説明

ストレスコピン様ペプチドによる心不全の治療方法

本発明は、ある量のストレスコピン様ペプチドを、心不全の治療方法を必要としている被験者に投与することと、被験者の血漿中に存在する該ペプチドの量を、該被験者の心拍数の実質的増加なしに治療的利益をもたらす濃度に実質的に維持することと、を含む、心不全の新規な治療方法に関する。記方法は、選択的副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン受容体2型(CRHR2)作動薬であるストレスコピン様ペプチドの使用を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国仮特許出願第61/258,181号(2009年11月4日出願)及び米国特許出願第12/612,548号(2009年11月4日出願)の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、有効量のストレスコピン様ポリペプチドを投与することによって心不全を有する被験者を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
心不全は一般的な心臓血管疾患であり、米国及び欧州において疾患の大きな割合に達している(Remmeら、Eur.Heart J.,2001,vol.22,pp.1527〜1560)。急性心不全の入院患者数は米国内だけで毎年100万件近くになる。現在、退院後60日以内の再入院率及び死亡率は、30%〜40%に達している(Cuffeeら、JAMA,2002,vol.287(12),pp.1541〜7)。急性心不全では、血流力学機能の悪化、特に非常に高い左心室拡張終期圧が一般的である。
【0004】
急性心不全の現在の治療は多くの要素からなり、しばしば患者によって異なる。利尿薬、血管拡張薬、及び強心剤は急性心不全患者の治療において依然として中心であるが、これらの治療は死亡率及び高い再入院率に関連している。
【0005】
更に、既存の強心剤治療(例えばドブタミン)は心拍出量の改善をもたらすが、心拍数の増加及び心筋の酸素消費量増加を伴う。これらの強心剤はまた、心不全患者において不整脈誘発の可能性をもたらす。この心臓の傾向は、これら薬剤の直接的強心作用に関連するエネルギー消費とカルシウム駆動に関連するものと考えられる。
【0006】
拡大するこの未充足の医学的ニーズに対応するため、数多くの新しいアプローチが研究されているが、この症候群の患者において安全に血流力学状態と転帰を改善することについては限定的な成功しか収めていない。そのような薬剤の1つであるペプチドヒトウロコルチン2(h−UCN2)が、健康な被験者及び心不全患者において研究されている。このペプチドは、ヒツジの心不全のモデルにおいて左心室駆出分画率(LVEF)及び心拍出量(CO)を上昇させることが示された(Rademakerら、Circulation,2005,vol.112,pp.3624〜3632)。8人の健康な被験者(Davisら、J.Am.Coll.Cardiol.,2007,vol.49,pp.461〜471)及び8人の心不全を患う被験者(Davisら、Eur.Heart J.,2007,vol.28,pp.2589〜2597)におけるその後の静脈内注射試験では、LVEF及びCOの上昇は、2つの試験のそれぞれで検査された両方の用量での心拍数の増加及び血圧の低下に付随して生じた。健康な被験者及び患者に対するh−UCN2の1時間静脈内注射は、十分な忍容性を示したと見られる。
【0007】
アミノ酸40個のペプチドであるヒトストレスコピン(h−SCP)は、h−UCN2に関連し、これら両方とも、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)ペプチド群に属する。CRHペプチド群の生物学的作用は、2つの7回膜貫通型Gタンパク質結合受容体、CRH受容体1型(CRHR1)及びCRH受容体2型(CRHR2)によって顕現される。これらの受容体は高い配列相同性を有するが、CRHペプチド群の中の異なる要素は、相対的な結合親和力、受容体活性化の度合、及びこれら2つの受容体の選択性において顕著な違いを示す。
【0008】
ヒトウロコルチン2(h−UCN2)は、先の健常な被験者及び心不全を有する被験者の静脈内注射試験において評価され(Davisら、J.Am.Coll.Cardiol.,2007,vol.49,pp.461〜471;Davisら、Eur.Heart J.,2007,vol.28,pp.2589〜2597)、被験者のLVEF及びCOを上昇させ、それに付随して心拍数の有意な増加及び血圧の低下が生じた。健康な被験者に対する投与速度は、5.16ng/kg/分及び20.8ng/kg/分であり、心不全を有する被験者には、4.29ng/kg/分及び17.2ng/kg/分の速度でh−UCN2を注入した。
【0009】
CRH群要素の多くのものとは異なり、h−SCPはCRHR2について、より大きな選択性を発現し、生理学的ストレスの開始及び維持を弱めるプロセスを助けるメディエーターとして作用する(Baleら、Nat.Genet.,2000,vol.24,pp.410〜414;Kishimotoら、Nat.Genet.,2000,vol.24,pp.415〜419)。生理学的ストレスにおける明らかな役割に加え、h−SCPは他の数多くの生理学的作用を顕現させることが報告されている。h−SCPは、内分泌腺(Liら、Endocrinology,2003,vol.144,pp.3216〜3224)、中枢神経、心臓血管(Baleら、Proc.Natl.Acad.Sci.,2004,vol.101,pp.3697〜3702;Tangら、Eur.Heart J.,2007,vol.28,pp.2561〜2562)、肺、胃腸、腎臓、骨格筋、及び炎症系(Moffattら、FASEB J.,2006,vol.20,pp.1877〜1879)に影響を及ぼす。
【0010】
加えて、CRHR2活性は、例えば筋肉減少症などの骨格筋消費疾患(Hinkleら、Endocrinology,2003,vol.144(11),pp.4939〜4946)、運動活動及び食物摂取(Ohataら、Peptides,2004,vol.25,pp.1703〜1709)に影響を与え、心臓保護の役割に寄与し(Brarら、Endocrinology,2004,vol.145(1),pp.24〜35)、並びに気管支弛緩及び抗炎症活性を発現する(Moffattら、FASEB J.2006,vol.20,pp.E1181〜E1187)。
【0011】
PEG化は、1つ以上のポリエチレングリコール(PEG)ポリマーを分子に結合するプロセスである。PEG化プロセスはしばしば、抗体、ペプチド、及びタンパク質に適用され、その生物薬理学的特性を改善し、タンパク質分解酵素に対する化合物の感受性、短い循環半減期、短い有効期間、低い溶解度、急速な腎臓クリアランス、及び投与薬剤に対する抗体生成の可能性を克服する(Harrisら、Nature,2003,vol.2,pp.214〜221;Hamidiら、Drug Delivery,2006,3,pp.399〜409;Bailonら、PSTT,1998,vol.1(8),pp.352〜356)。最近FDAは、食物、化粧品、及び薬剤の賦形剤又は基材としての使用についてPEGポリマーを承認した。全体に、PEGポリマーは比較的、非免疫原性であり、毒性はほとんどなく、腎臓により又は糞便中でそのまま排出される。これらの特性は、親分子の親和性、有効性、及び薬理学的プロファイルを保全又は改善するようこのプロセスを開発した場合に、化合物について数多くの臨床的利益をもたらすことができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、本明細書に添付の独立及び従属請求項によってそれぞれ定義される、一般的かつ好ましい実施形態を対象とし、参照することにより本明細書に組み込む。本発明の好ましい機能及び代表的な機能は、図面の参照と共に下記の「発明を実施するための形態」から明らかとなろう。
【0013】
その多くの実施形態において、本発明は、心不全患者の新規な治療方法に関する。CRHR2に関連し、かつ心不全に関連している1つ以上の疾病の、ストレスコピン様ペプチドを使用した治療、予防、阻害又は改善方法が提供される。
【0014】
心不全の治療方法は、ある量のストレスコピン様ペプチドを、心不全の治療方法を必要としている被験者に投与することと、該被験者の血漿の中に存在する前記ペプチドの量を、該被験者の心拍数を大幅に増加させずに治療的利益をもたらす濃度に実質的に保つことと、を含む。
【0015】
治療方法の一実施形態において、被験者内のストレスコピン様ペプチドの血漿中濃度は、被験者の心拍数が大幅に増加するか、又は血圧が大幅に低下することなしに、心機能の増強をもたらす濃度に実質的に維持される。
【0016】
一実施形態において、投与の際に、ストレスコピン様ペプチドのストレスコピン相対血漿中濃度プロファイルは、約7.2ng/mL未満、好ましくは約5.5ng/mL未満、より好ましくは約4.7ng/mL未満に実質的に維持された血漿濃度によって特徴付けられる。ペプチドのストレスコピン相対濃度は、次の配列(配列番号1)のストレスコピン様ペプチドの濃度量に相当する重量及びCRHR2活性である濃度である。
TKFTL SLDVP TNIMN LLFNI AKAKN LRAQA AANAH LMAQI−NH2
【0017】
好ましくは、ストレスコピン様ペプチドは、約0.1ng/mL〜約7.2ng/mLに実質的に維持される血漿濃度によって特徴付けられる、ペプチドの目標ストレスコピン相対血漿中濃度プロファイルを達成するように投与される。より好ましくは、ストレスコピン様ペプチドの投与は、血漿濃度が約0.1ng/mL〜約5.5ng/mLであるストレスコピン相対血漿中濃度プロファイルをもたらす。
【0018】
血漿濃度が約7.2ng/m未満に実質的に維持されたストレスコピン相対血漿中濃度プロファイルをもたらすように、被験者にストレスコピン様ペプチドを投与することの利点は、治療により、被験者の心拍数を大幅に増加させずに又は血圧を顕著に低下させずに、心機能の増強がもたらされることである。
【0019】
心不全を治療するための投与は、静脈内投与、皮下投与、又は筋内投与含む非経口経路を介するのが好ましい。これら投与経路は、ストレスコピン相対血漿中濃度プロファイルにおいて血漿濃度を約7.2ng/mL未満に実質的に維持するために、ストレスコピン様ペプチドの投与量の増分制御を可能にするので、有利である。
【0020】
本発明の特定の実施形態において、ストレスコピン様ペプチドは、配列番号1のペプチド(h−SCP)を含む。他の実施形態において、ストレスコピン様ペプチドは修飾h−SCPを含み、その場合、h−SCPは、反応基の共有結合により、保存的アミノ酸置換、欠失、若しくは添加により、PEG化により、又はこれらの修飾の全ての組み合わせにより修飾されている。
【0021】
更に他の実施形態において、ストレスコピン様ペプチドは、h−SCP又はその修飾物質の、光学異性体、鏡像異性体、エナンチオマー、互変異性体、シストランス異性体、ラセミ化合物、プロドラッグ、又は製薬上許容される塩を含む。
【0022】
別の一実施形態において、反応基はリンカーを更に含む。好ましくは、1つのリンカーだけが、ペプチドのアミノ酸配列の単一残基に結合する。より好ましくは、このリンカーはアセトアミド又はN−エチルスクシンイミドである。
【0023】
更に別の実施形態では、ストレスコピン様ペプチドは、80kDa未満の分子量を有する1つ以上のPEG部分を含む。好ましくは、PEG部分は、ペプチドに共有結合により結合される。より好ましくは、1つ以上のPEG部分は、リンカーを介してペプチドに結合される。更により好ましくはこのPEGは、PEG部分は、約2kDa、約5kDa、約12kDa、約20kDa、約30kDa、又は約40kDaのいずれかの分子量を有する。
【0024】
リンカーは、ペプチドに対するアミノ酸配列のポジションに関してPEG部分をより容易かつ選択的に結合するためのものであり、同時に、ペプチドのポリエチレングリコール化は、PEG化したペプチドの半減期を延ばし、これにより患者に対する治療的利益の持続時間が延長される。したがって、ストレスコピン様ペプチドのアミノ酸配列に対する置換は、好ましくは、配列中に1つだけのタイプXのアミノ酸があるようにする。これにより、ペプチドのPEG化が、配列中の少なくとも1つの位置に確実に導かれる。
【0025】
PEG化したストレスコピン様ペプチドの利点は、PEG化したペプチドの長期半減期であり、この長期半減期は、ストレスコピン相対血漿中濃度プロファイルの血漿濃度が、約7.2ng/mL未満に実質的に維持され、かつPEG化されていないストレスコピン様ペプチドよりも長い間ストレスコピン相対血漿濃度の目標範囲にとどまって、それにより患者に対する治療的利益の持続時間が延長されるのを確実にする。
【0026】
本発明の別の一実施形態は、本発明の少なくとも1つの化合物を含む医薬組成物の投与を特徴とする。
【0027】
本発明の追加の実施形態及び利点は、下記の議論、スキーム、実施例及び請求項から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】心不全患者を治療するためにストレスコピン様ペプチドを投与するための血漿プロファイル及び治療濃度域を示す。
【図2A】ストレスコピン様ペプチドの異なる投与経路を使用した際の治療濃度域及び血漿プロファイルを示す。
【図2B】ストレスコピン様ペプチドの異なる投与経路を使用した際の治療濃度域及び血漿プロファイルを示す。
【図2C】ストレスコピン様ペプチドの異なる投与経路を使用した際の治療濃度域及び血漿プロファイルを示す。
【図3A】それぞれ、2時間の反応時間及び精製後にヨードアセトアミド−PEGと共に誘導体化された配列番号102のストレスコピン様ペプチドの分析HPLCトレースを示す。
【図3B】それぞれ、2時間の反応時間及び精製後にヨードアセトアミド−PEGと共に誘導体化された配列番号102のストレスコピン様ペプチドの分析HPLCトレースを示す。
【図3C】ヨードアセトアミド−PEGと共に誘導体化された配列番号102のストレスコピン様ペプチドのマススペクトルグラフを示す。
【図4】ヒトCRHR1及びCRHR2それぞれに対する、ストレスコピン様ペプチドの作動薬有効性及び選択性を示す。
【図5】配列番号1のストレスコピン様ペプチドと抗ソーバジン−30(配列番号118)との間の競合的拮抗作用の影響を示す。
【図6】h−CRHR2で形質移入されたSK−N−MC細胞におけるcAMP刺激を測定することによって得られた種々のストレスコピン様ペプチドの、作動薬濃度−効果曲線を示す。
【図7】それぞれ配列番号110、配列番号111、及び配列番号112の配列の10μMのストレスコピン様ペプチドの存在がない場合及び存在する場合において、h−CRHR2で形質移入されたSK−N−MC細胞におけるcAMP刺激を通じて測定された、h−SCP(配列番号1)作動薬濃度−効果曲線を示す。
【図8】配列番号1及び配列番号115(h−UCN2)のストレスコピン様ペプチドによる、あらかじめ収縮させた単離ラット大動脈の弛緩を示す。
【図9】配列番号1のストレスコピン様ペプチド及びプラセボ対照溶媒の存在下で、ランゲンドルフ潅流ウサギ心臓における、心拍数、左心室の圧力増加、及び冠状血管潅流圧力の変化を示す。
【図10】麻酔をかけたラットにおいて、静脈内ボーラス注射によって投与された配列番号1のストレスコピン様ペプチドが、心拍数、平均動脈血圧(MAP)、及び左室収縮性(+dP/dt)に及ぼす影響を示す。
【図11A】配列番号1のストレスコピン様ペプチドを異なる投与速度で静脈内注射した際の、健康なイヌの心機能を示す。
【図11B】配列番号1のストレスコピン様ペプチドを異なる投与速度で静脈内注射した際の、健康なイヌの心機能を示す。
【図12A】配列番号1のストレスコピン様ペプチドを異なる投与速度で静脈内注射した際に心不全を誘発したイヌの心機能を示す。
【図12B】配列番号1のストレスコピン様ペプチドを異なる投与速度で静脈内注射した際に心不全を誘発したイヌの心機能を示す。
【図12C】配列番号102のストレスコピン様ペプチドを単回SCボーラス注射した場合の、HFイヌの心機能を示す。
【図13A】異なる用量の静脈内ボーラス注射又は皮下ボーラス注射をした後の、イヌにおける配列番号102のストレスコピン様ペプチドの薬物動態を示す。
【図13B】異なる用量の静脈内ボーラス注射又は皮下ボーラス注射をした後の、イヌにおける配列番号102のストレスコピン様ペプチドの薬物動態を示す。
【図13C】様々な投与速度で3時間にわたって静脈内投与した後の、イヌにおける配列番号1のストレスコピン様ペプチドの薬物動態を示す。
【図14A】配列番号1のストレスコピン様ペプチドのない心不全のイヌ(A)、及び配列番号1のストレスコピン様ペプチドの2時間注入後の心不全のイヌ(B)における、代表的な左心室圧−容積ループを示す。
【図14B】配列番号1のストレスコピン様ペプチドのない心不全のイヌ(A)、及び配列番号1のストレスコピン様ペプチドの2時間注入後の心不全のイヌ(B)における、代表的な左心室圧−容積ループを示す。
【図15A】静脈内ボーラス注射又は皮下ボーラス注射を介したラットにおける配列番号1のストレスコピン様ペプチドの薬物動態を示す。
【図15B】異なる用量の静脈内ボーラス注射又は皮下ボーラス注射の後の、ラットにおけるPEG化したストレスコピン様ペプチド(配列番号102、103、104、105、及び106)の薬物動態を示す。
【図15C】異なる用量の静脈内ボーラス注射又は皮下ボーラス注射の後の、ラットにおけるPEG化したストレスコピン様ペプチド(配列番号102、103、104、105、及び106)の薬物動態を示す。
【図15D】異なる用量の静脈内ボーラス注射又は皮下ボーラス注射の後の、ラットにおけるPEG化したストレスコピン様ペプチド(配列番号102、103、104、105、及び106)の薬物動態を示す。
【図15E】異なる用量の静脈内ボーラス注射又は皮下ボーラス注射の後の、ラットにおけるPEG化したストレスコピン様ペプチド(配列番号102、103、104、105、及び106)の薬物動態を示す。
【図16A】(A)健康な被験者、(B)心不全を有する被験者、における7.5時間の静脈内注射後、及び(C)健康な被験者における54ng/kg/分の注入後の、配列番号1のストレスコピン様ペプチドの平均血漿濃を示す。
【図16B】(A)健康な被験者、(B)心不全を有する被験者、における7.5時間の静脈内注射後、及び(C)健康な被験者における54ng/kg/分の注入後の、配列番号1のストレスコピン様ペプチドの平均血漿濃を示す。
【図16C】(A)健康な被験者、(B)心不全を有する被験者、における7.5時間の静脈内注射後、及び(C)健康な被験者における54ng/kg/分の注入後の、配列番号1のストレスコピン様ペプチドの平均血漿濃を示す。
【図17】配列番号1のストレスコピン様ペプチドの7.5時間静脈内注射研究の間の時間経過に伴う健康なプラセボ被験者の心拍数を示す。
【図18A】配列番号1のストレスコピン様ペプチドの7.5時間静脈内注射の間の、健康な被験者と心不全の被験者との対比に関する(A)心拍数、(B)心係数、(C)1回拍出量の変化を示す。
【図18B】配列番号1のストレスコピン様ペプチドの7.5時間静脈内注射の間の、健康な被験者と心不全の被験者との対比に関する(A)心拍数、(B)心係数、(C)1回拍出量の変化を示す。
【図18C】配列番号1のストレスコピン様ペプチドの7.5時間静脈内注射の間の、健康な被験者と心不全の被験者との対比に関する(A)心拍数、(B)心係数、(C)1回拍出量の変化を示す。
【図19】健康なイヌ、健康な被験者、及び心不全被験者に関する、配列番号1のストレスコピン様ペプチドの注入後の心拍数の変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、心不全を含むがこれらに限定されない心臓血管疾患の治療、改善、又は阻害のための選択的CHRH2作動薬及びその組成物である新規ペプチド類に関する。一実施形態において、新規かつ選択的なCRHR2作動薬ペプチドは、ストレスコピン様ペプチド及びその修飾物質を含む。
【0030】
本発明の別の実施形態は、投与されたペプチドの特定の治療血漿中濃度範囲(図1)を目標とした、心不全の治療の必要な患者に対するストレスコピン様ペプチドの投与に関する。この範囲内のストレスコピン様ペプチドの投与は、心臓に悪影響を与えずに、患者の心機能を改善する。そのような悪影響としては、とりわけ、次の影響のうちのいずれかが挙げられる:心拍数の増加、血圧上昇又は低下、心筋酸素消費量の増加、新たな心室性不整脈、及び心不全に有意にストレスを与えるその他の変時性又は変力反応。
【0031】
本発明の更に別の実施形態は、ストレスコピン様ペプチド、及び、ストレスコピン様ペプチドの血漿中濃度が、長期時間間隔の間、治療に有益な範囲(図2A〜図2C)に維持され、かつ、好ましくは、ほぼ平らな血漿曲線となる該長期時間間隔をもたらす、ストレスコピン様ペプチドの投与方法を目的とする。
【0032】
本発明の一実施形態において、治療又は改善を必要としている被験者の心不全を治療又は改善する方法は、ペプチドの血漿濃度が7.2ng/mL未満に実質的に維持されるような方法で、少なくとも1つのストレスコピン様ペプチドの治療的有効量を被験者に投与することを含む。
【0033】
特定の実施形態において、ストレスコピン様ペプチドは、ストレスコピン(h−SCP)及びその修飾物質からなる群から選択される。ストレスコピン様ペプチド、又はその修飾物質は、好ましくは哺乳類ペプチドであり、具体的には、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、若しくは霊長類ペプチド、又はそれらの誘導体である。好ましくは、ペプチドは、ヒトペプチド、又はそれらの誘導体である。
【0034】
本発明で使用されるストレスコピン様ペプチドの修飾は、アミノ酸挿入、欠失、及び置換を含む、化合物のアミノ酸配列に対するアミノ酸配列の少なくとも1つのポジションにおける変更を含む。好ましくは、修飾されたストレスコピン様ペプチドは、未修飾のペプチドと同じ方法でCRH受容体2型に結合して、少なくとも何らかの生理活性を示す。ストレスコピン様ペプチド及びその修飾物質の例は、以下の欄により詳細に記述される。
【0035】
本発明の別の実施形態は、ペプチド作動薬に共有結合により結合された反応基を含む。この反応基は、被験者内のペプチドの循環半減期を延長するようなポリマー又は他の化学的部分と、安定な共有結合を形成することができるよう選択される。一実施形態において、そのようなポリマーには、排出までの被験者の循環中のペプチド持続時間を延長するポリエチレングリコール(PEG)ポリマーが含まれる。この形態において、この反応基は、一方の手をペプチドの1つ以上のアミノ酸と反応させ、もう一方をポリマーと反応させることにより、ペプチド間のリンカーとして作用する。別の一実施形態において、この反応基は最初にPEGと結合してから、ペプチドと化学結合を形成する。修飾ペプチドの好ましい実施形態において、このリンカー基はスクシンイミドであり、より具体的にはN−エチルスクシンイミド、又はアセトアミドである。更に、このリンカーはビニルスルホン又はオルトピリジルジスルフィドであり得る。好ましくは化学修飾は、例えば反応効率を高めるために、単離されたペプチド上で行われる。
【0036】
ポリペプチド及びPEG部分に結合するのに有用なリンカーは、最小限の免疫原生及び毒性を宿主にもたらすことになる。そのようなリンカーの例は、Bailonら、PSTT,1998,vol.1(8),pp.352〜356、又はRobertsら、2002,Adv.Drug Del.Rev.,vol.54,pp.459〜476に見出すことができる。好適な化学部分の例、特にPEG及び同等のポリマーについては、Greenwaldら、2003,Adv.Drug Del.Rev.,vol.55,pp.217〜250に記述されている。例えば、他のポリマー系では、スチレン−無水マレイン酸ネオカルチノスタチンコポリマー、ヒドロキシルプロピルメタクリルアミドコポリマー、デキストラン、ポリグルタミン酸、ヒドロキシルエチルデンプン、及びポリアスパラギン酸は、PEGシステムに類似の送達及び薬物動態学特性を達成するのに使用することができる。
【0037】
本発明の特定の実施形態において、ストレスコピン様ペプチドには、アミド化C末端が含まれる。そうした修飾手順は、単離された精製ポリペプチド上で実施することができ、又は、固相合成の場合は、合成手順中に実施することができる。その手順は、Rayら、Nature Biotech.,1993,vol.11,pp.64〜70;Cottinghamら、Nature Biotech.,2001,vol.19,pp.974〜977;Walshら、Nature Biotech.,vol.24,pp.1241〜1252;及び米国特許公開第2008/0167231号で検討されている。
【0038】
本発明の特定の一実施形態において、この化合物は、カルボキシ末端にCONH2を含む配列番号82又は配列番号102に示すアミノ酸配列のストレスコピン様ペプチドを含み、N−エチルスクシンイミド又はアセトアミドであるリンカーと共に、アミノ酸配列のポジション28でシステイン残基に結合しているリンカー、並びに、約20kDaのPEGポリマーに結合しているリンカーを含む。
【0039】
本発明の一実施形態は、心不全患者を治療するためにかかるストレスコピン様ペプチドを投与する方法として、ストレスコピン様ペプチドを含む化合物の投薬を特徴とする。
【0040】
更に、本発明の一実施形態は、CHRH2活性によって媒介される疾病、疾患、又は病状を患う、又はこれらであると診断された被験者の、少なくとも1つのストレスコピン様ペプチドの治療的有効量を被験者に投与することを含む、治療方法を特徴とする。
【0041】
本発明の別の一実施形態は更に、1つ以上のCHRH2媒介の症状、疾病、又は疾患の進行を治療又は阻害する方法を特徴とし、この方法は、少なくとも1つのストレスコピン様ペプチドの薬剤有効量を、治療の必要な患者に投与することを含む。
【0042】
A)用語
本発明は、下記の定義、図、及び本明細書に提供されている代表的な開示を参照することにより、最もよく理解される。
【0043】
本明細書では時々、次の略語が使用される:pA50又はpEC50=最大効果の半分を生じさせるのに必要な作動薬濃度の、10を底とした負の対数;SEM=標準誤差;Log DR=作動薬用量比の10を底とした対数;MW=分子量;cAMP=アデノシン3’,5’−環状一リン酸;cDNA=相補的DNA;kb=キロベース(1000個の塩基対);kDa=キロダルトン;ATP=アデノシン5’−三リン酸;nt=ヌクレオチド;bp=塩基対;PAGE=ポリアクリルアミドゲル電気泳動;PCR=ポリメラーゼ連鎖反応;nm=ナノモル。
【0044】
用語「備える」、「含有する」、及び「含む」は本明細書においては、それらの開放された非限定的な意味で用いられる。
【0045】
「投与」又は「投与する」は、薬理学上有用な方法で患者に薬剤を提供することを意味する。
【0046】
「濃度曲線下面積」又は「AUC」は、血漿薬物濃度曲線の下で測定された面積である。多くの場合、AUCは、血漿薬物濃度曲線がその間に統合される時間間隔(例えば、AUC開始-終了)によって特定される。よって、AUC0〜48hは、血漿濃度曲線を0〜48時間にわたって統合することによって得たAUCを指し、その場合、0は通常、患者に対する薬剤又は薬剤を含む剤形の投与時刻である。AUCtは、台形公式によて計算される、時間0から、時間tの最後に検出可能な濃度までの血漿濃度曲線の下の面積を指す。AUCinf又はAUC0-∞は、無限時間まで外挿したAUC値を指し、AUCtと、無限時間まで外挿した面積の合計として計算され、時間tの濃度(Ct)をkで割って計算される。
【0047】
「血圧」(BP)は、血管壁上を循環する血液によって加えられる圧力(単位面積当たりの力)である。循環血液の圧力は、循環血液が動脈及び毛管を通って心臓から離れ、静脈を通って心臓に近づくときに低下する。一般に、血圧という用語は上腕動脈圧を指し、これは、血液を心臓から遠ざける左又は右上腕の大血管内の血圧である。心拍ごとに、血圧は、収縮期血圧と拡張期圧との間で異なる。収縮期圧は、動脈内のピーク圧力であり、心室が収縮している心臓周期の終わり間近に生じる。拡張期圧は、動脈内の最小圧力であり、心室が血液で満たされている心臓周期の始まり近くで生じる。安静時の健康な成人の正常測定値の例は、収縮期で15.3kPa(115mmHg)及び拡張期で10.0kPa(75mmHg)である。脈圧は、収縮期圧と拡張期圧との間の差である。収縮期及び拡張期動脈圧は静的でなく、ストレス、栄養要因、薬剤、疾病、運動、及び立ち上がった後の一瞬に対応して、心拍ごとに及び1日の全体を通じて自然変動する。
【0048】
「C」又は「Cp」とは、被験者の血漿(又は血清)中の薬剤の濃度を意味し、一般に、単位体積当たりの質量、典型的にはミリリットルあたりのナノグラム(ng/mL)として表わされる。便宜上、この濃度は、本明細書において「薬物血漿濃度」、「血漿薬物濃度」、「血漿濃度」、又は「血漿濃度」と呼ばれる場合がある。薬剤投与後の任意の時間の血漿薬物濃度は、C9h又はC24h等のように、Ctとして参照される。補間せずに実験データから直接得られる、剤形の投与の後に得た最大血漿濃度は、Cmaxと称され、「tmax」は、被験者に対する剤形の投与から、Cmaxが生じる時間までの経過時間である。関心期間の間に得る平均血漿濃度は、Cavg又はCmeanと称される。当業者は、個々の被験者で得られる血漿薬物濃度が、薬物吸収、分布、代謝、及び排泄に影響を及ぼす多くのパラメータにおける患者間の変動に起因して様々であることを理解されよう。このため、特に指示しない限り、薬物血漿濃度がリストにされている場合、リストの値は、試験された被験者群から、又は異なる状況で同じ被験者に対する複数回投与から得た値に基づいて計算された平均値である。
【0049】
更に、ペプチドの測定血漿濃度の変動は、ペプチドの量の測定で使用したアッセイ、即ちサンドイッチ免疫測定法に起因することは、当業者には明らかであろう。変動は、例えば、使用する抗体に起因し得、また一般に、参照ベースラインとの比較に基づき、複数の解析法にわたって正規化される。このアッセイ依存性を考慮すれば、当業者はそれに応じて、別のアッセイから得た濃度を比較する際に、元になるアッセイに関する濃度値を調整するであろう。
【0050】
血漿濃度のレベルを「実質的に維持する」又は「実質的に維持している」は、濃度値の最大変動を、約15分を超える期間にわたって約10%に制限することを指す。濃度値の変動は、少なくとも1〜2時間にわたって平均化された時間平均濃度値に関して測定される。これに加えて、血漿濃度のレベルを規定上限値未満に実質的に維持するとは、濃度値が上限値を超える期間を、好ましくは15分未満、より好ましくは、この期間が10分未満となるように制限することを指す。
【0051】
「心機能」とは、心臓によって行われる全般的な生理的作用を意味する。心機能の増強は、心臓の性能に対する好ましい生理学的効果を含み、心臓の働きに悪影響を及ぼす影響は、心機能を低下させると考えられている。そのような悪影響としては、とりわけ、次の影響のうちのいずれかを挙げることができる:心拍数の増加、血圧上昇、心筋酸素消費量の増加、新たな心室性不整脈、及び健康な心臓又は心不全に有意にストレスを与えるその他の変時性又は変力反応。更に、タキフィラキシーの発生は、心機能にとって有益でない。増強された又は改善された心機能は、駆出率の増加によって、より詳細には、左心室(LV)駆出率(EF)、より多くの1回拍出量(SV)、心拍出量(CO)の増加、改善された収縮及び拡張機能、特にLV機能、有益な変時性及び変力反応、一定の心拍数又はわずかに減少する心拍数、一定の血圧又は血圧低下、即ちピーク収縮期大動脈圧、左室拡張終期圧、等容性弛緩又は収縮中の左心室圧、平均肺動脈楔入圧によって、更には、一定の又は減少した心筋酸素消費量、及び一般に被験者の全体的な状態改善に有益な血液動態反応によって測定され得る。
【0052】
「組成物」は、本発明の化合物を含む製品(例えば、特定の量で特定の成分を含む製品、及び特定の量での特定の成分のこのような組み合わせから直接的又は間接的に得られる任意の製品など)を意味する。
【0053】
「化合物」又は「薬剤」は、ストレスコピン様ペプチド又はその製薬上許容される形態を意味する。「複合体(結合)」は、2つ以上の化合物の結合により形成された化学的化合物を意味する。
【0054】
「投薬」とは、所定量の治療薬の投与を意味する。
【0055】
「剤形」は、患者への投与に好適な媒体、担体、賦形剤、又は装置内にある1つ以上の化合物を意味する。「経口剤形」は、経口投与に好適な剤形を意味する。明記しない限り、投薬は、非経口経路を介した投与量に適した剤形を指す。好ましくは、投薬は、連続して静脈内投与、又は皮下投与を介して供給される。
【0056】
「用量」は薬剤の単位を意味する。通常、一用量は一剤形として供給される。用量は、様々な投与計画又は投与速度に従って患者に投与される。一般的な投与計画としては、1日1回(qd)、1日2回(bid)、1日3回(tid)、1日4回(qid)、週2回、隔週、又は月1回が挙げられる。連続的な静脈内投与に関する一般的な投与速度としては、投薬分あたり及びキログラムでの患者の体重あたりのナノグラムが挙げられ、この投与量は、少なくとも約30分間、一般に最大数時間の間、連続的に供給される。ボーラス静脈内又は皮下投与に関して一般的な投与量としては、キログラムでの患者の体重あたりのマイクログラムが挙げられ、一般に注射によって投与される。
【0057】
「平らな血漿曲線」は、本発明による剤形の投与後の特定の期間の後に実質的に一定の値に到達しそしてそれを維持する血漿濃度曲線を意味する。一定の値の濃度範囲は、「目標」血漿濃度と称される。
【0058】
「形態」とは、1つ以上のストレスコピン様ペプチドの種々の異性体及び混合体を意味する。用語「異性体」は、組成及び分子量は同じであるが、物理的及び/又は化学的特性が異なる化合物を指す。このような物質が有する原子の数及び種類は同じであるが、構造は異なる。その構造の違いは構成の違い(幾何異性体)又は偏光面を回転させる能力の違い(立体異性体)であり得る。用語「立体異性体」は、構成は同じであるが原子の空間配置が異なる異性体を指す。鏡像異性体及びジアステレオマーは、不斉置換されている炭素原子がキラル中心として働く立体異性体である。用語「キラル」は、分子が鏡像に重なり合わないことを指し、これは、対称軸及び面又は中心が存在しないことを意味する。
【0059】
「心拍数」(HR)とは、単位時間あたりの心拍数を指し、通常は毎分の脈拍(bpm)として表わされる。平均的な安静時のヒトの心拍数は、成人男性で約70bpm、成人女性で75bpmである。心拍数は、健康、年齢、及び遺伝的特徴に基づいて個体間で大きく異なる。持久力の必要な運動選手は、非常にゆっくりとした安静時の心拍数を有する。心拍数は、個体の脈拍をモニタリングすることによって測定され得る。安静時の個体のベースラインHRからの約15分超過にわたる5〜10bpmを超える増加は、HRの「実質的増加」を実証する。
【0060】
「非経口経路」とは、皮膚又は粘膜を穿孔することを含む投与経路を意味し、一般に、投与の静脈内(IV)、皮下(SC)、筋肉内(IM)経路を含む。
【0061】
「患者」又は「被験者」は、動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトで、治療的介入を必要としている者を意味する。
【0062】
「製薬上許容される」は、本発明の組成物又は薬剤の製剤において使用するための、十分な純度と品質を有する、分子実体又は組成物を意味する。ヒトでの使用(臨床及び市販)及び獣医学的使用の両方が本発明の範囲内に等しく含まれることから、製剤には、ヒトでの又は獣医学的用途でのいずれの組成物又は薬剤も含まれるであろう。
【0063】
「製薬上許容される賦形剤」は、薬理学的組成物に添加されるか、あるいは薬剤の投与を容易にする賦形剤、担体又は希釈剤として用いられかつ該薬剤と相溶する、例えば、不活性な物質のような、毒性を有さないか、生物学的に許容されるか、あるいは患者に投与するうえで生物学的に適した物質を指す。賦形剤の例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、いろいろな糖及びいろいろな種類の澱粉、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油及びポリエチレンポリエチレングリコールが含まれる。
【0064】
「製薬上許容される塩」は、本発明の組成物又は薬剤の製剤に使用するための十分な純度及び品質を有し、かつ医薬品に使用するのに忍容性であり、十分に非毒性である、本発明の化合物の酸塩又は塩基塩を意味する。好適な製薬上許容される塩には、酸付加塩が含まれ、これは例えば薬剤化合物を、塩酸、硫酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、クエン酸、酒石酸、カルボン酸又はリン酸のような好適な製薬上許容される酸と反応させることにより形成することができる。
【0065】
「血漿薬物濃度曲線」、「薬物血漿濃度曲線」、「血漿濃度曲線」、「血漿濃度−時間プロファイル」「血漿中濃度プロファイル」、又は「血漿プロファイル」は、血漿薬物濃度若しくは薬物血漿濃度、又は血漿濃度と時間の対比をプロットすることによって得る曲線を指す。通常、時間スケール上のゼロ点(通常はx軸上にある)は、患者に対する薬剤又は薬剤を含む剤形の投与時刻であるのが一般的なことである。
【0066】
「速度」とは、単位時間あたりに剤形から投与される化合物の量、例えば、患者の血液循環中に、患者の体重当たりでかつ毎分供給される薬剤のナノグラム(ng/kg/分)を意味する。剤形の薬剤供給速度は、薬剤供給のインビトロ速度、即ち、適切な状況下及び好適な流体中で測定された、単位重量あたり及び単位時間あたりに剤形から供給される薬剤の量として測定され得る。ある量の薬剤を患者の血液循環に供給することは、等量の薬剤を投与することと交換可能に使用される。
【0067】
「ストレスコピン様ペプチド」とは、配列番号1のアミノ酸配列と相同のポリペプチド、又は該ポリペプチドの誘導体を意味し、h−SCP及びポリペプチドの配列中の保存的アミノ酸置換を含むが、これらに限定されない。相同ストレスコピン様ペプチドは、最大4つであるが4つ以下のアミノ酸欠失及び/又は1つ以上の保存的アミノ酸置換を除き、h−SCP(配列番号1)と同一であるアミノ酸配列を含むペプチドを指す。保存的置換は、例えば、次の通りに行われることができる:脂肪族非極性アミノ酸、極性非荷電アミノ酸、及び極性帯電アミノ酸はそれぞれ、非極性アミノ酸、極性非荷電アミノ酸、又は極性帯電アミノ酸である別の脂肪族アミノ酸と置き換えられることができる。好ましくは、脂肪族非極性基の置換は、G、A、及びPからなる群のアミノ酸の間、又はI、L、及びVからなる群のアミノ酸の間で生じる。好ましくは、脂肪族極性非荷電基の置換は、C、S、Tからなる群のアミノ酸の間、又はN及びQからなる群のアミノ酸の間で生じる。好ましくは、脂肪族極性帯電基の置換は、D及びEからなる群のアミノ酸の間、又はK及びRからなる群のアミノ酸の間で生じる。保存的アミノ酸置換は、H、F、W、及びYを含む芳香族アミノ酸の間でも行われ得る。好ましくは、相同ストレスコピン様ペプチドの少なくとも一部は、アミノ酸欠失及び/又は非保存的置換に関してh−SCPとの比較において90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0068】
一般に、ストレスコピン様ペプチドは、ストレスコピン(h−SCP)のCRHR1及びCRHR2活性に最も似通った、トコルチコトロピン放出ホルモン受容体1型(CRHR1)及びトコルチコトロピン放出ホルモン受容体2型(CRHR2)に対する作動薬活性を示すペプチドを指す。ストレスコピン様ペプチドは、CRHR1に対する活性が少ない選択的CRHR2作動薬である。受容体に対する選択性とは、本明細書において、他の受容体(ペプチドがこれに対しても活性を誘導し得るが有効性はより低い)に対するのと比較して、ペプチドが選択性である受容体に対して活性反応を誘導するような、ペプチドの有効性を指す。ストレスコピン様ペプチドの定義は作動薬に限定されず、部分的作動薬も含み得る。ストレスコピン様ペプチドのCRHR1及びCRHR2活性は、例えば、アデノシン3’,5’−環状一リン酸(cAMP)アッセイで評価することができる。
【0069】
ペプチド又はそれらの誘導体の「ストレスコピン相対」濃度とは、配列番号1のストレスコピンペプチドの濃度量に相当する重量及びCRHR2活性である濃度を意味する。分子量及びCRHR2活性は、ストレスコピン様ペプチドの種々の形態によって異なるので、ペプチドの重量又はCRHR2活性を考慮せずに剤形の血漿濃度を報告するのは紛らわしい。ペプチドの血漿濃度は、ストレスコピンに相当する重量及びCRHR2活性に関して正規化されたペプチドの濃度であるストレスコピン相対濃度として報告されるのが好ましい。例えば、ストレスコピン様ペプチド(配列番号102)のPEG化した誘導体の分子量は25,449Daであり、一方、ストレスコピン(配列番号1)の分子量は4,367Daである。更に、配列番号102のストレスコピン様ペプチドの作動薬活性は、CRHR2のcAMPアッセイで測定した場合に、8.15であるpA50値を有するのに対し、配列番号1のストレスコピンのpA50値は9.40である。そこで、配列番号1のストレスコピンに対する配列番号102のペプチドの作動薬効力比を、10(9.40〜8.15)=17.78のファクタだけ低減し、更に、このペプチドは、配列番号1のストレスコピンの5.6倍の質量を有している。配列番号1のストレスコピンの100pg/mLに相当する血漿中濃度まで投与するためには、血漿からの組織への分布が等しいと仮定すれば、配列番号102のストレスコピン様ペプチドの血漿濃度が100.8(=5.6*17.78)倍になるまで(つまり10ng/mL)投与しなくてはならない。濃度が重量非依存的なモル単位で提示される場合、CRHR2活性に基づく薬理学的等価性を達成するために、配列番号1のストレスコピンの濃度の5.6倍である配列番号102のストレスコピン様ペプチドの投与量を投与する必要がある。要約すれば、100pg/mLの配列番号102のペプチドのストレスコピン相対濃度は、同ペプチドの10ng/mLの濃度に相当する。「ストレスコピン相対」投与速度は、「ストレスコピン相対」濃度の達成に基づく。
【0070】
「最終半減期」(t1/2又はt1/2最終)は、薬物吸収と薬物クリアランスとの間で血漿曲線が平らな状態である擬平衡状態の血漿濃度の半分に達するのに必要な時間である。吸収過程が制限因子でない場合、半減期は、血漿クリアランス及び分布の程度によって制御されるハイブリッドパラメータである。これに対し、吸収過程が制限因子である場合、最終半減期は吸収の速度及び程度を反映し、排泄過程と無関係である。最終半減期は、薬物蓄積の程度、濃度変動、及び平衡に達するのに要する時間を制御するので、多回投与計画に特に関係がある。
【0071】
「治療的有効量」は、研究者、獣医、医師又は他の臨床医により求められている、治療される疾病又は疾患の症状の治療的緩和を含む、組織系、動物又はヒト内で生物学的反応又は医薬反応を顕現させる化合物の量を意味する。
【0072】
本明細書で使用されるとき、用語「治療する」は、他に記述のない限り、その用語が適用される疾患若しくは状態、又はそのような疾患若しくは状態の1つ以上の症状を、後退させ、緩和し、進行を阻害し、又は予防することを意味する。本明細書で使用されるとき、用語「治療」は、他に記述のない限り、治療する行為を指す。
【0073】
B)化合物
本発明は、下記のペプチド及びその誘導体に関する。広くは、本発明は、心不全の治療を必要とする患者に投与すると、心臓に悪影響を与えることなく患者の心機能を改善する、全ての化合物に関する。改善は、心拍出量の増加及び駆出率によって測定することができ、悪影響は、心不全にストレスを加える数ある反応の中でも、心拍数の増加、心筋酸素消費量の増加、血圧低下を含むことができる。本発明の化合物はまた、新規かつ選択的なCRHR2作動薬ペプチド、例えば、ストレスコピン様ペプチド及びその修飾物質などを含む。
【0074】
更に、本発明の化合物は、例えば、h−SCP又は模倣h−SCPポリペプチドなどの、CRHR2に結合する、又はCRHR2と錯体を形成する、化学部分又はペプチド部分を指す。好ましい化合物は、例えば、cAMPアッセイにおいて約7.5以上の範囲内のpA50で測定される、又は、約7.5以上の範囲内のpKI(KIの負の対数)で測定される、CRHR2に対する更に高い作動薬活性を有するペプチドである。高い結合親和性を示すだけでなく、ストレスコピン様ペプチドは、より高いレベルの受容体活性化を示すCRHR2作動薬である。よって、h−SCPに相同のペプチドが、類似の物理的特性及び化学的特性を自然に有しているため、好ましい。
【0075】
副腎皮質刺激ホルモン放出因子の群に属するものは、中程度に短い半減期を呈する。CRHR2選択的作動薬は、特有の治療特性をもたらす見込みがある。心臓血管疾患及び代謝性疾患を含むがこれらに限定されない、CRHR2によって媒介される疾患の治療について、本発明の一実施形態は、ストレスコピン様ペプチドの長時間作用変異体を目的とする。長時間作用ストレスコピン様ペプチドは、継続的な治療曝露が必要な慢性疾患の治療、及び、処方薬治療の患者コンプライアンスに問題がある場合に、特に利益をもたらす。
【0076】
したがって、本発明の一実施形態は、全般に、望ましい治療的特性及び/又はCRHR2に対する構造−活性関係が保持されるような、h−SCPの配列変化、部位特異的配列変化、及び空間的又は立体的な干渉考慮を目的とする。
【0077】
C末端でアミド化されているストレスコピン様ペプチドの実施形態が、表1〜表5に提供されている。反応基又はリンカーは好ましくはスクシンイミド又はアセトアミドである。修飾されたペプチドは所望によりPEG基を含む。このPEGは長さ及び重量が異なっていてもよく、好ましくは約20kDaである。所望により、反応基の数は1つより多くてもよく、1つの反応基が好ましい。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
【表3】

【0081】
【表4】

【0082】
【表5】

【0083】
本発明の薬剤化合物はまた、立体異性体の混合物又はそれぞれの純粋な異性体若しくは実質的に純粋な異性体を含む。例えば、本化合物は所望により、任意の1つの置換基を含有する炭素原子に、1つ以上の不斉中心を有してもよい。よって、この化合物は、鏡像異性体若しくはジアステレオマー又はその混合物の形で存在してもよい。本化合物が二重結合を含有するとき、本化合物は、幾何異性(シス−化合物、トランス−化合物)の形で存在してもよく、本化合物がカルボニルのような不飽和結合を含有するとき、本化合物は、互変異性体の形で存在してもよく、本化合物はまた、これらの異性体又はその混合物を含む。ラセミ混合物、鏡像異性体又はジアステレオマーの形の出発化合物を、本化合物を製造する方法で用いてもよい。本化合物がジアステレオマー又は鏡像異性体の形で得られるとき、それらはクロマトグラフィー又は分別晶出のような従来の方法により分離できる。加えて、本化合物は、その分子内塩、水和物、溶媒和物又は同質異像を含む。
【0084】
更に、好適な薬剤化合物は、粘膜に浸透した後、又は経口投与の場合には唾液と共に胃腸管へ運ばれた後に、局所的な生理学的効果、又は全身的効果を及ぼすものである。本発明による処方から調製された剤形は、長期間にわたって活性をもたらす薬剤化合物(とりわけ、少なくとも数時間の半減期を有する薬剤)に特に好適である。
【0085】
C)合成経路及び精製
「単離された」ポリペプチドは、実質的に細胞性物質を含まないか、若しくは細胞性物質から分離されているか、又は、そのポリペプチドが産生及び単離された細胞若しくは組織源由来の他の混入タンパク質から分離されているか、あるいは、ペプチドが化学的に合成された場合は化学的前駆体若しくは他の化学物質を実質的に含まない。例えば、細胞性物質を実質的に含まないタンパク質は、混入タンパク質を乾燥重量で約30%未満、又は好ましくは20%未満、又はより好ましくは10%未満、又は更に好ましくは5%未満、又はいっそう好ましくは1%未満有する、タンパク質調製物を含み得る。
【0086】
生物学的経路
好ましい実施形態において、単離されたペプチドは実質的に純粋である。よって、ポリペプチドが組換えにより産生された場合、これは培地を実質的に含まず、例えば、タンパク質調製物体積の約20%未満、若しくはより好ましくは10%未満、又は更により好ましくは5%未満、あるいはいっそうより好ましくは1%未満の培地しか含まない。タンパク質が化学合成によって産生された場合、これは化学的前駆体又は他の化学物質を実質的に含まず、即ち、タンパク質の合成に関与した化学的前駆体又は他の化学物質からは分離されている。したがって、ポリペプチドのこのような調製は、目的のポリペプチド以外の化学的前駆体又は化合物を、乾燥重量で約30%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、更により好ましくは5%、又はいっそうより好ましくは1%未満を有する。
【0087】
細胞環境におけるポリペプチド発現は、単離されたポリヌクレオチドの利用により達成することができる。「単離された」ポリヌクレオチドは、異なる核酸配列を備えた核酸分子から実質的に分離されているか、又は異なる核酸配列を備えた核酸分子を含まないものである。単離されたポリヌクレオチド分子の実施形態には、cDNA、ゲノムDNA、RNA、及びアンチセンスRNAが挙げられる。好ましいポリヌクレオチドは、例えば組織試料からなど、ヒト由来の生体サンプルから入手される。
【0088】
ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを供給及び伝搬するのに、ベクターを使用することができる。宿主細胞へそのようなベクターを導入することで、模倣ストレスコピンのコードされたmRNA又はタンパク質の産生をもたらすことができる。別の方法としては、発現ベクターを、転写因子、RNAポリメラーゼ、リボソーム、及びアミノ酸などを含むがこれらに限定されない精製要素と組み合わせることにより、無細胞条件で効果的な転写/翻訳反応を生成することができる。結果として生じた反応から発現した模倣ストレスコピンポリペプチドは、更なる精製、修飾、及び/又は処方のために単離することができる。
【0089】
用語「ベクター」は、連結されたもう1つの核酸を輸送する能力をもつ核酸分子を意味する。ベクターの代表的な一例であるプラスミドは、環状2本鎖DNAループを意味し、追加のDNAセグメントがこれに挿入され得る。ベクターの別の例はウイルスベクターであり、追加のDNAセグメントがこれに挿入され得る。所定のベクターは、それらが導入される宿主細胞(例えば、複製の細菌性起源を有する細菌ベクター及びエピソーム性哺乳類ベクター)において自己複製できる。他のベクター(例えば、非エピソーム性哺乳類ベクター)は、宿主細胞への導入時に、宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それによって、宿主ゲノムに沿って複製される。更に、特定のベクター(発現ベクター)は、それらが操作可能に連結される遺伝子の発現を指向することができる。組換えDNA技法における有用なベクターは、プラスミドの形態であり得る。あるいは、例えばウイルスベクター(例えば複製欠陥のレトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)などの、同等の機能を提供する他の形態のベクターを、目的用途に好適なように当業者が選択することができる。
【0090】
宿主細胞は、ベクター上にあるか又は細胞染色体内に組み込まれたDNA分子を含む細胞を指す。宿主細胞は、DNA分子を内発的に含むネイティブ宿主細胞か、又は組換え型宿主細胞のいずれかであり得る。宿主細胞の一例は組換え型宿主細胞であり、これは外来のDNA配列により形質転換又は形質移入された細胞である。そのような外来DNAが細胞膜の内側に導入された場合、細胞はその外来DNAによって形質転換される。外来DNAは、細胞のゲノムを構成する染色体DNAに組み込まれて(共有結合して)も、組み込まれなくて(共有結合しなくて)もよい。例えば原核生物及び酵母において、外来DNAは、例えばプラスミドなどのエピソーム要素上に保持され得る。真核細胞については、安定に形質転換又は形質移入された細胞は、外来DNAが染色体に組み込まれ、これが染色体の複製を通して娘細胞に遺伝するようになっているものである。この安定性は、真核細胞の、外因性DNAを含有する娘細胞の集団からなる細胞株又はクローンを確立する能力により示される。クローンは、1つの細胞又は共通祖先から有糸分裂により誘導された細胞群を指す。細胞株は、生体外で数多くの世代にわたって安定に成長できる、初代細胞のクローンを指す。組換え宿主細胞は、大腸菌のような細菌、酵母のような真菌細胞、ヒト、ウシ、ブタ、サル及びげっ歯類起源の細胞株のような哺乳類細胞、ショウジョウバエ及びカイコ由来の細胞株のような昆虫細胞を含む、原核生物又は真核生物であってよい。組換え宿主細胞は、特定の対象細胞だけでなく、かかる細胞の後代又は潜在的後代も指す。特に、変異又は環境の影響のどちらかにより、特定の修飾は後の世代に起こる可能性があるため、かかる後代は親細胞と同一ではない可能性があるが、用語の範囲内に依然として含まれるよう意図されている。
【0091】
本発明の例示のベクターには、例えば細菌−酵母又は細菌−動物細胞、又は細菌−真菌細胞、又は細菌−無脊椎動物細胞など、宿主間でDNAをやりとりすることができるよう特に設計された発現系も含まれる。当業者には数多くのクローンベクターが知られており、適切なクローンベクターの選択は、当業者の裁量の範囲内である。原核細胞及び真核細胞の両方に好適な他の発現系については、例えば、Sambrookら、(1989)、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,vol.2,pp.16.3〜16.81の第16章及び第17章を参照のこと。
【0092】
クローン遺伝子又は核酸(例えば、模倣ストレスコピンポリペプチドをコードコードするcDNA)の高レベルの発現を達成するために、その模倣ストレスコピンポリペプチド配列に対応するヌクレオチド配列は、好ましくは、転写を誘導する強力なプロモーター、転写/翻訳ターミネーター、及び(タンパク質をコードしている核酸の場合には)翻訳開始のためのリボソーム結合部位を含有する発現ベクターにサブクローンされる。好適な細菌プロモーターは当該技術分野において既知であり、例えば、Sambrookら、(1989),MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York、及びMacrides,1996,Microbiol.Rev.60(3):512〜38に記述されている。本発明で開示されている模倣ストレスコピンタンパク質を発現するための細菌発現系は、例えば、大腸菌、バチルス属菌、及びサルモネラ菌において利用できる(Palvaら、1983,Gene,22:229〜235;Mosbachら、1983,Nature,302:543〜545)。そのような発現系のキットは市販されている。哺乳類細胞、酵母、及び昆虫細胞用の真核生物発現系は当該技術分野において既知であり、これも市販されている。代表的な実施形態において、真核生物発現ベクターは、バキュロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ベクター、又はレトロウイルスベクターである。
【0093】
プロモーターは、RNAポリメラーゼに結合して遺伝子の転写を開始することに関与する、DNAの制御配列を指す。プロモーターはしばしば、遺伝子の転写開始部位の上流側(即ち5’)である。遺伝子は、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質の産生に関与するDNAセグメントを参照し、これにはコード領域、コード領域の前(5’UTR)及び後(3’UTR)の非コード領域、並びに、個々のコードセグメント(エクソン)間に介在する非コード配列(イントロン)が含まれる。コーディングは、DNA又はmRNAの3つの塩基トリプレット(コドン)における特定のアミノ酸の使用又は終結シグナルを指す。
【0094】
ポリヌクレオチドの発現を誘導するのに用いられるプロモーターは、特定の用途に適合するよう慣例手順で選択することができる。プロモーターは所望により、異種由来の転写開始部位からの距離が、自然の条件での転写開始部位からの距離とほぼ同じ場所に配置される。ただし、当業者には明らかであるように、この距離のある程度の差異は、プロモーター機能を失うことなく許容することができる。
【0095】
プロモーターに加え、発現ベクターは、宿主細胞内の模倣ストレスコピンをコードしているポリヌクレオチドの発現に必要な、追加の要素全てを含んだ、転写ユニット又は発現カセットを含有し得る。代表的な発現カセットには、模倣ストレスコピンポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド配列に操作可能に連結されたプロモーター、並びに、転写、リボソーム結合部位、及び翻訳終結の効率的なポリアデニル化のために必要なシグナルが含有される。イヌの模倣ストレスコピンポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、形質移入された細胞によってコードされたタンパク質の分泌を促進する、開裂可能なシグナルペプチド配列に連結され得る。代表的なシグナルペプチドには、組織プラスミノーゲン活性化因子、インスリン、及びニューロン成長因子からのシグナルペプチド、並びにHeliothis virescensの幼若ホルモンエステラーゼが挙げられる。このカセットの追加要素としては、エンハンサー、及び、ゲノムDNAが構造遺伝子として使用されている場合は、機能スプライス供与部位及び受容部位を備えたイントロンが挙げられ得る。
【0096】
プロモーター配列に加え、発現カセットには更に、効率的な終結のために提供された、構造遺伝子の下流にある転写終結部位が含まれ得る。終結部位は、プロモーター配列と同じ遺伝子、ヒトストレスコピン遺伝子、又は別の遺伝子から取得することができる。
【0097】
代表的な実施形態において、当該技術分野において既知の真核細胞又は原核細胞における発現に好適な任意のベクターが使用され得る。代表的な細菌発現ベクターには、例えばpBR322系プラスミド、pSKF、pET23Dなどのプラスミド、並びに例えばGST及びLacZなどの融合発現系が挙げられる。哺乳動物発現ベクターの例としては、例えば、pCDM8(Seed、1987,Nature,329:840)及びpMT2PC(Kaufmanら、1987,EMBOJ.,6:187〜193)が挙げられる。本発明のポリペプチドの組換え発現に好適であり得る、市販されている哺乳類発現ベクターには、例えば、pMAMneo(Clontech(Mountain View,CA))、pcDNA4(Invitrogen(Carlsbad,CA))、pCiNeo(Promega(Madison,WI))、pMC1neo(Stratagene(La Jolla,CA))、pXT1(Stratagene(La Jolla,CA))、pSG5(Stratagene(La Jolla,CA))、EBO−pSV2−neo(ATCC 37593)、pBPV−1(8−2)(ATCC 37110)、pdBPV−MMTneo(342−12)(ATCC 37224)、pRSVgpt(ATCC 37199)、pRSVneo(ATCC 37198)、pSV2−dhfr(ATCC 37146)、pUCTag(ATCC 37460)、及びlZD35(ATCC 37565)が挙げられる。
【0098】
単離の便利な方法を提供するため、更にエピトープタグも組換えタンパク質に加えることができ、これには例えばc−myc、ヘモグルチニン(HA)タグ、6−Hisタグ、マルトース結合タンパク質、VSV−Gタグ、又は抗FLAGタグ、及び当該技術分野において利用可能なその他のものがある。
【0099】
真核細胞性ウイルスからの制御要素を含む発現ベクターは、真核細胞性発現ベクター(例えばSV40ベクター、パピローマウイルスベクター、及びエプスタインバールウイルスから誘導されたベクターなど)において使用され得る。他の代表的な真核細胞性ベクターには、pMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo 5、バキュロウイルスpDSVE、及びその他の、CMVプロモーター、SV40早期プロモーター、SV40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、ハツカネズミ乳房腫瘍ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ポリヘドリンプロモーター、その他真核細胞における発現に効果を呈する他のプロモーターの誘導のもとにタンパク質の発現を可能にする他のベクターが挙げられる。
【0100】
いくつかの発現系は、例えばネオマイシン、チミジンキナーゼ、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ、ジヒドロ葉酸還元酵素など、遺伝子増幅をもたらすマーカーを有する。別の方法としては、遺伝子増幅を用いない高収率発現系も好適であり、例えば、ポリヘドリンプロモーター又はその他の強力なバキュロウイルスプロモーターの誘導のもとに模倣ストレスコピンポリペプチドをコードする配列を備えた、昆虫細胞におけるバキュロウイルスベクターを使用することが挙げられる。
【0101】
発現ベクターに含まれ得る要素には更に、大腸菌において機能するレプリコン、組換えプラスミドを宿す細菌の選択を可能にするための抗生物質耐性をコードする遺伝子、及び、真核細胞配列の制御された挿入を可能にするプラスミドの非主要領域における固有の制限部位も挙げられる。特定の抗生物質耐性遺伝子は、当該技術分野において既知の数多くの耐性遺伝子から選択することができる。必要に応じて、又は所望により、真核細胞のDNA複製に干渉しないよう、原核細胞配列を選択することができる。
【0102】
既知の形質移入方法を使用して、大量のSCP模倣物質を発現する細菌、哺乳類、酵母又は昆虫細胞株を産生することができる。このSCP模倣物質は次に、例えば硫酸アンモニウムなどの物質による選択的沈殿、カラムクロマトグラフィー、及び免疫精製法といった標準的技法を用いて、精製される。
【0103】
真核細胞及び原核細胞の形質転換は、標準技法により実施することができる(例えば、Morrison、1977,J Bact.,132:349〜351;Clark−Curtissら、Methods in Enzymology,101:347〜362を参照のこと)。
【0104】
異種のヌクレオチド配列を宿主細胞に導入するのに好適な、任意の既知の手法を使用して、発現ベクターを導入することができる。これには、Superfect(Qiagen)のような試薬の使用、リポソーム、リン酸カルシウムトランスフェクション、ポリブレン、原形質融合、電気穿孔方、顕微注入法、プラスミドベクター、ウイルスベクター、遺伝子銃粒子加速(遺伝子銃)、又はその他の、クローンゲノムDNA、cDNA、合成DNA又はその他の異種遺伝子材料を宿主細胞に導入するための既知の任意の方法が挙げられる(例えばSambrookら(上述)を参照)。選択された、特定の遺伝子操作手法は、模倣ストレスコピンRNA、mRNA、cDNA、又は遺伝子を発現することが可能な宿主細胞に、少なくとも1つの遺伝子をうまく導入できるものであるべきである。
【0105】
当業者には明らかであり得るように、哺乳類細胞の安定な形質移入のためには、使用される発現ベクター及び形質移入技法に応じて、わずかな部分の細胞だけが、そのゲノム内に異種DNAを統合し得る。これらの構成要素を識別及び選択するために、選択マーカー(例えば抗生物質に対する耐性)をコードする遺伝子を、目的の遺伝子と共に宿主細胞に導入することができる。代表的な選択マーカーには、例えばG−418、プロマイシン、ジェネティシン、ハイグロマイシン及びメトトレキサートなどの薬剤に対する耐性を付与するものが挙げられる。導入された核酸で安定的に形質移入された細胞は、薬剤選択によって選択され、識別され得る(例えば、選択マーカー遺伝子を組み入れた細胞は生き残り、他の細胞は死滅する)。
【0106】
異種由来の制御要素を安定な細胞株又はクローン微生物に挿入することにより、例えば標的相同組換え(例えば米国特許第5,272,071号及びPCT国際公開特許WO 91/06667号に記述されている)などの技法を用い、内因性遺伝子に操作可能に連結し、この内因性遺伝子発現を活性化することができる。発現ベクターを細胞内に導入した後、この形質移入された細胞は好ましくは、模倣ストレスコピンポリペプチドの発現に最適な好ましい条件下で培養され、後述の標準技法を用いて培養物から模倣ストレスコピンポリペプチドが回収される。原核細胞又は真核細胞の培養方法は当該技術分野において既知であり、例えばSambrookら(上述);Freshney、1993,CULTURE OF ANIMAL CELLS,3rd ed.を参照のこと。
【0107】
ポリペプチド産生のために細胞系を使用する方法とは別の方法として、無細胞系で、原核細胞系(Zubay G.、Annu Rev Genet.,1973,7:267〜287)及び真核細胞系(Pelhamら、Eur J Biochem.,1976,67:247〜256;Andersonら、Meth Enzymol.,1983,101:635〜644)の遺伝子発現及び合成が可能であることが示されている。これらの系は、ポリペプチド合成反応のために、mRNA又はDNAヌクレオチドのいずれかに利用することができる。無細胞ペプチド産生のための好ましい技法では、網状赤血球可溶化液、RNAポリメラーゼ、ヌクレオチド、塩、及びリボヌクレアーゼ阻害剤が、迅速に連結された転写/翻訳反応(TNT(登録商標)、Promega(Madison,WI,U.S.A.))において使用される。
【0108】
固相合成
本発明のペプチドは、Merrifield、J.Am.Chem.Soc.,85:2149〜2154(1963)によって最初に記述された固相合成技法を用いて調整することができる。他のペプチド合成技法は例えば、M.Bodanszkyら、(1976)Peptide Synthesis,John Wiley & Sons,2d Ed.;Kent及びClark−Lewis、Synthetic Peptides in Biology and Medicine,p.295〜358,Alitalo,K.ら編、Science Publishers,(Amsterdam、1985);並びに、当業者に既知の他の参照研究において見出すことができる。ペプチド合成技法の要約は、参照により本明細書に組み込まれる、Stewardら、Solid Phase Peptide Synthelia,Pierce Chemical Company,Rockford,Ill.(1984)に見出すことができる。溶液法によるペプチド合成も使用することができ、これはThe Proteins,Vol.II,3d Ed.,p.105〜237,Neurath,H.ら、編、Academic Press,New York,N.Y.(1976)に記述されている。そのような合成で使用するための適切な保護基は、上記文献、並びにJ.F.W.McOmie、Protective Groups in Organic Chemistry,Plenum Press,New York,N.Y.(1973)に見出され、これは参考として本明細書に組み込まれる。一般に、これらの合成法には、1つ以上のアミノ酸残基又は好適な保護アミノ酸残基を、成長中のペプチド鎖に連続的に加えることが含まれる。通常、第1アミノ酸残基のアミノ基又はカルボキシル基のいずれかが、好適な、選択的に除去可能な保護基によって保護されている。例えばリジンなどの反応側基を含むアミノ酸のために、異なる、選択的に除去可能な保護基が利用される。
【0109】
ペプチド合成の固相法及び溶液法の両方に、ブロック合成法を適用することもできる。単一のアミノ酸残基を連続的に付加するのではなく、順に並んだ2つ以上のアミノ酸残基を含んだあらかじめ形成されたブロックを、開始サブユニットとして使用するか、又は、順に追加されるユニット(単一のアミノ酸残基ではなく)として使用する。
【0110】
固相合成を一例として使用し、保護された又は誘導体化されたアミノ酸を、保護されていないカルボキシル基又はアミノ基を介して、不活性の固体支持体に結合する。次に、アミノ基又はカルボキシル基の保護基を選択的に除去し、好適に保護された相補的(アミノ又はカルボキシル)基を有する、配列中で次のアミノ酸を、既に固体支持体に結合されている残基と混合して反応させる。次に、アミノ基又はカルボキシル基の保護基を、この新たに追加されたアミノ酸残基から除去し、更にその次のアミノ酸(好適に保護されている)を付加し、同様に行う。望ましいアミノ酸が全て適切な配列で連結された後、残った末端及び側基保護基(及び固体支持体)は順次又は同時に除去され、最終生成物のペプチドが得られる。本発明のペプチドは、好ましくはベンジル化又はメチルベンジル化アミノ基を含まない。そのような保護基部分は、合成の過程で使用され得るが、ペプチドを使用する前に除去される。他に記述されているように、コンフォメーションを拘束するために分子内連結を形成する、追加の反応が必要になることがある。
【0111】
固体支持体合成は、自動タンパク質合成装置(Protemist(登録商標)、CellFree Sciences(790〜8577日本国愛媛県松山市);Symphony SMPS−110,Rainin(Woburn,MA,U.S.A.);ABI 433Aペプチド合成装置、Applied Biosystems(Foster City,CA,U.S.A.))で達成し得る。これらの装置は、合成のより大きな制御及び最適化を可能にする自動化タンパク質反応を実施する能力を有する。
【0112】
精製
本発明のポリペプチドを単離又は精製するために、数多くの手順が採用され得る。例えば、ペプチドの物理的特性(即ち疎水性)に基づいて、カラムクロマトグラフィーを使用してポリペプチドを精製することができる。別の方法としては、確立された分子接着特性を有するタンパク質を、本発明のポリペプチドに可逆的に融合させることができる。融合タンパク質の適切な配位子により、模倣ストレスコピンポリペプチドは、精製カラムに選択的に吸着され、次にカラムから実質的に純粋な形態で遊離されることができる。融合タンパク質は次に、酵素活性により除去され得る。別のカラム精製戦略では、模倣ストレスコピンポリペプチドに対して高められた抗体を採用することができる。これらの抗体は、カラムマトリックスに結合され、この免疫親和性カラムを通してポリペプチを精製することができる。
【0113】
組換え型タンパク質は、例えば塩分留などの好適な分離技法によって、宿主反応から分離することができる。この方法は、目的の組換え型タンパク質から、望ましくない宿主細胞タンパク質(又は細胞培地由来のタンパク質)を分離するのに使用することができる。代表的な塩の例は硫酸アンモニウムであり、これはタンパク質混合物中で水の量を効果的に減少させることにより(タンパク質がその溶解度に基づいて沈殿し)、タンパク質を沈殿させる。タンパク質が疎水性であるほど、低い硫酸アンモニウム濃度で沈殿しやすくなる。代表的な単離プロトコルには、飽和硫酸アンモニウムをタンパク質溶液に加え、結果的に硫酸アンモニウム濃度を20〜30%の間にし、大半の疎水性タンパク質を沈殿させることが含まれる。この沈殿を廃棄し(目的のタンパク質が疎水性でない場合)、この上澄みに、目的のタンパク質が沈殿することが知られている濃度まで硫酸アンモニウムを加える。この沈殿を次に緩衝液に溶かし、過剰な塩を除去して、例えば透析又は膜分離精製法により望ましい純度を達成する。タンパク質の溶解度に依存した他の既知の方法(例えば冷エタノール沈殿法)を使用して、複雑なタンパク質混合物を分別することができる。
【0114】
単離又は精製技法の他の例において、本発明のポリペプチドの分子量を使用して、種々の孔径の膜(例えば、Amicon又はMillipore膜)を通す限外濾過を用い、目的のタンパク質より大きい又は小さい寸法のタンパク質から分離するのに使用することができる。第1段階として、タンパク質混合物を、目的のタンパク質の分子量より小さい分子量カットオフを有する孔径の膜を通して限外濾過を行う。この限外濾過で残ったものを、次に、目的のタンパク質の分子量より大きい分子カットオフを有する膜で、限外濾過を行う。組換え型タンパク質は、膜を通過して濾液内に移り、この濾液をクロマトグラフィーに通すことができる。
【0115】
化学修飾
本発明のポリペプチドは、例えば、マレイミドキャッピング、ポリエチレングリコール(PEG)結合、マレイド化、アシル化、アルキル化、エステル化、及びアミド化などの化学修飾により、ポリペプチドの構造的類似体を産生する対象となり得る。様々な化学修飾技法及び部分が存在することが当業者には理解されよう。例えば、米国特許第5,554,728号、同第6,869,932号、同第6,828,401号、同第6,673,580号、同第6,552,170号、同第6,420,339号、米国特許公開第2006/0210526号、及びPCT国際公開特許WO 2006/136586号を参照のこと。好ましくは化学修飾は、例えば反応効率を高めるために、単離されたポリペプチド上で行われる。
【0116】
本発明の特定の実施形態において、本発明のポリペプチドドには、アミド化C末端が含まれる。そのポリペプチ修飾手順は、単離された精製ポリペプチド上で実施することができ、又は、固相合成の場合は、合成手順中に実施することができる。そのような手順は、Rayら、Nature Biotechnology,1993,vol.11,pp.64〜70;Cottinghamら、Nature Biotechnology,2001,vol.19,pp.974〜977;Walshら、Nature Biotechnology,2006,vol.24,pp.1241〜1252;米国特許出願公開第2008/0167231号において検討されている。
【0117】
本発明のポリペプチドは、ポリペプチドとPEG部分とを結合させるのに有用な特定の中間リンカーを含有し得る。そのようなリンカーは、宿主に対し、最小限の免疫原性及び毒性をもたらし得る。そのようなリンカーの例は、Bailonら、PSTT,1998,vol.1(8),pp.352〜356に見出し得る。
【0118】
特定の実施形態において、本発明は、カルボキシ末端にCONH2を含む配列番号29で示す配列から本質的になる単離されたポリペプチドと、配列番号29のアミノ酸配列のポジション28でシステイン残基に結合した中間リンカーとを含む、結合を目的とする。特定の実施形態において、この中間リンカーはN−エチルスクシンイミドである。更なる実施形態において、この中間リンカーはビニルスルホンである。更なる実施形態において、この中間リンカーはアセトアミドである。更なる実施形態において、この中間リンカーはオルトピリジルジスルフィドである。
【0119】
更なる実施形態において、本発明は、カルボキシ末端にCONH2を備えた配列番号29で示すアミノ酸配列を有するポリペプチドと、配列番号29のポジション28でシステイン残基に結合したN−エチルスクシンイミドリンカーとを含む、結合を目的とし、ここにおいてN−エチルスクシンイミドリンカーは、PEG部分にも結合している。特定の実施形態において、PEG部分の分子量は約2kDa〜約80kDaの範囲であり得る。特定の実施形態において、PEGの質量は約20kDaである。好ましい実施形態において、ストレスコピン様ペプチドは、配列番号82又は配列番号102のポリペプチを含む。特定の実施形態において、PEG質量は約5kDaである。特定の他の実施形態において、PEG質量は約12kDaである。特定の実施形態において、PEG質量は約20kDaである。特定の実施形態において、PEGは質量約30kDaである。特定の実施形態において、PEG質量は約40kDaである。特定の実施形態において、PEG質量は約80kDaである。特定の実施形態において、PEG部分は直鎖状である。他の実施形態において、PEG部分は分枝状である。PEG部分は、当業者に既知の方法に従って合成することができる。別の方法としては、PEG部分は市販されており、例えばSUNBRIGHT(登録商標)ME−020MA、SUNBRIGHT(登録商標)ME−050MA、及びSUNBRIGHT(登録商標)ME−200MA(NOF corp.(日本);Sigma Aldrich(St.Louis,MO,U.S.A.))がある。
【0120】
本発明は更に、本発明のポリペプチドの製薬上許容される塩、及びその塩を使用する方法に関する 製薬上許容される塩は、無毒で生物学的に許容されるか又は他の様式で被験者に投与するために生物学的に適した、ポリペプチドの遊離酸若しくは塩基の塩を指す。一般的には、S.M.Bergeら、「Pharmaceutical Salts」、J.Pharm.Sci.,1977,66:1〜19,及びHandbook of Pharmaceutical Salts,Properties,Selection,and Use,Stahl及びWermuth編、Wiley−VCH and VHCA,Zurich,2002を参照されたい。製薬上許容できる好ましい塩とは、薬理学的に効果があり、過度の毒性、刺激又はアレルギー反応を起こすことなく患者の組織に接触するのに適したものでなければならない。ポリペプチドは、十分な酸性基、十分な塩基性基、又は両方の種類の官能基を有し得るので、多くの無機又は有機塩基、並びに無機及び有機酸と反応して、製薬上許容される塩を形成することができる。薬剤として許容される塩には、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、蟻酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、しゅう酸塩、マロン酸塩、こはく酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−二酸塩、ヘキシン−1,6−二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタン−スルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩及びマンデル酸塩が含まれる。
【0121】
本発明のペプチドが塩基性窒素を含有する場合、当該技術分野で利用可能な適切な方法のいずれか、例えば遊離塩基を無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、過塩素酸、硫酸、スルファミン酸、硝酸、ホウ酸、燐酸などでか、又は有機酸、例えば酢酸、トリフルオロ酢酸、フェニル酢酸、プロピオン酸、ステアリン酸、乳酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、リンゴ酸、パモ酸、イセチオン酸、コハク酸、吉草酸、フマル酸、サッカリン酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ピラノシジル酸、例えばグルクロン酸又はガラクツロン酸など、α−ヒドロキシ酸、例えばマンデル酸、クエン酸又は酒石酸など、アミノ酸、例えばアスパラギン酸又はグルタミン酸など、芳香族酸、例えば安息香酸、2−アセトキシ安息香酸、ナフトエ酸又は桂皮酸など、スルホン酸、例えばラウリルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、シクロヘキサンスルホン酸、本明細書に例として示した酸などの如き酸の適合し得る任意混合物、及び当該技術分野の技術の通常のレベルに照らして相当物又は許容される代替物であると見なされる他の酸及びこれらの混合物のいずれかで処理する方法などで所望の製薬上許容される塩を調製することができる。
【0122】
本発明のポリペプチドが、例えば、カルボン酸又はスルホン酸などの酸基を含む場合、適切な方法のいずれか、例えば、遊離酸を無機又は有機塩基、例えば、アミン(第一級、第二級又は第三級)、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、本明細書に例として示した塩基などのような塩基の適合し得る任意混合物、及び当該技術分野の技術の通常のレベルに照らして相当物又は許容できる代替物であると見なされる他の塩基及びこれらの混合物のいずれかで処理する方法などで所望の製薬上許容される塩を調製することができる。適切な塩の具体例には、アミノ酸(例えば、グリシン及びアルギニンなど)、アンモニア、炭酸塩、重炭酸塩、第一級、第二級及び第三級アミン及び環式アミン(例えば、ベンジルアミン)、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン及びピペラジンなどから生じさせた有機塩、並びにナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム及びリチウムから生じさせた無機塩が含まれる。代表的な有機塩基又は無機塩基には更に、ベンザチン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン、及びプロカインが挙げられる。
【0123】
本発明はまた、この化合物の製薬上許容されるプロドラッグ及びかかる製薬上許容されるプロドラッグを用いた治療方法にも関する。用語「プロドラッグ」は、被験者に投与した後に化学的又は生理学的方法、例えば生体内で起こる加溶媒分解又は酵素による開裂などで、又は生理学的条件下で当該化合物になる指定化合物の前駆体を意味する。「製薬上許容できるプロドラッグ」とは、非毒性であり、生物学的に許容され、そうでなければ患者への投与に生物学的に好ましいプロドラッグである。適切なプロドラッグ誘導体の選択及び調製の例示的な操作手順は、例えば、「プロドラッグの設計(Design of Prodrugs)」、H.バンドガード(Bundgaard)編、エルゼビア(Elsevier)社、1985年)に述べられている。
【0124】
代表的なプロドラッグとしては、化合物の遊離アミノ、ヒドロキシ、又はカルボン酸基にアミド又はエステル結合を介して共有結合的に連結したアミノ酸残基、又は2つ以上の(例えば、2〜4の)アミノ酸残基のポリペプチド鎖を有する化合物が挙げられる。アミノ酸残基の例には、天然に存在する20種類のアミノ酸(これらは一般に3文字記号で表わされる)ばかりでなく4−ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、デモシン、イソデモシン、3−メチルヒスチジン、ノルバリン、ベータ−アラニン、ガンマ−アミノ酪酸、シトルリン、ホモシステイン、ホモセリン、オルニチン及びメチオニンスルホンが含まれる。
【0125】
追加的な種類のプロドラッグは、例えば、化合物の構造中の遊離カルボキシル基をアミド又はアルキルエステルに誘導体化することにより製造できる。アミドの例としては、アンモニア、第一級C1〜6アルキルアミン及び第二級ジ(C1〜6アルキル)アミンから生じさせたアミドが挙げられる。第二級アミンとしては、5員若しくは6員のヘテロシクロアルキル又はヘテロアリール環部分が挙げられる。アミドの例には、アンモニア、C1〜3アルキル第一級アミン及びジ(C1〜2アルキル)アミンから生じさせたアミドが含まれる。本発明の典型的なエステルには、C1〜7アルキル、C5〜7シクロアルキル、フェニル及びフェニル(C1〜6アルキル)エステルが含まれる。好適なエステルとしてはメチルエステルが挙げられる。プロドラッグはまた、遊離ヒドロキシ基に半こはく酸エステル、燐酸エステル、ジメチルアミノ酢酸エステル及びホスホリルオキシメチルオキシカルボニルを包含する基を用いた誘導体化を、Fleisherら、Adv.Drug Delivery Rev.1996,19,115〜130に概略が示されている手順に従って受けさせることで調製することも可能である。また、ヒドロキシ基のカーボネート誘導体及びアミノ基はプロドラッグをも生じ得る。また、ヒドロキシ基のカーボネート誘導体、スルホン酸エステル及び硫酸エステルもプロドラッグをもたらし得る。また、ヒドロキシ基に誘導体化を(アシロキシ)−メチル及び(アシロキシ)−エチルエーテル(このアシル基はアルキルエステルであってもよく、場合により1個以上のエーテル、アミン若しくはカルボン酸官能で置換されていてもよいか、又はアシル基は上述したようなアミノ酸エステルである)として受けさせることもプロドラッグを生じさせるに有効である。この種のプロドラッグは、Greenwaldら、J Med Chem.1996、39、10、1938〜40に記述されているように調製することができる。遊離アミンは、アミド、スルホンアミド、又はホスホンアミドとして誘導体化されることもできる。かかるプロドラッグ部分の全部に、エーテル、アミン及びカルボン酸官能基を包含する基が組み込まれている可能性がある。
【0126】
本発明は更に、本発明の方法に使用され得る化合物の薬学的に活性な代謝物に関する。「薬学的に活性な代謝物」とは、化合物又はその塩の体内の代謝による薬学的に活性な生成物を意味する。化合物のプロドラッグ及び活性な代謝産物の測定は当該技術分野で既知又は利用可能な常規技術を用いて実施可能である。例えば、Bertoliniら、J Med Chem.1997,40,2011〜2016;Shanら、J Pharm Sci.1997,86(7),765〜767;Bagshawe、Drug Dev Res.1995,34,220〜230;Bodor、Adv Drug Res.1984,13,224〜331;Bundgaard、Design of Prodrugs(Elsevier Press,1985);及びLarsen、Design and Application of Prodrugs,Drug Design and Development(Krogsgaard−Larsenら編、Harwood Academic Publishers,1991)を参照のこと。
【0127】
D)医薬組成物
本発明の特定の実施形態において、ストレスコピン様ペプチドは、単独で、又は1つ以上の追加成分と組み合わせて、医薬組成物を処方するのに使用される。医薬組成物は本発明による少なくとも1種の活性薬剤を有効量含有する。
【0128】
いくつかの実施形態において、この医薬組成物は、配列番号29に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含み、ここにおいてこのポリペプチドはカルボキシ末端にCONH2を含み、更に、ポジション28でシステイン残基に結合しているN−エチルスクシンイミドリンカー又はアセトアミドリンカーを含み、ここにおいてこのリンカーはPEG部分にも連結している。PEG部分は、その分子量及び物理的特性(例えば、直鎖か分枝鎖か)によって分類され、PEGをポリペプチド基質に結合させるのに使用する1つ以上のリンカー部分を含む。特定の好ましい実施形態において、このポリペプチドは1つ又は2つのリンカーを含む。
【0129】
特定の実施形態において、このPEG部分を含む医薬組成物は、約2kDa〜約80kDaの範囲の重量であり得るPEG部分を含み得る。特定の実施形態において、PEG部分の質量は約2kDaである。更なる実施形態において、PEG質量は約5kDaである。特定の実施形態において、PEG質量は約12kDaである。特定の実施形態において、PEG質量は約20kDaである。特定の実施形態において、PEG質量は約30kDaである。特定の実施形態において、PEG質量は約40kDaである。特定の実施形態において、PEG質量は約80kDaである。かかる組成物は更に、製薬上許容できる賦形剤を含み得る。
【0130】
本開示は更に、本明細書に記述されている化合物又は誘導体と、1つ以上の製薬上許容される担体、賦形剤、及び希釈剤とを含む、組成物(医薬組成物を含む)も提供する。本発明の特定の実施形態において、組成物は更に、少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤を含み得る。特定の一実施形態において、この医薬組成物は、ヒトに投与するのに製薬上許容される。特定の実施形態において、この医薬組成物は、本明細書に記述される化合物又は誘導体の治療的有効量又は予防的有効量を含む。治療的に有効又は予防的に有効となる、本発明の化合物又は誘導体の量は、標準の臨床的技法によって決定することができる。代表的な有効量は、下記のセクションで詳しく記述される。本発明の特定の実施形態において、組成物は、安定剤も含み得る。安定剤は、組成物の修飾ペプチドの化学的劣化速度を遅くする化合物である。好適な安定剤には、酸化防止剤(アスコルビン酸など)、pH緩衝剤、又は塩緩衝剤が挙げられるがこれらに限定されない。
【0131】
医薬組成物は、被験者、特にヒト被験者に投与するのに好適な任意の形態であり得る。特定の実施形態において、この組成物は溶液、懸濁液、乳濁液、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、及び持続放出性製剤の形態である。この組成物は更に、特定の単位剤形であり得る。単位剤形の例としては、錠剤;キャプレット;カプセル(例えばソフト弾性ゼラチンカプセル);カシェ剤;トローチ剤;口内錠;分散剤;座薬;軟膏;パップ剤(湿布);ペースト;粉末;包帯;クリーム;ギプス;溶液;パッチ;エアロゾル(例えば鼻スプレー又は吸入器);ゲル;患者に経口又は粘膜投与するのに好適な液体投与形態(懸濁液(例えば水性又は非水性の液体懸濁液、水中油型エマルション、又は油中水型液体エマルション)、溶液、及びエリキシル剤を含む);被験者に非経口投与するのに好適な液体投与形態;被験者に非経口投与するのに好適な液体投与形態に還元できる滅菌固体(例えば結晶又はアモルファス固体)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0132】
特定の一実施形態において、被験者は、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、家禽、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、又はモルモットなどの哺乳類である。好ましい一実施形態では、患者はヒトである。好ましくは、この医薬組成物は獣医学的投与及び/又はヒトへの投与に好適である。この実施形態に従い、用語「製薬上許容される」とは、動物における使用について、及びより具体的にはヒトにおける利用について、連邦政府又は州政府の規制機関によって認可されていること、又は、米国薬局方若しくは他の一般に承認されている薬局方に記載されていることを意味する。
【0133】
この組成物における使用に好適な製薬担体は、水及び油(石油、動物、植物又は合成由来のものを含む)などの滅菌液体である。特定の一実施形態において、この油はピーナッツオイル、大豆油、鉱物油、又はゴマ油である。医薬組成物が静注投与される場合には、水が好ましい担体である。生理食塩水並びに水性デキストロース及びグリセロール溶液も、特に注射溶液用の液体担体として採用され得る。好適な製薬担体の更なる例は、当該技術分野において既知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1990)18th ed.(Mack Publishing,Easton Pa.)に記述されている。
【0134】
この組成物に使用するのに好適な賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、及びエタノールが挙げられる。特定の賦形剤が医薬組成物への組み込みに好適かどうかは、当該技術分野において周知の様々な要素に依存し、例えばその組成物の投与経路及び特定の活性成分が挙げられるがこれらに限定されない。
【0135】
本発明の特定の実施形態において、組成物は無水組成物である。無水組成物は、無水物又は低水分含有の成分と、低水分又は低湿度条件とを用いて調製することができる。第一級アミン又は第二級アミンを有する修飾ペプチドを含む組成物は、製造中、パッケージング中、及び/又は保管中に水分及び/又は湿度に実質的に接触することが予測される場合には、好ましくは無水物である。無水組成物は、無水性が維持されるように調製及び保管されるべきである。したがって、無水組成物は好ましくは、好適な製剤キット内に含まれ得るよう、水への曝露を防ぐことが知られている材料を使用してパッケージされる。好適なパッケージングの例には、例えば密封されたホイル、プラスチック、単位用量容器(例えばバイアル)、ブリスターパック、及びストリップパックが挙げられるがこれらに限定されない。
【0136】
本明細書に記述されている化合物若しくは誘導体、又はその製薬上許容される塩及び溶媒和物を含む医薬組成物は、意図された投与経路に適合するよう製剤化される。この製剤は、好ましくは皮下投与用であるが、例えば吸入又は吹き込み(口又は鼻を介して)、皮内、経口、頬、非経口、経膣、又は直腸などの他の手段による投与用であり得る。好ましくは、この組成物は更に、保管及び輸送中に化合物の化学的安定性の改善をもたらすよう製剤化される。この製剤は、凍結乾燥することができ、又は液体製剤であってよい。
【0137】
一実施形態において、この化合物又は誘導体は静脈内投与用に製剤される。静脈内製剤には、生理食塩水溶液などの標準担体が含まれ得る。別の一実施形態において、この化合物又は誘導体は注射用に製剤される。好ましい一実施形態において、この化合物又は誘導体は滅菌凍結乾燥された製剤であり、汚染性の細胞性物質、化学物質、ウイルス、又は毒素を実質的に含まない。特定の一実施形態において、この化合物又は誘導体は、液体形態で製剤される。別の特定の一実施形態において、注射用の製剤は、滅菌された一回用量容器に供給される。特定の一実施形態において、注射用の製剤は、滅菌された一回用量容器に供給される。この製剤は、追加の防腐剤を含んでも含まなくともよい。液体製剤は、油性又は水性溶媒中の懸濁液、溶液又は乳濁液としての形態をとることができ、懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤などの処方剤を含み得る。
【0138】
E)投与
本明細書に記述されている化合物若しくは誘導体、又はそれらの製薬上許容される塩は、好ましくは、所望により製薬上許容される溶媒を含む組成物の構成要素として投与される。この化合物又は誘導体は、好ましくは皮下に投与される。別の好ましい投与方法は、化合物又は誘導体の静脈内注射又は連続的静脈内点滴を介した方法である。好ましくは、投与は、化合物又は誘導体のゆっくりとした体内吸収及びクリアランスによって血漿中濃度が擬似静的定常状態に達する注入を介する。
【0139】
特定の実施形態において、この化合物又は誘導体は、任意の他の簡易経路、例えば注入又はボーラス注射、又は上皮若しくは皮膚粘膜被覆(例えば口内粘膜、直腸、及び腸粘膜)を介した吸収によって投与される。投与方法には、非経口、皮内、筋肉内、腹膜内、静脈内、皮下、鼻孔内、硬膜外、経口、舌下、鼻孔内、大脳内、膣内、経皮、直腸、吸入により、又は局所的に、特に耳、鼻、目若しくは皮膚に対しての投与が含まれるがこれらに限定されない。多くの場合において、投与は、化合物又は誘導体の血中内への放出を生じる。好ましい実施形態において、化合物又は誘導体は、静脈内供給又は皮下供給される。
【0140】
そのような製剤の形態は錠剤、カプセル、小袋、糖衣錠、粉末、顆粒、トローチ剤、再構成用粉末、液状製剤又は座薬であってもよい。好ましくは、組成物は静脈内注入若しくはボーラス注射、皮下注入若しくはボーラス注射、又は筋肉内注射用に製剤される。
【0141】
化合物は好ましくは非経口経路で投与される。例えば、組成物を直腸投与の目的で座薬として処方してもよい。静脈内、筋肉内、腹腔内又は皮下経路を包含する非経口用途の場合、本発明の薬剤を適切なpH及び等張性になるように緩衝剤を入れておいた無菌の水溶液若しくは懸濁液又は非経口的に許容される油として提供してもよい。好ましい水性溶媒には、リンゲル溶液、デキストロース溶液、及び等張性塩化ナトリウムが挙げられる。そのような形態物を単位剤形物、例えばアンプル又は使い捨て可能注射デバイス、複数回使用形態、例えば適切な用量を取り出すことが可能な瓶など、又は注射可能製剤を生じさせる目的で使用可能な固体形態物若しくは予濃縮液の形態で提供してもよい。例示した注入用量は、数分から数日間の範囲の期間にわたって投与してもよい。更に別の実施形態において、本発明のペプチドの有効量を、皮下送達に好適なナノ粒子上にコーティングすることができ、又は「貯留物(depot)」内に提供することができる(Hawkinsら、Adv Drug Deliv Rev.,2008,vol.60,pp.876〜885;Montalvoら、Nanotechnology,2008,vol.19,pp.1〜7)。
【0142】
活性薬剤は、吸入手法を通じて投与することができる。そのような方法では、乾燥粉末(Johnsonら、Adv Drug Del Rev.,1997,vol.26(1),pp.3〜15)及び/又はエアロゾル(Sangwanら、J Aerosol Med.,2001,vol.14(2),pp.185〜195;PCT国際公開特許WO2002/094342)の製剤技法を用いることができる。
【0143】
本発明による治療方法の実施形態において、本発明による少なくとも1つの活性薬剤の治療的有効量は、例えば心不全、糖尿病、骨格筋消費、及び筋肉減少症などの疾病、疾患又は医学的状態に苦しむ被験者、又はそれらを有すると診断された被験者に投与される。追加の状態としては、不適切な運動活動、食事摂取、又は心臓保護、気管支弛緩、及び/若しくは抗炎症活性の必要が挙げられる。本発明の活性薬剤の治療的有効量若しくは用量を常規方法、例えばモデリング、用量漸増試験又は臨床試験など、及び常規要因、例えば投与様式若しくは経路又は薬剤送達など、薬剤の薬物動態、疾病、疾患、及び状態のひどさ及び過程、被験体が以前又は現在受けている治療、被験体の健康状態及び薬剤に対する反応及び治療を施す医者の判断などを考慮に入れることで確定することができる。
【0144】
代表的な静脈内投与速度は、被験者の体重1kg当たり毎分、ストレスコピン関連活性薬剤を約0.2ng〜約52ngの範囲であり、好ましくは約0.2ng/kg/分〜約22ng/kg/分、又は同等に、1日当たり約0.3μg/kg〜約32μg/kgである。ボーラス注入又は皮下注射の場合、合計投与量は、単回投薬単位、又は分割した投薬単位で投与することができる(例えばBID、TID、QID、週2回、2週間に1回、又は月1回)。体重70kgのヒトでは、好適な投薬の代表的な範囲は、約1μg/日〜約1mg/日である。毎日投与の代わりに、毎週投薬レジメンを使用することができる。
【0145】
別の好ましい一実施形態において、約20kDaのPEGがペプチド配列のポジション28でシステイン残基に結合しているアセトアミドリンカーを含む配列番号102のCRHR2ペプチド作動薬が、ボーラス皮下注射によって、10μg/kgの用量で、心不全の治療方法を必要としている患者に投与される。この投薬の頻度は、被験者の治療的必要性とその他の臨床的考慮事項に応じて、1日1回〜それより少ない頻度の範囲となるべきである。
【0146】
当業者は、治療のために有効な量の薬剤を決定するために、上述のようなモデルからの情報、臨床試験、及び常規要因からの情報を用いることになる。
【0147】
一実施形態において、配列番号1の化合物又はその医薬組成物は、意図された治療期間である24時間に対して約1時間後に、治療活性のある化合物の血漿濃度の定常状態に達するように、静脈内注入によって投与される。薬剤の投与の中止後、治療効果は約30分以内に目的通りとなる。この実施形態は、急性介護設定に適し得る(図2A)。
【0148】
別の一実施形態において、配列番号1の化合物又はその医薬組成物は、約4時間で治療活性のある化合物の血漿濃度の定常状態に達するように、SC注入によって投与される。薬剤の投与の中止後、治療効果は約1時間で目的通りとなる。この実施形態は、外来診療に適し得る(図2B)。
【0149】
更に別の実施形態において、配列番号82、配列番号102の化合物、又はその医薬組成物は、約4〜8時間又はそれ以上のうちに血漿濃度の定常状態に達するような、1〜7日の範囲の期間にわたる1回以上のSCボーラス注射によって投与される。薬剤の投与の中止後、治療効果は、化合物の効果を低減しながら約3〜5日以内に目的通りとなるこの実施形態の利点は、患者及び健康管理専門家の側のメンテナンスをあまり必要とせず、外来診療環境に適応させることが可能である。有害事象を踏まえた可能な救命治療は、いくつかある薬剤の中でも特にβブロッカーに関係し得る(図2C)。
【0150】
患者の疾病、疾患又は状態の改善が生じたならば投与量を予防的処置又は維持処置に適した量に調整してもよい。例えば、投与の量及び頻度又は両方を症状の関数として所望の治療若しくは予防効果が維持される度合にまで少なくしてもよい。症状が適切なレベルにまで改善したならば治療を停止してもよい。しかしながら、症状がいくらか再発する時には患者に長期をベースラインにした断続的治療を受けさせる必要がある。
【0151】
特定の実施形態において、この化合物又は誘導体は、治療レジメンの一部として1つ以上の他の生物学的活性薬剤と組み合わせて投与される。特定の実施形態において、この化合物又は誘導体は、1つ以上の他の生物学的活性薬剤の投与の前に、投与と同時に、又は投与の後に投与される。一実施形態において、1つ以上の他の生物学的活性薬剤は、本明細書に記述される化合物又は誘導体を含む同じ医薬組成物で投与される。別の一実施形態において、1つ以上の他の生物学的活性薬剤は、本明細書に記述される化合物又は誘導体とは別の医薬組成物で投与される。この実施形態に従って、1つ以上の他の生物学的活性薬剤は、この化合物又は誘導体の投与に使用される投与経路と同じ経路又は異なる経路によって被験者に投与され得る。
【0152】
別の一実施形態において、心臓血管疾患のリスク低減又は治療のために、この化合物又は誘導体は1つ以上の他の化合物又は組成物と共に投与される。心臓血管疾患のリスクを低減又は治療する化合物又は組成物には、抗炎症剤、抗血栓剤、抗血小板剤、繊維素溶解剤、血栓溶解剤、脂質低減剤、トロンビン直接阻害剤、抗Xa阻害剤、抗IIa阻害剤、糖タンパク質IIb/IIIa受容体阻害剤及びトロンビン直接阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記述されている化合物又は誘導体と組み合わせて投与され得る薬剤の例には、ビバリルジン、ヒルジン、ヒルゲン、Angiomax、アガトロバン、PPACK、トロンビンアプタマー、アスピリン、GPIlb/IIIa阻害剤(例えばIntegrelin)、P2Y12阻害剤、チエノピリジン、チクロピジン、及びクロピドグレルが挙げられる。
【0153】
実施形態において、この化合物は、必要としている患者に投与するのに好適な剤形に製剤される。薬剤及び担体粒子の調製方法及び装置は、Pharmaceutical Sciences,Remington,17th Ed.,pp.1585〜1594(1985);Chemical Engineers Handbook,Perry,6th Ed.,pp.21〜13 to 21〜19(1984);Parrotら、J.Pharm.Sci.,61(6),pp.813〜829(1974);及びHixonら、Chem.Engineering,pp.94〜103(1990)に開示されている。
【0154】
本発明の剤形に組み込まれる化合物の量は、一般に治療適応及び望ましい投与期間(例えば12時間おき、24時間おきなど)に応じて、組成物の重量をベースラインとして約10重量%〜約90重量%で変化し得る。投与したい化合物の用量に応じて、1つ以上の剤形で投与することができる。製剤によっては、この化合物は好ましくは、HCl塩形態、又は遊離塩基形態となる。
【0155】
更に、本発明はまた、ヒト又はヒト以外の動物体の治療又は診断方法での使用について前述した、医薬組成物又は医薬剤形にも関する。
【0156】
本発明は更に、治療を必要としている哺乳類に経口投与するための医薬剤形の製造における使用のための医薬組成物に関し、その剤形が、その哺乳類による食事摂取とは独立に、1日のうちいつでも投与できることを特徴とする。
【0157】
本発明は、ヒト又はヒト以外の動物体の治療又は診断方法に関し、これはその動物体に、本明細書に記述されている医薬組成物の治療的又は診断的有効量を投与することを含む。
【0158】
本発明は更に、本明細書で記述される容器、剤形を含む、商業的販売に好適な医薬品パッケージに関し、そのパッケージに、その剤形が食事と共に又は食事なしで投与できるかどうかについてなど、非限定的な書面を伴う。
【0159】
下記の製剤実施例は説明目的に限定され、本発明の範囲をいかなる意味でも制限するものではない。
【実施例】
【0160】
F)合成実施例
合成1:ポリペプチドの合成及び精製
配列番号29のポリペプチドが、Rainin Symphonyマルチプルペプチド合成装置(モデルSMPS−110)上でソフトウェアバージョン3.3.0を使用して、固相ペプチド合成反応によって調製された。ペプチドアミドの合成に使用された樹脂(NovaSyn TGR(登録商標)、440mg、約0.1mmole、0.23mmol/g置換、ロットNo.A33379)は、酸不安定性の修飾されたRinkアミドリンカーで機能付加されたポリエチレングリコールとポリスチレンの複合物であった。
【0161】
合成に使用されたアミノ酸は、C末端にNα−9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)保護基、及び次の側鎖保護基を含んでいた:Arg(2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル、pbf)、Asp(第三級ブトキシ、OtBu)、Asn(トリチル、Trt)、Gln(Trt)、Cys(Trt)、His(Trt)、Lys(t−ブトキシカルボニル、Boc)、Ser(第三級ブチル、tBu)及びThr(tBu)。
【0162】
結合反応は次のように実施された:N−メチルピロリジノン(NMP)膨潤済み樹脂(0.1mmole)、DMF(2.5mL)中5倍モル過剰のFmocアミノ酸及び5倍モル過剰のヘキサフルオロリン酸(HBTU)を混合し、DMF(2.5mL)中10倍モル過剰のN−メチルモルホリン(NMM)を加えてから、45分間にわたって結合させた。Fmoc除去のため、反応物を20%ピペリジン/DMF溶液と共に2分間インキュベートした。この溶液を排水し、新たに20%ピペリジン/DMFを加え、18分間インキュベートした。次に反応物をNMPで洗い、続いて、結合工程を繰り返すことによりアミノ酸付加を実施した。C末端を、N末端からの番号でIle40、Gln39、Asn19、Asn12、及びVal9に結合させるため、結合工程を2回実施した。
【0163】
樹脂からのペプチド開裂は、トリフルオロ酢酸(TFA)(100mL)、1,2−エタンジチオール(EDT)(20.0mL)、フェノール(7.5g)、チオアニソール(5mL)、トリイソプロピルシラン(TIS)(5mL)及び水(5mL)を含む開裂混合物9mLと共に、2時間の開裂プログラム及びインキュベーションを使用して実施された。開裂したペプチドの溶液を50mL BDポリプロピレン遠心管に移し、冷エチルエーテル(40mL)でペプチドを沈殿させた。この混合物を遠心分離にかけ、エチルエーテルをペプチドからデカントした。エチルエーテル(40mL)を加え、混合物を渦流で混合し、遠心分離にかけ、エチルエーテルをデカントした。これらの工程(新たなエチルエーテルの追加、渦流混合、遠心分離、及びデカント)をあと2回繰り返した。このペプチドを減圧下で乾燥させ、408mg(収率92%)の粗生成物を得た。
【0164】
ポリペプチド精製は、Waters分取HPLCシステム(Waters(MA,U.S.A.))で実施された。粗ペプチド(約100mg)を、0.1% TFAを含む、酢酸/アセトニトリル/水が20/30/50の中に溶かした。この物質を2本のVydac C−18カラム(10mm、2.5×25cm)に注入した。注入後、0〜45%溶媒Bの勾配(溶媒B=0.1% TFAを含む80%アセトニトリル)で5分間、45〜70%溶媒Bで60分間、流量6mL/分を用いて、ペプチドを精製した。分画を集め、分析RP−HPLC、MALDI−TOF MS、及びCEで分析した。最も純粋な分画を蓄積し、凍結乾燥して、23mgの生成物を得た。
【0165】
MALDI−TOF MSでは、4400.5に等しい生成物分子量が測定され、これは、C19532656533について計算された分子量4399.2よりも水素原子1つ分大きかった。この液体をアセトン乾燥氷浴中約30分間で急速冷凍することにより、凍結乾燥を実施した。凍結後、開放フラスコ内にある生成物を、濾紙で覆い、高真空下に置いた。高真空下で24時間経過後、乾燥したサンプルを真空から取り出し、後で使用するために保管容器を密封した。
【0166】
合成2:ポリペプチドとN−エチルマレイミドの結合
スキーム1に示すように、部位誘導されたシステイン残基上にキャップするN−エチルマレイミドは、次の条件下で達成された。
【0167】
【化1】

【0168】
2.5mLポリプロピレンバイアル中で、2.0mgの本発明ペプチドを、1.0mLの水に溶かした。次に0.1MのN−エチルマレイミド水溶液20μLをすぐに加えた。反応物を静かに、室温で2時間撹拌した。反応混合物を、Summit APS(Dionex,CA,U.S.A.)の上で精製した。Vydac C18、300Åを充填したHPLCカラム(10×250mm;Grace Davison,IL,U.S.A.)は、表6に示される次のプロトコルを用いる。末端画分を回収し、HPLCで分析し、純粋な画分を蓄積して凍結乾燥した。
【0169】
【表6】

【0170】
合成3:ポリペプチドとヨードアセトアミド−PEGの結合
ヨードアセトアミド−PEG(ヨードアセトアミド末端を備えた直鎖20kDaポリエチレングリコール鎖であり、弱アルカリ性pHで限定的な量存在し、配列番号29のポリペプチドを備える)が、スキーム2に示す排他的反応として、システイン修飾を生じた。システインチオールは、ヨードアセトアミド−PEGの結合の選択性ポイントとして作用した。結果として得られた誘導体αスルファヒドリルアセトアミド連結は、アキラル性であった。
【0171】
【化2】

【0172】
15mLの三角フラスコに、25mg(5.68mmol、1.0当量)の配列番号1のペプチドを加えた。同じフラスコに140mg(6.82mmol、1.2当量、95%活性)のPEG−20ヨードアセトアミド(ロット番号M77592)(Nippon,Oil and Fat(NOF)Corp.製造)を加えた。10mLの水を加え、この溶液を、固体が全て溶けるまで渦流攪拌した。この濁った溶液に、溶液pH約8.91で、50mLのピリジンを加えた。2時間後、20mLのサンプルのアリコートを除去し、Phenomenex C6−フェニルカラムを用い、溶離剤として0.1% TFA/アセトニトリルを用いた逆相HPLCによって分析した。サンプルは、2時間後に反応がほぼ完了したことを示した(図3A)。この反応混合物を、Phenomenex C6フェニル10×150mmカラムを使用してHPLCで直接精製した。精製のための溶離剤は、0.1% TFA水、及び0.1% TFA水中80%アセトニトリルであった。精製は、2〜3mLのサンプルバッチで行った(図3B)。精製された分画を合わせ、50mL三角フラスコ内で凍結乾燥した。この凍結乾燥した固体を、10mLの水で希釈し、再び凍結乾燥した。約1mgの最終生成物を、1mg/mLに希釈し、マススペクトル分析にかけた(図3C)。配列番号102のPEG化化合物の平均重量は、部分的にはPEGポリマーの長さの不均質性のため、25,449ダルトンであり、化合物は白色非晶質の固体として生じた。
【0173】
合成4:N−エチルマレイミドリンカーを用いたポリペプチドのPEG化
2.5mLのポリプロピレンバイアル中で、2.0mg(約0.44nmol)のポリペプチドを、2.5mLの水に溶かし、表7に示す量を使用して、次にすぐに、様々な分子量の活性化したN−エチルマレイミド誘導ポリエチレングリコールを加えた。
【0174】
【化3】

【0175】
反応混合物を静かに、室温で2時間撹拌した。
【0176】
【表7】

【0177】
反応混合物を、Summit APS(Dionex,CA,U.S.A.)の上で精製した。Gemini 5u C6−フェニル、110Åを充填したHPLCカラム(10×100mm;Phenomenex,CA,U.S.A.)は、表8のプロトコルを用いる。
【0178】
【表8】

【0179】
G)生物学的実施例
研究番号1:CRHR2及びCRHR1作動薬活性−cAMPアッセイ
CRH群のCRHR2及びCRHR1作動薬活性を、アデノシン3’、5’−環状一リン酸(cAMP)アッセイにおいて、ヒトCRHR2又はヒトCRHR1のいずれかで形質移入された2種類のSK−N−MC(ヒト神経芽細胞腫)細胞株において特徴付けた。このアッセイにおいて、h−SCP(配列番号1)はh−UCN2(配列番号115)と等しい効力を有しており、CRH群の中で最も択的なCRHR2作動薬であることが示された(図4)。最大効果の50%に必要な濃度(A50)は0.4nMであった。
【0180】
ヒトCRHR1(アクセッション番号X72304)又はCRHR2(アクセッション番号U34587)が、pcDNA3.1/Zeo発現ベクターにクローン化され、電気穿孔法により安定にSK−N−MC細胞に形質移入された。細胞は、10% FBS、50I.U.のペニシリン、50μg/mLのストレプトマイシン、2mMのL−グルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム及び0.1mMの非必須アミノ酸、600μg/mLのG418を含んだアール塩(Earl's Salt)入りMEM中で保持された。細胞を5% CO2で37℃で成長させた。
【0181】
細胞を96ウェル組織培養皿(Biocoat、BD Biosciences販売)に細胞50,000個/ウェルで入れ一晩培養した。細胞をPBSで洗ってから、フェノールレッドを含まず、10μMイソブチルメチルキサンチン(IBMX)を含むDMEM F−12中に再懸濁させた。細胞を、1pM〜10μMの濃度範囲のペプチドと共に、37℃で60分間インキュベートした。作動薬応答を起こさなかったペプチドのあらゆる拮抗作用を続いて評価するために、h−SCPを60分間添加する前に、ペプチドを10μMで20分間プレインキュベートした。アデニル酸シクラーゼの直接刺激であるフォルスコリン(10μM)を陽性対照として使用した。0.5MのHClを加えてアッセイを止め、4℃で2時間、軌道回転で混合した。
【0182】
CRHR2での本発明ポリペプチドの活性を評価するため、Flashプレート放射性アッセイ(カタログ番号Cus56088;Perkin Elmer(MA,U.S.A.))を使用した細胞内cAMP測定試験が採用された。
【0183】
形質移入されたSK−N−MC細胞を、96ウェルBiocoat組織培養皿(BD Biosciences(San Jose,CA,U.S.A))に細胞50,000個/ウェルで入れ一晩培養した。細胞をまずPBSで洗い、次にフェノールレッドを含まず、μMイソブチルメチルキサンチン(IBMX)を含むDMEM/F−12中に懸濁させた。懸濁した細胞を、シンチラント液でコーティングした96ウェルフラッシュプレートに移した。細胞を、1pM〜1μMの範囲のペプチドと共に、37℃で60分間インキュベートした。10μMのフォルスコリンを陽性対照として使用した。リガンド刺激の後、0.5M HClを加えて細胞を溶解させ、4℃で2時間軌道回転により混合して、細胞内cAMPを培地内に放出させた。
【0184】
放出された細胞内cAMPを含む培地を、抗cAMP抗体を含むシンチラント液でコーティングした96ウェルフラッシュプレートに移した。このアッセイでは、細胞内cAMPは、抗体に結合しようとする125I−ラベルされたcAMPと競合する。標準曲線を生成するため、2.5〜250pmol/mLの範囲のcAMPを、この実験に含めた。[125I]−cAMPは、TopCountシンチレーションカウンター(Perkin Elmer(MA,U.S.A))で測定された。
【0185】
個々の作動薬濃度−反応曲線データは、GraphPad Prism(Graphpad Software(La Jolla,CA,U.S.A.))を使用して下記のHillの式にフィットされ、最大反応の半分を生成するのに必要な作動薬濃度(A50)、極大漸近線(α)及びHill傾き(nH)の各パラメータの見積りを提供した。この式において、[A]は作動薬濃度、Eは測定された効果である:
【0186】
【数1】

【0187】
表示目的のため、平均のフィットパラメータ見積りは、平均実験データに重ね合わせて示されている単一のE/[A]曲線を生成するのに使用された。作動薬の有効性見積りpA50は、各曲線の中点の負の対数として表され、測定値の標準誤差(SEM)と共にリストされている。作動薬投与量比の底10の対数(Log DR)値は、試験化合物pA50値を、同じアッセイバッチ内の対応するh−SCP(配列番号1)対照pA50値から差し引くことによって計算された。Log DR値のSEM値は、h−SCP(配列番号1)対照及び試験化合物pA50値の2乗SEM値の合計の平方根によって得られる。
【0188】
【表9】

【0189】
h−SCP(配列番号1)に対するCRHR2媒介のcAMP反応は、克服可能な競合拮抗性と一致した濃度依存性状態で、選択的CRHR2拮抗薬、抗ソーバジン−30(SV30、表9に示す配列番号118)によってブロックされた(図5)。抗ソーバジン−30の存在により、配列番号1の化合物についてpA2値は7.82を得た。
【0190】
【表10】

【0191】
このcAMPフラッシュプレートアッセイにおいて、h−CRHR1又はh−CRHR2形質移入されたSK−N−MC細胞の刺激に、ヒト及びラットペプチド(表10参照)が使用された。ペプチドは37℃で1時間インキュベートされた。曲線は、GraphPad Prismにおいて非線形回帰S字形濃度反応分析計算を使用して算出された。このようにして得られたpA50値を、文献値と共に表11に示す。
【0192】
【表11】

斜体のデータは、有効性近似値を示す;NA=低有効性及び限定的なペプチド供給量によりデータなし;論文データからの値は、下記の形質移入系のcAMP刺激に使用された、執筆者の研究室内で合成されたペプチドで得られた:
1 h−CRHR1又は2 m−CRHR2b形質移入CHO−K1細胞(Lewis,K.ら、2001,PNAS,vol.98,pp.7570〜5);
3 h−CRHR1又は4 h−CRHR2b形質移入HEK−293細胞、濃度反応曲線から近似された値(Hsu,S.Y.ら、2001,Nat.Med.,vol.7,pp.605〜11);
5 m−CRHR2b形質移入されたHEK−293細胞(Brauns,O.ら、2002,Peptides,vol.23,pp.881〜888)。
【0193】
組換え型の非アミド化ペプチドライブラリーは、CRHR2形質移入されたSK−N−MC細胞中でアッセイを行うのは難しいため、作動薬活性におけるh−SCPのC末端領域のアミド化の効果が、有効性及び/又は固有の活性の点から調べられた。
【0194】
種々のアミノ酸のペプチド作動薬活性寄与を調べるため、いくつかの修飾ペプチドが、N末端配列内で1〜7個の欠失から始めて、合成された。各ペプチドは、ストック濃度1mMで水に溶かし、アリコートに分け−40℃でエッペンドルフチューブ(カタログ番号022364111)に保管した。ペプチドは実験当日に1回だけ解凍し、更にcAMPアッセイ緩衝液で希釈した。
【0195】
各実験複製において、h−CRHR2形質移入されたSK−N−MC細胞中でcAMPを産生した全てのペプチドが、同様の最大反応を達成した。しかしながら、h−SCP(配列番号1)への極大反応は、毎日の複製間で異なったため、データは、各複製内で得られたh−SCPに対する最大反応に対して正規化された。データは次に、作動薬濃度−効果の曲線パラメータの最終計算のために、3〜5つの複製実験のものを合わせた(図6)。得られたpA50値を、表12にまとめる。
【0196】
最大反応は判別不能であったが、非アミド化h−SCP(配列番号113)は、アミド化された親ペプチドに比べ、有効性が約200分の1であった。1つのバッチにおいて、親40アミノ酸h−SCPペプチド(配列番号1)はpA50値が9.41±0.03であった。末端アミド化は有効性のために重要であるが必須ではなく、完全に画定された濃度−効果曲線が、非アミド化ペプチドで、アミド化された親ペプチドと同じ最大反応を伴って得られた。
【0197】
1つのアミノ酸欠失(配列番号107)は有効性に対して有意な影響を与えなかったが(pA509.24±0.05)、3つ(配列番号108)及び4つ(配列番号109)のアミノ酸欠失は、それぞれ漸進的にpA50値の低下をもたらした(8.49±0.08及び7.33±0.9)。これを表12に示す。5つ以上のアミノ酸欠失(配列番号110、配列番号111及び配列番号112)は、作動薬活性を完全に失わせた(図6)。したがって、後者の3つのペプチドは、濃度10μMで、h−SCPの拮抗薬として試験された(図7)。どのペプチドも、h−SCP濃度−効果曲線に対して有意な影響は与えなかった。これは、これらペプチドが検出可能な固有の有効性を有していないだけでなく、有意な受容体占有性(即ち10μM未満の親和性)を持たないことを示している。
【0198】
h−SCP配列のN末端領域での4つ以上のアミノ酸欠失は、ペプチド有効性に影響する。N末端領域の1〜4つのアミノ酸欠失のペプチドは、有効性が漸進的に低下し、一方で5つ以上のアミノ酸欠失のペプチドは作動薬活性及び受容体親和性を完全に失う結果がもたらされた(KA>10μM)。後者は、h−UCN2について行われた同様の分析の既報に基づいて予測されていたものである(Isfort,R.J.ら、2006,Peptides,vol.27,pp.1806〜1813)。これは、この欠失が、保持されているポジション6のアミノ酸セリン及びポジション8のアスパラギン酸に近いためである。
【0199】
【表12】

NR=反応なし
【0200】
更に、システイン突然変異、N−エチルマレイミドキャッピング、及びPEG化の、ペプチド作動薬活性に対する影響が調査された。h−SCP(配列番号1)の対照pA50は、種々のアッセイバッチで9.47〜9.74、SEMが0.03〜0.11と変動した。ここでも、いくつかの修飾ペプチドが前述スキームに従って合成された。これらペプチドのアッセイ結果を表13に示す。
【0201】
【表13−1】

【0202】
【表13−2】

【0203】
本発明のポリペプチドの様々な修飾の活性プロファイルを例示する結果が、表14に示されており、これにはストレスコピン(h−SCP)ポリペプチド、ウロコルチン2(h−UCN2)、及びh−SCP−IA−PEGポリペプチド(配列番号102)が含まれ、ここでh−SCP−IA−PEGは、配列番号29で表されるポジション28にシステイン置換を伴うSCP配列を有し、かつ、ポジション28のシステインにアセトアミド(IA)リンカーを介してPEGポリマーがリンクされているペプチドである。このデータは、1〜3つの複製の平均±SEMであり、各複製実験内のh−SCPに対して得られた最大反応の%で表わされている。
【0204】
【表14】

【0205】
h−SCP−IA−PEGポリペプチドはまた、100nMの抗ソーバジン−30(h−CRHR2受容体の選択性競合拮抗薬)の存在下でインキュベートされ、h−SCP−IA−PEGポリペプチド濃度−反応曲線で右方向へのシフトをもたらし、極大反応が100%に拘束されたときの対応するpA50の近似値は6.89であった。
【0206】
研究番号2:CRHR1及びCRHR2の放射性リガンド結合活性
h−SCP(配列番号1)のCRHR2での結合プロファイルが、[125I]−抗ソーバジン−30を放射性標識として使用しヒトCRHR2で安定に形質移入されたSK−N−MC細胞の膜調製における放射性リガンド結合試験において決定された。この細胞は、細胞擦過によって採取され、得られたペレットをすぐに−80℃で凍結した(細胞約50×106個/ペレット)。
【0207】
凍結した細胞ペレットを、15mLのアッセイ緩衝液中、氷浴上で解凍した。この緩衝液は10mM HEPES、130mM NaCl、4.7mM KCl、5mM MgCl2、及び0.089mMバシトラシンから構成され、pH7.2、及び21±3℃であった。この溶液をPolytron組織グラインダーを用い、設定10及び7×3sで均質化した(Brinkmann Instruments(Westbury,NY))。均質化した液を4℃、800×gで5分間遠心分離を行い、ペレットを廃棄した。この上澄みを再び、4℃、26,892×gで25分間遠心分離を行い、最終的なペレットをアッセイ緩衝液中に再懸濁させた。結合アッセイは全て、0.3% PEI入りのアッセイ緩衝液中にあらかじめ1時間浸しておいた96ウェルMultiscreen GF/Bフィルタープレート(Millipore(Billericay,MA,U.S.A.))内で実施された。研究の完了のため、体積45μLの細胞膜を、CRHR2アッセイ用に体積50μL中の60pM[125I]−抗ソーバジン−30と共に、又は、CRHR1アッセイ用に[125I]−(Tyr0)−ソーバジンと共に、15μLの競合リガンドの存在下で、合計体積150μLとして、120分間インキュベートした。1μMのr−UCN1(配列番号114)を含めることによって、非特異的な結合が決定された。この結合した放射能を、Multiscreen Resistマニフォールド(Millipore Corp.(Billerica,MA,U.S.A))を用いて濾過により分離した。フィルターを、pH 7.5の氷冷PBSで3回洗い、フィルター上に残った放射能を、TopCountカウンター(Packard BioScience(Boston,MA,U.S.A))によって測定した液体シンチレーションによって定量した。全ての実験を三組で実施した。
【0208】
個々の競合曲線からのデータは、各実験内で、特異的[125I]−抗ソーバジン−30又は[125I]−(Tyr0)−ソーバジン結合(B)のパーセンテージとして表わされた。これらのデータは次に、GraphPad Prismを使用した4パラメータロジスティックを使用し、それぞれ100%に加重した上漸近線(αmax)及び0%に加重した下漸近線(αmin)で、それぞれ競合物質の最低濃度及び最高濃度から2対数単位上及び下のこれらの値を含めることによって、分析された:
【0209】
【数2】

【0210】
h−SCP(配列番号1)で得られた競合曲線は二相性であった。これは、50%阻害での濃度の負の対数が高いこと(pIC50)及びpIC50が6.6と低いことによって特徴付けられる、高い親和性及び低い親和性の受容体結合状態を示していた。高親和性部位結合は、100μMグアノシン5’−O−[γ−チオ]三リン酸(GTPγS)によって阻害されることが示された。これに対して、h−UCN2(配列番号115)は高い親和性結合のみを呈した。これは、アッセイ中で、h−UCN2がh−SCP(配列番号1)よりも高い固有有効性を有する作動薬として働いていることを示している。このデータ分析から得られたpKI値を表15に示す。
【0211】
【表15】

ND=検出不可能
【0212】
研究番号3:血管平滑筋弛緩−ラット大動脈環
フェニレフリン(PE)であらかじめ収縮させた単離ラット大動脈環において、h−SCP(配列番号1)の血管平滑筋を弛緩させる能力を調べた(図8)。このポリペプチド(配列番号1)は、pA50が6.05±0.12で、濃度依存性の弛緩を生じさせたが、pA50が7.01±0.13を有するh−UCN2(配列番号115)に比べ有効性が10分の1であった。h−SCP(配列番号1)によって引き起こされた反応は、抗ソーバジン−30(配列番号118)によって阻害された。
【0213】
研究番号4:単離ウサギ心臓における心臓血管特徴付け
ウサギ心臓の逆行性潅流ランゲンドルフアッセイにおいて、心拍数(HR)、左心室(LV)収縮、及び血管緊張に対するh−SCP(配列番号1)の影響を評価した。プラセボ様対照賦形剤又はh−SCP(配列番号1)のボーラスを、灌流区画の中に直接投与した。h−SCP(配列番号1)は、それぞれ52nM、9.9nM、及び46nMと等しい50%応答の濃度で、心拍数の濃度依存性の増加、及び左心室の圧力上昇(dP/dtmax)、並びに対応する冠状血管潅流圧力(CPP)の低下を引き起こしたが(図9)、対照賦形剤の場合には応答は観察されなかった。
【0214】
研究番号5:麻酔をかけたラット(IVボーラス)における血流力学
h−SCP(配列番号1)の血流力学プロファイルを、ペントバルビタールナトリウムで麻酔したスプラグダウリー雄ラットで判定した(図10)。SPR−320 Mikro−Tip(登録商標)統合型カテーテルチップマイクロマノメータを、血圧測定のために右大腿動脈の中に定置し、もう1つを左心室圧測定のために左心室の中に直接定置した。0.03nmol/kg〜10nmol/kgの範囲に相当する0.13μg/kg〜44μg/kgの投与量範囲にわたるh−SCP(配列番号1)の静脈内ボーラス投与は、心拍数の投与量依存性の増加、LV発生圧力(+dP/dt)、及び対応する血圧低下、即ち平均動脈圧(MAP)を引き起こした。h−SCP(配列番号1、図10の中実円)によって引き起こされた血流力学パラメータの変化は、抗ソーバジン−30(配列番号118、図10の白丸)を用いた前治療によってブロックされた。更に、これらの健康な麻酔をかけたラットにおいて、抗ソーバジン−30は、Gardiner(GardinerらJ.Pharmacol.Exp.Ther.,2007,vol.321,pp.221〜226)によって報告された覚醒ラットでの実験と一致するベースラインパラメータを阻害しなかった。
【0215】
研究番号6:麻酔をかけた健康なイヌにおける血流力学、血管造影、及び心エコープロファイル
h−SCP(配列番号1)が心臓血管機能に与える影響を、静脈内ボーラス及び30分注入の後に麻酔をかけた雑種犬で更に評価した。血流力学及び左心室の収縮並びに拡張機能を、従来の血流力学、血管造影、心エコー、及び放射線透過法を用いて評価し、得られた結果を表16にまとめた。対照賦形剤又はh−SCP(配列番号1)は、0.03nmol/kg〜3.0nmol/kgに相当する0.13μg/kg〜13.1μg/kgの投与量範囲にわたって静脈内ボーラスによって投与された。h−SCP(配列番号1)は、投与量依存性の血圧変化、左心室の収縮及び拡張機能の変化、並びに心拍数の変化を引き起こし、45%の心拍数増加が最大であった。
【0216】
【表16】

【0217】
上述の知見を実験において更に研究し、その中で、h−SCP(配列番号1)を、前述のようにボーラスによって投与されたのと同じ総投与量で30分間にわたって注入し、結果は表17、図11A及び図11Bに示されている。&ボーラス投薬の場合と同様に、h−SCP(配列番号1)は、血圧、左心室の収縮及び拡張機能、及び心拍数に、投与量(注入)依存性の変化を顕現させた。しかしながら、投与量(注入)反応曲線の低域において、正の変時性及び血圧反応にはっきりとした減少、及び増加したCO及びLVEFとして測定された心臓機能に大幅な増加が存在した。最小効果の注入速度は43ng/kg/分であり、30分にわたって投与された総投与量である1.29μg/kgに相当した。対応するh−SCP(配列番号1)の血漿濃度は4,577pg/mLであった。
【0218】
血漿濃度の決定
集積電極でミクロプレート上にあらかじめコーティングされた、h−SCPに特異的なアフィニティー精製したヤギポリクローナル抗体を使用する、サンドイッチ免疫測定法を採用した。試料に存在するh−SCP分子は、プレートにコーティングされた捕捉ポリクローナル抗体に結合する。結合しなかったあらゆる物質を洗い流した後、スルホ標識されたマウスモノクロナール抗h−SCP抗体を添加した。この結合された抗体は、ミクロプレート上に捕捉されたh−SCP分子に結合し、検体の量を電気化学発光によって決定した。発生したシグナルの量は、試料又は標準中のh−SCP濃度と正比例した。標準曲線範囲は3.125〜1600pg/mLであり、定量可能な範囲は10〜800pg/mLである。このアッセイには25μLの試料容量(二重の控えとして)が必要である。このイムノアッセイは、ヒト及びイヌストレスコピン、並びにヒトウロコルチンIII(h−UCN3)に対して特異的である。このアッセイは、ヒトストレスコピン関連ペプチド(h−SRP)、コルチンI(h−UCN1)、又はウロコルチンII(h−UCN2)を認識しない。分析の完了後、ELISAとHPLC法との間の参照ベースラインの比較に基づき、補正係数1.57を全ての生物学的データに適用した。
【0219】
【表17】

【0220】
研究番号7:進行性心不全(HF)を有する麻酔をかけたイヌにおける血流力学、血管造影、及び心エコープロファイル
h−SCP(配列番号1)が心臓血管機能に与える影響を、同様に、虚血性疾患の進行性で不可逆的な心不全を有する麻酔をかけたイヌにおいて評価した(Sabbahら、1991,Am.J.Physiol.,vol.260,pp.H1379〜H1384;Sabbahら、1994,Circulation,vol.98,pp.2852〜2859;Chandlerら、2002,Circ.Res.,vol.91,pp.278〜280)。進行性の進行性心不全は、ポリスチレン・ラテックスミクロスフェアによる複数回の多発性冠状動脈微小塞栓によって引き起こされた。従来の血流力学、血管造影、心エコー、及び放射線透過法を用いた血流力学、血管造影、心エコー、及びドップラー測定の直後又は直前に、2.2、4.3、及び7.3ng/kg/分の用量注入を60分にわたって静脈内投与した。h−SCPポリペプチド(配列番号1)は、LVEF及びSVの投与量(注入)依存性の増加の及び、血漿濃度と相関する、左心室拡張末期圧(LVEDP)、等容性弛緩中の左心室圧(LV−dP/dt)、体血管抵抗(SVR)、及び左心室拡張末期容量(LVESV)の減少を引き起こした。1時間の静脈内注射のいずれかの後、心拍数、ピーク収縮期大動脈血圧、LV+dP/dt、平均肺動脈圧、平均肺動脈楔入圧、右心房圧、又は心筋酸素消費量の有意な変化は記録されなかった(表18並びに図12A及び図2B)。LV収縮及び拡張機能の改善は、新たな心室性不整脈の発症と関連しなかった。
【0221】
【表18】

【0222】
この研究結果は、h−SCP(配列番号1)の60分の急性静脈内投与は、進行性心不全を有するイヌのLV(収縮期及び拡張期)機能を投与量依存的に改善することを示す。心臓血管機能に対するh−SCP(配列番号1)の作用は、開始時に急速かつ急速可逆であった。LV機能の改善は、その左心室拡張末期容量(LVEDV)におけるLV収縮及び拡張末期寸法の変化の結果であると思われ、左心室の1回拍出量(SV)が増加すると、LVESVが減少する。これらの変化は、正の変時性(心拍数の増加)、変力作用(LV+dP/dtの増加)、又はMVO2の増加を伴わずに生じる。LV機能の顕著な改善は血漿濃度依存性であり、新たな心室性不整脈のあらゆる明らかな増加と関連しなかった。
【0223】
進行性心不全を有するイヌにおける閾値有効用量注入を決定するために、低用量注入で更なる研究を行った。加えて、4.3ng/kg/分の高用量注入によって引き起こされたLVEFの増加は、より長い注入期間、即ち120分にわたって安定した状態を保つかどうかを調査する機会を得た。結果を表19に示す。
【0224】
【表19】

【0225】
これらのデータは、進行性心不全を有するイヌにおける左心室の収縮及び拡張機能の血流力学、心室撮影、及びドップラー測定に対する最小効果を有する注入用量は、60分にわたって投与された総投与量である25.8ng/kgに相当する0.43ng/kg/分であることを示している。h−SCP(配列番号1)の対応する血漿濃度は37.2pg/mLであった。h−SCP(配列番号1)の心臓血管効果に加えて、4.3ng/kg/分の用量注入は、反応低下を含むタキフィラキシーの形跡なしに、60分〜120分安定していた。
【0226】
h−SCP(配列番号1)に対する中和抗体形成の潜在的な心臓血管効果を理解するために、CRHR2の競合拮抗薬であるSV30(配列番号118)を、進行性心不全を有するイヌ(N=4)に投与した。我々の実験は、進行性心不全を有するイヌにおけるSV30のCRHR2ブロッキング用量は、心臓血管パラメータへの影響がなかったことを実証している。この同じ注入容量のSV30は、表20に示されるように、心不全を有するイヌにおいてh−SCP(配列番号1)の作用をブロックした。SV30を使用したこれらの実験は、進行性心不全を有するイヌにおけるベースライン心臓血管パラメータは、CRHR2の内因性ホルモン刺激に依存しなかったことを示している。同様の知見が、健康な覚醒及び麻酔をかけたラットで報告されている(Gardinerら、J.Pharmacol.Exp.Ther.,2007,vol 321,pp.221〜226)。
【0227】
このことは、h−SCP(配列番号1)に対する中和抗体の初頭効果は、心不全を有する健康な個体又は患者において、前治療濃度によって更に損なわれる心臓機能をもたらさないことを示唆している。
【0228】
【表20】

【0229】
HFイヌにおける配列番号102のストレスコピン様ペプチドの、30μg/kgのボーラスSC注射の結果は、図12Cに示されている。心拍数は最初の数時間にわたって減少したが、血漿濃度は、低用量のボーラス注射の薬物動態学的研究に従って予測した通りに増加した(図13A及び図13B)。定常状態血漿濃度に達した後、心拍数はかなり安定した状態を維持した。一方、LVEF及びCO能力は、最大4時間の同じ期間にわたって有意に高まった。注射した時点から約2時間10分後に、約60ng/mLの標的血漿濃度に達した後、約3時間後に約100ng/mLで横ばい状態になり、注射後約6時間の時点で依然としてそのレベルを維持した。配列番号102のペプチドの60ng/mL及び100ng/mLのストレスコピン相対濃度は、それぞれ600pg/mL及び1000pg/mLである。
【0230】
要約すると、低用量注入(≦7.3ng/kg/分、心不全を有するイヌ)では、h−SCPは、虚血による進行した不可逆的進行性心不全を有するイヌにおいて、正の変時性、変力性、又は心筋酸素消費量の増加なしにLVEF、SV、及びCOを増加させた。更に、これら低用量では、左心室機能の顕著な改善は、PSAPの減少、心拍数の増加、又は新たな心室性不整脈のあらゆる明らかな増加と関連しておらず、容易に逆転可能であった。心不全を有するイヌにおいて、LVEF及びCOを大幅に増加させるための有効投与量は0.43ng/kg/分で、対応する血漿濃度は37.2pg/mLであった。
【0231】
続く研究では、イヌにh−SCP(配列番号1)の連続的な4.3ng/kg/分の注入を120分間静脈内投与する前に、ベースラインとなる血流力学、心室撮影、心エコー、及び左心室圧−容量を測定した。120分の注入の最後に、完全な血流力学、心室撮影、心エコー、及び左心室圧−容量測定値が報告された。新たな心室性不整脈の発症に関して、研究全体を通じてリードII心電図をモニタした。これらの実験で使用した被験物質のペプチド含有量は、補正を必要としない通例の85〜90%限度の範囲に収まったので、投与溶液のペプチド含有量は調整又は補正されなかった。静脈血試料を、ベースライン時及び120分h−SCP注入後の血流力学評価後に得た。
【0232】
全ての血流力学測定は、麻酔のかけられたイヌの左心及び右心カテーテル検査中の特定の各研究時点に行われた。カテーテルチップマイクロマノメータ(Millar Instruments,Houston,TX)を使用して大動脈圧及び左心室圧を測定し、左心室圧波形からLV拡張期末期圧(LVEDP)を測定した。血流力学測定が完了した後の心臓カテーテル検査の間に、左心室造影を実施した。心室造影は、15mLの造影剤(Conray;Mallinckrodt Inc.,St.Louis,MO)の高圧注入中に、1秒当たり30フレームでデジタル・メディアに記録した。像倍率の調整は、左心室の高さに置かれた放射線不透過性の格子を使用して行われた。LV収縮末期容量(LVESV)及びLV拡張末期容量(LVEDV)を、面積−長さ法を用いて血管造影陰影から計算した。期外収縮心拍及び期外収縮後心拍は分析から除外された。LVEFは、LVEDVとLVESVとの間の差とLVEDVとの比に100を掛けて計算した。1回拍出量(SV)は、LVEDVとLVESVとの間の差として計算した。心拍出量(CO)は、心拍数と1回拍出量の積として計算した。体血管抵抗(SVR)は、平均動脈圧とCOとの比率として計算した。左心室圧−容量関係を、下大静脈の一過性バルーン閉塞の間に測定して、収縮末期圧−容積関係(ESPVR)及び拡張末期圧−容積関係(EDPVR)の勾配を評価した。収縮末期及び拡張末期圧−容積点を、通常のやり方で呼息の終わりにおける脈拍に関して決定した。線形回帰分析を用いてESPVR及びEDPVRの傾斜を決定した。ESPVRの傾斜の増加は、LV収縮性能の改善を暗示し、EDPVRの傾斜の減少は、LV弛緩の改善を暗示する。
【0233】
h−SCP(配列番号1)は、進行性心不全を有するイヌにおいて、著しくかつ高度に再現性があり、血漿濃度依存性であり、かつ統計的に大幅な、全体的なLV機能の増加をもたらし、これは、LVEF、SV、及びCOの増加として現れ、MAoP、SAoP、HR、又はLV+dP/dtは変化しなかった。h−SCP(配列番号1)はまた、LVEDVの減少に影響を与えるよりもはるかに大きな程度までLVESVを減少させ、したがって、心筋の収縮状態を変化させた可能性が高かった。図14Aは、心不全を有するイヌにおける、ベースライン時の一時的下大静脈閉塞の間の、左心室圧及び容積測定の時系列データを示す。これらのデータに関して2つの意義深い観察が行われる。第1に、これらの測定値を得るのに必要な数秒の間に、HRの変化はほとんど存在しなかった。2番目は、無傷動物において心臓特異的変化を特徴付けるための圧‐量ループ法の固有の強度である。図14Bは、h−SCPの注入と共に左方向にシフトしかつより急勾配となったESPVRを示す。未治療のイヌのESPVRの勾配は1.38±0.26であり、心不全を有するイヌでは、h−SCP注入後に2.26±0.46まで増加した。EDPVR勾配の絶対値は、未治療のイヌでは0.257であり、h−SCPの治療を受けたイヌでは0.128であった。この全体的なLV収縮機能の全体的な改善は、この研究の120分の持続時間の全体を通じた新たな心室性不整脈の発症と関連しなかった。
【0234】
h−SCPは、全般的なLVの形状の変化、及び、特にLVESVの大きな減少を顕現させた、つまり、LV+dP/dt、MAoP、SAoP、又はHRに影響を与えないLVEF、LVSV、及びCOの著しく大幅な増加と言い換えることができる効果を顕現させた。本研究の重要な発見、具体的には、進行性心不全を有するイヌにおけるh−SCP注入後のLV ESPVR勾配の著しく大幅な増加は、心筋に対する負荷(前負荷及び後負荷)に依存しない作用を説明するペプチドの特徴である。大静脈閉塞の存在下でのリアルタイムで連続的な左心室圧−容量の分析を用いて、心筋収縮能をより大きな程度に増強し、かつ弛緩をより少ない程度に減少させた効果に起因するh−SCPの薬理学的プロファイルと整合する生理学的データが測定された。LV ESPVRの勾配の変化は、ペプチドが、これらのイヌにおいて新たな心室性不整脈の発症なしに、LVの寸法が減少するのに逆らってLVSVを維持し、かつ更にはLVSVを増加させることによって心拍出量を増加させる方法で、血管平滑筋の作用を除外せずに心筋に作用していることを主張する。
【0235】
研究番号8:動物における薬物動態
h−SCP(配列番号1)及びPEG化したストレスコピン様ペプチドの非臨床薬物動態を、ラット、イヌ、及びカニクイザル(cyno)で研究した。非臨床薬物動態学的研究及ぼそれらの結果は、表21及び表22に示されている。非臨床薬物動態学的研究は、IV及びSCボーラス並びにトキシコキネティクス分析で補足された、薬理学的に関連のある投与レベルでの静脈内注入の特性に重点を置いた。
【0236】
h−SCP(配列番号1)血漿濃度は、イヌ(図13C)及びカニクイザルへの注入開始後1時間以内、並びにラットで2時間以内に、明らかな定常状態に達した。カニクイザルにおいて、h−SCP(配列番号1)は、試験された16.7〜100ng/kg/分の投与レベルで線形薬物動態を呈し、クリアランス値(CL)は約30〜40mL/分/kgであった。ラット及びカニクイザルと比べて、イヌでは、h−SCP(配列番号1)は約4mL/分/kgでより低い血漿クリアランスを有し、3.3〜33.3ng/kg/分の薬理学的関連範囲にわたって線形薬物動態を呈した。しかしながら、ラットにおけるh−SCP(配列番号1)の血漿暴露は、トキシコキネティクス研究の高用量静脈内注入及び静脈内投与の研究の両方における用量比例よりも大幅に増加し、IVボーラスのクリアランス値は42〜116mL/分/kgと高かった。
【0237】
h−SCP(配列番号1)は、静脈内注入及びボーラスIV投与の両方の後に、急速な濃度低下の短い初期位相と、より長い最終相(即ち、イヌでは1時間)とを有する、典型的な二相廃棄プロファイル(二相廃棄プロファイル)を示した。2区画分析を用いたところ、α相半減期(t1/2α)は、ラット(図15A)及びサルで5分未満、イヌで10〜20分であることが推定された。長期の最終半減期(t1/2最終)が、連続注入下で明らかな定常状態に達するのに必要な時間に対する注目すべき影響を有したという証拠はなかった。h−SCPは、イヌ及びサルでは1時間以内、ラットでは2時間以内に定常状態濃度に達した。h−SCPの初期半減期は非常に短く(ラット及びサルで5分未満、イヌで10〜20分)、その後に長い最終半減期(イヌで1時間)が続く。ラット、イヌ、又はサルにおけるh−SCPの薬物動態に、明白な性による差異は存在しなかった。
【0238】
【表21】

* ボーラス注射データに関するng/kg;Vss=定常状態容積;M=雄、F=雌
【0239】
更に、PEG化したストレスコピン様ペプチド(例えば、配列番号102、103、104、105、又は106のポリペプチドなど)のラット及びイヌにおける薬物動態が、図13A及び図13B、図15B〜図15E、並びに表22に示されている。&このデータは、静脈内注入及びボーラスIV投与の両方の後の典型的な二相廃棄プロファイルを引き続き示しており、t1/2α値は表22に示されている。
【0240】
【表22】

Vz=分配量;%F=生物学的利用能
【0241】
試験番号9:ヒト投薬研究
心不全を有するイヌにおける薬理学的に有効な最低投与量は0.43ng/kg/分であり、これは、健康なイヌにおける最低有効投与量(43ng/kg/分)よりも顕著に少なかった。心臓脈管薬に最も関連性がありかつ敏感な種であると考えられる雄イヌにおけるGLP心血管安全性試験において、33.3ng/kg/分のNOAELが決定した。
【0242】
動物に見られた心拍数の変化は、注入の終了後に急速に逆転し、それ以下では他の効果が観察される(体重、網状赤血球減少)15倍を超える暴露マージンで誘発される。更に、毒性研究に見られる非心臓血管性の効果は、比較的軽度、モニタ可能、及び可逆的である。h−SCPは、動物において比較的非抗原性であるが、抗体が誘発される場合、不都合な生理学的影響はないように思われる。
【0243】
心臓脈管薬に最も関連性がありかつ敏感な種であると考えられる雄イヌにおけるGLP心血管安全性試験において、33.3ng/kg/分のNOAELが決定した。健康なイヌにおける非臨床的薬理学研究は、イヌにおける最小予測生物学的影響量(MABEL)が22ng/kg/分であることを示した(表17)。これらの値に基づき、0.1ng/kg/分の開始用量が選択された。
【0244】
薬物動態学に基づくアプローチに基づき、0.1ng/kg/分の開始用量は、8.6pg/mLの定常状態血漿濃度(Cpss)を達成することが予想され、これは、イヌにおけるGLP心血管安全性試験で決定した上限値12.0ng/mLをはるかに下回っており、1,390倍の安全マージンを有する。
【0245】
更に、臨床研究は、健康なヒトでのMABEL投与量は、非臨床的薬理学研究で決定したイヌでのMABEL投与量と同様であること、及び、心臓反応を示すヒト投与量は、イヌの投与量とよく一致したことを示した。
【0246】
以下の臨床研究に基づき、静脈内注射後のh−SCP(配列番号1)の、健康なヒトでのクリアランス(CL)は、70kgの男性で約30L/時間であることが判明した。健康なイヌにおける22ng/kg/分の注入速度で、h−SCPの血漿濃度は620pg/mLになることが判明した(表17)。投与量は、投与量ヒト=CLヒト×Cpss/重量ヒトに従って計算され得るので、70kgのヒトでは、620pg/mLの同様の定常状態血漿濃度(Cpss)レベルを達成するためには、4.4ng/kg/分のヒト等価用量が必要であろう。
【0247】
h−SCP(配列番号1)の7.5時間連続漸増用量静脈内注入後の健康な被験者において、ノンコンパートメント薬物動態分析を実施して、h−SCP(配列番号1)の血漿濃度を判定した。h−SCP(配列番号1)の薬物動態学パラメータは表23にまとめられている。血漿h−SCP(配列番号1)は、静脈内注入の開始直後に定常状態に達した(図16A)。注入の終了後、h−SCP(配列番号1)の血漿濃度は初期急速低下を示し、その後ゆっくりとした最終消失相が続いた。30分以内に、血漿h−SCP(配列番号1)は、注入が終わった時のh−SCP(配列番号1)レベルの20%以下に減少した。平均最終半減期は、2.13〜28.48時間の範囲であり、投与量の増加と共に増加するようであった。高用量で最終半減期が長くなるということは、通常の2区画モデルの他により深い区画が存在することを示唆した。しかしながら、h−SCP(配列番号1)の全体的な暴露及び蓄積に対する追加の区画の貢献は、有効半減期によって示されるように、恐らくわずかである。平均有効半減期は、1.54〜14.17時間の範囲である。平均全身クリアランスは、一般に、用量群にわたって一定であり、0.27〜0.42L/kgの範囲であった。
【0248】
【表23】

a 中央値(最小−最大);b N=4;c N=1
【0249】
h−SCP(配列番号1)の7.5時間連続漸増用量静脈内注入後の心不全を有する被験者において、ノンコンパートメント薬物動態分析をh−SCP(配列番号1)の血漿濃度に関して実施。h−SCP(配列番号1)の薬物動態学パラメータは表24にまとめられている。心不全を有する被験者におけるh−SCP(配列番号1)の薬物動態は、健康な被験者のそれと同様であるように見えた。健康な被験者に見られたのと同様に、血漿h−SCP(配列番号1)は、心不全を有する被験者への静脈内注入の開始直後に定常状態に達した(図16B)。注入の終了後、h−SCP(配列番号1)の血漿濃度は初期急速低下を示し、その後ゆっくりとした最終消失相が続いた30分以内に、血漿h−SCP(配列番号1)は、注入が終わった時のh−SCP(配列番号1)レベルの20%以下に減少した(図16B)。平均全身クリアランスは0.19〜0.46L/時間/kgの範囲であった。平均最終半減期は0.24〜7.04時間の範囲であり、最高注入速度はたった54ng/kg/分であったので、これは恐らく用量依存性である。有効半減期は1.32〜2.51時間の範囲であった。
【0250】
【表24】

a 中央値(最小−最大);b N=1;c N=2
【0251】
h−SCP(配列番号1)の54ng/kg/分の24又は72時間注入の後の健康な被験者において、h−SCP(配列番号1)の血漿濃度に関してノンコンパートメント薬物動態分析を実施した。h−SCP(配列番号1)の薬物動態学パラメータは表25にまとめられている。24又は72時間連続静脈内注入の後の健康な被験者におけるh−SCP(配列番号1)の薬物動態は、2.5時間注入によるそれと同様であり、平均クリアランスは0.28〜0.38L/時間/kgの範囲である(図16C)。平均最終半減期は23.40〜28.81時間の範囲であり、有効半減期は5.84〜9.62時間の範囲であった。
【0252】
【表25】

a 中央値(最小−最大);b N=5。
【0253】
試験番号10:ヒト有効性研究
有効性は、インピーダンスカルジオグラフィーの非侵襲的技術を用いてモニタされた、血流力学の薬力学的評価に基づいた。インピーダンスカルジオグラフィー測定によって心拍数値を収集した。プラセボを受けた被験者の心拍数は、注入当日、注入前のベースライン時、及び注入開始後の最初の3〜4時間の間増加したことが認められた。観察結果に基づき、観察された心拍数には時期の潜在的影響があったことは明らかであった。
【0254】
共変量としてのベースライン、固定効果としての期間及び用量群(≦3ng/kg/分−低、>3〜≦36ng/kg/分−中、>6ng/kg/分−高)、及びランダムな標記効果を有する混合効果モデルを、健康な被験者のベースライン時からの心拍数変化を用いて確立した。モデルは、統計的に有意な治療効果(p<0.0001)及び統計的に有意な時期効果(p=0.0171)の両方を示唆したが、統計的に有意なベースライン効果(p=0.1931)はなかった。
【0255】
心拍数の統計的に有意な増加が高用量群によるものかを確認するために、高投与レベル(>36ng/kg/分)群を排除した同様の混合効果モデルを構築した。このモデルは、統計的に有意な時期効果(p=0.0002)を依然として実証したが、統計的に有意な投与量効果(p=0.1434)又は統計的に有意なベースライン効果(p=0.3684)は示さなかった。
【0256】
ポストホック(Post Hoc)グラフ分析
注入開始直前に見られる上昇したベースライン値を調整し、各血流力学パラメータの最良推定値を得、かつ時期の影響を補正するために、血流力学データのポストホックグラフ分析を行った。ポストホックグラフィック表示は、完全な(高頻度の)データセットから作成した。このデータセットは、未加工データを含み、これは、ベンダー(即ち、CardioDynamics)によって更に処理されて、特定の時点においてのみ報告された。
【0257】
このポストホック分析では、注入開始前に記録された全ての値を含む拡張ベースラインを各値に関して使用した。次いで、各パラメータの平均値を、2.5時間注入のそれぞれの最後の30分から得て、注入された投与量のその期間の効果として用いた。同じ期間に投与されたプラセボ被験者に見られるベースライン時からの平均的変化を減じることによって(プラセボ減算)、各値を注入期間の効果に関して修正した。プラセボ減算後に同じ投与量を受けた全被験者からの値を平均化して投与効果を推定した。
【0258】
健康な被験者、7.5時間連続漸増用量静脈内注入
プラセボを受けた被験者は、注入中に、ベースライン心拍数(注入直前に得た値)から5〜10bpmの平均心拍数減少を有した。これら被験者の心拍数データを検討したところ、被験者の心拍数は、注入前日の心拍数よりも、ベースライン時に5〜10bpm高いことが示された(図17)。このことは、被験者が注入開始前に不安を経験した可能性があり、それがベースライン心拍数値の上昇に寄与したことを示唆している。
【0259】
ベースラインからの同様の心拍数の減少は、低用量のh−SCP(配列番号1)を受けた健康な被験者にも見られた。これに対し、各2.5時間注入期間の終わりに、36ng/kg/分以上のh−SCP(配列番号1)投与量を受けた被験者は、心拍数の投与量関連増加を有し、ベースラインからの心拍数の増加は、72ng/kg/分及びそれ以上の投与量では30bpmに近づいた(表26)。心拍数の増加は、h−SCP(配列番号1)の高用量で大きかった(図18A)。この心拍数の増加は、イヌの心拍数の増加をもたらしたh−SCP(配列番号1)投与量と同様の投与量で生じた(図19)。
【0260】
これらの観察結果から、健康な被験者において、h−SCP(配列番号1)≦36ng/kg/分の用量は、ベースラインからの心拍数の増加と関連があったことがわかる。この増加は、プラセボを受けた被験者に見られる心拍数の減少と比べると、特に顕著である。こてに対して、健康な被験者において、36ng/kg/分未満のh−SCP(配列番号1)の用量は、ベースラインと比べて顕著な心拍数の増加を有さず、ベースライン時からの変化は、プラセボを受けた被験者に見られたのと同様であった。
【0261】
健康な被験者において、36ng/kg/分以下のh−SCP(配列番号1)の投与量では、心拍出量又は心係数の変化は見られなかった。36ng/kg/分を超える用量を受けた被験者は、心拍出量及び心係数が増加した(図18B)。これらの高用量では、1回拍出量はベースラインと比較して減少したので(図18C)、これらの高用量で見られたこうした心拍出量及び心係数の増加は、心拍数の増加のみに起因すると思われる。
【0262】
プラセボ又は108ng/kg/分以下のh−SCP(配列番号1)投与量では、平均収縮期及び拡張期血圧の明らかな傾向は観察されなかったが、注入の終わりの最高用量(144ng/kg/分)でベースラインからの増加が観察された。
【0263】
各2.5時間注入期間の終わりに、平均体血管抵抗及び平均体血管抵抗係数は、プラセボ及び36ng/kg/分未満の用量では、ベースラインから中等度に増加し、36〜72ng/kg/分の用量では、可変であるが概して変化せず、108ng/kg/分以上のh−SCP(配列番号1)の用量では、ベースラインからの減少を見せた。
【0264】
【表26】

【0265】
全体的に、研究の各血流力学パラメータのデータに顕著な変動が存在した。注入中に平均心拍数の減少に向かう顕著な傾向に混乱させられる(プラセボを受けた被験者において最も明らかである)血流力学パラメータの大きな変動は、各治療群の被験者が少数であることと相まって、事前に定められた血流力学分析の結果に関する明白な結論を引き出すのを困難にした。この血流力学データを更に検討するために、これらの影響を補正するように設計されたポストホック分析を実施した。
【0266】
安定心不全を有する被験者、7.5時間連続漸増用量静脈内注入
プラセボを受けた心不全を有する被験者の平均心拍数は、注入中にベースライン心拍数(注入直前に得た値)から減少した。これら被験者の心拍数データを検討することにより、該被験者の心拍数は、注入前日よりもベースライン時に高いことが示された。健康な被験者でも起こった可能性があるように、安定心不全を有する被験者は、注入の開始前に不安を経験し、それがベースライン心拍数値の上昇に寄与した可能性がある。
【0267】
同じようなベースラインからの心拍数の減少が、36ng/kg/分未満のh−SCP(配列番号1)の用量を受けた心不全を有する被験者に見られた。これに対し、36ng/kg/分以上のh−SCP(配列番号1)の用量を受けた心不全を有する被験者は、ベースラインと比較して心拍数が増加した(図18A)。この心拍数の増加は、健康な被験者及びイヌにおいて心拍数の増加をもたらしたh−SCP(配列番号1)用量と同様の用量で生じた(図19)。54ng/kg/分の最高用量を受けた被験者は、10bpmに近い心拍数の増加を有した(表27)。
【0268】
【表27】

【0269】
これらの観察結果から、心不全を有する被験者において、36ng/kg/分以上のh−SCP(配列番号1)は、ベースラインからの心拍数の増加と関連があったことがわかる。この増加は、プラセボを受けた被験者に見られる心拍数の減少と比較した場合に、特に顕著である。これに対し、心不全を有する被験者において、36ng/kg/分未満のh−SCP(配列番号1)の用量は、ベースラインと比べて明らかな心拍数の増加を有さなかった。
【0270】
2.5時間注入期間の終わりに、平均心拍出量及び心係数は、プラセボではベースラインから減少したが、平均結果は、全てのh−SCP(配列番号1)用量に関して可変でった。健康な被験者とは反対に、心不全を有する被験者では、h−SCP(配列番号1)に対する心拍出量、心係数、及び1回拍出量の反応は、全用量で検出可能であった。h−SCP(配列番号1)を受けた心不全を有する被験者は、h−SCP(配列番号1)の全用量で心係数(及び心拍出量)の増加を有した(図18B)。この心係数(及び心拍出量)の増加は、約7%〜15%の範囲であった。用量反応相関は認められなかった。このデータは、h−SCP(配列番号1)の心拍出量、心係数、及び1回拍出量に対する潜在的影響を示している。
【0271】
【表28】

【0272】
36ng/kg/分以下の用量でh−SCP(配列番号1)を受けた心不全を有する被験者もまた、これらの低用量の全てに見られるように、1回拍出量の明らかな増加(6%〜13%)を有した(図19C)。36ng/kg/分を超える用量が注入される場合、1回拍出量はベースラインと同様であり、このような高用量では心係数の増加は心拍数の増加のみに起因したことを示唆した。
【0273】
【表29】

【0274】
【表30】

【0275】
平均収縮期及び拡張期血圧は、プラセボにおいて注入の終わりにベースラインから増加した。反対に、1つのh−SCP(配列番号1)用量(1ng/kg/分)を除く全てで、平均収縮期及び拡張期血圧は注入の終わりにベースラインから減少し、大幅に減少したのはh−SCP(配列番号1)≦36ng/kg/分の用量においてであった。これらの血圧結果は、血圧の減少に向かう傾向のない健康な被験者に見られるものと異なっていた。健康な被験者とは反対に、h−SCP(配列番号1)を受けた心不全を有する被験者は、h−SCP(配列番号1)の全用量で収縮期血圧及び拡張期血圧の減少を有した。この収縮期血圧の減少は5%〜21%の範囲であり、拡張期血圧の減少は9%〜24%の範囲であった。用量の増加に伴う影響の増加の兆候は、h−SCP(配列番号1)を受けた被験者では存在しなかった。
【0276】
【表31】

【0277】
【表32】

【0278】
平均体血管抵抗及び平均体血管抵抗係数は、プラセボではベースラインから増加し、0.3〜9ng/kg/分の用量で可変であり、≧18ng/kg/分超過の用量でベースラインから減少した。
【0279】
心エコーサブ研究を行って、心臓力学のパラメータに与えるh−SCP(配列番号1)の影響を調べた。5人の被験者が選ばれて心エコーサブ研究に参加した。被験者の1人はプラセボを受け、4人の被験者は、心エコー図を記録した最後の2.5時間注入期間の間に、9〜45ng/kg/分の範囲の用量でh−SCP(配列番号1)を受けた。プラセボを受けた1人の被験者は、43.0%〜40.9%の駆出率の減少を有した。9及び36ng/kg/分の低用量を受けた2人の被験者はそれぞれ、20%〜24.5%及び25.0%〜30.3%の駆出率の減少をそれぞれ有した。45ng/kg/分を受けた2人の被験者は、36.0%〜34.7%及び28.0%〜26.1%の駆出率の減少をそれぞれ有した。このサブ研究に参加した被験者の人数が少なく、かつ投与された用量が様々であったことから、結果は決定的なものではなかったが、ほとんどは影響を示していた。
【0280】
健康な被験者、24時間及び72時間連続静脈内注入、54ng/kg/分
プラセボを受けた健康な被験者は、注入中にベースラインと比較して減少した心拍数を有した。プラセボを受けた健康な被験者は、注入中にベースライン心拍数(注入直前に得た値)から5〜10bpmの平均心拍数減少を有した。これら被験者の心拍数データを検討したところ、該被験者の心拍数は、注入前日と比べてベースライン時で5〜10bpm高かったことが示された。このことは、上述の研究と同様に、被験者が注入開始前に不安を経験した可能性があり、それがベースライン心拍数値の上昇に寄与したことを示唆している。
【0281】
注入中に心拍数の減少を有したプラセボを受けた被験者とは対照的に、54ng/kg/分でh−SCP(配列番号1)を受けた被験者は、ベースラインと比べて注入中に5〜10bpmの心拍数の増加を有した。この心拍数の増加は15分以内に急速に起こった。心拍数は、次の4〜12時間の間に減少する傾向があったが、24又は72時間後に注入が中断されるまで、ベースラインに対して上昇し続けた。男性被験者と女性被験者との間に反応の顕著な差はなかった。
【0282】
これらの観察結果から、54ng/kg/分のh−SCP(配列番号1)は、特にプラセボと比較した場合に、ベースラインからの心拍数の増加と関連があったことがわかる。
【0283】
プラセボを受けた健康な被験者は、注入中にベースラインと比較して減少した心係数及び心拍出量を有した。1回拍出量は注入中に変化しなかったので、こうしたベースラインからの減少は、明らかにプラセボ注入中の心拍数の減少によるものであった。
【0284】
54ng/kg/分の用量でh−SCP(配列番号1)を受けた被験者では、心係数、心拍出量、及び1回拍出量に与える影響は可変であり、かつ一貫性がなかった。高心拍数に起因した拡張期充満の時間減少が、一部の被験者の1回拍出量、心拍出量、及び心係数を減少させ、心拍数の増加がその他の被験者の心拍出量及び心係数を増加させた可能性がある。
【0285】
プラセボ及び24時間群では、平均収縮期及び拡張期血圧に傾向は観察されなかった。平均収縮期及び拡張期血圧は、概して、72時間男性群及び72時間女性群においてベースラインから減少した。
【0286】
平均体血管抵抗及び平均体血管抵抗係数は、主にプラセボ及び24時間群でベースラインから増加し、主に72時間男性群及び72時間女性群でベースラインから減少した。
【0287】
前述の明細書は、例示を目的として提供される実施例と共に、本発明の原理を教示するが、本発明の実践は、以下の「特許請求の範囲」及びそれらの均等物の範囲内に含まれる全ての通常の変形、改作及び/又は修正を包含することが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心不全の治療方法を必要としている被験者における心不全の治療方法であって、約15分超過という連続的な期間の間該被験者におけるストレスコピン相対濃度が7.2ng/mLを超えない投与量で、前記被験者にストレスコピン様ペプチドの治療的有効量を投与すること、を含む、方法。
【請求項2】
前記投薬が、約10分超過という連続的な期間の間、前記被験者におけるストレスコピン相対濃度が5.5ng/mLを超えないものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記投薬が、約10分超過という連続的な期間の間、前記被験者におけるストレスコピン相対濃度が4.7ng/mLを超えないものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記被験者の血漿濃度が、前記治療の間、約0.1ng/mL〜約7.2ng/mLのストレスコピン相対濃度に実質的に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記被験者の前記血漿濃度が、前記治療の間、約0.1ng/mL〜約5.5ng/mLのストレスコピン相対濃度に実質的に維持される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記被験者の前記血漿濃度が、前記治療の間、約0.1ng/mL〜約4.7ng/mLのストレスコピン相対濃度に実質的に維持される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記ストレスコピン様ペプチドが、少なくとも約30分の期間にわたって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記投与量が、非経口経路を介して投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記非経口経路が、静脈内投与、皮下投与、及び筋内投与からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
心不全の治療方法を必要としている被験者における心不全の治療方法であって、前記方法は、少なくとも約30分の期間にわたって、約0.2ng/kg/分〜約52ng/kg/分のストレスコピン相対投与速度でストレスコピン様ペプチドを静脈内投与すること、を含む、方法。
【請求項11】
前記ストレスコピン様ペプチドが、少なくとも約30分の期間にわたって、約0.2ng/kg/分〜約36ng/kg/分のストレスコピン相対投与速度で静脈内投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ストレスコピン様ペプチドが、少なくとも約30分の期間にわたって、約0.4ng/kg/分〜約18ng/kg/分のストレスコピン相対投与速度で静脈内投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ストレスコピン様ペプチドが、0.002μg/kg〜約0.2μg/kgのストレスコピン相対ボーラス投与量で皮下投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記ストレスコピン様ペプチドが、配列番号1又は29のアミノ酸配列を含み、前記配列番号1又は29のアミノ酸配列は、ポジション28で、
【化1】

(化学式中、Rは、配列番号1又は29のアミノ酸配列を有する前記ストレスコピン様ペプチドであり、Sは、ポジション28のシステインチオール基の硫黄原子である)と任意に結合していてもよいものである、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記ストレスコピン様ペプチドが、少なくとも約30分の期間にわたって、約0.2ng/kg/分〜約52ng/kg/分の投与速度で静脈内投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記ストレスコピン様ペプチドが、0.002μg/kg〜約0.2μg/kgのボーラス投与量で皮下投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記投与量が、配列番号19のアミノ酸配列を有するペプチドを含み、Sが、ポジション18のシステインチオール基の硫黄原子である、請求項1に記載方法。
【請求項18】
前記投与量が、少なくとも約30分の期間にわたって、約6ng/kg/分〜約1700ng/kg/分の投与速度で静脈内投与される、請求項17に記載方法。
【請求項19】
前記投与量が、0.01μg/kg〜約1μg/kgのボーラス投与量で皮下投与される、請求項17に記載方法。
【請求項20】
前記ストレスコピン様ペプチドが、リンカーに結合したポリエチレングリコール(PEG)を含み、前記リンカーがストレスコピン様ペプチドに結合し、前記PEGが約80kDa以下の分子量を有する、請求項1に記載方法。
【請求項21】
前記ストレスコピン様ペプチドが、
【化2】

(化学式中、nは約460の整数であり、Rは、配列番号29のアミノ酸配列を有するペプチドであり、Sは、ポジション28のシステインチオール基の硫黄原子である)から選択される結合を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記投与量が、少なくとも約30分の期間にわたって、約20ng/kg/分〜約5200ng/kg/分の投与速度で静脈内投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記投与量が、0.9μg/kg〜約100μg/kgのボーラス投与量で皮下投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記ストレスコピン様ペプチドが、前記配列番号1のペプチドに少なくとも約90%相同である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記ストレスコピン様ペプチドが、前記配列番号1のペプチドに少なくとも約90%同一である、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図15E】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図19】
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【公表番号】特表2013−510167(P2013−510167A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538004(P2012−538004)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/055526
【国際公開番号】WO2011/057027
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(397060175)ヤンセン ファーマシューティカ エヌ.ベー. (28)
【Fターム(参考)】