説明

ステアリングロック装置

【課題】ロック状態でのステアリングへの係止寸法を確実に確保することができるステアリングロックの提供を目的とする
【解決手段】ステアリングコラム1に固定されるハウジング2と、
ハウジング2内に収容されてステアリングコラム1に開設されたアクセス開口3からステアリングコラム1に進入し、施解錠操作部4への操作によりステアリングシャフト5に係脱するロック部材6とを有し、
前記ロック部材6が適宜の付勢手段7によりステアリングシャフト5との係止位置側に付勢されるとともに、
該ロック部材6には、ステアリングコラム1に当接して該ロック部材6の係止位置側のストローク終端を決定するストッパ突部8が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロック部材をステアリングシャフトに係合させることによりステアリング操作を規制するステアリングロック装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。この従来例において、ロックシャフト(ロック部材)はハウジングに形成された摺動孔内に収容され、カムにより先端部がステアリングシャフトに係合するロック位置と、係合解除するアンロック位置との間で駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2003-2168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来例において、ロック部材のロック位置におけるステアリングコラムへの突出寸法は、カムの位置、すなわち、ステアリングロック装置側の寸法によって完全に決定されるために、例えば、ステアリングロック装置の取付け位置に誤差が生じると、突出寸法が不足する結果、ステアリングとのロック状における係止寸法が不足し、ロック強度が低下する可能性があるという問題がある。
【0005】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、ロック状態でのステアリングへの係止寸法を確実に確保することができるステアリングロック装置、およびステアリングロック部の構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ステアリングロック装置は、ステアリングコラム1に固定されるハウジング2と、ハウジング2内に収容されてステアリングコラム1に開設されたアクセス開口3からステアリングコラム1に進入し、施解錠操作部4への操作によりステアリングシャフト5に係脱するロック部材6とを有して構成される。
【0007】
ロック部材6は、適宜の付勢手段7によりステアリングシャフト5との係止位置(ロック位置)側に付勢されており、ロック位置側のストローク終端は、ロック部材6に形成されるストッパ突部8をステアリングコラム1に当接させて決定される。
【0008】
したがって本発明において、ステアリングロック装置のステアリングコラム1への取付け位置に誤差が発生しても、ロック部材6はストッパ突部8がステアリングコラム1に当接するまで移動するために、ステアリングシャフト5との係止寸法が確実に確保され、ロック強度が確保される。
【0009】
また、ロック部材6の突出方向のストローク規制をステアリングコラム1により行うことによって、ロック部材6を収容するためにハウジング2に形成されるロック収容開口9のアクセス開口3側開口端近傍にロック部材6の抜け止め部を設定する必要がなくなる。
【0010】
抜け止め部をロック収容開口9のアクセス開口3が開口端に設ける場合、ハウジング2を射出成形により形成するに際し、ロック収容開口9を、アクセス開口3側に開放された開口部として形成しようとすると、上記抜け止め部がアンダーカットとなるために、反対方向に開放した開口部として形成する必要がある。このような構造においては、ロック収容開口9の開放部、すなわち、アクセス開口3とは反対側からロック部材6を挿入した後、付勢手段7を挿入し、さらに、開放部を適宜の閉塞部材により閉塞する必要が生じ、閉塞部材の取付け作業が必要となる上に、閉塞部材による閉塞部は、ステアリングロック装置をステアリングコラム1に取付けた状態で外部からアクセス可能であるために、不正破錠操作を受けやすいという欠点につながる。
【0011】
これに対し、ロック収容開口9のアクセス開口3側開口端近傍にロック部材6の抜け止め部を設定する必要のない本発明において、ロック収容開口9を、アクセス開口3側に抜き方向が設定された金型、あるいはスライド型による成形が可能な当該抜き方向にアンダーカットとならない非アンダーカット開口部として形成することが可能になり、結果、アクセス開口3に対する反対端を成形時における閉塞壁として形成することが可能になり、不正なアクセス機会を与えないようにすることができる。
【0012】
さらに、前記ロック部材6は、施解錠操作により回転操作されるカムシャフト10にカム受け面11が圧接する従動カムとしてステアリングシャフト5との係止、係止解除位置間で駆動されるとともに、
カムシャフト10に干渉してステアリングコラム1への取付け前のロック収容開口9からの脱離が規制されるステアリングロック装置を構成すると、ステアリングロック装置にロック部材6の脱落防止手段を設ける必要がなくなる。
【0013】
また、ロック部材6のステアリングシャフト5との係止側ストローク終端が強度の高いステアリングコラム1との当接により決定されることによって、ロック部材6の係止側ストローク終端への移動が付勢手段7等の復元力を利用して行われても、例えば、ロック部材6を操作するカム等に衝接することが防止できる。
【0014】
この結果、前記施解錠操作部4は、解錠キー12により回転操作され、解錠回転操作によりロック部材6をステアリングシャフト5との係止解除位置に駆動するシリンダ錠13と、
前記シリンダ錠13によるロック部材6の係止解除位置への移動に伴って前記ロック部材6に形成されるレバー係止部14に弾発的に係止して該ロック部材6を係止解除位置に保持するとともに、解錠キー12のシリンダ錠13からの抜去に伴ってレバー係止部14との係止を解除してロック部材6をステアリングシャフト5との係止位置に移動させるチェックレバー15とを有するステアリングロック装置のように、解錠キー12の抜去をロック部材6によるロック動作の条件とした場合でもカム等への衝接による破損を原因とした不用意なステアリングのロック動作の排除を確実にすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ロック状態でのステアリングへの係止寸法を確実に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を示す断面図で、(a)は解錠キーを挿入しない状態を示す図、(b)は解錠キーを挿入した状態を示す図である。
【図2】図1(b)の2A-2A線断面図である。
【図3】ステアリングコラムへの装着前の状態を示す図で、(a)は断面図、(b)は(a)の3B方向矢視図、(c)は(b)の要部拡大図である。
【図4】ステアリングコラムへの装着状態を示す図で、(a)はロック状態を示す図、(b)はアンロック状態への移行途中を示す図、(c)はアンロック状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1以下に示すように、ステアリングロック装置は、後端にイグニッションスイッチ16が固定されるハウジング2内に、施解錠操作部4を構成するシリンダ錠13、およびチェックレバー15、さらには、カムシャフト10、ロック部材6を収容して形成され、車両側のステアリングコラム1に装着される。
【0018】
ステアリングコラム1には、ロック用凹部5aを備えたステアリングシャフト5が収容されており、ステアリングコラム1のロック用凹部5aと正対可能位置にアクセス開口3が開設される。
【0019】
図2に示すように、ステアリングロック装置のステアリングコラム1への固定は、ハウジング2から突設される位置決め突部2aをアクセス開口3に嵌合させた状態で、ハウジング2にフィクサフレーム17を連結することにより行われる。フィクサフレーム17の連結はボルト18を使用して行われる。
【0020】
上記シリンダ錠13は、ハウジング2内に固定されるシリンダケース13a内にプラグ13bを挿入して形成される。プラグ13bには複数のタンブラ13cが装着されており、真正な解錠キー12を挿入することによって回転操作が可能になる。このプラグ13bの前端部にはキー検知部材19が回転軸に対して直交方向に進退自在に装着される。
【0021】
カムシャフト10は、プラグ13bの後端に一直線状に連結され、プラグ13bの回転とともに回転する。このカムシャフト10の後端はイグニッションスイッチ16の入力部に連結され、プラグ13bへの回転操作によりイグニッションの操作が行われる。
【0022】
ロック部材6は中央部に上記カムシャフト10のカム部10aが挿通するカム開口20を備えた板状部材であり、ハウジング2に開設されたロック収容開口9に挿入される。図3に示すように、ロック収容開口9はカムシャフト10の回転軸に対して直交方向に延びて一端が上記位置決め突部2aの中央部に開放された開口部として形成され、ハウジングが亜鉛合金ダイカストにより製せられる本実施の形態において、ロック収容開口9は、有底で、金型抜き方向に対する非アンダーカット開口部として形成される。
【0023】
以上のように形成されるロック収容開口9内に収容されるロック部材6は、ロック収容開口9内をスライドして、図4(a)に示すように、一端がステアリングコラム1内に進入してステアリングシャフト5のロック用凹部5aに係止し、ステアリングをロックするロック位置と、図4(c)に示すように、ロック用凹部5aとの係止が解除されるアンロック位置との間を移動する。ロック部材6には、圧縮スプリング(付勢手段7)によってロック位置側への付勢力が付与される。
【0024】
また、ロック部材6には、ステアリングシャフト5の長手方向に対応する一側壁面にストッパ突部8が設けられ、ロック収容開口9には、ストッパ突部8を収容するストッパ収容部9aが延設される。図3(b)に示すように、ストッパ突部8は、先端が位置決め突部2aの周縁を超えて外部に飛び出す突出長を有しており、これに対応してストッパ収容部9aは、位置決め突部2aの周縁とロック収容開口9とにより形成される矩形枠の一辺部を横断するように形成される。
【0025】
さらに、上記ロック部材6には、ストッパ突部8の形成壁に対する対向壁面にレバー係止部14が形成され、チェックレバー15が係脱する。
【0026】
図1に示すように、チェックレバー15は、一端に上記プラグ13bのキー検知部材19に対応するキー検知突部15aを、他端にロック部材6のレバー係止部14の形成壁面に対応するロック規制部15bを備えた板状部材であり、中間部に形成された可動支点21周りに揺動自在に支承される。可動支点21は図1(a)において左右方向に移動自在であり、さらにチェックレバー15には、圧縮スプリング22によりキー検知突部15aをキー検知部材19に押し付ける方向の付勢力が与えられる。
【0027】
図1(a)に示すように、プラグ13bに解錠キー12が挿入されない状態において、プラグ13bのキー検知部材19は付勢力によりプラグ13b内方に押し付けられて埋没しており、チェックレバー15全体には、図1(a)において時計回りの回転力が付与される。この後、図1(b)に示すように、プラグ13bに解錠キー12を挿入すると、キー検知部材19は解錠キー12により排斥されてプラグ13b外方に向けて移動する。キー検知部材19の移動により、チェックレバー15には反時計回りの回転力が付与されるが、ロック規制部15bの移動がロック部材6により阻止されているために、可動支点21が図1(b)において右側に移動することにより変位量を吸収し、以後、圧縮スプリング22の付勢力は、ストッパ突部8をロック部材6の側壁に押し付ける力として作用する(図3参照)。
【0028】
この状態からロック部材6がアンロック位置に移動すると、チェックレバー15のロック規制部15bとロック部材6のレバー係止部14とは正対し、チェックレバー15は弾発的にレバー係止部に係合する(図4(c)参照)。
【0029】
図3に示すように、カムシャフト10のカム部10aには、直線状の第1カム面10bと、カムシャフト10の回転中心を中心とする円弧面から形成される第2カム面10cとが形成されるとともに、ロック部材6のカム開口20には、プラグ13bが施錠状態に対応する初期回転位置にあるときにカム部10aの第1カム面10bに対応するカム受け面11が形成される。
【0030】
図3に示すステアリングロック装置をステアリングコラム1に装着しない状態において、ロック部材6は、カム受け面11をカムシャフト10の第1カム面10bに当接させた状態でロック収容開口9からの脱離が規制されており、ストッパ突部8は、ハウジング2のコラム当接部2bの表面からやや突出(δ)している。
【0031】
この状態からステアリングロック装置をステアリングコラム1に装着すると、図4(a)に示すように、ストッパ突部8がステアリングコラム1に干渉することから、ロック部材6はやや原位置から押上げられ、第1カム面10bとカム受け面11との間に隙間(d)が発生する。このように、ステアリングコラム1への装着によって、ロック部材6のハウジング2からの突出方向のストローク、すなわち、ロック位置におけるストローク終端位置が決定される。
【0032】
この状態からプラグ13bを真正な解錠キー12により操作して解錠方向に回転操作すると、図4(b)に示すように、カム受け面11が第1カム面10bに押上げられ、ロック部材6はアンロック位置方向に移動する。さらに、プラグ13bを回転させてロック部材6がアンロック位置に達すると、上述したチェックレバー15がレバー係止部14に係止し、以後、ロック部材6の移動が規制される。
【0033】
ロック部材6がアンロック位置に移動してロック部材6の動作が拘束された状態でカム受け面11には第2カム面10cが当接し、さらにプラグ13bを、例えば”START”ポジション等に回転させることができる。また、図4(c)に示すように、プラグ13bをロック位置に復帰させた状態であっても、解錠キー12が抜去されるまではロック部材6はアンロック位置に保持される。解錠キー12の抜去により、ロック部材6は圧縮スプリング7の復元力によりストッパ突部8がステアリングコラム1に衝接するまで、移動してロック位置に移動するが、このとき、図4(a)に示すように、第1カム面10bとカム受け面11との間に設定される間隙(d)の存在により双方が衝接することがなく、衝接に伴う表層面の剥離等が完全に防がれる。
【符号の説明】
【0034】
1 ステアリングコラム
2 ハウジング
3 アクセス開口
4 施解錠操作部
5 ステアリングシャフト
6 ロック部材
7 付勢手段
8 ストッパ突部
9 ロック収容開口
10 カムシャフト
11 カム受け面
12 解錠キー
13 シリンダ錠
14 レバー係止部
15 チェックレバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングコラムに固定されるハウジングと、
ハウジング内に収容されてステアリングコラムに開設されたアクセス開口からステアリングコラムに進入し、施解錠操作部への操作によりステアリングシャフトに係脱するロック部材とを有し、
前記ロック部材が適宜の付勢手段によりステアリングシャフトとの係止位置側に付勢されるとともに、
該ロック部材には、ステアリングコラムに当接して該ロック部材の係止位置側のストローク終端を決定するストッパ突部が設けられるステアリングロック装置。
【請求項2】
前記ロック部材は、アクセス開口側に開放される有底、かつ、成形時における非アンダーカット開口部として形成されるロック収容開口に収容される請求項1記載のステアリングロック装置。
【請求項3】
前記ロック部材は、施解錠操作により回転操作されるカムシャフトにカム受け面が圧接する従動カムとしてステアリングシャフトとの係止、係止解除位置間で駆動されるとともに、
カムシャフトに干渉してステアリングコラムへの取付け前のロック収容開口からの脱離が規制される請求項2記載のステアリングロック装置。
【請求項4】
前記施解錠操作部は、解錠キーにより回転操作され、解錠回転操作によりロック部材をステアリングシャフトとの係止解除位置に駆動するシリンダ錠と、
前記シリンダ錠によるロック部材の係止解除位置への移動に伴って前記ロック部材に形成されるレバー係止部に弾発的に係止して該ロック部材を係止解除位置に保持するとともに、解錠キーのシリンダ錠からの抜去に伴ってレバー係止部との係止を解除してロック部材をステアリングシャフトとの係止位置に移動させるチェックレバーとを有する請求項1、2または3記載のステアリングロック装置。
【請求項5】
ハウジング内にロック部材を収容したステアリングロック装置をステアリングコラムに固定し、ステアリングコラムに開設されたアクセス開口から進入するロック部材をステアリングコラム内のステアリングシャフトに係脱させてステアリングシャフトをロック、アンロックするステアリングロック部の構造であって、
前記ロック部材はステアリングシャフトとの係止位置方向に付勢されるとともに、
係止位置側のストローク終端位置が、ステアリングコラムとの当接により決定されるステアリングロック部の構造。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−213248(P2011−213248A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83595(P2010−83595)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000170598)株式会社アルファ (433)
【Fターム(参考)】