説明

ストレス誘導抗アポトーシス分子(IEX−1)由来ペプチド

HLA−A33癌患者に対する癌ワクチン候補ペプチドを提供すること。
本発明は、細胞傷害性T細胞(CTL)に認識され、特異的CTLを誘導できるストレス誘導アポトーシス関連遺伝子(IEX−1)由来ペプチドまたはその変異ペプチドおよび該ペプチドを含むポリペプチド、それらをコードする核酸分子、ならびにそれらを含有する医薬組成物等に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌患者に対する免疫療法に利用可能なストレス誘導抗アポトーシス分子(IEX−1)由来ペプチドに関する。詳細には、細胞傷害性T細胞(CTL)により認識され、特異的なCTLを誘導する、IEX−1由来ペプチド、該ペプチドを含むポリペプチドおよびこれらペプチドを含む癌ワクチン等に関する。
【背景技術】
【0002】
胃癌は、世界で最も普遍的に発生する悪性腫瘍の一つである(文献1−6)。本疾患は、早期では予後は一般的に良好であるが、進行癌においては、外科的切除、化学療法、および放射線療法などの既存の治療法が最近顕著に進歩しているにも係らず、予後が非常に悪い。それゆえ、進行段階の胃癌患者を処置するため、新しい特異的免疫療法のような新規な治療法の開発が必要とされている。
【0003】
近年、ヒト腫瘍がCTLに認識される抗原性ペプチドを発現していることが明らかになってきており、このようなペプチドはHLA−A2またはA24アレルを有する癌患者に対するペプチドワクチンとして使用されている(文献1−7)。HLA−A2またはA24拘束性CTLにより認識されるエピトープペプチドについては多くの報告がなされており(文献8−11)、本発明者らも、最近、ペプチドワクチン処置がHLA−A2またはA24重症胃癌患者の全体的生存率を延長することを報告した(文献4)。
一方、HLA−A33アレルは世界中の様々な人種において比較的広く発現しているにも拘わらず(文献14、15)、HLA−A33拘束性CTLにより認識される抗原およびペプチドについての報告は非常に限られている(文献12、13)。このことは、HLA−A33癌患者に対するペプチド基盤特異的免疫療法の開発を妨げている。
【0004】
IEX−1(immediate early response gene X-1)(p22/PRG1(文献20)、Dif−2(文献21)、またはマウスホモログgyl96(文献22)としてもまた知られる)は、ストレス誘導遺伝子であり、細胞周期進行およびアポトーシスの調節に関与する。IEX−1は、TNFおよびFasのような様々なアポトーシス誘発因子により誘導されるアポトーシスに対する細胞抵抗性に重要な役割を果たすこと(文献23)、およびいくつかの細胞株において細胞周期進行を加速すること(文献24−26)が報告されている。また、in vivoにおけるTリンパ球の活性化誘導細胞死に対するIEX−1の抗アポトーシス効果も報告されている(文献27)。
IEX−1の発現は、放射線照射、成長因子、ウィルス感染、TNF−αおよびIL−1βのような炎症性サイトカイン、リポポリサッカライド、およびステロイドホルモンを含むいくつかの細胞ストレスによって急速に活性化され得る(文献27)。IEX−1はもともとNF−κB/rel標的遺伝子として同定されたが(文献23)、IEX−1プロモーターには例えばp53、SP−1およびc−Mycのような他の転写因子のためのコンセンサス配列がいくつか含まれる(文献7)。例えば、腫瘍細胞に共通する癌抑制遺伝子p53の変異がIEX−1発現を上昇させることが示されている(文献29)。
以上のように、IEX−1は腫瘍細胞の悪性形質転換に関与することが示唆されているが、腫瘍細胞において抗原性ペプチドとして機能するIEX−1エピトープペプチドは知られていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、HLA−A33癌患者に対する癌ワクチンの開発に有用な抗原ペプチドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、重症胃癌患者の腫瘍組織浸潤リンパ球(TIL)からHLA−A33拘束性CTL株を樹立し、IEX−1由来の三つのHLA−A33結合エピトープを、本細胞株により認識される腫瘍抗原として同定した。さらに、これらの抗原性エピトープが悪性腫瘍疾患患者のPBMC(末梢血単核細胞)においてペプチド特異的CTLを誘導することを確認したことにより、本発明を完成した。
【0007】
即ち本発明は、以下を包含する。
(1)細胞傷害性T細胞(CTL)によって認識され、特異的なCTLを誘導する、ストレス誘導抗アポトーシス分子(IEX−1)由来のペプチドまたはその変異ペプチド。
(2)CTLがHLA−A33拘束性に認識する、(1)記載のペプチド。
(3)連続する8〜11個のアミノ酸残基からなる、(1)または(2)に記載のペプチド。
(4)配列番号1〜3のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチド、または配列番号1〜3のいずれかに示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつHLA−A33分子と結合して特異的なCTLを誘導するペプチドである、(1)〜(3)のいずれかに記載のペプチド。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載のペプチドを含むポリペプチド。
(6)単離された抗原提示能を有する細胞の表面に、HLA−A33分子と(1)〜(4)のいずれかに記載のペプチドとの複合体を提示させてなる、抗原提示細胞。
(7)上記(1)〜(4)のいずれかに記載のペプチド、または(5)記載のポリペプチドをコードする核酸分子。
(8)上記(7)記載の核酸分子を含有するベクター。
(9)上記(1)〜(4)のいずれかに記載のペプチド、(5)記載のポリペプチド、(6)記載の抗原提示細胞、(7)記載の核酸分子、または(8)記載のベクターを含む、特異的なCTLを誘導するための医薬組成物。
(10)癌ワクチンである、(9)記載の医薬組成物。
(11)上記(1)〜(4)のいずれかに記載のペプチドとHLAとの複合体、または(6)記載の抗原提示細胞に提示された複合体を認識する、IEX−1反応性CTL。
(12)上記(1)〜(4)のいずれかに記載のペプチド、(5)記載のポリペプチド、または(6)記載の抗原提示細胞を用いてIEX−1反応性CTLを誘導する方法。
(13)上記(1)〜(4)のいずれかに記載のペプチドまたは(5)記載のポリペプチドを特異的に認識する抗体。
(14)次の1)または2)に記載のポリペプチドを含む、特異的なCTLを誘導するための医薬組成物:
1)配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、または
2)配列番号4に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつHLA−A33分子と結合して特異的なCTLを誘導するペプチドを与えるポリペプチド。
(15)癌ワクチンである、(14)記載の医薬組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、悪性腫瘍、特にHLA−A33陽性の癌患者の治療に適したIEX−1基盤免疫療法を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】胃腺癌患者(HLA−A2402/A3303、B7/B44、Cw7/Cw14)の腫瘍浸潤生リンパ球(TIL)から樹立した、HLA−A33拘束性850B−CTL細胞株の特性を示す図である。Aは種々の標的細胞に対する認識能を、様々なE:T比(エフェクター細胞:標的細胞)におけるIFN−γの産生に基づき検討した結果を示す。Bは種々の標的細胞に対する細胞傷害活性を、相異なるE:T比における6時間51Cr放出試験により試験した結果を示す。Cは種々のmAbを用いた阻害実験における、850B−CTLのHLA−A33LC−1細胞に対する反応性の差異を示す図である。
【図2】850B−CTL細胞株による、同定された腫瘍抗原遺伝子のHLA−A33拘束性認識を示す図である。LC−1肺腺癌細胞cDNAライブラリーから遺伝子発現クローニング法で得たクローンと、HLA−A3303またはHLA−A2601遺伝子を共にトランスフェクトしたCOS7細胞に対する850B−CTLの反応性をIFN−γ産生に基づいて検討した。
【図3】mRNAおよびタンパク質レベルにおけるIEX−1の発現を示す図である。Aは、様々な正常組織におけるIEX−1mRNAの発現を、32P標識IEX−1プローブを用いるノーザンブロット解析によって調べた結果を示す写真の模写図である。Bは正常および癌細胞におけるIEX−1遺伝子のmRNA発現のノーザンブロット解析におけるオートラジオグラフィーを示す写真の模写図である。C〜Eは様々な腫瘍組織におけるIEX−1の発現をタンパク質レベルで免疫組織化学的に検討した結果を示す顕微鏡写真の模写図である。Cは胃癌組織、Dは乳癌、Eは肺癌における染色を示している。
【図4】IEX−1における抗原性エピトープの同定を示す図である。IEX−1の推定アミノ酸配列のHLA−A33結合性モチーフに基づくコンピュータ解析でHLA−A33に対して強い結合活性を有しうる8個の候補ペプチドを選択し、試験した。Aは、これら8個の候補ペプチドをC1R−A33細胞(HLA−A3303cDNAをトランスフェクトして安定的に発現させたC1Rヒト多発性骨髄腫細胞)とともに培養し、さらに850B−CTLを添加して培養した後、培養上清中のIFN−γの産生をELISAにより測定した結果を示す。Bは、有意なレベルのIFN−γ産生を誘導した3つのペプチド(IEX47−56、IEX61−69、およびIEX65−73ペプチド)及び1つの対照ペプチドの濃度と、IEX−1反応性CTL誘導活性との関係を検討した結果を示す。
【図5】ペプチドに対する細胞性応答を示す図である。IEX47−56、IEX61−69、およびIEX65−73ペプチドでHLA−A33上皮癌患者およびHLA−A33健常人のPBMCを刺激し、対応するペプチドでパルスしたC1R−A33細胞または陰性対照のHIVペプチドでパルスしたC1R−A33細胞で刺激し、IFN−γ産生活性に基づいて細胞応答を試験した。
【図6】はペプチド誘導CTLの細胞傷害性を示す図である。 LC−1(HLA−A33IEX−1)、QG56(HLA−A33IEX−1)およびHGC27(HLA−A33IEX−1)細胞をIL−2単独で培養し、相異なるE:T比で6時間51Cr放出試験を行い、細胞障害活性を検討した。
【図7】モノクローナル抗体による細胞傷害性阻害試験の結果を示す図である。 抗HLAクラスI、抗HLAクラスII、抗CD8(Nu−Ts/c、IgG2a)、抗CD4(Nu−Th/i、IgG1)と対照としての抗CD14(JML−H14、IgG2a)mAbを用い、ペプチド刺激PBMCの細胞傷害性に対する阻害作用を検討した。
【図8】特異的細胞傷害性の競合試験の結果を示す図である。 非標識C1R細胞を対応ペプチドまたはHIVペプチド(陰性対照)でパルスし、51Cr放出試験に供した(非標識細胞対標識細胞=10:1)。E/T比10:1で51Cr放出試験を行った。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明についてさらに詳細に説明する。
HLA拘束性CTL株
HLA拘束性CTL株は、目的とするHLAアレルを有する癌患者の腫瘍組織に浸潤しているリンパ球(TIL)を採取し、T細胞の増殖を促すサイトカインであるIL−2と共に培養して増殖させることにより得られる。本方法は当業界において周知である。
遺伝子発現クローニング法
HLA拘束性CTL株によって認識される腫瘍抗原は、遺伝子発現クローニング法により同定する。本方法は、cDNAライブラリーにコードされるタンパク質を哺乳類細胞で一過性に発現させ、樹立したCTL株が特異的に認識する目的のタンパク質をコードするcDNAをスクリーニングし、当該タンパク質をコードする遺伝子を単離するものである。本発明では、樹立したCTL株がタンパク質発現細胞を認識した際に産生するIFN−γを指標としてスクリーニングを行う。
【0011】
ペプチドおよびポリペプチド
本発明のIEX−1由来ペプチドは、HLAと結合して特異的CTLを誘導しうるペプチドである。本発明ペプチドはIEX−1の連続する8〜11個のアミノ酸残基からなることが好ましい。このようなIEX−1の部分ペプチドの具体例として、IEX47−56、(配列番号:1)、IEX61−69(配列番号:2)、またはIEX65−73(配列番号:3)が挙げられる。IEX−1遺伝子の全ヌクレオチド配列および推定のアミノ酸配列は、受入番号NM_003897としてGeneBankに登録されている(配列番号:4)。特異的なCTLを誘導する他のIEX−1由来ペプチドは、本明細書の実施例に準じた方法により容易に決定および選択できる。
【0012】
「HLAと結合して特異的なCTLを誘導しうる」とは、本発明のペプチドがHLAと結合して複合体を形成し、かかる複合体をCTLが認識できることをいう。換言すれば、本発明のペプチドが、HLAとの結合活性を有し、かつ、HLAとの複合体の形で、ペプチド特異的なCTLを誘導する活性を有することを意味する。本発明において好ましいHLAは、HLA−A33である。
【0013】
また、本発明は、HLAと結合して特異的なCTLを誘導しうるIEX−1由来ペプチドの変異ペプチドであって、同等のCTL誘導能を有する変異ペプチドも包含する。変異は、本発明のIEX−1由来ペプチドに対して一個または数個のアミノ酸の欠失、置換、付加、挿入などを行うことにより導入することができ、その手段は当業界にて周知である。変異が他のアミノ酸による置換または付加を含む場合、他のアミノ酸は、天然のアミノ酸またはアミノ酸アナログであってよく、アミノ酸アナログとしては、種々のアミノ酸のN−アシル化物、O−アシル化物、エステル化物、酸アミド化物、アルキル化物等が挙げられる。本発明のペプチドの変異体を得るには、例えば、配列番号1〜3に記載のアミノ酸配列の1〜数個、好ましくは1〜4個、より好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1個または2個のアミノ酸残基が欠失しているか、他のアミノ酸残基またはアミノ酸アナログで置換された、またはそれが付加された候補ペプチドを合成し、該候補ペプチドとHLA−A33分子との複合体がCTLにより認識されるか否かをアッセイすることにより、同定することができる。
【0014】
アッセイは例えば、後述するCTL誘導法に準じて行うことができる。即ち、in vitroで候補ペプチドを添加して刺激した場合に、該候補ペプチドをパルスしたHLA−A33陽性細胞を特異的に認識するCTLが誘導されるか否かを調べる。ここで、CTL誘導の有無は、例えば、抗原ペプチド提示細胞に反応してCTLが産生する種々のサイトカイン(IFN-γ等)の量を酵素免疫測定法(ELISA)等により測定することによって調べることができる。または、51Crで標識した抗原ペプチド提示細胞に対するCTLの傷害性を測定する方法(51Cr リリースアッセイ、Int.J.Cancer,58:p317,1994)によっても調べることができる。前記アッセイで用いるHLA−A33陽性細胞としては、実施例に記載のHLA−A33陽性細胞が挙げられる。
変異ペプチドのアミノ酸残基数は、抗原提示細胞表面上に提示され、かつCTL認識エピトープとしての性質を有する数であればよく、通常少なくとも約8個以上であり、好ましくは約9個以上であって、12個以下、好ましくは11以下、さらに好ましくは10個以下である。特に好ましアミノ酸残基数は9個ないし10個である。
【0015】
本発明はさらに、特異的なCTLの誘導活性を有する、本発明のIEX−1由来ペプチドまたはその変異ペプチドを含有するポリペプチドを包含する。ポリペプチドを構成するアミノ酸数は、特に限定されず、本発明が属する分野での技術常識に従う。通常、アミノ酸残基数約100個以下の長さであり、好ましくは約50個以下、より好ましくは約30個以下程度である。
本発明のポリペプチドはHLA−A33陽性細胞内で断片化されて特異的CTL誘導活性を有するペプチド断片を与えることができるものである。そのようなポリペプチドは、配列番号:1、配列番号:2、または配列番号:3で示される本発明のペプチドに相当する部分配列、または本発明ペプチドの変異体に相当する配列を含有することが特に好ましい。
【0016】
また、機能を著しく障害しない程度に構成アミノ酸またはカルボキシル基などを修飾して、本発明のペプチドおよびポリペプチドを改変することもできる。例えば、N末端や遊離のアミノ基には、ホルミル基、アセチル基、t−ブトキシカルボニル(t−Boc)基等が結合していてもよく、抗原ペプチドのC末端や遊離のカルボキシル基には、メチル基、エチル基、t−ブチル基、ベンジル基等が結合していてもよい。さらに、本発明のペプチドは、生体内への導入を容易にするように、修飾されていてもよい。
一般に、HLA分子と結合する腫瘍抗原 ペプチドのアミノ酸配列には、HLAの型により異なるモチーフ(規則的配列)が存在することが知られており、変異または改変は、そのモチーフ上、許容されるものであることが好ましい。変異の導入において、ペプチドまたはポリペプチドの基本的な性質(物性、機能、生理活性または免疫学的活性等)を変化させないという観点からは、例えば、同族アミノ酸(極性アミノ酸、非極性アミノ酸、疎水性アミノ酸、親水性アミノ酸、陽性荷電アミノ酸、陰性荷電アミノ酸および芳香族アミノ酸等)の間での相互置換は容易に想定される。
本発明のペプチドおよびポリペプチドは、ペプチド化学における一般的な公知方法により製造できる。
【0017】
「抗原提示細胞(APC)」とは、HLAと抗原ペプチドとの複合体を細胞表面に提示する細胞を意味する。従って、抗原提示細胞は、本発明の腫瘍抗原ペプチドとHLA−A33分子との複合体を細胞表面に提示することにより、HLA−A33拘束性CTLの活性化をもたらす機能を有する。そのような細胞には、CTL細胞障害作用の標的である腫瘍細胞も含まれる。
本発明の抗原提示細胞は、単離された抗原提示能を有する細胞の表面に、HLA−A33分子と本発明の腫瘍抗原ペプチドとの複合体を提示している。そのような細胞は、in vitroで誘導することもでき、具体的には、HLA−A33陽性の抗原提示能を有する細胞に本発明の腫瘍抗原ペプチドをパルスしてHLA−A33と該ペプチドとの複合体をその細胞表面に提示させることにより得られる。「抗原提示能を有する細胞」とは、本発明の腫瘍抗原ペプチドを提示可能なHLA-A24抗原を細胞表面に発現している細胞であれば特に限定されないが、特に抗原提示能が高いとされる樹状細胞が好ましい。特に、HLA−A33陽性腫瘍患者由来の単離された抗原提示能を有する細胞の表面に、HLA−A33分子と本発明の腫瘍抗原ペプチドとの複合体を提示させた抗原提示細胞が好ましい。
【0018】
核酸分子
本発明の核酸分子は、本発明のIEX−1由来ペプチドまたはその変異ペプチドおよび該ぺプチドを含むポリペプチドの、アミノ酸配列をコードする一本鎖(相補鎖を含む)および二本鎖ポリヌクレオチドを含む。本発明の核酸分子はDNAであってもRNAであってもよい。これら核酸分子がコードするアミノ酸配列を有するペプチドは、それ自体がCTLにより認識され、該CTLを活性化するか、そのような活性を有するペプチド断片を与えることができ、腫瘍抗原として機能し得る。
また、本発明の核酸分子は、本発明のペプチドをコードする領域に対応する少なくとも24個以上の塩基からなるポリヌクレオチドおよびその相補鎖であってよい。このようなポリヌクレオチドは、例えば公知のタンパク質発現系を利用して発現ペプチドを確認することにより選択できる。
【0019】
抗体
本発明の抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体のいずれであってもよい。本発明のIEX−1由来ペプチドまたはポリペプチドの中から選ばれる1つのペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列中、連続する少なくとも5個のアミノ酸残基からなるエピトープペプチドまたはポリペプチドを特異的に認識するものである。
抗体はそれらのエピトープペプチドを使用して作製でき、そのエピトープペプチドは少なくとも5個、好ましくは少なくとも8〜10個のアミノ酸で構成される。本発明は、この少なくとも5個のアミノ酸残基からなるペプチドおよびそれをコードする核酸分子も包含する。
本発明の抗体は、エピトープペプチドを単独で、または担体と結合した形で、アジュバントの存在または非存在下に例えばマウス、ラット、ウサギ、ヤギ等に免疫し産生を誘導することができる。得られたポリクローナル抗体は、公知の方法により血清から回収することができる。
一方、モノクローナル抗体は、上記のように免疫応答を誘導した動物から回収した抗体産生細胞を、永久増殖性細胞と融合することで生産できる。本方法は当業界において周知である。
これらのポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体は、精製用抗体、試薬、標識マーカー等として利用することができる。また、ヒト型化して治療用に供する場合もあり得る。
【0020】
医薬組成物
本発明の医薬組成物は、本発明のIEX−1由来ペプチド、変異体ペプチド、ポリペプチド、HLA分子とペプチドとの複合体を細胞表面に提示している抗原提示細胞、ペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸分子、該核酸分子の塩基配列情報に基づき作製した組換えベクター、または本発明の抗体を、単独または複数組み合わせて利用することにより調製できる。
具体的には、本発明のIEX−1由来ペプチドまたはその変異体、該ペプチドを含むポリペプチド、抗原提示細胞は癌ワクチンとして使用することができる。一種類のペプチドでも癌ワクチンとして有効であるが、複数種類のペプチドを組み合わせて使用するのが好ましい。これは、癌患者のCTLが複数の異なる種類の腫瘍抗原を認識する細胞の集団であることから、複数種類の腫瘍抗原を組み合わせて癌ワクチンとして使用する方がより効果的であると期待されるからである。本発明に係るペプチド等を他のペプチドと共に複数種類組み合わせて使用してもよい。
【0021】
本発明の癌ワクチンは、適当なアジュバントの存在または非存在下で、単独で、または製薬的に許容される担体と結合して使用することができる。担体は、人体に有害な作用を起こさない限り限定されるものではなく、例えば、セルロース、重合アミノ酸、アルブミン等が使用できる。剤形は、ペプチド製剤について周知の剤形が選択可能である。投与量は、CTLによる認識性、治療すべき疾患、患者の年齢、体重等により変化するが、ペプチドの場合、活性本体として、通常、0.0001mg〜1000mg、好ましくは0.001mg〜1000mg、より好ましくは0.1mg〜100mg、さらに好ましくは0.1〜10mg/日/成人ヒトである。これを数日ないし数周あるいは数ヶ月に一回投与する。
【0022】
本発明の医薬組成物はまた、本発明に係るペプチドをコードする核酸配列を適当なベクターに組み込み、in vivoまたはex vivoで導入するのに利用することができる。ベクターとしては、例えばレトロウィルス、アデノウィルス、ワクシニアウィルス等が挙げられるが、レトロウィルス系が好ましい。投与量は、CTLによる認識性により変化するが、DNA含量として0.1μg-100mg/日/成人ヒト、好ましくは1μg−50mg/日/成人ヒトである。これを数日ないし数ヶ月に一回投与する。
【0023】
IEX−1反応性CTLおよびその誘導方法
「IEX−1反応性CTL」とは、本発明のIEX−1由来ペプチドまたはその変異体とHLAとの複合体を認識し、誘導されるCTLを意味する。該CTLはHLA−A33拘束性CTLである。
そのようなCTLは、例えばHLA−A33胃癌患者の末梢血単核球(PBMC)から本発明に係るペプチドを用いて誘導することができる。
つまり、本発明のペプチドでパルスした抗原提示細胞(APC)とともにHLA−A33胃癌患者のPBMCをインキュベートしてCTLを誘導し、IFN-γ産生を指標として評価する。さらに、誘導されたCTLの活性は、51Cr放出試験等により腫瘍細胞傷害性を指標として確認できる。
【0024】
上記の方法は、in vitroで誘導した抗原特異的CTLを患者体内に戻し腫瘍細胞を傷害する、養子免疫療法に利用できる。すなわち、メラノーマにおいては、患者本人の腫瘍内浸潤T細胞を体外で大量に培養して、これを患者に戻す養子免疫療法に治療効果が認められている(J. Natl.Cancer.Inst.,86:1159、1994)。またマウスのメラノーマにおいては、脾細胞をin vitroで腫瘍抗原ペプチドTRP-2で刺激し、腫瘍抗原ペプチドに特異的なCTLを増殖させ、該CTLをメラノーマ移植マウスに投与することにより、転移抑制が認められている(J. Exp.Med.,185:453, 1997)。これは、抗原提示細胞のHLA抗原と腫瘍抗原ペプチドとの複合体を特異的に認識するCTLをin vitroで増殖させた結果に基づくものである。本発明の腫瘍抗原ペプチドを用いて、in vitroで患者末梢血リンパ球を刺激して腫瘍特異的CTLを増やした後、このCTLを患者に戻すことにより腫瘍を治療することが可能である。
【0025】
以下、本発明を実施例によってより詳細に説明するが、本発明は下記実施例によっていかなる意味においても制限されるものではない。
【実施例】
【0026】
本発明には、以下の癌細胞株を使用した。
胃腺癌 MKN−28、MKN−45、SSTW−9、KATO−III、KWS、およびHGC−27;肺腺癌 LC−1;肺偏平上皮癌 QG−56;頭頸部癌 KUMA−1;大腸腺癌 SW620およびCOLO201;膵臓腺癌 Panc−1;ヒト慢性骨髄性白血病 K562。これらの腫瘍細胞のHLAクラスI遺伝子型は以前に示されている(文献10、11)。
これらの細胞上のHLAクラスIまたはHLA−A33抗原の発現は、抗HLAクラスI(W6/32)モノクローナル抗体(mAb)(HLAクラスI分子の単一形領域を認識)、または抗HLA−A33mAb(HLA−A33分子の多形領域を認識)(IgM、One Lamda, Canoga Park, CA)を用いて、FACScan(Becton Dickinson, San Jose, CA)でのフローサイトメトリーによって測定した。
統計学的解析には、本発明すべてにおいて両側 Student t検定を用いた。
【0027】
実施例1
(850B−CTL株の樹立)
HLA−A33拘束性および腫瘍特異的CLT株(850B−CTL)は、重症胃腺癌患者(HLA−A2402/A3303、B7/B44、Cw7/Cw14)のTILを10%FCS(Equitech Bio, Ingram, TX)、100U/mlIL−2(Shionogi Pharmaceutical, Osaka, Japan)、および10μg/mlPHA(Difco, Detroit, MI)含有培養培地(45%RPIM1640培地、45%AIM−V培地;Life Technologies, Walkersville, MA)で14日間インキュベートし、続いて支持細胞としての放射線照射(30Gy)アロジェニック末梢血単核細胞(PBMC)の存在下でさらに30日より長く培養することにより樹立した。本CTL株の表現型をFITC結合抗CD3、CD4、またはCD8モノクローナル抗体(mAb)を用いて免疫学的蛍光試験により検討したところ、CD3CD4CD8(>95%)であった(データ非提示)。
【0028】
(850B−CTL株の特性)
文献記載の方法に従い、850B−CTL株を特性化した(文献9)。
標的細胞を認識することによりIFN−γを産生する能力について、様々なE:T比(エフェクター細胞:標的細胞)において850B−CTL細胞株を試験した。値はELISA(検出限界10pg/ml)によるトリプリケート測定の平均を表す。図1Aに示すように、このCTL株はHLA−A33上皮癌細胞、LC−1およびKUMA−1を認識することにより有意なレベルのIFN−γを産生したが、HLA−A33標的細胞に対しては反応しなかった。
【0029】
次に、様々な標的細胞に対する850B−CTLの細胞傷害活性を、相異なるE:T比において6時間51Cr放出試験により試験した。本方法は既知である(文献9)。値はトリプリケート測定の平均を表す。850B−CTLは、HLA−A33LC−1およびKUMA−1細胞に対してより強い細胞傷害性を示したが、HLA−A33標的細胞、COS7細胞、NK標的細胞株、K562、または健常提供者のPBMCから得たHLA−A33PHA活性化正常T細胞(PHA幼若化細胞)のいずれに対しても示さなかった。
【0030】
さらにmAbを用いた阻害実験によって、850B−CTLの反応性を検討した。抗HLAクラスI(W6/32、IgG2a)、抗CD8(Nu−Ts/c、IgG2a)、抗HLA−A24(0041HA、IgG2a)、抗CD4(Nu−Th/i、IgG1)、抗HLAクラスIB,C(B1−23、IgG2a)、および抗HLAクラスII(H−DR、IgG2a)mAb(20μg/ml)を文献記載の方法と同様に使用した(文献10、11)。アイソタイプ適合対照mAbとして、抗CD14(JML−H14、IgG1)または抗CD13(MCS2、IgG2a)を準備した。
HLA−A33LC−1細胞の認識による850B−CTLからのIFN−γ産生は、抗HLAクラスIおよび抗CD8mAb(20μg/ml)によって阻害されたが、抗HLA−B, C、抗HLAクラスII、抗HLA−A24、抗CD4、または無関係なアイソタイプ適合抗CD13または抗CD14mAbによっては阻害されなかった(図1C)。
これらの結果は、850B−CTL株が腫瘍細胞に対してはHLA−A33拘束性細胞傷害性を示すが、正常細胞に対しては示さないことを意味している。
【0031】
実施例2
(IEX−1遺伝子の同定)
遺伝子発現クローニング法(文献9)により、850B−CTL株によって認識される腫瘍抗原をコードする遺伝子を同定した。
LC−1肺腺癌細胞のポリ(A)RNAをcDNAに変換し、SalIアダプターをライゲートし、そして発現ベクターpSV−SPORT−6(Invitrogen, San Diego, CA)に挿入した。HLA−A3303またはHLA−A2601のcDNAをそれぞれKUMA−1またはKE4細胞より回収したRNAからRT−PCRによって作製し、真核細胞発現ベクターpCR3(Invitrogen)へ挿入してクローニングした。LC−1cDNAライブラリーのプラスミドDNAプールまたはクローン(200ng)、およびHLA−A3303またはHLA−A2601(陰性対照)cDNA(200ng)、の両方を、1μlのリポフェクタミン(Invitrogen)と120μlのOpti−MEM(Invitrogen)中で40分間混合した。COS7細胞(5x10)をこの混合物50μlと6時間インキュベートし、続いて10%FCS含有RPMI1640培地150μlを添加した。2日間培養した後850B−CTL(2x10細胞/ウェル)を添加し、その後18時間インキュベートし、上清100μlを回収してELISAによりデュプリケート試験でIFN−γを測定した(文献9)。
【0032】
一次スクリーニングにおいて、LC−1cDNAライブラリーから得た1x10クローンすべてを、HLA−A3303cDNAとともにCOS7細胞にトランスフェクションした後に、850B−CTLによるIFN−γ産生を刺激する能力について試験した。すなわち、cDNAプール(1x10クローン)を96平底プレート中の約2000の相違するウェルにデュプリケートで分割した(各ウェルの期待されるクローン数:100クローン/ウェル)。一次スクリーニングでは、10の異なるウェルで有意なレベルのIFN−γ産生が得られた。二次スクリーニングとして、陽性ウェルからクローン化して得た各cDNAプールを96平底プレートの約200の異なるウェルにデュプリケートで分割し、IFN−γ産生刺激活性について試験した。
二次スクリーニングの後、更なるアッセイのための二つの陽性クローンを同定した。DNAシークエンスキットおよびABI PRISM 377 DNA シークエンサー(Perkin-Elmer, Foster, CA)を使用したジデオキシヌクレオチドシークエンス法によりDNAシークエンスを行った。単離された遺伝子の一つについて以下の検討を行った。
【0033】
図2に示されるように、クローン1およびHLA−A3303をトランスフェクトしたCOS7細胞は、用量依存的に850B−CTLにおけるIFN−γ産生を誘導したが、陰性対照としてクローン1とHLA−A2601をトランスフェクトした細胞は誘導しなかった。それに対し、クローン1またはHLA−A3303のいずれかを単独でトランスフェクトしたCOS7細胞は850B−CTLに認識されなかった(データ非提示)。さらに、LC−1cDNAライブラリーから得られた陰性対照として使用した他のクローンは、HLA−A3303とともにCOS7細胞にトランスフェクトした場合に850B−CTLにおけるIFN−γ産生を誘導できなかった(データ非提示)。このことはクローン1が850B−CTLによって特異的に認識される腫瘍抗原をコードすることを示唆している。
GeneBankの検索によって、クローン1のヌクレオチド配列は、ストレス誘導抗アポトーシス遺伝子として報告されているIEX−1(文献17)の配列と同一であることがわかった。
【0034】
実施例3
(正常および癌組織におけるIEX−1mRNAおよびタンパク質の発現)
様々な腫瘍または正常組織(Multiple Tissue Northern Blots, Clontech, Tokyo, Japan)におけるIEX−1mRNAの発現を、以前に記載した方法に従い32P標識IEX−1プローブを用いてノーザンブロット解析によって調べた(文献9)(図3A、レーン1:脳、レーン2:心臓、レーン3:骨格筋、レーン4:大腸、レーン5:胸腺、レーン6:脾臓、レーン7:腎臓、レーン8:肝臓、レーン9:小腸、レーン10:胎盤、レーン11:肺、レーン12:PBL)。β-アクチンプローブを対照として使用した。図3Aに示すように、脳(レーン1)を除き試験したすべての正常組織において約〜1.3kbのバンドがはっきりと検出され、心臓(レーン2)、腎臓(レーン7)、肺(レーン11)、または末梢血リンパ球(PBL)(レーン12)において特に発現が高く、胸腺(レーン5)、脾臓(レーン6)、肝臓(レーン8)、または小腸(レーン9)においては発現が低かった。
【0035】
次に、正常および癌細胞におけるIEX−1遺伝子のmRNA発現をノーザンブロット解析により検討した(図3B、レーン1:PBL、レーン2:MKN45、レーン3:MKN28、レーン4:SSTW、レーン5:HGC27、レーン6:LC−1、レーン7:QG56、レーン8:KUMA−1、レーン9:Panc−1、レーン10:SW620、レーン11:COLO201、レーン12:KATO−III)。IEX−1は、HCG27胃癌細胞株(レーン5)を除き、胃(レーン2−4、12)、肺(レーン6、7)、頭頸部(レーン8)、膵臓(レーン9)、および大腸(レーン10、11)を含む様々な臓器に由来する、被験腺癌およびSCC細胞株のほとんどにおいて高発現していた。
これらの結果は、この遺伝子があらゆる癌および正常組織において発現していることを意味する。
【0036】
さらに、様々な腫瘍組織におけるこの遺伝子の発現をタンパク質レベルで検討した。IEX−1タンパク質の発現は、抗IEX−1抗体(Santa-Cruz biotechnology, Santa-Cruz, CA)とともにVentana Medical Systems 自動化装置(Tucson, AZ)を使用して、ホルマリン固定パラフィン包埋組織切片上で免疫組織化学によって評価した。
胃癌組織における代表的染色を示す(図3C)。胃癌においてIEX−1タンパク質の発現は癌細胞で選択的に増強されていたが、周囲の正常上皮または結合組織においては増強されていなかった。IEX−1タンパク質は、乳癌(図3D)、肺癌(図3E)、および大腸癌(データ非提示)を含む様々な型の癌組織においてもまた、高くかつ選択的に発現していた。なお、図3C〜Eにおいて、IEX−1タンパク質は茶色に染まっており、正常細胞および結合組織は茶色に染まっていない。これら、茶色に染まった数箇所を、便宜上、矢印で示した。
以上の結果より、IEX−1は癌の治療において理想的な標的分子の一つであるといえる。
【0037】
実施例4
(850−B CTLによって認識されるIEX−1由来抗原性ペプチドの同定)
IEX−1の抗原性エピトープとしてCTLに認識され得るペプチドを同定するため以下の実験を行った。
IEX−1の推定アミノ酸配列においてHLA−A33分子に結合するためのモチーフ(文献18、19)を有する可能性のあるペプチド配列の中で、コンピューター解析(Bioinformatics and Molecular Analysis Section (BIMAS), NIH, Bethesda, MD)ではHLA−A33に対してより強い結合活性を有する8の相異なるペプチドを使用した。BioSynthesis, Lewisville, TXより純度>95%のペプチドを得た。ペプチド結合アッセイには、RMA−S−A33細胞(HLA−A3303cDNAを安定的にトランスフェクトしたRMA−Sタップ(ペプチドプロセシングに関与するトランスポーター)欠損マウスリンパ腫細胞(Hiroko Takedatsu, et al., Identification of Peptide Vaccine Candidates Sharing Among HLA-A3, -A11, -A31, and -A33 Cancer Patients., Clin Can Res, 2004, in press)(1x10細胞/ウェル)を使用した。簡単に言うと、細胞を26℃で18時間インキュベートした。PBSで洗浄した後、細胞(1x10細胞)をOpti-MEM(ヒトβ2-ミクログロブリン3μg/mlおよびペプチド10μg/ml含有)に懸濁し、続いて26℃で3時間そして37℃で3時間インキュベートした。PBSで洗浄した後、細胞を抗HLA−A33mAbと4℃で30分間インキュベートし、続いてFITC結合ウサギ抗マウスIgM抗体(Cappel, Aurora, OH)と4℃で30分間インキュベートした。細胞をFACScanで解析し、平均蛍光強度(MFI)により結合活性を評価した。26℃で、TRP2−197ペプチド(参考ペプチド)でパルスした細胞、およびパルスしていない細胞も使用した。表1に示すように、若干親和性は異なるが、8ペプチド全てがRMA−S−A33細胞に結合できた。
【表1】

【0038】
850B-CTL株によって認識される抗原性ペプチドの検出のため、C1R−A33細胞(HLA−A3303cDNAをトランスフェクトして安定的に発現させたC1Rヒト多発性骨髄腫細胞(Hiroko Takedatsu, et al., Clin Can Res, 2004, in press)を指示濃度のペプチドとともに培養した。二時間後、850B−CTL(2x10細胞/ウェル)を添加し、さらに18時間インキュベートした。培養上清中のIFN−γの産生はELISAにより測定した。
ペプチド非ロードC1R−A33細胞に応答した850B−CTLによるIFN−γ産生をバックグラウンドとして、その値から差し引いた。値はトリプリケート試験の平均を示す。
【0039】
これらペプチドのうち3つ、IEX47−56、IEX61−69、およびIEX65−73が、有意なレベルのIFN−γ産生を用量依存的に誘導した(図4A、4B)。HLA−A33トランスフェクトC1R細胞上にロードするのに最適な三つのペプチドの濃度は、各ペプチドにおいて0.1−1μMの範囲にわたり様々であったが(図4B)、RMA−S−A33細胞により決定されたHLA−A33分子に対するそれらの結合親和性(表1)には依存していなかった。
以上の結果に基づき、IEX47−56、IEX61−69、およびIEX65−73を、850B−CTL株によって認識されるIEX−1由来抗原性ペプチドとして同定した。
【0040】
実施例5
(IEX−1由来ペプチドによるCTLの誘導)
IEX47−56、IEX61−69、およびIEX65−73ペプチドのHLA−A33拘束性および腫瘍特異的CTL誘導能について、HLA−A33上皮癌患者(n=4、胃癌患者(2)、肺癌患者(1)、前立腺癌(1))およびHLA−A33健常人(HD)のPBMCにおいて試験した。
HLA−A33癌患者およびHLA−A33健常人PBMC(1x10/ウェル)を、96穴マイクロカルチャープレート(Nunc, Roskiide, Denmark)においてIL−2含有培養液200μl中で各ペプチド(10μM)とインキュベートした(文献13)。14日目に各ウェルから別個にペプチド刺激PBMC(80−120x10/ウェル)を回収し、洗浄し、4等分した。2つは対応するペプチドをロードしたC1R−A33細胞で、残りの二つは陰性対照のHIVペプチドをロードしたC1R−A33細胞で刺激した。18時間後、上清を回収しそれらのIFN−γ産生活性について試験した。
4人の患者の代表例を図5に示す。HIVペプチドに対するIFN−γ産生(<50pg/ml)をバックグラウンドとして差し引いた。これら3つのぺプチドで刺激した癌患者由来PBMCは、ほとんどの場合において対応するペプチドをロードしたHLA−A33トランスフェクトC1R細胞を認識して有意な量のIFN−γを産生した(図5)。それに対して、5人のHDから得たPBMCはそれらに対して有意な量のIFN−γを産生しなかった(データ非提示)。
【0041】
次に、ペプチド誘導CTLの腫瘍細胞傷害活性を検討した。
有意な量のIFN−γを産生できた細胞を回収し、IL−2単独でさらに10−14日間培養し、相異なるE:T比で6時間51Cr放出試験を行った(文献13)。LC−1(HLA−A33IEX−1)、QG56(HLA−A33IEX−1)、およびHGC27(HLA−A33IEX−1)に対する細胞傷害活性を計測した。対照として、非抗原性IEX−1由来ペプチド、IEX43−51によって刺激した癌患者のPBMCを使用した。値はトリプリケート測定の平均を示す。
図6に示すように、IEX−1由来ペプチドで刺激されたPBMCは、HLA−A33IEX−1LC−1腫瘍細胞に対して有意なレベルの細胞傷害性を示したが、HLA−A33HGC27またはQG56細胞に対しては示さなかった。また、IEX43−51(陰性対照ペプチド)は特異的CTL活性を示さなかった。この結果は、IEX47−56、IEX61−69、およびIEX65−73が、上皮癌患者のPBMCにおいてHLA−A33拘束性に特異的CTLを誘導できる抗原性エピトープペプチドであることを示唆している。
【0042】
さらに、細胞傷害性の拘束性およびペプチド特異性を阻害試験および競合試験により確認した。
阻害試験には、抗HLAクラスI(W6/32、IgG2a)、抗HLAクラスII(H−DR、IgG2a)、抗CD8(Nu−Ts/c、IgG2a)、抗CD4(Nu−Th/i、IgG1)(20μg/ml)を使用した。抗CD14(JML−H14、IgG2a)mAbを対照として使用した。
これらペプチド刺激PBMCの細胞傷害性は、試験したすべてのケースで抗HLAクラスIまたは抗CD8抗体によって有意に阻害されたが、他のmAbよっては阻害されなかった(図7)。
競合試験では、対応ペプチドまたはHIVペプチド(陰性対照)でパルスした非標識C1R細胞を51Cr放出試験に非標識細胞対標識細胞の比率を10対1で添加した。10:1のE/T比で51Cr放出試験を行った。値は特異的傷害活性(%)の平均±SDを示す。
対応ペプチドパルスC1R−A33細胞を添加することにより細胞傷害性は阻害されたが、HIVペプチドパルス細胞では阻害されなかった(図8)。
以上の結果は、ペプチド特異的CTL活性が、主としてHLA−AクラスI拘束性にCD8+T細胞によって発揮されることを示唆している。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、IEX−1が、胃腺癌に浸潤しているT細胞より樹立されたHLA拘束性および腫瘍特異的CTLにより認識される腫瘍抗原性エピトープをコードしていることを開示するものである。また、本発明はIEX−1由来抗原性ペプチドが癌患者のPBMC培養においてHLA拘束性に腫瘍特異的CTLを誘導できることをも開示するものである。
IEX−1は、正常組織、特に、心臓、腎臓、肺およびPBLにおいても発現しているので、これらの臓器はIEX−1由来抗原性エピトープによる特異的免疫療法の有害事象となる恐れがある。しかしながら、本発明は850−BCTL株およびIEX−1由来ペプチドにより誘導されたCTLのいずれもHLA−A33腫瘍細胞を溶解する一方、過剰量の対応ペプチドが培養中に存在するにも拘わらずPHA活性化正常HLA−A33T細胞は傷害しないことを明らかにした。また、発明者らが行っている腫瘍抗原由来ペプチドワクチンを用いる臨床試験では、腫瘍抗原のいくつかは正常組織または臓器に広く発現しているにも拘わらず、深刻な有害事象は観察されていない(文献4−7)。
従って、以上の結果は、本発明のIEX−1由来ペプチドが癌治療に適したペプチドワクチンとして使用可能であることを示唆している。
【0044】
また、放射線照射およびいくつかの化学療法薬が、比較的高いレベルでIEX−1発現を誘導することが報告されているので(文献26、30)、本発明のIEX−1分子を標的とした特異的免疫療法は、特に化学療法または放射線療法抵抗性癌を患う患者の処置にとって新規で魅力的な方法となり得る。
HLA−A33は、アジア人および黒人において最も一般的なHLA−Aアレルの一つであり、日本人の13%、韓国人の14%、白人の14%、および黒人の16%に見られる(文献14、15)。またIEX−1は癌組織に高発現している。従って、本発明の抗原ペプチドは、HLA−A33癌患者に対する特異的免疫療法に広く利用可能であろう。
【0045】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞傷害性T細胞(CTL)によって認識され、特異的な細胞傷害性T細胞(CTL)を誘導する、ストレス誘導抗アポトーシス分子(IEX−1)由来のペプチドまたはその変異ペプチド。
【請求項2】
CTLがHLA−A33拘束性に認識する、請求項1記載のペプチド。
【請求項3】
連続する8〜11個のアミノ酸残基からなる、請求項1または2に記載のペプチド。
【請求項4】
配列番号1〜3のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチド、または配列番号1〜3のいずれかに示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつHLA−A33分子と結合して特異的なCTLを誘導するペプチドである、請求項1〜3のいずれかに記載のペプチド。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のペプチドを含むポリペプチド。*請求項1〜3は、9あるいは10アミノ酸残基よりなるペプチドでポリペプチドではない*
【請求項6】
単離された抗原提示能を有する細胞の表面に、HLA−A33分子と請求項1〜4のいずれかに記載のペプチドとの複合体を提示させてなる、抗原提示細胞。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載のペプチド、または請求項5記載のポリペプチドをコードする核酸分子。
【請求項8】
請求項7記載の核酸分子を含有するベクター。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれかに記載のペプチド、請求項5記載のポリペプチド、請求項6記載の抗原提示細胞、請求項7記載の核酸分子、または請求項8記載のベクターを含む、特異的なCTLを誘導するための医薬組成物。
【請求項10】
癌ワクチンである、請求項9記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項1〜4のいずれかに記載のペプチドとHLAとの複合体、または請求項6記載の抗原提示細胞に提示された複合体を認識する、IEX−1反応性CTL。
【請求項12】
請求項1〜4のいずれかに記載のペプチド、請求項5記載のポリペプチドまたは請求項6記載の抗原提示細胞を用いてIEX−1反応性CTLを誘導する方法。
【請求項13】
請求項1〜4のいずれかに記載のペプチドまたは請求項5記載のポリペプチドを特異的に認識する抗体。
【請求項14】
次の(1)または(2)に記載のポリペプチドを含む、特異的なCTLを誘導するための医薬組成物:
(1)配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、または
(2)配列番号4に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつHLA−A33分子と結合して特異的なCTLを誘導するペプチドを与えるポリペプチド。
【請求項15】
癌ワクチンである、請求項14記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【国際公開番号】WO2005/075646
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【発行日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517705(P2005−517705)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001508
【国際出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(599045903)学校法人 久留米大学 (72)
【Fターム(参考)】