説明

ストリーム情報抽出方法およびストリーム情報抽出装置

【課題】ストリームデータから抽出されるパラメータセットからの属性取得を効率的に行うこと
【解決手段】 比較部140は、ストリームデータから抽出される符号化されたSPSと、以前に入力された符号化されたSPSと、を比較する。復号解析部150は、比較部140による比較が不一致の場合に、ストリームデータから抽出される符号化されたSPSを復号化する。管理情報生成部160は、復号化データからストリーム管理情報を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はストリーム情報抽出方法およびストリーム情報抽出装置に関し、特に符号化されたストリームデータから情報を抽出するストリーム情報抽出方法およびストリーム情報抽出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル放送を記録及び再生する記録装置において、記録したストリームデータを再生する場合、通常の再生に加えてトリック再生などの特殊再生が行われる。当該記録装置では、特殊再生を効率的に実現するために、ストリームデータを記録する段階で予め特殊再生に用いられる特徴情報を抽出しておく。そして当該記録装置は、抽出した特徴情報をストリーム管理情報として管理する。
【0003】
特許文献1には、ビデオストリームデータに含まれるストリーム管理情報を抽出するための技術が開示されている。当該文献にかかる再生装置は、ストリーム管理情報として、ビデオデータの特徴点(H.264/AVC形式で圧縮されたデータでは、IDRピクチャやSPS(シーケンスパラメータセット)等のスタートコードプリフィックス)を含むパケットの位置情報と、ビデオデータの属性情報を抽出し、保持している。なお、SPSとはシーケンス(圧縮された動画)単位の符号化にかかわる情報である。
【0004】
特殊再生を行うために用いるストリーム管理情報は、位置情報だけであることが一般的であった。そのため、プレイリストのつなぎ目のようにビデオストリームデータの属性情報が切り替わる部分を再生する場合、切り替わり後のビデオストリームデータを解析し始めるまで属性情報が変わったことを認識することが困難であった。これにより、切り替わり後のビデオストリームデータの再生が乱れる可能性があった。しかし、特許文献1に記載の再生装置ではビデオストリームデータの属性情報を抽出し、保持しているため、特殊再生をスムーズに行うことができる。
【0005】
特許文献2及び特許文献3には、特殊再生を効率的に行うためのストリームデータ生成技術が記載されている。当該ストリームデータ生成技術によりピクチャの予測構造が複雑であるH.264/AVC形式に従って圧縮されたストリームデータに対して特殊再生を効率的に行うことができる。
【0006】
特許文献4には、ビデオストリームデータの符号化及び復号化に関する装置が記載されている。当該装置は、ビデオストリームデータを符号化する場合に、符号化されるビデオストリームデータに含まれるSPSに対応する識別情報をSPS内に記述する。当該装置は符号化データの復号化の際に、符号化データ及びSPSを復号化し、当該識別情報が同一のSPSについては処理の一部を省略するようにする。
【0007】
特許文献5には、ビデオストリームデータの符号化及び復号化に関する装置が記載されている。当該装置は、ビデオストリームデータを符号化する際に、符号化されるビデオストリームデータに含まれるSPSが、以前に符号化されたビデオストリームデータに含まれるSPSと同一か否かを判定するためのメッセージを符号化データに付与する。当該装置は符号化データの復号化の際に、符号化データに付与されたメッセージに基づいて必要な場合のみSPSを復号化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−245173号公報
【特許文献2】特表2008−502171号公報
【特許文献3】特開2008−295055号公報
【特許文献4】特開2006−203662号公報
【特許文献5】特表2008−545352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の技術、特に特許文献1に記載では以下の問題がある。ビデオストリームデータのビデオコーデックがMPEG2−Videoである場合、ビデオストリームデータからパケット位置情報と、ビデオストリームデータの属性情報を容易に抽出することが可能である。しかし、ビデオストリームデータのビデオコーデックがH.264/AVCである場合、ビデオストリームデータの属性情報(解像度等)はSPS内部に記述されている。またビデオストリームデータのビデオコーデックがH.264/AVCである場合、SPSはビデオストリームデータの圧縮効率を上げるために可変長符号化されている。以下の記載では、ビデオストリームデータのビデオコーデックがH.264/AVCである場合を想定する。
【0010】
SPSからビデオストリームデータの属性情報を抽出するには、SPSの復号化処理が必要となるため、抽出処理が複雑になる。
【0011】
SPSに含まれる情報は、通常のデジタル放送の1番組中で変更されることはないが、記録装置による記録処理の開始は必ずしもデジタル放送の番組の初めからとは限らない。そのため、1番組のビデオストリームデータ内にSPSが複数に含まれる。記録装置は、SPSを検出するたびに復号化処理を行う必要がある。
【0012】
上記のように、SPSからビデオストリームデータの属性情報を抽出する処理は、復号化処理を伴い、かつ、頻繁に当該復号化処理を行う必要があることから負荷が大きい。そのため、入力されたストリームデータを記録しながらビデオストリームデータの属性情報を抽出した場合、記録装置は記録処理が間に合わなくなる恐れがある。記録処理が間に合わなくなると、記録装置は入力されたビデオストリームデータのパケットをロストする恐れがある。
【0013】
特許文献4に記載の符号化/復号化装置では、SPS内部に識別情報を付与している。そのため、上述のSPSの復号化処理を行った後でなければ当該識別情報を用いることができない。よって、特許文献4に記載の符号化/復号化装置を記録装置に応用した場合でも、SPSの復号化処理の処理負荷により記録処理が間に合わなくなり、上述のパケットのロストの問題が生じ得る。
【0014】
また、特許文献5に記載の符号化/復号化装置のようにSPSを予め解析したうえで付加情報を付与する方式を記録装置に適用した場合、記録装置はSPSに付加された付加情報を解釈する必要があり、かつ、SPSに付加情報が付加されていなければ正しく動作できない。また、記録装置にデータを入力する前に付加情報を確実に付加する装置が必要となる。よって、特許文献5に記載の技術を記録装置及び記録装置にデータを送信する装置に適用した場合、H.264/AVC形式のビデオストリームデータをそのまま扱えないという問題が生じる。
【0015】
なお特許文献2及び特許文献3に記載の技術は、ストリームデータ生成にかかるものであり、記録装置及びビデオストリームデータからの情報抽出とは直接の関連がない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明にかかるストリーム情報抽出方法の一態様は、ストリームデータから抽出される符号化された第1のパラメータセットと、以前に抽出された符号化された第2のパラメータセットと、を比較し、前記比較により両者が不一致と判断した場合に、前記第1のパラメータセットを復号化した復号化データを参照してストリーム管理情報を生成し、前記比較により両者が一致と判断した場合に、符号化された前記第2のパラメータセットを復号化した復号データを参照して作成されているストリーム管理情報を前記第1のパラメータセットに対応するストリーム管理情報とする、ものである。
【0017】
本発明においては、符号化された第1のパラメータセットと、第2のパラメータセットを比較し、一致した場合にはストリーム管理情報の生成処理を省略する。これにより、ストリーム管理情報を生成する場合にパラメータセットの復号化処理を軽減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ストリームデータから抽出されるパラメータセットからの属性取得を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態1にかかるストリーム情報抽出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1にかかるTSパケットの図である。
【図3】実施の形態1にかかるパケットの処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の実施の形態1に関する記録装置の構成を示す。記録装置100は、入力処理部110と、記録処理部120と、特徴点検出部130と、比較部140と、復号解析部150と、管理情報生成部160と、を備える。以下の説明では記録装置100は、ビデオコーデックがH.264/AVCであるMPEG2−TS信号を記録する記録装置として説明する。入力処理部110は、入力されたストリームデータをTSパケット単位に分割したうえで解析し、各TSパケットからsync_byteを検出して同期処理を行う。
【0021】
図2に記録対象となるストリームデータのTSパケット情報を示す。当該パケット情報はMPEG−2 TS(MPEG-2 Transport Stream)パケット(以下、TSパケットと記載する。)の構造を示している。TSパケットは、TSヘッダと、再生データが格納されているペイロード部とを含む構成である。TSヘッダは、同期処理に用いられるsync_byteと、パケットの識別子であるPIDと、を含む。
【0022】
記録処理部120は、入力されたTSパケットのPIDから記録対象のパケットか否かを判定する。TSパケットが記録対象である場合、記録処理部120は当該TSパケットを記録パケットとしてバッファ領域に出力する。また、入力されたTSパケットのペイロード部がビデオデータである場合、記録処理部120は、ビデオデータを特徴点検出部130に出力する。
【0023】
特徴点検出部130は、入力されたビデオデータから特徴点を検出する。特徴点を検出できた場合、特徴点検出部130は記録対象のストリームデータ中の位置情報を示すパケット位置情報を管理情報生成部160に出力する。また、検出した特徴点がSPSに該当する場合、特徴点検出部は当該SPSを比較部140に出力する。
【0024】
比較部140は、SPSの履歴を保持する。比較部140は、特徴点検出部130から入力されたSPSと、履歴中の最新のSPSとを比較する。ここで、両者は符号化された状態のままである。比較部140による比較は、符号化データ間でビット列に相違がないか否かにより実施されるが、これに限らず両者の一致性を判断できればよい。両者が一致しない場合、比較部140は特徴点検出部130から入力されたSPSを復号解析部150に出力する。また、比較部140は特徴点検出部130から入力されたSPSを履歴中の最新のSPSとして記録する。一方、特徴点検出部130から入力されたSPSと、履歴中の最新のSPSとが一致した場合、比較部140は、復号解析部150に対して情報を出力しない。
【0025】
復号解析部150は入力されたSPSを復号し、ビデオストリームの属性情報を抽出する。復号解析部150は抽出したビデオストリームの属性情報を管理情報生成部160に出力する。
【0026】
管理情報生成部160は、入力されたパケット位置情報と、ビデオストリームの属性情報と、からストリーム管理情報を生成する。管理情報生成部160は、生成したストリーム管理情報を出力する。ストリーム管理情報は、図示しないデータ再生部において記録したデータを再生する場合に使用される。
【0027】
なお、図示しないが管理情報生成部160から出力されたストリーム管理情報は記憶領域に格納される。管理情報生成部160からストリーム管理情報が出力されるたびに当該領域に格納されたストリーム管理情報が更新される。バッファ領域に出力された記録用のTSパケットは記憶領域に格納されているストリーム管理情報と関連付けられたうえで処理が行われる。たとえば、ハードディスク等の二次記憶装置に格納される。
【0028】
次に、本実施の形態にかかるストリーム情報抽出装置にTSパケットが入力された場合の処理について図3のフローチャートを用いて説明する。入力処理部110からTSパケットを入力された記録処理部120は、当該TSパケット内のPIDから記録対象のパケットか否かを判定する(S101)。記録対象のパケットでなければ処理を終了する(S101:No)。一方、記録対象のパケットである場合(S101:Yes)、記録処理部120は当該パケットを記録対象のパケットとしてバッファ領域に格納する(S102)。
【0029】
特徴点検出部130は、記録対象のパケットである場合(S101:Yes)、当該パケットがビデオデータであるか(S103)、及びビデオデータである場合に特徴点が含まれるか(S104)を判定する。特徴点検出部130は、当該パケットがビデオデータではない場合(S103:No)、またはビデオデータに特徴点が含まれない場合(S104:No)には処理を終了する。
【0030】
当該パケットがビデオデータであり(S103:Yes)、かつ特徴点が含まれる場合(S104:Yes)、比較部140はパケットに含まれる符号化されたSPSと、比較部140が保持する履歴中の最新のSPSと、が一致するか否かを判定する(S106)。SPSが一致する場合(S106:Yes)、処理を終了する。
【0031】
一方、SPSが一致しない場合(S106:No)、比較部140は特徴点検出部130から入力されたSPSを保持する履歴中の最新のSPSとする(S107)。その後、復号解析部150によりSPSを復号する(S108)。そして、管理情報生成部160により、復号化したSPS等を用いて管理情報が生成される(S109)。上述のS101からS109の処理は、ストリーム情報抽出装置100にTSパケットが入力される度に実行される。
【0032】
続いて、本実施の形態にかかるストリーム情報抽出装置の効果について説明する。上述のようにSPSが符号化された状態で比較処理を行う。これにより、符号化されたSPSを逐次復号化する必要性がなくなる。また、前述のSPSの比較により両者が同一と判定された場合、以前復号化したSPSをそのまま利用することができる。これによりビデオストリームの管理情報を生成する処理の負荷が軽減する。さらに、符号化データ同士の比較はビット列の比較等により容易に実現することが可能であるため、既存の記録装置に容易に応用可能である。
【0033】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
100 ストリーム情報抽出装置
110 入力処理部
120 記録処理部
130 特徴点検出部
140 比較部
150 復号解析部
160 管理情報生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストリームデータから抽出される符号化された第1のパラメータセットと、以前に抽出された符号化された第2のパラメータセットと、を比較し、
前記比較により両者が不一致と判断した場合に、前記第1のパラメータセットを復号化した復号化データを参照してストリーム管理情報を生成し、
前記比較により両者が一致と判断した場合に、符号化された前記第2のパラメータセットを復号化した復号データを参照して作成されているストリーム管理情報を前記第1のパラメータセットに対応するストリーム管理情報とするストリーム情報抽出方法。
【請求項2】
前記比較の対象となる符号化された前記第2のパラメータセットは、前記比較において不一致と判定された場合に、符号化された前記第1のパラメータセットの内容で置き換えられることを特徴とする請求項1に記載のストリーム情報抽出方法。
【請求項3】
前記比較は、符号化された前記第1のパラメータセットのビット列と、符号化された前記第2のパラメータセットのビット列と、が一致するか否かにより行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のストリーム情報抽出方法。
【請求項4】
前記ストリーム管理情報を前記ストリームデータのパケットと関連付けることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のストリーム情報抽出方法。
【請求項5】
前記第1のパラメータセット及び前記第2のパラメータセットは、前記ストリームデータの符号化に用いる情報を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のストリーム情報抽出方法。
【請求項6】
前記ストリームデータのコーデック方式がH.264であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のストリーム情報抽出方法。
【請求項7】
ストリームデータから抽出される符号化された第1のパラメータセットと、以前に抽出された符号化された第2のパラメータセットと、を比較する比較部と、
前記比較部による比較が不一致と判断した場合に、第1のパラメータセットを復号化した復号化データを生成し、前記比較部による比較が一致と判断した場合に、前記復号化データを作成しない復号解析部と、
前記復号化データからストリーム管理情報を生成する管理情報生成部と、を備えるストリーム情報抽出装置。
【請求項8】
前記比較部による比較の対象となる符号化された前記第2のパラメータセットは、前記比較において不一致と判定された場合に、符号化された前記第1のパラメータセットの内容で置き換えられることを特徴とする請求項7に記載のストリーム情報抽出装置。
【請求項9】
前記比較部による比較は、符号化された前記第1のパラメータセットのビット列と、符号化された前記第2のパラメータセットのビット列と、が一致するか否かにより行うことを特徴とする請求項7または請求項8に記載のストリーム情報抽出装置。
【請求項10】
前記第1及び第2のパラメータセットは、前記ストリームデータの符号化に用いる情報を含むことを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれか1項に記載のストリーム情報抽出装置。
【請求項11】
前記ストリームデータのコーデック方式がH.264であることを特徴とする請求項7乃至請求項10のいずれか1項に記載のストリーム情報抽出装置。
【請求項12】
請求項7乃至請求項11のいずれか1項に記載のストリーム情報抽出装置を備えるストリームデータ記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−135277(P2011−135277A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292375(P2009−292375)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】