説明

ステアリング装置のトルクセンサ

【課題】 ステアリング装置のトルクセンサの小型化を図る。
【解決手段】 ステアリング装置を構成する第1、第2軸2、3と、前記第1、第2軸間に接続されるトーションバー4とを備えるステアリング装置において、前記トーションバーを中心にして、複数の棒状の磁石が前記トーションバーを囲むようにリング状に配置され、かつ前記第1、第2軸の一方に固定されてなる磁石体5と、磁石体を軸方向から所定間隙を持って挟み込むように配置され、前記第1、第2軸の他方に固定される一対の磁気ヨーク6と、この一対の磁気ヨークの外周側に位置して軸方向に所定の間隙を持って配置される一対の集磁リング10、11と、この集磁リングの間隙に配置される磁気センサ7とを備え、この磁気センサの出力に基づきステアリング装置に作用するトルクを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクセンサ、特に車両のパワーステアリング装置に用いられるトルクセンサの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のパワーステアリング装置に設置されるトルクセンサの一例として、電気的な接触部を備えることなく、ホール素子を用いてトルクを検出する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−149062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来技術においては、トルクセンサの磁石部分(硬磁性体)及び磁気ヨーク(軟磁性体)を径方向に配置しているため、磁石部分の外側に配置される磁気ヨークの径が大型化することになり、車両搭載時のレイアウト性が低下することになる。また、磁気ヨークの爪の形状が複雑で、製造コストの上昇を招く恐れがある。
【0004】
そこで本発明は、トルクセンサの車両搭載性を向上させるとともに、コスト低下を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ステアリング装置を構成する第1、第2軸と、前記第1、第2軸間に接続されるトーションバーとを備えるステアリング装置において、前記トーションバーを中心にして、複数の棒状の磁石が前記トーションバーを囲むようにリング状に配置され、かつ前記第1、第2軸の一方に固定されてなる磁石体と、磁石体を軸方向から所定間隙を持って挟み込むように配置され、前記第1、第2軸の他方に固定される一対の磁気ヨークと、この一対の磁気ヨークの外周側に位置して軸方向に所定の間隙を持って配置される一対の集磁リングと、この集磁リングの間隙に配置される磁気センサとを備え、この磁気センサの出力に基づきステアリング装置に作用するトルクを検出する。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、一対の磁気ヨークによって磁石体を軸方向から挟み込むように配置するため、磁気ヨーク及び磁石体の径方向寸法の大型化を抑制することができ、車両搭載時にレイアウト性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0008】
図1はトルクセンサ1の分解図、図2はトルクセンサ1の軸方向断面図である。本発明のトルクセンサ1は、例えば車両の電動式パワーステアリング装置に用いられるもので、ハンドルに接続されるステアリングシャフトを構成する入力(第1)軸2と出力(第2)軸3との間に設けられる。トルクセンサ1は、そのステアリングシャフトの入力軸2と出力軸3間の相対ねじり角に基づいて操舵トルクを検出している。
【0009】
トルクセンサ1は、入力軸2と出力軸3とを同軸上に連結するトーションバー4と、入力軸2の端部(またはトーションバー4の一端側)に取り付けられるリング状の磁石体5、出力軸3の端部(またはトーションバー4の他端側)に取り付けられる一組の磁気ヨーク6、磁石体5や一対の磁気ヨーク6を収装する一対の集磁リング10、11と、集磁リング10、11間に生じる磁束密度を検出する磁気センサとしてのホール素子7等より構成される。ここで、磁性体5と磁気ヨーク6と集磁リング10、11とにより磁気回路が形成される。
【0010】
トーションバー4は、両端がそれぞれスプライン結合等により入力軸2と出力軸3とに固定され、所定の捩じれ/トルク特性を有している。従って、入力軸2と出力軸3は、トーションバー4が捩じれを生じることで相対的に回動することができる。
【0011】
中心にトーションバー4が配置される磁石体5は、図3に示すように、棒状の各磁石5aが軸方向に設置されて全体としてリング状に形成され、構成する各磁石5aは軸方向にS極とN極とが着磁され、隣接する極性が異なるように設置されている。
【0012】
一組の磁気ヨーク6(6a、6b)は、図2に示すように、磁石体5の軸方向端面5aに面して配置される環状体で、それぞれ磁石体5のN極及びS極の数に応じた数の凸部6cが全周にわたり等間隔に磁石体5の端面5aに面して設けられている。この一組の磁気ヨーク6は、図示しない固定部により一体的に位置決めされている。磁気ヨークを固定する固定部は、例えば、非磁性材のモールド等により一組の磁気ヨーク6を一体的に固定する。
【0013】
また、一組の磁気ヨーク6と磁石体5は、トーションバー4に捩じれが生じていない状態(入力軸2と出力軸3との間に捩じれトルクが加わっていない時)で、各磁気ヨーク6に設けられた凸部6cの中心と隣接する磁石体5のN極とS極との境界とが一致するように配置されている(図4(c)参照)。ここで、凸部6cは、台形状や四角形状に構成され、製造性を考慮した形状としているため、磁気ヨーク6の製造コストを抑制することができる。
【0014】
集磁リング10、11は、磁石体5と磁気ヨーク6の外周側に設置される有底円筒状の部材であり、その開口端が互いに面するように設置される。集磁リングの底部12には孔12aが形成され、この孔12aは所定間隔を有して磁気ヨーク6の磁石体5に対向する面の反対面の外周部に面して設置される。
【0015】
磁気センサ7は、図2に示す様に、軸方向に対向する一方の集磁リング10と他方の集磁リング11との間に設けられる間隙Cの間に挿入され、両集磁リング間に生じる磁束密度を検出する。ここで、この磁気センサ7は、集磁リング10、11の間に、図示しないステアリングブラケット等の所定の位置に固定されている。磁気センサ7としては、例えばホール素子、ホールIC、磁気抵抗素子等を使用することができ、検出した磁束密度を電気信号(例えば電圧信号)に変換して出力する。また、集磁リング10、11には、効率よく集磁するための軸方向に凸部10a、11aが形成されて、各凸部は対面して設置され、この凸部間に磁気センサ7が設置される。
【0016】
次に、本実施形態の作動を説明する。
【0017】
入力軸2と出力軸3との間に捩じれトルクが負荷されていない状態、つまりトーションバー4が捩じれていない中立位置では、図4(c)に示すように、磁気ヨーク6に設けられた凸部6cの中心と磁石体5のN極とS極との境界とが一致している。この場合、各磁気ヨーク6の凸部6cには、磁石体5のN極とS極から同数の磁力線が出入りするため、一方の磁気ヨーク6aと他方の磁気ヨーク6bの内部でそれぞれ磁力線が閉じている。従って、集磁リング10、11間に磁束が洩れることはなく、磁気センサ7で検出する磁束密度は0となる。
【0018】
入力軸2と出力軸3との間に捩じれトルクが負荷されて、トーションバー4に捩じれが生じると、入力軸2に固定された磁石体5と出力軸3に固定された一組の磁気ヨーク6との相対位置が周方向に変化する。これにより、図4(a)または(b)に示すように、磁気ヨーク6に設けられた凸部6cの中心と磁石体5のN極とS極との境界とが一致しなくなるため、各磁気ヨーク6には、N極またはS極の極性を有する磁力線が増加する。
【0019】
この時、一方の磁気ヨーク6aと他方の磁気ヨーク6bは、それぞれ逆の極性を有する磁力線が増加するので、一方の集磁リング10と他方の集磁リング11との間に磁束密度が発生する。この磁束密度は、トーションバー4の捩じれ量に略比例し、かつトーションバー4の捩じれ方向に応じて極性が反転する。この磁束密度を磁気センサ7で検出し、電圧信号として取り出し、トルクを検出することができる。
【0020】
本実施形態のトルクセンサ1は、ステアリング装置を構成する第1、第2軸2、3と、前記第1、第2軸間に接続されるトーションバー4とを備えるステアリング装置において、前記トーションバー4を中心に配置し、複数の棒状の磁石5aを前記トーションバー4を囲むようにリング状に構成し、前記第1、第2軸2、3の一方に固定される磁石体5と、磁石体5を軸方向から所定間隙を持って挟み込むように配置され、前記第1、第2軸の他方に固定される一対の磁気ヨーク6a、6bと、この一対の磁気ヨークの外周側に位置して軸方向に所定の間隙を持って配置される一対の集磁リング10、11と、この集磁リング10、11の間隙Cに配置される磁気センサ7とを備え、この磁気センサ7の出力に基づきステアリング装置に作用するトルクを検出するため、トーションバー4に捩じれが生じて、磁石体5と一組の磁気ヨーク6との相対位置が周方向に変化すると、一組の集磁リング間の全周で磁束密度が変化する。即ち、一組の集磁リング間の全周で同一強度の磁束密度を検出できる。
【0021】
従って、一方の集磁リング10と他方の集磁リング11とが対向する間隙C内に磁気センサ7を挿入することで、集磁リングに接触することなく、集磁リング間の磁束密度を検出することができる。これにより、磁気センサ7に対し電気的な接触部(例えばスリップリングとブラシ)を設ける必要がないので、信頼性の高いトルクセンサ1を提供できる。
【0022】
また、本発明においては、磁石体5を一対の磁気ヨーク6で軸方向に挟み込むように設置したので、径方向寸法を小型化することができ、車両レイアウトに優位である。さらに磁石体5は、棒状の各磁石を軸方向に配置し、これら磁石を環状に積層して形成したので、リング磁石の径寸法を小型化することができる。
【0023】
また、磁石体5と一対の磁気ヨーク6と磁気回路を形成する一対の集磁リング10、11を設け、集磁リング10、11間に磁気センサ7を設置したので、集磁リング間の磁束密度を検出することができる。
【0024】
集磁リングには、軸方向に突出する凸部10a、10bをそれぞれ設け、この凸部10a、10bに磁束を集中させ、形成した凸部間に磁気センサを設置したので、凸部10a、10bに集磁することができ、精度よく磁束密度を検出することができる。
【0025】
磁石体を構成する各磁石の極性は、隣接する磁石の極性と異なるように配置されるため、磁石体の両側に位置する磁気ヨークがトーションバーの捩れにより相対変位を生じたときに磁束密度が変化し、結果として集磁リングの磁束密度として磁気センサによりトルクを検出することができる。
【0026】
磁気ヨークは、磁石体に面する端面に複数の凸部を磁石体に向けて等間隔に形成したので、凸部に磁力線を集中させて、磁束密度の変化をより精度よく検出することができる。
【0027】
磁気ヨークに形成する凸部は、台形状または四角形状を有するので、製造効率が高く、コストの低減を図ることができる。
【0028】
集磁リングは、磁気ヨークの磁石体に面する端面の反対面近傍の外周面に面して位置するため、磁気ヨークの磁石体から離れた端部から集磁リングに磁束が流れるため、磁束密度を正確に検出することができる。
【0029】
集磁リングは、互いに面する端面に凸部を形成し、この凸部間に前記磁気センサを設置するため、磁束を凸部に集中させて磁束密度を検出するため、精度よく磁束密度を検出することができる。
【0030】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のステアリング装置のトルクセンサは、小型化を図ることで車載性を向上することができるため、車両のステアリング装置に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態を示すトルクセンサの分解図である。
【図2】トルクセンサの軸方向断面図である。
【図3】磁石体の概略図である。
【図4】トルクセンサの磁力線の説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 トルクセンサ
2 入力軸
3 出力軸
4 トーションバー
5 磁石体
5a 磁石
6 磁気ヨーク
6a 凸部
7 磁気センサ
10 集磁リング
10a 凸部
11 集磁リング
11a 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリング装置を構成する第1、第2軸と、
前記第1、第2軸間に接続されるトーションバーと、
を備えるステアリング装置において、
前記トーションバーを中心にして、複数の棒状の磁石が前記トーションバーを囲むようにリング状に配置され、かつ前記第1、第2軸の一方に固定されてなる磁石体と、
磁石体を軸方向から所定間隙を持って挟み込むように配置され、前記第1、第2軸の他方に固定される一対の磁気ヨークと、
この一対の磁気ヨークの外周側に位置して軸方向に所定の間隙を持って配置される一対の集磁リングと、
この集磁リングの間隙に配置される磁気センサとを備え、
この磁気センサの出力に基づきステアリング装置に作用するトルクを検出することを特徴とするステアリング装置のトルクセンサ。
【請求項2】
前記磁石体と前記一対の磁気ヨークと前記集磁リングとで磁気回路を構成することを特徴とする請求項1に記載ステアリング装置のトルクセンサ。
【請求項3】
前記磁気センサは、ホール素子またはホールICまたは磁気抵抗素子からなることを特徴とする請求項1または2に記載ステアリング装置のトルクセンサ。
【請求項4】
前記磁石体を構成する各磁石の極性は、隣接する磁石の極性と異なるように配置されることを特徴とする請求項1に記載ステアリング装置のトルクセンサ。
【請求項5】
前記磁気ヨークは、前記磁石体に面する端面に複数の凸部を前記磁石体に向けて等間隔に形成したことを特徴とする請求項1に記載ステアリング装置のトルクセンサ。
【請求項6】
前記磁気ヨークに形成する凸部は、台形状または四角形状を有することを特徴とする請求項5に記載のステアリング装置のトルクセンサ。
【請求項7】
前記集磁リングは、前記磁気ヨークの前記磁石体に面する端面の反対面近傍の外周面に面して位置することを特徴とする請求項5に記載のステアリング装置のトルクセンサ。
【請求項8】
前記集磁リングは、互いに面する端面に凸部を形成し、この凸部間に前記磁気センサを設置することを特徴とする請求項1または7に記載のステアリング装置のトルクセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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