ステントグラフト
【課題】大動脈分岐の領域に配備可能な分岐した血管内装置であって、内腸骨動脈と外腸骨動脈とがに枝別れした総腸骨動脈において、血流経路が血管内ステントグラフトを通ってこれらの動脈の各々へ配備することが可能な、ステントグラフトを提供する。
【解決手段】流体が開口を通って脚部の内側から脚部の外側に流れるのを防止するように弁構成82が構成されており、この弁構成は、管状体内の生体適合性グラフト材料のスリーブ82,96と、kの該スリーブ内の自己拡張型ステント85,98とを備える。スリーブはその近位端で開口の近位の管状体52に固定され、自己拡張型ステントはスリーブに固定されており、それにより、自己拡張型ステントは、流体が開口を通って流れるのを防止するように、開口の周りの管状体の内面に前記スリーブを押付ける。
【解決手段】流体が開口を通って脚部の内側から脚部の外側に流れるのを防止するように弁構成82が構成されており、この弁構成は、管状体内の生体適合性グラフト材料のスリーブ82,96と、kの該スリーブ内の自己拡張型ステント85,98とを備える。スリーブはその近位端で開口の近位の管状体52に固定され、自己拡張型ステントはスリーブに固定されており、それにより、自己拡張型ステントは、流体が開口を通って流れるのを防止するように、開口の周りの管状体の内面に前記スリーブを押付ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は医療装置に関し、より特定的には、血管内手段によって患者の血管系内に配備可能な、生体適合性グラフト材料の管状体を備えるステントグラフトに関する。
【背景技術】
【0002】
引用による援用
以下の説明において、以下の同時継続中の特許出願が引用される。
【0003】
・2004年10月12日に出願され、2005年8月15日に米国特許出願公開番号第US−2005−0182476−A1号として公開された、「腸骨側枝装置用導入器」(Introducer for Iliac Side Branch Device)と題された米国特許出願連続番号第10/962,763号
・「人工器官、および人工器官を配備する方法」(A Prosthesis and a Method of Deploying a Prosthesis)と題されたPCT特許公開第WO98/53761号
・2006年11月16日に出願された、「ステントグラフト導入器」(Stent Graft Introducer)と題された米国特許出願連続番号第11/600,655号
・2005年9月21日に出願され、2006年5月4日に米国特許出願公開番号第US−2006−0095118−A1号として公開された、「側枝ステントグラフト」(Side Branch Stent Graft)と題された米国特許出願連続番号第11/231,621号。
【0004】
これらの出願の各々の内容全体がここに引用により援用される。
発明の背景
血管系内、特に大動脈分岐の領域に配備可能な分岐した血管内装置が提案されており、腎動脈近傍の大動脈の非動脈瘤部分に入り込んで密封する近位部と、一方の腸骨動脈を下降して腸骨動脈の非動脈瘤部分まで延びる第1の脚部と、脚部延長部が対側腸骨動脈の非動脈瘤部分内へと延びるように配置され得る別の短い脚部とを有する血管内装置の配置により、大動脈の動脈瘤が架橋され得る。
【0005】
しかしながら、大動脈の動脈瘤が腸骨動脈のうちの一方または他方へと下方に延びているかどうかという問題があり得る。総腸骨動脈の各々は内腸骨動脈と外腸骨動脈とに枝分かれしており、そのような状況では、血流経路が血管内ステントグラフトを通ってこれらの動脈の各々へと向けられ得ることが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第US−2005−0182476−A1号
【特許文献2】PCT特許公開第WO98/53761号
【特許文献3】米国特許出願連続番号第11/600,655号
【特許文献4】米国特許出願公開番号第US−2006−0095118−A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の目的は、この問題を解決できる、または少なくとも外科医に有用な代替案を提供できる、血管内に配備される単一の医療装置を提供することである。
【0008】
この明細書全体を通し、大動脈、配備装置または人工器官の一部に対する「遠位」という用語は、心臓から遠ざかる血流の方向においてさらに遠ざかった大動脈、配備装置または人工器官の端を意味しており、「近位」という用語は、心臓により近い大動脈、配備装置の一部、または人工器官の端を意味する。他の血管に適用される場合、尾部および頭部といった同様の用語が理解されるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
従って一形態では、この発明は、貫通する主管腔を規定する生体適合性グラフト材料の管状体と、管状体の一端にある分岐と、分岐から延びる第1の脚部および第2の脚部とを備えるステントグラフトであって、第1の脚部は長い脚部で第2の脚部は短い脚部であり、第1および第2の脚部は貫通する第1および第2の管腔をそれぞれ有し、第1および第2の管腔は主管腔と流体連通しており、ステントグラフトは、第1の長い脚部が、貫通する側腕部管腔を有する側腕部を備え、側腕部管腔は第1の脚部の管腔と流体連通しており、それによりステントグラフトは、管状体が患者の大動脈にあり、第1の脚部が総腸骨動脈を下降して延び、第2の脚部が対側総腸骨動脈へと向けられ、かつ第1の脚部上の側腕部が腸骨動脈の内動脈に向けられた状態で、患者の血管系内に配備可能であることを特徴とする、ステントグラフトに存在すると言われる。
【0010】
好ましい一実施例では、側腕部は、波型の生体適合性グラフト材料の管を備え、管は第1の脚部の周りを部分的に螺旋状に延びている。
【0011】
代替的な一実施例では、側腕部は、生体適合性グラフト材料の管と、生体適合性グラフト材料の管上の少なくとも1つの自己拡張型ステントとを備える。「側枝ステントグラフト」と題された同時係属中の米国特許出願連続番号第11/231,621号は、この発明に好適な側腕管を開示している。
【0012】
好ましくは、第1の脚部は、側腕部の近位の開口または開窓(fenestration)と、流体が開口を通って脚部の内側から脚部の外側に流れるのを防止する弁構成とを含む。
【0013】
好ましくは、開口は、開口の周りに弾性補強リングを含む。
弁構成は、第1の脚部内の生体適合性グラフト材料のスリーブと、スリーブ内の自己拡張型ステントとを備えることができ、スリーブはその近位端で開口の近位の第1の脚部に固定され、自己拡張型ステントはスリーブに固定されており、それにより自己拡張型ステントは、流体が開口を通って脚部の内側から脚部の外側に流れるのを防止するよう、開口の周りの第1の脚部の内面にスリーブを押付ける。
【0014】
好ましい一実施例では、生体適合性グラフト材料のスリーブは、円筒形状を備える。代替的な一実施例では、生体適合性グラフト材料のスリーブは、半円筒形状を備える。
【0015】
また、これに代えて、弁は自己拡張型ステントから形成可能であり、自己拡張型ステントに、生体適合性グラフト材料の部分的に円筒形の部分が、自己拡張型ステントの間隔をおかれた支柱に沿って縫付けられる。これら2つの構成要素はともに、ステントグラフトの長いほうの脚部に縫付けられ得る弁アセンブリを形成できる。
【0016】
弁アセンブリは、弁部材を形成する生体適合性グラフト材料の部分的に円筒形の部分の遠位端の周りに、半円形の弾性ワイヤをさらに含み得る。生体適合性グラフト材料の部分的に円筒形の部分の遠位端の周りのこの半円形の弾性ワイヤは、弁部材の遠位端がステントグラフトの長いほうの第1の脚部の壁の内側に押し当てられることを確実にすることにより、開窓の密封を支援するであろう。
【0017】
生体適合性グラフト材料は、ポリテトラフルオロエチレン、ダクロン(Dacron)、ポリアミド、または任意の他の好適な生体適合性グラフト材料を含み得る。
【0018】
ステントグラフト用の管状グラフト材料には、ダクロン、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、または他の合成生体適合性材料が使用可能であるものの、コラーゲンなどの天然に生じる生体材料、特に小腸粘膜下組織(SIS)といった細胞外基質(ECM)として公知の特別に導出されたコラーゲン材料が非常に望ましい。SISの他に、ECMの例は、心膜、胃粘膜下組織、肝臓基底膜、膀胱粘膜下組織、組織粘膜、および硬膜を含む。
【0019】
SISは特に有用であり、バディラック(Badylak)等の米国特許第4,902,508号、カー(Carr)への米国特許第5,733,337号および17 ネイチャーバイオテクノロジー(Nature Biotechnology) 1083(1999年11月)に記載された「腸コラーゲン層」(Intestinal Collagen Layer)、PCT/US97/14855号の公開出願である1998年5月28日付のクック(Cook)等のWIPO公開第WO98/22158号に記載されたやり方で作られ得る。これらの教示はここに引用により援用される。材料の由来(合成または天然由来)に関わらず、材料は、たとえば米国特許第5,968,096号、第5,955,110号、第5,885,619号、および第5,711,969号に記載されたようなSIS構造といった多層構造を作ることによって、より厚くされ得る。SISのような異種生体材料に加え、自己組織も、管状グラフト材料を形成する際に使用するために採取され得る。加えて、エラスチンまたはエラスチン様ポリペプチド(ELP)などは、並外れた生体適合性を有する装置を形成するために、管状グラフト材料を作製する材料として可能性を提供する。
【0020】
SISは米国インディアナ(Indiana)州ウエスト・ラファイエット(West Lafyette)のクック・バイオテック(Cook Biotech)社から入手可能である。
【0021】
この発明により、腸骨動脈の各々へのアクセスを可能にする主分岐を有するステントグラフトが提供され、分岐から延びる脚部の一方には、内腸骨動脈へのアクセスを可能にするさらに別の分岐または分枝がある、ということがわかるであろう。二重分岐ステントグラフトを有することには何らかの利点がある。
【0022】
上述のように、好ましくは、分岐したステントグラフトの腸骨脚部の側腕部または側枝の近位に、弁構成がある。弁は、内在するカテーテルが、配備時に腸骨動脈の側腕部を通って設けられて、内腸骨動脈内への脚部延長部の配備を支援することを可能にする。
【0023】
「腸骨側枝装置用導入器」と題された米国特許出願連続番号第10/962,763号は、内在カテーテルを使用して内腸骨動脈にアクセスするための構成を開示しており、この明細書の教示はここにその全体が援用される。
【0024】
この場合、内在カテーテルを伸張させて、そのガイドワイヤを対側動脈から捕捉し、脚部延長部を腸骨動脈内に配置する前に脚部延長部を内腸骨動脈内に配置することが可能である。
【0025】
さらに別の一形態では、この発明は、貫通する主管腔を規定する生体適合性グラフト材料の管状体と、管状体の開窓を規定する開口と、流体が開口を通って流れるのを防止する弁構成とを備える、ステントグラフトに存在すると言われる。
【0026】
好ましくは、開口は、開口の周りに弾性補強リングを含む。
好ましくは、弁構成は、管状体内の生体適合性グラフト材料のスリーブと、スリーブ内の自己拡張型ステントとを備え、スリーブはその近位端で開口の近位の第1の脚部に固定され、自己拡張型ステントはスリーブに固定されており、それにより自己拡張型ステントは、流体が開口を通って流れるのを防止するよう、開口の周りの管状体の内面にスリーブを押付ける。
【0027】
生体適合性グラフト材料のスリーブは、円筒形状、またはこれに代えて半円筒形状を備え得る。
【0028】
一実施例では、弁構成は、自己拡張型ステントを備える弁アセンブリを備え、自己拡張型ステントに、生体適合性グラフト材料の部分的に円筒形の部分が、自己拡張型ステントの間隔をおかれた支柱に沿って縫付けられる。
【0029】
弁アセンブリは、弁部材を形成する生体適合性グラフト材料の部分的に円筒形の部分の遠位端の周りに、半円形の弾性ワイヤをさらに備え得る。
【0030】
これからこの発明を一般に説明するが、理解を助けるために、この発明のさらなる実施例を示す添付図面をここで参照する。
【0031】
本明細書全体を通し、発明の範囲に関してさまざまな示唆が与えられてきたが、この発明はこれらのうちのいずれにも限定されず、これらのうちの2つ以上が組合わされたものに存在するかもしれない。例は、限定のためではなく例示のためにのみ与えられている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】血管系内に配備された、この発明に従ったステントグラフトの第1の実施例の、腸骨側枝の配置前の図である。
【図2】側枝が内腸骨動脈内に設置され、脚部延長部が対側腸骨動脈に設置された状態の、図1の実施例を示す図である。
【図3】弁構成の一実施例を特に示す、この発明のステントグラフトの脚部の一部の概略図である。
【図4】図3に示す実施例の断面図である。
【図5】波型の側腕部および弁を通って延びる内在カテーテル以外は図4と同じ図である。
【図6】概略的な血管系内に配備された、側腕部の代替的な一構成を有するステントグラフトの代替的な一実施例を示す図である。
【図7】内在カテーテルを捕捉して対側動脈を下降するよう引っ張り、内在カテーテルを使用して延長片を内腸骨動脈内に配備した段階での図6の実施例を示す図である。
【図8】図6および図7に示すステントグラフトの実施例に好適な弁構成の代替的な一実施例を示す図である。
【図9】図8の弁構成を通る断面図である。
【図10】内在カテーテルが通って延びている図8および図9の弁構成を示す図である。
【図11】図6および図7に示すステントグラフトの実施例に好適な弁構成の代替的な一実施例を示す図である。
【図12】弁部材が搭載された自己拡張型ステントを示す図11の弁構成の詳細を示す図である。
【図13】図11の弁構成を通る断面図である。
【図14】内在カテーテルが通って延びている図11および図13の弁構成を示す図である。
【図15A】この発明の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図15B】この発明の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図15C】この発明の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図15D】この発明の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図15E】この発明の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図15F】この発明の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図15G】この発明の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図15H】この発明の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図15I】この発明の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図15J】この発明の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図15K】この発明の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図15L】この発明の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図15M】この発明の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図16A】図16Aは、この発明の別の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図16B】図16Bは、この発明の別の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図16C】図16Cは、この発明の別の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図16D】図16Dは、この発明の別の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図16E】図16Eは、この発明の別の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図16F】図16Fは、この発明の別の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図16G】図16Gは、この発明の別の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図16H】図16Hは、この発明の別の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図16I】図16Iは、この発明の別の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図16J】図16Jは、この発明の別の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図16K】図16Kは、この発明の別の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
詳細な説明
図面、特に図1および図2をより念入りに見てみると、この発明に従ったステントグラフトを取入れた患者の血管構成の一部の概略図が示されていることがわかるであろう。
【0034】
この血管系は、腎動脈12と大動脈分岐14との間の領域にある大動脈10を含む。総腸骨動脈16および18が、大動脈分岐14から下方に延びている。大動脈10は、内腸骨動脈24と外腸骨動脈26との間の分岐22のところまで総腸骨動脈18内を下方に延びる動脈瘤20を有する。
【0035】
動脈瘤20を横切るように、この発明の一実施例に従った二重に分岐した大動脈ステントグラフト40が、大動脈10内に配備されている。この図では、ステントグラフトを血管系内に配備するために使用される導入装置は、明確性を支援するために省略されている。「人工器官、および人工器官を配備する方法」と題された我々の先の特許出願であるPCT特許公開第WO98/53761号には、この発明での使用に好適なステントグラフト用導入器が開示されている。分岐したステントグラフト40の近位端42は、腎動脈12のちょうど遠位にある大動脈10の非動脈瘤部分28内に係合されている。この実施例では、ステントグラフト40は、ステントグラフトの移動を防止するよう安定した位置を提供するために腎動脈の近位の大動脈の壁に係合する突刺46を有する、近位に延びる腎上体露出ステント44を有する。ステントグラフト40は、グラフト分岐54から延びる短い脚部50と長い脚部52とを有する。長いほうの脚部52はその遠位端に、外腸骨動脈26の非動脈瘤部分内に係合する密封面56を有する。
【0036】
長いほうの脚部52は側腕部60を有し、それはこの実施例では、長いほうの脚部52への開窓62におけるその接続部から部分的に螺旋状に延びる波型管の形をしている。側腕部60は遠位方向に、かつ長いほうの脚部52の周りを部分的に螺旋状に延びており、内腸骨動脈24近傍で開いた、長いほうの脚部52とのその接続部から離れた遠位端61を有する。
【0037】
長いほうの脚部52への側腕部60の接続部の近位で、開窓64が長いほうの脚部52に配置されている。図3〜図5を参照して説明されるように、開窓64は、それを閉鎖するための弁構成を内部に有する。
【0038】
患者の血管系内にステントグラフトを配備する間、内在カテーテル66が側腕部60を通って延び、弁付開窓64を通って外に出る。内在カテーテルは、ガイドワイヤ68を含む。
【0039】
図2は、波型側腕部60内への延長片70の配備、および腸骨動脈16の非動脈瘤部分に入り込んで密封する脚部延長部72の、分岐ステントグラフト40の短い脚部50内への配備の後の図1の実施例を示す。「腸骨側枝装置用導入器」と題された米国特許出願連続番号第10/962,763号は、内在カテーテルを使用して内腸骨動脈にアクセスするための構成を開示している。この段階で内在カテーテルは引抜かれ、開窓64は弁構成によって閉鎖される。
【0040】
延長片70は、内腸骨動脈24の非動脈瘤部分に入り込んで密封する。
この発明の本実施例に従ったステントグラフトの配備のプロセスは、図15A〜図15Mを参照して説明される。
【0041】
図3、図4および図5は、この発明に好適な弁構成の第1の実施例を示す。
この実施例では、図1に示すような分岐ステントグラフト40の長いほうの脚部52は、長いほうの脚部52の管に縫付けられた周縁弾性リング80によって規定される開窓64を有する。長いほうの脚部の内側には、生体適合性グラフト材料82の半円形部分と、半円形の生体適合性グラフト材料82と係合してそれを長いほうの脚部52の内壁に、特に開窓64を覆うように押し当てる弾性自己拡張型ジグザグステント85とがある。この構成により、開窓64は閉鎖された構成に保たれる。半円形の断片82はその近位端で、縫目83によって長いほうの脚部52の内壁に縫付けられる。
【0042】
管状の長いほうの脚部52における開窓64の実質的に反対側で、側腕部60が管状の長いほうの脚部52における開窓62から延びている。
【0043】
図5は、図4に示すような実施例を示しているが、内在カテーテル66と内在カテーテルを通るガイドワイヤ68とが側腕部60および開窓64を通って延び、これが弾性自己拡張型ステント85の復元力に逆らって開窓64から弁82を持上げる、という点が異なっている。
【0044】
図6および図7は、患者の血管系におけるこの発明に従った分岐ステントグラフトの代替的な実施例を示す。血管系および分岐ステントグラフトは図1および図2に示した先の実施例と同様であり、同じ参照番号が、対応する項目について使用される。
【0045】
この血管系は、腎動脈12と大動脈分岐14との間の領域にある大動脈10を含む。総腸骨動脈16および18が、大動脈分岐から下方に延びている。大動脈10は、内腸骨動脈24と外腸骨動脈26との間の分岐22のところまで総腸骨動脈18内を下方に延びる動脈瘤20を有する。
【0046】
動脈瘤を横切るように、分岐した大動脈ステントグラフト40が、大動脈10内に配備されている。分岐したステントグラフト40の近位端42は、腎動脈12のちょうど遠位にある大動脈10の非動脈瘤部分28内に係合されている。この実施例では、ステントグラフト40は、ステントグラフトの移動を防止するよう安定した位置を提供するために腎動脈の近位の大動脈の壁に係合する突刺46を有する、近位に延びる腎上体露出ステント44を有する。ステントグラフト40は、グラフト分岐54から延びる短い脚部50と長い脚部52とを有する。長いほうの脚部52はその遠位端に、外腸骨動脈26の非動脈瘤部分内に係合する密封面56を有する。
【0047】
長いほうの脚部52は側腕部90を有し、それはこの実施例では、長いほうの脚部52の開窓92から延びるステント管の形をしている。側腕部90は遠位方向に延びており、内腸骨動脈24近傍で開いた、長いほうの脚部52とのその接続部から離れた端94を有する。
【0048】
長いほうの脚部52への側腕部90の接続部の近位で、開窓64が長いほうの脚部52に配置されている。図8〜図10を参照して説明されるように、開窓64は、それを閉鎖するための弁構成を内部に有する。
【0049】
患者の血管系内にステントグラフトを配備する間、内在カテーテル66が側腕部90を通って延び、弁付開窓64を通って外に出る。内在カテーテルは、それを通るガイドワイヤ68を含む。
【0050】
図7は、側腕部90内への延長片70の配備後の図6の実施例を示す。「腸骨側枝装置用導入器」と題された米国特許出願連続番号第10/962,763号は、内在カテーテルを使用して内腸骨動脈にアクセスするための構成を開示している。この段階で内在カテーテルは引抜かれ、開窓64は弁構成によって閉鎖される。延長片70は、内腸骨動脈24の非動脈瘤部分に入り込んで密封する。
【0051】
図8、図9および図10は、この発明に好適な弁構成の代替的な一実施例を示す。
弁のこの実施例では、図6に示すような分岐ステントグラフト40の長いほうの脚部52は、長いほうの脚部52の管状の壁に縫付けられた周縁弾性リング80によって規定される開窓64を有する。長いほうの脚部の内側には、生体適合性グラフト材料96の円筒形部分と、円筒形の生体適合性グラフト材料96と係合してそれを長いほうの脚部52の内壁に、特に開窓64を覆うように押し当てる自己拡張型ジグザグステント98とがある。この構成により、開窓64は閉鎖された構成に保たれる。生体適合性グラフト材料96の円筒形部分はその近位端で、縫目99によって長いほうの脚部52の内壁に縫付けられる。
【0052】
図10は、図9に示すような実施例を示しているが、内在カテーテル66とカテーテルを通るガイドワイヤ68とが側腕部60および開窓64を通って延び、これが開窓64のために弁96を持上げる、という点が異なっている。
【0053】
図11〜図14は、この発明に好適な弁構成のさらに別の実施例を示す。
この実施例では、分岐ステントグラフト40(図1)の長いほうの脚部200は、長いほうの脚部200の管に縫付けられた周縁弾性リング204によって規定される開窓202を有する。長いほうの脚部の内側には、複数の支柱208および湾曲部210を有する自己拡張型ステント206がある。自己拡張型ステント206を図12に示す。
【0054】
自己拡張型ステント206は、間隔をおかれた支柱208に縫付けられた1片の生体適合性グラフト材料から形成される弁部材212を有し、それは、部分的に円筒形の表面を自己拡張型ステント206上に設けて弁アセンブリ214を形成する。
【0055】
弁部材212の下方周囲には、縫目215によって保持された弾性ワイヤ213の一部があり、それは、長いほうの脚部200の管状体の内面に対する良好な密封に耐えるよう、弁部材の部分的に円形の形状の保持を支援する。
【0056】
この弁アセンブリは、弁部材が開窓202の下に位置して、長いほうの脚部の内側から外側に流す開窓を閉鎖するように、湾曲部210で縫目216により、長いほうの脚部200の管状体に縫付けられている。この段階の弁の断面を図13に示す。
【0057】
管状の長いほうの脚部200における開窓202の実質的に反対側で、側腕部218が管状の長いほうの脚部200における開窓220から延びている。この実施例では、側腕部218は波型のグラフト材料から形成される。
【0058】
図14は、図13に示すような実施例を示しているが、内在カテーテル66と内在カテーテルを通るガイドワイヤ68とが側腕部218および開窓202を通って延び、これが弾性自己拡張型ステント206の復元力に逆らって開窓202から弁部材212を持上げる、という点が異なっている。
【0059】
図15A〜図15Mは、この発明の一実施例に従ったステントグラフトの配備のさまざまな段階を示す。
【0060】
図15Aは、送達装置に搭載された、この発明に従ったステントグラフトの一実施例の概略版を示す。便宜上、送達装置の外装は、その内側のアセンブリを示すために取外されている。送達装置100はその近位端にノーズコーン拡張器102を有しており、この発明の一実施例に従ったステントグラフトアセンブリ104は、配備装置上に取付けられている。ステントグラフト104のこの実施例は、ステントグラフト104の長いほうの脚部108上に螺旋状の側腕部106を有する。内在カテーテル110が配備装置100から螺旋状の側腕部106を通って延び、弁付開口112で外に出て、ステントグラフト104の外部のノーズコーン拡張器102にある溝114へと延びる。内在カテーテル110は、柔軟な曲がった近位端116を有する。
【0061】
管状の側腕部106および弁構成112の詳細を、図15Bに示す。管状の側腕部106は開窓107から長いほうの脚部108の周りを延びており、内在カテーテル110は管状の側腕部内を延び、弁付開口112を通って外に出る。弁付開口112は、内在カテーテルが取外された際に開口が閉鎖されることを確実にするために、その内側にフラップ弁113を有する。フラップ弁は、図3〜図6に示す構成と実質的に同じである。
【0062】
図15Cは、大動脈10、腎動脈12、および大動脈分岐14を含む患者の概略的な血管系を示す。大動脈分岐から延びているのは、腸骨動脈16および18である。大動脈は、内腸骨動脈24の位置まで腸骨動脈を下降して延びる動脈瘤20を有する。腸骨分岐22は、内腸骨動脈24と外腸骨動脈26との間の分岐を規定する。
【0063】
図15Cに示すように、配備装置100は、そのノーズコーン102が動脈瘤20内へと上方に延びて、ノーズコーン102の遠位端が大動脈分岐14に実質的に隣接するように、ガイドワイヤ120上に配備される。図15Cに詳細に示すように、内在カテーテル、および特にその曲がった先端116は、外装122により、ノーズコーン拡張器の溝に入るよう圧縮されている。
【0064】
図15Dに示すように、配備装置の外装122は、内在カテーテル110の曲がった先端116を解放するために若干引抜かれ、内在カテーテル110からの内在ガイドワイヤ124が延ばされている。内在カテーテルの端が曲がっているため、内在ガイドワイヤ124は対側腸骨動脈16を下降して延びている。対側総腸骨動脈内にはスネアカテーテル128が配備されており、スネアカテーテル128のスネア130が延ばされてガイドワイヤ124を把持する。ガイドワイヤ124はスネアカテーテル128を介して抜き出され、そのためそれは全貫通ガイドワイヤとなる。この段階では、大動脈分岐への損傷を防ぐために、大動脈分岐においてガイドワイヤに撓みが保たれることを確実にすることが重要である。この位置を図15Eに示す。
【0065】
対側腸骨動脈からの捕捉を容易にするために曲がった先端を有する内在カテーテルを使用することは、「ステントグラフト導入器」と題された米国特許出願連続番号第11/600,655号に教示されており、その教示はここにその全体が援用される。
【0066】
図15Fに示すように、配備装置100は次に、ノーズコーン拡張器102が腎動脈12の近位となるよう進められる。これはまた、内在ガイドワイヤ124を大動脈10内へと上方に引寄せる。
【0067】
次に、配備装置110の外装122が引抜かれて、ステントグラフト104の短いほうの脚部109を解放する。この段階を図15Gに示す。
【0068】
図15Hに示すように、内在カテーテルは対側腸骨動脈16内へと下方に引抜かれ、外装122は、それが長いほうの脚部108の遠位端を依然として保ちつつ、側腕部106の遠位端の遠位となるように引抜かれる。
【0069】
図15Iに示すように、拡張器および外装導入器130が、対側腸骨動脈16内のガイドワイヤ124上を進められる。外装導入器のノーズコーン132が弁付開口112に入り、図15Jに示すように側腕部134の遠位端から出るまで側腕部106内を通ってガイドワイヤ124上を進むように、内在カテーテル110と延長腕部配備装置とがガイドワイヤ124上を進められる。次に外装導入器のノーズコーン132が引抜かれ、外装130を所定の位置に残す。この段階では、内在ガイドワイヤ124は依然として全貫通位置にある。図15Kに示すように、別のガイドワイヤ136が外装130を通って導入され、外装130から内腸骨動脈24に入るように延ばされる。
【0070】
図15Lに示すように、バルーン拡張型のカバーされたステント140が側腕部106から内腸骨動脈24内へと延びるように、側腕部配備装置がガイドワイヤ136上を内腸骨動脈24内へと配備される。図15Mに示すように、内在ガイドワイヤ124が次に除去されて、長いほうの脚部108の遠位端の位置が外腸骨動脈26内へとセットされ、バルーン拡張型のカバーされたステント140が拡張される。外装130が次に引抜かれ、弁112は自動的に閉じる。脚部延長部144が次に、グラフト104の短い脚部107内に配置される。グラフトの一部が腎動脈12の遠位の大動脈10の非動脈瘤部分に入り込んで密封しつつ、カバーされていない腎上体ステント148が安定した固定を提供するために腎動脈を覆って延びるように、ステントグラフトの近位端146も配備装置100から解放される。
【0071】
図16A〜図16Kは、この発明に従ったステントグラフトの代替的な一実施例と、患者の血管系にそのようなステントグラフトを配備するプロセスとを示す。
【0072】
この実施例のステントグラフトは、近位部150と遠位部152とを有する二部構成体を備え、それらは、患者の血管系内で組合わされると、複合ステントグラフトを提供する。近位部150は、近位に延びる腎上体ステント151を有しており、遠位部152は、短いほうの脚部156と長いほうの脚部158とに分岐されている。長いほうの脚部158は、螺旋状の側腕部160と、内在カテーテル164が通って延びている弁付開口162とを有する。
【0073】
この実施例のステントグラフトの配備のプロセスは、図15C〜図15Mに示すものと実質的に同様であるが、図16Cに示すように、第1段階として、近位部150が大動脈内に配備され、解放される点が異なっている。次に、内在カテーテル164を有する別個の装置170が導入され、それは遠位部152を担持しており、図16D〜図16Jに示すような内在ガイドワイヤの捕捉、主ステントグラフトの解放、および内腸骨動脈内への側腕部延長部の配備のプロセスは、図15C〜図15Lに示すものと実質的に同じである。図16Kに示すような、二部構成のステントグラフトの配備の最終段階は、近位部150の内側での遠位部152の解放、短い脚部156内への脚部延長部172の配備、および長いほうの脚部158の遠位端の解放を含む。
【0074】
内腸骨動脈内への配備のための代替的な実施例のアクセスは上腕アプローチによるものでもよく、そのような場合、側腕部における内在カテーテルはステントグラフトの主管腔を通って延びてもよく、そのような実施例では弁付開口は必要とはされないかもしれない。
【0075】
本明細書全体を通し、発明の範囲に関してさまざまな示唆が与えられてきたが、この発明はこれらのうちのいずれにも限定されず、これらのうちの2つ以上が組合わされたものに存在するかもしれない。例は、限定のためではなく例示のためにのみ与えられている。
【符号の説明】
【0076】
40 ステントグラフト、52,200 管状体、64 開窓、80 弾性補強リング、82,90 スリーブ、85,98 自己拡張型ステント。
【技術分野】
【0001】
この発明は医療装置に関し、より特定的には、血管内手段によって患者の血管系内に配備可能な、生体適合性グラフト材料の管状体を備えるステントグラフトに関する。
【背景技術】
【0002】
引用による援用
以下の説明において、以下の同時継続中の特許出願が引用される。
【0003】
・2004年10月12日に出願され、2005年8月15日に米国特許出願公開番号第US−2005−0182476−A1号として公開された、「腸骨側枝装置用導入器」(Introducer for Iliac Side Branch Device)と題された米国特許出願連続番号第10/962,763号
・「人工器官、および人工器官を配備する方法」(A Prosthesis and a Method of Deploying a Prosthesis)と題されたPCT特許公開第WO98/53761号
・2006年11月16日に出願された、「ステントグラフト導入器」(Stent Graft Introducer)と題された米国特許出願連続番号第11/600,655号
・2005年9月21日に出願され、2006年5月4日に米国特許出願公開番号第US−2006−0095118−A1号として公開された、「側枝ステントグラフト」(Side Branch Stent Graft)と題された米国特許出願連続番号第11/231,621号。
【0004】
これらの出願の各々の内容全体がここに引用により援用される。
発明の背景
血管系内、特に大動脈分岐の領域に配備可能な分岐した血管内装置が提案されており、腎動脈近傍の大動脈の非動脈瘤部分に入り込んで密封する近位部と、一方の腸骨動脈を下降して腸骨動脈の非動脈瘤部分まで延びる第1の脚部と、脚部延長部が対側腸骨動脈の非動脈瘤部分内へと延びるように配置され得る別の短い脚部とを有する血管内装置の配置により、大動脈の動脈瘤が架橋され得る。
【0005】
しかしながら、大動脈の動脈瘤が腸骨動脈のうちの一方または他方へと下方に延びているかどうかという問題があり得る。総腸骨動脈の各々は内腸骨動脈と外腸骨動脈とに枝分かれしており、そのような状況では、血流経路が血管内ステントグラフトを通ってこれらの動脈の各々へと向けられ得ることが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第US−2005−0182476−A1号
【特許文献2】PCT特許公開第WO98/53761号
【特許文献3】米国特許出願連続番号第11/600,655号
【特許文献4】米国特許出願公開番号第US−2006−0095118−A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の目的は、この問題を解決できる、または少なくとも外科医に有用な代替案を提供できる、血管内に配備される単一の医療装置を提供することである。
【0008】
この明細書全体を通し、大動脈、配備装置または人工器官の一部に対する「遠位」という用語は、心臓から遠ざかる血流の方向においてさらに遠ざかった大動脈、配備装置または人工器官の端を意味しており、「近位」という用語は、心臓により近い大動脈、配備装置の一部、または人工器官の端を意味する。他の血管に適用される場合、尾部および頭部といった同様の用語が理解されるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
従って一形態では、この発明は、貫通する主管腔を規定する生体適合性グラフト材料の管状体と、管状体の一端にある分岐と、分岐から延びる第1の脚部および第2の脚部とを備えるステントグラフトであって、第1の脚部は長い脚部で第2の脚部は短い脚部であり、第1および第2の脚部は貫通する第1および第2の管腔をそれぞれ有し、第1および第2の管腔は主管腔と流体連通しており、ステントグラフトは、第1の長い脚部が、貫通する側腕部管腔を有する側腕部を備え、側腕部管腔は第1の脚部の管腔と流体連通しており、それによりステントグラフトは、管状体が患者の大動脈にあり、第1の脚部が総腸骨動脈を下降して延び、第2の脚部が対側総腸骨動脈へと向けられ、かつ第1の脚部上の側腕部が腸骨動脈の内動脈に向けられた状態で、患者の血管系内に配備可能であることを特徴とする、ステントグラフトに存在すると言われる。
【0010】
好ましい一実施例では、側腕部は、波型の生体適合性グラフト材料の管を備え、管は第1の脚部の周りを部分的に螺旋状に延びている。
【0011】
代替的な一実施例では、側腕部は、生体適合性グラフト材料の管と、生体適合性グラフト材料の管上の少なくとも1つの自己拡張型ステントとを備える。「側枝ステントグラフト」と題された同時係属中の米国特許出願連続番号第11/231,621号は、この発明に好適な側腕管を開示している。
【0012】
好ましくは、第1の脚部は、側腕部の近位の開口または開窓(fenestration)と、流体が開口を通って脚部の内側から脚部の外側に流れるのを防止する弁構成とを含む。
【0013】
好ましくは、開口は、開口の周りに弾性補強リングを含む。
弁構成は、第1の脚部内の生体適合性グラフト材料のスリーブと、スリーブ内の自己拡張型ステントとを備えることができ、スリーブはその近位端で開口の近位の第1の脚部に固定され、自己拡張型ステントはスリーブに固定されており、それにより自己拡張型ステントは、流体が開口を通って脚部の内側から脚部の外側に流れるのを防止するよう、開口の周りの第1の脚部の内面にスリーブを押付ける。
【0014】
好ましい一実施例では、生体適合性グラフト材料のスリーブは、円筒形状を備える。代替的な一実施例では、生体適合性グラフト材料のスリーブは、半円筒形状を備える。
【0015】
また、これに代えて、弁は自己拡張型ステントから形成可能であり、自己拡張型ステントに、生体適合性グラフト材料の部分的に円筒形の部分が、自己拡張型ステントの間隔をおかれた支柱に沿って縫付けられる。これら2つの構成要素はともに、ステントグラフトの長いほうの脚部に縫付けられ得る弁アセンブリを形成できる。
【0016】
弁アセンブリは、弁部材を形成する生体適合性グラフト材料の部分的に円筒形の部分の遠位端の周りに、半円形の弾性ワイヤをさらに含み得る。生体適合性グラフト材料の部分的に円筒形の部分の遠位端の周りのこの半円形の弾性ワイヤは、弁部材の遠位端がステントグラフトの長いほうの第1の脚部の壁の内側に押し当てられることを確実にすることにより、開窓の密封を支援するであろう。
【0017】
生体適合性グラフト材料は、ポリテトラフルオロエチレン、ダクロン(Dacron)、ポリアミド、または任意の他の好適な生体適合性グラフト材料を含み得る。
【0018】
ステントグラフト用の管状グラフト材料には、ダクロン、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、または他の合成生体適合性材料が使用可能であるものの、コラーゲンなどの天然に生じる生体材料、特に小腸粘膜下組織(SIS)といった細胞外基質(ECM)として公知の特別に導出されたコラーゲン材料が非常に望ましい。SISの他に、ECMの例は、心膜、胃粘膜下組織、肝臓基底膜、膀胱粘膜下組織、組織粘膜、および硬膜を含む。
【0019】
SISは特に有用であり、バディラック(Badylak)等の米国特許第4,902,508号、カー(Carr)への米国特許第5,733,337号および17 ネイチャーバイオテクノロジー(Nature Biotechnology) 1083(1999年11月)に記載された「腸コラーゲン層」(Intestinal Collagen Layer)、PCT/US97/14855号の公開出願である1998年5月28日付のクック(Cook)等のWIPO公開第WO98/22158号に記載されたやり方で作られ得る。これらの教示はここに引用により援用される。材料の由来(合成または天然由来)に関わらず、材料は、たとえば米国特許第5,968,096号、第5,955,110号、第5,885,619号、および第5,711,969号に記載されたようなSIS構造といった多層構造を作ることによって、より厚くされ得る。SISのような異種生体材料に加え、自己組織も、管状グラフト材料を形成する際に使用するために採取され得る。加えて、エラスチンまたはエラスチン様ポリペプチド(ELP)などは、並外れた生体適合性を有する装置を形成するために、管状グラフト材料を作製する材料として可能性を提供する。
【0020】
SISは米国インディアナ(Indiana)州ウエスト・ラファイエット(West Lafyette)のクック・バイオテック(Cook Biotech)社から入手可能である。
【0021】
この発明により、腸骨動脈の各々へのアクセスを可能にする主分岐を有するステントグラフトが提供され、分岐から延びる脚部の一方には、内腸骨動脈へのアクセスを可能にするさらに別の分岐または分枝がある、ということがわかるであろう。二重分岐ステントグラフトを有することには何らかの利点がある。
【0022】
上述のように、好ましくは、分岐したステントグラフトの腸骨脚部の側腕部または側枝の近位に、弁構成がある。弁は、内在するカテーテルが、配備時に腸骨動脈の側腕部を通って設けられて、内腸骨動脈内への脚部延長部の配備を支援することを可能にする。
【0023】
「腸骨側枝装置用導入器」と題された米国特許出願連続番号第10/962,763号は、内在カテーテルを使用して内腸骨動脈にアクセスするための構成を開示しており、この明細書の教示はここにその全体が援用される。
【0024】
この場合、内在カテーテルを伸張させて、そのガイドワイヤを対側動脈から捕捉し、脚部延長部を腸骨動脈内に配置する前に脚部延長部を内腸骨動脈内に配置することが可能である。
【0025】
さらに別の一形態では、この発明は、貫通する主管腔を規定する生体適合性グラフト材料の管状体と、管状体の開窓を規定する開口と、流体が開口を通って流れるのを防止する弁構成とを備える、ステントグラフトに存在すると言われる。
【0026】
好ましくは、開口は、開口の周りに弾性補強リングを含む。
好ましくは、弁構成は、管状体内の生体適合性グラフト材料のスリーブと、スリーブ内の自己拡張型ステントとを備え、スリーブはその近位端で開口の近位の第1の脚部に固定され、自己拡張型ステントはスリーブに固定されており、それにより自己拡張型ステントは、流体が開口を通って流れるのを防止するよう、開口の周りの管状体の内面にスリーブを押付ける。
【0027】
生体適合性グラフト材料のスリーブは、円筒形状、またはこれに代えて半円筒形状を備え得る。
【0028】
一実施例では、弁構成は、自己拡張型ステントを備える弁アセンブリを備え、自己拡張型ステントに、生体適合性グラフト材料の部分的に円筒形の部分が、自己拡張型ステントの間隔をおかれた支柱に沿って縫付けられる。
【0029】
弁アセンブリは、弁部材を形成する生体適合性グラフト材料の部分的に円筒形の部分の遠位端の周りに、半円形の弾性ワイヤをさらに備え得る。
【0030】
これからこの発明を一般に説明するが、理解を助けるために、この発明のさらなる実施例を示す添付図面をここで参照する。
【0031】
本明細書全体を通し、発明の範囲に関してさまざまな示唆が与えられてきたが、この発明はこれらのうちのいずれにも限定されず、これらのうちの2つ以上が組合わされたものに存在するかもしれない。例は、限定のためではなく例示のためにのみ与えられている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】血管系内に配備された、この発明に従ったステントグラフトの第1の実施例の、腸骨側枝の配置前の図である。
【図2】側枝が内腸骨動脈内に設置され、脚部延長部が対側腸骨動脈に設置された状態の、図1の実施例を示す図である。
【図3】弁構成の一実施例を特に示す、この発明のステントグラフトの脚部の一部の概略図である。
【図4】図3に示す実施例の断面図である。
【図5】波型の側腕部および弁を通って延びる内在カテーテル以外は図4と同じ図である。
【図6】概略的な血管系内に配備された、側腕部の代替的な一構成を有するステントグラフトの代替的な一実施例を示す図である。
【図7】内在カテーテルを捕捉して対側動脈を下降するよう引っ張り、内在カテーテルを使用して延長片を内腸骨動脈内に配備した段階での図6の実施例を示す図である。
【図8】図6および図7に示すステントグラフトの実施例に好適な弁構成の代替的な一実施例を示す図である。
【図9】図8の弁構成を通る断面図である。
【図10】内在カテーテルが通って延びている図8および図9の弁構成を示す図である。
【図11】図6および図7に示すステントグラフトの実施例に好適な弁構成の代替的な一実施例を示す図である。
【図12】弁部材が搭載された自己拡張型ステントを示す図11の弁構成の詳細を示す図である。
【図13】図11の弁構成を通る断面図である。
【図14】内在カテーテルが通って延びている図11および図13の弁構成を示す図である。
【図15A】この発明の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図15B】この発明の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図15C】この発明の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図15D】この発明の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図15E】この発明の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図15F】この発明の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図15G】この発明の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図15H】この発明の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図15I】この発明の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図15J】この発明の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図15K】この発明の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図15L】この発明の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図15M】この発明の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図16A】図16Aは、この発明の別の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図16B】図16Bは、この発明の別の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図16C】図16Cは、この発明の別の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図16D】図16Dは、この発明の別の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図16E】図16Eは、この発明の別の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図16F】図16Fは、この発明の別の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図16G】図16Gは、この発明の別の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図16H】図16Hは、この発明の別の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図16I】図16Iは、この発明の別の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図16J】図16Jは、この発明の別の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【図16K】図16Kは、この発明の別の一実施例に従ったステントグラフトの配備の様々な段階のうちの1つを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
詳細な説明
図面、特に図1および図2をより念入りに見てみると、この発明に従ったステントグラフトを取入れた患者の血管構成の一部の概略図が示されていることがわかるであろう。
【0034】
この血管系は、腎動脈12と大動脈分岐14との間の領域にある大動脈10を含む。総腸骨動脈16および18が、大動脈分岐14から下方に延びている。大動脈10は、内腸骨動脈24と外腸骨動脈26との間の分岐22のところまで総腸骨動脈18内を下方に延びる動脈瘤20を有する。
【0035】
動脈瘤20を横切るように、この発明の一実施例に従った二重に分岐した大動脈ステントグラフト40が、大動脈10内に配備されている。この図では、ステントグラフトを血管系内に配備するために使用される導入装置は、明確性を支援するために省略されている。「人工器官、および人工器官を配備する方法」と題された我々の先の特許出願であるPCT特許公開第WO98/53761号には、この発明での使用に好適なステントグラフト用導入器が開示されている。分岐したステントグラフト40の近位端42は、腎動脈12のちょうど遠位にある大動脈10の非動脈瘤部分28内に係合されている。この実施例では、ステントグラフト40は、ステントグラフトの移動を防止するよう安定した位置を提供するために腎動脈の近位の大動脈の壁に係合する突刺46を有する、近位に延びる腎上体露出ステント44を有する。ステントグラフト40は、グラフト分岐54から延びる短い脚部50と長い脚部52とを有する。長いほうの脚部52はその遠位端に、外腸骨動脈26の非動脈瘤部分内に係合する密封面56を有する。
【0036】
長いほうの脚部52は側腕部60を有し、それはこの実施例では、長いほうの脚部52への開窓62におけるその接続部から部分的に螺旋状に延びる波型管の形をしている。側腕部60は遠位方向に、かつ長いほうの脚部52の周りを部分的に螺旋状に延びており、内腸骨動脈24近傍で開いた、長いほうの脚部52とのその接続部から離れた遠位端61を有する。
【0037】
長いほうの脚部52への側腕部60の接続部の近位で、開窓64が長いほうの脚部52に配置されている。図3〜図5を参照して説明されるように、開窓64は、それを閉鎖するための弁構成を内部に有する。
【0038】
患者の血管系内にステントグラフトを配備する間、内在カテーテル66が側腕部60を通って延び、弁付開窓64を通って外に出る。内在カテーテルは、ガイドワイヤ68を含む。
【0039】
図2は、波型側腕部60内への延長片70の配備、および腸骨動脈16の非動脈瘤部分に入り込んで密封する脚部延長部72の、分岐ステントグラフト40の短い脚部50内への配備の後の図1の実施例を示す。「腸骨側枝装置用導入器」と題された米国特許出願連続番号第10/962,763号は、内在カテーテルを使用して内腸骨動脈にアクセスするための構成を開示している。この段階で内在カテーテルは引抜かれ、開窓64は弁構成によって閉鎖される。
【0040】
延長片70は、内腸骨動脈24の非動脈瘤部分に入り込んで密封する。
この発明の本実施例に従ったステントグラフトの配備のプロセスは、図15A〜図15Mを参照して説明される。
【0041】
図3、図4および図5は、この発明に好適な弁構成の第1の実施例を示す。
この実施例では、図1に示すような分岐ステントグラフト40の長いほうの脚部52は、長いほうの脚部52の管に縫付けられた周縁弾性リング80によって規定される開窓64を有する。長いほうの脚部の内側には、生体適合性グラフト材料82の半円形部分と、半円形の生体適合性グラフト材料82と係合してそれを長いほうの脚部52の内壁に、特に開窓64を覆うように押し当てる弾性自己拡張型ジグザグステント85とがある。この構成により、開窓64は閉鎖された構成に保たれる。半円形の断片82はその近位端で、縫目83によって長いほうの脚部52の内壁に縫付けられる。
【0042】
管状の長いほうの脚部52における開窓64の実質的に反対側で、側腕部60が管状の長いほうの脚部52における開窓62から延びている。
【0043】
図5は、図4に示すような実施例を示しているが、内在カテーテル66と内在カテーテルを通るガイドワイヤ68とが側腕部60および開窓64を通って延び、これが弾性自己拡張型ステント85の復元力に逆らって開窓64から弁82を持上げる、という点が異なっている。
【0044】
図6および図7は、患者の血管系におけるこの発明に従った分岐ステントグラフトの代替的な実施例を示す。血管系および分岐ステントグラフトは図1および図2に示した先の実施例と同様であり、同じ参照番号が、対応する項目について使用される。
【0045】
この血管系は、腎動脈12と大動脈分岐14との間の領域にある大動脈10を含む。総腸骨動脈16および18が、大動脈分岐から下方に延びている。大動脈10は、内腸骨動脈24と外腸骨動脈26との間の分岐22のところまで総腸骨動脈18内を下方に延びる動脈瘤20を有する。
【0046】
動脈瘤を横切るように、分岐した大動脈ステントグラフト40が、大動脈10内に配備されている。分岐したステントグラフト40の近位端42は、腎動脈12のちょうど遠位にある大動脈10の非動脈瘤部分28内に係合されている。この実施例では、ステントグラフト40は、ステントグラフトの移動を防止するよう安定した位置を提供するために腎動脈の近位の大動脈の壁に係合する突刺46を有する、近位に延びる腎上体露出ステント44を有する。ステントグラフト40は、グラフト分岐54から延びる短い脚部50と長い脚部52とを有する。長いほうの脚部52はその遠位端に、外腸骨動脈26の非動脈瘤部分内に係合する密封面56を有する。
【0047】
長いほうの脚部52は側腕部90を有し、それはこの実施例では、長いほうの脚部52の開窓92から延びるステント管の形をしている。側腕部90は遠位方向に延びており、内腸骨動脈24近傍で開いた、長いほうの脚部52とのその接続部から離れた端94を有する。
【0048】
長いほうの脚部52への側腕部90の接続部の近位で、開窓64が長いほうの脚部52に配置されている。図8〜図10を参照して説明されるように、開窓64は、それを閉鎖するための弁構成を内部に有する。
【0049】
患者の血管系内にステントグラフトを配備する間、内在カテーテル66が側腕部90を通って延び、弁付開窓64を通って外に出る。内在カテーテルは、それを通るガイドワイヤ68を含む。
【0050】
図7は、側腕部90内への延長片70の配備後の図6の実施例を示す。「腸骨側枝装置用導入器」と題された米国特許出願連続番号第10/962,763号は、内在カテーテルを使用して内腸骨動脈にアクセスするための構成を開示している。この段階で内在カテーテルは引抜かれ、開窓64は弁構成によって閉鎖される。延長片70は、内腸骨動脈24の非動脈瘤部分に入り込んで密封する。
【0051】
図8、図9および図10は、この発明に好適な弁構成の代替的な一実施例を示す。
弁のこの実施例では、図6に示すような分岐ステントグラフト40の長いほうの脚部52は、長いほうの脚部52の管状の壁に縫付けられた周縁弾性リング80によって規定される開窓64を有する。長いほうの脚部の内側には、生体適合性グラフト材料96の円筒形部分と、円筒形の生体適合性グラフト材料96と係合してそれを長いほうの脚部52の内壁に、特に開窓64を覆うように押し当てる自己拡張型ジグザグステント98とがある。この構成により、開窓64は閉鎖された構成に保たれる。生体適合性グラフト材料96の円筒形部分はその近位端で、縫目99によって長いほうの脚部52の内壁に縫付けられる。
【0052】
図10は、図9に示すような実施例を示しているが、内在カテーテル66とカテーテルを通るガイドワイヤ68とが側腕部60および開窓64を通って延び、これが開窓64のために弁96を持上げる、という点が異なっている。
【0053】
図11〜図14は、この発明に好適な弁構成のさらに別の実施例を示す。
この実施例では、分岐ステントグラフト40(図1)の長いほうの脚部200は、長いほうの脚部200の管に縫付けられた周縁弾性リング204によって規定される開窓202を有する。長いほうの脚部の内側には、複数の支柱208および湾曲部210を有する自己拡張型ステント206がある。自己拡張型ステント206を図12に示す。
【0054】
自己拡張型ステント206は、間隔をおかれた支柱208に縫付けられた1片の生体適合性グラフト材料から形成される弁部材212を有し、それは、部分的に円筒形の表面を自己拡張型ステント206上に設けて弁アセンブリ214を形成する。
【0055】
弁部材212の下方周囲には、縫目215によって保持された弾性ワイヤ213の一部があり、それは、長いほうの脚部200の管状体の内面に対する良好な密封に耐えるよう、弁部材の部分的に円形の形状の保持を支援する。
【0056】
この弁アセンブリは、弁部材が開窓202の下に位置して、長いほうの脚部の内側から外側に流す開窓を閉鎖するように、湾曲部210で縫目216により、長いほうの脚部200の管状体に縫付けられている。この段階の弁の断面を図13に示す。
【0057】
管状の長いほうの脚部200における開窓202の実質的に反対側で、側腕部218が管状の長いほうの脚部200における開窓220から延びている。この実施例では、側腕部218は波型のグラフト材料から形成される。
【0058】
図14は、図13に示すような実施例を示しているが、内在カテーテル66と内在カテーテルを通るガイドワイヤ68とが側腕部218および開窓202を通って延び、これが弾性自己拡張型ステント206の復元力に逆らって開窓202から弁部材212を持上げる、という点が異なっている。
【0059】
図15A〜図15Mは、この発明の一実施例に従ったステントグラフトの配備のさまざまな段階を示す。
【0060】
図15Aは、送達装置に搭載された、この発明に従ったステントグラフトの一実施例の概略版を示す。便宜上、送達装置の外装は、その内側のアセンブリを示すために取外されている。送達装置100はその近位端にノーズコーン拡張器102を有しており、この発明の一実施例に従ったステントグラフトアセンブリ104は、配備装置上に取付けられている。ステントグラフト104のこの実施例は、ステントグラフト104の長いほうの脚部108上に螺旋状の側腕部106を有する。内在カテーテル110が配備装置100から螺旋状の側腕部106を通って延び、弁付開口112で外に出て、ステントグラフト104の外部のノーズコーン拡張器102にある溝114へと延びる。内在カテーテル110は、柔軟な曲がった近位端116を有する。
【0061】
管状の側腕部106および弁構成112の詳細を、図15Bに示す。管状の側腕部106は開窓107から長いほうの脚部108の周りを延びており、内在カテーテル110は管状の側腕部内を延び、弁付開口112を通って外に出る。弁付開口112は、内在カテーテルが取外された際に開口が閉鎖されることを確実にするために、その内側にフラップ弁113を有する。フラップ弁は、図3〜図6に示す構成と実質的に同じである。
【0062】
図15Cは、大動脈10、腎動脈12、および大動脈分岐14を含む患者の概略的な血管系を示す。大動脈分岐から延びているのは、腸骨動脈16および18である。大動脈は、内腸骨動脈24の位置まで腸骨動脈を下降して延びる動脈瘤20を有する。腸骨分岐22は、内腸骨動脈24と外腸骨動脈26との間の分岐を規定する。
【0063】
図15Cに示すように、配備装置100は、そのノーズコーン102が動脈瘤20内へと上方に延びて、ノーズコーン102の遠位端が大動脈分岐14に実質的に隣接するように、ガイドワイヤ120上に配備される。図15Cに詳細に示すように、内在カテーテル、および特にその曲がった先端116は、外装122により、ノーズコーン拡張器の溝に入るよう圧縮されている。
【0064】
図15Dに示すように、配備装置の外装122は、内在カテーテル110の曲がった先端116を解放するために若干引抜かれ、内在カテーテル110からの内在ガイドワイヤ124が延ばされている。内在カテーテルの端が曲がっているため、内在ガイドワイヤ124は対側腸骨動脈16を下降して延びている。対側総腸骨動脈内にはスネアカテーテル128が配備されており、スネアカテーテル128のスネア130が延ばされてガイドワイヤ124を把持する。ガイドワイヤ124はスネアカテーテル128を介して抜き出され、そのためそれは全貫通ガイドワイヤとなる。この段階では、大動脈分岐への損傷を防ぐために、大動脈分岐においてガイドワイヤに撓みが保たれることを確実にすることが重要である。この位置を図15Eに示す。
【0065】
対側腸骨動脈からの捕捉を容易にするために曲がった先端を有する内在カテーテルを使用することは、「ステントグラフト導入器」と題された米国特許出願連続番号第11/600,655号に教示されており、その教示はここにその全体が援用される。
【0066】
図15Fに示すように、配備装置100は次に、ノーズコーン拡張器102が腎動脈12の近位となるよう進められる。これはまた、内在ガイドワイヤ124を大動脈10内へと上方に引寄せる。
【0067】
次に、配備装置110の外装122が引抜かれて、ステントグラフト104の短いほうの脚部109を解放する。この段階を図15Gに示す。
【0068】
図15Hに示すように、内在カテーテルは対側腸骨動脈16内へと下方に引抜かれ、外装122は、それが長いほうの脚部108の遠位端を依然として保ちつつ、側腕部106の遠位端の遠位となるように引抜かれる。
【0069】
図15Iに示すように、拡張器および外装導入器130が、対側腸骨動脈16内のガイドワイヤ124上を進められる。外装導入器のノーズコーン132が弁付開口112に入り、図15Jに示すように側腕部134の遠位端から出るまで側腕部106内を通ってガイドワイヤ124上を進むように、内在カテーテル110と延長腕部配備装置とがガイドワイヤ124上を進められる。次に外装導入器のノーズコーン132が引抜かれ、外装130を所定の位置に残す。この段階では、内在ガイドワイヤ124は依然として全貫通位置にある。図15Kに示すように、別のガイドワイヤ136が外装130を通って導入され、外装130から内腸骨動脈24に入るように延ばされる。
【0070】
図15Lに示すように、バルーン拡張型のカバーされたステント140が側腕部106から内腸骨動脈24内へと延びるように、側腕部配備装置がガイドワイヤ136上を内腸骨動脈24内へと配備される。図15Mに示すように、内在ガイドワイヤ124が次に除去されて、長いほうの脚部108の遠位端の位置が外腸骨動脈26内へとセットされ、バルーン拡張型のカバーされたステント140が拡張される。外装130が次に引抜かれ、弁112は自動的に閉じる。脚部延長部144が次に、グラフト104の短い脚部107内に配置される。グラフトの一部が腎動脈12の遠位の大動脈10の非動脈瘤部分に入り込んで密封しつつ、カバーされていない腎上体ステント148が安定した固定を提供するために腎動脈を覆って延びるように、ステントグラフトの近位端146も配備装置100から解放される。
【0071】
図16A〜図16Kは、この発明に従ったステントグラフトの代替的な一実施例と、患者の血管系にそのようなステントグラフトを配備するプロセスとを示す。
【0072】
この実施例のステントグラフトは、近位部150と遠位部152とを有する二部構成体を備え、それらは、患者の血管系内で組合わされると、複合ステントグラフトを提供する。近位部150は、近位に延びる腎上体ステント151を有しており、遠位部152は、短いほうの脚部156と長いほうの脚部158とに分岐されている。長いほうの脚部158は、螺旋状の側腕部160と、内在カテーテル164が通って延びている弁付開口162とを有する。
【0073】
この実施例のステントグラフトの配備のプロセスは、図15C〜図15Mに示すものと実質的に同様であるが、図16Cに示すように、第1段階として、近位部150が大動脈内に配備され、解放される点が異なっている。次に、内在カテーテル164を有する別個の装置170が導入され、それは遠位部152を担持しており、図16D〜図16Jに示すような内在ガイドワイヤの捕捉、主ステントグラフトの解放、および内腸骨動脈内への側腕部延長部の配備のプロセスは、図15C〜図15Lに示すものと実質的に同じである。図16Kに示すような、二部構成のステントグラフトの配備の最終段階は、近位部150の内側での遠位部152の解放、短い脚部156内への脚部延長部172の配備、および長いほうの脚部158の遠位端の解放を含む。
【0074】
内腸骨動脈内への配備のための代替的な実施例のアクセスは上腕アプローチによるものでもよく、そのような場合、側腕部における内在カテーテルはステントグラフトの主管腔を通って延びてもよく、そのような実施例では弁付開口は必要とはされないかもしれない。
【0075】
本明細書全体を通し、発明の範囲に関してさまざまな示唆が与えられてきたが、この発明はこれらのうちのいずれにも限定されず、これらのうちの2つ以上が組合わされたものに存在するかもしれない。例は、限定のためではなく例示のためにのみ与えられている。
【符号の説明】
【0076】
40 ステントグラフト、52,200 管状体、64 開窓、80 弾性補強リング、82,90 スリーブ、85,98 自己拡張型ステント。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性グラフト材料の管状体(52,200)を備えるステントグラフト(40)であって、前記管状体は貫通する管腔を規定し、前記管状体の開窓(64)を規定する開口を有しており、前記開窓は弁構成(82)を有しており、
流体が前記開口を通って脚部の内側から脚部の外側に流れるのを防止するよう、弁構成が構成されており、
前記弁構成は、前記管状体内の生体適合性グラフト材料のスリーブ(82,96)と、該スリーブ内の自己拡張型ステント(85,98)とを備え、前記スリーブはその近位端で開口の近位の管状体(52)に固定され、前記自己拡張型ステントは前記スリーブに固定されており、それにより、前記自己拡張型ステントは、流体が前記開口を通って流れるのを防止するように、前記開口の周りの前記管状体の内面に前記スリーブを押付ける、ステントグラフト。
【請求項2】
前記開口は、該開口の周りに弾性補強リング(80)を含む、請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項3】
前記スリーブはその近位端で前記開口の近位の管状体(52)に固定されている、請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項4】
生体適合性グラフト材料の前記スリーブ(96)は、円筒形状を有する、請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項5】
生体適合性グラフト材料の前記スリーブ(82)は、半円筒形状を有する、請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項6】
前記スリーブは、前記自己拡張型ステントの間隔をおかれた支柱(208)に沿って縫付けられる、請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項7】
前記弁アセンブリは、生体適合性グラフト材料の部分的に円筒形の部分(212)の遠位端の周りに、半円形の弾性ワイヤ(213)をさらに備える、請求項6に記載のステントグラフト。
【請求項8】
前記ステントグラフトは主管状体を備え、該主管状体は貫通する主管腔を規定し、その一端にある分岐(54)と分岐から延びる第1の脚部(52,200)および第2の脚部(50)とを有しており、前記第1の脚部は前記管状体(52,200)を構成し、長い脚部であり、前記第2の脚部は短い脚部であり、前記第1および第2の脚部は貫通する第1および第2の管腔をそれぞれ有し、該第1および第2の管腔は主管腔と流体連通しており、前記第1の脚部は、貫通する側腕部管腔を有する側腕部(60)を備え、前記側腕部管腔は前記第1の脚部の管腔と流体連通しており、
前記側腕部(60)の近位の第1の脚部に、開窓(64)および弁部材が設けられる、請求項1〜7のいずれかに記載のステントグラフト。
【請求項1】
生体適合性グラフト材料の管状体(52,200)を備えるステントグラフト(40)であって、前記管状体は貫通する管腔を規定し、前記管状体の開窓(64)を規定する開口を有しており、前記開窓は弁構成(82)を有しており、
流体が前記開口を通って脚部の内側から脚部の外側に流れるのを防止するよう、弁構成が構成されており、
前記弁構成は、前記管状体内の生体適合性グラフト材料のスリーブ(82,96)と、該スリーブ内の自己拡張型ステント(85,98)とを備え、前記スリーブはその近位端で開口の近位の管状体(52)に固定され、前記自己拡張型ステントは前記スリーブに固定されており、それにより、前記自己拡張型ステントは、流体が前記開口を通って流れるのを防止するように、前記開口の周りの前記管状体の内面に前記スリーブを押付ける、ステントグラフト。
【請求項2】
前記開口は、該開口の周りに弾性補強リング(80)を含む、請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項3】
前記スリーブはその近位端で前記開口の近位の管状体(52)に固定されている、請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項4】
生体適合性グラフト材料の前記スリーブ(96)は、円筒形状を有する、請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項5】
生体適合性グラフト材料の前記スリーブ(82)は、半円筒形状を有する、請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項6】
前記スリーブは、前記自己拡張型ステントの間隔をおかれた支柱(208)に沿って縫付けられる、請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項7】
前記弁アセンブリは、生体適合性グラフト材料の部分的に円筒形の部分(212)の遠位端の周りに、半円形の弾性ワイヤ(213)をさらに備える、請求項6に記載のステントグラフト。
【請求項8】
前記ステントグラフトは主管状体を備え、該主管状体は貫通する主管腔を規定し、その一端にある分岐(54)と分岐から延びる第1の脚部(52,200)および第2の脚部(50)とを有しており、前記第1の脚部は前記管状体(52,200)を構成し、長い脚部であり、前記第2の脚部は短い脚部であり、前記第1および第2の脚部は貫通する第1および第2の管腔をそれぞれ有し、該第1および第2の管腔は主管腔と流体連通しており、前記第1の脚部は、貫通する側腕部管腔を有する側腕部(60)を備え、前記側腕部管腔は前記第1の脚部の管腔と流体連通しており、
前記側腕部(60)の近位の第1の脚部に、開窓(64)および弁部材が設けられる、請求項1〜7のいずれかに記載のステントグラフト。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図15E】
【図15F】
【図15G】
【図15H】
【図15I】
【図15J】
【図15K】
【図15L】
【図15M】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16E】
【図16F】
【図16G】
【図16H】
【図16I】
【図16J】
【図16K】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図15E】
【図15F】
【図15G】
【図15H】
【図15I】
【図15J】
【図15K】
【図15L】
【図15M】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16E】
【図16F】
【図16G】
【図16H】
【図16I】
【図16J】
【図16K】
【公開番号】特開2012−210545(P2012−210545A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−178429(P2012−178429)
【出願日】平成24年8月10日(2012.8.10)
【分割の表示】特願2009−506603(P2009−506603)の分割
【原出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(506119187)ウィリアム・エイ・クック・オーストラリア・プロプライエタリー・リミテッド (26)
【氏名又は名称原語表記】WILLIAM A. COOK AUSTRALIA PTY. LTD.
【出願人】(506118906)クック・インコーポレイテッド (57)
【氏名又は名称原語表記】COOK INCORPORATED
【出願人】(504293698)ザ クリーブランド クリニック ファウンデイション (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月10日(2012.8.10)
【分割の表示】特願2009−506603(P2009−506603)の分割
【原出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(506119187)ウィリアム・エイ・クック・オーストラリア・プロプライエタリー・リミテッド (26)
【氏名又は名称原語表記】WILLIAM A. COOK AUSTRALIA PTY. LTD.
【出願人】(506118906)クック・インコーポレイテッド (57)
【氏名又は名称原語表記】COOK INCORPORATED
【出願人】(504293698)ザ クリーブランド クリニック ファウンデイション (6)
【Fターム(参考)】
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