説明

ストレージレスコンピュータシステム、サーバー、クライアント、これらの動作方法及びプログラム

【課題】ユーザーのデータ管理、ストレージ故障による復旧の煩わしさを解消することができるストレージレスコンピュータシステムを提供する。
【解決手段】ストレージレスコンピュータシステムは、サーバー及びクライアントを有する。サーバーは、クライアントのユーザーのID毎にOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータを保存し、クライアントからID及びパスワードを受信すると、受信したIDに応じたOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータをネットワーク経由でクライアントに送信する。クライアントは、可搬型記録媒体がセットされると、可搬型記録媒体内に格納されたデータに基づいて、ネットワーク経由でサーバーに接続し、入力されたID及びパスワードをサーバーに送信し、サーバーからOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータをダウンロードする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレージレスコンピュータシステム、クライアント、サーバー、これらの動作方法及びプログラムに係り、特にストレージレスPC(パーソナルコンピュータ)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、安価なPCが普及することにより、多くの人が自宅や会社でPCを使用することが多くなった。しかし、PCを使う人のスキルが追いついておらず、データバックアップの重要性、ウイルスの危険性が認知されないまま運用されていることが多い。
【0003】
その対策として、近年では一般家庭にも光通信などの高速インターネット回線が普及しているため、機能を限定したOS(オペレーティングシステム)であれば、PC利用時にその都度OSをダウンロードするといった運用も可能であると考えられる。
【0004】
これに関連して、特許文献1では、ハードディスクドライブ(HDD)、フロッピーディスクドライブ(FDD)(「フロッピー」は登録商標、以下同様)を設けずに、入力、表示、通信等の最小限に機能を絞ったクライアント用コンピュータからなるシンクライアント端末と、このシンクライアント端末へ記憶手段内の試験問題を送信し、その試験問題の回答を受けるサーバーとを備えた試験システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−108273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のPC運用では、次のような課題があった。
【0007】
(1)従来は、PC本体にHDD等のストレージを内蔵し、そこから起動していた。この場合、PCの起動が早くて便利ではあるが、データ量の増加、機能の追及によるOSの肥大化に伴い実際はそれほど快適ではない。
【0008】
(2)コンピュータウイルスも蔓延しており、感染し起動不可となれば、再セットアップしなくてはならず、OSのセットアップからアプリケーションのセットアップまで数時間〜1日の時間を要する。
【0009】
(3)ストレージ類は消耗部品であるという認識は、一般的に浸透しておらず、HDD等のストレージ故障によるデータ損失が発生すると、復旧は困難である。
【0010】
これに関連して、特許文献1の試験システムは、同一LAN(Local Area Network)内で構築するシステムであるため、インターネット等のWAN(Wide Area Network)環境も考慮したシステムに適用するのは難しい。また、このシステムで用いるシンクライアント端末は、入力、表示、通信等の最小限に機能を限定しているため、各種ローカルデータの保全性まで考慮しつつ、シンプルな構成で、現在のPCと同環境を提供することは困難である。
【0011】
本発明の目的は、上記課題を解決し、ユーザーのデータ管理、ストレージ故障による復旧の煩わしさを解消することができるストレージレスコンピュータシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係るストレージレスコンピュータシステムは、ネットワークに接続されるサーバーと、前記サーバーに前記ネットワークを介して接続されるクライアントとを有し、前記サーバーは、前記クライアントのユーザーのID毎にOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータを保存する記憶部と、前記クライアントから送られてくるID及びパスワードを受信すると、受信したIDに対応するOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータをネットワーク経由で前記クライアントに送信するサーバー側通信部とを有し、前記クライアントは、可搬型記録媒体がセットされると、当該可搬型記録媒体内に格納されたデータに基づいて、前記ネットワーク経由で前記サーバーに接続し、ユーザーにより入力されたID及びパスワードを前記サーバーに送信し、これに応答して前記サーバーから送られてくるOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータをダウンロードするクライアント側通信部と、ダウンロードしたOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータを用いて動作し、動作終了時にダウンロードしたOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータを残さずにシャットダウンするように制御する制御部とを有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るサーバーは、クライアントのユーザーのID毎にOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータを保存する記憶部と、前記クライアントから送られてくるID及びパスワードを受信すると、受信したIDに対応するOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータをネットワーク経由で前記クライアントに送信する通信部とを有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係るクライアントは、可搬型記録媒体がセットされると、当該可搬型記録媒体内に格納されたデータに基づいて、ネットワーク経由でサーバーに接続し、ユーザーにより入力されたID及びパスワードを前記サーバーに送信し、これに応答して前記サーバーから送られてくるOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータをダウンロードする通信部と、ダウンロードしたOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータを用いて動作し、動作終了時にダウンロードしたOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータを残さずにシャットダウンするように制御する制御部とを有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係るストレージレスコンピュータシステムの動作方法は、サーバーが、クライアントのユーザーのID毎にOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータを保存し、前記クライアントが、可搬型記録媒体がセットされると、当該可搬型記録媒体内に格納されたデータに基づいて、ネットワーク経由でサーバーに接続し、ユーザーにより入力されたID及びパスワードを前記サーバーに送信し、前記サーバーが、前記クライアントから送られてくるID及びパスワードを受信すると、受信したIDに対応するOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータを前記ネットワーク経由で前記クライアントに送信し、前記クライアントが、前記サーバーから送られてくるOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータをダウンロードし、ダウンロードしたOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータを用いて動作し、動作終了時にダウンロードしたOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータを残さずにシャットダウンすることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係るサーバーの動作方法は、クライアントのユーザーのID毎にOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータを保存し、前記クライアントから送られてくるID及びパスワードを受信すると、受信したIDに対応するOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータをネットワーク経由で前記クライアントに送信することを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係るクライアントの動作方法は、可搬型記録媒体がセットされると、当該可搬型記録媒体内に格納されたデータに基づいて、ネットワーク経由でサーバーに接続し、ユーザーにより入力されたID及びパスワードを前記サーバーに送信し、これに応答して前記サーバーから送られてくるOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータをダウンロードし、ダウンロードしたOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータを用いて動作し、動作終了時にダウンロードしたOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータを残さずにシャットダウンするように制御することを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係るサーバーの動作プログラムは、コンピュータに、クライアントのユーザーのID毎にOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータを保存するステップと、前記クライアントから送られてくるID及びパスワードを受信すると、受信したIDに応じたOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータをネットワーク経由で前記クライアントに送信するステップとを実行させることを特徴とする。
【0019】
さらに、本発明に係るクライアントの動作プログラムは、コンピュータに、可搬型記録媒体がセットされると、当該可搬型記録媒体内に格納されたデータに基づいて、ネットワーク経由でサーバーに接続するステップと、ユーザーにより入力されたID及びパスワードを前記サーバーに送信するステップと、これに応答して前記サーバーから送られてくるOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータをダウンロードするステップと、ダウンロードしたOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータを用いて動作し、動作終了時にダウンロードしたOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータを残さずにシャットダウンするように制御するステップとを実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ユーザーのデータ管理、ストレージ故障による復旧の煩わしさを解消することができるストレージレスコンピュータシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例に係るストレージレスコンピュータシステムの全体構成を示す図である。
【図2】図1に示すクライアントPCの内部構成を示す詳細図である。
【図3】図1に示すインターネットプロバイダ側ダウンロード用サーバー及びLAN側ダウンロード用サーバーの内部構成を示す詳細図である。
【図4】本発明の実施例に係るストレージレスコンピュータシステムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明に係るストレージレスコンピュータシステム、サーバー、クライアント、これらの動作方法及びプログラムの実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
本実施形態に係るストレージレスコンピュータシステムは、完全なストレージレスのPCを提供し、OSを含む各種アプリケーションをインターネット環境及びLAN環境を構成するネットワーク上のウェブサイト(WEB)のダウンロード用サーバーより提供することで、ユーザーのデータ管理、ストレージ故障による復旧の煩わしさを低減するものである。
【0024】
そのため、本実施形態では、クライアントであるPCの運用時に、インターネットプロバイダもしくは同一LAN内のサーバーからOS、アプリケーション、ユーザーデータまですべてをPCにダウンロードし、それらをPCのメモリ内に常駐させる。この機能は、大容量メモリの普及、ネットワーク環境の高速化と機能を特化したOS(例えば、Windows CE、Windows XP Embedded(「Windows」,「Windows XP」は米国マイクロソフトコーポレーションの登録商標、以下同様)等)により実現可能である。
【0025】
これらの機能により、以下のような効果が得られる。
【0026】
(1)OSの肥大化もなくなり、一度ダウンロードが完了すれば、メモリ上で展開できる分、動作も快適である。
【0027】
(2)常に最新の環境をダウンロードできるため、ウイルスに感染しても影響は最小限に収まる。サーバー側でOS、アプリケーション環境を保存するため、再セットアップの必要がない。
【0028】
(3)消耗品であるストレージ機器を廃すことで、故障の可能性が低くなる。また、ユーザーデータはサーバー上に自動的に保存され、意識せずともデータは保持、バックアップされており安心である。
【0029】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
【実施例】
【0030】
図1は、本実施例に係るストレージレスコンピュータシステムの全体構成を示す図である。
【0031】
本実施例は、図1に示す通り、WAN等のインターネット環境とLAN環境のいずれのネットワーク環境でも適用可能なものである。インターネット及びLANで用いられる通信網は、それぞれで用いる所定規格の通信プロトコル(TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)等)に従うものであればよく、例えば有線回線及び無線回線のいずれでも適用可能である。
【0032】
インターネット環境においては、ネットワークブート機能を持つクライアントであるPC(以下、クライアントPC)10と、OSやアプリケーションデータを保持しているインターネットプロバイダ側ダウンロード用サーバー(以下、「プロバイダ側サーバー」と略称する。)30とで構成されており、各々はインターネット100を介して接続される。プロバイダ側サーバー30には、ダウンロード用ユーザーデータ31も保持される。
【0033】
また、LAN環境においては、ネットワークブート機能を持つクライアントPC20と、同一LAN内にあるOSやアプリケーションデータを保持しているLAN側ダウンロード用サーバー(以下、「LAN側サーバー」と略称する。)40とにより構成されており、各々はLAN200で接続される。LAN側サーバー40には、ダウンロード用ユーザーデータ41も保持される。
【0034】
この構成では、クライアントPC10またはPC20を起動し、インターネット環境ではインターネット100を介して契約しているプロバイダ側サーバー30へ、またはLAN環境ではLAN200を介して同一LAN内のLAN側サーバー40へそれぞれアクセスする。そして、ユーザーにより入力されたID(identifier:識別符号)とパスワードによりプロバイダ側サーバー30、LAN側サーバー40で認証された各クライアントPC10、20は、それぞれに適合したOS、IDに応じた設定情報、アプリケーションおよびダウンロード用ユーザーデータ31、41を、それぞれプロバイダ側サーバー30、LAN側サーバー40からダウンロードする。
【0035】
図2は、クライアントPC10、PC20の内部構成を示す詳細図である。
【0036】
クライアントPC10は、ストレージ類を一切廃止したPCである。すなわち、PC10の構成としては、通常のPCのハードウェア構成からストレージ類(「HDD(ハードディスクドライブ)」、「CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)」等の光ディスクドライブ、「FDD(フロッピーディスクドライブ)」等)を廃したものである。
【0037】
図2の例では、クライアントPC10は、コンピュータキテクチャに基づくハードウェア構成要素、例えば制御部及び処理部に対応するCPU(Central Processing Unit)12、メモリ13、入力部(キーボード、マウス等のポインティングデバイス等)14、表示部(CRT(Cathode Ray Tube)、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等)15、及び通信部(有線回線又は無線回線の通信インターフェース等)16を有し、ストレージ類は含まない。
【0038】
この構成により、クライアントPC10は、その運用時に、メモリ13内にプロバイダ側サーバー30からダウンロードしたOS、アプリケーション(AP:アプリケーションソフトウェア)、ユーザーデータ等の各種データを保存(常駐)して動作可能となっている。図2の例では、クライアントPC10の動作時にメモリ13内に常駐しているOS(例えば、Windows(登録商標)、Linux、独自OS等)17と、BIOS(Basic Input/Output System)18とが例示されている。
【0039】
クライアントPC10には、インターネット100に接続する必要最低限のOS(インターネット接続用OS)、および接続先のアドレス等のサーバー情報(サーバー接続用各種設定情報)の各データが格納されたSDカード(「SDメモリカード」ともいう)11がプロバイダ側サーバー30より配布される。クライアントPC10は、起動すると、セットされたSDカード11内に格納されたデータを読み出し、これに基づいてインターネット100に接続し、自動的に契約されたプロバイダ側サーバー20へとアクセスする。ID、パスワードにより認証されたクライアントPC10は、各ID毎に各々該当するOSやアプリケーション、各IDに応じた設定情報、ダウンロード用ユーザーデータ21をプロバイダ側サーバー30からダウンロードし、ダウンロードしたOS、各IDに応じた設定情報、アプリケーション、ユーザーデータを使用することが可能となる。使用終了時には、クライアントPC10は、変更したユーザーデータ21、各IDに応じた設定情報等のデータをプロバイダ側サーバー30へ保存し、クライアントPC10内にダウンロードしたOS、IDに応じた設定情報、アプリケーション、ユーザーデータ21等のデータを残さず、シャットダウンする。
【0040】
クライアントPC20は、基本的にはクライアントPC10と同じ構成(CPU22、メモリ23、入力部24、表示部25、及び通信部26)であるが、これに加え、アクセス先が同一LAN環境となることで、BIOSからのLAN経由のネットワークブート機能にも対応する。SDカード21には、LAN200に接続する必要最低限のOS(ネットワーク接続用OS)、および接続先のアドレス等のサーバー情報(サーバー接続用各種設定情報)が格納される。クライアントPC20の起動プロセスは、クライアントPC10と同一である。
【0041】
図3は、プロバイダ側サーバー30、LAN側サーバー40の内部構成を示す詳細図である。プロバイダ側サーバー30は、通常のインターネットプロバイダのサーバーが提供するサービス機能に加え、新たなメニューとして、ストレージレスPCサービスを提供する機能を有するものである。
【0042】
図3の例では、プロバイダ側サーバー30は、制御部及び処理部に対応するCPU32、記憶部(メモリ、ストレージ類を含む。)33、入出力部(キーボード等の入力部、液晶ディスプレイ等の表示部を含む。)34、及び通信部(有線又は無線回線の通信インターフェース等)35を有し、記憶部33内に、各IDに応じた設定情報(ID設定情報)36と、基本OS及びアプリケーション(AP:アプリケーションソフトウェア)37と、ダウンロード用ユーザーデータ31とを互いに関連付けて保持する。
【0043】
このうち、OS及びアプリケーション37に関しては、クライアントPC10の起動時に、入力されたユーザーのID毎にOS及びアプリケーション37を一括で特定し、特定したOS及びアプリケーション37をPC10に提供する。ユーザーデータ31に関しては、PC10からプロバイダ側サーバー30へアクセスされる度に、その都度、入力されたユーザーのID毎にユーザーデータ31を特定し、特定したユーザーデータ31をPC10にダウンロードする。このようにして、プロバイダ側サーバー30は、基本OS及びアプリケーション37と、各IDに応じた設定情報36と、ユーザーデータ31とを保持しているので、クライアントPC10で保持するより安全である。
【0044】
LAN側サーバー40は、基本的にはプロバイダ側サーバー30と同じ構成(CPU42、記憶部43、入出力部44、及び通信部45)であり、記憶部43内に、ユーザーの各IDに応じた設定情報(ID設定情報)46と、基本OS及びアプリケーション47と、ダウンロード用ユーザーデータ41とを互いに関連付けて保持し、クライアントPC20からのアクセスにより、入力されたユーザーのID毎にOS及びアプリケーション47を一括で特定し、特定したOS及びアプリケーション47のイメージをクライアントPC20に提供する。LAN側サーバー40は、クライアントPC20が起動した後はファイルサーバーとしての役割を担い、ストレージレスPCであるクライアントPC20のユーザーデータ41を保持する。
【0045】
次に、本実施例の動作について、図4を参照して詳細に説明する。ここでは、インターネット環境の場合を説明するが、LAN環境の場合も同様である。
【0046】
図4は、本実施例の動作を示すフローチャートである。
まず、クライアントPC10に、インターネット接続用OSとプロバイダ側サーバー20への接続情報である各種設定情報を格納したSDカード11がセットされる(ステップSt1)。すると、クライアントPC10は、CPU12による制御のもとで起動し(ステップSt2)、SDカード31内のデータを読み出し、インターネット接続用OSの起動により通信部16を介してインターネット100へ接続し、SDカード31内の接続先アドレス等の各種設定情報をもとにインターネット100経由でプロバイダ側サーバー20へ接続する(ステップSt3)。
【0047】
クライアントPC10は、プロバイダ側サーバー20へ接続後、ユーザーの操作により入力部14からID、パスワードが入力される(ステップSt4)と、通信部16を介してインターネット100経由でプロバイダ側サーバー20に送られる。このID、パスワードによりプロバイダ側サーバー20により認証が行われる。
【0048】
上記認証後、クライアントPC10は、CPU12による制御のもとで、プロバイダ側サーバー20からインターネット100経由で、IDに応じたOS及びアプリケーション、各IDに応じた設定情報をダウンロードし(ステップSt5)、ダウンロードしたOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報をメモリ13内に常駐させて起動させ、動作可能となる(ステップSt6)。OSの起動後、クライアントPC10は、ユーザーデータをプロバイダ側サーバー20上にあるディスクから必要に応じてインターネット100経由でダウンロードする。
【0049】
その後、運用が終了すると、クライアントPC10は、電源切断によりシャットダウンする(ステップSt7)。このシャットダウン時は、CPU12により、変更したデータ等は、インターネット100経由でプロバイダ側サーバー20上へ送信してその記憶部37内のダウンロード用ユーザーデータ31として更新して保存し、電源切断後はクライアントPC10内にダウンロードしたデータ及びその更新データはすべて残らないように制御される。
【0050】
従って、本実施例によれば、以下のような効果が得られる。
【0051】
(1)すべてをダウンロードによる運用に切り替えることで、OSは常に最新の状態に保たれ、ユーザーデータはPC10、20よりはるかに安全なサーバー30、40上に置かれる。
【0052】
(2)ダウンロードに頼ることで、ストレージ機器を廃し、その結果、故障も少なく、装置寿命も延びる。
【0053】
(3)ウイルスによる被害を受けても、再度ダウンロードすることで解決でき、被害が少ない。
(4)物理的なストレージデバイスが無いため、一度ダウンロードしてしまえば動作は快適に保たれる。
【0054】
(5)ID、パスワードが格納されたSDカード11、21等のフラッシュメモリを差し替えれば、どのPC10、20からでも同じ環境で作業ができデータの保存もできる。
【0055】
(6)インターネット等のWAN環境も考慮したシステムに適用可能であり、各種ローカルデータの保全性まで考慮しつつ、よりシンプルな構成で、現在のPCと同環境を提供することが可能である。
【0056】
なお、上記実施例に係るストレージレスコンピュータシステムではSDカード11、21を用いた場合を説明しているが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、PC10、20にセットされてデータ読み書きが可能な可搬型記録媒体であれば、その他の半導体メモリを用いたものでも適用可能である。
【0057】
また、各PC10、20及び各サーバー30、40のハードウェア及びソフトウェア構成は、特に限定されるものではなく、上述した機能を実現可能なものであれば、いずれの構成でも適用可能である。例えば、各部の機能毎に回路を独立させて構成したものでも、複数の機能を1つの回路にまとめて一体に構成したものでも、いずれのものであってもよい。或いは、全ての機能を主にソフトウェアの処理で実現するものでもあってもよい。
【0058】
また、PC10、20及びサーバー30、40の少なくとも一部の機能を、プログラムコードを用いて実現する場合、かかるプログラムコード及びこれを記録する記録媒体は、本発明の範疇に含まれる。この場合、OS等の他のプログラムと協働して上記機能が実現される場合は、それらのプログラムコードも含まれる。
【0059】
以上、実施形態及び実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、例えば光通信を利用したインターネット環境のコンシュマー向けPC、光通信を利用したインターネット環境のコンシュマー向けPC、不特定多数の共用PCが多くある法人向けPC、コンピュータをあまり詳しくないコンシュマー向けPC等のストレージレスPCの用途に利用可能である。
【符号の説明】
【0061】
10 クライアントPC(インターネット環境)
20 クライアントPC(LAN環境)
30 インターネットプロバイダ側ダウンロード用サーバー(インターネット環境)
40 LAN側ダウンロード用サーバー(LAN環境)
100 インターネット(ネットワーク)
200 LAN(ネットワーク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに接続されるサーバーと、
前記サーバーに前記ネットワークを介して接続されるクライアントとを有し、
前記サーバーは、
前記クライアントのユーザーのID毎にOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータを保存する記憶部と、
前記クライアントから送られてくるID及びパスワードを受信すると、受信したIDに対応するOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータをネットワーク経由で前記クライアントに送信するサーバー側通信部とを有し、
前記クライアントは、
可搬型記録媒体がセットされると、当該可搬型記録媒体内に格納されたデータに基づいて、前記ネットワーク経由で前記サーバーに接続し、ユーザーにより入力されたID及びパスワードを前記サーバーに送信し、これに応答して前記サーバーから送られてくるOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータをダウンロードするクライアント側通信部と、
ダウンロードしたOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータを用いて動作し、動作終了時にダウンロードしたOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータを残さずにシャットダウンするように制御する制御部とを有することを特徴とするストレージレスコンピュータシステム。
【請求項2】
前記制御部は、更新されたデータを前記通信部により前記サーバーに送信し、動作終了時に残さないよう制御することを特徴とする請求項1記載のストレージレスコンピュータシステム。
【請求項3】
前記ネットワークは、WAN環境で使用されるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のストレージレスコンピュータシステム。
【請求項4】
前記クライアントは、PCであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のストレージレスコンピュータシステム。
【請求項5】
前記可搬型記録媒体は、半導体メモリを用いたものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のストレージレスコンピュータシステム。
【請求項6】
クライアントのユーザーのID毎にOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータを保存する記憶部と、
前記クライアントから送られてくるID及びパスワードを受信すると、受信したIDに対応するOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータをネットワーク経由で前記クライアントに送信する通信部とを有することを特徴とするサーバー。
【請求項7】
可搬型記録媒体がセットされると、当該可搬型記録媒体内に格納されたデータに基づいて、ネットワーク経由でサーバーに接続し、ユーザーにより入力されたID及びパスワードを前記サーバーに送信し、これに応答して前記サーバーから送られてくるOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータをダウンロードする通信部と、
ダウンロードしたOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータを用いて動作し、動作終了時にダウンロードしたOS、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータを残さずにシャットダウンするように制御する制御部とを有することを特徴とするクライアント。
【請求項8】
サーバーが、クライアントのユーザーのID毎にOS、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータを保存し、
前記クライアントが、可搬型記録媒体がセットされると、当該可搬型記録媒体内に格納されたデータに基づいて、ネットワーク経由でサーバーに接続し、ユーザーにより入力されたID及びパスワードを前記サーバーに送信し、
前記サーバーが、前記クライアントから送られてくるID及びパスワードを受信すると、受信したIDに対応するOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータを前記ネットワーク経由で前記クライアントに送信し、
前記クライアントが、前記サーバーから送られてくるOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータをダウンロードし、ダウンロードしたOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータを用いて動作し、動作終了時にダウンロードしたOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータを残さずにシャットダウンすることを特徴とするストレージレスコンピュータシステムの動作方法。
【請求項9】
クライアントのユーザーのID毎にOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータを保存し、
前記クライアントから送られてくるID及びパスワードを受信すると、受信したIDに対応するOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータをネットワーク経由で前記クライアントに送信することを特徴とするサーバーの動作方法。
【請求項10】
可搬型記録媒体がセットされると、当該可搬型記録媒体内に格納されたデータに基づいて、ネットワーク経由でサーバーに接続し、
ユーザーにより入力されたID及びパスワードを前記サーバーに送信し、
これに応答して前記サーバーから送られてくるOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータをダウンロードし、
ダウンロードしたOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータを用いて動作し、動作終了時にダウンロードしたOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータを残さずにシャットダウンするように制御することを特徴とするクライアントの動作方法。
【請求項11】
コンピュータに、
クライアントのユーザーのID毎にOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータを保存するステップと、
前記クライアントから送られてくるID及びパスワードを受信すると、受信したIDに応じたOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータをネットワーク経由で前記クライアントに送信するステップとを実行させることを特徴とするサーバーの動作プログラム。
【請求項12】
コンピュータに、
可搬型記録媒体がセットされると、当該可搬型記録媒体内に格納されたデータに基づいて、ネットワーク経由でサーバーに接続するステップと、
ユーザーにより入力されたID及びパスワードを前記サーバーに送信するステップと、
これに応答して前記サーバーから送られてくるOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータをダウンロードするステップと、
ダウンロードしたOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータを用いて動作し、動作終了時にダウンロードしたOS、アプリケーション、各IDに応じた設定情報、及びユーザーデータを残さずにシャットダウンするように制御するステップとを実行させることを特徴とするクライアントの動作プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−191513(P2010−191513A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32600(P2009−32600)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Linux
【出願人】(000232140)NECフィールディング株式会社 (373)
【Fターム(参考)】