ステアリング装置
【課題】四輪車両において、位相調整およびトー角調整可能な非円形歯車組式ステアリング装置を提供する。
【解決手段】操舵力は入力軸8aから減速機8に至り、これによる減速後に転舵軸設定部材側非円形歯車7および車輪支持部材側非円形歯車6を経て車輪支持部材2に達し、これを介して転舵輪1が転舵軸中心01の周りに転舵される。かかるステアリング装置の車体組み付け後のトー角調整に際しては、ステアリングホイールを含む回転系と、減速機入力軸8aとの回転位相を調整して両者を一体結合させ、この位相調整中における非円形歯車組6,7の回転に伴う転舵輪支持部材2および転舵輪1の非転舵中立位置からのずれ(トー角のずれ)を、ナット12の回転による伸縮部材11の伸縮で転舵軸設定部材3の対応方向への回転を介してゼロとなるようにする。
【解決手段】操舵力は入力軸8aから減速機8に至り、これによる減速後に転舵軸設定部材側非円形歯車7および車輪支持部材側非円形歯車6を経て車輪支持部材2に達し、これを介して転舵輪1が転舵軸中心01の周りに転舵される。かかるステアリング装置の車体組み付け後のトー角調整に際しては、ステアリングホイールを含む回転系と、減速機入力軸8aとの回転位相を調整して両者を一体結合させ、この位相調整中における非円形歯車組6,7の回転に伴う転舵輪支持部材2および転舵輪1の非転舵中立位置からのずれ(トー角のずれ)を、ナット12の回転による伸縮部材11の伸縮で転舵軸設定部材3の対応方向への回転を介してゼロとなるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の操舵系に用いるのに有用なステアリング装置に関し、特に、非円形歯車組を介して車輪を転舵するようにしたステアリング装置の改良提案に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種ステアリング装置としては従来、例えば特許文献1に記載のようなものが知られている。
この特許文献1に記載のステアリング装置は、ステアリングホイール等からの操舵入力を非円形歯車組により車輪の転舵角に変換して、車輪の転舵を行うものである。
【0003】
なお非円形歯車組は、仮想二輪車を想定し、この仮想二輪車の後輪を原点(0,0)、後輪の車軸に沿った座標軸をξ軸、後輪の前進方向に沿った座標軸をη軸とする直交座標(ξ,η)を用いて、
仮想二輪車の操舵車輪Soの座標を(0,1)とし、実在する操舵車輪Sjの座標を(ξj,ηj)とし、仮想操舵車輪Soの操舵角をθo、実操舵車輪Sjの操舵角をθjで表すとき、
両非円形歯車のピッチ曲線が、contθo-ηj・contθj=ξjを満たしつつ、互いに噛合うよう定められたものである。
【0004】
かかる非円形歯車組を用いて車輪を転舵するようにしたステアリング装置によれば、車両の旋回中心を任意の点に設定できるため、例えば車両の小回り性能を大幅に向上させることができる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3237872号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のステアリング装置を四輪車両に用いる場合は、このステアリング装置により転舵される左右転舵輪の直進方向に対する角度、いわゆるトー角を調整する必要があるため、以下の問題を生ずる。
【0007】
つまり上記のステアリング装置にあっては、ステアリングホイールの操舵(回転)力を、ステアリングホイールから転舵輪まで全系統に亘って回転運動のまま伝達する必要があり、このため、ステアリングホイール回転位置と転舵輪の転舵角との間で回転方向の位相を合わせる位相調整(トー角調整)が不可欠である。
【0008】
そのためのトー角調整機構がない場合、ステアリング装置を車両に組み付けたとき、左右転舵輪のトー角をステアリングホイールの回転位置に対し設定範囲内に合わせることが困難である。
しかし、上記した従来のステアリング装置においては、転舵輪のトー角調整について何らの提案もしておらず、四輪車両に用いるときに必要な転舵輪のトー角調整を行うことがきないという問題を生ずる。
【0009】
本発明は、非円形歯車組を用いたステアリング装置を、転舵輪のトー角調整が可能となるよう改良して、四輪車両の操舵系にも用い得るようになし、これにより上述の問題を解消した非円形歯車式ステアリング装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のため、本発明によるステアリング装置は、請求項1に記載のごとく、
転舵輪を回転自在に支持した車輪支持部材と、
該車輪支持部材を介し転舵輪を転舵可能に支持して車体に懸架された転舵軸設定部材と、
前記車輪支持部材を前記転舵軸周りに回転させる車輪支持部材側非円形歯車と、
この車輪支持部材側非円形歯車に操舵力を伝達すべく該車輪支持部材側非円形歯車に噛合させて前記転舵軸設定部材に回転自在に設けた転舵軸設定部材側非円形歯車と、
前記転舵輪のトー角を調整可能なトー角調整手段とを設けて構成したものである。
【発明の効果】
【0011】
かかる本発明のステアリング装置によれば、操舵力伝達系が、転舵輪を回転自在に支持した車輪支持部材を転舵軸周りに回転させる車輪支持部材側非円形歯車と、車輪支持部材を介し転舵輪を転舵可能に支持する転舵軸設定部材に回転自在に設けられて上記車輪支持部材側非円形歯車に噛合する転舵軸設定部材側非円形歯車とを有するため、
これら非円形歯車の設定次第で車両の旋回中心を任意の点に設定でき、例えば車両の小回り性能を大幅に向上させることができる。
【0012】
しかも本発明のステアリング装置は、転舵輪のトー角を調整可能にするトー角調整手段を具えるため、
非円形歯車組を用いたステアリング装置を四輪車両に組み付けたときに必要な調整、つまり転舵輪のトー角をステアリングホイールの回転位置に対し設定範囲内に合わせる位相調整が可能であり、四輪車両の操舵系にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施例になるステアリング装置を、車両の前方から見て示す正面図である。
【図2】図1におけるステアリング装置を車両上方から見て示す平面図である。
【図3】図1,2におけるステアリング装置のトー角調整用伸縮部材を例示する断面図である。
【図4】図1,2におけるステアリング装置を、位相調整中の状態で示す、図2と同様な平面図である。
【図5】図4に示す位相調整による転舵輪のトー角変化状況を説明するための、図2と同様な平面図である。
【図6】図5のトー角変化を調整している時における状況を説明するための、図2と同様な平面図である。
【図7】図1,2のステアリング装置における非円形歯車組の設計上の非転舵中立噛み合い位置を示す歯車組噛合状態説明図である。
【図8】図1,2のステアリング装置における非円形歯車組のギヤ比変化特性を示す特性線図である。
【図9】図1,2におけるステアリング装置の位相調整およびトー角調整後における非円形歯車組の非転舵中立噛み合い位置を示す歯車組噛合状態説明図である。
【図10】図9のように非円形歯車組の非転舵中立噛み合い位置がずれた場合における非円形歯車組のギヤ比変化特性を示す特性線図である。
【図11】図1,2に示す第1実施例における非円形歯車組の非転舵中立噛み合い位置を示す歯車組噛合状態説明図で、 (a)は、位相調整およびトー角調整前における非円形歯車組の非転舵中立噛み合い位置を示す歯車組噛合状態説明図、 (b)は、位相調整後における非円形歯車組の非転舵中立噛み合い位置を示す歯車組噛合状態説明図、 (c)は、位相調整およびトー角調整後における非円形歯車組の非転舵中立噛み合い位置を示す歯車組噛合状態説明図である。
【図12】図11のように位相調整およびトー角調整を行ったときにおける非円形歯車組のギヤ比変化特性を示す特性線図である。
【図13】大舵角時に操舵に対する転舵輪の切れ角が大きくなるように設定した場合の非円形歯車組のギヤ比変化特性を示す特性線図である。
【図14】図13のように非円形歯車組のギヤ比変化特性を設定する場合において好適な中立近辺のギヤ比変化特性を示す特性線図である。
【図15】図14のように非円形歯車組のギヤ比変化特性を設定する場合において好適な内輪側噛み合い領域のギヤ比変化特性を示す特性線図である。
【図16】図14のように非円形歯車組のギヤ比変化特性を設定する場合において好適な外輪側噛み合い領域のギヤ比変化特性を示す特性線図である。
【図17】図15,16のように非円形歯車組のギヤ比変化特性を設定する場合における内輪側噛み合い領域の転舵角と、外輪側噛み合い領域の転舵角との相関関係を示す、内外輪側転舵角比較線図である。
【図18】本発明の第2実施例になるステアリング装置を車両上方から見て示す、図2と同様な平面図である。
【図19】本発明の第3実施例になるステアリング装置を車両上方から見て示す、図2と同様な平面図である。
【図20】図19に示す第3実施例のステアリング装置における非円形歯車組の非転舵中立噛み合い位置を示す歯車組噛合状態説明図で、 (a)は、位相調整およびトー角調整により非転舵中立噛み合い位置がずれた状態を示す歯車組噛合状態説明図、 (b)は、かかる非転舵中立噛み合い位置のずれを転舵軸設定部材の並進および回転によりなくした状態を示す歯車組噛合状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図示の第1実施例〜第3実施例に基づき詳細に説明する。
<第1実施例の構成>
図1,2は、本発明の第1実施例になるステアリング装置を示し、図1は、車両前方から右前輪(右転舵輪)の転舵部を見て示す正面図、図2は、同転舵部の平面図である。
【0015】
本実施例においては、右前輪(右転舵輪)1を車輪支持部材(ナックル)2に回転自在に支持する。
この車輪支持部材(ナックル)2を図1に明示するごとく、転舵軸中心O1の周りで揺動可能となるよう転舵軸設定部材(アップライト)3に支持する。
【0016】
転舵軸設定部材(アップライト)3は、ストラットを含むアッパーリンク4およびロアリンク5により車体に上下方向へストローク可能に懸架する。
この懸架に当たっては、上記の転舵軸中心O1が路面L(図1参照)に対し所定の角度で傾斜するよう当該転舵軸設定部材(アップライト)3の懸架を行う。
従って右前輪(右転舵輪)1は、車輪支持部材(ナックル)2および転舵軸設定部材(アップライト)3を介し、車体に転舵可能に懸架する。
【0017】
車輪支持部材(ナックル)2には、これと共に転舵軸中心O1の周りに回転する車輪支持部材側非円形歯車6を設ける。
転舵軸設定部材(アップライト)3には、転舵軸設定部材側非円形歯車7を設け、この転舵軸設定部材側非円形歯車7を、転舵軸中心O1に平行な軸線O2の周りで自由に回転し得るようにして、また車輪支持部材側非円形歯車6に噛合させて転舵軸設定部材(アップライト)3に支持する。
【0018】
ここで車輪支持部材側非円形歯車6および転舵軸設定部材側非円形歯車7は、両者間噛合領域の変化につれてギヤ比が変化する仕様とし、
これによりステアリングホイール操舵角が左右方向同じであっても、転舵輪1が内輪となる方向へ転舵される場合の内輪転舵角と、転舵輪1が外輪となる方向へ転舵される場合の外輪転舵角との間に、所定の転舵角度差を設定する。
【0019】
転舵軸設定部材(アップライト)3には更に、転舵軸設定部材側非円形歯車7に駆動結合した交差軸式減速機8を固設し、
その入力軸8aは図2に示すごとく、カップリング9を介してステアリングシャフト10にスプライン結合させる。
なおステアリングシャフト10は、図示せざるステアリングホイールからの操舵力を回転力として入力されるものとする。
【0020】
図1,2に示すごとく、転舵軸設定部材3およびロアリンク5間に、本発明のトー角調整手段を構成する伸縮部材11を架設する。
この伸縮部材11は図3に明示するごとく、一対のロッド11a,1bを同軸に突き合わせ、これらロッド11a,1bの突き合わせ部外周に形成した相互逆向きの雄ねじに調整ナット12を螺合させて構成する。
【0021】
よって伸縮部材11は、ナット12の一方向回転によりロッド11a,1bを相互に離反させることで伸張し、ナット12の他方向回転によりロッド11a,1bを相互に接近させることで収縮する。
かようにして伸縮部材11が全長を変化されるとき、転舵軸設定部材3を介して転舵輪1をトー角変化させ得るよう、伸縮部材11は車両上方から見て図2の平面図に示すごとくに傾斜させる。
【0022】
<第1実施例の作用>
ステアリングホイールによる操舵でステアリングシャフト10(図2参照)が回転されると、この回転が入力軸8aから減速機8に至り、これによる減速後に転舵軸設定部材側非円形歯車7に達して、この転舵軸設定部材側非円形歯車7を軸線O2の周りで対応方向へ回転させる。
【0023】
転舵軸設定部材側非円形歯車7の回転は、これと噛合している車輪支持部材側非円形歯車6に達し、かかる車輪支持部材側非円形歯車6の回転により車輪支持部材2を介し転舵輪1を転舵軸中心O1の周りで対応方向へ、ステアリングホイール操舵角および非円形歯車組6,7のギヤ比に応じた角度だけ転舵することができる。
【0024】
<第1実施例のトー角調整>
転舵輪1、車輪支持部材2、転舵軸設定部材3、非円形歯車組6,7、および減速機8を図4に示すごとく車体に組み付けた後は、先ず同図に示すように、ステアリングホイールを中立位置にしてステアリングシャフト10をこれに対応した回転位置となした状態で、転舵輪1を非転舵中立位置近辺にして減速機8の入力軸8aを矢印で示すように回転させる。
このとき、入力軸8aの外周スプライン歯がカップリング9の内周スプライン溝と整列するよう入力軸8aの回転位置をステアリングシャフト10(カップリング9)に対し位相調整する。
【0025】
かかる位相調整後、図5に示すようにカップリング9を軸線方向へスライドさせて入力軸8a上にスプライン嵌合し、これによりステアリングシャフト10と減速機8の入力軸8aとの一体結合を行う。
上記した減速機入力軸8aの回転位置調整中、非円形歯車組6,7も対応方向へ回転し、それにともなって転舵輪支持部材2および転舵輪1も非転舵中立位置から、例えば図5に矢印で示す方向へ回転変位することがある。
【0026】
この場合、図6に示すように調整ナット12を伸縮部材11が伸張される方向へ回転させ、これにより転舵軸設定部材3を対応方向へ回転させる。
かかる転舵軸設定部材3の回転により転舵輪1は、そのトー角を非転舵中立位置相当の0となるよう調整され得る。
よって本実施例においては、非円形歯車組6,7を用いたステアリング装置を四輪車両に組み付けたときに必要な転舵輪1のトー角をステアリングホイールの回転位置に対し設定範囲内に合わせる位相調整が可能であり、四輪車両の操舵系にも用いることができる。
【0027】
なお完成車のメインテナンスで、転舵輪1のトー角調整を行いたい場合は、図6につき上述したと同様に、調整ナット12の回転により伸縮部材11を伸張、または伸縮させるのみで、転舵輪1のトー角調整を簡単に行うことができる。
【0028】
<非円形歯車組の噛合位置ずれ対策について>
前記したような位相調整やトー角調整を行うと、非円形歯車組6,7の非転舵中立噛み合い位置が図7に示す設計上の非転舵中立噛み合い位置からずれる場合がある。
ステアリングホイール操舵角が0の中立位置のとき非円形歯車組6,7の相互噛合位置が図7に示すように設計上の非転舵中立噛み合い位置であって、非円形歯車組6,7のギヤ比が図8のように設計されている場合につき、非円形歯車組6,7の噛合位置ずれを以下に説明する。
【0029】
なお図7,8における(+)は、非円形歯車組6,7を転舵輪(左前輪)1が外輪となるよう(右転舵されるよう)回転させるときにおける非円形歯車組6,7の外輪側噛み合い領域(図7の実線矢印側の噛み合い領域)を示し、また(−)は、非円形歯車組6,7を転舵輪(左前輪)1が内輪となるよう(左転舵されるよう)回転させるときにおける非円形歯車組6,7の内輪側噛み合い領域(図7の破線矢印側の噛み合い領域)を示す。
【0030】
前記した位相調整やトー角調整により非円形歯車組6,7の非転舵中立噛み合い位置が図7に示す設計上の非転舵中立噛み合い位置から、図9に示すごとく内輪側噛み合い領域の噛み合い位置にずれた場合、
図8と同じ図10のギヤ比特性上において、ステアリングホイール操舵角=0の時における非転舵中立噛み合い位置が、破線位置で示す設計上の非転舵中立位置から内輪側噛み合い領域における実線位置へとずれる。
【0031】
ところで、非円形歯車組6,7の歯車回転角に対するギヤ比の変化特性は図8,10に示すように、歯車回転角=0の中立位置近辺を境に内輪側噛み合い領域に向かうにつれギヤ比を小さくするのが常套で、そのため、内輪側噛み合い領域では外輪側噛み合い領域よりも、設計上の非転舵中立噛み合い位置付近におけるギヤ比の変化割合が大きい。
【0032】
このため、ステアリングホイール操舵角=0の時における非転舵中立噛み合い位置が、図10に示すように破線位置で示す設計上の非転舵中立位置から内輪側噛み合い領域における実線位置へとずれたのでは、
ステアリングホイール操舵角の変化に対する転舵輪1の転舵角変化が大きくなってしまい、ステアリングホイール操舵角を0にした直進走行中において転舵応答性が敏感になってしまい、直進走行安定性が悪くなるという問題を生ずる。
【0033】
そこで本実施例においては、図11(a)に示すごとく前記位相調整およびトー角調整を行う前において、非円形歯車組6,7の非転舵中立噛み合い位置が、設計上の非転舵中立噛み合い位置よりも所定量だけ外輪側噛み合い領域(+領域)寄りにずれるよう非円形歯車組6,7を構成配置する。
【0034】
ここで所定量は以下のように定める。
前記した位相調整およびトー角調整により非円形歯車組6,7の非転舵中立噛み合い位置が設計上の非転舵中立噛み合い位置からずれる最大量はカップリング9(図2参照)のスプライン歯ピッチで決まり、例えば図12にαで示すごとくに予め判る。
そこで上記の所定量は、図9につき前述した非転舵中立噛み合い位置のずれによっても、この非転舵中立噛み合い位置が決して内輪側噛み合い領域に入ることのないようなものとする。
【0035】
かかる本実施例の構成によれば、前記した位相調整により非円形歯車組6,7の非転舵中立噛み合い位置が内輪側噛み合い領域方向へずれても、この非転舵中立噛み合い位置は図11(b)に示すごとく依然として外輪側噛み合い領域にあり、
その後の前記したトー角調整により非円形歯車組6,7の非転舵中立噛み合い位置が更に内輪側噛み合い領域方向へずれても、この非転舵中立噛み合い位置は図11(c)に示すごとく依然として外輪側噛み合い領域に保たれ、決して内輪側噛み合い領域に入ることがない。
【0036】
このため本実施例では、図8と同じ図12のギヤ比特性上において、ステアリングホイール操舵角=0の時における非円形歯車組6,7の非転舵中立噛み合い位置が、前記の位相調整およびトー角調整によっても、白抜き丸印で示す位相調整およびトー角調整前の位置から黒丸印で示す位置へとずれるだけで、破線位置で示す設計上の非転舵中立位置よりも内輪側噛み合い領域にずれることはない。
よって、位相調整およびトー角調整後もステアリングホイール操舵角の変化に対する転舵輪1の転舵角変化が大きくなることがなく、ステアリングホイール操舵角を0にした直進走行中に転舵応答性が敏感になってしまい、直進走行安定性が悪くなるという問題を解消することができる。
【0037】
なお、大舵角時にステアリングホイール操舵角に対する転舵輪の転舵角を大きくして、少ないステアリングホイール操舵量で転舵輪を大きく転舵したい要求に対しては、非円形歯車組6,7のギヤ比を図13に示すごとく、歯車回転角が大きくなるにつれ小さくすることで上記の要求を満足させることができる。
【0038】
しかしかかるギヤ比特性にもかかわらず、図11につき上述した要領で、位相調整およびトー角調整後における非円形歯車組6,7の非転舵中立噛み合い位置が図13の丸印で示す位置となるようにした場合、
外輪側噛み合い領域のギヤ比変化割合が内輪側噛み合い領域のギヤ比変化割合よりも大きくなり、ステアリングホイール操舵角を0にした直進走行中に転舵応答性が敏感になって、直進走行安定性が悪くなるという問題を生ずる。
【0039】
この問題を解決するために本実施例では、図13に例示するごとくステアリングホイール操舵角に対する転舵輪1の切れ角が大転舵ほど大きくなるよう非円形歯車組6,7のギヤ比を設定する場合、
図14に示すように、設計上の非転舵中立噛み合い位置を基準とし、前記位相調整およびトー角調整に伴う非円形歯車組6,7の非転舵中立噛み合い位置ずれ範囲αと、この非転舵中立噛み合い位置ずれ範囲αから外輪側噛み合い領域寄りへ該非転舵中立噛み合い位置ずれ範囲αと同程度だけ拡大した角度範囲との合計範囲2αにおいて、非円形歯車6,7のギヤ比を一定にする。
【0040】
かようにすれば、図14に例示するごとくステアリングホイール操舵角に対する転舵輪1の切れ角が大転舵ほど大きくなるよう非円形歯車組6,7のギヤ比を設定した場合においても、
図11につき上述した要領により、位相調整およびトー角調整後における非円形歯車組6,7の非転舵中立噛み合い位置が外輪側噛み合い領域に位置するようにすることで、
ステアリングホイール操舵角を0にした直進走行中の走行安定性が悪くなるのを防止するという前記の作用効果を同様に達成することができ、
同時に、転舵輪1の転舵時におけるフリクション増加を抑制することができ、これにより、転舵輪1のタイヤ偏摩耗を防ぎ得ると共に、その転舵性を良好に確保することができる。
【0041】
なお図11のような構成にしたり、図14のように非円形歯車組6,7のギヤ比を設定する場合、トー角調整に伴う両歯車の非転舵中立噛み合い位置のずれにより、
大舵角時に内輪側噛み合い領域の転舵角と、外輪側噛み合い領域の転舵角との関係がずれ、従来の設定値より相対的に外輪側噛み合い領域の転舵角が内輪側噛み合い領域の転舵角よりも大きくなる。
【0042】
この問題を解決するためには、図15のように内輪側噛み合い領域のギヤ比を破線で示す修正前設定値よりも実線で示すごとく小さくするか、または、図16のように外輪側噛み合い領域のギヤ比を破線で示す修正前設定値よりも実線で示すごとく大きくする。
これらによれば、図17のように大転舵時においても、内輪側噛み合い領域の転舵角と、外輪側噛み合い領域の転舵角との関係を、破線で示す目標とすべき転舵角比近辺に保つことができる。
【0043】
<第2実施例>
図18は、本発明の第2実施例を示し、本実施例では、トー角調整手段を第1実施例と異ならせる。
つまり、図1〜6に示した第1実施例における伸縮部材11に代えて、図18に示すごとく減速機8を転舵軸設定部材3に対し車両前後方向変位可能に支持すると共に、これら減速機8および転舵軸設定部材3間にねじ機構13,14を設ける。
【0044】
これらねじ機構13,14は、減速機8を、これにより駆動される転舵軸設定部材側非円形歯車7(図1参照)を伴って、転舵軸設定部材3に対し相対的に車両前後方向へ並進させることで、転舵輪1のトー角調整を行うものとする。
従ってねじ機構13,14は、転舵軸設定部材側非円形歯車並進機構を構成し、これをトー角調整手段として用いる。
【0045】
それ以外は、前記した第1実施例と同様に構成するため、前記した諸々の作用効果を同様に達成することができる。
なお、トー角調整手段を第1実施例のように伸縮部材11で構成する場合、構成が簡単で低廉化に寄与すると共に、トー角調整作業が簡単であるが、設置スペースの点で不利である。
この点、トー角調整手段を第2実施例のようにねじ機構13,14で構成する場合、設置スペースの点で有利であるが、構成が複雑でコスト高になる。
【0046】
<第3実施例>
図19は、本発明の第3実施例を示し、本実施例では、トー角調整手段を第1実施例および第2実施例と異ならせる。
つまり、減速機8を転舵軸設定部材3に対し車両前後方向変位可能、且つ回転可能に支持すると共に、これら減速機8および転舵軸設定部材3間にねじ機構15,16,17,18を設ける。
【0047】
これらねじ機構15,16,17,18は、減速機8を、これにより駆動される転舵軸設定部材側非円形歯車7(図1参照)を伴って、転舵軸設定部材3に対し相対的に車両前後方向へ並進および回転させることで、転舵輪1のトー角調整を行うものとする。
従ってねじ機構15,16,17,18は、転舵軸設定部材側非円形歯車並進兼回転機構を構成し、これをトー角調整手段として用いる。
【0048】
それ以外は、前記した第1実施例および第2実施例と同様に構成するため、これらと同様な作用効果を同様に達成することができる。
ところで第3実施例においては特に、減速機8および転舵軸設定部材側非円形歯車7(図1参照)を伴って、転舵軸設定部材3に対し相対的に車両前後方向へ並進および回転させることで、転舵輪1のトー角調整を行うようにしたため、
減速機8および転舵軸設定部材側非円形歯車7(図1参照)の並進による転舵輪1のトー角調整のみならず、減速機8および転舵軸設定部材側非円形歯車7(図1参照)の回転により、図20(a)に示すような非円形歯車組6,7の非転舵中立噛み合い位置のずれを、同図(b)に示すごとくキャンセルまたは低減させることができる。
【0049】
ちなみに、第2実施例のごとく減速機8および転舵軸設定部材側非円形歯車7(図1参照)を並進させるだけでは、これにより転舵輪1のトー角調整を行うことができても、当該並進により転舵軸設定部材側非円形歯車7(図1参照)が回転してしまうため、非円形歯車組6,7の非転舵中立噛み合い位置のずれを、第3実施例のようにキャンセルまたは低減させることができない。
【0050】
<その他の実施例>
なお、前記した何れの実施例の構成を採用するにしても、大転舵時に前記トー角調整による噛み合い位置ずれ範囲の中央値がアッカーマンの関係式となるよう、非円形歯車組6,7のギヤ比を設定するのがよい。
かかる非円形歯車組6,7のギヤ比設定によれば、大舵角時にアッカーマンの関係に近づくため、車両の小回り性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 右前輪(右転舵輪)
2 車輪支持部材(ナックル)
3 転舵軸設定部材(アップライト)
4 アッパーリンク
5 ロアリンク
6 車輪支持部材側非円形歯車
7 転舵軸設定部材側非円形歯車
8 交差軸式減速機
9 スプライン嵌合式カップリング
10 ステアリングシャフト
11 伸縮部材(トー角調整手段)
12 調整ナット
13,14 ねじ機構(転舵軸設定部材側非円形歯車並進機構)
15〜18 ねじ機構(転舵軸設定部材側非円形歯車並進兼回転機構)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の操舵系に用いるのに有用なステアリング装置に関し、特に、非円形歯車組を介して車輪を転舵するようにしたステアリング装置の改良提案に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種ステアリング装置としては従来、例えば特許文献1に記載のようなものが知られている。
この特許文献1に記載のステアリング装置は、ステアリングホイール等からの操舵入力を非円形歯車組により車輪の転舵角に変換して、車輪の転舵を行うものである。
【0003】
なお非円形歯車組は、仮想二輪車を想定し、この仮想二輪車の後輪を原点(0,0)、後輪の車軸に沿った座標軸をξ軸、後輪の前進方向に沿った座標軸をη軸とする直交座標(ξ,η)を用いて、
仮想二輪車の操舵車輪Soの座標を(0,1)とし、実在する操舵車輪Sjの座標を(ξj,ηj)とし、仮想操舵車輪Soの操舵角をθo、実操舵車輪Sjの操舵角をθjで表すとき、
両非円形歯車のピッチ曲線が、contθo-ηj・contθj=ξjを満たしつつ、互いに噛合うよう定められたものである。
【0004】
かかる非円形歯車組を用いて車輪を転舵するようにしたステアリング装置によれば、車両の旋回中心を任意の点に設定できるため、例えば車両の小回り性能を大幅に向上させることができる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3237872号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のステアリング装置を四輪車両に用いる場合は、このステアリング装置により転舵される左右転舵輪の直進方向に対する角度、いわゆるトー角を調整する必要があるため、以下の問題を生ずる。
【0007】
つまり上記のステアリング装置にあっては、ステアリングホイールの操舵(回転)力を、ステアリングホイールから転舵輪まで全系統に亘って回転運動のまま伝達する必要があり、このため、ステアリングホイール回転位置と転舵輪の転舵角との間で回転方向の位相を合わせる位相調整(トー角調整)が不可欠である。
【0008】
そのためのトー角調整機構がない場合、ステアリング装置を車両に組み付けたとき、左右転舵輪のトー角をステアリングホイールの回転位置に対し設定範囲内に合わせることが困難である。
しかし、上記した従来のステアリング装置においては、転舵輪のトー角調整について何らの提案もしておらず、四輪車両に用いるときに必要な転舵輪のトー角調整を行うことがきないという問題を生ずる。
【0009】
本発明は、非円形歯車組を用いたステアリング装置を、転舵輪のトー角調整が可能となるよう改良して、四輪車両の操舵系にも用い得るようになし、これにより上述の問題を解消した非円形歯車式ステアリング装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のため、本発明によるステアリング装置は、請求項1に記載のごとく、
転舵輪を回転自在に支持した車輪支持部材と、
該車輪支持部材を介し転舵輪を転舵可能に支持して車体に懸架された転舵軸設定部材と、
前記車輪支持部材を前記転舵軸周りに回転させる車輪支持部材側非円形歯車と、
この車輪支持部材側非円形歯車に操舵力を伝達すべく該車輪支持部材側非円形歯車に噛合させて前記転舵軸設定部材に回転自在に設けた転舵軸設定部材側非円形歯車と、
前記転舵輪のトー角を調整可能なトー角調整手段とを設けて構成したものである。
【発明の効果】
【0011】
かかる本発明のステアリング装置によれば、操舵力伝達系が、転舵輪を回転自在に支持した車輪支持部材を転舵軸周りに回転させる車輪支持部材側非円形歯車と、車輪支持部材を介し転舵輪を転舵可能に支持する転舵軸設定部材に回転自在に設けられて上記車輪支持部材側非円形歯車に噛合する転舵軸設定部材側非円形歯車とを有するため、
これら非円形歯車の設定次第で車両の旋回中心を任意の点に設定でき、例えば車両の小回り性能を大幅に向上させることができる。
【0012】
しかも本発明のステアリング装置は、転舵輪のトー角を調整可能にするトー角調整手段を具えるため、
非円形歯車組を用いたステアリング装置を四輪車両に組み付けたときに必要な調整、つまり転舵輪のトー角をステアリングホイールの回転位置に対し設定範囲内に合わせる位相調整が可能であり、四輪車両の操舵系にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施例になるステアリング装置を、車両の前方から見て示す正面図である。
【図2】図1におけるステアリング装置を車両上方から見て示す平面図である。
【図3】図1,2におけるステアリング装置のトー角調整用伸縮部材を例示する断面図である。
【図4】図1,2におけるステアリング装置を、位相調整中の状態で示す、図2と同様な平面図である。
【図5】図4に示す位相調整による転舵輪のトー角変化状況を説明するための、図2と同様な平面図である。
【図6】図5のトー角変化を調整している時における状況を説明するための、図2と同様な平面図である。
【図7】図1,2のステアリング装置における非円形歯車組の設計上の非転舵中立噛み合い位置を示す歯車組噛合状態説明図である。
【図8】図1,2のステアリング装置における非円形歯車組のギヤ比変化特性を示す特性線図である。
【図9】図1,2におけるステアリング装置の位相調整およびトー角調整後における非円形歯車組の非転舵中立噛み合い位置を示す歯車組噛合状態説明図である。
【図10】図9のように非円形歯車組の非転舵中立噛み合い位置がずれた場合における非円形歯車組のギヤ比変化特性を示す特性線図である。
【図11】図1,2に示す第1実施例における非円形歯車組の非転舵中立噛み合い位置を示す歯車組噛合状態説明図で、 (a)は、位相調整およびトー角調整前における非円形歯車組の非転舵中立噛み合い位置を示す歯車組噛合状態説明図、 (b)は、位相調整後における非円形歯車組の非転舵中立噛み合い位置を示す歯車組噛合状態説明図、 (c)は、位相調整およびトー角調整後における非円形歯車組の非転舵中立噛み合い位置を示す歯車組噛合状態説明図である。
【図12】図11のように位相調整およびトー角調整を行ったときにおける非円形歯車組のギヤ比変化特性を示す特性線図である。
【図13】大舵角時に操舵に対する転舵輪の切れ角が大きくなるように設定した場合の非円形歯車組のギヤ比変化特性を示す特性線図である。
【図14】図13のように非円形歯車組のギヤ比変化特性を設定する場合において好適な中立近辺のギヤ比変化特性を示す特性線図である。
【図15】図14のように非円形歯車組のギヤ比変化特性を設定する場合において好適な内輪側噛み合い領域のギヤ比変化特性を示す特性線図である。
【図16】図14のように非円形歯車組のギヤ比変化特性を設定する場合において好適な外輪側噛み合い領域のギヤ比変化特性を示す特性線図である。
【図17】図15,16のように非円形歯車組のギヤ比変化特性を設定する場合における内輪側噛み合い領域の転舵角と、外輪側噛み合い領域の転舵角との相関関係を示す、内外輪側転舵角比較線図である。
【図18】本発明の第2実施例になるステアリング装置を車両上方から見て示す、図2と同様な平面図である。
【図19】本発明の第3実施例になるステアリング装置を車両上方から見て示す、図2と同様な平面図である。
【図20】図19に示す第3実施例のステアリング装置における非円形歯車組の非転舵中立噛み合い位置を示す歯車組噛合状態説明図で、 (a)は、位相調整およびトー角調整により非転舵中立噛み合い位置がずれた状態を示す歯車組噛合状態説明図、 (b)は、かかる非転舵中立噛み合い位置のずれを転舵軸設定部材の並進および回転によりなくした状態を示す歯車組噛合状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図示の第1実施例〜第3実施例に基づき詳細に説明する。
<第1実施例の構成>
図1,2は、本発明の第1実施例になるステアリング装置を示し、図1は、車両前方から右前輪(右転舵輪)の転舵部を見て示す正面図、図2は、同転舵部の平面図である。
【0015】
本実施例においては、右前輪(右転舵輪)1を車輪支持部材(ナックル)2に回転自在に支持する。
この車輪支持部材(ナックル)2を図1に明示するごとく、転舵軸中心O1の周りで揺動可能となるよう転舵軸設定部材(アップライト)3に支持する。
【0016】
転舵軸設定部材(アップライト)3は、ストラットを含むアッパーリンク4およびロアリンク5により車体に上下方向へストローク可能に懸架する。
この懸架に当たっては、上記の転舵軸中心O1が路面L(図1参照)に対し所定の角度で傾斜するよう当該転舵軸設定部材(アップライト)3の懸架を行う。
従って右前輪(右転舵輪)1は、車輪支持部材(ナックル)2および転舵軸設定部材(アップライト)3を介し、車体に転舵可能に懸架する。
【0017】
車輪支持部材(ナックル)2には、これと共に転舵軸中心O1の周りに回転する車輪支持部材側非円形歯車6を設ける。
転舵軸設定部材(アップライト)3には、転舵軸設定部材側非円形歯車7を設け、この転舵軸設定部材側非円形歯車7を、転舵軸中心O1に平行な軸線O2の周りで自由に回転し得るようにして、また車輪支持部材側非円形歯車6に噛合させて転舵軸設定部材(アップライト)3に支持する。
【0018】
ここで車輪支持部材側非円形歯車6および転舵軸設定部材側非円形歯車7は、両者間噛合領域の変化につれてギヤ比が変化する仕様とし、
これによりステアリングホイール操舵角が左右方向同じであっても、転舵輪1が内輪となる方向へ転舵される場合の内輪転舵角と、転舵輪1が外輪となる方向へ転舵される場合の外輪転舵角との間に、所定の転舵角度差を設定する。
【0019】
転舵軸設定部材(アップライト)3には更に、転舵軸設定部材側非円形歯車7に駆動結合した交差軸式減速機8を固設し、
その入力軸8aは図2に示すごとく、カップリング9を介してステアリングシャフト10にスプライン結合させる。
なおステアリングシャフト10は、図示せざるステアリングホイールからの操舵力を回転力として入力されるものとする。
【0020】
図1,2に示すごとく、転舵軸設定部材3およびロアリンク5間に、本発明のトー角調整手段を構成する伸縮部材11を架設する。
この伸縮部材11は図3に明示するごとく、一対のロッド11a,1bを同軸に突き合わせ、これらロッド11a,1bの突き合わせ部外周に形成した相互逆向きの雄ねじに調整ナット12を螺合させて構成する。
【0021】
よって伸縮部材11は、ナット12の一方向回転によりロッド11a,1bを相互に離反させることで伸張し、ナット12の他方向回転によりロッド11a,1bを相互に接近させることで収縮する。
かようにして伸縮部材11が全長を変化されるとき、転舵軸設定部材3を介して転舵輪1をトー角変化させ得るよう、伸縮部材11は車両上方から見て図2の平面図に示すごとくに傾斜させる。
【0022】
<第1実施例の作用>
ステアリングホイールによる操舵でステアリングシャフト10(図2参照)が回転されると、この回転が入力軸8aから減速機8に至り、これによる減速後に転舵軸設定部材側非円形歯車7に達して、この転舵軸設定部材側非円形歯車7を軸線O2の周りで対応方向へ回転させる。
【0023】
転舵軸設定部材側非円形歯車7の回転は、これと噛合している車輪支持部材側非円形歯車6に達し、かかる車輪支持部材側非円形歯車6の回転により車輪支持部材2を介し転舵輪1を転舵軸中心O1の周りで対応方向へ、ステアリングホイール操舵角および非円形歯車組6,7のギヤ比に応じた角度だけ転舵することができる。
【0024】
<第1実施例のトー角調整>
転舵輪1、車輪支持部材2、転舵軸設定部材3、非円形歯車組6,7、および減速機8を図4に示すごとく車体に組み付けた後は、先ず同図に示すように、ステアリングホイールを中立位置にしてステアリングシャフト10をこれに対応した回転位置となした状態で、転舵輪1を非転舵中立位置近辺にして減速機8の入力軸8aを矢印で示すように回転させる。
このとき、入力軸8aの外周スプライン歯がカップリング9の内周スプライン溝と整列するよう入力軸8aの回転位置をステアリングシャフト10(カップリング9)に対し位相調整する。
【0025】
かかる位相調整後、図5に示すようにカップリング9を軸線方向へスライドさせて入力軸8a上にスプライン嵌合し、これによりステアリングシャフト10と減速機8の入力軸8aとの一体結合を行う。
上記した減速機入力軸8aの回転位置調整中、非円形歯車組6,7も対応方向へ回転し、それにともなって転舵輪支持部材2および転舵輪1も非転舵中立位置から、例えば図5に矢印で示す方向へ回転変位することがある。
【0026】
この場合、図6に示すように調整ナット12を伸縮部材11が伸張される方向へ回転させ、これにより転舵軸設定部材3を対応方向へ回転させる。
かかる転舵軸設定部材3の回転により転舵輪1は、そのトー角を非転舵中立位置相当の0となるよう調整され得る。
よって本実施例においては、非円形歯車組6,7を用いたステアリング装置を四輪車両に組み付けたときに必要な転舵輪1のトー角をステアリングホイールの回転位置に対し設定範囲内に合わせる位相調整が可能であり、四輪車両の操舵系にも用いることができる。
【0027】
なお完成車のメインテナンスで、転舵輪1のトー角調整を行いたい場合は、図6につき上述したと同様に、調整ナット12の回転により伸縮部材11を伸張、または伸縮させるのみで、転舵輪1のトー角調整を簡単に行うことができる。
【0028】
<非円形歯車組の噛合位置ずれ対策について>
前記したような位相調整やトー角調整を行うと、非円形歯車組6,7の非転舵中立噛み合い位置が図7に示す設計上の非転舵中立噛み合い位置からずれる場合がある。
ステアリングホイール操舵角が0の中立位置のとき非円形歯車組6,7の相互噛合位置が図7に示すように設計上の非転舵中立噛み合い位置であって、非円形歯車組6,7のギヤ比が図8のように設計されている場合につき、非円形歯車組6,7の噛合位置ずれを以下に説明する。
【0029】
なお図7,8における(+)は、非円形歯車組6,7を転舵輪(左前輪)1が外輪となるよう(右転舵されるよう)回転させるときにおける非円形歯車組6,7の外輪側噛み合い領域(図7の実線矢印側の噛み合い領域)を示し、また(−)は、非円形歯車組6,7を転舵輪(左前輪)1が内輪となるよう(左転舵されるよう)回転させるときにおける非円形歯車組6,7の内輪側噛み合い領域(図7の破線矢印側の噛み合い領域)を示す。
【0030】
前記した位相調整やトー角調整により非円形歯車組6,7の非転舵中立噛み合い位置が図7に示す設計上の非転舵中立噛み合い位置から、図9に示すごとく内輪側噛み合い領域の噛み合い位置にずれた場合、
図8と同じ図10のギヤ比特性上において、ステアリングホイール操舵角=0の時における非転舵中立噛み合い位置が、破線位置で示す設計上の非転舵中立位置から内輪側噛み合い領域における実線位置へとずれる。
【0031】
ところで、非円形歯車組6,7の歯車回転角に対するギヤ比の変化特性は図8,10に示すように、歯車回転角=0の中立位置近辺を境に内輪側噛み合い領域に向かうにつれギヤ比を小さくするのが常套で、そのため、内輪側噛み合い領域では外輪側噛み合い領域よりも、設計上の非転舵中立噛み合い位置付近におけるギヤ比の変化割合が大きい。
【0032】
このため、ステアリングホイール操舵角=0の時における非転舵中立噛み合い位置が、図10に示すように破線位置で示す設計上の非転舵中立位置から内輪側噛み合い領域における実線位置へとずれたのでは、
ステアリングホイール操舵角の変化に対する転舵輪1の転舵角変化が大きくなってしまい、ステアリングホイール操舵角を0にした直進走行中において転舵応答性が敏感になってしまい、直進走行安定性が悪くなるという問題を生ずる。
【0033】
そこで本実施例においては、図11(a)に示すごとく前記位相調整およびトー角調整を行う前において、非円形歯車組6,7の非転舵中立噛み合い位置が、設計上の非転舵中立噛み合い位置よりも所定量だけ外輪側噛み合い領域(+領域)寄りにずれるよう非円形歯車組6,7を構成配置する。
【0034】
ここで所定量は以下のように定める。
前記した位相調整およびトー角調整により非円形歯車組6,7の非転舵中立噛み合い位置が設計上の非転舵中立噛み合い位置からずれる最大量はカップリング9(図2参照)のスプライン歯ピッチで決まり、例えば図12にαで示すごとくに予め判る。
そこで上記の所定量は、図9につき前述した非転舵中立噛み合い位置のずれによっても、この非転舵中立噛み合い位置が決して内輪側噛み合い領域に入ることのないようなものとする。
【0035】
かかる本実施例の構成によれば、前記した位相調整により非円形歯車組6,7の非転舵中立噛み合い位置が内輪側噛み合い領域方向へずれても、この非転舵中立噛み合い位置は図11(b)に示すごとく依然として外輪側噛み合い領域にあり、
その後の前記したトー角調整により非円形歯車組6,7の非転舵中立噛み合い位置が更に内輪側噛み合い領域方向へずれても、この非転舵中立噛み合い位置は図11(c)に示すごとく依然として外輪側噛み合い領域に保たれ、決して内輪側噛み合い領域に入ることがない。
【0036】
このため本実施例では、図8と同じ図12のギヤ比特性上において、ステアリングホイール操舵角=0の時における非円形歯車組6,7の非転舵中立噛み合い位置が、前記の位相調整およびトー角調整によっても、白抜き丸印で示す位相調整およびトー角調整前の位置から黒丸印で示す位置へとずれるだけで、破線位置で示す設計上の非転舵中立位置よりも内輪側噛み合い領域にずれることはない。
よって、位相調整およびトー角調整後もステアリングホイール操舵角の変化に対する転舵輪1の転舵角変化が大きくなることがなく、ステアリングホイール操舵角を0にした直進走行中に転舵応答性が敏感になってしまい、直進走行安定性が悪くなるという問題を解消することができる。
【0037】
なお、大舵角時にステアリングホイール操舵角に対する転舵輪の転舵角を大きくして、少ないステアリングホイール操舵量で転舵輪を大きく転舵したい要求に対しては、非円形歯車組6,7のギヤ比を図13に示すごとく、歯車回転角が大きくなるにつれ小さくすることで上記の要求を満足させることができる。
【0038】
しかしかかるギヤ比特性にもかかわらず、図11につき上述した要領で、位相調整およびトー角調整後における非円形歯車組6,7の非転舵中立噛み合い位置が図13の丸印で示す位置となるようにした場合、
外輪側噛み合い領域のギヤ比変化割合が内輪側噛み合い領域のギヤ比変化割合よりも大きくなり、ステアリングホイール操舵角を0にした直進走行中に転舵応答性が敏感になって、直進走行安定性が悪くなるという問題を生ずる。
【0039】
この問題を解決するために本実施例では、図13に例示するごとくステアリングホイール操舵角に対する転舵輪1の切れ角が大転舵ほど大きくなるよう非円形歯車組6,7のギヤ比を設定する場合、
図14に示すように、設計上の非転舵中立噛み合い位置を基準とし、前記位相調整およびトー角調整に伴う非円形歯車組6,7の非転舵中立噛み合い位置ずれ範囲αと、この非転舵中立噛み合い位置ずれ範囲αから外輪側噛み合い領域寄りへ該非転舵中立噛み合い位置ずれ範囲αと同程度だけ拡大した角度範囲との合計範囲2αにおいて、非円形歯車6,7のギヤ比を一定にする。
【0040】
かようにすれば、図14に例示するごとくステアリングホイール操舵角に対する転舵輪1の切れ角が大転舵ほど大きくなるよう非円形歯車組6,7のギヤ比を設定した場合においても、
図11につき上述した要領により、位相調整およびトー角調整後における非円形歯車組6,7の非転舵中立噛み合い位置が外輪側噛み合い領域に位置するようにすることで、
ステアリングホイール操舵角を0にした直進走行中の走行安定性が悪くなるのを防止するという前記の作用効果を同様に達成することができ、
同時に、転舵輪1の転舵時におけるフリクション増加を抑制することができ、これにより、転舵輪1のタイヤ偏摩耗を防ぎ得ると共に、その転舵性を良好に確保することができる。
【0041】
なお図11のような構成にしたり、図14のように非円形歯車組6,7のギヤ比を設定する場合、トー角調整に伴う両歯車の非転舵中立噛み合い位置のずれにより、
大舵角時に内輪側噛み合い領域の転舵角と、外輪側噛み合い領域の転舵角との関係がずれ、従来の設定値より相対的に外輪側噛み合い領域の転舵角が内輪側噛み合い領域の転舵角よりも大きくなる。
【0042】
この問題を解決するためには、図15のように内輪側噛み合い領域のギヤ比を破線で示す修正前設定値よりも実線で示すごとく小さくするか、または、図16のように外輪側噛み合い領域のギヤ比を破線で示す修正前設定値よりも実線で示すごとく大きくする。
これらによれば、図17のように大転舵時においても、内輪側噛み合い領域の転舵角と、外輪側噛み合い領域の転舵角との関係を、破線で示す目標とすべき転舵角比近辺に保つことができる。
【0043】
<第2実施例>
図18は、本発明の第2実施例を示し、本実施例では、トー角調整手段を第1実施例と異ならせる。
つまり、図1〜6に示した第1実施例における伸縮部材11に代えて、図18に示すごとく減速機8を転舵軸設定部材3に対し車両前後方向変位可能に支持すると共に、これら減速機8および転舵軸設定部材3間にねじ機構13,14を設ける。
【0044】
これらねじ機構13,14は、減速機8を、これにより駆動される転舵軸設定部材側非円形歯車7(図1参照)を伴って、転舵軸設定部材3に対し相対的に車両前後方向へ並進させることで、転舵輪1のトー角調整を行うものとする。
従ってねじ機構13,14は、転舵軸設定部材側非円形歯車並進機構を構成し、これをトー角調整手段として用いる。
【0045】
それ以外は、前記した第1実施例と同様に構成するため、前記した諸々の作用効果を同様に達成することができる。
なお、トー角調整手段を第1実施例のように伸縮部材11で構成する場合、構成が簡単で低廉化に寄与すると共に、トー角調整作業が簡単であるが、設置スペースの点で不利である。
この点、トー角調整手段を第2実施例のようにねじ機構13,14で構成する場合、設置スペースの点で有利であるが、構成が複雑でコスト高になる。
【0046】
<第3実施例>
図19は、本発明の第3実施例を示し、本実施例では、トー角調整手段を第1実施例および第2実施例と異ならせる。
つまり、減速機8を転舵軸設定部材3に対し車両前後方向変位可能、且つ回転可能に支持すると共に、これら減速機8および転舵軸設定部材3間にねじ機構15,16,17,18を設ける。
【0047】
これらねじ機構15,16,17,18は、減速機8を、これにより駆動される転舵軸設定部材側非円形歯車7(図1参照)を伴って、転舵軸設定部材3に対し相対的に車両前後方向へ並進および回転させることで、転舵輪1のトー角調整を行うものとする。
従ってねじ機構15,16,17,18は、転舵軸設定部材側非円形歯車並進兼回転機構を構成し、これをトー角調整手段として用いる。
【0048】
それ以外は、前記した第1実施例および第2実施例と同様に構成するため、これらと同様な作用効果を同様に達成することができる。
ところで第3実施例においては特に、減速機8および転舵軸設定部材側非円形歯車7(図1参照)を伴って、転舵軸設定部材3に対し相対的に車両前後方向へ並進および回転させることで、転舵輪1のトー角調整を行うようにしたため、
減速機8および転舵軸設定部材側非円形歯車7(図1参照)の並進による転舵輪1のトー角調整のみならず、減速機8および転舵軸設定部材側非円形歯車7(図1参照)の回転により、図20(a)に示すような非円形歯車組6,7の非転舵中立噛み合い位置のずれを、同図(b)に示すごとくキャンセルまたは低減させることができる。
【0049】
ちなみに、第2実施例のごとく減速機8および転舵軸設定部材側非円形歯車7(図1参照)を並進させるだけでは、これにより転舵輪1のトー角調整を行うことができても、当該並進により転舵軸設定部材側非円形歯車7(図1参照)が回転してしまうため、非円形歯車組6,7の非転舵中立噛み合い位置のずれを、第3実施例のようにキャンセルまたは低減させることができない。
【0050】
<その他の実施例>
なお、前記した何れの実施例の構成を採用するにしても、大転舵時に前記トー角調整による噛み合い位置ずれ範囲の中央値がアッカーマンの関係式となるよう、非円形歯車組6,7のギヤ比を設定するのがよい。
かかる非円形歯車組6,7のギヤ比設定によれば、大舵角時にアッカーマンの関係に近づくため、車両の小回り性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 右前輪(右転舵輪)
2 車輪支持部材(ナックル)
3 転舵軸設定部材(アップライト)
4 アッパーリンク
5 ロアリンク
6 車輪支持部材側非円形歯車
7 転舵軸設定部材側非円形歯車
8 交差軸式減速機
9 スプライン嵌合式カップリング
10 ステアリングシャフト
11 伸縮部材(トー角調整手段)
12 調整ナット
13,14 ねじ機構(転舵軸設定部材側非円形歯車並進機構)
15〜18 ねじ機構(転舵軸設定部材側非円形歯車並進兼回転機構)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転舵輪を回転自在に支持した車輪支持部材と、
該車輪支持部材を介し転舵輪を転舵可能に支持して車体に懸架された転舵軸設定部材と、
前記車輪支持部材を前記転舵軸周りに回転させる車輪支持部材側非円形歯車と、
この車輪支持部材側非円形歯車に操舵力を伝達すべく該車輪支持部材側非円形歯車に噛合させて前記転舵軸設定部材に回転自在に設けた転舵軸設定部材側非円形歯車と、
前記転舵輪のトー角を調整可能なトー角調整手段とを具備してなることを特徴とするステアリング装置。
【請求項2】
前記転舵軸設定部材がサスペンションメンバを介し車体側に懸架されたものである、請求項1に記載のステアリング装置において、
前記トー角調整手段は、前記転舵軸設定部材およびサスペンションメンバ間に長さ調整可能に架設された伸縮部材で構成し、該部材の長さ調整により前記転舵輪のトー角調整を行うものであることを特徴とするステアリング装置。
【請求項3】
請求項1に記載のステアリング装置において、
前記トー角調整手段は、前記転舵軸設定部材側非円形歯車を前記転舵軸設定部材に対し相対的に車両前後方向へ並進させる転舵軸設定部材側非円形歯車並進機構で構成し、該機構による転舵軸設定部材側非円形歯車の並進により前記転舵輪のトー角調整を行うものであることを特徴とするステアリング装置。
【請求項4】
請求項1に記載のステアリング装置において、
前記トー角調整手段は、前記転舵軸設定部材側非円形歯車を前記転舵軸設定部材に対し相対的に車両前後方向へ並進させると共に転舵軸設定部材側非円形歯車の回転軸線周りに回転させる転舵軸設定部材側非円形歯車並進兼回転機構で構成し、該機構による転舵軸設定部材側非円形歯車の並進および回転により前記転舵輪のトー角調整を行うものであることを特徴とするステアリング装置。
【請求項5】
前記転舵輪が外輪となる前記両非円形歯車の外輪側噛み合い領域では、前記転舵輪が内輪となる前記両非円形歯車の内輪側噛み合い領域よりも、設計上の非転舵中立噛み合い位置付近における非円形歯車間ギヤ比の変化割合を小さくした、請求項1〜4のいずれか1項に記載のステアリング装置において、
前記転舵輪のトー角調整後において、前記転舵輪が非転舵中立位置であるときにおける前記両非円形歯車の非転舵中立噛み合い位置が前記設計上の非転舵中立噛み合い位置となるよう、若しくはこの非転舵中立噛み合い位置よりも外輪側噛み合い領域となるよう構成したことを特徴とするステアリング装置。
【請求項6】
ステアリングホイール操舵角に対する転舵輪の切れ角が大転舵ほど大きくなるよう前記両非円形歯車のギヤ比を設定した、請求項5に記載のステアリング装置において、
前記設計上の非転舵中立噛み合い位置を基準とし、前記トー角調整による非円形歯車の非転舵中立噛み合い位置ずれ範囲と、この非転舵中立噛み合い位置ずれ範囲から前記外輪側噛み合い領域寄りへ該非転舵中立噛み合い位置ずれ範囲と同程度だけ拡大した角度範囲とにおいて、非円形歯車のギヤ比を一定にしたことを特徴とするステアリング装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載のステアリング装置において、
大転舵時に前記トー角調整による噛み合い位置ずれ範囲の中央値が、アッカーマンの関係式となるよう非円形歯車のギヤ比を決定したことを特徴とするステアリング装置。
【請求項1】
転舵輪を回転自在に支持した車輪支持部材と、
該車輪支持部材を介し転舵輪を転舵可能に支持して車体に懸架された転舵軸設定部材と、
前記車輪支持部材を前記転舵軸周りに回転させる車輪支持部材側非円形歯車と、
この車輪支持部材側非円形歯車に操舵力を伝達すべく該車輪支持部材側非円形歯車に噛合させて前記転舵軸設定部材に回転自在に設けた転舵軸設定部材側非円形歯車と、
前記転舵輪のトー角を調整可能なトー角調整手段とを具備してなることを特徴とするステアリング装置。
【請求項2】
前記転舵軸設定部材がサスペンションメンバを介し車体側に懸架されたものである、請求項1に記載のステアリング装置において、
前記トー角調整手段は、前記転舵軸設定部材およびサスペンションメンバ間に長さ調整可能に架設された伸縮部材で構成し、該部材の長さ調整により前記転舵輪のトー角調整を行うものであることを特徴とするステアリング装置。
【請求項3】
請求項1に記載のステアリング装置において、
前記トー角調整手段は、前記転舵軸設定部材側非円形歯車を前記転舵軸設定部材に対し相対的に車両前後方向へ並進させる転舵軸設定部材側非円形歯車並進機構で構成し、該機構による転舵軸設定部材側非円形歯車の並進により前記転舵輪のトー角調整を行うものであることを特徴とするステアリング装置。
【請求項4】
請求項1に記載のステアリング装置において、
前記トー角調整手段は、前記転舵軸設定部材側非円形歯車を前記転舵軸設定部材に対し相対的に車両前後方向へ並進させると共に転舵軸設定部材側非円形歯車の回転軸線周りに回転させる転舵軸設定部材側非円形歯車並進兼回転機構で構成し、該機構による転舵軸設定部材側非円形歯車の並進および回転により前記転舵輪のトー角調整を行うものであることを特徴とするステアリング装置。
【請求項5】
前記転舵輪が外輪となる前記両非円形歯車の外輪側噛み合い領域では、前記転舵輪が内輪となる前記両非円形歯車の内輪側噛み合い領域よりも、設計上の非転舵中立噛み合い位置付近における非円形歯車間ギヤ比の変化割合を小さくした、請求項1〜4のいずれか1項に記載のステアリング装置において、
前記転舵輪のトー角調整後において、前記転舵輪が非転舵中立位置であるときにおける前記両非円形歯車の非転舵中立噛み合い位置が前記設計上の非転舵中立噛み合い位置となるよう、若しくはこの非転舵中立噛み合い位置よりも外輪側噛み合い領域となるよう構成したことを特徴とするステアリング装置。
【請求項6】
ステアリングホイール操舵角に対する転舵輪の切れ角が大転舵ほど大きくなるよう前記両非円形歯車のギヤ比を設定した、請求項5に記載のステアリング装置において、
前記設計上の非転舵中立噛み合い位置を基準とし、前記トー角調整による非円形歯車の非転舵中立噛み合い位置ずれ範囲と、この非転舵中立噛み合い位置ずれ範囲から前記外輪側噛み合い領域寄りへ該非転舵中立噛み合い位置ずれ範囲と同程度だけ拡大した角度範囲とにおいて、非円形歯車のギヤ比を一定にしたことを特徴とするステアリング装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載のステアリング装置において、
大転舵時に前記トー角調整による噛み合い位置ずれ範囲の中央値が、アッカーマンの関係式となるよう非円形歯車のギヤ比を決定したことを特徴とするステアリング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2010−179665(P2010−179665A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22134(P2009−22134)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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