説明

ステントを備えたカテーテル及びその製造方法

【課題】体内に拡張可能なステント部材を導入し且つ移植するためのカテーテル装置および方法を提供する。
【解決手段】カテーテルはカテーテル部材を有し、該カテーテル部材は第1及び第2端部を備え、第1端部は膨張可能部分2を備え、カテーテル部材は更に管孔5を備え、該管孔は膨張可能部分及び第2端部と流体連通して、膨張可能部分を膨張させる手段を構成する。拡張可能なステント部材3は、拡張されると永久変形できる。ステント部材の少なくとも一部が結合部により膨張可能部分に取り付けられており、膨張可能部分を膨張させると、結合部がステント部材から解放され、ステント部材の配備及びカテーテル部材の取外しが可能になる。結合部は、バルーン表面7と同じ材料又は異なる材料で形成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントを導入し且つ移植するためのカテーテル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
該カテーテル装置はカテーテルを有し、該カテーテルはその一端に拡張可能部分を備え且つその反対側端部に、拡張可能部分を拡張させる手段と連通させる要素を備えている。カテーテル装置は更にステントを有し、該ステントは、カテーテルが拡張されると永久変形が付与され、拡大横方向寸法を維持できる材料で作られている。前記ステントはカテーテルの拡張可能部分の周囲に配置され且つ挿入中のステントの移動を防止するためカテーテルに対して解放可能に固定される。
【0003】
例えば動脈硬化により血管が部分的に閉塞された場合、従来は、直接閉塞部位を手術して、この種の疾患を患っている患者を治療する必要があった。このような部分閉塞は、拡張可能部分を備えたカテーテルを血管内に導入し且つ部分閉塞領域内でカテーテルの拡張可能部分を拡張することにより拡張できる。しかしながら、これは必ずしも充分ではない。なぜならば、部分閉塞部は、再びその部分閉塞状態に復帰すなわち回帰するからである。近年、血管の部分閉塞部内にステント(人工骨頭)を移植することによりこのような場合の治療を行なうのが一般的になりつつある。移植後、ステントは、血管を拡張状態に維持する効果を血管に与える。殆どの場合、患者は、将来におけるこの疾患のより重大な結果を回避できるであろう。
【0004】
拡張可能部分を備えた種々の形式のカテーテルを入手できる。第1形式のカテーテルは、圧力の作用を受けたときに拡張可能部分の弾性変形により拡張される部分を有する設計になっている。この形式は、しばしばバルーンカテーテルと呼ばれる。このようなカテーテルの特定実施例が英国特許第156674号に開示されている。このカテーテルはその拡張可能部分に補強ウェブを有し、該補強ウェブは菱形パターンを有している。このようなカテーテルの拡張可能部分の拡張は、必然的に拡張可能部分の長さの減少をもたらす。
【0005】
第2形式のカテーテルは実質的に非エラストマ材料で作られ、且つカテーテルの非拡張状態において残余のカテーテル組立体の回りで例えば丸められ且つ折り畳まれる要素が設けられている。圧力の作用によって、拡張可能部分が拡げられる。
ステントも種々の実施例のものが入手できる。圧力拡張形ステントと自動拡張形ステントとは区別されている。本発明が関連するステント形式は圧力拡張形ステントであり、該ステントは、所望の導入直径に到達するまで、カテーテルからの圧力により永久変形される。このようなステントの一例が、欧州特許第312852号から知られている。該特許に開示されたステントは合着針金(coherent thread)から作られている。
【0006】
このようなカテーテルの移植は、ステントを取り付ける拡張可能部分が設けられたカテーテルにより行なわれる。ステントを備えたカテーテルは、例えば脚の血管にステントを取り付ける場合には鼡径部に導入され、X線モニタリングにより部分閉塞部位に案内される。次に、カテーテルに連結される手段がカテーテルに圧力を加えると、拡張可能部分がステントを血管壁に対して外方に押しつける。次に圧力を低下させると、カテーテルを血管から引き抜くことができ、一方、ステントは、治療を必要とする血管部位に拡張された状態で留まる。ともすると部分閉塞部位に必要とされる手術に比べ、この操作は比較的簡単であり、従って多くの状況において望まれている。
【0007】
種々の形式のステントを配備するバルーンカテーテルは、医療分野で広く使用されるようになっている。このような比較的侵入的でない技術は、患者及び外科医の双方にとって多くの利益を享受できる。この領域で利益を享受できるにも拘らず、挿入時の未膨張バルーン上でのステントの好ましくない移動の防止、及び拡張及び完全配備の前のステントの配置及び最終位置決めに関する幾つかの問題がある。ステントは、曲りくねった血管を通り抜けるときにバルーンに対してしばしば移動し且つ膨張可能なバルーン上で中心がずれ、このためステントが不完全又は不適正に拡張することがある。最悪の場合のシナリオでは、バルーンがその拡大及び適正な位置決めが不可能になるように移動するかもしれない。例えば欧州特許EP-A-0442657号は、上記形式のカテーテル装置であって、ステントがカテーテルの拡張可能部分の周囲に配置され且つカラー又はスリーブがカテーテルに取り付けられ、ステントをその端部で固定する機能のみを有するカテーテル装置を開示している。
【0008】
そのカラーのため、この既知のカテーテル装置は比較的大きな直径を有している。また、このカテーテル装置は、小さな湾曲半径の血管を通してカテーテル装置を導入するときに、ステントがカテーテル表面から離れるように移動し、このため血管に損傷を与える危険があるという欠点を有する。
【0009】
米国特許第4,950,227号は、同様なカテーテル装置ではあるが、別のステント実施例すなわちいわゆる「ニットステント(knitted stent)」を使用し、これによりステントがカテーテル表面から離れるように移動する危険性が減少した(しかしながら、完全に危険性が無くなったわけではない)カテーテル装置を開示している。しかしながら、この米国特許に開示のカテーテル装置もステントを機械的に固定するカラーを使用するため、カテーテルの外径が増大するという、上記他のカテーテル装置と同様な欠点を有している。
【0010】
挿入中のステントの好ましくない移動を解決するための努力として、接着剤を使用してステントをバルーンに結合するものがある。例えば米国特許第5,100,429号は、光分解性接着剤を用いてバルーンをステントに結合している。次に、ひとたびステントが体内に挿入されたならば、光を用いて接着剤を分解する。この開示では、使用されるステントはカテーテル組立体の周囲に巻き付けられる形式であり、これは、集合装置がこの部分で比較的大きい断面になることを意味している。これにより、カテーテル装置の適用分野が制限される。また、実際には、移植されたステントに接着剤残留物が必ず残されることが証明されており、この残留物は血管の閉塞を引き起こさないように分解すべきである。これにより、移植がより困難になり、且つカテーテル装置は特別な接着剤(例えば光分解性接着剤)及び接着剤を分解するためカテーテルと組み合わされる手段、例えば光源を必要である。
【0011】
かくして、ステントが組み込まれる既知のカテーテル装置は、ステントの端部又は全体とオーバーラップする部分を有することにより、又はステントがカテーテル組立体の周囲に巻き付けられることにより、比較的大きな横方向寸法を有するという事実から、このようなカテーテル装置の適用分野は制限される。また、既知のカテーテル装置には、移植されるステントに接着剤残留物が付着するという危険性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の1つの目的は、簡単な方法でカテーテルに対してステントを確実に固定できる形式のカテーテル装置であって、このようなカテーテル装置が従来技術に比べて実質的に小さな横方向寸法をもつように設計でき且つ接着剤残留物又はカテーテル材料が移植されるステントに付着する危険性がないカテーテル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は、ステントが、該ステントと支持体との間の接着力(この接着力は、拡張可能部分により加えられる剪断力より小さい)により、カテーテルの拡張可能部分(該部分は、これが拡大するときに接着的連結に影響を与える)に接着的に連結されることを特徴とするカテーテル装置により達成される。ステントは、拡張可能部分が拡張されるときにボンドラインに発生する剪断力より小さい接着力により、ボンドラインでカテーテルの拡張可能部分に対して解放可能に連結され、これにより、拡張中にステント表面(すなわち、ステント/接着剤の界面)での前記ボンドラインの接着力が喪失し、前記ステントが解放される。本願明細書で使用する用語「接着力の喪失(adhesively fails)」は、界面での接着力の喪失を意味し、接着剤自体のマトリックスにおける接着剤の喪失をいうものではない。
かくして、接着的連結は適当な接着剤の使用により、又はカテーテル表面を軟化し、次に該表面上にステントを配置することにより形成される。
【0014】
本発明の特に適した実施例によれば、ステントは、カテーテルの拡張可能部分が非拡張状態にあるときに、カテーテル表面内に少なくとも部分的に押し込まれている。かくして、カテーテル表面内へのステントの押し込みにより、カテーテルに対するステントの軸線方向変位が防止され且つカテーテル装置の横方向寸法が一層減少される。
バルーンにステントを結合するのに接着剤を使用するという考えは、ひとたび結合部が破壊されたときに接着剤が残留するという特有の問題を有している。このような接着剤の残留は、接着剤が経時的に生分解性を有するものであっても、幾つかの問題があり、細い血管の閉塞並びに他の副作用を引き起こす。
【0015】
本発明は、接着剤が残留する危険なくして解放可能な結合部が形成されるように、カテーテルの膨張可能部分にステントを固定する解決方法を探究する。一実施例では、結合部はバルーンの膨張可能部分と同じ材料で形成される。これは、バルーンの外壁を軟化し、この軟化した膨張可能壁内にステントを押し込み且つ軟化した材料がステントに接着できるようにすることにより達成される。実際、このような結合部の形成はホットメルト接合である。この結合部は、ワイヤステント又はケージステント並びに多孔質管状ステントを含む多数の種々の形式のステントに適用できる。この結合部は、ステントとバルーン表面との間の各接触点に生じることもあり、或いは所定の間隔を隔てた接触点に形成されることもある。
【0016】
他の実施例では、バルーン壁を形成する材料と同じ材料又は異なる材料の別体接着剤を用いることができる。しかしながら、この場合には、接着剤の材料は、バルーンの弾性係数と実質的に同じ弾性係数を有することが必要である。これにより、バルーンの拡張中に、接着剤をバルーンに対して静止状態に維持し且つ残留物を残すことなくステントから接着剤を解放させることができる。接着剤の弾性係数と膨張可能部分(バルーン)の弾性係数は正確に同一である必要はないけれども、接着剤の弾性係数とステントの弾性係数との間の差異の度合いが最大で且つ膨張可能バルーンの弾性係数と接着剤の弾性係数との間の差異の度合いが最小であるのが好ましい。
【0017】
この条件は、拡張中に接着剤がバルーンから剪断作用を受けることを防止し且つステントがひとたび配備されたときに接着剤がステント上に残留することを防止するためのものである。接着剤の弾性係数が、ステントの弾性係数よりもバルーンの弾性係数に非常に近い場合には、接着剤は、バルーンに対し静止状態に維持されるけれども、ステントに対してはボンドライン接合部の箇所で移動するであろう。これは、図8A及び図8Bに関連して更に説明する。ステントとバルーンの壁表面との間の所与の接触表面で、種々の接触点が認識される。拡張中、これらの全ての接触点はほぼ同時に剪断方向に移動し始める。接着剤の弾性係数が、接着点がバルーンに対して移動しない(すなわち、バルーンと共に伸長する)程度である場合には、剪断力が接着剤をバルーン表面から持ち上げることはなく、接着剤はバルーン壁に付着した状態に維持される。しかしながら、ステントと接着剤との間のボンドライン界面では、接触点が相対移動し、結合部が剪断力により打ち負かされ且つステントから解放されるため、ステントを接着剤から解放し且つ接着剤を残留させることなく血管内にステントを配備することができる。ステントの弾性係数と接着剤の弾性係数との間の差異が充分に大きい場合には、全ての接触点が実質的に同時に移動する。この原理は、皮膚に接着バンデージを付着する例により簡単な態様で示すことができる。接着バンデージを非常にゆっくり剥がすことにより除去すると、除去が困難であり且つ痛みを伴う。しかしながら、接着バンデージが弾性を有し且つ引っ張ることができると、バンデージの両端部を反対方向に引っ張ることにより容易に除去でき、これにより両端部に剪断力が付与される。このようにすれば、バンデージが、皮膚を引っ張ることなく且つ最小の力で非常に容易に持ち上がる。これは、静止状態にある皮膚に対して接着剤の全ての接触点が移動するからである。
【0018】
本発明は、膨張可能部分を備えたカテーテル部材と、拡張されたときに永久変形でき且つ接合により前記膨張可能部分に対し解放可能に取り付けられたステント部材とを有するカテーテル装置であって、前記膨張可能部分を膨張させると接合部がステントから解放され、ステント部材を体内に配備できるカテーテル装置を提供することにより上記原理の長所を探究する。
【0019】
本発明では、ステントの端部又は場合によってはステント組立体の全体を機械的に固定するための付加要素(例えばカラー)を組み込むことを回避でき、従って、カテーテル装置全体の横方向寸法(すなわち直径)を従来のカテーテル装置よりかなり小さく構成できる。これは、カテーテルと一体のステントを備えたカテーテルを、導入シースを用いて患者に導入するときに非常に重要であり、これにより、小径の導入シースを選択することも可能になる。導入シースのサイズは、患者の回復及び治療後の病院からの退院の便宜にとって非常に重要である。必要とされる入院加療期間がこのように短縮できる結果、細い導入シースを使用できるという自由が、患者の健康に寄与し且つ病院での手術を合理化する。
【0020】
体内にステントを導入し且つ移植する本発明のカテーテル装置の一実施例では、カテーテル装置がカテーテル部材を有し、該カテーテル部材は第1及び第2端部を備え、第1端部は膨張可能部分を備え、カテーテル部材は更に管孔を備え、該管孔は前記膨張可能部分及び第2端部と流体連通して、前記膨張可能部分を膨張させる手段を構成し、カテーテル装置が更に、拡張されると永久変形される拡張可能なステント部材を有し、該ステント部材の少なくとも一部が結合部により前記拡張可能部分に取り付けられており、膨張可能部分を膨張させると、前記結合部がステント部材から解放されて、ステント部材の配備及びカテーテル部材の取外しが可能になる。
【0021】
結合部は接着剤からなることができ、該接着剤は、カテーテルの拡張可能部分すなわち膨張可能部分が拡張したときに、膨張可能部分(バルーン)と接着剤自体との間の結合部すなわち接着剤連結部が、バルーン/接着剤のボンドラインでは、ステント/接着剤のボンドラインに影響を与える力よりも小さな力により影響を受けるような弾性係数をもつ接着剤から選択しなければならない。この目的のための接着剤を選択することにより、ステントの移植中に、接着剤はカテーテル表面上に確実に保持される。適当な接着剤の選択は、弾性係数に基づいてなされる。カテーテルの膨張可能部分の弾性係数に非常に近い弾性係数をもつ接着剤を選択することにより、バルーンの拡張時に、バルーン/接着剤のボンドライン(界面)には殆ど剪断力が生じない。しかしながら、ステント/接着剤のボンドラインには、ステントと接着剤自体との間の弾性係数の大きな差異により比較的大きな剪断力が作用する。
【0022】
接着剤はバルーンの材料とは異なる材料から選択することができるけれども、バルーン材料自体を用いて接着結合部を形成するのが好ましい。これは、バルーン材料を軟化させ、軟化した領域内にステントを押し込み、且つバルーンが接触点で接着できるようにすることにより行なわれる。前述のように、この接着連結は本質的にホットメルト結合であり、これによりステントはバルーンに対して解放可能に接合する。この場合、接合部の形成に別体接着剤すなわち付加接着剤を全く使用しないので、ひとたびバルーン拡張部がステントを解放しても残留物が残ることはない。この実施例では、バルーン及び接着剤は同一材料であるから、これらの弾性係数は実質的に同じである。これらの弾性係数はステントの弾性係数よりかなり小さい。かくして、ステントの弾性係数とバルーンの弾性係数との差異は、所望の結果がえられるように最大になる。
【0023】
ステントは、ステント材料の厚さの1/20〜1/2の深さ、より好ましくは1/10〜1/3の深さまで、拡張可能部分のカテーテル表面内に押し込まれるのが好ましい。
また本発明は、拡張可能部分が一端に設けられたカテーテルと、拡張可能部分の周囲に配置された塑性変形可能なステントとを有する、ステントの導入及び移植を行なうためのカテーテル装置の製造方法に関する。
【0024】
本発明の方法は、カテーテルの拡張可能部分の周囲にステントを配置する工程と、拡張可能なカテーテルの表面を軟化させる工程と、ステントをカテーテル表面内に少なくとも部分的に押し込むためステントに圧力を加える工程とを有する。
これを行なう特に簡単な方法は、カテーテルの膨張可能部分上にステントを支持するカテーテルを、ステントを包囲する装置内に配置し、カテーテルの反対側端部に設けられた加圧流体導入要素を通してカテーテル内に加圧流体を導入して、カテーテルの拡張可能部分を拡大し且つ装置の内部の方向にステントを押圧してステントをカテーテル表面内に押し込むことである。
【0025】
次に、カテーテル内の流体圧力を低下させる。これにより、カテーテルの拡張可能部分の断面が同時に減少し、押し込まれたステントを支持するカテーテルを装置から取り出すことができる。
従って、上記方法は、カテーテル表面内にステントが押し込まれた本発明によるカテーテルの簡単且つ効率的な製造方法である。
【0026】
別の実施例では、ステントと膨張可能部分とを結合するのに別体の接着剤を使用する。接着剤は、バルーン/接着剤の界面ではなく、ステント/接着剤の界面のみを解放する結合部を形成するものが選択される。
カテーテル表面の軟化は、例えば溶剤の付着により行なうこともできる。しかしながら、制御が容易な加熱によりカテーテル表面を軟化するのが特に好ましい。軟化したカテーテル表面がその安定状態を回復すると、ステントはカテーテル材料に更に接着し、このため、血管内へのカテーテルの導入中のステントの固定に一層寄与する。接着剤が付着されると、カテーテル表面には接着剤の層が構成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して本発明を更に詳細に説明する。
図1は、本発明によるカテーテル装置の一実施例を示す。カテーテル装置は、拡張可能部分2が第1端部に設けられたカテーテル1と、カテーテルの拡張可能部分の周囲に配置されるステント3と、拡張可能部分2を拡張させる手段と連通させるための、カテーテルの反対側端部に設けられた要素とを有する。
【0028】
図2はステント3の詳細図である。ステントは、合着針金(coherent metal thread)で作られている。この針金は湾曲しており、従って、カテーテルの周囲でコイル状に巻かれたバンドのような形状をなし、これにより管状ステント3が形成されている。
【0029】
図3は、既知の方法で拡張可能部分が設けられたカテーテル1の構造を示す。この構造では、カテーテルの導入端4と内側管状部材5とが一体に形成されている。導入端4は、その先端部と管状部材5との間が開放している。これにより、カテーテルを血管内に導入するのにガイドワイヤ(図示せず)を使用できる。
内側管状部材5の周囲で且つ該内側管状部材5から一定距離を隔てて、外側管状部材6が配置されている。外側管状部材は、その一部が弾性変形可能材料7(好ましくは熱可塑性エラストマ)で作られ且つ一部が非変形材料8で作られている。
【0030】
カテーテルの反対側端部の要素が例えば流体圧力源に連結されると、内側管状部材と外側管状部材との間の空間に加圧流体が流入し、これによりエラストマ材料7が拡張され且つカテーテルの断面が第4図に示すように増大される。同時に、ステント材料は、湾曲部が互いに引き離されるように変形される。
【0031】
図5は、図4に示す状態にあるカテーテルの断面図である。
【0032】
図6Aは、カテーテルが非拡張状態にあるときに、ステント3が、弾性変形可能なカテーテル材料7の表面にどのように押し込まれているかを示すものである。カテーテル材料7は圧力の影響を受けて拡張するので、カテーテル表面に形成された円弧状凹部が変形し、カテーテルとステントとの間の接触面が第6B図に示すように減少する。非拡張状態においてステント針金に直ぐ隣接して位置している点Pは、カテーテルの拡張状態では、ステント針金から或る距離だけ隔たった点P′に位置すると概略的に説明できる。従って、それぞれ、ステント及びカテーテル表面に対して、接触要素の部分的変位が生じる。圧力の影響の不連続性及びカテーテル断面の確実な減少により、ステントは図4に示すようにその拡張状態に維持される。
【0033】
図7は、拡張可能なカテーテル部分の周囲にステントが配置されているカテーテルの端部を示し、この状態では、ステントは未だカテーテル表面に押し込まれていない。本発明の方法の好ましい実施例によれば、カテーテル1及びステント3は加熱装置9内に導入される。加熱装置の温度は50〜250℃(好ましくは約150℃)に維持される。実際の温度によって決まる或る時間の経過後、カテーテル表面は軟化される。カテーテルの反対側端部の要素は、例えば流体圧力源に連結され、加圧流体はカテーテルの拡張可能部分を拡大させ且つステントを装置の内壁に向かって押しやり、これによりステントはカテーテル表面に押し込まれる。流体圧力を低下させるとカテーテルの断面が減少し、これによりカテーテル及びステントが装置から取り外される。カテーテル表面が軟化され且つステントがその後にステント表面内に押し込まれると、カテーテルとステントとの間の接着的連結も得られる。これは、血管内への導入中にステントがカテーテルに対して固定された状態に保たれることを更に確実なものとする。カテーテル表面へのステントの取付け中に生じる拡張は、ステントの弾性変形を生じさせるに過ぎない範囲である。従って、この取付け工程中のステントのあらゆる拡張は、このようにして形成されるカテーテル装置がひとたび固定治具から取り外されると、ひとりでに非拡張状態に戻る。
【0034】
図8Aは非拡張状態のバルーンを示し、第8B図は、接着剤とステントとの間のボンドライン界面に作用する方向矢印で示す膨張力fI及び剪断力により拡張されたバルーンを示す。図8A図はフィレット(すみ肉)10の形態をなす別体接着剤を使用した本発明の一実施例を示し、フィレット10は、該フィレット10とステント3との間の界面11でのボンドラインを形成する。接着剤は、ステント3とバルーン12の外表面との間の連結部を形成する。図8Aにおいて、バルーンは非拡張状態すなわち収縮状態にある。バルーンの外表面12及び内表面13は、膨張可能バルーンの厚さt1を形成する。バルーン表面上に2つの点をd1、d2として印付けする。接着剤フィレット10の角部に位置するこれらの2つの点の間の距離を、両点間の出発長さを示すlIと定義する。図8Bに示すように膨張するとき、バルーンの内表面13に膨張力fIが作用して拡張が開始される。同時に、バルーンが引っ張られるので、接着剤連結部のボンドラインに剪断力fsが生じる。フィレット10を形成するエラストマ接着剤は、フィレットがバルーンと一緒に拡張するように、その弾性係数が選択される。拡張の間、バルーンの厚さはt2(t1より小さい)に減少する。また、接着剤連結部の全体に作用する剪断力によってボンドライン11が分離され、これにより、接着剤からステントが解放され且つギャップ14が形成されるため、バルーンを取り外して体内にステント3を永久固定することができる。バルーンの拡張の間、いかなる接着剤もステントに残留することがない。ステントと接着剤界面との間に比べ、接着剤とバルーン界面との間には殆ど移動がなく、これは、拡張中に接着剤10とステント3とが相対移動するため、ステントを解放する力をボンドライン11に加える必要が殆どないことを示している。
【0035】
カテーテルの拡張可能部分を作る材料は、多数の膨張可能な熱可塑性エラストマポリマーから選択できる。しかしながら、拡張可能バルーンはポリウレタンから作るのが好ましい。
【0036】
バルーンは、種々の方法で実施できるように、多くの構造及び形状に設計できる。また、バルーンには強化繊維及び/又は拡張制御繊維を設けることができる。一般に、これらの繊維は、所定限度以上の拡張を防止するため、バルーンのマトリックス中に螺旋状に埋入される。これらの繊維は、一般に、ポリエチレン又はポリエチレンテレフタレートのような非エラストマ熱可塑性材料から選択される。このような強化バルーンの一例が英国特許第1,566,674号に開示されており、この例では強化ウェブが拡張可能バルーン内に埋入されている。バルーンが膨張した状態において、強化ウェブは菱形又は螺旋状であり、菱形の一軸線は、バルーンが取り付けられるカテーテルの軸線と実質的に平行である。カテーテルの拡張可能部分の拡張により、菱形はその軸線方向長さが変化される。すなわち、バルーンの非膨張状態(非負荷状態)において、菱形の完全拡張状態における第2横軸線の長さが増大するように変化される。
【0037】
これは、カテーテルの拡張可能部分の長さが減少すること、すなわち、拡張中に軸線方向の移動が生じ、これによりステントの長さがカテーテルの拡張可能部分の長さ減少に等しい長さだけ減少し、従って、カテーテルからのステントの解放が更に促進されることを意味する。また、この拡張は、図6A及び図6Bに関連して上述したように、接触面の部分的変位にも寄与する。しかしながら、本発明のカテーテル装置に関連して他のカテーテルも適切に使用できる。また、あらゆる形式のバルーン拡張形ステントを使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明によるカテーテル装置の全体図である。
【図2】カテーテルの拡張可能部分が非拡張状態にあり且つステントが取り付けられたところを示す詳細図である。
【図3】カテーテルの拡張可能部分の縦断面図である。
【図4】図2に相当するカテーテル及びステントであるが、カテーテルが拡張した状態を示す図面である。
【図5】カテーテルの拡大可能部分の断面図であり、カテーテルが拡張した状態を示すものである。
【図6A】ステントがカテーテル表面に押し込まれた部分のカテーテルの詳細断面図であり、カテーテルが拡張していない状態を示すものである。
【図6B】ステントがカテーテル表面に押し込まれた部分のカテーテルの詳細断面図であり、拡張している状態を示すものである。
【図7】カテーテルの膨張可能部分をステントに結合する有効な装置を示す概略図である。
【図8A】カテーテルの拡張可能部分の概略縦断面図であり、ステントをバルーンに接合する別体接着剤を使用した例を示すものである。
【図8B】カテーテルの拡張可能部分の概略縦断面図であり、ステントをバルーンに接合する別体接着剤を使用した例を示すものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内にステントを導入し且つ移植するためのカテーテル装置において、 カテーテル部材を有し、該カテーテル部材は第1及び第2端部を備え、第1端部は膨張可能部分を備え、カテーテル部材は更に管孔を備え、該管孔は前記膨張可能部分及び第2端部と流体連通して、前記膨張可能部分を膨張させる手段を構成し、 拡張されると永久変形される拡張可能なステント部材を有し、該ステント部材の少なくとも一部が結合部により前記膨張可能部分に取り付けられており、それによって、膨張可能部分を膨張させると、前記結合部がステント部材から解放されて、ステント部材の配備及びカテーテル部材の取外しが可能になることを特徴とするカテーテル装置。
【請求項2】
前記結合部が接着剤であることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル装置。
【請求項3】
前記結合部が前記膨張可能部分から形成されることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル装置。
【請求項4】
前記結合部が前記膨張可能部分と同じ材料からなることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル装置。
【請求項5】
前記ステント部材は、その少なくとも一部が前記膨張可能部分内に押し込まれて、前記結合部を形成することを特徴とする請求項4に記載のカテーテル装置。
【請求項6】
前記ステント部材は、前記膨張可能部分の壁厚の約1/20〜1/2の深さまで前記膨張可能部分内に押し込まれることを特徴とする請求項5に記載のカテーテル装置。
【請求項7】
前記ステント部材は、ワイヤ又は孔が設けられた拡張可能な管状部材で形成されることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル装置。
【請求項8】
前記膨張可能部分が熱可塑性エラストマからなることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル装置。
【請求項9】
前記熱可塑性エラストマがポリウレタンであることを特徴とする請求の範囲第8項に記載のカテーテル装置。
【請求項10】
前記カテーテル部材が非エラストマ熱可塑性材料から形成されることを特徴とする請求の範囲第9項に記載のカテーテル装置。
【請求項11】
前記非エラストマ熱可塑性材料が、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項10に記載のカテーテル装置。
【請求項12】
前記膨張可能部分は、エラストマ材料内に包囲された非エラストマ材料で形成されることを特徴とする請求項10に記載のカテーテル装置。
【請求項13】
前記接着剤は、前記膨張可能部分が拡張したときに前記結合部が前記膨張可能部分から分離することがないように、前記膨張可能部分の弾性係数とほぼ同じ弾性係数を有し、且つ膨張したときに結合部がステント部材から分離するように、前記ステント部材の弾性係数より充分小さい弾性係数を有することを特徴とする請求項2に記載のカテーテル装置。
【請求項14】
前記接着剤がポリウレタンであることを特徴とする請求項13に記載のカテーテル装置。
【請求項15】
ステント部材を導入し且つ移植するためのカテーテル装置の製造方法において、
(i)カテーテル部材の膨張可能部分の周囲に拡張可能で永久変形可能な管状ステント部材を配置する工程と、
(ii)前記膨張可能部分の表面を軟化させる工程と、
(iii)軟化した表面がその元の非軟化状態に戻り、前記ステント部材に結合できるようにする工程とを有することを特徴とする方法。
【請求項16】
前記膨張可能部分を加圧する工程をさらに有することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記加圧工程が、軟化中及び前記軟化された表面が非軟化状態に戻る前に行われることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記軟化が溶剤を前記表面に付着させることにより達成されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記軟化が前記膨張可能部分を加熱することにより達成されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記ステント部材が、前記膨張可能部分の壁厚の約1/20から1/2の深さまで埋入されることを特徴とする請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【公開番号】特開2009−39577(P2009−39577A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301088(P2008−301088)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【分割の表示】特願2005−175542(P2005−175542)の分割
【原出願日】平成7年6月6日(1995.6.6)
【出願人】(594197377)ミードックス メディカルズ インコーポレイテッド (4)
【出願人】(505178446)ミードックス シュールジメッド アクティーゼルスカブ (1)
【Fターム(参考)】