物以外の、他の発泡剤を用いることにより、スチレン系樹脂発泡体製造時の可塑化効果や発泡助剤効果が得られ、押出圧力を低減し、安定的にスチレン系樹脂発泡体の製造が可能となる。ただし、目的とする発泡倍率、難燃性等の発泡体の諸特性いかんによっては、その使用量などが制限されうる。
【0030】
本発明で用いられる他の発泡剤としては、特に限定されるものではない。例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、フラン、フルフラール、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどのエーテル類、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルi−ブチルケトン、メチルn−アミルケトン、メチルn−ヘキシルケトン、エチルn−プロピルケトン、エチルn−ブチルケトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールなどのアルコール類、蟻酸メチルエステル、蟻酸エチルエステル、蟻酸プロピルエステル、蟻酸ブチルエステル、蟻酸アミルエステル、プロピオン酸メチルエステル、プロピオン酸エチルエステルなどのカルボン酸エステル類、塩化メチル、塩化エチルなどのハロゲン化アルキルなどの有機発泡剤、例えば窒素、水、二酸化炭素などの無機発泡剤、例えばアゾ化合物、テトラゾールなどの化学発泡剤などを用いることができる。これら他の発泡剤は単独で使用してもよく、または2種以上混合して使用してもよい。
【0031】
他の発泡剤のうちでは、発泡性、発泡体成形性などの点から、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、塩化メチル、塩化エチルなどが好ましく、発泡剤の燃焼性、発泡体の難燃性あるいは後述する断熱性等の点から水および二酸化炭素が好ましい。他の発泡剤では、環境適合性の優れたジメチルエーテル、水および二酸化炭素が特に好ましい。
【0032】
本発明においては、発泡剤として、必要に応じて、少量であれば、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボンなどのオゾン破壊係数が0ではない発泡剤をさらに用いても良い。
【0033】
本発明のスチレン系樹脂発泡体の製造時に、スチレン系樹脂中に添加または注入される発泡剤の量としては、発泡倍率の設定値などに応じて適宜かわるものではあるが、通常、発泡剤の合計量をスチレン系樹脂100重量部とした場合、1〜20重量部とするのが好ましい。発泡剤の添加量が1重量部未満では、発泡倍率が低く、スチレン系樹脂発泡体としての軽量、断熱性などの特性が発揮されにくい場合があり、一方、20重量部を超えると、過剰な発泡剤量のため、スチレン系樹脂発泡体中にボイドなどの不良を生じたり、発泡剤の種類によっては難燃性が低下する場合がある。
【0034】
本発明にて添加される発泡剤において、オゾン破壊係数が0である化合物の混合下限量は、発泡剤全量100重量%に対して、好ましくは10重量%以上であり、より好ましくは20重量%以上である。(すなわち、他の発泡剤の混合上限量は、発泡剤全量100重量%に対して、好ましくは90重量%以下であり、より好ましくは80重量%以下である。)オゾン破壊係数が0である1種以上の化合物の量が10重量%未満では、得られる発泡体の断熱性が劣る場合がある。他の発泡剤の量が90重量%を超える場合、例えば、押出発泡体を得るに当たって、スチレン系樹脂との相溶性が高い場合は、可塑性が高すぎ、押出機内のスチレン系樹脂と発泡剤との混練状態が不均一となり、押出機の圧力制御が難しくなったり、樹脂との相溶性が低い場合は、発泡体に気孔などが生じて良好な発泡体が得られなかったり、押出機の圧力制御が難しくなったりすると共に、易燃性の発泡剤によっては発泡体の難燃性の低下を招くなどの傾向がある。
【0035】
本発明にて添加される発泡剤において、オゾン破壊係数が0である化合物の混合上限量は、安定的な発泡体の製造、外観など良好な品質の発泡体を得る観点から、発泡剤全量100重量%に対して、好ましくは90重量%以下であり、より好ましくは80重量%以下である。(すなわち、他の発泡剤の混合下限量は、発泡剤全量100重量%に対して、好ましくは10重量%以上であり、より好ましくは20重量%以上である。)
本発明において、他の発泡剤として水を用いる場合には、加工性や、後述する気泡径0.25mm以下の気泡(以下、小気泡とも言う)および気泡径0.3〜1mmの気泡(以下、大気泡とも言う)の生成の面から、水の混合量は、発泡剤全量100重量%に対して、好ましくは1〜80重量%、より好ましくは2〜70重量%、特に好ましくは3〜60重量%である。
【0036】
本発明において、他の発泡剤として、水および、水以外の他の発泡剤(ジメチルエーテル、ジエチルエーテルおよびメチルエチルエーテルよりなる群から選ばれる少なくとも1種のエーテルなど)を併用する場合には、加工性や、小気泡および大気泡の生成の面から、他の発泡剤の混合量は、発泡剤全量100重量%に対して、好ましくは水1〜75重量%および水以外の他の発泡剤79〜5重量%、より好ましくは水2〜70重量%および水以外の他の発泡剤78〜10重量%、特に好ましくは水3〜65重量%および水以外の他の発泡剤77〜15重量%である。
【0037】
本発明において、発泡剤を添加または注入する際の圧力は、特に制限するものではなく、反応釜や押出機などの内圧力よりも高い圧力であればよい。
【0038】
本発明により得られたスチレン系樹脂発泡体には、特に限定するものではないが、発泡剤が残存含有される場合が多く、好ましくは、発泡剤として、炭化水素およびハロゲン化炭化水素からなる群より選ばれ、かつ、オゾン破壊係数が0である1種以上の化合物が残存含有される。ただし、得られたスチレン系樹脂発泡体中における、発泡剤の残存含有量は、発泡剤の種類および使用量、発泡剤のスチレン系樹脂発泡体中における透過性、スチレン系樹脂発泡体の倍率あるいは密度、要求される断熱性能などによっても異なる。特に、発泡剤のスチレン系樹脂発泡体中における透過性によっては、経時的に残存量が減量し、発泡体気泡中の気体は空気などに置換されていく。従って、透過性が高い化合物を用いて製造され、結果的にスチレン系樹脂発泡体中に残存含有する化合物が非常に少ない発泡体も本発明の範疇である。
【0039】
しかしながら、JIS A9511で規定される押出法ポリスチレンフォーム保温板2種、更には3種といった高度の断熱性能が要求される場合には、得られたスチレン樹脂発泡体中における残存発泡剤の組成は、残存する発泡剤全量に対して、炭化水素およびハロゲン化炭化水素からなる群より選ばれ、かつ、オゾン破壊係数が0である1種以上の化合物が、好ましくは100〜1重量%、より好ましくは100〜5重量%、さらに好ましくは100〜10重量%、特に好ましくは100〜20重量%であり、他方、他の発泡剤が好ましくは0〜99重量%、より好ましくは0〜95重量%、さらに好ましくは0〜90重量%、特に好ましくは0〜80重量%である。スチレン系樹脂発泡体中に残存する発泡剤におけるオゾン破壊係数が0である1種以上の化合物の量が1重量%未満ではJIS A9511で規定される押出法ポリスチレンフォーム保温板2種、更には3種といった高度の断熱性能が得られにくい傾向がある。
【0040】
さらに、押出法ポリスチレンフォーム保温板2種あるいは3種の如き、高度な断熱性能を要求する場合には、発泡体中における、炭化水素およびハロゲン化炭化水素からなる群より選ばれ、かつ、オゾン破壊係数が0である少なくとも1種の化合物の残存含有量は、一般にスチレン系樹脂発泡体100重量部に対して、1〜10重量部であることが好ましい。特に、押出法ポリスチレンフォーム保温板3種の如きより高い断熱性能が要求される場合には、さらに好ましくは、炭化水素であってオゾン破壊係数が0である1種以上の化合物では2〜10重量部であり、具体的には、プロパンでは、2〜9重量部がさらに好ましく、3〜8重量部が特に好ましく、n−ブタンまたはi−ブタンでは、1.5〜9重量部がさらに好ましく、特に好ましくは2〜8重量部、n−ペンタン、i−ペンタン、c−ペンタンでは、2〜9重量部が好ましく、ハロゲン化炭化水素であってオゾン破壊係数が0である1種以上の化合物では2〜10重量部であり、具体的には、1,1,1,2−テトラフルオロエタンなどのハイドロフルオロカーボンでは2〜10重量部である。
【0041】
本発明では、スチレン系樹脂発泡体中でのハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度を所期の範囲に制御し、優れた難燃化効果を得る目的で、難燃助剤としてAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ru、Pd、Ag、Sn、W、Os、PtまたはCeの酸化物、ハロゲン化物および燐酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属化合物を用いることができる。
【0042】
本発明のAl、Ti、V、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ru、Pd、Ag、Sn、W、Os、PtまたはCeの酸化物、ハロゲン化物および燐酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物としては、難燃助剤効果に優れ、さらに化合物自体の取り扱い性が良好である点から、Al、Mn、Fe、Ni、Cu、ZrまたはMoの酸化物、ハロゲン化物および燐酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物が好ましく、入手が容易で、かつ、特に難燃助剤効果が高い点から、さらに好ましくは酸化鉄である。
【0043】
本発明で用いられるAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ru、Pd、Ag、Sn、W、Os、PtまたはCeの酸化物、ハロゲン化物および燐酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属化合物の含有量は、発泡体中のハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度を所期の範囲に制御し、JISA 9511に規定される難燃性や諸物性が得られるように、使用する金属化合物の種類、発泡剤添加量、発泡体密度、ハロゲン系難燃剤および他の添加剤などの種類あるいは添加量などにあわせて適宜調整されるものであるが、概ねスチレン系樹脂100重量部に対して、0.0001〜1重量部が好ましく、0.0005〜0.02重量部がより好ましく、0.001〜0.01重量部がさらに好ましい。Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ru、Pd、Ag、Sn、W、Os、PtまたはCeの酸化物、ハロゲン化物および燐酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属化合物の含有量が0.0001重量部未満では、本発明の目的とする難燃性などのスチレン系樹脂発泡体としての良好な諸特性が得られがたい傾向があり、一方、1重量部を超えると、耐熱性、難燃性および発泡体製造時の成形性、表面性などをかえって損なう場合がある。
【0044】
本発明では、ハロゲン系難燃剤およびAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ru、Pd、Ag、Sn、W、Os、PtまたはCeの酸化物、ハロゲン化物および燐酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属化合物に、更に、スチレン系樹脂発泡体中でのハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度を所期の値に制御可能な範囲で、燐酸金属塩以外の含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物、含硫黄化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を併用することができる。
【0045】
燐酸金属塩以外の含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物、含硫黄化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物の併用により、特に、可燃性である炭化水素およびハロゲン化炭化水素からなる群より選ばれ、かつ、オゾン破壊係数が0である少なくとも1種の化合物(具体的には、プロパン、n−ブタン、i−ブタンなどの炭素数が3〜5である飽和炭化水素)を発泡剤に用い、押出法ポリスチレンフォーム保温板2種あるいは3種に該当する高い断熱性能を発揮させる場合でも、ハロゲン系難燃剤およびAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ru、Pd、Ag、Sn、W、Os、PtまたはCeの酸化物、ハロゲン化物および燐酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属化合物を多量に添加することなく、JIS A9511に規定される高度の難燃性を達成することができる。
【0046】
本発明で使用される燐酸金属塩以外の含燐化合物とは、燐原子を含有する化合物であって、ハロゲン系難燃剤やAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ru、Pd、Ag、Sn、W、Os、PtまたはCeの酸化物、ハロゲン化物および燐酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属化合物に対して相乗的効果を発揮できる化合物であれば、特に制限はない。例えば、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、ホスファイト、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸またはこれの誘導体、メラミン塩、アンモニウム塩、および、ホスファゼンまたはその誘導体、ホスホニトリルまたはその誘導体等が挙げられる。
【0047】
燐酸金属塩以外の含燐化合物の具体例としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートなどの脂肪族炭化水素モノリン酸エステル、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェートなどの芳香族炭化水素モノリン酸エステル、レゾルシノール・ジフェニルホスフェート、レゾルシノール・ジキシレニルホスフェート、レゾルシノール・ジクレジルホスフェート、ビスフェノールA・ジフェニルホスフェート、ビスフェノールA・ジキシレニルホスフェート、ビスフェノールA・ジクレジルホスフェート、ハイドロキノン・ジフェニルホスフェート、ハイドロキノン・ジキシレニルホスフェート、ハイドロキノン・ジクレジルホスフェート、レゾルシノール・ポリフェニルホスフェート、レゾルシノール・ポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェートビスフェノールA・ポリクレジルホスフェート、ハイドロキノンポリ(2,6−キシリル)ホスフェートなどの縮合リン酸エステル、リン酸メラミン、亜リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、リン酸アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、リン酸アンモニウムアミド、リン酸アミド、二亜リン酸ピペラジン、亜リン酸ピペラジン、ピロリン酸ピペラジン、亜リン酸グアナゾール、ホスファゼン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラン、ポリリン酸メレム、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸アミド、ポリホスファゼン、ホスホニトリル等の含燐含窒素系化合物等が挙げられる。更には、前述のトリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、トリス(ブロモフェニル)ホスフェートなどの臭素化ホスフェート系化合物を燐酸金属塩以外の含燐化合物として使用しても良い。燐酸金属塩以外の含燐化合物は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0048】
本発明における燐酸金属塩以外の含燐化合物の添加量は、発泡体中のハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度を所期の範囲に制御し、JIS A9511に規定される難燃性や諸物性が得られるように、ハロゲン系難燃剤、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ru、Pd、Ag、Sn、W、Os、PtまたはCeの酸化物、ハロゲン化物および燐酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属化合物、および発泡剤の種類およびその含有量、得られる発泡体の密度等によって適宜調整されるが、概ね、スチレン系樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、0.3〜9重量部がより好ましく、0.5〜8重量部がさらに好ましい。燐酸金属塩以外の含燐化合物の添加量が0.1重量部未満では、難燃性の相乗効果が得られない場合があり、10重量部を越えると、発泡体製造の際の成形性などを損なう場合がある。
【0049】
本発明で使用される含窒素化合物とは、窒素原子を含有する化合物であって、ハロゲン系難燃剤および、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ru、Pd、Ag、Sn、W、Os、PtまたはCeの酸化物、ハロゲン化物および燐酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属化合物に対して相乗的効果を発揮できる化合物であれば、特に制限はない。例えば、トリアジン骨格含有化合物、シアヌル酸あるいはイソシアヌル酸およびその誘導体、グアニジン化合物、アゾ化合物、テトラゾール化合物等が挙げられる。
【0050】
含窒素化合物の具体例としては、メラミン、メラム、メレム、メロン、メチロールメラミンなどのトリアジン骨格含有化合物あるいはその誘導体、シアヌル酸、メチルシアヌレート、ジエチルシアヌレート、トリメチルシアヌレート、トリエチルシアヌレート、イソシアヌル酸、メチルイソシアヌレート、N,N‘−ジエチルイソシアヌレート、トリスメチルイソシアヌレート、トリスエチルイソシアヌレート、ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレートなどのシアヌル酸、イソシアヌル酸あるいはその誘導体、メラミンなどのトリアジン骨格含有化合物とシアヌル酸あるいはイソシアヌル酸およびその誘導体からなる塩、例えばメラミンシアヌレート等が挙げられる。更には、前述の、ヒドラゾジカルボンアミド、アゾジカルボンアミド、アゾイソブチロニトリルなどアゾ化合物、テトラゾールグアニジン塩、テトラゾールピペラジン塩、テトラゾールアンモニウム塩等のテトラゾールアミン塩類、また、テトラゾールナトリウム塩、テトラゾールマンガン塩、例えば5,5−ビステトラゾール2グアニジン塩、5,5−ビステトラゾール2アンモニウム塩、5,5−ビステトラゾール2アミノグアニジン塩、5,5−ビステトラゾールピペラジン塩等のテトラゾール金属塩類などのテトラゾール化合物など、飽和炭化水素以外の発泡剤として用いられる発泡剤を含窒素化合物として使用しても良い。更には、前述の、エチレンビステトラブロモフタルイミド、エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートなどの臭素および窒素原子含有化合物を含窒素化合物として使用しても良い。含窒素化合物は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0051】
本発明における含窒素化合物の添加量は、発泡体中のハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度を所期の範囲に制御し、JIS A9511に規定される難燃性や諸物性が得られるように、ハロゲン系難燃剤、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ru、Pd、Ag、Sn、W、Os、PtまたはCeの酸化物、ハロゲン化物および燐酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属化合物、および発泡剤の種類およびその含有量、得られる発泡体の密度等によって適宜調整されるが、概ね、スチレン系樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、0.3〜9重量部がより好ましく、0.5〜8重量部がさらに好ましい。含窒素化合物の添加量が0.1重量部未満では、難燃性の相乗効果が得られない場合があり、10重量部を越えると、発泡体製造の際の成形性などを損なう場合がある。
【0052】
本発明で使用される含ホウ素化合物とは、ホウ素原子を含有する化合物であって、ハロゲン系難燃剤および、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ru、Pd、Ag、Sn、W、Os、PtまたはCeの酸化物、ハロゲン化物および燐酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属化合物に対して相乗的効果を発揮できる化合物であれば、特に制限はない。例えば、ホウ酸、硼砂、ホウ酸金属塩、酸化ホウ素、リン酸ホウ素、ボロシリケート類等が挙げられる。
【0053】
含ホウ素化合物の具体例としては、ホウ酸、硼砂、ホウ酸亜鉛、ホウ酸バリウム、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸ストロンチウム、ホウ酸ジルコニウム、ホウ酸スズなどのホウ酸金属塩、およびこれらの化合物の水和物など誘導体、二酸化二ホウ素、三酸化二ホウ素、三酸化四ホウ素、五酸化四ホウ素等の酸化ホウ素が挙げられる。含ホウ素化合物は単独または2種以上を混合して使用できる。
【0054】
本発明における含ホウ素化合物の添加量は、発泡体中のハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度を所期の範囲に制御し、JIS A9511に規定される難燃性や諸物性が得られるように、ハロゲン系難燃剤、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ru、Pd、Ag、Sn、W、Os、PtまたはCeの酸化物、ハロゲン化物および燐酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属化合物、および発泡剤の種類およびその含有量、得られる発泡体の密度等によって適宜調整されるが、概ね、スチレン系樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、0.3〜9重量部がより好ましくは、0.5〜8重量部がさらに好ましい。含ホウ素化合物の添加量が0.1重量部未満では、難燃性の相乗効果が得られない場合があり、10重量部を越えると、発泡体製造の際の成形性などを損なう場合がある。
【0055】
本発明で使用される含硫黄化合物とは、硫黄原子を含有する化合物であって、ハロゲン系難燃剤および、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ru、Pd、Ag、Sn、W、Os、PtまたはCeの酸化物、ハロゲン化物および燐酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属化合物に対して相乗的効果を発揮できる化合物であれば、特に制限はない。その具体例としては、例えば、硫酸アンモニウム、硫酸メラミン、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸鉄などの硫酸塩系化合物、スルファミン酸、スルファミン酸アンモニウム、スルファミン酸グアニジンなどのスルファミン酸系化合物、ベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸、p−オクチルベンゼンスルホン酸、o−オクチルベンゼンスルホン酸、p−ドデシルベンゼンスルホン酸、m−ドデシルベンゼンスルホン酸、o−ドデシルベンゼンスルホン酸などのアルキルベンゼンスルホン酸、フルオロベンゼンスルホン酸、クロルベンゼンスルホン酸、ブロムベンゼンスルホン酸、ヨードベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、フェノールジスルホン酸、スルファニル酸(アミノベンゼンスルホン酸)、ナフタレンスルホン酸、2−ナフトール−1−スルホン酸、2−メチルナフタレン−1−スルホン酸あるいはこれらの芳香族スルホン酸のリチウム、ナトリウム、カリウムなどの周期律表1A族金属との塩、マグネシウム、カルシウム、バリウムなどの周期律表2A族金属との塩、亜鉛、鉄、銅などの金属との塩などの金属塩などのスルホン酸系化合物等が挙げられる。含硫黄化合物は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0056】
本発明における含硫黄化合物の添加量は、発泡体中のハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度を所期の範囲に制御し、JIS A9511に規定される難燃性や諸物性が得られるように、ハロゲン系難燃剤、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ru、Pd、Ag、Sn、W、Os、PtまたはCeの酸化物、ハロゲン化物および燐酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属化合物、および発泡剤の種類およびその含有量、得られる発泡体の密度等によって適宜調整されるが、概ね、スチレン系樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、0.3〜9重量部がより好ましく、0.5〜8重量部がさらに好ましい。含硫黄化合物の添加量が0.1重量部未満では、難燃性の相乗効果が得られない場合があり、10重量部を越えると、発泡体製造の際の成形性などを損なう場合がある。
【0057】
本発明における燐酸金属塩以外の含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物または含硫黄化合物は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0058】
本発明においては、燐酸金属塩以外の含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物または含硫黄化合物は、表面処理剤(例えば、各種熱硬化性樹脂、各種熱可塑性樹脂、シランカップリング剤、チタン系化合物、無機化合物などから選ばれる1種または2種以上の化合物)で表面被覆処理をしたものも好適に使用し得る。
【0059】
すなわち、燐酸金属塩以外の含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物または含硫黄化合物では、高い断熱性などを得るために、押出発泡体製造時に他の発泡助剤として水を用いた場合、スチレン系樹脂発泡体中に前記小気泡および大気泡を発生させる効果を阻害しない化合物が好ましく、例えば、室温付近の温度域(10〜30℃前後)において水に難溶あるいは水への溶解度が10重量%以下の化合物が好ましい。これらの水への溶解度が10重量%より高い場合、前記の小気泡と大気泡とを発生させる効果を阻害する傾向にある。これらの水への溶解度が10重量%より高い場合、または、小気泡および大気泡とを発生させる効果を阻害する傾向にある場合には、表面被覆処理を施すことで改善できる場合があり、発泡体中のハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度を所期の値に制御し得る範囲であれば、表面被覆処理された化合物を用いることが好ましい。
【0060】
本発明のスチレン系樹脂発泡体の気泡構造は、特に限定するものではない。気泡構造としては、気泡径が0.01〜1mm程度の気泡から構成されるが、気泡のほとんどがほぼ気泡径の似通った気泡から構成される構造、気泡の気泡径が大きく分けて2種あるいは3種以上に分類されて構成される構造などが挙げられる。特に、押出法ポリスチレンフォーム保温板2種あるいは3種に該当する高い断熱性能を発揮させるためには、気泡のほとんどがほぼセル径の似通った気泡から構成される場合では、平均セル径によっては、低熱伝導率の発泡剤を比較的多く残存含有する必要がある。一方、気泡のセル径が大きく分けて2種あるいは3種以上に分類されて構成される場合、特に、発泡体の発泡セル構造として気泡径が概ね0.25mm以下の比較的気泡径の小さい気泡(小気泡)および、気泡径が概ね0.3mmから1mm程度の比較的気泡径の大きな気泡(大気泡)が海島状に混在してなる特徴的な気泡構造では、比較的少量のオゾン破壊係数が0である1種以上の化合物を残存含有しても高い断熱性が実現される。特に、可燃性のオゾン破壊係数が0である1種以上の化合物を用いる場合には、後者の気泡構造とすることが好ましい。このような気泡構造は、例えば、押出発泡時に、他の発泡剤として水を用いることによって形成させることができる。
【0061】
本発明においては、他の発泡剤として水を用いる場合、発泡体中のハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度を所期の値に制御し得る範囲で、この水を吸水できる吸水性物質を同時に併用することが好ましい。吸水性物質の具体例としては、例えば、スメクタイト、膨潤性フッ素雲母などの吸水性または水膨潤性の層状珪酸塩類あるいはこれらの有機化処理品、吸水性高分子、日本アエロジル(株)製AEROSILなどのシラノール基を有する無水シリカなどがあげられる。これらの吸水性物質の1種または2種以上を添加することにより、スチレン系樹脂発泡体中に、後述する小気泡および大気泡の発生する作用をさらに向上させることができ、得られる発泡体の成形性、生産性および断熱性能がさらに向上する。
【0062】
ここで使用する吸水性物質は、スチレン系樹脂に対して相溶性のない水を吸水してゲルを形成し、ゲルの状態でスチレン系樹脂中に均一に分散させることができると考えられることから使用される。
【0063】
本発明で用いられる吸水性物質の含有量は、発泡体中のハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度を所期の値に制御し得る範囲で、水の添加量などによって、適宜調整されるものであるが、スチレン系樹脂100重量部に対して、好ましくは0.2〜10重量部、さらに好ましくは0.3〜8重量部、特に好ましくは0.5〜7重量部である。吸水性物質の含有量が0.2重量部未満では吸水性物質による水の吸着量が不足し、押出機内で水の分散不良による気孔が発生し成形体不良になる場合があり、一方、10重量部を超える場合には、押出機内で吸水性物質の分散不良が発生し、気泡むらができ、発泡体の断熱性能の悪化とバラツキを生ずる場合がある。
【0064】
本発明で用いられる層状珪酸塩とは、主として酸化ケイ素の四面体シートと、主として金属水酸化物の八面体シートから成り、該四面体シートと八面体シートが単位層を形成し、単位層単独、層間に陽イオンなどを介して複数個層状に積層して一次粒子を形成、あるいは、一次粒子の凝集体の粒子を形成(二次粒子)し存在しうるものである。層状珪酸塩の例としては、例えば、スメクタイト族粘土および膨潤性雲母などが挙げられる。
【0065】
前記のスメクタイト族粘土は下記一般式(1)
0.20.623410(OH)2・nH2O・・・・・・一般式(1)
(ただし、XはK、Na、1/2Ca、及び1/2Mgから成る群より選ばれる1種以上であり、YはMg、Fe、Mn、Ni、Zn、Li、Al、及びCrから成る群より選ばれる1種以上であり、ZはSi、及びAlから成る群より選ばれる1種以上である。尚、H2Oは層間イオンと結合している水分子を表すが、nは層間イオンおよび相対湿度に応じて著しく変動する)で表される、天然または合成されたものである。
【0066】
該スメクタイト族粘土の具体例としては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、鉄サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト及びベントナイト等、またはこれらの置換体、誘導体、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0067】
また、前記の膨潤性雲母は下記一般式(2)
0.51.023(Z410)(F、OH)2 ・・・・・・一般式(2)
(ただし、XはLi、Na、K、Rb、Ca、Ba、及びSrから成る群より選ばれる1種以上であり、YはMg、Fe、Ni、Mn、Al、及びLiから成る群より選ばれる1種以上であり、ZはSi、Ge、Al、Fe、及びBから成る群より選ばれる1種以上である。)で表される、天然または合成されたものである。
【0068】
これらは、水、水と任意の割合で相溶する極性のある有機化合物、及び水と該極性のある有機化合物の混合溶媒中で膨潤する性質を有する物であり、例えば、リチウム型テニオライト、ナトリウム型テニオライト、リチウム型四ケイ素雲母、及びナトリウム型四ケイ素雲母等、またはこれらの置換体、誘導体、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0069】
上記の膨潤性雲母の中にはバーミキュライト類と似通った構造を有するものもあり、この様なバーミキュライト類相当品等も使用し得る。該バーミキュライト類相当品には3八面体型と2八面体型があり、下記一般式(3)
(Mg,Fe,Al)23(Si4-xAlx)O10(OH)2・(M+,M2+1/2)x・nH2O・・・・・・一般式(3)
(ただし、MはNa及びMg等のアルカリまたはアルカリ土類金属の交換性陽イオン、x=0.6〜0.9、n=3.5〜5である)で表されるものが挙げられる。
【0070】
膨潤性層状珪酸塩は単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。これらのうちでは、得られる発泡体中の分散性の点などから、スメクタイト族粘土および膨潤性雲母が好ましく、さらに好ましくは、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、合成スメクタイトおよび膨潤性フッ素雲母などの層間にナトリウムイオンを有する膨潤性雲母が好ましい。
【0071】
ベントナイトの代表例としては、天然ベントナイト、精製ベントナイトなどが挙げられる。また、有機化ベントナイトなども使用できる。本発明におけるスメクタイトには、アニオン系ポリマー変性モンモリロナイト、シラン処理モンモリロナイト、高極性有機溶剤複合モンモリロナイトなどのモンモリロナイト変性処理生成物もその範疇に含まれる。
【0072】
本発明におけるベントナイトなどのスメクタイトの含有量は、発泡体中のハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度を所期値に制御し得る範囲で、水の添加量などによって適宜調整されるものであるが、スチレン系樹脂100重量部に対して、好ましくは0.2〜10重量部、さらに好ましくは0.3〜8重量部、特に好ましくは0.5〜7重量部、最も好ましくは1〜5重量部である。スメクタイトの含有量が0.2重量部未満では水の圧入量に対してスメクタイトによる水の吸着量が不足し、押出機内で水の分散不良による気孔が発生し成形体不良になる傾向がある。一方、10重量部を超える場合には、スチレン系樹脂中に存在する無機物粉体の量が過剰になるため、スチレン系樹脂中への均一分散が困難になり、気泡むらが発生する傾向にあり、さらには、独立気泡を保持することが困難となる傾向にある。したがって、発泡体の断熱性能の悪化とバラツキを生じ易くなる傾向がある。
【0073】
本発明における水/スメクタイト(ベントナイト)の混合比率は、重量比で、好ましくは0.02〜20、さらに好ましくは0.1〜10、特に好ましくは0.15〜5、最も好ましくは0.25〜2の範囲が理想的である。
【0074】
本発明で得られるスチレン系樹脂発泡体における平均気泡径は、0.05〜1mmが好ましく、さらに好ましくは0.06〜0.6mm、特に好ましくは0.08〜0.4mmである。
【0075】
また、他の発泡剤として水を用いた場合、スチレン系樹脂発泡体中に、気泡径が主として0.25mm以下の比較的気泡径の小さい気泡(小気泡)および、気泡径が主として0.3〜1mm程度の比較的気泡径の大きな気泡(大気泡)が海島状に混在してなる特徴的な気泡構造を有する発泡体が得られる。得られるスチレン系樹脂発泡体の断熱性能が向上することから、他の発泡剤として水を用いることが好ましい。他の発泡剤として水を用いる場合、オゾン破壊係数が0である1種以上の化合物のみと組み合わせて用いても良いが、オゾン破壊係数が0である1種以上の化合物、および、水以外の他の発泡剤(たとえば、ジメチルエーテル、二酸化炭素など)と組み合わせて3成分またはそれ以上の成分からなる発泡剤とすることにより、発泡体の発泡性、成形性がより一層向上するので好ましい。
【0076】
さらに、気泡径0.25mm以下の小気泡および気泡径0.3〜1mmの大気泡が混在してなる特定の気泡構造の発泡体においては、発泡体断面積あたりに占める小気泡の面積の割合(単位断面積あたりの占有面積率)(以下、小気泡面積率という)は、5〜95%が好ましく、さらに好ましくは10〜90%、特に好ましくは20〜80%、最も好ましくは25〜70%である。
【0077】
本発明においては、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で、種々の難燃助剤、シリカ、タルク、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、炭酸カルシウムなどの無機化合物、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、流動パラフィン、オレフィン系ワックス、ステアリルアミド系化合物などの加工助剤、フェノール系抗酸化剤、リン系安定剤、窒素系安定剤、イオウ系安定剤、ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類などの耐光性安定剤、前記以外の難燃剤、帯電防止剤、顔料などの着色剤などの添加剤を含有させることができる。
【0078】
難燃助剤としては、発泡体中のハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度を所期の範囲に制御し、JIS A9511に規定される難燃性や諸物性が得られるように、ハロゲン系難燃剤および、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ru、Pd、Ag、Sn、W、Os、PtまたはCeの酸化物、ハロゲン化物および燐酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属化合物に対して相乗作用を発現する物質で有れば、特に制限はないが、熱により分解してラジカルを発生させるジフェニルアルカン等の難燃助剤が好ましい。
【0079】
また、押出発泡体製造時により安定的に押出発泡するためには、発泡体中のハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度を所期の値に制御し得る範囲で、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスフェート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレイトなどのヒンダードフェノール系抗酸化剤、トリフェニルフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビスステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイトなどのリン系安定剤、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、アルキル化ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンなどのアミン系安定剤、3,3−チオビスプロピオン酸ジオデシルエステル、3,3’−チオビスプロピオン酸ジオクタデシルエステルなどの硫黄系安定剤を添加するのが好ましい。
【0080】
本発明のスチレン系樹脂発泡体の製造方法に関しては、特に限定するものではないが、より高度な断熱性が得られることから、押出発泡により製造されることが好ましい。
【0081】
本発明のスチレン系樹脂発泡体は、スチレン系樹脂およびハロゲン系難燃剤、さらに必要に応じて、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ru、Pd、Ag、Sn、W、Os、PtまたはCeの酸化物、ハロゲン化物および燐酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属化合物、燐酸金属塩以外の含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物、含硫黄化合物、または他の添加剤を押出機等の加熱溶融手段に供給し、任意の段階で高圧条件下で、発泡剤をスチレン系樹脂に添加し、流動ゲルとなし、押出発泡に適する温度に冷却し、ダイを通して該流動ゲルを低圧領域に押出発泡して、発泡体を形成することにより製造される。
【0082】
スチレン系樹脂と発泡剤などの添加剤を加熱溶融する際の、スチレン系樹脂と発泡剤などの添加剤の添加手順としては、例えば、
(い)スチレン系樹脂にハロゲン系難燃剤、さらに必要に応じて、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ru、Pd、Ag、Sn、W、Os、PtまたはCeの酸化物、ハロゲン化物および燐酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属化合物、燐酸金属塩以外の含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物、含硫黄化合物、または他の添加剤を混合した後、加熱溶融する、
(ろ)スチレン系樹脂とハロゲン系難燃剤、さらに必要に応じて、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ru、Pd、Ag、Sn、W、Os、PtまたはCeの酸化物、ハロゲン化物および燐酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属化合物、燐酸金属塩以外の含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物、含硫黄化合物、または他の添加剤から選ばれる1種以上の添加剤を混合した後、加熱溶融し、これに残りの添加剤をそのままあるいは必要により液体化あるいは溶融させて添加し加熱混合する、
(は)予めスチレン系樹脂にハロゲン系難燃剤、さらに必要に応じて、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ru、Pd、Ag、Sn、W、Os、PtまたはCeの酸化物、ハロゲン化物および燐酸塩からなるぐんより選ばれる少なくとも一種の金属化合物、燐酸金属塩以外の含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物、含硫黄化合物、または他の添加剤をから選ばれる1種以上の添加剤を混合した後、加熱溶融した組成物を準備し、次いで、該組成物と残りの添加剤、必要に応じて、スチレン系樹脂を改めて混合し、押出機に供給して加熱溶融する、
などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
本発明のおいて、スチレン系樹脂および発泡剤などの添加剤を加熱溶融混練する際の加熱温度、溶融混練時間および溶融混練手段については特に制限するものではない。
【0084】
該加熱温度は、使用するスチレン系樹脂が溶融する温度以上であればよいが、難燃剤などの影響による樹脂の分子劣化ができる限り抑制される温度、例えば、150〜260℃程度が好ましい。
【0085】
該溶融混練時間は、単位時間あたりの押出量、溶融混練手段などによって異なるので一概には決定することができないが、スチレン系樹脂と発泡剤が均一に分散混合するのに要する時間が適宜選ばれる。
【0086】
また、溶融混練手段としては、例えばスクリュー型の押出機などが挙げられるが、通常の押出発泡に用いられているものであれば特に限定はない。ただし、樹脂の分子劣化をできる限り抑えるため、スクリュー形状については、低剪断タイプのスクリューを用いる方が好ましい。
【0087】
また、発泡成形方法も特に制限されないが、例えば、スリットダイより圧力開放して得られた発泡体をスリットダイと密着または接して設置した成形金型および成形ロールなどを用いて、断面積の大きい板状発泡体を成形する一般的な方法を用いることができる。
【0088】
本発明の発泡体の厚さは特に制限されず、用途に応じて適宜選択される。例えば、建材などの用途に使用される断熱材の場合、好ましい断熱性、曲げ強度および圧縮強度を付与せしめるためには、シートのような薄いものよりも、通常の板状物のように厚さのあるものが好ましく、通常10〜150mm、好ましくは20〜100mmである。
【0089】
本発明の発泡体の密度については、軽量でかつ優れた断熱性および曲げ強度、圧縮強度を付与せしめるためには15〜50kg/m3であることが好ましく、20〜45kg/m3であることががさらに好ましい。
【0090】
本願発明の、ハロゲン系難燃剤を含有するスチレン系樹脂発泡体であって、スチレン系樹脂発泡体中でのハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度(窒素気流下(50ml/分)、昇温速度10℃/分の条件にて測定)が300℃以下であることを特徴とするスチレン系樹脂発泡体は、発泡体となしたものを再生し、再度成形に用いることができる。例えば、本発明のスチレン系樹脂発泡体を、粉砕し、押出機にて溶融ペレット化した再生したスチレン系樹脂組成物を、スチレン系樹脂の一部として、成形に用いていないいわゆる新しいスチレン系樹脂と配合し押出発泡させることが可能である。再生したスチレン系樹脂組成物の使用上限量は、スチレン系樹脂発泡体中でのハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度を所期の値に制御し得る範囲で適宜調整されるが、例えば、新しいスチレン系樹脂100重量部に対して200重量部、好ましくは150重量部が例示できる。
【実施例】
【0091】
次に、本発明の熱可塑性樹脂押出発泡体を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに制限されるものではない。なお、特に断らない限り「部」は重量部を、「%」は重量%を表す。(但し、小気泡面積率(%)は面積の割合である。)
【0092】
実施例および比較例では、以下の原材料を用いた。
A:スチレン系樹脂
A−1:ポリスチレン(PSジャパン(株)製、G9401)
B:ハロゲン系難燃剤
B−1:テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)(帝人化成(株)製、ファイヤガード3100)
B−2:デカブロムジフェニルオキサイド(東ソー(株)製、フレームカット110R)
B−3:トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート(日本化成(株)製、TAIC−6B)
B−4:ヘキサブロムシクロドデカン(ALBEMARLE CORPORATION製、SAYTEX HP−900)
C:Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ru、Pd、Ag、Sn、W、Os、PtまたはCeの酸化物、ハロゲン化物および燐酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属化合物
C−1:酸化鉄(Fe23、和光純薬工業(株)製試薬)
D:燐酸金属塩以外の含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物または含硫黄化合物
D−1:トリフェニルホスフェート(大八化学工業(株)製、TPP)
D−2:イソシアヌル酸(四国化成(株)製、ICA−P)
D−3:酸化ホウ素(和光純薬工業(株)製試薬)
D−4:p−トルエンスルホン酸一水和物(和光純薬工業(株)製試薬)
E:発泡剤;炭化水素およびハロゲン化炭化水素の群から選ばれ、かつ、オゾン破壊係数が0である少なくとも1種の化合物
E−1:プロパン(イワタニ(株)製、無臭プロパン)
E−2:イソブタン(三井化学(株)製、イソブタン)
E−3:HFC−134a(ダイキン工業(株)製、HFC−134a)
F:その他の発泡剤
F−1:ジメチルエーテル(三井化学(株)製、ジメチルエーテル)
F−2:水
G:その他の添加剤
G−1:タルク(林化成(株)製、タルカンパウダー)
G−2:ステアリン酸バリウム(堺化学工業(株)製、ステアリン酸バリウム)
G−3:ベントナイト(豊順鉱業(株)製、ベンゲル23)
G−4:AEROSIL(日本アエロジル(株)製、AEROSIL)
G−5:安定剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製IRGANOX B911(ヒンダードフェノール系抗酸化剤IRGANOX1076:オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとリン系安定剤IRGAFOS168:トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトの1:1の混合物)
【0093】
得られた発泡体に対する評価・測定方法は、以下のとおりである。
【0094】
(1)熱重量減少温度
熱重量測定装置((株)島津製作所製、DTG−50)を用いて、次の手順により測定した。
1)スチレン系樹脂発泡体中でのハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度
a)得られたスチレン系樹脂発泡体を3.5±0.5mg採取し、常温でプレス後、ピンセットを用いて折りたたみ、できる限り気泡を含まない形状とする。
b)アルミニウム製セルに入れ、窒素気流下(50ml/分)、昇温速度10℃/分の条件にて室温から500℃まで昇温し、加熱による重量減少の測定を行う。
c)測定試料重量を100%として縦軸にとり、温度を横軸にとった際の熱重量減少曲線において、難燃剤に由来すると確認される重量減少曲線における重量減少開始前の接線と、該重量減少曲線の最も傾きが大きい部分の接線との交点の温度を求め、熱量減少開始温度とした。
次のように評価した。
○:260℃以上280℃以下
△:260℃未満、または、280℃を超え300℃以下
×:300℃を超える
2)ハロゲン系難燃剤単体の熱重量減少開始温度
a)ハロゲン系難燃剤を3.5±0.5mg採取する。
b)アルミニウム製セルに入れ、窒素気流下(50ml/分)、昇温速度10℃/分の条件にて室温から500℃まで昇温し、加熱による重量減少の測定を行う。
c)測定試料重量を100%として縦軸にとり、温度を横軸にとった際の熱重量減少曲線において、重量減少開始前の接線と最も傾きが大きい部分の接線との交点の温度を求め、熱重量減少開始温度とした。
ハロゲン系難燃剤に関して、スチレン系樹脂発泡体中での熱重量減少開始温度の、ハロゲン系難燃剤単体の熱重量減少開始温度に対する低下幅を、(ハロゲン系難燃剤単体の熱重量減少開始温度)−(発泡体中の同ハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度)を用い算出し、次のように評価した。
○:低下幅が5℃以上
×:低下幅が、5℃未満。
3)ハロゲン化脂肪族基含有化合物の5%熱重量減少温度
a)ハロゲン系難燃剤を3.5±0.5mg採取する。
b)アルミニウム製セルに入れ、窒素気流下(50ml/分)、昇温速度10℃/分の条件にて室温から500℃まで昇温し、加熱による重量減少の測定を行う。
c)測定試料重量を100%として縦軸にとり、温度を横軸にとった際の熱重量減少曲線において、重量が5%減量した時点での温度を求め、5%熱重量減少温度とした。
実施例にて使用したハロゲン化脂肪族基含有化合物の5%熱重量減少温度は、以下の通りであった。
B−1:テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)→295℃
B−3:トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート→281℃
B−4:ヘキサブロムシクロドデカン→244℃
【0095】
(2)燃焼性
押出発泡体の燃焼性は、JIS A9511に準じ、200mm×25mm×10mmの試験片を用い、以下の基準で評価した。測定は製造後、前記寸法に切削した後、7日経過した発泡体について行った。
(a)燃焼時間
◎:消炎時間が5本すべて3秒以内となる
○:消炎時間が5本のうち、少なくとも1本が3秒を越えるが、残りの3本以上は3秒以内となる
△:消炎時間が5本のうち、少なくとも3本が3秒を越えるが、残りの1本以上は3秒以内となる
×:消炎時間が5本すべて3秒を超える
(b)燃焼距離
◎:5本全てで限界線以内で停止する
○:5本のうち、少なくとも1本は減少が限界線を越えるが、残りの3本以上は限界線以内で燃焼が停止する
△:5本のうち、少なくとも3本は燃焼が限界線を越えるが、残りの1本以上は限界線以内で燃焼が停止する
×:5本全てで燃焼が限界線を越える
(c)燃焼状況
◎:発泡剤の燃焼が全く見られない
○:発泡剤の燃焼が若干見られる
△:発泡剤の燃焼が見られるが、全焼には至らない
×:発泡剤の燃焼も見られ、全焼する
【0096】
(3)熱伝導率
押出発泡体の熱伝導率は、JIS A9511に準じて測定した。測定には英弘精機製HC−074を用い、押出発泡体から約300mm×100mm×25mmの直方体試験片を3個切り出し、これを並べて300mm×300mm×25mmの形としてHC−074にセットし測定した。測定は製造後、表面から10mmの部分を削除した後、90日経過した発泡体について行った。
【0097】
(4)小気泡面積率
押出発泡体について、厚さ方向断面での気泡径0.25mm以下である気泡の発泡体断面積あたりの占有面積比を以下のようにして求めた。
ここで、気泡径0.25mm以下である気泡とは、円相当直径が0.25mm以下の気泡とする。
(a)走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製、品番:S−450)にて30倍に拡大して発泡体の縦断面を写真撮影する。
(b)撮影した写真の上にOHPシートを置き、その上に厚さ方向の径が7.5mmよりも大きい気泡(実寸法が0.25mmより大きい気泡に相当する)に対応する部分を黒インキで塗りつぶして写しとる(一次処理)。
(c)画像処理装置((株)ピアス製、品番:PIAS−II)に一次処理画像を取り込み、濃色部分と淡色部分を、即ち黒インキで塗られた部分か否かを識別する。
(d)濃色部分のうち、直径7.5mm以下の円の面積に相当する部分、即ち、厚さ方向の径は長いが、面積的には直径7.5mm以下の円の面積にしかならない部分を淡色化して、濃色部分の補正を行う。
(e)画像解析計算機能中の「FRACTAREA(面積率)」を用い、画像全体に占める気泡径7.5mm以下(濃淡で分割した淡色部分)の面積比を次式により求める。
小気泡占有面積比(%)=(1−濃色部分の面積/画像全体の面積)×100
【0098】
(5)発泡体を構成するスチレン系樹脂の比粘度ηsp
次の手順により、比粘度ηspを求めた。
(a)発泡体サンプル約1gを共栓付の試験管に入れ、約30mlのメチルエチルケトンを加えて溶解させる。溶解し難いサンプルの場合は、60℃以下の加熱により充分に溶解させる。
(b)試験管に栓をし、6時間以上静置することにより不溶物(固形物、ゲル)を沈殿させる。
(c)静置後、試験管中の上澄液を静かに容量100ml以上のビーカーに移す。
(d)マグネチックスターラーを使用して、ビーカー内を攪拌しながらエタノールを数mlずつ加え、樹脂が析出するのを確認する。さらに数mlずつエタノールを加え、析出した樹脂が再溶解しなくなり始めたら、数滴ずつゆっくりとエタノールを加え、ほぼ全量の樹脂分を析出せる。
(e)析出した樹脂分を攪拌棒などで混ぜながら塊にさせ、ビーカーの底に沈ませる。ビーカーの底に樹脂分を押しつけるようにしながら軽く洗浄する。
(f)洗浄後、ビーカー内の上澄液を捨て、樹脂分をアルミホイルのうえにあけ、伸ばして薄い板状にする。
(g)アルミホイルごと70℃のオーブンに入れ、12時間以上放置して、溶剤を完全に揮散させる。
(h)乾燥させた樹脂分250mg(精秤)をサンプルとして、共栓付の試験管に入れ、25ml(ホールピペットによる精秤)のトルエンを加え溶解させる。溶解し難い場合は、60℃以下の加熱により充分に溶解させる。
(i)試料10ml(ホールピペットによる精秤)を用い、オストワルド粘度管(水30℃/50S型)にて30℃においてトルエン(特級)に対する相対粘度を測定する。
比粘度は以下の式にて算出する。
比粘度(ηsp)=(試料の通過時間)/(トルエンの通過時間)−1
【0099】
(6)耐熱性
約100mm×100mm×25mmの直方体に切り出した発泡体を、恒温恒湿室(気温25℃および湿度50%)にて2週間養生した後、80℃のオーブンで24時間加熱し、その前後の体積変化を求めた。
耐熱性は以下の式を用い基準で評価した。
体積変化率=[(オーブン加熱後のサンプル体積÷オーブン加熱前のサンプル体積)−1]×100 (%)
○:体積変化率が15%以下である。
△:体積変化率が15〜30%である。
×:体積変化率が30%以上である。
【0100】
(7)発泡体の密度
押出発泡体を約200mm×100mm×25mmの直方体に切り出した後、この重量を測るとともに、ノギスで縦、横および高さの寸法を測定し、発泡体密度を、
式: 発泡体密度(g/cm3)=発泡体重量(g)/発泡体体積(cm3
に基づいて求め、単位を(kg/m3)に換算して示した。
【0101】
(8)リサイクル性
押出発泡体を粉砕機で粉砕した後、二軸押出機(日本製鋼(株)製TEX44)を用い、シリンダー温度設定230℃にて加熱溶融し、ペレット化した。
リサイクル性は、以下の式を用い基準で評価した。
比粘度(ηsp)保持率=(粉砕後加熱溶融しペレット化したもののスチレン系樹脂の比粘度(ηsp)÷もともと使用したスチレン系樹脂の比粘度(ηsp))×100 (%)
○:比粘度(ηsp)保持率が75%以上である。
△:比粘度(ηsp)保持率が60〜75%である。
×:比粘度(ηsp)保持率が60%未満である。
【0102】
(実施例1)
スチレン系樹脂(A−1)100部に対して、ハロゲン系難燃剤としてテトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)(B−1)5部および、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ru、Pd、Ag、Sn、W、Os、PtまたはCeの酸化物、ハロゲン化物および燐酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属化合物として酸化鉄(C−1)0.01部、さらにタルク(G−1)0.5部およびステアリン酸バリウム(G−2)0.25部とからなる混合物をドライブレンドし、得られた混合物を口径65mmおよび口径90mmの押出機を縦に連結した押出機へ約70kg/hrの割合で供給した。前記口径65mmの押出機に供給した混合物を、200℃に加熱して混練し、これに連結された口径90mmの押出機で樹脂温度を120℃に冷却して、口径90mmの押出機の先端に設けた厚さ方向2mmおよび幅方向50mmの長方形断面の口金より大気中へ押し出し、直方体状の押出発泡体を得た。得られた発泡体の密度は28kg/m3であった。
この際、発泡剤として、プロパン(E−1)50%およびジメチルエーテル(F―1)50%からなる発泡剤をスチレン系樹脂100部に対して8部となるように、前記口径65mmの押出機の先端付近(口径90mmの押出機の口金と反対側の端部側に接続される側の端部)から前記樹脂中に圧入した。
得られた押出発泡体の特性を表1に示す。
【0103】
(実施例2〜5)
ハロゲン系難燃剤(B)、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ru、Pd、Ag、Sn、W、Os、PtまたはCeの酸化物、ハロゲン化物および燐酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属化合物(C)、発泡剤(E)および他の発泡剤(F)の種類および添加量を表1に示す値とした以外は、実施例1と同様にして発泡体を得た。
得られた押出発泡体の特性を表1に示す。
【0104】
(比較例1)
ハロゲン系難燃剤(B)、発泡剤(E)および他の発泡剤(F)の種類および添加量を表1に示す値とした以外は、実施例1と同様にして発泡体を得た。
【0105】
【表1】

【0106】
本発明の実施例である実施例1〜5と比較例1を比較して明らかなように、本発明によれば、スチレン系樹脂発泡体中でのハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度(窒素気流下(50ml/分)、昇温速度10℃/分にて測定)を300℃以下とすることにより、難燃性に優れた発泡体が得られると共に、スチレン系樹脂発泡体中でのハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度およびハロゲン化脂肪族基含有化合物の5%熱重量減少温度をさらに限定することにより、耐熱性およびリサイクル性にも優れた発泡体が得られることが判る。
【0107】
(実施例6)
スチレン系樹脂(A−1)100部に対して、ハロゲン系難燃剤としてテトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)(B−1)5部および、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ru、Pd、Ag、Sn、W、Os、PtまたはCeの酸化物、ハロゲン化物および燐酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属化合物として酸化鉄(C−1)0.01部、さらにタルク(G−1)0.5部およびステアリン酸バリウム(G−2)0.25部とからなる混合物をドライブレンドし、得られた混合物を口径65mmと口径90mmの押出機を縦に連結した押出機へ約70kg/hrの割合で供給した。前記口径65mmの押出機に供給した混合物を、200℃に加熱して混練し、これに連結された口径90mmの押出機で樹脂温度を120℃に冷却して、口径90mmの押出機の先端に設けた厚さ方向2mm、幅方向50mmの長方形断面の口金より大気中へ押し出し、直方体状の押出発泡体を得た。得られた発泡体の密度は32kg/m3であった。
この際、発泡剤として、イソブタン(E−2)67%およびジメチルエーテル(F―1)33%からなる発泡剤をスチレン系樹脂100部に対して6部となるように、前記口径65mmの押出機の先端付近(口径90mmの押出機の口金と反対側の端部側に接続される側の端部)から前記樹脂中に圧入した。
得られた押出発泡体の特性を表2に示す。
【0108】
(実施例7〜12)
ハロゲン系難燃剤(B)、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ru、Pd、Ag、Sn、W、Os、PtまたはCeの酸化物、ハロゲン化物および燐酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属化合物(C)、含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物、含硫黄化合物(E)、発泡剤(F)、および他の発泡剤(G)の種類および添加量を表2に示す値とした以外は、実施例6と同様にして発泡体を得た。
得られた押出発泡体の特性を表2に示す。
【0109】
(比較例2)
ハロゲン系難燃剤(B)、含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物、含硫黄化合物(D)、発泡剤(E)、および他の発泡剤(F)の種類および添加量を表2に示す値とした以外は、実施例6と同様にして発泡体を得た。得られた押出発泡体の特性を表2に示す。
【0110】
【表2】

【0111】
本発明の実施例である実施例7〜12と比較例2を比較して明らかなように、本発明によれば、スチレン系樹脂発泡体中でのハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度(窒素気流下(50ml/分)、昇温速度10℃/分にて測定)を300℃以下とすることにより難燃性に優れた発泡体が得られると共に、スチレン系樹脂発泡体中でのハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度およびハロゲン化脂肪族基含有化合物の5%熱重量減少温度をさらに限定することにより、耐熱性、リサイクル性にも優れた発泡体が得られることが判る。さらに、含燐化合物、含窒素化合物および含ホウ素化合物の添加されていない実施例6と含燐化合物、含窒素化合物または含ホウ素化合物が添加されている実施例7〜12を比較して明らかなように、含燐化合物、含窒素化合物または含ホウ素化合物を添加することにより、発泡剤の燃焼が抑制され難燃性が向上することが判る。
【0112】
(実施例13)
スチレン系樹脂(A−1)100部に対して、ハロゲン系難燃剤としてテトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)(B−1)5部、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ru、Pd、Ag、Sn、W、Os、PtまたはCeの酸化物、ハロゲン化物および燐酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属化合物として酸化鉄(C−1)0.01部、含燐化合物としてトリフェニルホスフェート(D−1)1部、含窒素化合物としてイソシアヌル酸(D−2)2部、その他の添加剤として、タルク(G−1)0.2部、ステアリン酸バリウム(G−2)0.25部、ベントナイト(G−3)1部およびAEROSIL(G−4)0.01部とからなる混合物をドライブレンドし、得られた混合物を口径65mmと口径90mmの押出機を縦に連結した押出機へ約70kg/hrの割合で供給した。前記口径65mmの押出機に供給した混合物を、200℃に加熱して混練し、これに連結された口径90mmの押出機で樹脂温度を120℃に冷却して、口径90mmの押出機の先端に設けた厚さ方向2mmおよび幅方向50mmの長方形断面の口金より大気中へ押し出し、直方体状の押出発泡体を得た。
この際、発泡剤として、イソブタン(E−2)59%、ジメチルエーテル(F―1)29%および水(F−2)12%からなる発泡剤をスチレン系樹脂100部に対して6.8部となるように、前記口径65mmの押出機の先端付近(口径90mmの押出機の口金と反対側の端部側に接続される側の端部)から前記樹脂中に圧入した。
得られた押出発泡体の特性を表3に示す。
【0113】
(実施例14〜17)
ハロゲン系難燃剤(B)、含燐化合物、含窒素化合物(D)、発泡剤(E)、および他の発泡剤(F)の種類および添加量を表3に示す値とした以外は、実施例13と同様にして発泡体を得た。
得られた押出発泡体の特性を表3に示す。
【0114】
(比較例3)
ハロゲン系難燃剤(C)、含燐化合物、含窒素化合物(D)、発泡剤(E)、および他の発泡剤(F)の種類および添加量を表3に示す値とした以外は、実施例13と同様にして発泡体を得た。得られた押出発泡体の特性を表3に示す。
【0115】
【表3】

【0116】
本発明の実施例である実施例13〜17と比較例3を比較して明らかなように、本発明によれば、スチレン系樹脂発泡体中でのハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度(窒素気流下(50ml/分)、昇温速度10℃/分にて測定)を300℃以下とすることにより難燃性に優れた発泡体が得られると共に、スチレン系樹脂発泡体中でのハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度およびハロゲン化脂肪族基含有化合物の5%熱重量減少温度をさらに限定することにより、耐熱性、リサイクル性にも優れた発泡体が得られることが判る。さらに、他の発泡剤として水が添加されていない実施例8と他の発泡剤として水を用い、さらに他の添加剤としてベントナイトまたはAELOSILが添加されている実施例13〜17を比較して明らかなように、他の発泡剤として水を用い、さらに他の添加剤としてベントナイトまたはAELOSILを添加することにより、発泡体の発泡セル構造として気泡径が概ね0.25mm以下の比較的気泡径の小さい気泡(小気泡)と、気泡径が概ね0.3mmから1mm程度の比較的気泡径の大きな気泡(大気泡)が海島状に混在してなる特徴的な気泡構造であって、その小気泡面積率が35〜40%の気泡構造とすることにより、熱伝導率も低減し、更に断熱性が向上していることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明におけるスチレン系樹脂発泡体中でのハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度の測定方法を示している。熱重量測定装置を用い、スチレン系樹脂発泡体に対し熱重量法により測定した際の、測定試料重量を100%として縦軸にとり、温度を横軸にとった際の熱重量減少曲線において、難燃剤に由来すると確認される熱重量減少曲線における重量減少開始前の接線と、該重量減少曲線の最も傾きが大きい部分の接線との交点の温度を、スチレン系樹脂発泡体中でのハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度としている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン系難燃剤を含有するスチレン系樹脂発泡体であって、スチレン系樹脂発泡体中でのハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度(窒素気流下(50ml/分)、昇温速度10℃/分にて測定)が300℃以下であることを特徴とするスチレン系樹脂発泡体。
【請求項2】
スチレン系樹脂発泡体が押出発泡してなることを特徴とする請求項1記載のスチレン系樹脂発泡体。
【請求項3】
スチレン系樹脂発泡体中でのハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度が260〜280℃であることを特徴とする請求項1または2に記載のスチレン系樹脂発泡体。
【請求項4】
ハロゲン系難燃剤がハロゲン化脂肪族基含有化合物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体。
【請求項5】
ハロゲン化脂肪族基含有化合物の、5%熱重量減少温度(窒素気流下(50ml/分)、昇温速度10℃/分にて測定)が、250℃以上であることを特徴とする請求項4記載のスチレン系樹脂発泡体。
【請求項6】
ハロゲン化脂肪族基含有化合物が、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートおよび/またはテトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)であることを特徴とする請求項4または5記載のスチレン系樹脂発泡体。
【請求項7】
発泡剤として、炭化水素およびハロゲン化炭化水素からなる群より選ばれ、かつ、オゾン破壊係数が0である少なくとも1種の化合物を用いることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体。
【請求項8】
スチレン系樹脂発泡体中でのハロゲン系難燃剤の熱重量減少開始温度の、該ハロゲン系難燃剤単体の熱重量減少開始温度(該ハロゲン系難燃剤単体を窒素気流下(50ml/分)、昇温速度10℃/分にて測定)に対する低下幅が、5℃以上であるを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体。
【請求項9】
Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ru、Pd、Ag、Sn、W、Os、PtまたはCeの酸化物、ハロゲン化物および燐酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体。
【請求項10】
金属化合物が酸化鉄であることを特徴とする請求項9記載のスチレン系樹脂発泡体。
【請求項11】
発泡体を形成する気泡が、主として気泡径0.25mm以下の気泡および気泡径0.3〜1mmの気泡より構成されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体。
【請求項12】
スチレン系樹脂が、請求項1〜11のいずれかに記載のスチレン系樹脂発泡体を再生してなるスチレン系樹脂組成物を含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体。

【図1】
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【公開番号】特開2006−56998(P2006−56998A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−240306(P2004−240306)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】