説明

ステッピングモータ制御回路及びアナログ電子時計

【課題】複数のステッピングモータを用いて駆動する場合に、回転検出回路の構成を大規模にすることなく、各ステッピングモータ共通の負荷に応じた駆動パルスによって駆動とすることにより、省電力化を図ること。
【解決手段】時刻針114、115、116を駆動する時刻モータ112と、クロノグラフ針117、118、113を駆動するクロノモータ111と、時刻モータ112の非駆動時に発生する信号に基づいて負荷状況を検出する負荷検出回路107と、負荷検出回路107が検出した負荷状況に応じて、時刻モータ112及びクロノモータ111の駆動パルスを変更して駆動する制御手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッピングモータ制御回路及び前記ステッピングモータ制御回路を用いたアナログ電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数のステッピングモータを有するアナログ電子時計として、計時機能と時間計測機能を有するクロノグラフ時計が実用化されている。前記クロノグラフ時計には、時刻針駆動用の時刻モータとクロノグラフ針駆動用のクロノモータが使用されている。前記モータとして、ロータ収容孔及びロータの停止位置を決める位置決め部を有するステータと、前記ロータ収容孔内に配設されたロータと、コイルとを有し、前記コイルに交番信号を供給して前記ステータに磁束を発生させることによって前記ロータを回転させると共に、前記位置決め部に対応する位置に前記ロータを停止するようにした2極PM(Permanent Magnet)型ステッピングモータが使用されている。
【0003】
ところで、特許文献1には、外部磁界の変化及びステッピングモータの駆動条件の変化を検出して駆動パルスを変化させ、低消費電力化を図る技術が開示されている。
この技術を複数のステッピングモータを有するアナログ電子時計に応用する場合、各々のステッピングモータに上記外部磁界検出回路やモータ負荷検出回路を用意すれば低消費電力化を実現できるが、回路規模が増えるため、現実的には常に駆動する時刻モータにのみ用意し、クロノモータ等の他の用途のステッピングモータは確実に駆動できるパルスを印加している。
【0004】
例えば、クロノグラフ機能付きアナログ電子時計において、時刻モータのみ負荷検出して駆動エネルギ制御により低消費電力化するのに対して、クロノモータは耐久性を確保した固定パルス駆動としているため、低消費化に限界がある。
また、負荷検出の精度を高めるためにモータ駆動の前に磁界検出を行うが、これも時刻モータのみに施されている。
【0005】
一方、特許文献2に記載された発明では、1つのステッピングモータに対応する回転検出結果(磁界検出結果)を他のステッピングモータの出力タイミング制御信号として用いている。タイミング制御信号は、1つのモータ駆動後の予め定めた所定時間内に他のステッピングモータを駆動するパルスを出力させるようにしている。しかしながら、特許文献2記載の発明は、複数のステッピングモータを駆動させる場合に、運針タイミングのズレを目立たせないようにするには運針タイミングを近づける必要があるが、近づけすぎると、最初に駆動したステッピングモータによる電源電圧の低下が復帰する前に次のステッピングモータを駆動するため駆動できない状態が発生するのを防止しているに過ぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭55−147381号公報
【特許文献2】WO00/36474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記問題点に鑑み成されたもので、複数のステッピングモータを用いて駆動する場合に、回転検出回路の構成を大規模にすることなく、各ステッピングモータ共通の負荷に応じた駆動パルスによって駆動することにより、省電力化を図ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の視点によれば、第1指針を駆動する第1ステッピングモータと、第2指針を駆動する第2ステッピングモータと、前記第1ステッピングモータの非駆動時に発生する信号に基づいて負荷状況を検出する負荷検出手段と、前記負荷検出手段が検出した負荷状況に応じて、前記第1ステッピングモータ及び第2ステッピングモータの駆動パルスを変更して駆動する制御手段とを備えて成ることを特徴とするステッピングモータ制御回路が提供される。
【0009】
また、本発明の第2の視点によれば、第1指針を駆動する第1ステッピングモータと、第2指針を駆動する第2ステッピングモータと、前記各ステッピングモータを制御するステッピングモータ制御回路とを有するアナログ電子時計において、ステッピングモータ制御回路として、前記ステッピングモータ制御回路を用いたことを特徴とするアナログ電子時計。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るステッピングモータ制御回路によれば、複数のステッピングモータを用いて駆動する場合に、回転検出回路の構成を大規模にすることなく、各ステッピングモータ共通の負荷に応じた駆動パルスによって駆動することにより、省電力化を図ることが可能になる。
また、本発明に係るアナログ電子時計によれば、複数のステッピングモータを用いて駆動する場合に、回転検出回路の構成を大規模にすることなく、各ステッピングモータ共通の負荷に応じた駆動パルスによって駆動することにより、低消費電力で正確な運針を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路及びアナログ電子時計のブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路及びアナログ電子時計の動作を説明するためのタイミング図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路及びアナログ電子時計の動作を説明するためのタイミング図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路及びアナログ電子時計の動作を説明するためのタイミング図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路及びアナログ電子時計の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路及びこれを用いたアナログ電子時計について説明する。尚、各図において、同一部分には同一符号を付している。
図1は、本発明の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路を用いたアナログ電子時計のブロック図で、計時機能及び時間計測機能を有するクロノグラフ時計の例を示している。図1において、クロノグラフ時計は、所定周波数の信号を発生する発振回路101、発振回路101で発生した信号を分周して計時の基準となる時計信号を発生する分周回路102、電子時計を構成する各電子回路要素の制御や駆動パルスの変更制御等の制御を行う制御回路103、制御回路103からの制御信号に対応する時刻針駆動用の駆動パルス及びクロノグラフ針駆動用の駆動パルスを発生する駆動パルス発生回路104を備えている。
【0013】
また、クロノグラフ時計は、駆動パルス発生回路104からのクロノグラフ針駆動用の駆動パルスに対応する駆動パルスによってモータ部110内のクロノモータ(第2ステッピングモータ)111を駆動するモータ駆動回路(第2モータ駆動回路)106、駆動パルス発生回路104からの時刻針駆動用の駆動パルスに対応する駆動パルスによってモータ部110内の時刻モータ(第1ステッピングモータ)112を駆動するモータ駆動回路(第1モータ駆動回路)109を備えている。
【0014】
また、クロノグラフ時計は、クロノグラフ針を駆動するクロノモータ111及び時刻針を駆動する時刻モータ112を有するモータ部110、モータ部110によって駆動され、計測時間や現在時刻をクロノグラフ針や時刻針によって表示するアナログ表示部119を備えている。アナログ表示部119は、計測した時間を表示するクロノグラフ針(クロノグラフ時針117、クロノグラフ分針118、クロノグラフ秒針113)、現在時刻を表示する時刻針(時刻時針114、時刻分針115、時刻秒針116)を備えている。クロノグラフ針117、118、113はクロノモータ111によって回転駆動され、時刻針114、115、116は時刻モータ112によって回転駆動される。
【0015】
クロノモータ111及び時刻モータ112はステッピングモータであり、例えば、ロータ収容孔及びロータの停止位置を決める位置決め部を有するステータと、前記ロータ収容孔内に配設されたロータと、コイルとを有し、前記コイルに交番信号を供給して前記ステータに磁束を発生させることによって前記ロータを回転させると共に、前記位置決め部に対応する位置に前記ロータを停止するようにした公知の2極PM(Permanent Magnet)型ステッピングモータである。ステッピングモータの駆動コイルに極性の異なる駆動信号を交互に供給することによって、ロータを所定角度(例えば180度)ずつ一定方向に連続的に回転させるように構成されている。
【0016】
また、クロノグラフ時計は、時刻モータ112の負荷状況を検出する負荷検出回路107を備えている。負荷検出回路107は外部磁界を検出する磁界検出回路108、時刻モータ112の回転状況を検出する回転検出回路105を備えている。磁界検出回路108及び回転検出回路105は各々公知の構成のものである。磁界検出回路108は、時刻モータ112の非駆動時にその駆動コイルに流れる電流に基づいて所定値以上の強度の外部磁界が存在するか否かを検出する。回転検出回路105は、時刻モータ112の駆動直後の自由振動によって発生する誘起信号に基づいて回転状況を検出する。
【0017】
制御回路103は、磁界検出回路108による磁界検出結果や回転検出回路105による回転検出結果に基づいて時刻モータ112及びクロノモータ111に共通する負荷の大きさを判定する。
例えば、制御回路103は、磁界検出回路108による磁界検出結果に基づいて所定値以上の強度の磁界が存在すると判定した場合は、クロノモータ111及び時刻モータ112双方の負荷が変動して大きくなったと判定する。
【0018】
また、制御回路103は、回転検出回路105による時刻モータ112の回転検出結果に基づいて時刻モータ112が非回転と判定した場合は、温度変動に基づいてモータ112から指針(時刻針114、115、116)に至る経路に用いている油の粘性が大きくなったため負荷が大きくなり、時刻モータ112の負荷が変動して大きくなったと判定する。この場合、制御回路103は、モータ111から指針(クロノグラフ針117、118、113)に至る経路に用いている油の粘性も大きくなり、クロノモータ111及び時刻モータ112双方の負荷が変動して大きくなったと判定する。
【0019】
尚、発振回路101及び分周回路102は信号発生手段を構成している。発振回路101、分周回路102、制御回路103、駆動パルス発生回路104、モータ駆動回路106、109及び負荷検出回路107は制御手段を構成している。回転検出回路105は回転検出手段を構成し、磁界検出回路108は磁界検出手段を構成し又、負荷検出回路107は負荷検出手段を構成している。
【0020】
図2〜図4は、本実施の形態において時間計測動作と計時動作が同時に行われている状態のタイミング図で、クロノモータ111と時刻モータ112の駆動動作、制動動作、磁界検出動作のタイミングを示している。図2は磁界が存在しない場合に時刻モータ112が正常に回転したときのタイミング図、図3は磁界が存在しない場合に時刻モータ112が回転しなかったときのタイミング図、図4は磁界が存在する場合のタイミング図である。
【0021】
図2〜図4における記号の意味は次の通りである。即ち、P1n(M0)は時刻モータ112を駆動するための時刻用主駆動パルスであり、nはエネルギランクを示す正の整数で、nが大きくなるほど駆動エネルギが大きい(エネルギランクが大きい)ことを示している。P2(M0)は各主駆動パルスP1n(M0)よりも駆動エネルギの大きい時刻用補正駆動パルスであり、負荷が増加した場合でも時刻モータ112を強制的に回転させることができる駆動パルスである。
【0022】
P1m(M1)はクロノモータ111を駆動するためのクロノグラフ用主駆動パルスであり、mはエネルギランクを示す正の整数で、mが大きくなるほど駆動エネルギが大きいことを示している。P2(M1)は各主駆動パルスP1m(M1)よりもエネルギの大きいクロノグラフ用補正駆動パルスであり、負荷が増加した場合でもクロノモータ111を強制的に回転させることができる駆動パルスである。
【0023】
各駆動パルスに付した括弧内の記号M0は時刻モータ112駆動用の駆動パルス、記号M1はクロノモータ111駆動用の駆動パルスであることを示している。
Pr(M0)、Pr(M1)は、各々、時刻モータ112、クロノモータ111の回転に制動をかけるための制動パルスである。補正駆動パルスP2駆動後の自由振動を早く停止させるために使用する。
【0024】
M00、M01は時刻モータ112の駆動端子(換言すれば、駆動信号の極性)を示し、モータ駆動回路109から一方の端子M00及び他方の端子M01に交互に極性の異なる時刻用主駆動パルスP1n(M0)を供給することによって時刻モータ112を所定角度ずつ一方向に回転させる。SPJは磁界検出回路108による外部磁界の磁界検出動作、SPKは回転検出回路105による時刻モータ112の回転検出動作を表している。本実施の形態では、主駆動パルスP1n(M0)の周期は1秒である。
【0025】
M10、M11はクロノモータ111の駆動端子(換言すれば、駆動信号の極性)を示し、モータ駆動回路106から一方の端子M10及び他方の端子M11に交互に極性の異なるクロノグラフ用主駆動パルスP1m(M1)を供給することによってクロノモータ111を所定角度ずつ一方向に回転する。本実施の形態では、主駆動パルスP1m(M1)の周期は1/5秒である。
【0026】
図2では、時刻モータ112を一方の極性M00で駆動する前に、磁界検出回路108が他方の極性M01側で磁界検出動作SPJを行った際、制御回路103は所定値を超える外部磁界を検出しなかったと判定し、一方の極性M00側で主駆動パルスP11(M0)により時刻モータ112を回転駆動するよう制御する。制御回路103は、回転検出回路105が一方の極性M00側で回転検出動作SPKを行って時刻モータ112が回転したと判定すると、クロノモータ111の主駆動パルスP1m(M1)を変更することなく、クロノモータ111を、極性M10と極性M11で交互に主駆動パルスP11(M1)により駆動するよう制御する。
【0027】
次のサイクルでは時刻モータ112を他方の極性M01で駆動する前に、磁界検出回路108が一方の極性M00側で磁界検出動作SPJを行い、制御回路103は所定値を超える外部磁界を検出しなかったと判定した場合、他方の極性M01側で主駆動パルスP11(M0)により時刻モータ112を回転駆動するよう制御する。制御回路103は、回転検出回路105が他方の極性M01側で回転検出動作SPKを行って時刻モータ112が回転したと判定すると、クロノモータ111の主駆動パルスP1m(M1)を変更することなく、クロノモータ111を、極性M10と極性M11で交互に主駆動パルスP11(M1)により駆動するよう制御する。
制御回路103は、所定値を超える外部磁界が検出されず、時刻モータ112が正常に回転する場合には前記動作を繰り返して、1秒周期で時刻モータ112を回転駆動し、1/5秒周期でクロノモータ111を回転駆動する。これにより、省電力化を図りながら時刻モータ112とクロノモータ111の正常な駆動が可能になる。
【0028】
図3では、時刻モータ112を他方の極性M01で駆動する前に、磁界検出回路108が一方の極性M00側で磁界検出動作SPJを行った際、制御回路103は所定値を超える外部磁界を検出しなかったと判定し、他方の極性M01側で主駆動パルスP11(M0)により時刻モータ112を回転駆動するよう制御する。制御回路103は、回転検出回路105が他方の極性M01側で回転検出動作SPKを行って時刻モータ112が回転しなかったと判定すると、補正駆動パルスP2(M0)に変更して時刻モータ112を強制的に回転させた後、制動パルスPr(M0)によって制動をかけるように制御する。
【0029】
制御回路103は、所定値を超える磁界は検出されないが、時刻モータ112駆動用の主駆動パルスP11(M1)では回転できなかったため、温度変化による各モータ111、112に共通の負荷が増加したと判定して、クロノモータ111の主駆動パルスP1m(M1)を1ランクアップして主駆動パルスP12(M1)に変更し、クロノモータ111を、極性M10と極性M11で交互に主駆動パルスP12(M1)により駆動するよう制御する。
【0030】
次のサイクルでは時刻モータ112を一方の極性M00で駆動する前に、磁界検出回路108が他方の極性M01側で磁界検出動作SPJを行い、制御回路103は所定値を超える外部磁界を検出しなかったと判定した場合、一方の極性M00側の主駆動パルスを1ランクアップして主駆動パルスP12(M0)に変更し、時刻モータ112を回転駆動するよう制御する。制御回路103は、回転検出回路105が一方の極性M00側で回転検出動作SPKを行って時刻モータ112が回転したと判定すると、クロノモータ111の主駆動パルスP1m(M1)を変更することなく、クロノモータ111を、極性M10と極性M11で交互に主駆動パルスP12(M1)により駆動するよう制御する。
このように制御回路103は、所定値を超える外部磁界が検出されず、時刻モータ112が正常に回転しない場合には、時刻モータ112とクロノモータ111の主駆動パルスを両方ともランクアップして回転駆動する。これにより、時刻モータ112とクロノモータ111を低消費電力で確実に回転駆動することが可能になる。
【0031】
図4では、時刻モータ112を他方の極性M01で駆動する前に、磁界検出回路108が一方の極性M00側で磁界検出動作SPJを行った際、制御回路103は所定値を超える外部磁界を検出したと判定すると、他方の極性M01側の駆動時に、主駆動パルスP1n(M0)の代わりに補正駆動パルスP2(M0)によって時刻モータ112を強制的に回転駆動し、その後、制動パルスPr(M0)によって制動をかけるように制御する。
【0032】
制御回路103は、所定値を超える磁界が検出されたため、主駆動パルスP1m(M1)の代わりに補正駆動パルスP2(M1)によってクロノモータ111を強制的に回転駆動し、その後、制動パルスPr(M1)によって制動をかけるように、極性M10と極性M11で交互に制御する。
このように制御回路103は、所定値を超える外部磁界が検出された場合、時刻モータ112とクロノモータ111の両方を補正駆動パルスP2によって回転駆動する。これにより、磁界の存在によって共通の負荷が増加した場合でも、時刻モータ112とクロノモータ111を確実に回転駆動することが可能になる。
【0033】
図5は、本発明の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路及びアナログ電子時計の動作を示すフローチャートで、外部磁界による共通の負荷や油の粘性等による共通の負荷の双方に対応する処理を示している。外部磁界の検出は行わずに油の粘性等による共通の負荷のみを検出する場合には、外部磁界の検出処理及びこれに付随する処理は不要となり又、図1の磁界検出回路108も不要となる。
図5において、mはクロノモータ111駆動用主駆動パルスP1(M1)のエネルギランク、nは時刻モータ112駆動用主駆動パルスP1(M0)のエネルギランク、Nは同一エネルギの主駆動パルスP1(M0)による連続駆動回数を表している。
【0034】
以下、図1〜図5を参照して、本発明の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路及びアナログ電子時計について、時刻計時動作及び時間計測動作を同時に行う場合について説明する。
発振回路101は所定周波数の基準クロック信号を発生し、分周回路102が発振回路101で発生した前記信号を分周して計時の基準となる時計信号を制御回路103に出力する。
【0035】
制御回路103は、初期状態において主駆動パルスP1(M0)のエネルギランクn、主駆動パルスP1(M1)のエネルギランクm及び繰り返し回数Nを全て0にリセットする(ステップS500)。
制御回路103は、分周回路102からの時計信号を計時して、時刻秒針116の駆動タイミングが到来したと判定すると(ステップS501)、時刻モータ112を駆動する前の非駆動時に磁界検出回路108を制御して、所定値を超える強度の外部磁界が存在するか否かを判定する(ステップS502)。磁界検出回路108は、制御回路103の制御の下、時刻モータ112のを駆動する前に時刻モータに発生する信号に基づいて所定値を超える外部磁界の有無を検出する。
【0036】
制御回路103は、処理ステップS502において磁界検出回路108が所定値を超える外部磁界を検出しなかった(外部磁界無し)と判定すると、図2に示すように、主駆動パルスP10(M0)によって時刻モータ112を駆動するように駆動パルス発生回路104を制御し(ステップS503)、駆動パルス発生回路104はモータ駆動回路109を介して主駆動パルスP10(M0)によって時刻モータ112を回転駆動する。時刻モータ112は時刻針114、115、116を駆動して運針する。
回転検出回路105は、主駆動パルスP10(M0)による駆動後に、時刻モータ112の回転状況を検出する。
【0037】
制御回路103は、回転検出回路105による時刻モータ112の検出結果に基づいて、回転したと判定すると(ステップS504、S505)、同一主駆動パルスP1n(M0)による繰り返し回数Nに1加算した後(ステップS506)、繰り返し回数Nが所定の回数(本実施の形態では160回)に達したと判定すると(ステップS507)、主駆動パルスP1n(M0)及び主駆動パルスP1m(M1)の双方を1ランクダウンした主駆動パルスに変更する(ステップS508)。制御回路108は、前記ランクダウン時にランクnが負と判定すると(ステップS509)、これ以上ランクダウンできないため、エネルギランクn、mを各々最低ランクの「0」にする(ステップS510)。
【0038】
次に、制御回路103は、分周回路102からの時計信号を計時して、クロノグラフ針113の駆動タイミングが到来したと判定すると(ステップS511)、補正駆動パルスP2(M1)によるクロノモータ111の駆動が指示されていない場合には(ステップS512)、図2に示すように、そのときのエネルギランクの主駆動パルスP1m(M1)(ここではm=0)によってクロノモータ111を回転駆動するように駆動パルス発生回路104を制御した後(ステップS514)、処理ステップS501に戻る。
駆動パルス発生回路104はモータ駆動回路106を介して主駆動パルスP1m(M1)によってクロノモータ111を回転駆動する。クロノモータ111はクロノグラフ針117、118、113を駆動して運針する。
【0039】
制御回路103は、処理ステップS512において補正駆動パルスP2(M1)によるクロノモータ111の駆動が指示されている場合には、図4に示すように、補正駆動パルスP2(M1)に変更してクロノモータ111を回転駆動するように駆動パルス発生回路104を制御した後(ステップS513)、処理ステップS501に戻る。駆動パルス発生回路104はモータ駆動回路106を介して補正駆動パルスP2(M1)によってクロノモータ111を強制的に回転駆動する。クロノモータ111はクロノグラフ針117、118、113を駆動して運針する。これにより、クロノグラフ針117、118、113を確実に運針させることができる。
【0040】
制御回路103は、処理ステップS511においてクロノグラフ針113の駆動タイミングが到来していないと判定した場合、処理ステップS501に戻る。
制御回路103は、処理ステップS509においてランクnが負ではないと判定した場合、処理ステップS507において繰り返し回数Nが160回に達していないと判定した場合、及び、処理ステップS501において時刻秒針116の駆動タイミングが到来していないと判定した場合には、処理ステップS511に移行する。
【0041】
制御回路103は、処理ステップS502において磁界検出回路108が所定値を超える外部磁界を検出した(外部磁界有り)と判定すると、図4に示すように、補正駆動パルスP2(M0)によって時刻モータ112を駆動するように駆動パルス発生回路104を制御し(ステップS518)、駆動パルス発生回路104はモータ駆動回路109を介して主駆動パルスP2(M0)によって時刻モータ112を強制的に回転駆動する。時刻モータ112は時刻針114、115、116を駆動して運針する。これにより、時刻針114、115、116を確実に運針できる。
【0042】
次に、制御回路103は、図4に示すように補正駆動パルスP2(M1)によってクロノモータ111を駆動するように指示を出した後(ステップS519)、処理ステップS511に移行する。制御回路103は、処理ステップS512、S513において、処理ステップS519の指示を受けて補正駆動パルスP2(M1)によってクロノモータ111を駆動するように制御することになる。
【0043】
一方、制御回路103は、処理ステップS505において時刻モータ112が回転しなかったと判定すると、図3に示すように、補正駆動パルスP2(M0)によって時刻モータ112を駆動するように駆動パルス発生回路104を制御する(ステップS515)。駆動パルス発生回路104は、モータ駆動回路109を介して補正駆動パルスP2(M0)により時刻モータ112を強制的に回転駆動する。時刻モータ112は時刻針114、115、116を駆動して運針する。
【0044】
この場合、制御回路103は、油の粘性増加等によって共通の負荷が増加したと判定し、補正駆動パルスP2(M1)によってクロノモータ111を駆動するように指示を出す(ステップS516)。制御回路103は、処理ステップS512、S513において、処理ステップS516の指示を受けて、図4に示すように、補正駆動パルスP2(M1)によってクロノモータ111を駆動するように制御することになる。
【0045】
次に、制御回路103は、主駆動パルスP1n(M0)のエネルギランクが最大でない場合(ステップS520)、ランクアップすることが可能であるため、図3に示すように両方の主駆動パルスP1n(M0)、P1m(M1)のエネルギランクをともに1ランクアップした後(ステップS521)、処理ステップS501に戻る。制御回路103は、処理ステップS520において主駆動パルスP1n(M0)のエネルギランクが最大の場合はランクアップすることができないため、両方の主駆動パルスP1n(M0)、P1m(M1)のエネルギランクn、mをともに最低ランク「0」にした後(ステップS517)、処理ステップS501に戻る。これにより、無駄な電力消費を防ぐ。
前記動作を時刻モータ112及びクロノモータ111について、各々、異なる極性で交互に行うことにより、現在時刻を時刻針114、115、116によって表示し、計測時間をクロノグラフ針117、118、113によって表示する。
【0046】
以上述べたように本実施の形態に係るステッピングモータ制御回路は、第1指針である時刻針114、115、116を駆動する時刻モータ112と、第2指針であるクロノグラフ針117、118、113を駆動するクロノモータ111と、時刻モータ112の非駆動時に発生する信号に基づいて負荷状況を検出する負荷検出回路107と、負荷検出回路107が検出した負荷状況に応じて、時刻モータ112及びクロノモータ111の駆動パルスを変更して駆動する制御手段とを備えている。
【0047】
また、時刻モータ112を用いて負荷検出回路107で大きな負荷を検出して主駆動パルスP1n(M0)のエネルギランクをランクアップした場合、クロノモータ111の主駆動パルスP1m(M1)もランクアップする。
また、時刻モータ112を用いて磁界検出回路108により外部磁界が有ることを検出し補正駆動パルスP2(M0)によって時刻モータ112を駆動した場合、クロノモータ111も補正駆動パルスP2(M1)によって駆動するようにしている。
【0048】
したがって、複数のステッピングモータを用いて駆動する場合に、回転検出回路105の構成を大規模にすることなく、各ステッピングモータ111、112に共通の負荷に応じた駆動パルスによって駆動することにより、省電力化を図ることが可能になる。
また、ランクダウン時の回転誤検出による時計の実測遅れを防ぐことが出来る。
また、時刻モータ112の各駆動前に負荷状況を判定し、それに応じた駆動パルスで駆動しているため、省電力化を図りつつ確実な駆動が可能になる。
【0049】
また、本発明に係るアナログ電子時計によれば、複数のステッピングモータを用いて駆動する場合に、回転検出回路の構成を大規模にすることなく、各ステッピングモータ共通の負荷に応じた駆動パルスによって駆動とすることにより、低消費電力で正確な運針を行うことが可能になる。
また、少ない駆動パルス列の組合せで、カレンダ負荷等の重負荷を駆動するアナログ電子時計を実現できる。
【0050】
尚、前記実施の形態では、駆動パルスの駆動エネルギを変えるために、矩形波のパルス幅を変えるようにしたが、パルス自体を櫛歯波にし、そのON/OFFデューティを変えたり、パルス電圧を変える等によっても駆動エネルギを変えることが可能である。
また、前記実施の形態では、時刻モータ112とクロノモータ111を備えたクロノグラフ時計の例で説明したが、カレンダ機能付きアナログ電子時計をはじめ、複数のステッピングモータを使用するアナログ電子時計に適用可能である。
また、指針は時刻針やクロノグラフ針以外でもよい。
また、ステッピングモータの応用例として電子時計の例で説明したが、モータを使用する電子機器に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係るステッピングモータ制御回路は、ステッピングモータを使用する各種電子機器に適用可能である。
また、本発明に係るアナログ電子時計は、カレンダ機能付きアナログ電子時計やクロノグラフ時計をはじめ、複数のステッピングモータを使用するアナログ電子時計に適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
101・・・発振回路
102・・・分周回路
103・・・制御回路
104・・・駆動パルス発生回路
105・・・回転検出回路
106、109・・・モータ駆動回路
107・・・負荷検出回路
108・・・磁界検出回路
110・・・モータ部
111・・・クロノモータ
112・・・時刻モータ
113・・・クロノグラフ秒針
114・・・時刻時針
115・・・時刻分針
116・・・時刻秒針
117・・・クロノグラフ時針
118・・・クロノグラフ分針

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1指針を駆動する第1ステッピングモータと、第2指針を駆動する第2ステッピングモータと、前記第1ステッピングモータの非駆動時に発生する信号に基づいて負荷状況を検出する負荷検出手段と、前記負荷検出手段が検出した負荷状況に応じて、前記第1ステッピングモータ及び第2ステッピングモータの駆動パルスを変更して駆動する制御手段とを備えて成ることを特徴とするステッピングモータ制御回路。
【請求項2】
前記制御手段は、負荷変動にともなって前記第1ステッピングモータの駆動パルスを異なるエネルギの駆動パルスに変更した場合、前記第1ステッピングモータの駆動パルス変更に対応するように前記第2のステッピングモータの駆動パルスを変更して駆動することを特徴とする請求項1記載のステッピングモータ制御回路。
【請求項3】
前記負荷検出手段は、前記第1ステッピングモータの各駆動前に負荷状況を検出することを特徴とする請求項1又は2記載のステッピングモータ制御回路。
【請求項4】
前記負荷は外部磁界による負荷であり、前記負荷検出手段は前記外部磁界を検出する磁界検出手段を有し、
前記制御手段は、前記磁界検出手段が所定値を超える強さの磁界を検出した場合、前記第1ステッピングモータ及び第2ステッピングモータの駆動パルスをエネルギの大きい駆動パルスに変更して駆動することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載のステッピングモータ制御回路。
【請求項5】
前記制御手段は、前記磁界検出手段が所定値を超える強さの磁界を検出した場合、前記第1ステッピングモータ及び第2ステッピングモータの駆動パルスを通常駆動パルスからエネルギの大きい補正駆動パルスに変更して駆動することを特徴とする請求項4記載のステッピングモータ制御回路。
【請求項6】
前記負荷は前記第1ステッピングモータから前記第1指針に至る経路の油の粘性による負荷であり、前記負荷検出手段は前記第1ステッピングモータが回転したか否かを検出する回転検出手段を有し、
前記制御手段は、前記回転検出手段が前記第1ステッピングモータは主駆動パルスによる駆動では回転しなかったことを検出した場合、前記第1ステッピングモータ及び第2ステッピングモータの駆動パルスをエネルギの大きい駆動パルスに変更して駆動することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載のステッピングモータ制御回路。
【請求項7】
前記制御手段は、前記第1ステッピングモータが主駆動パルスによって回転しなかった場合、前記第1ステッピングモータを前記主駆動パルスよりもエネルギの大きい補正駆動パルスによって駆動すると共に、前記第2のステッピングモータは主駆動パルスによる駆動を行うことなく補正駆動パルスに変更して駆動することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一に記載のステッピングモータ制御回路。
【請求項8】
前記制御手段は、前記第1ステッピングモータが主駆動パルスによって所定回数連続して回転した場合、前記第1ステッピングモータ及び第2ステッピングモータの主駆動パルスをランクダウンして駆動することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一に記載のステッピングモータ制御回路。
【請求項9】
前記第1ステッピングモータは前記第1指針である時刻針を駆動する時刻モータであり、前記第2ステッピングモータは前記第2指針であるクロノグラフ針を駆動するクロノモータであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一に記載のステッピングモータ制御回路。
【請求項10】
第1指針を駆動する第1ステッピングモータと、第2指針を駆動する第2ステッピングモータと、前記各ステッピングモータを制御するステッピングモータ制御回路とを有するアナログ電子時計において、前記ステッピングモータ制御回路として請求項1乃至9のいずれか一に記載のステッピングモータ制御回路を用いたことを特徴とするアナログ電子時計。
【請求項11】
前記第1指針は時刻針、前記第2指針はクロノグラフ針であることを特徴とする請求項10記載のアナログ電子時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−64600(P2011−64600A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216246(P2009−216246)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】